IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本金銭機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置 図1
  • 特許-紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置 図2
  • 特許-紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置 図3
  • 特許-紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置 図4
  • 特許-紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置 図5
  • 特許-紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/16 20190101AFI20220818BHJP
   G07D 11/14 20190101ALI20220818BHJP
【FI】
G07D11/16
G07D11/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021128137
(22)【出願日】2021-08-04
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋行
(72)【発明者】
【氏名】レ トアン ズン
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン フォン
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136742(JP,A)
【文献】特開2007-94665(JP,A)
【文献】特開2009-251979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0048379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 19/00
G07B 1/00- 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉を装置外部に排出する紙葉排出口と、該紙葉排出口に向かう前記紙葉の搬送経路に配置されて該搬送経路を搬送される前記紙葉の特徴量を読み取る識別センサと、読み取られた前記紙葉の特徴量に基づいて該紙葉の種類を判別する紙葉種類判別手段と、を備えた紙葉搬送装置であって、
前記紙葉排出口から前記識別センサまでの搬送経路長は、前記紙葉の搬送方向全長よりも短くなるように構成されており、
前記紙葉種類判別手段は、真贋判定済みの前記紙葉を排出する場合に、排出方向に搬送される前記紙葉の先端が前記紙葉排出口から装置外に突出する前に前記識別センサを通過する紙葉部分の特徴量に基づいて、前記紙葉の種類を判別することを特徴とする紙葉搬送装置。
【請求項2】
紙葉を装置外部に排出する紙葉排出口と、該紙葉排出口に向かう前記紙葉の搬送経路に配置されて該搬送経路を搬送される前記紙葉の特徴量を読み取る識別センサと、読み取られた前記紙葉の特徴量に基づいて該紙葉の種類を判別する紙葉種類判別手段と、を備えた紙葉搬送装置であって、
前記紙葉排出口の直近に配置された紙幣搬送用の排出ローラ対を備え、
前記排出ローラ対から前記識別センサまでの搬送経路長は、前記紙葉の搬送方向全長よりも短くなるように構成されており、
前記紙葉種類判別手段は、真贋判定済みの前記紙葉を排出する場合に、排出方向に搬送される前記紙葉の先端が前記排出ローラ対のニップ部に到達するまでの間に前記識別センサを通過する紙葉部分の特徴量に基づいて、前記紙葉の種類を判別することを特徴とする紙葉搬送装置。
【請求項3】
紙葉を装置外部に排出する紙葉排出口と、該紙葉排出口に向かう前記紙葉の搬送経路に配置されて該搬送経路を搬送される前記紙葉の特徴量を読み取る識別センサと、読み取られた前記紙葉の特徴量に基づいて該紙葉の種類を判別する紙葉種類判別手段と、を備えた紙葉搬送装置であって、
前記紙葉排出口の直近に配置されて、前記搬送経路を開放する位置と前記搬送経路を閉止する位置との間で移動するシャッタ手段を備え、
前記シャッタ手段から前記識別センサまでの搬送経路長は、前記紙葉の搬送方向全長よりも短くなるように構成されており、
