(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】パワーモジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20220818BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220818BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20220818BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/12 J
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2019509940
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012634
(87)【国際公開番号】W WO2018181417
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017071880
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】畑野 舞子
(72)【発明者】
【氏名】大塚 拓一
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-191640(JP,A)
【文献】特開2016-103526(JP,A)
【文献】特開2015-211125(JP,A)
【文献】特開2015-070063(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12、23/36
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の厚銅基板と、
前記厚銅基板上に配置された導電性の応力緩和金属層と、
前記応力緩和金属層上に配置された半導体デバイスと
を備え、前記半導体デバイスは、前記応力緩和金属層と接合していることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記応力緩和金属層上に配置されたメッキ層を備え、
前記半導体デバイスは、前記応力緩和金属層と前記メッキ層を介して接合していることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記応力緩和金属層上に配置されたAg焼成層を備え、
前記半導体デバイスは、前記Ag焼成層を介して、前記応力緩和金属層と接合していることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記メッキ層上に配置されたAg焼成層を備え、
前記半導体デバイスは、前記Ag焼成層および前記メッキ層を介して、前記応力緩和金属層と接合していることを特徴とする請求項2に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記半導体デバイスの一部は、前記応力緩和金属層または前記メッキ層に食い込んで固着していることを特徴とする請求項2または4に記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記半導体デバイスと前記応力緩和金属層または前記メッキ層との接合面は、一体化していることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記半導体デバイスは、前記応力緩和金属層または前記メッキ層に前記半導体デバイスの厚さの1/3~1/2食い込んで接合していることを特徴とする請求項6に記載のパワーモジュール。
【請求項8】
前記応力緩和金属層は、第1アルミニウム緩和層を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項9】
前記厚銅基板は、
第1厚銅層と、
前記第1厚銅層上に配置された第2厚銅層と
を備え、前記応力緩和金属層は、前記第2厚銅層上に配置されることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項10】
前記第1厚銅層上に配置された絶縁シート層を備え、
前記第2厚銅層は、前記絶縁シート層上に配置されることを特徴とする請求項9に記載のパワーモジュール。
【請求項11】
前記絶縁シート層上に配置された第2アルミニウム緩和層を備え、
前記第2厚銅層は、前記第2アルミニウム緩和層上に圧延接着されていることを特徴とする
請求項10に記載のパワーモジュール。
【請求項12】
前記絶縁シート層上に配置された第2アルミニウム緩和層を備え、
前記第2厚銅層は、前記第2アルミニウム緩和層上にスパッタリング技術、コールドスプレー技術若しくは溶射技術を用いて接着されていることを特徴とする
請求項10に記載のパワーモジュール。
【請求項13】
冷却器と、
前記冷却器上に配置された第1サーマルコンパウンド層と
を備え、前記厚銅基板は、前記冷却器上に前記第1サーマルコンパウンド層を介して配置されることを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項14】
冷却器と、前記冷却器上に配置された半田層、銀焼成層若しくは拡散接合層とを備え、前記厚銅基板は、前記冷却器上に前記半田層、前記銀焼成層若しくは前記拡散接合層のいずれかを介して配置されることを特徴とする請求項9~11のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項15】
前記厚銅基板を挟んで、前記第1アルミニウム緩和層に対向して配置される第2アルミニウム緩和層を備えることを特徴とする請求項8に記載のパワーモジュール。
【請求項16】
冷却器と、
前記冷却器上に配置された絶縁シートと
を備え、前記厚銅基板は、前記絶縁シート上に配置されることを特徴とする請求項15に記載のパワーモジュール。
【請求項17】
絶縁基板と、
前記絶縁基板上に配置された第2サーマルコンパウンド層と
を備え、前記厚銅基板は、前記第2サーマルコンパウンド層上に配置されることを特徴とする請求項15に記載のパワーモジュール。
【請求項18】
冷却器と、
前記冷却器上に配置された第2サーマルコンパウンド層と
を備え、前記厚銅基板は、前記冷却器上に前記第2サーマルコンパウンド層を介して配置されることを特徴とする請求項17に記載のパワーモジュール。
【請求項19】
前記絶縁基板は、DBC基板、DBA基板、AMB基板、若しくはセラミックス基板のいずれかを備えることを特徴とする請求項17または18に記載のパワーモジュール。
【請求項20】
前記冷却器は、水冷式若しくは空冷式であり、車載機器に用いられることを特徴とする請求項13、14、16、若しくは18のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項21】
前記第1アルミニウム緩和層の厚さは、0.01mm~0.5mmの範囲を備えることを特徴とする請求項8に記載のパワーモジュール。
【請求項22】
前記第2厚銅層の厚さは、1mm~3mmの範囲を備えることを特徴とする請求項9~13のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項23】
平板状の第1厚銅層と、
前記第1厚銅層上に配置された絶縁シート層と、
前記絶縁シート層上に配置され、パターン形成された第2厚銅層と、
前記第2厚銅層上に配置された第1アルミニウム緩和層と、
前記第1アルミニウム緩和層上に配置された半導体デバイスと
を備え、前記半導体デバイスは、前記第1アルミニウム緩和層と接合していることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項24】
前記第1アルミニウム緩和層上に配置されたメッキ層を備え、
前記半導体デバイスは、前記メッキ層を介して、前記第1アルミニウム緩和層と接合していることを特徴とする請求項23に記載のパワーモジュール。
【請求項25】
前記第1アルミニウム緩和層上に配置されたAg焼成層を備え、
前記半導体デバイスは、前記Ag焼成層を介して、前記第1アルミニウム緩和層と接合していることを特徴とする請求項23に記載のパワーモジュール。
【請求項26】
前記メッキ層上に配置されたAg焼成層を備え、
前記半導体デバイスは、前記Ag焼成層および前記メッキ層を介して、前記第1アルミニウム緩和層と接合していることを特徴とする請求項24に記載のパワーモジュール。
【請求項27】
前記半導体デバイスの一部は、前記メッキ層または前記第1アルミニウム緩和層に食い込んで固着していることを特徴とする請求項24または26に記載のパワーモジュール。
【請求項28】
前記半導体デバイスと前記メッキ層または前記第1アルミニウム緩和層との接合面は、一体化していることを特徴とする請求項27に記載のパワーモジュール。
【請求項29】
前記半導体デバイスは、前記メッキ層または前記第1アルミニウム緩和層に前記半導体デバイスの厚さの1/3~1/2食い込んで接合していることを特徴とする請求項28に記載のパワーモジュール。
【請求項30】
前記絶縁シート層上に配置された第2アルミニウム緩和層を備え、
前記第2厚銅層は、前記第2アルミニウム緩和層上に圧延接着されていることを特徴とする請求項23~29のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項31】
前記絶縁シート層上に配置された第2アルミニウム緩和層を備え、
前記第2厚銅層は、前記第2アルミニウム緩和層上にスパッタリング技術、コールドスプレー技術若しくは溶射技術を用いて接着されていることを特徴とする請求項23~29のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項32】
前記半導体デバイスは、その上面にソース電極またはエミッタ電極とゲート電極が形成され、その下面にドレイン電極またはコレクタ電極が形成されたFETまたはIGBTであり、
前記絶縁シート層上に配置され、前記第2厚銅層と同一材料によりパターン形成され、前記ゲート電極に電気的に接続されるゲート信号用配線パターンおよび前記ソース電極または前記エミッタ電極に電気的に接続されるソースまたはエミッタ信号用配線パターンとを備えることを特徴とする請求項23~31のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項33】
前記半導体デバイスは複数のチップを並列接続した構成を備えることを特徴とする請求項32に記載のパワーモジュール。
【請求項34】
前記半導体デバイスは、Si系IGBT、Si系MOSFET、SiC系MOSFET、SiC系IGBT、GaN系FETのいずれか、またはこれらのうちの異なる複数を備えることを特徴とする請求項1~33のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項35】
前記半導体デバイスを用いて、ワンインワンモジュール、ツーインワンモジュール、フォーインワンモジュール、シックスインワンモジュール、セブンインワンモジュール、エイトインワンモジュール、トゥエルブインワンモジュール、またはフォーティーンインワンモジュールのいずれかを構成する請求項1~34のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項36】
前記半導体デバイスを第1電源と第2電源との間に直列に接続し、直列接続された前記半導体デバイスの接続点を出力とするスイッチング回路を複数用いると共に、前記半導体デバイスの各ゲートを個別に制御してインバータ回路装置またはコンバータ回路を構成することを特徴とする請求項35に記載のパワーモジュール。
【請求項37】
第2厚銅層上に第1アルミニウム緩和層を形成する工程と、
第1厚銅層上に絶縁シート層を介して前記第2厚銅層を配置する工程と、
前記第1アルミニウム緩和層上に半導体デバイスを配置し、加熱しながら加圧する加熱・加圧プロセスにより前記半導体デバイスを前記第1アルミニウム緩和層と接合する工程と、
前記半導体デバイスの電極と外部端子とを接続する工程と
を有することを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項38】
第2厚銅層上に第1アルミニウム緩和層を形成する工程と、
前記第1アルミニウム緩和層上に半導体デバイスを配置し、加熱しながら加圧する加熱・加圧プロセスにより前記半導体デバイスを前記第1アルミニウム緩和層と接合する工程と、
第1厚銅層上に絶縁シート層を介して前記第2厚銅層を配置する工程と、
前記半導体デバイスの電極と外部端子とを接続する工程と
を有することを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項39】
前記加熱・加圧プロセスの加熱温度は、300℃~350℃を備え、加圧圧力は、10MPa~80MPaを備えることを特徴とする請求項37または38に記載のパワーモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、パワーモジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールの1つとして、従来から、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなパワー素子(チップ)を含む半導体デバイスの外囲が樹脂でモールドされたパワーモジュールが知られている。
【0003】
動作状態において、半導体デバイスは発熱するため、基板の裏面側にヒートシンクやフィンなどの放熱器を配置して放熱させ、半導体デバイスを冷却するのが一般的である。
【0004】
特に、近年においては、低熱抵抗化のために、基板部の厚銅化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】梨子田典弘、日向裕一朗、堀尾真史、“All-SiCモジュール技術”、富士電機技報 2012, vol. 85, no.6, pp.403 (15)-407 (19).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基板の厚銅化では接合の信頼性が懸念される。
【0008】
