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特許7125981水系の汚損を制御するための元素硫黄分散剤背景
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】水系の汚損を制御するための元素硫黄分散剤背景
(51)【国際特許分類】
   C02F 5/00 20060101AFI20220818BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20220818BHJP
   C09K 23/56 20220101ALI20220818BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20220818BHJP
【FI】
C02F5/00 610F
C02F5/00 620A
C02F5/10 610Z
C09K23/56
C09K23/52
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020511213
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018047205
(87)【国際公開番号】W WO2019040419
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】62/549,186
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マントリ ディニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロッドマン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ギル ジャスビア エス
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533432(JP,A)
【文献】米国特許第5223160(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121137(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0272342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 5/00-5/14
C09K 8/00-8/94
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄を分散させる方法であって、前記方法は、
硫黄を含有するプロセス水に第1の硫黄分散剤を添加することであって、前記第1の硫黄分散剤は、C-C25アルキルポリグリコシドを含む、添加すること、および
前記硫黄を分散させること、を含む、方法。
【請求項2】
第2の硫黄分散剤を前記プロセス水に添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の硫黄分散剤が、アクリル酸および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含むポリマーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセス水への添加の前に、前記第1の硫黄分散剤および前記第2の硫黄分散剤をブレンドして分散剤混合物を形成することをさらに含む、請求項2または3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記分散剤混合物が、約5重量%~約95重量%の前記第1の硫黄分散剤および約95重量%~約5重量%の前記第2の硫黄分散剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセス水に消泡剤を添加することをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記消泡剤は、C-C25アルキルアルコール、C-C25アルキルアルコールエトキシレート、一塩基性ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、ポリジメチルシロキサン、モノステアリン酸ソルビタン、水和シリカ、エトキシル化モノステアリン酸ソルビタン、キサンタンガム、アモルファスシリカ、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記消泡剤が、ポリジメチルシロキサンおよびモノステアリン酸ソルビタンを含む、請求項6~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の硫黄分散剤がC10-16アルキルポリグリコシドを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の硫黄分散剤が、C10-16アルキルポリグリコシドおよびC8-10アルキルポリグリコシドを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーが約50~70重量%のアクリル酸および約30~50重量%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーが、約5,000Da~約50,000Daの重量平均分子量を含む、請求項3~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の硫黄分散剤が、約1ppm~約1000ppmの量で前記プロセス