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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/26 20060101AFI20220819BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220819BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220819BHJP
   H05B 33/06 20060101ALI20220819BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220819BHJP
   G09F 9/302 20060101ALI20220819BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220819BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
H05B33/26 Z
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/06
G09F9/30 365
G09F9/302 C
G09F9/30 349Z
G06F3/041 412
G06F3/041 422
G06F3/041 512
G06F3/044 120
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018198906
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020068074
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金谷 平祐
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-085913(JP,A)
【文献】特開2014-053236(JP,A)
【文献】特開2016-110613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0188083(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/26
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/06
G09F 9/30
G09F 9/302
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素電極と、
多機能電極と、
前記複数の画素電極及び前記多機能電極に積層するエレクトロルミネセンス層と、
前記エレクトロルミネセンス層に積層する共通電極と、
を有し、
前記エレクトロルミネセンス層は、前記複数の画素電極及び前記多機能電極に連続的に重なって接触する下部共通層と、前記下部共通層の上で前記複数の画素電極にそれぞれ対応して相互に分離された複数の発光層と、を含み、
前記多機能電極は、前記複数の画素電極の隣り合う一対の間をそれぞれが通る複数の部分を含み、画像表示期間では前記複数の画素電極よりも前記共通電極に近い電位に設定され、
前記多機能電極の少なくとも一部は、タッチセンシング期間では送信電極群及び受信電極群の少なくとも一方の電極群として機能することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置において、
前記多機能電極は、前記複数の画素電極と同層にあることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された表示装置において、
前記多機能電極は、前記送信電極群及び前記受信電極群の一方の電極群として機能する複数の第1電極と、前記送信電極群及び前記受信電極群の他方の電極群として機能する複数の第2電極と、を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載された表示装置において、
前記複数の第1電極は、第1方向にそれぞれ延び、前記第1方向に交差する第2方向に隣同士が並び、
前記複数の第2電極は、前記複数の第1電極との重複を避けて断続的に前記第2方向にそれぞれ延び、前記第1方向に隣同士が並び、
前記多機能電極とは異なる層にあって、前記第2方向に断続する前記複数の第2電極のそれぞれを前記第2方向に接続するジャンパ配線をさらに有することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記複数の第1電極のそれぞれは、前記第2方向に幅の広い部分及び幅の狭い部分を有し、
前記ジャンパ配線は、前記幅の狭い部分と立体交差することを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載された表示装置において、
前記複数の第2電極のそれぞれは、前記第1方向に前記ジャンパ配線よりも幅の広い部分を有することを特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された表示装置において、