前記紙葉種類判別手段は、真贋判定済みの前記紙葉を排出する場合に、排出方向に搬送される前記紙葉の先端が前記シャッタ手段に到達するまでの間に前記識別センサを通過する紙葉部分の特徴量に基づいて、前記紙葉の種類を判別することを特徴とする紙葉搬送装置。
【請求項4】
前記紙葉排出口は、前記紙葉を装置外部に排出すると共に前記紙葉を装置内部に受け入れる紙葉出入口であり、
前記識別センサにより読み取られた前記紙葉の特徴量に基づいて真贋を判定する真贋判定手段を備え、
前記真贋判定手段は、前記紙葉を前記紙葉出入口から装置内部に受け入れる場合に、前記識別センサが読み取った前記紙葉の特徴量に基づいて前記紙葉の真贋を判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の紙葉搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の紙葉搬送装置を備えたことを特徴とする紙葉取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣等の紙葉を搬送する紙葉搬送装置、及び紙葉取扱装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙幣の金種、真贋、及び正損(再流通可能な正券か再流通不可能な損券か)の鑑定を行う判別鑑別部を備えた紙幣取扱装置が記載されている。判別鑑別部は搬送経路中に厚み検知器と光学検知器を備える。判別鑑別部は、紙幣が各検知器を通過したときに得られる出力信号に基づいて紙幣の金種、真贋、及び正損の鑑定を行う。紙幣取扱装置は、判別鑑別部を通過した紙幣の搬送先を、鑑定結果に応じて切り替える。
特許文献1においては、紙幣の全体から得られる出力信号に基づいて紙幣の鑑定を行った後に、紙幣の搬送先を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-209595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検知器から紙幣排出口までの搬送経路長が紙幣の搬送方向全長よりも短い装置において、紙幣を排出方向に搬送する場合は、検知器が紙幣全体の情報を読み取る前に紙幣の先端が紙幣排出口から突出する。紙幣の先端が紙幣排出口から突出すると紙幣を引き抜かれる虞があるため、紙幣の先端が紙幣排出口から突出した後に紙幣の排出をキャンセルすることは望ましくない。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、検知器から紙幣排出口までの搬送経路長が紙幣の搬送方向全長よりも短い場合において、紙葉を排出する場合に、紙葉の一部分の特徴量しか得られなくても、当該紙葉の排出可否を決定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、紙葉を装置外部に排出する紙葉排出口と、該紙葉排出口に向かう前記紙葉の搬送経路に配置されて該搬送経路を搬送される前記紙葉の特徴量を読み取る識別センサと、読み取られた前記紙葉の特徴量に基づいて該紙葉の種類を判別する紙葉種類判別手段と、を備えた紙葉搬送装置であって、前記紙葉排出口から前記識別センサまでの搬送経路長は、前記紙葉の搬送方向全長よりも短くなるように構成されており、前記紙葉種類判別手段は、真贋判定済みの前記紙葉を排出する場合に、排出方向に搬送される前記紙葉の先端が前記紙葉排出口から装置外に突出する前に前記識別センサを通過する紙葉部分の特徴量に基づいて、前記紙葉の種類を判別することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
紙葉を排出する場合に、紙葉の一部分の特徴量しか得られなくても、当該紙葉の排出可否を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る紙幣搬送装置の全体の内部構成を示す縦断面図である。
図2】制御手段による制御に関わる構成を示した紙幣搬送装置のブロック図である。
図3】(a)~(c)は、紙幣搬送装置の内部構成と排出紙幣との関係について説明する模式図である。
図4】(a)、(b)は、紙幣搬送装置の内部構成と排出紙幣との関係について説明する模式図である。
図5】紙幣入金時の動作を示すフローチャートである。
図6】紙幣排出時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0009】