本実施の形態は、熱抵抗を増加させることなく、接合の信頼性の向上が可能なパワーモジュールおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態の一態様によれば、平板状の厚銅基板と、前記厚銅基板上に配置された導電性の応力緩和金属層と、前記応力緩和金属層上に配置された半導体デバイスとを備え、前記半導体デバイスは、前記応力緩和金属層と接合していることを特徴とするパワーモジュールが提供される。
【0010】
本実施の形態の他の態様によれば、平板状の第1厚銅層と、前記第1厚銅層上に配置された絶縁シート層と、前記絶縁シート層上に配置され、パターン形成された第2厚銅層と、前記第2厚銅層上に配置された第1アルミニウム緩和層と、前記第1アルミニウム緩和層上に配置された半導体デバイスとを備え、前記半導体デバイスは、前記応力緩和金属層と接合しているパワーモジュールが提供される。
【0011】
本実施の形態の他の態様によれば、第2厚銅層上に第1アルミニウム緩和層を形成する工程と、第1厚銅層上に絶縁シート層を介して前記第2厚銅層を配置する工程と、前記第1アルミニウム緩和層上に半導体デバイスを配置し、加熱しながら加圧する加熱・加圧プロセスにより前記半導体デバイスを前記第1アルミニウム緩和層と接合する工程と、前記半導体デバイスの電極と外部端子とを接続する工程とを有するパワーモジュールの製造方法が提供される。
【0012】
本実施の形態の他の態様によれば、第2厚銅層上に第1アルミニウム緩和層を形成する工程と、前記第1アルミニウム緩和層上に半導体デバイスを配置し、加熱しながら加圧する加熱・加圧プロセスにより前記半導体デバイスを前記第1アルミニウム緩和層と接合する工程と、第1厚銅層上に絶縁シート層を介して前記第2厚銅層を配置する工程と、前記半導体デバイスの電極と外部端子とを接続する工程とを有するパワーモジュールの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本実施の形態によれば、熱抵抗を増加させることなく、接合の信頼性の向上が可能なパワーモジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な厚銅基板の模式的断面構造図、(b)実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な別の厚銅基板の模式的断面構造図。
【
図2】(a)第1の実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造図、(b)第1の実施の形態の変形例に係るパワーモジュールの模式的断面構造図。
【
図3】(a)第2の実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造図、(b)第2の実施の形態の変形例に係るパワーモジュールの模式的断面構造図。
【
図4】(a)第3の実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造図、(b)第3の実施の形態の変形例に係るパワーモジュールの模式的断面構造図。
【
図5】(a)比較例1に係るパワーモジュールの模式的断面構造図(厚銅+絶縁層構造例)、(b)比較例2に係るパワーモジュールの模式的断面構造図(厚銅+セラミックス基板構造例)。
【
図6】実施の形態に係るパワーモジュールのプレス加工工程の説明図であって、(a)半導体デバイスをアルミニウム緩和層上に搭載する工程図、(b)加熱・加圧工程図、(c)加熱・加圧工程後の形状であって、半導体デバイスがアルミニウム緩和層に一部埋め込まれた形状の説明図。
【
図7】実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、半導体デバイスがアルミニウム緩和層に一部埋め込まれた形状の詳細説明図。
【
図8】実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、熱サイクルテストにおける温度プロファイル例。
【
図9】(a)超音波探傷装置(SAT:Scanning Acoustic Tomography)による内部観察のための実験系の模式的説明図、(b)内部観察された画像の模式図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図10】(a)厚銅基板上にAg焼成により半導体デバイスを搭載した比較例1に係るパワーモジュールの初期状態のSAT画像例、(b)
図10(a)を説明するための線図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図11】比較例1に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果を示す図であり、(a)200サイクル(-50℃~+300℃、30分)後の接合層の劣化を示すSAT画像例、(b)
図11(a)を説明するための線図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図12】(a)DBA基板上に半導体デバイスを搭載した実施の形態に係るパワーモジュールの初期状態のSAT画像例、(b)
図12(a)を説明するための線図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図13】DBA基板上に半導体デバイスを搭載した実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果を示す図であり、(a)200サイクル(-50℃~+300℃、30分)後のSAT画像例、(b)
図13(a)を説明するための線図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図14】(a)セラミックス基板を厚銅化し、半導体デバイスを搭載した比較例2に係るパワーモジュールにおいて、50サイクル(-50℃~+200℃)後のCu/SiNセラミックス間の劣化を示すSAT画像例、(b)
図14(a)を説明するための線図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図15】(a)セラミックス基板を厚銅化し、半導体デバイスを搭載した比較例2に係るパワーモジュールにおいて、100サイクル(-50℃~+200℃)後のCu/SiNセラミックス間の劣化を示すSAT画像例、(b)
図15(a)を説明するための線図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図16】(a)セラミックス基板を厚銅化し、半導体デバイスを搭載した比較例2に係るパワーモジュールの初期状態のSAT画像例、(b)
図16(a)を説明するための線図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図17】(a)セラミックス基板を厚銅化し、半導体デバイスを搭載した比較例2に係るパワーモジュールにおいて、200サイクル(-50℃~+300℃、30分)後の接合層の劣化を示すSAT画像例、(b)
図17(a)を説明するための線図、(c)サンプルの模式的断面構造図。
【
図18】実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、アルミニウム緩和層の厚さtAをパラメータとした熱抵抗RTj-wとCu厚t1の関係のシミュレーション結果。
【
図19】実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、アルミニウム緩和層の厚さtAおよびCu厚t1のシミュレーション条件を説明するための図。
【
図20】実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、熱抵抗RTj-wのシミュレーション条件を説明するための図であると同時に、冷却器に搭載可能な実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造図(構成例1)。
【
図21】(a)DBA基板上にAg焼成層を介して半導体デバイスを形成するパワーモジュールの模式的断面構造図、(b)半導体デバイス/Ag焼成層/Al層の接合部の断面顕微鏡写真例(加圧圧力22MPa)、(c)
図21(b)を説明するための線図。
【
図22】(a)
図21に対応するパワーモジュールにおいて、半導体デバイス/Ag焼成層/Al層の接合部の断面SEM写真例(加圧圧力22MPa)、(b)
図22(a)を説明するための線図。
【
図23】(a)DBA基板上にAg焼成層を介して半導体デバイスを形成するパワーモジュールにおいて、半導体デバイス/Ag焼成層/Al層の接合部の断面顕微鏡写真例(加圧圧力38MPa)、(b)
図23(a)を説明するための線図。
【
図24】(a)DBA基板上にAg焼成層を介して半導体デバイスを形成するパワーモジュールにおいて、半導体デバイス/Ag焼成層/Al層の接合部の断面顕微鏡写真例(加圧圧力86MPa)、(b)
図24(a)を説明するための線図。
【
図25】冷却器に搭載可能な実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造図(構成例2)。
【
図26】冷却器に搭載可能な実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造図(構成例3)。
【
図27】冷却器に搭載可能な実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造図(構成例4)。
【
図28】実施の形態に係るパワーモジュールの製造方法であって、(a)Al/Cu材の製造工程図、(b)絶縁シート貼付け工程図、(c)半導体デバイス接合形成工程図、(d)樹脂モールド形成工程図。
【
図29】実施の形態に係るパワーモジュールの別の製造方法であって、(a)Al/Cu材の製造工程図、(b)半導体デバイス接合形成工程図、(c)絶縁シート貼付け工程図、(d)樹脂モールド形成工程図。
【
図30】(a)実施の形態に係るパワーモジュールであって、ワンインワン(1 in 1)モジュールの模式的平面パターン構成図、(b)
図30(a)のI-I線に沿う模式的断面構造図。
【
図31】実施の形態に係るパワーモジュールであって、ワンインワン(1 in 1)モジュールの模式的鳥瞰図。
【
図32】実施の形態に係るパワーモジュールであって、(a)1 in 1モジュールのSiC MOSFETの模式的回路表現図、(b)1 in 1モジュールのIGBTの模式的回路表現図。
【
図33】実施の形態に係るパワーモジュールであって、1 in 1モジュールのSiC MOSFETの詳細回路表現図。
【
図34】実施の形態に係るパワーモジュールであって、ツーインワン(2 in 1)モジュールの模式的平面パターン構成図。
【
図35】実施の形態に係るパワーモジュールであって、2 in 1モジュールの模式的鳥瞰図。
【
図36】実施の形態に係るパワーモジュールであって、(a)2 in 1モジュールのSiC MOSFETの模式的回路表現図、(b)2 in 1モジュールのIGBTの模式的回路表現図。
【
図37】実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスの例であって、ソースパッド電極SPD、ゲートパッド電極GPDを含むSiC MOSFETの模式的断面構造図。
【
図38】実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスの例であって、エミッタパッド電極EPD、ゲートパッド電極GPDを含むIGBTの模式的断面構造図。
【
図39】実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC DI(Double Implanted)MOSFETの模式的断面構造図。
【
図40】実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC T(Trench)MOSFETの模式的断面構造図。
【
図41】実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータの回路構成において、(a)半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサを接続した回路構成例、(b)半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサを接続した回路構成例。
【
図42】実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータの回路構成において、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用した3相交流インバータの回路構成図。
【
図43】実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータの回路構成において、半導体デバイスとしてIGBTを適用した3相交流インバータの回路構成図。
【
図44】拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの製造方法の説明図であって、(a)拡散接合形成前のSiC半導体デバイスの裏面近傍の模式的断面図、(b)拡散接合形成前の厚銅基板の表面近傍の模式的断面図。
【
図45】拡散接合技術を適用して、SiC半導体デバイスの裏面と、厚銅基板の表面とを加熱・加圧して拡散接合を形成した一実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面図。
【
図46】(a)拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの拡散接合近傍の断面構造の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)写真例、(b)
図46(a)を説明するための線図。
【
図47】(a)銀焼成接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの銀焼成接合近傍の断面構造のSEM写真例、(b)
図47(a)を説明するための線図。
【
図48】(a)本技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの厚銅基板の表面近傍の模式的断面図(その1)、(b)厚銅基板の表面近傍の模式的断面図(その2)。
