(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20220818BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20220818BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220818BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
A23L33/135 ZNA
A61K35/74 A
A61P29/00
A61P1/04
(21)【出願番号】P 2020566957
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2018089319
(87)【国際公開番号】W WO2019227418
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-07
【微生物の受託番号】CGMCC CGMCC 10984
【微生物の受託番号】GDMCC GDMCC 60087
【微生物の受託番号】GDMCC GDMCC 60090
【微生物の受託番号】GDMCC GDMCC 60091
【微生物の受託番号】GDMCC GDMCC 60092
【微生物の受託番号】GDMCC GDMCC 60093
(73)【特許権者】
【識別番号】517110612
【氏名又は名称】ビージーアイ シェンチェン
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ユェンチャン・ゾウ
(72)【発明者】
【氏名】リャン・シャオ
(72)【発明者】
【氏名】シャオピン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ジンホン・ユー
(72)【発明者】
【氏名】チュアン・リウ
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0151291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
C12N 1/00-1/38
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3の16S rDNA配列を有するMegamonas funiformis及び/又はその代謝物と、
配列番号4の16S rDNA配列を有するAnaerofustis stercorihominis及び/又はその代謝物とを含
むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記配列番号3の16S rDNA配列を有するMegamonas funiformisが、寄託番号GDMCC 60093のMegamonas funiformis AF24-28ACであり、
前記配列番号4の16S rDNA配列を有するAnaerofustis stercorihominisが、寄託番号GDMCC 60087のAnaerofustis stercorihominis AM25-6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
更に、Collinsella shenzhenensis及び/又はその代謝物、Roseburia inulinivorans及び/又はその代謝物、Butyribacter intestini及び/又はその代謝物、Lactobacillus gasseri及び/又はその代謝物、及びLactobacillus acidophilus及び/又はその代謝物の少なくともいずれかを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Collinsella shenzhenensisが、寄託番号GDMCC 60090のCollinsella shenzhenensis TF06-26である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記Roseburia inulinivoransが、寄託番号DSM 16841のRoseburia inulinivorans DSM 16841である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記Butyribacter intestiniが、寄託番号CGMCC 10984のButyribacter intestini TF01-11である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記Lactobacillus gasseriが、寄託番号GDMCC 60092のLactobacillus gasseri TF08-1である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記Lactobacillus acidophilusが、寄託番号GDMCC 60091のLactobacillus acidophilus AM13-1である、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、更に、プロバイオティクス及び/又はプレバイオティクスを含み、
前記プレバイオティクスが、フルクトオリゴサッカライド、ガラクトオリゴサッカライド、キシロオリゴサッカライド、ラクトスクロース、大豆オリゴサッカライド、イヌリン、及びオリゴサッカライドからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、更に、前記細菌の少なくとも1種の生存率を維持することができる物質を含み、
前記細菌の少なくとも1種の生存率を維持することができる物質が、システイン、グルタチオン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ジブチルメチルトルエン、トコフェロール、竹の葉の抗酸化剤、D-イソアスコルビン酸又はそのナトリウム塩、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、リン脂質、ビタミンC、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、更に、薬学的に又は食品として許容される担体又は賦形剤を含む、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記薬学的に又は食品として許容される担体又は賦形剤が、グルコース、ラクトース、スクロース、デンプン、マンニトール、デキストリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、及び生理食塩水から選択される少なくとも1つである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の形態である、請求項1から12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記食品が、乳酸飲料、豆乳飲料、発酵食品、又は動物用飼料である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記医薬が、錠剤、顆粒、粉剤、腸溶性コーティング剤、溶液、又は懸濁液の形態である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
潰瘍性大腸炎、一般的な腸炎、又は胃炎から選択される炎症又は炎症関連疾患を治療又は予防するための食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の製造における請求項1から15のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項17】
前記組成物が、
哺乳動物の体重減少を制御すること、
哺乳動物の疾患活動性指数を低下させること、
哺乳動物の腸管病変を改善すること
からなる群から選択される活性を示す、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
請求項1から15のいずれかに記載の組成物を、ヒトを除く投与対象に投与することを含むことを特徴とする潰瘍性大腸炎、一般的な腸炎、又は胃炎から選択される炎症又は炎症関連疾患を治療又は予防するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、微生物製剤の分野、特に微生物又は微生物関連組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)は、炎症性腸疾患(IBD)の2つのタイプである。IBDは、原因不明の慢性腸炎症性疾患である。中でも、潰瘍性大腸炎の炎症は主に結腸と直腸、特に結腸粘膜と粘膜下で生じる。現在、病理学的研究によれば、潰瘍性大腸炎が、感受性遺伝子、粘膜免疫、及び腸内微生物に関連していることが明らかにされている。その臨床病理学的症状は、持続的な腹痛、下痢、便潜血、及び反復される病状を含む。生活水準の向上と食事の変化により、潰瘍性大腸炎の発症率は上昇している。
【0003】
病理学的メカニズムが不明であることから、潰瘍性大腸炎の臨床治療は特異性と妥当性を欠いている。基本的には、潰瘍性大腸炎を治療する3つの臨床療法、栄養療法、外科療法、及び薬物療法があり、中でも、薬物療法が最も重要である。臨床的には、UCの主な薬剤は、サリチル酸、副腎グルココルチコイド、及び免疫抑制剤であり、これらはいずれもUCをある程度軽減させることができるが、欠点も有する。
【0004】
サリチル酸は、炎症応答緩和の目的を達成するように、プロスタグランジンの合成を効果的に阻害し、酸素フリーラジカルを除去することができるが、短期的に炎症を緩和することしかできず、UC疾患を治癒させることはできない。潰瘍性大腸炎(UC)の臨床治療のために、サリチル酸の通常使用される西洋医学は、主に軽度、中等度、又は慢性のUC患者向けであるスルファサラジン(SASP)である。しかし、サリチル酸には、胃腸反応、頭痛、網状細胞の増加、精子の減少、アレルギー反応による発疹、肝臓毒性、白血球減少症、貧血などを引き起こす副作用があると共に、これらの薬剤の抗菌作用により微生物叢障害及び高薬剤耐性を引き起こし易い。
【0005】
副腎グルココルチコイド、典型的にはベータメタゾンは、重度又は発作性のUC患者に好ましい。しかし、副腎グルココルチコイドは、代謝障害、水分の保持などの副作用を引き起こすことがあり、緊急薬としてのみ使用することができ、長期間投与することはできない。
【0006】
シクロスポリンなどの免疫抑制剤は、T細胞でのIL-2の産生を阻害して免疫応答の進行に影響を及ぼすことができ、これにより潰瘍性大腸炎(UC)を抑制する。ただし、免疫抑制療法は薬剤依存性が高く、長期に亘る治療サイクルを要し、腎毒性と二次感染を引き起こし易いので、補助療法としてのみ使用することができる。
【0007】
したがって、炎症関連疾患、特に潰瘍性大腸炎の治療に安全且つ有効な薬剤は存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願の目的は、組成物及びその使用を提供することである。本願は、以下の技術的解決策を提案する。
【0009】
本願の一態様において、いくつかの実施形態では、Megamonas funiformis及び/又はその代謝物と、Anaerofustis stercorihominis及び/又はその代謝物とを含む組成物が提供される。
【0010】
本願の重要な点は、研究により、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとの組合せ投与が、炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療することができ、特に潰瘍性大腸炎を効果的に予防又は治療できることを見出したことにある点に留意されたい。研究によれば、その予防又は治療効果は、以下の理由によって得られる。(1)Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisが、人体の腸内微小生態系(intestinal microecology)を改善し、有益な細菌で構成される微小生態学的保護バリアを形成することによって、炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療に対する有効性を示すこと、及び(2)Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisによって産生される代謝物が、炎症又は炎症関連疾患に対する予防又は治療を促進するプロバイオティック材料として機能できることである。したがって、本願で提案される組成物の重要な目的は、炎症又は炎症関連疾患、特に潰瘍性大腸炎又はその関連疾患を予防又は治療することである。
