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  • 特許-神経幹細胞を用いた血管形成誘導方法 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】神経幹細胞を用いた血管形成誘導方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/30 20150101AFI20220819BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220819BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20220819BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220819BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALN20220819BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20220819BHJP
【FI】
A61K35/30
A61P9/00
A61K35/44
A61P43/00 121
C12N5/0797
C12N5/071
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020549575
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 KR2019001287
(87)【国際公開番号】W WO2019177269
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0031099
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0011224
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519229677
【氏名又は名称】メディンノ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDINNO INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュ、ギョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ヒョン
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-527480(JP,A)
【文献】BioMed Research International,2014年,Volume 2014,Article ID 468748, pp.1-17
【文献】Biotechnol. Bioeng.,2017年,114(5),pp.1096-1106
【文献】JOURNAL OF MATERIALS CHEMISTRY. B. ,2016年,4(20),pp.3509-3514
【文献】Mol. Cell. Biochem.,2011年,347,pp.145-155
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2006年,344,pp.1086-1093
【文献】生化学 ,2007年,抄録CD,Page.4P-0573
【文献】Neuroscience,2015年,289,pp.123-133
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 5/00-5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)神経幹細胞に塩化コバルト(II)(Cobalt(II)chloride、CoCl)を100~500μMの濃度で処理して培養する段階と、
(b)前記培養された神経幹細胞及び血管内皮細胞を非-ヒトの対象体に注入する段階と、
を含み、
ここで、前記培養された神経幹細胞は、単球走化性タンパク質-1(monocyte chemoattractant protein-1;MCP-1)または成長関連がん遺伝子(growth related oncogene;Gro)を分泌することを特徴とする、
血管形成を誘導する方法。
【請求項2】
前記神経幹細胞は、ヒト脳組織から由来したことを特徴とする、請求項1に記載の血管形成を誘導する方法。
【請求項3】
記培養する段階は、12~72時間の間行われることを特徴とする、請求項1に記載の血管形成を誘導する方法。
【請求項4】
神経幹細胞及び血管内皮細胞を有効成分として含有する、血管形成を誘導するための組成物であって、
ここで、前記神経幹細胞は、塩化コバルト(II)(Cobalt(II)chloride、CoCl)を100~500μMの濃度で処理して培養されものであり、
前記組成物は、単球走化性タンパク質-1(monocyte chemoattractant protein-1;MCP-1)または成長関連がん遺伝子(growth related oncogene;Gro)を含有することを特徴とする、
血管形成を誘導するための組成物。
【請求項5】
前記神経幹細胞は、ヒトの脳組織から由来したことを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