【
図49】拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテストに用いた基板構造の模式的断面図。
【
図50】拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果であって、(a)初期状態(0サイクル)のSAT画像例、(b)
図50(a)を説明するための線図。
【
図51】拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果であって、(a)500サイクル(-40℃~+150℃、各30分)後のSAT画像例、(b)
図51(a)を説明するための線図。
【
図52】拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果であって、(a)1000サイクル(-40℃~+150℃、各30分)後のSAT画像例、(b)
図52(a)を説明するための線図。
【
図53】拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果であって、(a)1500サイクル(-40℃~+150℃、各30分)後のSAT画像例、(b)
図53(a)を説明するための線図。
【
図54】拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果であって、(a)2000サイクル(-40℃~+150℃、各30分)後のSAT画像例、(b)
図54(a)を説明するための線図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0016】
又、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
[実施の形態]
(厚銅基板例)
実施の形態に係るパワーモジュール1に適用可能な厚銅基板2の模式的断面構造は、
図1(a)に示すように表され、実施の形態に係るパワーモジュール1に適用可能な別の厚銅基板2の模式的断面構造は、
図1(b)に示すように表される。
【0018】
実施の形態に係るパワーモジュール1に適用可能な厚銅基板2は、
図1(a)に示すように、第2厚銅層18と、第2厚銅層18上に配置された第1アルミニウム緩和層24Uとを備える。更に、第2厚銅層18を挟んで、第1アルミニウム緩和層24Uに対向して第2厚銅層18の裏面に配置された第2アルミニウム緩和層24Dを備えていても良い。更に、第1アルミニウム緩和層24U上には、第1メッキ層30Uを備えていても良い。
【0019】
実施の形態に係るパワーモジュール1に適用可能な別の厚銅基板2の模式的断面構造は、
図1(b)に示すように、更に、第2厚銅層18を挟んで、第1メッキ層30Uに対向し、第2アルミニウム緩和層24Dの裏面に配置された第2メッキ層30Dを備えていても良い。
【0020】
第2厚銅層18は、焼きなましした銅板などを適用可能である。第2厚銅層18と第1アルミニウム緩和層24Uは、圧延接着されている。同様に、第2厚銅層18と第2アルミニウム緩和層24Dは、圧延接着されている。第2厚銅層18の厚さは、例えば約2mm以上である。また、第1アルミニウム緩和層24U、第2アルミニウム緩和層24Dの厚さは、例えば約0.1mm以下を備えていても良い。
【0021】
また典型例を挙げると、第1アルミニウム緩和層24U、第2アルミニウム緩和層24Dの厚さは、例えば約0.01mm~0.5mmの範囲を備え、第2厚銅層18の厚さは、例えば約1mm~3mmの範囲を備えていても良い。
【0022】
また、第1メッキ層30U、第2メッキ層30Dには、例えば、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)等を主成分とするメッキ材料を適用可能である。第1メッキ層30U、第2メッキ層30Dの厚さは、例えば、約0,1μm~5μm程度である。
【0023】
尚、上記の圧延技術による接着の代わりに、スパッタリング技術、コールドスプレー技術若しくは溶射(Thermal spraying)技術を用いて接着されていても良い。
【0024】
尚、厚銅基板2の構成は、
図1(a)・
図1(b)に示す構成に限定されず、例えば、後述する
図2・
図3に示すように、第1厚銅層14上に第2厚銅層18を配置しても良く、
図27に示すように、絶縁基板(
図25参照)上に第2厚銅層18を配置しても良い。
【0025】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係るパワーモジュール1の模式的断面構造は、
図2(a)に示すように表され、第1の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1の模式的断面構造は、
図2(b)に示すように表される。
【0026】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図2(a)に示すように、平板状の厚銅基板2と、厚銅基板2上に配置された導電性の応力緩和金属層24Uと、応力緩和金属層24U上に配置された半導体デバイス22とを備える。ここで、半導体デバイス22は、応力緩和金属層24Uと接合している。
【0027】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図2(a)に示すように、応力緩和金属層24U上に配置されたメッキ層30を備え、半導体デバイス22は、メッキ層30を介して、応力緩和金属層24Uと接合している。
【0028】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール1において、半導体デバイス22の一部は、
図2(a)に示すように、応力緩和金属層24Uに食い込んで固着している。
【0029】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール1において、半導体デバイス22と応力緩和金属層24Uとの接合面は、一体化していても良い。すなわち、拡散接合若しくは固相拡散接合により接合されていても良い。
【0030】
また、半導体デバイス22は、加熱・加圧接合により、例えば約0~100μm程度、応力緩和金属層24Uに食い込んで接合している。或いは、半導体デバイス22の厚さの約1/3~1/2程度、応力緩和金属層24Uに食い込んで接合していても良い。
【0031】
また、応力緩和金属層24Uとしては、アルミニウム層(第1アルミニウム緩和層)を用いることができる。
【0032】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール1において、厚銅基板2は、
図2(a)に示すように、第1厚銅層14と、第1厚銅層14上に配置された第2厚銅層18とを備え、応力緩和金属層24Uは、第2厚銅層18上に配置されていても良い。
【0033】
また、第1の実施の形態に係るパワーモジュール1において、厚銅基板2は、
図2(a)に示すように、第1厚銅層14上に配置された絶縁シート層16を備え、第2厚銅層18は、絶縁シート層16上に配置されていても良い。
図2では、絶縁シート層16の大きさは厚銅層18と同じ大きさになっているが、厚銅層18よりも大きくすることにより、短絡の恐れを低減することができる。
【0034】
半導体デバイス22と応力緩和金属層24Uは、拡散接合若しくは固相拡散接合により接合可能である。
【0035】
また、半導体デバイス22は、応力緩和金属層24U上に加熱しながら加圧する加熱・加圧プロセスにより接合可能である。
【0036】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール1においては、後述する熱抵抗のシミュレーション結果(
図18)より、第1アルミニウム緩和層24Uの厚さは0.1mm以下、第2厚銅層18の厚さは、2mm以上が好ましい。
【0037】
第2厚銅層18上に第1アルミニウム緩和層24Uを形成する方法としては、圧延接着などによる接合(クラッド材)が可能である。圧延接着などにより形成された構造は、クラッド材と呼ばれる。尚、圧延技術による接着の代わりに、スパッタリング技術、コールドスプレー技術若しくは溶射技術を用いて接着されていても良い。
【0038】
第1アルミニウム緩和層24U上にメッキ層30を形成する理由は、半導体デバイス22を第1アルミニウム緩和層24Uと良好に接合するためである。また、メッキ層30を用いる代わりに、例えば、溶射による形成皮膜を適用しても良い。
【0039】
絶縁シート層16は、例えば、エポキシ系やポリイミド系樹脂などをベース樹脂とした半硬化材料のシート層である。絶縁シート層16は、熱伝導率が10W/mK以上、厚さは、例えば、0.1mm~0.2mmである。絶縁シート層16を使用する理由は、セラミック基板と比較して低コストとするためである。
【0040】
更に、第1の実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図2(a)に示すように、冷却器10を備え、第1厚銅層14は、冷却器10上に半田層12を介して配置されていても良い。半田層12の材料としては、Sn系半田層を適用可能である。また、Ag焼成層や、Cu焼成層を適用しても良い。また、サーマルコンパウンドを適用しても良い。また、実施の形態に係るパワーモジュール1においては、冷却器10は、水冷式若しくは空冷式を備える。
【0041】
(変形例)
第1の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1は、
図2(b)に示すように、絶縁シート層16上に配置された第2アルミニウム緩和層24Dを備える。第2厚銅層18は、第2アルミニウム緩和層24D上に圧延接着などにより接合可能である。その他の構成は、第1の実施の形態に係るパワーモジュール1と同様である。
【0042】
第1の実施の形態およびその変形例によれば、熱抵抗を増加させることなく、接合の信頼性の向上が可能なパワーモジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るパワーモジュール1の模式的断面構造は、
図3(a)に示すように表され、第2の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1の模式的断面構造は、
図3(b)に示すように表される。
【0044】
第2の実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図3(a)に示すように、メッキ層30上に配置されたAg焼成層20を備え、半導体デバイス22は、Ag焼成層20およびメッキ層30を介して、応力緩和金属層24Uと接合している。
【0045】
第2の実施の形態に係るパワーモジュール1においては、半導体デバイス22は、Ag焼成層20を介して、メッキ層30および応力緩和金属層24Uと接合可能である。その他の構成は、第1の実施の形態に係るパワーモジュール1と同様である。また、
図3では、Ag焼成層20の大きさは半導体デバイス22と同じ大きさになっているが、半導体デバイス22より大きくても良い。
【0046】
(変形例)
第2の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1は、
図3(b)に示すように、絶縁シート層16上に配置された第2アルミニウム緩和層24Dを備える。第2厚銅層18は、第2アルミニウム緩和層24D上に圧延接着などにより接合可能である。その他の構成は、第2の実施の形態に係るパワーモジュール1と同様である。
【0047】
第2の実施の形態およびその変形例によれば、熱抵抗を増加させることなく、接合の信頼性の向上が可能なパワーモジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【0048】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係るパワーモジュール1の模式的断面構造は、
図4(a)に示すように表され、第3の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1の模式的断面構造は、
図4(b)に示すように表される。
【0049】
第3の実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図4(a)に示すように、応力緩和金属層24U上に配置されたAg焼成層20を備え、半導体デバイス22は、Ag焼成層20を介して、応力緩和金属層24Uと接合している。
【0050】
第3の実施の形態に係るパワーモジュール1においては、半導体デバイス22と応力緩和金属層24Uは、Ag焼成層20を介して、固相拡散により接合可能である。
【0051】
また、半導体デバイス22は、Ag焼成層20を介して、応力緩和金属層24U上に加熱しながら加圧する加熱・加圧プロセスにより接合可能である。
【0052】
(変形例)
第3の実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1は、
図4(b)に示すように、絶縁シート層16上に配置された第2アルミニウム緩和層24Dを備える。第2厚銅層18は、第2アルミニウム緩和層24D上に圧延接着などにより接合可能である。その他の構成は、第3の実施の形態に係るパワーモジュール1と同様である。
【0053】
第3の実施の形態およびその変形例によれば、熱抵抗を増加させることなく、接合の信頼性の向上が可能なパワーモジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【0054】
(比較例)
比較例1に係るパワーモジュール1Aの模式的断面構造(厚銅+絶縁層構造例)は、
図5(a)に示すように表される。
【0055】
比較例1に係るパワーモジュール1Aは、
図5(a)に示すように、厚銅基板2Aと、厚銅基板2A上に配置されたAg焼成層20と、Ag焼成層20上に配置された半導体デバイス22とを備える。
【0056】
更に、厚銅基板2Aは、
図5(a)に示すように、第1厚銅層14Aと、第1厚銅層14A上に配置された第2厚銅層18Aとを備える。ここで、Ag焼成層20は、第2厚銅層18A上に配置される。
【0057】
また、
