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  • 特許-非破壊試験方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】非破壊試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/041 20180101AFI20220819BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20220819BHJP
   G01N 27/82 20060101ALI20220819BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20220819BHJP
   G01N 3/40 20060101ALN20220819BHJP
   H01M 10/04 20060101ALN20220819BHJP
   H01M 10/058 20100101ALN20220819BHJP
【FI】
G01N23/041
G01N23/04
G01N27/82
G01J5/48 A
G01N3/40 A
H01M10/04 Z
H01M10/058
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019543548
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2018033165
(87)【国際公開番号】W WO2019058993
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2017178497
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519062764
【氏名又は名称】スピンセンシングファクトリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】波多野 卓史
(72)【発明者】
【氏名】関根 孝二郎
(72)【発明者】
【氏名】土田 匡章
(72)【発明者】
【氏名】八木 司
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-310954(JP,A)
【文献】特開2008-235054(JP,A)
【文献】特開2016-017823(JP,A)
【文献】特開2008-135568(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012215120(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01N 21/00-G01N 21/958
G01N 22/00-G01N 22/04
H01L 21/00-H01L 21/98
G01J 5/48
G01N 3/40
H01M 10/04
H01M 10/058
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線撮影手段と磁場分布測定手段を用いて試験対象を試験するにあたり、
前記X線撮影手段と前記磁場分布測定手段のいずれでも検出可能な共通のマークを前記試験対象上に固定的に形成した後、
前記X線撮影手段と前記磁場分布測定手段のそれぞれにより前記マークを含めて前記試験対象を試験し、
前記マークを位置基準にして、前記X線撮影手段と前記磁場分布測定手段による試験結果同士を対照する非破壊試験方法。
【請求項2】
前記X線撮影手段による試験結果に基づき特異箇所を特定した後、前記磁場分布測定手段により当該特異箇所を集中的に試験する請求項1に記載の非破壊試験方法。
【請求項3】
前記マークに位置基準以外の情報が記録されており、当該情報を前記X線撮影手段と前記磁場分布測定手段試験結果から読み取る請求項1又は請求項2に記載の非破壊試験方法。
【請求項4】
記X線撮影手段としてX線タルボ撮影装置が含まれる請求項1から請求項3のいずれかに記載の非破壊試験方法。
【請求項5】
記マークを構成する素材には、X線透過性の低い物質及び磁性体が含まれている請求項1から請求項4のいずれかに記載の非破壊試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種類の異なる複数の非破壊試験手段を用いて、試験対象の試験を行いたい、例えばリチリウムイオンバッテリー(以下「LIB」)をX線撮影装置(X線タルボ撮影装置など)と磁場分布測定装置で試験するような場合がある。X線撮影により、LIB内部の構造的な不具合や異物の有無、場所を知ることができる。また磁場分布測定により、LIB内部の電流分布を可視化することができ、リーク電流の大きさやリーク位置を知ることができる。
実際に試験する上では、それぞれの結果単独ではなく、両方の試験結果を組み合わせて多角的に判断する必要がある。例えば、X線撮影により異物が見つかったとしても、それがリークに繋がっていなければ、問題ない場合も考えられる。あるいはリークがあった場合、その部分のX線撮影により何が原因なのかを把握することができるなど、両方の試験結果を組み合わせて多角的に判断することができる場合がある。
【0003】
種類の異なる複数の非破壊試験手段による試験結果に基づき多角的に判断する場合に、それぞれの試験結果が単独にあったとしても、試料の表裏、検出時の向きなど試験時の試験対象の置き方や、装置毎の座標のズレ(XYスケール、直交度など)などがあり、そのままでは比較できない。単にマジックで印をつけるなどでは、試験結果には印は撮像・反映されない場合があり、一方の試験結果と他方の試験結果を位置関係も含めて比較・検討しようとすると、装置毎に同じ位置関係になるように事前に座標を校正しておく、試験対象にマークを形成し、それぞれの試験時に別途カメラでマークを撮像し、座標・位置関係を校正する、などが必要となる。その場合、校正作業が必要であり、カメラ等を追加することで装置が大掛かりになる、などの課題がある。