記培養は、12~72時間の間行われことを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経幹細胞を用いた血管形成誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞(stem cell)は、自己増殖が可能であり、様々な細胞に分化可能である。幹細胞の起源は、胚や胎児から由来することができ、成体の組織においても幹細胞が存在し、外部的損傷時に組織を再生することが知られている。成体幹細胞としては、中間葉幹細胞がよく知られており、世界的に臨床研究で最も進んでいる。
【0003】
神経幹細胞(neural stem cell)は、自己増殖が可能であり、神経細胞(neuron)、星状膠細胞(astrocyte)、希突起膠細胞(oligodendrocyte)に分化可能であるため、神経系疾患(neurological disorders)の治療において重要な意味を持つ幹細胞である。げっ歯類であるマウスで初めて明らかになり、脳の特定部位に存在することが知られてきた。その後、ヒトの脳にも神経幹細胞が存在することが知られ、胎児の脳組織を使用して大量培養が可能な神経幹細胞が臨床試験に使用されてきた。近年、成人脳組織にも神経幹細胞が存在すると報告されており、球培養(sphere culture)方法ではなく、接着培養(adherent culture)方法を用いて大量培養が可能であることが知られている。
【0004】
血管形成(angiogenesis)は、新たな血管の成長であって、主に毛細血管内皮細胞による移動、増殖及び管形成に依存する過程である。血管形成は、傷の治癒においてがんを包括する生理学的及び病理学的状態で血管を形成しうる。血管形成の調節は、部位及び刺激依存的であり、それぞれの場合に調節分子の固有の組み合わせを伴うことができる。血管形成の間に内皮細胞は、自身の静止期状態から抜け出して急速に増殖する。
【0005】
一方、マトリゲルは、EHS(Engelbreth-Holm-Swarm)マウスの肉腫細胞から抽出されたタンパク質複合体であって(BD Bioscience社の製品名)、ラミニン(laminin)、コラーゲン(collagen)、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(heparan sulfate proteoglycan)のような細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)と繊維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor、FGF)、上皮細胞成長因子(epiderma growth factor、EFG)、インスリン様成長因子(insulin-like growth factor、IGF)、形質転換成長因子-ベータ(transforming growth factor-beta、TGF-β)、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor、PDGF)のような成長因子を含有する。マトリゲルをなしている複合体は、多くの組織で発見される複雑な細胞外環境を提供することにより、細胞培養のための基質として用いられている。
【0006】
マトリゲルは、虚血性動物モデル(ischemic animal model)から移植された心筋細胞(cardiomyocytes cell)と内皮細胞(endothelial cells)の生存を強化するために使用されたことがあり、胚性幹細胞は、自己再生能(selfrenewability)と多分化能(pluripotency)があるため、マウスとヒトの胚性幹細胞(embryoni stem cell、ESC)を体外培養するときにマトリゲルが使用されてきた。
【0007】
そこで、本発明者らは、近年、様々な機能を有しており、医薬品及び化粧料等の商業的利用価値が上昇している幹細胞の中でも、ヒト脳組織から由来した神経幹細胞がMCP-1及びGroを分泌して血管形成効果を有することをマトリゲルを用いた実験で確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、従来の神経幹細胞の機能として知られている神経細胞への分化以外の機能について研究した結果、ヒト脳組織から由来した神経幹細胞がMCP-1及びGroを分泌することにより、血管形成効果を有することを確認したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0009】
そこで、本発明の目的は、(a)神経幹細胞を低酸素(hypoxia)の条件で培養する段階と、
(b)前記培養された神経幹細胞を対象体に注入する段階と、
を含む、血管形成を誘導する方法を提供するものである。
【0010】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないもう一つの課題は、下記の記載から本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記ような目的を達成するため、本発明は、(a)神経幹細胞を低酸素(hypoxia)の条件で培養する段階と、
(b)前記培養された神経幹細胞を対象体に注入する段階と、
を含む、血管形成を誘導する方法を提供する。
【0012】
本発明の一具現例として、前記神経幹細胞は、ヒト脳組織から由来したものであってもよい。
【0013】
本発明の他の具現例として、前記(a)段階は、神経幹細胞に塩化コバルト(II)(Cobalt(II)chloride、CoCl)を処理する段階または神経幹細胞を低酸素チャンバー(hypoxia chamber)で培養する段階を含んでもよい。
【0014】
本発明のさらに他の具現例として、前記(b)段階は、血管内皮細胞を前記神経幹細胞とともに対象体に注入するものであってもよい。
【0015】
