(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】電非磁発射装置の効率を向上させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F03H 99/00 20090101AFI20220818BHJP
F41F 3/04 20060101ALI20220818BHJP
B64G 1/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
F03H99/00 B
F41F3/04
B64G1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019547675
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(86)【国際出願番号】 IB2018051354
(87)【国際公開番号】W WO2018158746
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】312000387
【氏名又は名称】8 リバーズ キャピタル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】パーマー,マイルズ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ホージ,カム
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516172(JP,A)
【文献】特開平04-086496(JP,A)
【文献】国際公開第2008/010180(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03H 99/00
F41F 3/04
B64G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電非磁発射システムの効率を向上させるための方法であって、前記方法は、
発射輸送手段の推進システムに電力を与えるべく電源からの電流を発射チューブ内に配置された導体を通じて前記発射輸送手段上の電気接点に伝えることにより、前記発射チューブを通じて前記発射輸送手段を加速する
ことと、
前記発射チューブの導体と前記発射輸送手段の電気接点との間以外の前記発射チューブでの電流の流れを実質的に防ぐ
ことであって、前記電流の流れを実質的に防ぐことは、以下の:
前記発射チューブが始端及び終端を備え、前記電源が、前記電流を前記終端から前記始端の方へ供給するべく前記発射チューブの終端の近傍に配置され、前記発射チューブが、前記発射輸送手段が前記発射チューブを通って加速する際に前記発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終える複数の要素を備えることと、
前記方法が、前記発射輸送手段が前記発射チューブを通って加速する際に前記発射チューブと前記発射輸送手段との間に配置されるイオン化クエンチガスのシースを形成することを含むことと、
前記方法が、前記発射輸送手段が前記発射チューブを通って加速する際に前記発射輸送手段に追従する磁力を発生させることを含み、前記磁力が、加速する発射輸送手段の後ろに生じるどのような電流も前方へ移動させ、前記発射チューブにおける導体を通じて前記発射輸送手段上の電気接点に流される電流と合流させるのに効果的であることを含むことと、
のうちの1つ以上に起因することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終える複数の要素が
存在し、固体スイッチ、爆発スイッチ、ヒューズ、及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終える複数の要素が
存在し、時間に基づくスイッチング構成、所定のコンピュータアルゴリズムにより制御される構成、機械的にトリガされる構成、光学的にトリガされる構成のうちの1つ以上により定義される、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン化クエンチガスのシースが
存在し、前記発射輸送手段からの前記ガスのベントにより実質的に前記発射輸送手段の周縁部の周りに形成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン化クエンチガスのシースが
存在し、前記発射チューブからの前記ガスのベントにより実質的に前記発射チューブの周縁部の周りに形成される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記発射チューブの任意の所与の区域でのイオン化クエンチガスのベントが、前記発射輸送手段が前記発射チューブの前記所与の区域を通過し加速する前に始まり、前記イオン化クエンチガスのベントが、前記発射輸送手段が前記発射チューブの前記所与の区域を通過し加速した後に終わる、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記発射輸送手段に追従する磁力が発生され、前記発射チューブが、前記発射チューブの動作に必要とされる最小インダクタンス勾配を上回るインダクタンス勾配をもたらす、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記発射チューブに沿って間隔をおいて配置され、前記発射チューブの所定の区域でのみ前記発射チューブに電流を別個に伝えるように構成された複数の電源を備え、前記複数の電源のそれぞれが、前記発射輸送手段が前記それぞれの電源により電力を与えられる前
記発射チューブの所定の区域を通過し加速する期間のみ電力供給のために作動される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
発射システムであって、
電源と前記電源からの電流を伝えるように構成された導体とを含む発射チューブと、
前記発射チューブを通る発射輸送手段を加速するように構成された推進システムと、前記電流を前記発射チューブの導体から前記推進システムへ伝達するように構成された電気接点とを含む発射輸送手段と、
