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  • 特許-投影マスク、およびレーザ照射装置 図1
  • 特許-投影マスク、およびレーザ照射装置 図2
  • 特許-投影マスク、およびレーザ照射装置 図3
  • 特許-投影マスク、およびレーザ照射装置 図4
  • 特許-投影マスク、およびレーザ照射装置 図5
  • 特許-投影マスク、およびレーザ照射装置 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】投影マスク、およびレーザ照射装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20220819BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20220819BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20220819BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20220819BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20220819BHJP
【FI】
H01L21/268 J
H01L29/78 627G
H01L21/20
B23K26/066
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018106274
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019212712
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-055467(JP,A)
【文献】特開平07-191215(JP,A)
【文献】特開2012-004250(JP,A)
【文献】特開2016-219581(JP,A)
【文献】特開2006-287129(JP,A)
【文献】特開2011-077480(JP,A)
【文献】特開昭57-181537(JP,A)
【文献】特開2001-053021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/336
H01L 21/20
B23K 26/066
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が照射される投影レンズに配置され、前記レーザ光を透過させる投影マスクであって、
レーザ光を透過する透過層と、
前記透過層よりも屈折率が大きい反射膜と、
前記透過層よりも屈折率が小さい金属膜と、
前記金属膜を保護する保護膜と、を備え、
前記透過層、前記反射膜、前記金属膜、および前記保護膜は、互いの積層方向のうち、前記レーザ光が照射される側から反対側に向けて、この順に配置され
前記金属膜に形成され前記保護膜により埋められる第1開口部と、
前記反射膜に形成され、前記第1開口部の積層方向に重なる部分に前記保護膜により埋められる第2開口部と、を備える投影マスク。
【請求項2】
レーザ光を発生する光源と、
薄膜トランジスタに被着されたアモルファスシリコン薄膜の所定の領域に前記レーザ光を照射する投影レンズと、を備え、
前記投影レンズには、請求項1に記載の投影マスクが配置されているレーザ照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影マスク、およびレーザ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、レーザアニールに用いられ、レーザ光によりマスクパターンを基板面に縮小投影する投影マスクが知られている。
このようなレーザアニールでは、例えばアモルファスシリコン薄膜等の基板における所定の領域を、レーザ光により瞬間的に加熱することで多結晶化し、ポリシリコン薄膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-197679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の投影マスクでは、マスクパターンの遮光部分に高いエネルギのレーザ光が照射されることにより、吸収したエネルギが熱に変わり、遮光部分が酸化したり溶融したりするおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、レーザ光を効果的に反射してレーザ光のエネルギの吸収を抑え、耐久性を向上することができる投影マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の投影マスクは、レーザ光が照射される投影レンズに配置され、前記レーザ光を透過させる投影マスクであって、前記レーザ光を透過する透過層と、前記透過層よりも屈折率が大きい反射膜と、前記レーザ光を遮光する金属膜と、前記金属膜を保護する保護膜と、を備え、前記透過層、前記反射膜、前記金属膜、および前記保護膜は、互いの積層方向のうち、前記レーザ光が照射される側から反対側に向けて、この順に配置されている。