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態に係る紙幣搬送装置の全体の内部構成を示す縦断面図である。
本発明の一実施形態に係る紙幣搬送装置(紙葉搬送装置)1は、紙幣(紙葉)を紙幣搬送装置1の装置外部に排出する出入口(紙葉排出口)12と、出入口12に向かう紙幣の搬送経路10に配置されて該搬送経路10を搬送される紙幣の特徴量を読み取る光識別センサ(識別センサ)18と、読み取られた紙幣の特徴量に基づいて紙幣の種類を判別する制御手段(紙葉種類判別手段)200と、を備えている。
図3(b)に示すように、紙幣搬送装置1において、出入口12から光識別センサ18までの搬送経路長L1は、該搬送経路10を搬送される紙幣100の搬送方向全長LAよりも短くなるように構成されている。
制御手段200は、紙幣100の出金動作時において、排出方向(図中矢印A1方向)に搬送される紙幣100の先端100aから紙幣100の搬送方向中間部までの紙幣部分(読取対象103)から得られる特徴量に基づいて、紙幣の種類(金種)を判別する。具体的には、制御手段200は、排出方向に搬送される紙幣100の先端100aが出入口12から紙幣搬送装置1の装置外に突出する前に光識別センサ18を通過する紙幣部分(読取対象103)の特徴量に基づいて、紙幣100の種類を判別する。
【0010】
<紙幣搬送装置>
紙幣搬送装置の内部構成について、図1に基づいて説明する。なお、本例では紙葉の一例として紙幣を示すが、本装置は紙幣以外の紙葉、例えば有価証券、金券、チケット等の搬送における不正行為の防止にも適用することができる。
【0011】
紙幣搬送装置1は図示しない紙幣入金機、各種自動販売機、両替機等の紙幣取扱装置本体(紙葉取扱装置本体)に装着されて使用され、紙幣搬送装置1に受け入れられた紙幣は識別センサによって紙幣の真贋、金種の識別を受けてから紙幣取扱装置本体内のキャッシュボックス(紙幣収納部)内に一枚ずつ順次収納される。なお、紙幣取扱装置(紙葉取扱装置)は、紙幣取扱装置本体と紙幣搬送装置1とを含み構成される。
紙幣搬送装置1は、下部ユニット3と、下部ユニット3に対して開閉自在に支持された上部ユニット4とを備え、図1に示した各ユニットが閉じた状態にある時に各ユニットの対向面間に紙幣搬送経路(搬送経路)10が形成される。
【0012】
搬送経路10の一端には紙幣100を紙幣搬送装置1の外部に排出し、又は紙幣搬送装置1の内部に導入する出入口12が設けられ、出入口12の内部には搬送経路10に沿って紙幣検知用の出入口通紙センサ14、出入口ローラ対16、紙幣の金種、真贋を識別するための情報を読取る光識別センサ18、中継ローラ対20、不正防止機構の一端側の通紙センサ22、不正検知用の開閉部材50、不正防止用モータ120等から成る不正防止機構24、不正防止機構の他端側の通紙センサ26、連通口ローラ対28、連通口通紙センサ30、連通口32が配置されている。更に、紙幣搬送用の各ローラ対16、20、28を駆動する搬送モータ35と、光識別センサ18からの識別情報に基づいて紙幣の金種、真贋を判定したり、各通紙センサからの紙幣検知信号に基づいて搬送モータ35、その他の制御対象を制御する制御手段(CPU、MPU、ROM、RAM)200が配置されている。
制御手段200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えたユニット、或いは、これらの他に必要なモジュールを組み込んで1チップ化したMPU(Micro Processing Unit)等から構成される。連通口32から排出された紙幣は図示しない紙幣収納部(紙葉収納部、スタッカ装置)に収納される。なお、紙幣搬送装置1の上記構成は一例に過ぎず、種々の変形が可能である。例えば、使用するモータ数、ローラ対の配置、識別センサの種類等々、種々変更選定可能である。
【0013】
各ローラ対16、20、28は、下部ユニット3側に配置された駆動ローラと上部ユニット4側に配置された従動ローラとにより構成され、紙幣の両面側をニップして搬送する構成を備える。光識別センサ18は、例えば搬送経路10を間に挟んで対向配置された発光素子と受光素子により構成されるホトカプラである。上記構成の光学識別センサ18は、発光素子から発生した赤外線を紙幣に透過させた後、透過光を受光することにより、紙幣の光学的パターン(光学的特徴)を認識することができる。なお、識別センサとしては磁気センサを用いることもできる。或いは、識別センサとしては、光源から照射され、紙幣によって反射された反射光を受光することにより紙幣の光学的パターンを認識するイメージセンサ(例:CIS;Contact Image Sensor)を用いることができる。