前記複数の画素電極に含まれる画素電極群は、前記送信電極群及び前記受信電極群の一方の電極群として機能する複数の第1電極を構成するために、複数の電極領域に配列され、
前記多機能電極は、前記送信電極群及び前記受信電極群の他方の電極群として機能する複数の第2電極を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載された表示装置において、
前記複数の第1電極は、第1方向にそれぞれ延び、前記第1方向に交差する第2方向に隣同士が並び、
前記複数の電極領域は、前記複数の第1電極に対応して、前記第1方向に複数列で配列され、
前記複数の第2電極は、前記第2方向にそれぞれ延び、前記第1方向に隣同士が並ぶことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載された表示装置において、
前記複数の第2電極のそれぞれは、前記第1方向に幅の広い部分及び幅の狭い部分を有し、
前記幅の狭い部分は、前記第1方向に隣り合う前記電極領域の間にあることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記複数の画素電極は、前記複数の第1電極のいずれをも構成しない他の画素電極群を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記多機能電極は、前記送信電極群及び前記受信電極群のいずれとしても機能しない電極群を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記複数の画素電極は、前記複数の発光層の発光色に対応して、複数種類に区別され、
前記複数の画素電極の隣り合う異なる種類の一対の間を、前記多機能電極を構成する前記複数の部分の対応する1つが通ることを特徴とする表示装置。
【請求項13】
請求項12に記載された表示装置において、
前記複数の画素電極の隣り合う同じ種類の一対の間を、前記多機能電極を構成する前記複数の部分の対応する1つが通ることを特徴とする表示装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記画像表示期間及び前記タッチセンシング期間は、交互に繰り返されることを特徴とする表示装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載された表示装置において、
前記多機能電極は、前記画像表示期間では前記共通電極と同じ電位に設定されることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置は、画素数の増加によって隣同士の画素が接近するようになってきた。有機エレクトロルミネセンスディスプレイは、発光層が画素ごとに分離していても、全画素に連続する層(例えばキャリア注入輸送層)を有することがあり、連続する層を伝わるリーク電流によって、隣の画素が発光してしまうことがある(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-103395号公報
【文献】特開2016-85913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フルカラー画素を低電流で駆動して単色表示すると、リーク電流により、信号を入力していない副画素も発光して、色度が変化してしまう。これはγ補正を困難にする要因となる。特許文献2には、電流を逃がすための電極が開示されているが、その電極の有効的活用が求められる。
【0005】
本発明は、隣の画素へのリーク電流の発生を防止する構造を有効的に活用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る表示装置は、複数の画素電極と、多機能電極と、前記複数の画素電極及び前記多機能電極に積層するエレクトロルミネセンス層と、前記エレクトロルミネセンス層に積層する共通電極と、を有し、前記エレクトロルミネセンス層は、前記複数の画素電極及び前記多機能電極に連続的に重なって接触する下部共通層と、前記下部共通層の上で前記複数の画素電極にそれぞれ対応して相互に分離された複数の発光層と、を含み、前記多機能電極は、前記複数の画素電極の隣り合う一対の間をそれぞれが通る複数の部分を含み、画像表示期間では前記複数の画素電極よりも前記共通電極に近い電位に設定され、前記多機能電極の少なくとも一部は、タッチセンシング期間では送信電極群及び受信電極群の少なくとも一方の電極群として機能することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、多機能電極の少なくとも一部は、タッチセンシング期間では送信電極群及び受信電極群の少なくとも一方の電極群として機能する。しかも、多機能電極は、画像表示期間では複数の画素電極よりも共通電極に近い電位に設定されるので、隣の画素へのリーク電流を逃がすことができ、有効的に活用されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の平面図である。
図2図1に示す表示装置のII-II線断面図である。