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ照射装置は、レーザ光を発生する光源と、薄膜トランジスタに被着されたアモルファスシリコン薄膜の所定の領域に前記レーザ光を照射する投影レンズと、を備え、前記投影レンズには、前述した投影マスクが配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透過層よりも屈折率が大きい反射膜と、レーザ光を遮光し、かつ反射膜を積層方向に挟む透過層の反対側に配置された金属膜と、を備えている。このため、反射膜と金属膜との境界部分でレーザ光を効果的に反射することが可能になり、金属膜がレーザ光を吸収するのを抑制することができる。これにより、レーザ光を効果的に反射してレーザ光のエネルギの吸収を抑え、投影マスクの耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ照射装置の斜視図である。
図2】従来例に係る投影マスクの断面模式図である。
図3】従来例に係る投影マスクにおけるレーザ光の照射時間と温度の関係を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る投影マスクの断面模式図である。
図5】検証試験における反射率の違いを説明する図である。
図6】検証試験における透過率の違いを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
レーザ照射装置10は、薄膜トランジスタ(TFT)のような半導体装置の製造工程において、例えば、チャネル領域形成予定領域にレーザ光を照射してアニール処理し、当該チャネル領域形成予定領域を多結晶化するための装置である。レーザ照射装置10は、レーザ光を発生する光源(図示せず)と、投影レンズ20とを備えている。
【0011】
レーザ照射装置10は、例えば、液晶表示装置の周辺回路などの画素の薄膜トランジスタを形成する際に用いられる。このような薄膜トランジスタを形成する場合、まず、基板上にAl等の金属膜からなるゲート電極を、スパッタによりパターン形成する。
そして、低温プラズマCVD法により、基板上の全面にSiN膜からなるゲート絶縁膜を形成する。
【0012】
その後、ゲート絶縁膜上に、例えば、プラズマCVD法によりアモルファスシリコン薄膜を形成する。すなわち、基板の全面にアモルファスシリコン薄膜が形成(被着)される。最後に、アモルファスシリコン薄膜上に二酸化ケイ素(SiO)膜を形成する。
そして、図1に例示するレーザ照射装置10により、アモルファスシリコン薄膜のゲート電極上の所定の領域(薄膜トランジスタにおいてチャネル領域となる領域)にレーザ光を照射してアニール処理し、当該所定の領域を多結晶化してポリシリコン化する。なお、基板には、例えばガラス基板等を採用することができるが、必ずしもガラス素材である必要はなく、樹脂などの素材で形成された樹脂基板など、どのような素材を採用してもよい。
【0013】
図1に示すように、レーザ照射装置10において、図示しない光源から出射されたレーザ光Lは、照明光学系12によりビーム系が拡張され、輝度分布が均一化される。
光源は、例えば、波長が308nmや248nmなどのレーザ光Lを、所定の繰り返し周期で放射するエキシマレーザである。なお、波長は、これらの例に限られず、どのような波長であってもよい。
【0014】
その後、レーザ光Lは、マイクロレンズアレイ上に設けられた投影マスク30を透過し、複数のレーザ光に分離され、基板に被膜されたアモルファスシリコン薄膜の所定の領域に照射される。
基板に被膜されたアモルファスシリコン薄膜の所定の領域にレーザ光Lが照射されると、当該アモルファスシリコン薄膜が瞬間加熱されて溶融し、ポリシリコン薄膜となる。
ポリシリコン薄膜は、アモルファスシリコン薄膜に比べて電子移動度が高いため電流が流れやすく、薄膜トランジスタにおいて、ソースとドレインとを電気的に接続させるチャネル領域に用いることができる。
【0015】
なお、マイクロレンズアレイを用いた例を説明したが、必ずしもマイクロレンズアレイを用いる必要はなく、1個の投影レンズ20を用いてレーザ光Lを照射してもよい。
そして投影レンズ20には、レーザ光Lを透過させる投影マスク30が配置されている。
ここでまず、図2および図3を参照して、従来の投影マスク90の構成および問題点について詳述する。
【0016】