水に添加される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の硫黄分散剤が、約2ppm~約100ppmの量で前記プロセス水に添加される、請求項2~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の硫黄分散剤が、約1ppm~約10ppmの量で前記プロセス水に添加される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記プロセス水が地熱冷却水または地熱凝縮物である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記硫黄が元素硫黄である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
硫黄を分散させるための地熱冷却水における第1の分散剤の使用であって、前記第1の分散剤が、C-C25アルキルポリグリコシドを含む、第1の分散剤の使用。
【請求項19】
地熱冷却水の中に硫黄を分散させる方法であって、前記方法は、
硫黄を含有する前記地熱冷却水にC-C25アルキルポリグリコシドを含む第1の硫黄分散剤を添加すること、
アクリル酸および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含むポリマーを含む第2の硫黄分散剤を前記地熱冷却水に添加すること、および
前記硫黄を分散させること、を含む、方法。
【請求項20】
前記第1の硫黄分散剤が、前記第2の硫黄分散剤の前、前記第2の硫黄分散剤の後に、および/または前記第2の硫黄分散剤との混合物として添加される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に硫黄を分散することに関する。より具体的には、本開示は、水系において硫黄を分散させ、発泡を最小化するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地熱エネルギーは、地球内部内の熱の形態のエネルギーであり、地熱井を使用して開発することができる。地球内部は、莫大な供給量の熱を含有するが、エネルギー生成のための熱の抽出には課題が残っている。地熱エネルギーは、岩盤を通じた熱伝導によって、地表に向かって移動している。熱エネルギーはまた、溶岩の移動、または相互接続した亀裂および孔を通じた流体(蒸気もしくは水としてのHO)の循環によって、地表に向かって伝達され得る。いずれの場合も、地熱井は、比較的深い井戸である。
【0003】
地熱ブラインおよび蒸気は、一般に、エネルギー源として使用される。地熱ブラインは、発電、加熱、および電気のプロセスにおいて使用される。地熱蒸気の温度は、約185℃~約370℃(約365°F~約700°F)の範囲である。蒸気は、フラッシングユニットを使用してブラインから分離される。低温ブラインはまた、電気二元ユニット(二次流体ユニット)を生産するためにも使用することができる。地熱ブラインは、約1000ppm未満~数十万ppmの塩分、および約6パーセントまでの非凝縮性ガスの含有量を有し得る。塩含有量および用途に応じて、地熱流体は、直接的に、または二次流体サイクルを介して、使用することができる。他のエネルギー源の存在量が減り、それらがより高価になるにつれて、エネルギー源としての地熱エネルギーの使用は、重要性を増している。これは、持続可能で再生可能なエネルギー源であり、他の再生可能エネルギー源とは異なり、地熱エネルギーは、常に利用可能である。
【0004】
鉱物堆積は、地熱エネルギーの生産において遭遇される厳しい条件下での主要な問題であり、地熱地帯の開発を制限する要因であり得る。熱水卓越型貯留層の沸騰する地熱流体に由来する鉱物堆積は、特に問題である。
【0005】
硫化水素(HS)は、流体の天然に存在する汚染物質であるか、または硫黄還元細菌によって生成される。HSの腐食性は、粒子状硫化鉄の蓄積を引き起こす。硫化鉄を含む鉄化合物は、ガス、石油、水、およびガスと石油と水との混合物を輸送するパイプライン網内で形成され得る。硫化鉄化合物は、水を吸収することができる無定形固体粒子のような外見であることを物理的特徴とする。
【0006】
硫化水素は酸化して、硫黄を生成し、汚損を引き起こす可能性がある。酸化されたHSは、硫化物または硫黄化合物を含むプロセス水と接触するプロセス機器の表面に堆積する沈殿物またはスケールを形成する。元素硫黄は、HSの酸化および水中の微生物の存在に由来する。元素硫黄は、堆積物を形成し、地熱冷却水を処理するプロセス機器の汚れを引き起こす可能性がある。
【0007】
地熱産業において、凝縮蒸気は、一般に、冷却システムへの補給水として使用される。凝縮した蒸気は、HS、アンモニア、二酸化炭素などの不純物を含む。直接接触凝縮システムは、一般的に地熱発電所で使用される。直接接触凝縮システムにおいて、冷却剤を蒸気と直接接触させることができ、この種類の冷却システムは、蒸気および冷却剤を一緒に混合できる用途に適している。直接接触凝縮システムの例には、スプレーコンデンサー、バッフル塔、充填塔、ジェットコンデンサー、およびスパージパイプが含まれるが、これらに限定されない。蒸気および冷却水の混合物は凝縮システムと直接接触しているので、冷却水はHSで汚染される。この硫化物汚染は、地熱冷却水中の生物酸化および生物汚損による硫黄の堆積をもたらす。
【0008】