を備える、発射システムであり、
前記発射システムが、前記発射チューブの導体と前記発射輸送手段の電気接点との間以外の前記発射チューブでの電流の流れを実質的に防ぐように構成され
、
前記発射チューブが、前記発射チューブの動作に必要とされる最小インダクタンス勾配を上回るインダクタンス勾配を有するように構成される、発射システム。
【請求項10】
前記発射チューブが始端及び終端を備え、前記電源が、前記発射チューブの終端の近傍に配置され、前記電流を前記終端から前記始端の方へ供給するように構成され、前記発射チューブが、前記発射輸送手段が前記発射チューブを通って加速する際に前記発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終えるように構成された複数の要素を備える、請求項
9に記載の発射システム。
【請求項11】
前記発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終えるように構成された複数の要素が、固体スイッチ、爆発スイッチ、ヒューズ、及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項
10に記載の発射システム。
【請求項12】
前記発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終えるように構成された複数の要素が、時間に基づくスイッチング構成、所定のコンピュータアルゴリズムにより制御される構成、機械的にトリガされる構成、光学的にトリガされる構成のうちの1つ以上により定義される、請求項
10に記載の発射システム。
【請求項13】
イオン化クエンチガスの供給源と、前記発射チューブと前記発射輸送手段との間のスペースに前記イオン化クエンチガスを放出するように構成された1つ以上のベントとを備える、請求項
9に記載の発射システム。
【請求項14】
前記1つ以上のベントが前記発射輸送手段上に設けられる、請求項
13に記載の発射システム。
【請求項15】
前記1つ以上のベントが前記発射チューブ上に設けられる、請求項
13に記載の発射システム。
【請求項16】
前記発射チューブに沿って配置された複数の前記ベントと、前記発射輸送手段の接近通過と組み合わせて前記ベントを順次に開閉するように構成された制御要素とを備える、請求項
15に記載の発射システム。
【請求項17】
前記発射チューブに沿って間隔をおいて配置され、前記発射チューブの所定の区域でのみ前記発射チューブに電流を別個に伝えるように構成された複数の電源を備え、前記複数の電源のそれぞれが、前記発射輸送手段が前記それぞれの電源により電力を与えられる前記発射チューブの所定の区域にあるときにのみ電力供給のために作動するように構成される、請求項
9に記載の発射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、種々のアイテムの発射のためのシステム、方法、及び装置に関する。より具体的には、本開示は、電非磁発射システム及び方法の効率の向上を提供する。
【背景技術】
【0002】
地球飛行及び/又は宇宙飛行により種々のアイテムを1つの場所から別の場所へ比較的低コストで送達するための電非磁(electroantimagnetic)(EAM)発射システムが以前に提案されている。例えば、パルマー(Palmer)他の米国特許公報第2014/0306065号を参照されたい。このようなEAM発射システムは所望の結果をもたらすことができるが、当該分野では、このようなシステムの効率及びこのようなシステムを実装する方法を向上させる必要性が残っている。
【発明の概要】
【0003】
1つ以上の実施形態において、本開示は、電非磁発射システムの効率を向上させるための方法を提供することができる。例えば、このような方法は、発射輸送手段の推進システムに電力を与えるべく電源からの電流を発射チューブ内に配置された導体を通じて発射輸送手段上の電気接点に伝えることにより発射チューブを通る発射輸送手段を加速するステップと、発射チューブの導体と発射輸送手段の電気接点との間以外の発射チューブでの電流の流れを実質的に防ぐステップとを含むことができる。さらなる実施形態では、このような方法は、任意の数及び順序で組み合わせることができる以下の文のうちの1つ以上に関連して定義することができる。
【0004】
発射チューブは、始端及び終端を備えることができ、電流を終端から始端の方へ供給するべく発射チューブの終端の近傍に電源を配置することができ、発射チューブは、発射輸送手段が発射チューブを通って加速する際に発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終える複数の要素を備えることができる。
【0005】
発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終える複数の要素は、固体スイッチ、爆発スイッチ、ヒューズ、及びその組み合わせからなる群から選択することができる。
【0006】
発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終える複数の要素は、時間に基づくスイッチング構成、所定のコンピュータアルゴリズムにより制御される構成、機械的にトリガされる構成、光学的にトリガされる構成のうちの1つ以上により定義することができる。
【0007】
方法は、発射輸送手段が発射チューブを通って加速する際に発射チューブと発射輸送手段との間のスペースに効果的に配置されるイオン化クエンチガスのシースを形成することを含むことができる。
【0008】
イオン化クエンチガスのシースは、発射輸送手段からのガスのベントにより実質的に発射輸送手段の周縁部の周りに形成することができる。
【0009】
イオン化クエンチガスのシースは、発射チューブからのガスのベントにより実質的に発射チューブの周縁部の周りに形成することができる。
【0010】
発射チューブの任意の所与の区域でのイオン化クエンチガスのベントは、発射輸送手段が前記発射チューブの所与の区域を通過し加速する前に始めることができ、イオン化クエンチガスのベントは、発射輸送手段が前記発射チューブの所与の区域を通過し加速した後で終えることができる。
