IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エコンの特許一覧

<>
  • 特許-液体循環発電装置 図1
  • 特許-液体循環発電装置 図2
  • 特許-液体循環発電装置 図3
  • 特許-液体循環発電装置 図4
  • 特許-液体循環発電装置 図5
  • 特許-液体循環発電装置 図6
  • 特許-液体循環発電装置 図7
  • 特許-液体循環発電装置 図8
  • 特許-液体循環発電装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】液体循環発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 17/02 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
F03B17/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022025884
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2022-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312001177
【氏名又は名称】株式会社エコン
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】長澤 一雄
(72)【発明者】
【氏名】福村 雄次
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070380(JP,A)
【文献】特許第6964915(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の位置エネルギーを運動エネルギーに変換して発電を行う発電手段を有し、前記液体を循環させて継続的に発電を行う液体循環発電装置であって、
前記液体が貯留される貯留槽と、上流端が前記貯留槽の下部に接続された排液路と、該排液路に取付けられた排液路開閉弁と、前記排液路の下流端側に配置され前記貯留槽から前記排液路を通って排出される前記液体によって水車を回転させて発電する前記発電手段と、前記貯留槽から排出される前記液体を回収する回収槽と、該回収槽で回収される前記液体を前記貯留槽に還流させる還流手段とを有し、
前記還流手段は、前記回収槽の底部に連設された液溜室と、該液溜室の内部に気液混合流体を噴霧して該液溜室の内部を加圧する噴霧ノズルを用いた加圧手段と、前記液溜室に取付けられた減圧弁と、前記回収槽の底部に形成され該回収槽と前記液溜室を連通させる連通口と、該連通口に取付けられ前記回収槽から前記液溜室への通液のみを許容する逆止弁と、上端側が前記貯留槽の底部に接続され下端側が前記液溜室内の底部側で開口して前記貯留槽と前記液溜室を連通させる連通管と、該連通管に取付けられた連通管開閉弁と、前記貯留槽の底部を貫通して設けられ該貯留槽の最高液面位置より上方に位置する上端開口と前記液溜室内の底部側に位置する下端開口を有する還流管と、該還流管に取付けられた還流管開閉弁と、前記還流管の前記還流管開閉弁よりも下方に取付けられた空気弁と、前記還流管の前記還流管開閉弁よりも上方に接続されたエアーリフト用ブロアーとを備え、
使用開始時に、前記貯留槽、前記回収槽及び前記液溜室に前記液体が貯留され、前記連通管開閉弁が開かれて前記連通管が前記液体で満たされ、前記還流管内の液面が閉じられた前記還流管開閉弁の位置まで上昇した状態で、前記加圧手段で前記液溜室の内部を加圧して前記還流管開閉弁を開き、前記貯留槽に貯留された前記液体の圧力と前記液溜室内の圧力上昇により前記還流管内の液面を前記貯留槽内の液面と同等位置まで上昇させ、前記エアーリフト用ブロアーを駆動して前記還流管内に上昇水流を発生させ、前記液体を前記上端開口から噴出させて前記液溜室から前記貯留槽への前記液体の還流を開始し、前記排液路開閉弁が開かれ前記貯留槽から前記液体が排出されて前記発電手段で発電が行われ前記貯留槽から排出された前記液体が前記回収槽で回収される間に、前記液溜室から前記貯留槽への前記液体の還流と、前記回収槽から前記液溜室への前記液体の移送が交互に繰り返し行われることを特徴とする液体循環発電装置。
【請求項2】
