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特許7126261SLAMポリヌクレオチド及びポリペプチド、ならびにそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】SLAMポリヌクレオチド及びポリペプチド、ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220819BHJP
   A61K 39/095 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220819BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220819BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220819BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20220819BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20220819BHJP
   C07K 14/195 20060101ALN20220819BHJP
   C07K 14/22 20060101ALN20220819BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K39/095
A61P37/04
A61K47/64
A61K38/16
C12N15/31
C12P21/02 C
A61P31/04
C07K14/195
C07K14/22
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018543163
(86)(22)【出願日】2017-02-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 CA2017050160
(87)【国際公開番号】W WO2017136947
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-02-04
(31)【優先権主張番号】62/293,491
(32)【優先日】2016-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518284639
【氏名又は名称】エンジニアード アンチジェンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】モラエス トレバー エフ.
(72)【発明者】
【氏名】レイ クリスティーン チェイ-リン
(72)【発明者】
【氏名】フーダ ヨーゲシ
(72)【発明者】
【氏名】ジャッド アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】シュリヴェルス アンソニー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】グレー-オーウェン スコット ディー.
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-511752(JP,A)
【文献】Vaccine,1993年,vol.11, no.12,p.1214-1220
【文献】Vaccine,2015年,vol.33,p.1317-1323
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
A61K 39/095
A61P 37/04
A61K 47/64
A61K 38/16
C12N 15/31
C12P 21/02
A61P 31/04
C07K 14/195
C07K 14/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的タンパク質を含む非ヒト宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への前記標的タンパク質の輸送をもたらす方法であって、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)配列番号が、SEQ ID NO:516を除く、偶数のSEQ ID NO:2~SEQ ID NO:694より選択される配列またはそれに対して少なくとも90%配列同一性を有する配列を含むSurface lipoprotein assembly modulator(SLAM)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)前記宿主細胞に前記キメラポリヌクレオチドを導入し及び前記宿主細胞を増殖させて、前記SLAMポリペプチドを産生させ、それによって前記宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含み、
前記標的タンパク質が、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ、SEQ ID NO:1094、SEQ ID NO:1100、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168のうちの1つ、及びSEQ ID NO:1178より選択される配列、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む表面リポタンパク質(SLP)である、
前記方法。
【請求項2】
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)配列番号が、SEQ ID NO:516を除く、偶数のSEQ ID NO:2~SEQ ID NO:694より選択される配列またはそれに対して少なくとも90%配列同一性を有する配列を含むSLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む第一のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む第二のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)前記宿主細胞に前記第一及び第二のキメラポリヌクレオチドを導入し及び前記宿主細胞を増殖させて、前記SLAMポリペプチド及び前記標的タンパク質を産生させ、サイトゾルから細胞外表面への前記標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含み、
前記標的タンパク質が、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ、SEQ ID NO:1094、SEQ ID NO:1100、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168のうちの1つ、及びSEQ ID NO:1178より選択される配列、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含SLPある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宿主細胞がグラム陰性細菌細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記宿主細胞が病原性細菌細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記宿主細胞が、ナイセリア属(Neisseria)、モラクセラ属(Moraxella)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、またはビブリオ属(Vibrio)に属する細菌細胞より選択される細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記宿主細胞が、以下の種に属する細菌細胞より選択される、請求項5に記載の方法:髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、クレブシエラ・デニトリフィカンス(Klebsiella denitrificans)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、またはコレラ菌(Vibrio cholera)。
【請求項7】
前記SLAMポリペプチドが、前記宿主細胞に天然には存在しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的タンパク質が、前記宿主細胞に天然に存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記標的タンパク質が、前記宿主細胞に天然には存在せず、かつ前記キメラポリヌクレオチドが、前記標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記標的タンパク質が、前記SLAMポリペプチドに非共有結合により結合する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記標的タンパク質が、前記SLAMポリペプチドに共有結合により連結している、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記標的タンパク質が、宿主生物において免疫応答を誘発し得る免疫原である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記標的タンパク質が、病原性微生物の外表面に天然に呈示される免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性部分である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記SLPが、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:806、SEQ ID NO:828、SEQ ID NO:868、SEQ ID NO:1094、及び配列番号が偶数のSEQ ID NO:1148~SEQ ID NO:1168のうちの1つより選択される配列を含む、トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB);または、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:850、SEQ ID NO:924、SEQ ID NO:932、およびSEQ ID NO:1110より選択される配列を含む、ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA);または、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1136より選択される配列を含む、H因子結合タンパク質(fHbp);または、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:870、および配列番号が偶数のSEQ ID NO:1138~SEQ ID NO:1146のうちの1つより選択される配列を含む、ラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記宿主細胞が、ワクチン製剤を調製するために用いられる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(a)配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ、SEQ ID NO:1094、SEQ ID NO:1100、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168のうちの1つ、及びSEQ ID NO:1178より選択される配列、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むSLPである免疫原を産生し得る宿主細胞を選択すること、
(b)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)配列番号が、SEQ ID NO:516を除く、偶数のSEQ ID NO:2~SEQ ID NO:694より選択される配列、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むSLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)前記宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び前記宿主細胞を増殖させて、前記SLAMポリペプチド及び前記免疫原を産生させること、
(d)前記宿主細胞を弱毒化して、弱毒化した宿主細胞を調製すること、ならびに
(e)前記弱毒化した宿主細胞を用いてワクチン製剤を調製すること
を含む、ワクチンを調製する方法。
【請求項17】
(a)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、
(ii)配列番号が、SEQ ID NO:516を除く、偶数のSEQ ID NO:2~SEQ ID NO:694より選択される配列、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むSLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む第一のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ、SEQ ID NO:1094、SEQ ID NO:1100、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168のうちの1つ、及びSEQ ID NO:1178より選択される配列、またはそれに対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むSLPである免疫原をコードするポリヌクレオチド
を含む第二のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)前記宿主細胞に前記第一及び第二のキメラポリヌクレオチドを導入し及び前記宿主細胞を増殖させて、前記SLAMポリペプチド及び前記免疫原を産生させること
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫原が、病原性微生物の外表面に天然に呈示される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記SLPが、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:806、SEQ ID NO:828、SEQ ID NO:868、SEQ ID NO:1094、及び配列番号が偶数のSEQ ID NO:1148~SEQ ID NO:1168のうちの1つより選択される配列を含む、トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB);または、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:850、SEQ ID NO:924、SEQ ID NO:932、およびSEQ ID NO:1110より選択される配列を含む、ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA);または、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1136より選択される配列を含む、H因子結合タンパク質(fHbp);または、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:870、および配列番号が偶数のSEQ ID NO:1138~SEQ ID NO:1146のうちの1つより選択される配列を含む、ラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫原が、前記SLAMポリペプチドに非共有結合により結合する、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫原が、前記SLAMポリペプチドに共有結合により連結している、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項16~21のいずれか一項に記載の方法に従って獲得された弱毒化した宿主細胞を含むワクチン調製物。
【請求項23】
前記宿主生物を免疫化するための、請求項22に記載のワクチン調製物。
【請求項24】
前記配列同一性が、少なくとも95%配列同一性である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記配列同一性が、少なくとも95%配列同一性である、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月10日に出願された米国仮特許出願第62/293,491号の利益を主張するものである。米国仮特許出願62/293,491の全内容は、参照によりその全体として本明細書によって組み入れられる。
【0002】
本開示の分野
本開示は、Surface lipoprotein assembly modulatorポリペプチド、つまりSLAMポリペプチドとして知られるポリペプチドのクラス、及びSLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにそれらの基質である表面リポタンパク質(SLP)に関する。SLAMポリペプチドは、グラム陰性細菌種から得ることができる。SLAMポリペプチド及びポリヌクレオチドは、病原性細菌種(例えばナイセリア属(Neisseria)に属する細菌種を含む)によって引き起こされる感染性疾患の予防及び治療において有用である。
【背景技術】
【0003】
本開示の背景
以下の段落は、本開示の特許請求される主題に従うより詳細な説明に読者を導くこと、及びそれを規定しないまたは限定しないことを意図している。
【0004】
ナイセリア属(Neisseria)に属する細菌種を含めた病原性細菌種は、大流行性疾患の原因因子である。ゆえに、例えば髄膜炎は髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)によって引き起こされ、淋病は淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる。世界保健機関(WHO)は、いわゆる「髄膜炎ベルト」であるサハラ砂漠以南のアフリカ内の14ヶ国で2009年に88,000件を超える髄膜炎の疑いがある症例を報告し、そのうちの5,300件を上回る数が死に至った(WHOファクトシート第141号、2012年11月(非特許文献1))。散発性髄膜炎の大発生は、同じように、北アメリカを含む各地で生じる。淋病は、世界中で1億人を超える人々に影響を及ぼすことが見積もられており、820,000件の新たな症例が米国のみで年間ベースで報告されている。アンピシリン、テトラサイクリン、及びキノロンなどの抗生物質は、ナイセリア(Neisseria)感染症に対する治療選択肢を与えるものの、これらの抗生物質に対する耐性がますます重大な懸念事項である。ナイセリア(Neisseria)感染症に対する防御を与えるワクチンが開発されているが、しかしながら、血清型に応じてワクチンの効力は変動するため、付加的なワクチンに対する継続的な必要性が存在する。ゆえに、例えば髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)血清型Bに対する4成分ワクチンである4CMenBとして知られるワクチンの効力はまだ確立されておらず、カナダにおける小児科での使用は、侵襲的な髄膜炎菌性疾患の危険性が最も高い個体に対してのみ推奨されている(Robinson JL,Paediatric Child Health,2014 19(2):91-94(非特許文献2))。淋菌(N.gonorrhoeae)に対して使用可能なワクチンは依然としてない。
【0005】
それゆえ、病原性ナイセリア(Neisseria)種及び他の病原性細菌種によって引き起こされる感染症に対するさらなる治療及び予防の選択肢を開発する必要性が当技術分野において存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】WHOファクトシート第141号、2012年11月
【文献】Robinson JL,Paediatric Child Health,2014 19(2):91-94
【発明の概要】
【0007】
本開示の概要
一態様において、本開示は、Surface lipoprotein assembly modulator(SLAM)ポリペプチドとして知られるポリペプチドのクラスに関する。
【0008】
別の態様において、本開示は、病原性または非病原性の細菌細胞を含めた宿主細胞におけるSLAMポリペプチドの産生に関する。
【0009】
別の態様において、本開示は、細胞のサイトゾルから細胞外表面領域への、細胞内の特定の標的タンパク質の輸送に関する。
【0010】
したがって、一態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、標的タンパク質を含む宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらす方法を提供し、当該方法は、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)宿主細胞にキメラポリヌクレオチドを導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチドを産生させ、それによって宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む。
【0011】
一部の実施形態において、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。
【0012】
一部の実施形態において、宿主細胞は病原性細菌細胞である。
【0013】
一部の実施形態において、宿主細胞は、ナイセリア属(Neisseria)、クレブシエラ属(Klebsiella)、モラクセラ属(Moraxella)、マンヘミア属(Mannheimia)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、またはビブリオ属(Vibrio)に属する細菌細胞より選択される細胞である。
【0014】