図5(a)に示すように、第1厚銅層14A上に配置された絶縁シート層16Aを備える。第2厚銅層18Aは、絶縁シート層16A上に配置される。
【0058】
半導体デバイス22は、Ag焼成層20を介して、第2厚銅層18Aと接続される。
【0059】
更に、比較例1に係るパワーモジュール1Aは、
図5(a)に示すように、冷却器10を備え、第1厚銅層14Aは、冷却器10上に半田層12を介して配置される。
【0060】
比較例1に係るパワーモジュール1Aは、Ag焼成層20を介して厚銅基板2Aと半導体デバイス22とを接続するため、
図9~
図11において説明するように、接合層の劣化による信頼性の低下が懸念される。
【0061】
比較例2に係るパワーモジュール1Bの模式的断面構造(厚銅+セラミックス基板構造例)は、
図5(b)に示すように表される。
【0062】
比較例2に係るパワーモジュール1Bは、
図5(b)に示すように、絶縁基板2Bと、絶縁基板2B上に配置されたAg焼成層20と、Ag焼成層20上に配置された半導体デバイス22とを備える。
【0063】
更に、絶縁基板2Bは、
図5(b)に示すように、第1厚銅層14Bと、第1厚銅層14B上にセラミックス基板17を介して配置された第2厚銅層18Bとを備える。ここで、Ag焼成層20は、第2厚銅層18B上に配置される。
【0064】
半導体デバイス22は、Ag焼成層20を介して、第2厚銅層18Aと接続される。
【0065】
更に、比較例2に係るパワーモジュール1Bは、
図5(b)に示すように、冷却器10を備え、第1厚銅層14Bは、冷却器10上に半田層12を介して配置される。
【0066】
比較例2に係るパワーモジュール1Bも、Ag焼成層20を介して絶縁基板2Bと半導体デバイス22とを接続するため、信頼性の低下が懸念される。また、比較例2に係るパワーモジュール1Bは、厚銅+セラミックス基板構造を備えるため、コスト高となる。
【0067】
実施の形態およびその変形例に係るパワーモジュール1においては、厚銅基板2上に応力緩和金属層24Uとして、例えば、アルミニウム緩和層24Uを導入することにより、熱抵抗を増加させることなく、信頼性の向上が可能となる。さらに、拡散接合若しくは固相拡散接合による接合が可能となるため、工程数の削減にもつながる。
【0068】
(プレス加工工程)
実施の形態に係るパワーモジュールのプレス加工工程の説明図であって、半導体デバイス22をアルミニウム緩和層24U上に搭載する工程は
図6(a)に示すように表され、加熱・加圧工程は
図6(b)に示すように表される。また、加熱・加圧工程後の形状であって、半導体デバイス22がアルミニウム緩和層24Uに一部埋め込まれた形状の説明図は、
図6(c)に示すように表される。
図6においては、第1の実施の形態や第3の実施の形態における加熱・加圧工程により、半導体デバイス22がアルミニウム緩和層24Uに一部埋め込まれる構造を説明しており、メッキ層30やAg焼成層20は、図示を省略している。
【0069】
(A)まず、
図6(a)に示すように、チップマウント工程として、半導体デバイス22をアルミニウム緩和層24U上に搭載する。ここで、アルミニウム緩和層24Uは、厚銅基板2の第2厚銅層18上に圧延接着などにより形成されている。尚、上記の圧延技術による接着の代わりに、スパッタリング技術、コールドスプレー技術若しくは溶射技術を用いて接着されていても良い。
【0070】
(B)次に、
図6(b)に示すように、上記構造をヒータ等の加熱装置(図示省略)上に配置し、プレス板26を用い、加熱・加圧工程を実施する。加熱温度は、例えば、約300℃~350℃程度であり、加圧圧力PAは、例えば、約10MPa~80MPa程度である。
【0071】
(C)加熱・加圧工程後の形状は、
図6(c)に示すように、半導体デバイス22がアルミニウム緩和層24Uに一部埋め込まれた形状を備える。アルミニウム緩和層24Uの材質の剛性(柔軟性)により、加熱・加圧工程後、加熱加圧によりアルミニウムが変形するため、
図6(c)に示すように、SiCからなる半導体デバイスは、アルミニウム緩和層24Uに一部埋め込まれた形状となる。
【0072】
第1の実施の形態や第3の実施の形態に係るパワーモジュール1において、半導体デバイス22がアルミニウム緩和層24Uに一部埋め込まれた形状の詳細説明図は、
図7に示すように表される。半導体デバイス22の厚さtDに対して、アルミニウム緩和層24Uは、第1アルミニウム緩和層の加圧厚さtBだけ半導体デバイス22がアルミニウム緩和層24Uに埋め込まれている。また、
図6(c)に示すように、半導体デバイス22の側壁部と台形形状のアルミニウム緩和層24U表面との距離(第1アルミニウム緩和層表面と半導体デバイスとの離間距離)SDは、半導体デバイス22表面とアルミニウム緩和層24Uとの間に印加される電界強度に対する沿面距離程度であることが望ましい。また、アルミニウム緩和層24Uの台形形状部分のテーパー角度θは、例えば、約30度~60度程度である。
【0073】
Ag焼成層20を用いる比較例1・2に係るパワーモジュール1A・1Bの製造方法では、厚銅基板2A・絶縁基板2B上へのAgペースト材の塗布工程、チップマウント工程、予備乾燥工程、加熱・加圧工程により接合を行っていた。一方、第1の実施の形態や第3の実施の形態に係るパワーモジュール1の製造方法では、アルミニウム緩和層24Uを備える厚銅基板2上へのチップマウント工程、加熱・加圧工程により接合が可能となる。
【0074】
Ag焼成層20を用いる比較例1・2に係るパワーモジュール1A・1Bでは接合層の劣化が確認されている。接合層の劣化とはAg焼成層20の劣化のことである。CuとSiCの線膨張係数(温度変化に対する材料の伸び率)が異なるため(SiCが3ppm/K、Cuが16.5ppm/K)、環境温度やデバイスの発熱により熱応力がAg焼成層20にかかり、Ag焼成層20の劣化が観測される。
【0075】
第1~第3の実施の形態に係るパワーモジュールにおいては、CuとSiC間の熱応力を柔らかいアルミニウム緩和層24Uにより緩和可能である。さらに、第3の実施の形態のようにアルミニウム緩和層24U上にあらかじめAg焼成層20を備える構造を採用しても良い。
【0076】
(熱サイクルテスト)
第1~第3の実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、熱サイクルテストにおける温度プロファイル例は、
図8に示すように表される。すなわち、
図8に示すように、-50℃~200℃の範囲で熱サイクルテストを行った。熱サイクルの1サイクルの周期は80分であり、その内訳は、マイナス50℃で30分、マイナス50℃からプラス200℃までの昇温時間10分、プラス200℃で30分、プラス200℃からマイナス50℃までの冷却時間10分である(
図8参照)。
【0077】
(超音波探傷装置による内部観察)
超音波探傷装置(SAT:Scanning Acoustic Tomography)による内部観察のための実験系の模式的説明図は、
図9(a)に示すように表され、内部観察された画像の模式図は、
図9(b)に示すように表され、サンプルの模式的断面構造は、
図9(c)に示すように表される。
図9(a)においては、厚銅層18Aと、厚銅層18A上にAg焼成層20を接合層として形成された半導体デバイス22とを備える比較例に係るパワーモジュールに対して、超音波プローブ29を走査して内部観察するためのSAT実験系の模式的構造が示されている。
【0078】
比較例に係るパワーモジュールにおいては、環境温度やデバイスの発熱により熱応力がAg焼成層20にかかり、
図9(a)および
図9(b)に示すように、Ag焼成層20中にクラック23Bが形成され、Ag焼成層20が劣化し易い。
【0079】
(厚銅基板:比較例1)
厚銅層18A上にAg焼成層20を接合層として半導体デバイス22を搭載した比較例1に係るパワーモジュールの初期状態のSAT画像例は、
図10(a)に示すように表され、
図10(a)を説明するための線図は、
図10(b)に示すように表される。また、サンプルの模式的断面構造は、
図10(c)に示すように表される。
【0080】
比較例1に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果を示す図であり、200サイクル(-50℃~+300℃、30分)後の接合層の劣化を示すSAT画像例は、
図11(a)に示すように表され、
図11(a)を説明するための線図は、
図11(b)に示すように表される。また、サンプルの模式的断面構造は、
図11(c)に示すように表される。
図11(a)および
図11(b)に示すように、200サイクル後(-50℃~+300℃、30分)の結果より、厚銅基板では、接合層の劣化が顕著である。
【0081】
(DBA基板)
セラミックス基板17と、セラミックス基板17の上下にアルミニウム層24A・24Bを形成したDBA(Direct Bonded Aluminum)基板を用い、DBA基板上に半導体デバイス22を搭載したパワーモジュールの初期状態のSAT画像例は、
図12(a)に示すように表され、
図12(a)を説明するための線図は、
図12(b)に示すように表される。また、サンプルの模式的断面構造は、
図12(c)に示すように表される。DBA基板上に半導体デバイス22を搭載したパワーモジュール構造は、アルミニウム層24A・24Bを備えるセラミックス基板17を用いており、実施の形態に係るパワーモジュールと同様の緩和効果が見られる。
【0082】
DBA基板上に半導体デバイス22を搭載したパワーモジュールの熱サイクルテスト結果であり、200サイクル(-50℃~+300℃、30分)後のSAT画像例は、
図13(a)に示すように表され、
図13(a)を説明するための線図は、
図13(b)に示すように表される。また、サンプルの模式的断面構造は、
図13(c)に示すように表される。ここで、実験に用いたDBA基板のアルミニウム層24A・24Bの厚さは、約0.4mm、セラミックス基板17の厚さは、約0.635mmである。
【0083】
図13(a)および
図13(b)に示すように、200サイクル後(-50℃~+300℃、30分)の結果より、DBA基板における上側のアルミニウム層24Aは、実施の形態に係るパワーモジュール1におけるアルミニム緩和層24Uと同様の働きをする。すなわち、アルミニウム緩和層24Uによる緩和効果と同様の緩和効果が見られる。
【0084】
(厚銅化セラミックス基板:比較例2)
セラミックス基板17と、セラミックス基板17の上下に厚銅層14B・18Bを形成した厚銅化セラミックス基板を用い、厚銅層18B上にAg焼成層20を介して半導体デバイス22を搭載した比較例2に係るパワーモジュールにおいて、50サイクル(-50℃~+200℃)後のCu/SiNセラミックス間の劣化を示すSAT画像例は、
図14(a)に示すように表され、
図14(a)を説明するための線図は、
図14(b)に示すように表される。また、サンプルの模式的断面構造は、
図14(c)に示すように表される。
【0085】
また、比較例2に係るパワーモジュールにおいて、100サイクル(-50℃~+200℃)後のCu/SiNセラミックス間の劣化を示すSAT画像例は、
図15(a)に示すように表され、
図15(a)を説明するための線図は、
図15(b)に示すように表される。また、サンプルの模式的断面構造は、
図15(c)に示すように表される。
【0086】
図14(a)および
図14(b)、
図15(a)および
図15(b)に示すように、熱衝撃試験(-50℃~+200℃)の結果より、セラミックス基板を厚銅化すると、セラミックス凝集破壊により、セラミックス基板の信頼性が低下することが観測される。凝集破壊とは、物質と物質の界面ではなく物質自身が破壊してちぎれる現象である。セラミックス凝集破壊とはセラミックスであるSiNの内部が破壊していることを示す。
【0087】
セラミックス基板を厚銅化し、半導体デバイスを搭載した比較例2に係るパワーモジュールの初期状態のSAT画像例は、
図16(a)に示すように表され、
図16(a)を説明するための線図は、
図16(b)に示すように表される。また、サンプルの模式的断面構造は、
図16(c)に示すように表される。
【0088】
また、セラミックス基板を厚銅化し、半導体デバイスを搭載した比較例2に係るパワーモジュールにおいて、200サイクル(-50℃~+300℃、30分)後の接合層の劣化を示すSAT画像例は、
図17(a)に示すように表され、
図17(a)を説明するための線図は、
図17(b)に示すように表される。また、サンプルの模式的断面構造は、
図17(c)に示すように表される。
【0089】
図16(a)および
図16(b)、
図17(a)および
図17(b)に示すように、200サイクル(-50℃~+300℃、30分)の結果より、セラミックス基板においても厚銅化することにより、接合層の劣化が顕著となる。
【0090】
ここで、接合層の劣化とはAg焼成層20の劣化のことである。CuとSiCの線膨張係数(温度変化に対する材料の伸び率)が異なるため(SiCが3ppm/K、Cuが16.5ppm/K)、環境温度やデバイスの発熱により熱応力がAg焼成層20にかかり、Ag焼成層20の劣化が観測される。
【0091】
第1~第3の実施の形態に係るパワーモジュールにおいては、CuとSiC間の熱応力を柔らかいアルミニウム緩和層24Uにより緩和可能である。
【0092】
(熱抵抗シミュレーション)
第1の実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、アルミニウム緩和層24Uの厚さtAをパラメータとした熱抵抗RTj-wと第2厚銅層18の厚さt1の関係のシミュレーション結果は、
図18に示すように表される。また、第1の実施の形態に係るパワーモジュールにおいて、アルミニウム緩和層24Uの厚さtAおよび第2厚銅層18の厚さt1のシミュレーション条件を説明するための図は、
図19に示すように表され、熱抵抗RTj-wのシミュレーション条件を説明するための図は、
図20に示すように表される。尚、
図19においては、メッキ層30は図示を省略している。また、
図20においては、第3の実施の形態に係るパワーモジュール1を水冷式の冷却器10に搭載する例を図示しているが、第1~第2の実施の形態に係るパワーモジュール1も
図20と同様に、水冷式の冷却器10に搭載可能である。
【0093】
