(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
B66F9/24 L
(21)【出願番号】P 2019001282
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-05-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年9月11日に開催された「国際物流総合展2018」に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000183222
【氏名又は名称】住友ナコ フォ-クリフト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】日南 敦史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄士
(72)【発明者】
【氏名】寺林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】福井 海音
(72)【発明者】
【氏名】笹木 亮
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158777(JP,A)
【文献】特開2006-096457(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0138248(US,A1)
【文献】特開2013-086959(JP,A)
【文献】特開2017-019596(JP,A)
【文献】特開2018-177514(JP,A)
【文献】特開2009-263095(JP,A)
【文献】特開2018-158785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークを有し、オペレータにより操作可能な可動部と、
前記可動部に取り付けられたセンサと、
前記センサの出力にもとづいて、パレットの穴と前記フォークとの相対的な位置関係を検出し
、現状のまま前進したときに、前記フォークを前記穴に挿入可能か否かを、(i)測定誤差および製品公差の少なくとも一方を含む誤差因子を考慮しても、干渉無く挿入可能、(ii)前記誤差因子を考慮すると干渉可能性あり、(iii)挿入不可の3段階で判定する演算部と、
前記演算部による判定結果を前記オペレータに提示する通知手段と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記パレットを当該パレットが有する穴を識別可能な態様で上方から見た図と、前記フォークおよび/または前記フォークの延長線と、を重畳して表示するディスプレイをさらに備えることを特徴とする請求項
1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記フォークの延長線は、現在のステアリング角から想定されるフォーク先端軌跡であることを特徴とする請求項
2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記測定誤差は、予め複数のパレットを測定して得た測定誤差の標準偏差の整数倍であることを特徴とする請求項
1に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記フォークと前記パレットとの干渉を回避するための操作方法を表示することを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記フォークの水平を示すインジケータを表示可能であることを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットを搬送対象とする搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトなどの搬送装置は、予め決められた形状を有するパレットを搬送対象とする。パレットには、穴(フォークポケット)が設けられており、搬送装置には、穴に挿入可能なフォークが設けられる。
【0003】
搬送装置のオペレータは、フォークの高さを調節し、ステアリング操作を行いながら搬送装置を走行させて、穴にフォークを挿入する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが不慣れなオペレータにとって、フォークを、うまく穴に挿入することは容易でない。もし、フォークが穴以外の場所に衝突すると、パレット上の荷物が崩れるかもしれない。また穴にフォークが挿入されたとしても、穴の内壁にフォークが干渉すると、パレットがずれたり、フォークに好ましくない応力が加わるおそれがある。