一部の実施形態において、宿主細胞は、以下の種に属する細菌細胞より選択される:髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、クレブシエラ・デニトリフィカンス(Klebsiella denitrificans)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、大腸菌(Escherichia coli)、またはコレラ菌(Vibrio cholera)。
【0015】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドは、宿主細胞に天然には存在しない。
【0016】
一部の実施形態において、標的タンパク質は、宿主細胞に天然に存在する。
【0017】
一部の実施形態において、標的タンパク質は、宿主細胞に天然には存在しない。
【0018】
一部の実施形態において、標的タンパク質は、SLAMポリペプチドに非共有結合により結合する。
【0019】
一部の実施形態において、標的タンパク質は、SLAMポリペプチドに共有結合により連結している。
【0020】
一部の実施形態において、標的タンパク質は、宿主生物において免疫応答を誘発し得る免疫原である。
【0021】
一部の実施形態において、標的タンパク質は、病原性微生物の外表面に天然に呈示される免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性部分である。
【0022】
一部の実施形態において、標的タンパク質は表面リポタンパク質(SLP)である。
【0023】
一部の実施形態において、表面リポタンパク質(SLP)は、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ;SEQ ID NO:1094;SEQ ID NO:1100;配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168;及びSEQ ID NO:1178より選択される配列を含むかまたはそれからなる。
【0024】
一部の実施形態において、表面リポタンパク質は、トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)、ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA)、H因子結合タンパク質(fHbp)、及びラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)より選択される。
【0025】
一部の実施形態において、トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)は、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:806、SEQ ID NO:828、SEQ ID NO:868、SEQ ID NO:1094、及び配列番号が偶数のSEQ ID NO:1148~SEQ ID NO:1168のうちの1つより選択される配列を含むかまたはそれからなり;ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA)は、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:850、SEQ ID NO:924、SEQ ID NO:932、またはSEQ ID NO:1110のうちの1つより選択される配列を含むかまたはそれからなり;H因子結合タンパク質(fHbp)は、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1136のうちの1つより選択される配列を含むかまたはそれからなり;ならびにラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)は、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:870、または配列番号が偶数のSEQ ID NO:1138~SEQ ID NO:1146のうちの1つより選択される配列を含むかまたはそれからなる。
【0026】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に記載されている、配列番号が奇数のSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:693のうちの1つより選択される配列を含むかまたはそれからなる。
【0027】
一部の実施形態において、標的タンパク質は、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ、SEQ ID NO:1094;SEQ ID NO:1100;配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168;及びSEQ ID NO:1178より選択される配列を含むかまたはそれからなる。
【0028】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)細胞に天然に存在する標的タンパク質を含む宿主細胞を選択すること、
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチドを産生させ及びサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む、宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらす方法を提供する。
【0029】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び
(iii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチドを産生させ及びサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む、宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらす方法を提供する。
【0030】
別の態様において、本開示は、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む第一のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む第二のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)宿主細胞に第一及び第二のキメラポリヌクレオチドを導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチド及び標的タンパク質を産生させ、サイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む、宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらす方法を提供する。
【0031】
別の態様において、本開示は、SLAMポリペプチドをコードする新規なポリヌクレオチドに関する。したがって、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、SEQ ID NO:1183を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチドを提供する。
【0032】
一部の実施形態において、前記ポリヌクレオチドはSLAMポリペプチドをコードし、SLAMポリヌクレオチドは、宿主細胞におけるSLAMポリペプチドの発現を促すように改変されている。
【0033】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、コドン最適化されている。
【0034】
一部の実施形態において、コドン最適化されたポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1113に明示される配列を含むかまたはそれからなる。
【0035】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、シグナル配列をさらに含む。
【0036】
別の態様において、本開示は、新規なポリペプチドに関する。したがって、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、SEQ ID NO:1184を含むかまたはそれからなるポリペプチドを提供する。
【0037】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)免疫原を産生し得る宿主細胞を選択すること、
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチド及び免疫原を産生させること、
(d)宿主細胞を弱毒化して、弱毒化した宿主細胞を調製すること、ならびに
(e)弱毒化した宿主細胞を用いてワクチン製剤を調製すること
を含む、ワクチンを調製する方法を提供する。
【0038】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む第一のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む第二のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)宿主細胞に第一及び第二のキメラポリヌクレオチドを導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチド及び標的タンパク質を産生させること、ならびに
(d)(c)の細胞を用いてワクチン製剤を調製すること
を含む、ワクチンを調製する方法を提供する。
【0039】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び
(iii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)宿主細胞にキメラポリヌクレオチドを導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチド及び標的タンパク質を産生させること、ならびに
(c)(b)の細胞を用いてワクチン製剤を調製すること
を含む、ワクチンを調製する方法を提供する。
【0040】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)SLAMポリペプチドをコードする核酸配列を含む病原性細菌株を提供すること、
(b)病原性株におけるSLAM産生を欠如させて、SLAMを欠如した病原性細菌株を獲得すること、及び
(c)SLAMを欠如した病原性株を用いて、ワクチンを製剤化すること
を含む、病原性細菌感染症に対するワクチンを調製する方法を提供する。
【0041】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、本開示の方法のいずれかに従って作製されたワクチン調製物を提供する。
【0042】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、宿主生物を免疫化するための、本開示の方法のいずれかに従って作製されたワクチン調製物の使用を提供する。
【0043】
一部の実施形態において、ワクチン調製物は、細菌性生物によって媒介される感染性疾患に対する防御を提供する。
【0044】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、病原性細菌種に感染した患者の治療に使用するための化合物候補を同定するためのスクリーニング方法を提供し、当該方法は、
(a)試験化合物を提供すること、
(b)機能アッセイにおいて、病原性細菌種におけるSLAMポリペプチドの機能に対する試験化合物の効果を、対照と比較すること、及び
(c)SLAMポリペプチドの天然機能に対して効果を呈する試験化合物を同定すること
を含む。
【0045】
一部の実施形態において、病原性細菌種はナイセリア属(Neisseria)に属する。
【0046】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、細胞のサイトゾルから細胞外表面へSLAMポリペプチドによって輸送され得る標的タンパク質を同定するための方法を提供し、当該方法は、
(a)(i)SLAMポリペプチドをコードする第一のヌクレオチド配列、及び
(ii)ポリペプチドをコードするのに十分に長くかつ第一のヌクレオチド配列に天然に付着している第二のヌクレオチド配列
を含む、ゲノムヌクレオチド配列を提供すること、
(b)第二のヌクレオチド配列を評価して、第二のヌクレオチド配列内のポリペプチドコード配列を同定すること、ならびに
(c)ポリペプチドコード配列を用いて、SLAMポリペプチドを含む宿主細胞において当該ポリペプチドを発現させて、タンパク質が宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面へ輸送されるかどうかを判定し、それによって当該タンパク質が標的タンパク質であるかどうかを同定すること
を含む。
【0047】
一部の実施形態において、第一のヌクレオチド配列は、本明細書に記載されている、配列番号が奇数のSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:695のうちのいずれか1つより選択される配列を含む。
【0048】
[本発明1001]
標的タンパク質を含む宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらす方法であって、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)前記宿主細胞に前記キメラポリヌクレオチドを導入し及び前記宿主細胞を増殖させて、前記SLAMポリペプチドを産生させ、それによって前記宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への前記標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む、前記方法。
[本発明1002]
(a)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む第一のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む第二のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)前記宿主細胞に前記第一及び第二のキメラポリヌクレオチドを導入し及び前記宿主細胞を増殖させて、前記SLAMポリペプチド及び前記標的タンパク質を産生させ、サイトゾルから細胞外表面への前記標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記宿主細胞がグラム陰性細菌細胞である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
前記宿主細胞が病原性細菌細胞である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1005]
宿主細胞が、ナイセリア属(Neisseria)、モラクセラ属(Moraxella)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、またはビブリオ属(Vibrio)に属する細菌細胞より選択される細胞である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1006]
前記宿主細胞が、以下の種に属する細菌細胞より選択される、本発明1005の方法:髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、クレブシエラ・デニトリフィカンス(Klebsiella denitrificans)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、またはコレラ菌(Vibrio cholera)。
[本発明1007]
前記SLAMポリペプチドが、前記宿主細胞に天然には存在しない、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記標的タンパク質が、前記宿主細胞に天然に存在する、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
前記標的タンパク質が、前記宿主細胞に天然には存在せず、かつ前記キメラポリヌクレオチドが、前記標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記標的タンパク質が、前記SLAMポリペプチドに非共有結合により結合する、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記標的タンパク質が、前記SLAMポリペプチドに共有結合により連結している、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記標的タンパク質が、宿主生物において免疫応答を誘発し得る免疫原である、本発明1001~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記標的タンパク質が、病原性微生物の外表面に天然に呈示される免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性部分である、本発明1001~1011のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記免疫原が表面リポタンパク質(SLP)である、本発明1012の方法。
[本発明1015]
前記表面リポタンパク質(SLP)が、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ、及びSEQ ID NO:1178より選択される配列を含む、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記表面リポタンパク質(SLP)が、トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)、ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA)、H因子結合タンパク質(fHbp)、及びラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)より選択される、本発明1014の方法。
[本発明1017]
前記トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)が、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:806、SEQ ID NO:828、SEQ ID NO:868、SEQ ID NO:1094、及び配列番号が偶数のSEQ ID NO:1148~SEQ ID NO:1168のうちの1つより選択される配列を含み;前記ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA)が、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:850、SEQ ID NO:924、SEQ ID NO:932、またはSEQ ID NO:1110のうちの1つより選択される配列を含み;前記H因子結合タンパク質(fHbp)が、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1136のうちの1つより選択される配列を含み;ならびに前記ラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)が、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:870、または配列番号が偶数のSEQ ID NO:1138~SEQ ID NO:1146のうちの1つより選択される配列を含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記SLAMポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、本明細書に記載されている、配列番号が奇数のSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:693のうちの1つより選択される配列を含む、本発明1001~1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記標的タンパク質が、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ;SEQ ID NO:1094;SEQ ID NO:1100;配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168のうちの1つ;及びSEQ ID NO:1178より選択される配列を含む、本発明1001~1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記宿主細胞が、ワクチン製剤を調製するために用いられる、本発明1001~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
(a)免疫原を産生し得る宿主細胞を選択すること、
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)前記宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び前記宿主細胞を増殖させて、前記SLAMポリペプチド及び前記免疫原を産生させること、
(d)前記宿主細胞を弱毒化して、弱毒化した宿主細胞を調製すること、ならびに
(e)前記弱毒化した宿主細胞を用いてワクチン製剤を調製すること
を含む、ワクチンを調製する方法。
[本発明1022]
(a)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む第一のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)機能的に連結された成分として、
(i)前記宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)免疫原をコードするポリヌクレオチド
