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特許7125975薄膜培養デバイスにおける大腸菌の迅速な検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】薄膜培養デバイスにおける大腸菌の迅速な検出
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20220818BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
C12M1/34 D
C12Q1/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020502536
(86)(22)【出願日】2018-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018025641
(87)【国際公開番号】W WO2018187197
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/480,633
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラパティ,サイラジャ
(72)【発明者】
【氏名】ティーガーデン,アレク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サドリス,ハレー エー.
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504502(JP,A)
【文献】特開2001-333795(JP,A)
【文献】米国特許第04565783(US,A)
【文献】米国特許第05510243(US,A)
【文献】特表平11-505405(JP,A)
【文献】特表2010-517552(JP,A)
【文献】特表2002-513288(JP,A)
【文献】米国特許第05605812(US,A)
【文献】特表平08-510124(JP,A)
【文献】国際公開第2012/092090(WO,A1)
【文献】特開2014-183802(JP,A)
【文献】Ann. Microbiol.,2010年,Vol. 60,pp. 373-376
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腸菌群及び大腸菌(Escherichia coli)微生物のコロニーを別個に計数するためのデバイスであって、前記デバイスが、
水不透過性の第1のシートと、
前記第1のシートに取り付けられた水不透過性の第2のシートと、
前記第1のシートに接着された乾燥した再水和可能な培養培地であって、前記培養培地が、
大腸菌群微生物の増殖を促進する有機窒素系栄養素と、
微生物増殖ゾーン内に配置され、かつD-ラクトース、β-ガラクトシダーゼの産生を増強する第1の誘導因子化合物、及びpH指示薬を含む、ラクトース発酵指示薬系と、
前記増殖ゾーン内に配置され、かつ5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド、及び大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物を含む、β-D-グルクロニダーゼ指示薬系と、
レドックス指示薬と、
非大腸菌群微生物の増殖を選択的に阻害する有効量の少なくとも1つの薬剤と、
第1の冷水可溶性ゲル化剤と、を含む培養培地と、
前記第1のシートと前記第2のシートとの間に配置された微生物増殖ゾーンであって、前記第1のシートに接着された前記培養培地の領域が、前記増殖ゾーンを画定する、微生物増殖ゾーンと、
前記第2のシートに接着された第2の冷水可溶性ゲル化剤と、を含み、
前記第1のシートは、前記培養培地が前記第2の冷水可溶性ゲル化剤に面するように、前記第2のシートに取り付けられており
大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する前記複数の化合物が、D-グルクロン酸を含む、デバイス。
【請求項2】
大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する前記複数の化合物が、メチル-β-D-グルクロニド又はフェニル-β-D-グルクロニドを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1のシート、前記第2のシート、又は前記第1のシートと第2のシートの両方が、ポリエステルフィルムを含む、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記増殖ゾーンが、前記第1のシートに接着されたスペーサによって画定される、請求項1~のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1のシートに接着された前記培養培地が、130mg/100cm ~195mg/100cmのコーティング重量を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
ラクトースが、前記第1のシートに接着された前記乾燥培養培地中に配置され、前記ラクトースが、前記乾燥培養培地中に、8.5mg/100cm ~27mg/100cmのコーティング重量で存在する、請求項1~のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記培養培地が、水性液体で再構成されたときに、前記培養培地を6.5~7.5のpHに緩衝するための試薬を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記増殖ゾーンが、1ミリリットル~5ミリリットルの所定の体積を有する水性液体を受容するように構成され、前記所定の体積を受容すると、大腸菌群コロニーの増殖を促進し計数を助ける水和培養培地を形成する、請求項1~のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記微生物増殖ゾーン内に配置された乾燥乳児用調整粉乳を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年4月3日に出願された米国特許仮出願第62/480,633号の優先権を主張するものであり、その開示の全容が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
(背景技術)
食品及び飲料の安全性試験において、大腸菌群(coliform)の細菌が存在するかしないかは、重要な品質証拠であると考えられる。飲料及び特定の食品(例えば、乳製品)において許容される大腸菌群の細菌の量は、世界中の多くの国で規制されている。大腸菌群の細菌としては、大腸菌(Escherichia coli)などの糞便性大腸菌群が挙げられる。食品又は水試料中の糞便性大腸菌群の存在は、食品又は水の糞便汚染の主要な指標として、及び他の病原性微生物の存在の可能性の指標として使用される。
【0003】
食品試料中の微生物を検出、識別、及び/又は計数する方法は、多くの場合、食品の性質、及び試料中に見られる可能性が高い微生物の種類に応じて異なる。食品試料を試験するための方法の概要としては、The American Public Health Association,Washington,D.C.により出版されているStandard Methods for the Examination of Dairy Products,27.sup.th Edition、及びU.S.Food and Drug Administration,Washington,D.C.により出版されているBacteriological Analytical Manual(「BAM」)が挙げられる。固形食品は、通常、水性媒体中に懸濁され、混合及び/又は粉砕されて、食品材料の液体ホモジネートを得ることができ、これは、定量的微生物分析の方法で使用することができる。
【0004】
しかしながら、上記の方法は、一般的に比較的高価であり、複数の工程を伴い、コロニーを計測することができる前に約24時間~48時間のインキュベーション時間を必要とし、かつ/又は比較的高度化された器具類及び/又は比較的高度に訓練された人材を必要とする。
【0005】