【0006】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、オペレータの操作を支援可能な搬送装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、搬送装置に関する。搬送装置は、オペレータにより操作可能なフォークと、フォークに取り付けられたセンサと、センサの出力にもとづいて、パレットの穴とフォークとの相対的な位置関係を検出する演算部と、を備える。
【0008】
穴とフォークの空間的な位置関係を取得し、位置関係に関連する情報をオペレータに提示することで、操作支援が可能となる。情報の提示は、視覚的、聴覚的に行ってもよいし、振動などの物理的刺激を用いてもよい。
【0009】
オペレータに提示する情報は、フォークを穴に挿入可能か否かを含んでもよい。演算部は、現状のまま前進したときに、フォークを穴に挿入可能か否かを判定してもよい。搬送装置は、判定結果をオペレータに提示する通知手段をさらに備えてもよい。
【0010】
搬送装置は、パレットを当該パレットが有する穴を識別可能な態様で上方から見た図と、フォークおよび/またはフォークの延長線と、を重畳して表示するディスプレイをさらに備えてもよい。これによりオペレータは、フォークとパレットの干渉の有無を直感的に予測できる。
【0011】
このディスプレイを、判定結果を提示するための通知手段として用いてもよい。
【0012】
フォークの延長線は、現在のステアリング角(タイヤの切れ角)から想定されるフォーク先端軌跡であってもよい。
【0013】
通知手段は、(i)測定誤差および製品公差の少なくとも一方を含む誤差因子を考慮しても、干渉無く挿入可能、(ii)誤差因子を考慮すると干渉可能性あり、(iii)挿入不可の3段階で通知してもよい。
【0014】
測定誤差は、予め複数のパレットを測定して得た測定誤差の標準偏差の整数倍であってもよい。
【0015】
搬送装置は、フォークとパレットとの干渉を回避するための操作方法(ガイダンス)をオペレータに提示してもよい。この提示は、音声を用いてもよいし、ディスプレイを用いてもよい。
【0016】
搬送装置は、フォークの水平を示すインジケータを表示可能であってもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オペレータの操作を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】搬送装置の一態様であるフォークリフトの外観図を示す斜視図である。
【
図2】フォークリフトの操縦席の一例を示す図である。
【
図3】
図3(a)~(h)は、フォークリフトが搬送対象とするパレットを示す図である。
【
図4】実施の形態に係るフォークリフトの機能ブロック図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、センサの設置箇所を説明する図である。
【
図6】センサの出力にもとづくパレットおよびその穴の検出を説明する図である。
【
図7】第1ディスプレイを利用した運転支援を説明する図である。
【
図8】パレット検出部、フォーク進路予測部が計算する空間を説明する図である。
【
図9】
図9(a)、(b)は、第2ディスプレイの表示を説明する図である。
【
図10】
図10(a)~(c)は、判定結果が反映された第2ディスプレイを示す図である。
【
図11】
図11(a)、(b)は、フォークリフトのさらなる運転支援を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
図1は、搬送装置の一態様であるフォークリフトの外観図を示す斜視図である。フォークリフト600は、車体(シャーシ)602、フォーク604L,604R、可動部(昇降体あるいはリフト)606、マスト608、車輪610、612を備える。マスト608は車体602の前方に設けられる。可動部606は、油圧アクチュエータ(
図1に不図示)などの動力源によって駆動され、マスト608に沿って昇降する。可動部606には、荷物を支持するためのフォーク604L,604Rが取り付けられている。フォークリフト600は、2本のフォーク604L,604Rが図示しないパレットの穴(フォークポケット)に挿入された状態で、パレットを搬送する。フォークリフトの機種によっては、可動部606を左右方向にスライド可能なものも存在する。