を含む第二のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)前記宿主細胞に前記第一及び第二のキメラポリヌクレオチドを導入し及び前記宿主細胞を増殖させて、前記SLAMポリペプチド及び前記免疫原を産生させること
を含む、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記免疫原が、病原性微生物の外表面に天然に呈示される、本発明1021または1022の方法。
[本発明1024]
前記免疫原が表面リポタンパク質(SLP)である、本発明1021または1022の方法。
[本発明1025]
前記表面リポタンパク質(SLP)が、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つより選択される配列を含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記表面リポタンパク質が、トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)、ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA)、H因子結合タンパク質(fHbp)、及びラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)より選択される、本発明1024の方法。
[本発明1027]
前記トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)が、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:806、SEQ ID NO:828、SEQ ID NO:868、SEQ ID NO:1094、及び配列番号が偶数のSEQ ID NO:1148~SEQ ID NO:1168のうちの1つより選択される配列を含み;前記ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA)が、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:850、SEQ ID NO:924、SEQ ID NO:932、またはSEQ ID NO:1110のうちの1つより選択される配列を含み;前記H因子結合タンパク質(fHbp)が、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1136のうちの1つより選択される配列を含み;ならびに前記ラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)が、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:870、または配列番号が偶数のSEQ ID NO:1138~SEQ ID NO:1146のうちの1つより選択される配列を含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
前記SLAMポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、本明細書に記載されている、配列番号が奇数のSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:693のうちの1つより選択される配列を含む、本発明1021~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
標的タンパク質が、前記SLAMポリペプチドに非共有結合により結合する、本発明1021~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
標的タンパク質が、前記SLAMポリペプチドに共有結合により連結している、本発明1021~1028のいずれかの方法。
[本発明1031]
本発明1021~1030のいずれかの方法に従って獲得された宿主細胞を用いて作製された、ワクチン調製物。
[本発明1032]
宿主生物を免疫化するための、本発明1031の作製されたワクチン調製物の使用。
本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明白になるであろう。しかしながら、本開示の精神及び範囲の内にある様々な変更及び改変が、詳細な説明から当業者に明白になるであろうため、詳細な説明は、本開示の好ましい実施形態を示すと同時に、例示としてのみ与えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本開示は、以下で提供される段落において、その図との関連で記載される。本明細書において提供される図は、例示目的のために提供されるものであり、本開示を限定することを意図されるものではない。
【0050】
図1図1は、SLAMの精製のための方法論を概説した略図を示している。ステップ1:5H3を含有するプラスミドを形質転換された細胞を、所望の光学密度に達するまで37℃で増殖させる。この時点で、IPTGの添加により、発現を誘導する。ステップ2:一晩増殖後、細胞を遠心分離によって収穫する。次いで、リゾチーム及びDNAseの存在下で、細胞を超音波処理によって溶解する。ステップ3:溶解物の膜画分を超遠心分離により単離する。ステップ4:膜ペレットを再懸濁し、膜タンパク質を、50mMリン酸カリウム(pH7.5、3%Elugent及びPMSF)中に膜から一晩抽出する。ステップ5:抽出液をニッケル-NTAカラムにロードする。5H3がカラムから溶出される前に、カラムを漸増量のイミダゾールで洗浄し、すべてのバッファーは0.6^C8E4を含有する。ステップ6:5H3を含有する濃縮画分を、さらなる精製及び界面活性剤交換のためにゲル濾過カラムにロードする。ステップ7:5H3を含有する画分をプールし及び濃縮し、当該タンパク質を後続の結晶スクリーニングにおいて用いる。
図2図2は、SLAM1の精製及び結晶化の様々な段階の概観を示している。図2A:S200カラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。図2B:SLAM1を含有するピークを、クマシー染色したSDS-PAGEを用いて分析し、さらに濃縮し、及び市販のスクリーニングを用いた結晶化試験に用いた。図2C:初回の結晶ヒットがSLAM1に対して示されている。
図3図3は、様々な細菌種における様々なSLAMポリペプチドホモログの系統樹及び系統発生関係を示している。群1(ライトボックス、上)におけるSLAMホモログは、ナイセリア属(Neisseria)及びカタル球菌(Moraxella catarrhalis)に属し、一方で群2(ミディアムグレー、中間)は、ガンマプロテオバクテリア綱(gamma-proteobacteria)のパスツレラ科(Pasteurellaceae)ファミリーとは異なるメンバーを含有する。群3(ダークグリーン、下)は、ナイセリア・シャエガニ(Neisseria shayeganii)のみを含有する。
図4図4は、SLAM2の精製及び結晶化の様々な段階の概観を示している。図4A:精製に用いられた構築物は、N末端pelB配列(タンパク質局在化のための)及び6×Hisタグ(NiNTA精製のための)を含有する。図4B:NiNTA精製の後に収集された種々の画分は、溶出画分がSLAM2を含有することを示している。図4C:画分のウェスタンブロットは、SLAM2の予想モル重量を有するHisタグの存在を裏付けている。煮沸された画分及び煮沸されていない画分を試験した。図4D:NiNTA精製の後、S200カラムを用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて、サンプルをさらに精製した。図は、SECランから獲得されたプロファイルを示している。SLAM2を含有するピークをさらに濃縮し、市販のスクリーニングを用いた結晶化試験に用いた。図4E:初回の結晶ヒットがSLAM2に対して示されている。
図5図5は、SLAM1ポリペプチドのN末端及びC末端部分(図5A)、ならびにSLAM1及びその一部分を形質転換された髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)ノックアウト株を用いた表面リポタンパク質のトランスロケーションについての評価において得られた結果、ならびにフローサイトメトリー(図5B)及びプロテイナーゼK消化の結果(図5C)を示している。
図6図6は、SLPと併せた大腸菌(E.coli)におけるSLAM1の発現後に得られた結果を示している。トランスロケーションを示した定量的蛍光(ヒストグラム)及びウェスタンブロットが示されている。TbpB(図6A)、LbpB(図6B)、及びfHbp(図6C)を用いて得られた結果が示されている。ヒストグラムは、ヒトトランスフェリンまたはSLP特異的抗体のいずれかとのインキュベーション、それに続く二次蛍光分子とのインキュベーションの後に、各サンプルに対して測定された平均蛍光強度を呈示している。
図7図7は、SLAMを欠如したナイセリア(Neisseria)株についての評価において得られた結果を示している。図7Aは、パラホルムアルデヒド(PFA)で固定されまたはSDSで溶解され、ニトロセルロース上にスポットされ、及びα-TbpB抗体でプローブされた、髄膜炎菌(N.meningitidis)細胞からなる固相結合アッセイを示している。ΔSLAM/tn5は、トランスポゾン挿入により獲得されたSLAM欠損細胞の元の株を指す。ΔSLAMは、SLAMオープンリーディングフレーム(ORF)をカナマイシン耐性カセットで置き換えることによって獲得された髄膜炎菌(N.meningitidis)におけるSLAMのノックアウトを記載する。図7Bは、Nm細胞がSLAM欠損(ΔSLAM)である場合のみの、TbpB、LbpB、及びfHbpの分解を示したプロテイナーゼK消化アッセイを示している。単独で及びSLAMとともに個々のSLPを発現する髄膜炎菌(N.meningitidis)細胞をプロテイナーゼKとともにインキュベートし、ウェスタンブロットを用いて、プロテアーゼ消化の有無(+/-)での3種すべてのSLPレベルのレベルを検出した。フローサイトメトリーを用いて、ΔSLAM細胞が、細胞表面にTbpB(図7C)またはfHbp(図7D)を呈示し得ないことを確認した。TbpB及びfHbpに対する抗体を用いて、表面曝露されたSLPに結合させ、その後にフィコエリスリンに連結されたα-ウサギ二次抗体とのインキュベーションが続いて、蛍光を提供した。各サンプルの平均蛍光強度(MFI)を、BD FACS CaliburのFL2検出器を用いて測定した。野生型細胞から獲得されたシグナルを、ノックアウト細胞からのシグナルとの比較のために100%に設定した。エラーバーは、3回の実験からの平均の標準誤差(SEM)を表す。様々な株を用いた、マウス感染の結果が図7Eに示されている。マウスに、1×10CFUの野生型髄膜炎菌(N.meningitidis)株B16B6、TbpBのノックアウト(ΔtbpB)と合わせたB16B6、またはnmb0313 Δslamのノックアウトと合わせたB16B6を腹腔内注射により感染させ、感染前48時間から始まり感染後48時間まで、12時間ごとに生存及び疾患症状についてモニターし、ならびに感染後3時間の時点でさらにモニターした。生存の統計的な差を、Mantel-Coxログランク検定(GraphPad Prism 5)によって査定した(p<0.05、n.s.有意でない)。
図8図8は、本開示に従って用いられ得る例示的な微生物を含む系統樹を示している。有名な細菌種におけるSLAMタンパク質の予想数が丸括弧内に示されている。
図9図9は、グラム陰性細菌種にわたるSLAMファミリータンパク質の存在を示している。図9Aは、2つのドメイン:テトラトリコペプチド反復を含有するペリプラズムN末端ドメイン(Ntd)、及びDUF560と称される膜結合型14本鎖バレルドメイン、を有する髄膜炎菌(N.meningitidis)SLAM1のドメイン構造を示している。図9Bは、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)におけるSLAMタンパク質の分布を示している。プロテオバクテリア門(Proteobacteria)における主要な細菌ファミリーを表す55の種由来の16S-RNA配列を用いて、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)の系統樹を作製した。SLAMホモログを有する少なくとも1つの種を含有するファミリーは、黒点によって強調されている。SLAMホモログは、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)のすべてのクレード内に見出された。
図10図10は、大腸菌(Escherichia coli)におけるカタル球菌(Moraxella catarrhalis)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)由来のSLAM及びTbpBペアのトランスロケーションを示している。図10Aは、カタル球菌(M.catarrhalis)及びインフルエンザ菌(H.influenzae)におけるSLAM及びTbpB遺伝子クラスターを示している。実施されたバイオインフォマティクス分析から、SLAMは、両方のヒト病原体における公知のトランスフェリン結合表面リポタンパク質TbpBに近接して見出された。図10Bは、本調査において用いられた大腸菌(E.coli)トランスロケーションアッセイの概略図を示している。簡潔には、SLAM及びTbpB遺伝子を大腸菌(E.coli)C43(DE3)細胞において発現させた。当該細胞を、ビオチン化ヒトトランスフェリン、及びR-フィコエリスリン(PE)に連結されたストレプトアビジンで標識した。TbpBの表面呈示を、フローサイトメトリーを用いて定量した。図10Cは、SLAMありで(黒色で示されている)またはSLAMなしで(グレーで示されている)獲得されたカタル球菌(M.catarrhalis) TbpB(McTbpB)及びインフルエンザ菌(H.influenzae) TbpB(HiTbpB)のフローサイトメトリープロファイルを示している。SLAMの存在下でより高いシグナルが観察され、SLPの有効な表面発現のためのSLAMの依存度を示した。図10Dは、平均蛍光強度を用いた、カタル球菌(M.catarrhalis)及びインフルエンザ菌(H.influenzae)由来のTbpBホモログに対する平均蛍光ブロットを示している。統計的有意性は一元配置ANOVAを用いて判定され、***はp≦0.001を表す。
図11図11は、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)におけるSLAM依存的表面リポタンパク質の同定を示している。図11Aは、パスツレラ・マルトシダ(P.multocida)株Pm70におけるSLAM遺伝子クラスターを示している。本発明者らのバイオインフォマティクス検索において、PM1515(黒色で示されている)がSLAMホモログとして同定された。PM1514(グレーで示されている)は、仮想タンパク質として注釈を付された。PM1514は、推定リポボックス(ITAC)モチーフで終わるシグナルペプチダーゼII切断部位を含有する。図11Bは、PM1514がSLAM依存的SLPであるかどうかを調べるトランスロケーションアッセイのために作製されたパスツレラ・マルトシダ(P.multocida)遺伝子構築物を示している。簡潔には、PM1514をC末端Flagタグを有してクローニングし(PM1514-Flag)、PM1515をN末端Hisタグ及びpelBシグナル配列を有してクローニングし、ならびにPM1515-PM1514-FlagをPM1515及びPM1514領域の両方を有してクローニングした。図11Cは、パスツレラ・マルトシダ(P.multocida)構築物のフローサイトメトリープロファイルを示しており、図11Bに詳説される3つすべての構築物を、大腸菌(E.coli) C43(DE3)細胞において発現させ、ならびにα-Flag抗体、及びR-フィコエリスリン(PE)に連結されたマウス二次抗体で標識した。PM1514-Flag(ライトグレー)、PM1515及びPM1514-Flag(黒)、ならびにPM1515-PM1514-Flag(ダークグレー)のフローサイトメトリープロファイルが示されている。図11Dは、パスツレラ・マルトシダ(P.multocida)構築物の平均蛍光強度(MFI)を用いて定量された平均蛍光強度ブロットを示している。統計的有意性は一元配置ANOVAを用いて判定され、***はp≦0.001を表す。
図12図12は、トランスロケーションモチーフがTbpB上にある場所についての同定を示している。図12Aは、野生型TbpB、野生型HpuA、TbpB Nローブ、TbpB Cローブ、及びHpuAに融合したTbpB Nローブ(Nローブ_HpuA)を含めた、本調査において用いられた髄膜炎菌(N.meningitidis) TbpB及びHpuA構築物を示している。図12Bは、α-TbpB及びウサギFITC抗体で標識した後の、髄膜炎菌(N.meningitidis) TbpB及び髄膜炎菌(N.meningitidis) SLAM1の全長または個々のローブを発現する大腸菌(E.coli) C43(DE3)細胞のフローサイトメトリーによって定量された、TbpBのN及びCローブのトランスロケーション効率を示している。図12C、12D、及び図12Eは、それぞれα-TbpB、α-HpuA、及びビオチン化ヒトトランスフェリンを用いた、Nローブ_HpuAのトランスロケーション効率を示している。大腸菌(E.coli)の表面へのNローブ_HpuAのトランスロケーションを強化するSLAM1及びSLAM2の能力を、フローサイトメトリーを用いて試験した。α-TbpB及びビオチン化ヒトトランスフェリンを用いてTbpB Nローブを検出し、一方でα-HpuAを用いてHpuAを検出した。平均蛍光強度ブロットが示されており、TbpB CローブをHpuAと入れ替えることは、構築物の特異性をSLAM1からSLAM2へ入れ替えることを強調している。統計的有意性は一元配置ANOVAを用いて判定され、***はp≦0.001を表し、****はp≦0.0001を表し、及びn.s.は有意でないことを表す。
図13-1】図13は、SLAM依存的表面リポタンパク質のC末端鎖の2本は保存され、表面呈示に必要であることを示している。図13Aは、SLAM依存的SLPに見出されたタンパク質ドメインの一般的構造を示している。このタンパク質のファミリーは、柔軟性のあるハンドルドメイン及び8本鎖バレルドメインを含有する。バレルドメインは、すべての推定SLAM依存的SLPの間で保存されている。図13Bは、髄膜炎菌(N.meningitidis) TbpBからのバレルドメインの概略を示しており、鎖は、髄膜炎菌(N.meningitidis)株B16B6(PDB ID:4QQ1)由来のTbpBの構造に従って番号付けされている。ポリアラニン変異によって変異した鎖は、B22、B23、B30、及びB31で表される。図13C及び図13Dは、TbpB野生型のみ、SLAM1及びTbpB野生型、またはSLAM1及び4本の異なるβバレル鎖にポリアラニン変異を含有するTbpB変異体のうちの1つを発現する大腸菌(E.coli) C43(DE3)細胞のトランスロケーション効率を示している。細胞をα-TbpB及びビオチン化ヒトトランスフェリンで標識し、平均蛍光強度ブロットにより、TbpB Cローブバレルの最後の2本の鎖における変異は、TbpBの表面呈示を妨げることが判定された。α-TbpB及びα-Hisを用いたウェスタンブロット分析を行って、それぞれTbpB Cローブ変異体及びSLAM1の発現を確認した。統計的有意性は一元配置ANOVAを用いて判定され、***はp≦0.001を表し、****はp≦0.0001を表し、及びn.s.は有意でないことを表す。
図13-2】図13Eは、グレーで強調された保存された残基を有するSLAM依存的SLPのC末端βバレルの最後の2本の鎖についての多重配列アライメントを示している。図13Fは、TbpBのCローブ構造における最後の2本のβバレル鎖上の保存された残基の重ね合わせを示している。2本の鎖は、互いに向き合うバレルドメインの内側の残基と互いに向き合うことが示されており、一方でバレルの外側の残基は、互いから離れている。保存された残基は、バレルドメインの中心で一緒にクラスター形成する。
図14図14は、アシネトバクター・バウマニ(Actinobacter baumannii)におけるSLAM依存的表面リポタンパク質の同定を示している。図14Aは、アシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)株LAC4におけるSLAM遺伝子クラスターを示している。バイオインフォマティクス検索において、AbSLAM(グレーで示されている)がSLAMホモログとして同定された。AbSLP(黒色で示されている)は、仮想タンパク質として注釈を付された。図14Bは、AbSLPがSlam依存的SLPであるかどうかを調べるトランスロケーションアッセイのために作製されたアシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)遺伝子構築物を示している。簡潔には、AbSLPをC末端Flagタグを有してクローニングし(AbSLP-Flag)、AbSLAMをN末端Hisタグ及びpelBシグナル配列を有してクローニングした。図14B(右)は、アシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)構築物のフローサイトメトリープロファイルを示しており、詳説される両構築物を、大腸菌(E.coli) C43(DE3)細胞において発現させ、α-Flag抗体、及びR-フィコエリスリン(PE)に連結されたマウス二次抗体で標識した。図14Cは、形成されたAbSLP結晶(左)、及びAbSLPの同定された結晶構造のマンガ図を示している。図14Dは、アシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)におけるPKシェービングアッセイを示している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本開示の詳細な説明
それぞれの請求される主題の実施形態の例を提供するために、様々な組成物及び方法が下で記載される。下で記載される実施形態は、いかなる請求される主題をも限定せず、任意の請求される主題は、下で記載されるものとは異なる方法、工程、組成物、またはシステムを網羅し得る。請求される主題は、下で記載されるいずれか1つの組成物、方法、システム、もしくは工程の特徴のすべてを有する組成物もしくは方法に、または下で記載される組成物、システム、もしくは方法の複数もしくはすべてに共通した特徴に限定されるわけではない。下で記載される組成物、システム、方法、または工程は、いかなる請求される主題の実施形態でもない可能性がある。本文書において請求されない、下で記載される組成物、システム、方法、または工程において開示される任意の主題は、別の保護的法律文書の主題であり得る。例えば、継続特許出願、及び出願人、発明者、または所有者は、本文書におけるその開示によって任意のそのような主題を棄却する、放棄する、または公に捧げることを意図するわけではない。すべての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物であるかと同程度に、参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる。