【0011】
方法は、発射輸送手段が発射チューブを通って加速する際に発射輸送手段に追従する磁力を発生させることを含むことができ、前記磁力は、加速する発射輸送手段の後ろに生じるどのような電流も前方へ移動させ、発射チューブにおける導体を通じて発射輸送手段上の電気接点に流れた電流と合流させるのに効果的である。
【0012】
発射チューブは、発射チューブの動作に必要とされる最小インダクタンス勾配を上回るインダクタンス勾配を提供することができる。
【0013】
方法は、発射チューブに沿って間隔をおいて配置され、発射チューブの所定の区域でのみ発射チューブに電流を別個に伝えるように構成された複数の電源を用いることを含むことができ、複数の電源のそれぞれは、発射輸送手段がそれぞれの電源により電力を与えられる発射チューブの所定の区域を通過し加速する期間のみ電力供給のために作動することができる。
【0014】
1つ以上の実施形態において、本開示は、同様に、改良された発射システム、特に、輸送手段の電非磁発射用に構成されたシステムを提供することができる。例えば、このような発射システムは、電源と電源からの電流を伝えるように構成された導体とを含む発射チューブと、発射チューブを通る発射輸送手段を加速するように構成された推進システムと電流を発射チューブの導体から推進システムへ伝達するように構成された電気接点とを含む発射輸送手段とを備えることができ、発射システムは、発射チューブの導体と発射輸送手段の電気接点との間以外の発射チューブでの電流の流れを実質的に防ぐように構成される。さらなる実施形態では、このようなシステムは、任意の数及び順序で組み合わせることができる以下の文のうちの1つ以上に関連して定義することができる。
【0015】
発射チューブは、始端及び終端を備えることができ、電流を終端から始端の方へ供給するように構成された電源を発射チューブの終端の近傍に配置することができ、発射チューブは、発射輸送手段が発射チューブを通って加速する際に発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終えるように構成された複数の要素を備えることができる。
【0016】
発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終えるように構成された複数の要素は、固体スイッチ、爆発スイッチ、ヒューズ、及びその組み合わせからなる群から選択することができる。
【0017】
発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終えるように構成された複数の要素は、時間に基づくスイッチング構成、所定のコンピュータアルゴリズムにより制御される構成、機械的にトリガされる構成、光学的にトリガされる構成のうちの1つ以上により定義することができる。
【0018】
発射システムは、イオン化クエンチガスの供給源と、発射チューブと発射輸送手段との間のスペースにイオン化クエンチガスを放出するように構成された1つ以上のベントとを備えることができる。
【0019】
イオン化クエンチガスを放出するための1つ以上のベントは、発射輸送手段上に設けることができる。
【0020】
イオン化クエンチガスを放出するための1つ以上のベントは、発射チューブ上に設けることができる。
【0021】
イオン化クエンチガスを放出するための複数のベントは、発射チューブに沿って配置することができ、発射輸送手段の接近通過と組み合わせてベントを順次に開閉するように制御要素を設ける及び構成することができる。
【0022】
発射チューブは、発射チューブの動作に必要とされる最小インダクタンス勾配を上回るインダクタンス勾配を有するように構成することができる。
【0023】
発射システムは、発射チューブに沿って間隔をおいて配置され、発射チューブの所定の区域でのみ発射チューブに電流を別個に伝えるように構成された複数の電源を備えることができ、複数の電源のそれぞれは、発射輸送手段がそれぞれの電源により電力を与えられる発射チューブの所定の区域にあるときにのみ電力供給のために作動するように構成することができる。
【0024】
本開示をこのように上記の一般的な用語で説明したが、ここで、必ずしも縮尺通りではない、添付図の参照を行う。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】発射輸送手段が導電性の発射チューブ内に配置されている、本開示の例示的な実施形態に係る発射システムの側断面図である。
【
図2】発射チューブを電気エネルギー源と関連付けて示す、本開示の例示的な実施形態に係る発射システムの概略図である。
【
図3】発射輸送手段が、発射チューブの所定のセグメントへの電流の供給を可能又は不可能にするための、複数の独立して開閉可能なスイッチを含む導電性の発射チューブ内に配置されている、本開示の例示的な実施形態に係る発射システムの側断面図である。
【
図4】発射輸送手段が、発射チューブの所定のセグメントに電流を別個に供給することができる複数の独立した電気エネルギー源を含む導電性の発射チューブ内に配置されている、本開示の例示的な実施形態に係る発射システムの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで本発明を以下により十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてよく、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分且つ完全となり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供される。本明細書及び請求項で用いられる場合の、単数形(「一」、「一つ」、及び「その」)は、文脈上他の意味に明白に規定される場合を除き、複数の指示対象を含む。
【0027】