元素硫黄は、化学的手段と生化学的手段の両方を介して地熱冷却水中に形成する。HSからの硫黄の化学的形成は、水中の酸素または添加された酸化剤のいずれかによる直接酸化を通して起こり、酸化反応は温度とpHに依存する。生化学的手段を通してのSの形成ははるかに複雑であり、関与する細菌種に依存して多数の反応経路を介して進行する可能性がある。HSから元素硫黄の形成を制御することは、微生物変換と比較して化学変換の場合においてより困難になる可能性がある。微生物変換は、有効な殺生物剤の使用を介してある程度制御できる。
【0009】
微生物学的な硫黄酸化は、元素硫黄の形成を生じ、これは、細菌細胞内に内部的に、または結晶として外部的に堆積する。外部に堆積する場合、硫黄結晶は他の細菌によってコロニー形成され、細菌はさらに硫黄を酸化して硫酸塩化し、最終的に硫酸を形成する。硫酸の形成は、冷却システムの構成材料に損傷を与えるレベルにまで冷却水のpHの低下を生じる。
【0010】
元素硫黄はまた、高度に疎水性であり、元素硫黄粒子が急速に凝集することおよび粘稠な堆積物の形成を引き起こす。典型的な堆積スポットには、冷却塔ノズル、冷却塔充填、直接凝縮器のスプレーノズル、および補助熱交換器が含まれる。これらの堆積物は、冷却塔の充填の崩壊、冷却効率の損失をもたらす冷却水分配配管の閉塞、凝縮性能(発電量)に影響を与える可能性のある凝縮器内のノズルの閉塞、凝縮器背圧の増加、および蒸気消費量の増加、および総運用コスト(蒸気のコストおよびメンテナンスのコスト)をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0011】
いくつかの実施形態において、硫黄を分散させる方法が開示されている。この方法は、硫黄を含む水を処理するために第1の硫黄分散剤を添加すること、および硫黄を分散させることを含み得る。第1の硫黄分散剤は、C-C25アルキルポリグリコシドを含み得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、この方法は、プロセス水に第2の硫黄分散剤を添加することを含み得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、この方法は、プロセス水への添加の前に、第1の硫黄分散剤および第2の硫黄分散剤をブレンドして分散剤混合物を形成することを含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、この方法は、消泡剤をプロセス水に添加することを含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1の硫黄分散剤は、C10-16アルキルポリグリコシドを含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1の硫黄分散剤は、C10-16アルキルポリグリコシドおよびC8-10アルキルポリグリコシドを含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1の硫黄分散剤は、約1ppm~約1000ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、第1の硫黄分散剤は、約1ppm~約10ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、第2の硫黄分散剤は、アクリル酸および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含み得るポリマーを含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、第2の硫黄分散剤は、約2ppm~約100ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、第2の硫黄分散剤は、約2ppm~約15ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、約5,000Da~約50,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、約50~70重量%のアクリル酸および約30~50重量%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含み得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、分散剤混合物は、約5重量%~約95重量%の第1の硫黄分散剤および約95重量%~約5重量%の第2の硫黄分散剤を含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、消泡剤は、C-C25アルキルアルコールからのC-C25アルキルアルコールエトキシレート、一塩基性ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、ポリジメチルシロキサン、モノステアリン酸ソルビタン、水和シリカ、エトキシル化ソルビタンモノステアレート、キサンタンガム、アモルファスシリカ、およびそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、消泡剤は、ポリジメチルシロキサンおよびモノステアリン酸ソルビタンを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、プロセス水は、地熱冷却水または地熱凝縮物であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、硫黄は元素硫黄であり得る。
【0029】
他の実施形態では、硫黄を分散させるための地熱冷却水中の第1の分散剤の使用が開示されている。第1の分散剤は、C-C25アルキルポリグリコシドを含み得る。
【0030】
