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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】税額算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/00 20120101AFI20220819BHJP
【FI】
G06Q40/00 410
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020189779
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078836
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506366172
【氏名又は名称】山下 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018280(JP,A)
【文献】特開2002-279145(JP,A)
【文献】特開2007-087341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
税引前利益から損金不算入額に当たる特定税額を第1値として算出する第1ステップと、
前記第1値を用いて前記特定税額を再計算し、当該特定税額にて前記第1値を更新する第2ステップと、
前記第2ステップを1回以上実施することで前記第1値を収束させ、収束後の前記第1値を用いて確定税額を算出する第3ステップと、
を1以上のプロセッサに実行させるための税額算出プログラムであって、
前記第2ステップでは、表計算ソフトで作成される複数の表を用いて、前記複数の表の間で前記第1値の複製を行い、
前記複数の表は、第1表と第2表とを含み、
前記第1ステップでは、前記第1表において前記税引前利益から前記第1値を算出し、
前記第2ステップは、
前記第1表の前記第1値を前記第2表の納税充当金に複製し、前記第2表において前記納税充当金を用いて前記特定税額を再計算し、当該特定税額にて前記第1値を更新する第1方向処理と、
前記第2表の前記第1値を前記第1表の納税充当金に複製し、前記第1表において前記納税充当金を用いて前記特定税額を再計算し、当該特定税額にて前記第1値を更新する第2方向処理と、を有する、
税額算出プログラム。
【請求項2】
前記第3ステップでは、前記第1表又は前記第2表のいずれかにおいて、前記納税充当金と更新後の前記第1値とが合致するまで、前記第1方向処理及び前記第2方向処理を相互に実施することで前記第1値を収束させる、
請求項1に記載の税額算出プログラム。
【請求項3】
さらに、前記税引前利益と前記確定税額とを用いて当期純利益を算出する第4ステップを前記1以上のプロセッサに実行させる、
請求項1又は2に記載の税額算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、税額の算出に用いられる税額算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、税引後利益を算出可能な税務会計処理プログラムが知られている(例えば、特許文献1参照)。上記関連技術では、会計処理と税務処理とをシステム的に統合し、仕訳入力を完了した時点で、特別な税務処理を行うことなく、負担すべき法人税等を自動的に仕訳の形で生成し、これら入力された仕訳と生成した仕訳とにより、税引後利益を算出する。
【0003】
より詳細には、上記関連技術では、加算減算データ(税務上のルールに基づいて会計上の利益に対して加算するか又は減算するかを決定するための情報)と税引前利益データとから課税所得データを算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-18280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記関連技術では、未払いの法人税額データ及び未払いの法人地方税額データ等を求めるために、上記課税所定データを用いるので、未払いの法人税額データ及び未払いの法人地方税額データ等が確定していない状態で上記課税所定データが求められる。したがって、課税所定データを正確に求めるには、未払いの法人税額データ及び未払いの法人地方税額データ等の損金不算入額を別途計算して求める必要があり、結果的に、人による計算の手間がかかる。
【0006】
本発明の目的は、税額の算出に係る人の手間を軽減できる税額算出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る税額算出プログラムは、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。前記第1ステップでは、税引前利益から損金不算入額に当たる特定税額を第1値として算出する。前記第2ステップでは、前記第1値を用いて前記特定税額を再計算し、当該特定税額にて前記第1値を更新する。前記第3ステップでは、前記第2ステップを1回以上実施することで前記第1値を収束させ、収束後の前記第1値を用いて確定税額を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、税額の算出に係る人の手間を軽減できる税額算出プログラムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る税額算出プログラムが用いられるシステム構成を示すブロック図である。
図2図2は、同上の税額算出プログラム上の決算総括票の一例を示す図である。
図3図3は、同上の税額算出プログラム上の課税所得計算表の一例を示す図である。
図4図4は、同上の税額算出プログラム上の税額計算表の一例を示す図である。
図5図5は、同上の税額算出プログラム上の納税充当金算出表の一例を示す図である。
図6図6は、同上の税額算出プログラム上の簡易表の一例を示す図である。
図7図7は、同上の簡易表を用いた計算過程の一例を示す説明図である。
図8図8は、同上の税額算出プログラムに従ったプロセッサによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、比較例の計算手順の一例を示す説明図である。
図10図10は、実施形態2に係る税額算出プログラムに関して課税所得の計算過程を模式的に示す説明図である。
図11図11は、同上の税額算出プログラム上の簡易表の一例を示す図である。
図12図12は、同上の簡易表を用いた計算過程の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。また、下記の実施形態で説明する構成及び処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることも可能である。
【0011】
(実施形態1)
(1)用語の説明
まず前提として、本開示では基本的に、日本国における会計分野及び税務分野で使用されている用語を使用する。
【0012】
本開示でいう「法人税等」は、法人の利益に応じて課税される法人税、地方法人税、法人住民税及び事業税等を含み、当期の決算で法人が負担すべき税金を処理する勘定科目である。本開示でいう「法人住民税」には、都道府県民税(府県民税)と市区町村民税(市民税)とが含まれる。ここで、法人に課税される税金(法人税等)のうち、法人税、地方法人税及び法人住民税(都道府県民税及び市区町村民税を含む)は、「損金」の額に算入されない「損金不算入額」である。一方、法人に課税される税金(法人税等)のうち、事業税は、「損金」の額に算入される「損金算入額」である。
【0013】
本開示において、損金不算入額に当たる法人税、地方法人税、都道府県民税及び市区町村民税の4つの合計額を「法人4税」と呼ぶ。また、本開示でいう「事業税」には、法人事業税及び事業特別税を含む。つまり、本開示でいう「法人税等」は、損金不算入額である「法人4税」(法人税、地方法人税、都道府県民税及び市区町村民税)と、損金算入額である「事業税」(法人事業税及び事業特別税)との合計額を意味する。本開示でいう「法人税2」は、法人税及び地方法人税の合計額を意味する。
