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特許7126025拡張可能な濾過媒体及び低周波音波を使用したグラベルパックの分析
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-17
(45)【発行日】2022-08-25
(54)【発明の名称】拡張可能な濾過媒体及び低周波音波を使用したグラベルパックの分析
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/09 20120101AFI20220818BHJP
   E21B 43/10 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
E21B47/09
E21B43/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021528457
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 US2019062322
(87)【国際公開番号】W WO2020106789
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】62/769,830
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318263
【氏名又は名称】ベイカー ヒューズ ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】パッターソン、ダグラス ジェイ.
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0030467(US,A1)
【文献】特表2016-530418(JP,A)
【文献】特開平09-211142(JP,A)
【文献】特開平03-055392(JP,A)
【文献】特表2014-531535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 47/09
E21B 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を貫通するボアホール(2)内に配置されたチューブラ(6)を少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体(16)の展開を監視するための装置(9)であって、
前記チューブラ(6)を通して運搬されるように構成されているキャリアであって、前記チューブラ(6)を少なくとも部分的に取り囲む前記濾過媒体(16)が前記チューブラ(6)とボアホール(2)との間に配置されている、キャリアと、
前記キャリア上に配置されており、かつ3000Hz未満である周波数の音波を前記チューブラ(6)に送信するように構成されている、低周波音波源(12)と、
前記低周波音波源(12)から長手方向に離れて前記キャリア上に配置されており、かつ前記低周波音波源(12)によって送信された音波を受信するように構成されている、音波受信機(13)と、
前記受信された受信音波を特徴付けるデータを、前記濾過媒体(16)が展開されていない状態での音波を特徴付ける基準データと比較して前記濾過媒体(16)の展開を監視するように構成されている、コントローラ(11)と、を備え
前記コントローラ(11)が、(i)前記基準データの振幅データに対する前記受信音波の対応する振幅データの減衰、又は、(ii)前記受信音波の振幅データに対する前記基準データの対応する振幅データの減衰、の少なくとも一つを判定することによって、前記濾過媒体(16)の展開を監視するように構成され、
前記濾過媒体(16)が、拡張可能な濾過媒体(16)又はグラベルパック(17)を備える、装置(9)。
【請求項2】
前記濾過媒体(16)が前記拡張可能な濾過媒体(16)を備え、当該拡張可能な濾過媒体(16)が形状記憶材料を含む、請求項に記載の装置(9)。
【請求項3】
前記濾過媒体(16)が前記拡張可能な濾過媒体(16)を備え、前記受信音波の1つ以上のピークの振幅が、前記基準データの1つ以上の対応するピークの振幅よりも小さい場合に、前記濾過媒体(16)の展開の成功が示される、請求項1又は2に記載の装置(9)。
【請求項4】
前記濾過媒体(16)が前記拡張可能な濾過媒体(16)を備え、前記受信音波に由来するスペクトル周波数波形の振幅が、前記基準データの対応するスペクトル周波数波形の振幅よりも小さい場合に、前記濾過媒体(16)の展開の成功が示される、請求項1又は2に記載の装置(9)。
【請求項5】