特定の実施形態では、地熱冷却水中に硫黄を分散させる方法が開示されている。この方法は、硫黄を含有する地熱冷却水にC-C25アルキルポリグリコシドを含み得る第1の硫黄分散剤を添加すること、アクリル酸および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含むポリマーを含み得る第2の硫黄分散剤を地熱冷却水に添加すること、および硫黄を分散させることを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1の硫黄分散剤は、第2の硫黄分散剤の前に、第2の硫黄分散剤の後に、および/または第2の硫黄分散剤との混合物として添加される。
【0032】
前述は、後に続く詳細な発明がより良好に理解され得ることを実施するための形態をより良く理解できるように、本開示の特徴および技術的利点を概括的に概説した。本願の特許請求の範囲の主題を形成する、本開示のさらなる特徴および利点は、以下に説明される。開示される概念および具体的な実施形態は、本開示と同じ目的を実行するための他の実施形態を修正または設計するための基礎として容易に利用できることが、当業者には理解されるべきである。そのような等価の実施形態はまた、添付の特許請求の範囲に明記される本開示の趣旨および範囲から逸脱しないことが、当業者によって認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
発明の詳細な説明を、以下の図面に対する具体的な参照とともに本明細書以下に説明する。
【0034】
図1】単独でおよび組み合わせての2種類の添加剤についての分散率および発泡率を示す。
【0035】
図2】添加剤の異なる組み合わせで処理したときの経時的な泡体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
様々な実施形態が以下に説明される。実施形態の様々な要素の関係性および機能については、以下の詳細な発明に対する参照によってより良好に理解することができる。しかし、実施形態は、以下に例解されるものに限定されない。特定の例では、本明細書に開示される実施形態の理解のために必要ではない詳細は、省略することができる。
【0037】
分散剤、特に生体分散剤は、界面活性剤の特性を有し、本質的に発泡している。発泡は、発電システムの真空の損失を生じ、発電所の運転休止を生じるので、これは、直接接触型の凝縮用途においては受け入れられない。
【0038】
元素硫黄は、硫黄分散剤を使用して分散できるが、しかし、分散剤は著しい発泡形成を引き起こす可能性がある。発泡形成は、一部の産業プロセスにおいて、とりわけ、地熱冷却塔において重大な問題を引き起こす。本開示の主題は、水系における硫黄汚損および分散剤泡生成に対処する。具体的には、この主題は、発泡生成を最小化しながら硫黄を分散させる組成物および方法を開示する。
【0039】
一般的に、硫黄沈殿物の汚損は、既存の沈殿物を洗浄するか、それらの形成を防ぐことで対処できる。本明細書に開示される組成物および方法は、既存の硫黄沈殿物を洗浄する際に、および硫黄沈殿物の形成を防止または抑制する際に有効である。硫黄沈殿物を洗浄することおよび防止することに加えて、本明細書に開示される組成物および方法は、処理されたプロセス水中の発泡形成を低減するために有効である。
【0040】
いくつかの実施形態において、硫黄を分散させる方法が開示されている。この方法は、硫黄を含む水を処理するために第1の硫黄分散剤を添加すること、および硫黄を分散させることを含み得る。第1の硫黄分散剤は、C-C25アルキルポリグリコシドを含み得る。アルキルポリグリコシドは非イオン性であり、親水性糖、および疎水性である可変炭素鎖長のアルキル基を含み得る。本明細書で使用される「分散する」および「分散すること」とは、流体中で固体を懸濁させること、表面から固体を除去すること、または流体懸濁液中で固体を維持することを意味する。
【0041】
他に示されない限り、本明細書に記載される「アルキル」基は、単独でまたは別の基の一部として、任意に置換された直鎖飽和一価炭化水素基、または任意に置換された分岐飽和一価炭化水素基である。直鎖または分岐鎖アルキル基は、1個または3個~32個までの炭素原子を有することができる。非置換アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチルなどが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態においては、第1の硫黄分散剤は、C10-16アルキルポリグリコシドを含み得る。特定の実施形態において、第1の硫黄分散剤は、C12アルキルポリグリコシド、C13アルキルポリグリコシド、C14アルキルポリグリコシド、C15アルキルポリグリコシド、C16アルキルポリグリコシド、およびそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1の硫黄分散剤は、C10-16アルキルポリグリコシドおよびC8-10アルキルポリグリコシドなどの異なるアルキル鎖長を有する2つのアルキルポリグリコシドの混合物であり得る。第1の硫黄分散剤が2つ以上のアルキルポリグリコシドの混合物である場合、アルキルポリグリコシドは同じまたは異なる場所で別々に添加されてもよく、プロセス水への添加の前に一緒に混合されてもよい。特定の実施形態では、第1の硫黄分散剤は、水、C10-16アルキルポリグリコシド、およびC8-10アルキルポリグリコシドからなる。
【0044】