【0014】
ここで、法人税等の納付には、事業年度の中間期に中間申告により行う「中間納付」と、事業年度末に確定申告により行う「確定納付」とがある。そこで、一例として「法人4税」の中間納付額を「法人4税中間」と呼び、「法人4税」の確定納付額を「法人4税確定」と呼ぶように、「中間」又は「確定」の用語により、「中間納付」と「確定納付」とを区別することがある。以下、特に断りがない限り、「中間納付」と「確定納付」とを区別しない場合には、中間納付額及び確定納付額の合計を意味し、一例として単に「法人4税」という場合には、「法人4税」の中間納付額及び確定納付額の合計を意味する。同様に、単に「法人税等」という場合には、「法人税等」の中間納付額及び確定納付額の合計を意味する。あるいは、事業年度全体での「法人税等」の合計額、つまり「法人税等」の中間納付額及び確定納付額の合計額を「確定税額」ともいう。また、本開示でいう「納税充当金」は、会計上の「未払法人税等」に相当し、決算時に見積計上する「法人4税確定」、つまり「法人4税」の確定納付額を意味する。
【0015】
本開示でいう「当期純利益」は、当期(事業年度)の決算利益であって、課税対象となる金額である。「当期純利益」は、「税引前利益」から「法人税等」を減算することにより算出される。言い換えれば、「当期純利益」と「法人税等」との合計額が「税引前利益」である。さらに、本開示でいう「課税所得」は、法人税法に定める利益であって、法人税の課税標準の一つである各事業年度の所得の金額を意味し、税務上の「益金」から「損金」を減算することで算出される。すなわち、会計上は「収益」から「費用」を減算することで「利益」が算出されるが、税務上は「益金」から「損金」を減算することで「課税所得」を算出する必要がある。「法人4税」のように、会計上では「費用」として経理処理するが、税務上では「損金」として認められない「損金不算入額」として処理する項目がある。したがって、「課税所得」の算出に用いられる「損金」を確定するには、会計上では「費用」となるもののうち、税務上の「損金」に計上されない損金不算入額を求める必要がある。具体的には、「当期純利益」に対して、損金不算入額である「法人4税」及び損金不算入額である「他の加減算」を加算する(積み上げる)ことにより、「課税所得」が算出される。
【0016】
(2)概要
本実施形態に係る税額算出プログラム1(図1参照)は、税額を算出するための税額算出方法に含まれる種々のステップを、1以上のプロセッサ11(図1参照)に実行させるためのプログラムである。具体的に、税額算出プログラム1は、1以上のプロセッサ11及び1以上のメモリ12(図1参照)を有するコンピュータシステムにアプリケーションソフトとしてインストールされ、このアプリケーションソフトを起動することにより、コンピュータシステムが税額算出システムとして機能する。このとき、1以上のプロセッサ11にて税額算出方法に含まれる種々のステップが実行され、税額算出方法が具現化される。
【0017】
ここで、税額算出プログラム1は、一例として、法人決算及び法人税申告に際して利用される。つまり、法人決算においては、確定した当期の利益を基に「法人税等」の金額を求めて、確定申告納付の準備をするので、この際に税額算出プログラム1が利用される。すなわち、日本国においては、法人の活動から生じる所得に対して、法人税(国税)、地方法人税(国税)、法人住民税(地方税)、事業税(地方税)及び地方法人特別税(国税)等の税金(法人税等)が法人に課税される。法人の決算においては、「税引前利益」から「法人税等」を減算することにより「当期純利益」を確定し、帳簿の締め切りを行う。
【0018】
ところで、「税引前利益」及び「法人税等」から「当期純利益」を算出するには、先に「法人税等」を確定することが必要である。一方で、「法人税等」を算出するには、課税対象となる「当期純利益」を確定する必要がある。このように、「当期純利益」又は「法人税等」を求めるには、相反関係にある2つの計算が要求される。一般的な法人税申告ソフトは単に「当期純利益」から「法人税等」を計算するだけであって、上記相反関係にある2つの計算のうちの一方を行うだけである。そのため、「法人税等」を正確に求めるには、確定した「法人税等」を用いて「当期純利益」を確定する必要があり、従来、実務上は人が手計算で「法人税等」を求めている。
【0019】
具体的には、まず手計算で仮の「法人税等」を設定して仮の「当期純利益」を算出し、当該仮の「当期純利益」に基づいて「法人税等」を再計算する。そして、再計算により得られた「法人税等」を用いて再度「当期純利益」を算出する。このとき、再計算の結果「法人税等」が増額となれば、当該「法人税等」から算出される「当期純利益」は減額となる。つまり、「法人税等」が変われば「当期純利益」も変わり、「当期純利益」が変われば「法人税等」も変わるということを繰り返しつつ、最終的に「法人税等」と「当期純利益」との整合が取れるまで、上述のような「法人税等」及び「当期純利益」の計算を何度も繰り返す必要がある。法人の事業所数等でも異なるが、場合によっては上記計算を10回以上も繰り返す必要があり、税額の算出に係る人の手間がかかる、という問題がある。
【0020】
本実施形態に係る税額算出プログラム1は、以下に説明する構成を採用することにより、上述したような税額の算出に係る人の手間を軽減できる、という利点がある。一言でいうと、税額算出プログラム1は、「納税充当金」を自動的に計算することで、「税引前利益」から「確定税額」及び「当期純利益」を瞬時に算出可能とする。
【0021】
すなわち、税額算出プログラム1は、第1ステップ(図8のS3)と、第2ステップ(図8のS4~S9)と、第3ステップ(図8のS10~S12)と、を1以上のプロセッサ11に実行させるためのプログラムである。第1ステップでは、税引前利益から損金不算入額に当たる特定税額を第1値V1として算出する。第2ステップでは、第1値V1を用いて特定税額を再計算し、当該特定税額にて第1値V1を更新する。第3ステップでは、第2ステップを1回以上実施することで第1値V1を収束させ、収束後の第1値V1を用いて確定税額を算出する。本開示でいう「特定税額」とは、法人税等の中で損金不算入額に当たる税額を意味し、一例として、法人税、地方法人税、都道府県民税及び市区町村民税の4つ(法人4税)の合計額である。つまり、「法人4税」は「特定税額」の一例である。
【0022】
この構成によれば、「税引前利益」が入力されると、第1値V1が収束するまで特定税額を再計算する処理が1回以上実施され、決算時に見積もり計上する「特定税額」(一例として法人4税)が自動的に算出される。そして、「納税充当金」に相当する「特定税額」が算出されることで、算出された「特定税額」(つまり、収束後の第1値V1)を用いて、確定税額が算出されるので、未確定の値を用いる場合に比べて、正確に確定税額を算出できる。結果的に、税額の算出に係る人の手間を軽減できる、という利点がある。
【0023】
(2)システム構成
図1に示すように、本実施形態では一例として、税額算出プログラム1は、汎用のパーソナルコンピュータからなる1台の情報処理装置10に、専用のアプリケーションソフトとしてインストールされている。よって、情報処理装置10は、このアプリケーションソフトを起動することによって税額算出システムとして機能し、税額算出方法を具現化する。さらに、情報処理装置10には、表示装置21、入力装置22及び出力装置23が接続されている。そして、情報処理装置10は、表示装置21に画面を表示してユーザに情報を提示し、ユーザの操作を入力装置22にて受け付け、出力装置23に種々の情報を出力させる。
【0024】
表示装置21は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等により実現される。表示装置21は、ユーザインタフェースとして、情報処理装置10からの映像信号を受けて種々の「画面」を表示することにより、税額算出プログラム1のユーザに対して情報を提示する。
【0025】