【0052】
用語及び定義
別様に定義されていない限り、本明細書において用いられるすべての技術的及び科学的な用語は、本開示が関連する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有するものとする。以下の用語は、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0053】
「Surface lipoprotein assembly modulator」、「SLAM」、「SLAMタンパク質」、及び「SLAMポリペプチド」という本明細書において互換可能に用いられる用語は、配列番号が偶数のSEQ ID NO:2~SEQ ID NO:694及びSEQ ID NO:1184のうちのいずれか1つに明示されるもの、ならびに(i)本明細書に記載されている任意のSLAMタンパク質を構成するアミノ酸配列と実質的に同一である;(ii)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されている任意のSLAMタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る、または少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、本明細書に記載されている任意のSLAMタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る核酸配列によってコードされる、アミノ酸残基の配列を含むものを含めた、ありとあらゆるSLAMタンパク質を指す。当該用語は、任意のSLAM前駆体ポリペプチドをさらに含む。
【0054】
「表面リポタンパク質」という用語は、、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ、SEQ ID NO:1094、SEQ ID NO:1100、及び配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168、及びSEQ ID NO:1178に明示されるもの、ならびに(i)本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質を構成するアミノ酸配列と実質的に同一である;(ii)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る、または少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る核酸配列によってコードされる、アミノ酸残基の配列を含むものを含めた、ありとあらゆる表面リポタンパク質を指す。表面リポタンパク質という用語は、SEQ ID NO:1170及びSEQ ID NO:1174に明示される表面リポタンパク質ボックス配列モチーフを含むポリペプチド、ならびに(i)本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質ボックス配列モチーフを構成するアミノ酸配列と実質的に同一である;または(ii)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質ボックス配列モチーフをコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る、もしくは少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質ボックス配列モチーフをコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る核酸配列によってコードされる、アミノ酸残基の配列を含むものをさらに指し得る。
【0055】
「トランスフェリン結合タンパク質B」、「TbpBタンパク質」、「TbpBポリペプチド」、及び「TbpB」という本明細書において互換可能に用いられる用語は、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:806、SEQ ID NO:828、SEQ ID NO:868、SEQ ID NO:1094、及び配列番号が偶数のSEQ ID NO:1148~SEQ ID NO:1168のうちの1つより選択される配列に明示されるもの、ならびに(i)本明細書に記載されている任意のTbpBタンパク質を構成するアミノ酸配列と実質的に同一である;(ii)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されている任意のTbpBタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る、または少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、本明細書に記載されている任意のTbpBタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る核酸配列によってコードされる、アミノ酸残基の配列を含むものを含めた、ありとあらゆるTbpBタンパク質を指す。
【0056】
「ラクトフェリン結合タンパク質」、「LbpBタンパク質」、「LbpBポリペプチド」、及び「LbpB」という本明細書において互換可能に用いられる用語は、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:870、または配列番号が偶数のSEQ ID NO:1138~SEQ ID NO:1146のうちの1つより選択される配列に明示されるもの、ならびに(i)本明細書に記載されている任意のLbpBタンパク質を構成するアミノ酸配列と実質的に同一である;(ii)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されている任意のLbpBタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る、または少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、本明細書に記載されている任意のLbpBタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る核酸配列によってコードされる、アミノ酸残基の配列を含むものを含めた、ありとあらゆるLbpBタンパク質を指す。
【0057】
「H因子結合タンパク質」、「fHbpタンパク質」、「fHbpポリペプチド」、及び「fHbp」という本明細書において互換可能に用いられる用語は、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1136のうちの1つより選択されるそうした配列、ならびに(i)本明細書に記載されている任意のfHbpタンパク質を構成するアミノ酸配列と実質的に同一である;(ii)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されている任意のfHbpタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る、または少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、本明細書に記載されている任意のfHbpタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る核酸配列によってコードされる、アミノ酸残基の配列を含むものを含めた、ありとあらゆるfHbpタンパク質を指す。
【0058】
「ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A」、「HpuAタンパク質」、「HpuAポリペプチド」、及び「HpuA」という本明細書において互換可能に用いられる用語は、SEQ ID NO:850、SEQ ID NO:924、SEQ ID NO:932、またはSEQ ID NO:1110に明示されるもの、ならびに(i)本明細書に記載されている任意のHpuAタンパク質を構成するアミノ酸配列と実質的に同一である;(ii)少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、本明細書に記載されている任意のHpuAタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る、または少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、本明細書に記載されている任意のHpuAタンパク質をコードする任意の核酸配列にハイブリダイズし得る核酸配列によってコードされる、アミノ酸残基の配列を含むものを含めた、ありとあらゆるSLAMタンパク質を指す。
【0059】
「Surface lipoprotein assembly modulatorをコードするポリヌクレオチド」;「SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」;及びSLAMタンパク質をコードするポリヌクレオチドという本明細書において互換可能に用いられる用語は、任意のSLAMポリペプチドを含めたSLAMポリペプチドをコードするありとあらゆるポリヌクレオチド、ならびにSEQ ID NO:1及びSEQ ID NO:3に明示されるポリヌクレオチドを含めた、SLAM前駆体をコードする任意の核酸配列を指す。本明細書において使用するとき、「SLAM前駆体」とは、大腸菌(E.coli)及び他のグラム陰性細菌種の細胞質膜を横断してポリペプチド鎖の運び出しを促すN末端シグナル配列をさらに含むSLAM分子を指す。SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドには、(i)本明細書に記載されているSLAMポリペプチド配列と実質的に同一であるポリペプチドをコードする;または(ii)少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載されている任意のSLAMポリヌクレオチドにハイブリダイズする、もしくは少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、それにハイブリダイズするであろう、ありとあらゆるポリヌクレオチドがさらに含まれる。
【0060】
「表面リポタンパク質をコードするポリヌクレオチド」という用語は、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:695~SEQ ID NO:1081、及びSEQ ID NO:1177を含む奇数の配列番号にて規定されるポリヌクレオチドを含む、表面リポタンパク質(任意の表面リポタンパク質を含む)をコードするありとあらゆるポリヌクレオチドを指す。表面リポタンパク質をコードするポリヌクレオチドには、(i)本明細書に記載されている表面リポタンパク質配列と実質的に同一であるタンパク質をコードする;または(ii)少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質ポリヌクレオチドにハイブリダイズする、もしくは少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、それにハイブリダイズするであろう、ありとあらゆるポリヌクレオチドがさらに含まれる。
【0061】
本明細書において互換可能に用いられ得る「TbpBをコードするポリヌクレオチド」、「TbpBタンパク質をコードするポリヌクレオチド」、及び「TbpBポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、SEQ ID NO:1147に明示されるポリヌクレオチドを含めた、任意のTbpBタンパク質を含めたTbpBタンパク質をコードするありとあらゆるポリヌクレオチドを指す。表面リポタンパク質をコードするポリヌクレオチドには、(i)本明細書に記載されている表面リポタンパク質配列と実質的に同一であるタンパク質をコードする;または(ii)少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質ポリヌクレオチドにハイブリダイズする、もしくは少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、それにハイブリダイズするであろう、ありとあらゆるポリヌクレオチドがさらに含まれる。
【0062】
本明細書において互換可能に用いられ得る「LbpBをコードするポリヌクレオチド」、「LbpBタンパク質をコードするポリヌクレオチド」、及び「LbpBポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、SEQ ID NO:869に明示されるポリヌクレオチドを含めた、任意のLbpBタンパク質を含めたLbpBタンパク質をコードするありとあらゆるポリヌクレオチドを指す。表面リポタンパク質をコードするポリヌクレオチドには、(i)本明細書に記載されている表面リポタンパク質配列と実質的に同一であるタンパク質をコードする;または(ii)少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質ポリヌクレオチドにハイブリダイズする、もしくは少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、それにハイブリダイズするであろう、ありとあらゆるポリヌクレオチドがさらに含まれる。
【0063】
本明細書において互換可能に用いられ得る「fHbpをコードするポリヌクレオチド」、「fHbpタンパク質をコードするポリヌクレオチド」、及び「fHbpポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、SEQ ID NO:1115に明示されるポリヌクレオチドを含めた、任意のfHbpタンパク質を含めたfHbpタンパク質をコードするありとあらゆるポリヌクレオチドを指す。表面リポタンパク質をコードするポリヌクレオチドには、(i)本明細書に記載されている表面リポタンパク質配列と実質的に同一であるタンパク質をコードする;または(ii)少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質ポリヌクレオチドにハイブリダイズする、もしくは少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、それにハイブリダイズするであろう、ありとあらゆるポリヌクレオチドがさらに含まれる。
【0064】
本明細書において互換可能に用いられ得る「HpuAをコードするポリヌクレオチド」、「HpuAタンパク質をコードするポリヌクレオチド」、及び「HpuAポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という用語は、SEQ ID NO:931に明示されるポリヌクレオチドを含めた、任意のHpuAタンパク質を含めたHpuAタンパク質をコードするありとあらゆるポリヌクレオチドを指す。表面リポタンパク質をコードするポリヌクレオチドには、(i)本明細書に記載されている表面リポタンパク質配列と実質的に同一であるタンパク質をコードする;または(ii)少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書に記載されている任意の表面リポタンパク質ポリヌクレオチドにハイブリダイズする、もしくは少なくとも中程度にストリンジェントな条件下で、ただし同義コドンの使用に対して、それにハイブリダイズするであろう、ありとあらゆるポリヌクレオチドがさらに含まれる。
【0065】
「実質的に同一の」という用語によって、2つのポリペプチド配列が、好ましくは少なくとも50%同一である、及びより好ましくは少なくとも85%同一である、及び最も好ましくは少なくとも95%同一である、例えば96%、97%、98%、または99%同一であることが意味される。2つのポリペプチド配列間の同一性のパーセンテージを判定するために、そのような2つの配列のアミノ酸配列を、当該2つの配列間で最高位の一致が獲得され、当該2つの配列間で同一アミノ酸の数が判定されるように、Smith及びWaterman(Smith TFaMSW.1981.Comparison of Biosequences.Advances in Applied Mathematics 2:482-489)によって修正された、例えばNeedleman及びWunschのアライメント法(Needleman SB,Wunsch CD.1970.A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins.Journal of molecular biology 48:443-453)を用いて並べる。好ましい、広く適用可能な、2つのポリペプチドを精確に並べるための方法は、10のギャップオープンペナルティ及び0.1のギャップ伸長ペナルティを用いた、BLOSUM62スコア行列(Henikoff S,Henikoff JG.1992.Amino acid substitution matrices from protein blocks.Proc Natl Acad Sci U S A 89:10915-10919)とともに採用される、Clustal Wアルゴリズム(Thompson JD,Higgins DG,Gibson TJ.1994.CLUSTAL W:improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting,position-specific gap penalties and weight matrix choice.Nucleic acids research 22:4673-4680.)を伴う。これは、2つの配列のうちの一方の全長の少なくとも50%がアライメントに関与する、2つの配列間の高いスコアアライメントの同定を可能にする。並べられた2つのアミノ酸配列間の同一性パーセンテージを算出する方法は、一般的に当技術分野において認められており、例えばCarillo及びLiptonによって記載されたもの(Carrillo H,and D.Lipman.1989.The Multiple Sequence Alignment Problem in Biology.SIAM Journal on Applied Mathematics 48:1073-1082)、及びComputational Molecular Biology,Lesk,e.d.Oxford University Press,New York,1988,Biocomputing:Informatics and Genomics Projectsに記載されたものを含む。一般的に、そのような算出のために、コンピュータープログラムが採用される。これに関して用いられ得るコンピュータープログラムには、GCG(Devereux J,Haeberli P,Smithies O.1984.A comprehensive set of sequence analysis programs for the VAX.Nucleic acids research 12:387-395)、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul SF,Gish W,Miller W,Myers EW,Lipman DJ.1990.Basic local alignment search tool.Journal of Molecular Biology 215:403-410)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0066】
「少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」によって、溶液中での2つの相補的な核酸分子間の選択的ハイブリダイゼーションを促進する条件が選択されることが意味される。ハイブリダイゼーションは、核酸配列分子のすべてまたは一部分に対して生じ得る。ハイブリダイズする部分は、典型的に長さが少なくとも15(例えば、20、25、30、40、または50)ヌクレオチドである。当業者であれば、核酸二重鎖、つまり混成物の安定性は、ナトリウム含有バッファー中でのナトリウムイオン濃度及び温度の関数であるTmによって判定される(Tm=81.5℃-16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)-600/l)、または同様の方程式)ことを認識するであろう。したがって、混成物安定性を判定する洗浄条件におけるパラメーターは、ナトリウムイオン濃度及び温度である。公知の核酸分子と類似しているが同一ではない分子を同定するために、1%のミスマッチは、Tmの約1℃減少をもたらすと推測され得、例えば核酸分子が>95%の同一性を有することを求められる場合、最終洗浄温度は約5℃低下するであろう。これらの検討事項に基づき、当業者であれば、適当なハイブリダイゼーション条件を容易に選択し得るであろう。好ましい実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。例として、以下の条件を採用して、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成し得る:Tm(上記の方程式に基づく)-5℃で、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハルト溶液/1.0%SDSにおけるハイブリダイゼーション、それに続く60℃で0.2×SSC/0.1%SDSの洗浄。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、42℃で3×SSCにおける洗浄ステップが含まれる。しかしながら、代替的なバッファー、塩、及び温度を用いて、同等のストリンジェンシーが達成され得ることが理解される。ハイブリダイゼーション条件に関する付加的なガイダンスは、Green and Sambrook,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012(32)に見出され得る。
【0067】
