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特許7126288フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム及び構造物構築方法
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  • 特許-フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム及び構造物構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム及び構造物構築方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/30 20060101AFI20220819BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220819BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220819BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20220819BHJP
   E04B 1/35 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y10/00
B33Y30/00
E04G21/02 ESW
E04B1/35 L
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021202507
(22)【出願日】2021-12-14
【審査請求日】2022-03-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年6月10日に、會澤高圧コンクリート株式会社のウェブサイトに掲載されている会社パンフレットにおいて、本発明のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム及び構造物構築方法のコンセプト情報を公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598037569
【氏名又は名称】會澤高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】會澤 大志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
(72)【発明者】
【氏名】東 大智
(72)【発明者】
【氏名】青木 涼
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0127801(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0224956(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0050509(KR,A)
【文献】特開昭57-165209(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1981115(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0016100(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0095610(KR,A)
【文献】特開2020-172838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0129434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B33Y 10/00-99/00
E04B 1/35
B28B 1/00-23/22
B29C 64/00-64/40
E04G 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形用に調製された水硬性硬化体を押し出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置と、
前記建設用3Dプリンタ装置を把持して建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路に沿って飛行させるドローンと、
前記ドローンが発着可能なポートを備え、前記調製された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給するように構成された移動式の補給ステーションと、
前記ドローンの飛行状態及び前記補給ステーションで前記調製された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給する工程の進行状態を監視して、前記ドローン及び前記補給ステーションを制御する中央制御装置と、含み、
前記中央制御装置は、
前記ドローンの飛行状態に基づいて、前記調製された水硬性硬化体の層が前記構造物の設計情報に従って連続的に積層されるように、前記ドローン及び前記補給ステーションを制御することを特徴とするフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム。
【請求項2】
前記構造物構築システムは、前記ドローンを複数機備え、
前記中央制御装置は、前記調製された水硬性硬化体の補給が完了した前記建設用3Dプリンタ装置を把持した前記ドローンを順に飛行させて、前記構造物の設計情報に従って前記調製された水硬性硬化体の層が複数機の前記ドローンによって順に連続的に積層されるように、前記複数機のドローン及び前記補給ステーションを制御することを特徴とする請求項1に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム。
【請求項3】
前記中央制御装置は、
飛行中の前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量に基づいて、前記ドローンを前記補給ステーションに帰還させる時機を決定し、帰還した前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が予め設定された時間内に完了するように前記補給ステーションを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム。
【請求項4】
前記予め設定された時間は、前記補給ステーションで前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間に、前記ドローンが前記構造物から前記補給ステーションに帰還するまでの時間と前記ドローンが前記補給ステーションを離陸して前記構造物に到達するまでの時間とを加算した時間が、前記飛行中のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値以下になるまでに要する時間よりも短くなるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム。
【請求項5】
前記建設用3Dプリンタ装置は、
記調製された水硬性硬化体を収容する円錐形状のホッパーと、
記調製された水硬性硬化体を押し出しながら積層させるスクリュー装置と、
前記スクリュー装置を駆動するモーターと、
前記ホッパーに結合されて前記スクリュー装置及び前記モーターを格納するカバーケースと、
前記ホッパーに収容された前記調製された水硬性硬化体の残量を計測するセンサ装置と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム。
【請求項6】
前記ドローンは、
前記建設用3Dプリンタ装置を着脱可能に把持するための連結装置と、
開閉式のアームからなるランディングギアと、
前記中央制御装置との間で飛行位置及び前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量のデータを含む飛行状態並びに飛行指令を送受信するための通信装置と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム。
【請求項7】
前記補給ステーションは、
前記調された水硬性硬化体の材料及び水をそれぞれ貯蔵するタンクと、
前記タンクから供給された材料と水を混練するミキサと、
前記ミキサで混錬されて製造された前記調製された水硬性硬化体を前記建設用3Dプリンタ装置に注入する圧送装置と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム。
【請求項8】
前記調製された水硬性硬化体は、セメント、骨材、水、及び混和材料を含む速硬性のコンクリート又はモルタルからなり、
前記補給ステーションは、搬送可能に構成され、前記ドローンの飛行範囲内に設置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム。
【請求項9】
フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法であって、
造形用に調製された水硬性硬化体を押し出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置と、前記建設用3Dプリンタ装置を把持して飛行させるドローンと、前記ドローンが発着可能なポートを備え、前記調製された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給するように構成された移動式の補給ステーションと、前記ドローンの飛行状態及び前記補給ステーションで前記調された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給する工程の進行状態を監視して、前記ドローン及び前記補給ステーションを制御する中央制御装置と、含むフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システムを用い、
前記中央制御装置が、
建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路が指定されたドローン飛行計画を取得するステップと、
前記ドローン飛行計画に従って前記ドローンが前記飛行経路に沿って飛行するよう制御するステップと、
前記ドローンの飛行位置及び前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容されている前記調された水硬性硬化体の残量のデータを含む前記ドローンの飛行状態、並びに前記補給ステーションで前記調製された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給する工程の進行状態を監視するステップと、
飛行中の前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調された水硬性硬化体の残量に基づいて、前記ドローンを前記補給ステーションに帰還させる時機を決定するステップと、
前記決定された時機に前記ドローンを前記補給ステーションに帰還させるステップと
前記帰還したドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置への前記調された水硬性硬化体の補給が予め設定された時間内に完了するように前記補給ステーションを制御するステップと、を含むことを特徴とするフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法。
【請求項10】
前記補給ステーションを制御するステップは、
前記決定された時機に合わせて、前記補給ステーションに前記調された水硬性硬化体を製造する工程を開始させるステップと、
前記予め設定された時間内に前記建設用3Dプリンタ装置への前記調された水硬性硬化体の補給が完了するように、前記補給ステーションにおいて、前記調された水硬性硬化体の材料と水を計量する工程、前記計量された材料と水を混錬する工程、及び前記混錬する工程を経て製造された前記調製された水硬性硬化体を前記建設用3Dプリンタ装置に注入する工程の処理時間を調整するように制御するステップと、を含むことを特徴とする請求項9に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法。
【請求項11】
前記予め設定された時間は、前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間に、前記ドローンが前記建設される構造物から離れて前記補給ステーションに着陸するまでの時間と前記ドローンが前記補給ステーションを離陸して前記建設される構造物に到達するまでの時間とを加算した時間が、前記飛行中のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値以下になるまでに要する時間よりも短くなるように設定されることを特徴とする請求項9又は10に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法。
【請求項12】
フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法であって、
造形用に調製された水硬性硬化体を押し出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置と、前記建設用3Dプリンタ装置をそれぞれ把持して飛行させる複数機のドローンと、前記複数機のドローンが順に発着可能なポートを備え、前記調製された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給するように構成された移動式の補給ステーションと、前記複数機のドローンの飛行状態及び前記補給ステーションで前記調製された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給する工程の進行状態を監視して、前記複数機のドローン及び前記補給ステーションを制御するする中央制御装置と、含むフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システムを用い、
前記中央制御装置が、
建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路が指定されたドローン飛行計画を取得するステップと、
前記ドローン飛行計画に従って、前記複数機のドローンのうちの第1のドローンが前記飛行経路に沿って飛行するよう制御するステップと、
前記第1のドローンの飛行位置及び前記第1のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容されている前記調製された水硬性硬化体の残量のデータを含む前記第1のドローンの飛行状態、並びに前記補給ステーションで水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給する工程の進行状態を監視するステップと、
飛行中の前記第1のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量に基づいて、前記第1のドローンを前記補給ステーションに帰還させる時機を決定するステップと、
前記帰還させる時機が決定される前に、前記第1のドローンとは別の第2のドローンを前記補給ステーションから離陸させて、前記建設される構造物の近傍で待機させるステップと、
前記決定された時機に前記第1のドローンを帰還させ、前記第1のドローンが前記飛行経路から離脱するのと同時に、前記第1のドローンが離脱する直前の飛行位置に前記第2のドローンが移動するように制御するステップと、
前記飛行経路から離脱した前記第1のドローンを前記補給ステーションに帰還させるステップと、
前記帰還した第1のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が予め設定された時間内に完了するように前記補給ステーションを制御するステップと、を含むことを特徴とするフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法。
【請求項13】
前記補給ステーションを制御するステップは、
前記決定された時機に合わせて、前記補給ステーションに前記水硬性硬化体を製造する工程を開始させるステップと、
前記予め設定された時間内に前記第1のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置への水硬性硬化体の補給が完了するように、前記補給ステーションにおいて、前記調製された水硬性硬化体の材料と水を計量する工程、前記計量された材料と水を混錬する工程、及び前記混錬する工程を経て製造された前記調製された水硬性硬化体を前記建設用3Dプリンタ装置に注入する工程の処理時間を調整するように制御するステップと、を含むことを特徴とする請求項12に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法。
【請求項14】
前記予め設定された時間は、前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間に、前記第1のドローンが前記建設される構造物から前記補給ステーションに帰還するまでの時間と前記第1のドローンが前記補給ステーションを離陸して前記建設される構造物に到達するまでの時間とを加算した時間が、前記第2のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値以下になるまでに要する時間よりも短くなるように設定されることを特徴とする請求項12又は13に記載のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム及び構造物構築方法に関し、より詳しくは、ドローンにより空中移動する3Dプリンタ装置から水硬性硬化体を押し出して堆積させることで、立体的な構造物を製造するフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム及び構造物構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業の分野において利用が促進されている3Dプリンタは、CADデータ等に基づいて立体的な成形品を製造することができるので、少量生産品の製造において工期及びコスト面で優れている。
