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特許7126200半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法および評価装置並びに半導体関連部材の熱抵抗算出方法および算出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法および評価装置並びに半導体関連部材の熱抵抗算出方法および算出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20220819BHJP
   G01N 25/18 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
G01N25/72 G
G01N25/18 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018185365
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020056597
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】509204286
【氏名又は名称】株式会社サーモグラフィティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】沓水 真琴
(72)【発明者】
【氏名】竹馬 克洋
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6304670(JP,B1)
【文献】国際公開第2014/167693(WO,A1)
【文献】特開2000-261137(JP,A)
【文献】特開2012-230012(JP,A)
【文献】特開2015-209529(JP,A)
【文献】特開2017-003409(JP,A)
【文献】特開2018-025560(JP,A)
【文献】特開2017-072475(JP,A)
【文献】特開2015-108546(JP,A)
【文献】特開2012-002744(JP,A)
【文献】特開2011-038838(JP,A)
【文献】特開昭50-005083(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0212641(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0050566(US,A1)
【文献】中国実用新案第204359730(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第104634811(CN,A)
【文献】国際公開第2018/212087(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00~25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法であって、
波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱工程と、
前記半導体関連部材の温度変化を測定する温度測定工程と、
前記半導体関連部材の温度変化を、予め設定した基準値と比較して、半導体関連部材が良品か不良品かを判定する判定工程と、を含み、
前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える、半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法。
【請求項2】
前記半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、
前記半導体素子が、前記異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、前記熱拡散部材と接合しており、
前記加熱工程において、前記半導体素子が接合している熱拡散部材の面において、前記半導体素子が接合していない部分に前記光線を照射する、請求項1に記載の半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法。
【請求項3】
前記熱拡散部材は、さらに無機材質層を備え、
前記半導体関連部材において、前記異方性グラファイトと前記半導体素子との間に、前記無機材質層が設けられている、請求項2に記載の半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法。
【請求項4】
さらに、加熱工程前の半導体関連部材の温度を測定する加熱前温度測定工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法。
【請求項5】
半導体関連部材の熱抵抗算出方法であって、
半導体関連部材を冷却器により冷却する冷却工程と、
波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱工程と、
前記半導体関連部材の温度を測定する温度測定工程と、
前記半導体関連部材の温度を維持するように光線を制御する制御工程と、
制御工程における前記光線の光量、前記半導体関連部材の表面温度および前記冷却器の冷媒温度から熱抵抗を算出する算出工程と、を含み、
前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える、半導体関連部材の熱抵抗算出方法。
【請求項6】
前記半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、
前記半導体素子が、前記異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、前記熱拡散部材と接合しており、
前記加熱工程において、前記半導体素子が接合している前記熱拡散部材の面において、前記半導体素子が接合していない部分に前記光線を照射する、請求項5に記載の半導体関連部材の熱抵抗算出方法。
【請求項7】
半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置であって、
波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱手段と、
前記半導体関連部材の温度変化を測定する温度測定手段と、
前記半導体関連部材の温度変化を、予め設定した基準値と比較して、半導体関連部材が良品か不良品かを判定する判定手段と、を備え、
前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える、半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置。
【請求項8】
前記半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、