いくつかの実施形態において、第1の硫黄分散剤は、約0.01ppm~約1000ppm、約0.01ppm~約500ppm、約0.01ppm~約250ppm、約0.01ppm~約150ppm、約0.01ppm~約50ppm、約0.01ppm~約25ppm、約0.01ppm~約5ppm、または約0.1ppm~約2ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の硫黄分散剤は、約1ppm~約10ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、この方法は、プロセス水に第2の硫黄分散剤を添加することを含み得る。第2の硫黄分散剤は、第1の硫黄分散剤と同時に添加されてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、第2の硫黄分散剤は、アクリル酸および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含み得るポリマーであり得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、第2の硫黄分散剤は、約50~70重量%のアクリル酸および約30~50重量%の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸を含むポリマーであり得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、第2の硫黄分散剤は、約2ppm~約100ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、第2の硫黄分散剤は、約0.1ppm~約1000ppm、約0.1ppm~約500ppm、約0.1ppm~約250ppm、約0.1ppm~約150ppm、約0.1ppm~約50ppm、約0.1ppm~約25ppm、または約0.1ppm~約5ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、第2の硫黄分散剤は、約2ppm~約15ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、約5,000Da~約50,000Daの重量平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態において、ポリマーは約20,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、この方法は、プロセス水に添加する前に、第1の硫黄分散剤と第2の硫黄分散剤をブレンドして分散剤混合物を形成することを含むことができる。いくつかの実施形態において、分散剤混合物は水を含むことができる。分散剤混合物は、硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムを含んでもよい。特定の実施形態において、分散剤混合物は、水、第1の硫黄分散剤、および第2の硫黄分散剤からなる。
【0051】
いくつかの実施形態において、分散剤混合物は、約5重量%~約95重量%の第1の硫黄分散剤および約95重量%~約5重量%の第2の硫黄分散剤を含むことができる。特定の実施形態において、プロセス水に添加される第1の硫黄分散剤および第2の硫黄分散剤の相対重量は、約1:10~約10:1、約1:10~約1:1、または約1:5~約1:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、プロセス水に添加される第1の硫黄分散剤と第2の硫黄分散剤の重量比は約1:3であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、この方法は、消泡剤をプロセス水に添加することを含み得る。消泡剤の例には、C-C25アルキルアルコール、C-C25アルキルアルコールエトキシレート、一塩基性ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、ポリジメチルシロキサン、ソルビタンモノステアレート、水和シリカ、エトキシ化ソルビタンモノステアレート、キサンタンガム、およびアモルファスシリカが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、消泡剤には、水、ポリジメチルシロキサン、およびモノステアリン酸ソルビタンが含まれ得る。他の実施形態では、消泡剤は、水、ポリジメチルシロキサン、モノステアリン酸ソルビタン、水和シリカ、モノステアリン酸エトキシル化ソルビタン、およびキサンタンガムからなり得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、消泡剤は、約0.001ppm~約100ppmの量でプロセス水に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、消泡剤は、約0.001ppm~約10ppm、約0.001ppm~約5ppm、約0.01ppm~約10ppm、約0.05ppm~約5ppm、約0.05ppm~約2ppm、約0.05ppm~約10ppm、または約0.1ppm~約1ppmの量でプロセス水に添加され得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、プロセス水は、地熱冷却水または地熱凝縮物であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、硫黄は元素硫黄であり得る。
【0056】
他の実施形態では、硫黄を分散させるための地熱冷却水中の第1の分散剤の使用が開示されている。第1の分散剤は、C-C25アルキルポリグリコシドを含み得る。使用は、硫黄を分散させて発泡を低減するために第2の硫黄分散剤を使用することも含み得る。