本発明のさらに他の具現例として、前記培養された神経幹細胞は、単球走化性タンパク質-1(monocyte chemoattractant protein-1;MCP-1)または成長関連がん遺伝子(growth related oncogene;Gro)を分泌しうる。
【0016】
本発明のさらに他の具現例として、前記神経幹細胞を低酸素チャンバー(hypoxia chamber)で培養する段階は、12~72時間の間行われてもよい。
【0017】
本発明のさらに他の具現例として、前記CoClは、濃度が100~500uMであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるヒト脳組織から由来した神経幹細胞は、単球走化性タンパク質-1(monocyte chemoattractant protein-1;MCP-1)または成長関連がん遺伝子(Growth related oncogene;Gro)を分泌することにより、血管を形成する効果を有し、本発明の神経幹細胞にCoClを注入する場合及び神経幹細胞をhypoxia chamberで培養する場合、hypoxia条件が誘導されてMCP-1及びGroの分泌量が増加することを確認したところ、本発明のヒト脳組織由来の神経幹細胞を用いて血管形成を誘導できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1a~1cは、本発明の一具現例によるマトリゲルプラグアッセイによる神経幹細胞の新生血管形成効果を確認したもので、図1aは、マトリゲルプラグアッセイ実験の概要を示す図であり、図1bは、神経幹細胞及び血管内皮細胞を混合して、移植後3日目に新生血管形成の有無を赤血球細胞の浸透による色分けにより示した図であり、図1cは、マトリゲルプラグをH&E染色で確認した結果を示した図である。
図2図2a及び2bは、本発明の一具現例によるサイトカインアレイ(図2a)及びELISA方法(図2b)を用いた神経幹細胞の血管形成有効性因子の定性及び定量分析結果を示した図である。
図3図3は、本発明の一具現例によるMCP-1及びGro抑制抗体による新生血管形成抑制効果を確認して示した図である。
図4図4は、本発明の一具現例による神経幹細胞において、CoCl処理によるHypoxia条件によって分泌される新生血管再生効果に関連したMCP-1及びGroの発現が増加する信号伝達体系を示した図である。
図5図5は、CoClを濃度別に処理してHypoxia条件を誘導した後、神経幹細胞から分泌されるMCP-1とGroαの発現を確認する実験計画を示した図である。
図6図6aは、CoClを濃度別に処理した後、MCP-1の濃度をELISA法で測定した結果を示した図である。図6bは、CoClを濃度別に処理した後、Groαの濃度をELISA法で測定した結果を示した図である。
図7図7は、神経幹細胞をHypoxia chamberで培養してHypoxia条件を誘導した後、神経幹細胞から分泌されるMCP-1とGroαの発現を確認する実験計画を示した図である。
図8図8は、神経幹細胞をHypoxia chamberで培養した後、時間ごとのMCP-1及びGroαの濃度をELISA法で測定した結果を示した図である。
【発明を行うための最良の形態】
【0020】
本発明は、(a)神経幹細胞を低酸素(hypoxia)の条件で培養する段階と、
(b)前記培養された神経幹細胞を対象体に注入する段階と、
を含む、血管形成を誘導する方法を提供する。
【0021】
本発明の前記神経幹細胞は、ヒト脳組織から由来したものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明において、前記対象体は、血管形成誘導を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非-ヒトである霊長類、マウス(mouse)、イヌ、ネコ、ウマ、及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0023】
本発明において、前記低酸素(hypoxia)の条件は、酸素分圧が1%~5%である細胞培養条件であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0024】
本発明において、前記(a)段階は、神経幹細胞に塩化コバルト(II)(Cobalt(II)chloride、CoCl)を処理する段階または神経幹細胞を低酸素チャンバー(hypoxia chamber)で培養する段階を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明において、前記(b)段階は、血管内皮細胞を前記神経幹細胞とともに対象体に注入するものであってもよい。
【0026】
本発明において、前記神経幹細胞を低酸素チャンバー(hypoxia chamber)で培養する場合、hypoxia条件が誘導されてMCP-1及びGroの分泌量が増加することができ、前記培養は、12~72時間の間行われてもよく、本発明の具体的な実施例によれば、48~72時間の間培養するときにMCP-1及びGroαの発現量が高いので、好ましいが、前記培養時間に制限されるものではない。
【0027】
また、前記培養された神経幹細胞は、単球走化性タンパク質-1(monocyte chemoattractant protein-1; MCP-1)または成長関連がん遺伝子(growth related oncogene;Gro)を分泌して血管を形成できるが、これに制限されるものではない。
【0028】
