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特許7126079プレス部品の製造方法、プレス成形用の金属板、及び高張力鋼板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】プレス部品の製造方法、プレス成形用の金属板、及び高張力鋼板
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20220819BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D22/20 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021558581
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2021004801
(87)【国際公開番号】W WO2021181982
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020039600
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225832(WO,A1)
【文献】特許第6631759(JP,B1)
【文献】特許第6191846(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/115282(WO,A1)
【文献】特開2020-124726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 22/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と上記天板部の幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部とを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部が凸又は凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状に、金属板を成形するプレス部品の製造方法であって、
上記金属板に対し、上記第1曲げ部となる位置に上記長手方向に間隔を開けて部分的に形成され、それぞれが上記長手方向に沿って延在する複数のビードからなる、第1のビードを形成する工程を有する第1予備成形工程と、
上記第1予備成形工程後の上記金属板を上記プレス部品形状に成形する第1部品成形工程と、
を備えることを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項2】
上記プレス部品形状は、上記側壁部に第2曲げ部を介して連続するフランジ部を有する断面であり、
上記第1予備成形工程は、上記第1のビードを形成する工程と、上記金属板に対し上記第2曲げ部となる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第2のビードを形成する工程と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載したプレス部品の製造方法。
【請求項3】
上記第1のビード及び上記第2のビードはそれぞれ、少なくとも上記湾曲部となる位置に部分的に延在し、
上記第1のビードが形成される上記湾曲部となる位置と、上記第2のビードが形成される上記湾曲部となる位置とが異なる、
ことを特徴とする請求項2に記載したプレス部品の製造方法。
【請求項4】
上記第1のビードは、上記第1曲げ部の凸方向と同方向に凸となる形状であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
【請求項5】
上記第1予備成形工程は、更に、上記金属板に上記長手方向に沿って上記湾曲部の湾曲に倣った湾曲を付与する工程を有することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
【請求項6】
上記第1のビードのビード高さは、上記金属板の板厚の2倍以上であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
【請求項7】
天板部と上記天板部の幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部と上記側壁部に第2曲げ部を介して連続するフランジ部とを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部が凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状に、金属板を成形するプレス部品の製造方法であって、
上記金属板に対し、上記第2曲げ部となる位置に上記長手方向に間隔を開けて部分的に形成され、それぞれが上記長手方向に沿って延在する複数のビードからなる、第2のビードを形成する工程を有する第2予備成形工程と、
上記第2予備成形工程後の上記金属板を上記プレス部品形状に成形する第2部品成形工程と、
を備えることを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項8】
上記第2予備成形工程は、上記金属板に上記長手方向に沿って上記湾曲部の湾曲に倣った湾曲を付与する工程と、上記第2のビードを形成する工程とを有することを特徴とする請求項7に記載したプレス部品の製造方法。
【請求項9】
上記第2のビードは、上記第2曲げ部の凹方向と同方向に凹となる形状であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載したプレス部品の製造方法。
【請求項10】
上記第2のビードのビード高さは、上記金属板の板厚の2倍以上であることを特徴とする請求項7~請求項9のいずれか1項に記載したプレス部品の製造方法。
【請求項11】
天板部と上記天板部の幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部とを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部が凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状にプレス成形するための金属板であって、
