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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】カルバートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 11/34 20060101AFI20220819BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
E04G11/34 A
E03F3/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018114457
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019218684
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】509154718
【氏名又は名称】藤井建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正一
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-194070(JP,A)
【文献】特開平08-199994(JP,A)
【文献】特開2017-096069(JP,A)
【文献】特開2009-144362(JP,A)
【文献】特開2008-308855(JP,A)
【文献】特開平09-151471(JP,A)
【文献】特開昭61-221497(JP,A)
【文献】特開平09-111785(JP,A)
【文献】米国特許第03696177(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 11/34
E03F 3/04
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物であるカルバートの製造方法であって、
前記カルバートは、第1の方向に連続し、前記第1の方向に隣り合う第1の区間、第2の区間及び第3の区間を含み、
前記第1の区間において、前記カルバートの第1の天板の底面を成形する天板型枠を施工する第1の天板型枠施工工程と、
前記第1の区間において、前記第1の天板のコンクリートを硬化させる天板コンクリート養生工程と、
前記第2の区間において、前記天板コンクリート養生工程の実施中に、第2の天板の鉄筋を下方から支持可能な支持台を、施工する支持台施工工程と、
前記第2の区間において、前記天板コンクリート養生工程の実施中に、前記支持台を用いて、前記第2の天板の鉄筋を配筋する第2の天板配筋工程と、
前記天板型枠及び前記支持台を、前記第1の方向に移動させて、前記天板型枠を前記第2の区間に配置し、前記支持台を前記第3の区間に配置する型枠移動工程と、を含む、
カルバートの製造方法。
【請求項2】
前記第1の区間において、前記カルバートの第1の側壁のコンクリートを硬化させる側壁コンクリート養生工程と、
前記側壁コンクリート養生工程の実施中に、前記第2の区間において、前記カルバートの第2の側壁の鉄筋を配筋する第2の側壁配筋工程と、
を含む請求項1に記載のカルバートの製造方法。
【請求項3】
前記第2の区間において、前記第2の天板の鉄筋を下方から支持可能な支持台を、前記天板コンクリート養生工程の実施中に、施工する支持台施工工程を含み、
前記第2の側壁配筋工程では、前記支持台を用いて、前記第2の天板の鉄筋及び前記第2の側壁の鉄筋を支持して、前記第2の側壁の鉄筋を配筋する、
請求項2に記載のカルバートの製造方法。
【請求項4】
前記第1の区間において、前記第1の天板の底面を成形する天板型枠を施工する第1の天板型枠施工工程と、
前記第1の区間において、前記天板型枠を用いて、前記第1の天板の鉄筋及び前記第1の側壁の鉄筋を支持して、前記第1の天板の鉄筋及び前記第1の側壁の鉄筋を配筋する第1の側壁、天板配筋工程と、
前記第1の区間において、前記第1の側壁の内面を成形する側壁型枠を施工する第1の側壁型枠施工工程と、
前記天板型枠、前記側壁型枠及び前記支持台を、前記第1の方向に移動させて、前記天板型枠及び前記側壁型枠を前記第2の区間に配置し、前記支持台を前記第2の区間に隣接する第3の区間に配置する型枠移動工程と、
を含む請求項3に記載のカルバートの製造方法。
【請求項5】
前記天板型枠を第1の高さ位置に施工する前記天板型枠施工工程と、
前記支持台を前記第1の高さ位置よりも低い第2の高さ位置に施工する前記支持台施工工程と、
前記第1の区間において、前記天板型枠を降下させて、前記第2の高さ位置に配置する天板型枠降下工程と、を含み、
前記天板型枠降下工程の実施後に、前記型枠移動工程を実施する、
請求項4に記載のカルバートの製造方法。
【請求項6】
前記第2の天板配筋工程では、ローラーを備えた鉄筋受け装置を前記第2の天板の鉄筋に取り付けて、前記ローラーを前記支持台の上面に当接させて、前記第2の天板の鉄筋を支持し、
前記型枠移動工程では、前記天板型枠又は前記支持台の上面に当接する前記ローラーを回転させながら、前記天板型枠及び前記支持台を移動する、
請求項4又は5に記載のカルバートの製造方法。
【請求項7】
前記型枠移動工程の実施後に、前記第2の区間において、前記天板型枠を介さずに、前記第2の天板の鉄筋を支持しながら、前記第2の天板の鉄筋を上昇させて、前記鉄筋受け装置の前記ローラーを前記天板型枠から離間せる天板鉄筋上昇工程と、
前記第2の天板の鉄筋に取り付けられている前記鉄筋受け装置を撤去する鉄筋受け装置撤去工程と、
前記天板型枠を第1の高さ位置に上昇させる天板型枠上昇工程と、を含み、
前記第2の天板の鉄筋に取り付けられているスペーサを前記天板型枠の上面に当接させる、