請求項記載の液体循環発電装置において、前記気液混合流体に、前記回収槽に貯留されている前記液体が用いられることを特徴とする液体循環発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液体循環発電装置において、前記逆止弁は、前記連通口に装着される管体と、該管体の高さ方向に沿ってスライド可能に保持され該管体の下端側の開口部を閉塞可能な弁体とを備え、前記管体は、該管体の内周側に高さ方向に沿って配置された複数の筒状のガイド部を有し、前記弁体は、上昇時に前記開口部を閉塞する板状の閉塞部と、該閉塞部の上面外周側に立設され前記各ガイド部にそれぞれ挿通された複数のスライド軸と、前記閉塞部の下面側に取付けられたフロート部とを有することを特徴とする液体循環発電装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の液体循環発電装置において、複数の前記還流手段を備え、使用開始時に、前記貯留槽、前記回収槽及び複数の前記還流手段の前記各液溜室に前記液体が貯留され、前記貯留槽から前記液体が排出されて前記発電手段で発電が行われている間に、順次、選択される前記液溜室から前記貯留槽に前記液体が還流され、還流が終わった前記液溜室に、順次、前記回収槽から前記液体が移送されることを特徴とする液体循環発電装置。
【請求項5】
請求項記載の液体循環発電装置において、前記還流管は、それぞれが前記下端開口を有する複数の分岐配管部と、複数の該分岐配管部の上端側を連結し前記上端開口を有する1つの集合配管部とを有し、前記各分岐配管部の上端側に前記還流管開閉弁及び前記空気弁が取付けられ、前記集合配管部に前記エアーリフト用ブロアーが取付けられていることを特徴とする液体循環発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の落下エネルギーで発電を行いながら、落下した液体を循環させることにより、外部からの大量の液体の供給(追加、補充)を必要とすることなく、継続的に(繰り返し)発電を行うことができる液体循環発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水力発電装置として、上流河川又は湖沼から取水し、下流に位置する発電所の水車まで導いて水車を回し、水車に連結された発電機を回転させて発電を行う流れ込み式(水路式)、ダムに貯留した水の落差を利用して発電するダム式(調整池式)、発電機の上下位置にそれぞれ調整池を持ち、上部調整池から供給され、発電に使用されて下部調整池に貯留された水を余剰電力で上部調整池に戻して発電を行う揚水式等が知られている。
一方、例えば、特許文献1では、水力発電に用いられる液体を電動ポンプで循環させて継続的に(繰り返し)発電を行う液体循環式の発電装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6964915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、電動ポンプによって上方貯留槽内に負圧を発生させると共に、上方貯留槽から下方貯留槽に空気を移して下方貯留槽内の液体を加圧し、下方貯留槽から上方貯留槽に液体を汲み上げており、液体の移動(揚水)に必要な全てのエネルギーを電動ポンプの駆動によって発生させているため、電動ポンプの消費電力が増大するという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、少ない消費電力で効率的に液体を循環させることができ、外部からの大量の液体供給を必要とせず、継続的に安定した発電を行うことができる液体循環発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る液体循環発電装置は、液体の位置エネルギーを運動エネルギーに変換して発電を行う発電手段を有し、前記液体を循環させて継続的に発電を行う液体循環発電装置であって、
前記液体が貯留される貯留槽と、上流端が前記貯留槽の下部に接続された排液路と、該排液路に取付けられた排液路開閉弁と、前記排液路の下流端側に配置され前記貯留槽から前記排液路を通って排出される前記液体によって水車を回転させて発電する前記発電手段と、前記貯留槽から排出される前記液体を回収する回収槽と、該回収槽で回収される前記液体を前記貯留槽に還流させる還流手段とを有し、