このとき、前記「単球走化性タンパク質-1(monocyte chemoattractant protein-1;MCP-1)」は、単球や血管内皮、神経膠腫細胞株などを生産する単球走化性因子であって、ケモカインのβ亜科に属するタンパク質である。MCP-1は、単核細胞に対して強力な走化性効果を有し、Tリンパ球、肥満細胞及び号塩基性白血球に対しても効果を示す。MCP-1は、様々な形態の細胞によって作られ、(白血球、血小板、繊維芽細胞、内皮細胞及び平滑筋細胞)、単核細胞及び大食細胞に対して最も高い特異性を示し、走化性因子だけでなく活性化刺激を構成し、その結果、多数の炎症性因子(超過酸化物、アラキドン酸及び誘導体、サイトカイン/ケモカイン)を作る過程を誘導し、食細胞の作用を増幅させる。
【0029】
また、前記「成長関連がん遺伝子(growth related oncogene;Gro)」は、MGSA(melanoma growth stimulatory activity)ともいい、GROα(MGSAα、CXCL1)とGROβ(MGSAβ、CXCL2)とGROγ(MGSAγ、CXCL3)の3種類が存在し、CXCケモカインに属する。最初の2つのシステイン残基がCXC構造であり、また、ELR(グルタミン酸-ロイシン-アルギニン)モチーフを備える。
【0030】
前記神経幹細胞にCoClを注入する場合、hypoxia条件が誘導されてMCP-1及びGroの分泌量が増加することができ、このとき、CoClは、濃度が100~500uMであってもよく、本発明の具体的な実施例によれば、前記神経幹細胞にCoClを500uMの濃度で処理し、24時間培養、または100uMの濃度で処理し、24時間培養して培地を交換した後、再び24時間培養する場合、MCP-1及びGroの分泌量が高いので、好ましいが、前記濃度に制限されるものではない。
【0031】
本発明の一実施例では、マトリゲルプラグアッセイ及びH&E染色を用いた組織学的分析により、神経幹細胞の血管形成誘導効果を確認した(実施例1~2参照)。
【0032】
本発明の他の実施例では、サイトカインアレイ及びELISAを用いて神経幹細胞から分泌されるMCP-1及びGroの量を確認した(実施例3参照)。
【0033】
本発明のさらに他の実施例では、MCP-1及びGroそれぞれの中和抗体(neutralization antibody)を用いて、MCP-1及びGroの血管形成効果を確認した(実施例4参照)。
【0034】
本発明のさらに他の実施例では、神経幹細胞でCoClの濃度別処理によるMCP-1及びGroαの発現量を確認した(実施例5参照)。
【0035】
本発明のさらに他の実施例では、神経幹細胞をhypoxia chamberで培養した後、MCP-1及びGroαの発現量を確認した(実施例6参照)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の理解を助けるために、好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記の実施例により、本発明の内容が限定されるものではない。
【0037】
実施例1.マトリゲルプラグアッセイ(Matrigel plug assay)
血管形成能力を検証するため、実験群をマトリゲル単独群、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)単独群、成人多能性神経細胞(adult human multipotent neural cell、ahMNC)単独群、胎児神経幹細胞(fetal neural stem cell、fNSC)とHUVEC混合群、及びahMNCとHUVEC混合群から構成して実験した。
【0038】
検証しようとする細胞(ahMNC及び陰性対照群であるfNSC)とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を1:1の割合で総2X10細胞になるようにして200uLのマトリゲルと混合した後、注射器で免疫不全マウスの皮下に移植した。移植後3日目に移植されたマトリゲルを分離して、血管形成の有無を赤血球細胞の浸透による色で分別した。その結果、図1bに示すように、ahMNCとHUVEC混合群において赤色であることが示された。
【0039】
したがって、前記結果から神経幹細胞と血管内皮細胞をともに移植したとき、血管が形成されることが分かった。
【0040】
実施例2.組織学的分析
前記実施例1のマトリゲルプラグを4%PFAで固定した後、ブロックを作製した。H&E染色のために5umの厚さで組織切片を作製した後、スライドに載せてジパラピン過程を経た後、H&E染色を行った。
【0041】
その結果、図1cに示すように、ahMNCとHUVEC混合群で血管が形成されることを確認した。
【0042】
したがって、前記結果から神経幹細胞と血管内皮細胞をともに移植したとき、血管が形成されることが分かった。
【0043】
実施例3.サイトカインアレイ(Cytokine array)及びELISAを用いたMCP-1及びGroの定量
神経幹細胞の新生血管形成効果を確認するため、神経幹細胞から分泌される成長因子やサイトカインを定性及び定量的に分析した。
【0044】
互いに異なる3つの神経幹細胞NS14-001TL、NS14-008TL、NS14-015TLを100mm dishに接種した後に3~4日培養し、培養皿に70%程度満たされるようにconfluencyで満たして培養した後、phosphate buffered saline(PBS)で2回洗浄後、培養液をDMEM/F12に変えて24時間培養した。その後に上澄み液(条件培地(conditioned medium))を回収した。サイトカインアレイは、Human cytokine array(RayBio Human Cytokine Antibody Array C Series1000、Raybiotech、Norcross、GA)を使用して行った。
【0045】
その結果、図2aに示すように、MCP-1、Gro、IL-8などの様々な成長因子またはサイトカインが分泌されることが確認できた。
【0046】