【0022】
図2は、フォークリフトの操縦席700の一例を示す図である。操縦席700は、イグニッションスイッチ702、ステアリングホイール704、リフトレバー706、アクセルペダル708、ブレーキペダル710、ダッシュボード714、前後進レバー712を備える。
【0023】
イグニッションスイッチ702は、フォークリフト600の起動用のスイッチである。ステアリングホイール704は、フォークリフト600の操舵を行うための操作手段である。リフトレバー706は、可動部606を上下に移動させるための操作手段である。アクセルペダル708は、走行用の車輪の回転を制御する操作手段であり、オペレータが踏み込み量を調節することでフォークリフト600の走行が制御される。オペレータがブレーキペダル710を踏み込むと、ブレーキがかかる。前後進レバー712は、フォークリフト600の走行方向を、前進と後進で切りかえるためのレバーである。そのほか、図示しないインチングペダルが設けられてもよい。
【0024】
オペレータは、車体の位置制御に関して、ステアリングホイール704とアクセルペダル708、ブレーキペダル710を操作し、フォーク604の位置制御に関して、リフトレバー706を操作する必要がある。
【0025】
操縦席700には、少なくともひとつの通知手段720が設けられる。通知手段720の一例は、ディスプレイ720Aであり、操作支援に必要な情報を、オペレータに視覚的に提示する。また通知手段720の別の一例は、スピーカ720Bであり、操作支援に必要な情報を、オペレータに音声によって提示する。また通知手段720のさらに別の一例は、刺激付与手段720Cであり、操作支援に必要な情報を、オペレータに振動や熱などによって提示する。刺激付与手段720Cは、ステアリングホイール704やシートに埋め込んでもよい。
【0026】
図3(a)~(h)は、フォークリフト600が搬送対象とするパレットを示す図である。パレット800は、上板806、穴802、桁804を有する。パレット800の形状は、JIS規格により定められるほか、目的や用途に応じて多種多様な形状のものが存在する。
図3(a)~(h)はそれぞれ、JIS規格でS2,SU2,DP4,R4,RW2,D2,DU2,D4と表記される。
図3(a)~(h)に示すように、一概にパレットといっても、さまざまな形状、構造が存在しており、不慣れなオペレータにとって、複数の操作入力手段(704,706,708,710,706)を正確に操作して、穴に正確にフォークを挿入することは容易でない。
【0027】
以下では、パレットの荷すくい動作を支援可能な構成について説明する。
図4は、実施の形態に係るフォークリフト300の機能ブロック図である。
図4には、荷すくい動作の支援に関連するブロックのみが示され、その他のブロックは省略している。
【0028】
フォークリフト300は、センサ302、通知手段304、演算部360を備える。センサ302は、フォークリフト300の前方に取り付けられ、車両前方の距離情報を取得する。その限りでないがセンサ302としては、ToFカメラ、LiDAR、ストラクチャードライト法を用いたセンサ、ステレオカメラなどの3次元測距センサを用いることができる。あるいはセンサ302は、イメージセンサ(カメラ)であり、演算処理によって距離情報を算出してもよい。
【0029】
図5(a)、(b)は、センサ302の設置箇所を説明する図である。
図5(a)は、上から見た図である。フォークを挿入すべき穴の位置を検出する必要があることから、センサ302は、フォーク604とともに移動することが望ましく、したがって可動部606に取り付けるとよい。左右方向に関して、センサ302は、2本のフォークの中央に配置することが好ましい。これにより、フォークをパレットに挿入する際に、センサ302によって、パレットを正面から撮影することが可能となる。特に、後述のように桁を含む特定部位を検出対象とする場合に、フォークの中央にセンサ302を配置しておくことで、特定部位の画像をうまく撮影することができる。
【0030】
図5(b)は横から見た図である。上下方向に関しては、302cで示すようにフォーク604と同じ高さとしてもよいが、それよりわずかに上側の位置302a(あるいは下側の位置302b)に設けるとよい。これにより、パレット800の上板806の上面S1(あるいは上板806の下面S2)を確実に捉えることが可能となるからである。また、この位置は、フォークの高さの最終的な調整の局面において、フォークやその他の車両構造物に遮蔽されにくいという利点もある。