食品及び飲料試料中の生存大腸菌群及び大腸菌(E. coli)微生物を計数するためのより速い方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
概して、本開示は、試料中の微生物の検出及び任意選択的な計数に関する。具体的には、本開示は、半固体培養培地中で大腸菌群の細菌のコロニー形成単位(CFU)を増殖させ、大腸菌群CFU及び大腸菌CFUを別個に計数するために使用することができる培養デバイスに関する。本発明の培養デバイスは、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ活性を増強する複数の化合物を含み、β-グルクロニダーゼ陽性大腸菌I、例えば、構成的及び誘導性β-グルクロニダーゼ陽性大腸菌のコロニーを検出し、個別化させるのに特に有用であり、それによって、試料中に存在する微生物のより正確な計測を提供する。本培養培地は、典型的にはTTCを含有し、これは、非βグルクロニダーゼ産生大腸菌群の細菌の個別化及び可視化を可能にし得る。加えて、デバイスで使用される培養培地は、典型的には、以前の薄膜培養デバイスよりも大腸菌群の細菌及び大腸菌(E. coli)の検出及び計数を迅速に提供する。
【0007】
本開示はまた、培養デバイスの使用方法も提供する。本明細書に開示される本発明の方法は、大腸菌群及び大腸菌(E. coli)の細菌の増殖、検出、及び個別化を提供する。本方法は、大腸菌群及び大腸菌(E. coli)コロニーを計数するために薄膜培養デバイスを使用する先行方法よりも、複数の温度における(例えば、35~37及び42~44C)大腸菌群及び大腸菌(E. coli)コロニーのより迅速かつより正確な計数を可能にする。一態様では、本開示は、大腸菌群及び大腸菌(Escherichia coli)微生物のコロニーを別個に計数するためのデバイスを提供する。本デバイスは、水不透過性の第1のシートと、第1のシートに取り付けられた水不透過性の第2のシートと、第1のシートに接着された第1の冷水可溶性ゲル化剤を含む乾燥した再水和可能な培養培地と、第1のシートと第2のシートとの間に配置された微生物増殖ゾーンと、第2のシートに接着された第2の冷水可溶性ゲル化剤と、を含む。培養培地は、大腸菌群微生物の増殖を促進する有機窒素系栄養素、ラクトース発酵指示薬系、β-D-グルクロニダーゼ指示薬系と、テトラゾリウムクロリド指示薬、及び非大腸菌群微生物の増殖を選択的に阻害する有効量の少なくとも1つの薬剤を含み得る。第1のシートに接着された培養培地の領域は、増殖ゾーンを画定する。ラクトース発酵指示薬系は、D-ラクトースと、β-ガラクトシダーゼの産生を増強する第1の誘導因子化合物と、pH指示薬とを含む。β-D-グルクロニダーゼ指示薬系は、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニドと、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物とを含む。第1のシートは、培養培地が第2の冷水可溶性ゲル化剤に面するように、第2のシートに取り付けられる。第1のシート及び第2のシートは、二酸化炭素のそれらの通過を遅らせるように構成されている。
【0008】
上記の実施形態のいずれかにおいて、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物のうちの少なくとも1つは、D-グルクロン酸である。上記の実施形態のいずれかにおいて、第1のシート及び/又は第2のシートは、ポリエステルフィルムを含み得る。上記の実施形態のいずれかにおいて、第2のシートは、ポリエチレンテレフタレートを含み得る。上記の実施形態のいずれかにおいて、増殖ゾーンは、第1のシートに接着されたスペーサによって画定され得る。上記の実施形態のいずれかにおいて、培養培地は、水性液体で再構成されたときに、培養培地を約6.5~約8のpHに緩衝するための試薬を更に含む。上記の実施形態のいずれかにおいて、有機窒素系栄養素は、酵母エキス、ブタペプトン、ゼラチンの酵素消化物、動物性ペプトンの酵素消化物、及び前述の有機窒素系栄養素のうちの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。上記の実施形態のいずれかにおいて、薬剤は、胆汁塩、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0009】
別の態様では、本開示は、TTC還元と、構成的及び誘導性ベータグルクロニダーゼ発現とをそれぞれ介して、大腸菌群及び大腸菌(Escherichia coli)微生物のコロニーを別個に計数する方法を提供する。
【0010】
「好ましい」及び「好ましくは」という語は、ある特定の状況下である特定の利益をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から排除することを意図するものでもない。
【0011】
用語「含む(comprises)」及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
【0012】
本明細書で用いる場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換的に用いられる。したがって、例えば、栄養素は、「1つ以上の」栄養素を意味するように、解釈され得る。
【0013】
用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0014】
また、本明細書において、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0015】
上記の本発明の概要は、本発明について開示される各実施形態又は全ての実施の記載を意図したものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通していくつかの箇所において、例を列挙することによって指針が示されるが、それらの例は様々な組み合わせで使用することができる。いずれの場合にも、記載された列挙は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。
【0016】
これら及び他の実施形態の更なる詳細については、添付の図面及び下記の説明において示す。他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面から、かつ特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付図面を参照して更に説明され得る。
【0018】
図1】本開示による好ましい微生物増殖デバイスの上面斜視図、部分的に断面図である。
【0019】
図2図1のデバイスの断面図である。
【0020】
図3図1のデバイスの第1のシート又は第2のシート上に印刷され得るグリッドパターンの上面図である。
【0021】
上記で特定された図面は、本開示のいくつかの実施形態を説明するものであるが、本明細書で論議されるとおり、他の実施形態もまた企図される。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表例の提示によって、本発明を提示する。当業者によって多数の他の改変及び実施形態が考案され得、それらは、本発明の原理の範囲内及び趣旨内に含まれることを理解されたい。図面は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示のいずれかの実施形態の詳細な説明に先立ち、本発明はその適用において、以下の説明に記載又は以下の図面に例示の構成の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践又は実行することが可能である。また、本明細書において使用される語法及び専門用語は説明を目的としたものであり、限定するものとみなしてはならないことを理解されたい。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びこれらの変化形の使用は、その後に列記される項目及びこれらの同等物、並びに追加的な項目を包含することを意味する。別途特定又は限定されない限り、「接続される(connected)」及び「連結される(coupled)」という用語、並びにそれらの変化形は、広い意味で使用されるものであり、直接的及び間接的な接続及び連結の両方を包含する。更に、「接続される」及び「連結される」は、物理的又は機械的な接続又は連結に制限されない。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用すること、及び構造的又は論理的な変更を行うことが可能であることを理解されたい。更に、「前」、「後」、「上」、「下」などの用語は、各要素の互いに対する関係を説明するためにのみ使用されるものであり、装置の特定の向きを示すこと、装置の必要若しくは必須な向きを指示若しくは示唆すること、又は本明細書に記載される発明が使用時にどのように使用、装着、表示、若しくは配置されるかを指定することを目的とするものでは決してない。