前記還流手段は、前記回収槽の底部に連設された液溜室と、該液溜室の内部に気液混合流体を噴霧して該液溜室の内部を加圧する噴霧ノズルを用いた加圧手段と、前記液溜室に取付けられた減圧弁と、前記回収槽の底部に形成され該回収槽と前記液溜室を連通させる連通口と、該連通口に取付けられ前記回収槽から前記液溜室への通液のみを許容する逆止弁と、上端側が前記貯留槽の底部に接続され下端側が前記液溜室内の底部側で開口して前記貯留槽と前記液溜室を連通させる連通管と、該連通管に取付けられた連通管開閉弁と、前記貯留槽の底部を貫通して設けられ該貯留槽の最高液面位置より上方に位置する上端開口と前記液溜室内の底部側に位置する下端開口を有する還流管と、該還流管に取付けられた還流管開閉弁と、前記還流管の前記還流管開閉弁よりも下方に取付けられた空気弁と、前記還流管の前記還流管開閉弁よりも上方に接続されたエアーリフト用ブロアーとを備え、
使用開始時に、前記貯留槽、前記回収槽及び前記液溜室に前記液体が貯留され、前記連通管開閉弁が開かれて前記連通管が前記液体で満たされ、前記還流管内の液面が閉じられた前記還流管開閉弁の位置まで上昇した状態で、前記加圧手段で前記液溜室の内部を加圧して前記還流管開閉弁を開き、前記貯留槽に貯留された前記液体の圧力と前記液溜室内の圧力上昇により前記還流管内の液面を前記貯留槽内の液面と同等位置まで上昇させ、前記エアーリフト用ブロアーを駆動して前記還流管内に上昇水流を発生させ、前記液体を前記上端開口から噴出させて前記液溜室から前記貯留槽への前記液体の還流を開始し、前記排液路開閉弁が開かれ前記貯留槽から前記液体が排出されて前記発電手段で発電が行われ前記貯留槽から排出された前記液体が前記回収槽で回収される間に、前記液溜室から前記貯留槽への前記液体の還流と、前記回収槽から前記液溜室への前記液体の移送が交互に繰り返し行われる。
【0006】
【0007】
本発明に係る液体循環発電装置において、前記気液混合流体に、前記回収槽に貯留されている前記液体が用いられてもよい。
【0008】
本発明に係る液体循環発電装置において、前記逆止弁は、前記連通口に装着される管体と、該管体の高さ方向に沿ってスライド可能に保持され該管体の下端側の開口部を閉塞可能な弁体とを備え、前記管体は、該管体の内周側に高さ方向に沿って配置された複数の筒状のガイド部を有し、前記弁体は、上昇時に前記開口部を閉塞する板状の閉塞部と、該閉塞部の上面外周側に立設され前記各ガイド部にそれぞれ挿通された複数のスライド軸と、前記閉塞部の下面側に取付けられたフロート部とを有することができる。
【0009】
本発明に係る液体循環発電装置において、複数の前記還流手段を備え、使用開始時に、前記貯留槽、前記回収槽及び複数の前記還流手段の前記各液溜室に前記液体が貯留され、前記貯留槽から前記液体が排出されて前記発電手段で発電が行われている間に、順次、選択される前記液溜室から前記貯留槽に前記液体が還流され、還流が終わった前記液溜室に、順次、前記回収槽から前記液体が移送されることが好ましい。
【0010】
本発明に係る液体循環発電装置において、前記還流管は、それぞれが前記下端開口を有する複数の分岐配管部と、複数の該分岐配管部の上端側を連結し前記上端開口を有する1つの集合配管部とを有し、前記各分岐配管部の上端側に前記還流管開閉弁及び前記空気弁が取付けられ、前記集合配管部に前記エアーリフト用ブロアーが取付けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体循環発電装置は、少ない消費電力で効率的に液体を循環させて、継続的に安定した発電を行うことができ、外部からの大量の液体供給を必要とせず、省エネルギー性及び発電の安定性に優れる。
【0012】
本発明に係る液体循環発電装置、加圧手段が、液溜室の内部に気液混合流体を噴霧する噴霧ノズルを用いるので、小さなエネルギーで液溜室の内部を効果的に加圧して、液溜室内に貯留されている液体を還流管に送り込むことができる。
【0013】
本発明に係る液体循環発電装置において、気液混合流体に、回収槽に貯留されている液体が用いられる場合、噴霧ノズルに供給する液体を別途、用意する必要がない。
【0014】
