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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】セルロース/多糖複合材料
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/24 20060101AFI20220818BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20220818BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20220818BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220818BHJP
   C08B 37/00 20060101ALI20220818BHJP
   C08B 15/08 20060101ALI20220818BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220818BHJP
【FI】
D21H17/24
C08L1/02 ZBP
C08L5/00
C08K3/013
C08B37/00 G
C08B15/08
C08L101/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019546784
(86)(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 US2017061466
(87)【国際公開番号】W WO2018093748
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】62/422,629
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520346620
【氏名又は名称】ニュートリション・アンド・バイオサイエンシーズ・ユーエスエー・フォー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ナタエル・ベハブトゥ
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0232785(US,A1)
【文献】国際公開第2016/123644(WO,A1)
【文献】特表2016-521319(JP,A)
【文献】国際公開第2016/106011(WO,A1)
【文献】特表2001-503607(JP,A)
【文献】国際公開第2015/095358(WO,A1)
【文献】特表2016-520142(JP,A)
【文献】特表2018-516316(JP,A)
【文献】特表2019-501044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 17/24
C08L 1/02
C08L 5/00
C08K 3/013
C08B 37/00
C08B 15/08
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)セルロース;及び
b)構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物
を含む複合材料であって、
前記複合材料は、約1重量%~約99重量%の前記ポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む、複合材料
【化1】
式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C x -COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C x -部分は、2~18個の炭素原子の鎖を含み、及び
(C)前記化合物は、約0.001~約0.2の、前記第1の基による置換度を有する。
【請求項2】
前記第1の基の-C x -部分は、2~6個の炭素原子の鎖を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
二酸化チタン、炭酸カルシウム、マイカ、バーミキュライト、シリカ、カオリン、タルク又はこれらの混合物から選択される無機粒子を更に含む、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
カチオン性デンプン、ラテックス、凝集剤又は保持剤を更に含む、請求項1~3の何れか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のセルロース/多糖複合材料を含む物品。
【請求項6】
紙、包装材料、絶縁材料、紙コップ、紙皿、卵ケース又は成形セルロース包装材料である、請求項に記載の物品。
【請求項7】
a)セルロースパルプと、多成分とを水性媒体中に分散させてスラリーを形成する工程;
b)前記スラリーの前記水性媒体を濾過して除いて湿った複合材料を形成する工程;
c)前記湿った複合材料を乾燥させて、乾燥した複合材料を得る工程;及び、
d)工程b)で得られた前記湿った複合材料、又は工程c)で得られた前記乾燥した複合材料を、NaOH水溶液又はKOH水溶液で処理する工程;
を含む、複合材料を製造する方法であって、
前記多糖成分は、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iii)構造I:
【化2】
によって表され、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-Cx-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-Cx-部分は、2~18個の炭素原子の鎖を含み、及び
(C)前記化合物は、約0.001~約0.2の、前記第1の基による置換度を有する、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物;又は
iv)構造III:
【化3】
によって表され、式中、
)nは、少なくとも6であり、
)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
)前記エーテル化合物は、約0.001~約0.2の置換度(DoS)を有する、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物:
を含む組成物である、方法。
【請求項8】
前記多糖成分が、前記ポリα-1,3-グルカンである、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月16日に出願された「Cellulose/Polysaccharide Composites」という名称の米国仮特許出願第62/422629号号明細書に対する優先権及びその利益を主張するものであり、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、セルロース及び多糖を含むセルロース/多糖複合材料に関する。複合材料は、紙、包装材料又は絶縁材料などの物品において使用され得る。
【背景技術】
【0003】
セルロースを主体とする紙は、フレキシブルで剛性のある包装空間において広く使用されている。いくつかの用途では、セルロースを主体とする紙の特性は、例えば、より高いバリア特性、より高い密度/より堅い構造及び/又はより大きい引張強さを提供するために、セルロースを主体とする製品の性能を拡張することができる技術を使用することによって強化することができる。セルロースの再生可能性に基づく性質及び生分解性を維持しながら性能の向上を達成することができれば、これは、社会全体に利益をもたらし得る。
【0004】
セルロースパルプは、製紙プロセス中、多くの場合に炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン及びナノセルロースなどのフィラーとブレンドされる。そのようなフィラーは、セルロースを主体とする紙をコーティングするために使用される配合物中にも存在する場合がある。多量の炭酸カルシウムを使用することの欠点は、量を増加させると紙の機械的強度が低下し、高充填紙のリサイクル性も低下することである。水溶性のカチオン性デンプン及びカチオン性ポリビニルアルコール(PVOH)も強度増強成分として使用されている。典型的には、フィラーが製紙のウェットエンド部分で使用される場合、これらは、紙の全体的な性能特性を低下させる可能性がある。水溶性のカチオン性ポリマーは、非常に低い添加量でそれらの性能向上を飽和させる傾向があり、典型的には、約1%を超える追加的な量の水溶性カチオン性ポリマーは、紙強度の更なる向上をもたらさない。また、紙は、非常に多孔質でもある。バリア特性が重要な多くの包装用途に関して、紙は、所望のバリア特性を得るために連続フィルムでコーティングされる必要がある。多くの場合、コーティングは、石油系の熱可塑性ポリマーを含み、これは、コーティングされた紙に再生不可能な成分を付加する。合成ポリマーコーティングは、多くの場合、完全に生分解する包装の能力及びリサイクルされるセルロースパルプの能力を妨害する。高度にフィブリル化されたセルロース及びナノセルロースも、低空隙率の紙を製造するために使用することができる。しかしながら、高度にフィブリル化されたセルロース及びナノセルロースの使用は、プロセス処理能力が著しく低下するほどに製紙又は成形プロセス中の排水を遅くするため、重大な欠点を有しており、これは、プロセスの経済性に著しい悪影響を及ぼし得る。
【0005】
酵素的合成又は微生物若しくは植物宿主の遺伝子組み換え技術を用いた新規な構造の多糖を見出そうとする要求から、研究者らは、生分解性であり、再生可能な資源を主体とする原料から経済的に製造可能な多糖を発見してきた。このような多糖の1つは、ポリα-1,3-グルカンであり、α-1,3-グリコシド結合を有することを特徴とするグルカンポリマーである。特許文献1は、ポリα-1,3-グルカンと木材パルプとから形成された固体物品及びその固体物品を製造する方法を開示している。特許文献2は、ポリα-1,3-グルカンフィブリッド及び紙の製造を含むフィブリッドの使用を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第9,644,322号明細書
【文献】公開特許出願国際公開第2016/196022号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィラーの量を増やすことで紙の強度を増加させることに役立ち、またフィラーの量を増やしても優れたリサイクル性を維持することができる、紙用の再生可能なフィラーに対する需要が増加している。バリア特性などの改良された特性を提供しながら、紙を製造するために使用することができる再生可能な材料も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、
a)セルロース;及び
b)酵素により産生された多糖、酵素により産生された多糖の誘導体又はこれらの混合物
を含むセルロース/多糖複合材料であって、酵素により産生された多糖及び多糖誘導体は、非水溶性である、セルロース/多糖複合材料が開示される。
【0009】
一実施形態では、酵素により産生された多糖は、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iii)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点及び55~10,000の範囲の数平均重合度を有するα-(1,3-グルカン)ポリマー;又は
iv)約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する非水溶性セルロース
を含む。
【0010】
別の実施形態では、多糖誘導体は、
v)構造I:
【化1】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は、2~6つの炭素原子の鎖を含み、及び
(C)この化合物は、約0.001~約0.2の、第1の基による置換度を有する、組成物
を含む。更なる実施形態では、多糖誘導体は、
vi)構造III:
【化2】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物であって、式中、
(D)nは、少なくとも6であり、
(F)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(F)このエーテル化合物は、約0.001~約0.2の置換度(DoS)を有する、組成物
を含む。
【0011】
別の実施形態では、多糖又は多糖誘導体は、少なくとも1つの寸法において約20nm~約200μmの範囲の平均粒径を有する粒子を含む。別の実施形態では、多糖又は多糖誘導体は、ブルナウアー-エメット-テラー測定方法によって決定される約0.1m/g~約200m/gの範囲の表面積によって特徴付けられる。
【0012】
一実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-グルカンを含む。別の実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-1,6-グルカンを含む。追加的な実施形態では、多糖は、90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点及び55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマーを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、複合材料は、二酸化チタン、炭酸カルシウム、マイカ、バーミキュライト、シリカ、カオリン、タルク又はこれらの混合物から選択される無機粒子を更に含む。いくつかの実施形態では、複合材料は、カチオン性デンプン、ラテックス、凝集剤又は保持剤を更に含む。一実施形態では、複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量の多糖を含む。
【0014】
セルロース/多糖複合材料を含む物品も開示される。一実施形態では、物品は、紙、包装材料、絶縁材料、紙コップ、紙皿、卵ケース又は成形セルロース包装材料である。
【0015】
本明細書では、
a)セルロースパルプと、酵素により産生された多糖、酵素により産生された多糖の誘導体又はこれらの混合物とを水性媒体中に分散させてスラリーを形成する工程;
b)水性媒体を濾過して除いて湿った複合材料を形成することにより、セルロース/多糖複合材料を形成する工程;及び
c)湿った複合材料を乾燥させて、乾燥した複合材料を得る工程
を含む、セルロース/多糖複合材料を製造する方法も開示される。
【0016】
一実施形態では、方法は、工程d)工程b)で得られた湿った複合材料又は工程c)で得られた乾燥した複合材料をNaOH水溶液又はKOH水溶液で処理する工程を更に含む。
【0017】
方法の一実施形態では、多糖は、フィブリッドの形態である。別の実施形態では、多糖は、コロイド分散液の形態である。また別の実施形態では、多糖は、ウェットケーキの形態である。
【0018】