前記濾過媒体(16)が前記グラベルパック(17)を備え、前記受信音波の1つ以上のピークの振幅が、前記グラベルパック(17)の前記基準データの1つ以上の対応するピークの振幅よりも大きい場合に、前記濾過媒体(16)の展開の成功が示される、請求項に記載の装置(9)。
【請求項6】
前記濾過媒体(16)が前記グラベルパック(17)を備え、前記受信音波に由来するスペクトル周波数波形の振幅が、前記グラベルパック(17)の前記基準データの対応するスペクトル周波数波形の振幅よりも大きい場合に、前記濾過媒体(16)の展開の成功が示される、請求項に記載の装置(9)。
【請求項7】
前記チューブラ(6)が前記ボアホール(2)をライニングするケーシング(5)内に配置される、請求項1から6のいずれか1項記載の装置(9)。
【請求項8】
地面を貫通するボアホール(2)内に配置されたチューブラ(6)を少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体(16)の展開を監視するための方法であって、
前記チューブラ(6)を通してキャリアを運搬するステップであって、前記チューブラ(6)を少なくとも部分的に取り囲む前記濾過媒体(16)が前記チューブラ(6)とボアホール(2)との間に配置されている、運搬するステップと、
前記キャリア上に配置された低周波音波源(12)を使用して、3000Hz未満である周波数の音波を前記チューブラ(6)に送信するステップと、
前記低周波音波源(12)から長手方向に離れて前記キャリア上に配置された音波受信機(13)を使用して、前記送信された音波を受信するステップと、
前記受信された受信音波を特徴付けるデータを、前記濾過媒体(16)が展開されていない状態での音波を特徴付ける基準データと比較して、前記濾過媒体(16)の展開を監視するステップと、を有し、
前記監視するステップが、(i)前記基準データの振幅データに対する前記受信音波の対応する振幅データの減衰、又は、(ii)前記受信音波の振幅データに対する前記基準データの対応する振幅データの減衰、の少なくとも一つを判定することによって、前記濾過媒体(16)の展開を監視するステップを含み、
前記濾過媒体(16)が、拡張可能な濾過媒体(16)又はグラベルパック(17)を備える、方法。
【請求項9】
前記濾過媒体(16)が前記拡張可能な濾過媒体(16)を備え、当該拡張可能な濾過媒体(16)が形状記憶材料を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記濾過媒体(16)が前記拡張可能な濾過媒体(16)を備え、閾値以上の前記基準データの振幅データに対する前記受信音波の対応する振幅データの前記減衰が、展開の成功を示す、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記濾過媒体(16)が前記拡張可能な濾過媒体(16)を備え、閾値よりも小さい、前記基準データの振幅データに対する前記受信音波の対応する振幅データの前記減衰が、展開の失敗を示す、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
前記濾過媒体(16)が前記グラベルパック(17)を備え、前記受信音波の振幅データに対する前記基準データの対応する振幅データの前記減衰が閾値以上であることが、前記グラベルパック(17)展開の成功を示す、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記濾過媒体(16)が前記グラベルパック(17)を備え、前記受信音波の振幅データに対する前記基準データの対応する振幅データの前記減衰が閾値よりも小さいことが、前記グラベルパック(17)の展開の失敗を示す、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記濾過媒体(16)が前記グラベルパック(17)を備え、前記基準データが、良好に展開される前記グラベルパック(17)に関するものであり、前記基準データの対応する振幅データよりも小さい振幅データの減衰を有する前記受信音波が、当該受信音波と関連付けられた前記グラベルパック(17)が送り出された状態であることを示す、請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記チューブラ(6)が前記ボアホール(2)をライニングするケーシング(5)内に配置される、請求項8から14のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年11月20日に出願された米国特許出願第62/769、830号より先の出願日の利益を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
