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特許7126191カンジダ・アウリス検出用プライマーセット、カンジダ・アウリス検出キットおよびカンジダ・アウリスの検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】カンジダ・アウリス検出用プライマーセット、カンジダ・アウリス検出キットおよびカンジダ・アウリスの検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220819BHJP
   C12Q 1/6895 20180101ALI20220819BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20220819BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6895 Z
C12Q1/6844 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018086653
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019187360
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】槇村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山本 美佳智
(72)【発明者】
【氏名】アレシャフニ ムハンマドマハディ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】Rev Iberoam Micol,2018年04月21日,vol.35, No.2,p.110-112
【文献】Journal of clinical microbiology,2017年,Vol.55, Issue 8,p.2445-2452
【文献】モダンメディア,2014年,Vol. 60,pp. 211-231
【文献】J. Clin. Microbiol.,2018年06月27日,doi:10.1128/JCM.00591-18,p.1-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/11
C12Q 1/6895
C12Q 1/6844
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LAMP法によって検体中のカンジダ・アウリスの標的配列を増幅させて検出する際に用いられる、FIP、BIP、F3およびB3からなる4種のプライマーとループプライマーとを含むカンジダ・アウリス検出用プライマーセットであって、
FIPは、配列番号1からなるポリヌクレオチドであり、
BIPは、配列番号2からなるポリヌクレオチドであり、
F3は、配列番号3からなるポリヌクレオチドであり、
B3は、配列番号4からなるポリヌクレオチドであり、
ループプライマーは、配列番号5、6からなるポリヌクレオチドである
ことを特徴とするカンジダ・アウリス検出用プライマーセット。
【請求項2】
請求項1のカンジダ・アウリス検出用プライマーセットを含むカンジダ・アウリス検出キット。
【請求項3】
検体から得られた核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を行い、増幅産物を検出するカンジダ・アウリスの検出方法であって、
LAMP法におけるプライマーセットは、FIP、BIP、F3およびB3からなる4種のプライマーとループプライマーとを含み、
FIPは、配列番号1からなるポリヌクレオチドであり、
BIPは、配列番号2からなるポリヌクレオチドであり、
F3は、配列番号3からなるポリヌクレオチドであり、
B3は、配列番号4からなるポリヌクレオチドであり、
ループプライマーは、配列番号5、6からなるポリヌクレオチドである
ことを特徴とするカンジダ・アウリスの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンジダ・アウリス検出用プライマーセット、カンジダ・アウリス検出キットおよびカンジダ・アウリスの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カンジダ・アウリス(Candida auris)は、2005年に東京で初めて発見され、本発明者らによって新種として報告された病原酵母である(非特許文献1)。
【0003】
2017年8月に至るまで、日本で見つかったカンジダ・アウリス(Candida auris)は、局所感染部位(外耳道)から培養されたものであり、比較的低病原性である。また、一部の抗真菌薬(fluconazole)にやや低感受性を示すものの、耐性菌でもない1株に過ぎなかった。
【0004】
しかし、その後、韓国、インド、南アフリカ、ベネズエラ、英国、米国と、世界中に広がるにつれて、敗血症などを生じる強毒化した多剤耐性菌株が報告され、結果的に、2016年までに真菌として世界初となる汎世界的流行(パンデミック)の原因菌として認識されるに至った(非特許文献2)。2017年の5月17日の最新の報告では、既に米国では122人(前年は7人)がカンジダ・アウリス(Candida auris)に感染し、その高い致命率が報告されている。また、英国においてもカンジダ・アウリス(Candida auris)は拡散しつつあり、既に感染者は200人に達し、「Japanese Fungus」として報道され、医療機関に注意喚起がなされている。
【0005】
現状では、カンジダ・アウリス(Candida auris)の感染が易感染患者に限られており、アウトブレークは院内感染として生じているが、海外における流行状況を鑑みると、本発明者らが最初に報告した第1例のように、健常人がベクターになって鼻腔や外耳道などを介して院内感染を拡散している可能性が高いと考えられる。事実、既に本菌感染の流行下にある米国では、医療従事者の手指などの皮膚を介して容易に本菌の感染が拡大するとされている(非特許文献3)。したがって、盛んな国際交流や東京オリンピックなどを契機に、海外での強毒耐性化した菌が我が国に持ち込まれる可能性は高く、有害真菌の輸出入を未然に防ぐための検査体制の整備が焦眉の急である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Satoh K, Makimura K, Hasumi Y, Nishiyama Y, Uchida K, Yamaguchi H. 2009. Candida auris sp. nov., a novel ascomycetous yeast isolated from the external ear canal of an inpatient in a Japanese hospital. Microbiol Immunol 53:41-44. https://doi.org/10.1111/j.1348-0421.2008.00083.x.
【文献】米国疾病管理センター(CDC)Webサイト、Tracking Candida auris https://www.cdc.gov/fungal/diseases/candidiasis/tracking-c-auris.html(2018年4月22日接続)
【文献】Shawn R. Lockhart, Elizabeth L. Berkow, Nancy Chow, Rory M. Welsh, Candida auris for the Clinical Microbiology Laboratory: Not Your Grandfather's Candida Species,Clinical Microbiology Newsletter,Volume 39, Issue 13,2017,Pages 99-103,ISSN 0196-4399,https://doi.org/10.1016/j.clinmicnews.2017.06.003.(http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0196439917300417)
【文献】Nakayama T, Yamazaki T, Yo A, Tone K, Mahdi Alshahni M, Fujisaki R, Makimura K. 2017. Detection of fungi from an indoor environment using loop-mediated isothermal amplification (LAMP) method. Biocontrol Sci 22:97-104. https://doi.org/10.4265/bio.22.97.