上記第1曲げ部となる位置に上記長手方向に間隔を開けて部分的に形成され、それぞれが上記長手方向に沿って延在する複数のビードからなる、第1のビードを有することを特徴とするプレス成形用の金属板。
【請求項12】
上記側壁部に第2曲げ部を介して連続するフランジ部を有する断面の上記プレス部品形状にプレス成形する金属板であって、
上記第1のビードと共に、上記第2曲げ部となる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第2のビードを有することを特徴とする請求項11に記載したプレス成形用の金属板。
【請求項13】
上記長手方向に沿って上記湾曲部の湾曲に倣った湾曲を有することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載したプレス成形用の金属板。
【請求項14】
天板部と上記天板部の幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部とその側壁部に第2曲げ部を介して連続するフランジ部とを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部が凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状にプレス成形するための金属板であって、
上記第2曲げ部となる位置に上記長手方向に間隔を開けて部分的に形成され、それぞれが上記長手方向に沿って延在する複数のビードからなる、第2のビードを有することを特徴とするプレス成形用の金属板。
【請求項15】
上記長手方向に沿って上記湾曲部の湾曲に倣った湾曲を有することを特徴とする請求項14に記載したプレス成形用の金属板。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載のプレス部品の製造方法のための、引張強度が590MPa以上の高張力鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも天板部と天板部の幅方向の少なくとも一方に連続する側壁部とを有するコ字状断面、ハット形断面、L字状断面などの断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って、側面視で天板部が当該天板部の板厚方向へ凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状のプレス部品を製造するプレス部品の製造方技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や家電をはじめ、多くのプレス部品は、平坦な金属板を様々な形状に変形させることで作られる。プレス部品を大量生産する場合、プレス部品の製造に、プレス機と金型を用いて金属板を変形させるプレス成形(プレス加工)が広く用いられている。通常、加工前の金属板は平坦であるから、それを複雑な立体形状に変形させるには、金属板が、立体形状に合わせて伸び縮みをしなければならない。しかし、プレス部品の形状が複雑になるほど、立体形状に合わせた伸び縮みを金属板に与えることは困難になる。特に、プレス成形する金属板が、引張強度が590MPa以上の高張力鋼板やアルミニウム合金板等からなり、且つ当該金属板として延性やランクフォード値が劣る難成形部材を採用した場合、上記の困難が生じやすくなる。
【0003】
プレス成形において、立体形状に合わせた伸び縮みを金属板に与えられない場合、金属板に割れやしわといった成形不良が発生する。すなわち、金属板が立体形状に変形させられる際、金属板の長さが不足して周囲から不足分を補えない部位では、金属板は伸びざるを得ず、金属板が自身の延性を超えて引っ張られると割れが発生する。一方、立体形状に変形させられる際に、金属板の長さが縮まなければならない場合や、周囲から過剰に流入する部位では、しわが発生する傾向にある。
【0004】
プレス成形が困難な部品形状の例として、天板部とその天板部に連続する縦壁部とその縦壁部に連続して形成されたフランジ部とを備えた断面を有し、且つ長手方向に沿って側面視で1又は2以上の湾曲形状を有するプレス成形部品がある。
このような複雑な部品形状を平坦な金属板からプレス成形する場合、成形途中で金属板に引張変形や圧縮変形が発生するため、プレス部品に割れやしわが発生しやすい。
【0005】
ここで、上記のような複雑な形状を有する製品を金属板からプレス成形する場合、例えば、パンチ、ダイ、及びパッドからなる金型を用いた曲げ加工や、パンチ、ダイ、及びブランクホルダー(しわ押さえ)からなる金型を用いた絞り加工が行われる。曲げ加工の場合は、フランジ部にしわが発生し成形不良の原因となる。また、絞り加工の場合は、天板部にしわが発生し成形不良の原因となる。
この問題の対策として、例えば、特許文献1に記載のような湾曲部品の製造方法及び湾曲部品の製造装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5733475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、曲げ加工の場合、天板部をパッドで拘束するため、天板部での引張変形や圧縮変形を抑制できる。しかしフランジ部が拘束されないため、引張変形や圧縮変形の影響を受け、金属板にしわが発生する傾向がある。また、絞り加工の場合、フランジ部をブランクホルダーで拘束するため、フランジ部での引張変形や圧縮変形を抑制できる。しかし天板部は拘束されないため、引張変形や圧縮変形の影響を受けしわが発生する傾向になる。そのため、部品形状全体で発生する金属板の引張・圧縮変形を考慮しなければ、しわの発生を抑制することは出来ない。
【0008】
また、フォーム工法については、天板部及びフランジ部ともに拘束しないため、天板部及びフランジ部の両方に大きなしわが発生する傾向がある。このため、フォーム工法での成形は、主として用いられず、形状が複雑なプレス部品は、曲げ工法やドロー工法、及びその複合工程で成形されることが多い。
ここで、特許文献1に記載の方法では、天板部をパッドで拘束し、かつフランジ部もブランクホルダーで拘束することで、天板部とフランジ部での両方の引張・圧縮変形を抑制することができる。しかし、通常の絞り工程に加えてパッドで材料を拘束する必要があり、生産性が劣る。また、特許文献1に記載の方法は、金型のコストも高い。