【0057】
特定の実施形態では、地熱冷却水中に硫黄を分散させる方法が開示されている。この方法は、硫黄を含む地熱冷却水に第1の硫黄分散剤を添加すること、第2の硫黄分散剤を地熱冷却水に追加すること、および硫黄を分散させることを含み得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、分散剤混合物、第1の分散剤、または第2の分散剤は、硫化水素消去剤、腐食抑制剤、ガス水和物抑制剤、殺生物剤、界面活性剤、溶媒、不活性トレーサー、またはそれらの任意の組み合わせなどの追加の添加剤を含み得る。
【0059】
他の実施形態では、本組成物は、1つ以上の腐食抑制剤、1つ以上の他のスケール抑制剤、1つ以上の蛍光トレーサー、1つ以上の水処理ポリマー、1つ以上のポリアルコキシ化合物、または任意の他の好適な添加剤または追加の成分を含み得る。代替的な実施形態では、そのような添加剤は、本明細書に開示される分散剤と同時に添加されても、連続的に添加されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態において、本組成物は、不活性トレーサーを含めることができ、これを3D TRASAR(登録商標)技術(Ecolab,Inc.から入手可能)などの蛍光トレーサー技術と適合するようにする。他の実施形態では、不活性蛍光トレーサーは本組成物中に含められて、投与量レベルを決定する手段を提供することができる。既知の割合の蛍光トレーサーは、分散剤または消泡剤と同時にまたは連続的に添加することができる。有効な不活性蛍光トレーサーは、系内の他の成分と化学的に非反応性であり、かつ経時的に著しく劣化しない物質を含み得る。
【0061】
代表的な不活性蛍光トレーサーには、フルオレセインまたはフルオレセイン誘導体;ローダミンまたはローダミン誘導体;ナフタレンスルホン酸(モノ、ジ、トリなど);ピレンスルホン酸(モノ、ジ、トリ、テトラなど);スルホン酸を含有するスチルベン誘導体(蛍光増白剤を含む);ビフェニルスルホン酸;フェニルアラニン;トリプトファン;チロシン;ビタミンB2(リボフラビン);ビタミンB6(ピリドキシン);ビタミンE(a-トコフェロール);エトキシキン;カフェイン;バニリン;ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合ポリマー;フェニルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物;リグニンスルホン酸;多環芳香族炭化水素;アミン官能基、フェノール官能基、スルホン酸官能基、カルボン酸官能基を任意の組み合わせで含有する(多)環芳香族炭化水素;N、O、またはSを有する(多)複素環芳香族炭化水素;ナフタレンスルホン酸、ピレンスルホン酸、ビフェニルスルホン酸、またはスチルベンスルホン酸のうちの少なくとも1つの部分を含有するポリマーが含まれる。
【0062】
特定の実施形態では、鉄触媒はプロセス水に添加できる。他の実施形態では、鉄触媒はプロセス水に添加されない。鉄触媒は、鉄塩、鉄錯体、またはそれらの組み合わせを含むことができる。鉄触媒は、例えば、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、グルコン酸第一鉄、硝酸第二鉄、水酸化鉄(III)[FeO(OH)]、塩化第一鉄、ヨウ化第一鉄、硫化鉄、鉄4-シクロヘキシル-酪酸、酸化第二鉄、臭化第二鉄、フッ化第一鉄、鉄粉、酢酸第一鉄、シュウ酸第一鉄、シュウ酸第二鉄などであり得る。
【0063】
特定の実施形態では、過酸化水素がプロセス水に添加され得る。他の実施形態では、過酸化水素はプロセス水に添加されない。
【実施例1】
【0064】
実施例1
【0065】
元素硫黄は、硫化物を次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)で酸化することにより、その場で合成した。分散は透過率測定に基づいて計算した。分散効率は、次の式を使用して計算した。分散効率%=(Tblankfinal)/(Tblank-T)ここで、Tblankはブランクテストの最終透過率、Tはブランクテストの最低透過率、Tfinalは、分散剤を用いたテストの最終透過率(約3日間のインキュベーション時間)であった。
【0066】
その場で元素硫黄を生成するために、約489mlの脱イオン水をボトルに加え、必要な量の硫化物溶液および漂白剤溶液を上記ビーカーに加えて、約5ppmの硫化物および約11ppmの遊離塩素溶液を得た。溶液を約30秒間撹拌した。
【0067】
次に、必要な量の分散剤溶液を元素硫黄を含むボトルに加え、さらに約30秒間撹拌して溶液を混合した。表1に、テストしたさまざまな分散剤組成物を示す。pHを約6.5に調整し、次に撹拌を停止し、ボトルを室温に維持した。同時に、いかなる分散剤も使用しないブランクテストを設定した。
【0068】
1時間後にブランク溶液の透過率を測定した。通常、硫黄が沈殿しているがボトルの底にまだ沈殿していない間、最低の透過率は1時間で現れる。約3日後、透過率を測定し、記録した。
【0069】
表2は、透過率を硫黄の分散効率とともに要約する。空のサンプルを除き、他の全てのサンプルには10ppmの有効成分が含まれている。全てのテストは、再現性を確認するために二重に実行した。
【0070】
別の実験を行って、添加物1と添加物3の組み合わせをテストした。表3は、添加物1と3の組み合わせに対する透過率および元素硫黄の分散、ならびにそれらの個々の結果をまとめたものである。
【0071】
実施例2
【0072】