【0031】
図4に戻る。演算部360は、センサ302の出力900にもとづいて、穴とフォークとの相対的な位置関係を検出する。フォークリフト300の車体を基準として、横方向にX軸、進行方向にY軸、鉛直方向にZ軸をとるとする。この場合、「相対的な位置関係」とは、XY方向の2次元平面における関係であってもよいし、XYZの3次元空間における位置関係であってもよい。
【0032】
演算部360により検出する位置関係を、単にフォークとパレットをカメラで撮影して得られる情報と混同してはならない。フォークとパレットを撮影したカメラ画像は、X方向、Y方向、Z方向のいずれについても、相対的な位置関係(距離)の情報を含まないからである。
【0033】
フォークリフト300は、演算部360によって検出したフォークと穴の位置関係に関連する情報をオペレータに提示することで、操作支援を行う。情報の提示には通知手段304が利用され、情報の提示は、視覚的、聴覚的に行ってもよいし、振動などの物理的刺激を用いてもよい。
【0034】
通知手段304は、ディスプレイ306とスピーカ308の少なくとも一方を含むことができる。通知手段304は、スピーカ308に代えて、あるいはそれに加えて、振動デバイスなどの刺激付与手段を含んでもよい。
【0035】
演算部360は、パレット検出部362、フォーク進路予測部364、干渉判定部366、第1画像処理部368、第2画像処理部370を含む。演算部360は、演算処理装置(CPU)やメモリを有するマイコンと、マイコンが実行するソフトウェアプログラムで構成することができる。演算部360は、複数のマイコンで構成してもよい。あるいは演算部360は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア(チップ)で構成してもよい。
【0036】
パレット検出部362は、センサ302の出力900にもとづいて、パレットおよびその穴の空間的な位置姿勢情報(座標等)を取得する。たとえばパレット検出部362は、パレットの穴802L,802Rの空間的な位置姿勢情報を示す第1空間情報901と、パレット800全体の空間的な位置姿勢情報を示す第2空間情報902と、を生成する。
【0037】
図6は、センサ302の出力900にもとづくパレットおよびその穴の検出を説明する図である。センサ302の位置を、座標軸の原点にとることとする。
【0038】
予め、パレット800の6面のうち、穴802の開口部803が設けられる面S1と同じ面に、特定部位801を定めておく。パレット検出部362は、センサ302の出力900にもとづいて、特定部位801の座標(x、y、z)が検出可能である。たとえば特定部位801は、2つの穴802L,802Rそれぞれの開口部803L,803Rの中央に位置する桁とすることができる。
【0039】
またパレット検出部362は、センサ302の出力900にもとづいて、パレット800の姿勢を検出可能である。パレット800の姿勢は、パレット800のz軸周りの回転角(ヨー角)θ、パレット800のx軸周りの回転角(ピッチ角)α、パレット800のy軸周りの回転角(ロール角)βによって把握することができる。パレット検出部362は、θ,α,βのすべてを取得してもよいし、それらのいくつかは不変であるとの仮定のもと、パレット800の姿勢を検出してもよい。
【0040】
開口部803L,803Rと特定部位801の相対的な位置関係は不変であり、穴802L,802Rの寸法は設計情報を用いることができる。したがって特定部位801の座標(x,y,z)、パレット800の姿勢、パレット800の種類が検出できれば、穴802L,802Rそれぞれが占める領域を取得することができる。穴802が直方体である場合、穴802が占める領域は、8個の頂点の座標として把握してもよい。
【0041】
この例では、特定部位801の検出後、開口部803L,803Rの位置を取得したが、センサ302の出力900から直接的に、開口部803L,803Rの位置を取得し、穴802L,802Rそれぞれが占める領域を取得することができる。
【0042】