【0009】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、側面視で天板部が凸又は凹に湾曲した1又は2以上の湾曲部があるプレス部品形状へのプレス成形の際に、簡易な手段で、しわ発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、天板部とその天板部の両側に形成された縦壁部とその縦壁部に連続して形成されたフランジ部とを備えたハット形断面で且つ側面視で上下に湾曲形状を有するプレス成形部品を対象に、割れやしわが発生することなく成形でき、かつ複雑な金型構成を要しないプレス方法について検討した。そして、下記の知見を得た。
(1)予成形にてダイ肩稜線部の形状剛性を上げ、次工程で曲げ工法にて製品形状に成形することでフランジ部のしわを抑制することが可能である。
(2)また、ダイ肩稜線部に加え、パンチ肩稜線部の形状剛性を上げ、次工程で曲げ工法にて製品形状に成形することで、フランジ部のしわに加え、天板部のしわも抑制することが可能である。
本発明は、上記知見に基づきなされたものである。
【0011】
すなわち、課題解決のために、本発明の一態様は、天板部と上記天板部の幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部とを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部が凸又は凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状に、金属板を成形するプレス部品の製造方法であって、上記金属板に対し、上記第1曲げ部となる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第1のビードを形成する工程を有する第1予備成形工程と、上記第1予備成形工程後の上記金属板を上記プレス部品形状に成形する第1部品成形工程と、を備えることを要旨とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、天板部と上記天板部の幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部と上記側壁部に第2曲げ部を介して連続するフランジ部とを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部が凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状に、金属板を成形するプレス部品の製造方法であって、上記金属板に対し、上記第2曲げ部となる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第2のビードを形成する第2予備成形工程と、上記第2予備成形工程後の上記金属板を上記プレス部品形状に成形する第2部品成形工程と、を備えることを要旨とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、天板部と上記天板部の幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部とを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部が凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状にプレス成形するための金属板であって、上記第1曲げ部となる位置に上記長手方向に沿って延在する第1のビードを有することを要旨とする。また、本発明の一態様は、天板部と上記天板部の幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部とその側壁部に第2曲げ部を介して連続するフランジ部とを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部が凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部を1又は2以上有するプレス部品形状にプレス成形するための金属板であって、上記第2曲げ部となる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第2のビードを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、側面視で上下に湾曲する湾曲形状を有するプレス部品形状に金属板をプレス成形する前に、天板部と側壁部とを接続する曲げ部からなる稜線部や側壁部とフランジ部とを接続する曲げ部からなる稜線部となる位置の少なくとも一方の稜線部に沿って、連続して(連続的)若しくは部分的にビードが形成される。この結果、本発明の態様によれば、プレス部品形状に成形する際における長手方向に沿った形状剛性が向上して、必ずしも金型で天板部やフランジ部を拘束してプレス成形しなくても、しわ発生を効率的に抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に基づく実施形態に係るプレス部品形状を示す図で、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)はA-A断面図である。
図2】本発明に基づく実施形態に係るプレス部品の製造方法の工程例を示す図である。
図3】予備成形工程での金型の成形面を説明する図である。
図4】部品成形工程での金型の成形面を説明する図である。
図5】従来におけるシワ発生の原因を説明する、側面からみた模式図である。
図6】予備成形工程後のビード例を示す正面からみた模式図である。
図7】本発明に基づく実施形態での、シワ抑制を説明する、側面からみた模式図である。
図8】本発明に基づく実施形態に係る変形例での処理工程を説明する図である。
図9】シワ発生の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(プレス部品形状)
本実施形態が対象とするプレス成形後のプレス部品形状は、少なくとも天板部とその左右幅方向両側の少なくとも一方に第1曲げ部を介して連続する側壁部とを有するコ字状断面、ハット形断面、L字状断面などの断面の形状となっている。更に、上記のプレス部品形状は、上記断面(板幅方向)に交差する方向である、長手方向の1箇所若しくは2箇所以上に、長手方向に沿って側面視で天板部が凸又は凹に湾曲した湾曲部を1又は2以上有する形状である。なお、ハット形断面の場合、プレス部品形状は、長手方向に沿って、側面視で、フランジ部も天板部の湾曲に倣った形状となっている。