【0014】
<機能構成>
図2は、制御手段による制御に関わる構成を示した紙幣搬送装置のブロック図である。
【0015】
制御手段200の各入力端子には、出入口通紙センサ14、光識別センサ18、連通口通紙センサ30が接続される。制御手段200の出力端子には、搬送モータ35が接続される。
【0016】
制御手段200は、光識別センサ18の出力を受信して紙幣が真紙幣か否かを判定する真贋判定手段と、光識別センサ18の出力を受信して紙幣の種類(金種)を判別する紙幣種類判別手段(紙葉種類判別手段)と、搬送モータ35を駆動制御する駆動制御手段と、を備える。真贋判定手段、紙幣種類判別手段、及び駆動制御手段は、制御手段が備えるCPUがROMからプログラムを読み出してRAMに展開して実行することにより実現される。
図1を参照して、制御手段200は、出入口12から図中矢印A2方向に受け入れた紙幣100を真紙幣と判定したときは連通口通紙センサ30が紙幣の通過を検知するまで搬送モータ35を紙幣受入方向に駆動し続けて紙幣を紙幣収納部へ搬送する制御を実行する。また、該紙幣を真紙幣と判定しないときは搬送モータ35を逆転させると共に出入口通紙センサ14が紙幣の通過を検知するまで搬送モータ35を紙幣排出方向に駆動し続けて紙幣を出入口12に返却する制御を実行する。
更に、制御手段200は、連通口32を介して紙幣収納部から受け入れた紙幣100を、出入口12から排出するべき種類の紙幣と判別したときは、出入口通紙センサ14が紙幣の通過を検知するまで搬送モータ35を紙幣排出方向に駆動し続けて紙幣を出入口12から排出する制御を実行する。また、該紙幣を出入口12から排出するべき種類の紙幣と判別しないときは、搬送モータ35を逆転させると共に連通口通紙センサ30が紙幣の通過を検知するまで搬送モータ35を紙幣受入方向に駆動し続けて紙幣を紙幣収納部へ搬送する制御を実行する。
【0017】
<排出紙幣の処理>
図3(a)~(c)、及び図4(a)、(b)は、紙幣搬送装置の内部構成と排出紙幣との関係について説明する模式図である。本例において紙幣100は、その長手方向に沿った方向に搬送される。
各図に示すように紙幣搬送装置1においては、光識別センサ18から出入口12までの搬送経路長L1は、紙幣100の搬送方向の全長LAよりも短くなっている。搬送経路長L1は、より正確には、光識別センサ18が紙幣の情報を読み取る読取位置18aから出入口12までにおける搬送経路10の長さである。
【0018】
図3(a)に示すように、紙幣100を排出する際には、光識別センサ18が紙幣100の搬送方向の全長LAの情報を読み取る前に、紙幣100の先端部101が出入口12から紙幣搬送装置1の外部に突出する。紙幣100の先端部101が出入口12から紙幣搬送装置1の装置外に突出していると、紙幣の先端部101を指等でつまむだけで簡単に引き出せる。従って、仮に紙幣100が排出対象ではない種類の紙幣であっても、紙幣100の先端部101が出入口12から紙幣搬送装置1の装置外に突出した後は、紙幣100の排出処理をキャンセルすることは望ましくない。
このため、本実施形態においては、排出方向に搬送される紙幣の引き抜き容易度が大きく変化する境界位置を排出キャンセルラインBとする。紙幣100が排出対象でない場合に、制御手段200は、紙幣100の先端100aが排出キャンセルラインBに到達する前に、紙幣100の排出処理がキャンセルされるように制御する。
【0019】
図3(b)は、出入口12を排出キャンセルラインBとした例である。本例において、紙幣100が排出キャンセルラインBに到達する前に光識別センサ18が読み取り可能な紙幣100の部分(読取対象103)の搬送方向長LBは、光識別センサ18から出入口12までの搬送経路長L1と同等か、これよりも短くなるように設定されている。読取対象103は、紙幣100の種類を判別可能となる特徴量に係る情報を含む部分である。光識別センサ18は、紙幣100の先端100aが出入口12に到達する前に、読取対象103の搬送方向の全長LBの情報を読み取れる位置に配置される。
制御手段200は、排出方向に搬送された紙幣100の先端100aが出入口12から紙幣搬送装置1の外部に突出する前に、光識別センサ18を通過した紙幣100の部分(読取対象103)の特徴量に基づいて、当該紙幣100が排出されるべき紙幣か否かを判別する。