【0003】
近年、建築分野においても3Dプリンタの適用が始まり、建築分野で使用される3Dプリンタは、材料として速硬性コンクリート等の水硬性硬化体を使用して、これを3次元的に自動制御されるノズル部から押し出すことで、積層造形を行うようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ガントリ式の3Dプリンタが提案されている。ガントリ式の3Dプリンタは、離間して敷設された一対のレール上をガントリが走行し、このガントリに設けられたノズル部が、ガントリに対して上下方向に移動されると共にガントリの幅方向にスライドされることで3次元的に駆動されるようになっている。このため、ガントリ式の3Dプリンタで建築される構造物は一対のレールで挟まれたエリアに限定される。
【0005】
これに対して、特許文献2には、ノズル部がロボットアームに設けられた構成の建築用3Dプリンタが提案されている。ロボットアーム式の3Dプリンタは、ロボットアームを駆動してノズル部を3次元的に駆動する。したがって、ノズル部は所定の半径内で駆動されることになり、建築物は3Dプリンタの近傍に建築される。
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術は、ノズル部の移動範囲がガントリやロボットアームの到達域内に限定されるため、構築可能な構造物の大きさが制限されるという問題がある。ノズル部の移動範囲を超えて、構造物を構築したい場合、ロボットアーム式の3Dプリンタでは、ロボットアームの設置位置を必要な距離だけ移動した後、再度ロボットアームを固定する作業を繰り返す必要があり、時間とコストがかかるという問題がある。さらには、材料である水硬性硬化体の供給についても、ホッパーやミキサ等から供給される水硬性硬化体をノズル部まで圧送するための搬送パイプ及びポンプを含む材料供給機構を、ロボットアームの設置位置や構造物の高さにあわせて移動又は延長しなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2007-518586号公報
【文献】特表2015-502870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、建設される構造物の大きさ及び建設場所の制約が少なく、建設工期と建設費の低減が可能なフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム及び構造物構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムは、造形用に調製された水硬性硬化体を押し出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置と、前記建設用3Dプリンタ装置を把持して建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路に沿って飛行させるドローンと、前記ドローンが発着可能なポートを備え、前記調製された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給するように構成された移動式の補給ステーションと、前記ドローンの飛行状態及び前記補給ステーションで前記調製された水硬性硬化体を製造して前記建設用3Dプリンタ装置に補給する工程の進行状態を監視して、前記ドローン及び前記補給ステーションを制御する中央制御装置と、含み、前記中央制御装置は、前記ドローンの飛行状態に基づいて、前記調製された水硬性硬化体の層が前記構造物の設計情報に従って連続的に積層されるように、前記ドローン及び前記補給ステーションを制御することを特徴とする。
【0010】
前記構造物構築システムは、前記ドローンを複数機備え、前記中央制御装置は、前記調製された水硬性硬化体の補給が完了した前記建設用3Dプリンタ装置を把持した前記ドローンを順に飛行させて、前記構造物の設計情報に従って前記調製された水硬性硬化体の層が複数機の前記ドローンによって順に連続的に積層されるように、前記複数機のドローン及び前記補給ステーションを制御し得る。
前記中央制御装置は、飛行中の前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量に基づいて、前記ドローンを前記補給ステーションに帰還させる時機を決定し、帰還した前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が予め設定された時間内に完了するように前記補給ステーションを制御し得る。
前記予め設定された時間は、前記補給ステーションで前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間に、前記ドローンが前記構造物から前記補給ステーションに帰還するまでの時間と前記ドローンが前記補給ステーションを離陸して前記構造物に到達するまでの時間とを加算した時間が、前記飛行中のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値以下になるまでに要する時間よりも短くなるように設定されていることが好ましい。
【0011】
前記建設用3Dプリンタ装置は、前記調製された水硬性硬化体を収容する円錐形状のホッパーと、前記調製された水硬性硬化体を押し出しながら積層させるスクリュー装置と、前記スクリュー装置を駆動するモーターと、前記ホッパーに結合されて前記スクリュー装置及び前記モーターを格納するカバーケースと、前記ホッパーに収容された前記調製された水硬性硬化体の残量を計測するセンサ装置と、を含むことが好ましい。
前記ドローンは、前記建設用3Dプリンタ装置を着脱可能に把持するための連結装置と、開閉式のアームからなるランディングギアと、前記中央制御装置との間で飛行位置及び前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量のデータを含む飛行状態並びに飛行指令を送受信するための通信装置と、を備えることが好ましい。
前記補給ステーションは、前記調された水硬性硬化体の材料及び水をそれぞれ貯蔵するタンクと、前記タンクから供給された材料と水を混練するミキサと、前記ミキサで混錬されて製造された前記調製された水硬性硬化体を前記建設用3Dプリンタ装置に注入する圧送装置と、を含むことが好ましい。
前記調製された水硬性硬化体は、セメント、骨材、水、及び混和材料を含むコンクリート又はモルタルからなり、前記補給ステーションは、搬送可能に構成され、前記ドローンの飛行範囲内に設置されることが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法は、フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法であって、造形用に調製された水硬性硬化体を押し出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置と、前記建設用3Dプリンタ装置を把持して飛行させるドローンと、前記ドローンが発着可能なポートを備えて前記建設用3Dプリンタ装置に前記調された水硬性硬化体を補給するように構成された補給ステーションと、前記ドローンの飛行状態及び前記補給ステーションでの前記調された水硬性硬化体の補給工程の進行状態を監視して、前記ドローン及び前記補給ステーションを制御する中央制御装置と、含むフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システムを用い、前記中央制御装置が、建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路が指定されたドローン飛行計画を取得するステップと、前記ドローン飛行計画に従って前記ドローンが前記飛行経路に沿って飛行するよう制御するステップと、前記ドローンの飛行位置及び前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容されている前記調された水硬性硬化体の残量のデータを含む前記ドローンの飛行状態、並びに前記補給ステーションでの水硬性硬化体の補給工程の進行状態を監視するステップと、飛行中の前記ドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調された水硬性硬化体の残量に基づいて、前記ドローンを前記補給ステーションに帰還させる時機を決定するステップと、前記決定された時機に前記ドローンを前記補給ステーションに帰還させるステップと前記帰還したドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置への前記調された水硬性硬化体の補給が予め設定された時間内に完了するように前記補給ステーションを制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