図2は、従来例に係る投影マスク90の断面模式図、図3は、従来例に係る投影マスク90におけるレーザ光の照射時間と温度の関係を示す図である。なお、図2においては、それぞれの部材の厚み(積層方向の大きさ)を拡大して模式的に表現している。
【0017】
図2に示すように、従来例に係る投影マスク90は、レーザ光Lを透過する透過層91と、レーザ光Lを遮光する金属膜92と、金属膜92を保護する保護膜93と、を備えている。透過層91、金属膜92、および保護膜93は、互いに積層されている。
以下の説明において、透過層91、金属膜92、および保護膜93が積層されている方向を積層方向という。そして、レーザ光Lは、積層方向のうちの一方向から、投影マスク90に照射される。
【0018】
透過層91、金属膜92、および保護膜93は、積層方向のうち、レーザ光Lが照射される側から反対側に向けて、この順に配置されている。
透過層91には、クオーツ(Qz)が採用されている。透過層91の厚みは、例えば5mmである。
金属膜92は、レーザ光Lが透過する開口を規定するための遮光膜である。金属膜92には、アルミニウム薄膜(Al)が採用されている。金属膜92の厚みは、例えば200nmである。金属膜92は、透過層91よりも屈折率が小さい。
保護膜93は、金属膜92を被覆することで、金属膜92が汚染されるのを抑えている。
【0019】
金属膜92には、所定の間隔をあけて第1開口部95が形成されている。保護膜93は、金属膜92の第1開口部95内を埋めるように配置されている。
保護膜93には二酸化ケイ素(SiO)が採用されている。保護膜93のうち、金属膜92の第1開口部95内を除く部分の厚みは200nmである。
【0020】
この投影マスク90にレーザ光Lが照射されると、透過層91と金属膜92との境界部分において、レーザ光Lが反射する(図2:反射1参照)。
そして、金属膜92の第1開口部95では反射は起こらずに、レーザ光Lが透過する(図2:透過1参照)。これにより、レーザ光Lを複数のレーザ光に分離させることができる。
【0021】
しかしながら、このような従来例に係る投影マスク90では、金属膜92がレーザ光Lのエネルギの一部を吸収することで、温度が上昇する。そのときの温度の時間的変化を図3に示す。
図3に示すように、レーザ光Lの照射時間の経過とともに、金属膜92の温度が上昇する。そして、レーザ光Lの照射が完了するまでの間に、金属膜92にダメージが発生することが確認されている。
【0022】
この時の温度特性について詳述すると、図3に示す温度変化の曲線にフィッティングを行って算出した昇温時定数が145secであるのに対して、同様に算出した降温時定数が173secであることが確認された。
すなわち、降温時定数が昇温時定数よりも大きいため、この投影マスク90にレーザ光Lの照射を繰り返すと、熱が投影マスク90に蓄積されていくことの裏付けが確認された。このため、本発明の投影マスク30では、これらの問題を解決することを目的としている。
【0023】
次に、図4を参照して本発明の投影マスク30の構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る投影マスク30の断面模式図である。なお、図4においては、それぞれの部材の厚み(積層方向の大きさ)を拡大して模式的に表現している。
投影マスク30は、レーザ光Lを透過する透過層31と、透過層31よりも屈折率が大きい反射膜32と、レーザ光Lを遮光する金属膜33と、金属膜33を保護する保護膜34と、を備えている。透過層31、反射膜32、金属膜33、および保護膜34は、互いの積層方向のうち、レーザ光Lが照射される側から反対側に向けて、この順に配置されている。
【0024】
透過層31には、クオーツ(Qz)が採用されている。透過層31の厚みは、例えば5mmである。
反射膜32には、ハフニウムオキサイド(HfO)と二酸化ケイ素(SiO)との積層部材である誘電体多層膜が採用されている。反射膜32の厚みは、例えば348nmである。
金属膜33は、レーザ光Lが透過する開口を規定するための遮光膜である。金属膜33には、アルミニウム薄膜(Al)が採用されている。金属膜33の厚みは、例えば200nmである。金属膜33は、透過層31よりも屈折率が小さい。
保護膜34は、金属膜33を被覆することで、金属膜33が汚染されるのを抑えている。金属膜33には、所定の間隔をあけて第1開口部35が形成されている。保護膜34は、金属膜33の第1開口部35内を埋めるように配置されている。
【0025】
保護膜34には二酸化ケイ素(SiO)が採用されている。保護膜34のうち、金属膜33の第1開口部35内を除く部分の厚みは100nmである。
反射膜32は、金属膜33の第1開口部35を被覆してもよいし、被覆しなくてもよい。反射膜32が金属膜33の第1開口部35を被覆しない場合には、反射膜32のうち、第1開口部35と積層方向に重なる部分に、第2開口部36が形成されている。