方法の別の実施形態では、多糖は、少なくとも1つの寸法において約20nm~約200μm(200,000nm)の範囲の平均粒径を有する粒子を含む。一実施形態では、多糖は、ブルナウアー-エメット-テラー測定方法によって決定される約0.1m/g~約200m/gの範囲の表面積によって特徴付けられる多糖を含む。別の実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-1,6-グルカンを含む。別の実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-1,6-グルカンを含む。追加的な実施形態では、多糖は、90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点及び55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマーを含む。また別の実施形態では、多糖は、構造I:
【化3】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は、2~6つの炭素原子の鎖を含み、及び
(C)この化合物は、約0.001~約0.2の、第1の基による置換度を有する、組成物を含む。更なる実施形態では、多糖は、構造III:
【化4】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物であって、式中、
(D)nは、少なくとも6であり、
(E)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(F)このエーテル化合物は、約0.001~約0.2の置換度(DoS)を有する、組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で引用する全ての特許、特許出願及び刊行物は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「実施形態」又は「開示」という用語は、限定されることを意味するものではなく、特許請求の範囲で定義されるか又は本明細書に記載される実施形態のいずれかに一般的に適用される。これらの用語は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0021】
本開示では、多数の用語及び略語を使用する。他に特に明記されない限り、下記の定義が当てはまる。
【0022】
1つの要素又は成分に先行する冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、その要素又は成分の事例(すなわち出現)の数に関して非限定的であることが意図されている。このため、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、1つ又は少なくとも1つを含むと解釈すべきであり、要素又は成分の単数形は、特にその数が明らかに単数であることを意味しない限り複数形も含む。
【0023】
用語「含む」は、特許請求の範囲で言及される既定の特徴、整数、工程又は成分の存在を意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、成分又はそれらの群の存在又は添加を排除するものではない。用語「含んでいる」は、用語「から本質的になる」及び「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図される。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図される。
【0024】
存在する場合、全ての範囲は、包括的及び結合可能である。例えば、「1~5」の範囲が列挙されている場合、列挙されている範囲は、「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などの範囲を含むと解釈すべきである。
【0025】
本明細書において数値と結び付けて使用する用語「約」は、その用語がその状況において他に特に定義されていない限り、数値の+/-0.5の範囲を指す。例えば、語句「約6のpH値」は、pH値が他に特に定義されていない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0026】
本明細書を通して示されるあらゆる最大数値限度は、それより低いあらゆる数値限度を、そのようなより低い数値限度が本明細書に明示的に記載されたかのように含むことが意図されている。本明細書全体を通して示される数値の下限の全ては、それより大きい数値限度が本明細書に明確に記載されているかのように、そのようなより大きい数値限度を全て含む。本明細書全体を通して示される数値範囲の全ては、それより狭い数値範囲が全て本明細書に明確に記載されているかのように、そのようなより広い数値範囲に入る全てのより狭い数値範囲を全て含む。
【0027】
当業者であれば、以下の詳細な説明を読むことにより、本開示の特徴及び利点を更に容易に理解するであろう。明確化のため、別個の実施形態との関係において前後に記載されている本開示の特定の特徴は、単一の要素中で組み合わせて提供され得ることを理解すべきである。反対に、簡潔にするために単一の実施形態に関連して記載されている本開示の様々な特徴は、別個に又は任意の部分的組み合わせで提供され得る。更に、文脈から具体的に別の記載がない限り、単数形についての言及は、複数も含む可能性がある(例えば、「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ以上を意味する可能性がある)。
【0028】
本出願に明記した様々な範囲内での数値の使用は、特に明示的に指示しない限り、規定範囲内の最小値及び最大値のいずれにも用語「約」が先行するかのように近似値として記載されている。この方法で、規定範囲の上下のわずかな変動を使用しても、この範囲内の数値と実質的に同一の結果を達成することができる。同様に、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のあらゆる数値を含む連続範囲であることが意図されている。
【0029】
本明細書では、用語「多糖」は、グリコシド結合によって一体に結合された単糖単位の長い鎖からなり、加水分解すると構成単糖又はオリゴ糖を与える高分子炭水化物分子を意味する。
【0030】
用語「ラテックス」は、ポリマー粒子の分散液又は水中のポリマーエマルジョンを意味する。
【0031】
用語「カチオン性デンプン」は、四級アンモニウムカチオンにより形成された正に帯電した部分を含むデンプンを指す。カチオン性デンプンは、製紙において使用される湿潤紙力増強剤である。
【0032】
用語「保持剤」は、紙の形成中に微粒子及びフィラーの保持を改善するために添加される、製紙産業において使用される添加剤を指す。保持剤の典型的な例としては、ポリアクリルアミン、ポリエチレンイミン、コロイダルシリカ及びベントナイトが挙げられる。
【0033】
用語「凝集剤」は、懸濁固体を生じさせて凝集体を形成する化学添加剤を指す。
【0034】
用語「体積によるパーセント」、「体積パーセント」、「体積%」、「体積/体積%」は、本明細書では互換的に使用される。溶液中の溶質の体積パーセントは、次の式を使用して決定することができる:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%。
【0035】
用語「重量によるパーセント」、「重量パーセンテージ(wt%)」、「重量/重量パーセンテージ(w/w%)」は、本明細書では互換的に使用される。重量パーセントとは、組成物、混合物又は溶液中に含まれる質量を基準とした物質のパーセンテージを指す。
【0036】
用語「非水溶性」は、例えば、α-(1,3-グルカン)ポリマーなどの物質が23℃の100ミリリットルの水に5g未満溶解することを意味する。他の実施形態では、非水溶性は、23℃の水に4g未満、又は3g未満、又は2g未満、又は1g未満の物質が溶解することを意味する。
【0037】
本明細書において、「水性組成物」は、溶媒が例えば少なくとも約20重量%の水であり、例えばポリα-1,3-1,6-グルカンを含む溶液又は混合物を指す。本明細書の水性組成物の例は、水溶液及び親水コロイドである。
【0038】
「親水コロイド」及び「ハイドロゲル」という用語は、本明細書では同義語として使用される。親水コロイドは、水が分散媒であるコロイド系を意味する。本明細書の「コロイド」は、別の物質全体にわたって微視的に分散している物質を意味する。したがって、本明細書の親水コロイドは、例えば、水又は水溶液中のポリα-1,3-1,6-グルカン又はポリα-1,3-グルカンの分散液、エマルジョン、混合物又は溶液も意味し得る。
【0039】
本明細書で用いられる用語「コロイド分散液」とは、分散相と分散媒体とを有する不均一系、すなわち微視的に分散されている不溶性の粒子が別の物質全体に懸濁されていることを指す。水中のコロイド分散液の例は、親水コロイドである。コロイド分散液は、安定なコロイド分散液又は不安定なコロイド分散液であり得る。安定なコロイド分散液は、室温及び/又は高温、例えば40~50℃で少なくとも1か月の期間、目に見える沈殿なしで安定である。不安定な分散液では、同じ条件において、分散液から沈降した少なくとも一部のポリα-1,3-グルカン及び/又はポリα-1,3-1,6-グルカンが見られる場合がある。沈降した物質を撹拌すると、通常、コロイド分散液が再形成されるであろう。いくつかの実施形態では、コロイド分散液は、安定な分散液である。別の実施形態では、コロイド分散液は、不安定な分散液である。
【0040】
本明細書で用いる場合、「重量平均分子量」又は「M」は、M=ΣN /ΣN(式中、Mは、鎖の分子量であり、Nは、その分子量の鎖の数である)として計算される。重量平均分子量は、静的光散乱、ガスクロマトグラフィー(GC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、小角中性子散乱、X線散乱及び沈降速度などの技術によって測定することができる。
【0041】
本明細書で用いる場合、「数平均分子量」又は「M」は、サンプル中のポリマー鎖の全ての統計的平均分子量に関する。数平均分子量は、M=ΣN/ΣN(式中、Mは、鎖の分子量であり、Nは、その分子量の鎖の数である)として計算される。ポリマーの数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー、(マーク-フウィンク(Mark-Houwink)方程式)による粘度測定及び蒸気圧オスモメトリーなどの束一的方法、末端基測定又はプロトンNMRなどの技術によって測定することができる。
【0042】
本明細書で使用される「複合材料」という用語は、組み合わされた場合に個々の成分と異なる特徴を有する材料を生じる、有意に異なる物理的特性又は化学的特性を有する2つ以上の構成材料(すなわち植物系セルロース及び酵素により産生された多糖)から製造される材料を指す。個々の成分は、完成した構造中で分離したままであり、識別可能なままである。
【0043】
本開示は、
a)セルロース;及び
b)酵素により産生された多糖、酵素により産生された多糖の誘導体又はこれらの混合物
を含むか又はこれらから本質的になるセルロース/多糖複合材料であって、酵素により産生された多糖及び多糖誘導体は、非水溶性である、セルロース/多糖複合材料に関する。セルロースは、植物由来である。複合材料は、紙、包装材料又は絶縁材料などの物品において有用である。
【0044】
本明細書に開示のセルロース/多糖複合材料において、様々な多糖が有用である。一実施形態では、酵素により産生された多糖は、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iii)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点及び55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマー;又は
iv)約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する非水溶性セルロース
を含む。これらの多糖の混合物も使用することができる。
【0045】
別の実施形態では、酵素により産生された多糖の誘導体は、
v)構造I:
【化5】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は、2~6つの炭素原子の鎖を含み、及び
(C)この化合物は、約0.001~約0.2の、第1の基による置換度を有する、組成物;又は
vi)構造III:
【化6】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物であって、式中、
(D)nは、少なくとも6であり、
(E)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(F)このエーテル化合物は、約0.001~約0.2の置換度(DoS)を有する、組成物
を含む。
【0046】
酵素により産生された多糖と、酵素により産生された多糖誘導体との混合物も使用することができる。
【0047】
一実施形態では、多糖又は多糖誘導体は、少なくとも1つの寸法において約20nm~約200μm(200,000nm)の範囲の平均粒径を有する粒子を含む。別の実施形態では、多糖又は多糖誘導体は、少なくとも1つの寸法において約5nm~約200μm(200,000nm)の範囲の平均粒径を有する粒子を含む。例えば、少なくとも1つの寸法における平均粒径は、5、10、15、20;30;40;50;60;70;80;90;100;150;200;250;300;350;400;450;500;550;600;700;800;900;1000;1500;2000;2500;5000;7500;10,000;15,000;20,000;30,000;40,000;50,000;60,000;70,000;80,000;90,000;100,000;125,000;150,000;175,000;又は200,000(又は5~200,000の任意の値)nmであり得る。更なる実施形態では、多糖又は多糖誘導体は、少なくとも1つの寸法における平均粒径が約20nm又は約5nm~約200μm(200,000nm)の範囲であり、アスペクト比が約1である粒子を含む。
【0048】
一実施形態では、多糖又は多糖誘導体は、ブルナウアー-エメット-テラー(BET)測定方法によって決定される約0.1m/g~約200m/gの範囲の表面積によって特徴付けられる。例えば、BET表面積は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200(又は0.1~200の任意の値)m/gであり得る。
【0049】
第2の実施形態では、酵素により産生された多糖は、+2mV~+50mVの範囲のゼータ電位を有する。例えば、多糖は、+2、+3、+4、+5、+6、+7、+8、+9、+10、+12、+14、+16、+18、+20、+25、+30、+35、+40、+45、+50(又は+2~+50の任意の値)mVのゼータ電位を有し得る。ゼータ電位は、表面と液体中のイオンとの間の相互作用から生じる液体中の粒子の外因的性質である。測定値は、温度、表面の化学並びに液体中のイオンの種類及び濃度に依存する。水中に入れられると、イオンは、表面の電荷状態に応じて表面に優先的に吸着することになる。対イオンが系の電気的中性を維持するために移動するのに伴って、反対電荷の「二重層」が粒子の周りに形成される。ゼータ電位は、すべり面(吸着電荷と拡散電荷との間で等距離にある)における電位として定義される。ゼータ電位は、粒子の表面上の電荷の量に関連することから、強いゼータ電位は、電気力学的な凝集から粒子を安定化するために役立ち得る。
【0050】