前記半導体素子が、前記異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、前記熱拡散部材と接合しており、
前記半導体素子が接合している前記熱拡散部材の面において、前記半導体素子が接合していない部分に前記光線を照射する、請求項7に記載の半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置。
【請求項9】
半導体関連部材の熱抵抗算出装置であって、
半導体関連部材を冷却器により冷却する冷却手段と、
波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱手段と、
前記半導体関連部材の温度を測定する温度測定手段と、
前記半導体関連部材の温度を維持するように光線を制御する制御手段と、
制御工程における前記光線の光量、前記半導体関連部材の表面温度および前記冷却器の冷媒温度から熱抵抗を算出する算出手段と、を備え、
前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える、半導体関連部材の熱抵抗算出装置。
【請求項10】
前記半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、
前記半導体素子が、前記異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、前記熱拡散部材と接合しており、
前記半導体素子が接合している前記熱拡散部材の面において、前記半導体素子が接合していない部分に前記光線を照射する、請求項9に記載の半導体関連部材の熱抵抗算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法および評価装置並びに半導体関連部材の熱抵抗算出方法および算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップ(半導体素子)の高出力化が進み、これに伴って半導体チップの発熱量が大きくなり、半導体チップ等の発熱を効率良く冷却する熱拡散部材が必要不可欠になっている。この熱拡散部材において、熱拡散特性や熱伝導特性を簡便に評価できる方法が望まれている。
【0003】
特許文献1には、高温物質の熱伝導特性を評価する方法として、導電性の被測定物を通電加熱し、この所定温度加熱期間にパルスレーザからパルス光を被測定物の裏面に照射し、表面の温度変化から熱拡散率を測定する方法が開示されている。また、特許文献1には、測定された熱拡散率と通電加熱時に試料に供給した電力と試料の温度変化とを用いて、被測定物の体積熱容量を求め、それらの値と別途測定した密度から熱伝導率を算出する方法が提案されている。
【0004】
特許文献2には、電気検査用端子にレーザー光を照射して加熱するレーザー光源と、加熱された電気検査用端子に近接し、電気検査用端子と熱的に接続されたポリイミド絶縁層の実効的な温度を測定する放射温度計と、放射温度計で取得した温度情報と予め記録した接続状態が良好な場合の温度情報とを比較して、熱伝導の違いによる温度上昇の変化から接続状態の良否判定をする良否判定手段が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-249427号公報
【文献】特開2000-261137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載されている方法のように、熱拡散部材を含む半導体関連部材の熱拡散特性および熱伝導特性を評価する方法として、種々の方法が知られている。しかし、評価のための部材を半導体関連部材に取り付けたり、半導体関連部材を破壊したりすることなく簡便に半導体関連部材の熱拡散性能を評価するという観点からは、未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明の一態様は、半導体関連部材を破壊することなく簡便に半導体関連部材の熱拡散性能を評価する方法等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、波長のピークが一定範囲にある光線を、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備えた半導体関連部材に照射して加熱し、生じた前記半導体関連部材の温度変化につき、予め設定した基準値と比較することにより、半導体関連部材を破壊することなく簡便に、半導体関連部材の熱拡散性能を評価できることを見出し、本発明を完成させた。また、本技術思想は、半導体関連部材の熱抵抗算出方法にも適用し得る。すなわち、本発明は、以下を包含する。
〔1〕半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法であって、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱工程と、前記半導体関連部材の温度変化を測定する温度測定工程と、前記半導体関連部材の温度変化を、予め設定した基準値と比較して、半導体関連部材が良品か不良品かを判定する判定工程と、を含み、前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える、半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法。
〔2〕前記半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、前記半導体素子が、前記異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、前記熱拡散部材と接合しており、前記加熱工程において、前記半導体素子が接合している前記熱拡散部材の面において、前記半導体素子が接合していない部分に前記光線を照射する、〔1〕に記載の半導体関連部材の評価方法。
〔3〕前記熱拡散部材は、さらに無機材質層を備え、前記半導体関連部材において、前記異方性グラファイトと前記半導体素子との間に、前記無機材質層が設けられている、〔2〕に記載の半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法。
〔4〕さらに、加熱工程前の半導体関連部材の温度を測定する加熱前温度測定工程を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の半導体関連部材の評価方法。
〔5〕半導体関連部材の熱抵抗算出方法であって、半導体関連部材を冷却器により冷却する冷却工程と、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱工程と、前記半導体関連部材の温度を測定する温度測定工程と、前記半導体関連部材の温度を維持するように光線を制御する制御工程と、制御工程における前記光線の光量、前記半導体関連部材の表面温度および前記冷却器の冷媒温度から熱抵抗を算出する算出工程と、を含み、前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える、半導体関連部材の熱抵抗算出方法。