請求項6に記載のカルバートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルバートの製造(施工)方法において、内型枠を移動させて、複数の区間に内型枠を順次配置して、コンクリートを打設する工法がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の型枠装置では、例えば、内型枠を台車に載せたり、内型枠に車輪を取り付けたりして、内型枠を移動可能な構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-57767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、コンクリートを打設して、コンクリートが硬化した後に、内型枠を移動させて次の区間に配置している。特許文献1では、内型枠の移動後に、次の区間の配筋を行っている。そのため、前の区間のコンクリートが硬化して、内型枠を脱型した後でなければ、内型枠を移動させて、次の区間の配筋を行うことができなかった。本発明は、工期を短縮することが可能なカルバートの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物であるカルバートの製造方法であって、カルバートは、第1の方向に連続し、第1の方向に隣り合う第1の区間及び第2の区間を含み、当該製造方法は、第1の区間において、カルバートの第1の天板のコンクリートを硬化させる天板コンクリート養生工程と、天板コンクリート養生工程の実施中に、第2の区間において、カルバートの第2の天板の鉄筋を配筋する第2の天板配筋工程と、を含む。
【0006】
このカルバートの製造方法では、第1の区間において、第1の天板のコンクリート養生工程の実施中に、第2の区間において、第2の天板の鉄筋を配筋する。これにより、第1の区間のコンクリート養生工程後に、第2の区間の配筋を開始する場合と比較して、工期を短縮することができる。作業員の待機時間を減少させて、効率化を図ることができる。
【0007】
また、カルバートの製造方法は、第2の区間において、第2の天板の鉄筋を下方から支持可能な支持台を、天板コンクリート養生工程の実施中に、施工する支持台施工工程を含み、第2の天板配筋工程では、支持台を用いて、第2の天板の鉄筋を支持して配筋される。
【0008】
また、カルバートの製造方法は、第1の区間において、第1の天板の底面を成形する天板型枠を施工する第1の天板型枠施工工程と、天板型枠及び支持台を、第1の方向に移動させて、天板型枠を第2の区間に配置し、支持台を第2の区間に隣接する第3の区間に配置する型枠移動工程と、を含む。これにより、第1の区間で使用した天板型枠を第2の区間で再利用して、コンクリートを打設することができ、第2の区間で使用した支持台を第3の区間で再利用して、配筋することができる。そのため、複数の区間に対応して、型枠、支持台、及びこれらを支持する支保工等の工事用資材を複数準備しなくてもよい。その結果、工事用資材の組み立て、運搬等に係るコストの増大を抑制することができる。
【0009】
また、カルバートの製造方法は、第1の区間において、カルバートの第1の側壁のコンクリートを硬化させる側壁コンクリート養生工程と、側壁コンクリート養生工程の実施中に、第2の区間において、カルバートの第2の側壁の鉄筋を配筋する第2の側壁配筋工程と、を含んでもよい。第1の区間において、第1の側壁のコンクリート養生工程の実施中に、第2の区間において、第2の側壁の鉄筋を配筋できる。これにより、第1の区間のコンクリート養生工程後に、第2の区間の配筋を開始する場合と比較して、工期を短縮することができる。作業員の待機時間を減少させて、効率化を図ることができる。
【0010】
また、カルバートの製造方法は、第2の区間において、第2の天板の鉄筋を下方から支持可能な支持台を、天板コンクリート養生工程の実施中に、施工する支持台施工工程を含み、第2の側壁配筋工程では、支持台を用いて、第2の天板の鉄筋及び第2の側壁の鉄筋を支持して、第2の側壁の鉄筋を配筋してもよい。
【0011】
また、カルバートの製造方法は、第1の区間において、第1の天板の底面を成形する天板型枠を施工する第1の天板型枠施工工程と、第1の区間において、天板型枠を用いて、第1の天板の鉄筋及び第1の側壁の鉄筋を支持して、第1の天板の鉄筋及び第1の側壁の鉄筋を配筋する第1の側壁、天板配筋工程と、第1の区間において、第1の側壁の内面を成形する側壁型枠を施工する第1の側壁型枠施工工程と、天板型枠、側壁型枠及び支持台を、第1の方向に移動させて、天板型枠及び側壁型枠を第2の区間に配置し、支持台を第2の区間に隣接する第3の区間に配置する型枠移動工程と、を含んでもよい。これにより、第1の区間で使用した側壁型枠を第2の区間で再利用して、コンクリートを打設することができる。そのため、複数の区間に対応して、型枠、及びこれらを支持する支保工等の工事用資材を複数準備しなくてもよい。その結果、工事用資材の組み立て、運搬等に係るコストの増大を抑制することができる。
【0012】
また、カルバートの製造方法は、天板型枠を第1の高さ位置に施工する天板型枠施工工程と、支持台を第1の高さ位置よりも低い第2の高さ位置に施工する支持台施工工程と、第1の区間において、天板型枠を降下させて、第2の高さ位置に配置する天板型枠降下工程と、を含み、天板型枠降下工程の実施後に、型枠移動工程を実施してもよい。これにより、天板型枠及び支持台の高さを揃えて、天板型枠及び支持台を移動させることができる。
【0013】
また、第2の天板配筋工程では、ローラーを備えた鉄筋受け装置を第2の天板の鉄筋に取り付けて、ローラーを支持台の上面に当接させて、第2の天板の鉄筋を支持し、型枠移動工程では、天板型枠又は支持台の上面に当接するローラーを回転させながら、天板型枠及び支持台を移動させてもよい。これにより、天板型枠及び支持台を円滑に移動させることができる。
【0014】
また、カルバートの製造方法は、型枠移動工程の実施後に、第2の区間において、天板型枠を介さずに、第2の天板の鉄筋を支持しながら、第2の天板の鉄筋を上昇させて、鉄筋受け装置のローラーを天板型枠から離間せる天板鉄筋上昇工程と、第2の天板の鉄筋に取り付けられている鉄筋受け装置を撤去する鉄筋受け装置撤去工程と、天板型枠を第1の高さ位置に上昇させる天板型枠上昇工程と、を含み、第2の天板の鉄筋に取り付けられているスペーサを天板型枠の上面に当接させてもよい。これにより、スペーサ及び天板型枠を介して、第2の天板の鉄筋を受けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、工期を短縮することが可能なカルバートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るカルバートを示す斜視図である。
図2図1に示すカルバートの断面図である。
図3】底板上に配置された型枠装置を示す側面図である。
図4】第1区間に配置された第1型枠支保工部を示す正面図である。
図5】第2区間に配置された第2型枠支保工部を示す正面図である。
図6】型枠装置における型枠の配置を示す斜視図である。
図7】カルバートの製造方法の工程図であり、底部の施工手順を示す図である。
図8】カルバートの製造方法の工程図であり、第1区間における支保工の組み立てから、側壁、スラブコンクリート養生までの手順を示す図である。