【文献】Shigekazu Iguchi, Ryo Mizushima, Keisuke Kamada, Yasutomo Itakura, Atsushi Yoshida, Yutaka Uzawa, Yuko Arai, Miyako Takaoka, Sumie Sato, Aeko Goto, Toshiko Karasawa, Naoki Tsuruoka, Daisuke Totsuka, Erika Ono, Manabu Nonaka, Koichi Makimura, Ken Kikuchi: The Second Candida auris Isolate from Aural Discharge in Japan. Jpn J Infect Dis. 2018 Mar 22;71(2):174-175. doi: 10.7883/yoken.JJID.2017.466. Epub 2018 Feb 28.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、カンジダ・アウリス(Candida auris)は新種の病原真菌(酵母)であり、例えば、VITEK2 YST card(bioMerieux、Maracy I'Etoile、フランス)やAPI20C AUX(bioMerieux)のような臨床検査室で一般的に使用されている自動識別システムでは、近縁種(Candida haemuloniiやRhodotorula glutinisなど)を区別することができず、正しく菌種を判定することができない。このため、高感度かつ特異的にカンジダ・アウリス(Candida auris)の検出(同定)する方法を確立することが、診断・治療、臨床検査、院内感染対策、疫学解析などにおいて大きな課題となっている。さらに、カンジダ・アウリス(Candida auris)の感染症に対する治療を有効なものとし、また、感染拡大を抑制するためには、検出精度が高いことに加え、迅速に検出可能であることも不可欠である。
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、カンジダ・アウリス(Candida auris)を迅速かつ正確に検出することが可能な検出方法を提供することを課題としている。また、この検出方法に使用されるプライマーセットおよび検出キットを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のカンジダ・アウリス検出用プライマーセットは、LAMP法によって検体中のカンジダ・アウリスの標的配列を増幅させて検出する際に用いられる、FIP、BIP、F3およびB3からなる4種のプライマーを含むカンジダ・アウリス検出用プライマーセットであって、
FIPは、配列番号1に示される塩基配列のうち、5’末端側の5~20塩基と3’末端側の5~20塩基とを含むポリヌクレオチドであり、
BIPは、配列番号2に示される塩基配列のうち、5’末端側の5~20塩基と3’末端側の5~20塩基とを含むポリヌクレオチドであり、
F3は、配列番号3からなるポリヌクレオチドであり、
B3は、配列番号4からなるポリヌクレオチドであることを特徴としている。
【0010】
このカンジダ・アウリス検出用プライマーセットでは、FIPは配列番号1からなるポリヌクレオチドであり、BIPは配列番号2からなるポリヌクレオチドであることが好ましい。
【0011】
このカンジダ・アウリス検出用プライマーセットでは、さらに、ループプライマーとして配列番号5、6のポリヌクレオチドを含むことがより好ましい。
【0012】
本発明のカンジダ・アウリス検出キットは、前記カンジダ・アウリス検出用プライマーセットを含む。
【0013】
本発明のカンジダ・アウリスの検出方法は、検体から得られた核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を行い、増幅産物を検出するカンジダ・アウリスの検出方法であって、
LAMP法におけるプライマーセットは、FIP、BIP、F3およびB3からなる4種のプライマーを含み、
FIPは、配列番号1に示される塩基配列のうち、5’末端側の5~20塩基と3’末端側の5~20塩基とを含むポリヌクレオチドであり、
BIPは、配列番号2に示される塩基配列のうち、5’末端側の5~20塩基と3’末端側の5~20塩基とを含むポリヌクレオチドであり、
F3は、配列番号3からなるポリヌクレオチドであり、
B3は、配列番号4からなるポリヌクレオチドであることを特徴としている。
【0014】
このカンジダ・アウリスの検出方法では、FIPは配列番号1からなるポリヌクレオチドであり、BIPは配列番号2からなるポリヌクレオチドであることが好ましい。
【0015】
このカンジダ・アウリスの検出方法では、前記プライマーセットが、さらに、ループプライマーとして配列番号5、6のポリヌクレオチドを含むことがより好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカンジダ・アウリスの検出方法によれば、迅速かつ正確にカンジダ・アウリスを検出することができる。本発明のプライマーおよび検出キットは、本発明のカンジダ・アウリスの検出方法に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】カンジダ・アウリス(Candida auris)に特異的なDNA断片を含むpTAC-2Aurisプラスミドを用いて、LAMP Aurisプライマーセットを用いた本発明の検出方法による増幅産物の検出結果を、検出反応当たりのプラスミドコピー数(copies/reaction)で示した図である。A: negative control (no reaction), B: 2×100copies/reaction (34 min), C: 2×101 copies/reaction (33 min), D: 2×102copies/reaction (26 min), E: 2×103 copies/reaction (24 min), F: 2×104copies/reaction (24 min), G: 2×106 copies/reaction (22 min), H: 2×108copies/reaction (17 min)を示している。
図2】本発明の検出方法による臨床検体中のカンジダ・アリウス(C. auris)の検出結果を示した図である。
図3】本発明の検出方法による環境サンプル中のカンジダ・アリウス(C. auris)の検出結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、迅速に特異的かつ高感度でカンジダ・アウリス(Candida auris)を検出するための手段としてLAMP法に着目した。そして、カンジダ・アウリス(Candida auris)の標的DNAをLAMP法によって特異的に増幅するためのプライマー4種と、遺伝子増幅を加速させるためのループプライマー2種を設計することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