また、LIBのようにラミネート包装されている場合、包装の外部に印をつけても内部の電極等との位置関係がずれてしまうという問題もある。
【0004】
特許文献1に記載の発明にあっては、一方の試験装置において試験に先立って被試験物である半導体基板の素子形成領域の外形ラインの互いに直交する2辺やオリエンテーション・フラットなど外形的特徴に基づき試験対象の位置を特定し、他方の試験装置において試験に先立って図示しない位置合わせマークに基づき試験対象の位置を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2915025号公報
【文献】特開2017-104202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明にあっては、半導体基板に対し、種類の異なる複数の非破壊試験手段による試験結果のそれぞれにおいて特定される試験対象上の位置同士を合わせることができる。
しかしながら、LIBのようにラミネート包装されている試験対象は、外形的特徴が安定しておらず、先の試験から後の試験の間に外形が変化してしまうおそれがある。また、特許文献1に記載の発明にあっては、いずれの試験試験に先立ってカメラで画像を撮影するなどして光学的な探索を行っており、試験前に位置特定のための工程を要するとともに、上述したようにカメラ等を追加することで装置が大掛かりになるという課題がある。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、種類の異なる複数の非破壊試験手段を用いて試験対象を試験するにあたり、当該各非破壊試験手段の試験結果において特定される試験対象上の位置同士を簡単かつ正確に合わせることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、X線撮影手段と磁場分布測定手段を用いて試験対象を試験するにあたり、
前記X線撮影手段と前記磁場分布測定手段のいずれでも検出可能な共通のマークを前記試験対象上に固定的に形成した後、
前記X線撮影手段と前記磁場分布測定手段のそれぞれにより前記マークを含めて前記試験対象を試験し、
前記マークを位置基準にして、前記X線撮影手段と前記磁場分布測定手段による試験結果同士を対照する非破壊試験方法である。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記X線撮影手段による試験結果に基づき特異箇所を特定した後、前記磁場分布測定手段により当該特異箇所を集中的に試験する請求項1に記載の非破壊試験方法である。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記マークに位置基準以外の情報が記録されており、当該情報を前記X線撮影手段と前記磁場分布測定手段試験結果から読み取る請求項1又は請求項2に記載の非破壊試験方法である。
【0011】
請求項記載の発明は、記X線撮影手段としてX線タルボ撮影装置が含まれる請求項1から請求項3のいずれかに記載の非破壊試験方法である。
【0012】
請求項記載の発明は、記マークを構成する素材には、X線透過性の低い物質及び磁性体が含まれている請求項1から請求項4のいずれかに記載の非破壊試験方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、種類の異なる複数の非破壊試験手段を用いて試験対象を検査するにあたり、当該各非破壊試験手段の試験結果において特定される試験対象上の位置同士を簡単かつ正確に合わせることができる。これにより、種類の異なる複数の非破壊試験手段による試験結果に基づく多角的な判断が行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の一実施形態に係る非破壊試験方法のマーク形成段階における試験対象(又はその試験結果)の模式図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る非破壊試験方法の試験A段階における試験対象(又はその試験結果)の模式図である。
図1C】本発明の一実施形態に係る非破壊試験方法の試験B段階における試験対象(又はその試験結果)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0016】
種類の異なる複数の非破壊試験手段を用いて試験対象を試験する。種類の異なる複数の非破壊試験手段には、X線撮影手段、磁場分布測定手段、サーモグラフィー撮影手段及び硬度測定手段のうちいずれか2以上が含まれる。本実施形態では、主にX線撮影手段を備えるX線撮影装置と、磁場分布測定手段を備える磁場分布測定装置とを用いる場合を例とする。X線撮影装置と磁場分布測定装置とが別装置であり、これらにより試験するために、試験対象は両装置間を移動するため、各装置の原点座標に対して試験対象の置き方は一定しない状況である。
【0017】
試験対象1となる製品(例えば上述のLIB)を製造する段階で、試験A・試験Bで検出可能なマークm1,m2,m3を試験対象1上に印刷等により固定的に形成し(図1A)、その後に試験A(図1B)を行い、続いて試験B(図1C)を行う。
