(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】電気エネルギーを発生させるための発電所および発電所を稼働させる方法
(51)【国際特許分類】
F01K 3/02 20060101AFI20220819BHJP
F03G 7/00 20060101ALI20220819BHJP
F01K 3/18 20060101ALI20220819BHJP
F01K 7/16 20060101ALI20220819BHJP
F01K 7/18 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
F01K3/02 C
F03G7/00 C
F01K3/18
F01K7/16 A
F01K7/18 A
(21)【出願番号】P 2019550149
(86)(22)【出願日】2018-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2018055990
(87)【国際公開番号】W WO2018172107
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519326404
【氏名又は名称】ルメニオン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】ツビンケルス,アンドリュー
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02101051(EP,A1)
【文献】特表2003-507617(JP,A)
【文献】欧州特許第03139108(EP,B1)
【文献】独国特許出願公開第102012103621(DE,A1)
【文献】特開2016-142272(JP,A)
【文献】特開2004-340093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0097603(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013016077(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第107605547(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 1/00-21/06
F03G 1/00- 7/10
F01K 23/00-27/02
F28D 17/00-21/00
F01D 13/00-15/12
F01D 23/00-25/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを発生させる発電所であって、
少なくとも1つの蓄熱ユニット(1)を備え、電気エネルギーを熱エネルギーとして貯蔵する少なくとも1つの蓄熱器(100)であって、各蓄熱ユニット(1)は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する電気ヒーター(10)と、前記電気ヒーター(10)の熱エネルギーを取り入れて貯蔵する少なくとも1つの蓄熱体(30、31)と、前記蓄熱体(30、31)から熱エネルギーを取り入れる熱交換器(50)であって、蓄熱部流体を導く熱交換器管(51)を備えた熱交換器(50)と、を備える、前記少なくとも1つの蓄熱器(100)と、
少なくとも第1タービン(120)と、
前記タービンからもたらされた回転運動から電気エネルギーを発生させる、前記第1タービン(120)と接続された発電機(123)と、
前記1つまたは複数の熱交換器(50)と接続された蓄熱部流体回路(130)と、
前記第1タービン(120)と接続された作動流体回路(140)と、
前記蓄熱部流体から前記作動流体回路(140)における作動流体に熱を伝達する少なくとも1つの第1流体回路熱交換器(131)と、
を備え、
第2タービン(121)と第2流体回路熱交換器(132)とが設けられ、
前記第2タービン(121)も前記発電機(123)に接続されて、前記発電機(123)を駆動し、
前記第1タービン(120)は、前記作動流体回路(140)における前記第1流体回路熱交換器(131)の下流に配置され、
前記第2流体回路熱交換器(132)は、前記第1タービン(120)の下流に配置され、
前記第2タービン(121)は、前記第2流体回路熱交換器(132)の下流に配置され、
前記第1および前記第2流体回路熱交換器(131、132)は、前記蓄熱部流体回路(130)において、互いに対して並列である2つの導管(135、136)に配置され、