LAMP法は、従来知られており、標的遺伝子の配列から6つの領域を選んで組み合わせた4種類のプライマーを用いて、鎖置換反応を利用して増幅させる方法である。
【0020】
LAMP法におけるプライマーの設計は増幅対象となる領域(本発明では、「鋳型(ヌクレオチド、DNA)」ということもある。)において、5'側から、F3領域、F2領域、F1領域、B1領域、B2領域、B3領域という6つの領域を利用して実施される。これらの6つの領域に相補的な領域は、それぞれF3c領域、F2c領域、F1c領域、B1c領域、B2c領域、B3c領域と表される。LAMP法では4種類のプライマー、(Inner primer 2種類(FIPおよびBIP)、およびOuter primer 2種類(F3プライマーおよびB3プライマー)を用いる。Inner primer は、F1c(F1領域に相補的な領域)領域とF2領域、B1c(B1領域に相補的な領域)領域とB2領域を連結して構成される。一般にLAMP法は、PCR法と比較して、1本鎖から2本鎖への変性反応が必要なく、60~65℃の定温で反応が進行するという特徴があり、サーマルサイクラーのような機器を必要とせず、また、増幅速度が速く、特異性も高いという特徴がある。
【0021】
また、ループプライマーを用いたLAMP法も、従来よく知られている。ループプライマーは通常、LAMP法の増幅産物のダンベル構造の5'末端側のループの1本鎖部分(B1領域とB2領域の間、またはF1領域とF2領域の間)に相補的な配列を持つものとして設計される。それぞれループプライマーB(LB)、ループプライマーF(LF)と称される。ループプライマーを用いることにより、DNA合成の起点を増やすことができるため、遺伝子増幅を加速させることができる。
【0022】
本発明のカンジダ・アウリスの検出方法では、検出対象となる検体は、被験者から採取される臨床検体(例えば、血液、組織、腹水、気管支肺胞洗浄液、及び皮膚・粘膜・外耳道ぬぐい液等)あるいは培養菌体などの材料を用いることができる。これらの検体は、LAMP法による増幅反応の前処理として菌体の濃縮、分離、菌体からの核酸の単離、濃縮などを行うことができる。
【0023】
試料核酸は、検出対象となる検体から公知の方法に従い準備することが可能である。試料核酸を準備する方法は、従来公知の方法を使用することができ、例えば化学的溶菌(Proteinase Kなど)処理、物理的破砕(ビーズ破砕など)処理、アルカリ溶解する方法や、核酸をフェノール・クロロホルム抽出、磁性ビーズ、シリカメンブレンなどを用いて精製する方法などを例示することができる(非特許文献4)。また、市販の核酸抽出キット(例えば、株式会社カネカ製;Kanaka Easy DNA Extraction kit version 2など)を適宜利用することもできる。
【0024】
本発明の検出方法で使用されるプライマーセット(カンジダ・アウリス検出用プライマーセット)は、4種類のプライマー(FIP、BIP、F3、B3)、および、必要に応じてループプライマー(Loop-B、Loop-F)を含む。
【0025】
プライマー(FIP、BIP、F3、B3)およびループプライマー(Loop-B、Loop-F)は、以下のポリヌクレオチドからなる配列を含む。このプライマー(FIP、BIP、F3、B3)およびループプライマー(Loop-B、Loop-F)は、本発明者らの知見から、LAMP法に適したカンジダ・アウリス(Candida auris)の特異的塩基配列(標的配列)に基づいて設計されている。
【0026】
以下に、本発明のプライマーセットの好ましい形態を示す。
(カンジダ・アウリス検出用プライマーセット)
FIP:AGGCTACTGAGCTTGCTGGTGTAACCAAACCAACAGGAGAGG(配列番号1)
BIP:ACGGTTTCAGGGTTAGCATGGCTCAACAAAGTCGCTGGTACA(配列番号2)
F3:GGGAAAGGAACCCTGACCT(配列番号3)
B3:GGACACAGCATTCGAAGTGT(配列番号4)
Loop-F:CATCTCGAAGGCCTCGGT(配列番号5)
Loop-B:CACATACTCGAACGGAGTC(配列番号6)
【0027】
本発明のプライマーセットには、LAMP法によるカンジダ・アウリス(Candida auris)の特異的検出を阻害しない範囲で、上記配列における塩基の置換、欠失、配列長の変更などの設計変更がなされたものも含まれ得る。とりわけ、FIPおよびBIPプライマーは、その中央部の概ね10塩基について任意の配列を許容し、さらに1塩基から200塩基程度の任意の配列が挿入されたものも含まれ得る。また、Loop-FおよびLoopBプライマーは、LAMP法の増幅産物のダンベル構造の5'末端側のループの1本鎖部分(B1領域とB2領域の間、またはF1領域とF2領域の間)に相補的かつ当該領域に特異的な配列を持つものであれば機能しうることから、その配列は配列番号5または6に限定されるものではない。
【0028】
すなわち、本発明のプライマーセットにおいて、FIPは、配列番号1に示される塩基配列のうち、5’末端側の5~20塩基と3’末端側の5~20塩基とを含むポリヌクレオチドであればよく、また、BIPは、配列番号2に示される塩基配列のうち、5’末端側の5~20塩基と3’末端側の5~20塩基とを含むポリヌクレオチドであればよい。
【0029】
本発明の検出方法では、上記のプライマー(FIP、BIP、F3、B3)、および、必要に応じてループプライマー(Loop-B、Loop-F)を使用して、検体の核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を行い、増幅産物を検出する。
【0030】
核酸試料の標的配列をLAMP法により増幅させる条件は特に限定されず、適宜設定することができる。具体的には、LAMP法による核酸増幅反応の温度としては、例えば約50℃~約65℃の範囲を例示することができ、反応時間としては、例えば20分~60分の範囲を例示することができる。
【0031】
また、本発明の検出方法に使用されるカンジダ・アウリス検出キットには、上記のプライマーセットの他に、試料核酸を増幅させる際に使用する試薬として、ポリメラーゼ、バッファー、dNTPs、MgSO4などを含むことができる。本発明の検出方法において使用する試薬の濃度などは、反応容量、反応時間などに応じて適宜調製することができる。また、試料核酸を増幅させる際に使用するポリメラーゼは、公知のものを適宜使用することができる。例えば、Bst DNA Polymerase(栄研化学社製)、Csa DNA Polymerase(ニッポンジーン社製)などを使用することができる。