更なる実施形態では、多糖は、酵素により産生された多糖又は酵素により産生された多糖の誘導体を含む。酵素により産生される多糖の例としては、ポリα-1,3-グルカン;ポリα-1,3-1,6-グルカン;90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点及び55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマー;並びに約10~約1000の重量平均重合度(DPw)及びセルロースII型結晶構造を有する、酵素により産生された非水溶性セルロースが挙げられる。
【0051】
一実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-グルカンを含む。用語「ポリα-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカンポリマー」及び「グルカンポリマー」は、本明細書では同じ意味で用いられる。本明細書における用語「グルカン」は、グリコシド結合によって連結されたD-グルコースモノマーの多糖を指す。ポリα-1,3-グルカンは、少なくとも50%のグリコシド結合がα-1,3-グルカン結合である、グリコシド結合によって一体に連結したグルコースモノマー単位を含むポリマーである。ポリα-1,3-グルカンは、多糖の1種である。ポリα-1,3-グルカンの構造は、以下のように示すことができる。
【化7】
【0052】
ポリα-1,3-グルカンは、化学的方法を用いて調製され得るか、又はこれは、ポリα-1,3-グルカンを産生する真菌などの様々な有機体から抽出することによって調製され得る。或いは、ポリα-1,3-グルカンは、例えば、米国特許第7,000,000号明細書、同第8,642,757号明細書及び同第9,080195号明細書に記載されている通り、1種以上のグルコシルトランスフェラーゼ(gtf)酵素を用いてスクロースから酵素的に製造することができる。これらの中で示されている手順を使用することで、ポリマーは、組み換えグルコシルトランスフェラーゼ酵素、例えば触媒としてのgtfJ酵素及び基質としてのスクロースを使用して一段階酵素反応で直接製造される。ポリα-1,3-グルカンは、副生成物としてのフルクトースを用いて製造される。反応が進行するにつれて、ポリα-1,3-グルカンは、溶液から析出する。
【0053】
例えば、グルコシルトランスフェラーゼ酵素を用いてスクロースからポリα-1,3-グルカンを製造する方法により、水中のポリα-1,3-グルカンのスラリーを得ることができる。スラリーを濾過して水の一部を除去することで、30~50重量%の範囲のポリα-1,3-グルカンを含有し、残部が水であるウェットケーキとして固体のポリα-1,3-グルカンを得ることができる。いくつかの実施形態では、ウェットケーキは、35~45重量%の範囲のポリα-1,3-グルカンを含む。ウェットケーキを水で洗浄することで、例えばスクロース、フルクトース又はリン酸緩衝液などの全ての水溶性不純物を除去することができる。いくつかの実施形態では、ポリα-1,3-グルカンを含むウェットケーキは、そのまま使用することができる。他の実施形態では、ウェットケーキを減圧下において、高温で、凍結乾燥により、又はこれらの組み合わせにより更に乾燥させることで、50重量%以上のポリα-1,3-グルカンを含む粉末を得ることができる。いくつかの実施形態では、ポリα-1,3-グルカンは、20重量%以下の水を含む粉末であり得る。他の実施形態では、ポリα-1,3-グルカンは、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1重量%以下の水を含む乾燥粉末であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、α-1,3である、ポリα-1,3-グルカンのグルコースモノマー単位間のグリコシド結合のパーセンテージは、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上又は100%(又は50%~100%の任意の整数値)である。したがって、このような実施形態では、ポリα-1,3-グルカンは、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下又は0%の(又は0%~50%の任意の整数値)の、α-1,3でないグリコシド結合を有する。
【0055】
用語「グリコシド結合」及び「グリコシド結合」は、本明細書において互換的に使用され、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物等の別の基に結合させる共有結合のタイプを指す。本明細書において使用される用語「α-1,3-グリコシド結合」は、隣接するα-Dグルコース環の1位及び3位の炭素を介してα-Dグルコース分子を相互に結合する共有結合の種類を指す。この結合は、上述のポリα-1,3-グルカンの構造において例示される。本明細書では、「α-D-グルコース」を「グルコース」と呼ぶ。本明細書で開示する全てのグリコシド結合は、別段の記載がない限り、α-グリコシド結合である。
【0056】
ポリα-1,3-グルカンの「分子量」は、数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として表すことができる。或いは、分子量は、ダルトン、グラム/モル、DPw(重量平均重合度)又はDPn(数平均重合度)として表すこともできる。これらの分子量の大きさを計算するために、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの様々な手法が当該技術分野で公知である。
【0057】
ポリα-1,3-グルカンは、少なくとも約400の重量平均重合度(DPw)を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリα-1,3-グルカンは、約400~約1400、又は約400~約1000、又は約500~約900のDPwを有する。
【0058】
一実施形態では、多糖は、90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点及び55~10,000の範囲の数平均重合度を有する非水溶性α-(1,3-グルカン)ポリマーを含む。
【0059】
一実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-1,6-グルカンである。一実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-1,6-グルカンを含み、(i)ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,3-結合であり、(ii)ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,6結合であり、(iii)ポリα-1,3-1,6-グルカンが少なくとも1000の重量平均重合度(DP)を有し、(iv)ポリα-1,3-1,6-グルカンのα-1,3結合及びα-1,6結合が互いに連続して交互にならない。別の実施形態では、ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも60%がα-1,6結合である。本明細書において使用される用語「α-1,6-グリコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環の1位及び6位の炭素を介してα-D-グルコース分子を相互に結合する共有結合を指す。
【0060】
ポリα-1,3-1,6-グルカンは、米国特許出願公開第2015/0232785A1号明細書で開示されている通りのグルコシルトランスフェラーゼ酵素の産生物である。
【0061】
本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の形態は、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して決定することができる。例えば、結合の形態は、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、13C NMR又はH NMR)を使用する方法を用いて決定することができる。使用することができるこれらの方法及び他の方法は、Food Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui.Ed,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
用語「ポリα-1,3-1,6-グルカン」、「α-1,3-1,6-グルカンポリマー」及び「ポリ(α-1,3)(α-1,6)グルカン」は、本明細書では互換的に使用される(これらの用語における結合の記号「1,3」及び「1,6」の順序は重要でないことに留意されたい)。本明細書におけるポリα-1,3-1,6-グルカンは、グリコシド結合によって一体に連結した(すなわちグルコシド結合)グルコースモノマー単位を含むポリマーであって、グリコシド結合の少なくとも約30%がα-1,3-グリコシド結合であり、グリコシド結合の少なくとも30%がα-1,6-グリコシド結合であるポリマーである。ポリα-1,3-1,6-グルカンは、混合グリコシド結合成分を含有する多糖の種類である。本明細書のある実施形態では、用語ポリα-1,3-1,6-グルカンの意味から「アルテルナン」が除外される。これは、互いに連続的に交互するα-1,3結合とα-1,6結合とを含有するグルカンである(米国特許第5702942号明細書、米国特許出願公開第2006/0127328号明細書)。互いに「連続的に交互の」α-1,3結合及びα-1,6結合は、例えば、...G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-...と視覚的に表すことができ、この中のGは、グルコースを表す。
【0063】
本明細書におけるポリα-1,3-1,6-グルカンの「分子量」は、数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として表すことができる。或いは、分子量は、ダルトン、グラム/モル、DP(重量平均重合度)又はDP(数平均重合度)として表すことができる。これらの分子量の大きさを計算するために、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの様々な手法が当該技術分野で公知である。
【0064】
本明細書における用語「ポリα-1,3-1,6-グルカンウェットケーキ」は、スラリーから分離されて水又は水溶液で洗浄されたポリα-1,3-1,6-グルカンを指す。ウェットケーキを作製する場合、ポリα-1,3-1,6-グルカンは、完全には乾燥されない。
【0065】
本明細書の用語「水溶液」は、溶媒が水である溶液を意味する。ポリα-1,3-1,6-グルカンは、水溶液中に分散、混合及び/又は溶解され得る。水溶液は、本明細書の親水コロイドの分散媒として機能することができる。
【0066】
ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,3結合であり、ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも30%がα-1,6結合である。或いは、本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカン中のα-1,3結合のパーセンテージは、少なくとも31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%又は64%であり得る。或いは、更に、本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカン中のα-1,6結合のパーセンテージは、少なくとも31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%又は69%であり得る。
【0067】
ポリα-1,3-1,6-グルカンは、パーセンテージの合計が100%を超えない限り、α-1,3結合の前述のパーセンテージのいずれか1つと、α-1,6結合の前述のパーセンテージのいずれか1つとを有することができる。例えば、本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンは、パーセンテージの合計が100%を超えない限り、(i)30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%又は40%(30%~40%)のいずれか1つのα-1,3結合と、(ii)60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%又は69%(60%~69%)のいずれか1つのα-1,6結合とを有することができる。非限定的な例としては、31%のα-1,3結合と67%のα-1,6結合とを有するポリα-1,3-1,6-グルカンが挙げられる。特定の実施形態では、ポリα-1,3-1,6-グルカンのグリコシド結合の少なくとも60%がα-1,6結合である。
【0068】
ポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満のα-1,3及びα-1,6以外のグリコシド結合を有し得る。別の実施形態では、ポリα-1,3-1,6-グルカンは、α-1,3結合及びα-1,6結合のみを有する。
【0069】
α-1,3及びα-1,6結合形態の他の例及びこれらの製品のための方法は、米国特許出願公開第2015/0232785号明細書に開示されている。米国特許出願公開第2015/0232785号明細書に開示されているような様々なGtf酵素によって産生されるグルカンの結合及びDPwは、以下の表Aに列挙されている。
【0070】
【表1】
【0071】
本明細書に開示のポリα-1,3-1,6-グルカンの主鎖は、直鎖/非分岐であり得る。或いは、ポリα-1,3-1,6-グルカンに分岐が存在し得る。そのため、特定の実施形態におけるポリα-1,3-1,6-グルカンは、分岐点を有さないか、又は約30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%若しくは1%未満の分岐点をポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして有し得る。
【0072】
ポリα-1,3-1,6-グルカンのα-1,3結合及びα-1,6結合は、互いに連続的に交互しない。以下の説明では、...G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-1,6-G-1,3-G-...(Gは、グルコースを表す)は、連続的に交互するα-1,3結合及びα-1,6結合によって連結された6つのグルコースモノマー単位の伸びを表すとみなされる。本明細書の特定の実施形態におけるポリα-1,3-1,6-グルカンは、交互のα-1,3結合及びα-1,6結合により連続的に連結された2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える数未満のグルコースモノマー単位を含む。
【0073】
本明細書におけるポリα-1,3-1,6-グルカンは、少なくとも約1000のDPを有し得る。例えば、ポリα-1,3-1,6-グルカンのDPは、少なくとも約10000であり得る。或いは、DPは、少なくとも約1000~15000であり得る。或いは、更に、DPは、例えば、少なくとも約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000又は15000(又は1000~15000の任意の整数)であり得る。本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンが少なくとも約1000のDPを有することができるとすると、そのようなグルカンポリマーは、典型的には非水溶性である。