【0023】
本明細書では、微生物の「培養(culture)」又は「増殖(growth)」という用語は、微生物の増殖を促す条件下にある所定の培地内で微生物を繁殖させることによって微生物の数を増加させる方法を指す。より具体的には、この方法は、微生物の少なくとも1回の細胞分裂を促進するのに好適な培養培地及び条件を提供する方法である。培養培地は固体、半固体、又は液体の培地であり、微生物の増殖にとって必要な栄養成分及び必要な物理的増殖パラメータを全て含有する。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「集積」は、特定の微生物の増殖に望ましい特異的態様及び既知の態様(attributes)を有する、培地及び条件を提供することによって、特定の微生物の増殖を選択的に集積する培養法を指す。集積培養環境は、選択された微生物の増殖には正に影響し、及び/又は他の微生物の増殖には負に影響する。
【0025】
本開示は、一般的に、冷水可溶性ゲル化剤を含有する薄膜培養デバイスにおいて大腸菌群及び大腸菌(E. coli)コロニーを増殖及び検出し、かつ別個に計数するための方法に関する。
【0026】
「大腸菌群細菌」は、まとめて、得られる酸及び気体の産生でラクトースを発酵させる能力を有する細菌のいくつかの属(例えば、シトロバクター属(Citrobacter)、エンテロバクター属(Enterobacter)、ハフニア属(Hafnia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、セラチア属(Serratia)、及びエシェリキア属(Escherichia))の群を指す。最も多くの大腸菌群細菌は、一般的にヒトに対して非病原性であると考えられる。しかしながら、一部の大腸菌群細菌(例えば、大腸菌)は、高病原性の株を含む。大腸菌群は、哺乳動物の糞便中に見出され、食品及び/又は水の糞便汚染の指標として一般的に使用される。
【0027】
好適な試料材料は、様々な供給源から得られるか、又は由来し得る。用語「供給源」は、一般的に、微生物について試験することが望ましい食品又は非食品を指すために使用される。供給源は、固体、液体、半固体、ゼラチン状材料、気体(例えば、空気)、及びこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、供給源は、例えば、対象の表面から又は空気から供給源を収集するために使用された捕捉要素によって提供され得る。いくつかの実施形態では、液体組成物は、供給源及び対象の任意の微生物の回収を増強するために、(例えば、撹拌又は溶解プロセス中に)更に分離することができる捕捉要素を含むことができる。対象となる表面としては、壁(ドアを含む)、床、天井、排水管、冷蔵システム、ダクト(例えば、空気ダクト)、通気口、トイレシート、ハンドル、ドアノブ、ハンドレイル、カウンタートップ、卓上、食事用面(例えば、トレイ、皿など)、作業面、機器表面、衣類など、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない様々な表面の少なくとも一部を含み得る。供給源の全て又は一部を、本方法で使用することができる。供給源の一部が使用される場合、これは、供給源の「試料」と呼ばれ得る。しかしながら、用語「試料」は、一般的に、供給源から得られ、微生物の検出のために試験デバイスに導入される材料の体積又は質量の部分を指すために本明細書で使用される。
【0028】
用語「食品」は、一般的に、固体、液体(例えば、溶液、分散液、エマルジョン、懸濁液など、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない)及び/又は半固体の食用組成物を指すために使用される。食品の例としては、肉、鶏肉、卵、魚、魚介類、野菜、果物、加工食品(例えば、スープ、ソース、ペースト)、穀物製品(例えば、小麦粉、穀物、パン)、缶詰、ミルク、その他の乳製品(例えば、チーズ、ヨーグルト、サワークリーム)、脂肪、油、デザート、香辛料、薬味、パスタ、飲料、水、ビール、動物用飼料、他の好適な食材、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「TTC」は、染料のトリフェニルテトラゾリウムクロリドの略称である。
【0030】
乾燥培養培地がそれらの間に接着された2枚の隣接するシートを含む、当該技術分野において既知の薄膜培養デバイスの一種が、米国特許第4,565,783号に記載されている。これらのデバイスは、例えば、全好気性細菌又は大腸菌群細菌を含む様々な微生物を増殖、検出、及び計数するのに有用である。
【0031】
一態様では、本開示は、デバイスを提供する。図1及び図2は、本開示によるデバイスの一実施形態を示す。微生物増殖デバイス10は、上面及び下面を有する自己支持型の防水性の第1のシート12を備える本体部材を含む。第1のシート12は、好ましくは、水を吸着しないか又は他の方法で水による影響を受けない、ポリエステル、ポリプロピレン、又はポリスチレン等の材料の比較的剛性のフィルムである。約0.1mm~0.18mmの厚さのポリエステルフィルム、約0.1mm~0.2mmの厚さのポリプロピレンフィルム、約0.38mmの厚さのポリスチレンフィルムが、良好に作用することが判明している。他の好適な第1のシートとしては、米国特許第4,565,783号に記載されているように、ポリエチレン又は他の防水コーティングを有する光印刷紙が挙げられる。第1のシート12は、使用者が細菌のコロニーを第1のシートを介して見ることを望むか否かにより、透明又は不透明のどちらでもよい。細菌コロニーの計測を助けるために、第1のシート12は、図3に示されるように、その上に印刷されたパターン(例えば、正方形の格子パターン)を有してもよい。
【0032】
本明細書に記載される、第1の冷水可溶性ゲル化剤を備える培養培地16が、第1のシート12に接着されている。また、第2のシート22も、デバイス10の第1のシート12に接着されている(直接的又は間接的のいずれかで)。第2のシート22は、好ましくは、デバイス内の細菌コロニーの計測を助けるために透明であり、細菌及び水蒸気に対して実質的に不透過性である。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、「細菌及び水蒸気に対して実質的に不透過性である」は、デバイスの輸送、保管、及び使用中に脱水された培地の望ましくない汚染(例えば、微生物汚染)を防止し、インキュベーション時間中に微生物の増殖を支援することになる環境を提供する第2のシートを指す。
【0033】
一般的に、第2のシート22は、第1のシート12と同様の特性を有するが、剛性である必要はない。第2のシート22に好適な材料としては、例えば、ポリプロピレン(例えば、厚さ40μmの2軸配向ポリプロピレン(BOPP))及びポリエステル(例えば、厚さ約70μmであるポリエチレンテレフタレート(PET))が挙げられる。PETの密度(例えば、約1.38g/mm)は、BOPPの密度(例えば、約0.92g/mm)よりも高い。任意選択的に、第1のシート12及び第2のシート22は、二酸化炭素のそれらの通過を遅らせるように構成されている。有利には、それらを通る二酸化炭素の通過を遅らせるように構成された第1及び第2のシートで構築されたデバイスは、生物原性二酸化炭素(例えば、炭水化物の発酵によって産生された二酸化炭素)を、生物原性二酸化炭素を産生した(例えば、デバイス内に存在するラクトースの発酵によって)デバイス内のコロニーに隣接させる。
【0034】