【0032】
また、この検出キットでは、プライマーセットおよびその他の試薬は、別個に収容されていてもよいし、それらの一部が混合物とされていてもよい。また、プライマーセットは、4種のプライマーおよびループプライマーからなるものであるが、これらプライマーは、それぞれ別個に収容されていてもよいし、それらの一部が混合物とされていてもよい。
【0033】
さらに、本発明の検出方法において、LAMP法による増幅産物の検出には、公知の方法を適宜採用することができる。例えば、増幅産物について、反応液の白濁を肉眼的に観察する方法、反応液の白濁を分光光度計を用いて測定する方法、蛍光目視検出方法、増幅された塩基配列を特異的に認識する標識オリゴヌクレオチドや蛍光性インターカレーターを用いる方法などを例示することができる。また、反応終了後の反応液をそのままアガロースゲル電気泳動にかけ、エチジウムブロミド染色後、紫外線照射によって増副産物に特異的なラダー状の泳動像を確認することもできる。
【0034】
また、本発明の検出方法において、LAMP法による増幅産物の検出には、単に増幅産物の有無を検出することだけではなく、増幅産物の量を測定することなども含んでいてよい。
【0035】
本発明の検出方法では、上記のプライマーセットを含む検出キットを使用して、検体の核酸試料に対してLAMP法による核酸増幅反応を行い、増幅産物を検出する。プライマーセットは、カンジダ・アウリス(Candida auris)の特異的塩基配列を標的として設計されている。
【0036】
本発明の検出方法では、近縁種を検出することなく、カンジダ・アウリス(Candida auris)を特異的かつ高感度で検出することができるため、例えば、各種微生物が混入した検体(汚染臨床検体や環境検体)であっても、カンジダ・アウリス(Candida auris)を正確に検出することができる。また、本発明の検出方法では、検出に要する時間も短時間(20分~60分程度)であり、迅速な検出が可能である。
【0037】
本発明のカンジダ・アウリスの検出方法、プライマーセットおよび検出キットは、上記の実施形態に限定されることはない。
【実施例
【0038】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>LAMP Aurisプライマーセットの設計
LAMP法において使用するプライマーセットを設計するために、4つのカンジダ種、C.auris(PRJNA342691)、C. tropicalis(GCF_000006335.2)、C.albicans(GCA_000182965.3)およびC. lusitaniae(LYUB00000000.2)のゲノム配列を整列させ、 Mauve(バージョン20150226)を用いて比較し、他のカンジダ種と相同性が低い配列を検索することによって概ね数百の塩基配列を得た。
【0040】
この数百の塩基配列のうちの大部分の配列はプライマー設計に適さないが、本発明者らの経験に基づく知見からLAMPプライマーセットの設計が可能であると思われる4種の塩基配列(候補配列)を選別した(配列番号7-10)。
(配列番号7)
CACTACAGCAGGATCAACGGATGCTTCATACTCTGAAATCACCTTTAATGCTGGGATTGGCGCCCACACAAAGTTGGCTGGGTGGACAAACTCCTCCACAGAAACAGAACCGAAACGGCCAGCGAGGAACAACGAAGCAGCAACGTCAGCCTTCAAGGTTGAGCCAGCATCCGAAGATACCACAACAACCTTGCGTGCAGACGAAGGCACAGAAGCCACGAAGTGTTCTTGAGCAAATGGGAAAGGAACCCTGACCTTAACCAAACCAACAGGAGAGGAAACCGAGGCCTTGGAGATGACACCAGCAAGCTCAGTAGCCTGGTGAGCACCAAAAGCGACAAAAACAGTTTCAGGGTTAGCATGGCCCACATACTCGAACGGAGTCAAATTTGTACCAGCGACTTTGTTGAACACTTCGAATGCTGTGTCCACTGCCTTTTCCAAAGAATAGTCGCCGTCGGGAATCGAAGACACCAATTGCTGGTATAAGCGGCCCACATCGGTCACAGACAAGATGTCATCGAACTTGGAGATCGCTTTAGCAAACTCAGGACCGTCGAAAACGTGCAAGGCTGGTCCCTGAAGCAAAGTAGCCACAAAGTGAGTGAAGATGGTGATGTACTGCAACTCCACGGCGCTCTGCGAGTCCGCCGGGGCCACCACAGGGATACCCGTGGAGCGAGCAGTTGCCAAAGGAGTCGTATAGTTTGAAACCAACGAGTTTGTTTCCACATCAAAGTCGATAGCGGAAACGTTCAAGGTCAATGGCAATTTTGCAGCCTTGGCCAAAGTGGGCTGCATCCATGGCAAGGCGTTGGCGCCCAACACAGCAGTATGTGGTCCAGTGGAGGACACGTTGCTAGCGGCATAGC
(配列番号8)AGTAAGAGCTGCGGTCATCAAGCTCAACATCTTCATCGTCTATCGCCGACAGAGACGCCTCCATTTGGTTTTTTCTTGTT
AAATTGTCCACCGACAAAGGCTGGTGGCCTGAAGTCTCCGCAGAGTCTGCCATAAAGTTTGAGCAATTGTAGATGTTGTA
GGTTTTTTTTGCAAGTGTTATCGGCGTCCGAAGTTGAAGTGTGACGGGCGCGCAGGAAGGTCAGAAAGCAGCAAGGAAAC
GGCCAAAGGTACCAGATAGAAGAAACGGTCTGTTGGGGCTGATTTTGTAGAAACTGATGTTTAATTCACATTTTCTTCAC
CCGTGGGGGTTCGTTGGGAACCGTCACGAGGCACGTTTGTTGTGGGGCACGTGTGGTTGCAAAATGAGATAAGCAAGGTA
GTGTGGTTTGACAGCTTCATATAGGAAGGTGCAAAAAAGTGCAAAGAGAGAAGAATGTAAATTGAAATTGTAATATTCCA
ATGAGTGAAGTGCTAATTTTGGAAATCTGAGCTTTTTAATGTCTACTCAACTTTGATGTTTCAGTGGATGAAGCCTGTTT
GGCGTAAAGTCCACAGGTTTTCGGAGTTTTGGCGAGCATCGACACATAACAAGGCAACAATGCAAAGTCACGAAAATCTC
GAACAATGGCGAGTCGTAAATTGGGTCTCTGATTTTCCTAGCGTGAATTGAACAGAAACAGTCCAAGTCCATGCTTGCAT
TCAGTCACTTGTTTTGAGATGTGGCCGGTGAGAGCCACTGAAAGCGAACCACATACATGTATCCATAATGTACACAATAA