【0011】
一実施形態では、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとを含む組成物は、これらの2種類の細菌がヒトの腸内微小生態系を改善するので、有益な細菌で構成される生態学的保護バリアを形成することができ、これにより潰瘍性大腸炎の予防又は治療に対する有効性を示すことにも留意されたい。ヒトの腸内微小生態系の改善は、潰瘍性大腸炎だけでなく、一般的な腸炎、胃炎などの腸内微小生態系に関連する他の疾患に対しても予防又は治療効果を発揮することができることが理解できる。したがって、本願で提案される組成物は、炎症又は炎症関連疾患の予防又は治療に有用であり得る。
【0012】
好ましくは、Megamonas funiformisは、寄託番号GDMCC 60093のMegamonas funiformis AF24-28ACであり、Anaerofustis stercorihominisは、寄託番号GDMCC 60087のAnaerofustis stercorihominis AM25-6である。
【0013】
本願の重要な点は、研究により、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとの組合せ投与が、炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療できることを見出したことにあり、Megamonas funiformis AF24-28ACとAnaerofustis stercorihominis AM25-6が、研究において発見された最も有効な細菌の2株であるので、これらの2株を更に別々に寄託した点に留意されたい。一方、Megamonas funiformis種又はAnaerofustis stercorihominis種に属し、Megamonas funiformis AF24-28ACとAnaerofustis stercorihominis AM25-6の組合せによって達成される有効性に到達する又は更にこれを超えることができる他の株も、本願の概念の範囲内で適用され得ることが理解できる。他方、Megamonas funiformis種又はAnaerofustis stercorihominis種に属し、Megamonas funiformis AF24-28ACとAnaerofustis stercorihominis AM25-6の組合せによって達成される有効性に到達できない他の株も、本願の概念の範囲内で適用され得る。
【0014】
好ましくは、組成物は、更に、Collinsella shenzhenensis及び/又はその代謝物を含む。
【0015】
好ましくは、Collinsella shenzhenensisは、寄託番号GDMCC 60090のCollinsella shenzhenensis TF06-26である。
【0016】
好ましくは、組成物は、更に、Roseburia inulinivorans及び/又はその代謝物を含む。
【0017】
好ましくは、Roseburia inulinivoransは、寄託番号DSM 16841のRoseburia inulinivorans DSM 16841である。
【0018】
好ましくは、組成物は、更に、Butyribacter intestini及び/又はその代謝物を含む。
【0019】
好ましくは、Butyribacter intestiniは、寄託番号CGMCC 10984のButyribacter intestini TF01-11である。
【0020】
好ましくは、組成物は、更に、Lactobacillus gasseri及び/又はその代謝物、ならびLactobacillus acidophilus及び/又はその代謝物を含む。
【0021】
好ましくは、Lactobacillus gasseriは、寄託番号GDMCC 60092のLactobacillus gasseri TF08-1であり、Lactobacillus acidophilusは、寄託番号GDMCC 60091のLactobacillus acidophilus AM13-1である。
【0022】
本願の研究により、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとの組合せ投与が、炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療できるだけでなく、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとの組合せの有効性に影響を及ぼすことなく、Collinsella shenzhenensis、Roseburia inulinivorans、又はButyribacter intestiniを組成物に含有させることもできる、又はLactobacillus gasseriとLactobacillus acidophilusを組成物に含有させることもできることが示された点に留意されたい。前記組合せスキームはいずれも、炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療するのに十分である。
【0023】
好ましくは、組成物は、更に、プロバイオティクス及び/又はプレバイオティクスを含む。
【0024】
本願の重要な点は、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとの組合せ投与が、炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療することができることにある点に留意されたい。Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとの組合せの有効性に影響を及ぼすことなく、プロバイオティクス又はプレバイオティクスを添加することができ、組成物がより多くの機能又は強化された有効性を有することができることを理解することができる。これらのプロバイオティクス又はプレバイオティクスは、既存の研究で報告されているプロバイオティクス又はプレバイオティクスであるができ、本明細書では特に限定されない。
【0025】
好ましくは、一実施形態では、プレバイオティクスは、フルクトオリゴサッカライド(FOS)、ガラクトオリゴサッカライド(GOS)、キシロオリゴサッカライド(XOS)、ラクトスクロース(LACT)、大豆オリゴサッカライド(SOS)、イヌリン、及びオリゴサッカライドからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0026】
好ましくは、組成物は、更に、菌の少なくとも1つの生存率を維持することができる物質を含む。
【0027】
組成物中の各菌株の生存率を維持し、その有効性を確実にするために、菌株の生存率を維持することができる各種物質も、組成物に添加することができることが理解される。前記したこれらの物質は、既存の研究で報告されている生存率維持物質であることができるが、本明細書では特に限定されない。
【0028】
好ましくは、実施形態では、菌の少なくとも1つの生存率を維持することができる物質は、システイン、グルタチオン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ジブチルメチルトルエン、トコフェロール、竹の葉の抗酸化剤、D-イソアスコルビン酸又はそのナトリウム塩、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、リン脂質、ビタミンC、及びビタミンEからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0029】
好ましくは、組成物は、更に、薬学的に又は食品として許容される担体又は賦形剤を含む。
【0030】
本願の組成物は、炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療するという有効性を有する点に留意されたい。一実施形態では、予防又は治療効果は、主に、組成物を経口投与することによって達成される。しがって、組成物はまた、使用時の利便性のために、薬学的に又は食品として許容される担体又は賦形剤を含むことができる。
【0031】
好ましくは、薬学的に又は食品として許容される担体又は賦形剤は、グルコース、ラクトース、スクロース、デンプン、マンニトール、デキストリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、及び生理食塩水から選択される少なくとも1つである。
【0032】
別の態様において、いくつかの実施形態では、炎症又は炎症関連疾患を治療又は予防するための食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の製造における組成物の使用が提供される。
【0033】
本願の組成物は、炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療するという有効性を有すると理解することができる。使用時の利便性のために、組成物を、食品、健康製品、食品添加物、又は医薬に製することができる。
【0034】
好ましくは、組成物は、特に、潰瘍性大腸炎又は関連疾患を治療又は予防するための食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の製造に有用であり得る。
【0035】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、哺乳動物の体重減少を制御するための食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の製造における組成物の使用が提供される。
【0036】
哺乳動物の体重減少は、特に、炎症によって引き起こされる。
【0037】
好ましくは、炎症は潰瘍性大腸炎である。即ち、潰瘍性大腸炎によって引き起こされる哺乳動物の体重減少が制御される。
【0038】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、哺乳動物の疾患活動性指数を低下させるための食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の製造における組成物の使用が提供される。
【0039】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、哺乳動物の腸管病変を改善するための食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の製造における組成物の使用が提供される。
【0040】
組成物による炎症又は炎症関連疾患を予防又は治療するという有効性は、炎症又は炎症関連疾患によって引き起こされる体重減少を制御すること、炎症又は炎症関連疾患による疾患活動性指数を低下させること、及び哺乳動物の腸管病変を改善することに、主に反映される点に留意されたい。したがって、本願の組成物はまた、哺乳動物の体重減少を制御する、哺乳動物の疾患活動性指数を低下させる、又は哺乳動物の腸管病変を改善するための食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の調製に単独で使用することもできる。
【0041】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、組成物を投与することを含む、炎症又は炎症関連疾患を治療又は予防するための方法が提供される。
【0042】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、組成物を投与することを含む、哺乳動物の体重減少を制御するための方法が提供される。
【0043】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、組成物を投与することを含む、哺乳動物の疾患活動性指数を低下させるための方法が提供される。
【0044】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、組成物を投与することを含む、哺乳動物の腸管病変を改善するための方法が提供される。
【0045】
前記した様々な方法において、炎症又は炎症関連疾患を治療又は予防する、哺乳動物の体重減少を制御する、哺乳動物の疾患活動性指数を低下させる、又は哺乳動物の腸病理を改善するために、組成物は主に経口投与される点に留意されたい。
