(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】掃除具及び集塵ヘッド
(51)【国際特許分類】
A47L 13/10 20060101AFI20220819BHJP
A47L 11/26 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
A47L13/10 D
A47L11/26
(21)【出願番号】P 2018145535
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2017153132
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510183796
【氏名又は名称】株式会社プラナ
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】松本 忠男
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-054495(JP,A)
【文献】特開2017-121539(JP,A)
【文献】特開2008-000382(JP,A)
【文献】特開2008-104633(JP,A)
【文献】特開2005-205180(JP,A)
【文献】実開昭56-058942(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/02-9/08
A47L 11/00-13/62
B08B 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面を上方より覆う集塵ヘッドと、該集塵ヘッドに取り付けられた把手とからなり、前記集塵ヘッドを前方に移動させることにより前方の床面上にある塵埃を捕獲する掃除具であって、
前記集塵ヘッドは、上板と、該上板の下面に
前記床面に平行な面内で前記の移動方向に直交する方向に並べて固定された複数のブラシ体
を備え、
前記ブラシ体は、上板から下方の床面に向かう方向に向けて植毛され、床面に平行な面内で線状に連続して配置されたブラシを有し、
前記の線状に配置されたブラシの前側の先端と後側の後端とを結ぶ直線が前記の前方への移動方向に対して60度以下の角度を成すように
構成し、かつ、前記の線状に配置されたブラシの前側の先端の前記の前方への移動方向に直交する方向の幅
を30mm以下
とすることにより、前記ブラシにより捕獲した前記床面上の塵埃を前記集塵ヘッドの前方への移動により前記ブラシに沿って後方に移動させる機能を有し、
さらに、前記集積ヘッドは、前記複数のブラシ体の後方に配置されたブラシである後方ブラシを備え、
前記複数のブラシ体のブラシ
及び前記後方ブラシの植毛の先端が前記床面に同時に接触可能に構成されていることを特徴とする掃除具。
【請求項2】
前記上板は少なくとも一部に透明な物質を有することを特徴とする請求項1に記載の掃除具。
【請求項3】
前記の
移動方向に直交する方向に並べて固定された複数のブラシ体において、互いに隣接する
ブラシ体のブラシの前方への移動方向に直交する方向の左端または右端の位置が、互いに連続するか、または
、前記の移動方向から見て互いに重なり合うように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の掃除具。
【請求項4】
前記ブラシ体は、床面に平行な面内で直線状に連続して配置されたブラシを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の掃除具。
【請求項5】
前記ブラシ体は、上面が前記上板の下面に固定可能な固定部と、該固定部の下面に植毛されたブラシとを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の掃除具。
【請求項6】
前記ブラシ体の線状に配置されたブラシの前側の先端の前記の前方への移動方向に直交する方向の幅は20mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の掃除具。
【請求項7】
前記ブラシ体の植毛されたブラシの露出する長さは5~25mmであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の掃除具。