図4に戻る。フォーク進路予測部364は、現在のステアリング角でフォークリフトを前進させたときに、フォーク604L,604Rそれぞれが通過しうる領域を示す第3空間情報903を生成する。上述のようにセンサ302が可動部606に取り付けられる場合、センサ302とフォーク604L,604Rの相対的な位置関係は不変である。つまりセンサ302を座標軸の原点にとるとき、現在のフォーク604L,604Rの空間的な座標は、定数とすることができる。フォーク進路予測部364には、現在のステアリング角φが与えられており、現在のフォーク604L,604Rの空間的な座標を車体の予測進路に沿って仮想的に移動させることにより、第3空間情報903を生成することができる。
【0043】
干渉判定部366は、フォーク604L,604Rそれぞれが、対応するパレットの穴802L,802Rに干渉無く挿入可能か否かを判定する。干渉判定部366には、パレット検出部362が生成する第1空間情報901と、フォーク進路予測部364が生成する第3空間情報903が与えられる。干渉判定部366は、フォーク604#(#=L,R)の占める領域が、穴802#の占める領域(挿入可能空間)に完全に包含されるとき、挿入可能と判定することができる。反対に、フォーク604#(#=L,R)の占める領域が、挿入可能空間からはみ出あるときに、挿入不能と判定することができる。
【0044】
干渉判定部366は、左右のフォーク604L,604Rそれぞれについて、干渉判定を行う。そして、穴802にフォークを干渉無く挿入可能であるか、あるいは干渉の危険性があるかを通知手段304を利用してオペレータに通知する。たとえば、干渉のおそれがある場合、スピーカ308から警報音やメッセージを出力してもよい。あるいは干渉の有無あるいは可能性を、ディスプレイ306A,306Bを利用して視覚的に表示して、運転支援を行ってもよい。
【0045】
干渉判定部366による判定結果905は、第1画像処理部368に入力される。第1画像処理部368は、ディスプレイ306Aを制御する。ディスプレイ306A,306Bは、1枚のディスプレイの2つの領域であってもよいし、2つの独立したディスプレイであってもよい。
【0046】
図7は、第1ディスプレイ306Aを利用した運転支援を説明する図である。第1画像処理部368は、第1ディスプレイ306Aに、カメラが撮影した画像データIMGを表示する。また第1画像処理部368は、この画像データIMGとオーバーラップする形で、パレット800の穴(開口部分)あるいはその外形を強調する図形(マーカ)810を表示してもよい。
図7に示すように画像データIMGには、2本のフォーク604L,604Rが写っていることが好ましい。これにより、オペレータは、第1ディスプレイ306Aを見ながら、フォーク604と穴の位置との相対的な関係を直感的に把握できる。
【0047】
さらに第1画像処理部368は、干渉判定部366による判定結果905を、第1ディスプレイ306Aの表示に反映させる。たとえば、マーカ810の色を、干渉判定の結果905に応じて変化させてもよい。具体的には、挿入可能な場合、マーカ810を第1の色(たとえば青)で描画し、挿入不可能な場合、マーカ810を第2の色(たとえば赤)で描画してもよい。
【0048】
続いて、干渉判定のためのアルゴリズムは特に限定されないが、次に干渉判定の具体例を説明する。
【0049】
フォーク604の位置に関して、組み付けの公差δ1が存在する。またフォーク604の幅(厚み)についても公差δ2が存在する。またパレット800の穴802と特定部位との位置関係についても製品公差δ3が存在する。さらに穴802の内寸に関しても製品公差δ4が存在する。
【0050】
パレット800の位置(特定部位の座標x,y,z)およびパレット800の姿勢(θ,α,β)に関して、センサ302の測定誤差δ5が存在する。
【0051】
演算部360は、これらの公差あるいは測定誤差を考慮して、干渉判定を行う。本実施の形態において、演算部360は、干渉のリスクについて、確率的な評価を行う。
【0052】
(1) 予め、センサ302の測定誤差に関する数値(誤差数値という)を入力する。誤差数値は、測定誤差の標準偏差の整数倍とするとよい。測定誤差は、予め複数のパレットを測定してすることによって得ることができる。ここでセンサ302の測定誤差は、測定対象のパレットの種類や色、環境(照度や照明の色温度など)に応じて変化する場合がある。この場合、誤差数値を、パレットの種類や環境に応じて動的に切り替えるとよい。
【0053】
図8は、パレット検出部362、フォーク進路予測部364が計算する空間を説明する図である。
【0054】