炭化水素は、典型的に、炭化水素が層からストリングに進入することを可能にするよう坑井ボア内に配置された入口開口部を有するチューブラストリングを介して、地下層から抽出される。標的流体を同伴する層から粒子状物質が生成され得るので、濾過媒体を使用して、粒子状物質がストリングに進入することを防止することができる。異なるタイプの濾過媒体は、例えば、拡張可能な濾過媒体及びグラベルパックを含む。しかしながら、濾過媒体を有効にするためには、それを正しく展開しなければならない。濾過媒体は、地下環境内の深部に展開され得るという点で、その展開を監視することは困難であり得る。そのため、坑井ボアにおける濾過媒体の展開の監視を改善する技術革新は、炭化水素生成産業において高く評価される。
【発明の概要】
【0003】
地面を貫通するボアホール内に配置されたチューブラを少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体の展開を監視するための装置を開示する。この装置は、チューブラを通して運搬されるように構成されている、キャリアと、キャリア上に配置されており、かつ3000Hz未満である周波数の音波をチューブラに送信するように構成されている、低周波音波源と、低周波音波源から離れてキャリア上に配置されており、かつ低周波音波源によって送信された音波を受信するように構成されている、音波受信機と、受信音波を特徴付けるデータを、濾過媒体が展開されていない状態での音波を特徴付ける基準データと比較するように構成されている、コントローラと、を含む。
【0004】
また、地面を貫通するボアホール内に配置されたチューブラを少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体の展開を監視するための方法も開示する。この方法は、チューブラを通してキャリアを運搬することと、キャリア上に配置された低周波音波源を使用して、3000Hz未満である周波数の音波をチューブラに送信することと、低周波音波源から離れてキャリア上に配置された音波受信機を使用して、送信音波を受信することと、受信音波を特徴付けるデータを、濾過媒体が展開されていない状態での音波を特徴付ける基準データと比較して、濾過媒体の展開を監視することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
以下の説明は、いかなる方法でも限定的であると見なされるべきではない。添付図面を参照して、同様の要素には、同様の番号が付される。
【0006】
図1】ボアホール内の濾過媒体の展開を監視するための濾過媒体展開監視システムの断面図を例示する。
【0007】
図2】拡張可能な濾過媒体を有する濾過媒体展開システムを試験することによって得られたデータの態様を表す。
【0008】
図3】地面を貫通するボアホールの配置されたチューブラを少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体の展開を監視するための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示する装置及び方法の1つ以上の実施形態の詳細な説明は、図を参照して例示として本明細書に提示するものであり、限定するものではない。
【0010】
地下層を貫通するボアホール内に配置されたチューブラ部材を少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体の展開を監視するための装置及び方法を開示する。「監視」という用語は、展開が成功したか、又は失敗したかを判定することを指し、成功とは、展開が所望の通りに生じたことを意味する。特定の実施形態ではベースパイプと称され得るチューブラ部材は、ボアホール又は坑井ボア内に配置されたストリングの一部であり、また、炭化水素をダウンホール位置から表面位置まで運搬するために使用される。概して、チューブラ部材は、チューブラ部材を取り囲むアニュラスから部材に炭化水素が進入することを可能にする開口部を有する。音響ツールは、チューブラ部材を通って、濾過媒体を有する位置まで運搬される。音響ツールは、送信音波がチューブラ部材に沿って送信機から受信機まで伝播するように、音波源及び受信機の両方を含む。開口部を通したチューブラ部材内部から層への液圧漏出が存在するため、音波は、開口部を通って漏出し、受信機によって受信される音波の減衰によって漏出を表す。具体的には、3000Hz未満である周波数の低周波音響ケーシングチューブ波が、チューブラ部材内のツール上の音波源を使用して、チューブラ部材に送信される。送信音波は、音波源からある程度離れたツール上に配置された低周波音波受信機によって受信される。チューブラ部材及び濾過媒体を含むシステムの周波数応答は、濾過媒体の展開が成功したかどうかに依存する。概して、受信音波の1つ以上のピークの振幅は、拡張可能な濾過媒体の展開が成功したときに大幅に減衰する。これは、濾過媒体が拡張した(すなわち、展開が成功した)ときに、圧縮状態の透過性よりも高い透過性を有し、したがって、開口部を通した層壁への音響エネルギーの漏出の増加を可能にするからである。グラベルパックを適所に有することで、グラベルパックを適所に有しない場合よりも多くの音響エネルギーが開口部を通って漏出することを防止するので、グラベルパック濾過媒体に関しては、逆のことが当てはまる。