【請求項8】
前記ブラシ体の線状に植毛されたブラシは床面に対して垂直以外の斜めの角度で植毛されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の掃除具。
【請求項9】
床面を上方より覆い、前方に移動させることにより前方の床面上にある塵埃を捕獲する集塵ヘッドであって、
上板と、該上板の下面に
前記床面に平行な面内で前記の移動方向に直交する方向に並べて固定された複数のブラシ体
を備え、
前記ブラシ体は、上板から下方の床面に向かう方向に向けて植毛され、床面に平行な面内で線状に連続して配置されたブラシを有し、
前記の線状に配置されたブラシの前側の先端と後側の後端とを結ぶ直線が前記の前方への移動方向に対して60度以下の角度を成すように
構成し、かつ、前記の線状に配置されたブラシの前側の先端の前記の前方への移動方向に直交する方向の幅
を30mm以下
とすることにより、前記ブラシにより捕獲した前記床面上の塵埃を前記の前方への移動により前記ブラシに沿って後方に移動させる機能を有し、
さらに、前記複数のブラシ体の後方に配置されたブラシである後方ブラシを備え、
前記複数のブラシ体のブラシ
及び前記後方ブラシの植毛の先端が前記床面に同時に接触可能に構成されていることを特徴とする集塵ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の把手の先に設けた集塵ヘッドを床面上で移動させることにより、床面の塵埃を捕獲する機能を有する掃除具及び集塵ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、床面の塵埃を除去するために、棒状の把手の先に植毛されたブラシ等を設けたいわゆる箒や、棒状の把手の先にダスターモップヘッドを取り付けた掃除用モップが使用されている。ダスターモップヘッドの下面には塵埃や汚れを拭取る清掃部材が設けられており、その清掃部材として、特許文献1に記載のような布地とパイルを使用した掃除用モップや、特許文献2に記載のような埃や塵を吸着する交換可能なシートを装着した掃除用モップが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4757048号公報
【文献】特開2007-37982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、通常の箒は、床面を掃くことにより塵埃を移動させ、塵取りなどに集めて除去するものであり、掃くことにより塵埃が前方などに飛散する。そこでこのような箒は病院等の清潔な環境を必要とする室内の清掃には適さない。一方、掃除用モップを使用して床などを掃除する場合、紙や布などの清掃部材が床面をほぼ覆って接触しているため、清掃部材の底面に付着して回収される塵埃よりも、ダスターモップヘッドの前面側に溜まっていく塵埃の割合の方が圧倒的に多い。また、清掃部材の底面で塵埃を捕獲した場合、その中に土砂等の硬い塵埃があると、ダスターモップヘッドを動かすたびに硬い土砂等で床面の柔らかいワックス皮膜を擦ることになり、ワックス皮膜が傷つき、傷内に汚れが浸入することで、床面の黒ずみを増加させてしまう。また、前部に塵埃が集まった状態で、ダスターモップヘッドを動かすと、塵埃が飛散しやすいという問題も生ずる。さらに、従来の掃除用モップでは、紙や布などの清掃部材が汚れるたびに交換や洗浄が必要であり、特に布の場合は使用後の洗濯、消毒、乾燥も必要となり、この作業や交換に多くの時間、コストが割かれている。
【0005】
そこで、本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、従来の掃除具に比べて、塵埃の飛散が小さく、床面を傷つける可能性が低く、清掃部材の交換や洗浄が不要な掃除具及び集塵ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点では、本発明は、床面を上方より覆う集塵ヘッドと、該集塵ヘッドに取り付けられた把手とからなり、前記集塵ヘッドを前方に移動させることにより前方の床面上にある塵埃を捕獲する掃除具であって、前記集塵ヘッドは、上板と、該上板の下面に固定された複数のブラシ体とからなり、前記ブラシ体は、上板から下方の床面に向かう方向に向けて植毛され、床面に平行な面内で線状に連続して配置されたブラシを有し、前記の線状に配置されたブラシの前側の先端と後側の後端とを結ぶ直線が前記の前方への移動方向に対して60度以下の角度を成すように構成され、かつ、前記の線状に配置されたブラシの前側の先端の前記の前方への移動方向に直交する方向の幅が30mm以下であり、前記の複数のブラシ体は前記の前方への移動方向に直交する方向に並置され、前記複数のブラシ体のブラシの植毛の先端が前記床面に同時に接触可能に構成されていることを特徴とする掃除具を提供する。