(2) パレット検出部362は、センサ302の出力900、誤差数値、製品公差、設定されたマージンを考慮して、以下の3つの空間を計算する。上述した第1空間情報901は、以下の3つの空間の情報を含んでもよい。
(i)穴802の空間(挿入可能空間)901A
これは、誤差、公差をゼロと仮定したときの空間である。
(ii)穴802の周辺の誤差空間901B
これは、誤差や公差、マージンを考慮したときの空間と、それらをゼロと仮定したときの空間の差分である。
(iii)パレット本体の空間901C
【0055】
(3) フォーク進路予測部364は、フォーク604の先端を延長した空間を計算する。この際にも、フォーク604の取り付け位置の公差、幅や厚みの公差などを考慮し、以下の2つの空間を計算してもよい。
(i) フォーク604の空間903A
これは誤差、公差をゼロと仮定したときの空間である。
(ii) フォーク604の周辺の誤差空間903B
これは、誤差や公差、マージンを考慮したときの空間と、それらをゼロと仮定したときの空間の差分と把握できる。
【0056】
そして、2つの空間903A,903Bそれぞれを、車両の進行方向に仮想的に移動することにより、以下の2つの空間903C,903Dを計算する。車両の進行方向に関しても、誤差や公差を考慮するとよい。
(iii)フォークが通過する空間903C
これは誤差、公差をゼロと仮定したときの空間である。
(iv)フォークが通過する空間の周辺の誤差空間903D
これは、誤差、公差、マージンを考慮したときの空間と、それらをゼロと仮定したときの空間の差分と把握できる。
【0057】
(4) 干渉判定部366は、第1空間情報901と第3空間情報903にもとづいて、干渉判定を行う。この判定は3ランクで行うことができる。
(ランクI)誤差、公差を考慮してもしなくても、干渉しない
(ランクII)誤差、公差を考慮しなければ干渉しないが、それらを考慮すると干渉する
(ランクIII)誤差、公差を考慮してもしなくても、干渉する
これらのランクは、干渉する確率を表すものと把握できる。
【0058】
図8を参照すると、空間901Cのエッジと空間903Cのエッジが交差しない場合、(ランクI)と判定できる。反対に、空間901Cと空間903Cのエッジ同士が交差する場合、(ランクIII)と判定できる。空間901Bと空間903Dのエッジ同士が交差する場合、(ランクII)と判定できる。
【0059】
(ランクI)の場合、干渉なく挿入可能として、オペレータに通知することができる。(ランクII)の場合、挿入可能であるが、干渉の可能性ありとして、オペレータに通知することができる。(ランクIII)の場合、挿入不能としてオペレータに通知することができる。
【0060】
判定を3ランクで行い、通知を2段階で行ってもよい。たとえば、(ランクI)の場合は挿入可能、(ランクII)もしくは(ランクIII)の場合は挿入不可能として通知してもよい。あるいは(ランクI)(ランクII)の場合は挿入可能、(ランクIII)の場合は挿入不可能として通知してもよい。
【0061】
図8は、フォーク604およびパレットを上から見たxy平面での干渉判定を説明したが、横からみたyz平面についても同様の計算を行ってもよい。
【0062】
図9(a)、(b)は、第2ディスプレイ306Bの表示を説明する図である。第2ディスプレイ306Bには、パレット800を当該パレット800が有する穴802を識別可能な態様で上方から見た図形F1と、フォーク604およびフォーク604の延長線605を含む図形F2と、が表示される。つまり図形F1は、穴を透視したパレットを示す。
図9(a)は、ハンドルを切っていない状態を示し、
図9(b)はハンドルを左に切った状態を表す。ステアリング角φを変化させると、フォーク進路予測部364が生成する第3空間情報903が変化するため、図形F2の延長線605の部分は、進行方向に沿って自動的に曲がることとなる。
【0063】
図4に戻る。第2ディスプレイ306Bの表示は、第1画像処理部368によって制御される。第2画像処理部370には、パレット検出部362が生成する第1空間情報901と第2空間情報902、フォーク進路予測部364が生成する第3空間情報903、が入力される。
図9の図形F1の描画は、第2空間情報902および第1空間情報901にもとづいて行うことができる。また図形F2の描画は、第3空間情報903にもとづいて行うことができる。
【0064】
第2画像処理部370には、干渉判定部366による判定結果905が入力される。第2画像処理部370は判定結果905を、第2ディスプレイ306Bの表示内容に反映させることができる。