【0074】
本明細書におけるポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば、少なくとも約50000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、1000000、1100000、1200000、1300000、1400000、1500000又は1600000(又は50000~1600000の任意の整数)のMを有し得る。特定の実施形態におけるMは、少なくとも約1000000である。或いは、ポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば、少なくとも約4000、5000、10000、20000、30000又は40000のMを有し得る。
【0075】
本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば、少なくとも20個のグルコースモノマー単位を含み得る。或いは、グルコースモノマー単位の数は、例えば、少なくとも25、50、100、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000又は9000(又は10~9000の任意の整数)であり得る。本明細書のポリα-1,3-1,6-グルカンは、例えば、乾燥時に粉末の形態において、又は濡れている場合にペースト、コロイド若しくは他の分散液の形態において提供することができる。
【0076】
一実施形態では、多糖は、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する非水溶性セルロースを含む。そのようなセルロース及びセロデキストリンホスホリラーゼ酵素を用いたその調製方法は、公開特許出願国際公開第2016/106011号パンフレットに開示されており、この開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。国際公開第2016/106011号パンフレットに開示されているように、セルロースは、セロデキストリンホスホリラーゼ酵素によりセルロースIIとして直接産生される。対照的に、天然に(例えば、植物において)産生するセルロースは、典型的にはセルロースI型構造を有し、一般に、セルロースII型に変換するには、マーセル化及び/又は他の化学的処理(例えば、誘導体化後の非誘導体化、再生セルロースの形成)を必要とする。セルロースII型構造を特徴付ける主要な水素結合は、O2-H---O6、O6-H---O6及びO2-H---O2である一方、セルロースIは、主要な水素結合としてO2-H---O6を有する。セルロースII型の構造は、鎖の折り畳み構造を含み、解くことが困難である。セルロースII型は、逆平行鎖を含むが、対照的に、セルロースI型の鎖は、平行である。
【0077】
公開特許出願国際公開第2016/106011号パンフレットに開示されているようなセロデキストリンホスホリラーゼ酵素は、水性組成物に不溶性の低分子量セルロースを合成することができる。例えば、国際公開第2016/106011号パンフレットに開示されている酵素反応に使用されるセロデキストリンホスホリラーゼは、低分子量の不溶性セルロースを産生することができる。
【0078】
ある実施形態では、セロデキストリンホスホリラーゼ酵素によって生成されるセルロースは、約10~1000のDP又はDPを有し得る。例えば、セルロースのDP又はDPは、約10~500、10~250、10~100、10~75、10~50、10~45、10~40、10~35、10~30、10~25、15~50、15~45、15~40、15~35、15~30又は15~25であり得る。いくつかの態様では、セルロースのDP又はDPは、約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50であるか、少なくとも約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50であるか、又は約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49若しくは50未満であり得る。
【0079】
いくつかの態様では、セロデキストリンホスホリラーゼ酵素によって産生するセルロースは、約1700~170000、1700~86000、1700~43000、1700~17000、1700~13000、1700~8500、1700~6800、1700~5100、2550~5100又は2550~4250のMを有し得る。いくつかの態様では、Mは、約1700、1900、2100、2300、2500、2700、2900、3100、3300、3500、3700、3900、4100、4300、4500、4700、4900若しくは5100、少なくとも約1700、1900、2100、2300、2500、2700、2900、3100、3300、3500、3700、3900、4100、4300、4500、4700、4900若しくは5100又は約1700、1900、2100、2300、2500、2700、2900、3100、3300、3500、3700、3900、4100、4300、4500、4700、4900若しくは5100未満であり得る。
【0080】
国際公開第2016/106011号パンフレットに開示のセロデキストリンホスホリラーゼ酵素により産生されるセルロースのグリコシド結合の約100%がβ-1,4結合である。他の態様におけるセルロースは、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%がβ-1,4結合であるグリコシド結合形態を有し得る。したがって、酵素により産生されるセルロースは、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%未満のβ-1,4以外のグリコシド結合を有し得る。
【0081】
セロデキストリンホスホリラーゼ酵素により合成されるセルロースの主鎖は、直鎖状/非分岐状であり得る。或いは、セルロースは、分岐を有し得る。したがって、ある実施形態では、セルロースは、分岐点を全く有さないか、又はポリマー中のグリコシド結合の割合として約5%、4%、3%、2%若しくは1%未満の分岐点を有し得る。
【0082】
セロデキストリンホスホリラーゼ酵素によって産生されるセルロースは、セルロースII型結晶構造を有し得る。例えば、酵素によって産生されるセルロースは、セルロースII型結晶構造のセルロースを約100重量%含み得る。他の例として、酵素によって産生されるセルロースは、セルロースII型結晶構造のセルロースを少なくとも約80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%又は99重量%含み得る。いくつかの態様では、酵素によって産生されるセルロースは、セルロースI、III及び/又はIV型結晶構造のセルロース材料を約20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、15重量%、14重量%、13重量%、12重量%、11重量%、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%又は1重量%未満含み得る。セルロースII型結晶構造は、例えば、Kolpak及びBlackwell(Macromolecules 9:273-278)並びにKroon-Batenburg及びKroon(Glycoconjugate J.14:677-690)に記載されており、これらの両方は、参照により本明細書に組み込まれる。セルロースII型構造を特徴付ける主要な水素結合は、O2-H---O6、O6-H---O6及びO2-H---O2である一方、セルロースI型は、主要な水素結合としてO2-H---O6を有する。セルロースII型の構造は、鎖の折り畳み構造を含み、解くことが困難である。
【0083】
国際公開第2016/106011号パンフレットに開示されているように、セルロースは、セロデキストリンホスホリラーゼ酵素によって直接セルロースII型として産生される。対照的に、天然に(例えば、植物において)産生するセルロースは、典型的にはセルロースI型構造を有し、一般に、セルロースII型に変換するには、マーセル化及び/又は他の化学的処理(例えば、誘導体化後の非誘導体化、再生セルロースの生成)を必要とする。ある実施形態では、酵素により産生されるセルロースは、水性及び乾燥の両方の条件下でセルロースII型結晶状態である。
【0084】
国際公開第2016/106011号パンフレットに開示の通りに製造されたセルロースは、水などの水性溶媒に不溶性である。しかしながら、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び/又はN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を含む溶媒には溶解することができる。そのような溶媒の例としては、単独のDMSO若しくはDMAcの、又は塩化リチウム(LiCl)を更に含むDMSO又はDMAc(例えば、DMSO/LiCl及びDMAc/LiCl)が挙げられる。本明細書において、DMSO/LiCl溶媒又はDMSO/LiCl溶媒は、LiClを例えば約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10重量%含むか、又はLiCl飽和溶媒であり得る。DMSO及び/又はDMAcを含むものなどの非水性溶媒中の、酵素により産生されるセルロースの濃度は、例えば、約0.1~30重量%、0.1~20重量%、0.1~10重量%若しくは0.1~5重量%であるか、又は約若しくは少なくとも約0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25若しくは30重量%であり得る。ある態様では、本明細書中のDMSO含有溶媒及びDMAc含有溶媒は、酸を更に含まない。セルロースは、例えば、前述のDMSOを主成分とする溶媒及びDMAcを主成分とする溶媒のいずれにも15~30℃、20~30℃又は20~25℃などの比較的低温(例えば、室温)で溶解することができる。
【0085】
国際公開第2016/106011号パンフレットに開示のセルロースを含む組成物は、天然に存在するとは考えられておらず、任意選択的にナノメートルスケールのフレーク又はフレーク様形状を有するものとして特徴付けることができる。セルロースによって形成されるフレーク又はフレーク様形状は、ナノサイズの大きさを有し、国際公開第2016/106011号パンフレットに開示されているような適切な顕微鏡技術を用いると、平らで薄い物質片として現れ得る。そのようなセルロースは、他の態様では、誘導体化されることはなく、また誘導体化されてもいない。したがって、セルロースは、エーテル基(例えば、カルボキシメチル基)又はエステル基(例えば、アセテート基)などの付加された官能基を含まない。
【0086】
酵素により産生されるセルロースは、
a)少なくとも水、グルコース-1-リン酸(G1P)、セロデキストリン及び国際公開第2016/106011号パンフレットに開示の配列番号2又は配列番号6と少なくとも90%相同のアミノ酸配列を含むセロデキストリンホスホリラーゼ酵素を接触させる工程であって、不溶性セルロースが生成する、工程と;
b)任意選択的に、工程(a)で生成したセルロースを分離する工程と
を含む方法によって製造することができる。
【0087】
接触工程は、任意選択的に、水と、グルコース-1-ホスフェートと、セロデキストリンと、開示のセロデキストリンホスホリラーゼ酵素とを含む酵素反応を与えるものとして特徴付けることができる。セルロース製造方法における接触工程は、様々な方法で行うことができる。例えば、所望の量のG1P及び/又はセロデキストリン(例えば、セロビオース)をまず水に溶解し(任意選択的に緩衝成分などの他の成分もこの調製段階で添加し得る)、次いで1種以上のセロデキストリンホスホリラーゼ酵素を添加することができる。反応は、例えば、静置され得るか、又は撹拌器若しくははオービタルシェーカーによって撹拌され得る。反応は、細胞フリーであり得、通常、細胞フリーである。
【0088】
セルロース製造方法の接触工程で供給されるグルコース-1-リン酸(G1P)は、例えば、単離されたG1P(例えば、商業的供給源から得られるG1P)を添加することにより、直接供給することができる。或いは、G1Pは、接触工程において、少なくとも第2の反応を提供することによって供給することができ、第2の反応の生成物は、G1Pを含む(すなわち、第2の反応は、生成物としてG1Pを生成する)。「第2の反応」は、接触工程で行われるセロデキストリンホスホリラーゼ反応(任意選択的に「第1の反応」と表記することができる)に加えて行われ、セロデキストリンホスホリラーゼ反応物用G1P基質を供給する反応を指す。第2の反応は、任意選択的に、デンプンホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ又はセロデキストリンホスホリラーゼ(セルロースの加水分解を触媒する場合)などの「G1P-産生酵素」の使用として特徴付けることができる。
【0089】
国際公開第2016/106011号パンフレットに開示されているような酵素反応における使用に適したセロデキストリンの例としては、セロビオース(DP2)、セロトリオース(DP3)、セロテトラオース(DP4)、セロペンタオース(DP5)及びセロヘキサオース(DP6)が挙げられる。ある態様では、セロビオースがセロデキストリンとして使用される。好適なセロデキストリンの他の例としては、セルロースの分解(例えば、酵素による分解)により得られる7つ以上のβ-1,4-結合グルコースモノマーのグルコースポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、上記の種類のセロデキストリンの1種以上(例えば、2種、3種、4種又はそれを超える混合物)を使用することができる。
【0090】
本明細書において開示される組成物のセルロースは、国際公開第2016/106011号パンフレットに開示のような、配列番号2又は配列番号6と少なくとも90%相同のアミノ酸配列を含むか、又はそれから構成されるセロデキストリンホスホリラーゼ酵素の産生物であり得る。他の実施形態では、セルロースは、配列番号2又は配列番号6と100%相同であるか、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%相同のアミノ酸配列を含むか、又はそれから構成されるセロデキストリンホスホリラーゼ酵素の産生物であり得る。配列番号2を含むセロデキストリンホスホリラーゼ酵素の非限定的な例としては、国際公開第2016/106011号パンフレットに開示のような、配列番号4と100%相同であるか、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%相同のアミノ酸配列を含むか、又はそれから構成されるセロデキストリンホスホリラーゼ酵素が挙げられる。配列番号6を含むセロデキストリンホスホリラーゼ酵素の非限定的な例としては、国際公開第2016/106011号パンフレットに開示のような、配列番号8と100%相同であるか、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%相同のアミノ酸配列を含むか、又はそれから構成されるセロデキストリンホスホリラーゼ酵素が挙げられる。変異型セロデキストリンホスホリラーゼ酵素(例えば、配列番号2、4、6又は8に対して90~99%のアミノ酸相同性を有する参照配列)は、対応する非変異型参照配列の酵素活性の一部(例えば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%若しくは90%)又は全部を有するはずである。