AGGCTCCTAGATCAAAGGATCAAGCTCATAATACAAGCAACAACGCCATCGTGTCAGCCGAGCTATTTGAGTGTCACCTG
AAGAATAATACCCATACTTGCGCTCTTAAGTGGTAGTATCTGCTGAGCGTCTATCTGATCTGTTGAACTGCTACCACGAG
CTTTGGGGATTTTTCGCAGCAATTATACCTGGGCAAATACAAAGCACAATATTCACAAGCACAGCACTTGTAGGCGACCT
CATGCCACTGGTCTGATTAACAAACAATAAGCTTTTGTTTGATAAAACTAATAACGGATCTTGCGAGGGTGATGTAGCTA
TGAAGAACATGCATGCAACCTCAGCCAGCATGAGGTATTAGCTCGTAGAATGGCTACGAAGAGACCTAAACAAAAGTAGA
AGTAAGTTTAAAGCCTTTCCGATGGAATTTAACAAACTACAAAGTGGAGCAATTCTTTTTGTCGGCTGTTATCTGCTTGA
GTGGTATTCATCACGCTGTCTGTGCTCCCGAGGACTCTCCGATACCACAAACTATAATGTTAAATCCACATATTTTACAT
GAGCCGAGATGAAGTTATGCAGACTCAACACAAAGGAAATCAGGGGTCGTATCTTAAGTTCTTCTTGTTTCTAATAATCC
TCTCCAGAGGACTCCATTTGCAGCCACAAATACCTCATCGCGAAAAAGTGCAGCTTCATCTCACTCCATAACTATGTCAG
CTGCCGTCGAAAC
(配列番号9)
ATACTTCAACGAAGGAGATTACTTCCAATTTCGAAGCAAAAGATTGGGGTCAGAAGAGCCCAAGTCACCAAGGTCAGGTT
ATGACTCGACAAAGCAAGCAACAGCCGACGAAGATAAATCGGAGGGAGATGAGGACGATATATTAAATGAGGGAAACCTC
CATTTCCTTGACTTTATTGAGAATAAAACCTTTGGTGTCAACCCCAGATCAAAGTCGGTCTTCGACCGCCTGGCATACGA
CTCTGTTGCTTTCATGTCGAACGATGCTGAGGAAGAGGAAAAGGAGAAATCTCTCACGACTACCTTAGAAGTTCTTGTTG
CTCCAGATTCTCCGCCTCCAAGCGATTACGTGATCGATCTTATTCACGAGATATCATCAATTTGCACGGACGTAAAACTC
ATGTTACGTTCGCTCAATGTGAAACAAATGTCGAAAGCGTTGAAGCAGACTGAGGAGGACTACCACAAGCTTGAAAGTTT
GGCTCGTCAAGAACGTGAAACCGACGAAGACAACAATCTGCAAATCACTATGAAACAGACGTCACCTACTAGGCCATCGG
TGACGACGCTAAAGACGGGCAGTGGATCTGTGGCTTCTGTTCCGTTCAGGCGTCTGCAAACACTGGAAATCAGTGAGCAG
ATTCCGCCACCGTCGCAATTGCAAGGCATGAGATCGTCAACATCGCTCAACACCACAACATCGGCTCTCAAATTCACGCC
TCTTAAGTCTGCAACAACAGGTGGTAAAACATTTTCTAAGGGCCTGCTCGAAGACAACAAAGATTTGGACCGGCGCATTG
CACAACTTGTGAAAGAAGATGAGAAGAAGAAGCTGAAGGCTGCCAAAGAAGAGAAGCAAAGATTGGCGAAAGAAGAGAAG
CTAGCTGCTAAACAAAGCAAGCAGAGGGAAAAGGAAAAACAAAGAGAGGAGTTGTCGCATACGAAGCACAAGGCTACTCC
TCTTGAAAGGAACCATACTGAGCCACAAGACTTCTTCTCTACGAAGCTGAACCGCGAAGATACCGATGAGTCTTCGTTGT
TTTCGAAGCCATCGATCACTTCGAAAGACAAGAAAGGAAGCATTATACTGCGGATCGGACACAAACTCAAACATACCGAG
CCGCTCAAGCACACGGAGTCTGTTGACAGTGATGTGAGGAGTATTTCCACAACTAAATCGTCCAGTAGCCAAACGTCAAA
CACTAGCAAGAAGTCGTCACGCAAGGTTGGATTATTTGGGTTGCGCAAGAGGAATTGAGAAACAAAAGGCAAGAGAGAAA
AAAAAAAAAAAAATATATATATATATACTAAGTTGGAGGAGAAATCAATCTGCTCCTTGTCAGTGTCTTTTGGAATGATT
GCATCGTAATATTCTTTTCTGGAGATTTTTTTTGGGTTTTTTGGAACAGCTGCAACACCATCAACACTCTGAGAAACAAC
TCCCCGAGACGCGCCAGCTGCGGCTGCCGCGTAGGAAAGTTGAGCCCCACTGGACTTTTGAGAAGTCTGGGTGCCGGAGG
AGGGACCTTCGGCGCGATTTGGGGAGGAAGCAACCTTAGTTGCTTTCTCCAGGATCATTGGATCGCTGAGCAGGGAGTTT
CTGTTCTCCTGACGCGTACCGCCTTCTACGGATGCGACGCTAGAAGATACAGAAACACCTTTTCCAGGACGATCAAACTC
GATAGGTGGTTCAGGAGGTCGGGAATCTCGCTCCACGGTACCGGGAGGTCGATTCGCGCCTTCTGCTTGATGCCGAACGA
TATTATTCAGCATTTTTCAAAAAGGATCTAAGGGTGTAAGCTTGAGCTTGTAAATGTATTCTAGAACACCGAAGTATTTA
AAACTTTGCTTTGAGTCTTTTATTGTATTATTAACTACTGTTTACTATTGCTGTCATATTGAACACCTTTTTGAAATTCG
CCAC
(配列番号10)
CTTCGTTGCGTTGAGAAGCGCCTTGTCCAACTTTTTGGACTGCTCTAAAAAGCTGCGAAGCTTCTTAGACTTGGAGTAAA
CTTGTAGGAATGACACGGCTACACCTTGAAGAAGGGTGATGGGGGGAGTGACTCCTCCGTGAACGTAGAGCATGTACATG
AAAGTTGCGTAGAGGCCACCTTTCGAGCCGGCAACAAAGATCTCAAATACTTGTGTGTAAATGGGCTTGTTCTCCCACAC
ACGTTCTGAAACATCTTCGTCGTCGGGATCCTCGTCCTCATCGCTGATTTCCTCATCATTCGATACCTCGTTGCCACCCG