本発明に係る液体循環発電装置において、逆止弁が、連通口に装着される管体と、管体の高さ方向に沿ってスライド可能に保持され管体の下端側の開口部を閉塞可能な弁体とを備え、管体が、管体の内周側に高さ方向に沿って配置された複数の筒状のガイド部を有し、弁体が、上昇時に開口部を閉塞する板状の閉塞部と、閉塞部の上面外周側に立設され各ガイド部にそれぞれ挿通された複数のスライド軸と、閉塞部の下面側に取付けられたフロート部とを有する場合、液溜室の内部が空で大気に連通した状態では、弁体の自重で弁体を下方にスライドさせて、回収槽から液溜室に液体を移送させ、液溜室内の液面の上昇に伴ってフロート部に働く浮力で弁体を上方にスライドさせて開口部を閉塞することができ、その後、液溜室が密閉された状態で加圧されている間は、空気圧により、開口部を閉塞したまま、液溜室内の液体を還流管に送り続けて還流を継続することができる。
【0015】
本発明に係る液体循環発電装置において、複数の還流手段を備え、使用開始時に、貯留槽、回収槽及び複数の還流手段の各液溜室に液体が貯留され、貯留槽から液体が排出されて発電手段で発電が行われている間に、順次、選択される液溜室から貯留槽に液体が還流され、還流が終わった液溜室に、順次、回収槽から液体が移送される場合、後から選択された液溜室から貯留槽への液体の還流と、先に還流が終わった他の液溜室への回収槽からの液体の移送が並行して行われ、継続的に液体を循環させて、安定的に発電を行うことができる。
【0016】
本発明に係る液体循環発電装置において、還流管が、それぞれが下端開口を有する複数の分岐配管部と、複数の分岐配管部の上端側を連結し上端開口を有する1つの集合配管部とを有し、各分岐配管部の上端側に還流管開閉弁及び空気弁が取付けられ、集合配管部にエアーリフト用ブロアーが取付けられている場合、複数の液溜室でエアーリフト用ブロアーを共有することができ、各分岐配管部に取付けられた還流管開閉弁の切替えによって、順次、1つの液溜室を選択して、液体を循環させることができ、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る液体循環発電装置の使用開始時の状態を示す正断面図である。
図2】(A)は同液体循環発電装置の還流手段における逆止弁の平面図であり、(B)は同逆止弁が開いた状態を示す正断面図であり、(C)は同逆止弁が閉じた状態を示す正断面図である。
図3】同液体循環発電装置の還流手段の準備動作を示す正断面図である。
図4】同液体循環発電装置の還流手段の動作開始前の状態を示す正断面図である。
図5】同液体循環発電装置の還流手段の動作開始時の状態を示す正断面図である。
図6】同液体循環発電装置の還流手段による還流動作を示す正断面図である。
図7】同液体循環発電装置の還流手段の動作終了後の状態を示す正断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係る液体循環発電装置の動作を示す正断面図である。
図9】(A)は同液体循環発電装置の平面図であり、(B)は同液体循環発電装置の回収槽を示す要部断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示す本発明の第1の実施の形態に係る液体循環発電装置10は、液体11(主に水道水等の水)の位置エネルギーを運動エネルギーに変換して発電を行いながら、発電に用いた液体11を循環させて継続的に(繰り返し)発電を行うことができ、外部からの大量の液体の供給(追加、補充)を不要とするものである。
液体循環発電装置10は、液体11が貯留される貯留槽12と、上流端が貯留槽12の下部に接続された排液路13と、排液路13の下流側に取付けられた排液路開閉弁14と、排液路13の下流端側(排液路開閉弁14の下流)に配置され貯留槽12から排液路13を通って排出される液体11によって水車(図示せず)を回転させて発電する発電手段15と、貯留槽12から排出される液体11を回収する回収槽16と、回収槽16で回収される液体11を貯留槽12に還流させる還流手段17とを有している。ここで、貯留槽12の上端側には貯留槽12内の液面位置を一定以下に保つ(液面の変動を抑える)ためオーバーフロー管19が取付けられ、排液路13の排液路開閉弁14より上流側には流量調整弁20が取付けられている。
【0019】
還流手段17は、回収槽16の底部に連設された液溜室21と、液溜室21の内部を加圧する加圧手段22と、液溜室21に取付けられた減圧弁23を備えている。また、還流手段17は、回収槽16の底部に形成され回収槽16と液溜室21を連通させる連通口25と、連通口25に取付けられ回収槽16から液溜室21への通液のみを許容する逆止弁26を備えている。