【0007】
本観点の発明の掃除具では、把手を用いて集塵ヘッドを床面上で前方に動かすことにより、床面上の塵埃は集塵ヘッド上板の下側に設けたブラシ体のブラシにより捕獲される。このとき、ブラシは線状に植毛され、その前側の先端の幅が30mm以下であるので、従来の横幅方向に一様にブラシを植毛した箒のように前側に塵埃が蓄積されることはない。さらに、ブラシの前側の先端と後側の後端とを結ぶ直線が前方への移動方向に対して60度以下の角度を成すように構成することにより、捕獲された塵埃がブラシの先端からブラシの後方に移動し、ブラシの後方で大きな塵埃の塊が形成されるので、塵埃の前方からの飛散を防ぐことができ、捕獲可能な塵埃量を多くすることができる。また、集塵ヘッドを前方に動かすことにより、上板の下を通過し、後方へと向かう気流が発生することになり、ブラシに付着した塵埃の上板の外側への飛散を防ぐことができる。
【0008】
以上のように、本発明の掃除具においては、塵埃は主としてブラシの後方に捕獲されるので、従来の箒やダスターモップヘッドのようにその前面に溜まった塵埃が飛散することがない。また、従来のダスターモップヘッドと比べ、接触部に挟まれた塵埃により床面を傷つけることもなく、ブラシの後方に溜まった塵埃を適度に廃棄すればよいので清掃部材の交換も不要である。
【0009】
ここで、線状に植毛するブラシの植毛形態は、直線状や任意の曲線状であってもよく、ブラシの前方で捕獲された塵埃が後方に移動するように、その先端と後端とを結ぶ直線が前方への移動方向に対して60度以下の角度を成すように構成すること、及び先端の横幅が30mm以下であれば、本発明の効果が得られることが発明者の実験により確認されている。各ブラシ体のブラシの先端と後端とを結ぶ直線が前方への移動方向に対する角度を例えば50度以下というようにさらに小さくすることにより捕獲された塵埃がさらに後方に移動しやすくなり、床面に凹凸がある場合にも集塵ヘッドの前方への移動をよりスムーズに行うことができる。上板の形状や上板の下側に配置するブラシ体の形状や個数は、清掃の目的とする床面の形態に応じて選択可能である。また、1つの集塵ヘッドに設置される複数のブラシ体において、各ブラシ体毎にその形状が異なっていてもよい。
【0010】
第2の観点では、本発明は、第1の観点の掃除具において、前記上板は少なくとも一部に透明な物質を有することを特徴とする。このような構成により、ブラシの後方に溜まった塵埃量を上板の上から観測でき、適度に塵埃の廃棄を行うことができる。この場合、透明な部分は塵埃が蓄積されるブラシ部分の上部のみであってもよく、上板全体が透明であってもよい。
【0011】
第3の観点では、本発明は、前記第1または第2の観点の掃除具において、前記の並置された複数のブラシ体において、互いに隣接するブラシ体の線状に配置されたブラシの前方への移動方向に直交する方向の左端または右端の位置が、互いに連続するか、または互いに重なり合うように配置されていることを特徴とする。本観点の発明では、複数のブラシ体の各ブラシが横幅方向に互いに隙間を開けることなく配置されていることにより、集塵ヘッドの前方への一度の移動でブラシ全体の幅内の塵埃が捕獲されることになり、清掃における前方へのくり返しの移動回数を少なくすることができる。
【0012】
第4の観点では、本発明は、前記第1乃至第3の観点の掃除具において、前記ブラシ体は、床面に平行な面内で直線状に連続して配置されたブラシを有することを特徴とする。各ブラシ体においてブラシを曲線状に配置するよりも直線状に配置する方がブラシの先端部分で捕獲された塵埃がブラシの後方部分に移動しやすい。また、ブラシ体の設計や製造も容易となる。
【0013】