制御機器が前記蓄熱部流体回路(130)に設けられ、前記制御機器は、前記第1流体回路熱交換器(131)と前記第2流体回路熱交換器(132)とに対する蓄熱部流体の分配を可変設定するように構成されていることを特徴とする、発電所。
【請求項2】
第1バイパスが、前記作動流体回路(140)において前記第1流体回路熱交換器(131)の周辺に設けられ、前記第1流体回路熱交換器(131)を迂回して、作動流体を前記第1タービン(120)に導き、
第1バイパス制御機器が設けられ、前記第1流体回路熱交換器(131)と第1バイパスとに対する作動流体の分配を可変設定するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の発電所。
【請求項3】
第2バイパスが、前記作動流体回路(140)において前記第2流体回路熱交換器(132)の周辺に設けられ、前記第2流体回路熱交換器(132)を迂回して、作動流体を前記第2タービン(121)に導き、
第2バイパス制御機器が設けられ、前記第2流体回路熱交換器(
132)と前記第2バイパスとに対する作動流体の分配を可変設定するように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の発電所。
【請求項4】
電気制御ユニットが設けられ、前記電気制御ユニットは、瞬間的により多くの電気エネルギーが外部送電網から前記1つまたは複数の電気ヒーター(10)を通って取り入れられるか、あるいは、より多くの電気エネルギーが前記発電機(123)を通って前記外部
送電網に対して出力されるかを可変設定するように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の発電所。
【請求項5】
複数の蓄熱器(100)が設けられ、前記複数の蓄熱器(100)の少なくともいくつかは、前記蓄熱部流体回路(130)に互いに並列に配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の発電所。
【請求項6】
複数の蓄熱器(100)が設けられ、前記複数の蓄熱器(100)の少なくともいくつかは、前記蓄熱部流体回路(130)に直列に配置されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の発電所。
【請求項7】
制御機器が設けられ、前記制御機器は、前記直列に配置された蓄熱器(100)のうち、前方の蓄熱器(100)を、後方の蓄熱器(100)よりも広い温度範囲で稼働させるように制御することを特徴とする、請求項6に記載の発電所。
【請求項8】
前記直列に配置された蓄熱器(100)のうちの前方の蓄熱器(100)は、前記直列に配置された蓄熱器(100)うちの後方の蓄熱器(100)よりも多くの蓄熱ユニット(1)を有することを特徴とする、請求項6または7に記載の発電所。
【請求項9】
電気エネルギーを発生させる発電所を稼働させる方法において、以下の工程、すなわち、
少なくとも1つの蓄熱器(100)の蓄熱ユニット(1)の電気ヒーター(10)を用いて電気エネルギーを熱エネルギーに変換する工程と、
前記蓄熱ユニット(1)の少なくとも1つの蓄熱体(30、31)を用いて、前記電気ヒーター(10)の熱エネルギーを取り入れて貯蔵する工程と、
蓄熱部流体を導く熱交換器管(51)を備えた熱交換器(50)を用いて、前記少なくとも1つの蓄熱体(30、31)の熱エネルギーを蓄熱部流体に伝達する工程と、
少なくとも第1タービン(120)を駆動する工程と、
前記第1タービン(120)と接続された発電機(123)を用いて、タービン(120)によりもたらされた回転運動から電気エネルギーを発生させる工程と、
少なくとも1つの第1流体回路熱交換器(131)を備えた蓄熱部流体回路(130)に沿って、前記蓄熱部流体を導く工程と、
前記少なくとも第1流体回路熱交換器(131)を用いて、熱エネルギーを前記蓄熱部流体から作動流体へと伝達する工程と、
前記第1タービン(120)を駆動するために、作動流体回路(140)における前記作動流体を前記第1タービン(120)に導く工程と、
を含む方法において、
第2タービン(121)と第2流体回路熱交換器(132)とが設けられ、
前記第2タービン(121)も前記発電機(123)を駆動し、
前記第1タービン(120)は、前記作動流体回路(140)における前記第1流体回路熱交換器(131)の下流に配置され、
前記第2流体回路熱交換器(132)は、前記第1タービン(120)の下流に配置され、
前記第2タービン(121)は、前記第2流体回路熱交換器(132)の下流に配置され、