入力装置22は、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、メカニカルなスイッチ、ジェスチャセンサ又は音声入力装置等により実現される。入力装置22は、ユーザインタフェースとして、税額算出プログラム1のユーザの操作(音声操作等を含む)を受け付けて、ユーザの操作に応じた操作信号を情報処理装置10に出力する。ただし、入力装置22のデータの入力の態様は、ユーザの操作に限らず、例えば、他装置からの受信(通信)、又は非一時的記録媒体からの読み込み等であってもよい。
【0026】
出力装置23は、例えば、プリンタ等により実現される。出力装置23は、ユーザインタフェースとして、情報処理装置10からの出力信号を受けて種々のデータを印刷(プリントアウト)により出力する。ただし、出力装置23のデータの出力の態様は、印刷に限らず、例えば、他装置への送信(通信)、音声出力、又は非一時的記録媒体への記録(書き込み)等であってもよい。
【0027】
表示装置21、入力装置22及び出力装置23の少なくとも1つは、情報処理装置10の構成要素に含まれていてもよい。言い換えれば、情報処理装置10は、表示装置21と入力装置22と出力装置23との少なくとも1つを備えていてもよい。さらに、例えば、表示装置21及び入力装置22は、タッチパネルディスプレイにて実現されてもよく、この場合、表示装置21と入力装置22とは一体化されることになる。
【0028】
税額算出プログラム1は、コンピュータシステムの1以上のメモリ12に予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。いずれの場合でも、税額算出プログラム1は、情報処理装置10に、専用のアプリケーションソフトとしてインストールされる。
【0029】
(3)税額算出プログラム
次に、本実施形態に係る税額算出プログラム1の詳細について、図2図5を参照して説明する。
【0030】
税額算出プログラム1は、「税引前利益」から「納税充当金」を自動的に計算する機能を有する。具体的には、課税、税額計算の基礎を、従来の「当期純利益」から「税引前利益」に変更し、「当期純利益」を「税引前利益」から「法人税等」を減算した計算額の値とする。これにより、従来は手計算で行われていた「法人税等」の計算が自動化され、自動計算された「法人税等」に基づいて「当期純利益」が一意に算出可能となる。つまり、自動計算により確定された「法人税等」を「税引前利益」から減算することにより、「当期純利益」が一意に求まるので、結果的に、「法人税等」及び「当期純利益」の両方が得られることになる。
【0031】
また、税額算出プログラム1は、「税引前利益」が入力されることで、「納税充当金」を、表計算ソフトのシート上に作成した計算表にて自動計算により算出する機能を有する。詳しくは後述するが、税額算出プログラム1は、表計算ソフトで作成される複数の表を用いることにより、「納税充当金」の自動計算を可能とする。「納税充当金」(つまり「法人4税」の確定納付額)が求まれば、「法人4税」の中間納付額及び「他の加減算」等の損金不算入額が求まるので、これをもって「課税所得」を算出することが可能となる。
【0032】
以上説明した機能により、税額算出プログラム1は、「税引前利益」が入力されるだけで、決算に必要な「税引前利益」、「納税充当金」、「課税所得」、「法人税等」及び「当期純利益」が全て揃うことになる。税額算出プログラム1は、このようにして得られる「税引前利益」、「納税充当金」、「課税所得」、「法人税等」及び「当期純利益」を、例えば図2に示す決算総括票Sh1に自動挿入することで、決算総括票Sh1を完成させることができる。
【0033】
本実施形態に係る税額算出プログラム1は、一例として、Excel(登録商標)等の表計算ソフトを用いて構成される。すなわち、税額算出プログラム1は、表計算ソフトのシート上の関数(数式)を含んでおり、表計算ソフトの機能を利用して種々の演算を実現する。具体的には、税額算出プログラム1は、図2図5に示すように、決算総括票Sh1、課税所得計算表Sh2、(各税目)税額計算表Sh3及び納税充当金算出表Sh4の4つのシート(計算表)上の関数を含んでいる。これら4つのシート(計算表)は、いずれも表計算ソフトで作成されている。そのため、税額算出プログラム1をインストールした情報処理装置10においては、決算総括票Sh1、課税所得計算表Sh2、税額計算表Sh3及び納税充当金算出表Sh4の各々を、例えば表示装置21に表示させたり、出力装置23に印刷させたりすることが可能である。ただし、表計算ソフトで作成されるこれらのシート全てを、表示又は印刷により可視化することは、税額算出プログラム1に必須の機能ではなく、例えば一部のシートを内部演算用に生成してもよい。なお、図2図5等において、領域を表す太線の一点鎖線、引き出し線及び参照符号は、説明のために付しているのであって、実際にシートに含まれる訳ではない。
【0034】
決算総括票Sh1は、一例として、図2に示すように、「税引前利益」のセルC11、「法人税等」(確定税額)のセルC12、「当期純利益」のセルC13、「課税所得」のセルC14及び「納税充当金」のセルC15を含む。また、図2の例では、決算総括票Sh1は、地方税課税分割の計算基礎の入力用の領域R11、法人税等の集計表の領域R12、及び法人税等内訳各税目別の算出計算表の領域R13を含んでいる。「納税充当金」のセルC15は領域R12に含まれる。図2の例では、セルC11に「20,000,000」、セルC12に「5,879,400」、セルC13に「14,120,600」、セルC14に「18,507,713」、セルC15に「2,430,500」がそれぞれ入力されている。図2の例において、セルC11~C15のうち、ユーザが値を直接的に入力するのはセルC11(税引前利益)のみであって、セルC12~C15には決算総括票Sh1又は他のシート等で計算された結果が自動的に引用(挿入)される。
【0035】
なお、図2に例示する決算総括票Sh1は、1都府県(一例として大阪府)、3市(一例として大阪市、羽曳野市及び富田林市)まで対応可能で、かつ資本金が1億円以下で、課税分割計算市人員、資本金、均等割及び税率に対応している。この例に限らず、例えば3都府県、6市まで対応可能な決算総括票等、種々の決算総括票の態様を採用可能である。
【0036】
課税所得計算表Sh2(法人税別表(四)(簡易)(抄))は、一例として、図3に示すように、「課税所得」のセルC21、「税引前利益」のセルC22、「法人税等」(確定税額)のセルC23及び「当期純利益」のセルC24を含む。さらに、課税所得計算表Sh2は、「法人税及び地方法人税」の中間納付額のセルC25、「法人住民税」の中間納付額のセルC26及び「納税充当金」のセルC27を含む。図3の例では、セルC21に「18,507,713」、セルC22に「20,000,000」、セルC23に「5,879,400」、セルC24に「14,120,600」、セルC25に「1,638,800」、セルC26に「315,300」、セルC27に「2,430,500」がそれぞれ入力されている。図3の例において、セルC21~C27の中にユーザが値を直接的に入力するセルはなく、セルC21~C27には決算総括票Sh1又は他のシート等で計算された結果が自動的に引用(挿入)される。そのため、課税所得計算表Sh2において、ユーザが値を直接的に入力するのは「他の加減算」の値のみであって、「他の加減算」の入力をもって課税所得計算表Sh2への入力は完了する。
【0037】
(各税目)税額計算表Sh3は、一例として、図4に示すように、「法人4税」の中間納付額(法人4税中間)のセルC31、「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC32及び「法人税等」(確定税額)のセルC33を含む。図4の例では、セルC31に「1,954,100」、セルC32に「2,430,500」、セルC33に「5,879,400」がそれぞれ入力されている。図4の例において、セルC31~C33の中にユーザが値を直接的に入力するセルはなく、セルC31~C33には決算総括票Sh1又は他のシート等で計算された結果が自動的に引用(挿入)される。税額計算表Sh3においては、ユーザが値を直接的に入力する項目はなく、全て自動計算により値が自動挿入される。