ポリヌクレオチドの文脈で本明細書において用いられる「キメラ」という用語は、天然には連結していない少なくとも2種の連結したポリヌクレオチドを指す。キメラ核酸ポリヌクレオチドには、異なる天然起源の連結したポリヌクレオチドが含まれる。例えば、ナイセリア(Neisseria)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに連結した、大腸菌(E.coli)細菌プロモーターを構成するポリヌクレオチドは、キメラと見なされる。加えて、キメラポリヌクレオチドは、同じ天然起源を有し得るが、天然には連結していない。さらには、天然に存在しないポリヌクレオチドベクターはキメラである。例えば、特定の細胞タイプから獲得されるプロモーターを構成するポリヌクレオチドは、その同じ細胞タイプから獲得されるポリペプチドをコードするが、当該プロモーターを構成するポリヌクレオチドに通常では連結していないポリヌクレオチドに連結され得る。キメラポリヌクレオチドには、任意の天然に存在しないポリヌクレオチドに連結した任意の天然に存在するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドも含まれる。
【0068】
本明細書において用いられる「サイトゾル」という用語は、細胞、例えば細菌細胞の内部、一般的には水性部分を指し、サイトゾル内に存在し得るすべての細胞成分を含むが、細胞の細胞外表面を特異的に排除する。
【0069】
本明細書において用いられる「細胞外表面」という用語は、細胞のサイトゾル部分をその外因的環境から分離する、細胞の細胞表面構造を指すことを意図される。細胞表面構造は、タンパク質を有する1つもしくは複数のリン脂質膜及び/またはその中に埋め込まれたリポ多糖を含み得る。
【0070】
本明細書において用いられる「宿主生物」という用語は、限定することなく、ウシ、ブタ、ウマ、ネズミ、イヌ、ネコ、サカナ、ヒツジ、ヤギ、サル、及びトリ動物を含めた、ヒト及び非ヒト脊椎動物を指す。
【0071】
本明細書において互換可能に用いられる「免疫原」及び「免疫原性組成物」という用語は、それらの最も広い意味において用いられて、宿主生物において免疫応答を刺激して、細胞性免疫原特異的免疫応答または液性抗体応答を生み出すであろう1種または複数種のエピトープを含有する分子を指す。免疫原には、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び免疫原性タンパク質フラグメントが含まれる。
【0072】
本明細書において互換可能に用いられる「ワクチン」及び「ワクチン組成物」という用語は、免疫原を含有する任意の薬学的組成物を指し、その組成物を用いて、宿主生物における疾患または病状を予防し得るまたは治療し得る。ゆえに、当該用語は、サブユニットワクチン、すなわち免疫原が天然に結び付いている生物全体から分離し及び離散している免疫原を含有するワクチン組成物を包含し、ならびに生ワクチンをさらに含む。
【0073】
留意すべきは、本明細書において用いられる「実質的に」、「本質的に」、「約」、及び「およそ」などの程度の用語は、最終結果が有意に変化しないような、修飾された用語の妥当な量の偏差を意味することである。これらの程度の用語は、この偏差がそれが修飾する用語の意味を否定しない場合、修飾された用語の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0074】
本明細書において使用するとき、「及び/または」という文言は、包含的またはを表すことを意図される。つまり、「X及び/またはY」とは、例えば、XもしくはY、またはその両方を意味することを意図される。さらなる例として、「X、Y、及び/またはZ」とは、XもしくはYもしくはZ、またはそれらの任意の組み合わせを意味することを意図される。
【0075】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、内容に別様にはっきりと述べられていない限り、複数形の指示対象を含む。ゆえに、例えば、「免疫原(an immunogen)」への言及は、2以上のそのような作用物質の混合物を含み、「ポリペプチド(a polypeptide)」への言及は、2以上のポリペプチドの混合物への言及を含み、「細胞(a cell)」への言及は、2以上のそのような細胞を含む、等。
【0076】
全般的な実施態様
上述のように、本開示は、グラム陰性細菌種から得ることができるまたは獲得されるポリペプチド及びポリヌクレオチド、とりわけSurface lipoprotein assembly modulatorまたはSLAMタンパク質として知られるタンパク質のクラスに属するポリペプチドに関する。
【0077】
本開示のSLAMタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞におけるSLAMタンパク質の発現及び産生に用いられ得る。宿主細胞におけるSLAMタンパク質のそのような発現は、驚くべきことに、宿主細胞のサイトゾル部分から宿主細胞の細胞外表面への、宿主細胞に存在している本明細書において標的タンパク質と称される別のタンパク質のトランスロケーションをもたらし得る。
【0078】
さらには、SLAMタンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて、病原性細菌種、例えばナイセリア属(Neisseria)に属する細菌種による感染症の予防に有用なワクチン製剤を調製し得る。
【0079】
さらには、SLAMタンパク質をコードするポリヌクレオチド及びSLAMタンパク質をアッセイにおいて用いて、病原性細菌種に感染した患者の治療において有用な化学的化合物を同定し得る。
【0080】
したがって、一態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、標的タンパク質を含む宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらす方法を提供し、当該方法は、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチドを産生させ、それによって宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む。
【0081】
本明細書に従ったSLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、特に任意のグラム陰性細菌種を含めた、プロテオバクテリア門に属する任意の細菌種を含めた、ならびにアルファプロテオバクテリア綱(alpha-proteobacteria)、ベータプロテオバクテリア綱(beta-proteobacteria)、ガンマプロテオバクテリア綱(gamma-proteobacteria)、及びデルタプロテオバクテリア綱(delta-proteobacteria)に属する任意の細菌種をさらに含めた、SLAMタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む任意の細菌の種または株から獲得され得る。
【0082】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、アルファプロテオバクテリア綱(alpha-proteobacteria)におけるファミリー、例えばスフィンゴモナス科(Sphingomonadaceae)、リゾビウム目(Rhizobiales)、及びロドバクター科(Rhodobacteraceae)のファミリーに属する細菌種から獲得され得る。これらのファミリーのそれぞれの中の例示的な細菌の属及び種は、図8及び図9に提供される種のすべてである。
【0083】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ベータプロテオバクテリア綱(beta-proteobacteria)におけるファミリー、例えばナイセリア科(Neisseriaceae)、バークホルデリア目(Burholderiales)、及びロドシクルス科(Rhodocyclaceae)のファミリーに属する細菌種から獲得され得る。これらのファミリーのそれぞれの中の例示的な細菌の属及び種は、図8及び図9に提供される種のすべてである。
【0084】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ガンマプロテオバクテリア綱(gamma-proteobacteria)におけるファミリー、例えばパスツレラ科(Pasteurellaceae)、シュードモナス目(Pseudomonodales)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、ビブリオ科(Vibrionaceae)、キサントモナス科(Xanthomonadaceae)、カルジオバクテリウム科(Cardiobacteriaceae)、及びメチロファーガ属(methylophaga)のファミリーに属する細菌種から獲得され得る。これらのファミリーのそれぞれの中の例示的な細菌の属及び種は、図8及び図9に提供される種のすべてである。
【0085】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、デルタプロテオバクテリア綱(delta-proteobacteria)におけるファミリー、例えばデスルホビブリオ科(Desulfovibrionaceae)のファミリーに属する細菌種から獲得され得る。このファミリーの中の例示的な細菌の属及び種は、図8及び図9に提供される。
【0086】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、以下の種に属する細菌種から獲得され得る:髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、クレブシエラ・デニトリフィカンス(Klebsiella denitrificans)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)。
【0087】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1から始まりSEQ ID NO:693で終わり及びそれを含む、本明細書に記載されている配列番号が奇数のSEQ ID NOのいずれか1つを含むかまたはそれからなるポリヌクレオチドである。
【0088】
一部の実施形態において、SLAMポリペプチドは、SEQ ID NO:2から始まりSEQ ID NO:694で終わりかつそれを含む偶数の配列番号のうちのいずれかを含むかまたはそれからなるポリペプチドである。
【0089】
本開示の一部の態様に従って、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞におけるSLAMポリペプチドの発現を制御し得るポリヌクレオチドに連結される。宿主細胞は、動物細胞または植物細胞、または真菌細胞もしくは細菌細胞などの微生物細胞を含めた、任意の真核細胞を含む任意の細胞であり得る。
【0090】
一部の実施形態において、宿主細胞は細菌細胞である。
【0091】
一部の実施形態において、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。
【0092】
一部の実施形態において、宿主細胞は、ナイセリア属(Neisseria)、クレブシエラ属(Klebsiella)、モラクセラ属(Moraxella)、マンヘミア属(Mannheimia)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、またはビブリオ属(Vibrio)に属する細菌細胞より選択される細胞である。
【0093】
一部の実施形態において、宿主細胞は、以下の種に属する細菌細胞より選択される:髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、クレブシエラ・デニトリフィカンス(Klebsiella denitrificans)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)。
【0094】
好ましい実施形態において、宿主細胞は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae)を含めたナイセリア属(Neisseria)、または大腸菌(Escherichia coli)に属する細菌細胞より選択される。
【0095】
本開示の一態様に従って、宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチドは、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに連結される。ゆえに、一態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチドに連結された、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに提供する。
【0096】
本明細書において用いられ得る、宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチドには、宿主細胞におけるポリペプチドの発現を制御し得る任意の転写プロモーターが含まれる。一般的に、微生物細胞から獲得されたプロモーターは、本明細書に従って微生物宿主が選択される場合に用いられ、一方で真核生物プロモーターは、真核生物宿主が選択された場合に選択される、等。宿主細胞における発現を制御し得るさらなるポリヌクレオチド成分には、転写ターミネーター、エンハンサー等が含まれ、そのすべては、本開示のキメラポリヌクレオチドに含まれ得る。
【0097】
本開示に従って、本開示のキメラポリヌクレオチドは、好ましくは、宿主細胞におけるSLAMポリペプチドの良好な発現を確保する発現ベクター内に含まれる。したがって、本開示は、一実施形態において、機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む組換え発現ベクターを含み、当該発現ベクターは、宿主細胞における発現に適している。「宿主細胞における発現に適している」という用語は、組換え発現ベクターが、宿主細胞における発現を達成するために必要とされる遺伝子エレメントに連結された、本開示のキメラ核酸配列を含むことを意味する。これに関して発現ベクター内に含まれ得る遺伝子エレメントには、転写終結領域、マーカー遺伝子をコードする1種または複数種の核酸配列、1つまたは複数の複製の起点等が含まれる。遺伝子エレメントは、典型的に、当業者に公知であろうように、コード配列に対して転写の5’から3’方向に、例えばプロモーターに連結することによって機能的に連結される。好ましい実施形態において、発現ベクターは、宿主細胞のゲノム内へのベクターまたはその一部分の組み込みに必要とされる遺伝子エレメントをさらに含む。本開示に従って、発現ベクターは、マーカー遺伝子をさらに含有し得る。本開示に従って用いられ得るマーカー遺伝子には、すべての選択可能な及びスクリーニング可能なマーカー遺伝子を含めた、形質転換細胞と非形質転換細胞との区別を可能にするすべての遺伝子が含まれる。マーカー遺伝子は、例えばカナマイシンまたはアンピシリンに対する、抗生物質耐性マーカーなどの耐性マーカーであり得る。目視検査を通じて形質転換体を同定するために採用され得るスクリーニング可能なマーカーには、例えばβ-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ(GUS)(米国特許第5,268,463号及び第5,599,670号)、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)(Niedz RP,Sussman MR,Satterlee JS.1995.Green Fluorescent Protein-an in-Vivo Reporter of Plant Gene-Expression.Plant Cell Rep 14:403-406)、または他のタンパク質タグ、例えば図11及び図13に示されるポリ-ヒスチジンタグまたはFlagタグが含まれる。
【0098】
本開示の一態様に従って、SLAMをコードする天然に存在するポリヌクレオチドを改変し得る。ゆえに、例えばSLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をコドン最適化することによって、天然に存在するポリヌクレオチドを改変して、宿主細胞におけるSLAMポリペプチドの発現を増強し得る。したがって、本開示は、SEQ ID NO:1113に明示されるポリヌクレオチドを含めた、SLAMポリペプチドをコードするコドン最適化ポリヌクレオチドをさらに提供する。SLAMをコードするポリヌクレオチドを、シグナル配列を含むようにさらに改変して、発現を促し得る。シグナル配列をコードする例示的なポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1179に明示され、対応するポリペプチドシグナル配列はSEQ ID NO:1180に明示される。ゆえに、本開示は、SEQ ID NO:1181及びSEQ ID NO:1182に明示されるポリヌクレオチド及びポリペプチドを含めた、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結された微生物シグナル配列をコードするキメラポリヌクレオチド、ならびにそのようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドをさらに含む。
【0099】
特に好都合に用いられ得る1つの宿主細胞は、大腸菌(Escherichia coli)である。大腸菌(E.coli)用ベクターの調製は、制限消化、ライゲーション、ライゲーション非依存的クローニング、ゲル電気泳動、DNAシーケンシング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及び他の方法論など、一般に公知の技法を用いて成し遂げられ得る。本発明者らが開発したカスタムベクターを含めた、組換え発現ベクターを調製するために必要とされる必要なステップを実施するために、多種多様のクローニングベクターが使用可能である。大腸菌(E.coli)において機能的な複製システムを有するベクターの中には、pUCまたはpETシリーズのベクターなどのベクターがある。典型的に、これらのクローニングベクターは、形質転換細胞の選択を可能にするマーカーを含有する。ポリヌクレオチドは、例えば制限及びライゲーション酵素を用いて、これらのベクター内に導入され得、ベクターは、コンピテント細胞を調製すること、エレクトロポレーション、または当業者にとって他の周知の方法論を用いることによって、大腸菌(E.coli)内に導入され得る。大腸菌(E.coli)は、Luria-Broth培地などの適当な培地中で増殖し得、及び収穫され得る。細胞を収穫し及び溶解すると、組換え発現ベクターは細胞から容易に回収され得る。さらに、組換えベクターの調製及び組換え生物の増殖に関する一般的なガイダンスは、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001,Third Ed.に見出され得る。
【0100】
組換えSLAMポリペプチドの産生は、細菌株の増殖を通して生じ得る、または、相当なバイオマスを達成する増殖の期間の後、例えばlacZプロモーターなどの誘導性プロモーターを用いた、発現の誘導によって達成され得る。
【0101】
本明細書に従って、一部の実施形態において、SLAMポリペプチドは、その後、他の宿主細胞成分から回収され、単離され、及び分離される。ゆえに、本開示は、さらなる実施形態において、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチドを産生させること、ならびに
(c)宿主細胞からSLAMポリペプチドを回収すること
を含む、宿主細胞においてSLAMポリペプチドを発現させる方法を提供する。
【0102】
SLAMタンパク質の回収は、例えば金属キレートクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過等を含めた、多様な異なるタンパク質精製技法によってもたらされ得る。タンパク質精製に関するさらなる一般的なガイダンスは、例えば、Protein Purification:Principles,High Resolution Methods,and Applications Janson J-C.2013.Protein Purification:Principles,High Resolution Methods,and Application,vol.54.Wileyに見出され得る。本明細書において用いられる「回収される」という用語は、ポリペプチドが、程度の差はあるが純粋な形態で獲得されることを意味する。「実質的に純粋な」によって、免疫原性タンパク質が他の宿主細胞成分から分離されることが意味される。本明細書に従って、免疫原性タンパク質は、少なくとも95%純粋、及びより好ましくは少なくとも96%、97%、98%、または99%純粋である。
【0103】
別の態様において、本開示は、新規なSLAMポリペプチドに関する。したがって、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、SEQ ID NO:1184を含むもしくはそれからなるSLAMポリペプチド、またはそれと実質的に同一なポリペプチドを提供する。
【0104】
別の態様において、本開示は、SLAMポリペプチドをコードする新規なポリヌクレオチドに関する。したがって、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、SEQ ID NO:1183を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチドを提供する。
【0105】
宿主細胞に関して、SLAMポリペプチドは、その中に天然に存在するSLAMポリペプチドであり得、ゆえに一部の実施形態において、宿主細胞におけるSLAMポリペプチドの産生は、細胞内でのSLAMポリペプチドタンパク質濃度の変化をもたらし得、例えば、細胞内でのSLAMポリペプチドの濃度は、キメラポリペプチド配列の導入の結果として増加し得る。他の実施形態において、産生されたSLAMポリペプチドは、宿主細胞に天然には存在しない。
【0106】