【0020】
ここで、排出される紙幣100は紙幣収納部に収納されていた紙幣であり、紙幣収納部への収納時に真贋判定が実施されている。即ち、紙幣収納部から繰り出される紙幣は真紙幣であることが保証されている。従って、紙幣収納部から紙幣を排出する際には真贋判定を省略しても差し支えない。紙幣の真贋を判定するには紙幣全体の情報が必要である。一方で、紙幣の種類(金種)は紙幣の一部分の情報から判別できる。読取対象103の搬送方向長LBは、紙幣100の搬送方向全長LAに対して1/2~1/3程度あれば足りる。
従って、本実施形態に係る紙幣搬送装置1は、紙幣収納部から繰り出される紙幣100を排出する際には、紙幣100の搬送方向の先端側の一部分(読取対象103)から読み取られる情報に基づき紙幣の種類のみを判定し、当該紙幣が排出するべき種類の紙幣であると判別された場合に、紙幣100を出入口12から排出する。
【0021】
なお、図3(c)に示すように、光識別センサ18が読取対象103を読み取った後(読取対象103の後端103bが光識別センサ18を通過した後)、搬送モータ35が停止・逆転するまでの間に搬送される紙幣100の長さ(図3(c)中、Cにて示す部分)を加味しても、紙幣100の先端100aが排出キャンセルラインBを越えないように、読取対象103の範囲(搬送方向長LB)を設定することが望ましい。このように設定することで、排出処理をキャンセルしない場合に搬送モータ35を停止させる必要がなく、排出処理を効率よく実施できる。
【0022】
図4(a)は、出入口12の直近に配置された出入口ローラ対16のニップ部16aを排出キャンセルラインBとした例である。本例において読取対象103の搬送方向長LBは、光識別センサ18からニップ部16aまでの搬送経路長L2と同等か、これよりも短くなるように設定されている。
制御手段200は、排出方向に搬送された紙幣100の先端100aがニップ部16aに到達する前に、光識別センサ18を通過した紙幣100の部分(読取対象103)の特徴量に基づいて、当該紙幣100が排出されるべき紙幣か否かを判別する。
出入口ローラ対16を構成する各ローラは、対となる他方のローラに対して圧接するように搬送経路10内に突出するため、ニップ部16aよりも紙幣搬送装置1の内部側に位置する紙幣100を指先などでつまんで取り出すことは困難である。即ち、出入口ローラ対16のニップ部16aは、紙幣100が出入口12から引き抜かれることに対する抵抗力を発揮する引抜抵抗手段、或いは紙幣の引き抜きを阻害する引抜阻害手段として機能しうる。
【0023】
図4(b)に示す紙幣搬送装置1は、搬送経路10を開閉するシャッタ手段60を搬送経路10に備えている。シャッタ手段60は、出入口通紙センサ14よりも紙幣搬送装置1の内部側であって、出入口通紙センサ14の直近位置に配置されている。シャッタ手段60は、出入口12に向かう搬送経路10を開放する位置(図中実線にて示す位置)と、搬送経路10を閉止する位置(図中破線にて示す位置)との間で移動する。シャッタ手段60は、閉止位置にあるときに、紙幣100が出入口12から引き抜かれることを阻害する引抜阻害手段として機能する。
図2に示すように、制御手段200の出力端子には、シャッタ手段60を開閉駆動する駆動手段として例えばソレノイド61が接続されている。制御手段200は、紙幣100の搬送状態又は搬送位置等に応じて、シャッタ手段60を開放位置に移動させ、又は閉止位置に移動させるようにソレノイド61を制御する。
【0024】
図4(b)は、シャッタ手段60を排出キャンセルラインBとした例である。本例において読取対象103の搬送方向長LBは、光識別センサ18からシャッタ手段60までの搬送経路長L3と同等か、これよりも短くなるように設定されている。
制御手段200は、排出方向に搬送された紙幣100の先端100aがシャッタ手段60に到達する前に、光識別センサ18を通過した紙幣100の部分(読取対象103)の特徴量に基づいて、当該紙幣100が排出されるべき紙幣か否かを判別する。
【0025】
ここで、シャッタ手段60は、紙幣100の搬送先を出入口12方向に設定するか、紙幣100の搬送先を搬送経路10から分岐した分岐経路に設定する切替装置(切替ゲート)であってもよい。この場合、切替装置が紙幣100の搬送先を分岐経路に設定した場合は、出入口12方向に向かう搬送経路10を閉止することになる。
【0026】