【0091】
別の実施形態では、多糖は、構造I:
【化8】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は、2~6つの炭素原子の鎖を含み、及び
(C)このエステル化合物は、約0.001~約0.2の、第1の基による置換度を有する、組成物を含む。
【0092】
このようなポリα-1,3-グルカンエステル及びそれらの調製は、公開特許出願国際公開第2017/003808号パンフレットに開示されており、この開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0093】
構造Iのポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、部分構造-C-O-CO-C-を含むことに基づいて本明細書において「エステル」と称され、「-C-」は、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の2、4又は6位の炭素を表し、「-CO-C-」は、第1の基に含まれる。
【0094】
本明細書における「第1の基」は、-CO-C-COOHを含む。用語「-C-」は、典型的には2~6つの炭素原子の鎖を含み、各炭素原子が好ましくは4つの共有結合を有する第1の基の部分を指す。
【0095】
用語「反応」、「エステル化反応」、「反応組成物」、「反応調製物」等は、本明細書では互換的に使用され、ポリα-1,3-グルカンと、少なくとも1種の環状有機無水物とを含むか又はそれらからなる反応を指す。反応は、ポリα-1,3-グルカンのグルコース単位の1つ以上のヒドロキシル基を、環状有機無水物により供給される第1の基を用いてエステル化するのに好適な条件(例えば、時間、温度、pH)下に置かれ、それによりポリα-1,3-グルカンエステル化合物を生じる。
【0096】
用語「環状有機無水物」、「環状有機酸無水物」及び「環状酸無水物」等は、本明細書では互換的に使用される。本明細書における環状有機無水物は、下に示される構造II:
【化9】

によって表される式を有し得る。構造IIの-C-部分は、典型的には2~6つの炭素原子の鎖を含み、この鎖中の各炭素原子は、好ましくは、4つの共有結合を有する。いくつかの実施形態では、-C-部分は、2~16、2~17又は2~18の炭素数の鎖を含み得ることが企図される。本明細書におけるエステル化反応中、環状有機無水物の無水物基(-CO-O-CO-)が切断され、その結果、切断された無水物の一方の端が-COOH基となり、他方の端がポリα-1,3-グルカンのヒドロキシル基とエステル化されることにより、エステル化された第1の基(-CO-C-COOH)をもたらす。使用される環状有機無水物に応じて、典型的にはそのようなエステル化反応の1種又は2種の可能性のある生成物が存在し得る。
【0097】
本明細書で使用する用語「置換度」(DoS)は、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物の各モノマー単位(グルコース)中の置換されたヒドロキシル基の平均数を指す。本明細書に開示のセルロース/多糖複合材料の調製において有用なポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、約0.001~約0.2の置換度を有する。或いは、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物のDoSは、例えば、約0.001~約0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15又は2であり得る。DoSは、任意選択的に、これらの値の任意の2つの間の範囲として表すことができる。ポリα-1,3-グルカンエステル生成物の構造、分子量及びDoSは、NMR分光法及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)等の当該技術分野で公知の様々の生理化学的解析法を使用して確認することができる。
【0098】
構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物の式中の各R基は、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり得る。第1の基の-C-部分は、典型的には2~6つの炭素原子を含み、これらの炭素原子のそれぞれは、好ましくは、4つの共有結合に関与する。通常、鎖中の各炭素は、鎖中の隣り合った炭素原子又は隣接するC=O及びCOOH基の炭素原子と共有結合していることとは別に、水素にも有機基等の置換基にも結合でき、且つ/又は炭素-炭素二重結合に関与できる。例えば、-C-鎖中の炭素原子は、飽和であり得(すなわち-CH-)、-C-鎖中の隣り合った炭素原子と二重結合され得(例えば、-CH=CH-)、且つ/又は水素及び有機基に結合され得る(すなわち1つの水素が有機基で置換される)。当業者であれば、炭素の原子価が4であることを考慮して、-CO-C-COOHを含む第1の基の-C-部分の炭素原子が通常どのように結合できるかを理解できるであろう。いくつかの実施形態では、第1の基の-C-部分は、2~16、2~17又は2~18の炭素数の鎖を含み得ることが企図されている。
【0099】
特定の実施形態では、第1の基(-CO-C-COOH)の-C-部分は、CH基のみを含む。-C-部分がCH基のみを含む第1の基の例は、-CO-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-CH-COOH及び-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-COOHである。これらの第1の基は、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸又は無水スベリン酸をそれぞれポリα-1,3-グルカンと反応させることによって誘導することができる。
【0100】
いくつかの態様における第1の基(-CO-C-COOH)の-C-部分は、(i)炭素原子鎖中に少なくとも1つの二重結合を含むことができ、及び/又は(ii)有機基を含む少なくとも1つの分岐を含むことができる。例えば、第1の基の-C-部分は、炭素原子鎖中に少なくとも1つの二重結合を有することができる。-C-部分が炭素-炭素二重結合を含む第1の基の例としては、-CO-CH=CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-CH-COOH及び-CO-CH-CH-CH-CH-CH=CH-COOHが挙げられる。これらの第1の基のそれぞれは、適切な環状有機無水物をポリα-1,3-グルカンと反応させることによって誘導することができる。例えば、-CO-CH=CH-COOHを含む第1の基を生成するために、無水マレイン酸をポリα-1,3-グルカンと反応させることができる。このように、上に列挙した第1の基のいずれかで表される-C-部分を含む環状有機無水物(ここで、環状有機無水物の対応する-C-部分は、無水物基[-CO-O-CO-]の各側に結合して一緒に環を形成する部分である)は、ポリα-1,3-グルカンと反応して、対応する第1の基(-CO-C-COOH)を有するそれらのエステルを生成できる。
【0101】
本明細書のいくつかの態様において、第1の基(-CO-C-COOH)の-C-部分は、有機基を含む少なくとも1つの分岐を含むことができる。-C-部分が少なくとも1つの有機基の分岐を含む第1の基の例として以下が挙げられる。
【化10】

これらの2つの第1の基のそれぞれは、2-ノネン-1-イルコハク酸無水物をポリα-1,3-グルカンと反応させることによって誘導することができる。両方のこれらの例における有機基の分岐(本明細書において「R」と総称して呼ばれる)は、-CH-CH=CH-CH-CH-CH-CH-CH-CHであることがわかる。R基は、-C-炭素鎖における水素を置換することがわかる。
【0102】
したがって、例えば、本明細書において第1の基(-CO-C-COOH)は、-CO-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-CH-COOH又は-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-COOHのいずれかであり得るが、それらの少なくとも1つ、2つ、3つ又はそれを超える水素がR基で置換される。同様に、例えば、本明細書において、第1の基(-CO-C-COOH)は、-CO-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-CH-COOH又は-CO-CH-CH-CH-CH-CH=CH-COOHのいずれかであり得るが、それらの少なくとも1つ、2つ、3つ又はそれを超える水素がR基(そのような第1の基は、-C-部分が炭素原子鎖に少なくとも1つの二重結合を含み、有機基を含む少なくとも1つの分岐を含む例である)で置換される。本明細書におけるR基の好適な例としては、アルキル基及びアルケニル基が挙げられる。本明細書におけるアルキル基は、例えば、1~18個の炭素(直鎖又は分岐)(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル又はデシル基)を含み得る。本明細書におけるアルケニル基は、例えば、1~18個の炭素(直鎖又は分岐)(例えば、チレン、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル[例えば、2-オクテニル]、ノネニル[例えば、2-ノネニル]又はデセニル基)を含み得る。当業者であれば、構造IIによって表される環状有機無水物の式及び国際公開第2017/003808号パンフレットに開示されているような本明細書の構造Iのポリα-1,3-グルカンエステルを合成するためのエステル化プロセスにおけるその関係に基づいて、これらの第1の基のいずれかを誘導するためにいずれの特定の環状有機無水物が適しているかを理解するであろう。
【0103】
ポリα-1,3-グルカンエステル化合物を合成するプロセスに関して下に更に開示するように、少なくとも1つの有機基の分岐を伴う-C-部分を含むこれらの第1の基のそれぞれは、適切な環状有機無水物をポリα-1,3-グルカンと反応させることにより誘導できる。別の説明例には、無水メチルコハク酸を用いて、ポリα-1,3-グルカンをエステル誘導体化することが含まれ、そこで結果として生成される第1の基は、-CO-CH-CH(CH)-COOH又は-CO-CH(CH)-CH-COOHである。このように、上に列挙した第1の基のいずれかで表される-C-部分を含む環状有機無水物(ここで、環状有機無水物の対応する-C-部分は、無水物基[-CO-O-CO-]の各側に結合して一緒に環を形成する部分である)は、ポリα-1,3-グルカンと反応して、対応する第1の基(-CO-C-COOH)を有するそれらのエステルを生成できる。
【0104】
特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、-CO-C-COOHを含む1種類の第1の基を含有できる。例えば、上式においてグルコース基にエステル結合した1種又は複数のR基は、-CO-CH-CH-COOHであり得、この特定の例におけるR基は、したがって、独立して水素及び-CO-CH-CH-COOH基(そのようなエステル化合物は、ポリα-1,3-グルカンスクシナートと呼ばれる場合がある)であろう。
【0105】
構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%(又は50%~100%の任意の整数)の、α-1,3であるグリコシド結合を有し得る。したがって、このような実施形態では、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、約50%、40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%(又は0%~50%の任意の整数値)未満の、α-1,3-でないグリコシド結合を有する。ポリα-1,3-グルカンエステル化合物は、少なくとも約98%、99%又は100%の、α-1,3であるグリコシド結合を有することが好ましい。
【0106】
構造Iのポリα-1,3-グルカンエステル化合物の主鎖は、好ましくは、直鎖/非分岐である。特定の実施形態では、化合物は、分岐点を全く有さないか、又はポリマー中のグリコシド結合のパーセントとして約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%若しくは1%未満の分岐点を有する。分岐点の例は、α-1,6分岐点を含む。
【0107】
特定の実施形態におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物の式は、少なくとも6のn値を有することができる。或いは、nは、例えば、少なくとも10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900又は4000(又は10~4000の任意の整数)の値を有することができる。更に他の例におけるnの値は、25~250、50~250、75~250、100~250、150~250、200~250、25~200、50~200、75~200、100~200、150~200、25~150、50~150、75~150、100~150、25~100、50~100、75~100、25~75、50~75又は25~50の範囲内であり得る。
【0108】
本明細書に開示されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物の分子量は、数平均分子量(M)又は重量平均分子量(M)として測定することができる。或いは、分子量は、ダルトン又はグラム/モルで測定することができる。これは、化合物のポリα-1,3-グルカンポリマー成分のDP(重量平均重合度)又はDP(数平均重合度)を言及するためにも有用な場合がある。本明細書におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物のM又はMは、例えば、少なくとも約1000であり得る。或いは、M又はMは、少なくとも約1000~約600000であり得る。或いは、更に、M又はMは、例えば、少なくとも約10000、25000、50000、75000、100000、125000、150000、175000、200000、225000、250000、275000又は300000(又は10000~300000の任意の整数)であり得る。
【0109】