前記第1および前記第2流体回路熱交換器(131、132)は、前記蓄熱部流体回路(130)において、互いに対して並列である2つの導管(135、136)に配置されていることを特徴とする、方法。
【請求項10】
少なくとも以下の工程、すなわち、
前記作動流体回路(140)における前記作動流体の圧力を高めるために、作動流体ポンプ(145)を稼働させる工程と、
前記蓄熱部流体回路(130)における前記作動流体の圧力を高めるために、蓄熱部流体ポンプ(125)を稼働させる工程と、
を含み、
前記作動流体ポンプ(145)と前記蓄熱部流体ポンプ(125)とは、前記作動流体の圧力が前記蓄熱部流体の圧力よりも高くなるように稼働されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも以下の工程、すなわち、
前記蓄熱部流体を液体の形態で、少なくとも1つの蓄熱器(100)へ、およびこれを通って導く工程であって、前記蓄熱部流体は蒸発させられない、工程と、
前記作動流体を、前記第1流体回路熱交換器(131)を通って導く工程であって、前記作動流体は蒸発させられる、工程と、
を含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、請求項1に記載の電気エネルギーを発生させる発電所に関する。さらに、本開示は、請求項9に記載の発電所を稼働させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所とは、例えば、エネルギー担体を燃焼させて、放出された熱エネルギーに基づいて電気エネルギーを発生させるシステムである。これは、例えば、エネルギー担体としてそれぞれ天然ガスまたは石炭を燃焼させるガス発電所および石炭発電所を含む。さらに、例えば、改質剤が、合成ガスまたは水素ガスを発生させ、これを燃焼させることもできる。
【0003】
複数の生産者により電力系統中に供給された、発生した電気エネルギーの量は、経時的に著しく異なる。特に、再生エネルギー源の使用が増えるにしたがって、発生した電気エネルギーの総量が経時的に大きく変動する。したがって、利用可能な電気エネルギーは、瞬間的な需要を著しく上回ることがある。例えば、このような場合、発生した電気エネルギーを貯蔵することが望ましい。しかしながら、エネルギーを電気的または化学的に貯蔵するエネルギー貯蔵部(例えば、電気化学電池またはキャパシタ)は、手頃なコストでは比較的少量のエネルギーを貯蔵できるのみである。揚水式発電所を用いれば、より多量のエネルギーを貯蔵することができる。しかしながら、揚水式発電所は、大きな高低差を必要とし、通常山間部にのみ建設することが可能である。
【0004】
本出願人は、以前の発明(特許文献1、特許文献2、特許文献3)において、解決方法を開発してきたが、これらの場合、電気エネルギーは一時的に熱エネルギーとして貯蔵され、発電所において電気エネルギーに変換し戻されうる。一般的な蓄熱器は、例えば、本出願人が特許文献1中に記載している通りである。
【0005】
この種の一般的な電気エネルギーを発生させる発電所は、電気エネルギーを熱エネルギーとして貯蔵するための少なくとも1つの蓄熱器を有する。各蓄熱器は少なくとも1つの蓄熱ユニットを備える。各蓄熱ユニットは、
・電気エネルギーを熱エネルギーに変換するための電気ヒーター
・電気ヒーターの熱エネルギーを取り入れかつ貯蔵するための少なくとも1つの蓄熱体
・蓄熱体からの熱エネルギーを取り入れるための熱交換器であって、蓄熱部流体を導くための熱交換器管を備えた熱交換器
を有する。
【0006】
発電所はさらに、少なくとも第1タービンと、この第1タービンからもたらされた回転運動から電気エネルギーを発生させるためにこのタービンと接続された発電機とを有する。
【0007】
したがって、電気エネルギーは、外部送電網から取られ、電気ヒーターを用いて熱エネルギーに変換される。電気ヒーターは、例えば、抵抗素子を有し、抵抗素子は、電流が抵抗素子を通って流れる際に熱を発生させる。熱エネルギーは蓄熱体に貯蔵される。蓄熱体は、例えば金属板を有してもよい。熱交換器は、蓄熱体に隣接し、蓄熱部流体が通過する管を少なくとも有する。熱交換器の管は、直接蓄熱体と接触してもよいし、あるいは、熱交換器の一部である伝熱材料(例えば金属体)を介して蓄熱体と接続されてもよい。蓄熱部流体が熱交換器を流れる際に蒸発または沸騰するように、すなわち、例えば液体である水が水蒸気に転移するように、熱交換器の管の長さと断面とが選択されてもよい。
【0008】