前記補給ステーションを制御するステップは、前記決定された時機に合わせて、前記補給ステーションに前記調された水硬性硬化体を製造する工程を開始させるステップと、前記予め設定された時間内に前記建設用3Dプリンタ装置への前記調された水硬性硬化体の補給が完了するように、前記補給ステーションにおいて、前記調された水硬性硬化体の材料と水を計量する工程、前記計量された材料と水を混錬する工程、及び前記混錬する工程を経て製造された前記調製された水硬性硬化体を前記建設用3Dプリンタ装置に注入する工程の処理時間を調整するように制御するステップと、を含み得る。
前記予め設定された時間は、前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間に、前記ドローンが前記建設される構造物から離れて前記補給ステーションに着陸するまでの時間と前記ドローンが前記補給ステーションを離陸して前記建設される構造物に到達するまでの時間とを加算した時間が、前記飛行中のドローンに前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値以下になるまでに要する時間よりも短くなるように設定されることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の態様によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法は、フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築方法であって、造形用に調製された水硬性硬化体を押し出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置と、前記建設用3Dプリンタ装置をそれぞれ把持して飛行させる複数機のドローンと、前記複数機のドローンが順に発着可能なポートを備えて前記建設用3Dプリンタ装置に前記調製された水硬性硬化体を補給するように構成された補給ステーションと、前記複数機のドローンの飛行状態及び前記補給ステーションでの前記調製された水硬性硬化体の補給工程の進行状態を監視して、前記複数機のドローン及び前記補給ステーションを制御するする中央制御装置と、含むフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システムを用い、前記中央制御装置が、建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路が指定されたドローン飛行計画を取得するステップと、前記ドローン飛行計画に従って、前記複数機のドローンのうちの第1のドローンが前記飛行経路に沿って飛行するよう制御するステップと、前記第1のドローンの飛行位置及び前記第1のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容されている前記調製された水硬性硬化体の残量のデータを含む前記第1のドローンの飛行状態、並びに前記補給ステーションでの水硬性硬化体の補給工程の進行状態を監視するステップと、飛行中の前記第1のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量に基づいて、前記第1のドローンを前記補給ステーションに帰還させる時機を決定するステップと、前記帰還させる時機が決定される前に、前記第1のドローンとは別の第2のドローンを前記補給ステーションから離陸させて、前記建設される構造物の近傍で待機させるステップと、前記決定された時機に前記第1のドローンを帰還させ、前記第1のドローンが前記飛行経路から離脱するのと同時に、前記第1のドローンが離脱する直前の飛行位置に前記第2のドローンが移動するように制御するステップと、前記飛行経路から離脱した前記第1のドローンを前記補給ステーションに帰還させるステップと、前記帰還した第1のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が予め設定された時間内に完了するように前記補給ステーションを制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
前記補給ステーションを制御するステップは、前記決定された時機に合わせて、前記補給ステーションに前記水硬性硬化体を製造する工程を開始させるステップと、前記予め設定された時間内に前記第1のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置への水硬性硬化体の補給が完了するように、前記補給ステーションにおいて、前記調製された水硬性硬化体の材料を計量する工程、前記計量された材料を混錬する工程、及び前記混錬する工程を経て製造された前記調製された水硬性硬化体を前記建設用3Dプリンタ装置に注入する工程の処理時間を調整するように制御するステップと、を含み得る。
前記予め設定された時間は、前記建設用3Dプリンタ装置への前記調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間に、前記第1のドローンが前記建設される構造物から前記補給ステーションに帰還するまでの時間と前記第1のドローンが前記補給ステーションを離陸して前記建設される構造物に到達するまでの時間とを加算した時間が、前記第2のドローンに把持された前記建設用3Dプリンタ装置に収容された前記調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値以下になるまでに要する時間よりも短くなるように設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構築可能な構造物の大きさに制限がなく、山中や海上等のような、機材を運び入れて3Dプリンタや水硬性硬化体供給設備を設置することが難しい建設場所でも構造物の構築(建設及び建築)が可能となり、さらに、建設工期や建設費が大幅に低減される効果を奏する。
また、本発明によれば、堆積される水硬性硬化体の付着性能を低下させずに効率的な構造物の構築を可能にすることができ、信頼性の高い構造物を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムの全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムの建設用3Dプリンタ装置の構成の一例を示す図であり、(a)は建設用3Dプリンタ装置の内部構造を表す正面断面図、(b)は(a)のI-I’線に沿った平面断面図である。
図3】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムのドローンの構成の一例を示す図であり、(a)はポートに着陸した状態を示す斜視図であり、(b)は飛行時の状態を示す斜視図である。
図4】本実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムにおける建設用3Dプリンタ装置がドローンに把持されて飛行する状態の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による3フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムの補給ステーションの構成の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による3フライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムの補給ステーションの構成の他の例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムのドローン、補給ステーション、及び中央制御装置の各機能的構成を説明するためのブロック図である。
図8】本実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムのドローン及び補給ステーションによる連続プリントのタイムスケジュールの一例を示す図である。
図9】本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムによる構造物構築方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システムの全体構成を示す概略図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システム1は、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)と、建設用3Dプリンタ装置を把持して飛行させるドローン(20a、20b)と、ドローン(20a、20b)が発着するためのポートを備えて、造形用に調製された水硬性硬化体をドローン(20a、20b)に把持された建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)に補給するように構成された補給ステーション30と、ドローン(20a、20b)及び補給ステーション30を連携させた積層造形作業を制御する中央制御装置40とが、互いに無線通信を通じて相互通信可能に接続されている。