【0011】
図1は、ボアホール内の濾過媒体の展開を監視するための、フィルタ処理展開監視システム9の断面図を例示する。音響ツール10は、地下領域3を貫通するボアホール2内のチューブラ部材6内に配置される。ケーシング5は、ボアホール2をライニングするが、本教示は、同様に開口ボアホールにも有用である。領域3は、開口部7を介してチューブラ部材6に進入することによって抽出することができる炭化水素の貯蔵部を含むことができる層4を含む。ツール10は、動力及び通信能力をツール10に提供することができるワイヤライン8などのキャリアによって、チューブラ部材6を通して運搬される。音響ツール10は、表面位置に配置されたコントローラ11に音響データを提供することができ、及び/又はツール10の動作のためのコマンドをコントローラ11から受信することができる。コントローラ11は、ユーザに展開情報を提供するためのディスプレイ若しくはプリンタなどのユーザインターフェース15、又はユーザがコマンド情報を入力するためのキーボードに結合することができる。
【0012】
音響ツール10は、3000ヘルツ未満である周波数で音波を放射又は送信するように構成された低周波音波源12を含む。1つ以上の実施形態では、低周波音波源12は、電気信号の形態の電気的エネルギーを音波の形態の音響エネルギーに変換するように構成された電気トランスデューサである。電気トランスデューサの非限定的な例としては、永久磁石タイプ及び圧電タイプが挙げられる。1つ以上の実施形態では、低周波音波源12は、音響エネルギーを全部又は大部分の方向に対称的に放射するモノポールである。他のタイプの音波源構成を使用することもできる。図1は、1つの低周波音波源12を例示しているが、音波源12のアレイを作製するなどのために、複数の音波源12を使用することができる。
【0013】
音響ツール10はまた、低周波音波源12から距離Dだけ離間された音波受信機13も含む。1つ以上の実施形態では、音波受信機13は、音波の形態の音響エネルギーを電気信号の形態の電気的エネルギーに変換するように構成された電気トランスデューサによって実装することができる。1つ以上の実施形態では、音波受信機13は、全部又は大部分の方向からの音波を対称的に感知するモノポール受信機である。他のタイプの音波受信機を使用することもできる。図1は、1つの音波受信機13を例示しているが、音波源13のアレイを作製するなどのために、複数の音波受信機13を使用することができる。
【0014】
音響ツール10は、ダウンホール電子機器14を更に含む。ダウンホール電子機器14は、ツール10を動作させるように、音波受信機13によって受信した音響データを処理するように、及び/又はコントローラ11と通信するためのテレメトリインターフェースを提供するように構成される。動作及び/又は処理機能もまた、コントローラ11と共有すること、又はそれによって実行することができる。
【0015】
図1の位置「A」では、拡張状態であり、したがって、展開が成功している、拡張可能な濾過媒体16が例示されている。拡張状態では、拡張可能な濾過媒体16が拡張されて、チューブラ部材6とケーシング5との間のアニュラスを満たす。濾過媒体16は、圧縮状態で、一般にチューブラ部材6の開口部に巻き付けられて、ダウンホールに延びており、ケーシング5へのアニュラスを完全に満たさない。次いで、濾過媒体16を熱又は作動流体のいずれかによって作動させて、アニュラスを完全に満たす事前圧縮状態まで拡張させ、ケーシング5と接触させる。拡張可能な濾過媒体16の非限定的な実施形態としては、形状記憶ポリマー(shape memory polymer、SMP)などの、形状記憶材料が挙げられる。圧縮状態では、濾過媒体16は、濾過媒体16が拡張状態であるときよりも密度が高く、かつ透過性が低い。その結果、圧縮状態の濾過媒体は、濾過媒体16が拡張状態であるときよりも、開口部7を通した音波の送信を効果的に制限する。そのため、濾過媒体16が拡張状態であるときに、濾過媒体16が圧縮状態であるときよりも多くの音響エネルギーが、開口部7を通過するか、又はそこを通って漏出する。したがって、受信音波は、開口部7を通した音響漏出の増加のため、濾過媒体16が圧縮状態であるときに、濾過媒体16が拡張状態であるときよりも減衰される。
【0016】