この種の発電所では、電気エネルギーは、外部送電網から取り入れられ、蓄熱器を用いて熱エネルギーとして貯蔵される。さらに、貯蔵された熱エネルギーは、電気エネルギーに変換し戻され、外部送電網に出力されてもよい。制御ユニットは、瞬間的により多くの電気エネルギーが、送電網から取られるか又は送電網に出力されるかを設定しうる。これにより、送電網におけるエネルギー量の変動を少なくとも部分的に補償しうる。
【0009】
同様に、電気エネルギーを発生させるために発電所を稼働させる一般的な方法は、以下の工程、すなわち、
・少なくとも1つの蓄熱器の一部である蓄熱ユニットの電気ヒーターを用いて電気エネルギーを熱エネルギーに変換する工程
・蓄熱ユニットの少なくとも1つの蓄熱体を用いて、電気ヒーターの熱エネルギーを取り入れかつ貯蔵する工程
・蓄熱部流体を導くための熱交換器管を有する熱交換器を用いて、熱エネルギーを蓄熱体から蓄熱部流体に伝達する工程
・少なくとも第1タービンを駆動する工程
・第1タービンと接続された発電機を用いて、タービンによりもたらされた回転運動から電気エネルギーを発生させる工程
を含む。
【0010】
蓄熱体は、最低温度と最高温度との間で稼働させられる。この温度差により、蓄熱体が稼働中に貯蔵することができかつ蓄熱部流体に放出することができるエネルギー量が決められる。しかしながら、蓄熱体の温度が可変であることは、熱交換器を通過した後の蓄熱部流体の温度も、各蓄熱体の瞬間の温度に依存することを意味する。したがって、蓄熱部流体の温度は、稼働中に非常に著しく変動することがある。
【0011】
これに加えて、タービンは、特定のおよび好ましくは一定の温度の蒸気で駆動されるべきである。第1に、タービンの効率は、蒸気流の温度に依存し、第2に、蒸気流の温度が急速に変わると、望ましくない材料応力が生じうる。
【0012】
これらの問題は、公知の発電所では、十分に克服されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願番号14187132
【文献】欧州特許出願番号15183855
【文献】欧州特許出願番号15183857
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、エネルギーを特に効率的に一時的に貯蔵しかつ再び電気の形態でエネルギーを出力することができる発電所と、発電所を稼働させる方法とを提供することであると見なされうる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的は、請求項1に記載の発電所および請求項9の特徴を有する方法により達成される。
【0016】
本発明の発電所および本発明の方法の好適な変形例は、従属請求項の主題であり、以下の説明中で取り扱う。
【0017】
本発明によれば、上記の発電所中では、蓄熱部流体回路は、1つまたは複数の熱交換器と接続されている。作動流体回路は、蓄熱部流体回路とは区別され、かつ第1タービン(かつ、特に任意に設けられたさらなるタービン)と接続される。少なくとも第1流体回路熱交換器が設けられ、蓄熱部流体回路および作動流体回路と接続され、作動流体回路において蓄熱部流体からの熱を作動流体に伝達する。
【0018】
同様に、上記の方法は、本発明によれば、少なくとも以下の工程、すなわち、
・少なくとも1つの第1流体回路熱交換器を有する蓄熱部流体回路に沿って、蓄熱部流体を移送する工程
・少なくとも第1流体回路熱交換器を用いて、熱エネルギーを蓄熱部流体から作動流体へと伝達する工程
・第1タービンを駆動するために、作動流体回路における作動流体を、第1タービンに移送する工程
を特徴とする。
【0019】
従って、蓄熱部流体がタービンを通って導かれることはない。むしろ、作動流体のみがタービンを通って導かれる。したがって、蓄熱部流体の温度変動が作動流体の温度に与える影響は僅かである。したがって、タービンは、略一定の温度を有する蒸気により駆動されうるので有利である。さらに、比較的高い圧力例えば100バールがタービンにおいて要求されるのみである。2つの別個の回路があることにより、蓄熱ユニットへの流体の圧力をタービンへの流体圧力よりも小さくすることができる。
【0020】
例えば、作動流体ポンプは、作動流体回路中で作動流体を加圧するために稼働されることができ、かつ、蓄熱部流体ポンプは、蓄熱部流体回路中で作動流体を加圧するために稼働されることができる。作動流体ポンプと蓄熱部流体ポンプとは、作動流体の圧力が蓄熱部流体の圧力よりも大きくなるように稼働させられる。或いはまたはこれに加えて、作動流体ポンプの力は、蓄熱部流体ポンプの力よりも大きくなってもよい。より高い圧力とは、例えば、各ポンプ後の圧力比較により定義されてもよい。