【0038】
また、税額計算表Sh3は、1つのシート上に、表計算ソフトで作成される複数の表を含んでいる。複数の表は、第1表T1と第2表T2とを含んでいる。本実施形態では、税額計算表Sh3に含まれる複数の表は、第1表T1及び第2表T2の2つのみである。図4では一例として、これら第1表T1及び第2表T2は、左側が第1表T1、右側が第2表T2となるように、左右方向(横方向)に並べて配置されている。第1表T1及び第2表T2は、同一の項目(セル)を有しており、図4の例では値も含めて完全同一である。これら複数の表(第1表T1及び第2表T2)は、納税充当金算出表Sh4で引用される「各税目算出表(抄)」のために設定されており、第1表T1及び第2表T2の役割(機能)については後述する。
【0039】
納税充当金算出表Sh4(兼法人税等税額及び当期純利益算出表)は、一例として、図5に示すように、「税引前利益」のセルC41、「法人税等」(確定税額)のセルC42、「当期純利益」(決算利益)のセルC43、「法人税及び地方法人税」の中間納付額のセルC44、「法人住民税」の中間納付額のセルC45、「納税充当金」のセルC46及び「課税所得」のセルC47を含む。さらに、納税充当金算出表Sh4は、「法人税」の確定納付額のセルC48、「地方法人税」の確定納付額のセルC49、「法人税及び地方法人税」の確定納付額のセルC50、「都道府県民税」の確定納付額のセルC51、「市区町村民税」の確定納付額のセルC52、「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53及び「法人税等」(確定税額)のセルC54を含む。図5の例では、セルC41に「20,000,000」、セルC42に「5,879,400」、セルC43に「14,120,600」、セルC44に「1,638,800」、セルC45に「315,300」、セルC46に「2,430,500」、セルC47に「18,507,713」、セルC48に「2,077,000」、セルC49に「79,800」、セルC50に「2,156,800」、セルC51に「59,000」、セルC52に「214,700」、セルC53に「2,430,500」、セルC54に「5,879,400」がそれぞれ入力されている。
【0040】
特に、本実施形態では、納税充当金算出表Sh4は、課税所得計算表Sh2にリンクする「課税所得の計算表(抄)」と、税額計算表Sh3にリンクする「各税目算出表(抄)」との2つを含んでいる。一例として、納税充当金算出表Sh4において、「課税所得の計算表(抄)」及び「各税目算出表(抄)」は、上側が「課税所得の計算表(抄)」、下側が「各税目算出表(抄)」となるように、上下方向(縦方向)に並べて配置されている。セルC41~C54のうち、セルC41~C47は「課税所得の計算表(抄)」に含まれ、セルC48~C54は「各税目算出表(抄)」に含まれる。
【0041】
また、納税充当金算出表Sh4は、税額計算表Sh3と同様に、1つのシート上に、表計算ソフトで作成される複数の表を含んでいる。複数の表は、第1表T1と第2表T2とを含んでいる。本実施形態では、納税充当金算出表Sh4に含まれる複数の表は、第1表T1及び第2表T2の2つのみである。図5では一例として、これら第1表T1及び第2表T2は、左側が第1表T1、右側が第2表T2となるように、左右方向(横方向)に並べて配置されている。第1表T1及び第2表T2は、同一の項目(セル)を有しており、図5の例では値も含めて完全同一である。
【0042】
図5の例において、セルC41~C54の中にユーザが値を直接的に入力するセルはなく、セルC41~C54には課税所得計算表Sh2又は他のシート等で計算された結果が自動的に引用(挿入)される。納税充当金算出表Sh4においては、ユーザが値を直接的に入力する項目はなく、全て自動計算により値が自動挿入される。具体的には、「課税所得の計算表(抄)」中のセルC41,C44,C45等については、課税所得計算表Sh2の値が引用(転送)される。セルC43には、セルC41の値からセルC42の値を減算した値が自動挿入され、セルC42には、セルC54の値が自動挿入される。また、詳しくは後述するが、「課税所得の計算表(抄)」中のセルC46には、相手方の表(第1表T1にとっては第2表T2、第2表T2にとっては第1表T1)の「各税目算出表(抄)」中のセルC53の値が複製(引用)される。このときの第1表T1及び第2表T2の役割(機能)については「(4)処理手順」の欄で詳しく説明する。その他、課税所得計算表Sh2から引用可能な値は課税所得計算表Sh2から引用(転送)され、残りは全て自動計算される。
【0043】
以上説明した各シートの構成は、一例に過ぎず、各セルに挿入されている数値が一例であることはいうまでもなく、セルのレイアウト及び項目名等についても一例に過ぎず、適宜変更可能である。
【0044】
(4)処理手順
次に、本実施形態に係る税額算出プログラム1を用いて税額を算出する処理手順について、図6図8を参照して説明する。
【0045】
ここではまず、本実施形態に係る税額算出プログラム1にて損金不算入額に当たる特定税額を算出する過程について説明する。本実施形態では「法人4税」が「特定税額」の一例であるため、「法人4税」のうち既納分である中間納付額(法人4税中間)を除いた確定納付額(法人4税確定)を算出することによって、「法人税等」のうち損金不算入額に当たる「特定税額」(法人4税)が求められる。そこで、ここでは「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)を算出する過程について、図6の簡易表Sh40を用いて説明する。図6の簡易表Sh40は、納税充当金算出表Sh4のうちの特定項目のみを抽出した表であって、「課税所得の計算表(抄)」中のセルC41~C47、「各税目算出表(抄)」中のセルC48,C49,C51~C54に相当するセルを含む。ただし、「法人税及び地方法人税」の中間納付額のセルC44、及び「法人住民税」の中間納付額のセルC45については、その合計額を「4税中間納付計」として1つのセルに含んでいる。また、簡易表Sh40は、第1表T1と第2表T2とを含んでおり、少なくともセルC43~C49、C51~C54については、第1表T1及び第2表T2の両方に含まれている。
【0046】
ここで、簡易表Sh40においても、納税充当金算出表Sh4と同様に、複数の表(第1表T1及び第2表T2)の間で値が複製(引用)される。具体的には、「課税所得の計算表(抄)」中のセルC46には、相手方の表の「各税目算出表(抄)」中のセルC53の値が複製(引用)される。つまり、簡易表Sh40において、第1表T1における「納税充当金」のセルC46には、第2表T2の「法人4税」の確定納付額のセルC53の値が複製(引用)され、反対に、第2表T2における「納税充当金」のセルC46には、第1表T1の「法人4税」の確定納付額のセルC53の値が複製(引用)される。
【0047】
本実施形態では「法人4税」が「特定税額」の一例であるので、図6の簡易表Sh40においては、第1ステップ(図8のS3)にて、「税引前利益」のセルC41の値から、第1値V1としての「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の値が算出されることになる。また、第2ステップ(図8のS4~S9)では、セルC53に挿入された値(第1値V1)を「納税充当金」のセルC46に引用し、この「納税充当金」を用いて、「課税所得」のセルC47、更には「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の値を再計算し、セルC53の値(第1値V1)を更新することになる。さらに、第3ステップ(図8のS10~S12)では、「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の再計算を1回以上実施してセルC53の値(第1値V1)を収束させ、収束後のセルC53の値(第1値V1)を用いて「法人税等」(確定税額)のセルC42,C54の値を算出する。
【0048】