<入金フロー>
紙幣搬送装置1が、紙幣100を装置内部に導入する入金装置として機能する場合の動作をフローチャートに基づいて説明する。図5は、紙幣入金時の動作を示すフローチャートである。
【0027】
ステップS101において、制御手段200は、出入口12に紙幣が投入されるか否かを検出するために待機している。搬送経路10の一端に設けられた出入口12に紙幣が投入されると、出入口通紙センサ14が紙幣100の挿入を検知して制御手段200に検知信号を送出する。
ステップ103において、制御手段200は搬送モータ35を駆動して搬送経路10に沿って紙幣を搬送する。
ステップS105において、制御手段200は、光識別センサ18をオンにする。光識別センサ18は、搬送される紙幣100の搬送方向全長LAに係る光学的パターン(光学的特徴)を読み取る。光識別センサ18は、読み取った識別情報を制御手段200に送出する。
【0028】
真贋判定手段としての制御手段200は光識別センサ18の出力信号を受信して、その特徴量データから、搬送される紙幣が真紙幣か否か紙幣の真贋を判定する(ステップ107)。また、紙葉種類判別手段としての制御手段200は、搬送される紙幣の金種を特徴量データに基づき判別する。
制御手段200が、搬送される紙幣が真紙幣であると判定すると(ステップS107にてYes)、ステップS109において、制御手段200は連通口通紙センサ30が紙幣の通過を検知したか否かを判定する。
連通口通紙センサ30が紙幣の通過を検知した場合(ステップS109にてYes)、ステップS111において制御手段200は搬送モータ35を停止する。
ステップS113において、紙幣は紙幣収納部内に収納されると、一連の処理が終了する。
【0029】
一方、ステップS107において、制御手段200が、搬送される紙幣が真紙幣であると判定しないとき(ステップS107にてNo)、制御手段200は搬送モータ53を停止させてから逆転させて(ステップS115、S117)、紙幣を出入口12に向かって返却する。
ステップ119において出入口通紙センサ14がオフとなったとき(ステップ119にてYes)、制御手段200は搬送モータ35の駆動を停止させる(ステップS121)。紙幣の排出が完了すれば(ステップ123)、一連の処理が終了する。
【0030】
<出金フロー>
紙幣搬送装置1が紙幣を排出する場合の動作をフローチャートに基づいて説明する。図6は、紙幣排出時の動作を示すフローチャートである。
【0031】
ステップS131において、制御手段200は、紙幣収納部から紙幣が搬送されてくるか否かを検出するために待機している。搬送経路10の他端に設けられた連通口32に紙幣が挿入されると、連通口通紙センサ30が紙幣100の挿入を検知して制御手段200に検知信号を送出する。
ステップ133において、制御手段200は搬送モータ35を駆動して搬送経路10に沿って紙幣を搬送する。
ステップS135において、制御手段200は、光識別センサ18をオンにする。光識別センサ18は、搬送される紙幣100の読取対象103に係る光学的パターン(光学的特徴)を読み取る。光識別センサ18は、読み取った識別情報を制御手段200に送出する。
【0032】
また、制御手段200は、紙幣収納部が排出する紙幣の種類に関する情報を、紙幣収納部を制御する制御手段等から取得する。制御手段200は光識別センサ18の出力信号を受信して、その特徴量データに基づいて、搬送される紙幣が排出するべき種類の紙幣であるか、即ち紙幣収納部を制御する制御手段等から取得した紙幣の種類に関する情報と一致するか否かを判定する(ステップ137)。
ここで、紙幣収納部に収納されている紙幣は、紙幣導入時のフロー(図5)に従って既に真贋が判定されている。制御手段200は、紙幣排出時に搬送される紙幣は真紙幣であることを前提として、搬送される紙幣の真贋を判定しない。
【0033】
制御手段200が、搬送される紙幣が排出するべき種類の紙幣であると判定すると(ステップS137にてYes)、ステップS139において、制御手段200は出入口通紙センサ14が紙幣の通過を検知したか否かを判定する。
出入口通紙センサ14が紙幣の通過を検知した場合(ステップS139にてYes)、ステップS141において制御手段200は搬送モータ35を停止する。
ステップS143において、紙幣は紙幣搬送装置1から排出されると、一連の処理が終了する。
【0034】