図9】カルバートの製造方法の工程図であり、第2区間における支保工の組み立てから、型枠装置の移動までの手順を示す図である。
図10】カルバートの製造方法の工程図であり、第2区間におけるスラブ型枠の開口部開放から、側壁、スラブコンクリート養生までの手順を示す図である。
図11】スラブ用支持台上の鉄筋受けキャスタ及びスペーサの配置を示す図である。
図12】第1区間のスラブ型枠の高さ位置、及び第2区間のスラブ支持台の高さ位置を示す図である。
図13】型枠装置の移動の経過を示す側面図である。
図14】スラブ型枠を支持する第1支保工、及びスラブ型枠を貫通する全ネジボルトの配置を示す図である。
図15】スラブ筋を支持するアングル及び全ネジボルトの配置を示す図である。
図16】スラブ型枠上のスペーサの配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
まず、カルバートの製造方法について説明する前に、図1及び図2を参照してカルバート(ボックスカルバート)1について説明する。例えば、カルバート1は、工場、発電所等に設置され、放水路として利用される。カルバート1の長手方向に交差する断面は、例えば矩形である。カルバート1は、底板2、側壁3,4及びスラブ(天板)5を備える。各図において、直交する3方向(X方向、Y方向、Z方向)を矢印で示している。X方向(第1の方向)は、カルバート1の長手方向である。Y方向は、カルバート1の長手方向と交差する幅方向(第2の方向)である。Z方向は、上下方向(第3の方向)である。
【0019】
底板2、側壁3,4及びスラブ5は、鉄筋コンクリートによって構成されている。底板2、側壁3,4及びスラブ5には、主筋、フープ筋(せん断補強筋)等が配置されている。主筋としては、X方向に延在する主筋、Y方向に延在する主筋、Z方向に延在する主筋がある。例えば、主筋として、L型に屈曲された鉄筋が、スラブ5及び側壁3,4において連続していてもよい。同様に、L型に屈曲された鉄筋が、底板2及び側壁3,4において連続していてもよい。
【0020】
底板2は、カルバート1の底部に配置されている。底板2の厚み方向は、Z方向に沿っている。側壁3,4は、カルバート1の側部に配置されている。側壁3,4の厚み方向は、Y方向に沿っている。側壁3,4は、Y方向に対向し、底板2の側部から上方に延びている。スラブ5は、カルバート1の天部に配置されている。スラブ5の厚み方向は、Z方向に沿っている。スラブ5のY方向における両端部は、側壁3,4の上端部に連結されている。底板2及びスラブ5は、Z方向に対向している。
【0021】
カルバート1の角部には、ハンチ6~9が設けられている。ハンチ6は、側壁3と底板2との角部に設けられ、ハンチ7は、側壁4と底板2との角部に設けられ、ハンチ8は、側壁3とスラブ5との角部に設けられ、ハンチ9は、側壁4とスラブ5との角部に設けられている。ハンチ6~9の表面は、Z方向に対して傾斜する傾斜面を形成している。ハンチ6,7は、下方に向かうほど、カルバート1の内側に張り出し、ハンチ8,9は、上方に向かうほど、カルバート1の内側に張り出している。このように側壁3,4の厚みを増加することで、カルバート1の角部の強度の向上を図ることができる。カルバート1は、ハンチが設けられていないものでもよい。
【0022】
カルバート1は、図2に示されるように、例えば地中に配置されている。Y方向において、カルバート1の両側には、矢板(シートパイル)10,11が配置されている。矢板10は、側壁3の外面3bに対向するように配置され、矢板11は、側壁4の外面4bに対向するように配置されている。矢板10,11は、地上から打ち込まれてZ方向に延在している。平面視において、矢板10,11は、X方向に連続している。
【0023】
カルバート1の下側には、均しコンクリート部12が施工されている。均しコンクリート部12は、矢板10,11間で、X方向に連続するように設けられている。均しコンクリート部12の上面12a上に、底板2が配置されている。
【0024】
次に、図3図6に示される型枠装置20にいついて説明する。カルバートの製造方法では、型枠装置20をX方向に順次移動させて、カルバート1を施工(製造)する。カルバート1を施工する場合には、複数区間ごとに作業が行われる。複数区間は、図1に示されるように、第1区間(第1の区間)B1、第2区間(第2の区間)B2、第3区間(第3の区間)B3、第4区間B4、…を含む。
【0025】
型枠装置20は、図3図5に示されるように、第1型枠支保工部21及び第2型枠支保工部22を備える。図3に示す状態では、第1型枠支保工部21は、第1区間B1に配置され、第2型枠支保工部22は、第2区間B2に配置されている。図3図5に示す状態では、底板2は第1区間B1~第3区間B3において施工済みである。図3に示されるように、側壁3,4及びスラブ5は、第1区間B1において施工済みであり、第2区間B2において施工前である。図4及び図5では、側壁3,4及びスラブ5についてコンクリート打設前の状態を示している。
【0026】
第1型枠支保工部21は、型枠及び支保工を含む。図3図4及び図6に示されるように、第1型枠支保工部21は、型枠として、側壁型枠23,24と、スラブ型枠25と、ハンチ用型枠26,27と、を備える。第1型枠支保工部21は、支保工として、第1支保工28を備える。側壁型枠23は、側壁3の内面3aを成形するための型枠である。側壁型枠24は、側壁4の内面4aを成形するための型枠である。ハンチ用型枠26は、ハンチ8の傾斜面を成形するための型枠である。ハンチ用型枠27は、ハンチ9の傾斜面を成形するための型枠である。スラブ型枠25は、スラブ5の下面(底面)5aを形成するための型枠である。
【0027】
第1支保工28は、側壁型枠23,24、スラブ型枠25、ハンチ用型枠26,27を支持する。第1支保工28では、X方向、Y方向及びZ方向に延在する複数の鋼管が連結されている。第1支保工28は、Z方向に延在する複数の第1部材29と、Y方向に延在する複数の第2部材30と、X方向に延在する第3部材31と、を含む。
【0028】
第1部材29は、スラブ型枠25を下方から支持する。第1部材29は、例えば所定の強度を有する鋼管である。複数の第1部材29は、Y方向において、所定の間隔で配置されている。複数の第1部材29は、X方向において、所定の間隔で配置されている。第1部材29の下端部には、例えばローラー部が設けられる。図3及び図4では、ローラー部が装着される前の状態が示されている。
【0029】