〔6〕前記半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、前記半導体素子が、前記異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、前記熱拡散部材と接合しており、前記加熱工程において、前記半導体素子が接合している前記熱拡散部材の面において、前記半導体素子が接合していない部分に前記光線を照射する、〔5〕に記載の半導体関連部材の熱抵抗算出方法。
〔7〕半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置であって、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱手段と、前記半導体関連部材の温度変化を測定する温度測定手段と、前記半導体関連部材の温度変化を、予め設定した基準値と比較して、半導体関連部材が良品か不良品かを判定する判定手段と、を備え、前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える、半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置。
〔8〕前記半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、前記半導体素子が、前記異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、熱拡散部材と接合しており、前記半導体素子が接合している前記熱拡散部材の面において、前記半導体素子が接合していない部分に前記光線を照射する、〔7〕に記載の半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置。
〔9〕半導体関連部材の熱抵抗算出装置であって、半導体関連部材を冷却器により冷却する冷却手段と、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱手段と、前記半導体関連部材の温度を測定する温度測定手段と、前記半導体関連部材の温度を維持するように光線を制御する制御手段と、制御工程における前記光線の光量、前記半導体関連部材の表面温度および前記冷却器の冷媒温度から熱抵抗を算出する算出手段と、を備え、前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える、半導体関連部材の熱抵抗算出装置。
〔10〕前記半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、前記半導体素子が、前記異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、前記熱拡散部材と接合しており、前記半導体素子が接合している前記熱拡散部材の面において、前記半導体素子が接合していない部分に前記光線を照射する、〔9〕に記載の半導体関連部材の熱抵抗算出装置。
【0009】
なお、上記半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置における判定手段、および、上記半導体関連部材の熱抵抗算出装置における算出手段の他、各機能ブロック(例えば、判定装置、全体コントローラー)は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記評価装置等をコンピュータにて実現させる制御プログラム、及びそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法または評価装置によれば、半導体関連部材を破壊することなく簡便に半導体関連部材の熱拡散性能につき、評価することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る半導体関連部材の熱抵抗算出方法または算出装置によれば、半導体関連部材を破壊することなく簡便に半導体関連部材の熱抵抗を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における、半導体関連部材の一例の断面図である。
図2】熱拡散部材の上面からのX線透過写真例であり、図2の(A)は、不良品の熱拡散部材のX線透過写真例であり、図2の(B)は、良品の熱拡散部材のX線透過写真例である。
図3】本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置の構成例を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態における評価結果例を示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置の構成例を示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置の構成例を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱抵抗算出装置の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0014】
<1.半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法>
本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法は、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱工程と、前記半導体関連部材の温度変化を測定する温度測定工程と、前記半導体関連部材の温度変化を、予め設定した基準値と比較して、半導体関連部材が良品か不良品かを判定する判定工程と、を含み、前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える。
【0015】
本構成により、熱拡散部材の熱拡散性能および/または半導体素子と熱拡散部材との接合状況による熱拡散性能を評価することができる。また、金属(特に、金および銅)は反射率が高く加熱および表面温度検出は難しいと言われている中で、本構成により、金属表面を備える熱拡散部材の加熱および表面温度検出ができる。
【0016】
上記工程以外の具体的な工程、材料、条件、使用する機器・装置等は特に限定されるものではなく、従来公知の方法等を好適に利用可能である。
【0017】
<1-1.半導体関連部材>
本発明の一実施形態において、半導体関連部材は、熱拡散部材そのものであってもよく、半導体素子および熱拡散部材等を備える半導体パッケージ等であってもよい。
【0018】