図3図2に示す部分IIIの拡大図である。
図4図1に示す表示装置の回路図である。
図5】表示領域の一部の平面図である。
図6】表示領域の一部を拡大した平面図である。
図7図6に示す構造のVII-VII線断面の拡大図である。
図8】画像表示期間及びタッチセンシング期間のタイミング図である。
図9】第2の実施形態において表示領域の一部の平面図である。
図10】第2の実施形態において表示領域の一部を拡大した平面図である。
図11】画像表示期間及びタッチセンシング期間のタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0011】
さらに、本発明の詳細な説明において、ある構成物と他の構成物の位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上あるいは直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置の平面図である。表示装置は、ディスプレイDSPを含む。ディスプレイDSPは、可撓性を有し、表示領域DAの外側で折り曲げられるようになっている。ディスプレイDSPには、画像を表示するための素子を駆動するための集積回路チップCPが搭載されている。ディスプレイDSPには、フレキシブルプリント基板FPが接続されている。
【0013】
表示装置は、例えば、有機エレクトロルミネセンス表示装置である。表示装置は、画像が表示される表示領域DAを有する。表示領域DAでは、例えば、赤、緑及び青からなる複数色の単位画素(サブピクセル)を組み合わせて、フルカラーの画素を形成し、フルカラーの画像が表示される。
【0014】
図2は、図1に示す表示装置のII-II線断面図である。図3は、図2に示す部分IIIの拡大図である。図3に示す樹脂基板10は、ポリイミドからなる。ただし、シートディスプレイ又はフレキシブルディスプレイを構成するために十分な可撓性を有する基材であれば他の樹脂材料を用いてもよい。樹脂基板10の裏面には、感圧接着剤12を介して、補強フィルム14が貼り付けられている。
【0015】
樹脂基板10上に、バリア無機膜16(アンダーコート層)が積層されている。バリア無機膜16は、シリコン酸化膜16a、シリコン窒化膜16b及びシリコン酸化膜16cの三層積層構造である。最下層のシリコン酸化膜16aは、樹脂基板10との密着性向上のため、中層のシリコン窒化膜16bは、外部からの水分及び不純物のブロック膜として、最上層のシリコン酸化膜16cは、シリコン窒化膜16b中に含有する水素原子が薄膜トランジスタTRの半導体層18側に拡散しないようにするブロック膜として、それぞれ設けられるが、特にこの構造に限定するものではなく、さらに積層があってもよいし、単層あるいは二層積層であってもよい。
【0016】
薄膜トランジスタTRを形成する箇所に合わせて付加膜20を形成してもよい。付加膜20は、チャネル裏面からの光の侵入等による薄膜トランジスタTRの特性の変化を抑制したり、導電材料で形成して所定の電位を与えることで、薄膜トランジスタTRにバックゲート効果を与えたりすることができる。ここでは、シリコン酸化膜16aを形成した後、薄膜トランジスタTRが形成される箇所に合わせて付加膜20を島状に形成し、その後シリコン窒化膜16b及びシリコン酸化膜16cを積層することで、バリア無機膜16に付加膜20を封入するように形成しているが、この限りではなく、樹脂基板10上にまず付加膜20を形成し、その後にバリア無機膜16を形成してもよい。
【0017】
バリア無機膜16上に薄膜トランジスタTRが形成されている。ポリシリコン薄膜トランジスタを例に挙げて、ここではNchトランジスタのみを示しているが、Pchトランジスタを同時に形成してもよい。薄膜トランジスタTRの半導体層18は、チャネル領域とソース・ドレイン領域との間に、低濃度不純物領域を設けた構造を採る。ゲート絶縁膜22としてはここではシリコン酸化膜を用いる。ゲート電極24は、MoWから形成された第1配線層W1の一部である。第1配線層W1は、ゲート電極24に加え、第1保持容量線CL1を有する。第1保持容量線CL1と半導体層18(ソース・ドレイン領域)との間で、ゲート絶縁膜22を介して、保持容量Csの一部が形成される。
【0018】
ゲート電極24の上に、層間絶縁膜26(シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜)が積層されている。層間絶縁膜26の上に、ソース・ドレイン電極28となる部分を含む第2配線層W2が形成されている。ここでは、Ti、Al及びTiの三層積層構造を採用する。層間絶縁膜26を介して、第1保持容量線CL1(第1配線層W1の一部)と第2保持容量線CL2(第2配線層W2の一部)とで、保持容量Csの他の一部が形成される。
【0019】
ソース・ドレイン電極28を覆うように平坦化有機膜30が設けられている。平坦化有機膜30は、CVD(Chemical Vapor Deposition)等により形成される無機絶縁材料に比べ、表面の平坦性に優れることから、感光性アクリル等の樹脂が用いられる。
【0020】