【0021】
作動流体回路と蓄熱部流体回路とは、それぞれ管系を有してもよく、これらの2つの管系は互いに分離している。流体回路熱交換器は、蓄熱部流体と作動流体とについて異なる導管を有する熱交換器であってもよい。熱エネルギーは、蓄熱部流体から作動流体へと、熱橋、例えば別個の導管間での金属接続部を通って伝達される。
【0022】
蓄熱部流体と作動流体とは、それぞれ一般的に任意の液体または気体でありえる。蓄熱部流体は、特に油、特に熱媒油でありえる。この油は塩を有してもよく、約200℃で融解してもよく、この温度から約600℃までで利用可能であってもよい。塩含有熱媒油は、したがって、特に蓄熱ユニットから熱エネルギー取り入れるのに適切である。蓄熱部流体は、熱交換器の通過前後の両方で液相である液体であってもよい。作動流体は、蓄熱部流体とは異なってもよく、特に水または水溶液であってもよい。作動流体は、流体回路熱交換器を通る際に蒸発させられてもよい。特に、蓄熱部流体が瞬間的に高温(約600℃)または低温(約250℃)であるかにかかわらず、作動流体が常に流体回路熱交換器中で蒸発されることが確実となるように、作動流体ポンプによりかけられた圧力における作動流体の沸点は、200℃未満であってもよい。
【0023】
多段階タービンシステムが用いられてもよい。例えば、第2タービンと第2流体回路熱交換器とが設けられてもよい。第2タービンは、発電機または第2発電機に接続され、該発電機を駆動してもよい。作動流体回路において、第1タービンが第1流体回路熱交換器の下流に配置されてもよい。第2流体回路熱交換器は、第1タービンの下流に配置されてもよい。第2タービンは、第2流体回路熱交換器よりも下流に配置されてもよい。これらの変形例においては、作動流体は、まず第1流体回路熱交換器において加熱され(特に、蒸発させられ)、その後第1タービンを通過する。作動流体は、その後第2流体回路熱交換器を通過し、再加熱され、その後第2タービンを駆動する。
【0024】
第1および第2流体回路熱交換器は、互いに分離して形成されてもよく、特に同じように形成されてもよい。あるいは、第1および第2流体回路熱交換器は、1つのユニットにより形成され、このユニットが、蓄熱部流体用、第1タービン通過前の作動流体用、および、第1タービン通過後の作動流体用に、別個の導管を有してもよい。
【0025】
第1および第2流体回路熱交換器は、蓄熱部流体回路において、互いに対して並列である2つの導管に配置されてもよい。蓄熱部流体回路は、2つの導管への分岐を有し、蓄熱部流体は、これらの両方の導管を通過する。第1流体回路熱交換器は、これらの導管のうちの一方に配置され、第2流体回路熱交換器は、これらの導管のうちの他方に配置される。2つの導管は、2つの流体回路熱交換器の下流で合流する。「並列」配置とは、幾何学的に平行であると解釈されるべきではなく、流れが次々に2つの流体回路熱交換器を連続的に通る直列配置に対するものとして解釈されるべきである。このようにして、十分大きい伝熱が双方の熱交換器において確保されうるという点が有利である。
【0026】
制御機器が蓄熱部流体回路中に設けられてもよく、制御機器は、第1流体回路熱交換器と第2流体回路熱交換器とに対して、どのように蓄熱部流体を分配するかを可変設定するように構成されていてもよい。これにより、蓄熱部流体から作動流体への伝熱を、双方の流体回路熱交換器に対して異なるように調節することが可能になる。例えば、第1タービンの通過後、作動流体は冷却されたかもしれないが、第1流体回路熱交換器の通過前よりもまだ温かいかもしれない。この場合、作動流体は、第2流体回路熱交換器において第1流体回路熱交換器においてよりも少ない熱エネルギーを取り入れるべきである。この目的のために、制御機器は、例えば、第2流体回路熱交換器によりも、第1流体回路熱交換器に多くの蓄熱部流体を向けてもよい
【0027】
第1流体回路熱交換器を迂回して、作動流体を第1タービンに導くために、作動流体回路において、第1流体回路熱交換器の周辺に第1バイパスを設けてもよい。バイパスは、迂回導管を指していてもよい。第1バイパス制御機器を設けてもよく、第1バイパス制御機器は、どのように作動流体が第1流体回路熱交換器と第1バイパスとに分配されるかを可変設定できるように構成されていてもよい。これにより、第1流体回路熱交換器において作動流体への伝熱を変動させる。特に、これにより、蓄熱部流体の温度変動を、部分的にまたは完全に補償することができ、作動流体への伝熱は蓄熱部流体の温度変動によりほとんど影響を受けない。
【0028】