積層方向から見た平面視において、第2開口部36の大きさは、第1開口部35の大きさと同等になっている。また、第2開口部36内には、保護膜34が配置されている。
【0026】
この投影マスク30にレーザ光Lが照射されると、反射膜32と金属膜33との境界部分において、レーザ光Lが反射される(図4:反射2参照)。そして、金属膜33の第1開口部35では反射は起こらずに、レーザ光Lが透過する(図4:透過2、3参照)。
すなわち、金属膜33のうち、第1開口部35と積層方向に重なる部分(図4:透過2参照)、および反射膜32の第2開口部36(図4:透過3参照)では、レーザ光Lは透過する。これにより、レーザ光Lを複数のレーザ光Lに分離させることができる。
【0027】
次に、図5および図6を参照して、従来例に係る投影マスク90(以下、従来例という。)、および本発明に係る投影マスク30(以下、本発明という。)それぞれの効果の検証結果について説明する。
図5は、検証試験における反射率の違いを説明する図である。図6は、検証試験における透過率の違いを説明する図である。これらの図では、レーザ光Lの波長に対応するそれぞれの投影マスクにおける反射率、および透過率を示している。
なお、今回の検証試験では、レーザ光Lとして、図5および図6に破線で示す、波長が248nmのKrFレーザ光Lを採用した。
【0028】
まず、それぞれの構成における反射率の違いについて説明する。
図5に示すように、従来例では、透過層91と金属膜92との境界部分における反射率が89.8%(図2図5:反射1参照)となっている。一方、本発明では、反射膜32と金属膜33との境界部分における反射率が95.7%(図4図5:反射2参照)となっている。
【0029】
ここで、一般に反射率は、屈折率の差が大きいほど大きくなる傾向がある。すなわち、透過層31よりも屈折率の大きい反射膜32が、透過層31と金属膜33との間に配置されていることで、反射膜32と金属膜33との屈折率の差が、従来例の透過層91と金属膜92との屈折率の差よりも大きくなっている。
これにより、本発明の反射層32と金属膜33との境界部分における反射率が、従来例の透過層91と金属膜92との境界部分の反射率よりも大きくなっている。
【0030】
次に、それぞれの構成における透過率の違いについて説明する。
図6に示すように、従来例では、第1開口部95における透過率は、91.9%(図2図6:透過1参照)となっている。一方、本発明では、第1開口部35のうち、反射膜32に覆われている部分における透過率は、89.4%(図4図6:透過2参照)、第1開口部35のうち、反射膜32の第2開口部36と積層方向に重なる部分の透過率は、90.7%(図4図6透過3参照)となっている。
すなわち、反射膜32を透過層31と金属膜33との間に配置したとしても、レーザ光Lの透過率を十分に確保できていることが確認できた。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る投影マスク30によれば、透過層31よりも屈折率が大きい反射膜32と、レーザ光Lを遮光し、かつ反射膜32を積層方向に挟む透過層31の反対側に配置された金属膜33と、を備えている。このため、反射膜32と金属膜33との境界部分でレーザ光Lを効果的に反射することが可能になり、金属膜33がレーザ光Lを吸収するのを抑制することができる。これにより、レーザ光Lを効果的に反射してレーザ光Lのエネルギの吸収を抑え、投影マスク30の耐久性を向上することができる。
【0032】
また、レーザ照射装置10が、このような投影マスク30を備えているので、レーザ照射装置10の長期間の使用に際して、耐久性が問題となりやすい投影マスク30の耐久性を向上することができ、レーザ照射装置10のメンテナンス性を確保することができる。
【0033】
なお、上述実施形態は、本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に対して種々の変形を行ってもよい。
【0034】
例えば、反射膜32として、ハフニウムオキサイドと二酸化ケイ素との積層部材を採用した構成を示したが、このような態様に限られない。反射膜32としては、その他の誘電体多層膜であってもよいし、透過層31よりも屈折率が大きな部材であれば、その材料は任意に選択することができる。
【0035】
また、前述した変形例に限られず、これらの変形例を選択して適宜組み合わせてもよいし、その他の変形を施してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 レーザ照射装置
20 投影レンズ
30 投影マスク
31 透過層
32 反射膜
33 金属膜
34 保護膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6