熱抵抗シミュレーション結果において、境界条件は、裏面65℃、熱伝達率=5000(W/m2K)、アルミニウム緩和層24Uの厚さtAは、0.03mm、0.05mm、0.1mm、0.5mm、1mmとした。
【0094】
裏面65℃とは、冷却器10の下層面に境界条件として65℃固定を想定している。水冷式のため、熱伝達率=5000(W/m
2K)と設定している。すなわち、
図20に示すように、アルミニウム製の冷却器10において、冷却水10Wとして、冷却水10Wの温度を65℃固定とする。熱伝達率とは2つの物体の接触面を通過する熱の伝わり易さのことであり、熱伝導率とは異なる。
【0095】
熱抵抗シミュレーションでは、SiC半導体デバイス22/アルミニウム緩和層24U/第2厚銅層18/絶縁シート層16/第1厚銅層14/SnAgCu半田層12/アルミニウム冷却器10の構造において、SiC半導体デバイス22の厚さ=350μm/アルミニウム緩和層24Uの厚さtAパラメータ/第2厚銅層18の厚さt1パラメータ/絶縁シート層16の厚さ=0.1mm/第1厚銅層14の厚さt2=0.3mm/SnAgCu半田層12の厚さ=0.2mm/アルミニウム冷却器10の厚さ=1mmにて計算している。
【0096】
比較例1では、SiC半導体デバイス22/Ag焼成層20/第2厚銅層18A/絶縁シート層16A/第1厚銅層14A/SnAgCu半田層12/アルミニウム冷却器10の構造において、SiC半導体デバイス22の厚さ=350μm/Ag焼成層20の厚さ=60μm/第2厚銅層18Aの厚さ=3mm/絶縁シート層16Aの厚さ=0.1mm/第1厚銅層14の厚さ=0.3mm/SnAgCu半田層12の厚さ=0.2mm/アルミニウム冷却器10の厚さ=1mmにて計算している。
【0097】
熱抵抗RTj-wは、SiC半導体デバイス22のTj(ジャンクション温度)とTw(冷却水温度)間の熱抵抗を表す。
【0098】
第1の実施の形態に係るパワーモジュールにおいては、アルミニウム緩和層24Uの厚さtAと第2厚銅層18の厚さt1を調節することによって、比較例1と同等の熱抵抗が得られる。ここで、比較例1とは、
図5(a)に示す厚銅+絶縁層構造に対応している。
【0099】
熱抵抗シミュレーション結果より、第1の実施の形態に係るパワーモジュールにおいては、第2厚銅層18の厚さt1は、1mm~3mmの範囲を備えることが望ましい。
【0100】
また、熱抵抗シミュレーション結果より、第1の実施の形態に係るパワーモジュールにおいては、アルミニウム緩和層24Uの厚さは、0.01mm~0.5mmの範囲を備えることが望ましい。
【0101】
尚、シミュレーションにおいては、第1厚銅層14の厚さは、例えば、約0.3mm固定として算出したが、1mm~2mm内に最適値がある。
【0102】
(固相拡散接合後の食い込み例)
固相拡散接合を形成後の半導体デバイス22のアルミニウム緩和層24への食い込みに関して、プロセス時の加圧力を変更してDBA基板上に接合したサンプルを例として説明する。
【0103】
DBA基板(Al/SiN/Al)上にAg焼成層20を介して半導体デバイス22を形成するパワーモジュールの模式的断面構造は、
図21(a)に示すように表され、半導体デバイス22/Ag焼成層20/Al層24Aの接合部の断面顕微鏡写真例(加圧圧力22MPa)は、
図21(b)に示すように表され、
図21(b)を説明するための線図は
図21(c)に示すように表される。
【0104】
また、
図21に対応するパワーモジュールにおいて、半導体デバイス22/Ag焼成層20/Al層24Aの接合部の断面SEM写真例(加圧圧力22MPa)は、
図22(a)に示すように表され、
図22(a)を説明するための線図は、
図22(b)に示すように表される。
図21・
図22に示す例では、加圧圧力は、22MPaであり、約10μm以下の食い込み量が観測される。
【0105】
DBA基板(Al/SiN/Al)上にAg焼成層20を介して半導体デバイス22を形成するパワーモジュールにおいて、半導体デバイス22/Ag焼成層20/Al層24Aの接合部の断面顕微鏡写真例(加圧圧力38MPa)は、
図23(a)に示すように表され、
図23(a)を説明するための線図は
図23(b)に示すように表される。
図23に示す例では、加圧圧力は、38MPaであり、約50μm~60μm程度の食い込み量が観測される。
【0106】
DBA基板(Al/SiN/Al)上にAg焼成層20を介して半導体デバイス22を形成するパワーモジュールにおいて、半導体デバイス22/Ag焼成層20/Al層24Aの接合部の断面顕微鏡写真例(加圧圧力86MPa)は、
図24(a)に示すように表され、
図24(a)を説明するための線図は
図24(b)に示すように表される。
図24に示す例では、加圧圧力は、86MPaであり、約50μm~60μm程度の食い込み量が観測される。
図24に示す例では、半導体デバイス22の側壁部において、Al層24Aの盛り上がり構造が観測されているが、平坦部に比べた食い込み量は、約50μm~60μm程度である。
【0107】
(冷却器搭載例)
(構成例1)
冷却器10に搭載可能な第3の実施の形態に係るパワーモジュール(構成例1)は、
図20に示すように、冷却器10と、冷却器10上に配置された第1サーマルコンパウンド層12THとを備える。ここで、厚銅基板2は、冷却器10上に第1サーマルコンパウンド層12THを介して配置される。その他の構成は、
図4(a)に示す第3の実施の形態に係るパワーモジュールと同様である。また、第1サーマルコンパウンド層12THの代わりに、半田層、銀焼成層若しくは拡散接合層を備え、厚銅基板2は、冷却器10上に半田層、銀焼成層若しくは拡散接合層のいずれかを介して配置されていても良い。
【0108】
更に、冷却器10に搭載可能な第3の実施の形態に係るパワーモジュール(構成例1)は、
図20に示すように、第2厚銅層18を挟んで、第1アルミニウム緩和層24Uに対向して配置される第2アルミニウム緩和層24Dを備えていても良い。尚、構成例1では、水冷式の例を開示したが、空冷式を採用しても良い。また、構成例1においても搭載するパワーモジュールは、第3の実施の形態の変形例に係るパワーモジュールであっても良い。また、構成例1において、冷却器10に搭載するパワーモジュールは、第1~第2の実施の形態およびその変形例に係るパワーモジュールであっても良い。
【0109】
(構成例2)
冷却器10に搭載可能な第3の実施の形態に係るパワーモジュール(構成例2)は、
図25に示すように、冷却器10と、冷却器10上に配置された第1サーマルコンパウンド層12THとを備える。ここで、厚銅基板2は、冷却器10上に第1サーマルコンパウンド層12THを介して配置される。その他の構成は、
図4(a)に示す第3の実施の形態に係るパワーモジュールと同様である。
【0110】
更に、冷却器10に搭載可能な第3の実施の形態に係るパワーモジュール(構成例2)は、
図25に示すように、第2厚銅層18を挟んで、第1アルミニウム緩和層24Uに対向して配置される第2アルミニウム緩和層24Dを備えていても良い。尚、構成例2では、空冷式の例を開示したが、水冷式を採用しても良い。また、構成例2においても搭載するパワーモジュールは、第3の実施の形態の変形例に係るパワーモジュールであっても良い。また、構成例2において、冷却器10に搭載するパワーモジュールは、第1~第2の実施の形態およびその変形例に係るパワーモジュールであっても良い。
【0111】
(構成例3)
冷却器10に搭載可能な実施の形態に係るパワーモジュール(構成例3)は、
図26に示すように、冷却器10と、冷却器10上に配置された絶縁シート16とを備える。ここで、第2厚銅層18は、冷却器10上に絶縁シート16を介して配置される。ここで、構成例3は、
図26に示すように、厚銅基板2として、第2厚銅層18を用いる例に対応している。その他の構成は、
図4(a)に示す第3の実施の形態に係るパワーモジュールと同様である。
【0112】
更に、冷却器10に搭載可能な実施の形態に係るパワーモジュール(構成例3)は、
図26に示すように、第2厚銅層18を挟んで、第1アルミニウム緩和層24Uに対向して配置される第2アルミニウム緩和層24Dを備えていても良い。尚、構成例3では、空冷式の例を開示したが、水冷式を採用しても良い。また、構成例3においても搭載するパワーモジュールは、第3の実施の形態の変形例に係るパワーモジュールであっても良い。また、構成例3において、冷却器10に搭載するパワーモジュールは、第1~第2の実施の形態およびその変形例に係るパワーモジュールであっても良い。
【0113】
(構成例4)
冷却器10に搭載可能な実施の形態に係るパワーモジュール(構成例4)は、
図27に示すように、冷却器10と、冷却器10上に配置された絶縁基板2Bとを備える。ここで、絶縁基板2Bは、冷却器10上に第1サーマルコンパウンド層12THを介して配置される。
【0114】
ここで、構成例4は、
図27に示すように、厚銅基板2として、第2厚銅層18を用いる例に対応している。更に、構成例4は、絶縁基板2B上に配置された第2サーマルコンパウンド層16THを備え、厚銅基板2は、第2サーマルコンパウンド層16TH上に配置されていても良い。
【0115】
絶縁基板2Bは、例えば、セラミックス基板17と、セラミックス基板17の表面に配置されたCu層18Bと、セラミックス基板17の裏面に配置されたCu層14Bとを備えるDBC(Direct Bonding Copper)基板を備えていても良い。なお、絶縁基板2Bには、AMB(Active Metal Brazed、Active Metal Bond)基板、若しくはDBA基板なども適用できる。また、絶縁基板2Bは、セラミックス基板17と、セラミックス基板17の表面に配置されたCu層18Bと、セラミックス基板17の裏面に配置されたCu層14Bとを備えるDBC(Direct Bonding Copper)基板を備えていても良い。また、絶縁基板2Bは、セラミックス板17(上下に銅箔などが接合されていないもの)を備えていても良い。その他の構成は、
図4(a)に示す第3の実施の形態に係るパワーモジュールと同様である。
【0116】
更に、冷却器10に搭載可能な実施の形態に係るパワーモジュール(構成例4)は、
図27に示すように、第2厚銅層18を挟んで、第1アルミニウム緩和層24Uに対向して配置される第2アルミニウム緩和層24Dを備えていても良い。尚、構成例4では、空冷式の例を開示したが、水冷式を採用しても良い。また、構成例4においても搭載するパワーモジュールは、第3の実施の形態の変形例に係るパワーモジュールであっても良い。また、構成例4において、冷却器10に搭載するパワーモジュールは、第1~第2の実施の形態およびその変形例に係るパワーモジュールであっても良い。
【0117】
以上の構成例1~4において、冷却器10は、水冷式若しくは空冷式であり、車載機器に用いられる。
【0118】
(パワーモジュールの製造方法)
実施の形態に係るパワーモジュールの製造方法であって、Al/Cu材の製造工程は
図28(a)に示すように表され、絶縁シート貼付け工程は
図28(b)に示すように表され、半導体デバイス接合形成工程は
図28(c)に示すように表され、樹脂モールド形成工程は
図28(d)に示すように表される。
図28においては、第1の実施の形態や第3の実施の形態における加熱・加圧工程により、半導体デバイス22がアルミニウム緩和層24Uに一部埋め込まれる構造を説明しており、メッキ層30やAg焼成層20は、図示を省略している。
【0119】
実施の形態に係るパワーモジュールの製造方法は、
図28(a)~
図28(c)に示すように、第2厚銅層18上に第1アルミニウム緩和層24Uを形成する工程と、第1厚銅層14上に絶縁シート層16を介して第2厚銅層18を配置する工程と、第1アルミニウム緩和層24U上に半導体デバイス22を配置し、加熱しながら加圧する加熱・加圧プロセスにより半導体デバイス22を第第1アルミニウム緩和層24Uと接合する工程と、半導体デバイス22の電極と外部端子とを接続する工程とを有する。
【0120】
更に、図示は省略されているが、半導体デバイス22に対するワイヤボンディングおよび端子接合の形成工程を有する。更に、
図28(d)に示すように、パワーモジュールの外部端子の一部を除くパワーモジュール全体を樹脂層300により、樹脂封止する工程を有する。加熱・加圧プロセスの加熱温度は、例えば、約300℃~350℃程度を有し、加圧圧力は、例えば、約10MPa~80MPa程度を有していても良い。
【0121】
実施の形態に係るパワーモジュールの別の製造方法であって、Al/Cu材の製造工程は
図29(a)に示すように表され、半導体デバイス接合形成工程は
図29(b)に示すように表され、絶縁シート貼付け工程は
図29(c)に示すように表され、樹脂モールド形成工程は
図29(d)に示すように表される。
図29においても、第1の実施の形態や第3の実施の形態における加熱・加圧工程により、半導体デバイス22がアルミニウム緩和層24Uに一部埋め込まれる構造を説明しており、メッキ層30やAg焼成層20は、図示を省略している。
【0122】
実施の形態に係るパワーモジュールの別の製造方法は、
図29(a)~
図29(c)に示すように、第2厚銅層18上に第1アルミニウム緩和層24Uを形成する工程と、第1アルミニウム緩和層24U上に半導体デバイス22を配置し、加熱しながら加圧する加熱・加圧プロセスにより半導体デバイス22を第1アルミニウム緩和層24Uと接合する工程と、第1厚銅層14上に絶縁シート層16を介して第2厚銅層18を配置する工程と、半導体デバイス22の電極と外部端子とを接続する工程とを有する。
【0123】
更に、図示は省略されているが、半導体デバイス22に対するワイヤボンディングおよび端子接合の形成工程を有する。更に、
図29(d)に示すように、パワーモジュールの外部端子の一部を除くパワーモジュール全体を樹脂層300により、樹脂封止する工程を有する。加熱・加圧プロセスの加熱温度は、例えば、約300℃~350℃程度を有し、加圧圧力は、例えば、約10MPa~80MPa程度を有していても良い。
【0124】
また、樹脂層300としては、SiC系半導体デバイスに適用可能なトランスファモールド樹脂、熱硬化樹脂などを使用可能である。また、 シリコンゲルなどのシリコーン系樹脂を部分的に若しくはケース型パワーモジュールを採用して全体に適用しても良い。
【0125】
(パワーモジュールの具体例)
(ワンインワン構成)