平坦化有機膜30は、画素コンタクト部32では除去されて、その上に酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide:ITO)膜34が形成されている。酸化インジウムスズ膜34は、相互に分離された第1透明導電膜34a及び第2透明導電膜34bを含む。
【0021】
平坦化有機膜30の除去により表面が露出した第2配線層W2は、第1透明導電膜34aにて被覆される。第1透明導電膜34aを被覆するように、平坦化有機膜30の上にシリコン窒化膜36が設けられている。シリコン窒化膜36は、画素コンタクト部32に開口を有し、この開口を介してソース・ドレイン電極28に導通するように画素電極38が積層されている。画素電極38は、反射電極として形成され、酸化インジウム亜鉛膜、Ag膜、酸化インジウム亜鉛膜の三層積層構造になっている。ここで、酸化インジウム亜鉛膜に代わって酸化インジウムスズ膜を用いてもよい。画素電極38は、画素コンタクト部32から側方に拡がり、薄膜トランジスタTRの上方に至る。
【0022】
第2透明導電膜34bは、画素コンタクト部32に隣接して、画素電極38の下方(さらにシリコン窒化膜36の下方)に設けられている。第2透明導電膜34b、シリコン窒化膜36及び画素電極38は重なっており、これらによって付加容量Cadが形成される。
【0023】
平坦化有機膜30の上であって例えば画素コンタクト部32の上方に、バンク(リブ)と呼ばれて隣同士の画素領域の隔壁となる絶縁有機膜40が形成されている。絶縁有機膜40としては平坦化有機膜30と同じく感光性アクリル等が用いられる。絶縁有機膜40は、画素電極38の表面を発光領域として露出するように開口され、その開口端はなだらかなテーパー形状となるのが好ましい。開口端が急峻な形状になっていると、その上に形成されるエレクトロルミネセンス層42のカバレッジ不良を生ずる。
【0024】
平坦化有機膜30と絶縁有機膜40は、図3に示すように、両者間にあるシリコン窒化膜36に設けた開口を通じて接触している。これにより、絶縁有機膜40の形成後の熱処理等を通じて、平坦化有機膜30から脱離する水分や脱ガスを、絶縁有機膜40を通じて引き抜くことができる。
【0025】
図2に示すように、複数の画素電極38の上に、例えば有機材料からなるエレクトロルミネセンス層42が積層されている。エレクトロルミネセンス層42は、下部共通層44を含む。下部共通層44は、複数の画素電極38に連続的に重なって接触する。下部共通層44は、例えば、正孔輸送層あるいは正孔注入層及び正孔輸送層の積層である。下部共通層44は、蒸着によって形成してもよいし、溶媒分散の上での塗布によって形成してもよく、表示領域DAを覆う全面にベタ形成されている。
【0026】
エレクトロルミネセンス層42は、複数の発光層46を含む。複数の発光層46は、下部共通層44の上にある。複数の発光層46は、複数の画素電極38にそれぞれ対応して、相互に分離されている。発光層46は、画素電極38(副画素)に対して、選択的に形成されている。
【0027】
エレクトロルミネセンス層42は、上部共通層48を含む。上部共通層48は、複数の発光層46に連続的に重なって接触し、発光層46の外側では下部共通層44に重なって接触する。上部共通層48は、例えば、電子輸送層あるいは電子注入層及び電子輸送層の積層である。上部共通層48は、蒸着によって形成してもよいし、溶媒分散の上での塗布によって形成してもよく、表示領域DAを覆う全面にベタ形成されている。
【0028】
エレクトロルミネセンス層42の上に、共通電極50が積層されている。ここでは、トップエミッション構造としているため、共通電極50は透明である。例えば、Mg層及びAg層を、エレクトロルミネセンス層42からの出射光が透過する程度の薄膜として形成する。本実施形態では、画素電極38が陽極であり、共通電極50が陰極である。複数の画素電極38と、共通電極50と、複数の画素電極38のそれぞれの中央部と共通電極50の間に介在するエレクトロルミネセンス層42と、で発光素子OD(図4)が構成される。
【0029】
共通電極50の上に封止層52が形成されている。封止層52は、エレクトロルミネセンス層42への外部からの水分侵入を防止することを機能の一としており、高いガスバリア性が要求される。封止層52は、有機膜54及びこれを上下で挟む一対の無機膜56(例えばシリコン窒化膜)の積層構造になっている。一対の無機膜56は、有機膜54の周囲で、接触して重なる。封止層52には、保護層58及び偏光板60(例えば円偏光板)が積層される。
【0030】
図4は、図1に示す表示装置の回路図である。回路は、走査回路GDに接続される複数の走査線GLと、信号駆動回路SDに接続される複数の信号線DLを有する。図1に示す集積回路チップCP内に信号駆動回路SDが配置されている。隣接する2つの走査線GLと隣接する2つの信号線DLとで囲まれる領域が1つの画素PXである。画素PXは、駆動トランジスタとしての薄膜トランジスタTR及びスイッチとしての薄膜トランジスタTR2と保持容量Csを含む。走査線GLにゲート電圧が印加されることにより、薄膜トランジスタTR2がON状態となり、信号線DLから映像信号が供給され、保持容量Csに電荷が蓄積される。保持容量Csに電荷が蓄積されることにより、薄膜トランジスタTRがON状態となり、電源線PWLから発光素子ODに電流が流れる。この電流により発光素子ODが発光する。