第5の観点では、本発明は、前記第1乃至第4の観点の掃除具において、前記ブラシ体は、上面が前記上板の下面に固定可能な固定部と、該固定部の下面に植毛されたブラシとを有することを特徴とする。このように、固定部を介してブラシを配置する方が、上板に直接ブラシを固定するよりも製造しやすく、ブラシの配置の設計の自由度があり、ブラシ配置の変更が容易である。ブラシの消耗時の交換も容易となる。
【0014】
第6の観点では、本発明は、前記第1乃至第5の観点の掃除具において、前記ブラシ体の線状に配置されたブラシの前側の先端の前記の前方への移動方向に直交する方向の幅は20mm以下であることを特徴とする。ブラシの前方の先端の横幅は30mm以下であれば従来の箒や掃除用モップに比べて塵埃の飛散を抑えることが可能であるが、さらにその幅を20mm以下とすることにより、その先端に溜まる塵埃が少なくなり、塵埃の飛散をさらに減らすことができる。例えば、先端の幅を5~10mm程度にした集塵ヘッドも作製が可能であり、実用的に使用可能である。
【0015】
第7の観点では、本発明は、前記第1乃至第6の観点の掃除具において、前記ブラシ体の植毛されたブラシの露出する長さは5~25mmであることを特徴とする。本発明の掃除具において、植毛されたブラシの露出する長さは任意に設定することが可能であるが、実用上は5~25mmとすることが望ましい。例えば、その長さを5mm未満とした場合、ブラシの毛が曲がりにくくなり、ブラシの毛の先端面のみが床に接することで、塵埃を後方へと移動させる力が弱まると共に、ブラシの先端面が床を擦ることで清掃の際の音がうるさくなることやブラシの消耗が激しくなるという問題が生ずる。一方、例えばその長さを25mmより長くした場合、使用中の劣化により、左右方向のバランスが崩れ、ブラシの先端が床に接しない箇所が多くなりやすいという問題がある。これは、上板の中央に柄が設置されているため、集塵ヘッドを前進させた時、上板の中央にあるブラシに上からの圧力が強く加わり、両端に近づくにつれ圧力が弱くなり、そのため、ブラシの露出部分の毛が長いと中央部分のブラシのみが床方向に沈むためである。
【0016】
第8の観点では、本発明は、前記第1乃至第7の観点の掃除具において、前記ブラシ体の線状に植毛されたブラシは床面に対して垂直以外の斜めの角度で植毛されていることを特徴とする。ブラシを床面に対して斜めにすると、植毛の先端面だけでなく側面が床に接する箇所が多くなるため、先端は広がり、塵埃を後方へと移動させる力を強め、清掃音の減少やブラシの消耗を防ぐ効果が生ずる。特に、ブラシをやや後方に向けて傾けて植毛することにより、ブラシ先端から後方に向け、塵埃を移動させやすくなると同時に、床に凹凸部があってもブラシが引っ掛かることなく凹凸を超えて前進しやすいという利点がある。
【0017】
第9の観点では、本発明は、前記第1乃至第8の観点の掃除具において、前記集塵ヘッドは、前記ブラシ体の後方に配置されたブラシを有することを特徴とする。このようにブラシ体の後にも何らかのブラシを配置することにより、捕獲された塵埃が後方から飛散するのを防止することができる。また、床には必ず凹凸があるため、前方のブラシ体のみでは、ブラシが床と接しない箇所が発生する可能性があり、その場合でも前方ブラシが取り残した塵埃を後方ブラシで捕獲することができる。すなわち、前方のブラシ体は比較的、大きい塵埃を捕獲し、後方のブラシでは取り残した小さな粒子の塵埃を捕獲するように構成することで、塵埃の回収率を増やし、塵埃の取り残しをなくすことができる。後方のブラシの配置形態としては、横幅方向に直線状に配置することや横幅方向に分割して複数個配置すること、前後方向に多段に配置すること等、目的に応じて任意に設計可能である。
【0018】
第10の観点では、本発明は、床面を上方より覆い、前方に移動させることにより前方の床面上にある塵埃を捕獲する集塵ヘッドであって、上板と、該上板の下面に固定された複数のブラシ体とからなり、前記ブラシ体は、上板から下方の床面に向かう方向に向けて植毛され、床面に平行な面内で線状に連続して配置されたブラシを有し、前記の線状に配置されたブラシの前側の先端と後側の後端とを結ぶ直線が前記の前方への移動方向に対して60度以下の角度を成すように構成され、かつ、前記の線状に配置されたブラシの前側の先端の前記の前方への移動方向に直交する方向の幅が30mm以下であり、前記の複数のブラシ体は前記の前方への移動方向に直交する方向に並置され、前記複数のブラシ体のブラシの植毛の先端が前記床面に同時に接触可能に構成されていることを特徴とする集塵ヘッドを提供する。