【0017】
ここで、本実施形態は、引張強度が590MPa以上の高張力鋼板やアルミニウム合金板等、延性やランクフォード値が劣る難成形部材からなる金属板を用いた、プレス部品の製造に好適な技術である。
なお、側面視で天板部が凸若しくは凹となるように湾曲とは、長手方向に沿って天板部の板厚方向に凸若しくは凹となるように湾曲する場合である。
【0018】
本実施形態では、プレス成形後の目的のプレス部品形状1として、図1に示すような、ハット形断面で、且つ長手方向に沿って2箇所に湾曲部10を有するプレス部品形状1に成形する場合を例に挙げて説明する。すなわち、本実施形態では、図1に示すように、目的のプレス部品形状1として、ハット形断面であり且つ長手方向に沿って2箇所、つまり天板部1Aが凹に湾曲(下側に屈曲)する湾曲部10Aと天板部1Aが凸に湾曲(上側に屈曲)する湾曲部10Bがある場合を例示する。但し、本実施形態は、湾曲部10が1箇所でも良いし、湾曲部10が3箇所以上であっても良い。また湾曲部10が2箇所以上であっても、その隣り合う2箇所の湾曲部10が共に同方向に湾曲した形状であっても構わない。
なお、図1に併記した寸法は、実施例での寸法であって、本発明を何ら制限するものではない。
【0019】
(構成)
本実施形態のプレス部品の製造方法は、図2に示すように、予備成形工程2と部品成形工程3とを備える。
【0020】
<予備成形工程2>
予備成形工程2は、本成形前の予備的な成形を金属板に施して、しわが発生し難い、本成形用の金属板を得る工程である。
予備成形工程2は、平坦な金属板に対し、プレス部品形状1の長手方向に沿ってプレス部品形状1に設ける湾曲部10の湾曲に倣った湾曲形状を付与する第1工程2Aと、第1曲げ部1d及び第2曲げ部1eとなる位置に、第1のビード4a及び第2のビード4bを形成する第2工程2Bと、を有する。第1のビード4a及び第2のビード4bは、それぞれ長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する。
第2工程2Bは、第1のビード4a及び第2のビード4bの一方だけを形成する工程でも良い。また、長手方向において、第1のビード4aの形成位置と第2のビード4bの形成位置とが重ならないように配置してもよい。
また、予備成形工程2は、第2工程2Bだけから構成されていてもよい。
【0021】
本明細書で、「長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在するビード」とは、金属板4の長手方向全長に亘って連続してビードが形成されている場合、及び、金属板4の長手方向に沿った一部にビードが形成されている場合を含む。複数個のビードが、金属板4の長手方向に沿って間隔を空けて形成されていてもよい。例えば、プレス部品形状1が複数の湾曲部10を有する場合、2以上の湾曲部10となる箇所に連続してビードが形成されていても良いし、各湾曲部10毎に個別にビードが形成されていてもよい。
【0022】
第1のビード4a及び第2のビード4bの断面形状の例を図6に示す。図6に示す例は、第1のビード4a及び第2のビード4bをフルビードで構成した例である。
ここで、本実施形態のビード4a、4bは、屈曲形状の断面が断面に交叉する方向(長手方向(金属板4の天板部の長手方向))に延在した形状となっている。ビード4a、4bは、フルビードや、断面段差形状のハーフビードなどからなる。
【0023】
プレス部品形状1に設けられる湾曲部10の湾曲に倣った湾曲形状は、プレス部品形状1の天板部1Aの側面視における輪郭形状(例えば、第1曲げ部1dで形成される稜線部の長手方向に沿ったプロフィール形状)を採用する。側面視における、金属板4に付与する湾曲形状の湾曲部10の曲率半径は、プレス部品形状1に設ける湾曲部10の曲率半径と等しく設定することが好ましい。金属板4の付与する湾曲形状の湾曲部10の曲率半径とプレス部品形状1に設ける湾曲部10の曲率半径との差は、例えばプレス部品形状1に設ける湾曲部10の曲率半径の±10%以下とすることが好ましい。
【0024】
第1曲げ部1dは、天板部1Aと縦壁部との間に形成される稜線部1Dの断面に対応する。この稜線部1Dは、上側に凸となるように曲がっている。また、第2曲げ部1eは、縦壁部とフランジ部1Cとの間に形成される稜線部1Eの断面に対応する。この稜線部1Eは、上側に凹となるように曲がっている。
ここで、第2工程2Bは、第1のビード4a及び第2のビード4bのうちの、一方のビードだけを形成する処理構成であっても良い。
本実施形態では、第1工程2Aと第2工程2Bが、1つの金型によるプレス加工によって実行される。
【0025】
使用する金型は、図3に示すように、上型(ダイ)及び下型(パンチ)の成形面20、21に、側面視で、プレス部品形状1が有する湾曲形状と同様な湾曲が付与されている。本実施形態のプレス部品形状1は、天板部1Aが凹に湾曲(下側に屈曲)する湾曲部10Aと天板部1Aが凸に湾曲(上側に屈曲)する湾曲部10Bを有する形状となっている。この側面視の形状に沿った形状に、上型(ダイ)及び下型(パンチ)の成形面20、21が、凹に湾曲(下側に屈曲)する部分と天板部1Aが凸に湾曲(上側に屈曲)する部分を有する面形状となっている。
これによって、金属板4には、例えば、幅方向(プレス部品形状1の幅方向と同方向)に、同一の湾曲形状を付与される。
上型(ダイ)及び下型(パンチ)の成形面20、21の側面視における湾曲形状は、プレス部品形状1における側面視における天板部1Aでの湾曲形状に等しいことが好ましい。
【0026】
通常、長手方向に沿った、側面視における天板部1Aの湾曲形状とフランジ部1Cの湾曲形状は等しいかほぼ等しい。このため、上型(ダイ)及び下型(パンチ)の成形面の側面視における湾曲形状は、長手方向に沿った天板部1Aの湾曲形状に倣った形状とすればよい。側面視における天板部1Aの湾曲形状とフランジ部1Cの湾曲形状とが異なっている場合には、天板部1Aとなる面位置及びフランジ部1Cとなる面位置の各湾曲形状を異なる形状としても良い。この場合、湾曲形状の差は、縦壁部を形成する成形面で吸収すればよい。
【0027】
更に、上型(ダイ)及び下型(パンチ)の成形面20、21には、第1曲げ部1d及び第2曲げ部1eとなる位置に沿って、すなわち、それぞれ長手方向に沿って延在する第1のビード4aに倣ったビード形状20a、21a及び第2のビード4bに倣ったビード形状20b、21bが形成されている。第1のビード形状20a、21a及び第2のビード形状20b、21bを形成する位置は、部品成形工程3における、部品成形工程3での金型のパンチ肩稜線部及びダイ肩稜線部に当接可能な位置である。