ドローン(20a、20b)に把持されて飛行する形態の建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)を、本明細書では、「フライング型建設用3Dプリンタ」と称する。
【0021】
本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システム1は、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)を把持したドローン(20a、20b)が、建設される構造物100の設計情報に基づいた飛行経路に沿って飛行し、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)から造形用に調製された水硬性硬化体を押し出して連続的に堆積させることで積層造形を行い、所望の構造物を構築する。
【0022】
本発明において、造形用に調製された水硬性硬化体とは、付加製造技術により、ノズル等を用いた造形を行う際に、造形直後の形状が崩れず、かつ、速硬性に優れて当該水硬性硬化体を積層しても、造形物の寸法安定性に優れた造形物(硬化体)を得ることができるように所定の混和材料等が加えられて調製された水硬性硬化体を指す。
【0023】
造形用に調製された水硬性硬化体をその付着性能が低下しない期間内に連続的に堆積させるために、構造物100の建設場所の隣接地、すなわち、ドローン(20a、20b)の飛行範囲内に配置された補給ステーション30で、調製された水硬性硬化体を製造して建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)に補給される。
【0024】
中央制御装置40は、複数機のドローン(20a、20b)が、調製された水硬性硬化体の補給が完了した建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)をそれぞれ把持して補給ステーション30から順に離陸し、建設場所において、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)から押し出される調製された水硬性硬化体が、建設される構造物100の設計情報に従って堆積されるように自律飛行し、建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)に収容された調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値を下回ると、補給ステーション30に帰還して調製された水硬性硬化体の補給を受け、補給が完了すると再び離陸して建設場所に復帰する工程を繰り返して、調製された水硬性硬化体を連続的に堆積させることで、構造物100の付加製造(積層造形)が行われるように、複数機のドローン(20a、20b)及び補給ステーション30を制御する。中央制御装置40は、一般的なコンピュータ、クラウド上のサーバコンピュータ、又は移動端末装置で構成されるが、これに限定されない。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システムの建設用3Dプリンタ装置の構成の一例を示す図であり、図2の(a)は建設用3Dプリンタ装置の内部構造を表す正面断面図、(b)は(a)のI-I’線に沿った平面断面図である。
【0026】
図2に示すように、本実施形態による建設用3Dプリンタ装置10は、調製された水硬性硬化体を収容(貯蔵)する円錐形状のホッパー11と、調製された水硬性硬化体を押し出しながら堆積させるスクリュー装置12と、スクリュー装置12を駆動するモーター13と、ホッパー11に結合されてスクリュー装置12及びモーター13を格納するカバーケース14と、ホッパー11に収容された水硬性硬化体の残量を計測するセンサ装置15と、を含む。センサ装置15は、レベルスイッチやレベル計が用いられるが、これに限定されず、収容された水硬性硬化体の重量や液面を検出する方式の計測装置を適用してもよい。
【0027】
建設用3Dプリンタ装置10は、ホッパー11の側面に設けられた水硬性硬化体の注入孔16と、ホッパー11の先端のノズル部分に配置されたモーノポンプ17をさらに備え、カバーケース14には、モーター13を支持する振れ止め機構付きの支持部材14a、モーター13に電力を供給する電源装置18、及びドローン着脱装置19が設けられる。なお、モーター13の電源は、ドローン20から供給する構成にしてもよい。
【0028】
建設用3Dプリンタ装置10には、さらにホッパー11に収容された水硬性硬化体の硬化を促すための促進材料を注入する装置が付加されてもよい。これにより、ホッパー11に収容された水硬性硬化体の凝結時間をより細かく調整することができる。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムのドローンの構成の一例を示す図であり、(a)はポートに着陸した状態を示す斜視図であり、(b)は飛行時の状態を示す斜視図である。
【0030】
図3に示すように、本実施形態によるドローン20は、本体部21、4つの支持アーム22、4つの推進ユニット23、4つのプロペラ24、開閉式の4つの脚部からなるランディングギア25、及び建設用3Dプリンタ装置を着脱可能に把持するための連結装置26を備える。支持アーム22、推進ユニット23、及びプロペラ24は、飛行するための推進器(飛行機構)である。推進器の動力手段は本体部21に備えられ、発動機(エンジン)であることが好ましいが、電動機であってもよい。なお、本実施形態において、ドローン20は、複数のプロペラを有するマルチコプターであるが、プロペラの数が一つのヘリコプターでもよい。
【0031】
ランディングギア25を構成する脚部は、ポートに着陸した状態では、互いの脚部の間隔を所定の幅(距離)を有する位置に閉じられて、接地部25aから連結装置26までの高さが、建設用3Dプリンタ装置10の高さよりも高くなるように構成される。これにより、建設用3Dプリンタ装置10と着陸面(ポート面)との間のクリアランスが確保される。一方、飛行時には、建設用3Dプリンタ装置10による堆積作業の支障にならない位置まで、ランディングギア25を上げる(すなわち、脚部を開いて持ち上げる)。
【0032】
本体部21には、ドローン20の飛行及び離着陸に伴う各種動作を制御する制御装置、ドローン20の位置及び姿勢を検知する位置センサ及び姿勢センサ(図示せず)、及び無線通信装置(図示せず)がさらに備えられる。本実施形態において、ドローン20は、中央制御装置40から提供される飛行プログラムにより、補給ステーション30から離陸後は、自律飛行を行うように構成されるが、緊急時にはマニュアル操作が行えるようになっていてもよい。
【0033】
図4は、本実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムにおける建設用3Dプリンタ装置がドローンに把持されて飛行する状態の一例を示す図である。
【0034】
ドローン20の本体部21は、連結装置26を介して建設用3Dプリンタ装置10と通信可能に接続され、建設用3Dプリンタ装置10のセンサ装置15から、ホッパー11に収容されている調製された水硬性硬化体の残量のデータを取得するように構成される。ドローン20は、本体部21の位置センサ及び姿勢センサで検知した当該ドローンの位置及び姿勢を含む飛行状態、並びに建設用3Dプリンタ装置10に収容されている調製された水硬性硬化体の残量のデータを、逐次、補給ステーション30及び/又は中央制御装置40に送信するように構成される。
【0035】
図5は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムの補給ステーションの構成の一例を示す図である。
【0036】
図5に示すように、本実施形態による補給ステーション30は、移動(牽引)可能な台車31に載置された筐体部32の内部に、ドローン20が発着可能なポート33を備え、調製された水硬性硬化体を補給ステーション30で製造して、ドローン20に把持された建設用3Dプリンタ装置10に補給するための構成として、調製された水硬性硬化体の材料となる水硬性硬化体の貯蔵タンク34a及び促進材料の貯蔵タンク35aと、調製された水硬性硬化体の流動性調整用の水の貯蔵タンク35bと、水硬性硬化体に促進材料及び水を加えて混練するミキサ36と、混錬されて調製された水硬性硬化体を建設用3Dプリンタ装置10のホッパー11に注入する圧送装置37と、を含む。圧送装置37は、調製された水硬性硬化体を圧送するポンプ37aと、ポンプ37aから圧送された調製された水硬性硬化体を建設用3Dプリンタ装置10に注入するための配管を建設用3Dプリンタ装置に接続し、また離脱させるように構成された注入管水平移動装置37bとを備える。
【0037】