1つ以上の実施形態において、本開示は、或る場所間の地球飛行又は宇宙飛行に望ましい輸送手段、発射体、又は任意の装置若しくは物体の電非磁(EAM)発射に有用なシステム及び方法を提供する。EAM発射装置、EAM発射システム、及びEAM発射方法は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれるパルマー(Palmer)他の米国特許公報第2014/0306065号に記載されている。そこで開示されたように、EAM発射システムは、推進剤供給源、推進剤供給源からの推進剤を加熱するための電気ヒータ、電気ヒータと電気接触し且つ発射チューブと電気接触する摺動接点、電気ヒータと流体連通し、1つ以上の加熱された推進剤又はその成分を吐出するように適合されたエキスパンションノズル、及び発射装置のさらなる構成要素のうちの1つ以上と機械的に接続するペイロードのうちの1つ以上を備え得る発射装置に電気エネルギーを提供するべく電気エネルギー源と電気接続する発射チューブを備えることができる。このような発射システムでは、電力を、定置電源から真空チューブにおける1つ以上の導体を介して電気ロケットに与えることができる。システムは、発射を達成するのにごく短い推力持続時間を必要とする高い推力対重量比を有する比較的軽量のエンジンを使用することができる。
【0028】
EAM発射システムは、発射チューブ内で発生するどのような磁場も最小にすることが望ましいという点で、電磁(EM)発射装置とは異なる。したがって、推進を誘起磁場に頼る(EM発射装置のように)のではなく、EAM発射装置は、別個の推進システムを使用し、発射輸送手段と共に用いられる電気接点上の磁場エネルギー損失及び磁気力を回避するために磁場発生を最小にしようとするものである。電気接点を破壊することがある局所電流及び磁気力を最小にするための1つの手段は、発射チューブに沿って配置される複数の電源の使用と関係づけることができる。本開示は、発射輸送手段の電気接点以外の領域での発射チューブの導体間のどのような望ましくない電流伝導も実質的に防ぐための複数の選択肢を提供することによりこのような手段を改良することができる。発射輸送手段の電気接点とは無関係のどのような電流の流れも、発射装置の効率を下げ、発射チューブへの損傷の可能性を高める結果を有することがあるため、発射チューブでの電流の流れを実質的に発射輸送手段の電気接点のみに限定することが望ましい。
【0029】
本明細書に記載のシステム及び方法は、上記の米国特許第20014/0306065号に記載のものを含む、あらゆるEAM発射輸送手段、EAM発射システム、及びEAM発射方法に適用することができる。例えば、本システム及び方法は、発射輸送手段200が発射チューブ100内に配置されている、
図1に示す発射システム20と共に用いられてよい。発射チューブ100は、1つ以上の絶縁層により分離される複数の同軸の導電性のチューブを備えることができる。代替的に、発射チューブは、1つ以上の絶縁層により分離される複数の導電層を備える単一の多層チューブを備えることができる。
図1に例示したように、発射チューブ100は、内側導電チューブ130から離して配置され、且つ絶縁体120により分離される、外側導電チューブ110を備える。外側導電チューブ110及び内側導電チューブ130は、金属又は金属合金などの任意の適切な導電性材料で形成することができる。いくつかの実施形態では、導電チューブの壁は、2つ以上の異なる材料の層を備えることができる。例示的な実施形態として、内側導電チューブと外側導電チューブのうちの一方又は両方は、スチール、アルミニウム、又はアルミニウム合金を含むことができる。好ましい実施形態において、内側導電チューブと外側導電チューブのうちの一方又は両方の最内層は、タングステン、レニウム、又は硬化銅などの高温耐摩耗導電性材料を含むことができる。
【0030】
外側導電チューブ及び内側導電チューブの壁は、1つ以上の摺動接点を受け入れるように適合される様々な幾何学的形状の1つ以上のスロットトラックを有することができる。
図1の断面は、内側導電チューブ130及び絶縁体120におけるスロットトラック112を通る(内側チューブ及び絶縁体の一部は、スロットトラックの中の摺動接点を明らかにするために切り取られている)。スロットトラック112は、外側導電チューブ110と発射チューブに沿って摺動するように構成された外側電気接点115との電気接続を提供する。内側摺動電気接点135も、内側導電チューブ130と電気接続する状態で例示されている。スロットトラックは、チューブと電気接点との適正な接触を容易にし、チューブの導体間のアーク放電を防ぐか又は大幅に低減するのに効果的とすることができ、また、発射輸送手段200を位置合わせし、発射チューブ100内でのその回転を実質的に防ぐようにも作用する。位置合わせアーム113a及び113bは、それぞれ摺動電気接点115及び135と物理的に接触した状態とすることができ、また、電気ヒータ220とも物理的に接触した状態とすることができる。位置合わせアームは、好ましくは、必要に応じて絶縁層を含むことができる、スチール、アルミニウム、又は別の金属又は金属合金などの、高強度の、剛性の、導電性材料を備える。摺動電気接点は、最小限の電圧降下で導電チューブの壁とのアーク放電摺動接点(例えば、プラズマブラシ)を画定することができる。アークは、摺動絶縁周面を用いることなどの機械的封じ込めにより閉じ込められ得る。他の実施形態では、アークは、接点から伝わる電流により発生しうる磁力により閉じ込められ得る。特に、接点は、磁力を発生させるように適合された電流ループを画定し得る。いくつかの実施形態では、磁力は、発射装置上に存在し得る内蔵電源又は物体により発生させることができる。例として、磁力は、超電導磁石であり得る磁石により発生させることができる。特定の実施形態では、摺動接点パッドが、プラズマブラシとして機能するように構成され得る。
【0031】
発射装置200は、ペイロード240、推進剤タンク230、電気ヒータ220、及びエキスパンションノズル210を備える。使用中に、
図1に示すように、電気エネルギーが電気エネルギー源(