【0028】
ここで、第1のビード4aは、第1曲げ部1dの凸方向と同方向に凸となる形状(断面上方に凸となる形状)であることが好ましい(図6参照)。
また、第1のビード4aのビード高さは、上記金属板4の板厚の2倍以上であることが好ましい。第1のビード4aのビード高さの上限値は、20mmである。
また、第2のビード4bは、上記第2曲げ部1eの凸方向と同方向に凸となる形状(下方にとつとなる形状)であることが好ましい(図6参照)。
上記第2のビード4bのビード高さは、上記金属板4の板厚の2倍以上であることが好ましい。第2のビード4bの高さの上限値は、20mmである。
そして、予備成形工程2では、上記の上型及び下型を用いて金属板4をプレス成形し、長手方向に沿って湾曲し且つ、長手方向に沿って延びる第1のビード4a及び第2のビード4bを備えた金属板4とする。
【0029】
<部品成形工程3>
部品成形工程3は、予備成形工程で処理後の金属板4を、目的のプレス部品形状1に成形する本成形工程である。
部品成形工程3は、図4に示すような成形面22、23を有する金型を用いて、予備成形工程2の処理後の金属板4をプレス成形して、目的とするプレス部品形状1のプレス部品とする。
図4では、金型が、金属板4の天板部1Aとなる位置を押さえるパッド24を有する場合を例示している。すなわち、この例では、プレス成形として曲げ成形を採用する場合を例示している。もっとも、部品成形工程3は、天板部1Aをパッド24で押さえないフォーム成形を採用しても良い。
ここで、予備成形工程2は、第1予備成形工程及び第2予備成形工程の少なくとも一方を構成する。部品成形工程3は、第1部品成形工程及び第2部品成形工程の少なくとも一方を構成する。
【0030】
(動作その他)
本実施形態では、予備成形工程2にて、予成形として、金属板4に対し、長手方向に沿った湾曲形状(板厚方向に湾曲した形状)を付与する処理と、第1のビード4a及び第2のビード4bの少なくとも一方を付与する処理とを実行する(図3)。
このとき、予備成形工程2用の上型と下型とで金属板4をプレスした場合、相対的に上型が下型に近づくにつれて、まず、金属板4は、上型と下型の成形面20,21に沿った湾曲形状に変形する。更に、相対的に上型が下型に近づき下死点まで移動することで、湾曲した板形状の状態で、第1のビード4a及び第2のビード4bを金属板4にプレス成形する。すなわち、金属板4に対し湾曲形状が付与された後にビード4a、4bの形成が実行される。
【0031】
湾曲形状を付与後に、長手方向に延在する第1のビード4a及び第2のビード4bが形成されることで、第1工程2Aとして付与した湾曲形状の離型時の長手方向に沿ったスプリングバックが小さく抑えられる。
また、予備成形工程2の金属板4は、ビード4a、4bの付与によって、長手方向の形状剛性が高くなる。
次に、予備成形工程2後の金属板4を、部品成形工程3でのプレスによって、側面視で上下に湾曲した湾曲部10を有するコ字形断面若しくはハット形断面とした場合に、金属板4はビード4a、4bによって長手方向の形状剛性が高くなっているため、座屈によるシワ発生が抑制される。
【0032】
ここで、平板からなる金属板4を側面視で上下に湾曲した湾曲部10を有する部品形状にプレス成形した場合、図5に示すように、天板部1A側に凸の湾曲部10においては、天板部1A側(凸となる側)で長手方向への伸びが発生し、フランジ部1C側(凹となる側)では長手方向での縮みが発生する。また、天板部1A側に凹となる湾曲部10では、天板部1A側(凹となる側)で長手方向での縮みが発生し、フランジ部1C側(凸となる側)では長手方向への伸びが発生する。
【0033】
そして、この伸び縮みに伴い、天板部1A側及びフランジ部1C側で長手方向に材料の移動が発生して、シワ発生の原因となる。例えば、天板部1Aを拘束する曲げ成形を採用した場合、材料の移動が自由なフランジ部1Cで、天板部1A側に凸の湾曲部10で座屈によるシワが発生するおそれがある。また、ドロー成形を採用した場合、フランジ部1Cが拘束されているので、材料の移動が自由な天板部1Aで、天板部1A側が凹部の湾曲部10で座屈によるシワが発生するおそれがある。フォーム成形を採用した場合には、天板部1A及びフランジ部1Cが共に材料の移動が自由なため、天板部1A及びフランジ部1Cでシワが発生するおそれがある。
【0034】
これに対し、本実施形態の部品成形工程3では、金属板4に対し図6のような第1のビード4a及び第2のビード4bを予め形成することで、金属板4の長手方向の形状剛性が上がる。この結果、部品成形工程3でのプレス成形の際に、金属板4に対する座屈によるシワ発生を抑止すると共に、天板部1Aと側壁部1Bとの間の稜線部1D、及び側壁部1Bとフランジ部1Cとの稜線部1Eが変形することを防止する。
【0035】
このため、本実施形態では、部品成形工程3でのプレス成形の際に、図7に示すように、天板部1Aに対し、プレス方向に平行移動でフランジ面が成形されて、シワの原因となる材料移動が抑制される。
また、金属板4に対し長手方向に沿った湾曲形状を予め付与しておくことで、更に、プレス成形の際に、天板部1Aに対し、プレス方向に平行移動でフランジ面が成形されるようになって、よりシワの原因となる材料移動が抑制される。
【0036】
(変形例)
(1)上記説明では、予備成形工程2の第1工程2A及び第2工程2Bを、1つの金型によって実行する場合を例示した。
第1工程2Aと第2工程2Bとを、それぞれの個別の金型を用いて実行してもよい。但し、この場合、第1工程2Aで金属板4に湾曲形状を付与した後に、第2工程2Bでビード4a、4bの付与を実行することが好ましい。
【0037】
(2)上記説明では、予備成形工程2で第1工程2A及び第2工程2Bの両工程を実行する場合を例示した。予備成形工程2で、第1工程2Aを省略して第2工程2B(ビードを形成する工程)だけを実行してもよい。そして、部品成形工程3で、側面視上下方向に湾曲する湾曲形状と、幅方向に沿った、第1曲げ部1dと第2曲げ部1e位置での曲げ加工とを実行するようにしても良い。
【0038】
(3)上記説明では、第1曲げ部1d及び第2曲げ部1eで構成される各稜線部1D、1Eとなる位置全体に第1のビード4a及び第2のビード4bを形成する場合を例示したが、第1のビード4a及び第2のビード4bを、長手方向に沿って、上記対応する稜線部1D、1Eの位置に対し部分的に設けても良い。