拡張可能な濾過媒体16の展開を監視するために、拡張状態での受信音波を特徴付けるデータを、圧縮状態又は非拡張状態での受信音波を特徴付ける基準データと比較する。圧縮状態又は非拡張状態での受信音波を特徴付けるデータは、拡張した濾過媒体16が圧縮状態又は非拡張状態になることで、音響ツール10を使用して音波を送信及び受信することによって取得することができる。比較は、基準データに対する受信音波の振幅の減衰を同定及び/又は定量化することを含むことができる。代替的又は追加的に、比較は、基準データに対する受信音波のスペクトル振動数コンテンツの任意の変化を同定及び/又は定量化することを含むことができる。非限定的な実施形態では、スペクトルコンテンツの変化は、基準データの対応するスペクトル波形に関して、スペクトル波形の低減した振幅を含むことができる。ノイズが比較を干渉することを防止するために、ノイズレベルを超える減衰の閾値を選択することができる。換言すれば、閾値を超える減衰量は、拡張可能な濾過媒体16の展開(すなわち、拡張)が成功したことを示すことができる。基準データは、各個の拡張した濾過媒体アセンブリの展開を監視するために取得する必要はなく、同じタイプ又は類似の拡張可能な濾過媒体アセンブリに関する音響測定値に基づいて取得することができることを認識することができる。
【0017】
図2は、拡張可能な濾過媒体16を圧縮したとき、及び拡張可能な濾過媒体16を拡張させたときに受信する音波を特徴付けるデータの1つの例を例示する。図2の右側を見ると、圧縮状態の拡張可能な濾過媒体16と比較して、拡張可能な濾過媒体16の拡張状態に関する受信音波の有意かつ定量化可能な減衰が存在することは容易に明らかである。量の減衰は、いくつかの方法によって判定することができる。1つの方法では、拡張状態のデータにおける1つ以上のピークの振幅と、圧縮状態のデータにおける対応する1つ以上のピークの振幅との比率が判定される。別の方法では、拡張状態の周波数応答曲線の下の領域が、圧縮状態の対応する周波数応答曲線の下の領域と比較される。減衰は、圧縮状態の領域と、拡張状態の領域との比率として定量化することができる。他の方法も使用され得る。
【0018】
図1を再度参照すると、位置「B」でチューブラ部材6とケーシング5との間のアニュラスを満たしているグラベルパック17が例示されている。グラベルパック17は、選択されたサイズの鉱物の粒体を使用して、砂がチューブラ部材6に進入することを防止する。グラベルパック17をダウンホールに展開又は配置してアニュラスを満たす前に、アニュラスは、グラベルパック17よりも低密度で音波を透過する流体で満たすことができる。その結果、展開されたグラベルパックは、グラベルパック17が展開されていないときよりも効果的に、音波を遮断するか、又はチューブラ部材6からの漏出を防止する。そのため、グラベルパック17の展開の成功を監視することは、拡張可能な濾過媒体16の展開の成功を監視することの逆である。すなわち、グラベルパック17の展開の成功は、グラベルパック17が展開されないときの受信音波と比較して、受信音波がより少ない減衰を有することによって示される。又は言い換えると、基準データ(グラベルパックが展開されていない)は、グラベルパック17が展開された状態での受信音波と比較して、受信音波が減衰することを特徴とする。拡張可能な濾過媒体16の展開を監視することと同様に、減衰の閾値は、閾値を超える、展開を監視するデータに対する基準データの減衰量が、グラベルパック17の展開が成功したことを示すような比較に、ノイズが干渉することを防止するように、選択することができる。濾過展開監視システム9はまた、グラベルパックが送り出された状態を検出するために使用することもできることを認識することができる。この状態は、層からの微粉がグラベルパック内のグラベル石の間の空洞に進入したときに発生して、微粉を伴わない場合の透過性よりも更に顕著にグラベルパック17の透過性を低減させる。グラベルパックが送り出されたことを検出するために、通常のグラベルパックの配置(すなわち、微粉を伴わない、又は有意な量の微粉を伴わない)から取得した音波又は音波データを基準データとして使用することができる。そのため、通常のグラベルパックの配置によって取得した音波は、グラベルパックを送り出すことによって取得した音波よりも減衰され、したがって、グラベルパックが送り出された状態を示す。
【0019】
図3は、地面を貫通するボアホール内に配置されたチューブラを少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体の展開を監視するための方法30のフローチャートを例示する。ブロック31は、チューブラを通してキャリアを運搬することを必要とする。ブロック32は、キャリア上に配置された低周波音波源を使用して、3000Hz未満である周波数の音波をチューブラに送信することを必要とする。ブロック33は、低周波音波源から離れてキャリア上に配置された音波受信機を使用して、送信音波を受信することを必要とする。ブロック34は、受信音波を特徴付けるデータを、濾過媒体が展開されていない状態での音波を特徴付ける基準データと比較して、濾過媒体の展開を監視することを必要とする。