次に、還流手段17は、上端側が貯留槽12の底部に接続され下端側が液溜室21内の底部側で開口して貯留槽12と液溜室21を連通させる連通管27と、連通管27に取付けられた連通管開閉弁28を備えている。また、還流手段17は、貯留槽12の底部を貫通して設けられ貯留槽12の最高液面位置より上方に位置する上端開口30と液溜室21内の底部側に位置する下端開口31を有する還流管32と、還流管32に取付けられた還流管開閉弁33と、還流管32の還流管開閉弁33よりも下方に取付けられた空気弁34と、還流管32の還流管開閉弁33よりも上方に接続されたエアーリフト用ブロアー35を備えている。
そして、この液体循環発電装置10では、使用開始時に、貯留槽12、回収槽16及び液溜室21に液体11が貯留され、貯留槽12から液体11が排出されて発電手段15で発電が行われている間に、液溜室21から貯留槽12への液体11の還流と、回収槽16から液溜室21への液体11の移送が交互に繰り返し行われる。
【0020】
以下、液体循環発電装置10の使用方法(動作)について詳細に説明する。
液体循環発電装置10を使用するには、まず、図1に示すように、貯留槽12、回収槽16及び液溜室21に液体11を貯留する。貯留槽12及び回収槽16には、直接、液体11を供給することができる。このとき、排液路開閉弁14、減圧弁23、連通管開閉弁28及び還流管開閉弁33は閉じられている。そして、回収槽16に供給された液体11は連通口25を通して液溜室21に供給される。
ここで、逆止弁26について説明する。図2(A)~(C)に示すように、逆止弁26は、連通口25に装着される管体37と、管体37の高さ方向に沿ってスライド可能に保持され管体37の下端側の開口部38を閉塞可能な弁体39とを備えている。また、管体37は、管体37の内周側に高さ方向に沿って配置された複数(ここでは4つ)の筒状のガイド部40を有し、弁体39は、上昇時に開口部38を閉塞する板状の閉塞部42と、閉塞部42の上面外周側に立設され各ガイド部40にそれぞれ挿通された複数のスライド軸43と、閉塞部42の下面側に取付けられたフロート部44とを有する。
【0021】
液体循環発電装置10の使用開始前の回収槽16及び液溜室21が空の状態では、図2(B)に示すように、逆止弁26の弁体39が、自重によって下方にスライドして逆止弁26が開いており、回収槽16と液溜室21が連通して大気に開放されている。よって、回収槽16に供給された液体11は、図2(B)の矢印で示すように、連通口25を通して液溜室21に供給される。連通口25から液溜室21に液体11が供給されている間、液溜室21内の空気は、還流管32を通って空気弁34から大気に抜けるので、還流管32内の液面は液溜室21内の液面と等しくなる。そして、液溜室21内の液面の上昇に伴ってフロート部44に働く浮力で弁体39が上方にスライドし、図2(C)に示すように、開口部38が閉塞される。その後、液体11の供給を続けると、連通口25が閉じられたまま回収槽16に液体11が貯留され図1の状態となる。
その後、連通管開閉弁28を開くと、図3に示すように、貯留槽12内の液体11が連通管27を通って液溜室21に供給され、還流管32内の空気が空気弁34から抜けて還流管32内の液面が還流管開閉弁33の位置まで上昇し、図4の状態となる。このとき、液面の上昇によって空気弁34は閉じられ、貯留槽12内は密閉状態となる。
ここで、加圧手段22により、液溜室21の内部を加圧する。加圧手段22としては、液溜室21の内部に気液混合流体を噴霧する噴霧ノズルが好適に用いられる。なお、気液混合流体に、回収槽16に貯留されている液体11が用いられることにより、加圧手段22(噴霧ノズル)に供給するための液体を別途、用意する必要がなくなる。
【0022】
次に、還流管開閉弁33を開くと、図5に示すように、貯留槽12に貯留された液体11の圧力(水頭圧)と、液溜室21内の圧力上昇により、還流管32内の液面は貯留槽12内の液面と同等位置まで上昇する。このとき、液溜室21内の液面が減少しても、液溜室21内が加圧されているため、逆止弁26が開くことはない。