補給ステーション30は、さらに水硬性硬化体の貯蔵タンク34aからミキサ36に水硬性硬化体を圧送するポンプ34bと、ミキサ36に注入される水硬性硬化体を計量するための流量計34cと、ミキサ36に供給される促進材料及び流動性調整用の水をそれぞれ計量する計量器35cと、補給ステーション30内の各機器に電力を供給する発電機38を含む。なお、ポート33は、昇降式の離着陸台(図示せず)を有し、筐体部32の天井面に設けられた開口部(図示せず)を通じて、離着陸台が筐体部32の上方にせり上がり、離着陸台にドローン20が着陸すると下降して筐体部32の内部にドローンを収容するように構成される。また、開口部には開閉式のルーフ(図示せず)が設置され得る。
【0038】
補給ステーション30で製造される調製された水硬性硬化体は、セメント、骨材、水、及び混和材料を含むコンクリート又はモルタルからなる。補給ステーション30は、促進材料の貯蔵タンク35aを備えているが、促進材料は必ず加えられるものではなく、所望の凝結時間が得られるように投入量が調整され、促進材料が加えられない場合もある。
【0039】
図6は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムの補給ステーションの構成の他の例を示す図である。
【0040】
図6に示すように、本実施形態の他の例による補給ステーション30は、第1の車両30A及び第2の車両30Bで構成され、第1の車両30A及び第2の車両30Bは、それぞれ移動(牽引)可能な台車(31a、31b)に載置された筐体部(32a、32b)を有し、ぞれぞれの筐体部(32a、32b)内に、図5を参照して説明した、調製された水硬性硬化体を補給ステーション30で製造して建設用3Dプリンタ装置10に補給するための構成が、分割して搭載されている。
【0041】
第1の車両30Aは、筐体部32a内に、水硬性硬化体の貯蔵タンク34aと、貯蔵タンク34aから水硬性硬化体を第2の車両30Bに連結用ホース34dを介して圧送するポンプ34bと、発電機38aとが備えられる。連結用ホース34dは、第2の車両30Bのミキサ36へ繋がる配管に連結及び分離可能に構成される、したがって、第1の車両30Aは、水硬性硬化体をミキサ36に供給する運搬車両として機能する。
【0042】
第2の車両30Bは、筐体部32bの内部に、ドローン20が発着可能なポート33を備え、促進材料の貯蔵タンク35a及び水の貯蔵タンク35bと、第1の車両30Aから供給された水硬性硬化体に上記の貯蔵タンク(35a、35b)から必要に応じた量の促進材料及び水を加えて混練するミキサ36と、混錬されて調製された水硬性硬化体を建設用3Dプリンタ装置10のホッパー11に注入する圧送装置37と、を備える。圧送装置37は、調製された水硬性硬化体を圧送するポンプ37aと、調製された水硬性硬化体を建設用3Dプリンタ装置に注入するための配管を建設用3Dプリンタ装置に接続し、また離脱させるように構成された注入管水平移動装置37bとを含む。したがって、第2の車両30Bは、調製された水硬性硬化体を、建設現場で製造して、建設用3Dプリンタ装置10に補給する現地調製車両として機能する。
【0043】
第2の車両30Bは、さらに、第1の車両30Aからミキサ36に供給される水硬性硬化体を計量するための流量計34cと、ミキサ36に供給される促進材料及び流動性調整用の水をそれぞれ計量する計量器35cと、発電機38bとを含む。なお、ポート33は、昇降式の離着陸台(図示せず)を有し、筐体部32の天井面に設けられた開口部(図示せず)を通って、離着陸台が筐体部の上方にせり上がり、離着陸台にドローンが着陸すると下降して筐体部32の内部にドローンを収容するように構成される。また、開口部には開閉式のルーフ(図示せず)が設置され得る。
【0044】
第2の車両30Bは、第1の車両30Aから水硬性硬化体の供給を受ける構成の他に、ミキサ36に水硬性粉体を直接投入し、さらに水、骨材、及び促進材料を含む混和材料を加えて混錬することで、調された水硬性硬化体を製造する構成を備えてもよい。水硬性粉体を直接投入する構成を備える場合、水硬性硬化体のスラリーを供給するための設備や第1の車両30Aを、建設現場に配備することを省略し得る。
【0045】
以下、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムの機能構成について説明する。
【0046】
図7は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムのドローン、補給ステーション、及び中央制御装置の各機能的構成を説明するためのブロック図である。
【0047】
図7に示すように、本実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムは、ドローン20、補給ステーション30、及び中央制御装置40が、Wi-Fi(登録商標)や4G/5G等の移動通信システム等による無線通信ネットワークを介して互いに通信可能に接続される。ドローン20、補給ステーション30、及び中央制御装置40は、互いに情報及び制御信号を送受信し、連携して動作する。
【0048】
さらに、ドローン20、補給ステーション30、及び中央制御装置40と通信可能に接続されて、これらの装置との間で情報や指令を送受信可能に構成されたドローン管理者の通信端末(又は操作端末)50が含まれてもよい。なお、ドローン管理者は、本発明のフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムの運用、指揮管理を行っている者であり、当該構造物の建設管理者であってもよい。
【0049】
ドローン20は、その本体部21内に、ドローン20の自律飛行や当該ドローン20に把持された建設用3Dプリンタ装置10のプリンティング動作を制御するドローン制御部210と、補給ステーション30、中央制御装置40、及びドローン管理者の通信端末50との間で指令や情報を送受信するドローン通信部220とを備える。なお、ドローン制御部210は、図示しないがSSD等からなる記憶装置を含み、当該記憶装置に飛行プログラムや制御用データなどが保存される。
【0050】
ドローン制御部210は、個別に図示しないが、CPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータで構成され得る。ドローン通信部220は、Wi-Fi(登録商標)や4G/5G等の移動通信システムに対応した無線通信装置で構成され得る。さらに図示しないが、ドローン20は、カメラを含む各種計測装置を搭載し得る。
【0051】
補給ステーション30は、筐体部32内に、図示しないCPU及びメモリーで構成されたステーション制御部310と、各種のプログラム及びデータを格納するSSDやHDD等からなるステーション記憶部320と、ドローン20及び/又は中央制御装置40との間でデータや制御信号(指令)を送受信するステーション通信部330とを含み、所定のプログラムをステーション制御部310のCPUで実行させることにより、上述した補給ステーション30内のポート33、ミキサ36、ポンプ(34b、37a)、注入管水平移動装置37bを制御する。ステーション制御部310は、一般的なコンピュータで構成されてもよく、組み込みコンピュータの形態で構成されてもよい。ステーション制御部310に含まれる機能部については後述する。
【0052】
中央制御装置40は、システム制御部410及びシステム通信部420を備え、ドローン20の使用目的に対応した各種情報を記憶部450または図示しないデータベースに保存し、ドローン管理者(又は建設管理者)が予め指定した飛行区域の地形情報や飛行ルート、飛行プログラム等をシステム通信部420を介して、直接ドローン20に、又は補給ステーション30経由でドローン20に送信する。また、中央制御装置40は、ドローン20から直接に又は補給ステーション30を介して、ドローン20の飛行データ及びドローンに把持された建設用3Dプリンタ装置10に収容された調製された水硬性硬化体の残量のデータを受信し、受信したこれらのデータに基づいて、補給ステーション30で、調製された水硬性硬化体を製造して建設用3Dプリンタ装置10に補給する工程の進行を制御する。
【0053】
さらに、中央制御装置40は、補給ステーション30からドローンの機体状態及や水硬性硬化体の補給可能量に関する情報を受信して、構造物の構築作業の進行管理に必要な情報をドローン管理者の通信端末(又は操作端末)50に送信するようにしてもよい。このために、中央制御装置40は、クラウドコンピューティングの形態で構成され得る。この場合、中央制御装置40は、遠隔地からのアクセスを受け付けて、ドローン管理者(又は建設管理者)以外のユーザが、ドローン20の飛行状態や補給ステーション30での補給工程の進行状態を監視したり、ドローン20及び補給ステーション30への割り込み指令を送信して、これらを制御することを可能にする。
【0054】
中央制御装置40は、システム制御部410のCPU411に所定のプログラムを実行させることで機能する機能部として、飛行情報取得部412、ドローン管理部413、補給ステーション管理部414、及び積層作業管理部415を含む。また、中央制御装置40は、ハードウェア装置で構成される表示部430、入力部440、記憶部450、及び外部入力受信部460を備える。
【0055】