【0046】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、組成物を含む食品が提供される。
【0047】
好ましくは、食品は、乳酸飲料又は豆乳飲料である。本願における食品とは、広義には、任意の形態の可食性製品であり、乳酸飲料又は豆乳飲料に限定されない。例えば、食品は、発酵食品、動物用飼料などであることができる。
【0048】
前記した食品は、本願の組成物を含むので、炎症又は炎症関連疾患を治療又は予防すること、哺乳動物の体重減少を制御すること、哺乳動物の疾患活動性指数を低下させること、哺乳動物の腸管病変を改善することに対して効果を発揮することができる点に留意されたい。本願の食品の要点は、それに含有される本願の組成物であり、固体、液体などの具体的な形態は、各種食品又は使用要件に応じて決めることができ、本明細書では特に限定されないことが理解できる。実施形態では、本願の組成物は、主に、飲料用に便利な一般的な乳酸飲料又は豆乳飲料にされる。本願の組成物は、ミルクスライス、チーズバーなどの固形食品としてもよく、本明細書では特に限定されない。
【0049】
また、食品又はその投与量に含まれる有効なMegamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisの量は、本明細書では特に限定されず、実用上の実際のニーズに応じて柔軟に選択することができることに留意されたい。Megamonas funiformis AF24-28ACとAnaerofustis stercorihominis AM25-6を例にすると、本願の研究では、組成物中のMegamonas funiformis AF24-28ACとAnaerofustis stercorihominis AM25-6の濃度が109cfu/mLである組成物の投与量が日量0.2mLであるとき、潰瘍性大腸炎に対する優れた治療効果を達成することができることが示されている。この菌濃度又は投与量は、食品、健康製品、食品添加物、又は医薬のそれぞれの参照使用量又は参照投与量として使用できる。
【0050】
更なる態様において、いくつかでは、組成物を含むヘルスケア製品が提供される。
【0051】
前記した健康製品は、本願の組成物を含むので、炎症又は炎症関連疾患を治療又は予防すること、哺乳動物の体重減少を制御すること、哺乳動物の疾患活動性指数を低下させること、哺乳動物の腸管病変を改善することに対して効果を発揮することができる点に留意されたい。
【0052】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、組成物を含む食品添加物が提供される。
【0053】
本願の組成物は、一般的な食品素材と共に摂取されることができることに留意されたい。例えば、一般的な食品素材としては、米、麺、種々の穀物などのシリアル及びポテト(solanum tuberosum)、スイートポテト(Ipomoea batatas)などのポテト;肉、鶏肉、魚、牛乳、卵などの動物食品;大豆及びその他の乾燥豆などの豆及びその製品;新鮮な豆、根茎、葉物野菜、ナス科野菜などの野菜及び果物;動物油又は植物油、デンプン、食用糖、アルコールなどの純粋に熱エネルギーを生成する食品が挙げられる。したがって、本願の組成物は、食品添加物、即ち、直接使用のための様々な食品素材に添加される単独の調整剤として用いることができるので、炎症又は炎症関連疾患の治療又は予防に対して効果を示す。
【0054】
更なる態様において、いくつかの実施形態では、組成物を含む医薬が提供される。
【0055】
好ましくは、医薬は、錠剤、顆粒、粉剤、腸溶性コーティング剤、溶液、又は懸濁液の形態である。
【0056】
前記した医薬は、本願の組成物を含むので、炎症又は炎症関連疾患の治療又は予防に対して効果を発揮することに留意されたい。本願の医薬は、本願の単一組成物であってもよいし、互いの活性に影響を及ぼさない限り、他の抗炎症剤と組み合わせてもよい。本願の医薬は、医薬中の組成物の各株の活性が影響されない限り、様々な既存剤型を有することができることが理解できる。更に、本願の医薬は、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、接着剤、等張化剤などの、医薬又は投与形態で一般的に有用な賦形剤を含むことができる。
【0057】
本願の医薬は、経口液体、錠剤、注射、経口崩壊錠剤、凍結乾燥粉末製剤、又は腸溶性コーティング剤から選択される任意の形態として投与することができる。好ましくは、医薬の有効成分(即ち、細菌成分)が胃酸によって分解されることなくスムーズに胃を通過できるように、医薬は、腸溶性コーティングカプセル又は腸溶性コーティング錠剤などの腸溶性コーティング剤である。より好ましくは、医薬は、経口使用のために腸溶性コーティング錠剤である。
【0058】
本願における腸溶性コーティング剤とは、胃液中では崩壊しないが、腸液中で崩壊、吸収され得る医薬剤型を意味する。腸溶性コーティング剤としては、腸溶性コーティングカプセル及び腸溶性コーティング錠剤が挙げられる。腸溶性コーティングカプセルは、通常の医薬で認められているカプセルシェル中に粉末状医薬を封入することによって形成される。腸溶性コーティング錠剤は、錠剤形態の通常の医薬の表面を腸溶性コーティングで覆うことによって形成される。本願における「腸溶性コーティング」は、「コーティング」と略され、胃酸で分解されないが、小腸で完全に分解され、本願の医薬を迅速に放出することができる、通常の医薬で認められている全てのコーティングを含む。例えば、本願のコーティングは、pH=1の塩酸溶液などの合成胃酸中で、36~38℃で2時間より長い時間維持されることができ、好ましくは、1時間以内にpH=7.0の緩衝溶液などの合成腸液中で分解される。
【0059】
好ましくは、本願の腸溶性コーティング錠剤の腸溶性コーティングの厚みは、5~100μmであり、好ましくは20~80μmである。腸溶性コーティングの成分は、公知の従来材料から選択される。
【0060】
本願の医薬の組成物におけの各種活性菌の量又はその投与量は、特に限定されず、実際に投与される対象の健康状態に応じて柔軟に選択することができる。しかし、本願の研究では、組成物中のMegamonas funiformis AF24-28ACとAnaerofustis stercorihominis AM25-6の濃度が109cfu/mLである組成物の投与量が日量0.2mLであるとき、潰瘍性大腸炎に対する優れた治療効果を達成することができることが示されている。この菌濃度又は投与量は、医薬の参照使用量として使用できる。
【0061】
本願は、以下の有益な効果を達成した。
【0062】
Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisの組合せを含有させることによる、本願の組成物は、炎症又は炎症関連疾患、特に潰瘍性大腸炎の予防又は治療に対して優れた有効性を発揮することができる。したがって、本願は、安全且つ有効で、毒性及び副作用が少なく、耐性を生じさせにくい新たな組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、本願の実施例における、コントロール群、モデル群、VSL
#3群、組成物処理群、細菌組合せ1処理群、細菌組合せ2処理群、細菌組合せ3処理群、又は細菌組合せ4処理群のマウスの重量の変化を示す。
【
図2】
図2は、本願の実施例における、コントロール群、モデル群、VSL
#3群、組成物処理群、細菌組合せ1処理群、細菌組合せ2処理群、細菌組合せ3処理群、又は細菌組合せ4処理群のマウスのDAI指数の変化を示す。
【0064】
本願のMegamonas funiformis AF24-28ACは、2016年10月13日にGuangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託され、寄託番号は、GDMCC 60093である。寄託場所は、中国広東省広東市西安道中道100号にある広東省微生物研究所(Guangdong Institute of Microbiology、No. 100 Xianlie Zhong Road、Guangzhou、Guangdong、 PR China)の実験棟の5階に位置する。
【0065】
本願のAnaerofustis stercorihominis AM25-6は、2016年10月13日にGuangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託され、寄託番号は、GDMCC 60087である。寄託場所は、中国広東省広東市西安道中道100号にある広東省微生物研究所の実験棟の5階に位置する。
【0066】
本願のCollinsella shenzhenensis TF06-26は、2016年10月13日にGuangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託され、寄託番号は、GDMCC 60090である。寄託場所は、中国広東省広東市西安道中道100号にある広東省微生物研究所の実験棟の5階に位置する。
【0067】
Roseburia inulinivorans DSM 16841は、German Collection of Microorganisms and Cell Culturesから購入した。
【0068】
本願のButyribacter intestini TF01-11は、2015年6月16日にChina General Microbiological Culture Collection Centerに寄託され、寄託番号は、CGMCC 10984である。寄託場所は、北京チャオヤン地区北城西路3号、パーク1、中国科学アカデミー微生物学研究所(Institute of Microbiology、Chinese Academy of Sciences、No.3、Park 1、Beichen West Road、Chaoyang District, Beijing)に位置する。
【0069】
本願のLactobacillus gasseri TF08-1は、2016年10月13日にGuangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託され、寄託番号は、GDMCC 60092である。寄託場所は、中国広東省広東市西安道中道100号にある広東省微生物研究所の実験棟の5階に位置する。
【0070】
本願のLactobacillus acidophilus AM13-1は、2016年10月13日にGuangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託され、寄託番号は、GDMCC 60091である。寄託場所は、中国広東省広東市西安道中道100号にある広東省微生物研究所の実験棟の5階に位置する。
【発明を実施するための形態】
【0071】
腸内微小生態系の詳細な研究により、潰瘍性大腸炎の発症は、腸内微生物の組成と密接に関連していることが分かった。腸内細菌の不均衡は、腸粘膜の炎症と密接に関連しており、有害な細菌の過剰増殖が炎症を引き起こすことがあるので、潰瘍性大腸炎の発症を誘発する。健康なヒトの腸には多数の有益な細菌が存在し、これらの有益な細菌は腸の最初の生物学的バリアを構成する。
【0072】
前記した研究と知見に基づき、本願は、Megamonas funiformis及び/又はその代謝物とAnaerofustis stercorihominis及び/又はその代謝物とを含む新たな組成物を開発、提案する。本願の組成物は、潰瘍性大腸炎だけでなく、一般的な腸炎、胃炎などの腸内微小生態系に関連する他の疾患に対しても予防又は治療効果を有することができる。したがって、本願で提案される組成物は、炎症又は炎症関連疾患の予防又は治療に有用であり得る。
【0073】
一実施形態によれば、寄託番号GDMCC 60093のMegamonas funiformis AF24-28ACと、寄託番号GDMCC 60087のAnaerofustis stercorihominis AM25-6とを含む組成物は、米国のALFASIGMA社が製造するVSL#3プロバイオティクス化合物よりも潰瘍性大腸炎の治療効果が優れており、本願組成物が、炎症や関連疾患を治療又は予防するための食品、健康製品、食品添加物、又は医薬の製造に有用であり得ることを示している。
【0074】
以下、具体的な実施形態によって、本願を更に詳細に説明する。以下の実施例は、本願を更に説明するためのものであるに過ぎず、本願を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0075】
実施例1