また、サイトカインアレイで発掘されたMCP-1とGroの定量のため、前記サイトカインアレイで互いに異なる3つの神経幹細胞NS14-001TL、NS14-008TL、NS14-015TLを培養して回収した条件培地を用いて、Quantikine ELISA kits(R&DSystems)でELISA分析を行った。
【0047】
その結果、図2bに示すように、対照群であるfhNSCに比べて、前記三つの神経幹細胞は、全てMCP-1及びGroαの発現が増加した。
【0048】
実施例4.MCP-1及びGroの血管形成効果確認
MCP-1とGroの血管形成効果を確認するため、それぞれに対する中和抗体(neutralization antibody)をマトリゲルと混合して移植して血管形成抑制を確認した。
【0049】
その結果、図3に示すように、MCP-1及びGroの機能を妨げる抗体をマトリゲルプラクにともに移植する場合、血管形成が殆ど行われなかった。したがって、MCP-1とGroの機能を妨げる抗体をともに混合する場合、シナジーの血管形成抑制効果が現れることを確認した。
【0050】
実施例5.神経幹細胞におけるCoCl 処理によるMCP-1及びGroの発現量確認
図4に示すように、Hypoxia条件を反映するため、CoClを100、200、300、400、500uMで濃度別に処理し、細胞内のHIF-1alphaの安定化により転写因子として機能させて信号伝達下位段階にあるMCP-1及びGroの発現が増加するようにした。
【0051】
5-1.神経幹細胞へのCoCl処理
ヒトの成体神経幹細胞を100mm培養皿に培養した後、2~3日後に70~80%程度のconfluencyに到達させた。以後、Hypoxia条件を反映するため、CoClを100、200、300、400、500uMで濃度別に処理した後、24時間後に条件培地(conditioned medium)を回収し、DMEM/F12のみに交換した後、再び24時間後に条件培地を回収して分析を行った。前記過程は、図5に図式化して示した。
【0052】
5-2.ELISAを用いたMCP-1とGroαの定量
前記実施例5-1で回収した上澄み液においてMCP-1及びGroαの定量のためにQuantikine ELISA kits(R&D Systems)を使用してELISA分析を行った。
【0053】
その結果、図6aに示すように、CoCl処理してから24時間後のMCP-1の量は、処理したCoClの濃度に比例して増加したが、その後、DMEM/F12に培地を変えた後、再び24時間が経過した後には、100uMのCoClを処理したときにMcp-1の発現量が最も高く、CoClの濃度が300uM以上のときは、100、200uMで処理したときよりもMCP-1の量が減少することが確認できた。
【0054】
また、図6bに示すように、CoCl処理してから24時間後のGroαの量は、処理したCoClの濃度が300uM以上のとき、濃度に比例して増加して500uMのときに最も高かったが、その後、DMEM/F12に培地を変えた後、再び24時間が経過した後には、Groαの量が100uMのCoCl濃度で最も高く、CoClの濃度が200uM以上のときには、100uMで処理したときよりもGroαの量が減少することが確認できた。
【0055】
実施例6.hypoxia chamberに培養した神経幹細胞においてMCP-1及びGroαの発現量確認
6-1.hypoxia chamberにおける神経幹細胞培養
神経幹細胞のhypoxia条件を誘導するため、hypoxia chamberに12、24、48、72時間の間神経幹細胞を培養した後に条件培地を回収し、分泌されるMCP-1及びGroαの量を測定した。
【0056】
具体的には、ヒトの成体神経幹細胞を100mmの培養皿で培養した後、2~3日後に70~80%confluencyに到達させた。以後、新しい培養液に交換した後、hypoxia chamberで12、24、48、72時間の間培養した後、条件培地を回収してELISA分析方法を行った。前記過程は、図7に図式化して示した。
【0057】
6-2.ELISAを用いたMCP-1とGroαの定量
前記実施例6-1で回収した上澄み液においてMCP-1及びGroαの定量のためにQuantikine ELISA kits(R&D Systems)を使用してELISA分析を行った。
【0058】
その結果、図8に示すように、培養時間が経つにつれてMCP-1の発現量は増加したが、Groαの発現量は、対照群に比べて増加し、ほぼ一定に維持されることを確認した。
【0059】
前述の本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解できるであろう。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の神経幹細胞にCoClを注入する場合、及び神経幹細胞をhypoxia chamberで培養する場合、hypoxia条件が誘導されてMCP-1及びGroの分泌量が増加することを確認したところ、本発明によるヒト脳組織由来神経幹細胞をhypoxia条件下で培養して血管形成を誘導するのに利用でき、前記神経幹細胞から分泌されるタンパク質または酵素は、条件培地精製、エクソソーム開発などのような新生血管形成に関連した開発に利用できる。また、本発明の神経幹細胞は、退行性神経系疾患において血管形成が回復機序として知られている脳卒中、脊髄損傷、アルツハイマー病などの疾患に対して神経幹細胞治療剤として利用できるだけでなく、退行性神経系疾患以外にも血管形成が回復機序として知られている様々な疾患に対する神経幹細胞治療剤及び副産物を活用した治療剤の開発などに利用できることが期待される。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8