第1バイパスと制御機器は、第1急冷器を形成してもよい。第1急冷器は、流体をより冷たい流体と混合することにより、この流体を冷却する混合器である。この場合、より冷たい流体は、第1流体回路熱交換器を迂回した作動流体の一部である。
【0029】
同様に、第2流体回路熱交換器に対して第2バイパスを設けてもよい。すなわち、第2流体回路熱交換器を迂回して、作動流体を第2タービンに導くために、作動流体回路において、第2流体回路熱交換器の周辺に第2バイパスを設けてもよい。第2バイパス制御機器を設けてもよく、作動流体が第2流体回路熱交換器と第2バイパスとのどちらに分配されるかを可変設定するように構成されていてもよい。再度になるが、これにより、2つの流体回路熱交換器を異なって稼働させることができ、各流体回路熱交換器を通過した後の作動流体の所望の温度を設定することができる。
【0030】
原則的に、上記のバイパスに代えてまたはこれに加えて、蓄熱部流体回路における蓄熱部流体のために1つまたは2つの対応するバイパスを設けることも可能である。この種のバイパスにより、変動する割合の蓄熱部流体を、関連する流体回路熱交換器を通って導き、作動流体への伝熱を変動させることができる。
【0031】
発電所の稼働中では、蓄熱部流体が常に液体であり、蒸発させられないことがより好ましいかもしれない。蒸発する場合、蓄熱部流体が蓄熱の境界または始まりに達するとすぐに、蓄熱部流体は、急激に多量のエネルギーを蓄熱部から取り去ることになるだろう。これにより蓄熱部は空間的に不規則的に放出することになり、欠点となるだろう。さらに、急激な蒸発は、材料の摩耗を引き起こすかもしれない。蓄熱部流体が蒸発しない場合には、これらの問題が回避される。しかしながら、対照的に、作動流体は、タービンを駆動するために、気体でありまたは蒸発させられるべきである。これは、2つの別個の流体回路と、異なる流体とを用いることにより可能になる。作動流体は、蓄熱部流体よりも低い沸点/沸騰温度を有し、これにより、作動流体は第1流体回路熱交換器中において蒸発する。作動流体は、任意に設けられた第2流体回路熱交換器に、一般には蒸気として入り、その後さらに加熱/過熱される。
【0032】
電気ヒーターによる電気エネルギー取り入れは、電気コストが低い場合、すなわち、送電網(ここでは、外部送電網と称する)において電気エネルギーの供給過剰がある場合に、理にかなっている。対照的に、タービンと発電機とは、時間的にむしろ安定的に稼働されてもよく、このようにして、経時的に顕著な変動を示さなくてもよい。電気制御ユニットを設けてもよく、瞬間的により多くの電気エネルギーが外部送電網から電気ヒーターにより取られるのか、または、より多くの電気エネルギーが外部送電網に発電機を通って出力されるのかを可変設定するように構成されてもよい。
【0033】
本発明の方法の好適な変形例は、本発明の発電所の用途に起因する。さらに、該方法について説明した変形例は、本発明の発電所の変形例としても見なされる。
【0034】
本発明のさらなる特性および利点を、添付の概略図を参照して、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図3】
図1および
図2の蓄熱器を有する本発明の発電所の例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
類似のおよび同様に作用する部材には、図面全体で同じ参照符号で示す。
【0037】
本発明の発電所110の例示的な実施形態を、
図3において概略的に示す。
【0038】
発電所110は、第1タービン120を有し、第2タービン121を有してもよく、また(不図示の)さらなるタービンを有してもよい。タービン120、121は、これらのタービンを通過する作動流体により駆動される。この作動流体は、蒸気例えば水蒸気であってもよい。発電機123は、タービン120、121と接続され、タービン120、121から提供された回転エネルギーを電気エネルギーに変換する。電気エネルギーは、その後外部送電網に出力される。
【0039】
発電所110は、外部送電網における電気エネルギー量の変動を低減するために用いられる。この目的のために、発電所110は、特に外部送電網において供給過剰がある場合に外部送電網からの電気エネルギーを取り入れるべきである。供給過剰の場合は、電気コストは一時的に非常に低くなり、またはマイナスになる可能性もあり、電気エネルギーの取り入れのコストがなくなり、場合によっては、そのために利益が上がることにさえなりえる。取り入れた電気エネルギーは、発電所110において貯蔵され、電気エネルギーとして別の時に再び出力されるべきである。