さらに、本実施形態に係る税額算出プログラム1は、税引前利益と確定税額とを用いて当期純利益を算出する第4ステップを、1以上のプロセッサ11に実行させる。これにより、「確定税額」だけでなく、「当期純利益」まで自動計算により算出することができ、ユーザの手間をより軽減できる。図6の簡易表Sh40においては、「税引前利益」のセルC41の値から、第3ステップで算出された「法人税等」のセルC42の値(確定税額)を減算することにより、「当期純利益」(決算利益)のセルC43の値を算出する。結果的に、決算総括票Sh1における、「税引前利益」のセルC11、「法人税等」(確定税額)のセルC12、「当期純利益」のセルC13、「課税所得」のセルC14及び「納税充当金」のセルC15の値が全て確定する。
【0049】
ところで、このような簡易表Sh40上の「課税所得の計算表(抄)」においては、セルC43~C47、更に「その他の加減算」の合計額が「課税所得」のセルC47に挿入される。一方、「各税目算出表(抄)」においては、「課税所得」に基づいて税額計算表Sh3にセルC48,C49,C51,C52等の値が自動計算され、更にセルC48,C49,C51,C52の合計額が「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53に挿入される。さらにまた、「課税所得の計算表(抄)」中の「納税充当金」のセルC46の値は、「各税目算出表(抄)」中の「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の値が引用される。よって、1つの表(第1表T1又は第2表T2のいずれか)にて、簡易表Sh40の計算を実行するとなれば、循環参照が生じ、表計算ソフトの計算上はエラーとなる。
【0050】
そこで、本実施形態に係る税額算出プログラム1では、第1値V1を用いて特定税額を再計算し、当該特定税額にて第1値V1を更新する第2ステップにおいて、表計算ソフトで作成される複数の表を用いることで、上記循環参照を回避する。つまり、第2ステップでは、表計算ソフトで作成される複数の表を用いて、複数の表の間で第1値V1の複製を行う。要するに、表計算ソフトで作成される、第1表T1及び第2表T2を含む複数(ここでは2つ)の表を用いることによって、上記循環参照を回避する。これにより、循環参照によるエラーをうまく回避しつつ、表計算ソフトを利用した簡単な構成で税額算出プログラム1を実現可能となる。なお、第1表T1及び第2表T2が横方向に並べて配置されることは必須ではなく、縦方向に並べて配置されてもよい。また、例えば、第1表T1及び第2表T2に加えて第3表を設定する等、3つ以上の表を用いて循環参照を回避してもよい。
【0051】
すなわち、1つの表(第1表T1又は第2表T2のいずれか)にて計算表が構成されている場合には、簿記会計でいう「単式簿記」のイメージであるのに対し、本実施形態のように複数の表(第1表T1及び第2表T2)を用いることで「複式簿記」のイメージでの計算となる。つまり、「複式簿記」の純利益が複数算出されるのと同じ構図で、「法人税等」(確定税額)のうち、「納税充当金」及び「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)が算出可能となる。
【0052】
より具体的には、本実施形態では、複数の表は、第1表T1と第2表T2とを含む。そして、第1ステップでは、第1表T1において「税引前利益」から第1値V1を算出する。第2ステップは、第1方向処理と、第2方向処理と、を有する。第1方向処理は、第1表T1の第1値V1を第2表T2の納税充当金に複製し、第2表T2において当該納税充当金を用いて特定税額を再計算し、当該特定税額にて第1値V1を更新する。第2方向処理では、第2表T2の第1値V1を第1表T1の納税充当金に複製し、第1表T1において当該納税充当金を用いて特定税額を再計算し、当該特定税額にて第1値V1を更新する。これにより、2つの表(第1表T1及び第2表T2)を用意するだけで、循環参照によるエラーをうまく回避しつつ、表計算ソフトを利用した簡単な構成で税額算出プログラム1を実現可能となる。
【0053】
そして、本実施形態では、同一の表において、セルC53とセルC46とで値が合致することをもって、第1値V1が収束したと判断し、特定税額の再計算(第1値V1の更新)を終了する。すなわち、第3ステップでは、第1表T1又は第2表T2のいずれかにおいて、納税充当金と更新後の第1値V1とが合致するまで、第1方向処理及び第2方向処理を相互に実施することで第1値V1を収束させる。これにより、第1値V1の収束を条件化することができ、プロセッサ11は、第1値V1の収束を判断しやすくなる。
【0054】
上述した一連の計算過程を、簡易表Sh40に当てはめると、図7に示すようになる。図7における簡易表Sh40は、基本的には、図6と同様であるが、セルのレイアウト等が若干異なる。例えば、図7の簡易表Sh40では、「法人税」の確定納付額のセルC48、及び「地方法人税」の確定納付額のセルC49については、その合計額を「法人税2」の確定納付額として1つのセルに含んでいる。また、図7では、簡易的に手順1~N(Nは自然数)で第1値V1が収束するように記載しているが、実際には、適当な回数の計算が繰り返される。
【0055】
すなわち、図7の「手順1」に示すように、まず第1ステップとして、第1表T1において「税引前利益」から第1値V1を算出する。一例として、「税引前利益」のセルC41に「20,000,000」、「法人税及び地方法人税」及び「法人住民税」の中間納付額の合計額のセルC44,C45に「1,954,100」、「その他加減算」のセルに「2,513」をそれぞれ入力する。このとき、「納税充当金」のセルC46の値はデフォルト値の「0」であって、「課税所得」のセルC47の値は「16,730,813」となる。この「課税所得」(16,730,813)に基づいて、簡易表Sh40上で、第1値V1としての「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の値が自動計算されて「1,947,300」となり、更に「法人税等」のセルC54の値が自動計算されて「5,225,800」となる。そして、「法人税等」のセルC54及び「税引前利益」のセルC41の値から、簡易表Sh40上で、「当期純利益」のセルC43の値が自動計算されて「14,774,200」となる。「手順1」では、第2表T2は第1表T1のミラー(複製)であって、値も含めて完全同一である。
【0056】
次に、「手順2」に示すように、第2表T2の第1値V1としてのセルC53の値(1,947,300)が、第1表T1における「納税充当金」のセルC46に複製される。そして、第1表T1において、複製された「納税充当金」のセルC46の値(1,947,300)を用いて、簡易表Sh40上で、「課税所得」のセルC47の値が自動計算され「18,193,213」となる。この「課税所得」(18,193,213)に基づいて、簡易表Sh40上で、第1値V1としての「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の値が自動計算されて「2,305,700」となり、更に「法人税等」のセルC54の値が自動計算されて「5,710,700」となる。そして、「法人税等」のセルC54及び「税引前利益」のセルC41の値から、簡易表Sh40上で、「当期純利益」のセルC43の値が自動計算されて「14,289,300」となる。このように、第1表T1においては、特定税額が再計算され、当該特定税額にて第1値V1であるセルC53の値が更新される。この処理が、第2ステップにおける第2方向処理に相当する。
【0057】
次に、第1表T1の第1値V1としてのセルC53の値(2,305,700)が、第2表T2における「納税充当金」のセルC46に複製される。そして、簡易表Sh40上では、第2表T2において、複製された「納税充当金」のセルC46の値(2,305,700)を用いて、「課税所得」のセルC47の値が自動計算される。この「課税所得」に基づいて、簡易表Sh40上で、第1値V1としての「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の値が自動計算され、更に「法人税等」のセルC54の値が自動計算される。そして、「法人税等」のセルC54及び「税引前利益」のセルC41の値から、簡易表Sh40上で、「当期純利益」のセルC43の値が自動計算される。このように、第2表T2においては、特定税額が再計算され、当該特定税額にて第1値V1であるセルC53の値が更新される。この処理が、第2ステップにおける第1方向処理に相当する。