第2部材30は、側壁型枠23,24をY方向内側から支持する。第2部材30は、例えば所定の強度を有する鋼管である。複数の第2部材30は、X方向において、所定の間隔で配置されている。第2部材30の端部に、側壁型枠23,24が連結されている。具体的には、第2部材30は、側壁型枠23,24の形状を維持するための補強部材32,33に連結されている。X方向において同じ地点に配置された第1部材29及び第2部材30は、格子状を成すように配置されている。格子状を成すように配置された第1部材29及び第2部材30が、X方向に所定の間隔で配置されている。
【0030】
図3に示される第3部材31は、複数の第1部材29及び第2部材30をX方向に連結する。第3部材31は、例えば所定の強度を有する鋼管である。複数の第3部材31は、Y方向において、所定の間隔で配置されている。複数の第3部材31は、Z方向において、所定の間隔で配置されている。第3部材31は、Y方向から見て、第1部材29と交差するように配置されている。第1支保工28は、X方向から見て、第1部材29及び第2部材30に対して傾斜する部材を備えていてもよい。第1支保工28は、Y方向から見て、第1部材29及び第3部材31に対して傾斜する部材を備えていてもよい。
【0031】
第1支保工28は、図4に示されるように、ハンチ用型枠26,27を支持する第4部材34を備えている。第4部材34は、例えば所定の強度を有する鋼管である。第4部材34は、X方向から見て、第1部材29及び第2部材30に対して傾斜するように配置されている。第4部材34は、例えば第1部材29に連結され、斜め下方からハンチ用型枠26,27を支持する。
【0032】
第1支保工28は、作業員が乗ることが可能な複数の足場板(不図示)を備える。足場板は、X方向に離間する複数の第2部材30に架け渡されている。第1支保工28は、スラブ型枠25の高さ位置を調整可能となっている。第1部材29には、例えばジャッキ41が連結され、上端部の位置を可変とすることができる。これにより、スラブ型枠25の高さ位置を変えることができる(図12参照)。
【0033】
第2型枠支保工部22は、図3図5及び図6に示されるように、スラブ用支持台(支持台)35と、第2支保工36とを備える。スラブ用支持台35は、例えば板状を成し、第2区間B2のスラブ5の鉄筋(スラブ筋16)を支持可能な部材である。スラブ用支持台35の上面35aは、平面を成している。スラブ用支持台35は、スラブ型枠25と同様の構成である。
【0034】
第2支保工36は、スラブ用支持台35を支持する支保工である。第2支保工36は、Z方向に延在する複数の第1部材37と、Y方向に延在する複数の第2部材38と、X方向に延在する第3部材39と、を含む。第2支保工36の第1部材37、第2部材38及び第3部材39は、第1支保工28の第1部材29、第2部材30及び第3部材31と同様の構成である。第2型枠支保工部22は、側壁型枠23,24を備えていないので、第2部材38は、側壁型枠23,24を支持するわけではない。
【0035】
第2支保工36は、X方向から見て、第1部材37及び第2部材38に対して傾斜する部材を備えていてもよい。第2支保工36は、Y方向から見て、第1部材37及び第3部材39に対して傾斜する部材を備えていてもよい。また、第2型枠支保工部22は、スラブ用支持台35から斜め下方に延びる傾斜部(ハンチ型枠)を備えていてもよく、備えていないものでもよい。この傾斜部が設けられていない第2型枠支保工部22は、傾斜部を支持する斜材を備えていなくてもよい。また、スラブ用支持台35は、最終区間のスラブ5を成形する際にスラブ型枠として使用できる。
【0036】
第2支保工36は、作業員が乗ることが可能な複数の足場板を備える。足場板は、X方向に離間する複数の第2部材38に架け渡されている。第2型枠支保工部22は、Y方向において外側に対して開放されている。
【0037】
次に、カルバート1の製造方法について説明する。カルバート1は、上述したように現場にて施工される。このカルバート1の製造方法は、スラブ鉄筋先行方押し工法を含む。
【0038】
図7に示されるように、まず、ステップS1からステップS8までの工程を実行する。ステップS1からステップS8までの工程は、例えば、複数区間同時に行われる。カルバート1が施工される範囲において、最初に施工される区間を第1区間B1とする。X方向において、第1区間B1に隣接する区間を第2区間B2とし、第2区間B2に隣接する区間を第3区間B3とする。以下、順に、第4区間B4、…とする。ステップS1からステップS8を同時に施工する複数の区間には、第1区間B1~第3区間B3が含まれる。1の区間は、X方向において、例えば15mとすることができる。ステップS1からステップS8までの工程は、カルバート1の全ての区間について、1度に行ってもよく、複数回に分けて実施してもよい。
【0039】
ステップS1では、矢板打ち込み工程を実施する。矢板打ち込み工程では、カルバート1が施工される領域に沿って地表から矢板10,11を打ち込む。カルバート1の幅に対応する位置に矢板10,11が打ち込まれる。矢板10,11は、側壁3,4の外面3b,4bを成形するための型枠として利用される。
【0040】
次に、ステップS2では、掘削工程を実施する。掘削工程では、矢板10,11間の土砂を掘削して、カルバート1が施工される領域を確保する。掘削された範囲にカルバート1が施工される。
【0041】
次に、ステップS3では、均しコンクリート打設工程を実施する。均しコンクリート打設工程では、矢板10,11間において、掘削された領域の底部に、コンクリートを打設して、均しコンクリート部12を施工する。均しコンクリート部12を施工して、平らな面である上面12aを形成する。この均しコンクリート部12の上にカルバート1が施工される。均しコンクリート部12では、例えば割栗石上にコンクリートが施工されている。
【0042】
次に、ステップS4では、底部配筋工程を実施する。底部配筋工程では、底板2、ハンチ6,7の鉄筋を配置する。底部配筋工程では、側壁3,4の下部側である立ち上がり部13についても、鉄筋を配置する。底部は、底板2、ハンチ6,7、側壁3,4の立ち上がり部13を含む。
【0043】
次に、ステップS5では、底部型枠施工工程を実施する。底部型枠施工工程では、ハンチ6,7の傾斜面を成形するための型枠、側壁3,4の立ち上がり部の内面3a,4aを成形するための型枠を配置する。底板2の底面2bは、均しコンクリート部12の上面12aによって成形される。側壁3,4の立ち上がり部13の外面は、矢板10,11によって成形される。
【0044】
次に、ステップS6では、底部コンクリート打設工程を実施する。底部コンクリート打設工程では、底板2となる部分、ハンチ6,7となる部分、側壁3,4の立ち上がり部13となる部分に、コンクリートを流し込む。底板2の上面2aは、例えば左官工が均して平らに施工される。