この実施例では、36000~50000Daの分子量を有するデキストラン硫酸ナトリウム(DSSと略記)によって誘発された潰瘍性大腸炎のマウスモデルを、Megamonas funiformis AF24-28ACとAnaerofustis stercorihominis AM25-6とを含む組成物の潰瘍性大腸炎に対する治療効果を研究するための研究対象として用いた。更に、Megamonas funiformis AF24-28ACとAnaerofustis stercorihominis AM25-6との組成物を、各種プロバイオティクスを組み合わせて適用する。添加されるプロバイオティクスは、Collinsella shenzhenensis TF06-26、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Butyribacter intestini TF01-11、Lactobacillus gasseri TF08-1、及びLactobacillus acidophilus AM13-1を含む。以下に、実施例を詳細に説明する。
【0076】
1. 材料及び方法
1.1 株の培養及び同定
1.1.1 Megamonas funiformis AF24-28AC
この実施例において、Megamonas funiformis AF24-28ACを、ペプトン酵母エキスグルコース(PYG)培地を使用して、37℃の嫌気性条件で培養した。PYG培地で2日間培養後のAF24-28AC株のコロニーは淡黄色で扁平であり、不規則な波状の縁を有し、含水量が少なく、直径が約2~3mmである。細菌の微視的形態は、棒状でグラム陰性であり、胞子及び鞭毛を生成しない。Megamonas funiformis AF24-28ACを、Guangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託し、寄託番号は、GDMCC 60093である。
【0077】
Megamonas funiformis AF24-28ACの具体的な単離及び同定ステップは、以下の通りである。
1.1.1.1 株の分離と培養
サンプルを、健康な女性の糞便から得た。勾配希釈塗抹法によって株を分離した。培養培地は、嫌気性培養用のHUANKAI Microbial TechnologyCompanyから購入したPYG培地とした。嫌気性ガス成分は、N2:CO2:H2=90:5:5とした。48時間培養後、単一コロニーを選び、株の単離のために培養培地にストリーキングして、単一細菌の純粋培養物を得た。
【0078】
1.1.1.2 株の16S rDNAの同定
各単離株のゲノムDNAを抽出した後、16S rDNAユニバーサルプライマーを用いてPCR増幅した。得られた16S rDNA増幅産物を電気泳動で検出、精製し、3730シークエンサーでシークエンシングし、対応する株の16S rDNA配列を得た。その後、得られた16S rDNA配列を、株の同定のため、EZBioCloudデータベースにアラインした。
【0079】
16S rDNA配列のPCR増幅系は、10×PCRバッファー 3μL、dNTP 2.5μL、上流プライマー27F 0.5μL、下流プライマー1492R 0.5μL、Taq酵素 0.3μL、テンプレート 1μL、ddH2O 18.2μLを含む。
【0080】
16S rDNA配列の増幅条件は、以下の通りである。
【0081】
増幅条件のうち、「65℃-57℃ 40秒間」は、各サイクル後に温度が比例的に低下することを意味する。より具体的には、1回目のサイクルのアニーリング温度は、65℃であり、20回目のサイクルで、アニーリング温度は57℃に低下する。
【0082】
この実施例における16S rDNAユニバーサルプライマーの上流プライマーは、プライマー27fであり、配列番号1の配列のものである。
16S rDNAユニバーサルプライマーの下流プライマーは、プライマー1492rであり、配列番号2の配列のものである。
配列番号1:5’-AGAGTTTGATCATGGCTCAG-3’
配列番号2:5’-TAGGGTTACCTTGTTACGACTT-3’
【0083】
単離された株AF24-28ACの得られた16S rDNA配列は、配列番号3の配列である。EZBioCloudデータベースによるアラインメント結果から、この実施例で単離したAF24-28AC株は、German Collection of Microorganisms and Cell Culturesから購入したMegamonas funiformis DSM 19343と最も高い相同性を有することが示され、相同性は99.09%であった。したがって、AF24-28AC株を、Megamonas funiformis種に属すると判断し、Megamonas funiformis AF24-28ACと命名し、寄託した。
【0084】
1.1.2 Anaerofustis stercorihominis AM25-6
この実施例において、Anaerofustis stercorihominis AM25-6を、ペプトン酵母エキスグルコース(PYG)培地を使用して、37℃の嫌気性条件で培養した。PYG培地で2日間培養後のAM25-6株のコロニーは淡黄色で針状であり、コロニーのサイズは小さく、直径は約0.5mmである。細菌の微視的形態は、短い棒状でグラム陽性であり、胞子及び鞭毛を生成しない。Anaerofustis stercorihominis AM25-6を、Guangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託し、寄託番号は、GDMCC 60087である。
【0085】
Anaerofustis stercorihominis AM25-6の具体的な単離及び同定ステップは、以下の通りである。
1.1.2.1 株の分離と培養
サンプルを、健康な男性の便から採取し、滅菌サンプルチューブに移し、1時間以内に選別のために実験室に戻した。採取した新鮮なサンプルを直ちに嫌気性操作ボックスに移した後、0.2gのサンプルを1mLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBSと略記)に懸濁させ、十分に振とう混合する。株を、勾配希釈塗抹法で分離した。培養培地は、HUANKAI Microbial Technology Companyから購入したPYG培地とした。コーティングしたプレートを嫌気性培養のために37℃に置いた。嫌気性ガス成分は、N2:CO2:H2=90:5:5である。3日間の培養後、単一コロニーを選び、株の単離のために培養培地にストリーキングして、単一株の純粋培養物を得た。得られた単一株を、細菌濃度が約109cfu/mLに達するまで更に培養し、400μLの菌液を、グリセロール濃度が20%となるように400μLの40%グリセロールに添加した後、-80℃で超低温保存した。
【0086】
1.1.2.2 株の16S rDNAの同定
各単離株のゲノムDNAを抽出した後、16S rDNAユニバーサルプライマーを用いてPCR増幅した。得られた16S rDNA増幅産物を電気泳動で検出、精製し、3730シークエンサーでシークエンシングし、対応する株の16S rDNA配列を得た。その後、得られた16S rDNA配列を、株の同定のため、EZBioCloudデータベースにアラインした。
【0087】
16S rDNA配列のための16S rDNAユニバーサルプライマーとPCR増幅系は、「1.1.1.2 株の16S rDNAの同定」で記載したものと同じである。16S rDNA配列の増幅条件は、95℃で4分間の前変性、その後の、95℃で30秒間の変性30サイクル、57℃で40秒間のアニーリング、72℃で90秒間の伸長である。
【0088】
シークエンシングの結果から、単離された株AM25-6の16S rDNA配列は、配列番号4の配列であることが示された。EZBioCloudデータベースによるアラインメント結果から、この実施例で単離したAM25-6株が、German Collection of Microorganisms and Cell Culturesから購入したAnaerofustis stercorihominis DSM 17244と最も高い相同性を有することが示され、相同性は99.86%であった。したがって、AM25-6株を、Anaerofustis stercorihominis種に属すると判断し、Anaerofustis stercorihominis AM25-6と命名し、寄託した。
【0089】
1.1.3 Collinsella shenzhenensis TF06-26
この実施例において、Collinsella shenzhenensis TF06-26を、ペプトン酵母エキスグルコース(PYG)培地を使用して、37℃の嫌気性条件で培養した。嫌気性PYG培地で2日間培養後のTF06-26株のコロニーは、白色、凸状で、粘性があり、直径は約1~2mmである。細菌の微視的形態は、短い棒状で、グラム陰性であり、胞子及び鞭毛を生成しない。Collinsella shenzhenensis TF06-26を、Guangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託し、寄託番号は、GDMCC 60090である。
【0090】
Collinsella shenzhenensis TF06-26の具体的な単離及び同定ステップは、以下の通りである。
1.1.3.1 サンプル採取
この実験において、Collinsella shenzhenensis TF06-26を、深センの健康な若い女性ボランティアの便サンプルから単離した。
【0091】
1.1.3.2 培養培地及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の調製
この実験における株の単離のための培養培地は、HUANKAI Microbial Technology Companyから購入したPYG培地とした。PYG培地の具体的成分は、ペプトン 5g、トリプシンカゼイン 5g、イーストパウダー 10g、牛肉エキス 5g、グルコース 5g、K2HPO4 2g、Tween(登録商標)80(即ち、ポリソルベート80) 1mL、システイン-HCl・H2O 0.5g、ヘモグロビン 5mg、ビタミンK1 1μL、無機塩溶液 40mL、レサズリン 1mg、蒸留水 950mLを含み、pH6.8~7.0に調整されている。滅菌条件は、115℃で25分間のオートクレーブ滅菌である。固体培地を、嫌気性操作ボックス内の培養プレート上に入れた。このうち、1Lの無機塩溶液は、CaCl2・2H2O 0.25g、MgSO4・7H2O 0.5g、K2HPO4 1g、KH2PO4 1g、NaHCO3 10g、及びNaCl 2gを含む。
【0092】
PBSの調製:NaCl 8g、KCl 0.2g、Na2HPO4・12H2O 3.63g、KH2PO4 0.24g、及び塩酸システイン 0.5gを秤量し、900mLの再蒸留水に溶解し、塩酸とNaOH溶液を用いてpH7.4に調整し、水を1Lの一定量になるまで添加し、N2ガスを流入させて30秒間脱酸素化し、溶液を嫌気性ボトル中に密封し、115℃で25分間オートクレーブした後、使用した。
【0093】
1.1.3.3 菌の分離
採取した新鮮な便サンプルを、直ちに嫌気性操作ボックスに移した後、約0.2gの便サンプルを滅菌PBS溶液に懸濁させ、十分に混合した。嫌気性操作ボックス内の嫌気性ガス成分は、N2:H2:CO2=90:5:5(v/v)である。懸濁溶液を10倍勾配で希釈し、培養培地を含む培養プレートに塗抹し、37℃の嫌気性条件下で2日間培養した。2日間の培養後、単一コロニーを選び、株の単離のために培養培地にストリーキングして、単一株の純粋培養物を得た後、グリセロール凍結保存又は真空凍結乾燥保存のため、-80℃で保存した。
【0094】
1.1.3.4 株の16S rDNAの同定
単離した純粋培養株を16S rDNAのシークエンシングに付し、各株の分類情報を得た。単離した単一株をPYG液体培地中で、細菌濃度が約108cfu/mlに達するまで24時間、更に培養した。各単離株のゲノムDNAを抽出した後、ゲノムDNAをテンプレートとして用いることにより、16S rDNA配列をPCR増幅した。16S rDNA増幅産物を電気泳動で検出、精製し、3730シークエンサーでシークエンシングし、対応する株の16S rDNA配列を得た。その後、得られた16S rDNA配列を、株の同定のため、EZBioCloudデータベースにアラインした。
【0095】
16S rDNA配列の16S rDNAユニバーサルプライマー及びPCR増幅系は、「1.1.1.2 株の16S rDNAの同定」と同じである。16S rDNA配列の増幅条件は、「1.1.2.2 株の16S rDNAの同定」と同じである。
【0096】