この状態からエアーリフト用ブロアー35を駆動すると、図6に示すように、還流管32内に発生する気泡によって還流管32内に上昇水流が生じ、液体11が上端開口30から噴出して、液溜室21から貯留槽12への液体11の還流が開始される。ここで、排液路開閉弁14を開いて発電手段15の運転を開始することにより、発電中に貯留槽12から排出される液体11が回収槽16で回収される間に、液溜室21から貯留槽12への液体11の還流が行われる。
なお、エアーリフト用ブロアー35を駆動する前の還流管32内の液面位置(=貯留槽12内の液面)から還流管32の上端開口30までの距離は短い(例えば1~2m程度)ので、エアーリフト用ブロアー35の駆動に必要な動力は極めて小さく抑えることができる。
その後、図7に示すように、液溜室21内の液面が低下して還流が終わったら、連通管開閉弁28及び還流管開閉弁33を閉じると共に、加圧手段22及びエアーリフト用ブロアー35の駆動を停止し、減圧弁23を開く。これにより、液溜室21内の圧力が下がり(大気圧と等しくなり)、液体循環発電装置10が使用開始前の状態となって逆止弁26が開き、矢印で示すように、回収槽16から液溜室21へと液体11の移送が行われるので、減圧弁23を閉じる。そして、液溜室21内の液面が上昇して逆止弁26が閉じられたら、図1に示した使用開始時の状態に戻るので、前述と同様の手順で還流動作を行うことができる。
【0023】
以上説明したように、貯留槽12から液体11が排出されて発電手段15で発電が行われている間に、液溜室21から貯留槽12への液体11の還流と、回収槽16から液溜室21への液体11の移送を交互に繰り返し行うことができ、液体11を循環させて継続的に発電を行うことができる。
ここで、貯留槽12、回収槽16及び液溜室21には、それぞれ液面計(水位センサー)45が取付けられ、液溜室21及び還流管32の還流管開閉弁33より下方には、それぞれ圧力計46が取付けられており、それぞれの液面位置及び圧力を確認することにより、排液路開閉弁14、減圧弁23、連通管開閉弁28及び還流管開閉弁33の開閉のタイミングを決定し、流量調整弁20による排液量(=発電量)の調整と、加圧手段22及びエアーリフト用ブロアー35による液体11の還流量の調整を行うことができる。
なお、連通口(逆止弁)及び還流管の数及び配置は、貯留槽、回収槽及び液溜室の各容量、液体循環発電装置の揚程(排液路の落差)並びに発電手段の発電量等に応じて、適宜、選択される。また、連通口、連通管及び還流管の数は、それぞれの開口径によっても、適宜、選択される。さらに、液溜室に設けられる減圧弁の数及び配置も、液溜室の容量及び形状等に応じて、適宜、選択される。
【0024】
次に、図8及び図9(A)、(B)を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る液体循環発電装置10Aについて説明する。なお、第1の実施の形態と同様のものについては同一の符号を付して説明を省略する。
液体循環発電装置10Aが液体循環発電装置10と異なる点は、2つの還流手段17A、17Bを備えている点である。
また、各還流手段17A、17Bが還流手段17と異なる点は、1つの液溜室21に対して、3つの減圧弁23、2つの連通口25と逆止弁26、4つの還流管32aが取付けられている点である。
ここで、各還流管32aは、それぞれが下端開口31を有する2つの分岐配管部47と、2つの分岐配管部47の上端側を連結し上端開口30を有する1つの集合配管部48とを有し、各分岐配管部47の上端側に還流管開閉弁33及び空気弁34が取付けられ、集合配管部48にエアーリフト用ブロアー35が取付けられている。これにより、2つの液溜室21でエアーリフト用ブロアー35を共有することができ、各分岐配管部47に取付けられた還流管開閉弁33の切替えによって、順次、1つの液溜室21を選択して、液体11を循環させることができる。このとき、エアーリフト用ブロアー35は駆動したままでもよい。
【0025】
以上のように構成された液体循環発電装置10Aでは、使用開始時に、貯留槽12、回収槽16及び2つの還流手段17A、17Bの各液溜室21に液体11が貯留され、貯留槽12から液体11が排出されて発電手段15で発電が行われている間に、順次、選択される液溜室21(ここでは、いずれか一方の液溜室21)から貯留槽12に液体11が還流され、還流が終わった液溜室21に、順次、回収槽16から液体11が移送される。