標的タンパク質は、宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への輸送を必要とし得る、任意のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドであり得る。本明細書において用いられる「細胞外表面」という用語は、細胞のサイトゾル部分をその外因的環境から分離する、細胞の細胞表面構造を指すことを意図される。細胞表面構造は、タンパク質を有する1つもしくは複数のリン脂質膜及び/またはその中に埋め込まれたリポ多糖を含み得る。グラム陰性細菌において、細胞外表面構造は、水性ペリプラズム区画によって互いに分離された内側のリン脂質二重層膜及び外側のリン脂質二重層膜を含む。宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への輸送があると、標的タンパク質は、細胞の細胞外表面構造と協調し及び相互作用する。そのような相互作用は、細胞の外因的環境への標的タンパク質の少なくとも一部分の曝露につながり得る。
【0107】
少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、宿主生物において免疫応答を誘発し得る免疫原性タンパク質である。
【0108】
少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、病原性微生物の外表面に天然に呈示される免疫原性ポリペプチドまたはその免疫原性部分である。
【0109】
少なくとも一部の実施形態において、免疫原性タンパク質は、表面リポタンパク質(SLP)またはその一部分である。
【0110】
少なくとも一部の実施形態において、表面リポタンパク質(SLP)は、本明細書に記載されている、配列番号が偶数のSEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082のうちの1つ、SEQ ID NO:1094、SEQ ID NO:1100、及び配列番号が偶数のSEQ ID NO:1116~SEQ ID NO:1168、及びSEQ ID NO:1178より選択されるポリペプチド配列またはその一部分を含むかまたはそれからなる。
【0111】
少なくとも一部の実施形態において、表面リポタンパク質(SLP)は、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:695から始まりSEQ ID NO:1081で終わりかつそれを含む偶数の配列番号のうちの1つより選択されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列またはその一部分を含むかまたはそれからなる。
【0112】
少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に近接した細菌ゲノム上に位置する表面リポタンパク質である。
【0113】
少なくとも一部の実施形態において、免疫原性タンパク質は、一部の実施形態におけるSEQ ID NO:1148を含むTbpBポリペプチドを含めた、トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)、一部の実施形態におけるSEQ ID NO:932を含むHpuAポリペプチドを含めた、ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA)、一部の実施形態におけるSEQ ID NO:1116を含むfHbpポリペプチドを含めた、H因子結合タンパク質(fHbp)、及び一部の実施形態におけるSEQ ID NO:1138を含むLbpBポリペプチドを含めた、ラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)からなる群より選択される表面リポタンパク質またはその免疫原性部分である。
【0114】
少なくとも一部の実施形態において、トランスフェリン結合タンパク質B(TbpB)は、SEQ ID NO:1149を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0115】
少なくとも一部の実施形態において、ラクトフェリン結合タンパク質B(LbpB)は、SEQ ID NO:869を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0116】
少なくとも一部の実施形態において、H因子結合タンパク質(fHbp)は、SEQ ID NO:1115を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0117】
少なくとも一部の実施形態において、ヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質A(HpuA)は、SEQ ID NO:923を含むかまたはそれからなるポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0118】
少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、2種以上の表面リポタンパク質またはその一部分を含む融合タンパク質である。一部の実施形態において、標的タンパク質は、本明細書に記載されている、SEQ ID NO:696~SEQ ID NO:1082、及びSEQ ID NO:1178より選択されるリポタンパク質のうちの少なくとも2種から獲得される2種もしくはそれを上回る種類のポリペプチドまたはその一部分を含む融合タンパク質である。さらなる実施形態において、標的タンパク質は、トランスフェリン結合タンパク質(TbpB)、ラクトフェリン結合タンパク質(LbpB)、H因子結合タンパク質(fHbp)、及びヘモグロビン-ハプトグロビン結合タンパク質(HpuA)のうちの少なくとも2種から獲得される一部分を含む融合ポリペプチドである。一部の実施形態において、標的タンパク質は、N末端においてまたはC末端において、第二の表面リポタンパク質の免疫原性部分に融合した第一の表面リポタンパク質を含む融合ポリペプチドである。具体的な実施形態において、標的タンパク質は、SEQ ID NO:1102に明示される融合ポリペプチドである。本開示に従った、標的タンパク質としての融合ポリペプチドの使用の実施態様は、実施例9においてさらに例示される。
【0119】
概して、TbpBペプチドの一部分が用いられる本明細書の実施形態において、そのような一部分は、少なくとも(i)アンカーペプチドを含む、TbpBシグナルペプチドリポボックス(SEQ ID NO:1170)、及び/または(ii)TbpBポリペプチドのC末端ドメイン(SEQ ID NO:1098)を含む。
【0120】
相当数の標的タンパク質が本開示において提供されているものの、本開示の精神から逸脱することなく、新たな標的タンパク質が発見され得及び本開示に従って用いられ得る。ゆえに、本開示は、標的タンパク質に関して限定されることを意図されず、及び任意の標的タンパク質を用いて、本開示の新規な方法を行い得る。一実施形態において、新たな標的タンパク質を発見するために、SLAMポリペプチドをコードするゲノム領域にすぐ近接したゲノム領域を、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の存在に対してプローブし得、及び任意の同定されたポリペプチドを標的タンパク質として評価し得る。したがって、さらに別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、細胞のサイトゾルから細胞外表面へSLAMポリペプチドによって輸送され得る標的タンパク質を同定するための方法を提供し、当該方法は、
(a)(i)SLAMポリペプチドをコードする第一のヌクレオチド配列、及び
(ii)ポリペプチドをコードするのに十分に長く及び第一のヌクレオチド配列に天然に付着している第二のヌクレオチド配列
を含む、ゲノムヌクレオチド配列を提供すること、
(b)第二のヌクレオチド配列を評価して、第二のヌクレオチド配列内のポリペプチドコード配列を同定すること、ならびに
(c)ポリペプチドコード配列を用いて、SLAMポリペプチドを含む宿主細胞において当該ポリペプチドを発現させて、タンパク質が宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面へ輸送されるかどうかを判定し、それによって当該タンパク質が標的タンパク質であるかどうかを同定すること
を含む。
【0121】
前述に従って、SLAMポリペプチドをコードする任意のゲノムヌクレオチド配列が提供され得る。
【0122】
一部の実施形態において、例えばナイセリア属(Neisseria)、クレブシエラ属(Klebsiella)、モラクセラ属(Moraxella)、マンヘミア属(Mannheimia)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、及びビブリオ属(Vibrio)に属する細菌種のゲノムを含めた、任意の微生物ゲノム由来のゲノムヌクレオチド配列が提供される。ただし、第一及び第二のヌクレオチド配列は天然に付着しているという条件で、ならびにさらに、第二のヌクレオチド配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むのに十分に長いという条件で、ゲノムヌクレオチド配列は長さが変動し得、ゲノム全体またはその一部分もしくはフラグメントに相当し得る。
【0123】
一部の実施形態において、第一のヌクレオチド配列は、配列番号が奇数のSEQ ID NO:1~SEQ ID NO:695のうちのいずれか1つより選択される配列を含む。
【0124】
概して、第一のヌクレオチド配列にいずれかの側または両側で(すなわち、SLAMコード配列に対して5’または3’)付着し得る第二のヌクレオチド配列は、第一のヌクレオチド配列から少なくとも100ヌクレオチド伸びる。第二のヌクレオチド配列もより長くあり得、例えばそれは、長さが少なくとも250ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも1,000ヌクレオチド、少なくとも2,000ヌクレオチド、または少なくとも5,000ヌクレオチドであり得る。一部の実施形態において、ゲノムヌクレオチド配列は、コンピューター画面、タブレットもしくは携帯用デバイスの画面、または紙面でのヌクレオチド配列のプリントアウトなど、ヌクレオチド配列情報を視覚的に呈示し得る媒体上に存在する、ヌクレオチド配列の視覚的表示である。ゲノムヌクレオチド配列を獲得するために、ポリヌクレオチドは、微生物生物からその単離があり次第提供され得、ポリヌクレオチドの配列は、当技術分野に周知のヌクレオチドシーケンシングのための技法を用いて決定され得、次いで、獲得されたヌクレオチド配列は、評価のために視覚的に表示され得る。ヌクレオチド配列は、例えば、ExPASy(Gasteiger,E.;Gattiker,A;Hoogland,C;Ivanyi,I;Appel,RD;Bairoch,A(2003).“ExPASy:The proteomics server for in-depth protein knowledge and analysis”.Nucleic Acids Research.31(13):3784-8)など、核酸配列翻訳が可能なコンピューターソフトウェアを含めた、当技術分野に周知の技法及び方法を用いて、オープンリーディングフレーム及びコード領域ポリペプチドコード配列の存在について評価され得及び分析され得る。第二の核酸内のポリペプチドコード配列の同定があり次第、ポリペプチドコード配列を含む遺伝子構築物を調製し及び宿主細胞における発現に用いて、当該ポリペプチドが、宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面へ輸送されるかどうかを判定し得る。遺伝子構築物は、ポリペプチドコードヌクレオチド配列をその天然供給源の微生物生物から単離し、及び宿主細胞における発現に適した発現ベクター内にそれを導入することによって調製され得る。一部の実施形態において、ポリペプチドコードヌクレオチド配列は、ゲノムヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。今度は、発現ベクターが宿主細胞内に導入され得る。宿主細胞は、一部の実施形態ではその中に天然に存在し得る、または他の実施形態では宿主細胞内において組換えで発現され得るSLAMポリペプチドを含む細胞である。ポリペプチドコードヌクレオチド配列がゲノム配列を含むかまたはそれからなる実施形態において、ポリペプチドコードヌクレオチド配列及びSLAMポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、宿主細胞内に同時に導入され得る。一部の実施形態において、宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)細胞である。宿主細胞の増殖、及び宿主細胞における標的タンパク質の発現があり次第、ポリペプチドが宿主細胞の細胞外表面へ輸送されて細胞外表面と結合する場合には、当該ポリペプチドは標的タンパク質である。本開示の前述の実施形態は、下記で実施例8及び10においてさらに例示される。
【0125】
少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、宿主細胞に天然に存在する。したがって、本開示は、
(a)細胞に天然に存在する標的タンパク質を含む宿主細胞を選択すること、
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチドを産生させ及びサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む、宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への、宿主細胞に天然に存在する標的タンパク質の輸送をもたらす方法をさらに含む。
【0126】
少なくとも少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、Klebsiella denitrificans、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)からなる細菌の群より選択される病原性細菌種の細胞に天然に存在する。
【0127】
少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、非共有結合によりSLAMポリペプチドと相互作用及び配位結合する。SLAMポリペプチドと標的タンパク質の間の非共有結合的相互作用は、SLAMポリペプチド及び標的タンパク質を含むヘテロ二量体タンパク質複合体の形成につながり得る。当該相互作用は、例えばサイトゾルから細胞外表面への標的ポリペプチドの輸送を可能にするのには十分に長い期間の、一時的な相互作用、またはSLAMポリペプチドと標的タンパク質の間の非共有結合的相互作用が、細胞の細胞外膜への標的ポリペプチドの輸送があっても依然としてそのままである、より長期にわたる相互作用であり得る。
【0128】
少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、宿主細胞に天然には存在しない。したがって、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む第一のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む第二のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)宿主細胞に第一及び第二のキメラポリヌクレオチドを導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチド及び標的タンパク質を産生させること
を含む、宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらす方法をさらに提供する。
【0129】
少なくとも一部の実施形態において、標的タンパク質は、SLAMポリペプチドに共有結合により連結している。したがって、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び
(iii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチドを産生させ及びサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらすこと
を含む、宿主細胞のサイトゾルから細胞外表面への標的タンパク質の輸送をもたらす方法を提供する。
【0130】
少なくとも一部の実施形態において、キメラポリヌクレオチドは、SLAMポリペプチドのC末端への標的タンパク質のN末端の、好ましくはペプチド結合による、共有結合的連結をもたらす様式で構築される。
【0131】
少なくとも一部の実施形態において、キメラポリヌクレオチドは、標的タンパク質のC末端へのSLAMポリペプチドのN末端の、好ましくはペプチド結合による、共有結合的連結をもたらす様式で構築される。
【0132】
少なくとも一部の実施形態において、キメラポリヌクレオチドは、SLAMポリペプチドの一部分の除去、及び標的ポリペプチドによるその置き換えをもたらす様式で構築される。一部の実施形態において、キメラポリヌクレオチドは、SLAMポリペプチドのN末端の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基の除去、及び標的タンパク質によるそのような残基(複数可)の置き換えをもたらす様式で構築される。一部の実施形態において、キメラポリヌクレオチドは、SLAMポリペプチドのC末端の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基の除去、及び標的タンパク質による当該残基(複数可)の置換をもたらす様式で構築される。一部の実施形態において、キメラポリヌクレオチドは、SLAMポリペプチドのポリペプチド配列内への標的タンパク質の挿入をもたらす様式で構築される。一部の実施形態において、キメラポリヌクレオチドは、SLAMポリペプチド内への標的タンパク質の挿入、及び標的タンパク質によるSLAMポリペプチドの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基(複数可)の置換をもたらす様式で構築される。
【0133】
少なくとも一部の実施形態において、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、実質的に切り取られ得る。とりわけ、SLAMポリペプチドのN末端部分を除去して、12~14本の外膜貫通鎖からなるC末端ドメインβ-バレルドメインのみからなる、切り取られたSLAMポリペプチドを獲得し得る。本明細書に従って用いられて標的タンパク質の輸送をもたらし得る、切り取られたSLAMポリペプチドの例は、SEQ ID NO:1111及びSEQ ID NO:1112に明示される。
【0134】
本明細書の別の態様に従って、本開示は、特定の実施形態において、ワクチン製剤を調製する方法を提供する。したがって、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、
(a)免疫原を産生し得る宿主細胞を選択すること
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)宿主細胞にキメラ核酸配列を導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチド及び免疫原を産生させること、ならびに
(d)宿主細胞を弱毒化して、弱毒化した宿主細胞を調製すること、ならびに
(e)弱毒化した宿主細胞を含むワクチン製剤を調製すること
を含む、ワクチンを調製する方法をさらに提供する。
【0135】
一部の実施形態において、宿主細胞は微生物細胞である。
【0136】
一部の実施形態において、宿主細胞は病原性微生物細胞である。
【0137】
一部の実施形態において、宿主細胞は、感染性疾患を媒介する病原性微生物細胞である。
【0138】
少なくとも1つの実施形態において、宿主細胞は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、Klebsiella denitrificans、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、及びコレラ菌(Vibrio cholerae)からなる細胞群より選択される細胞である。免疫原は、宿主細胞に天然に存在し得る、またはそれは宿主細胞内において組換えで発現され得る。弱毒化を達成するために、細胞は、SLAMタンパク質及び免疫原の産生があり次第、それらがもはや感染が可能でないような様式で処理される。典型的に、これは、細菌細胞の加熱殺傷によって、または外膜小胞を創出することによって達成される。弱毒化技法は、当業者に一般的に公知であり、例えばVaccination with attenuated Neisseria meningitidis strains protects against challenge with live Meningococci.Li Y,Sun YH,Ison C,Levine MM,Tang CM.Infect Immun.2004 Jan;72(1):345-51.Li Y,Zhang Q,Winterbotham M,Mowe E,Gorringe A,Tang CM.Immunization with live Neisseria lactamica protects mice against meningococcal challenge and can elicit serum bactericidal antibodies.Infect Immun.2006;74(11):6348-55.Dalseg R,Wedege E,Holst J,Haugen I L,Hφiby E A,Haneberg B.Outer membrane vesicles from group B meningococci are strongly immunogenic when given intranasally to mice.Vaccine.1999;17:2336-2345に見出され得る。
【0139】
少なくとも一部の実施形態において、本開示は、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む第一のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、及び
(ii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含む第二のキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(c)宿主細胞に第一及び第二のキメラポリヌクレオチドを導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチド及び標的タンパク質を産生させること、ならびに
(d)(c)の細胞を含むワクチン製剤を調製すること
を含む、ワクチンを調製する方法を提供する。
【0140】
少なくとも一部の実施形態において、本開示は、