例えば、試験AとしてX線撮影装置により試験を行い、試験Bとして磁場分布測定装置により試験を行う。この場合、マークを構成する素材としては、X線透過性の低い物質及び磁性体が含まれているものを適用する。例えばマークの印刷においてX線を透過しにくい重金属と磁性体を含んだインクを適用する。X線撮影装置としてX線タルボ撮影装置(特許文献2参照)を適用することができる。X線タルボ撮影装置によると、通常のX線検査より高コントラストであるので、X線透過性の低い物質と磁性体とを同一物質とすることができる。但し、一般的にはX線透過性の低い物質と磁性体とは別々の物質にした方が、それぞれの性質の高い物質を選択でき、それぞれの検出性を高めることができる。したがって、X線タルボ撮影装置を適用する場合も、X線透過性の低い物質と磁性体とは別々の物質にしてもよい。
なお、磁場分布測定装置に搭載される磁気センサとしては、MRセンサ、MIセンサ、TMRセンサ(トンネル型磁気抵抗センサ)などが適用される。より高感度なTMRセンサ(トンネル型磁気抵抗センサ)を適用することが好ましい。
【0018】
さて、先行の試験Aによりマークm1,m2,m3を含めた試験対象1の試験結果が例えば図1Bに示すように検出される。図1Bに示すように試験対象1に特異箇所e1,e2,e3が検出されたとする。特異箇所とは、異常箇所、異常箇所と疑われる箇所、要追試験箇所などである。
【0019】
次に試験Bによりマークm1,m2,m3を含めた試験対象1の試験結果が例えば図1Cに示すように検出される。図1Cに示すように試験対象1に特異箇所f1,f2が検出されたとする。
【0020】
次に、試験A・Bの試験結果をマークm1,m2,m3を使って重ね合せて、正しい位置関係で比較、検討する。すなわち、マークm1,m2,m3を基準にした位置の試験Aと試験Bの試験結果同士を対照する。例えばマークm1,m2,m3を基準に平面座標軸XYを定め、当該座標軸XY上の座標を(x1,y1)としたとき、試験Aの試験結果上における座標(x1,y1)の検出値と、試験Bの試験結果上における座標(x1,y1)の検出値とを対照し、比較、検討することで異常判定を行う。例えば、図1B,Cにおいて特異箇所e1と特異箇所f2が同じ座標を有しているため、異常箇所と判定する。
【0021】
試験A・Bの検出結果をもとに、さらに試験C(例えば断面TEM)で詳しく故障解析しても良い。その時マークm1,m2,m3を位置基準に解析すべき個所を選定することができる。
以上により、種類の異なる複数の試験間で試験対象上の同一箇所を正確に把握、比較することができ、不良の原因解析や出荷検査を効率的に行うことができる。
【0022】
マークm1,m2,m3に位置基準以外の情報を記録してもよい。例えばマークm1,m2,m3を1次元や2次元のバーコードで形成し、個体識別番号を記録する。各試験装置は、その試験結果に含まれるマーク(コード記録媒体)から上記情報を読み取る。これは、マークをいずれの非破壊試験手段でも検出可能な共通のマークとしていることで可能となる。以上により、試験結果中に個体識別番号が一体に存在するから、同一個体の各試験結果の照合が容易かつ確実になる。
【0023】
非破壊試験手段はX線撮影手段や磁場分布測定手段以外でも、非破壊的に面内分布を計測し、結果として検出画像が得られるものであれば良い。例えばサーモグラフィーで熱分布を計測するサーモグラフィー撮影手段や、触針で各座標ごとの固さを検査する硬度測定手段、などが考えられる。サーモグラフィーであれば、放射率が試験対象の表面と異なるインク材料でマークを形成すればよいし、触針であれば硬さが試験対象と異なるインク材料でマークを形成すればよい。
【0024】
先行の試験Aで特異個所を検出して、後の試験Bでは、試験Aで見つかった特異個所を細かく集中的に試験する方法で実施してもよい。すなわち、複数の非破壊試験手段のうち一の非破壊試験手段による試験結果に基づき特異箇所を特定した後、他の非破壊試験手段により当該特異箇所を集中的に試験する方法である。「特異箇所を集中的に試験する」とは、特異箇所のみを試験対象とするか、特異箇所を残余の領域より高い検出分解能で試験することをいう。
例えば試験AでX線撮影装置により試験対象の全面を試験した結果から特定した特異箇所e1,e2,e3を、試験Bで磁場分布測定装置により細かく測定する方法が考えられる。X線撮影は全面を一度に撮影でき短時間で試験できるのに対して、磁場分布測定は測定ヘッドを走査しながら測定する方式など、試験対象の面積が広いと時間を要する場合がある。このような場合に、X線撮影で見つかった特異箇所だけを磁場分布測定装置で細かく試験する方法であれば試験時間を短縮することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の非破壊試験方法によれば、種類の異なる複数の非破壊試験手段を用いて試験対象を試験するにあたり、当該各非破壊試験手段の試験結果において特定される試験対象上の位置同士を簡単かつ正確に合わせることができる。これにより、種類の異なる複数の非破壊試験手段による試験結果に基づく多角的な判断が行える。
以上の実施形態においては、異なる非破壊試験装置により各試験を順に行ったが、複数の非破壊試験手段による試験対象の試験を同時に行ったり、それらの手段を備えた同一の複合装置により試験対象の移動なしに試験を行ったりしても、それらの試験結果に含まれるマークを位置基準にして試験結果同士を対照することができる。したがって、複数の非破壊試験手段の手段を備えた同一の複合装置を構成したとしても、各非破壊試験手段の座標の校正を行う手間が省ける。したがって、本発明は、種類の異なる複数の非破壊試験手段が別装置に構成される場合や、各試験を時系列に行う場合に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、リチリウムイオンバッテリー等の非破壊試験方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
試験対象
e1,e2,e3 特異箇所
f1,f2 特異箇所
m1,m2,m3 マーク
図1A
図1B
図1C