【0040】
この一時的なエネルギー貯蔵のために、発電所110は、少なくとも1つの蓄熱器100を有する。
図3の例では、いくつかの蓄熱器100が設けられている。蓄熱器100は、
図1の斜視図および
図2の断面図でより詳細に示す。各蓄熱器100は、少なくとも1つ、好ましくはいくつかの蓄熱ユニット1を有し、これらは、上下に積まれている。各蓄熱ユニット1は、電気ヒーター10を有する。電気ヒーター10は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、好ましくは、実質的に完全に、すなわち、電気ヒーター10により取り入れられたエネルギーの90%を超えるエネルギーが熱エネルギーに変換される。電気エネルギーは、外部送電網から取り入れられる。各蓄熱ユニット1はさらに、少なくとも1つ、とりわけまさに2つの蓄熱体30、31を有する。これらは、金属体または金属板であってもよく、熱エネルギーを貯蔵するために役立つ。蓄熱体30、31は、電気ヒーター10の隣に配置され、電気ヒーター10から熱エネルギーを取り入れる。最後に、各蓄熱ユニットは、いくつかの熱交換器管51を有する熱交換器50も有する。各熱交換器50は、蓄熱体30のうちの少なくとも一つに隣接する。このようにして、熱エネルギーは、蓄熱体30から熱交換器管へと伝達され、蓄熱部流体はその中で移送される。分配管45を通って、蓄熱部流体は、異なる熱交換器50に分配される。熱交換器50を通過した後、蓄熱部流体は収集管55に集められる。
【0041】
蓄熱部流体の熱エネルギーは、ここで電気エネルギーを発生させるために使用されてもよい。しかしながら、本発明の本質的な思想では、蓄熱部流体は、タービン120、121を通っては導かれない。むしろ、蓄熱部流体からの熱は別の作動流体に伝達され、作動流体は別個の回路、すなわち作動流体回路140において移送される。蓄熱部流体は、それ自身の回路、すなわち蓄熱部流体回路において循環する。
【0042】
これにより、1つのみの回路が使用された場合に生じうる次のようないくつかの欠点が克服される。水蒸気がタービンを駆動するためにしばしば用いられる。水が蓄熱部流体として用いられると、蓄熱ユニットにより蒸発させられるであろう。このような相転移により、とりわけ多量の熱エネルギーが蓄熱ユニットの端で(すなわち、蓄熱部流体が蓄熱ユニットに到達する入口領域で)蓄熱ユニットから取られてしまうであろう。このようにして、蓄熱が不規則的に放出され、材料の摩耗が著しくなるであろう。さらに、タービンにおける流体の圧力は比較的高くなくてはならない。単一の回路であれば、蓄熱ユニットへの全ての導管が、より高い圧力に対しても設計されていなければならないとの結果にもなる。蓄熱部流体の温度は、蓄熱ユニットの瞬間的な温度にも依存し、したがって変動する。対照的に、タービンは衝突する流体の特定の温度/圧力特性に対してのみ、最大限の効率を有する。
【0043】
これらの欠点は、異なる2つの回路、すなわち、作動流体回路140と蓄熱部流体回路130とを使用することにより、完全にまたは少なくとも部分的に克服される。
【0044】
蓄熱部流体ポンプ125は、蓄熱部流体回路130に配置され、蓄熱部流体を回路130において循環させる。さらに、作動流体ポンプ145は、作動流体回路140に配置され、作動流体を回路140において循環させる。作動流体ポンプ145は、蓄熱部流体ポンプ125よりも著しく高い圧力を付加し、この圧力は、例えば、少なくとも10倍大きくてもよい。
【0045】
蓄熱部流体は作動流体よりも高い沸点を有してもよく、これにより蓄熱部流体は液体で、蓄熱ユニットからの熱により蒸発させられなくてもよい。対照的に、作動流体は蓄熱部流体からの熱エネルギーにより蒸発させられ、タービン120、121を通過した後に、コンデンサ124において液化される。コンデンサ124は、示したように熱交換器を有してもよく、これを通って、熱が作動流体から除かれ、例えば加熱の目的のためにさらに使用されうる液体に伝えられてもよい。蓄熱部流体が蒸発しないことにより、上記の欠点、すなわち蒸発が急激に多量のエネルギーを蓄熱体30の一部から取り去るとの欠点が回避される。例えば、蓄熱部流体は油であってもよく、作動流体は水または水溶液であってもよい。
【0046】
熱エネルギーを蓄熱部流体から作動流体に伝達するために、少なくとも第1流体回路熱交換器131が設けられている。図示した例では、第2流体回路熱交換器132も設けられている。これらの各熱交換器131、132を通って、作動流体およびこれとは別に蓄熱部流体も導かれ、ここで、各管は、より伝熱を高めるために互いに対して熱的に接続されている。