第1のシート12は、任意選択的に、その主表面上で接着剤14の層でコーティングされ、これは容易な水和のために均一な単層内に第1のシート上に乾燥した再水和可能な培養培地16を保持する役割を果たす。あるいは、接着剤14が第2のシート22上にコーティングされ、培養培地が第1のシート12上にコーティングされることができる。いずれの場合も、接着剤14及び接着剤24は、好ましくは、非水溶性であり、微生物の増殖に対して非阻害性である。好ましくは、接着剤は、接着剤でコーティングされたフィルムを通して細菌コロニーを見ることができるように濡れたとき十分に透明である。接着剤14及び接着剤24に使用するのに好適な接着剤としては、例えば、感圧接着剤が挙げられる。しかしながら、より融点の低い物質がより融点の高い基材上にコーティングされている熱活性化接着剤を用いてもよい。ゴム糊等の水活性化接着剤も有用である場合がある。接着剤14は、好ましくはTTCを含有するが、他の添加剤又は染料が使用されることもある。いくつかの以前に報告された場合とは異なり、本明細書に記載の培養デバイス及び方法は、ピルビン酸又はピルビン酸塩の添加を必要としない。多くの好ましい場合において、本明細書に記載の培養デバイス、並びにそれらが使用される方法は、ピルビン酸及びその塩を含まない。接着剤14(通常、TTCを含有する)は、デバイス内で増殖する微生物コロニーの観察(例えば、手動によるか、又は機械的観察)を実質的に妨害しないか、又は観察を妨げない厚さで、及び/又は、微生物コロニーを観察するために使用される電磁放射線(例えば、可視光)の透過を実質的に妨害しないか、又は透過を妨げない厚さで、場合に応じて、第1のシート12又は第2のシート22上にコーティングされるべきである。典型的には、接着剤14が第1のシート12上にコーティングされると、それに細胞培養培地の第2のコーティングが続く。本開示のデバイスにおいて使用するのに好適な接着剤の非限定的な例は、イソオクチルアクリレート/アクリルアミド(94/6のモル比)のコポリマーである。使用することができる他の感圧接着剤としては、イソオクチルアクリレート/アクリル酸(モル比95/5又は94/6)、及びシリコーンゴムが挙げられる。水への暴露時に白化する接着剤はあまり好ましくないが、不透明な第1のシートと組み合わせて使用してもよく、又はコロニーの視認が必要とされない場合には使用することができる。
【0035】
任意の接着剤14の少なくとも一部(通常、TTCを含有し、及び/又は第1のシート12上に直接コーティングされる)にコーティングされるものは、乾燥した再水和可能な培養培地16を含むコーティングである。乾燥培養培地16は、実質的に水を含まない。本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、「実質的に水を含まない」という表現は、コーティングを周囲環境と平衡化させると、脱水されたコーティングのおよその含水量以下の含水量を有するコーティングを指す。再水和培養培地の均一性を確保するために、乾燥培養培地16の均一な単層が望ましい。乾燥した再水和可能な培養培地は、使用中に水和するために微生物増殖ゾーンに露出される十分な表面積を有するべきである。一般的に、約5μm~約13μmの厚さの接着剤層が好適である。
【0036】
図1及び2の例示的な実施形態の代替として、本開示のデバイスが、その上に配置された培養培地を有する台座を含むことができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,632,661号に開示される培養デバイスと同様の方法で組み立てることができることが企図される。
【0037】
図示される第2のシート22は、接着剤24(好ましくは、最も一般的にはTTCを含有する接着剤24)層及び粉末26でコーティングされている。接着剤24は、デバイス内で増殖する微生物コロニーの観察(例えば、手動によるか、又は機械的観察)を実質的に妨害しないか、又は観察を妨げない厚さで、及び/又は、微生物コロニーを観察するために使用される電磁放射線(例えば、可視光)の透過を実質的に妨害しないか、又は透過を妨げない厚さで、第2のシート22上にコーティングされるべきである。一般的に、約5μm~約13μmの厚さの接着剤層が好適である。
【0038】
粉末26は、乾燥した第2の冷水可溶性ゲル化剤を含む。第2の冷水可溶性ゲル化剤は、第1の冷水可溶性ゲル化剤と同様の特性を有し、第1の冷水可溶性ゲル化剤と同一である冷水可溶性ゲル化剤を含んでもよい。粉末26は、第2のシート22に接着される(例えば、第2のシート22に接着された接着剤24に接着される)。粉末26は、米国特許第4,565,783号に記載されているように、接着剤24上にコーティングされる。乾燥粉末26の均一な単層が好ましい。粉末26は、微生物増殖ゾーンに露出した十分な表面積を有するべきであり、乾燥培養培地16は、デバイスの使用中に増殖ゾーンに堆積された所定の体積の水性液体を吸収する。
【0039】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、用語「粉末」は、400マイクロメートル未満の平均直径を有する超微粒子状粒子物質を指す。本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、用語「冷水可溶性」は、室温で水中の溶液を形成する材料を指す。
【0040】
微生物増殖ゾーンは、デバイスの接種中に試料が定置されるデバイス内の領域である。第1のシート12及び第2のシート22は、微生物増殖ゾーンを包囲し、培養培地16及び粉末26は、微生物増殖ゾーン内で互いに面している。典型的には、微生物増殖ゾーンは、試料の汚染を防止するために、及び/又はデバイスから試料が漏れるのを防ぐために、第1のシート12及び第2のシート22の縁部から離間している。水性液体(例えば、試験される試料を含有する)が微生物増殖ゾーン内に定置された後、微生物増殖ゾーン内の乾燥した再水和可能な培養培地16及び粉末26は、液体によって水和されて、大腸菌群の細菌コロニーを増殖させるための半固体培養培地を形成する。微生物増殖ゾーンは、細菌コロニーの可視化を防止するマトリックスを含まない。
【0041】
任意の実施形態では、微生物増殖ゾーンは、任意選択的に、乾燥培養培地16がコーティングされる第1のシート12の表面に適用されるスペーサ要素によって画定される。スペーサ要素は、乾燥培養培地16を露出させるために中心を貫通して切断された開口部20(例えば、円形の開口、正方形の開口、矩形の開口)を有するスペーサ18の片を含む。開口部20の壁は、水和後に培地を閉じ込めるために、所定の大きさ及び形状のウェルを提供する。スペーサ18は、所望の体積のウェル、例えば、約1ミリリットル、約2ミリリットル、約3ミリリットル、又は約5ミリリットルのウェルを形成するのに十分な厚さであるべきである。独立気泡ポリエチレン発泡体は、スペーサ18に好適な材料の一例であるが、疎水性(非湿潤性)であり、微生物に対して不活性であり、滅菌に耐えることができる任意の材料が使用されてもよい。開口部20は、培養デバイス内の微生物増殖ゾーンの周囲を形成する。所望の(所定の)容積を受容すると、デバイスは、大腸菌群コロニーの増殖を促進し計数を助ける水和培養培地を形成する。
【0042】
乾燥した再水和可能な培養培地16は、大腸菌群微生物の増殖を促進する有機窒素系栄養素と、非大腸菌群微生物の増殖を選択的に阻害する有効量の少なくとも1つの薬剤と、第1の冷水可溶性ゲル化剤と、を含む。
【0043】
培養培地16の有機窒素系栄養素は、(例えば、熱ストレス、pHストレス、水ストレスからの)迅速な回収をもたらし、かつ大腸菌群微生物の増殖をもたらす。有機窒素系栄養素は、例えば、アミノ酸及び/又はオリゴペプチド及び/又はビタミン類を提供する。本開示によるデバイスの任意の実施形態における好適な有機窒素系栄養素の非限定的な例としては、酵母エキス、ブタペプトン、ゼラチンの酵素消化物、動物性ペプトンの酵素消化物、及び前述の有機窒素系栄養素のうちの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0044】
本開示のデバイスの培養培地16は、非大腸菌群微生物の増殖を選択的に阻害する有効量の少なくとも1つの薬剤を含む。薬剤は、本開示のデバイスにおいて、少なくとも1つの非大腸菌群微生物に対する、大腸菌群微生物の増殖に競合的な利点を提供する。例えば、抗生物質を含むこのような選択剤は、当業者に周知である。任意の実施形態では、この薬剤は、胆汁塩、ドデシル硫酸ナトリウム、又は胆汁塩とドデシル硫酸ナトリウムとの組み合わせを含む。有効量は、所定の体積の水性液体が増殖ゾーン内に堆積されるとき、再水和培養培地が、少なくとも1つの薬剤の濃度が非大腸菌群微生物の増殖を選択的に阻害するのに十分に高いが、大腸菌群微生物の増殖を実質的に阻害するほど高くないように選択される(すなわち、大腸菌群微生物は、約37℃~約45℃の温度でのインキュベーションの約24時間以内で観察可能かつ同定可能なコロニーを形成する)。