【0045】
次に、ステップS7では、底部コンクリート養生工程を実施する。底部コンクリート養生工程では、ステップS6で打設されたコンクリートが硬化するまで時間が経過するのを待つ。底部コンクリート養生工程は、例えば1週間程度とすることができる。
【0046】
次に、ステップS8では、底部型枠解体工程を実施する。底部型枠解体工程では、ステップS5で施工された型枠を解体し撤去する。撤去された型枠は、他の区間において、転用される。
【0047】
図7に示すステップS1からステップS8までの工程が完了したら、図8に示されるように、ステップS11からステップS15までの工程を実施する。ステップS11からステップS15までの工程は、第1区間B1について実施する。
【0048】
ステップS11では、第1型枠支保工部組立工程(第1の天板型枠施工工程)を実施する。第1型枠支保工部組立工程では、第1区間B1の底板2上に、第1型枠支保工部21を組み立てる(図3及び図4参照)。具体的には、第1部材29、第2部材30及び第3部材31を所定の位置に配置し、互いに連結する。これにより、第1支保工28を組み立てる。第1支保工28を組み立てた後、スラブ型枠25、ハンチ用型枠26,27を第1支保工28に対して組み付ける。第1支保工28では、ジャッキ41を介在させて、スラブ型枠25及びハンチ用型枠26,27を支持する。
【0049】
例えば、ジャッキ41は、図14に示されるように、複数の大引材61を介して、スラブ型枠25を支持する。大引材61は、X方向に延在する強度部材である。大引材61として、例えば、C型鋼又は角パイプ等を用いることができる。複数の大引材61は、Y方向に離間して、X方向に延在している。スラブ型枠25は、複数の大引材61に対して固定されている。
【0050】
スラブ型枠25は、金属製(メタルフォーム)でもよく木材を利用したものでもよい。木材として、例えばベニヤ板からなるスラブ型枠25を使用してもよい。木製のスラブ型枠25を使用する場合には、大引材61に交差するように複数の根太材62を配置する。複数の根太材62は、大引材61上で、X方向に離間して、Y方向に延在している。複数の大引材61及び根太材62は、平面視において、格子状に配置されている。木製のスラブ型枠25は、大引材61及び根太材62に対して固定されている。例えば、金属製のスラブ型枠25を使用する場合には、根太材62を使用しなくてもよい。
【0051】
図12(a)及び図12(b)に示されるように、スラブ型枠25は、ジャッキ41を操作して、高さ位置(H1,H2)を調整可能である。ハンチ用型枠26,27は、スラブ型枠25と共に、変位する。図12(a)に示されるように、ステップS11におけるスラブ型枠25の高さ位置を第1高さ位置H1とする。第1高さ位置H1は、設計上のスラブ5の下面5aの位置に相当する。図12(b)に示されるように、第2高さ位置H2は、第1高さ位置H1よりも低く、スラブ用支持台35の上面35aの位置に相当する。
【0052】
ステップS11の第1型枠支保工部組立工程では、第1支保工28において、適宜、足場板等を設置する。この状態において、側壁型枠23,24は、第1支保工28に組み付けられていない。第1支保工28の側方は、開放された状態となっている。図4では、側壁型枠23,24が図示されているが、ステップS11では、側壁型枠23,24が組み付けられていない。側壁型枠23,24は、後述するステップS13において組み付けられる。なお、ステップS11の第1型枠支保工部組立工程と同時に(または連続して)、後述するステップS21の第2区間B2の第2型枠支保工部組立工程を実施してもよい。
【0053】
次に、ステップS12では、第1区間B1について、側壁、スラブ配筋工程(第1の側壁、天板配筋工程)を実施する。この側壁、スラブ配筋工程では、第1区間B1について、スラブ(第1の天板)5の鉄筋、側壁3,4の鉄筋を配置する。ここでは、例えばL字形の鉄筋を配置する。L字形の鉄筋は、スラブ5の一部(右側部分)及び側壁3の一部(上部側)に配置される。L字形の鉄筋は、スラブ5の一部(左側部分)及び側壁4の一部(上部側)に配置される。図16に示されるように、スラブ5の鉄筋(スラブ筋16)には、スペーサ14が取り付けられている。このスペーサ14は、スラブ型枠25の上面25aに配置される。スラブ筋16は、スペーサ14を介して、スラブ型枠25によって下方から支持される。スペーサ14は、例えばスラブ5の下部側のスラブ筋16と、スラブ型枠25の上面25aとの間に配置されている。スペーサ14は、例えば、スラブ筋16と交差する鉄筋16Bに取り付けられていてもよい。また、側壁3,4について、上部側から立ち上がり部13まで、鉄筋を配置する。
【0054】
次に、ステップS13では、第1区間B1について、側壁型枠施工工程(第1の側壁型枠施工工程)を実施する。この側壁型枠施工工程では、第1区間B1について、側壁型枠23,24を第1支保工28に対して組み付ける。例えば、第2部材30の端部に、側壁型枠23,24を連結する。側壁型枠23,24の補強部材32,33を第2部材30の端部に固定する。
【0055】
次に、ステップS14では、第1区間B1について、側壁、スラブコンクリート打設工程を実施する。この側壁、スラブコンクリート打設工程では、第1区間B1について、側壁3,4となる部分、スラブ5となる部分、ハンチ8,9となる部分にコンクリートを流し込む。
【0056】
次に、ステップS15では、第1区間B1について、側壁、スラブコンクリート養生工程(天板コンクリート養生工程、側壁コンクリート養生工程)を実施する。この側壁、スラブコンクリート養生工程では、第1区間B1について、ステップS14で打設されたコンクリートが硬化するまで時間の経過を待つ。側壁、スラブコンクリート養生工程は、例えば1週間程度とすることができる。
【0057】
ここで、カルバート1の製造方法では、第1区間B1の側壁、スラブコンクリート養生工程において、時間の経過を待っている間に、第2区間B2について、スラブ(第2の天板)5の鉄筋を配筋(スラブ筋16)する。具体的には、ステップS15の養生工程が実行されている間に、図9に示されるステップS21及びステップS22を実施することができる。
【0058】