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の一例の基本構造について説明する。半導体関連部材7は、半導体素子1、接合部材2および熱拡散部材3を備えている。
【0019】
半導体素子1は、発熱が大きいものであり、複数層からなっていてもよい。半導体素子1は、接合部材2により熱拡散部材3と接合されている。半導体素子1の形成箇所は特に限定されないが、図1に示されるように、異方性グラファイト6を形成するグラファイト層6Aに対して直交する面にて、熱拡散部材3と接合していることが好ましい。
【0020】
接合部材2は、半導体素子1と熱拡散部材3とを接合する限りにおいて、その材質は限定されないが、例えば、金スズ半田およびナノ銀粒子等の極微小金属が挙げられる。半導体素子1は、例えば、金スズ半田やナノ銀粒子等の極微小金属を有機溶液中に分散させた分散液を塗布した後、加熱により分散液を固化して接合部材を形成することにより、熱拡散部材3と接合することができる。
【0021】
熱拡散部材3は、表面(半導体素子1の載置面側)に無機材質層4Aを、裏面に無機材質層4Bを備える。すなわち、無機材質層4Aは、異方性グラファイト6と半導体素子1との間に設けられている。無機材質層4A,4Bは、ろう材5を介して異方性グラファイト6に接合している。無機材質層4A,4Bは、異方性グラファイト6を形成するグラファイト層6Aに対して直交する面に接合されている。
【0022】
熱拡散部材3は、図1に例示されているものに限定されず、少なくとも異方性グラファイト6を備えていればよい。異方性グラファイト6は、例えば、グラファイト層6Aの積層体である。また、異方性グラファイト6に、銅モリブデン板または銅板等を積層してもよい。熱拡散部材3は、表面劣化および/または接合時のぬれ性を考慮して、金メッキが施されていてもよい。
【0023】
異方性グラファイト6は、グラファイト層6Aの結晶配向面に対して平行な方向への熱伝導率は高いが、垂直な方向への熱伝導率が低いという性質を有する。異方性グラファイト6は、その優れた熱伝導性のため、半導体関連部材7において、上部に配置されている半導体素子から発生する熱が集中しないように、放熱することができる。
【0024】
異方性グラファイト6は、炭素原子の六員環が共有結合で繋がったグラフェン構造が面方向に高熱伝導性を有するグラファイトブロックを所定の形状に切断することで製造可能である。
【0025】
グラファイトブロックの製造方法としては、炭素原子の六員環が共有結合で繋がったグラフェン構造の結晶配向面に高熱伝導性を有するものであれば特に制限されず、高分子分解グラファイトブロック、熱分解グラファイトブロック、押出成形グラファイトブロック、モールド成形グラファイトブロック等を用いることが可能である。
【0026】
無機材質層4A,4Bとしては、金属層およびセラミックス層が挙げられる。異方性グラファイト6の結晶配向面(すなわち、グラファイト層6A)に垂直な方向へは、熱が相対的に伝わりにくい。そのため、熱伝導率が比較的高く、等方性の材料と接合することで、異方性グラファイト6の結晶配向面(すなわち、グラファイト層6A)に垂直な方向の熱伝導性を補うことができ、より高い放熱効果を発現することができる。
【0027】
金属層を形成する金属の種類としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、タングステン、およびこれらを含む合金など公知の材料を適宜用いることができる。
【0028】
セラミックス層を形成するセラミックスの種類としては、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミなど公知の材料を適宜用いることができる。
【0029】
熱伝導性をより高める観点からは、無機材質層4A,4Bとしては、金属層が好ましく、金属層を形成する金属としては、銅が好ましい。無機材質層4A,4Bには、必要に応じて最表面に金メッキが施されていてもよい。
【0030】
ろう材5としては、異方性グラファイト6との拡散接合が可能であればよく、例えば、金属系ろう材が挙げられる。金属系ろう材自体の熱伝導率が比較的高いため、高い熱伝導性を維持した半導体関連部材7を得ることができる。
【0031】
金属系ろう材の種類については、特に制限されないが、銀、銅および/またはチタンを含むことが好ましい。
【0032】
金属系ろう材を用いた場合の接合方法として、公知の材料並びに公知の技術を用いることが出来る。例えば、活性銀ろうを用いた場合、1×10-3Paの真空環境、および700~1000℃の温度範囲で10分から1時間加熱し、これを室温まで冷却することにより接合することが可能である。また、接合状態を良好にするために、加熱時に加重をかけてもよい。
【0033】
ここで、本願発明の技術的課題について説明する。異方性グラファイト6は、他の部材と接合しにくいため、接合部材に小さいピンホール状の未接合欠陥が発生する可能性、または接合条件の違いによる接合不良が発生する可能性がある。また、取り扱いにより異方性グラファイトに割れやカケが発生する可能性がある。これらのような接合不良を原因として、半導体素子1の発熱を効果的に放熱できないとの技術的課題につき、本願発明者らは独自に見出した。
【0034】
これらの欠陥を検出する方法として、近年解像度が大幅に向上しているX線透過による画像解析がある。X線透過による画像解析は、解析速度も向上しているが、小さいピンホール状の欠陥を発見するため、および、複数層からなる部品の欠陥を検出するためには、非常に高価かつ高度な判定技術または自動判定技術が不可欠なものになっている。加えて、安全性の観点から、X線を遮蔽した空間において評価する必要があるため、評価対象の製造工程におけるインライン装置として設置するためには、大規模な装置を設ける必要がある。
【0035】
図2に、熱拡散部材の上面からのX線透過写真を示す。図2の(A)は、不良品の熱拡散部材のX線透過写真例であり、図2の(B)は、良品の熱拡散部材のX線透過写真例である。図2の(A)では、異方性グラファイトの中心部に割れが発生していることがわかる。しかし、この割れが熱拡散部材の熱拡散性能に与える影響の大きさはわからず、画像による判定では製品として良品か不良品かの判定に苦労する。また、製品として良品か不良品かの自動判定では、判定基準を明確にした上で、高額な画像処理装置が必要になる。このような背景も踏まえて、より簡便に半導体関連部材の熱拡散性能を評価する方法等を、本発明者らは完成させた。
【0036】
<1-2.加熱工程>
加熱工程では、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を半導体関連部材に照射することにより、半導体関連部材を加熱する。波長のピークが当該範囲内であることにより、金属表面のような光線を反射しやすい材料でも効率的に加熱が可能である。熱拡散部材の表面または半導体素子の表面は、例えば、熱伝導性が良好な純銅または銅を主成分とする合金を含み、必要に応じて金メッキが施されている金属表面である。また、波長のピークが当該範囲内であることにより、安価で取り扱い易い半導体を使った光源を用いて、取り扱い性が良い石英ガラスを使った光ファイバで当該光源から出射ヘッドまでを接続できる。