【0020】
前述の開示のいくつかの実施形態を以下に記載する。
【0021】
実施形態1:地面を貫通するボアホール内に配置されたチューブラを少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体の展開を監視するための装置であって、チューブラを通して運搬されるように構成されている、キャリアと、キャリア上に配置されており、かつ3000Hz未満である周波数の音波をチューブラに送信するように構成されている、低周波音波源と、低周波音波源から離れてキャリア上に配置されており、かつ低周波音波源によって送信された音波を受信するように構成されている、音波受信機と、受信音波を特徴付けるデータを、濾過媒体が展開されていない状態での音波を特徴付ける基準データと比較するように構成されている、コントローラと、を備える、装置。
【0022】
実施形態2:濾過媒体が、拡張可能な濾過媒体を備える、実施形態1に記載の装置。
【0023】
実施形態3:拡張可能な濾過媒体が、形状記憶材料を含む、実施形態1~2のいずれかに記載の装置。
【0024】
実施形態4:受信音波の1つ以上のピークの振幅が、基準データの1つ以上の対応するピークの振幅よりも小さい、実施形態1~3のいずれかに記載の装置。
【0025】
実施形態5:受信音波に由来するスペクトル周波数波形の振幅が、基準データの対応するスペクトル周波数波形の振幅よりも小さい、実施形態1~4のいずれかに記載の装置。
【0026】
実施形態6:濾過媒体が、グラベルパックを備える、実施形態1~5のいずれかに記載の装置。
【0027】
実施形態7:受信音波の1つ以上のピークの振幅が、グラベルパックの基準データの1つ以上の対応するピークの振幅よりも大きい、実施形態1~6のいずれかに記載の装置。
【0028】
実施形態8:受信音波に由来するスペクトル周波数波形の振幅が、グレーブパックの基準データの対応するスペクトル周波数波形の振幅よりも大きい、実施形態1~7のいずれかに記載の装置。
【0029】
実施形態9:地面を貫通するボアホール内に配置されたチューブラを少なくとも部分的に取り囲む濾過媒体の展開を監視するための方法であって、チューブラを通してキャリアを運搬することと、キャリア上に配置された低周波音波源を使用して、3000Hz未満である周波数の音波をチューブラに送信することと、低周波音波源から離れてキャリア上に配置された音波受信機を使用して、送信音波を受信することと、受信音波を特徴付けるデータを、濾過媒体が展開されていない状態での音波を特徴付ける基準データと比較して、濾過媒体の展開を監視することと、を含む、方法。
【0030】
実施形態10:比較することが、基準データの対応する振幅データに対する受信音波の振幅データの減衰を判定することを含む、実施形態9に記載の方法。
【0031】
実施形態11:濾過媒体が、拡張可能な濾過媒体を備える、実施形態9~10のいずれかに記載の方法。
【0032】
実施形態12:閾値以上の減衰が、展開の成功を示す、実施形態9~11のいずれかに記載の方法。
【0033】
実施形態13:閾値よりも小さい減衰が、展開の失敗を示す、実施形態9~12のいずれかに記載の方法。
【0034】
実施形態14:濾過媒体が、グラベルパックを備える、実施形態9~13のいずれかに記載の方法。
【0035】
実施形態15:基準データの振幅データにおける減衰が閾値以上であることが、グラベルパック展開の成功を示す、実施形態9~14のいずれかに記載の方法。
【0036】
実施形態16:基準データの振幅データにおける減衰が閾値よりも小さいことが、グラベルパックの展開の失敗を示す、実施形態9~15のいずれかに記載の方法。
【0037】
実施形態17:基準データが、良好に展開されるグラベルパックに関するものであり、基準データの対応する振幅データよりも小さい振幅データの減衰を有する受信音波が、受信音波と関連付けられたグラベルパックが送り出された状態であることを示す、実施形態9~16のいずれかに記載の方法。
【0038】