シークエンシングの結果から、単離された株TF06-26の16S rDNA配列は、配列番号5の配列であることが示された。EZBioCloudデータベースによるアラインメント結果は、この実施例で単離されたTF06-26株が、Japan Collection of Microorganismsから購入したCollinsella aerofaciens JCM 10188と最も高い相同性を有することを示した。
【0097】
1.1.3.5 TF06-26の生理学的及び生化学的特性
TF06-26株は、カタラーゼ陰性、オキシダーゼ陰性、非運動性である。TF06-26株では、成長温度範囲は25~45℃、成長pH値範囲は5.0~8.0、NaCl耐性濃度は2%、胆汁塩耐性濃度は0.3%である。TF06-26株及びJapan Collection of Microorganismsから購入した関連参照株
Collinsella aerofaciens JCM 10188の基質利用性、API 20A及びAPI 50CHL率を、表1に示す。表1中、「+」は陽性反応、「-」は陰性反応、「w」は弱い陽性反応を示す。
表1 TF06-26及びJCM 10188の基質利用性
【表1】
【0098】
表1におけるTF06-26株及びJCM 10188株の炭素源利用性の比較によれば、TF06-26株及びJCM 10188株は、ラクトース、スクロース、サリチルアルコール、ガラクトース、フルクトース、マンノース、アルブチン、セロビオース、マルトース、メリビオース、トレハロース、及び2-ケトン-グルコネートの利用が大きく異なっており、TF06-26株及びJCM 10188株が異なる種に属するであろうことを示している。
【0099】
1.1.3.6 新たな種TF06-26及び関連株JCM 10188のゲノムハイブリダイゼーション試験
16S rDNAアラインメント結果を参照すると、TF06-26株は、Collinsella aerofaciens JCM 10188と最も高い相同性を有し、相同性は、99.9%であった。更に、TF06-26とJCM 10188とを種レベルで識別するために、ゲノムハイブリダイゼーション試験を行った。
【0100】
DNAハイブリダイゼーションの結果から、TF06-26とJCM 10188の相同性が51%であることが示された。「Berger’s Bacteria Identification Manual」によれば、70%を超えるDNAハイブリダイゼーション値を有する2つ株は、同一の種であると判断できる。TF06-26とJCM 10188のDNAハイブリダイゼーション値は70%未満であるため、TF06-26は、既知の細菌とは異なる新たな株であると判断される。International Bacteria Classification Committee(IBSP)の細菌命名規則によれば、この新たな株を、Collinsella shenzhenensis sp.novと命名した。TF06-26株(即ち、Collinsella shenzhenensis TF06-26)を、この種のモデル株として使用し、これを寄託した。
【0101】
1.1.4 Roseburia inulinivorans DSM 16841
この実施例において、Roseburia inulinivorans DSM 16841を、嫌気性PYG培地を使用して、37℃の嫌気性条件で培養した。嫌気性PYG培地で2日間培養後のDSM 16841株のコロニーは、淡黄色で直径約1mmである。細菌の微視的形態は、短い棒状で、グラム陰性であり、胞子及び鞭毛を生成しない。Roseburia inulinivorans DSM 16841は、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSMZ)から購入し、寄託番号は、DSM 16841である。
【0102】
1.1.5 Butyribacter intestini TF01-11
この実施例において、Butyribacter intestini TF01-11を、嫌気性PYG培地を使用して、37℃の嫌気性条件で培養した。嫌気性PYG培地で2日間培養後のTF01-11株のコロニーは、オフホワイトで、不透明、平滑であり、偽根の様な不規則な縁を有し、直径は約2mmである。グラム染色と顕微鏡観察による細菌の微視的形態は、長い棒状で、運動性であり、鞭毛を有し、胞子は生成しない。細菌の直径は約0.5~1.0mm、長さは約2.0~8.0mmである。Butyribacter intestini TF01-11は、China General Microbiological Culture Collection Center(CGMCC)から得られ、寄託されており、寄託番号は、CGMCC 10984である。
【0103】
1.1.6 Lactobacillus gasseri TF08-1
この実施例において、Lactobacillus gasseri TF08-1を、PYG培地を使用して、37℃の嫌気性条件で培養した。PYG培地で2日間培養後のTF08-1株のコロニーは、白色、低凸状で、略丸形、波状の縁であり、直径は約1~2mmである。細菌の微視的形態は、棒状で、グラム陽性であり、胞子及び鞭毛を生成しない。Lactobacillus gasseri TF08-1を、Guangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託し、寄託番号は、GDMCC 60092である。
【0104】
Lactobacillus gasseri TF08-1の具体的な単離及び同定ステップは、以下の通りである。
1.6.1.1 サンプル採取
この実験におけるLactobacillus gasseri TF08-1は、広東省深センの16歳の健康な女性ボランティアの便サンプルから得た。このボランティアの食事と体調を詳細に記録した。
【0105】
1.1.6.2 株の分離と培養
株単離用の培養培地を予め調製した。この実験における培養培地は、HUANKAI Microbial Technology Companyから購入したPYG培地とした。PYG培地の具体的成分は、ペプトン 5g、トリプシンカゼイン 5g、イーストパウダー 10g、牛肉エキス 5g、グルコース 5g、K2HPO4 2g、TWEEN(登録商標)80(即ち、ポリソルベート80) 1mL、システイン-HCl・H2O 0.5g、硫化ナトリウム 0.25g、ヘモグロビン 5mg、ビタミンK1 1μL、無機塩溶液 40mL、レサズリン 1mg、蒸留水 950mLを含み、pH6.8~7.0に調整されている。滅菌条件は、115℃で25分間のオートクレーブ滅菌である。固形培地に1.5%寒天を添加し、嫌気性操作ボックス中の培養プレートに注いだ。1Lの無機塩溶液は、CaCl2・2 H2O 0.25g、MgSO4・7H2O 0.5g、K2HPO4 1g、KH2PO4 1g、NaHCO3 10g、及びNaCl 2gを含む。
【0106】
採取した新鮮な便サンプルを嫌気性操作ボックスに移した後、0.2gの便サンプルを1mLの滅菌PBSに懸濁し、十分に混合した。嫌気性操作ボックス中の嫌気性ガス成分は、N2:CO2:H2=90:5:5である。懸濁溶液を勾配希釈し、希釈溶液100μLを、培養培地を含む培養プレートに塗抹し、37℃の嫌気性条件下で3~4日間培養した。3~4日間培養後、単一のコロニー選び、株の単離のために培養培地にストリーキングして、単一株の純粋培養物を得た後、同定及び機能検証を行った。
【0107】
1.1.6.3 株の16S rDNAの同定
単離した純粋な培養株を、各株の分類情報を得るために16S rDNAのシークエンシングに付した。単離した単一株を、PYG液体培地で24時間更に培養した。菌液1mLを10000r/minで5分間遠心分離し、単離株のゲノムDNAの抽出のために、細菌細胞を回収した。テンプレートとしてのゲノムDNAと16S rDNAユニバーサルプライマーを使用して、16S rDNA配列のPCR増幅を行った。16S rDNA増幅産物を精製し、3730シークエンサーでシークエンシングすることにより、対応する株の16S rDNA配列を得た。その後、株の同定のため、得られた16S rDNA配列をNCBIデータベースにアラインした。
【0108】
16S rDNA配列の16S rDNAユニバーサルプライマー及びPCR増幅系は、「1.1.1.2 株の16S rDNAの同定」と同じである。16S rDNA配列の増幅条件は、「1.1.2.2 株の16S rDNAの同定」と同じである。
【0109】
シークエンシングの結果から、単離された株TF08-1の16S rDNA配列は、配列番号6の配列であることが示された。NCBI blastによるアラインメント結果から、この実施例で単離されたTF08-1株は、Lactobacillus gasseriと最も高い相同性を有し、相同性は、99.9%であることが示された。したがって、TF08-1を、Lactobacillus gasseri種に属すると判断し、Lactobacillus gasseri TF08-1と命名し、寄託した。
【0110】
1.1.7 Lactobacillus acidophilus AM13-1
この実施例において、Lactobacillus acidophilus AM13-1は、PYG培地を使用して、37℃の嫌気性条件で培養した。PYG培地で2日間培養後のAM13-1株のコロニーは、白色、凸状、粘性、不透明、円形、はっきりした縁を有し、直径は約2~3mmである。細菌の微視的形態は、棒状で、グラム陽性であり、胞子及び鞭毛を生成しない。Lactobacillus acidophilus AM13-1を、Guangdong Microbial Culture Collection Centerに寄託し、寄託番号は、GDMCC 60091である。
【0111】
Lactobacillus acidophilus AM13-1の具体的な単離及び同定ステップは、以下の通りである。
1.1.7.1 株の分離及び培養
この実験におけるLactobacillus acidophilus AM13-1は、深センの健康な男性の便サンプルから単離した。株単離のステップは、以下の通りである。
(1)採取したサンプルを嫌気性操作ボックスに移した後、0.2gのサンプルを1mLのPBS溶液に懸濁させ、十分に混合し勾配希釈した。
(2)希釈溶液100μLを、PYG培地を含む培養プレート上に塗抹し、37℃の嫌気性条件で培養した。嫌気性操作ボックス中の嫌気性ガス成分は、N2:H2:CO2=90:5:5である。PYG培地は、「1.1.6.2 株の分離及び培養」と同じである。
(3)4日間の培養後、培養プレートに生じた単一コロニーを選び、株の単離のため、培養培地にストリーキングした後、更に、37℃の嫌気性条件で培養した。(4)得られた単一の株の純粋培養物を、グリセロール凍結保存又は真空凍結乾燥保存のため保存した。
【0112】
1.1.7.2 株の16S rDNAの同定
各単離株のゲノムDNAを抽出した後、テンプレートとしてのゲノムDNAと16S rDNAユニバーサルプライマーを使用して、PCR増幅を行った。16S rDNA増幅産物を精製し、3730シークエンサーでシークエンシングすることにより、対応する株の16S rDNA配列を得た。その後、株の同定のため、得られた16S rDNA配列をNCBIデータベースにアラインした。
【0113】
16S rDNA配列の16S rDNAユニバーサルプライマー及びPCR増幅系は、「1.1.1.2 株の16S rDNAの同定」と同じである。16S rDNA配列の増幅条件は、「1.1.2.2 株の16S rDNAの同定」と同じである。
【0114】
シークエンシングの結果から、単離された株AM13-1の16S rDNA配列は、配列番号7の配列であることが示された。NCBI Blastによるアラインメント結果から、この実施例で単離されたAM13-1株は、Lactobacillus acidophilusと最も高い相同性を有し、相同性は、100%であることが示された。したがって、AM13-1株を、Lactobacillus acidophilus種に属すると判断し、Lactobacillus acidophilus AM13-1と命名し、寄託した。
【0115】
1.2. マウスモデル
この実施例で選択したマウスモデルは、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS、分子量36000~50000)によって誘発された潰瘍性大腸炎マウスモデルとした。
【0116】
具体的には、Hubei Medical Experimental Animal Centerから購入したC57bl/6マウス系統を用いた。84頭のマウスは8週齢であり、体重20g±2gで、SPFレベルのマウスハウス環境で飼育した。84頭のマウスを無作為に7群に分け、フォローアップ実験のために各グループに12頭のマウスを割り当てた。