【0045】
本開示のデバイスの培養培地16は、冷水可溶性である。本発明のデバイスで使用される培養培地の「冷水溶解度」は、培養培地中に第1の冷水可溶性ゲル化剤を含む。培養培地16に含めるのに好適な第1の冷水可溶性ゲル化剤は、室温で水溶液を形成する天然及び合成ゲル化剤の両方を含む。グアーガム、ポリアクリルアミド、ローカストビーンガム及び寒天などのゲル化剤は、例えば、室温で水中の溶液を形成し、本開示による「冷水可溶性」である乾燥した再水和可能な培養培地を提供するための好適な第1の冷水可溶性ゲル化剤である。培養培地16に好ましい第1の冷水可溶性ゲル化剤としては、例えば、グアーガム及びキサンタンガムが挙げられ、これらのゲル化剤は、個々に又は互いと組み合わせて、かつ他の冷水可溶性ゲル化剤と組み合わせて有用である。大腸菌群微生物を増殖させるための有機窒素系栄養素は、室温で水中の溶液を形成する。
【0046】
培養培地を第1のシート上にコーティングし、その上で乾燥させた後、第1のシートに接着された乾燥培養培地は、コーティング重量を有する。乾燥培養培地のコーティング重量は、増殖ゾーンが所定の体積の水性液体(例えば、大腸菌群及び大腸菌(E. coli)微生物について試験される試料を含む水性液体)で再水和されるとき、再水和培養培地は、大腸菌群及び大腸菌(E. coli)微生物の増殖を促進し別個の計数を助けるために、各成分の適切な濃度を有する。任意の実施形態では、第1のシートに接着された乾燥培養培地のコーティング重量は、約130mg/100cm~約195mg/100cmであり得る。
【0047】
本開示によるデバイスの乾燥した再水和可能な培養培地は、微生物増殖ゾーン内に配置されたラクトース発酵指示薬系を含む。ラクトース発酵指示薬系は、デバイスにおける大腸菌類細菌増殖のコロニーの2つの指標:ラクトースの発酵による第1の指標(酸産生)及びラクトースの発酵による第2の指標(気体産生)を提供する。ラクトースの発酵からの酸及び気体(CO)の両方の産生は、デバイス内で増殖する大腸菌群微生物のコロニーの存在を確認する。コロニー増殖の時点でのTTC還元産物「ホルマザン」の沈殿と組み合わせた酸及び気体の存在は、誘導性及び構成的大腸菌生物からの大腸菌群細菌の個別化を提供することができる。したがって、ラクトース発酵指示薬系は、D-ラクトースと、pH指示薬とを含む。pH指示薬は、7.0周辺の変色範囲を有する。好適なpH指示薬としては、例えば、フェノールレッド及びクロロフェノールレッドなどのスルホンフタレインpH指示薬が挙げられる。
【0048】
ラクトース発酵指示薬系は、ラクトースを利用するための酵素(例えば、βガラクトシダーゼ)の産生を増強する第1の誘導因子化合物を更に含む。好適な第1の誘導因子化合物の非限定的な例としては、イソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)及びフェニル-β-D-ガラクトシドが挙げられる。
【0049】
ラクトース発酵指示薬系は、培養デバイスの微生物増殖ゾーン内に(例えば、乾燥した再水和可能な培養培地中に)配置される。したがって、任意の実施形態では、培養培地が第1のシート12及び/又は第1の接着剤14上でコーティングされる前に、ラクトース発酵指示薬系の構成成分のうちの少なくとも1つを培養培地に添加することができる。あるいは、ラクトース発酵指示薬系の少なくとも1つの構成成分は、培養培地が使用のために再水和されたときに微生物増殖ゾーン内又はその上に堆積される水性液体(例えば、水、緩衝液、及び/又は試料)に含まれ得る。ラクトースが乾燥培養培地中のデバイス内に配置される任意の実施形態では、ラクトースは、乾燥培養培地中に、約8.5mg/100cm~約27mg/100cmのコーティング重量で存在する。
【0050】
本開示によるデバイスの乾燥した再水和可能な培養培地は、微生物増殖ゾーン内に配置されたβ-D-グルクロニダーゼ指示薬系を含む。β-D-グルクロニダーゼ指示薬系は、β-D-グルクロニダーゼ酵素活性を産生する大腸菌コロニーなどのコロニーの指標を提供する。したがって、β-D-グルクロニダーゼ指示薬系は、デバイス内に存在する大腸菌コロニーを、デバイス内に存在する非大腸菌の大腸菌群コロニーと区別する手段を提供する。したがって、β-D-グルクロニダーゼ指示薬系は、発色性β-D-グルクロニダーゼ酵素基質(例えば、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド)を含む。加えて、β-D-グルクロニダーゼ指示薬系は、大腸菌中のβ-D-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物を更に含む。大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する好適な化合物の非限定的な例としては、メチル-β-D-グルクロニド、フェニル-β-D-グルクロニド、及びD-グルクロン酸が挙げられる。任意の実施形態では、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する第1の化合物は、メチル-β-D-グルクロニド及びフェニル-β-D-グルクロニドから選択される。任意の実施形態では、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する第2の化合物は、D-グルクロン酸である。驚くべきことに、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する第1及び第2の化合物の組み合わせを有するデバイスは、β-グルクロニダーゼ陽性大腸菌をより良好に検出できる。このような微生物種を検出するための化合物の組み合わせは、以前に知られていない。
【0051】
理論に束縛されるものではないが、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物のうちの少なくとも1つは、細胞によるより多くのβ-D-グルクロニダーゼ酵素の産生を誘導し得ると考えられる。あるいは、又はそれに加えて、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物のうちの少なくとも1つは、発色性酵素基質(例えば、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド)と反応したときに、β-グルクロニダーゼ酵素分子の活性を増強することができる。
【0052】
β-D-グルクロニダーゼ指示薬系は、培養デバイスの微生物増殖ゾーン内に(例えば、乾燥した再水和可能な培養培地中に)配置される。したがって、任意の実施形態では、β-D-グルクロニダーゼ指示薬系の構成成分のうちの少なくとも1つは、培養培地が第1のシート12、第1の接着剤14、又は第2のシート22上でコーティングされる前に、培養培地に添加することができる。あるいは、β-D-グルクロニダーゼ指示薬系の構成成分のうちの少なくとも1つは、培養培地が使用のために再水和されたときに微生物増殖ゾーン内又はその上に堆積される水性液体(例えば、水、緩衝液、及び/又は試料)に含まれ得る。
【0053】
任意の実施形態では、本開示のデバイスは、培養培地が使用中に水性液体で再構成されたときに、培養培地を緩衝するための試薬を含むことができる。この試薬は、約6.5~7.5のpHで培養培地(使用中水和されたとき)を緩衝することができる。培養培地を緩衝するための好適な試薬の非限定的な例は、リン酸塩(例えば、NaHPO、NaHPO、KHPO、KHPO、又は前述の試薬のうちの任意の2つ以上の組み合わせ)である。この試薬は、培養デバイスの微生物増殖ゾーン内に配置される(例えば、乾燥した再水和可能な培養培地中に)。したがって、任意の実施形態では、培養培地が第1のシート12及び/又は第1の接着剤14上でコーティングされる前に、この試薬を培養培地に添加することができる。あるいは、この試薬は、培養培地が使用のために再水和されたときに微生物増殖ゾーン内又はその上に堆積される水性液体(例えば、水、緩衝液、及び/又は試料)に含まれ得る。
【0054】