図2の要素300を参照されたい)から電気配線170を通って流れる。例示したように、電気エネルギーは、電気配線170から外側導電チューブ110へ流れ、プラズマアーク接点517により摺動接点115へ流れ、位置合わせアーム113bを通って電気ヒータ220へ流れる。電気ヒータ220から位置合わせアーム113a及び摺動接点135を通ってプラズマアーク接点517により内側導電チューブ130へ通じることにより電気路が完成する。推進剤タンク230からの推進剤が、電気ヒータ220内で加熱され、ノズル210を通って膨張することにより、発射チューブ100を通る発射装置200を加速する。このような実施形態では、推進は、プラズマが介在する電流伝導により電力を与えられる電気ロケット推進により進むものとして特徴付けることができる。発射装置200はまた、推進剤タンク230から電気ヒータ220への推進剤の通過を誘起するように構成することができる。推進剤のポンピングは、例えば、50MWすなわち約70,000HPの範囲内の多大な電力入力を必要とすることがある。好ましくは、推進剤の通過を誘起するための電力を、非常に軽量の形態で提供することができる。例えば、推進剤タンク230は適切に加圧することができる。圧力をもたらすために推進剤タンク230の内部に配置される電気ヒータにレールパワーを用いることができる。いくつかの実施形態では、レールパワーにより駆動されるリニア空心電磁コイルが、推進剤タンク230の内部のピストンを駆動するのに用いられ得る。さらなる実施形態では、レールパワーを与えられる空心電気モータ及びタービンが、推進剤を推進剤タンク230から電気ヒータ220にポンピングするのに用いられ得る。
【0032】
プラズマが介在する伝導は、導電チューブ110及び130と摺動接点115及び135との間のプラズマアーク接点517で起こる。いくつかの実施形態では、摺動接点115及び135は、最初にそれぞれ外側導電チューブ110及び内側導電チューブ130と直接物理的に接触する。摺動接点が定置されたチューブに接した状態に保たれるように、所定の接触力をかけることができる。摺動接点の接触面は、摺動接点が導電チューブに沿って移動する際に気化するように構成することができ、したがって、気化した材料が、摺動接点と導電チューブとの間にプラズマアーク接点517を形成することができる。好ましくは、接触面の気化は、接触面と導電チューブとの間に所定のギャップが達成されるときに安定化する。所定のギャップは、約0.1乃至約50ミクロンとすることができる。この範囲内の小さいギャップは、望ましくは損失を最小にすることができる低電圧を有するプラズマの薄層を達成するのに有益である。この目的のために、所定のギャップは、5000ミクロン未満、1000ミクロン未満、500ミクロン未満、又は100ミクロン未満(より小さいギャップサイズは約0.1ミクロン)であることが好ましい。プラズマアーク接点での粘性摩擦相互作用により、移動する摺動接点上の摩擦剪断によって失われた材料を補充するべくチューブから材料が継続的に気化することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、発射輸送手段の摺動接点は、発射チューブを形成するのに用いられる材料よりも高い硬度レベルの材料で形成することができる。発射チューブを下っていく発射輸送手段に犠牲的にクッションを与えるために比較的より軟質の発射チューブ材料を用いることができる自動高速補修システムの実装により、本明細書に記載の構成を踏まえると、発射チューブへの可能性のある損傷は取るに足りないものとなる。
【0034】
発射チューブへのどのような損傷も、意図せぬものであるか又は上記の犠牲的なクッション作用に関係するものであるかにかかわらず、自動高速測定・補修システムを用いて識別し、修復することができる。本システム及び方法は、迅速な繰返しの発射を提供する能力から恩恵を受ける。この特徴を促進するために、高速自動診断・補修システムは、各発射間で又はいくつかの発射毎に、発射チューブを横断し、発射チューブの完全性を測定し、必要に応じて修復を実施するように構成することができる。例示的な実施形態では、システムは、3つの独立した区域を備えることができる。第1の区域及び第3の区域は、加速度センサ、振動センサ、摺動パッド電気抵抗ピックアップ、高速プロフィロメータ、及びイメージングシステムを含むことができる。第2の区域は、導電性フィラー材料をレール上に蒸着し、絶縁体上の材料を電気的に絶縁するための、スプレー又は他の公知の蒸着システムを含むことができる。第1の区域は、何らかの欠陥を診断及び定量化するように構成することができ、第2の区域は、その後、第1の区域により必要と識別される何らかの修復を実施することができ、第3の区域は、第2の区域によりなされた修復が発射チューブを所定の許容差範囲内で発射に必要とされる条件に戻すことを検証するように構成することができる。
【0035】
図2を参照すると、始端103とメイン発射チューブ区域105と発射チューブ終端107とを備える発射チューブ100に電気エネルギーを供給するべく電気エネルギー源300を設けることができる。エネルギー源300は、送配電網又は専用発電システム375などから、必要に応じて定期的に再充電することができる。或る実施形態では、電気エネルギー源300は、バッテリバンクを備えることができる。例えば、鉛蓄電池(例えば、自動車用バッテリ)の直並列の組み合わせが用いられ得る。電気エネルギーをオンデマンドで提供するのに適した任意のさらなるバッテリ又はバッテリ一式が同様に用いられ得る。特定の実施形態では、インダクタが充電状態にある間にバッテリバンクがインダクタを充電するように、インダクタ350をバッテリバンクと発射チューブとの間に配置することができる。その後、インダクタ350を放電状態に切り換えることができ、この場合、インダクタは発射チューブに放電する。使用中に、発射輸送手段200は、最初に、発射チューブ100の内部の、発射チューブの始端103にあるステージングステーション109の付近に配置される。発射システム20は、ペイロード準備・発射操作ビルディング400及びグリッド接続又は発電システム375などの
図2に例示したさらなる要素を備えることができる。簡単に言えば、使用中に、電気エネルギーが、充電済みの電気エネルギー源300から電線301によりインダクタ350に伝達され、次いで、電線351を通じて発射チューブ100に伝達される。インダクタが存在し得るが、本開示はまた、インダクタが使用から明確に除外される実施形態を包含する。例えば、非常に高率の液バッテリなどの電源が、発射装置に直接電力を与えるのに適し、インダクタの必要性を一切なくすことができる。