この場合、少なくとも、平板からなる金属板4を上記プレス部品形状1にプレス成形した際に上記天板部1Aにしわが発生すると推定される第1推定領域、及び、平板からなる金属板4を上記プレス部品形状1にプレス成形した際に上記フランジ部1Cにしわが発生すると推定される第2推定領域となる位置には、各ビードを形成するようにすることが好ましい。
【0039】
このとき、図8のように、第1推定領域取得部6及び第2推定領域取得部7を備えることが好ましい。
第1推定領域取得部6は、平板からなる金属板4を上記プレス部品形状1にプレス成形した際に上記天板部1Aにしわが発生すると推定される第1推定領域を求める処理を実行する。
第2推定領域取得部7は、平板からなる金属板4を上記プレス部品形状1にプレス成形した際にフランジ部1Cにしわが発生すると推定される第2推定領域を求める処理を実行する。
【0040】
この第1推定領域取得部6及び第2推定領域取得部7による処理は、コンピュータを用いた成形解析で実行しても良いし、実際にプレス成形を実行しても良い。
また、成形時のシワは、湾曲部10における材料が集まる側の湾曲部10に発生するため、簡易的に、天板部1Aが凹に湾曲する湾曲部10を第1推定領域と推定し、天板部1Aが凸に湾曲する湾曲部10を第2推定領域として推定しても良い。
【0041】
(効果)
本実施形態は、次のような効果を奏する。
(1)本実施形態では、天板部1Aと上記天板部1Aの幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部1dを介して連続する側壁部1Bとを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部1Aが凸又は凹となるように湾曲した湾曲部10を1又は2以上有するプレス部品形状1に、金属板4を成形するプレス部品の製造方法であって、上記金属板4に対し、上記第1曲げ部1dとなる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第1のビード4aを形成する工程を有する第1予備成形工程と、上記第1予備成形工程後の上記金属板4を上記プレス部品形状1に成形する第1部品成形工程と、を備える。
この構成によれば、側面視で上下に湾曲形状を有するプレス部品形状1にプレス成形する前に、天板部1Aと側壁部1Bとを接続する曲げ部からなる稜線部となる位置に沿って第1のビード4aを形成しておくことで、プレス部品形状1に成形する際における長手方向に沿った形状剛性が向上して、少なくとも天板部1Aでのしわ発生を抑制可能となる。
【0042】
(2)上記プレス部品形状は、上記側壁部に第2曲げ部を介して連続するフランジ部を有する断面であり、上記第1予備成形工程は、上記第1のビードを形成する工程と、上記金属板に対し上記第2曲げ部となる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第2のビードを形成する工程と、を有する。
この構成によれば、天板部1A側の稜線部と共にフランジ側の稜線部の長手方向に沿った形状剛性が向上する結果、天板部1Aと共にフランジ部1Cでのしわ発生を抑制可能となる。
【0043】
(3)上記第1のビード及び上記第2のビードはそれぞれ、少なくとも上記湾曲部となる位置に部分的に延在し、上記第1のビードが形成される上記湾曲部となる位置と、上記第2のビードが形成される上記湾曲部となる位置とが異なる。
この構成によれば、ビードの形成位置を抑えることができる。
【0044】
(4)上記第1のビード4aは、上記第1曲げ部1dの凸方向と同方向に凸となる形状であることが好ましい。
この構成によれば、部品成形工程3で第1のビード4aのビード形状を潰しやすくなる。なお、目的とするプレス部品形状1が、天板部1Aと側壁部1Bとを連結する稜線部に沿ってビードが形成されている形状であってもよい。
なお、天板部1Aは他の部品との接続部となる面であるため、ビードは形成されていない方が好ましい。
【0045】
(5)上記第1予備成形工程は、上記金属板4に上記長手方向に沿って上記湾曲部10の湾曲に倣った湾曲を付与する工程と、上記第1のビード4aを形成する工程とを有していてもよい。
この構成によれば、第1予備成形工程によって、第1のビード4aと共に湾曲形状が付与され、例えば長手方向の形状精度が向上する。
【0046】
(6)本実施形態では、平板からなる金属板4を上記プレス部品形状1にプレス成形した際に上記天板部1Aにしわが発生すると推定される第1推定領域を求める第1推定領域取得部6と、上記第1予備成形工程は、上記曲げ部で形成される稜線部のうち、上記第1推定領域となる領域を含む上記曲げ部に対応する金属板4部分に対し、部分的に上記第1のビード4aを形成する構成であってもよい。
この構成によれば、必要以上に第1のビード4aを付与することが防止される。
【0047】
(7)上記第1のビード4aのビード高さは、上記金属板4の板厚の2倍以上であることが好ましい。
この構成によれば、確実に長手方向の形状剛性を向上可能となる。
【0048】
(8)本実施形態では、平板からなる金属板4を上記プレス部品形状1にプレス成形した際に上記フランジ部1Cにしわが発生すると推定される第2推定領域を求める第2推定領域取得部7を備え、上記第1予備成形工程は、上記第2曲げ部1eで形成される稜線部のうち、上記第2推定領域となる領域を含む上記第2曲げ部1eに対応する金属板4部分に対し、部分的に上記第2のビード4bを形成する構成でも良い。
この構成によれば、必要以上に第2のビード4bを付与することが防止される。
【0049】
(9)本実施形態では、天板部1Aと上記天板部1Aの幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部1dを介して連続する側壁部1Bと上記側壁部1Bに第2曲げ部1eを介して連続するフランジ部1Cとを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部1Aが凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部10を1又は2以上有するプレス部品形状1に、金属板4を成形するプレス部品の製造方法であって、上記金属板4に対し、上記第2曲げ部1eとなる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第2のビード4bを形成する第2予備成形工程と、上記第2予備成形工程後の上記金属板4を上記プレス部品形状1に成形する第2部品成形工程と、を備える構成であってもよい。