培養培地の構成成分は、例えば、米国特許第4,565,783号の実施例12に記載されるように、水性液体中で一緒に混合され、第1のシート上にコーティングされ得る。培養培地を第1のシート上にコーティングした後、本質的に水を含まなくなるまで培養培地層を乾燥させる。任意選択的に、培養培地を第1のシート上にコーティングする前に、第1のシートは、本明細書に開示される接着剤の層でコーティングされる。次いで、培養培地を接着剤層上にコーティングし、培養培地の層が本質的に水を含まなくなるまで乾燥させる。
【0055】
任意の実施形態では、デバイス内で増殖する微生物コロニーの存在を示すために、微生物増殖ゾーンに非特異的指示薬(例えば、染料)を組み込むことが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、指示薬は、培養培地16に組み込まれてもよい。あるいは、指示薬は接着剤14に組み込まれてもよい。好適な指示薬は、微生物を増殖させることによって代謝され、かつより容易な可視化のためにコロニーを着色させるものである。このような指示薬の例としては、トリフェニルテトラゾリウムクロリド、p-トリルテトラゾリウムレッド、テトラゾリウムバイオレット、ベラトリルテトラゾリウムブルー、及び関連染料が挙げられる。
【0056】
任意選択的に、任意の実施形態では、本開示のデバイスは、微生物増殖ゾーン内に配置された粉末状の乳児用調整粉乳を更に含む。乳児用調整粉乳は、乾燥培養培地の構成成分として増殖ゾーン内に提供されてもよく、あるいは、第2のシート上の接着剤層24に接着された第2の冷水可溶性ゲル化剤と混合することができる。乳児用調整粉乳は、大腸菌群微生物の増殖を促進し得る複数の栄養素(例えば、タンパク質、炭水化物、ミネラル、及びビタミン)を提供する。本開示のデバイスでの使用に好適な粉末状乳児用調整粉乳の非限定的な例は、Nestle Infant Nutrition;Florham Park,NJから入手可能なGERBER(登録商標)GOOD START(登録商標)Gentle(Stage 1)乳児用調整粉乳である。
【0057】
乳児用調整粉乳が乾燥培養培地中のデバイス内に配置される任意の実施形態では、乳児用調整粉乳は、乾燥培養培地中に、最大約27mg/100cmのコーティング重量で存在する。任意の実施形態では、乳児用調整粉乳は、乾燥培養培地中に、最大約14mg/100cmのコーティング重量で存在する。任意の実施形態では、乳児用調整粉乳は、乾燥培養培地中に、最大約19mg/100cmのコーティング重量で存在する。
【0058】
例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,137,812号に記載されているように、薄膜培養デバイスが、微生物のコロニー(例えば、病原性大腸菌の種)を増殖させ、計数するために使用されており、コロニーは、微生物の特定のために膜上に移動させている(例えば、「ブロットされている」)。いくつかの実施形態では、本開示による薄膜培養デバイスを使用して、微生物のコロニーを増殖させ、計数し、続いて微生物を特定するために膜上に移動させる(例えば、「ブロットさせる」)こともできる。
【0059】
任意の実施形態では、本開示の培養デバイスは、第1のシートに接着された乾燥した再水和可能な培養培地を含むことができ、乾燥した再水和可能な培養培地は、表1に列挙される構成成分を含む。
【0060】
表1.本開示の例示的な乾燥した再水和可能な培養培地の構成要素のリスト。
【0061】
有機栄養素化合物:酵母エキス、ブタペプトン、ラクトース、動物組織の酵素消化物、ゼラチンの酵素消化物、乳児用調整粉乳、pH指示薬、フェノールレッド
【0062】
塩:MgCl2、FAC、胆汁塩、KH2PO4、K2HPO4
【0063】
誘導因子:メチルグルクロニド、D-グルクロン酸、IPTG
【0064】
指示薬:BCIグルクロニド
【0065】
ゲル化剤:グアーガム
【表1】
【0066】
別の態様では、本開示は、大腸菌群及び大腸菌(Escherichia coli)微生物のコロニーを別個に計数するための方法を提供する。本方法は、本開示の培養デバイスの任意の実施形態の微生物増殖ゾーン内の試料及び水性液体を接触させて、接種済み培養デバイスを形成することを含む。任意の実施形態では、試料は水性液体を含むことができる。一般に、ゲル化剤、指示薬剤(TTC及びBCIG)、並びに培養デバイスの微生物増殖ゾーン内の乾燥培養培地の量は、これらが(すなわち、ゲル化剤、指示薬剤、及び栄養素)が、所定の体積(例えば、1ミリリットル、2ミリリットル、5ミリリットル)の水性液体で再構成されたときに、大腸菌群細菌及び大腸菌のコロニーを検出し、区別するための有効濃度を提供するように選択される。任意の実施形態では、水性液体は、試料材料と共に添加することができる(例えば、試料材料は、滅菌水、水性緩衝液、又は水性栄養培地などの水性液体中に溶解、均質化、懸濁、及び/又は希釈することができる)。試料が固体(例えば、その上に又は中に保持された材料を有するメンブレンフィルター)又は半固体材料を含む任意の実施形態では、固体又は半固体試料を使用してデバイスに接種する前又は後に、所定の体積の液体(例えば、滅菌水、水性栄養培地)を使用して、培養デバイスを再構成することができる。
【0067】
本発明のデバイスの使用を、図1及び2のデバイスを具体的に参照して論じることができる。図1及び3のデバイスを混釈平板として使用するために、第2のシート22を引き戻し、所定量の水又は水性試験試料を、スペーサ部材18によって画定された微生物増殖ゾーン内の第1のシート12上に定置する。接着剤14によって第1のシート12に接着された乾燥培養培地16の構成成分は、迅速に水和又は溶解され、栄養素ゲルが形成される。次いで、第2のシート22を第1のシートの上に再び置き、重り付きプレートを上部に定置して、試料を微生物増殖ゾーン全体に完全に広げる。次いで、所定の時間デバイスをインキュベートする。
【0068】
試料は、当該技術分野において既知の方法を使用して(例えば、液体試料を培養デバイス内に注ぐか又は分注することによって)、培養デバイスの微生物増殖ゾーンと接触させることができる。任意の実施形態では、第2のシートは、典型的には持ち上げられ(例えば、図1に示すように)、培養デバイス内の第1のシートと第2のシートとの間、好ましくは、存在する場合はスペーサの開口内への試料の堆積を可能にする。任意の実施形態では、試料及び水性液体を、微生物増殖ゾーン内のゲル化剤と接触させることにより、接種済み培養デバイスが形成される。接種済み培養デバイスを形成した後、第2のシートを下げて、インキュベーション中の水性液体の汚染及び/又は過剰な蒸発に対する保護バリアを形成する。任意の実施形態では、試料は、例えば、被覆されたデバイスの上に重り付きプレートを定置することによって、微生物増殖領域の上に均一に広げられてもよい。
【0069】
任意の実施形態では、本方法は、接種済み培養デバイスを一定時間インキュベートすることを更に含む(例えば、温度制御された環境のチャンバ内で)。インキュベーション条件(例えば、インキュベーション温度)は、試料中に存在する大腸菌群細菌の増殖速度に影響を及ぼし得る。当業者であれば、大腸菌群細菌を検出するために好適なインキュベーション温度を認識するであろう。例えば、本開示の接種済み培養デバイスは、例えば、約35℃~約45℃(両端の値を含む)の温度でインキュベートすることができる。任意の実施形態では、培養デバイスは、好気性(例えば、通常の大気)気体環境中でインキュベートすることができる。
【0070】
接種済み培養デバイスは、大腸菌群細菌の増殖を可能にするのに十分な時間にわたってインキュベートされる。大腸菌群細菌を検出するために必要な最小インキュベーション時間は、培養デバイスがインキュベートされる温度に関連する。例えば、培養デバイスが約35℃でインキュベートされる任意の実施形態では、インキュベーション時間は、約12時間~約24時間(両端の値を含む)であり得る。培養デバイスが約42℃でインキュベートされる任意の実施形態では、インキュベーション時間は、約8時間~約18時間(両端の値を含む)であり得る。培養デバイスが約42℃でインキュベートされる任意の実施形態では、インキュベーション時間は、約8時間~約12時間(両端の値を含む)であり得る。
【0071】