GCGACAGCAATCCCTGATTATTGGGGATGGTGTAGAACATGAGCTCATAAACGTTGAGTACGAGTTTACCGAAGTATGCT
ATTGCTTCCATCCCGAGCACTCCGTAGTGGATACCAAACAAGAGACTACCAACAGAACGTGTGCCCTGGAAGACGTCGTA
AGCCAAAAACTTCGCTAGGAGGAGGTCGGCGACAGTAAATACCTCGAGAAGAATCAGAACCCTATACGTGGCGAAGTTGT
AGAAGACCTGGCGAGAGGTTGATATCTGATGCGGAATCATGTTCGTGATTTTCATCTGAAACGAGTCAAGACGGTCCGTC
ATGATGATATGAAACACTTTGAACATGATCGTGAGGTTGATCCACACTATATTGAGAAGAAGATTATCGTCACTAAACAT
GATTATGAGAAGATTAATAAGGTAGAAGGGTAACTCCTCCGAAATATGCTCAATTTCAATGATCCGAAGCTCTCTGAAGA
TCAATTTGATCCCTGCAAACCCCATGAGAATAAAGCAACTTACCACGAAGTTGAGGAGAATTAGGAGTCTCACGCTCTCC
GTGAGCTCGTACATCATGGTAAGATAATCGACAGAGTTCATGGCCAGAACCACGAGCGATGCAGCGAAAAGGCCGAAGCT
AATGCCGCCATACACTGCAATTGCAATGGTGCCCTTTCGAGGCATGGTTATGGTGTTTTGTCTTTCTTTTGTGGGGACGA
AAGGTGTGGAAGCCGGAAGTAAACACCTCACCTTCGCGATAATCCTAGATCTACGCTAACTTGCGCATAGAGGGTCGTGC
GCGCAAAATTTTCCCCAGACTTCCAATTAGTGGTCGCTTGAGTCTATTAAAGTTGCGGAATTCGGGACTTATGGAGGTCA
TTGCGTAATGGTGACATTTCAGTTCGTCTTCTTTTGATGTCTGGAATCATGCTCTGTCCGTTTAATTGCCTCATAGGCAG
CCTCAGTGGCAGTCTCATGGGCAGTCGCAGAGGTGATCTGGATGCTGGTGAAGTTGCCGGGCGCTTCAATTGAGCAGGTG
ATCTTTGTAGCTCTGACAATGATTGGGAAAATATTTTGAGGTTCTTCTCGGTGTGATTTAAGTCGCGAGAAATTCCGTGG
TAGTTCTTATCGATCATGTCGGATACAATATGTGCCTTTTGAGTTGCAGCTTTCTCTATAGAGTCCGCCTGGCTGCGACT
AGTATTGGTAATATCAGCCAAAGCATTATCAATAACTTGTTTGGTCTCCTTCTGTAATCTTCCAAAGGCTCCCTGCACAT
CTTTGGTGGCAACCTCTTTGAAGGACTTGAGATCCGTGGCCACTGACTTGGTCTTTGTTGATATCGACTGTAGCGTTTGG
GAATTTTGATGAATGTAGGCCTGATACTCTTTGCTTAGAGTTGTCTTCTCTTCTTGCATGAATTCTGTTGCACTTTCCCT
AACCGCCTCGGCATTGGCGTCCTTGCTTGACTTCACGAACCCGTCAAATGCTAGGTGCATTTGTTGCATATATTGCTCCT
TAAGTGCCTCATACGTCTCTGCCATACGAGCCTTGAACTTCTTCTCAAAGGCCTTGTACATTGCGGAGTCTTCCAGAAGA
TGTGTTGAGTTGATGTAATCCGTTAGTTGCTCATTCCTCTTGTTCACTCCAGCTACGTGCAGCGAGAAATCGAGGTTTTG
ACAAACATTATGAAGGGTAGAAAAGTCCATCAGATTAGCGAGAACCTGCTCGAAGGCTGATGTCTCCTTCTCTACTTTGG
AAGAAACATCATTTAATTTGCCCTCGAGAGTCTTCTTAAAAAGGCAAAGATGCGTTTGAACGACGGTGGGGATCTCCTTC
ACATTCAGCAGCACCTGAGTTAGGTCATTAAGATTGTTAATCACCTCATTAACGTCCCTAATGATACTCAGAATTCCAGT
TCCTGTAACATTAGAGACTCGCTCTTTTTGAGAGCTGTATTTGTCTTTTAAATGCATGAACTCTTTTGTAGTCTTGTGAA
GCTCAGCGTCTTTAGCTGCGAGGTCCAGCCTGCTTTTCGAGTTCTCGCTAAGTGTTTGCTCGATCTGTAGTTTGAGTTCT
GCAATATCCTTGTCCCTCCCTTGAAGTTTGGCGTGTAGCCCTGTAATCTGAGTGTCTTTCTCCTTCAACTCGGTTCTAAG
TTCCGCAATTTTCCTTTCAAAGTCCTCGTAGTTCTGAAGACTGATCCTGATGCTGTTGTCTTTGCCTTTTGTAGCCAATA
AGTCTCTATTCAATCTAGAAATCTCCGCTGATAACTCCCTTATCTTTGTACGTTTGAGAACGAGCTCGCTGTCGGCCGTC
GATTGTGGTATATTTTTGATATTCTTCGCCTTGGAAGCGTAAGTTAGCGTCAGCATCGTTTCCATTAAGTTCAGCTTTGC
CGGGGAAATGGTAGCAATCAATGCGGTTTTGGTCCGCCCTCCAATAGAGCCTTGAAGAAGACGGGTGAGTTTAGACTCTC
TATAAGGTATATGTCTAGGTTCTTTGCCTTCACTCAATGCACTGATGACCTTTCCCAAAGTCAAAAGACTCTGGTTGATC
AGGCCCGCTTCTTTGGCACTAGCATCGGTAGCGCCAGACTTGATGATATCTTCCAGCCCCGCGAGATCCACCAAATTCAT
TTTTGACAGCCGCACCACCTCTTGCCCTGACGACGACATTACTGTTTTGTGAAGCGTTATGGTGAAAATGGTGTGAGAAC
GTGATGAGCGGGAGTTGAGTTTAGTGGTACCCATCTTCCTCTTCCCTAGGCACTTTTGTAGCATCTCAAACCCCAGCTTC
GCATCCACCACGTCAAGCTCATACAAATTCTGGATCATTGTTCCCCTTCCATCTCTCGAACCATCCCCTAGGAGCCTTAG
TTTCGGCTTTTTTGAGTTCAACTCAAGCTCATCGTTGACGAGATCATGGAGCTCTTCCTTGTACAATTCCACACACGACA