各分散物組成物によって生成される発泡の量もまた試験した。約10ppm(活性)添加物3を背の高いメスシリンダー内の約500mlの水に加えた。窒素ガス(N)を一定流量で約3分間溶液にパージした。Nパージによって、泡が形成し、シリンダー内のサンプルの総量が増加する。約3分後、サンプルの高さ(体積)を測定し、発泡の%増加を計算した。表4に、各テストの初期体積および最終体積ならびに発泡の増加率を示す。図1は、分散率および発泡率が、添加物単独と比較して、添加剤1および添加剤3の組み合わせによってどのように影響されるかを示す。
【0073】
添加物3の約2.5ppmの活性成分と添加剤1の約7.5ppmの活性成分のブレンドは、発泡が有意に少なかった(添加物3単独より約60%減少)が、添加物3と比較して分散能力が約8%低下しただけであった。
【0074】
実施例3
【0075】
添加物のさまざまな組み合わせを使用して、発泡高さおよび発泡密度をテストした。消泡剤、添加物7を、添加物3および添加物1と組み合わせてテストした。約400mlの溶液をメスシリンダーに加え、この溶液に約3分間一定流量で窒素をパージした。窒素パージは液体表面に泡を生成し、泡の高さはメスシリンダーのマーキングから決定できる。泡の高さは特定の時間間隔で記録した。図2および表5は、添加物1、添加物3、および添加物7の組み合わせにより、泡の体積が著しく減少したことを示す。
【0076】
実施例4
【0077】
添加物3の洗浄速度を市販製品BCP2175の洗浄速度と比較した。BCP2175は、アルキルアミド加水分解物、プロピレングリコール(CAS57-55-6)、および水を含む。硫黄沈殿物を有するノズルの重量を測定し、一定の温度とpHに維持された水タンクに浸漬した。約40リットルの水をタンクに追加し、pH、温度、および濁度を記録したモニタリングユニットを通して水を循環させた。水の温度は約40℃に維持した。pHは約8に維持された。添加物3またはBCP2175を所定の濃度で添加した。水サンプルを定期的に収集し、元素硫黄、硫酸塩、硫化物、濁度、およびpHについて分析した。処理水にノズルを約3日間浸した後、ノズルを取り外し、オーブン内で乾燥させ、重量を測定した。初期重量と最終重量の間の差は、ノズルから除去された沈殿物の量である。
【0078】
本明細書に開示される任意の組成物は、本明細書に開示される化合物/成分のいずれかを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなることができる。本開示によれば、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「から本質的になること(consisting essentially of)」等の語句は、特許請求の範囲の範囲を、特定の材料または工程、および特許請求された発明の基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない材料または工程に限定する。
【0079】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それらのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差から生じる誤差内にある引用された値を指し、それらの誤差が決定できない場合、「約」は、引用された値の10%以内を指す。
【0080】
本発明において開示および特許請求される組成物および方法の全ては、本開示に照らして、過度の実験を伴うことなく作製および実行することができる。本発明は多くの異なる形態で具現化され得るが、本発明の特定の好ましい実施形態が、本明細書で詳細に説明される。本開示は、本発明の原理の例示であり、本発明を例解された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。加えて、明示的に反対の言及がない限り、「a(ある1つの)」という用語の使用は、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を含むことを意図する。例えば、「ある1つの分散剤」は、「少なくとも1つの分散剤」または「1つ以上の分散剤」を含むことを意図する。
【0081】
絶対項または近似項のいずれかで与えられる任意の範囲は、いずれも、それらの両方を包含することを意図するものであり、本明細書で使用されるいかなる定義も、明確にすることを意図するものであり、限定を意図するものではない。本発明の広範な範囲を明記する数値範囲およびパラメータは、近似値ではあるものの、特定の実施例で明記される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定値において見出される標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含有している。さらに、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に包含されるあらゆるおよび全ての部分範囲(全ての小数値および全体値を含む)を包含するものとして理解されるべきである。
【0082】
さらに、本発明は、本明細書に記載の様々な実施形態の一部または全部の、ありとあらゆる可能な組み合わせを包含する。また、本明細書に記載の本発明の好ましい実施形態に対する様々な変更および修正が、当業者にとって明らかであることも理解されるべきである。そのような変更および修正は、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、かつその意図される利点を縮小することなく行うことができる。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
図1
図2