ステップS21では、第2型枠支保工部組立工程(支持台施工工程)を実施する。第2型枠支保工部組立工程では、第2区間B2の底板2上に、第2型枠支保工部22を組み立てる。具体的には、第1部材37、第2部材38及び第3部材39を所定の位置に配置し、互いに連結する。これにより、第2支保工36を組み立てる。第2支保工36を組み立てた後、スラブ用支持台35を第2支保工36に対して組み付ける。第2支保工36では、ジャッキ41を介在させて、スラブ用支持台35を支持する。スラブ用支持台35は、高さ位置を調整可能である。このときのスラブ用支持台35の高さ位置は、スラブ型枠25の第1高さ位置H1より低い第2高さ位置H2とする(図12参照)。第2支保工36において、適宜、足場板等を設置する。この状態において、第2支保工36に対して、側壁型枠23,24は組み付けられておらず、第2支保工36の側方は、開放された状態となっている。
【0059】
次に、ステップS22では、第2区間B2について、側壁、スラブ配筋工程(第2の天板配筋工程、第2の側壁配筋工程)を実施する。この側壁、スラブ配筋工程では、第2区間B2について、スラブ5の鉄筋、側壁3,4の上部側の鉄筋を配置する。ここでは、例えばL字形の鉄筋を配置する。L字形の鉄筋は、スラブ5の一部(右側部分)及び側壁3の一部(上部側)に配置される。L字形の鉄筋は、スラブ5の一部(左側部分)及び側壁4の一部(上部側)に配置される。スラブ5の鉄筋には、スペーサ14が取り付けられている。スペーサ14は、例えばスラブ5の最下部の鉄筋(段取り筋)と、スラブ用支持台35の上面35aとの間に配置されている。スペーサ14の底面と、スラブ用支持台35の上面35aとの間には、隙間が形成されている。
【0060】
また、スラブ5の最下部の鉄筋16Bは、鉄筋受けキャスタ(鉄筋受け装置)42上に載せられる。この鉄筋受けキャスタ42は、スラブ用支持台35の上面35aに配置される。スラブ5の鉄筋は、鉄筋受けキャスタ42を介して、スラブ用支持台35によって下方から支持される。鉄筋受けキャスタ42は、例えばスラブ5の最下部の鉄筋16Bと、スラブ用支持台35の上面35aとの間に配置されている。
【0061】
図11に示されるように鉄筋受けキャスタ42は、鉄筋受け部43、連結部44、ローラー部45を含む。鉄筋受け部43は、スラブ筋16Bを受けるための凹部を有する。鉄筋受け部43のX方向に交差する断面は、例えばV字状を成している。この鉄筋受け部43は、X方向に所定の長さを有する。連結部44は、鉄筋受け部43を下方から支持する。連結部44は、鉄筋受け部43とローラー部45とを連結する。連結部44は板状を成し、その板厚方向はY方向に沿っている。連結部44には、板厚方向に貫通する開口部44aが設けられている。
【0062】
ローラー部45は、Y方向において、連結部44の両側に設けられている。ローラー部45は、ローラー45a、シャフト45b及び支持部材45cを含む。ローラー45aの中心には貫通孔が設けられ、シャフト45bは、貫通孔に挿通されている。ローラー45aは、シャフト45bを中心として回転する。支持部材45cは、ローラー45aを上方から覆う天部と、ローラー45aを側方から覆う一対の側部とを含む。支持部材45cの一対の側部は、Y方向の両側からローラー45aの中心を覆っている。シャフト45bの両端部は、支持部材45cによって支持されている。支持部材45cは、連結部44に対して固定されている。
【0063】
鉄筋受けキャスタ42は、例えばワイヤーを用いて、スラブ筋16Bに取り付けられている。ワイヤーは、連結部44の開口部44aに挿通され、鉄筋受け部43及びスラブ筋16Bに巻き付けられている。側壁、スラブ配筋工程が実施された後において、鉄筋受けキャスタ42のローラー45aは、スラブ用支持台35の上面35aに当接している。
【0064】
ステップS15の第1区間B1の側壁、スラブコンクリート養生工程が終了したら、第1区間B1について、ステップS23の側壁型枠剥離工程を行う。この側壁型枠剥離工程では、第1区間B1について、側壁3,4から側壁型枠23,24を剥離させる。この側壁型枠剥離工程では、例えば、側壁型枠23,24の下端部にワイヤー18等を固定し、ウインチ等を用いてワイヤー18を斜め上方に引っ張る(図4参照)。側壁型枠23,24の下端部をY方向内側に引き込み、側壁型枠23,24を側壁3,4の内面3a,4aから離間させる。側壁型枠23,24の下端部を斜め上方に引き上げることで、側壁型枠23,24を降下させるためのスペースを確保する。なお、矢板10,11を使用しないで、外側の側壁型枠を使用する場合には、ステップS23の側壁型枠剥離工程において、内側の側壁型枠23,24を剥離すると共に、外側の側壁型枠を剥離する。
【0065】
次に、ステップS24では、第1区間B1において、スラブ型枠降下工程(天板型枠降下工程)を実施する。この天井用型枠降下工程では、図12に示されるように、第1支保工28のジャッキ41を操作して、第1部材29の上端部を降下させて、スラブ型枠25を降下させる。これにより、ハンチ用型枠26,27及び側壁型枠23,24は、スラブ型枠25と一体として降下する。スラブ型枠25は、図12(a)に示される第1高さ位置H1から、図12(b)に示される第2高さ位置H2に降下する。その結果、スラブ5の下面5aと、スラブ型枠25の上面25aとの間に隙間が生じる。この状態において、第1区間B1のスラブ型枠25の上面25aと、第2区間B2のスラブ用支持台35の上面35aとの高さ位置は、第2高さ位置H2で揃っている。
【0066】
次に、ステップS25では、型枠装置移動工程(型枠移動工程)を実施する。この型枠装置移動工程では、第1区間B1及び第2区間B2に亘って存在する型枠装置20を1区間分移動させる。図13に示されるように、型枠装置20を第2区間B2及び第3区間B3に亘って存在するように移動させる。例えば、型枠装置20にワイヤー46等を連結し、X方向前方(図示右側)に配置されたウインチ47を用いて、ワイヤー46をX方向に引っ張ることで、型枠装置20をX方向に移動させる。第1部材29,37の下端部には、ローラー48が設けられている。底板2の上面2a上には、ガイドレール(不図示)が敷設されている。型枠装置20を移動させる際には、ローラー48はガイドレールに沿って移動する。
【0067】
この型枠装置移動工程では、図12(b)に示されるように、第2区間B2のスラブ用支持台35の上面35a及び第1区間B1のスラブ型枠25の上面25aの高さ位H2置は揃っている。型枠装置20の移動に伴って、鉄筋受けキャスタ42は、スラブ用支持台35の上面35aに接触しながら回転し、スラブ用支持台35が通過すると、スラブ型枠25の上面25aに接触しながら回転する。図13(a)に示される状態から、図13(b)に示されるように、第1型枠支保工部21は第2区間B2に配置され、第2型枠支保工部22は第3区間B3に配置されて、ステップS25における型枠装置移動工程が終了する。なお、型枠装置移動工程では、手動によって、型枠装置20を移動させてもよい。また、型枠装置20を前方から引っ張って移動させてもよく、型枠装置20を後方から押し出して移動させてもよい。