本明細書における環状有機無水物は、いくつかの態様では、構造IIによって表される式の-C-部分が有機基を含む少なくとも1つの分岐を有するものであり得る。そのような環状有機無水物の例としては、第1の基として-CO-CH-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-COOH又は-CO-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-CH-COOHを生じる環状有機無水物が挙げられる。そのような環状有機無水物の他の例としては、第1の基として-CO-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH-CH-COOH又は-CO-CH-CH-CH-CH-CH-CH-COOHを生じるが、それらの少なくとも1つ、2つ、3つ又はそれを超える水素が有機基分岐(R)で置換されている環状有機無水物が挙げられる。そのような環状有機無水物の更に別の例としては、第1の基として-CO-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH=CH-CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH=CH-CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH=CH-CH-CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-COOH、-CO-CH-CH-CH-CH=CH-CH-COOH又は-CO-CH-CH-CH-CH-CH=CH-COOHを生じるが、それらの少なくとも1つ、2つ、3つ又はそれを超える水素がRで置換されている環状有機無水物が挙げられる。本明細書におけるR基の好適な例としては、アルキル基及びアルケニル基が挙げられる。本明細書におけるアルキル基は、例えば、1~18個の炭素(直鎖又は分岐)(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル又はデシル基)を含み得る。本明細書におけるアルケニル基は、例えば、1~18個の炭素(直鎖又は分岐)(例えば、メチレン、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル[例えば、2-オクテニル]、ノネニル[例えば、2-ノネニル]又はデセニル基)を含み得る。当業者であれば、構造IIによって表される式及び開示のエステル化プロセスにおけるその関与に基づいて、いずれの特定の環状有機無水物がこれらの第1の基のいずれかを誘導するのに適しているかを理解するであろう。
【0110】
本明細書の反応に含まれ得る環状有機無水物の名称による例としては、無水マレイン酸、無水メチルコハク酸、無水メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸無水物、2-エチル-3-メチルマレイン酸無水物、2-へキシル-3-メチルマレイン酸無水物、2-エチル-3-メチル-2-ペンテン二酸無水物、無水イタコン酸(2-メチレンコハク酸無水物)、2-ノネン-1-イルコハク酸無水物及び2-オクテン-1-イルコハク酸無水物が挙げられる。具体的には、例えば無水マレイン酸を使用して第1の基としての-CO-CH=CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。無水メチルコハク酸を使用して第1の基としての-CO-CH-CH(CH)-COOH及び/又は-CO-CH(CH)-CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。無水メチルマレイン酸を使用して第1の基としての-CO-CH=C(CH)-COOH及び/又は-CO-C(CH)=CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。無水ジメチルマレイン酸を使用して第1の基としての-CO-C(CH)=C(CH)-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。2-エチル-3-メチルマレイン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-C(CHCH)=C(CH)-COOH及び/又は-CO-C(CH)=C(CHCH)-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。2-へキシル-3-メチルマレイン酸無水物を使用して第1の基としての-CO-C(CHCHCHCHCHCH)=C(CH)-COOH及び/又は-CO-C(CH)=C(CHCHCHCHCHCH)-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。無水イタコン酸を使用して第1の基としての-CO-CH-C(CH)-COOH及び/又は-CO-C(CH)-CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。2-ノネン-1-イルコハク酸無水物を使用して第1の基としての-CO-CH-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-COOH及び/又は-CO-CH(CHCH=CHCHCHCHCHCHCH)-CH-COOHをポリα-1,3-グルカンとエステル化できる。
【0111】
本開示の1種、2種、3種又はそれを超える環状有機無水物を例えばエステル化反応に使用できる。環状有機無水物は、通常、濃縮した(例えば、>95%、96%、97%、98%又は99%純粋な)形態で市販品として得ることができる。本明細書のエステル化反応における環式有機酸無水物の量は、約0.001~約0.1の、第1の基による置換度を有するポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物が得られるように選択することができる。
【0112】
国際公開第2017/003808号パンフレットに開示されているように、少なくとも1つの有機基分岐を有する-C-部分を含むこれらの第1の基のそれぞれは、適切な環状有機無水物をポリα-1,3-グルカンと反応させることによって誘導することができる。2-ノネン-1-イルコハク酸無水物を用いる例は、上述されている。別の説明例には、無水メチルコハク酸を用いて、ポリα-1,3-グルカンをエステル誘導体化することが含まれ、そこで結果として生成される第1の基は、-CO-CH-CH(CH)-COOH又は-CO-CH(CH)-CH-COOHである。更に別の説明例には、無水メチルマレイン酸を用いて、ポリα-1,3-グルカンをエステル誘導体化することが含まれ、そこで結果として生成される第1の基は、-CO-CH=C(CH)-COOH又は-CO-C(CH)=CH-COOHである。更に別の説明例には、無水イタコン酸(2-メチレンコハク酸無水物)を用いて、ポリα-1,3-グルカンをエステル誘導体化することが含まれ、そこで結果として生成される第1の基は、-CO-CH-C(CH)-COOH又は-CO-C(CH)-CH-COOHである。このように、上に列挙した第1の基のいずれかで表される-C-部分を含む環状有機無水物(ここで、環状有機無水物の対応する-C-部分は、無水物基[-CO-O-CO-]の各側に結合して一緒に環を形成する部分である)は、ポリα-1,3-グルカンと反応して、対応する第1の基(-CO-C-COOH)を有するそれらのエステルを生成できる。
【0113】
当業者は、本明細書における特定の実施形態において、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物が水系条件下においてアニオン形態で存在できることを理解するであろう。このアニオンの挙動は、エステル化された第1の基(-CO-C-COOH)にカルボキシル基(COOH)が存在するからである。本明細書におけるポリα-1,3-グルカンエステル化合物のカルボキシル(COOH)基は、水系条件においてカルボキシレート(COO)基に変換できる。これらのアニオン基は、存在する場合、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン又はリチウムカチオン等の塩のカチオンと相互作用できる。
【0114】
別の実施形態では、多糖は、構造III:
【化11】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物であって、式中、
(D)nは、少なくとも6であり、
(E)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(F)このエーテル化合物は、約0.001~約0.2の置換度(DoS)を有する、組成物を含む。本明細書に記載のポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含み、且つ約0.05~約3のDoSを有する組成物は、米国特許出願公開第2014/0179913号明細書に開示されており、この開示全体は、その全体が本明細書に組み込まれる。約0.001~約0.2、又は約0.05~約0.2、又は約0.001~約0.1、又は約0.05~約0.1のDoSを有するポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、グルカンとエーテル化剤との比率を調節することによって調製することができる。有機基は、ヒドロキシアルキル基、アルキル基又はカルボキシアルキル基であり得る。エーテル化合物は、1種類の有機基又は2種類以上の有機基を含み得る。有機基は、例えば、ヒドロキシプロピル、ジヒドロキシプロピル、ヒドロキシエチル、メチル、エチル又はカルボキシメチル基であり得る。一実施形態では、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物は、約0.001~約0.2、又は約0.05~約0.2、又は約0.001~約0.1、又は約0.05~約0.1のDoSを有する。一実施形態では、有機基は、カルボキシメチル基であり、DoSは、約0.001~約0.2である。別の実施形態では、有機基は、カルボキシメチル基であり、DoSは、約0.05~約0.1である。
【0115】
多糖は、任意の有用な量、例えばセルロース/多糖複合材料に所望の特性を付与するのに十分な量で使用することができる。一実施形態では、複合材料は、セルロース/多糖複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%の多糖を含む。例えば、複合材料は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99(又は1~99の任意の値)重量%の多糖を含むことができる。
【0116】
ある実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、約99~約91重量%のポリα-1,3-グルカンとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約25重量%のセルロースと、約99~約75重量%のポリα-1,3-グルカンとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約50重量%のセルロースと、約99~50重量%のポリα-1,3-グルカンとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約25~約75重量%のセルロースと、約75~約25重量%のポリα-1,3-グルカンとを含む。追加的な実施形態では、複合材料は、約45~約99重量%のセルロースと、約55~約1重量%のポリα-1,3-グルカンとを含む。また別の実施形態では、複合材料は、約51、又は52、又は53、又は54、又は55重量%~約99重量%のセルロースと、約49、又は48、又は47、又は46、又は45重量%~約1重量%のポリα-1,3-グルカンとを含む。一実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-グルカンを含み、及び複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約49重量%のポリα-1,3-グルカンを含む。
【0117】
追加的な実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約99~約1重量%のセルロースと、約1~約99重量%のポリα-1,3-グルカンとから本質的になる。更なる実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、約91~約99重量%のポリα-1,3-グルカンとから本質的になる。また別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51~約99重量%のセルロースと、約1~約49重量%のポリα-1,3-グルカンとから本質的になる。
【0118】
ある実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、約91~約99重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約25重量%のセルロースと、約99~約75重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約50重量%のセルロースと、約99~約50重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約25~約75重量%のセルロースと、約75~約25重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとを含む。追加的な実施形態では、複合材料は、約45~約99重量%のセルロースと、約55~約1重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとを含む。別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51、又は52、又は53、又は54、又は55重量%~約99重量%のセルロースと、約1重量%~約49、又は48、又は47、又は46、又は45重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとを含む。一実施形態では、多糖は、ポリα-1,3-1,6-グルカンを含み、及び複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンを含む。
【0119】
追加的な実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約99~約1重量%のセルロースと、約1~約99重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとから本質的になる。更なる実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、約91~約99重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとから本質的になる。また別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51~約99重量%のセルロースと、約1~約49重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンとから本質的になる。
【0120】
