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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】樹脂融着製熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 21/06 20060101AFI20220819BHJP
   F28D 1/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
F28F21/06
F28D1/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018122661
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020003132
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】南谷 広治
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/112600(WO,A1)
【文献】特開2002-243395(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080611(WO,A1)
【文献】特開2008-304123(JP,A)
【文献】特開平02-044189(JP,A)
【文献】特開2007-093033(JP,A)
【文献】米国特許第04407358(US,A)
【文献】特開2012-024788(JP,A)
【文献】特開2002-107077(JP,A)
【文献】特開2016-178078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 21/06
F28D 1/00
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体流入口および熱媒体流出口が設けられ、かつ前記熱媒体流入口から流入した熱媒体が内部を流通して前記熱媒体流出口から流出する外包材と、前記外包材の内部に配置される内心材とを備えた樹脂融着製熱交換器であって、
前記外包材が、金属製の伝熱層と、その伝熱層の一面側に設けられた樹脂製の熱融着層と、前記伝熱層の面側に設けられた樹脂製の被覆層とを含む外包ラミネート材によって構成されるとともに、その外包ラミネート材が重ね合わされて、周縁部に沿って互いの熱融着層同士が接合一体化され、
前記内心材が、金属製の伝熱層と、その伝熱層の両面側に設けられた樹脂製の熱融着層とを含む内心ラミネート材によって構成されるとともに、凹凸部を有し、
前記内心材の凹部底面および凸部頂面の熱融着層と、前記外包材の熱融着層とが接合一体化され、
前記被覆層は、前記外包材および前記内心材の熱融着層より融点が10℃以上高い樹脂によって構成されていることを特徴とする樹脂融着製熱交換器。
【請求項2】
前記外包材の熱融着層と、前記内心材の熱融着層とが同種の樹脂によって形成されている請求項1に記載の樹脂融着製熱交換器
【請求項3】
前記凹部の深さまたは前記凸部の高さが、0.1mm~50mmに設定されている請求項1または2に記載の樹脂融着製熱交換器。
【請求項4】
前記熱媒体流入口および前記熱媒体流出口に、ジョイントパイプがそれぞれ設けられ、そのジョイントパイプを介して熱媒体が前記外包材の内部に対し出入するように構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂融着製熱交換器。
【請求項5】
前記ジョイントパイプの外周面に樹脂製の熱融着層が設けられ、
前記外包ラミネート材が、前記ジョイントパイプを介して重ね合わされるとともに、前記外包ラミネート材の熱融着層が前記ジョイントパイプの熱融着層に接合一体化されることにより、前記ジョイントパイプが前記外包材に封止状態に取り付けられ、
前記外包ラミネート材の熱融着層と、前記ジョイントパイプの熱融着層とが同種の樹脂によって構成されている請求項4に記載の樹脂融着製熱交換器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂融着製熱交換器の製造方法であって、
前記内心材の凹凸部をエンボス加工またはコルゲート加工によって形成するようにしたことを特徴とする樹脂融着製熱交換器の製造方法。
【請求項7】
前記内心ラミネート材を一対のエンボスロールまたは一対のコルゲートロールによって挟み込みつつ、その一対のロール間に通過させることにより、前記内心材に凹凸部を形成するようにした請求項6に記載の樹脂融着製熱交換器の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂融着製熱交換器の製造方法であって、
前記内心材の凹凸部をプリーツ加工によって形成するようにしたことを特徴とする樹脂融着製熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属層に樹脂層が積層されたラミネートシート等のラミネート材を用いて製作される樹脂融着製熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の電子機器における小型高性能化に伴い、電子機器のCPU回りの発熱対策も重要となり、機種によっては水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、CPU等の電子部品に対する熱負荷を軽減するとともに、筐体内に熱をこもらせないようにして、熱による悪影響を回避する技術が従来より提案されている。
【0003】
また電気自動車やハイブリッド車に搭載される電池モジュールは、充電と放電とを繰り返し行うために電池パックの発熱が大きくなる。このため電池モジュールにおいても上記の電子機器と同様に、水冷式冷却器やヒートパイプを組み込んで、熱による悪影響を回避する技術が提案されている。
【0004】
さらにシリコンカーバイト(SiC)製等のパワーモジュールも発熱対策として冷却板やヒートシンクを組み付ける等の対策が提案されている。
【0005】
ところで、上記のスマートフォンやパーソナルコンピュータのような電子機器では筐体が薄く、その薄い筐体内における限られたスペースに多数の電子部品や冷却器が組み込まれるため、冷却器自体も薄型のものが用いられることになる。
【0006】