本開示の方法は、大腸菌群細菌のコロニーを検出すること、及び/又は培養デバイス内の大腸菌細菌のコロニーを検出すること(例えば、培養デバイス内の大腸菌群細菌を観察すること、及び/又は大腸菌細菌のコロニーを検出すること)を更に含む。任意の実施形態では、培養デバイス内の大腸菌群細菌を検出することは、指示薬系(例えば、ラクトース発酵指示薬系及びβ-D-グルクロニダーゼ指示薬系)のうちの少なくとも1つと反応したコロニーを培養デバイス内で検出することを含むことができる。大腸菌群細菌のコロニーは、ラクトースを酸及び気体状最終生成物に発酵させるその能力によって区別される。したがって、大腸菌群コロニーを検出することは、コロニー上の沈殿物としてのホルマザンの減少及びコロニーに近接する(例えば、コロニーの周辺部の約1~2mm以内)酸のゾーン(デバイス内のpH指示薬によって証明されるような、例えば、pH指示薬がフェノールレッドである場合、黄色のゾーン)の1つ又は両方を観察することと、またコロニーに近接する(例えば、コロニーの周辺部に接触するか、又はコロニーの周辺部の約1mm以内のいずれか)半固体培養培地中に捕捉された気泡を観察することも含む。
【0072】
コロニーに近接した酸領域及び気泡を観察することに加えて、大腸菌細菌のコロニーを検出及び区別することは、β-グルクロニダーゼ酵素活性の生成物を検出することを更に含む。例えば、β-グルクロニダーゼ指示薬系がBCIGを含む場合、大腸菌コロニーは、コロニーのそれぞれを囲む小さな青色(又は青みがかった)ゾーンを有するか、又は有さない青色(又は青みがかった緑)に見えるであろう。
【0073】
任意の実施形態では、本開示の方法は、接種済み培養デバイスをインキュベートした後に、接種済み培養デバイス内に、大腸菌群が存在する場合には大腸菌群細菌のコロニーを、大腸菌が存在する場合には大腸菌のコロニーを計数することを更に含む。したがって、大腸菌群及び大腸菌(E. coli)細菌のコロニーが本明細書に記載されるように検出された後、検出されたコロニーの数は、手動で、又は当該技術分野において既知の自動化されたプロセスを使用して(例えば、3M Company;St.Paul,MNから入手可能なPETRIFILM Plate Readerなどの自動コロニー計数器を使用して)決定される。
【0074】
例示的な実施形態
実施形態Aは、大腸菌群及び大腸菌(Escherichia coli)微生物のコロニーを別個に計数するためのデバイスであって、
水不透過性の第1のシートと、
第1のシートに取り付けられた水不透過性の第2のシートと、
第1のシートに接着された乾燥した再水和可能な培養培地であって、培養培地が、
大腸菌群微生物の増殖を促進する有機窒素系栄養素と、
微生物増殖ゾーン内に配置され、かつD-ラクトース、β-ガラクトシダーゼの産生を増強する第1の誘導因子化合物、及びpH指示薬を含む、ラクトース発酵指示薬系と、
増殖ゾーン内に配置され、かつ5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド、及び大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物を含む、β-D-グルクロニダーゼ指示薬系と、
大腸菌からの大腸菌群の個別化を可能にするレドックス指示薬系と、
非大腸菌群微生物の増殖を選択的に阻害する有効量の少なくとも1つの薬剤と、
第1の冷水可溶性ゲル化剤と、を含む培養培地と、
第1のシートと第2のシートとの間に配置された微生物増殖ゾーンであって、第1のシートに接着された培養培地の領域が、増殖ゾーンを画定する、微生物増殖ゾーンと、
第2のシートに接着された第2の冷水可溶性ゲル化剤と、を含み、
第1のシートは、培養培地が第2の冷水可溶性ゲル化剤に面するように、第2のシートに取り付けられている、デバイスである。
【0075】
実施形態Bは、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物のうちの第1の化合物が、メチル-β-D-グルクロニド及びフェニル-β-D-グルクロニドから選択される、実施形態Aに記載のデバイスである。
【0076】
実施形態Cは、大腸菌中のβ-グルクロニダーゼ酵素活性を増強する複数の化合物のうちの第2の化合物が、D-グルクロン酸である、実施形態A又は実施形態Bに記載のデバイスである。
【0077】
実施形態CCは、レドックス指示薬が、テトラゾリウムクロリドである、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0078】
実施形態Dは、第1のシート及び第2のシートが、それを通る二酸化炭素の通過を遅らせるように構成されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0079】
実施形態Eは、微生物増殖ゾーン内に配置されたD-グルクロン酸を更に含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0080】
実施形態Fは、第1のシートが、ポリエステルフィルムを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0081】
実施形態Gは、第2のシートが、ポリエステルフィルムを含む、実施形態D~Fのいずれか1つに記載のデバイスである。
【0082】
実施形態Hは、第2のシートが、ポリエチレンテレフタレートを含む、実施形態Gに記載のデバイスである。
【0083】
実施形態Iは、増殖ゾーンが、第1のシートに接着されたスペーサによって画定される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0084】
実施形態Jは、冷水可溶性ゲル化剤が、グアーガムを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0085】
実施形態Kは、第1のシートに接着された培養培地が、約130mg/100cm~約195mg/100cmのコーティング重量を有する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0086】
実施形態Lは、ラクトースが、第1のシートに接着された乾燥培養培地中に配置され、ラクトースが、乾燥培養培地中に、約8.5mg/100cm~約27mg/100cmのコーティング重量で存在する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0087】
実施形態Mは、培養培地が、水性液体で再構成されたときに、培養培地を約6.5~約8のpHに緩衝するための試薬を更に含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0088】
実施形態Nは、pH指示薬が、スルホンフタレインpH指示薬を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0089】
実施形態Oは、pH指示薬が、クロロフェノールレッド及びフェノールレッドからなる群から選択される、実施形態Nに記載のデバイスである。
【0090】
実施形態Pは、有機窒素系栄養素が、酵母エキス、ブタペプトン、ゼラチンの酵素消化物、動物性ペプトンの酵素消化物、及び前述の有機窒素系栄養素のうちの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0091】
実施形態Qは、増殖ゾーンが、約1ミリリットル~約5ミリリットルの所定の体積を有する水性液体を受容するように構成され、所定の体積を受容すると、大腸菌群コロニーの増殖を促進し計数を助ける水和培養培地を形成する、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0092】
実施形態Rは、薬剤が、胆汁塩、ドデシル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0093】
実施形態Sは、第2の冷水可溶性ゲル化剤が、乾燥粒子又は乾燥凝集粒子の形態で第2の薄膜積層体上に配置されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0094】
実施形態Tは、β-ガラクトシダーゼの産生を増強する第1の誘導因子化合物が、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0095】
実施形態Uは、微生物増殖ゾーン内に配置された乾燥乳児用調整粉乳を更に含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のデバイスである。
【0096】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0097】
実施例1~13微生物検出物品の製造
【0098】
培養培地の調製
【0099】