【0036】
電線351は、
図1に示した電気配線170と相互に関連付けるか又は相互接続することができる。電気エネルギーが、導電性の発射チューブを通って種々の機構(例えば、摺動接点、プラズマアーク伝達、導電チューブ通過、及び発射チューブボア通過を用いる)により電気ヒータ220へ流れる。推進剤タンク230からの推進剤が、電気ヒータ220内で加熱され、エキスパンションノズル210を出ることにより、発射チューブ100を下る発射輸送手段200を加速する。上記に加えて、EAM発射システム及び/又は発射輸送手段は、前述の米国特許公報第2014/0306065号に記載のさらなる要素のいずれかを含むことができる。
【0037】
発射チューブ100は、実質的に水平に配置することができる。これは、ペイロードが迅速に大気を脱出するための可能な最高角度で発射されるようにするために大いに傾斜した発射チューブを必要とする公知の「砲」又はカタパルトシステムとは明確な対比である。本開示では、発射チューブは、水平面に対して0°乃至約15°、好ましくは0°乃至約10°又は0°乃至約5°の角度をなすことができる。いくつかの実施形態では、実質的に水平な発射(すなわち、上記の角度での)後に発射装置をピッチアップし、大気中で所望の上昇角を達成するのに、極超音速滑空飛翔体を用いることができる。
【0038】
1つ以上の実施形態において、発射チューブの出口は、特に、地表面よりも下となるように配置される。例えば、発射チューブは、出口が崖の表面などの近傍の場所では地面よりも下に配置され得る。真空発射チューブからの出口を地面よりも下の場所にある空中へ配置することは、比較的狭い又は厳密に寸法設定された発射開口部を設けることと組み合わせることができる。厳密に寸法設定された発射開口部は、その最大ポイントで発射装置の外寸を20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下だけ上回る寸法を有する開口部として定義することができる。厳密に寸法設定された発射開口部の使用は、「針に糸を通す」、すなわち発射装置が野外に達するために開口部を通ることを必要とし、これにより、野外に達する発射装置は、熱シールド及び/又は適正な様態で正確に動作しているガイダンスシステムを確実に有することになる。したがって、要求される状態外の動作パラメータは、結果的に発射装置を地下発射施設外の野外に達する前に破壊させることになり、これは発射プロセスの安全保障を顕著に向上させることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、発射装置は、ニュートラル又はネガティブの空中安定性を呈するように構成することができる。したがって、ピッチの発散及び付随する輸送手段破壊を回避するために、発射中に能動的安定化が継続的に図られなければならない。この継続的安定化の要件も同様に、発射プロセスの安全保障を劇的に向上させることができる。
【0040】
発射装置出口のフェイルセーフ監視システムの実装を通じて安全性をさらに高めることができる。例えば、発射システムは、シャットダウン命令を継続的に送達するソフトウェア又は類似の要素を含むことができるが、このような命令は、所定のパラメータが維持される限り能動的に抑制される。所定のパラメータは、システムが適正に機能していることを示す任意の1つ以上のパラメータを含むことができる。例えば、発射輸送手段遠隔測定システムは、発射輸送手段の完全性の適正なメンテナンスを示す信号及び/又は発射プロセスが事前に計画されたプロファイルに従って進んでいることを示す信号を送信するように構成することができる。システムは、所定の頻度(例えば、1ミリ秒乃至100ミリ秒の範囲内)での所定のパラメータの送信を含むことができる。発射輸送手段遠隔測定システムが、単一の要求される適正機能信号の送信に失敗するか又は特定の数の要求される適正機能信号の送信に失敗する場合、シャットダウン命令の能動的抑制を止め、発射のシャットダウンが開始されることになる。
【0041】
発射プロセスの突然の失敗につながるどのような事象も、発射チューブの顕著に長いセグメントで伝搬する破局的な破壊につながることがある。発射プロセスがメインシステムコントローラによりシャットダウンされる状況でさえも、発射チューブを通る発射装置の速度が、発射チューブの大部分に沿った様々なレベルの損傷をもたらすことがある。いくつかの実施形態では、これは、発射チューブに沿って周期的に配置される強力な高性能爆薬の使用により少なくとも部分的に防ぐことができ、この爆薬は、発射輸送手段の構造完全性を非常に迅速に壊し、したがって、発射輸送手段を非常に短い時間及び距離で自爆させ、これにより、発射チューブの長い距離にわたる損傷を許すのではなく発射システムの損傷を短い距離に限定するべく、適正な場所で起爆させることができる。さらなる実施形態では、発射チューブ出口に配置される高出力レーザ(又は発射チューブの長さに沿って配置される一連のレーザ)を、発射チューブを下って近づいてくる発射輸送手段へ誘導することができる。発射のシャットダウンを必要とする条件又は破局的な発射失敗を取り巻く条件下で、発射輸送手段の構造完全性を非常に迅速に壊すことにより、発射輸送手段を非常に短い時間及び距離で自爆させ、これにより、発射チューブの長い距離にわたる損傷を許すのではなく発射チューブの損傷を短い距離に限定するのにレーザを用いることができる。
【0042】
上記に加えて、本システムは、自由飛行レーザ破壊システムを含むことができる。発射で起こる或るタイプの失敗は、本明細書で述べたさらなるフェイルセーフ機構のうちの1つ以上を損傷させる場合がある。同様に、発射チューブから発射輸送手段が出た後に失敗が起こり得る。したがって、いくつかの実施形態では、本システムは、飛行中の発射輸送手段を破壊するように構成される高出力レーザシステムを含むことができる。
【0043】