【0037】
光線を照射する方法としては、波長のピークが特定範囲にある光線を半導体関連部材に照射できればよく、使用される装置および手段は特に限定されない。
【0038】
光線を照射する箇所(すなわち、加熱範囲を設ける箇所)は、特に限定されず、半導体関連部材の表面の一部を加熱することができればよい。半導体関連部材が、半導体素子を備えている場合、半導体素子が接合している熱拡散部材の面の、半導体素子が接合していない部分に光線を照射してもよい。
【0039】
加熱範囲の形状としては、多くは略円形であるが、加熱部の光学系等により長円形であってもよい。
【0040】
加熱時間および加熱光量は、評価対象である半導体関連部材の大きさや種類等に応じて適宜決定すればよい。また、半導体素子の昇温温度限界は、約200℃であるため、200℃以下に半導体関連部材を加熱できればよい。一般に、加熱時間を長くすれば、良品の表面温度と不良品の表面温度との温度差が大きくなる。また、加熱光量を高めることでも、良品の表面温度と不良品の表面温度との温度差を大きくすることが可能である。半導体素子の昇温温度限界に近い150℃あるいは200℃まで昇温すれば、良品の表面温度と不良品の表面温度との温度差が更に大きくなるため、検出感度を高めることができる。なお、半導体素子の昇温温度限界を考慮すると、本発明の一実施形態において、加熱工程において、加熱された測定対象(すなわち、半導体関連部材)の表面温度は200℃以下である。
【0041】
<1-3.温度測定工程>
温度測定工程では、加熱工程において加熱された半導体関連部材の表面温度変化を測定する。
【0042】
温度を測定する方法として、熱電対などを半導体関連部材に直接取り付けて測定する方法や、半導体関連部材に測定部材を直接取り付けることなく半導体関連部材の表面温度変化を測定する方法があげられるが、後者の手法が好ましい。後者の手法としては、例えば、放射温度計を用いる方法が挙げられるが、使用される装置および手段は特に限定されない。放射温度計は、その出射ヘッドに内蔵されるレンズ等により温度測定範囲を設定することができる。例えば、主にInSb(インジウムアンチモン)を素子に用い2μmから7μm中の波長を検出することができ、かつ、波長のピークが300nm以上550nmである光線には検出感度を持たない放射温度計が挙げられる。
【0043】
半導体関連部材の表面温度が測定できればよいため、温度測定範囲は特に限定されない。加熱範囲と温度測定範囲とは、同じ範囲であってもよく、異なる範囲であってもよい。例えば、半導体素子および熱拡散部材を備える半導体関連部材が評価対象である場合、半導体素子表面に加熱範囲および温度測定範囲の両方を設定してもよく、半導体素子表面に加熱範囲を設定し、熱拡散部材の表面であり、かつ、加熱範囲を含まない範囲に温度測定範囲を設定してもよい。温度測定範囲は、加熱範囲と同じ範囲、または加熱範囲の少なくとも一部を含む範囲であることが好ましい。
【0044】
<1-4.判定工程>
判定工程では、温度測定工程において測定された半導体関連部材の温度変化を、予め設定した基準値と比較して、半導体関連部材が良品か不良品かを判定する。
【0045】
ここで、「基準値」とは、適宜設定可能であり、特に限定されるものではない。例えば、この値より低下した場合、不良品であるとするような、いわゆる閾値であってもよいし、予め生産した良品の半導体関連部材及び/又は不良品の半導体関連部材における温度変化の平均値を予め測定しておき、この値を基準値としてもよい。また、数値以外にも、温度分布を画像表示したものを用いてもよい。
【0046】
良品の半導体関連部材として、例えば、高性能なX線透過観察により欠陥がないものを選べばよい。また、半導体関連部材の構成要素について、破壊検査の断面観察および断面成分観察により製造工程欠陥がないものを選択することで、良品の半導体関連部材を準備できる。
【0047】
半導体関連部材が不良品となる原因は、無機材質層の接合不良(すなわち、半導体素子と熱拡散部材との接合不良)、異方性グラファイトの割れおよび/またはカケが考えられ、半導体素子に近い部分の不具合の影響が大きいことがわかっている。半導体関連部材のいずれ構成要素の不具合も、加熱範囲からの放熱路の遮断となる。そのため、不良品の半導体関連部材は、良品の半導体関連部材と比較して、半導体関連部材の表面温度が高くなることが想定できるし、シミュレーションでも確認できている。
【0048】
良品か不良品かの判定は、温度測定工程において測定された温度変化、例えば、昇温カーブの傾きおよび/または加熱ピーク温度の比較により行うことができる。また、温度比較による判定に加えて、X線透過観察を行ってもよい。
【0049】
<1-5.加熱前温度測定工程>
本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法は、さらに、加熱工程前の半導体関連部材の表面温度を測定する加熱前温度測定工程を含んでいてもよい。本構成により、室温から数百℃まで精度良く表面温度を測定できるため、半導体関連部材の熱拡散性能につき、より正確に評価することができる。また、連続して複数箇所の温度測定をする場合(例えば、一つの熱拡散部材に複数の半導体素子が搭載されている場合)、先に加熱する箇所の表面温度は室温近傍であるが、後に加熱する箇所の表面温度は先の加熱の冷却途中であるため室温より高い。そのため、本構成により、予め設定した評価開始温度により、良品不良品判別データの補正が可能となり、半導体関連部材の熱拡散性能につき、より正確に評価することができる。
【0050】
加熱前の表面温度を測定する方法としては、放射温度計を用いる方法が例示されるが、使用される装置および手段は特に限定されない。加熱前の表面温度を測定する方法は、加熱前の表面温度、すなわち室温付近が精度良く測定できる方法であることが好ましい。例えば、放射温度計は一般に、室温から数百度℃まで精度良く測定できるが、加熱前の表面温度を測定するための放射温度計と、加熱後の表面温度を測定するための放射温度計とを別にすることで、加熱前の表面温度と加熱後の表面温度とをより正確に測定できる。なお、温度測定工程で室温を精度良く測定できる場合は、加熱前温度測定工程はなくてもよい。
【0051】
<2.半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置>