一方、ステップS137において、制御手段200が、搬送される紙幣が排出するべき種類の紙幣であると判定しないとき(ステップS137にてNo)、制御手段200は搬送モータ53を停止させる(ステップS145)。紙幣100は、排出キャンセルラインBに到達する前に停止する。
ステップS147において制御手段200は、搬送モータ35を逆転させて、紙幣を紙幣収納部に向けて搬送する。
ステップS149において連通口通紙センサ30がオフとなったとき(ステップS149にてYes)、制御手段200は搬送モータ35の駆動を停止させる(ステップS151)。
紙幣の再収納が完了すれば(ステップ153)、一連の処理が終了する。
【0035】
<変形例>
本実施形態において紙幣搬送装置1は、装置内への紙幣の導入、及び、装置外への紙幣の排出を行う装置であったが、紙幣搬送装置1は装置外への紙幣の排出のみを行う装置でもよい。この場合、紙幣収納部内に収納されている紙幣は、紙幣収納部への収納時に何らかの方法で真贋判定が行われており、その意味で排出される紙幣は真紙幣であることが保証されているものとする。
本例において、紙幣搬送装置1は、紙幣100をその長手方向に沿って搬送するが、紙幣100をその短手方向に沿って搬送してもよい。
光識別センサ18は、紙幣取扱装置1が取り扱うことを前提としている複数種類の紙幣を、該紙幣の排出時に夫々判別可能となる位置に配置される。
【0036】
<効果>
本実施形態によれば、紙幣の排出時には、当該紙幣が排出されるべき紙幣か否かを、紙幣の搬送方向の先端側の一部分の特徴量に基づいて判別する。紙幣種類の判別に使用する読取対象の搬送方向長が、紙幣の搬送方向全長よりも短いので、光識別センサを出入口寄りに配置することができる。従って、紙幣搬送装置を小型化できる。
紙幣種類を判別する際に使用する特徴量データは、紙幣全体から得られる特徴量データよりもデータ量が少ないので、判別処理を高速化できる。
【0037】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
<第一の実施態様>
本態様は、紙葉(紙幣100)を装置外部に排出する紙葉排出口(出入口12)と、紙葉排出口に向かう紙葉の搬送経路10に配置されて搬送経路を搬送される紙葉の特徴量を読み取る識別センサ(光識別センサ18)と、読み取られた紙葉の特徴量に基づいて紙葉の種類を判別する紙葉種類判別手段(制御手段200)と、を備えた紙葉搬送装置(紙幣搬送装置1)である。
紙葉搬送装置において、紙葉排出口から識別センサまでの搬送経路長L1は、紙葉の搬送方向全長LAよりも短くなるように構成されており、紙葉種類判別手段は、真贋判定済みの紙葉を排出する場合に、排出方向に搬送される紙葉の先端100aが紙葉排出口から装置外に突出する前に識別センサを通過する紙葉部分(読取対象103)の特徴量に基づいて、紙葉の種類を判別することを特徴とする。上記紙葉は、例えば真贋判定済みの紙葉を収納した紙葉収納部から搬送される。
【0038】
本態様によれば、紙葉を排出する場合に、紙葉の一部分の特徴量しか得られなくても、当該紙葉の排出可否を決定できる。即ち、紙葉の種類は、紙葉の一部分の特徴量、ここでは特に搬送方向の先端側の一部分の特徴量、を得られれば判定できる。従って、紙葉の一部分の特徴量から、当該紙葉が排出されるべき種類の紙葉か否かの判定は可能である。
本態様においては、紙葉の種類を判別するために使用する紙葉部分(読取対象)の搬送方向長が、紙葉の搬送方向全長よりも短いので、識別センサを紙葉排出口寄りに配置することができる。従って、紙葉搬送装置を小型化できる。
また、紙葉の種類を判別する際に使用する特徴量データは、紙葉の全体から得られる特徴量データよりもデータ量が少ないので、紙葉種類の判別処理を高速化できる。
紙葉搬送装置から排出される紙葉について、紙葉搬送装置の奥側に配置された紙葉収納部へ紙葉を受け入れる際に紙葉の真贋が判定されているならば、排出される紙葉の真贋が判定されなくても、当該紙葉は真正な紙葉であることが保証される。この場合には、紙葉の排出時における紙葉の真贋判定を省略しても問題はない。
なお、紙葉搬送装置は、装置外部から導入された紙葉を、紙葉搬送装置の奥側に配置された紙葉収納部に搬送する機能を備えてもよい。
【0039】
<第二の実施態様>
本態様は、紙葉(紙幣100)を装置外部に排出する紙葉排出口(出入口12)と、紙葉排出口に向かう紙葉の搬送経路10に配置されて搬送経路を搬送される紙葉の特徴量を読み取る識別センサ(光識別センサ18)と、読み取られた紙葉の特徴量に基づいて紙葉の種類を判別する紙葉種類判別手段(制御手段200)と、を備えた紙葉搬送装置(紙幣搬送装置1)である。