実施の形態に係るパワーモジュール1であって、1 in 1モジュールの模式的平面パターン構成は
図30(a)に示すように表され、
図30(a)のI-I線に沿う模式的断面構造は
図30(b)に示すように表される。更に、実施の形態に係るパワーモジュールであって、
図30(a)および
図30(b)に対応する1 in 1モジュールの模式的鳥瞰構成は、
図31に示すように表される。
【0126】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図30(a)・
図30(b)および
図31に示すように、平板状の第1厚銅層14と、第1厚銅層14上に配置された絶縁シート層16と、絶縁シート層16上に配置され、パターン形成された第2厚銅層18と、第2厚銅層18上に配置された第1アルミニウム緩和層24Uと、第1アルミニウム緩和層24U上に配置された半導体デバイスQA(22)・QB(22)とを備える。また、半導体デバイスQA(22)・QB(22)は、第1アルミニウム緩和層24Uと接合している。
【0127】
また、第1アルミニウム緩和層24U上に配置されたメッキ層30(図示省略)を備え、半導体デバイス22は、メッキ層30を介して、第1アルミニウム緩和層24Uと接合されていても良い。
【0128】
また、第1アルミニウム緩和層24U上に配置されたAg焼成層20(図示省略)を備え、半導体デバイスQA(22)・QB(22)は、Ag焼成層20を介して、第1アルミニウム緩和層24Uと接合されていても良い。
【0129】
また、メッキ層30(図示省略)上に配置されたAg焼成層20(図示省略)を備え、半導体デバイスQA(22)・QB(22)は、Ag焼成層20およびメッキ層30を介して、第1アルミニウム緩和層24Uと接合されていても良い。
【0130】
半導体デバイスQA(22)・QB(22)の一部は、第1アルミニウム緩和層24Uに食い込んで固着していても良い。
【0131】
また、半導体デバイスQA(22)・QB(22)と第1アルミニウム緩和層24Uとの接合面は、一体化していても良い。すなわち、拡散接合若しくは固相拡散接合により接合されていても良い。
【0132】
また、半導体デバイスQA(22)・QB(22)は、例えば、約0μm~100μm程度食い込んで接合していても良い。或いは、半導体デバイスQA(22)・QB(22)の厚さの約1/3~1/2程度第1アルミニウム緩和層24Uに食い込んで接合していても良い。
【0133】
絶縁シート層16上に配置された第2アルミニウム緩和層24D(図示省略)を備え、第2厚銅層18は、第2アルミニウム緩和層24D上に圧延接着されていても良い。上記の圧延技術による接着の代わりに、スパッタリング技術、コールドスプレー技術若しくは溶射技術を用いて接着されていても良い。
【0134】
また、半導体デバイスQA(22)・QB(22)は、その上面にソース電極またはエミッタ電極とゲート電極が形成され、その下面にドレイン電極またはコレクタ電極が形成されたFETまたはIGBTであり、絶縁シート層16上に配置され、第2厚銅層18と同一材料によりパターン形成され、ゲート電極に電気的に接続されるゲート信号用配線パターンおよびソース電極またはエミッタ電極に電気的に接続されるソースまたはエミッタ信号用配線パターンとを備えていても良い。
【0135】
半導体デバイスQA(22)・QB(22)は複数のチップを備えていても良い。
【0136】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図30(a)・
図30(b)および
図31に示すように、絶縁シート層16上に配置され、第2厚銅層18と同一材料によりパターン形成されたゲート信号用配線パターン18(GP)およびソース信号用配線パターン18(SP)とを備えていても良い。
【0137】
第1の実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図30(a)・
図30(b)および
図31に示すように、半導体デバイスQA(22)・QB(22)が第1アルミニウム緩和層24U上に配置され、半導体デバイスQA(22)・QB(22)のドレイン電極が第1アルミニウム緩和層24Uと加熱・加圧プロセスによる拡散接合若しくは固相拡散接合により接合されている。
【0138】
ここで、ゲート信号用配線パターンGPは半導体デバイスQA(22)・QB(22)のゲート電極とゲートボンディングワイヤGWA・GWBを介して接続され、ソース信号用配線パターンSPは半導体デバイスQA(22)・QB(22)のソース電極とソースボンディングワイヤSWA・SWBを介して接続されている。尚、ここでは図示は省略するが、これらのボンディングワイヤの代わりに、板状電極と柱状電極の組合せ構造や、リードフレームなどを用いても良い。
【0139】
更に、半導体デバイスQA(22)・QB(22)のドレイン電極が接続される第1アルミニウム緩和層24Uには、はんだ付けなどにより、ドレイン端子DTが接合され、半導体デバイスQA(22)・QB(22)のソース電極とソースボンディングワイヤSWA・SWBを介して接続されるソース信号用配線パターンSPには、はんだ付けなどにより、ソース端子STが接合される。また、図示は省略されているが、ゲート信号用配線パターンGPには、はんだ付けなどにより、ゲート端子GT1が接合される。
【0140】
ここで、半導体デバイス22としては、Si系IGBT、Si系MOSFET、SiC系MOSFET、SiC系IGBT、GaN系FETのいずれか、またはこれらのうちの異なる複数を備えていても良い。
【0141】
実施の形態に係るパワーモジュールであって、1 in 1モジュール50のSiC MOSFETの模式的回路表現は、
図32(a)に示すように表され、1 in 1モジュール50のIGBTの模式的回路表現は、
図32(b)に示すように表される。
図32(a)には、MOSFETに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。MOSFETの主電極は、ドレイン端子DTおよびソース端子STで表される。同様に、
図32(b)には、IGBTに逆並列接続されるダイオードDIが示されている。IGBTの主電極は、コレクタ端子CTおよびエミッタ端子ETで表される。
【0142】
また、実施の形態に係るパワーモジュールにであって、1 in 1モジュール50のSiC MOSFETの詳細回路表現は、
図33に示すように表される。
【0143】
1 in 1モジュール50は、例えば、1個のMOSFETが1つのモジュールに内蔵されている。一例として、5チップ(MOSFET×5)搭載可能であり、それぞれのMOSFETは、5個まで並列接続可能である。なお、5チップの内、一部をダイオードDI用として搭載することも可能である。
【0144】
さらに詳細には、
図33に示すように、MOSFETQに並列にセンス用MOSFETQsが接続される。センス用MOSFETQsは、MOSFETQと同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されている。
図33において、SSはソースセンス端子、CSは電流センス端子であり、Gはゲート信号端子である。実施の形態に係るパワーモジュールにおいても、MOSFETQには、センス用MOSFETQsが同一チップ内に、微細トランジスタとして形成されていても良い。
【0145】
(ツーインワン構成)
実施の形態に係るパワーモジュールであって、2 in 1モジュールの模式的平面パターン構成は
図34に示すように表され、模式的鳥瞰構成は
図35に示すように表される。
【0146】
実施の形態に係るパワーモジュール1であって、ハーフブリッジ内蔵モジュールにおいて、樹脂層を形成前の模式的平面パターン構成は、
図34に示すように表される。実施の形態に係るパワーモジュール1は、ハーフブリッジ内蔵モジュールの構成を備え、2個のSiC MOSFETQ1・Q4が1つのモジュールに内蔵されている。
図34においては、SiC MOSFETQ1・Q4は、それぞれ2チップ並列に配置されている例が示されている。
【0147】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図34および
図35に示すように、厚銅基板2(18・16・14)の第1の辺に配置された正側電力端子Pおよび負側電力端子Nと、第1の辺に隣接する第2の辺に配置されたゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1と、第1の辺に対向する第3の辺に配置された出力端子O(D4)・O(S1)と、第2の辺に対向する第4の辺に配置されたゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4とを備える。
【0148】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図34・
図35に示すように、第1厚銅層14と、平板状の第1厚銅層14上に配置された絶縁シート層16と、絶縁シート層16上に配置され、パターン形成された第2厚銅層18と、第2厚銅層18上に配置された第1アルミニウム緩和層24Uと、第1アルミニウム緩和層24U上に配置された半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)とを備える。ここで、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)は、第1アルミニウム緩和層24Uと接合している。
【0149】
また、第1アルミニウム緩和層24U上に配置されたメッキ層30(図示省略)を備え、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)は、メッキ層30を介して、第1アルミニウム緩和層24Uと接合されていても良い。
【0150】
また、第1アルミニウム緩和層24U上に配置されたAg焼成層20(図示省略)を備え、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)は、Ag焼成層20を介して、第1アルミニウム緩和層24Uと接合されていても良い。
【0151】
また、メッキ層30(図示省略)上に配置されたAg焼成層20(図示省略)を備え、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)は、Ag焼成層20およびメッキ層30を介して、第1アルミニウム緩和層24Uと接合されていても良い。
【0152】
半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)の一部は、第1アルミニウム緩和層24Uに食い込んで固着していても良い。
【0153】
また、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)と第1アルミニウム緩和層24Uとの接合面は、一体化していても良い。すなわち、拡散接合若しくは固相拡散接合により接合されていても良い。
【0154】
また、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)は、例えば、約0μm~100μm程度食い込んで接合していても良い。或いは、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)の厚さの約1/3~1/2程度第1アルミニウム緩和層24Uに食い込んで接合していても良い。
【0155】
絶縁シート層16上に配置された第2アルミニウム緩和層24D(図示省略)を備え、第2厚銅層18は、第2アルミニウム緩和層24D上に圧延接着されていても良い。上記の圧延技術による接着の代わりに、スパッタリング技術、コールドスプレー技術若しくは溶射技術を用いて接着されていても良い。
【0156】
また、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)は、その上面にソース電極またはエミッタ電極とゲート電極が形成され、その下面にドレイン電極またはコレクタ電極が形成されたFETまたはIGBTであり、絶縁シート層16上に配置され、第2厚銅層18と同一材料によりパターン形成され、ゲート電極に電気的に接続されるゲート信号用配線パターンおよびソース電極またはエミッタ電極に電気的に接続されるソースまたはエミッタ信号用配線パターンとを備えていても良い。
【0157】
半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)は複数のチップを備えていても良い。
【0158】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図34・
図35に示すように、絶縁シート層16上に配置され、第2厚銅層18と同一材料によりパターン形成されたゲート信号用配線パターンGP1・GP4およびソース信号用配線パターンSP1・SP4とを備える。
【0159】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図34・
図35に示すように、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)が第1アルミニウム緩和層24U上に配置され、半導体デバイスQ1(22)・Q4(22)のドレイン電極が第1アルミニウム緩和層24Uと加熱・加圧プロセスによる拡散接合若しくは固相拡散接合により接合されている。
【0160】
また、半導体デバイスQ1・Q4は、第2厚銅層18上に配置されたドレインパターンD1(24U)・D4(24U)上にフェースアップに配置される。
【0161】
ここで、ゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1は、半導体デバイスQ1のゲート信号用配線パターンGP1・ソース信号用配線パターンSP1に接続され、ゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4は、半導体デバイスQ4のゲート信号用配線パターンGP4・ソース信号用配線パターンSP4に接続される。
【0162】
図34・
図35に示すように、SiC MOSFETQ1・Q4から、第2厚銅層18上に配置されたドレインパターンD4(24U)・ソースパターンS4に向けてソースボンディングワイヤSWO・SWNが接続され、ゲート信号用配線パターンGP1・GP4に向けてゲートボンディングワイヤGW1・GW4が接続され、ソース信号用配線パターンSP1・SP4に向けてソースボンディングワイヤSW1・SW4が接続される。