本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置は、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱手段と、前記半導体関連部材の温度変化を測定する温度測定手段と、前記半導体関連部材の温度変化を、予め設定した基準値と比較して、半導体関連部材が良品か不良品かを判定する判定手段と、を備え、前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備えるものであればよく、その他の具体的な構成、大きさ、形状等の条件は特に限定されるものではない。換言すれば、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置は、上述の「半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法」を実行するための装置であると換言できる。
【0052】
加熱手段(加熱部)は、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を半導体関連部材に照射することにより、半導体関連部材を加熱する手段であればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本加熱部は、上述した「加熱工程」を実行するものであればよい。例えば、光源を備える半導体レーザー等を用いることができる。半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、半導体素子が、異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、熱拡散部材と接合している場合、半導体素子が接合している熱拡散部材の面において、半導体素子が接合していない部分に光線を照射してもよい。
【0053】
温度測定手段(温度測定部)は、半導体関連部材の温度変化を測定するものであればよい。例えば、半導体関連部材に測定部材を直接取り付けることなく、加熱工程において加熱された半導体関連部材の表面温度変化を測定する手段であることが好ましいが、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本温度測定部は、上述した「温度測定工程」を実行するものであればよい。例えば、放射温度計等を用いることができる。
【0054】
判定手段(判定部)は、温度測定部により測定された半導体関連部材の表面温度変化を、予め設定した基準値と比較して、半導体関連部材が良品か不良品かを判定する手段であればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本判定部は、上述した「判定工程」を実行するものであればよい。例えば、コンピュータ等の演算装置等を用いることができる。
【0055】
また、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置に関しては、上述した以外の事項についても、上記<1>欄で述べた半導体関連部材の熱拡散性能の評価方法に関する記載を適宜参酌・利用することができる。
【0056】
次に、図3に基づいて、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置について説明する。半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置10は、加熱部11、温度測定部12および判定部13を備えている。評価装置10は、半導体関連部材として熱拡散部材3を評価対象としている。
【0057】
加熱部11はレーザー光源11Aを備える。判定部13は、温度表示設定器13A、データロガー13B、データ処理&判別装置13Cおよび全体コントローラー13Dを備える。
【0058】
温度表示設定器13Aは、温度測定部12により測定された表面温度を表示するための装置である。データロガー13Bは、温度測定部12により測定された表面温度のデータを記録するための装置である。データ処理&判別装置13Cは、データロガー13Bによって記録された表面温度のデータを処理し、良品の半導体関連部材のデータまたは不良品の半導体関連部材のデータのいずれに該当するかを判別するための装置である。全体コントローラー13Dは、加熱部11、温度測定部12および判定部13を制御するための装置である。
【0059】
加熱部11として、半導体レーザーを用いることができる。半導体レーザーの出射ヘッド11Cは、波長のピークが300nm以上550nm未満のレーザー光源11Aを光ファイバで導いている。出射ヘッド11Cには、レンズが内蔵されており、当該レンズにより、加熱範囲14を定める。そして、出射ヘッド11Cから照射される光線11Bにより、加熱範囲14が加熱される。
【0060】
温度測定部12として、放射温度計を用いることができる。放射温度計により測定された評価対象の表面温度は、温度表示設定器13Aに表示され、データロガー13Bに記録される。温度表示設定器13Aおよびデータロガー13Bは、データ処理&判別装置13Cに接続されており、熱拡散部材3の表面温度変化データが伝達される。データ処理&判別装置13Cでは、伝達されたデータを予め設定した基準値と比較することにより、熱拡散部材3が良品か不良品かを判定する。
【0061】
図4は本発明の第一の実施形態を用いて、不良品の熱拡散部材および良品の熱拡散部材を445nmの半導体レーザーで加熱昇温した結果例を示す。不良品として、その上面からのX線透過写真例を図2の(A)に示した熱拡散部材を、良品として、その上面からのX線透過写真例を図2の(B)に示した熱拡散部材を用いた。図4は、横軸に時間(msec)を、縦軸に放射温度(表面温度)(℃)を示し、不良品の結果を21に、良品の結果を22に示す。無機材質層4Aの加熱範囲14の表面温度は、不良品が良品よりもピーク温度が105℃近辺で6℃高いことがわかる。本評価に用いた放射温度計は、50℃から600℃を測定でき、50℃近傍以下の温度は測定できない。本評価時の室温(23℃)からスムースにつながるカーブが理想である。本評価を繰り返し行い、再現性がある結果を得た。
【0062】
本評価では、インラインでの全数検査を意識して、加熱時間を10秒とした。図4に示される、不良品の表面温度変化21と良品の表面温度変化22との比較では、980m秒後近辺で6℃の差になっていた。
【0063】
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0064】
図5では、半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置10’は、加熱部11、温度測定部12、判定部13’および加熱前温度測定部15を備えている。判定部13’は、温度表示設定器13A、データロガー13B、データ処理&判別装置13C’、全体コントローラー13Dおよび温度表示設定器13Eを備える。
【0065】