【0058】
上記第1方向処理及び第2方向処理を適宜繰り返すことにより、最終的に、「手順N」に示すように、第1表T1における「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の値と、「納税充当金」のセルC46の値とが合致する。図7の例では、セルC53及びセルC46の値はいずれも「2,430,500」で一致している。これにより、セルC53の値(第1値V1)は収束することとなって、簡易表Sh40上での特定税額の再計算(第1値V1の更新)が終了する。そして、収束後のセルC53の値(第1値V1)により、簡易表Sh40上で、「法人税等」(確定税額)のセルC42,C54の値が自動計算されて「5,879,400」で確定する。この処理が第3ステップに相当する。
【0059】
さらに、「手順N」に示すように、最初に入力された税引前利益(セルC41)の値(20,000,000)と、確定した確定税額(セルC42)の値(5,879,400)とを用いることで、簡易表Sh40上で、「当期純利益」(決算利益)のセルC43の値が自動計算されて「14,120,600」となる。具体的には、セルC41の値(20,000,000)からセルC42の値(5,879,400)が減算されることで、セルC43の値(14,120,600)が確定する。この処理が第4ステップに相当する。
【0060】
以上説明したように、ユーザは、「税引前利益」(セルC41)の値、「法人税及び地方法人税」及び「法人住民税」の中間納付額(セルC44,C45)の値、及び「その他加減算」の値を入力するだけで、簡易表Sh40上で自動計算され、「納税充当金」(セルC46)の値、「法人税等」(セルC42)の値、及び「当期純利益」(セルC43)の値等が全て確定する。要するに、「税引前利益」の値を基に、「納税充当金」が自動計算され、更に「確定税額」及び「当期純利益」(決算利益)まで自動計算されることになる。
【0061】
図8は、税額算出プログラム1に従って1以上のプロセッサ11にて実行される処理の流れをフローチャートとして示す。つまり、図8に示す各処理S1,S2…は、1以上のプロセッサ11が実行する処理に相当する。ただし、図8に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理の順番が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0062】
すなわち、税額算出プログラム1によれば、プロセッサ11は、まず初期設定を実行する(S1)。処理S1では、プロセッサ11は、初期設定を実行する。このとき、ユーザは、決算総括票Sh1の領域R11に地方税課税分割の計算基礎となる値を手入力し、領域R13の法人税等内訳各税目別の算出計算表のうちの「中間納付」欄に中間納付額を入力する。さらに、ユーザは、地方税税率及び均等割等を決算総括票Sh1にて確認する。これにより、初期設定が完了する。
【0063】
次の処理S2では、プロセッサ11は、「税引前利益」が入力されたか否かを判断する。ここで、決算総括票Sh1のセルC11への「税引前利益」の入力は、ユーザが手入力にて行う。「税引前利益」の入力のタイミングは任意であって、セルC11に値が手入力されるまでは、セルC11には「税引前利益」のデフォルト値としての「0」が入力されている。よって、セルC11の値がデフォルト値(0)から変化することによって、プロセッサ11は、「税引前利益」が入力された(S2:Yes)と判断し、処理S3へ移行する。
【0064】
処理S3では、プロセッサ11は、納税充当金算出表Sh4の第1表T1にて、「税引前利益」から損金不算入額に当たる「特定税額」を第1値V1として算出する。つまり、第1表T1において、第1値V1としての「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)のセルC53の値が自動計算される。この処理S3が第1ステップに相当する。
【0065】
次の処理S4では、プロセッサ11は、第1表T1の第1値V1を第2表T2の「納税充当金」に複製する。つまり、第1表T1のセルC53の値が、第2表T2の「納税充当金」のセルC46に引用(複製)される。処理S5では、プロセッサ11は、第2表T2において、複製された第1値V1を用いて「特定税額」を再計算する。つまり、第2表T2のセルC46の値(第1値V1)を用いて「特定税額」が自動計算される。処理S6では、プロセッサ11は、第2表T2において、再計算された「特定税額」にて第1値V1を更新する。つまり、再計算された「特定税額」が第2表T2のセルC53に自動挿入される。これら処理S4~S6が第2ステップの第1方向処理に相当する。
【0066】
一方、処理S7では、プロセッサ11は、第2表T2の第1値V1を第1表T1の「納税充当金」に複製する。つまり、第2表T2のセルC53の値が、第1表T1の「納税充当金」のセルC46に引用(複製)される。処理S8では、プロセッサ11は、第1表T1において、複製された第1値V1を用いて「特定税額」を再計算する。つまり、第1表T1のセルC46の値(第1値V1)を用いて「特定税額」が自動計算される。処理S9では、プロセッサ11は、第1表T1において、再計算された「特定税額」にて第1値V1を更新する。つまり、再計算された「特定税額」が第1表T1のセルC53に自動挿入される。これら処理S7~S9が第2ステップの第2方向処理に相当する。
【0067】
プロセッサ11は、上述の第1方向処理(S4~S6)及び第2方向処理(S7~S9)を、セルC53の値(第1値V1)が収束するまで交互に繰り返し実行する。つまり、処理S6の後の処理S10では、プロセッサ11は、納税充当金と特定税額とが合致するか否かを判断する。このとき、第2表T2におけるセルC46の値とセルC53の値とが一致していれば(S10:Yes)、プロセッサ11は、納税充当金と特定税額とが合致すると判断し、処理S12に移行する。一方、第2表T2におけるセルC46の値とセルC53の値とが一致していなければ(S10:No)、プロセッサ11は、処理S7に移行する。同様に、処理S9の後の処理S11では、プロセッサ11は、納税充当金と特定税額とが合致するか否かを判断する。このとき、第1表T1におけるセルC46の値とセルC53の値とが一致していれば(S11:Yes)、プロセッサ11は、納税充当金と特定税額とが合致すると判断し、処理S12に移行する。一方、第1表T1におけるセルC46の値とセルC53の値とが一致していなければ(S11:No)、プロセッサ11は、処理S4に移行する。
【0068】
処理S12では、プロセッサ11は、収束後の第1値V1を用いて「確定税額」を算出する。つまり、第1表T1又は第2表T2におけるセルC53の値(第1値V1)に基づいて、第1表T1又は第2表T2のセルC42,C54の値が自動計算される。処理S10~S12が第3ステップに相当する。
【0069】
次の処理S13では、プロセッサ11は、「税引前利益」及び処理S12で算出した「確定税額」に基づいて、「当期純利益」を算出する。つまり、第1表T1又は第2表T2におおいて、セルC41及びセルC42の値に基づいて、セルC43の値が自動計算される。処理S13は第4ステップに相当する。
【0070】
(5)比較例
以下、本実施形態に係る税額算出プログラム1を用いずに「確定税額」を算出(計算)する手順を比較例として、図9を参照して簡単に説明する。図9は、実務上、人が手計算で「法人税等」を求める手順を模式的に示すのであって、実際に、図9に示すような表(計算表)が用いられる訳ではない。
【0071】