【0065】
図10(a)~(c)は、判定結果が反映された第2ディスプレイを示す図である。
図10(a)は、そのまま直進すると挿入不能な状況を示している。この場合に、
図9の図形F2の色が、所定第1色(たとえば赤)となる。
図10(b)は、そのまま直進すると挿入可能な状況を示しており、
図9の図形F2の色が、所定第2色(青や緑)となる。
【0066】
図10(c)は、ハンドルを右にきった状態を示しており、ハンドルの切れ角を維持したまま前進すれば、挿入可能である。このとき、図形F2は、フォークの予測進路に沿って変形しており、第2色で描画される。
【0067】
図10(a)~(c)に示すように、フォークのチルト角、すなわち水平を示す図形F3を、第2ディスプレイ306Bに表示してもよい。この図形F3は、パレット800とフォーク604の相対的な角度を示してもよい。
【0068】
フォークリフト300は、単に、挿入の可否を表示・警告するのみでなく、フォーク604とパレット800との干渉を回避するための操作方法を表示するとよい。
図11(a)、(b)は、フォークリフト300のさらなる運転支援を説明する図である。
【0069】
図11(a)は、右にハンドルを切った状態であり、そのままでは挿入不可の状態を表す。干渉判定部366は、上述の干渉判定のアルゴリズムを利用して、ハンドル角を仮想的に変化させたときに、挿入可能か否かを判定する。そして、ハンドルをどの方向に回転させると挿入可能となるかを、第2画像処理部370に通知する。第2画像処理部370は、この情報にもとづいて、ハンドルを切るべき方向を示す図形F4を、第2ディスプレイ306Bに表示する。
【0070】
フォークリフト300には、可動部606(すなわちフォーク604)を左右方向にスライドさせるサイドシフト機能を備えるものがある。この機能を備えるフォークリフトにおいては、干渉判定部366は、上述の干渉判定のアルゴリズムを利用して、可動部606を左あるいは右にスライドさせたときに、挿入可能か否かを判定する。そして、可動部606をどの方向にスライドさせると挿入可能となるかを、第2画像処理部370に通知する。第2画像処理部370は、この情報にもとづいて、可動部606をスライドさせるべき方向を示す図形F5を、第2ディスプレイ306Bに表示する。
【0071】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0072】
(変形例1)
実施の形態では、干渉判定を行う場合を説明したが、干渉判定を省略してもよい。たとえば、
図9のように、パレットを、穴が認識可能な態様で上から見た図形F1と、フォークおよびその先端の延長を示す図形F2を重畳表示する場合、干渉判定をしなくても、図形から、挿入可能であるか、挿入不能であるかをオペレータは知ることができる。
【0073】
(変形例2)
あるいは、第2ディスプレイ306Bの表示を省略し、干渉判定の結果のみを、スピーカ308あるいはディスプレイ306Aを利用して行うようにしてもよい。
【0074】
(変形例3)
図9では、フォークとその延長線(すなわちフォークの予測進路)を含む図形F2を表示することとしたが、フォークのみを含む図形、あるいは延長線のみを含む図形を表示するようにしてもよい。
【0075】
(変形例4)
実施の形態では搬送装置としてフォークリフトを例に説明したが、本発明の適用はその限りでなく、ハンドリフト(ハンドパレット)、フォークローダー(フォーク付きのホイルローダー)など、パレットを取り扱うさまざまな搬送装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
600 フォークリフト
602 車体
604 フォーク
606 可動部
608 マスト
610,612 車輪
700 操縦席
702 イグニッションスイッチ
704 ステアリングホイール
706 リフトレバー
708 アクセルペダル
710 ブレーキペダル
712 前後進レバー
714 ダッシュボード
300 フォークリフト
302 センサ
304 通知手段
306 ディスプレイ
306A 第1ディスプレイ
306B 第2ディスプレイ
308 スピーカ
360 演算部
362 パレット検出部
364 フォーク進路予測部
366 干渉判定部
368 第1画像処理部
370 第2画像処理部
900 センサの出力
901 第1空間情報
902 第2空間情報
903 第3空間情報
800 パレット
801 特定部位
802 穴
804 桁