(a)機能的に連結された成分として、
(i)宿主細胞における発現を制御し得るポリヌクレオチド、
(ii)SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び
(iii)標的タンパク質をコードするポリヌクレオチド
を含むキメラポリヌクレオチドを提供すること、ならびに
(b)宿主細胞にキメラポリヌクレオチドを導入し及び宿主細胞を増殖させて、SLAMポリペプチド及び標的タンパク質を産生させること、ならびに
(c)(b)の細胞を含むワクチン製剤を調製すること
を含む、ワクチンを調製する方法を提供する。
【0141】
少なくとも一部の実施形態において、本開示は、
(a)SLAMポリペプチドをコードする核酸配列を含む病原性細菌株を提供すること、
(b)病原性株におけるSLAM産生を欠如させて、SLAMを欠如した病原性細菌株を獲得すること、及び
(c)SLAMを欠如した病原性株を用いて、ワクチンを製剤化すること
を含む、病原性細菌感染症に対するワクチンを調製する方法をさらに提供する。
【0142】
好ましい実施形態において、病原性細菌株は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、Klebsiella denitrificans、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、Haemophilus influenza、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、またはコレラ菌(Vibrio cholera)の株である。
【0143】
少なくとも一部の実施形態において、病原性細菌株は、ナイセリア属(Neisseria)に属する細菌株である。前述に従って、任意の細菌ナイセリア(Neisseria)株が用いられ得る。ナイセリア(Neisseria)株を欠如させるために、任意の方法論が用いられ得る。好ましくは、例えばトランスポゾン突然変異誘発による、SLAMポリペプチドをコードするゲノムポリヌクレオチド配列の弱毒化またはノックアウトをもたらす方法が用いられる。ゆえに、好ましい実施形態において、SLAMを欠如したナイセリア(Neisseria)株は、実質的な量のSLAMポリペプチドが産生されないような様式で、SLAMポリペプチドをコードするゲノムポリヌクレオチドが変異しているナイセリア(Neisseria)株であり、そのような変異には、SLAMポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの除去が含まれ得る。
【0144】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、欠如したゲノムSLAMポリヌクレオチド配列を含む病原性細菌株を提供する。「欠如したゲノムSLAMポリヌクレオチド配列を含む株」という用語を用いて、細菌株が実質的な量のSLAMポリペプチドを産生し得ないことが意味される。一部の実施形態において、病原性細菌株はナイセリア(Neisseria)株である。これには、オープンリーディングフレームが分断されているポリヌクレオチドを含む株が含まれ、SLAMタンパク質の発現を調節する株は機能的でなく、及び当該用語は、ゲノムSLAMコードポリヌクレオチド配列がそこから除去されている株を含むことをさらに意図される。ゆえに、本開示は、SLAMポリペプチドをコードするゲノムポリヌクレオチドを欠く変異体病原性細菌株をさらに含む。好ましい実施形態において、変異した病原性細菌株はナイセリア(Neisseria)株である。前述に従って、変異体株は、天然株と比較した場合に、SLAMポリペプチドをコードする少なくとも1種のゲノムポリヌクレオチドを欠くことが意図される。好ましい実施形態において、変異体ナイセリア(Neisseria)株は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)株または淋菌(Neisseria gonorrhoeae)株である。
【0145】
本開示の特定の態様に従って、ワクチン調製物が調製される。ワクチンを用いて、限定することなく、任意のウシ、ブタ、ウマ、ネズミ、イヌ、ネコ、サカナ、ヒツジ、ヤギ、サル、及びトリ動物を含めた、任意のヒト及び非ヒト動物を含む宿主生物に投与し得る。したがって、別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、本開示の方法のいずれかに従って調製されたワクチン調製物を提供する。
【0146】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの実施形態において、宿主生物を免疫化するための、本開示の方法のいずれかに従って作製されたワクチン調製物の使用を提供する。
【0147】
一部の実施形態において、ワクチン調製物を用いて、ナイセリア属(Neisseria)、クレブシエラ属(Klebsiella)、モラクセラ属(Moraxella)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、パスツレラ属(Pasteurella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)に属する細菌性生物によって媒介される感染性疾患に対して宿主生物を免疫化し得る。
【0148】
一部の実施形態において、ワクチン調製物を用いて、以下の種に属する細菌性生物によって媒介される感染性疾患に対して宿主生物を免疫化し得る:髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cincera)、クレブシエラ・デニトリフィカンス(Klebsiella denitrificans)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneomoniae)、ヘモフィルス・ソムニ(Haemophilus somni)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)。
【0149】
本開示の少なくとも一部の実施形態において、ワクチンは、ヒトに投与された場合、ナイセリア属(Neisseria)細菌、とりわけ髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)及び淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による感染症を予防する。本明細書に従って、ワクチン製剤は、本開示の方法を用いて調製された細胞を用いて調製され得る。一部の実施形態において、ワクチン製剤は、弱毒化細胞を用いて調製され得る。他の実施形態において、特定の画分、例えばタンパク質画分または膜がそこから獲得され得及びワクチンを調製するために用いられ得る供給源として、当該細胞が用いられ得る。本開示のワクチン調製物は、好ましくは、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質など、ビヒクル、賦形剤、及び補助物質をさらに含む。これらのビヒクル、賦形剤、及び補助物質は、一般的に、レシピエント対象において免疫応答を誘導しない及び過度の毒性なしで投与され得る、薬学的物質である。薬学的に許容される賦形剤には、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール、及びエタノールなどの液体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;及び酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩もその中に含まれ得る。必要とされないものの、調製物は、特に本開示のポリペプチドを安定させるための安定剤として働く薬学的に許容される賦形剤を含有することも好ましい。ペプチドに対する安定剤としても作用する適切なキャリアの例には、限定することなく、薬学的グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、イノシトール、デキストラン等が含まれる。他の適切なキャリアには、再度限定することなく、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウムまたはカルシウム、クエン酸、グリシン、ポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの組み合わせが含まれる。対象における免疫応答を増大させるために、本明細書において提供される組成物は、好ましくは、薬理学的作用物質、サイトカインなどのアジュバントをさらに含む。適切なアジュバントには、本開示の免疫原性ポリペプチドに対する対象の免疫応答を増強する任意の物質が含まれる。アジュバントの非限定的な例には、サイトカイン、例えばIL-1、IL-2、IL-12、IL-6が含まれ、Wilson-Welderら(Wilson-Welder JH,Torres MP,Kipper MJ,Mallapragada SK,Wannemuehler MJ,Narasimhan B.2009.Vaccine Adjuvants:Current Challenges and Future Approaches.J Pharm Sci-Us 98:1278-1316)に総説されるように、無機塩、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及びリン酸カルシウム;油エマルション、例えば鉱油、MF59、QS-21、Montamide ISA51及びISA-720;Isocom、例えばISCOMATRIX;微生物誘導体、例えばMPLA、マクロファージ活性化タンパク質-2、ビロソーム、LT/CT、CpG;天然ポリマー、例えば多糖類;ならびに合成ポリマー、例えばポリ無水物及びポリエステルがさらに含まれる。アジュバントは、弱毒化細胞の投与と同時に、その前に、またはその後に、例えばタンパク質または他の高分子として投与され得る。
【0150】
本開示は、病原性細菌種による感染症を有する患者の治療における使用のための化合物候補を同定するためのスクリーニング方法をなおさらに提供し、当該方法は、
(a)試験化合物を提供すること、
(b)機能アッセイにおいて、病原性細菌種におけるSLAMポリペプチドの天然機能に対する試験化合物の効果を、対照と比較すること、及び
(c)SLAMポリペプチドの天然機能に対して効果を呈する試験化合物を同定すること
を含む。
【0151】
好ましい実施形態において、病原性細菌種はナイセリア属(Neisseria)に属する。
【0152】
前述に従って、化学的化合物を、ナイセリア(Neisseria)感染症を有する患者を治療するその実用性について評価し得る。典型的に、これは、試験したい1種または複数種の化合物及び機能アッセイの性能を提供することによって達成される。アッセイは、好ましくはインビトロアッセイであり、複数種の化合物を同時に評価し得るように設定され得る。機能アッセイは、SLAMポリペプチドの天然機能に対する効果を検出し得る任意のアッセイであり得る。例えば、アッセイは、化学的化合物の存在下での細胞表面への標的タンパク質の輸送についての評価、とりわけ陰性対照(例えば、無害化合物)または陽性対照(すなわち、SLAMタンパク質の機能に対して効果を有することが公知の化合物)の存在下での輸送の比較を伴い得る。ゆえに、例えば、SLAMポリペプチドの天然機能に対して効果を呈する化学的化合物が選択されると、TbpB輸送がモニターされ得、選択された化合物のさらなる評価は、ヒトへの化学的化合物の投与を含めた、インビトロまたはインビボ試験における化合物の試験を含み得る。
【0153】
本開示の方法を実施するための具体的な実施形態の例、ならびに本開示の組成物に相当する実施形態が、以下に提供される。実施例は、例示目的のみのために提供されるものであり、決して本開示の範囲を限定することを意図されるものではない。
【実施例
【0154】
実施例1-SLAMポリペプチド(SLAM1)をコードするポリヌクレオチドの単離
EZ::TN<KAN2>トランスポゾンキット(Epicentre)を用いて、N.men-B16B6ゲノムDNAのインビトロ転位を実施した。およそ400ngの超音波処理したDNA(1~6kb)を、100μl反応中にて10μlのトランスポザーゼと混合し、37℃で2時間インキュベートした。EZTN5-Stop溶液を添加し、70℃で10分間インキュベートした。エタノール沈殿による濃縮の後、DNAをT4 DNAポリメラーゼ及びT4リガーゼで修復した(V.pelicic,S.Morelle,D.Lampe,X.Nassif,Journal of Bacteriology,182:5391(Oct 1,2000))。
【0155】
トランスポゾンをスポット形質転換によってB16B6に導入した(T.H.Dillard et al.Surg.Obes.Rel.Dis.9:269(Jan 1,2013))。簡潔には、反応混合物を、ブレインハートインフュージョン(BHI)プレートにスポットし、そこにN.men-B16B6コロニーを用いて、当該スポットを含むプレート全体にストリークした。プレートを5%COを有して37℃で8時間、またはコロニーが出現するまでインキュベートした。スポット上で増殖したmeningococciを、カナマイシン(80μg/mL)を含有するBHIプレートに播種し、一晩インキュベートした。トランスポゾン変異体をマイクロタイタープレートに収集し、20%グリセロールを有するBHI中にて-80℃で凍結する前に、液体BHI中で6時間増殖させた。
【0156】
トランスポゾン変異体を、表面TbpBの存在についてドットブロットによってスクリーニングした。ホールセルをPBS中2%ホルムアルデヒドで固定し、ニトロセルロース上にスポットし、5%スキムミルクでブロッキングし、及びウサギ抗TbpB抗体とともにインキュベートした。表面TbpBを示さない変異体を、RATE PCR(T.F.Ducey,Dyer D.,Epicentre Forum 9,(2002))またはスプリンケレットPCR(C.J.Potter,L.Luo,PLoS ONE 5,e10168(Jan 1,2010))によってシーケンシングした。RATE PCRに関しては、第一のラウンドではストリンジェントなアニーリング温度、第二では低いアニーリング温度、及び第三ではストリンジェントなアニーリング温度からなる3ステップPCR反応に対して、ゲノムDNAを単一プライマー(inv1またはinv2)と混合した。結果として生じた産物を、Kan FまたはKan Rプライマーを用いてシーケンシングした。スプリンケレットPCRに関しては、ゲノムDNAを制限酵素(BstY1、BglII、またはHindIII)によって別個に消化し、スプリンケレットオリゴヌクレオチドにライゲートし得る付着末端を産生する。結果として生じた産物を2回のネステッドPCRに用いて、TN5挿入とスプリンケレットの間のゲノム配列を増幅する。産物を、別のネステッドプライマーとのシーケンシングに用いる。前述の手法を用いて、SEQ ID NO:385に明示されるSLAM1をコードするポリヌクレオチドを獲得した。
【0157】
以下のプラスミド構築物に対して、制限フリークローニングを採用した(F van den Ent,J.Lowe,Journal of Biochemical and Biophysical Methods(Jan 1,2006))。簡潔には、NMB0313 ORFをカナマイシンカセットで置き換えるために、NMB0313ならびにNMB0313の500bp上流及び下流を含有する約2500bpのフラグメントを、F1(pUC19OmpU476RF)及びR1(pUC19-OmpURev)を用いてpUC19内にクローニングした。プライマーF2(F-RF-OmpUdKan)及びR2(R-RF-OmpUdKan)を用いて、EZ::TNトランスポゾンキットからのKAN2を増幅し、結果として生じたメガプライマーを用いて、第二のRF反応でNMB0313 ORFを置き換えた。結果として生じたプラスミドを、WT B16B6におけるスポット形質転換に用いた。ノックアウトを、カナマイシン(80μg/mL)を含有するBHIプレート上で選択し、NMB0313に隣接するプライマーを用いてPCRによって検証した。
【0158】
プライマーF3(F-RF-pGOmpU)及びR3(R-RF-pGOmpU)を用いて、NMB0313遺伝子をpGCC4(I.J.Mehr,C.D.Long,C.D.Serkin,H.S.Siefert,Genetics,154,523(Feb 1,2000))(H.Siefertからの贈与)のPacI/FseI部位にクローニングすることによって、補完ベクターpSLAMを構築した。HISタグを含有するリン酸化プライマーF4(F-OmpU-HIS phos)及びR4(R-OmpU-HIS phos)を用いてベクター全体を増幅し、産物をライゲートすることによって、単一ペプチドの後にHISタグを挿入した。スポット形質転換及びエリスロマイシン(30μg/mL)プレート上での選択によって、ノックアウト及びトランスポゾン変異体をpSLAMで補完した。NMB0313の挿入をPCRによって検証した。1mM IPTG BHIプレート上でコロニーを成長させることによって発現を誘導し、抗HISウェスタンによって検証した。
【0159】
実施例2-第一のSLAMポリペプチド(SLAM1)の精製
SLAMポリペプチドを図1に概説されるように精製した。NMB0313及びそのホモログを、pET26内にクローニングし、切断不能な7×Hisタグが後に続くN末端pelBシグナルペプチドを有して発現させた。プラスミドを大腸菌(E.coli) BL21-C43細胞に形質転換し、50μg/mLカナマイシンを有するLuria-Broth(LB)中で37℃にて0.8のOD600まで増殖させ、その時点で、1mMの最終濃度までのイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によりタンパク質発現を誘導した。細胞を37℃で付加的な18時間増殖させ、4000×gでの遠心分離によって収穫した。細胞を洗浄し、5gの細胞あたり100mLの溶解バッファー(50mMリン酸カリウム、pH7.5及び0.2mM PMSF)中に再懸濁した。細胞溶解を、リゾチーム及びDNaseの存在下における4回の30秒間パルスによる氷上での超音波処理によって行った。溶解されなかった細胞を、20分間の10,000×gでの遠心分離によって除去した。次いで、溶解物を95,834×gで1時間遠心分離して、膜画分を単離した。ペレットを洗浄し、溶解された5gの細胞あたり50mLの抽出バッファー(50mMリン酸カリウム、pH 7.5及び3%Elugent(Millipore))中に再懸濁した。抽出を4℃で一晩行った。95,834×gで40分間の遠心分離の後、可溶化されたタンパク質を0.45μmフィルターに通し、バッファーA(50mMリン酸カリウム、0.6%C(Affymetrix))で平衡化された1mL Ni-NTA樹脂カラム(GE)にロードした。バッファーAとバッファーB(50mMリン酸カリウム、0.6%C、400mMイミダゾール)とを混合することによって、イミダゾール勾配を作製した。カラムを20mM、60mM、及び80mMイミダゾールで洗浄し、所望のタンパク質を260mMイミダゾール中に溶出した。純度をSDS-PAGEによって検証し、さらなる精製を、20mM HEPES、pH8、150mM NaCl、0.6%C中で平衡化された24mL Superdex-200(GE)を用いたサイズ排除クロマトグラフィーによって達成した。5H3 NMB0313を含有する単一ピークをSephadex-200から収集し、50kDa濃縮器(Millipore)を用いて6mg/mLに濃縮した。結果は図2に示されている。
【0160】
実施例3-SLAM2を含めた、SLAMポリペプチドをコードする他のポリヌクレオチドの同定
SLAM1タンパク質配列(SEQ ID NO:385)を鋳型として用いて、Blastp検索を実行した。次いで、結果をフィルターにかけて、同じ生物の複数種の株からSLAMヒットを除去し、上位のヒットを保った。Geneious R7(Biomatters,http://www.geneious.com/)を用いて、多重配列アライメント及び系統樹(近隣結合)構築を行った。固有のブートストラップモジュールを用いて、樹を100回再サンプリングした。fHBP、TbpB、及びLbpBホモログを、SLAMヒットを含有するゲノムのそれぞれにおいて検索し、系統樹に加えた。系統樹は図3に示されている。図3を参照すると、SLAMホモログ(細菌ゲノムのBLAST検索によって同定された)は、3つの群にクラスター形成する。群1(ライトグレー、上)におけるSLAMホモログは、ナイセリア属(Neisseria)及びカタル球菌(Moraxella catarrhalis)に属し、一方で群2(ミディアムグレー、中間)は、ガンマプロテオバクテリア綱(gamma-proteobacteria)のパスツレラ科(Pasteurellaceae)のファミリーとは異なるメンバーを含有する。群3(ダークグレー、下)は、ナイセリア・シャエガニ(Neisseria shayeganii)のみを含有する。樹は明瞭性のために省略されており;単一種からの多重ヒットは含まれず、ブートストラップ値は除去された。それらのゲノムにおいてTbpB、LbpB、またはfHbpホモログを所有する種は、それぞれ丸、四角形、及び三角形によって示される。髄膜炎菌(Neisseria meningitides)の第二のSLAMポリペプチド、SLAM2のポリヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:387として本明細書に記載されている。
【0161】
実施例4-第二のSLAMポリペプチド(SLAM2)の精製
髄膜炎菌(Neisseria meningitides)の第二のSLAMポリペプチド(SLAM2;SEQ ID NO:387)を、実施例2においてさらに記載される方法論を用いて精製した。図4は、得られた結果を示している。
【0162】
実施例5-無傷の及び切り取られたSLAM1ポリペプチドを用いた、表面リポタンパク質トランスロケーション
髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)SLAMノックアウト株Δmnb0313を用いて、表面リポタンパク質(SLP)のトランスロケーションを評価した。全長SLAMポリペプチド、ならびにSLAMポリペプチドのN末端及びC末端部分を用いた。N末端及びC末端部分は図5Aに示されている。フローサイトメトリー(図5B)及びプロテイナーゼK消化(図5C)実験は、SLAMノックアウト株において観察されたSLPトランスロケーション欠陥は、C末端β-バレルドメイン(アミノ酸204~488)のみで救済され得ることを明らかにしている。SLAMのN末端ドメイン(Ntd)(アミノ酸32~203)は、いかなるSLPトランスロケーション活性をも提供しない。平均蛍光強度を各サンプルに対して測定し、野生型細胞から獲得されたシグナルを、ノックアウト及び単一ドメイン補完細胞由来のシグナルとの比較のために100%に設定した。エラーバーは、3回の実験からの平均の標準誤差(SEM)を表す。は、結果がp<0.05で有意に異なることを示す。