従って、図8に示すように、後から選択された液溜室21(ここでは左側)から貯留槽12への液体11の還流(還流動作)と、先に還流が終わった他の液溜室21(ここでは右側)への回収槽16からの液体11の移送(移送動作)が並行して行われ、これが順次、選択される液溜室21で繰り返されることにより、継続的に液体を循環させて、安定的に発電を行うことができる。
ここで、各還流手段17A、17Bの動作は、先に説明した還流手段17の動作と同様であり、還流手段17Aの動作と還流手段17Bの動作が時間をずらして繰り返し行われる(還流手段17Aで還流動作が行われている間に還流手段17Bで移送動作が行われ、還流手段17Aで移送動作が行われている間に還流手段17Bで還流動作が行われる)だけなので説明を省略する。
なお、還流管の構成、数及び配置等は、適宜、選択することができ、第1の実施の形態と同様の還流管を各液溜室に独立して設置してもよい。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
上記実施の形態においては、還流手段が1つ及び2つの場合について説明したが、還流手段は3つ以上でもよく、いずれかの還流手段で還流動作が行われている間に、他の還流手段で移送動作が行われることにより、その後の還流動作に備えることができ、液体を絶え間なく循環させて長時間にわたって継続的に発電を行うことができる。
また、液体循環発電装置の操作手順は、上記実施の形態に限定されるものではなく、各部の操作の順番は、適宜、入れ替わってもよい。例えば、発電手段の運転を開始するタイミング(排液路開閉弁を開くタイミング)は、エアーリフト用ブロアーを駆動する前でもよいし、連通管開閉弁及び還流管開閉弁を閉じるタイミングは同時でもいずれか一方が先でもよい。
なお、液体は、継続的に循環しながら、その落下エネルギーによって発電を行えるものであればよく、水(水道水、雨水又は河川、湖沼若しくは海の水)以外のオイル等のニュートン流体であってもよいし、液体に所定の固体が混合された非ニュートン流体であってもよい。また、必要に応じて、苔又は藻等の繁殖を防止するための薬剤(水質調整剤)が混入されてもよい。さらに、貯留槽にろ過装置を取付けたり、排液路にろ過フィルターを取付けたりしてもよい。
排液路開閉弁、流量調整弁及び連通管開閉弁には電磁弁が好適に用いられる。これらの弁、加圧手段及びエアーリフト用ブロアーを駆動するための電力は、深夜電力又は太陽光発電で発電された電力で賄うことが可能であり、これらの電力を予め蓄電池に蓄電してから使用することにより、時間帯及び天候に左右されることなく、安定して供給することができる。
【符号の説明】
【0027】
10、10A:液体循環発電装置、11:液体、12:貯留槽、13:排液路、14:排液路開閉弁、15:発電手段、16:回収槽、17、17A、17B:還流手段、19:オーバーフロー管、20:流量調整弁、21:液溜室、22:加圧手段、23:減圧弁、25:連通口、26:逆止弁、27:連通管、28:連通管開閉弁、30:上端開口、31:下端開口、32、32a:還流管、33:還流管開閉弁、34:空気弁、35:エアーリフト用ブロアー、37:管体、38:開口部、39:弁体、40:ガイド部、42:閉塞部、43:スライド軸、44:フロート部、45:液面計(水位センサー)、46:圧力計、47:分岐配管部、48:集合配管部
【要約】
【課題】少ない消費電力で効率的に液体を循環させて安定した発電を継続できる液体循環発電装置を提供する。
【解決手段】液体循環発電装置10は、液体11が貯留される貯留槽12と、上流端が貯留槽12の下部に接続された排液路13と、排液路13に取付けられた排液路開閉弁14と、排液路13の下流端側に配置され貯留槽12から排液路13を通って排出される液体11によって水車を回転させて発電する発電手段15と、貯留槽12から排出される液体11を回収する回収槽16と、回収槽16の液体11を液溜室21に移送して貯留槽12に還流させる還流手段17とを有し、使用開始時に、貯留槽12、回収槽16及び液溜室21に液体11が貯留され、貯留槽12から液体11が排出されて発電手段15で発電が行われている間に、液溜室21から貯留槽12への液体11の還流と、回収槽16から液溜室21への液体11の移送が交互に繰り返し行われる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9