【0117】
DSSモデリング:潰瘍性大腸炎マウスモデルを得るために、0.15%のDSSを各マウスに7日間与えた。
【0118】
1.3. 試験方法
84頭のマウスを無作為に、各群12頭の7群に分けた。7群は、それぞれ、正常群(即ち、コントロール群)、モデル群、組成物処理群、細菌組合せ1処理群、細菌組合せ2処理群、細菌組合せ3処理群、細菌組合せ4処理群、及びVSL#3処理群である。7群は、具体的に以下のように処理した。
正常群(即ち、コントロール群):各マウスに通常飼料を給餌し、1日当たり0.2mLのPBSバッファーを与えた。
モデル群:各マウスに同じ通常飼料を給餌し、DSSをマウスの飲用水にDSS最終濃度0.15%で添加し、DSS含有水を7日間マウスに与えると共に、1日当たり0.2mLのPBSバッファーを与えることによりDSSモデリングを行った。
組成物処理群:各マウスに同じ通常飼料を給餌し、DSSモデリング前の3日間毎日、0.2mLの組成物細菌溶液を胃内投与した。DSSをマウスの飲用水にDSS最終濃度0.15%で添加し、DSS含有水を7日間マウスに与えることによりDSSモデリングを行うと共に、DSSモデリング期間中、毎日、組成物細菌溶液0.2mLを胃内投与した。
細菌組合せ1処理群:各マウスに同じ通常飼料を給餌し、DSSモデリング前の3日間毎日、0.2mLの細菌組合せ1溶液を胃内投与した。DSSをマウスの飲用水にDSS最終濃度0.15%で添加し、DSS含有水を7日間マウスに与えることによりDSSモデリングを行うと共に、DSSモデリング期間中、毎日、細菌組合せ1溶液0.2mLを胃内投与した。
細菌組合せ2処理群:各マウスに同じ通常飼料を給餌し、DSSモデリング前の3日間毎日、0.2mLの細菌組合せ2溶液を胃内投与した。DSSをマウスの飲用水にDSS最終濃度0.15%で添加し、DSS含有水を7日間マウスに与えることによりDSSモデリングを行うと共に、DSSモデリング期間中、毎日、細菌組合せ2溶液0.2mLを胃内投与した。
細菌組合せ3処理群:各マウスに同じ通常飼料を給餌し、DSSモデリング前の3日間毎日、0.2mLの細菌組合せ3溶液を胃内投与した。DSSをマウスの飲用水にDSS最終濃度0.15%で添加し、DSS含有水を7日間マウスに与えることによりDSSモデリングを行うと共に、DSSモデリング期間中、毎日、細菌組合せ3溶液0.2mLを胃内投与した。
細菌組合せ4処理群:各マウスに同じ通常飼料を給餌し、DSSモデリング前の3日間毎日、0.2mLの細菌組合せ4溶液を胃内投与した。DSSをマウスの飲用水にDSS最終濃度0.15%で添加し、DSS含有水を7日間マウスに与えることによりDSSモデリングを行うと共に、DSSモデリング期間中、毎日、細菌組合せ4溶液0.2mLを胃内投与した。
VSL#3処理群:各マウスに同じ通常飼料を給餌し、DSSモデリング前の3日間毎日、0.2mLのVSL#3溶液を胃内投与した。DSSをマウスの飲用水にDSS最終濃度0.15%で添加し、DSS含有水を7日間マウスに与えることによりDSSモデリングを行うと共に、DSSモデリング期間中、毎日、VSL#3溶液0.2mLを胃内投与した。
【0119】
組成物細菌溶液、細菌組合せ1溶液、細菌組合せ2溶液、細菌組合せ3溶液、及び細菌組合せ4溶液は、それぞれ以下のステップによって調製した。
Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、Collinsella shenzhenensis TF06-26、Roseburia inulinivorans DSM 16841、Butyribacter intestini TF01-11、Lactobacillus gasseri TF08-1、及びLactobacillus acidophilus AM13-1をそれぞれ24時間培養し、細菌細胞を遠心分離により回収した後、PBSバッファーに懸濁して、細菌懸濁液の更なる調製のために濃度を109cfu/mLに調整した。
【0120】
組成物細菌溶液:Megamonas funiformis AF24-28ACの細菌懸濁液及びAnaerofustis stercorihominis AM25-6の細菌懸濁液を等量混合して、組成物細菌溶液を得た。
細菌組合せ1溶液:Megamonas funiformis AF24-28ACの細菌懸濁液、Anaerofustis stercorihominis AM25-6の細菌懸濁液、及びCollinsella shenzhenensis TF06-26の細菌懸濁液を等量混合して、細菌組合せ1溶液を得た。
細菌組合せ2溶液:Megamonas funiformis AF24-28ACの細菌懸濁液、Anaerofustis stercorihominis AM25-6の細菌懸濁液、及びRoseburia inulinivorans DSM 16841の細菌懸濁液を等量混合して、細菌組合せ2溶液を得た。
細菌組合せ3溶液:Megamonas funiformis AF24-28ACの細菌懸濁液、Anaerofustis stercorihominis AM25-6の細菌懸濁液、及びButyribacter intestini TF01-11の細菌懸濁液を等量混合して、細菌組合せ3溶液を得た。
細菌組合せ4溶液:Megamonas funiformis AF24-28ACの細菌懸濁液、Anaerofustis stercorihominis AM25-6の細菌懸濁液、及びLactobacillus acidophilus AM13-1の細菌懸濁液を等量混合して、細菌組合せ4溶液を得た。
【0121】
VSL#3細菌溶液は、以下のステップによって調製した。
VSL#3は、米国のALFASIGMAから購入したもので、Lactobacillus casei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Streptococcus thermophilu、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、及びBifidobacterium infantisを含む8種類の有用細菌を含むプロバイオティックス化合物である。VSL#3をPBSバッファーで懸濁し、濃度を109cfu/mLに調整して、VSL#3細菌溶液を得た。
【0122】
DSSモデルの確立後、マウスの体重、飲食を毎日記録し、マウスの糞便性状と潜血を同時に観察した。マウスの疾患活動性指数(DAIと略記)を、1日間目、3日間目、5日間目、及び7日間目に計算した。DAIスコアリング基準の詳細を表2に示す。実験終了後、全てのマウスを屠殺し、血液を採取し、断首し、結腸を採取し、撮像し、体重と結腸長さを測定した。結腸組織は-80℃の冷蔵庫でパラホルムアルデヒド中に保存した。なお、正常群は、DSSモデルと同じ時間記録した。
表2 DAI指数スコア表
【表2】
【0123】
表2中の「便の性状」について、「正常な便」は、便が有形であることを意味し、「緩い便」は、便が粘性で半有形であるが肛門には付着しない便を意味し、「水様下痢」は、便が水様で、肛門に付着し得ることを意味する。表2中の「便潜血/視認可能な出血」において、「正常な便」は、潜血が陰性であることを意味し、「視認可能な出血」は、便が赤色又は茶色の血液を有することを意味し、「血液あり」は、血液を肉眼では視認できないがテトラメチルベンジジンで検出できることを意味する。DAI指数は、「体重減少」、「便の性状」、及び「便潜血/視認可能な出血」の合計を意味する。
【0124】
1.4 結果及び分析
1.4.1 体重変化
1日間目、3日間目、5日間目、及び7日間目のマウスの体重を測定した。各群のマウスの平均体重を、表3と
図1に示す。
表3 マウスの平均体重
【表3】
【0125】
表3中、「コントロール」は正常群、「組成物」は組成物処理群、「細菌組合せ1」は細菌組合せ1処理群、「細菌組合せ2」は細菌組合せ2処理群、「細菌組合せ3」は細菌組合せ3処理群、「細菌組合せ4」は細菌組合せ4処理群、「VSL#3」はVSL#3処理群を意味する。「*」は、モデル群と正常群のマウス間の体重差の有意レベルがP<0.05であることを意味し、「**」は、モデル群と正常群の間のマウス間の体重差の有意レベルがP<0.01であることを意味し、「▲」は、モデル群と「組成物」群、「細菌組合せ1」群、「細菌組合せ2」群、「細菌組合せ3」群、「細菌組合せ4」群、又は「VSL#3」群のマウス間の体重差の有意レベルがP<0.05であることを意味する。
【0126】
表3と
図1の結果から、コントロール群のマウスの体重の増加は緩慢であり、一方、DSSによって誘発された7群のマウスの体重は減少を続けた。3日間目に、コントロール群と比較して、モデル群の体重が有意に減少し始めた(
*P<0.05)。7日間目に、モデル群とコントロール群との間の体重差はより有意となった(
**P<0.01)。組成物、細菌組合せ1、細菌組合せ2、細菌組合せ3、細菌組合せ4、又はVSL
#3の介入は、UCマウスの体重減少を遅延させることが可能である。7日間目に、組成物、細菌組合せ1、細菌組合せ2、細菌組合せ3、細菌組合せ4、又はVSL
#3の各群のマウスの体重減少の抑制は、モデル群と比較して有意に制御された(▲P<0.05)。この結果は、
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を含む組成物、並びに細菌組合せ1~4、及びVSL
#3がいずれも、UC疾患によって引き起こされる体重減少を制御できることを示す。7日間目に、組成物群(
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を含む)並びに細菌組合せ1~4群のマウスの体重がVSL
#3よりも僅かに高く、このことは、組成物(
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を含む)並びに細菌組合せ(
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を他のプロバイオティクスと共に含む)が、UCマウスの体重減少の制御に対してVSL
#3より優れた効果を達成できることを示す。
【0127】
1.4.2. DAIの変化
DSS誘発UCマウスのDAI指数は、体重減少、便の性状、及び便潜血の変化によって変化した。1日間目、3日間目、5日間目、及び7日間目のマウスのDAI指数の統計学的値を、表4及び
図2に示す。表4中、各群のマウスのDAI指数を平均している。
表4 マウスのDAI値
【表4】
【0128】
表4中、「コントロール」は正常群、「組成物」は組成物処理群、「細菌組合せ1」は細菌組合せ1処理群、「細菌組合せ2」は細菌組合せ2処理群、「細菌組合せ3」は細菌組合せ3処理群、「細菌組合せ4」は細菌組合せ4処理群、「VSL#3」はVSL#3処理群を意味する。「*」は、モデル群と正常群のマウス間のDAI指数差の有意レベルがP<0.05であることを意味し、「**」は、モデル群と正常群の間のマウス間のDAI指数差の有意レベルがP<0.01であることを意味し、「▲」は、モデル群と「組成物」群、「細菌組合せ1」群、「細菌組合せ2」群、「細菌組合せ3」群、「細菌組合せ4」群、又は「VSL#3」群のマウス間のDAI指数差の有意レベルがP<0.05であることを意味する。
【0129】
表4と
図2のデータから、コントロール群のマウスのDAIは基本的に変化せず、モデル群、組成物群、及び細菌組合せ1~4の各群、並びにVSL
#3群のマウスのDAIは、DSSの誘発に伴って徐々に増加している。3日間目に、モデル群のマウスのDAIは、コントロール群と比較して有意になり始めた(
*P<0.05)。7日間目に、モデル群のマウスのDAIは、コントロール群と比較して最高レベルに達した(
**P<0.01)。組成物(
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を含む)並びに細菌組合せ1~4(
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を他のプロバイオティクスと共に含む)が、DAIの増加を制御することができ、組成物群と細菌組合せ1~4群のマウスのDAIは、5日間目と7日間目に、モデル群と比較して有意に制御されている(▲P<0.05)。更に、組成物群と細菌組合せ1~4群のマウスのDAIは、7日間目に、VSL
#3よりも僅かに低く、このことは、組成物(
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を含む)並びに細菌組合せ1~4(
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を他のプロバイオティクスと共に含む)が、UCマウスのDAI増加の制御に対してVSL