飛行情報取得部412は、建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路に沿ってドローン20を飛行させるために必要な情報(構造物の位置情報や3次元マップ、飛行区域の地形情報、飛行プログラムなど)を、所定の通信ネットワークを介して、外部のコンピュータ端末やサーバ等(図示せず)から取得して、記憶部450に保存するとともに、受信したドローン20の自律飛行に必要となる情報及び飛行プログラムをドローン20に送信する。なお、ドローン20を飛行させるために必要な情報は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存された形態で提供されてもよい。この場合、飛行情報取得部412は、入力部440に接続された読取り装置で、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存された情報を読み出して、記憶部450に保存する。
【0056】
ドローン管理部413は、ドローン20から送信された当該ドローンの位置及び姿勢を含む飛行状態、並びに建設用3Dプリンタ装置10に収容されている調製された水硬性硬化体の残量のデータを、ドローン通信部220を介して取得し、ドローン20が正常に所定の飛行経路に沿って飛行しているか否かを監視し、飛行に異常がある場合は、ドローン管理者の通信端末50に異常通知を送信してもよい。なお、異常判定は、ドローン20のドローン制御部210が行ってもよい。
【0057】
また、ドローン管理部413は、ドローン20から送信された建設用3Dプリンタ装置10に収容されている調製された水硬性硬化体の残量に基づいて、ドローン20を補給ステーション30に帰還させる時機(飛行経路から離脱させる時刻)を決定し、ドローン20に帰還指令を送信するとともに、補給ステーション管理部414及び積層作業管理部415にもドローン20を帰還させる時機(補給ステーション30に帰着する予定時刻)を通知(送信)する。ドローン20を帰還させる時機は、建設用3Dプリンタ装置10に収容されている調製された水硬性硬化体の残量が、所定の閾値以下になったか否かで判定され、所定の閾値は、例えば、建設用3Dプリンタ装置10の積載量の5%~15%に設定され得る。
【0058】
補給ステーション管理部414は、調製された水硬性硬化体を補給ステーション30で製造して建設用3Dプリンタ装置10に注入するまでの一連の工程の進行状態を監視し、予め設定された制御プログラムにより、補給ステーション30に備えられたミキサ36に所定量の水硬性硬化体、促進材料、及び水を投入して混練し、製造が完了した調された水硬性硬化体を建設用3Dプリンタ装置10に注入するよう、ポンプ(34b、37a)、ミキサ36、及び注入管水平移動装置37bを制御する。
【0059】
また、補給ステーション管理部414は、ドローン管理部413からドローン20の帰還の時機が通知されると、受信した帰還の時機に合わせて、ポートの離着陸台を筐体部32の上方に上昇させて着陸態勢を整える。この時、補給ステーション管理部414は、ドローン20がポート33の離着陸台に安全に着陸するために必要な情報(ポートの位置座標や風向・風速など)を、ドローン20に送信してもよい。このため、補給ステーション30は、図示しない気象観測機器及びRTK-GPS(Real Time Kinematic-Global Positioning System)機器を備えてもよい。
【0060】
積層作業管理部415は、ドローン管理部413からドローン20の帰還の時機が通知されると、受信した帰還の時機に基づいて、補給ステーション30及び補給ステーション管理部414に、調された水硬性硬化体を製造する工程を開始させる指令を送信する。また、建設用3Dプリンタ装置に調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間が、後述する予め設定された時間内に完了するよう、補給ステーション管理部414による補給工程の処理時間を調整する指令を送信して、その進行を管理する。
【0061】
補給が完了するまでの時間の調整は、調された水硬性硬化体を製造するための材料と水を計量する工程、計量された材料と水を混錬する工程、及び混錬する工程を経て製造された調製された水硬性硬化体を建設用3Dプリンタ装置に注入する工程の処理時間を調整することによって行われる。例えば、計量する工程や注入する工程の処理時間は、調製された水硬性硬化体の製造量(又は材料比率)の増減によって調整され、混錬する工程の処理時間は製造量の増減やミキサ36の回転速度の加減速等によって調整され得る。
【0062】
積層作業管理部415は、予め計算されて記憶部450に保存された製造条件表(調製された水硬性硬化体の製造量等に対応した各工程の所要時間の見積表)に基づいて算出した水硬性硬化体の製造量やミキサ36の回転速度を含む製造条件を指示する指令を補給ステーション管理部414に送信し、補給ステーション管理部414は、受信した製造条件にしたがって補給ステーション30を制御する。
【0063】
表示部430及び入力部440は、一般的な表示装置及び入力装置で構成され、本システムの利用者がデータやプログラムを入力したり、飛行記録や作業データを参照するために使用され、記憶部450は、本システムで使用される各種のデータやプログラムを保存する。外部入力受信部460は、システム制御部410と外部の各種計測装置、例えば、レーザースキャナーなどとの間でのデータや制御信号の送受信を制御する。レーザースキャナーで計測された建設中の構造物の3Dデータは、ドローン20の飛行制御に反映され得る。
【0064】
図8は、本実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムのドローン及び補給ステーションによる連続プリントのタイムスケジュールの一例を示す図である。
【0065】
図8に示すように、調製された水硬性硬化体の製造を開始して、建設用3Dプリンタ装置に調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間として、予め設定された時間t1sは、補給ステーションで建設用3Dプリンタ装置への調製された水硬性硬化体の補給が完了するまでの時間t1mに、ドローンが構造物から補給ステーションに帰還するまでの時間t1rと、ドローンが補給ステーションを離陸して構造物に到達するまでの時間t1dとを加算した時間が、飛行中のドローンに把持された建設用3Dプリンタ装置でのプリント開始から、当該建設用3Dプリンタ装置に収容された調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値以下になるまでに要する時間t2pよりも短くなるように設定される。所定の閾値は、例えば、建設用3Dプリンタ装置10の積載量の5%~15%に設定される。
【0066】
予め設定された時間t1sを、上述のように設定することで、調製された水硬性硬化体が建設用3Dプリンタ装置10に補給された後、建設現場での積層造形に供されるまでの待ち時間を最小化して、速硬性を有する調製された水硬性硬化体の付着性能を低下させることなく、構造物を造形することができる。
【0067】
以下、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムにより、構造物を構築する方法について説明する。
【0068】
図9は、本発明の一実施形態によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムによる構造物構築方法の一例を示すフローチャートである。
【0069】
本実施形態では、中央制御装置40が、2機のドローン(20a、20b)を交互に飛行させて、構造物100の積層造形を行う場合について、図1、8及び図9を参照しながら説明する。本実施形態において使用される2機のドローン(20a、20b)は、それぞれ建設用3Dプリンタ装置(10a、10b)を把持して、補給ステーション30で調製された水硬性硬化体の補給を受けながら、建設される構造物の建設現場を飛行して、連続的に積層造形を行うように制御される。
【0070】
構造物構築を開始する指令が、中央制御装置40の入力部440又はドローン管理者の通信端末50から、中央制御装置40のシステム制御部410に入力されると、システム制御部410は飛行情報取得部412を機能させ、飛行情報取得部412は、建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路が指定されたドローン飛行計画を取得する(ステップS100)。入力された構造物構築を開始する指令には、ドローン飛行計画の取得先を指定する情報が含まれ、飛行情報取得部412は、指定された取得先からドローン飛行計画を取得する。
【0071】
構造物の設計情報に基づいたドローン飛行計画は、ドローン(20a、20b)の飛行経路とともに、建設用3Dプリンタ装置10から吐出させる調製された水硬性硬化体の単位時間当たりの流量などの情報が含まれ得る。なお、建設用3Dプリンタ装置10における調製された水硬性硬化体の積載量及び吐出能力などは、予め記憶部450に保存されていることが好ましい。
【0072】