この構成によれば、側面視で上下に湾曲形状を有するプレス部品形状1にプレス成形する前に、側壁部1Bと天板部1Aとを接続する曲げ部からなる稜線部となる位置に沿って第2のビード4bを形成しておくことで、プレス部品形状1に成形する際における長手方向に沿った形状剛性が向上して、少なくともフランジ部1Cでのしわ発生を抑制可能となる。
【0050】
(10)上記第2予備成形工程は、上記金属板4に上記長手方向に沿って上記湾曲部10の湾曲に倣った湾曲を付与する工程と、上記第2のビード4bを形成する工程とを有していてもよい。
この構成によれば、第2予備成形工程によって、第2のビード4bと共に湾曲形状が付与され、例えば長手方向の形状精度が向上する。
【0051】
(11)本実施形態では、平板からなる金属板4を上記プレス部品形状1にプレス成形した際に上記フランジ部1Cにしわが発生すると推定される第2推定領域を求める第2推定領域取得部7を備え、上記第2予備成形工程は、上記第2曲げ部1eで形成される稜線部のうち、上記第2推定領域となる領域を含む上記第2曲げ部1eに対応する金属板4部分に対し、部分的に上記第2のビード4bを形成する構成でもよい。
この構成によれば、必要以上に第2のビード4bを付与することが防止される。
【0052】
(12)上記第2のビード4bは、上記第2曲げ部1eの凹方向と同方向に凹となる形状であることが好ましい。
この構成によれば、部品成形工程3で第2のビード4bのビード形状を潰しやすくなる。なお、目的とするプレス部品形状1が、側壁部1Bとフランジ部1Cとを連結する稜線部に沿ってビードが形成されている形状であってもよい。
【0053】
(13)上記第2のビード4bのビード高さは、上記金属板4の板厚の2倍以上であることが好ましい。
この構成によれば、確実に長手方向の形状剛性を向上可能となる。
【0054】
(14)本実施形態は、天板部1Aと上記天板部1Aの幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部1dを介して連続する側壁部1Bとを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部1Aが凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部10を1又は2以上有するプレス部品形状1にプレス成形するための金属板4であって、上記第1曲げ部1dとなる位置に上記長手方向に沿って連続して若しくは部分的に延在する第1のビード4aを有する構成であってもよい。
この構成によれば、天板部1Aと上記天板部1Aの幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部1dを介して連続する側壁部1Bとを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部1Aが凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部10を1又は2以上有するプレス部品形状1にプレス成形する際に、少なくとも天板部1Aに発生するシワを抑制可能となる。
【0055】
(15)更に、金属板4は、上記側壁部1Bに第2曲げ部1eを介して連続するフランジ部1Cを有する断面の上記プレス部品形状1にプレス成形する金属板4であって、上記第1のビード4aと共に、上記第2曲げ部1eとなる位置に上記長手方向に沿って延在する第2のビード4bを有する構成でも良い。
この構成によれば、天板部1Aと上記天板部1Aの幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部1dを介して連続する側壁部1Bとを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部1Aが凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部10を1又は2以上有するプレス部品形状1にプレス成形する際に、天板部1A及びフランジ部1Cに発生するシワを抑制可能となる。
【0056】
(16)更に、金属板4は、上記長手方向に沿って上記湾曲部10の湾曲に倣った湾曲を有する構成であってもよい。
この構成によれば、プレス部品形状1にプレス成形した際に、長手方向の形状精度が向上する。
【0057】
(17)本実施形態では、天板部1Aと上記天板部1Aの幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部1dを介して連続する側壁部1Bとその側壁部1Bに第2曲げ部1eを介して連続するフランジ部1Cとを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部1Aが凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部10を1又は2以上有するプレス部品形状1にプレス成形するための金属板4であって、上記第2曲げ部1eとなる位置に上記長手方向に沿って延在する第2のビード4bを有する構成としてもよい。
この構成によれば、天板部1Aと上記天板部1Aの幅方向の少なくとも一方に第1曲げ部1dを介して連続する側壁部1Bとを有する断面を有し、且つ上記断面に交差する方向である長手方向に沿って側面視で上記天板部1Aが凸若しくは凹となるように湾曲した湾曲部10を1又は2以上有するプレス部品形状1にプレス成形する際に、少なくともフランジ部1Cに発生するシワを抑制可能となる。
【0058】
(18)更に、金属板4は、上記長手方向に沿って上記湾曲部10の湾曲に倣った湾曲を有する構成であってもよい。
この構成によれば、プレス部品形状1にプレス成形した際に、長手方向の形状精度が向上する。
【実施例
【0059】
次に、本発明に基づく上記実施形態のプレス成形についての実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に規制されるものではない。
「適用材」
本実施例では、金属板4として、590MPa以上の高強度鋼板を使用した。
具体的には、金属板4として、表1に示すように、590MPa級鋼板(590材)、980MPa級鋼板(980材)、1180MPa級鋼板(1180材)、及び1470MPa級鋼板(1470材)を用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