ACTTGACACAGATGTCGTCTTTGGCCACCTGAAAAAGCTCTTGCAACACACGAGGCACAATACCCGCATGCTCTCCCACT
AAATCCCCCAACATTGTATACGTCTTTCCTGAGCCTGTCAGGCCATACGCAAGGATAGTGACATTCATGCCTGCCATGAA
ATCTCGAAGTAACGGACGAGCAATGTTTTTGTAAATGAGTTCCTGATCAGCATTGGCACCATAGACTTGGTCTAGTGTAA
ATACTTTGCCTGAACCGTCTGATCCAGAGCCAAAGGAAGTGTTGGGGGAAGCATTCACGCTAACGTAGGGTTCATCCGTG
GAACAGAAATCGTCAGGCACCGAGACCACAATCGGGGACTGGGCGGCTATCTCCAGCTCAGTTCTTCTTCGCACACGGGC
GCTGACCTGGATTTTGTCGGACATATAGTACAGTTTTTTTTTTGTAGTCTTTCTTTGTGGAGATTATGGTGATGTTTATG
TTTGTTTACGATGGGCGGCCTGTGTGCAGGTCGGAACGGTCAAAGCATGTAGAGTGTCTAGAGTCTTTATCGATGAATGG
AAGTAGAGGAGGTAAAATTCTAATAGTGAGATTCTTTTTTCGATGGACGTGTTTTTGTTTACGTTCCTCGTACTTAGTTA
TGTTTCGGGTTTAATGGTGTTTAGTGAGAAATGGCTGCAAAATGCAAAATGCTGCGAAAAAGTATAGATCAGAGAAAGAC
AATACTACTGTCTGATAAAAAACAAAAGTTGATGATAAGAATACCAGAATTTGTACTCACATATAGGAAATCACCTAGAG
TTTGATATATAATCTGACACAGCAATGTCAAAATCGCTTTTACCACGTGCTATAAAAAGTTTCTAAGGACGTCACCTTCT
CGATATAAGATAAGCATTCTGTGAACGGCTGTTAGGAAAGAGCATAGTGAGGTATTTCAGTTGAAATACGTATGCCAAAA
AAAAGGCAACCATTAATTAGATTCCACGTGGTTCACTACACTGAAAACAGATGAACTGTCTACAATACAGTCTGTCAGTG
CAATGCCTACCAGTTGCTGGTGGCATAGCACCTCACGAATGGATATATTCGCTACCAGGTTTTGTACAGCTCAAACCACT
ACATAGCTGGTTTCTGTCAACCTCGTCGCTATCAACTAACAAACTCTTTTACTAAAAAAGAGAAGCTCTTCTTTCACTAC
ACGTACTGTACTAGCCTTCGCTCGTGTGACGATTAGCCAGCCGTACTTTTCCCCATCACCGTAAACCATCTATTGATGTT
CATATATACAGATTCCAATGACGACGCCAATGGCAATGCCACGAGCCCCCAAAAACCTCAATCAAAGAAATCATCGTCAT
CTTCAT
【0041】
配列番号7-10に示した配列の中から、さらに本発明者らの経験によって最もLAMP反応に適した1kbp程度の配列として、配列番号7の塩基配列を選別した。この配列番号7の塩基配列は、米国立バイオテクノロジー情報センターのBLAST検索により、ピルビン酸塩:フェレドキシンオキシドレダクターゼドメインを含むカンジダ・アウリス(C. auris)ゲノム(accession number: XM_018317007)であることが確認された。
【0042】
ここで配列番号7のDNA断片を、鋳型としてのC. auris JCM15448Tと、Auris F(配列番号11:GCTATGCCGCTAGCAACG)およびAuris R(配列番号12:CACTACAGCAGGATCAACGG)からなる一対のプライマーを用いてEcoRIdAmp(登録商標)PCR Master Mix(タカラバイオ社製)で増幅させた。
【0043】
本菌のDNAに特異的なpTAC-2Auris プラスミドを作製するため、単位複製配列をQIAquick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen、Venlo、The Netherlands)で精製し、DynaExpress TA PCRクローニングキット(BioDynamics Laboratory Inc.、Tokyo、Japan)を用いてpTAC-2ベクターにクローニングした。クローニングされた塩基配列は、ABI PRISM(登録商標)3130x1 Genetic Analyzer(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を用いて確認した。
【0044】
192bpフラグメント(遺伝子座XM_018317007:774b~965b内の位置)を標的にして、PrimerExplorer V5ソフトウェア(https://primerexplorer.jp/lampv5/index.html)を使用して、候補となるLAMPプライマーセットを設計した。決定されたLAMP Aurisプライマーセット(以下、「LAMP Aurisプライマーセット」と記載する場合がある)を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
ただし、LAMPプライマーの設計はたとえ専用のソフトウェアを用いたとしても必ずしも容易ではない。例えば、表1に示した配列番号1-4に示したLAMPの基本プライマーセット以外にも、配列番号7に基づいて設計することができたプライマーセットとしては配列番号13-16のポリヌクレオチドなどを例示することができるが、これらのプライマーセットはいずれも、カンジダ・アウリス(Candida auris)に対するLAMP法による遺伝子増幅反応を生じないことが確認されている。
(配列番号13)GTGGTATCTTCGGATGCTGGCTCCAGCGAGGAACAACGAA(FIP)
(配列番号14)ACAACCTTGCGTGCAGACGAAGGGTTCCTTTCCCATTTGC(BIP)
(配列番号15)AGAAACGGAACCGAAACGG(F3)
(配列番号16)CCTCTCCTGTTGGTTTGGTT(B3)
【0047】
<実施例2>LAMP法による増幅反応
カンジダ・アウリス(Candida auris)の培養検体について、LAMP法による増幅反応はLoopamp Turbidimeter RT-160C(栄研化学株式会社製)を用いて56℃で90分間行った。 DNAポリメラーゼを80℃で5分間失活させることにより反応を停止させた。各反応液は、2×Reaction Mix(栄研化学製)12.5μL、上記のLAMP Aurisプライマーセットの各プライマー(40μM FIP、40μM BIP、20μM Loop-F、20μM Loop-B、5μM F3、 5μM B3)、1μL Bst DNAポリメラーゼ、2μL サンプルDNA溶液、および蒸留水を添加して、各反応の総容量を25μLとした。