一実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約91~約99重量%の非水溶性セルロースとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約25重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約99~約75重量%の非水溶性セルロースとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約50重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約99~約50重量%の非水溶性セルロースとを含む。別の実施形態では、複合材料は、約25~約75重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約75~約25重量%の非水溶性セルロースとを含む。追加的な実施形態では、複合材料は、約45~約99重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約55~約1重量%の非水溶性セルロースとを含む。別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51、又は52、又は53、又は54、又は55重量%~約99重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約1重量%~約49、又は48、又は47、又は46、又は45重量%の非水溶性セルロースとを含む。一実施形態では、多糖は約10~約1000の重量平均重合度(DPw)及びセルロースII型結晶構造を有する非水溶性セルロースを含み、及び複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%の多糖を含む。
【0121】
追加的な実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約99~約1重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約1~約99重量%の非水溶性セルロースとから本質的になる。更なる実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約91~約99重量%の非水溶性セルロースとから本質的になる。また別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51~約99重量%のセルロースと、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する約1~約49重量%のポリ非水溶性セルロースとから本質的になる。
【0122】
ある実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約91~約99重量%の組成物とを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約25重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約99~約75重量の組成物とを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約50重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約99~約50重量%の組成物とを含む。別の実施形態では、複合材料は、約25~約75重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約75~約25重量%の組成物とを含む。追加的な実施形態では、複合材料は、約45~約99重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約55~約1重量%の組成物とを含む。別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51、又は52、又は53、又は54、又は55重量%~約99重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約1重量%~約49、又は48、又は47、又は46、又は45重量%の組成物とを含む。一実施形態では、多糖は、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物を含み、及び複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%の、ポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物を含む。
【0123】
追加的な実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約99~約1重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約1~約99重量%の組成物とから本質的になる。更なる実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約91~約99重量%の組成物とから本質的になる。また別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51~約99重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造Iによって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む約1~約49重量%の組成物とから本質的になる。
【0124】
ある実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約91~約99重量%の組成物とを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約25重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約99~約75重量%の組成物とを含む。別の実施形態では、複合材料は、約1~約50重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約99~50重量%の組成物とを含む。別の実施形態では、複合材料は、約25~約75重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約75~約25重量%の組成物とを含む。追加的な実施形態では、複合材料は、約45~約99重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約55~約1重量%の組成物とを含む。別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51、又は52、又は53、又は54、又は55重量%~約99重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約1重量%~約49、又は48、又は47、又は46、又は45重量%の組成物とを含む。一実施形態では、多糖は、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物を含み、及び複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%の、ポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物を含む。
【0125】
追加的な実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約99~約1重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約1~約99重量%の組成物とから本質的になる。更なる実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、複合材料の総重量を基準として、約1~約9重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約91~約99重量%の組成物とから本質的になる。また別の実施形態では、セルロース/多糖複合材料は、約51~約99重量%のセルロースと、本明細書で定義される構造IIIによって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む約1~約49重量%の組成物とから本質的になる。
【0126】
別の実施形態では、複合材料は、無機粒子を更に含む。一実施形態では、複合材料は、二酸化チタン、炭酸カルシウム、マイカ、バーミキュライト、シリカ、カオリン、タルク又はこれらの混合物から選択される無機粒子を更に含む。これらの粒子をセルロース及び多糖に添加すると、改善された印刷適性、外観、熱伝導性及び寸法安定性などの特性を、セルロース/多糖複合材料及びこの複合材料を含む物品に付与することができる。
【0127】
別の実施形態では、複合材料は、保持剤を更に含む。典型的には、保持剤は、複合材料中のセルロースパルプ及び/又は多糖の微粒子の保持を改善するために使用することができる。複合材料は、カチオン性デンプン、ラテックス、凝集剤などの添加剤を更に含み得る。一実施形態では、複合材料は、カチオン性デンプン、ラテックス、凝集剤又は保持剤を更に含む。
【0128】
一実施形態では、セルロース/多糖複合材料を製造する方法が開示される。セルロース/多糖複合材料は、a)セルロースパルプと、酵素により産生された多糖、酵素により産生された多糖の誘導体又はこれらの混合物とを水性媒体中に分散させてスラリーを形成する工程;b)水性媒体を濾過して除いて湿った複合材料を形成することにより、セルロース/多糖複合材料を形成する工程;及びc)湿った複合材料を乾燥させて、乾燥した複合材料を得る工程を含む方法によって製造することができる。得られるセルロース/多糖複合材料は、実験室規模のスクリーンから、長網抄紙機又は傾斜ワイヤー抄紙機のような一般的に使用されている装置などの商業サイズの製紙機まで、任意のスケールの装置上で形成することができる。スラリー中のセルロースパルプ及び多糖の濃度は、スラリーの総重量を基準として0.01~15重量%の範囲であり得る。
【0129】
典型的には、スラリーの水性媒体は、主に水であるが、pH調整成分、成形助剤、界面活性剤、消泡剤、カチオン性デンプン、ラテックス、凝集剤又は保持剤などの様々な他の成分を含み得る。一実施形態では、スラリーの水性媒体は、カチオン性デンプン、ラテックス、凝集剤又は保持剤を含む。スラリーをスクリーン又は他の穴のあいた支持体上に移動させ、分散固体を保持して液体を通過させることにより、水性媒体をスラリーから排出して湿ったセルロース/多糖複合体を得ることができる。湿った複合材料は、支持体の上に形成されると、通常、真空又は他の加圧力によって更に脱水される。湿った複合材料は、任意選択的に、当該技術分野で公知の任意の適切な方法によって乾燥させることができる。例えば、空気乾燥、対流乾燥、直線トンネル乾燥、アーク乾燥、エアループ乾燥、接触乾燥、伝導乾燥、放射エネルギー乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥又はそれらの組み合わせを使用することができる。
【0130】
一実施形態では、方法は、工程d)工程b)で得られた湿った複合材料又は工程c)で得られた乾燥した複合材料をNaOH水溶液又はKOH水溶液で処理する工程を更に含む。複合材料中に含まれる多糖を著しく膨潤させるか、又は部分的に溶解させることができる塩基性水溶液で複合材料を処理すると、例えば複合材料の空隙率を減少させるなど、複合材料のいくつかの特性を改善することができる。NaOH水溶液又はKOH溶液は、典型的には約2~3重量%~最大で約10~15重量%の塩基を含有する。セルロース/多糖複合材料の塩基処理は、複合材料を塩基性水溶液に浸漬すること、又は塩基性水溶液を複合材料に噴霧することなどの任意の好都合な手段によるものであり得る。
【0131】
NaOH水溶液又はKOH水溶液で処理された後、複合材料は、全ての残存する塩基を中和するために、例えば2重量%の酢酸などの希酸溶液で処理される。複合材料は、酸性溶液で洗い流されるか又はその中に浸漬され得る。その後、複合材料は、全ての残存する酸を除去するために水で洗浄される。複合材料は、方法の追加的な工程で乾燥され得る。
【0132】
複合材料が形成された後、これは、必要に応じてカレンダー加工され得る。カレンダー加工は、材料を滑らかにするか、コーティングするか、又は薄くするために布、紙又はプラスチックフィルムに使用される仕上げ工程である。製紙では、カレンダー加工は、筆記及び多くの印刷工程のためにより適した滑らかで均一な表面をもたらし、また紙の密度及び強度を高めることもできる。
【0133】
通常、セルロース/多糖複合材料は、金属-金属、金属-複合材料又は複合材料-複合材料ロール間のニップでカレンダー加工される。また、例えばスーパーカレンダー内などの未加工の複数のニップを使用することもできる。或いは、複合材料は、特定の組成物及び最終用途に最適な圧力、温度及び時間でプラテンプレス内において圧縮することもできる。この方法での紙のカレンダー加工は、形成される紙の空隙率も減少させる。カレンダー加工工程では、複合材料をニップ及びローラーに1回以上通過させ得る。
【0134】
セルロース/多糖複合材料を製造する方法において、多糖は、例えば、15重量%、若しくは10重量%、若しくは5重量%未満の水を含有する乾燥粉末として使用することができ、又は別の実施形態では、多糖は、5重量%、若しくは10重量%、若しくは15重量%を超える水を含有するウェットケーキを使用することができる。別の実施形態では、多糖は、コロイド分散液の形態で使用することができ、これは、公開特許出願国際公開第2016/126685号パンフレット(この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている通りに調製することができる。また別の実施形態では、多糖は、フィブリッドの形態で使用することができ、これは、公開特許出願国際公開第2016/196022号パンフレット(この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている通りに調製することができる。
【0135】
本明細書で用いられる用語「フィブリッド」は、これらの3つの寸法の少なくとも1つが最も長い寸法に対して小さい大きさである、非顆粒性、繊維状又はフィルム状の粒子を意味する。いくつかの実施形態では、多糖又は多糖誘導体は、繊維と比較して比較的大きい表面積を有する繊維状及び/又はシート状の構造を有し得る。表面積は、材料の1グラム当たり5~50mの範囲であり得、最も大きい寸法の粒径は、約10~1000μmであり、最も小さい寸法の大きさ、長さ又は厚さは、0.05~0.25μmであり、結果として最も小さい寸法に対する最も大きい寸法のアスペクト比は、40~20,000となる。
【0136】
本明細書に開示のセルロース/多糖複合材料は、物品の形成に有用である。一実施形態では、物品は、紙、包装材料又は絶縁材料である。別の実施形態では、物品は、紙、包装材料、絶縁材料、紙コップ、紙皿、卵ケース又は成形セルロース包装材料である。複合材料は、改善されたバリア特性及び強化された機械的性能が望まれる用途のための物品において有用な場合がある。
【0137】
本明細書で開示される実施形態の非限定的な例として以下が挙げられる:
1.a)セルロース;及び
b)酵素により産生された多糖、酵素により産生された多糖の誘導体又はこれらの混合物
を含むセルロース/多糖複合材料であって、酵素により産生された多糖及び多糖誘導体は、非水溶性である、セルロース/多糖複合材料。