【0019】
本観点の発明の集塵ヘッドは、前記の第1の観点の掃除具において集塵ヘッドの部分のみを規定するものであり、その構成は第1の観点の掃除具の集塵ヘッドと同じである。床面上の塵埃を捕獲する掃除具は、把手を用いないでも構成可能である。例えば、小さな床面であれば、把手のない集塵ヘッドを手で保持して清掃してもよい。また、電気掃除機の集塵ヘッドに本観点の発明を適用すれば、ブラシの後方に移動した塵埃は、集塵ヘッドから吸引機能を有する把手中の吸引管に吸引されて掃除機本体に収納される。ロボット型の電気掃除機にも本観点の集塵ヘッドは適用でき、ブラシの後方に移動した塵埃が吸引口に吸引されるように構成できる。
本観点の発明の集塵ヘッドは、上記のような用途においても、第1の観点の掃除具と同様に、塵埃の前方からの飛散を防ぐことができる。集塵ヘッドを前方に動かすことにより、上板の下を通過し、後方へと向かう気流が発生することになり、ブラシに付着した塵埃の上板の外側への飛散を防ぐことができる。また、集塵ヘッドを床面上で前方に動かすことにより、床面上の塵埃は集塵ヘッド上板の下側に設けたブラシ体のブラシにより捕獲され、ブラシの前側の先端と後側の後端とを結ぶ直線が前方への移動方向に対して60度以下の角度を成すように構成することにより、捕獲された塵埃がブラシの先端からブラシの後方に移動し、ブラシの後方で大きな塵埃の塊が形成されるので、塵埃の前方からの飛散を防ぐことができる。
また、本観点の発明の集塵ヘッドを吸引機能を有する電気掃除機に適用した場合に、吸引口のより近くに捕獲された塵埃が移動するのでより効率的に床面の塵埃を捕獲できる。
【0020】
なお、本観点の発明の集塵ヘッドにおいて、複数のブラシ体を固定する上板としては、用途に応じて様々な形態が可能であり、ブラシが固定可能な構造であれば、その材料、形状等は任意に選択可能である。例えば、電気掃除機、ロボット型電気掃除機等においては、従来のブラシ等を取り付けた構成部分を上板とすればよい。
【発明の効果】
【0021】
上記のように、本発明により、従来の掃除具及び集塵ヘッドに比べて、塵埃の飛散が小さく、床面を傷つける可能性が低く、清掃部材の交換や洗浄が不要な掃除具及び集塵ヘッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1に係る掃除具を簡略化して示す斜視図。
【
図3】ブラシ体の構造を説明する図であり、
図3(a)は下面図、
図3(b)は側面図。
【
図4】ブラシ体の変形例を示す図であり、
図4(a)は下面図、
図4(b)は側面図。
【
図5】本発明による掃除具の試作品例を示す写真であり、
図5(a)が実施例1の試作品の一例、
図5(b)が実施例1の変形例の試作品の一例を示す。
【
図6】実施例2に係る掃除具の集積ヘッドの下面図。
【
図7】実施例2の集積ヘッドに配置されたブラシ体の構造を説明する図であり、
図7(a)は下面図、
図7(b)は側面図。
【
図8】実施例3に係る掃除具の集積ヘッドの下面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の掃除具を実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係る掃除具を簡略化して示す斜視図である。
図1において、本実施例の掃除具10は、床面1を上方より覆う集塵ヘッド2と、集塵ヘッド2に取り付けられた把手3とからなり、集塵ヘッド2を矢印4に示す前方に移動させることにより前方の床面1上にある塵埃を捕獲する掃除具である。集塵ヘッド2は、上板11と、上板11の下面に固定された複数のブラシ体12とから構成されている。本実施例においては、ブラシ体12は、上面が上板11の下面に固定可能な固定部13と、固定部13の下面に植毛されたブラシ14とを有しており、ブラシ14は、上板11から下方の床面1に向かう方向に向けて植毛され、床面に平行な面内で直線状に連続して配置されている。また、ブラシ14は、互いに隣接するブラシ体12のブラシ14の前方への移動方向に直交する方向の左端及び右端が互いに連続するように配置されている。上板11は透明な物質で構成されている。また固定部13は上板11にねじにより固定されている。
【0025】
図2は実施例1の掃除具10の集積ヘッド2の下面図であり、