本開示の方法及びシステムは、EAM発射システムの効率を向上させ、また、発射輸送手段の電気接点への電流の流れとは別の発射チューブ内の望ましくない電流状態から生じるEAMシステム及び輸送手段への損傷を防ぐのに特に有用である。したがって、1つ以上の実施形態において、EAM発射システムの効率を向上させるための方法は、発射輸送手段の推進システムに電力を与えるべく電源からの電流を発射チューブ内に配置された導体を通じて発射輸送手段上の電気接点に伝えることにより発射チューブを通る発射輸送手段を加速するステップと、発射チューブの導体と発射輸送手段の電気接点との間以外の発射チューブでの電流の流れを実質的に防ぐステップとを含むことができる。これに関しての電流の流れを実質的に防ぐことは、種々の手段を通じて達成することができる。
【0044】
1つ以上の実施形態において、発射輸送手段の後ろの導電チューブからの電気出力を制限すること又は防ぐことにより、望ましくない電流の流れを実質的に防ぐことができる。発射輸送手段を出る排気は非常に高温となることがあり、この高温は、アークジェット、高性能レジストジェットロケットモータなどにより推進をもたらすときに期待される。このような排気は、発射チューブを下って加速する際の発射輸送手段の後ろの領域における発射チューブの導体間で電流を伝えるのに十分なイオン化を呈することができる。このような望ましくない電流の流れを実質的に防ぐために、特定の構成を有するべく本明細書に記載の発射システムを提供することが有用であり得る。
【0045】
本開示のいくつかの実施形態に係る発射システムは、電源と電源からの電流を伝えるように構成された導体とを含む発射チューブと、発射チューブを通る発射輸送手段を加速するように構成された推進システムと電流を発射チューブの導体から推進システムへ伝達するように構成された電気接点とを含む発射輸送手段とを備えることができる。いくつかの実施形態では、電源が発射チューブの終端の近傍に配置され、且つ、電流を終端から始端の方へ供給するように構成されるように、発射システムを構成することが有益であり得る。代替的に又は加えて、電源はまた、発射チューブの始端の近傍に及び/又は発射チューブの長さに沿った複数の場所に存在してよい。
【0046】
1つ以上の実施形態において、発射チューブは、発射輸送手段が発射チューブを通って加速する際に発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終えるように構成された複数の要素を含むことができる。電流の供給を終えることは、固体スイッチ、爆発スイッチ、ヒューズなどを用いることなどの任意の適切な方法により達成することができる。スイッチは、時間に基づいてよく、他の方法で所定のコンピュータアルゴリズムにより制御されてよく、又は発射輸送手段の通過により(例えば、機械的トリガ又は光学トリガなどのトリガにより)明確にトリガされてよい。
図3に移ると、例えば、発射チューブ100は、発射輸送手段200が発射チューブを通って加速するのとは反対方向に(すなわち、終端から始端の方へ)流れる電流を電気配線170により供給する電気エネルギー源300を発射チューブの終端107の近傍に含む。発射チューブ(簡単にするために部分的にのみ示される)は複数の電気スイッチ143を含み、例示したように、発射輸送手段200から前方に、発射チューブ100に(したがって発射輸送手段に)電流を供給するために閉スイッチ143aが構成され、発射輸送手段から後方で、開スイッチ143bが、発射チューブに電流を流さないように構成される。スイッチ(又は他の等価な要素)は、発射輸送手段が発射チューブを通って加速する際に発射輸送手段の後方への電流の供給を順次に終えるように構成することができる。
【0047】
1つ以上の実施形態において、発射チューブと発射輸送手段との間に電流障壁を設けることにより、望ましくない電流の流れを実質的に防ぐことができる。特に、発射チューブと発射輸送手段との一方又は両方は、イオン化クエンチガスの供給源と、発射チューブと発射輸送手段との間のスペースにイオン化クエンチガスを放出するように構成された1つ以上のベントとを含むことができる。例えば、発射輸送手段は、推進剤としての使用のための水素ガスの供給源を含んでよく、水素ガスの一部は、イオン化クエンチガスとしてベントされてよい。他のガスが用いられてもよい。発射輸送手段からガスがベントされるいくつかの実施形態では、ベントは、発射輸送手段の実質的に全長に沿って又は個別の位置に(例えば、発射輸送手段の前及び/又は後に)設けられてよい。もちろん、発射輸送手段は、ガスを所望の場所に所望の時間、速度、及び濃度で提供するのに必要な、任意の必要なポンプ、バルブ、配管などを含み得る。このようなさらなる要素はまた、そこからガスをベントするために発射チューブ内に存在し得る。いくつかの実施形態では、イオン化クエンチガスのシースは、発射輸送手段からのガスのベントにより実質的に発射輸送手段の周縁部の周りに形成することができる。他の実施形態では、イオン化クエンチガスのシースは、発射チューブからのガスのベントにより実質的に発射チューブの周縁部の周りに形成することができる。
図3に例示したスイッチと同様に、複数のベントが、発射チューブの長さに沿って同様に配置されてよく、ガスが任意の所望のパターンに従ってベントされてよい(例えば、発射チューブを通る発射輸送手段の加速の持続時間にわたる発射チューブの全長に沿ったベント、発射輸送手段の通過後に終えられる発射輸送手段の前方のベント、発射輸送手段の後方のみのベント、発射輸送手段の通過直前にベントし、発射輸送手段の通過後の任意の時点で終える;など)。特定の実施形態では、発射チューブの任意の所与の区域からのイオン化クエンチガスのベントは、発射輸送手段が前記発射チューブの所与の区域を通過し加速する前に始めることができ、イオン化クエンチガスのベントは、発射輸送手段が発射チューブの所与の区域を通過し加速した後で終えることができる。
【0048】