2.酵素により産生された多糖は、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iii)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点及び55~10,000の範囲の数平均重合度を有するα-(1,3-グルカン)ポリマー;又は
iv)約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する非水溶性セルロース
を含む、実施形態1に記載の複合材料。
3.多糖又は多糖誘導体は、少なくとも1つの寸法において約20nm~約200μmの範囲の平均粒径を有する粒子を含む、実施形態1又は2に記載の複合材料。
4.多糖又は多糖誘導体は、ブルナウアー-エメット-テラー測定方法によって決定される約0.1m/g~約200m/gの範囲の表面積によって特徴付けられる、実施形態1、2又は3に記載の複合材料。
5.多糖は、ポリα-1,3-グルカンを含み、及び複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約49重量%のポリα-1,3-グルカンを含む、実施形態1、2、3又は4に記載の複合材料。
6.多糖は、ポリα-1,3-1,6-グルカンを含み、複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%のポリα-1,3-1,6-グルカンを含む、実施形態1、2、3又は4に記載の複合材料。
7.多糖は、約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する非水溶性セルロースを含み、複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%の多糖を含む、実施形態1、2、3又は4に記載の複合材料。
8.多糖誘導体は、
v)構造I:
【化12】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は、2~6つの炭素原子の鎖を含み、及び
(C)この化合物は、約0.001~約0.2の、第1の基による置換度を有する、組成物
を含み、複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%の多糖誘導体を含む、実施形態1、2、3又は4に記載の複合材料。
9.多糖誘導体は、
vi)構造III:
【化13】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物であって、式中、
(D)nは、少なくとも6であり、
(E)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(F)このエーテル化合物は、約0.001~約0.2の置換度(DoS)を有する、組成物
を含み、複合材料は、複合材料の総重量を基準として約1重量%~約99重量%の多糖誘導体を含む、実施形態1、2、3又は4に記載の複合材料。
10.二酸化チタン、炭酸カルシウム、マイカ、バーミキュライト、シリカ、カオリン、タルク又はこれらの混合物から選択される無機粒子を更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8又は9に記載の複合材料。
11.カチオン性デンプン、ラテックス、凝集剤又は保持剤を更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10に記載の複合材料。
12.実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11に記載のセルロース/多糖複合材料を含む物品。
13.紙、包装材料、絶縁材料、紙コップ、紙皿、卵ケース又は成形セルロース包装材料である、実施形態12に記載の物品。
14.a)セルロースパルプと、酵素により産生された多糖、酵素により産生された多糖の誘導体又はこれらの混合物とを水性媒体中に分散させてスラリーを形成する工程;
b)水性媒体を濾過して除いて湿った複合材料を形成することにより、セルロース/多糖複合材料を形成する工程;及び
c)湿った複合材料を乾燥させて、乾燥した複合材料を得る工程
を含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13に記載のセルロース/多糖複合材料を製造する方法であって、
多糖は、
i)ポリα-1,3-グルカン;
ii)ポリα-1,3-1,6-グルカン;
iii)90%以上のα-1,3-グリコシド結合、1重量%未満のα-1,3,6-グリコシド分岐点及び55~10,000の範囲の数平均重合度を有するα-(1,3-グルカン)ポリマー;又は
iv)約10~約1000の重量平均重合度(DP)及びセルロースII型結晶構造を有する非水溶性セルロース
を含み、及び
多糖誘導体は、
v)構造I:
【化14】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエステル化合物を含む組成物であって、式中、
(A)nは、少なくとも6であり、
(B)各Rは、独立して、-H又は-CO-C-COOHを含む第1の基であり、前記第1の基の-C-部分は、2~6つの炭素原子の鎖を含み、及び
(C)この化合物は、約0.001~約0.2の、第1の基による置換度を有する、組成物;又は
vi)構造III:
【化15】

によって表されるポリα-1,3-グルカンエーテル化合物を含む組成物であって、式中、
(D)nは、少なくとも6であり、
(E)各Rは、独立して、H又は有機基であり、及び
(F)このエーテル化合物は、約0.001~約0.2の置換度(DoS)を有する、組成物
を含む、方法。
15.工程d)工程b)で得られた湿った複合材料又は工程c)で得られた乾燥した複合材料をNaOH水溶液又はKOH水溶液で処理する工程を更に含む、実施形態14に記載の方法。
【実施例
【0138】
別段の記載がない限り、全ての材料は、受け取ったままの状態で使用した。
【0139】
本明細書において、「Comp.Ex.」は、比較例を意味し、「Ex.」は、実施例を意味し、「wt%」は、重量パーセントを意味する。
【0140】
ポリα-1,3-グルカンの典型的な調製
米国特許第7,000,000号明細書は、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)gtfJ酵素を使用した、ヘキソース単位を含み、ポリマー中の少なくとも50%のヘキソース単位がα-1,3-グリコシド結合を介して連結されている多糖繊維を開示した。この酵素は、最終生成物としてのポリα-1,3-グルカン及びフルクトースを生成する重合反応において基質としてスクロースを利用する。
【0141】
ポリα-1,3-グルカンは、米国特許第7,000,000号明細書;米国特許出願公開第2013/0244288号明細書(現在米国特許第9,080,195号明細書);及び米国特許出願公開第2013/0244287号明細書(現在米国特許第8,642,757号明細書)(これらは、全てその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のgtfJ酵素調製物を用いて調製することができる。
【0142】
ポリα-1,3-グルカンポリマーは、米国特許出願公開第2014/0179913号明細書(現在米国特許第9,139,718号明細書(例えば、その中の実施例12を参照されたい)(これらの両方は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示の手順に従って合成することができ、またそのウェットケーキを調製することができる。
【0143】
多糖試料
酵素により重合したポリα-1,3-グルカンの2つの試料を用いてセルロース/多糖複合材料を調製した。多糖は、分子構造が直鎖であり、非水溶性であった。ポリα-1,3-グルカンの両方の試料を下流の処理からウェットケーキとして回収した。多糖Aは、ウェットケーキとして64%の含水率を有し、多糖Bは、ウェットケーキとして83%の含水率を有していた。次いで、各ウェットケーキ多糖を(別々に)高剪断混合してコロイド分散液を形成し、以下に記載の通りに使用してセルロース/多糖複合材料を形成した(セルロース/多糖紙シートの実験室における調製の節を参照されたい)。
【0144】
ブルナウアー-エメット-テラー(BET)法により測定した多糖の比表面積をこれらの含水率(ウェットケーキとして)及び結晶化度と共に表1に示す。
【0145】
【表2】
【0146】
方法
多糖の含水率は、重量差により自動水分計(Ohaus MB25水分計)を用いて決定した。
【0147】
多糖のBET表面積は、以下の手順を用いて決定した。窒素吸着/脱離測定は、Micromeritics ASAP 2420型ポロシメーター上で77.3Kにおいて行った。データ収集前に試料を上記温度で<100μmHgにおいて12時間脱気した。表面積測定は、0.05~0.20P/Pにわたって集めた5点吸着等温を利用し、BET法により分析した[S.Brunauer,P.H.Emmett and E.Teller,J.Amer.Chem.Soc.,60,309(1938)]。細孔容積分布は、多点脱離等温を利用し、BJH法により分析した[E.P.Barrett,L.G.Joyner and P.P.Halenda,J.Amer.Chem.Soc.,73,373(1951)]。Pは、試料上の気体の圧力(一般的には液体窒素BP温度において)であり、Pは、測定される試料温度での飽和ガス圧である(典型的には77.3Kの窒素で760Torr)。
【0148】
多糖の結晶化度は、以下の手順を用いて広角X線散乱(WAXS)により決定した。
【0149】
グルカン粉末試料を、60℃に設定した真空オーブン中で最低2時間又は一晩乾燥した。試料を週末にかけて乾燥させることもあった。回折走査を開始する直前に試料をオーブンから取り出し、約幅1.5cm×長さ4cm×深さ4mmのウェルを有するステンレス鋼製ホルダー内に移した。ガラス板をホルダーの頂部にクリップで留め、粉末を側面から注ぐことができるようにウェルを側面で開けた。充填プロセスを通して、ホルダーの反対側をテーブルに繰り返し打ち付けることによって粉末を数回充填した。最後に、ホルダーを正しい向きに戻してガラス板を取り除き、ホルダーを回折計に装填した。オーブンを開けてから走査が開始されるまでの時間は、5分以内である必要がある。
【0150】
粉末のX線回折パターンを測定するために、反射モードのPANalytical X’Pert MRD粉末回折計を使用した。X線源は、光学集束ミラーと1/16°狭小スリットとを備えたCu X線管線源であった。X線は、1D検出器及び1/8°に設定された散乱防止スリットを用いて検出した。データは、1ステップ当たり0.1°において4~60°の2θの範囲で収集した。走査には合計で約46分間を要した。
【0151】
その後、得られたX線パターンを、7.2~30.5°までの直線ベースラインを差し引き、分析中のデータに適合するようにスケール合わせした既知のアモルファスグルカン試料のXRDパターンを差し引き、次いでその範囲の残りの結晶ピークを、既知の脱水グルカン結晶の反射に対応する一連のガウス曲線を用いてフィッティングすることにより分析した。その後、結晶ピークに対応する面積を、ベースラインを引いた曲線の下の総面積で割って結晶化指数を得た。
【0152】
セルロース/多糖複合材料の特性を評価するために次の試験方法を使用した。
・ISO536:2012-07 紙及び板紙 - 坪量の決定。ISO534:2011-11 紙及び板紙 - 厚さ、密度及び比容積の決定
・ISO1924-2:2008-12 紙及び板紙 - 引張強さの決定 - 第2部:定速伸張法(20mm/分)
・ISO1974:2012-05 紙 - 引裂強さの決定 - エルメンドルフ法
・DIN53120-1:1998-06 紙及び板紙の試験 - 透気度の決定 - 第1部:Bendtsenによる透気度の中間の割合
【0153】
セルロース/多糖紙シートの実験室における作製:
グルカン分散液を以下の通りに調製した。スラリーを、ミキサー(Dispermatディスクを有するEurostar power-b IKA-Werke)を使用して約1000rpmで20分間調製する。スラリーをUltra Turrax(ローターステーターミキサー、Janke&Kunkel IKA実験室装置Ultra-Turrax T50)中で更に混合して懸濁液を均質化した(7000rpmで2分間)。結果として、2.5重量%固形分で分散液を得た(合計で50gの乾燥ポリマーベース及び1950gの水)。
【0154】
セルロースパルプは、次の通りに調製した(ISO 5263-1:2004-09:実験室湿式離解 - 第1部:化学パルプの離解):20g(乾燥重量基準)のパルプ(50%ユーカリパルプ及び50%トウヒ(pine spruce)パルプの混合物)をパルプ離解機(Messmer Instruments Limited M158離解機MK.IIIC)中で25分間、2リットルの水道水中において75,000rpmでスラリー化した。
【0155】
パルプスラリー及びグルカン分散液を追加の水と混合して、ミキサー(Frank PTIパルプ懸濁液用実験室分散装置(12リットル))中で10,000リットルの水道水中に40グラムの乾燥固形物質の最終組成物を形成することにより、セルロースパルプ/多糖スラリーを調製した。保持損失を考慮して、最終目標組成に対して20%過剰の多糖を添加したことに留意されたい。
【0156】
保持剤の調製は、次の通りに行った。2.48mLの保持剤(Polymin VT 1%原液)を、セルロース/多糖紙シートを製造するために使用する各スラリー中に添加した。
【0157】
手漉き紙の製造は、次の通りに行った(ISO5269-2:2004-11:物理的試験用の試験シートの作製 - 第2部:Rapid-Koethen法):セルロースパルプと多糖との混合物を手漉き紙形成機(Estanit HAAGE Rapid-Koethenシート形成機)内で脱水し、真空乾燥機(Estanit HAAGE Rapid-Koethen真空乾燥機)内で15分間、94℃で乾燥させることにより手漉き紙を形成した。
【0158】
セルロース/多糖紙シートを以下の手順に従ってNaOHで処理した。紙シートをスクリーン上に支持し、2.5重量%のNaOH中に60秒間浸漬した。その後、紙を2%酢酸溶液に移してNaOHを中和し、次いで中性のpHに達するまで水で更に洗浄した。紙を室温で4分間予備乾燥し、次いで真空乾燥機(Estanit HAAGE Rapid-Koethen真空乾燥機)に8分間移した。
【0159】
比較例Aの紙シート(対照)は、多糖を使用しなかった以外には同じ方法で調製した。
【0160】
紙の組成及びそれらの特性を以下の表に示す。
【0161】
【表3】
【0162】
【表4】
【0163】
全体として、セルロース/多糖複合材料中の多糖の非常に高い添加量(最大75%)が、主要な特性を失うことなしに実証された。特に、多糖Bは、伸びを増加させ透気度を減少させながら(最大6桁)、大幅に引張強さを増加(最大40%)させることができた(表2を参照されたい)。グルカンを含有する全ての紙は、NaOHで処理した場合に対照よりも改善された引張強さを有していた。また、未処理の紙と比較して、試験した全ての組成物において透気度の減少が顕著であった(全ての場合において6桁減少 - 表3を参照されたい)。そのような低い透気度の強力(高い引張指数及び大きい伸び)紙は、湿気、酸素及び鉱油に対するバリア性が望まれる用途において魅力的である。これらのバリア特性のいくつかは、紙に適切な熱可塑性ポリマーをコーティングすることによって得られるものの、セルロース/多糖複合材料は、バイオベース(再生可能)及び生分解性の製品が望まれる用途において比類なく有利である。