法人税等には、1事業所当たり、「法人4税」に加えて、事業税2税(法人事業税及び事業特別税)の計6税目がある。実際には、図9に示すような各税目の額を算出するために、各手順において、税目ごとに申告書ページを開いて手計算した結果をメモし、最終的に合計額を手計算で求める必要がある。そして、メモした税額の差額を考慮して、手順ごとに「当期純利益」の増減差額を計算して、新たに「当期純利益」を計算する必要がある。その上で、上記新たに計算した「当期純利益」が、「税引前利益」から「確定税額」を減算した額と一致するかどうかを確認する必要がある。このような作業を、手順ごとに行うことで、ようやく「確定税額」が算出される。図9では、手順1~6で「確定税額」が算出できる例を示しているが、必要な手順数は事業所数等でも異なり、通常は、10回以下の手順で算出できればましな方であって、10回を超える計算を強いられることもままある。
【0072】
(6)活用例
本実施形態に係る税額算出プログラム1と申告ソフト(ソフトウェア)及び会計ソフト(ソフトウェア)との関係性として、例えば以下の5つの態様が考えられる。
【0073】
1つ目の態様として、「申告ソフト無しの場合」を考える。この場合、税額算出プログラム1では、「税引前利益」の算出後、決算総括票Sh1を用いて、初期設定、課税所得計算表Sh2の入力となる。具体的には、ユーザが「税引前利益」の入力を行うと、確定税額、当期純利益、納税充当金及び課税所得等が算出され、決算総括票Sh1に引用される。その後、ユーザは完成した決算総括票Sh1を印刷する。そして、ユーザは、申告書を作成し、申告書の確定税額を確認して、決算を終了する。
【0074】
2つ目の態様として、「申告ソフトのみの場合」を考える。この場合、課税所得計算表Sh2及び税額計算表Sh3のライン(計算表)を1つ追加して「納税充当金」と「法人4税」の確定納付額とをリンクさせる。決算総括票Sh1及び課税所得計算表Sh2を申告ソフトに組み込み画面表示させる。この場合、会計ソフト及び申告ソフトのいずれかの入力で処理が進行する。会計ソフト及び申告ソフトの両方にデータの送受口(ポート)を設定し、会計ソフトに組み込んで申告ソフトへデータ送信するか、又は、申告ソフトに組み込み会計ソフトにデータ送信する。この態様では、ユーザは、まず決算総括表の「税引前利益」を入力する。これにより、即座に申告ソフトが稼働して、決算総括表が完成する。以降の計算補完入力は、各項目を入力する度に、決算総括表の各値が自動的に訂正される。したがって、ユーザは、各別表、中間納付及び地方税事項のいずれの項目から入力しても差し支えない。課税所得計算表Sh2の利益と納税充当金とが自動訂正されて進行する。
【0075】
3つ目の態様として、「申告ソフト、会計ソフト一体の場合」を考える。この場合、課税所得計算表Sh2及び税額計算表Sh3のライン(計算表)を1つ追加して、「納税充当金」と「法人4税」の確定納付額とをリンクさせる。決算総括票Sh1及び課税所得計算表Sh2を会計ソフト及び申告ソフトの「共通ソフト」として双方に組み込み画面表示させる。会計ソフト及び申告ソフトの両方に組み込み、相互にデータを共有する。この場合、会計ソフト及び申告ソフトのいずれかの入力で処理が進行する。そのため、2つ目の態様と同様に、データの送受口を設定し、申告ソフト及び会計ソフト間でデータを送受信して共有する。
【0076】
4つ目の態様として、「税額算出プログラム1を申告ソフト及び会計ソフトの共通ソフトとして独立ソフトにする場合」を考える。この場合、内容的には2つ目の態様と同様で、申告ソフト及び会計ソフト間でデータを送受信して共有する。
【0077】
5つ目の態様として、「会計ソフトのみの場合」を考える。この場合、会計ソフトに税額算出プログラム1を組み込む。決算総括票Sh1及び課税所得計算表Sh2を会計ソフトに組み込み画面表示させる。
【0078】
また、本実施形態に係る税額算出プログラム1は、決算に限らず、期中(事業年度中)の任意のタイミングでの税額の試算に利用可能である。法人税の申告及び納付は同時であるので、決算に先駆けて早期に税額を試算して納税の手当てにつなげることは有用である。ここで、「税引前利益」は、決算の終了した後申告前までチェックにより何度でも変わり得る。よって、本実施形態に係る税額算出プログラム1のように、「税引前利益」から自動計算により即座に「確定税額」を算出できることは、非常に大きな利点となる。
【0079】
(7)変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0080】
本実施形態における税額算出プログラム1は、コンピュータシステムにアプリケーションソフトとしてインストールされる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ11及び1以上のメモリ12を主構成とする。コンピュータシステムの1以上のメモリ12に記録された税額算出プログラム1を1以上のプロセッサ11が実行することによって、本開示における税額算出プログラム1が機能する。コンピュータシステムの1以上のプロセッサ11は、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI、又はULSIと呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ11及び1以上のメモリ12を有するマイクロコントローラを含む。マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0081】
また、情報処理装置10の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは情報処理装置10に必須の構成ではなく、情報処理装置10の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、情報処理装置10のうちの少なくとも一部の機能は、別の筐体に設けられていてもよい。さらに、情報処理装置10の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)、エッジ(エッジコンピューティング)、又はその組み合わせによって実現されてもよい。反対に、実施形態1において、複数の装置に分散されている少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0082】
(実施形態2)
本実施形態に係る税額算出プログラム1は、課税所得の算出に用いられる点で、実施形態1に係る税額算出プログラム1と相違する。以下、実施形態1と共通の構成については、同様の符号を付して適宜説明を省略する。
【0083】
すなわち、1つのシート上に表計算ソフトで作成される複数の表を含み、かつ、求める科目を相互に受け入れて自動計算する税額算出プログラム1を用いれば、「課税所得」の算出が可能である。そして、「課税所得」さえ求まれば、「確定税額」、「当期純利益」及び「納税充当金」も「課税所得」から容易に算出でき、自然な計算の流れとなる。
【0084】
その原理を説明すると、「課税所得」は、上述したように、「当期純利益」に対して、損金不算入額である「法人4税」及び損金不算入額である「他の加減算」を加算する(積み上げる)ことにより算出される。また、「当期純利益」と「法人税等」との合計額が「税引前利益」である。これらを勘案すると、「課税所得」は、「税引前利益」を基準に、「法人税等」のうち損金算入額である「事業税」(法人事業税及び事業特別税を含む)を減算し、かつ損金不算入額である「他の加減算」を加算することでも算出可能である。つまり、「当期純利益」は、「税引前利益」から「法人税等」を減算した値と置換されるが、「法人税等」のうちの「法人4税」は損金不算入額であるので、「課税所得」を算出するには、「税引前利益」から「法人税等」のうち損金算入額である「事業税」を減算する。つまり、図10に示すように、「課税所得」は、「当期純利益」(決算利益)を基準に算出しても、「税引前利益」を基準に算出しても、同額(図10の例では「18,507,713」)となる。
【0085】
ただし、「税引前利益」から「課税所得」を普通に計算しようとすると、「事業税」が確定しないままに「課税所得」を計算することになり、正確な「事業税」及び「課税所得」を自動計算により算出することは困難である。