#3より優れた効果を有し得ることを示す。
【0130】
1.4.3.結腸長さの変化
UCモデルマウスの結腸組織は、潰瘍及び炎症が結腸組織を短くするので、変化し得る。処理後、解剖学的に測定したマウスの結腸長さを、表5に示す。
表5 マウスの結腸の長さ
【表5】
【0131】
表5中、「コントロール」は正常群、「組成物」は組成物処理群、「細菌組合せ1」は細菌組合せ1処理群、「細菌組合せ2」は細菌組合せ2処理群、「細菌組合せ3」は細菌組合せ3処理群、「細菌組合せ4」は細菌組合せ4処理群、「VSL#3」はVSL#3処理群を意味する。「**」は、モデル群と正常群のマウス間の結腸長さの差の有意レベルがP<0.01であることを意味し、「▲」は、モデル群と「組成物」、「細菌組合せ1」、「細菌組合せ2」、「細菌組合せ3」、「細菌組合せ4」、又は「VSL#3」のマウス間の結腸長さの差の有意レベルがP<0.05であることを意味する。
【0132】
表5の結果は、モデル群のマウスの結腸組織が、DSS誘発後7日間で有意に短くなることを示し、これはまた、コントロール群と比較して非常に有意である(**P<0.01)。組成物、細菌組合せ1、細菌組合せ2、細菌組合せ3、細菌組合せ4、又はVSL#3の介入により、マウスの結腸短縮を有意に制御することができ、モデル群と比較して非常に有意である(*P<0.05)。表5のデータによれば、組成物又は細菌組合せ1~4によって介入されるマウスの結腸長さは、VSL#3群のマウスよりも長いことが分かり、このことは、組成物(Megamonas funiformis AF24-28AC及びAnaerofustis stercorihominis AM25-6を含む)並びに細菌組合せ1~4(Megamonas funiformis AF24-28AC及びAnaerofustis stercorihominis AM25-6を他のプロバイオティクスと共に含む)が、UCマウスの結腸短縮の制御に対してVSL#3より強い効力を有し得ることを示す。
【0133】
表3~表5並びに
図1及び
図2の結果は、この実施例における組成物及びその細菌組合せ1~4が、潰瘍性大腸炎の予防又は治療に対して有効性を有し、達成された処理による効果が、VSL
#3製品よりも僅かに優れていることを示す。
【0134】
実施例2
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を含む組成物を、食品組成物にした。
具体的には、培養した
Megamonas funiformis AF24-28AC及び
Anaerofustis stercorihominis AM25-6を、表6にしたがって、賦形剤(例えば、牛乳、ビタミンC、及び砂糖など)と共に配合して、食品組成物を調製し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であるようにした。
表6 食品組成物の処方
【表6】
【0135】
表6に示す処方割合にしたがって、牛乳及び砂糖を十分に混合した後、予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で5~10分間滅菌し、40~43℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、Megamonas funiformis AF24-28AC及びAnaerofustis stercorihominis AM25-6を、1~100×106cfu/gで添加し、これらの2種の菌株を含む食品組成物を得た。
【0136】
本実施例の食品組成物を、組成物処理群のマウス用のDSSモデリング飼料に添加した。給餌スキーム及び検出スキームは、組成物処理群のマウスに、組成物を含有する細菌懸濁液を強制経口(gavage)投与することに代えて、本実施例で調製した食品組成物と共にモデリング飼料を与えたこと以外は、実施例1と同様である。検出結果は、本実施例で調製した食品組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変(即ち、腸病変)を改善することができ、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0137】
実施例3
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された、細菌組合せ1の組成物を、食品組成物にした。
具体的には、培養した
Megamonas funiformis AF24-28AC、
Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及び
Collinsella shenzhenensis TF06-26を、表7にしたがって、賦形剤(例えば、牛乳、ビタミンC、及び砂糖など)と共に配合して、食品組成物を調製し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であるようにした。
【表7】
【0138】
表7に示す処方割合にしたがって、牛乳及び砂糖を十分に混合した後、予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で5~10分間滅菌し、40~43℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びCollinsella shenzhenensis TF06-26を、1~100×106cfu/gで添加し、これらの3種の菌株を含む食品組成物を得た。
【0139】
本実施例の食品組成物を、細菌組合せ1処理群のマウス用のDSSモデリング飼料に添加した。給餌スキーム及び検出スキームは、細菌組合せ1処理群のマウスに、細菌組合せ1を含有する細菌懸濁液を強制経口投与することに代えて、本実施例で調製した食品組成物と共にモデリング飼料を与えたこと以外は、実施例1と同様である。検出結果は、本実施例で調製した食品組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変(即ち、腸病変)を改善することができ、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0140】
実施例4
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された、細菌組合せ2の組成物を、食品組成物にした。
具体的には、培養した
Megamonas funiformis AF24-28AC、
Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及び
Roseburia inulinivorans DSM 16841を、表8にしたがって、賦形剤(例えば、牛乳、ビタミンC、及び砂糖など)と共に配合して、食品組成物を調製し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であるようにした。
表8 食品組成物の処方
【表8】
【0141】
表8に示す処方割合にしたがって、牛乳及び砂糖を十分に混合した後、予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で5~10分間滅菌し、40~43℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びRoseburia inulinivorans DSM 16841を、1~100×106cfu/gで添加し、これらの3種の菌株を含む食品組成物を得た。
【0142】
本実施例の食品組成物を、細菌組合せ2処理群のマウス用のDSSモデリング飼料に添加した。給餌スキーム及び検出スキームは、細菌組合せ2処理群のマウスに、細菌組合せ2を含有する細菌懸濁液を強制経口投与することに代えて、本実施例で調製した食品組成物と共にモデリング飼料を与えたこと以外は、実施例1と同様である。検出結果は、本実施例で調製した食品組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変(即ち、腸病変)を改善することができ、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0143】
実施例5
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された、細菌組合せ3の組成物を、食品組成物にした。
具体的には、培養した
Megamonas funiformis AF24-28AC、
Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及び
Butyribacter intestini TF01-11を、表9にしたがって、賦形剤(例えば、牛乳、ビタミンC、及び砂糖など)と共に配合して、食品組成物を調製し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であるようにした。
表9 食品組成物の処方
【表9】
【0144】
表9に示す処方割合にしたがって、牛乳及び砂糖を十分に混合した後、予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で5~10分間滅菌し、40~43℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びButyribacter intestini TF01-11を、1~100×106cfu/gで添加し、これらの3種の菌株を含む食品組成物を得た。
【0145】
本実施例の食品組成物を、細菌組合せ3処理群のマウス用のDSSモデリング飼料に添加した。給餌スキーム及び検出スキームは、細菌組合せ3処理群のマウスに、細菌組合せ3を含有する細菌懸濁液を強制経口投与することに代えて、本実施例で調製した食品組成物と共にモデリング飼料を与えたこと以外は、実施例1と同様である。検出結果は、本実施例で調製した食品組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変(即ち、腸病変)を改善することができ、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0146】
実施例6
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された、細菌組合せ4の組成物を、食品組成物にした。
具体的には、培養した
Megamonas funiformis AF24-28AC、
Anaerofustis stercorihominis AM25-6、
Lactobacillus gasseri TF08-1、及び
Lactobacillus acidophilus AM13-1を、表10にしたがって、賦形剤(例えば、牛乳、ビタミンC、及び砂糖など)と共に配合して、食品組成物を調製し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であるようにした。
表10 食品組成物の処方
【表10】
【0147】
表10に示す処方割合にしたがって、牛乳及び砂糖を十分に混合した後、予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で5~10分間滅菌し、40~43℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、Lactobacillus gasseri TF08-1、及びLactobacillus acidophilus AM13-1を、1~100×106cfu/gで添加し、これらの4種の菌株を含む食品組成物を得た。
【0148】
本実施例の食品組成物を、細菌組合せ4処理群のマウス用のDSSモデリング飼料に添加した。給餌スキーム及び検出スキームは、細菌組合せ4処理群のマウスに、細菌組合せ4を含有する細菌懸濁液を強制経口投与することに代えて、本実施例で調製した食品組成物と共にモデリング飼料を与えたこと以外は、実施例1と同様である。検出結果は、本実施例で調製した食品組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変(即ち、腸病変)を改善することができ、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0149】
実施例7
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された、
Megamonas funiformis AF24-28ACと