紙葉搬送装置は、紙葉排出口の直近に配置された紙幣搬送用の排出ローラ対(出入口ローラ対16)を備え、排出ローラ対から識別センサまでの搬送経路長L2は、紙葉の搬送方向全長LAよりも短くなるように構成されており、紙葉種類判別手段は、真贋判定済みの紙葉を排出する場合に、排出方向に搬送される紙葉の先端100aが排出ローラ対のニップ部16aに到達するまでの間に識別センサを通過する紙葉部分(読取対象103)の特徴量に基づいて、紙葉の種類を判別することを特徴とする。上記紙葉は、例えば真贋判定済みの紙葉を収納した紙葉収納部から搬送される。
本態様は、第一の実施態様と同様の効果を奏する。
【0040】
<第三の実施態様>
本態様は、紙葉(紙幣100)を装置外部に排出する紙葉排出口(出入口12)と、紙葉排出口に向かう紙葉の搬送経路10に配置されて搬送経路を搬送される紙葉の特徴量を読み取る識別センサ(光識別センサ18)と、読み取られた紙葉の特徴量に基づいて紙葉の種類を判別する紙葉種類判別手段(制御手段200)と、を備えた紙葉搬送装置(紙幣搬送装置1)である。
紙葉搬送装置は、紙葉排出口の直近に配置されて、搬送経路を開放する位置と搬送経路を閉止する位置との間で移動するシャッタ手段60を備え、シャッタ手段から識別センサまでの搬送経路長L3は、紙葉の搬送方向全長LAよりも短くなるように構成されており、紙葉種類判別手段は、真贋判定済みの紙葉を排出する場合に、排出方向に搬送される紙葉の先端100aがシャッタ手段に到達するまでの間に識別センサを通過する紙葉部分(読取対象103)の特徴量に基づいて、紙葉の種類を判別することを特徴とする。上記紙葉は、例えば真贋判定済みの紙葉を収納した紙葉収納部から搬送される。
本態様は、第一の実施態様と同様の効果を奏する。
【0041】
<第四の実施態様>
本態様に係る紙葉搬送装置(紙幣搬送装置1)において、紙葉排出口(出入口12)は、紙葉(紙幣100)を装置外部に排出すると共に紙葉を装置内部に受け入れる紙葉出入口であり、識別センサ(光識別センサ18)により読み取られた紙葉の特徴量に基づいて真贋を判定する真贋判定手段(制御手段200)を備え、真贋判定手段は、紙葉を紙葉出入口から装置内部に受け入れる場合に、識別センサが読み取った紙葉の特徴量に基づいて紙葉の真贋を判定することを特徴とする。
紙葉搬送装置は紙葉出入口から紙葉を受け入れる際に、紙葉の真贋を判定する。紙葉搬送装置は、紙葉出入口から導入された紙葉を、紙葉搬送装置の奥側に配置された紙葉収納部に搬送する。従って、紙葉収納部から搬送されてきた紙葉を紙葉出入口から排出する際に紙葉の真贋判定を省略しても、当該紙葉の真正性は保証される。
【0042】
<第五の実施態様>
本態様は、態様1乃至4の何れかに記載の紙葉搬送装置(紙幣搬送装置1)を備えた紙葉取扱装置を特徴とする。
本態様は、態様1乃至4と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0043】
L1~L3…搬送経路長、LA…紙幣の搬送方向の全長、LB…紙幣の読取対象の搬送方向長、1…紙幣搬送装置、3…下部ユニット、4…上部ユニット、10…搬送経路、12…出入口、14…出入口通紙センサ、16…出入口ローラ対、16a…ニップ部、18…光識別センサ、18a…受光素子、20…中継ローラ対、22…通紙センサ、24…不正防止機構、26…通紙センサ、28…連通口ローラ対、30…連通口通紙センサ、32…連通口、35…搬送モータ、50…開閉部材、53…搬送モータ、60…シャッタ手段、61…ソレノイド、100…紙幣、100a…先端、101…先端部、103…読取対象、103b…後端、120…不正防止用モータ、200…制御手段
【要約】
【課題】光識別センサ18の読取位置18aから、紙幣排出口である出入口12までの搬送経路長L1が紙幣100の搬送方向全長LAよりも短い場合において、紙幣を排出する場合に、紙幣の一部分の特徴量しか得られなくても、当該紙幣の排出可否を決定できるようにする。
【解決手段】制御手段200は、真贋判定済みの紙幣100を排出する場合に、排出方向に搬送される紙幣100の先端100aが出入口12から装置外に突出する前に光識別センサ18を通過する読取対象103の特徴量に基づいて、紙幣の種類(金種)を判別する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6