【0068】
次に、図10に示されるように、ステップS31~ステップS40に示される工程を行う。まず、ステップS31では、第2区間B2において、スラブ型枠25の開口部開放工程を行う。図14に示されるように、スラブ型枠25には、開口部25bが設けられている。開口部25bに、蓋体(不図示)を装着することで、開口部25bを閉じることができ、開口部25bに装着された蓋体を取り外すことで、開口部25bを開放することができる。スラブ型枠25の開口部開放工程では、開口部25bに装着されている蓋体を取り外すことで、開口部25bを開放する。
【0069】
次に、ステップS32では、第2区間B2において、全ネジボルト挿通工程を行う。全ネジボルト挿通工程では、全ネジボルト(スラブ筋支持部材)51を開口部25bに挿通させる。全ネジボルト51を例えば上方から挿通させて、全ネジボルト51の下端部51aを、X方向に延在する角パイプ52に押し当てる。角パイプ52は、例えばX方向に延在し、第1支保工28に対して固定されている。全ネジボルト51は、下端部51aが角パイプ52によって支持されて、Z方向に延在し、スラブ型枠25の開口部25bを貫通して、スラブ型枠25の上方まで延びている。全ネジボルト51の外周面には、ネジ部が形成されている。全ネジボルト51では、その全長においてネジ部が形成されている。全ネジボルト51に代えて、例えば上部のみに、ネジ部が形成されている棒状の鉄筋を使用してもよい。
【0070】
図15に示されるように、全ネジボルト51の上端部51bには、L型を成すアングル(山形鋼)53が取り付けられている。アングル53は、第1片53a及び第2片53bを備える。第1片53aの板厚方向は、Z方向に沿う方向である。第2片53bの板厚方向は、Y方向に沿う方向である。第1片53aには貫通孔が形成されている。全ネジボルト51は、第1片53aの貫通孔に挿通されている。全ネジボルト51には、複数のナット54~56が装着されている。ナット54は、第1片53aの下側に配置され、第1片53aの下面に当接している。ナット55,56は、第1片53aよりも上方に配置されたダブルナットである。下側のナット55と第1片53aとの間には、隙間が形成されている。
【0071】
アングル53の第1片53aの上面は、スラブ筋(スラブ5の鉄筋)16に当接している。アングル53は、例えば、全ネジボルト51の両側に配置された一対のスラブ筋16に当接している。このスラブ筋16は、アングル53及び全ネジボルト51によって支持されている。スラブ筋16による荷重は、図14に示されるように、角パイプ52及び第1部材29で受けている。なお、アングル53の第1片53aの上面を、上側のスラブ筋16に当接させてもよく、下側のスラブ筋16に当接させてもよく、X方向に延在する鉄筋に当接させてもよい。また、アングル53は、X方向に延在していてもよく、Y方向に延在していてもよく、X方向及びY方向に交差する方向に延在していてもよい。
【0072】
次に、ステップS33では、第2区間B2において、スラブ筋上昇工程(天板鉄筋上昇工程)を行う。スラブ筋上昇工程では、図15に示されるように、アングル53に対して下側から当接するナット54を回して、ナット54を上方に移動させて、アングル53を押し上げる。例えば、2本のスパナを準備して、ナット55を押さえて、ナット54を回して、アングル53を押し上げる。これにより、スラブ筋16を上昇させて、鉄筋受けキャスタ42(図11参照)を浮かせる。鉄筋受けキャスタ42のローラー45aは、スラブ型枠25の上面25aから離れる。
【0073】
次に、ステップS34では、第2区間B2において、鉄筋受けキャスタ取り外し工程(鉄筋受け装置撤去工程)を行う。鉄筋受けキャスタ取り外し工程では、スラブ型枠25から上方に離れている状態の鉄筋受けキャスタ42をスラブ筋16から取り外す。
【0074】
次に、ステップS35では、第2区間B2において、スラブ型枠上昇工程(天板型枠上昇工程)を行う。スラブ型枠上昇工程では、図14に示されるように、第1支保工28においてジャッキ41を操作して、ジャッキアップを行い、第1部材29の上端部を上昇させて、スラブ型枠25を上昇させる。スラブ型枠25を第1高さ位置H1(図12(a)参照)まで移動させる。スラブ型枠25の上面25aと、スペーサ(図16参照)14の底面とを接触させる。この状態において、スラブ筋16は、スペーサ14及びスラブ型枠25を介して、第1支保工28によって下方から支持されている。
【0075】
次に、ステップS36では、第2区間B2において、側壁型枠固定工程を行う。側壁型枠固定工程では、図4に示されるように、側壁型枠23,24の下端部に接続されているワイヤー18を緩めて、Y方向内側に引き寄せられていた側壁型枠23,24をY方向外側に戻す。側壁型枠23,24の下端部を、既に施工済みの側壁3,4の立ち上がり部13に対して固定する。
【0076】
なお、ステップS35では、ジャッキ41を操作して、第1部材29の上端部を上昇させて、スラブ型枠25を上昇させているが、その他の方法によって、スラブ型枠25を上昇させてもよい。例えば、側壁型枠23,24を交互に少しずつ上昇させて、スラブ型枠25を上昇させることができる。
【0077】
次に、ステップS37では、第2区間B2において、全ネジボルト撤去工程を行う。この全ネジボルト撤去工程では、図14に示されるように、第2区間B2において、スラブ型枠25の開口部25bを貫通している全ネジボルト51を撤去する。全ネジボルト51と共にアングル53も撤去する。
【0078】
次に、ステップS38では、第2区間B2において、スラブ型枠の開口部閉止工程を行う。このスラブ型枠の開口部閉止工程では、スラブ型枠25の開口部25bに蓋体を装着して、開口部25bを閉止する。
【0079】
次に、ステップS39では、第2区間B2において、側壁、スラブコンクリート打設工程を行う。この側壁、スラブコンクリート打設工程では、第2区間B2について、側壁3,4となる部分、スラブ5となる部分、ハンチ8,9となる部分にコンクリートを流し込む。この第2区間B2の側壁、スラブコンクリート打設工程(ステップS39)は、施工される区間が異なるだけであり、第1区間B1の側壁、スラブコンクリート打設工程(ステップS14)と同様の作業を行う。
【0080】