加熱前温度測定部15として、放射温度計を用いることができる。加熱前温度測定部15は、室温付近が精度良く測定できる放射温度計であることが好ましい。加熱前温度測定部15により測定された評価対象の加熱前表面温度は、温度表示設定器13Eに表示される。温度表示設定器13Eは、データ処理&判別装置13C’に接続されている。温度表示設定器13Eにより表示された加熱前表面温度のデータがデータ処理&判別装置13C’に伝達される。判定部13’では、加熱前表面温度のデータを用いて表面温度変化データを補正した上で、予め設定した基準値と比較することにより、熱拡散部材3が良品か不良品かを判定する。加熱前の表面温度を測定するための放射温度計と、加熱後の表面温度を測定するための放射温度計とを別にすることで、加熱前の表面温度と加熱後の表面温度とをより正確に測定できる。
【0066】
本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置では、図6に示すように、半導体素子1を加熱して生じた表面温度変化データを用いて、評価を行ってもよい。
【0067】
加熱部11および温度測定部12の光学系の選択によっては、半導体素子のサイズより小さい所定径(例えば、φ0.5mm程度)の加熱範囲を、加熱および温度測定することができる。当該構成により、半導体素子1を直接加熱し温度測定部12で半導体素子1の表面温度を計測することができる。
【0068】
本構成により、半導体素子1と熱拡散部材3との間の熱伝導性評価を行い、半導体素子1と熱拡散部材3との接合状況を評価することができる。
【0069】
<3.半導体関連部材の熱抵抗算出方法>
本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱抵抗算出方法は、半導体関連部材を冷却器により冷却する冷却工程と、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱工程と、前記半導体関連部材の温度を測定する温度測定工程と、前記半導体関連部材の温度を維持するように光線を制御する制御工程と、制御工程における前記光線の光量、前記半導体関連部材の表面温度および前記冷却器の冷媒温度から熱抵抗を算出する算出工程と、を含み、前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備える。
【0070】
上記工程以外の具体的な工程、材料、条件、使用する機器・装置等は特に限定されるものではなく、従来公知の方法等を好適に利用可能である。
【0071】
熱抵抗を表す式の一つが下記式(1)であり、本発明の一実施形態では、半導体関連部材の熱量を分母として、半導体関連部材の温度と冷媒温度(一定)とから熱抵抗を算出する。
【0072】
【数1】
【0073】
従来の熱抵抗算出方法では、通電加熱のため、半導体素子にワイヤーボンディング等で電源に電気的に接続し、半導体素子の温度検出に熱電対を接着等で取付けて温度検出を行っている。当該半導体素子は、温度が一定の冷却器に固定されており、半導体素子に一定の電流を流して発熱電力を固定した場合の半導体素子の温度を測定して、熱抵抗値の大小を判定している。一方、本発明の一実施形態では、評価対象である半導体関連部材への通電端子や熱電対の固定を行うことなく、半導体関連部材の熱抵抗を簡便に算出することができる。
【0074】
<3-1.冷却工程>
冷却工程では、半導体関連部材を冷却器により冷却する。冷却器は、半導体関連部材を均一に冷却できる従来公知の冷却器等を好適に利用することができる。冷却器は特に限定されるものではないが、例えば、冷媒を流すことにより一定温度を保つ一般的な冷却器を用いることができる。すなわち、冷却器の冷媒温度は所定温度に設定されている。
【0075】
冷却器は、半導体関連部材の裏面に接続されることが好ましい。半導体関連部材は、半導体関連部材の加熱範囲が形成される面と垂直方向に熱伝導率が高い。半導体関連部材の加熱範囲が形成される面と平行に冷却器を接続することにより、半導体関連部材を効率的に冷却することができる。
【0076】
<3-2.加熱工程>
加熱工程では、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する。
【0077】
光線を照射する方法としては、波長のピークが特定範囲にある光線を半導体関連部材に照射できればよく、使用される装置および手段は特に限定されない。
【0078】
光線を照射する箇所(すなわち、加熱範囲を設ける箇所)は、特に限定されず、半導体関連部材の表面の一部を加熱することができればよい。半導体関連部材が、半導体素子を備えている場合、半導体素子が接合している熱拡散部材の面の、半導体素子が接合していない部分に光線を照射してもよい。
【0079】
加熱範囲の形状としては、多くは略円形であるが、加熱部の光学系等により長円形であってもよい。
【0080】
加熱時間および加熱光量は、評価対象である半導体関連部材の大きさや種類等に応じて適宜決定すればよい。
【0081】
<3-3.温度測定工程>
温度測定工程では、加熱工程において加熱された半導体関連部材の表面温度を測定する。
【0082】
温度を測定する方法として、半導体関連部材に測定部材を直接取り付けることなく、半導体関連部材の表面温度を測定できることが好ましく、例えば、放射温度計を用いる方法が挙げられるが、使用される装置および手段は特に限定されない。放射温度計は、その出射ヘッドに内蔵されるレンズ等により温度測定範囲を設定することができる。例えば、主にInSb(インジウムアンチモン)を素子に用い2μmから7μm中の波長を検出することができ、かつ、波長のピークが300nm以上550nmである光線には検出感度を持たない放射温度計が挙げられる。
【0083】
半導体関連部材の表面温度を測定できればよいため、温度測定範囲は特に限定されない。加熱範囲と温度測定範囲とは、同じ範囲であってもよく、異なる範囲であってもよい。例えば、半導体素子および熱拡散部材を備える半導体関連部材が評価対象である場合、半導体素子表面に加熱範囲および温度測定範囲の両方を設定してもよく、半導体素子表面に加熱範囲を設定し、熱拡散部材の表面であり、かつ、加熱範囲を含まない範囲に温度測定範囲を設定してもよい。温度測定範囲は、加熱範囲と同じ範囲、または加熱範囲の少なくとも一部を含む範囲であることが好ましい。
【0084】
<3-4.制御工程>
制御工程では、加熱工程において加熱された半導体関連部材の表面温度を維持するように光線を制御する。温度測定工程において測定される半導体関連部材の表面温度を所定温度に保つため、加熱工程において照射される光線の光量を制御すればよい。光線を制御する方法として、使用される装置および手段は特に限定されない。
【0085】
<3-5.算出工程>
算出工程では、上記式(1)に基づき、制御工程における光線の光量、半導体関連部材の表面温度および冷却器の冷媒温度から熱抵抗を算出する。算出工程において、使用される装置および手段は特に限定されない。
【0086】
なお、半導体関連部材の熱量は、半導体関連部材の表面温度が安定した時の光線の光量と、半導体関連部材の表面材料の反射率とにより算出できる。
【0087】
<4.半導体関連部材の熱抵抗算出装置>