【0031】
発光層46で生じる光の色は、フルカラー画素を構成するための複数色(例えば赤、緑及び青)のいずれかである。つまり、複数色の副画素からフルカラー画素が構成され、副画素に対応する発光層46は複数色のいずれかの光を発する。
【0032】
図2に示すように、表示装置は多機能電極62を有する。多機能電極62は、複数の画素電極38と同層にある。エレクトロルミネセンス層42は、多機能電極62に積層する。詳しくは、下部共通層44が、多機能電極62に連続的に重なって接触する。
【0033】
図5は、表示領域の一部の平面図である。図6は、図1に示す表示領域DAの一部を拡大した平面図である。表示領域DAには、複数の画素電極38が配列されている。複数の画素電極38には、複数色(例えば赤R、緑G、青B)のいずれかでそれぞれ発光する複数の発光層46が積層されている。異なる色の複数の副画素からフルカラー画素が構成される。
【0034】
多機能電極62は、複数の画素電極38との重複を避けるようになっている。詳しくは、多機能電極62は、複数の画素電極38の隣り合う一対の間をそれぞれが通る複数の部分を含む。複数の画素電極38は、その直上にある複数の発光層46の発光色に対応して、複数種類(異なる色)に区別される。
【0035】
多機能電極62は、異なる色の副画素の間を通る。詳しくは、複数の画素電極38の隣り合う異なる種類(異なる色)の一対の間を、多機能電極62を構成する複数の部分の対応する1つが通る。また、多機能電極62は、隣同士のフルカラー画素の同じ色の副画素の間を通る。詳しくは、複数の画素電極38の隣り合う同じ種類(同じ色)の一対の間を、多機能電極62を構成する複数の部分の対応する1つが通る。
【0036】
図2に示すように、いずれかの画素電極38及び共通電極50の間に電流を流すと、下部共通層44を通って、隣にある画素電極38の直上にある発光層46の方向にリーク電流が流れる。しかし、リーク電流は、隣にある画素電極38の直上にある発光層46に至る前に、多機能電極62に逃がされる。これを可能にするため、多機能電極62は、画像表示期間では、複数の画素電極38よりも共通電極50に近い電位(例えば共通電極50と同じ電位)に設定される。
【0037】
本実施形態では、多機能電極62は、さらに、相互容量方式のタッチセンシングにも使用される。つまり、多機能電極62の少なくとも一部は、タッチセンシング期間では、送信電極群及び受信電極群の少なくとも一方の電極群として機能する。
【0038】
図5及び図6に示すように、多機能電極62は、送信電極群として機能する複数の第1電極64を含む。複数の第1電極64は、第1方向D1にそれぞれ延び、第1方向D1に交差する第2方向D2に隣同士が並ぶ。複数の第1電極64のそれぞれは、第2方向D2に幅の広い部分64W及び幅の狭い部分64Nを有する。
【0039】
多機能電極62は、受信電極群として機能する複数の第2電極66を含む。複数の第2電極66は、複数の第1電極64との重複を避けて断続的に第2方向D2にそれぞれ延び、第1方向D1に隣同士が並ぶ。
【0040】
図7は、図6に示す構造のVII-VII線断面の拡大図である。第2方向D2に断続する複数の第2電極66のそれぞれは、ジャンパ配線68によって、第2方向D2に接続されている。ジャンパ配線68は、多機能電極62とは異なる層にある。ジャンパ配線68は、第1電極64の幅の狭い部分64Nと立体交差する(図6)。複数の第2電極66のそれぞれは、第1方向D1にジャンパ配線68よりも幅の広い部分66Wを有する(図6)。
【0041】
多機能電極62は、図6に示すように、送信電極群及び受信電極群のいずれとしても機能しない複数の第3電極70を含む。複数の第3電極70は、上述したように、リーク電流を逃がすために使用される。
【0042】
図8は、画像表示期間及びタッチセンシング期間のタイミング図である。画像表示期間及びタッチセンシング期間は、交互に繰り返される。共通電極50は、画像表示期間及びタッチセンシング期間を通して0Vに設定される。
【0043】
画像表示期間では、画素電極38に2V~5Vの電圧が印加されて、階調に応じた電流が発光層46に流れる。ただし、2Vでは発光層46は発光せず、黒を表示する。画像表示期間では、図6に示す多機能電極62(第1電極64、第2電極66及び第3電極70)は0Vに設定される。したがって、画素電極38から下部共通層44を流れるリーク電流は、多機能電極62から逃がされる。
【0044】
タッチセンシング期間では、第1電極64に、図8に示すように、タッチセンシングのためのパルス信号が入力される。パルス信号は、-2V(Lレベル)から2V(Hレベル)に立ち上がる。パルス信号が立ち上がるとき、画素電極38はLレベルと同じ-2Vになっている。パルス信号が立ち下がるとき、画素電極38はHレベルと同じ2Vになっている。
【0045】
相互に接近する第1電極64及び第2電極66は容量結合するようになっている。第1電極64にパルス信号が入力されると、第2電極66に電圧が現れて電流が流れる。指による画面のタッチがあるとその電流が減少するので、これを検知することでタッチ位置の検出が可能になる。