【0047】
第1流体回路熱交換器131は、作動流体回路140に関して、タービン120の上流に配置されている。対照的に、第2流体回路熱交換器132は、作動流体回路140に関して2つのタービン120、121の間に配置されている。
【0048】
2つの流体回路熱交換器131、132は、蓄熱部流体回路130に関して、互いに対して並列に配置されてもよい。蓄熱部流体の1つの導管が、2つの流体回路熱交換器131、132の前で2つの導管135、136に分岐し、2つの導管135、136が、それぞれ2つの流体回路熱交換器131、132のうちの1つを通って導かれる。その後、2つの導管135、136は合流する。
【0049】
図示したように、少なくとも一部の蓄熱器100は、互いに対して並列である導管に配置されてもよい。これによる利点は、互いに対して並列に配置された蓄熱器100が、実質的に同様に放出を行い、すなわち、とりわけ実質的に同じ量のエネルギーが、通過する蓄熱部流体に伝達されるという点である。これにより、ある蓄熱器100が最高温度に達してさらなるエネルギーを外部送電網から取り入れて貯蔵することができなくなる一方で、他の蓄熱器100がその最高温度よりずっと低いという事態が回避される。蓄熱器100の多くが電気エネルギーを同時に取り入れることができれば、電気エネルギーの最大限可能な取り入れ量を、より大きくすることができるので利点となる。
【0050】
さらに、一部の蓄熱器100が、蓄熱部流体回路130に順に配置され、蓄熱部流体がこれらを連続的に通過されてもよい。この場合、連続的に配置された蓄熱器100に関して、排熱(すなわち、蓄熱媒体への伝熱)は変わる。しかしながら、この配置も次のような利点がある。蓄熱部流体は、最低温度(低温閾値)未満になるべきではないので、蓄熱器100が最低温度になる。しかしながら、蓄熱器100の最低温度は低いことが望ましく、なぜならば、これにより蓄熱器100の可能な温度差が高まり、蓄熱器100の貯蔵能力が高まるからである。2つまたはそれ以上の蓄熱器100が前後に配置されている場合、異なる最低温度で稼働させることができる。これらの蓄熱器100のうちの前方の(前の)蓄熱器の最低温度は、蓄熱器100のうちの後方の(後ろの)蓄熱器の最低温度よりも低くてもよい。後方の蓄熱器100により、蓄熱部流体の所望の最低温度/低温閾値が確保される。対照的に、前方の蓄熱器100は、非常に広い温度範囲にわたって(すなわち、後方の蓄熱器100よりも広い温度範囲にわたって)稼働されてもよく、特に、高い貯蔵能力を有する。或いはまたはこれに加えて、連続的に配置された蓄熱器100の各最高温度が異なっていてもよい。
【0051】
換言すると、制御機器を設けて、これを、連続的に配置された蓄熱器100のうちの前方の蓄熱器100を後方の蓄熱器100よりもより広い温度範囲にわたって稼働させるように構成してもよい。
【0052】
蓄熱体30の温度範囲、すなわち、稼働中に用いられる最低温度と最高温度との間の範囲に加えて、それらの蓄熱体30の全質量も、蓄熱器100の全貯蔵能力にとって重要である。いくつかの連続的に配置された蓄熱器の後方の蓄熱器100が、いずれにせよ狭い温度範囲にわたって稼働させられるのみの場合には、蓄熱体の質量が前方の蓄熱器100の蓄熱体よりも質量が小さいように選択される場合に、得策である。これは、例えば、前方の蓄熱器が後方の蓄熱器よりも多くの蓄熱ユニットを有することにより実現されてもよい。ちなみに、前方の蓄熱ユニットと後方の蓄熱ユニットの蓄熱器100は同様であってもよい。
【0053】
図示した部品に加えて、発電所110は、(化石)エネルギー担体用の燃焼器、例えば石炭、天然ガスまたは合成ガスを燃焼するための燃焼器を有してもよい。このようにして放出された熱も、作動流体または蓄熱部流体に伝達されてもよい。燃焼器の出力を電気ヒーター10による電力消費/取り入れに依存して制御するようにしてもよい。特に、(または専ら)電気エネルギーの供給過剰がある場合に、電力は消費される。この期間の間は、より少ない電気エネルギーが発生させられ、燃焼器の出力がより低減することが望ましい。燃焼器の出力は、蓄熱器100が充電される場合、特にこの電力取り入れが所定の閾値を上回る場合には、低い値に下げることができる。対照的に、電気ヒーターが取り入れる電力が閾値を上回らない場合には、燃焼器の出力は、低い値に下がらず、より高い値に保たれる。
【0054】
本発明の発電所を用いて、多量の電気エネルギーが熱エネルギーとして貯蔵され、その後簡単でコスト効率の良い方法で電気エネルギーに変換し戻されてもよい。