【0163】
また、ゲート信号用配線パターンGP1・GP4には、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT4が半田付けなどによって接続され、ソース信号用配線パターンSP1・SP4には、外部取り出し用のソースセンス端子SST1・SST4が半田付けなどによって接続される。
【0164】
また、ドレインパターンD1(24U)には、正側電力端子Pが半田付けなどによって接続され、ソースパターンS4には、負側電力端子Nが半田付けなどによって接続され、ドレインパターンD4(24U)には、出力端子O(S1)・O(D4)が半田付けなどによって接続される。
【0165】
正側電力端子P・負側電力端子N、出力端子O(S1)・O(D4)、ゲート端子GT1・GT4およびSST1・SST4は、例えば、Cuで形成可能である。
【0166】
ソースボンディングワイヤSWO・SWN・SW1・SW4およびゲートボンディングワイヤGW1・GW4は、例えば、Al、AlCuなどで形成可能である。
【0167】
ここで、半導体デバイス22としては、Si系IGBT、Si系MOSFET、SiC系MOSFET、SiC系IGBT、GaN系FETのいずれか、またはこれらのうちの異なる複数を備えていても良い。
【0168】
また、半導体デバイスを第1電源と第2電源との間に直列に接続し、直列接続された半導体デバイスの接続点を出力とするスイッチング回路を複数用いると共に、半導体デバイスの各ゲートを個別に制御してインバータ回路装置またはコンバータ回路を構成することも可能である。
【0169】
なお、本実施の形態に係るパワーモジュール1においては、半導体デバイスを用いて、主として1 in 1モジュール、2 in 1モジュールを構成可能であることを説明したが、これに限らず、例えばフォーインワン(4 in 1)モジュール、シックスインワン(6 in 1)モジュール、6 in 1モジュールにスナバコンデンサなどを備えたセブンインワン(7 in 1)モジュール、エイトインワン(8 in 1)モジュール、トゥエルブインワン(12 in 1)モジュール、フォーティーンイン(14 in 1)モジュールなどのいずれかを構成することもできる。
【0170】
(回路構成)
実施の形態に係るパワーモジュールであって、2 in 1モジュール100のSiC MOSFETの模式的回路表現は、
図36(a)に示すように表され、2 in 1モジュール100のIGBTの模式的回路表現は、
図36(b)に示すように表される。
【0171】
実施の形態に係るパワーモジュールであって、2個の半導体デバイスQ1・Q4が1つのモールド樹脂に封止された2 in 1タイプのモジュールについて説明する。
【0172】
半導体デバイスQ1・Q4として、SiC MOSFETを適用した2 in 1モジュール100は、
図36(a)に示すように、2個のSiC MOSFETQ1・Q4が内蔵されたハーフブリッジ構成を備える。
【0173】
ここで、モジュールは、1つの大きなトランジスタとみなすことができるが、内蔵トランジスタが1チップまたは複数チップの場合がある。すなわち、モジュールには、1 in 1、2 in 1、4 in 1、6 in 1などがあり、例えば、1つのモジュールにおいて、2個分のトランジスタ(チップ)を内蔵したモジュールは2 in 1、2 in 1を2組み内蔵したモジュールは4 in 1、2 in 1を3組み内蔵したモジュールは6 in 1と呼ばれる。
【0174】
図36(a)に示すように、2 in 1モジュール100には、2個のSiC MOSFETQ1・Q4と、SiC MOSFETQ1・Q4に逆並列接続されるダイオードDI1・DI4が内蔵される。
図36(a)において、G1はMOSFETQ1のゲート信号用のリード端子であり、S1はMOSFETQ1のソース信号用のリード端子である。同様に、G4はMOSFETQ4のゲート信号用のリード端子であり、S4はMOSFETQ4のソース信号用のリード端子である。Pは正側電力端子であり、Nは負側電力端子であり、Oは出力端子電極である。
【0175】
また、半導体デバイスQ1・Q4として、IGBTを適用した2 in 1モジュール100には、
図36(b)に示すように、2個のIGBTQ1・Q4と、IGBTQ1・Q4に逆並列接続されるダイオードDI1・DI4が内蔵される。
図36(b)において、G1はIGBTQ1のゲート信号用のリード端子であり、E1はIGBTQ1のエミッタ信号用のリード端子である。同様に、G4はIGBTQ4のゲート信号用のリード端子であり、E4はIGBTQ4のエミッタ信号用のリード端子である。
【0176】
実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
【0177】
(デバイス構造)
実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ1・Q4の例であって、ソースパッド電極SPD、ゲートパッド電極GPDを含むSiC MOSFET130Aの模式的断面構造は、
図37に示すように表される。
【0178】
図37に示すように、SiC MOSFET130Aは、n
-高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn
+ドレイン領域37と、n
+ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
【0179】
ゲートパッド電極GPDは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、ソースパッド電極SPDは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。また、ゲートパッド電極GPDおよびソースパッド電極SPDは、
図37に示すように、SiC MOSFET130Aの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
【0180】
なお、ゲートパッド電極GPDおよびソースパッド電極SPDの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のトランジスタ構造が形成されていても良い。
【0181】
さらに、
図37に示すように、中央部のトランジスタ構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にソースパッド電極SPDが延在して配置されていても良い。
【0182】
図37において、SiC MOSFET130Aは、プレーナゲート型のnチャネル縦型SiC MOSFETで構成されているが、後述する
図40に示すように、トレンチゲート型のnチャネル縦型SiC TMOSFET130Dなどで構成されていても良い。
【0183】
または、実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ1・Q4としては、SiC MOSFET130Aの代わりに、GaN系FETなどを採用することもできる。
【0184】
実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
【0185】
さらには、実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ1~Q6には、バンドギャップエネルギーが、例えば、1.1eV~8eVのワイドバンドギャップ型と称される半導体を用いることができる。
【0186】
同様に、実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ1・Q4の例であって、エミッタパッド電極EPD、ゲートパッド電極GPDを含むIGBT130Bの模式的断面構造は、
図38に示すように表される。
【0187】
図38に示すように、IGBT130Bは、n
-高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたエミッタ領域33Eと、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eと、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたp
+コレクタ領域37Pと、p
+コレクタ領域37Pに接続されたコレクタ電極38Cとを備える。
【0188】
ゲートパッド電極GPDは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続され、エミッタパッド電極EPDは、エミッタ領域33Eおよびpボディ領域32に接続されたエミッタ電極36Eに接続される。また、ゲートパッド電極GPDおよびエミッタパッド電極EPDは、
図38に示すように、IGBT130Bの表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
【0189】
なお、ゲートパッド電極GPDおよびエミッタパッド電極EPDの下方の半導体層31内には、図示していないが、微細構造のIGBT構造が形成されていても良い。
【0190】
さらに、
図38に示すように、中央部のIGBT構造においても、パッシベーション用の層間絶縁膜39上にエミッタパッド電極EPDが延在して配置されていても良い。
【0191】
図38において、IGBT130Bは、プレーナゲート型のnチャネル縦型IGBTで構成されているが、トレンチゲート型のnチャネル縦型IGBTなどで構成されていても良い。
【0192】
実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスQ2・Q5、および半導体デバイスQ3・Q6についても同様である。
【0193】
半導体デバイスQ1~Q6としては、SiC DIMOSFET、SiC TMOSFETなどのSiC系パワーデバイス、或いはGaN系HEMTなどのGaN系パワーデバイスを適用可能である。また、場合によっては、Si系MOSFETやSiC系IGBTなどのパワーデバイスも適用可能である。
【0194】
―SiC DIMOSFET―
実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC DIMOSFET130Cの模式的断面構造は、
図39に示すように表される。
【0195】
図39に示すSiC DIMOSFET130Cは、n
-高抵抗層からなる半導体層31と、半導体層31の表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn
+ソース領域33と、pボディ領域32間の半導体層31の表面上に配置されたゲート絶縁膜34と、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35と、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31の表面と反対側の裏面に配置されたn
+ドレイン領域37と、n
+ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
【0196】
図39において、SiC DIMOSFET130Cは、pボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn
+ソース領域33が、ダブルイオン注入(DII)で形成され、ソースパッド電極SPDは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
【0197】
図示を省略するゲートパッド電極GPDは、ゲート絶縁膜34上に配置されたゲート電極35に接続される。また、ソースパッド電極SPDおよびゲートパッド電極GPDは、
図39に示すように、SiC DIMOSFET130Cの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39上に配置される。
【0198】
SiC DIMOSFET130Cは、
図39に示すように、pボディ領域32に挟まれたn
-高抵抗層からなる半導体層31内に、破線で示されるような空乏層が形成されるため、接合型FET(JFET)効果に伴うチャネル抵抗R
JFETが形成される。また、pボディ領域32/半導体層31間には、
図39に示すように、ボディダイオードBDが形成される。
【0199】
―SiC TMOSFET―
実施の形態に係るパワーモジュールに適用可能な半導体デバイスの例であって、SiC TMOSFET130Dの模式的断面構造は、
図40に示すように表される。
【0200】
図40に示すSiC TMOSFET130Dは、n層からなる半導体層31Nと、半導体層31Nの表面側に形成されたpボディ領域32と、pボディ領域32の表面に形成されたn
+ソース領域33と、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介して形成されたトレンチゲート電極35TGと、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36と、半導体層31Nの表面と反対側の裏面に配置されたn
+ドレイン領域37と、n
+ドレイン領域37に接続されたドレイン電極38とを備える。
【0201】
図40において、SiC TMOSFET130Dは、pボディ領域32を貫通し、半導体層31Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁膜34および層間絶縁膜39U・39Bを介してトレンチゲート電極35TGが形成され、ソースパッド電極SPDは、ソース領域33およびpボディ領域32に接続されたソース電極36に接続される。
【0202】
図示を省略するゲートパッド電極GPDは、ゲート絶縁膜34上に配置されたトレンチゲート電極35TGに接続される。また、ソースパッド電極SPDおよびゲートパッド電極GPDは、
図40に示すように、SiC TMOSFET130Dの表面を覆うように、パッシベーション用の層間絶縁膜39U上に配置される。
【0203】
SiC TMOSFET130Dでは、SiC DIMOSFET130CのようなJFET効果に伴うチャネル抵抗R