【0048】
LAMP Aurisプライマーセットの検出限界を決定するために、pTAC-2Aurisを連続希釈(1×100~1010コピー/μL)し、三連反応での鋳型として使用した。増幅産物の検出はLoopamp Turbidimeter RT-160Cによって行った。
【0049】
結果を図1に示す。
【0050】
図1に示したように、LAMP Aurisプライマーセットを用いたLAMP法によれば、1反応当たり2×101コピー以下の濃度であるときであってもpTAC-2Aurisを検出することができ、高い感度を有していることが確認された。また、菌体からのDNA抽出は、菌体を直接(破砕せず)DNA抽出試薬で処理した場合であっても効率よくDNAを抽出できることも確認された。
【0051】
<実施例3>LAMP Aurisプライマーセットの特異性評価
カンジダ・アリウス(C. auris)に対するLAMP Aurisプライマーセットの特異性を評価するために、38種(20糸状菌および18酵母)の合計57株を試験した(表2)。
【0052】
非特許文献4に記載されている方法に従って、鋳型株の全DNAを抽出および精製した。酵母株については、Sabouraud dextrose寒天(SDA)上で増殖したコロニーの一部を蒸留水25μLに懸濁し、100℃で15分間加熱し、短時間遠心分離した。各LAMP Aurisの反応について、2μLの上清または精製DNAを鋳型として使用した。
【0053】
結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
LAMP Aurisプライマーセットを用いたLAMP法によって、全ての16 のC.auris株の増幅が確認された。一方、他のすべての糸状菌および酵母種は、C.aurisが一般に誤認されているもの(従来の検査法ではカンジダ・アリウス(C. auris)と鑑別できなかった菌:表2中では*で指示)を含めて、増幅を示さなかった。
【0056】
なお、LAMP Aurisによる反応で使用されるDNA鋳型の品質を検証するために、panfungal LAMPプライマーセット(非特許文献4)を用いたLAMP反応を別々に行ったところ、全ての試験種からの鋳型で増幅を検出した。
【0057】
<実施例4>LAMP法による臨床検体中のカンジダ・アリウス(C. auris)の検出
上記LAMP Aurisプライマーセットを用いたLAMP法を臨床検体に適用した。 C.auris LC318417によって引き起こされた耳炎(非特許文献5)から得られた耳拭き標本を試験した。
【0058】
耳スワブ検体をSDA寒天の表面に載せ、37℃で培養した。得られた小さなクリーム状コロニー(菌体)は、本LAMP法、MALDI-TOF MS(Bruker Daltonics K.K.、Kanagawa、Japan)およびrDNAのシークエンシングにより、カンジダ・アリウス(C. auris)として同定された。
【0059】
同時に以下の方法によって培養を経ること無く臨床検体から直接カンジダ・アリウス(C. auris)DNAの検出を試みた。綿棒を2ミリリットルのマイクロチューブに入れ、0.05%Tween80を補充した1mLの生理食塩水で洗浄し、10分間振盪した。この懸濁液を20,000gで10分間遠心分離し、生成したペレットを生理食塩水100μLで洗浄した後、Kaneka Easy DNA Extraction kit version 2(カネカ株式会社製)を用いて製造者の指示に従って全DNAを抽出した。抽出DNA 2μlをLAMP反応液の試料核酸とし、上記LAMP Aurisプライマーセットを用いて、LAMP法による核酸増幅反応を行った。反応条件および増幅産物の検出は、実施例2と同様に行った。
【0060】
結果を図2に示す。
【0061】
図2に示したように、臨床検体に対して、LAMP法による増幅産物を27分で検出することができた。上記LAMP Aurisプライマーセットを用いたLAMP法が臨床検体へ直接適用可能であることが確認された。また、DNAの直接抽出(破砕せずに抽出)する工程を含めても、同定プロセスは、全体で約1時間以内に完了し、迅速な検出が可能であることが確認された。
【0062】
<実施例5>LAMP法による環境サンプル中のカンジダ・アリウス(C. auris)の検出
上記LAMPプライマーセットを用いたLAMP法の環境調査への適用性も評価した。 1×10 6個のカンジダ・アリウス(C. auris)を含む約25μLの生理食塩水を清潔なペトリ皿の中で乾燥させ、細胞を環境サンプリングのために最適化された拭き取り法で回収した(サンプルA~D)。
【0063】
サンプルA~Dの菌量と回収率を表3に示す。
【0064】
【表3】
【0065】
スワブの取り扱いおよびDNA抽出は、振盪を除いて、実施例2、4と同様に行った。サンプルA、Bは振動シェーカーを使用せず、サンプルC、Dは振動シェーカーを10分使用した。また、LAMP法による核酸増幅反応における反応条件および増幅産物の検出についても実施例2、4と同様に行った。
【0066】
各サンプルのLAMP反応時間と検出結果を表4、図3に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
表4、図3に示したように、各サンプル(A~D、陽性コントロール)は、LAMP法による核酸増幅反応の開始後約20分後に増幅産物が検出され(LAMP陽性)、カンジダ・アウリス(C.auris)DNAを検出可能であることが確認された。上記LAMP Aurisプライマーセットを用いたLAMP法によって環境調査への適用が可能であり、迅速かつ正確な検出が可能であることが示された。
【0069】
以上の実施例の結果から、上記LAMP Aurisプライマーセットを用いたLAMP法では、すべてのC.auris株を100%の特異性で同定し、近縁種から確実に区別して検出できることが確認された。また、反応あたり2×101コピーの標的DNAを検出することができ、増幅装置の使用上の技術的な問題もなく、短時間で結果を得ることができた。さらに、臨床検体からの検出も可能であり、培養およびDNA抽出に必要な時間が短縮され、早期診断が実現可能であることが確認された。また、近年、ポータブルLAMP増幅装置などが商業的に入手可能であるため、本発明のLAMP Aurisプライマーセットを用いたLAMP法によれば、環境制御が重要な医療施設における環境調査などにおいてもカンジダ・アウリス(C.auris)の迅速かつ正確な検出が可能になる。
図1
図2
図3
【配列表】
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