金属板4は、幅W=240mm、長さL=387mm、板厚は1.0mmtの平坦な板材とした。
また、本実施形態では、対象とするプレス部品の部品形状を、図1に示すような、ハット形断面且つ側面視で、長手方向に沿った2箇所に湾曲部10を有する形状とした。
そして、比較例では、表2に示す各成形法で直接に平坦な金属板を上記のプレス部品形状にプレス成形した。また、本発明に基づく発明例では、表3に示す各成形法で、金属板を上記のプレス部品形状にプレス成形した。すなわち、比較例の成形法では、予備成形工程2を省略して、部品成形工程3(本成形工程)で、上記平坦な板材の金属板を目的のプレス部品形状1にプレス成形とした。本発明に基づく発明例での成形法では、本実施形態に基づき、予備成形工程2を行った後に、部品成形工程3で目的とするプレス部品形状とした。その結果を、表2及び表3に示す。
表2は、比較例の成形法の評価結果(成形可否)を示す。
表3は、発明例での成形法の評価結果(成形可否)を示す。
なお、表中、P圧はパット圧、C圧はクッション圧である。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
ここで、成形品の評価は目視で行い、「○」、「△」、「×」の3段階で評価し、その評価を表2及び表3に記載した。
具体的には、評価は、顕著なシワが発生した場合を「×」、顕著なしわが発生していないが僅かにシワが形成されていた場合を「△」、しわが発生しない場合を「○」として判定した。
【0065】
<比較例>
比較例の成形法では、表2に示すように、980MPa以上の引張強度の鋼板を用いた場合、天板部1A若しくはフランジ部1Cの少なくとも一方で、顕著なシワが発生していた。
比較例において、1180材を用いて、フォーム成形した場合における、天板部1A及びフランジ部1Cでのシワ発生の例を図9に示す。
【0066】
<発明例>
一方、発明例では、表3に示すように、比較例と比較して、第1のビード4aや第2のビード4bを付与した部位でのシワ発生が改善されていることが分かる。
【0067】
ここで、各発明例における、予備成形工程2後の形状について説明する。
No.1は、湾曲形状を付与すると共に、第1曲げ部1d及び第2曲げ部1eにそれぞれフルビードからなる第1のビード4a及び第2のビード4bを付与した例である。
なお、ビード4a、4bの高さは、板厚の5倍とした。他の発明例でも同様である。
また、No.2は、湾曲形状を付与すると共に、第1曲げ部1dにハーフビードからなる第1のビード4aを、第2曲げ部1eにフルビードからなる第2のビード4bを付与した例である。
【0068】
また、No.3は、湾曲形状を付与すると共に、第1曲げ部1dに第1のビード4aを形成せず、第2曲げ部1eにフルビードからなる第2のビード4bを付与した例である。
また、No.4は、湾曲形状を付与すると共に、第1曲げ部1dにフルビードからなる第1のビード4aを、第2曲げ部1eに第2のビード4bを形成しなかった例である。
また、No.5は、湾曲形状を付与すると共に、第1曲げ部1dにハーフビードからなる第1のビード4aを、第2曲げ部1eにハーフビードからなる第2のビード4bを付与した例である。
【0069】
また、No.6は、湾曲形状をせず、第1曲げ部1dにフルビードからなる第1のビード4aを、第2曲げ部1eに第2のビード4bを形成しなかった例である。
また、No.7は、湾曲形状を付与すると共に、第1曲げ部1dにおける凹の湾曲部10Aの位置だけに部分的にフルビードからなる第1のビード4aを、第2曲げ部1eにおける凸の湾曲部10Bの位置だけに長手方向に沿って部分的にフルビードからなる第2のビード4bを付与した例である。No.7では、長手方向において、第1のビード4aを設けた湾曲部10Aとなる位置と、第2のビード4bを設けた凸の湾曲部10Bとが異なる。
【0070】
No.1から分かるように、湾曲形状を付与すると共に、第1曲げ部1d及び第2曲げ部1eにそれぞれフルビードからなる第1のビード4a及び第2のビード4bを付与した場合、天板部1A及びフランジ部1Cにシワが発生しなかった。
このとき、No.7のように、シワが発生すると推定される領域にだけ、フルビードからなる第1のビード4a及び第2のビード4bを部分的に付与した場合であっても、天板部1A及びフランジ部1Cにシワが発生しなかった。
【0071】
また、No.2のように、第1のビード4aをハーフビードとし、第2のビード4bをフルビードとした場合、フランジ部1Cにはシワが発生しなかったが、フォーム成形では天板部1Aにシワが発生した。これは、天板部1A側では形状剛性の向上が、No.1に比べ低くなったためである。但し、比較例(表2)に比べて天板部1Aのシワの程度は軽度であり、ハーフビードであってもシワ低減効果はあった。
また、No.3のように、第2のビード4bだけ設けた場合には、フランジ部1Cでのシワ発生を抑制できることが分かった。
また、No.4のように、第1のビード4aだけ設けた場合には、天板部1Aでのシワ発生を抑制できることが分かった。
【0072】
また、No.5のように、第1のビード4aをフルビードとし、第2のビード4bをハーフビードとした場合、天板部1Aにはシワが発生しなかったが、フランジ部1Cにシワが発生した。これは、フランジ部1C側では形状剛性の向上が、No.1に比べ低くなったためである。但し、比較例(表2)に比べてフランジ部1Cのシワの程度は軽度であり、ハーフビードであってもシワ低減効果はあった。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明なことである。
【0073】
また、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2020-039600(2020年 3月 9日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
【符号の説明】
【0074】
1 プレス部品形状
1A 天板部
1B 側壁部
1C フランジ部
1D、1E 稜線部
1d 第1曲げ部
1e 第2曲げ部
2 予備成形工程(第1予備成形工程、第2予備成形工程)
2A 第1工程
2B 第2工程
3 部品成形工程(第1部品成形工程、第2部品成形工程)
4 金属板
4a 第1のビード
4b 第2のビード
6 第1推定領域取得部
7 第2推定領域取得部
10、10A、10B 湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9