図3はブラシ体12の構造を説明する図であり、
図3(a)は下面図、
図3(b)は側面図である。
図2において、直線状に配置されたブラシ14の前側の先端と後側の後端とを結ぶ直線が前方への移動方向に対して成す角度θは30~50度程度の角度を成すように構成されている。さらに、直線状に配置されたブラシの前側の先端の前方への移動方向に直交する方向の幅dが10~20mm程度となるように設定されている。また、本実施例においては、集塵ヘッド2は、上板11の下面のブラシ体12の後方に直線状に配置されたブラシ16を有している。ブラシ16はブラシ14と同様に、上板11に固定可能な固定部15の下面から床面1に向かう方向に植毛されている。このブラシ16により、捕獲された塵埃が後方から飛散するのを防止することができる。ここで、固定部13及び固定部15の高さHは同じであり、それらにそれぞれ植毛されたブラシ14及びブラシ16の露出する長さhも同じであるので、すべてのブラシ14およびブラシ16の先端が床面1に同時に接触可能に構成されている。高さHの値は10~15mm程度、長さhは10~20mm程度である。上板11の厚さの例としては、5~10mm程度であってもよい。
【0026】
なお、角度θの値としては60度以下、dの値としては30mm以下であれば、前側に塵埃が蓄積されることはなく、捕獲された塵埃がブラシの先端からブラシの後方に移動することが確認されている。
【0027】
本実施例において、上板11および固定部13、15の材料としてはプラスチック板やアクリル板などが使用でき、ブラシ14、16の材料としては化学繊維や動物の毛などが使用できる。また、上板11の平面形状は前後方向の幅が100~200mm程度、横幅方向は200~600mm程度とすることができる。また、上板11の平面形状は、矩形でなくとも前後方向の幅より横幅方向が大きい楕円形状、半円形状など任意の形状であってもよい。
【0028】
図4は、本実施例に使用可能なブラシ体の変形例を示す図であり、
図4(a)は下面図、
図4(b)は側面図である。
図3においては、ブラシ14のブラシは、5~15mm程度の一定の幅の中に密集して植毛されて直線状に配置されているが、
図4においては、ブラシ18のブラシは、小さな円形の中に密集して植毛され、その小さな円形が直線状に配置されている。すなわち、本発明における線状に連続して配置されたブラシとは、線状に連続して配置されたブラシの中に植毛の粗密や隙間があっても、その隙間が、前方への移動方向に直交する方向に対して塵埃が通り抜けるような隙間を生じなければ構わない。
【0029】
図5は、本発明による掃除具の試作品例を示す写真であり、
図5(a)が実施例1の試作品の一例、
図5(b)が実施例1の変形例の試作品の一例を示す。
図5(a)の掃除具の集塵ヘッドの上板の平面形状は
図1と同様に長方形であるが、
図5(b)の掃除具の集塵ヘッドの上板の平面形状は左右の両端部に直角のコーナー部を有する6角形である。このコーナー部は部屋の隅のコーナーの形状に一致し、かつ、部屋の隅を清掃する際に壁と床との角にブラシの先端が届くようにブラシの先端がやや外側に向くように植毛されているので、部屋のコーナーの塵埃をきれいに掃きとることが可能である。さらに、
図5(b)の集塵ヘッドでは、6角形の各角部にボールベアリングを設置しているので、床の端を清掃する際に集塵ヘッドを壁に沿ってスムーズに移動させることができる。また、把手に対して集塵ヘッドが回転可能に保持されているので、ボールベアリングがあることにより、集塵ヘッドが壁に当たった時に集塵ヘッドの回転が容易となる。
【実施例2】
【0030】
図6は、実施例2に係る掃除具の集塵ヘッド20の下面図である。
図7は集積ヘッド20に配置されたブラシ体22の構造を説明する図であり、
図7(a)は下面図、
図7(b)は側面図である。本実施例の掃除具は、実施例1と同様に、床面を上方より覆う集塵ヘッド20と、集塵ヘッド20に取り付けられた把手とからなり、集塵ヘッド20を前方に移動させることにより前方の床面上にある塵埃を捕獲する掃除具である。集塵ヘッド20は、実施例1の上板11と同様な形状の上板21と、上板21の下面に固定された複数のブラシ体22とから構成されている。本実施例においては、ブラシ体22は、上面が上板21の下面に固定可能な固定部23と、固定部23の下面に植毛されたブラシ24とを有している。