【0086】
そこで、本実施形態に係る税額算出プログラム1では、実施形態1の応用として、「課税所得」の計算に含まれる「事業税」の計算を自動化することで、「課税所得」の計算を可能とする。すなわち、「税引前利益」から「課税所得」を計算する過程で用いられる「事業税」は、税額計算表Sh3で算出される「事業税」と対照勘定になるので、実施形態1における「納税充当金」と同じ形の計算で求めることが可能である。具体的には、本実施形態に係る税額算出プログラム1では、実施形態1における「課税所得の計算表(抄)」中の「納税充当金」の代わりに「課税所得の計算表(抄)」中の「事業税」を設定し、実施形態1における「各税目算出表(抄)」中の「法人4税」の確定納付額(法人4税確定)の代わりに「各税目算出表(抄)」中の「事業税」(中間納付額及び確定納付額の合計)を設定する。
【0087】
要するに、本実施形態では、実施形態1で説明した納税充当金算出表Sh4と同様に、「課税所得の計算表(抄)」と「各税目算出表(抄)」とを含む計算表を用いて、「税引前利益」から「課税所得」を計算可能とする。さらに、この計算表は、納税充当金算出表Sh4と同様に、1つのシート上に、表計算ソフトで作成される複数の表(第1表T1及び第2表T2)を含んでいる。
【0088】
ここでは「税引前利益」から「課税所得」を算出する過程について、図11の簡易表Sh6を用いて説明する。図11の簡易表Sh6は、「課税所得」の計算に用いる特定項目のみを抽出した表であって、「税引前利益」のセルC61、「事業税」のセルC62、「他の加減算」のセルC63、「課税所得」のセルC64及び「課税標準」のセルC65を含む。さらに、簡易表Sh6は、「法人4税」のセルC66、「事業税合計」のセルC67、「法人税等」のセルC68及び「当期純利益」のセルC69を含む。簡易表Sh6において、セルC61~C69のうち、セルC61~C65は「課税所得の計算表(抄)」に含まれ、セルC66~C69は「各税目算出表(抄)」に含まれる。「各税目算出表(抄)」中のセルC66~C68は、いずれも中間納付額及び確定納付額の合計である。また、簡易表Sh6は、第1表T1と第2表T2とを含んでおり、全てのセルC61~C69が、第1表T1及び第2表T2の両方に含まれている。
【0089】
簡易表Sh6においては、複数の表(第1表T1及び第2表T2)の間で値が複製(引用)される。具体的には、「課税所得の計算表(抄)」中のセルC62には、相手方の表の「各税目算出表(抄)」中のセルC67の値が複製(引用)される。つまり、簡易表Sh6において、第1表T1における「事業税」のセルC62には、第2表T2の「事業税合計」のセルC67の値が複製(引用)され、反対に、第2表T2における「事業税」のセルC62には、第1表T1の「事業税合計」のセルC67の値が複製(引用)される。
【0090】
「税引前利益」からの「課税所得」の計算過程を、簡易表Sh6に当てはめると、図12に示すようになる。図12における簡易表Sh6は、基本的には、図11と同様であるが、セルのレイアウト等が若干異なる。例えば、図12の簡易表Sh6では、「課税所得の計算表(抄)」中のセルC61~C65と、「各税目算出表(抄)」中のセルC66~C68とは、左右方向(横方向)に並べて配置される。また、図12では、簡易的に手順1~6で「課税所得」が確定するように記載しているが、実際には、適当な回数の計算が繰り返される。
【0091】
すなわち、図12の「手順1」に示すように、まず第1表T1において「税引前利益」から「事業税合計」を算出する。一例として、「税引前利益」のセルC61に「20,000,000」、「その他加減算」のセルC63に「-2,513」をそれぞれ入力する。このとき、「課税所得の計算表(抄)」中の「事業税」のセルC62の値はデフォルト値の「0」であって、「課税所得」のセルC64の値は「20,002,513」となる。この「課税所得」(20,002,513)に基づいて、「各税目算出表(抄)」中の「事業税合計」のセルC67の値が自動計算されて「1,638,300」となり、更に「当期純利益」のセルC69の値が自動計算されて「13,482,700」となる。「手順1」では、第2表T2は第1表T1のミラー(複製)であって、値も含めて完全同一である。
【0092】
次に、「手順2」に示すように、第2表T2のセルC67の値(1,638,300)が、第1表T1におけるセルC62に複製される。そして、第1表T1において、複製された「課税所得の計算表(抄)」中の「事業税」のセルC62の値(1,638,300)を用いて、簡易表Sh6上で、「課税所得」のセルC64の値が自動計算され「18,364,213」となる。この「課税所得」(18,364,213)に基づいて、「各税目算出表(抄)」中の「事業税合計」のセルC67の値が自動計算されて「1,481,100」となり、更に「当期純利益」のセルC69の値が自動計算されて「14,093,900」となる。このように、第1表T1においては、「課税所得」が再計算され、当該「課税所得」にて「事業税合計」の値が更新される。
【0093】
次に、「手順3」に示すように、第1表T1のセルC67の値(1,481,100)が、第2表T2におけるセルC62に複製される。そして、第2表T2において、複製された「課税所得の計算表(抄)」中の「事業税」のセルC62の値(1,481,100)を用いて、簡易表Sh6上で、「課税所得」のセルC64の値が自動計算され「18,521,413」となる。この「課税所得」(18,521,413)に基づいて、「各税目算出表(抄)」中の「事業税合計」のセルC67の値が自動計算されて「1,496,200」となり、更に「当期純利益」のセルC69の値が自動計算されて「14,115,500」となる。このように、第2表T2においては、「課税所得」が再計算され、当該「課税所得」にて「事業税合計」の値が更新される。
【0094】
以降は、上記「手順2」、「手順3」と同様の処理を、「手順4」、「手順5」のように適宜繰り返すことにより、最終的に、「手順6」に示すように、第1表T1における
「各税目算出表(抄)」中の「事業税合計」のセルC67の値と、「課税所得の計算表(抄)」中の「事業税」のセルC62の値とが合致する。図12の例では、セルC67及びセルC62の値はいずれも「1,497,800」で一致している。これにより、セルC67の値は収束することとなって、簡易表Sh6上での事業税の再計算(更新)が終了する。そして、収束後のセルC62の値により、簡易表Sh6上で、「課税所得」のセルC64の値が自動計算されて「18,507,713」で確定し、「法人税等」のセルC68の値が自動計算されて「5,879,400」で確定し、「当期純利益」のセルC69の値が自動計算されて「14,120,600」で確定する。
【0095】
以上説明したように、ユーザは、「税引前利益」(セルC61)の値及び「その他加減算」(セルC63)の値を入力するだけで、簡易表Sh6上で自動計算され、「事業税」(セルC62)の値、「課税所得」(セルC64)の値、「確定税額」(セルC68)の値、及び「当期純利益」(セルC69)の値等が全て確定する。要するに、「税引前利益」の値を基に、「課税所得」が自動計算され、更に「確定税額」及び「当期純利益」(決算利益)まで自動計算されることになる。
【0096】
本実施形態においても、税額算出プログラム1は、実施形態1と同様に、第1ステップと第2ステップと第3ステップとを1以上のプロセッサ11に実行させているといえる。すなわち、本実施形態では、「税引前利益」から「課税所得」を計算するに際して、「事業税」を算出している。「事業税」自体は損金算入額であるが、「事業税」の算出に伴って、損金不算入額に当たる「法人4税」(特定税額)も算出されている。さらに、最終的に、収束後の第1値V1を用いて「法人税等」(確定税額)が算出されている。したがって、本実施形態に係る税額算出プログラム1は、見かけ上は実施形態1とは異なるものの、あくまで本発明を具体化した一例である。
【符号の説明】
【0097】
1 税額算出プログラム
図1
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図12