中央制御装置40のシステム制御部410は、ドローン飛行計画が取得されると、ドローン飛行計画に基づいて、第1のドローン20aを飛行経路に沿って飛行させるための準備(出動準備)を開始する(ステップS110)。具体的には、補給ステーション管理部414から補給ステーション30に、調された水硬性硬化体を製造する工程を開始させる指令を送信させ、図8に示すように、補給ステーション30で調された水硬性硬化体を製造して、建設用3Dプリンタ装置10aに注入(補給)するよう制御させる。補給ステーション管理部414は、補給ステーション30で建設用3Dプリンタ装置10aへの調された水硬性硬化体の補給が完了すると、システム制御部410に、完了通知を送信する。
【0073】
システム制御部410は、補給の完了通知を受信すると、第1のドローン20aの発進(離陸)可否を判断する(ステップS120)。第1のドローン20aの発進可否の判断に際し、システム制御部410は、補給ステーション30及び構造物の建設現場の周辺の気象データ(風速や降雨など)を予め配備された気象観測機器(図示せず)から取得し、所定の判定基準に基づいて決定するようにプログラムされてもよい。
【0074】
システム制御部410は、ステップS120で、第1のドローン20aの発進(離陸)が可能と判断すると、補給ステーション管理部414を介して、補給ステーション30にポート33の離着陸台を上昇させ(ステップS140)、離陸態勢が整ったことの通知を補給ステーション30から受信すると、システム制御部410は、第1のドローン20aに離陸を指令する(ステップS150)。一方、ステップS120で、発進不可(飛行に支障がある)と判断された場合、システム制御部410は、所定時間(例えば、3分~10分)の間、待機(ステップS130)した後、ステップS120に戻って、再度気象データを取得して、飛行が可能か否かの判断を繰り返す。
【0075】
次に、第1のドローン20aの離陸後、システム制御部410は、補給ステーション30に、第2のドローン20bを着陸させて、第2のドローン20bに対する出動準備を開始する(ステップS160)。補給ステーション30による建設用3Dプリンタ装置10bへの調された水硬性硬化体の補給工程は、上述の第1のドローン20aの場合と同様であるので説明は省略する。補給工程が完了すると、システム制御部410に完了通知が送信される。なお、第2のドローン20bは、構造物構築の開始時には、補給ステーション30の近傍に搬送されて、待機(駐機)させていてもよい。
【0076】
また、第1のドローン20aの離陸後、システム制御部410は、ドローン管理部413を機能させ、ドローン管理部413は、第1のドローン20aから送信された当該ドローンの飛行位置及び姿勢を含む飛行状態、並びに建設用3Dプリンタ装置10に収容されている調製された水硬性硬化体の残量のデータを監視する(ステップS170)。
【0077】
ドローン管理部413は、第1のドローン20aから送信された建設用3Dプリンタ装置10aに収容されている調製された水硬性硬化体の残量に基づいて、第1のドローン20aを補給ステーション30に帰還させる時機(飛行経路から離脱させる時刻)を決定する(ステップS180)。帰還させる時機は、例えば、ドローン管理部413が監視している建設用3Dプリンタ装置10aに収容されている調製された水硬性硬化体の残量が所定の閾値に到達することにより決定される。帰還時機が決定されると、ドローン管理部413は、第1のドローン20aに帰還指令を送信するとともに、第2のドローン20bに離陸を指令する(ステップS190)。離陸した第2のドローン20bは、ステップS170以降の工程を実行するように制御される。
【0078】
これと同時に、ドローン管理部413は、補給ステーション管理部414及び積層作業管理部415にも帰還の通知を送信する。帰還の通知を受信すると、補給ステーション管理部414は補給ステーション30に第1のドローン20aの着陸態勢を整えるよう指令し、積層作業管理部415は第1のドローン20aの建設用3Dプリンタ装置10に調された水硬性硬化体を補給するための一連の工程を開始する指令を補給ステーション30に送信する(ステップS200)。
【0079】
補給ステーション30に第1のドローン20aが帰還する(ステップS210)と、第1のドローン20aは、ステーション制御部310の制御により、補給ステーション30に設けられた自動燃料供給モジュール(図示せず)から燃料供給を受けてもよい。その後、システム制御部410は、造形作業を継続するか否かの指令の有無を確認する(ステップS220)。システム制御部410による処理フローは、予め設定されたプログラムにより、建設用3Dプリンタ装置を把持したドローンの自律飛行を繰り返し実行するように設定され得る。または、ドローン(20a、20b)の帰還の通知をドローン管理者の通信端末(又は操作端末)50に送信して、ドローン管理者から作業継続の要否に関する指令を受けるようにしてもよい。
【0080】
ステップS220で予め設定されたプログラムにより、又はドローン管理者から作業継続が指令されると、中央制御装置40のシステム制御部410は、第1及び第2のドローン(20a、20b)に対して、ステップS110以降の工程が繰り返し実行されるように制御する。
【0081】
一方、ステップS220で、作業の中断又は終了が指令されると、システム制御部410は、飛行中のドローンの有無を確認し(ステップS230)、飛行中のドローンがある場合は、帰還指令を送信する。そして、全てのドローンが帰還すると、ドローン管理者の通信端末(又は操作端末)50に作業が終了した旨を通知して、システムの動作を終了する。
【0082】
中央制御装置40に、上述した手順を実行させることにより、本発明によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システムは、複数機のドローンを使用し、これらのドローンと補給ステーション30とを連携させて、調された水硬性硬化体の補給作業を実行するように制御することで、構造物の積層造形を連続的に進行させることを可能とする。
【0083】
以上、本発明によるフライング型建設用3Dプリンタを用いた構造物構築システム及び構造物構築方法によれば、人が立ち入ることが困難な山間部や海上などに、従来のロボットアームやガントリー形式の3Dプリンタでは構築が困難であった大きさの構造物を、架台や特殊圧送装置等を用いることなく建設することを可能とし、建設工期や建設費を大幅に低減することができる。
また、所望の速硬性を有するように調された水硬性硬化体を、その付着性能を低下させることなく、連続的に堆積させることができるため、信頼性の高い構造物を効率的に構築することできる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 フライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システム
10、10a、10b 建設用3Dプリンタ装置
11 ホッパー
12 スクリュー装置
13 モーター
14 カバーケース
14a 支持部材
15 センサ装置
16 注入孔
17 モーノポンプ
18 電源装置
19 ドローン着脱装置
20、20a、20b ドローン
21 本体部
22 支持アーム
23 推進ユニット
24 プロペラ
25 ランディングギア
25a 接地部
26 連結装置
30 補給ステーション
30A、30B 車両
31、31a、31b 台車
32、32a、32b 筐体部
33 ポート
34a、35a、35b 貯蔵タンク
34c 流量計
34d 連結用ホース
35c 計量器
36 ミキサ
37 圧送装置
37a、34b ポンプ
37b 注入管水平移動装置
38、38a、38b 発電機
40 中央制御装置
50 ドローン管理者の通信端末
100 構造物
210 ドローン制御部
220 ドローン通信部
220a、330a、420a、500a アンテナ
310 ステーション制御部
320 ステーション記憶部
330 ステーション通信部
410 システム制御部
411 CPU
412 飛行情報受付部
413 ドローン管理部
414 補給ステーション管理部
415 積層作業管理部
420 システム通信部
430 表示部
440 入力部
450 記憶部
460 外部入力受信部
【要約】      (修正有)
【課題】建設される構造物の大きさ及び場所の制約が少なく、効率的な建設が可能なフライング型建設用3Dプリンタによる構造物構築システム及び構造物構築方法を提供する。
【解決手段】システムは、造形用に調製された水硬性硬化体を押し出して積層造形を行う建設用3Dプリンタ装置10a、10bと、該装置を把持して建設される構造物の設計情報に基づいた飛行経路に沿って飛行させるドローンと、ドローンが発着可能なポートを備え、建設用3Dプリンタ装置に調製された水硬性硬化体を補給するように構成された補給ステーション30と、ドローンの飛行状態及び補給ステーションでの補給工程の進行状態を監視して、ドローン及び補給ステーションを制御する中央制御装置40と、含み、中央制御装置は、ドローンの飛行状態に基づいて、調製された水硬性硬化体の層が構造物の設計情報に従って連続的に積層されるように、ドローン及び補給ステーションを制御する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9