【0031】
本実施例においても、ブラシ24は、上板21から下方の床面に向かう方向に向けて植毛され、床面に平行な面内で直線状に連続して配置されているが、植毛の方向は床面に対して垂直ではなく、
図7(b)に示すように、集塵ヘッド20の後方に向けて斜めに傾けて植毛されている。これにより、ブラシ先端から後方に向け、塵埃を移動させやすくなると同時に、床に凹凸部があってもブラシが引っ掛かることなく凹凸を超えて前進しやすいという利点がある。また、ブラシ24は集塵ヘッド20の左側、右側で対称な向きに配置され、前方への移動方向に対して成す角度θは40~50度程度の角度を成すように構成されている。また、ブラシ24は、互いに隣接するブラシ体22のブラシ24の左端及び右端の位置が互いに重なり、前方への移動に対して塵埃が通り抜けるような隙間を生じないように配置されている。ブラシ24の前側の先端の前方への移動方向に直交する方向の幅は10mm程度となるように設定されている。
【0032】
本実施例においても、集塵ヘッド20は、上板21の下面のブラシ体22の後方に直線状に配置されたブラシ26を有している。このブラシ26により、ブラシ24により捕獲されて後方に移動した塵埃の一部が捕獲されると同時に、集塵ヘッド21の後方からの塵埃の飛散を防ぐことができる。固定部23の高さやブラシ24の植毛の露出部の長さは実施例1と同様であり、各部の材質も同様である。
【実施例3】
【0033】
図8は、実施例3に係る掃除具の集積ヘッド30の下面図である。本実施例の掃除具は、実施例1と同様に、床面を上方より覆う集塵ヘッド30と、集塵ヘッド30に取り付けられた把手とからなり、集塵ヘッド30を前方に移動させることにより前方の床面上にある塵埃を捕獲する掃除具である。集塵ヘッド30は、実施例1の上板11と同様な形状の上板31と、上板31の下面に固定された複数のブラシ体とから構成され、ブラシ体は、上面が上板21の下面に固定可能な固定部と、固定部の下面に植毛されたブラシ34とを有している。
【0034】
本実施例においても、ブラシ34は、上板31から下方の床面に向かう方向に向けて植毛され、床面に平行な面内で線状に連続して配置されているが、本実施例においては、
図8に示すように、その線状の形態は楕円の一部を成す線状である。線状に配置されたブラシの前側の先端と後側の後端とを結ぶ直線が前方への移動方向に対して成す角度θは30~60度となるように構成され、かつ、ブラシの前側の先端の前記の前方への移動方向に直交する方向の幅dは10~30mmとなるように構成されている。また、植毛の方向は床面に対して垂直であっても、後方に向けて斜めに傾けて植毛されていてもよい。
【0035】
本実施例においても集塵ヘッド30は、上板31の下面のブラシ34の後方に直線状に配置されたブラシ36を有しており、このブラシ36により、ブラシ34により捕獲されて後方に移動した塵埃の一部を捕獲すると同時に、集塵ヘッド31の後方からの塵埃の飛散を防いでいる。固定部の高さやブラシ34の植毛の露出部の長さは実施例1や実施例2と同様であり、各部の材質も同様である。
【0036】
なお、本発明に係る集積ヘッドの例としては、上記の実施例1~3の掃除具の集塵ヘッド2、20、30や、
図5の掃除具の試作品例の集塵ヘッド部分を独立して集塵ヘッドとして用いることができる。
【0037】
以上の何れの実施例の掃除具及び集塵ヘッドにおいても、従来の掃除具に比べて、塵埃の飛散が小さく、床面を傷つける可能性が低く、清掃部材の交換や洗浄が不要な掃除具及び集塵ヘッドが得られることが、実験的に確認された。
【0038】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、目的や用途に応じて設計変更可能である。例えば、集塵ヘッドの平面形状、線状に配置されたブラシの形態、ブラシ体の構成や横方向への配置数など任意に選択可能である。さらに、集塵ヘッドに、汚れの拭取りやワックス掛けなどの他の機能を有する部材を付加することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 床面
2、20、30 集塵ヘッド
3 把手
4 矢印
10 掃除具
11、21、31 上板
12、22 ブラシ体
13、15、17、23 固定部
14、16、18、24、26、34、36 ブラシ