【0163】
実施例6-大腸菌(E.coli)における、SLAMならびに表面リポタンパク質のTbpB、LbpB、及びfHbpの共発現
TbpB及びNMB0313遺伝子を、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)血清型B株B16B6のゲノムから増幅した。LbpB遺伝子を、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)血清型B株MC58から増幅した。制限フリークローニング((F van den Ent,J.Lowe,Journal of Biochemical and Biophysical Methods(Jan 1,2006))を用いて、全長TbpBを、pETDuetのマルチクローニングサイト2に挿入した。NMB0313を、天然シグナルペプチドがpelBのものによって置き換えられたpET26内に挿入した。これらのベクターに対して、変異及び切り取りを、それぞれ部位指向性突然変異誘発及び制限フリークローニングを用いて実施した。ベクターのペアを大腸菌(E.coli) C43に形質転換し、カナマイシン(50μg/mL)及びアンピシリン(100μg/mL)を補充されたLB寒天プレートで一晩増殖させた。
【0164】
tbpB遺伝子を、カタル球菌(M.catarrhalis)株O35E及びインフルエンザ菌(H.influenzae)株86-028NPのゲノムから増幅し、上記のように制限フリークローニングによってpET52bプラスミド内にクローニングした。対応するSLAM(カタル球菌(M.catarrhalis) SLAM1、インフルエンザ菌(H.influenzae) SLAM1)を、また制限フリークローニングを用いてpET26b内に挿入した。6Hisタグを、上記のようにpelBと成熟SLAM配列の間に挿入した。ベクターを、上記のように大腸菌(E.coli) C43に形質転換した。
【0165】
細胞を4000gでの遠心分離によって収穫し、1mL PBSで2回洗浄して、いかなる残存する増殖培地をも除去した。次いで、細胞を、0.05~0.1mg/mLのビオチン化ヒトトランスフェリン(Sigma-aldrich T3915-5MG)、α-TbpB(カタル球菌(M.catarrhalis)及びインフルエンザ菌(H.influenzae)に対するウサギ血清由来1:200希釈;髄膜炎菌(N.meningitidis)に対するウサギ血清由来1:10000希釈)、またはα-LbpB(獲得されたウサギ血清由来1:10000希釈、J.Lemieuxからの贈与)、またはa-fHbp(マウス由来1:5000希釈、D.Granoffからの贈与)のいずれかとともに4℃で1.5時間インキュベートし、その後に1mLのPBSによる2回の洗浄が続いた。次いで、細胞を、25ug/mLのR-フィコエリスリン共役ストレプトアビジン(0.5mg/ml Cedarlane)またはR-フィコエリスリン共役抗ウサギIgG(ストック0.5mg/ml Rockland)とともに4℃で1.5時間インキュベートした。次いで、細胞を1mL PBSで洗浄し、200uLの固定液(PBS+2%ホルムアルデヒド)中に再懸濁し、及び20分間放置した。最後に、細胞を2×1mL PBSで洗浄し、5mLポリスチレン製FACSチューブに移した。各サンプルのPE蛍光を、Becton Dickinson FACSCaliburを用いてPE蛍光について測定した。結果をFLOWJOソフトウェアを用いて分析し、各サンプルに対する平均蛍光強度(MFI)として提示した。N.meningtidis実験に関しては、野生型蛍光シグナルを100%に正規化することによって、すべてのサンプルを野生型株と比較した。エラーバーは、3回の実験にわたる平均の標準誤差(SEM)を表す。結果をプロットし、GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて統計的に分析した。SLPのTbpB(図6A)、LbpB(図6B)、及びfHbp(図6C)に関して図6に示された結果は、SLAMが、大腸菌(E.coli)において3種すべてのSLPポリペプチドのトランスロケーションをもたらすことを実証している。図10に示された結果は、大腸菌(E.coli)におけるカタル球菌(M.catarrhalis)由来の(図10C)及びインフルエンザ菌(H.influenzae)における(図10D)TbpBのトランスロケーションが、必要とされるSLAMタンパク質の共発現を必要とすることを実証している(Slam is an outer membrane protein that is required for the surface display of lipidated virulence factors in Neisseria.Hooda Y,Lai CC,Judd A,Buckwalter CM,Shin HE,Gray-Owen SD,Moraes TF.Nat Microbiol.2016 Feb 29;1:16009)。
【0166】
実施例7-欠如したSLAM遺伝子を含むナイセリア(Neisseria)株の菌力の低下
Gorringe A.R.,Reddin,K.M.,Voet P.and Poolman J.T.(Methods Mol.Med.66,241(Jan 1,2001))及びJohswich,K.O.et al.(Infect.Immun.80,2346(Jul 1,2012))によって記載されるように、敗血症モデリングを実施した。6匹の8週齢C57BL/6マウス(Charles River Laboratories)の群に、髄膜炎菌(N.meningitidis)株B16B6、B16B6 Δtbpb、またはB16B6 Δnmb0313を腹腔内注射により接種した(N=2の独立した実験)。接種原を調製するために、感染用の細菌株を、GC寒天上で一晩増殖させ、再懸濁し、次いで10mlのブレインハートインフュージョン(BHI)培地中で振とうしながら37℃で4時間増殖させた。最終的な各500μl接種原が、1×10コロニー形成単位及び10mgヒト・ホロトランスフェリンを含有するように、培養物を調整した。マウスを、感染の48時間前から始まり感染の48時間後まで、少なくとも12時間ごとに、重量、臨床症状、及び菌血症の変化についてモニターした。マウスを、以下の臨床症状の重症度に基づいて0~2の尺度で採点した:身づくろい、姿勢、目及び鼻の外観、呼吸、脱水症、下痢、いわれのない挙動、ならびに誘発された挙動。評価項目基準に達した動物を、人道的に安楽死させた。動物実験は、トロント大学の動物倫理審査委員会に従って行われた。
【0167】
図7は、得られた結果を示している。図7Aは、パラホルムアルデヒド(PFA)で固定されまたはSDSで溶解され、ニトロセルロース上にスポットされ、及びα-TbpB抗体でプローブされた、N.men細胞からなる固相結合アッセイを示している。ΔSLAM/tn5は、トランスポゾン挿入により獲得されたSLAM欠損細胞の元の株を指す。ΔSLAMは、SLAM ORFをカナマイシン耐性カセットで置き換えることによって獲得された髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)におけるSLAMのノックアウトを記載する。図7Bは、Nm細胞がSLAM欠損(ΔSLAM)である場合のみの、TbpB、LbpB、及びfHbpの分解を示したプロテイナーゼK消化アッセイを示している。単独で及びSLAMとともに個々のSLPを発現するNm細胞をプロテイナーゼKとともにインキュベートし、ウェスタンブロットを用いて、プロテアーゼ消化の有無(-/+)での3種すべてのSLPレベルのレベルを検出した。フローサイトメトリーを用いて、ΔSLAM細胞が、細胞表面にTbpB(図7C)またはfHbp(図7D)を呈示し得ないことを確認した。TbpB及びfHbpに対する抗体を用いて、表面曝露されたSLPに結合させ、その後にフィコエリスリンに連結されたα-ウサギ抗体とのインキュベーションが続いて、蛍光を提供した。各サンプルの平均蛍光強度(MFI)を、BD FACS CaliburのFL2検出器を用いて測定した。野生型細胞から獲得されたシグナルを、ノックアウト細胞からのシグナルとの比較のために100%に設定した。エラーバーは、3回の実験からの平均の標準誤差(SEM)を表す。様々な株を用いた、マウス感染の結果が図7Eに示されている。マウスに、1×10CFUの野生型髄膜炎菌(N.meningitidis)株B16B6、TbpBのノックアウト(ΔtbpB)と合わせたB16B6、またはnmb0313 Δslamのノックアウトと合わせたB16B6を腹腔内注射により感染させ、感染前48時間から始まり感染後48時間まで、12時間ごとに生存及び疾患症状についてモニターし、ならびに感染後3時間の時点でさらにモニターした。生存の統計的な差を、Mantel-Coxログランク検定(GraphPad Prism 5)によって査定した(p<0.05、n.s.有意でない)。これらの結果は、nmb0313 Δslam株のノックアウトに感染したマウスにおける感染後死亡率の著しい低下を示している。
【0168】
実施例8-パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)における新規なSLAM依存的表面リポタンパク質の同定
SLAMホモログを同定する所与の細菌種に対するゲノムを選択する際、完全にシーケンシングされたゲノムを含有する参照ゲノムを優先した。SLAMホモログを、ナイセリア属(Neisseria)と近縁の種からより遠縁の種まで、反復Blast検索を用いて同定した。これらの種において同定されたSLAMホモログのそれぞれに対して、対応するゲノム記録(NCBIゲノム)を用いて、それらの対応する機能注釈に沿って上流及び下流にある遺伝子を同定した(NCBIタンパク質データベース、Ensembl bacteria)。小数例において、SLAM遺伝子の上流または下流に遺伝子は予測されず、というのもそれらはコンティグの開始または終点に近すぎるためであり、ゆえにこれらの配列は無視された。
【0169】
近隣遺伝子を、1)N末端リポボックスモチーフ(LipoP、SignalPを用いて予測される)、及び2)溶質結合タンパク質、Tbp様(InterProシグネチャー:IPRまたはIPR011250)、またはpagP-βバレル(InterProシグネチャー:IPR011250)の折り畳みについて分析した。それらが当該エレメントを含有する場合、本発明者らは、当該近接遺伝子を潜在的なSLAM依存的表面リポタンパク質として同定した。
【0170】
ナイセリア(Neisseria)SLAMを検索として用いて、推定SLAM(PM1515、SEQ ID NO:1087)をパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)において同定した。推定SLAM(PM1515、SEQ ID NO:1087)は、未知の機能を有する新たに予測されたリポタンパク質遺伝子(PM1514、SEQ ID NO:1083)に近接していた(図11A)。推定SLAMは、髄膜炎菌(N.meningitidis) SLAM1と32%の同一性を呈示したが、一方でSLPは、公知のSLAM依存的ナイセリア(neisseria)SLPとの配列類似性を示さなかった。
【0171】
推定SLAM(PM1515、SEQ ID NO:1087)及びその近接リポタンパク質(PM1514、SEQ ID NO:1083)を、前に記載されるように、それぞれpET26b及びpET52b内にクローニングし、大腸菌(E.coli) C43に形質転換し、ならびにカナマイシン(50ug/ml)及びアンピシリン(100ug/ml)を補充されたLB寒天上で一晩増殖させた。
【0172】
細胞を自動誘導培地中にて37Cで18時間増殖させ、次いで収穫し、1mM MgCl2を含有するPBS中で2回洗浄し、及びα-Flag(1:200、Sigma)で4Cにて1時間標識した。次いで、細胞を、1mM MgCl2を含有するPBSで2回洗浄し、次いで、R-PE共役α-マウスIgG(25ug/mL、Thermo Fisher Scientific)で4Cにて1時間標識した。染色後、細胞を2%ホルムアルデヒド中で20分間固定し、1mM MgCl2を含有するPBSでさらに洗浄した。Becton Dickinson FACSCaliburでフローサイトメトリーを実施し、FLOWJOソフトウェアを用いて結果を分析した。平均蛍光強度(MFI)を、少なくとも3回の反復を用いて算出し、それを用いて推定SLAM(PM1515)を含有するまたは欠くいずれかの株におけるリポタンパク質の表面曝露を比較した。それらは図11C及び図11Dに示されている。PM1514は大腸菌(E.coli)の表面で検出され得、i)SLAMを用いてSLPを同定し得ること、及びii)これらのSLPを細胞の表面へトランスロケーションさせるためにSLAMが必要とされることが例示され、ゆえに、「SLAM依存的表面リポタンパク質」と呼ばれるタンパク質のクラスが同定された。精製されたPmSLP(PM1514)に対して抗体を作り上げ、当該タンパク質は、PKシェービングアッセイによりパスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)の表面にあることが示された。
【0173】
実施例9-SLAM依存的表面リポタンパク質のトランスロケーションモチーフの同定、及びSLAM特異性における役割
用いられた最小ドメイン及びドメイン入れ替え構築物は、pETDUET HpuA(SEQ ID NO:1099)、TbpB Nローブ(SEQ ID NO:1095)、TbpB Cローブ(SEQ ID NO:1097)、及びTbpB Nローブ-HpuA(SEQ ID NO:1101)であった。成熟HpuAを増幅し、TbpBのシグナルペプチドとインフレームで挿入し、及びpETDUET TbpBにおけるTbpB遺伝子の残りを同時に置き換えて、制限フリークローニングを用いてpETDUET HpuAを創出した。アンカーペプチド(アミノ酸1~40)、TbpBのNローブ(アミノ酸41~331)、及びTbpBのCローブ(アミノ酸332~579)を、髄膜炎菌(N.meningitidis)株B16B6 TbpB構築物(PDB ID 4QQ1)に基づいて解析した。Nローブ構築物をインバースクローニングを用いてクローニングして、pETDUET TbpBを鋳型として用いてTbpBのN及びCローブの間に終止コドンを挿入した。TbpBのCローブ構築物を制限フリークローニングを用いてクローニングして、pETDUET TbpB Nローブに挿入し及びTbpB Nローブを同時に置き換えた。Cローブを、アンカーペプチドとインフレームで挿入した。制限フリークローニングによりHpuA(アミノ酸2~最後)をpETDUET TbpB NローブのNローブとインフレームで挿入することによって、融合構築物pETDUET TbpB Nローブ-HpuAをクローニングした。pETDUET TbpBを鋳型として用いたFastCloningにより、ポリ-Ala変異を創出した。SLAM1またはSLAM2のいずれかを含有するベクターを用いた。
【0174】
プラスミドを大腸菌(E.coli) C43(DE3)細胞に形質転換し、自動誘導培地中にて37Cで18時間増殖させた。細胞を収穫し、1mM MgCl2を含有するPBS中で2回洗浄し、及びα-TbpB抗体(1:200、ウサギ血清)またはビオチン化ヒトトランスフェリン(0.05mg/ml、Sigma)のいずれかで4Cにて1時間標識した。次いで、細胞を、1mM MgCl2を含有するPBSで2回洗浄し、次いで、R-FITC共役α-ウサギIgG(25ug/ml、Thermo Fisher Scientific)で4Cにて1時間標識した。染色後、細胞を2%ホルムアルデヒド中で20分間固定し、1mM MgCl2を含有するPBSでさらに洗浄した。Becton Dickinson FACSCaliburでフローサイトメトリーを実施し、FLOWJOソフトウェアを用いて結果を分析した。平均蛍光強度を、少なくとも3回の反復を用いて算出し、それを用いて、種々の株間で所定のSLPの表面曝露を比較した。TbpBのCローブは、大腸菌(E.coli)の表面へのSLAM1依存的なトランスロケーションに必要とされるように思われ(図12B)、一方でNローブは、重大な役割を果たさないように思われる。加えて、TbpB Nローブに融合したHpuAの使用は、SLAM1からSLAM2へSLAM依存性を推移させる(図12C~E)。
【0175】
上記の方法論を用いて、8本のβバレル鎖のうちの4本が、表面リポタンパク質の表面呈示において重要にプローブされた。髄膜炎菌(N.meningitidis) TbpBのβバレル鎖のうちの2本の変異、B30鎖(SEQ ID NO:1107)及びB31鎖(SEQ ID NO:1109)は、TbpBの表面発現に必要とされることが示された(図13C及び図13D)。
【0176】
髄膜炎菌(N.meningitidis)、淋菌(N.gonorrhoeae)、カタル球菌(M.catarrhalis)、インフルエンザ菌(H.influenzae)、及びアクチノバチルス・プルロニューモニア(A.pleuropneumoniae)由来のTbpBからのCローブの、髄膜炎菌(N.meningitidis)及びナイセリア・ラクタミカ(N.lactamica)由来のLbpBのCローブの、ならびに髄膜炎菌(N.meningitidis)、淋菌(N.gonorrhoeae)、及びクレブシエラ・デニトリフィカンス(K.denitrificans)由来のHpuAからの、8本鎖バレルドメインの最後の2本の鎖に対して、多重配列アライメントを実施した。図13Eに示されるように、B30鎖は、保存された[L/M]GGx[F/I/V]配列を有することが示され、B31鎖は、保存されたφx[A/T/V]FG[A/G]配列を有するように思われる。
【0177】
実施例10-アシネトバクター・バウマニ(Actinobacter baumannii)における新規なSLAM依存的表面リポタンパク質の同定
アシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)は日和見病原体であり、集中治療患者及び免疫欠陥があるまたは基礎疾患を有する者において疾患を引き起こす(Camp,C.&Tatum,O.L.Lab.Med.41,649-657(2010))。アシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)は、肺炎、敗血症、及び尿路感染症など、多様な臨床兆候を引き起こす。それは、戦闘地帯の病院で軟部組織感染症を引き起こすことで悪名を得ている。多剤耐性アシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)は、治療する医師に重大な課題を課し、ヒト健康に脅威を課す、というのもアシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)は、診療所で用いられる抗生物質の多くに対して耐性があるためである(Camp,C.&Tatum,O.L.Lab.Med.41,649-657(2010))。
【0178】
元のクエリー配列としてNmSLAMを用いた反復blast検索を用いて、アシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)における遺伝子クラスターにおいて、SLAM様タンパク質(AbSLAM)を同定した(図14A)(SEQ ID NO:1177及び1178)。この遺伝子クラスターは、鉄獲得に関与する遺伝子を検索する間にAntunesらによって初めに発見されたものの、SLAM遺伝子は、仮想タンパク質として間違った注釈を付された(Antunes,L.C.S.,Imperi,F.,Towner,K.J.&Visca,P.Res.Microbiol.162,279-284(2011))。SLAM遺伝子に近接して、未知の機能のリポタンパク質をコードする遺伝子(AbSLP)がある。この予測は、当該タンパク質のN末端におけるリポボックスモチーフ(LVAC)の存在によって支持される。
【0179】
本発明者らは、AbSLPが、大腸菌(E.coli)において外因的に発現し得、AbSLAMと共発現させた場合にのみ細胞表面に局在することを、フローサイトメトリーを用いて実証した(図14B)。さらには、AbSLPの構造を、X線結晶学によって解明した(図14C)。AbSLPは、8本の逆平行β鎖からなるN末端のβ-ハンドル、及びC末端の8本鎖β-バレルから構成される。当該構造は、AbSLPが、公知のSLAM依存的SLP(TbpB、LbpB、HpuA)の構造と高い構造類似性を有するヘム結合タンパク質であることを示している(図1B~C及び図2)。AbSLPをそのSLAMとともに発現させることは、大腸菌(E.coli)におけるAbSLPの表面呈示につながる(図14B)。AbSLPに対する抗体が作り上げられ、プロテイナーゼKシェービングによって、AbSLPがアシネトバクター・バウマニ(A.baumannii)(LAC4)の表面に位置することを例示している(図14D)。
【0180】
近接SLAM遺伝子の存在による新規なSLPであるAbSLPの発見は、SLAM遺伝子に近接して位置する潜在的ワクチン抗原SLPを同定するSLAMの実用性を例示している。
【0181】
本開示は、好ましい例であると現時点で見なされるものを参照して記載されているが、本開示は、開示される例に限定されるわけではないことが理解されるべきである。それとは反対に、本開示は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲の内に含まれる様々な改変及び同等の編成を網羅することを意図される。
【0182】
すべての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照によりその全体として組み入れられることを具体的に及び個々に示されているかと同程度に、参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる。
図1
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図5
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図13-1】
図13-2】
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【配列表】
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