Anaerofustis stercorihominis AM25-6とを含む組成物を、表11に示す処方にしたがって、潰瘍性大腸炎を治療するための医薬組成物にした。
表11 医薬組成物の処方
【表11】
【0150】
表11に示す処方割合にしたがって、ラクトース、イーストパウダー、及びペプトンを精製水中に十分に混合した後、60~65℃に予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で20~30分間滅菌し、36~38℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、活性菌株(Megamonas funiformis AF24-28AC及びAnaerofustis stercorihominis AM25-6)を、それぞれ1~50×106cfu/gで添加した後、36~38℃で、pH6.0に達するまで発酵させ、遠心分離し、水分含量が3%未満になるまで凍結乾燥して、凍結乾燥品を得た。0.5gの凍結乾燥品を、等量のマルトデキストリンと混合し、カプセル状に製して、Megamonas funiformis AF24-28AC及びAnaerofustis stercorihominis AM25-6を含むカプセル形態の医薬組成物を得た。
【0151】
本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1における組成物の細菌懸濁液に代えて用いた。組成物処理群のマウスに、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1の同じ処理スキーム及び検出スキームにしたがって、1日1カプセルを強制経口投与した。結果は、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物が、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変を改善し、潰瘍性大腸炎を治療又は予防に有用であることを示す。
【0152】
実施例8
本実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された細菌組合せ1の組成物を、表12に示す処方にしたがって、潰瘍性大腸炎を治療するための医薬組成物にした。
表12 医薬組成物の処方
【表12】
【0153】
表12に示す処方割合にしたがって、ラクトース、イーストパウダー、及びペプトンを精製水中に十分に混合した後、60~65℃に予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で20~30分間滅菌し、36~38℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、活性菌株(Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びCollinsella shenzhenensis TF06-26)を、それぞれ1~50×106cfu/gで添加した後、36~38℃で、pH6.0に達するまで発酵させ、遠心分離し、水分含量が3%未満になるまで凍結乾燥して、凍結乾燥細菌組成物1を得た。0.5gの凍結乾燥細菌組成物1を、等量のマルトデキストリンと混合し、カプセル状に製して、Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びCollinsella shenzhenensis TF06-26を含むカプセル形態の医薬組成物を得た。
【0154】
本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1における細菌組合せ1の細菌懸濁液に代えて用いた。細菌組成物1処理群のマウスに、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1の同じ処理スキーム及び検出スキームにしたがって、1日1カプセルを強制経口投与した。結果は、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変を改善し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0155】
実施例9
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された細菌組合せ2の組成物を、表13に示す処方にしたがって、潰瘍性大腸炎を治療するための医薬組成物にした。
表13 医薬組成物の処方
【表13】
【0156】
表13に示す処方割合にしたがって、ラクトース、イーストパウダー、及びペプトンを精製水中に十分に混合した後、60~65℃に予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で20~30分間滅菌し、36~38℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、活性菌株(Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びRoseburia inulinivorans DSM 16841)を、それぞれ1~50×106cfu/gで添加した後、36~38℃で、pH6.0に達するまで発酵させ、遠心分離し、水分含量が3%未満になるまで凍結乾燥して、凍結乾燥細菌組成物2を得た。0.5gの凍結乾燥細菌組成物2を、等量のマルトデキストリンと混合し、カプセル状に製して、Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びRoseburia inulinivorans DSM 16841を含むカプセル形態の医薬組成物を得た。
【0157】
本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1における細菌組合せ2の細菌懸濁液に代えて用いた。細菌組合せ2処理群のマウスに、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1の同じ処理スキーム及び検出スキームにしたがって、1日1カプセルを強制経口投与した。結果は、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変を改善し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0158】
実施例10
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された細菌組合せ3の組成物を、表14に示す処方にしたがって、潰瘍性大腸炎を治療するための医薬組成物にした。
表14 医薬組成物の処方
【表14】
【0159】
表14に示す処方割合にしたがって、ラクトース、イーストパウダー、及びペプトンを精製水中に十分に混合した後、60~65℃に予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で20~30分間滅菌し、36~38℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、活性菌株(Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びButyribacter intestini TF01-11)を、それぞれ1~50×106cfu/gで添加した後、36~38℃で、pH6.0に達するまで発酵させ、遠心分離し、水分含量が3%未満になるまで凍結乾燥して、凍結乾燥細菌組成物3を得た。0.5gの凍結乾燥細菌組成物3を、等量のマルトデキストリンと混合し、カプセル状に製して、Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、及びButyribacter intestini TF01-11を含むカプセル形態の医薬組成物を得た。
【0160】
本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1における細菌組合せ3の細菌懸濁液に代えて用いた。細菌組合せ3処理群のマウスに、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1の同じ処理スキーム及び検出スキームにしたがって、1日1カプセルを強制経口投与した。結果は、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変を改善し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0161】
実施例11
この実施例では、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有効であることが示された細菌組合せ4の組成物を、表15に示す処方にしたがって、潰瘍性大腸炎を治療するための医薬組成物にした。
表15 医薬組成物の処方
【表15】
【0162】
表15に示す処方割合にしたがって、ラクトース、イーストパウダー、及びペプトンを精製水中に十分に混合した後、60~65℃に予熱し、20Mpaの圧力下で均一化し、約90℃で20~30分間滅菌し、36~38℃に冷却した。その後、保護剤(即ち、ビタミンC)を添加し、次いで、活性菌株(Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、Lactobacillus gasseri TF08-1、及びLactobacillus acidophilus AM13-1)を、それぞれ1~50×106cfu/gで添加した後、36~38℃で、pH6.0に達するまで発酵させ、遠心分離し、水分含量が3%未満になるまで凍結乾燥して、凍結乾燥細菌組成物4を得た。0.5gの凍結乾燥細菌組成物4を、等量のマルトデキストリンと混合し、カプセル状に製して、Megamonas funiformis AF24-28AC、Anaerofustis stercorihominis AM25-6、Butyribacter intestini TF01-11、Lactobacillus gasseri TF08-1、及びLactobacillus acidophilus AM13-1)を含むカプセル形態の医薬組成物を得た。
【0163】
本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1における細菌組合せ4の細菌懸濁液に代えて用いた。細菌組合せ4処理群のマウスに、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物を、実施例1の同じ処理スキーム及び検出スキームにしたがって、1日1カプセルを強制経口投与した。結果は、本実施例で調製したカプセル形態の医薬組成物も、UCマウスの体重減少を制御し、マウスの疾患活動性指数(DAI)を低下させ、腸管病変を改善し、潰瘍性大腸炎の治療又は予防に有用であることを示す。
【0164】
前記した実施例は、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとの組合せが潰瘍性大腸炎を治療又は予防できることを示している。更に、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisの組合せの存在下で、Collinsella shenzhenensis、Roseburia inulinivorans、及びButyribacter intestiniのそれぞれを添加する又はLactobacillus gasseri及びLactobacillus acidophilusのそれぞれを添加することによっても、潰瘍性大腸炎を治療及び予防することができる。前記組合せ組成物は、様々な食品又は医薬として使用することができる。更に、前記組合せ組成物は、様々な食品又は医薬及び様々な健康製品又は食品添加物とすることができることが理解されよう。
【0165】
更に、研究は、Megamonas funiformisとAnaerofustis stercorihominisとの組合せによる治療効果は、主に微小生態系の改善に基づいており、これは、潰瘍性大腸炎だけでなく、一般的な腸炎、胃炎などの腸内微小生態系に関連する他の疾患の治療又は予防に有効であることを示している。したがって、本願の実施例で提供される組成物は、炎症又は炎症関連疾患、特に腸炎及び胃炎の治療又は予防に用いることができる。
【0166】
前記実施例の記載は、具体的な形態を参照して本開示を詳細に更に説明するためのものであり、本開示を限定するものとは解釈されない。当業者であれば、本開示の概念から逸脱することなく、いくつかの実施形態において、いくつかの簡単な推論又は置換を行うことができ、これらは本開示の範囲に属すると理解しよう。
【配列表】