表1に示す混合物を、別個の容器で調製した。混合物の液体体積を、脱イオン水で1000mLにした。
【0100】
第1のシートの調製
【0101】
表2及び3に示される混合物は、まずグアーガムを水に添加し、続いて残りの構成成分を添加し、80℃に加熱して培養培地の低温殺菌を可能にすることによって調製した。加熱工程後、混合物を周囲温度まで冷却し、使用まで4℃で保管した。
【0102】
液体混合物を周囲温度まで加温し、ポリエステルフィルム上にコーティングし、コーティングされた層を、米国特許第5,384,766号の実施例1に開示されるように乾燥させた。個々のフィルム上にコーティングされた各別個の培養培地の乾燥コーティング重量は、約0.2~0.3g/155cmであった。コーティングされたシートを、10.2cm×7.6cmの矩形に切断した。
【0103】
American FujiSeal(Shaumberg,IL)から入手したポリスチレン発泡体(厚さ0.51mm)を使用して、スペーサ要素を作製した。発泡体シートの片面を、接着剤(3M 927 Transfer Adhesive)を用いて、コーティングされた剥離ライナーに接着させた。円(直径約6cm)を発泡体シートからダイカットした。発泡体シートを10.2cm×7.6cmの矩形に切断し、円形穴を矩形のほぼ中央に配置させた。剥離ライナーを取り外し、スペーサ要素を(発泡体シート上の接着剤を介して)乾燥培養培地でコーティングされたシートに接着させて、これにより、培養培地を発泡体シートの円形開口部において露出させた。
【0104】
第2のシートの調製
【0105】
2軸配向ポリプロピレン(BOPP)を、米国特許第4,565,783号の実施例11に記載されたトリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC、パートNo.17779;Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)の5倍を含有する接着剤(3M 927 Transfer Adhesive)でコーティングした。続いて、接着剤コーティングされたBOPPフィルムを、米国特許第4,565,783号の実施例11に記載のように、グアーガムで粉末コーティングした。第2のシートを、10.6cm×7.6cmの矩形に切断した。
【0106】
培養デバイスの組立。
【0107】
両面接着テープを、第1のシートのそれぞれの上の発泡体スペーサの縁部の1つに沿って(より狭い寸法に沿って)貼り付けた。第2のシートのコーティングされた表面が第1のシートに接着された発泡体スペーサに面し、かつシートが一緒に押圧されて、第2のシートを両面接着テープに固定させるように、第2のシートを第1のシートの上に重ね合わせた(図1に示すように)。
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
実施例1.
【0111】
上記のように調製した第2のシートに、培地87でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0112】
実施例2.
【0113】
上記のように調製した第2のシートに、培地83でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0114】
実施例3.
【0115】
上記のように調製した第2のシートに、培地84でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0116】
実施例4.
【0117】
上記のように調製した第2のシートに、培地88でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0118】
実施例5.
【0119】
上記のように調製した第2のシートに、培地89でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0120】
実施例6.
【0121】
上記のように調製した第2のシートに、培地72でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0122】
実施例7.
【0123】
上記のように調製した第2のシートに、培地66でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0124】
実施例8.
【0125】
上記のように調製した第2のシートに、培地63でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0126】
実施例9.
【0127】
上記のように調製した第2のシートに、培地62でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0128】
実施例10.
【0129】
上記のように調製した第2のシートに、媒体69でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0130】
実施例11.
【0131】
上記のように調製した第2のシートに、培地64でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0132】
実施例12.
【0133】
上記のように調製した第2のシートに、培地70でコーティングされた第1のシートを接着することによって、デバイスを作製した。
【0134】
実施例13.大腸菌群又は大腸菌のコロニーを増殖及び計数するための培養デバイスの使用。
【0135】
大腸菌ATCC 51813をMicrobiologics(St.Cloud,MN)から入手し、続いて単離して、純粋培養凍結グリセロールストックとして保存した。誘導性ベータ-グルクロニダーゼ挙動を呈したモッツァレラチーズから単離した天然の大腸菌株のREC1を、使用するまでグリセロール中に保存した。
【0136】
大腸菌ATCC 51813及び大腸菌REC1の一晩培養物を、必要に応じてButterfieldの緩衝液で連続希釈して、培養デバイス上に計測可能なコロニー(例えば、15~150 CFU/mL)を得た。希釈した試料1mLを、プロトタイププレート上に接種した。接種したプレートを2種の温度(35℃及び42℃)でインキュベートし、プレートを24±6時間観察した。
【0137】
対照として、希釈培養物を、製造元の指示に従って3M(商標)PETRIFILM(商標)大腸菌/大腸菌群Count Plates(PFEC)及び3M(商標)PETRIFILM(商標)Select大腸菌Count Plates(PSEC)(両方とも3M Health Care;St.Paul,MNから入手)に接種して、24±2時間又は48±3時間インキュベートし、製造元の指示に従ってコロニーを計測した。
【0138】
インキュベーション時間後、実施例1~12からの培養デバイスが観察され、黄色の酸ゾーン(すなわち、ラクトース発酵コロニー)によって取り囲まれた青色に見える可視コロニー(すなわち、グルクロニダーゼ陽性、大腸菌コロニーを示す)を、1つ以上の隣接する気泡(すなわち、ラクトース発酵コロニー)と共に検出及び計数した。実施例1~12のそれぞれのコロニー計数は、対照PETRIFILMプレートの計数と同様であった。
【0139】
加えて、各プレート上のコロニーを、培養デバイスのそれぞれにおいて、β-グルクロニダーゼ活性及びラクトース発酵について定性的に分析した。結果を表4に示す。
【0140】
【表4】
【0141】
本明細書で言及した全ての特許、特許出願、及び公報、並びに電子的に入手可能な資料の全開示内容が、参照により組み込まれる。本出願の開示内容と参照により本明細書に組み込まれたいずれかの文書の開示内容との間に何らかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示内容が優先するものとする。上記の詳細な説明及び実施例は、理解しやすいように示したものにすぎない。これによって不必要な限定がなされるものではない。本発明は図示及び記載された細部そのものに限定されず、当業者に明白な変形形態は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれる。
【0142】
全ての見出しは読者の便宜のためのものであり、明記しない限り、見出しに続く文言の意味を限定するために用いられるものではない。
【0143】
本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3