JFETは形成されない。pボディ領域32/半導体層31N間には、
図39と同様に、ボディダイオードBDが形成される。
【0204】
(応用例)
実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータ40Aの回路構成において、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した回路構成例は、
図41(a)に示すように表される。同様に、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、電源端子PL・接地端子NL間にスナバコンデンサCを接続した3相交流インバータ40Bの回路構成例は、
図41(b)に示すように表される。
【0205】
パワーモジュールを電源Eと接続し、スイッチング動作を行うと、接続ラインの有するインダクタンスLによって、SiC MOSFETやIGBTのスイッチング速度が速いため、大きなサージ電圧Ldi/dtを生ずる。例えば、電流変化di=300Aとし、スイッチングに伴う時間変化dt=100nsecとすると、di/dt=3×109(A/s)となる。
【0206】
インダクタンスLの値により、サージ電圧Ldi/dtの値は変化するが、電源Eに、このサージ電圧Ldi/dtが重畳される。電源端子PL・接地端子NL間に接続されるスナバコンデンサCによって、このサージ電圧Ldi/dtを吸収することができる。
【0207】
(具体例)
次に、
図42を参照して、半導体デバイスとしてSiC MOSFETを適用した3相交流インバータ42Bについて説明する。
【0208】
図42に示すように、3相交流インバータ42Aは、ゲートドライバ(GD)180に接続されたパワーモジュール部200と、3相交流モータ部51と、電源もしくは蓄電池(E)53と、コンバータ55とを備える。パワーモジュール部200は、3相交流モータ部51のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
【0209】
ここで、GD180は、SiC MOSFETQ1・Q4、SiC MOSFETQ2・Q5、およびSiC MOSFETQ3・Q6に接続されている。
【0210】
パワーモジュール部200は、電源もしくは蓄電池(E)53が接続されたコンバータ55のプラス端子(+)Pとマイナス端子(-)Nとの間に接続され、インバータ構成のSiC MOSFETQ1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、SiC MOSFETQ1~Q6のソース・ドレイン間には、フリーホイールダイオードDI1~DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0211】
次に、
図43を参照して、半導体デバイスとしてIGBTを適用し、実施の形態に係るパワーモジュールを用いて構成した3相交流インバータ42Bについて説明する。
【0212】
図43に示すように、3相交流インバータ42Bは、パワーモジュール部200と、GD180と、3相交流モータ部51と、電源もしくは蓄電池(E)53と、コンバータ55とを備える。パワーモジュール部200は、3相交流モータ部51のU相、V相、W相に対応して、U相、V相、W相のインバータが接続されている。
【0213】
ここで、GD180は、IGBTQ1・Q4、IGBTQ2・Q5、およびIGBTQ3・Q6に接続されている。
【0214】
パワーモジュール部200は、蓄電池(E)53が接続されたコンバータ55のプラス端子(+)Pとマイナス端子(-)Nとの間に接続され、インバータ構成のIGBT Q1・Q4、Q2・Q5、およびQ3・Q6を備える。また、IGBT Q1~Q6のエミッタ・コレクタ間には、フリーホイールダイオードDI1~DI6がそれぞれ逆並列に接続されている。
【0215】
(拡散接合技術)
<インサート金属を入れない例>
拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの製造方法の説明図であって、拡散接合形成前のSiC半導体デバイス22の裏面近傍の模式的断面構造は、
図44(a)に示すように表され、拡散接合形成前の厚銅基板2の表面近傍の模式的断面構造は、
図44(b)に示すように表される。
【0216】
SiC半導体デバイス22の裏面電極134は、例えば、金属の多層構造を備え、SiC半導体デバイス22の裏面側から順にチタン層130、ニッケル層128、金層126、および銀層124を備える。これらのチタン層130、ニッケル層128、金層126、および銀層124は、例えば、スパッタリング技術を用いて形成可能である。
【0217】
また、厚銅基板2の表面電極132は、例えば、金属の多層構造を備え、厚銅基板2の表面側から順にニッケル層120、および銀層122を備える。厚銅基板2は、Cu層18と、Cu層18上に形成されたアルミニウム層からなる応力緩和金属層24Uとを備える。
【0218】
アルミニウム層からなる応力緩和金属層24Uの上にニッケル層120、そしてその上に銀層122が、例えば、めっき技術により形成されている。
【0219】
次に拡散接合技術を適用して、SiC半導体デバイス22の裏面と、厚銅基板2の表面とを加熱・加圧して拡散接合を形成した一実施の形態に係るパワーモジュールの模式的断面構造は、
図45に示すように表される。
【0220】
すなわち、
図45に示すように、加熱・加圧プロセスにより、厚銅基板2の表面側の銀層122とSiC半導体デバイス22の裏面側の銀層124が拡散接合されて、Ag層-Ag層同士が一体化された銀層123が形成される。
【0221】
―断面構造のSEM写真例―
拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの拡散接合近傍の断面構造のSEM写真例は、
図46(a)に示すように表され、
図46(a)を説明するための線図は、
図46(b)に示すように表される。
【0222】
また、銀焼成接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの銀焼成接合近傍の断面構造のSEM写真例は、
図47(a)に示すように表され、
図47(a)を説明するための線図は、
図47(b)に示すように表される。
【0223】
図46(a)および
図46(b)に示すように、拡散接合を行うと、Ag層-Ag層同士が一体化される。一方、銀焼成接合では、銀焼成層内に空隙を多数有するポーラス構造が形成されており接合構造は明らかに異なる。
【0224】
ここで、銀焼成接合技術により形成される銀焼成層の厚さは、例えば約80μm程度であり、熱伝導率の値は、例えば、約200W/mKである。これに対して、拡散接合技術によるAg層-Ag層拡散接合層の厚さは、例えば約2μm程度であり、熱伝導率の値は、例えば、約430W/mKである。
【0225】
本技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールによれば、厚銅基板上に拡散接合を用いて接合層を形成することにより、薄層化および高熱伝導化を図ることができる。
【0226】
<インサート金属を入れる例>
上述のインサート金属をいれない例において、SiC半導体デバイス22の裏面電極134の最下面が銀層124で、厚銅基板2の表面電極132の最上面も銀層122の場合、銀層124と銀層122間に銀層からなるインサート金属を更に配置して、加熱・加圧プロセスを実施しても良い。SiC半導体デバイス22の裏面電極134の最下面と、厚銅基板2の表面電極132の最上面を同じ金属にして、インサート金属も同じものにすることで、良好な拡散接合を形成可能である。インサート金属として銀層を適用した場合も
図46(a)および
図46(b)と同様の銀層124-インサート金属(銀層)-銀層122が一体化された拡散接合が形成可能である。
【0227】
尚、第1の実施の形態においても上記のAg-Ag拡散接合を同様に適用可能である。また、第1の実施の形態の説明において、インサート金属を用いる固相拡散接合で接合する技術を適用しても良い。
【0228】
また、第2~第3の実施の形態においてもAg焼成層20の代わりに上記のAg-Ag拡散接合を同様に適用可能である。また、第2~第3の実施の形態においても、インサート金属を用いる固相拡散接合で接合する技術を適用しても良い。
【0229】
上記のように、インサート金属をいれない拡散接合の実施の形態、およびインサート金属を入れる固相拡散の実施の形態の両方の技術を本技術としている。
【0230】
(埋め込み部の説明)
本技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの厚銅基板の表面近傍の模式的断面図(その1)は
図48(a)に示すように表され、厚銅基板の表面近傍の模式的断面図(その2)は
図48(b)に示すように表される。
【0231】
図23や
図24では、SiC半導体デバイス22がSiCブロックとして表現されていたが、SiC半導体デバイス22として
図39に示されるSiC DIMOSFETの模式的断面構造を例として、どれくらい埋め込まれるのか表現した図が、
図48(a)および
図48(b)に対応している。
【0232】
図48(a)の例では、埋め込み部BR1の厚さは相対的に薄く、SiC半導体デバイス22は、裏面電極側から、n
+ドレイン領域37の途中まで埋め込まれている。
【0233】
図48(b)の例では、埋め込み部BR2の厚さは相対的に厚く、SiC半導体デバイス22は、裏面電極側から、n
-高抵抗層からなる半導体層31の途中まで埋め込まれている。SiC半導体デバイス22としては、
図39に示されるSiC DIMOSFETに限らず、
図40に示されるSiC TMOSFETであっても同様である。
【0234】
―熱サイクル信頼性試験結果―
拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテストに用いた基板構造の模式的断面構造は、
図49に示すように表される。
【0235】
基板構造は、Al(24U)/Cu(18)/Al(24D)の3層構造を備える。SiC半導体デバイス22は、Al(24U)上に上述のAg-Ag拡散接合により接合される。ここで、基板構造の厚さ例は、Al(24U)/Cu(18)/Al(24D)=0.1mm/1.6mm/0.1mmである。
【0236】
拡散接合技術を適用する一実施の形態に係るパワーモジュールの熱サイクルテスト結果であって、初期状態(0サイクル)のSAT画像例は、
図50(a)に示すように表され、
図50(a)を説明するための線図は、
図50(b)に示すように表される。
【0237】
また、500サイクル(-40℃~+150℃、各30分)後のSAT画像例は、
図51(a)に示すように表され、
図51(a)を説明するための線図は、
図51(b)に示すように表される。
【0238】
また、1000サイクル(-40℃~+150℃、各30分)後のSAT画像例は、
図52(a)に示すように表され、
図52(a)を説明するための線図は、
図52(b)に示すように表される。
【0239】
また、1500サイクル(-40℃~+150℃、各30分)後のSAT画像例は、
図53(a)に示すように表され、
図53(a)を説明するための線図は、
図53(b)に示すように表される。
【0240】
また、2000サイクル(-40℃~+150℃、各30分)後のSAT画像例は、
図54(a)に示すように表され、
図54(a)を説明するための線図は、
図54(b)に示すように表される。
【0241】
図50~
図54に示すように、0~2000サイクル(-40℃~+150℃、各30分)までの熱サイクルテスト結果によれば、厚銅基板上に拡散接合を用いて接合層を形成することにより、良好な接合が形成されていることが確認できる。
【0242】
[その他の実施の形態]
上記のように、いくつかの実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0243】
このように、本実施の形態は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本実施の形態のパワーモジュールは、IGBTモジュール、ダイオードモジュール、MOSモジュール(Si、SiC、GaN)などの各種の半導体モジュール技術に利用することができ、HEV(Hybrid Electric Vehicle)/EV(Electric Vehicle)向けのインバータ、産業向けのインバータやコンバータなど、幅広い応用分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0245】
1…パワーモジュール
2,2A…厚銅基板
2B…絶縁基板
10…冷却器
10W…冷却水
12…半田層
12TH…第1サーマルコンパウンド層
14、14B…第1厚銅層(Cu層)
16…絶縁シート層
16TH……第2サーマルコンパウンド層
17…セラミックス基板
18、18B…第2厚銅層(Cu層)
20…Ag焼成層
22、QA、QB、Q、Q1~Q6…半導体デバイス(SiC MOSFET)
24A、24B…アルミニウム(Al)層
24U…応力緩和金属層(第1アルミニウム緩和層)
24D…応力緩和金属層(第2アルミニウム緩和層)
26…プレス板
29…超音波プローブ
30、30U、30D…メッキ層
40A、40B、42A、42B…3相交流インバータ
50…1 in 1モジュール
100…2 in 1モジュール
122、123、124…銀層
120、128…ニッケル層
126…金層
130…チタン層
132…表面電極
134…裏面電極
200…パワーモジュール部
300…樹脂層
t1…第2厚銅層の厚さ
tA…応力緩和金属層(第1アルミニウム緩和層)の厚さ
tD…半導体デバイスの厚さ
tB…第1アルミニウム緩和層の加圧厚さ
SD…半導体デバイスの側壁部と台形形状のアルミニウム緩和層表面との距離
PA…加圧圧力
RTj-w…熱抵抗
P…正側電力端子
N…負側電力端子
O、U、V、W…出力端子
GT1、GT4…ゲート端子
ST…ソース端子
DT…ドレイン端子
GWA、GWB、GW1、GW4…ゲートボンディングワイヤ
SWA、SWB、SW1、SW4、SWO、SWN…ソースボンディングワイヤ
GP、GP1、GP4…ゲート信号用配線パターン
SP、SP1、SP4…ソース信号用配線パターン
BR1、BR2…埋め込み部