本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱抵抗算出装置は、半導体関連部材を冷却器により冷却する冷却手段と、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を前記半導体関連部材に照射し、半導体関連部材を加熱する加熱手段と、前記半導体関連部材の温度を測定する温度測定手段と、前記半導体関連部材の温度を維持するように光線を制御する制御手段と、制御工程における前記光線の光量、前記半導体関連部材の表面温度および前記冷却器の冷媒温度から熱抵抗を算出する算出手段と、を備え、前記半導体関連部材が、異方性グラファイトを含む熱拡散部材を備えるものであればよく、その他の具体的な構成、大きさ、形状等の条件は特に限定されるものではない。換言すれば、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱抵抗算出装置は、上述の「半導体関連部材の熱抵抗算出方法」を実行するための装置であると換言できる。
【0088】
冷却手段(冷却部)は、半導体関連部材を冷却する冷却器を用いればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本冷却部は、上述した「冷却工程」を実行するものであればよい。
【0089】
加熱手段(加熱部)は、波長のピークが300nm以上550nm未満の範囲にある光線を半導体関連部材に照射することにより、半導体関連部材を加熱する手段であればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本加熱部は、上述した「加熱工程」を実行するものであればよい。例えば、半導体レーザー等を用いることができる。半導体関連部材が、さらに半導体素子を備え、半導体素子が、異方性グラファイトを形成するグラファイト層に対して直交する面にて、熱拡散部材と接合している場合、半導体素子が接合している熱拡散部材の面において、半導体素子が接合していない部分に光線を照射してもよい。
【0090】
温度測定手段(温度測定部)は、半導体関連部材の温度を測定するものであればよい。例えば、半導体関連部材に測定部材を直接取り付けることなく、加熱工程において加熱された半導体関連部材の表面温度を測定することができる手段であることが好ましいが、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本温度測定部は、上述した「温度測定工程」を実行するものであればよい。例えば、放射温度計等を用いることができる。
【0091】
制御手段(制御部)は、半導体関連部材の温度を維持するように光線を制御する手段であればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本制御部は、上述した「制御工程」を実行するものであればよい。例えば、コンピュータ等の演算装置等を用いることができる。
【0092】
算出手段(算出部)は、制御工程における前記光線の光量、半導体関連部材の表面温度および冷却器の冷媒温度から熱抵抗を算出する手段であればよく、その具体的な構成等は特に限定されるものではない。すなわち、本算出部は、上述した「算出工程」を実行するものであればよい。例えば、コンピュータ等の演算装置等を用いることができる。
【0093】
また、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱抵抗算出装置に関しては、上述した以外の事項についても、上記<3>欄で述べた半導体関連部材の熱抵抗算出方法に関する記載を適宜参酌・利用することができる。
【0094】
次に、図7に基づいて、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱抵抗算出装置について説明する。図7に示すように、半導体関連部材の熱抵抗算出装置80は、加熱部11、温度測定部12、冷却部81、制御部82および算出部83を備えている。また、半導体素子1および熱拡散部材3を備える半導体関連部材を評価対象としている。制御部82として、温度設定&レーザー光源コントローラーを用いることができる。算出部83は、温度表示設定器83A、データロガー83Bおよびデータ処理&判別装置83Cを備えている。
【0095】
図3および図5に例示されている、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置と同様に、熱抵抗算出装置80は、加熱部11として、半導体レーザーを、温度測定部12として、放射温度計をそれぞれ用いてもよい。加熱部11は、半導体素子1の加熱範囲14を加熱する。温度測定部12は、加熱範囲14と同じ範囲または加熱範囲14の少なくとも一部を含む範囲の半導体素子1の表面温度を測定する。温度測定部12により測定された半導体素子1の表面温度は、温度表示設定器83Aに表示され、データロガー83Bに記録される。温度表示設定器83Aおよびデータロガー83Bは、データ処理&判別装置83Cに接続されており、記録されている表面温度データが伝達される。
【0096】
算出部83は、制御部82に接続されており、伝達された表面温度データが算出部83から制御部82にも伝達される。制御部82は、このデータに基づき、半導体関連部材の表面温度を所定温度にするため、加熱部11から照射する光線11Bの光量を制御する。このときの光線11Bの光量、半導体関連部材の表面温度および冷却部81(冷却器)の冷媒温度を元に、算出部83において、半導体関連部材の熱抵抗が算出される。
【0097】
従来の熱抵抗算出方法では、熱量を一定にして、半導体素子の表面温度を変化させる。一方、本発明の一実施形態では、半導体素子の表面温度を一定にして、熱量を変化させる。そのため、測定される半導体関連部材の表面温度および熱量を上記式(1)に代入することにより、熱抵抗を算出することができる。
【0098】
光源に加えた電流値の比較により熱抵抗と同等の指数を得ることができることから、半導体関連部材の良品不良品の判定にも用いることができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る半導体関連部材の熱抵抗算出装置は、半導体関連部材の熱拡散性能の評価装置としても用いることができる。
【0099】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、半導体関連部材全般に対して利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 半導体素子
3 熱拡散部材
6 異方性グラファイト
6A グラファイト層
7 半導体関連部材
10 評価装置
11 加熱部
11B 光線
12 温度測定部
13 判定部
15 加熱前温度測定部
80 熱抵抗算出装置
81 冷却部
82 制御部
83 算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7