本明細書の教示を支援するものとして、デジタル及び/又はアナログシステムを含む、様々な分析構成要素を使用することができる。例えば、コントローラ11及び/又はダウンホールエレクトロニクス14は、デジタル及び/又はアナログシステムを含むことができる。システムは、当技術分野で十分に認識されるいくつかの様態のいずれかで本明細書に開示する装置及び方法の動作及び分析のための、プロセッサ、記憶媒体、メモリ、入力装置、出力装置、通信リンク(有線、無線、光、など)、ユーザインターフェース(例えば、ディスプレイ又はプリンタ)、ソフトウェアプログラム、信号プロセッサ(デジタル又はアナログ)、及び他のそのような構成要素(抵抗、コンデンサ、インダクタ、など)などの構成要素を有することができる。メモリ(ROM、RAM)、光学媒体(CD-ROM)、若しくは磁気媒体(ディスク、ハードディスク)を含む非一時的コンピュータ可読媒体、又は実行されたときに本発明の方法をコンピュータに実施させる任意の他のタイプのものに記憶されたコンピュータ実行可能命令と連動して、これらの教示を実施することができるが、そうである必要はない、と考えられる。これらの命令は、本開示で説明する機能に加えて、機器の動作、制御、データの収集及び分析、並びにシステムの設計者、所有者、ユーザ、又は他のそのような人員と関係があると見なされる他の機能を提供することができる。
【0039】
更に、本明細書の教示の様々な態様を提供するために、様々な他の構成要素を含むこと、及び必要とすることができる。例えば、本明細書で考察される様々な態様の支援には、又は本開示以外の他の機能の支援には、電源(例えば、発電機、遠隔の供給手段、及び電池のうちの少なくとも1つ)、磁石、電磁石、センサ、電極、送信機、受信機、送受信機、アンテナ、コントローラ、光ユニット、電気ユニット、又は電気機械ユニットを含むことができる。
【0040】
本明細書で使用するとき、「キャリア」という用語は、別の装置、装置の構成要素、装置の組み合わせ、媒体、及び/又は部材の搬送、収容、支持、又は別様にその使用を容易にするために使用することができる、任意の装置、装置の構成要素、装置の組み合わせ、媒体、及び/又は部材を意味する。音響ツール10は、キャリアの1つの非限定的な例である。他の例示的で非限定的なキャリアの例としては、コイル管型、継手管型のドリルストリング、及びそれらの組み合わせ又は一部分を挙げることができる。他のキャリアの例としては、ケーシングパイプ、ワイヤライン、ワイヤラインゾンデ、スリックラインゾンデ、ドロップショット、ボトムホールアセンブリ、ドリルストリングインサート、モジュール、内部ハウジング、及びその基板部分が挙げられる。
【0041】
実施形態の要素は、冠詞「a」又は「an」のいずれかと共に導入されている。これらの冠詞は、1つ以上の要素が存在することを意味することを意図する。「含む(including)」及び「有する(having)」などの用語は、列記した要素以外の追加の要素が存在し得るような、包括的なあることを意図する。接続詞「又は(or)」は、少なくとも2つの用語のリストを共に使用されるとき、任意の用語又は用語の組み合わせを意味することを意図する。「構成された(configured)」という用語は、装置を構成するための機能又は動作を行うために装置に必要とされる、装置の1つ以上の構造的制限に関する。
【0042】
本明細書に表すフロー図は、一例に過ぎない。本明細書で説明するこの線図又はステップ(若しくは動作)には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、多くの変形例が存在し得る。例えば、ステップは、異なる順序で行われ得るか、又はステップは、追加、削除、若しくは修正され得る。これらの変形例の全ては、特許請求される発明の一部と考えられる。
【0043】
本明細書に例示的に開示する本開示は、本明細書に具体的に開示しない任意の要素の非存在下で実践することができる。
【0044】
1つ以上の実施形態を示し、説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、修正及び置換を行うことができる。したがって、本発明は、例示として説明されており、限定するものではないことを理解されたい。
【0045】
様々な構成要素又は技術が、特定の必要又は有益な機能又は特徴を提供することができることが認識されるであろう。したがって、添付の特許請求の範囲及びその変形例を支援するのに必要であり得るこれらの機能及び特徴は、本明細書の教示の一部として、また、開示する本発明の一部として、本質的に含まれていると認識される。
【0046】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、また、同等物がその要素と置換され得ることが理解されるであろう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の器具、状況、又は材料を本発明の教示に適合させるための、多くの修正例が認識されるであろう。したがって、本発明を実行するために想到される最良の形態として開示された特定の実施形態に本発明が限定されることなく、添付の特許請求の範囲に入る全ての実施形態を含むことを意図する。

図1
図2
図3