次に、ステップS40では、第2区間B2において、側壁、スラブコンクリート養生工程を実施する。この側壁、天井コンクリート養生工程では、第2区間B2について、ステップS39で打設されたコンクリートが硬化するまで待つ。側壁、天井コンクリート養生工程は、例えば1週間程度とすることができる。この第2区間B2の側壁、スラブコンクリート養生工程(ステップS40)は、施工される区間が異なるだけであり、第1区間B1の側壁、スラブコンクリート養生工程(ステップS15)と同様である。
【0081】
ここで、本発明のカルバート1の製造方法では、第2区間B2の側壁、天井コンクリート養生工程において、時間の経過を待っている間に、第3区間B3について、スラブ5の鉄筋を配筋できる。具体的には、ステップS40の養生工程が実行されている間に、図9に示されるステップS22を実施することができる。上述したステップS21において、第2型枠支保工部22は組み立てられており、組み立て後の第2型枠支保工部22は、上述のステップS25において、移動して、第2区間B2から第3区間B3に移動されている。図9において、第2区間と記載されている部分については、第3区間と読み替え、第1区間と記載されている部分については、第2区間と読み替える。このように、第n区間の養生中において、第n区間に隣接する第n+1区間について、側壁、スラブ配筋工程を行う。以下、同様の作業(ステップS22~ステップS25、ステップS31~ステップS40)を繰り返し、全ての区間について、カルバート1を施工する。
【0082】
本実施形態のカルバート1の製造方法によれば、第1区間B1において、側壁、スラブのコンクリート養生工程の実施中に、第2区間B2において、側壁、スラブの鉄筋を配筋できる。これにより、第1区間B1のコンクリート養生工程後に、第2区間の配筋を開始する場合と比較して、工期を短縮することができる。作業員の待機時間を減少させて、効率化を図ることができる。また、カルバート1の製造方法では、第1区間B1におけるコンクリート養生工程の実施中に、第2区間B2において、第2型枠支保工部22を組み立てることができるので、工期を短縮することができる。
【0083】
カルバート1の製造方法では、型枠装置移動工程を備えるので、第1区間B1で使用した側壁型枠23,24及びスラブ型枠25を第2区間B2で再利用して、コンクリートを打設することができる。そのため、複数の区間に対応して、型枠、及びこれらを支持する支保工等の工事用資材を複数準備しなくてもよい。その結果、工事用資材の組み立て、運搬等に係るコストの増大を抑制することができる。また、支保工の組み立て及び解体を複数回行う必要がない。カルバート1の製造方法では、工事用資材の使用数量を抑えつつ、全体としての工期短縮を図ることが可能である。
【0084】
カルバート1の製造方法では、スラブ型枠降下工程の実施後に、型枠装置移動工程を実施するので、スラブ型枠25及びスラブ用支持台35の高さを揃えて、スラブ型枠25及びスラブ用支持台35を移動させることができる。
【0085】
カルバート1の製造方法では、鉄筋受けキャスタ42をスラブ5の鉄筋に取り付けて配筋し、鉄筋受けキャスタ42のローラー45aをスラブ型枠25及びスラブ用支持台35に当接させている。これにより、スラブ型枠25及びスラブ用支持台35の移動に伴って、ローラー45aを回転させることができる。これにより、スラブ型枠25及びスラブ用支持台35を円滑に移動させることができる。
【0086】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0087】
上記の実施形態では、カルバート1は、断面形状が矩形であるものに限定されず、例えば湾曲面を含むその他の形状のカルバートでもよい。また、カルバート1は、放水路として利用されるものに限定されず、例えば通路など、その他の用途に使用されるものでもよい。カルバート1は、例えば道路の立体交差として使用してもよい。また、カルバート1は、地中に埋設されるものに限定されず、地上に設置されるものでもよい。
【0088】
例えば、カルバート1を地上の平野部等に構築する場合には、図7に示される矢板打ち込み工程(ステップS1)は実施しなくてもよい。また、地中にカルバート1を構築する場合において、土が硬い場合には、矢板打ち込み工程を実施しなくてもよい。例えば、地上にカルバート1を構築する場合には、図8に示されるように、ステップS11において、第1型枠支保工部組立工程を行い、次に、ステップS13に示す側壁用型枠(内側側壁用型枠)施工工程を行う。次に、ステップS12に示す、側壁、スラブ配筋工程を行い、次に、外側側壁用型枠施工工程を行う。そして、ステップS14の側壁、スラブコンクリート打設工程を行い、ステップS15の側壁、スラブコンクリート養生工程を行う。
【0089】
上記の実施形態では、スラブ5の配筋及び側壁3,4の配筋を同一工程として実施しているが、スラブ5の配筋及び側壁3,4の配筋を別の工程として実施してもよい。上記の実施形態では、スラブ5の鉄筋を下方から支持しているが、上方から吊るように鉄筋を支えてもよい。
【0090】
上記の実施形態では、型枠装置20の第2部材30によって、側壁型枠23,24を固定しているが、側壁型枠23,24は、その他の方法によって固定することができる。例えば、矢板10,11に対して、他の部材(セパレータ)を介して、側壁型枠23,24を固定してもよい。この他の部材は、側壁の厚み方向であるY方向に延在している。Y方向に延在する他の部材を用いることで、第2部材30を利用しないで、側壁型枠23,24を固定することができる。また、矢板10,11を使用しない場合には、外側の側壁型枠(不図示)が存在するので、この外側の側壁型枠に対して、他の部材を介して、側壁型枠23,24を固定してもよい。
【0091】
第1型枠支保工部21及び第2型枠支保工部22は、連結されていてもよく、連結されていなくてもよい。第1型枠支保工部21及び第2型枠支保工部22が連結されていない場合には、例えば、第1型枠支保工部21を後方から押すことで、第2型枠支保工部22を押し出して移動させることができる。また、第1型枠支保工部21及び第2型枠支保工部22をそれぞれ移動させてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…カルバート(鉄筋コンクリート構造物)、2…底板、3,4…側壁、5…スラブ(第1の天板、第2の天板)、16…スラブ筋(天板の鉄筋)、20…型枠装置、25…スラブ型枠(天板型枠)、5a…下面(天板の底面)、35…スラブ用支持台(支持台)、42…鉄筋受けキャスタ(鉄筋受け装置)、B1…第1区間(第1の区間)、B2…第2区間(第2の区間)、B3…第3区間(第3の区間)、H1…第1高さ位置、X…X方向(第1の方向)。
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