推力を促進するためにプラズマ発生器としてガス噴射器などを使用することが当該技術分野では公知であるが、本開示は、局在化したプラズマを制御するのにクエンチガスを使用し、種々の電界に従ってプラズマを移動させることによりプラズマを高速に加速しない。公知のシステム及び方法は、加速を達成するために形成されたプラズマを形成部位から離れる方へ移動させることを必要とする。しかしながら、本開示によれば、導電チューブと摺動接点との間のプラズマアーク接点の近傍でのプラズマの局在化を確実にするため、及び、生成されたプラズマがプラズマアーク接点から離れる方へ顕著に移動しないようにするためにクエンチガスが用いられる。したがって、いくつかの実施形態では、本システムは、このような電界を実質的にゼロに近づけ、次いで、ガスの動的な力でプラズマを移動させることにより、電界又は磁場に起因する力を実質的に回避するように構成することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、発射輸送手段が発射チューブを通って加速する際に発射輸送手段に追従する磁力を発生させることにより、望ましくない電流の流れを実質的に防ぐことができる。特に、磁力は、加速する発射輸送手段の後ろに生じるどのような電流も前方へ移動させ、発射チューブにおける導体を通じて発射輸送手段上の電気接点に流れた電流と合流させるのに効果的とすることができる。上で述べたように、発射輸送手段は、加速する発射輸送手段の後ろの発射チューブの導体間で電流を伝えるのに十分な非常に高温の排気ストリームを発射チューブ内に生じることができる。生じた電流は、十分な磁力の印加により発射チューブ内で前方へ強制することができる。このような力を達成するための1つの例示的な方法は、発射チューブにおけるインダクタンス勾配の制御によるものである。
【0050】
典型的なEM発射装置は、効率を高めるべく単位長さあたりのインダクタンスを増加させようとするものであるが、EAM発射装置(本開示により用いられるような)は、インダクタンスを最小にすることにより効率を最大にすることができる。これは、例えば、発射システムの幾何学的形状の制御により達成することができる。特に、発射チューブの単位長さあたりのインダクタンスは、発射チューブの外径と内径の比(すなわち、外側チューブの半径と内側チューブの半径との比)に基づいて変えることができる。インダクタンスは、比が減少するにつれて減少し得る。したがって、低い比、すなわち、導電性の発射チューブの壁間に存在する何らかのスペースに関する最小全厚、を有する発射チューブを提供することが望ましいであろう。同様に、EAM発射装置の効率は、発射チューブの外径と内径の比が減少するにつれて高まり得る。したがって、できる限り1に近い比に近づけることが望ましいであろう(電流を流すための導体の必要な厚さ及び導電チューブ間の高電圧破壊を防ぐために存在する絶縁体の厚さによってのみ制限される)。このように、効率を最大にするべく発射システムにおいてもたらされる最小インダクタンス勾配を特定することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、発射システムは、発射チューブの動作に必要とされるこの最小勾配よりも大きいインダクタンス勾配をもたらすように構成することができる。例えば、インダクタンス勾配は、最大効率に関して計算される最小勾配よりも約1%乃至約20%大きくすることができる。
【0051】
磁場を形成するために、
図1に例示したように発射チューブの始端から電力送達を進めることができる。加速する発射輸送手段の後ろに電流を伝えるのに十分な何らかのイオン化が生じるので、必要とされるよりも僅かに大きいインダクタンス勾配が、発射輸送手段の後ろの電流の流れに対して磁力を効果的に生み出すことができる。磁力は、加速する発射輸送手段の後ろの電流の流れが、前方へ効果的に強制されて、発射輸送手段の電気接点への電流の流れと実質的に合流するように、前述のインダクタンス勾配の制御により必要とされる範囲に較正することができる。このように、無関係に生じた電流を、電気接点を通じて誘導し、発射チューブにおける望ましくない電流の流れの他の方法での悪影響を効果的に低減するか又はなくすことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、発射チューブの電源の数を増加させること及び個々の電源に関連した回路を効果的に分離することにより、望ましくない電流の流れを実質的に防ぐことができる。
図4に移ると、例えば、発射チューブ100は、発射チューブの長さに沿って間隔をおいて配置され、発射輸送手段200が発射チューブを通って加速するのとは反対方向へ(すなわち、終端から始端の方へ)流れる電流を電気配線(170a~170e)によりそれぞれ別個に供給する、複数の電気エネルギー源(300a~300e)を含む。それぞれの電気エネルギー源及び電気配線は、複数の個々の及び別個の電気回路を形成することができ、この場合、電流は、特定の電気エネルギー源が作動されている任意の特定の区域の発射チューブだけを通って流れる。使用中に、別個の電気エネルギー源のそれぞれは、発射チューブのそれぞれ所定の区域でのみ電流を発射チューブに別個に伝えるように構成されるので、複数の電源のそれぞれは、発射輸送手段がそれぞれの電源により電力を与えられる発射チューブの所定の区域を通過し加速する期間のみ電力供給のために作動することができる。例えば、発射チューブ100における発射輸送手段200の位置を示している
図4に例示したように、電気エネルギー源300a及び300bは、位置合わせアーム113a及び113bの電気接点135が発射チューブ100の該区域を通過し既に加速されているため非作動であってよく、これらのそれぞれの電気エネルギー源からの電気エネルギーは、電気配線170a及び170bにより送達される。同様に、電気エネルギー源300d及び300eは、位置合わせアーム113a及び113bの電気接点135が発射チューブ100の該区域にまだ達していないので随意的に非作動であってよく、これらのそれぞれの電気エネルギー源からの電気エネルギーは、電気配線170d及び170eにより送達される。しかしながら、電気エネルギー源300cは、電流を電気配線170により発射輸送手段200の電気接点135が現在位置する発射チューブ100の区域に供給するべく作動することができる。
【0053】
本発明の多くの修正及び他の実施形態が、上記の説明で提示される教示の利益を有する本発明が属する当業者に発想されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではないことと、修正及び他の実施形態が付属の請求項の範囲内に含まれることが意図されると理解されたい。特定の用語が本明細書で採用されるが、それらは、限定する目的ではなく、単に一般的且つ記述的意味で用いられる。