【0046】
以上説明したように、多機能電極62は、リーク電流を逃がすためのみならず、タッチセンシングにも使用されるので、有効的な活用が可能になっている。
【0047】
[第2の実施形態]
図9は、第2の実施形態において表示領域の一部の平面図である。図10は、第2の実施形態において表示領域DAの一部を拡大した平面図である。タッチセンシングのために、複数の第1電極264は、送信電極群及び受信電極群の一方の電極群(例えば送信電極群)として機能する。複数の第1電極264が、第1方向D1にそれぞれ延び、第1方向D1に交差する第2方向D2に隣同士が並ぶ。
【0048】
複数の第1電極264は、複数の電極領域ERから構成されている。複数の電極領域ERは、複数の第1電極264に対応して、第1方向D1に複数列で配列されている。つまり、相互に間隔をあけて第1方向D1に並ぶいくつかの電極領域ERが、1つの第1電極264を構成する。複数の電極領域ERには、複数の画素電極238に含まれる画素電極238aが配列されている。なお、複数の画素電極238は、複数の第1電極264のいずれをも構成しない他の画素電極238bも含む。
【0049】
多機能電極262は、送信電極群及び受信電極群の他方の電極群(例えば受信電極群)として機能する複数の第2電極266を含む。複数の第2電極266は、第2方向D2にそれぞれ延び、第1方向D1に隣同士が並ぶ。複数の第2電極266のそれぞれは、第1方向D1に幅の広い部分266W及び幅の狭い部分266Nを有する。幅の狭い部分266Nは、第1方向D1に隣り合う(最も接近した)電極領域ERの間にある。なお、多機能電極262は、送信電極群及び受信電極群のいずれとしても機能しない複数の第3電極270を含む。複数の第1電極264(画素電極238aのグループ)と、複数の第2電極266とが、交差する方向に並んで、送信電極及び受信電極としての役割を果たすようになっている。
【0050】
図11は、画像表示期間及びタッチセンシング期間のタイミング図である。画像表示期間及びタッチセンシング期間は、交互に繰り返される。共通電極50は、画像表示期間及びタッチセンシング期間を通して0Vに設定される。
【0051】
画像表示期間では、画素電極238に2V~5Vの電圧が印加されて、階調に応じた電流が発光層46に流れる。ただし、2Vでは発光層46は発光しない。画像表示期間では、多機能電極262(第2電極266及び第3電極270)は0Vに設定される。したがって、画素電極238から下部共通層44を流れるリーク電流は、多機能電極262から逃がされる。
【0052】
タッチセンシング期間では、第1電極264(画素電極238a)に、タッチセンシングのためのパルス信号が入力される。パルス信号は、-2V(Lレベル)から2V(Hレベル)に立ち上がる。
【0053】
相互に接近する第1電極264(画素電極238a)及び第2電極266(多機能電極262)は、容量結合するようになっている。第1電極264にパルス信号が入力されると、第2電極266に電圧が現れて電流が流れる。指による画面のタッチがあるとその電流が減少するので、これを検知することでタッチ位置の検出が可能になる。本実施形態でも、多機能電極262は、リーク電流を逃がすためのみならず、タッチセンシングにも使用され、有効的な活用が可能になっている。
【0054】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 樹脂基板、12 感圧接着剤、14 補強フィルム、16 バリア無機膜、16a シリコン酸化膜、16b シリコン窒化膜、16c シリコン酸化膜、18 半導体層、20 付加膜、22 ゲート絶縁膜、24 ゲート電極、26 層間絶縁膜、28 ソース・ドレイン電極、30 平坦化有機膜、32 画素コンタクト部、34 酸化インジウムスズ膜、34a 第1透明導電膜、34b 第2透明導電膜、36 シリコン窒化膜、38 画素電極、38a 画素電極、38b 画素電極、40 絶縁有機膜、42 エレクトロルミネセンス層、44 下部共通層、46 発光層、48 上部共通層、50 共通電極、52 封止層、54 有機膜、56 無機膜、58 保護層、60 偏光板、62 多機能電極、64 第1電極、64N 幅の狭い部分、64W 幅の狭い部分、66 第2電極、66N 幅の狭い部分、66W 幅の広い部分、68 ジャンパ配線、70 第3電極、238 画素電極、238a 画素電極、238b 画素電極、262 多機能電極、264 第1電極、266 第2電極、266N 幅の狭い部分、266W 幅の広い部分、270 第3電極、Cad 付加容量、CL1 第1保持容量線、CL2 第2保持容量線、CP 集積回路チップ、Cs 保持容量、D1 第1方向、D2 第2方向、DA 表示領域、DL 信号線、DSP ディスプレイ、ER 電極領域、FP フレキシブルプリント基板、GD 走査回路、GL 走査線、OD 発光素子、PWL 電源線、PX 画素、SD 信号駆動回路、TR 薄膜トランジスタ、TR2 薄膜トランジスタ、W1 第1配線層、W2 第2配線層。
図1
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図9
図10
図11