従来において、小型の電子機器に組み込まれるヒートパイプ等の薄型の冷却器は一般的に、アルミニウム等の伝熱性が高い金属を加工して得られた複数の金属加工部品をろう付けや拡散接合等で接合することにより製作するようにしている(特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-59693号公報
【文献】特開2015-141002号公報
【文献】特開2016-189415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の小型電子機器用冷却器は、各構成部品が、鋳造や鍛造等の塑性加工や、切削等の除去加工等の金属加工(機械加工)によって製作されているが、このような金属加工は、面倒で制約も厳しいため、薄型化に限界があり、現行以上に薄型化を図ることが困難であるという課題があった。
【0009】
また従来の小型電子機器用冷却器は、各構成部品を接合する際に難易度の高いろう付けや拡散接合等の金属加工(金属間接合)を用いて製作する必要があり、製作が困難であるばかりか、生産効率が低下してコストも増大するという課題があった。
【0010】
その上さらに、従来の冷却器は、制約のある金属加工を用いて製作するものあるため、形状や大きさを簡単に変更することができず、設計の自由度に乏しく、汎用性に欠けるという課題も抱えている。
【0011】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、十分な薄型化を図ることができるとともに、設計の自由度が高く汎用性に優れる上さらに、効率良く簡単に製作できてコストも削減することができる樹脂融着製熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0013】
[1]端部に熱媒体流入口および熱媒体流出口が設けられ、かつ前記熱媒体流入口から流入した熱媒体が内部を流通して前記熱媒体流出口から流出する袋状の外包材と、前記外包材の内部に配置される内心材とを備えた樹脂融着製熱交換器であって、
前記外包材が、金属製の伝熱層と、その伝熱層の一面側に設けられた樹脂製の熱融着層とを含む外包ラミネート材によって構成されるとともに、その外包ラミネート材が重ね合わされて、周縁部に沿って互いの熱融着層同士が接合一体化されることにより袋状に形成され、
前記内心材が、金属製の伝熱層と、その伝熱層の両面側に設けられた樹脂製の熱融着層とを含む内心ラミネート材によって構成されるとともに、凹凸部を有し、
前記内心材の凹部底面および凸部頂面の熱融着層と、前記外包材の熱融着層とが接合一体化されていることを特徴とする樹脂融着製熱交換器。
【0014】
[2]前記外包材の熱融着層と、前記内心材の熱融着層とが同種の樹脂によって形成されている前項1に記載の樹脂融着製熱交換器。
熱交換器。
【0015】
[3]前記凹部の深さまたは前記凸部の高さが、0.1mm~50mmに設定されている前項1または2に記載の樹脂融着製熱交換器。
【0016】
[4]前記熱媒体流入口および前記熱媒体流出口に、ジョイントパイプがそれぞれ設けられ、そのジョイントパイプを介して熱媒体が前記外包材の内部に対し出入するように構成されている前項1~3のいずれか1項に記載の樹脂融着製熱交換器。
【0017】
[5]前記ジョイントパイプの外周面に樹脂製の熱融着層が設けられ、
前記外包ラミネート材が、前記ジョイントパイプを介して重ね合わされるとともに、前記外包ラミネート材の熱融着層が前記ジョイントパイプの熱融着層に接合一体化されることにより、前記ジョイントパイプが前記外包材に封止状態に取り付けられ、
前記外包ラミネート材の熱融着層と、前記ジョイントパイプの熱融着層とが同種の樹脂によって構成されている前項4に記載の樹脂融着製熱交換器。
【0018】
[6]前項1~5のいずれか1項に記載の樹脂融着製熱交換器の製造方法であって、
前記内心材の凹凸部をエンボス加工またはコルゲート加工によって形成するようにしたことを特徴とする樹脂融着製熱交換器の製造方法。
【0019】
[7]前記内心ラミネート材を一対のエンボスロールまたは一対のコルゲートロールによって挟み込みつつ、その一対のロール間に通過させることにより、前記内心材に凹凸部を形成するようにした前項6に記載の樹脂融着製熱交換器の製造方法。
【0020】
[8]前項1~5のいずれか1項に記載の樹脂融着製熱交換器の製造方法であって、
前記内心材の凹凸部をプリーツ加工によって形成するようにしたことを特徴とする樹脂融着製熱交換器の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
発明[1]の樹脂融着製熱交換器によれば、熱融着層を有するラミネート材を熱融着して製作するものであるため、面倒な金属加工を用いる必要がなく、効率良く簡単に製作できてコストを削減することができるとともに、ラミネート材を貼り合わせて製作するものであるため、耐食性を持ち十分な薄型化を図ることができる。さらに本発明の熱交換器において、外包材および内心材としてのラミネート材はその形状や大きさを簡単に変更できるため、設計の自由度が増して、汎用性を向上させることができる。
【0022】
発明[2]の樹脂融着製熱交換器によれば、外包材と内心材とをより確実に接合一体化でき、耐圧性を向上させることができる。
【0023】
発明[3]の樹脂融着製熱交換器によれば、外包材の内部に熱媒体用の流通路を確実に形成することができる。
【0024】
発明[4]の樹脂融着製熱交換器によれば、ジョイントパイプを介して外包材の内部に対し熱媒体の出し入れを行うことができるため、回路の継部から熱媒体の漏れが発生するのを抑制することができる。
【0025】
発明[5]の樹脂融着製熱交換器によれば、外包材にジョイントパイプをより確実に封止した状態に装着することができる。
【0026】
発明[6]~[8]の製造方法によれば、上記発明[1]~[5]の樹脂融着製熱交換器を効率良く確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1はこの発明の実施形態である樹脂融着製熱交換器を示す図であって、図(a)は平面図、図(b)は図(a)のB-B線断面に相当する側面断面図、図(c)は図(a)のC-C線断面に相当する正面断面図である。
図2図2図1(c)の一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す断面図である。
図3A図3Aは実施形態の樹脂融着製熱交換器における内心材の一例を示す斜視図である。
図3B図3Bは実施形態の樹脂融着製熱交換器における内心材の他の例を示す斜視図である。
図4図4は実施形態の内心材の加工方法を説明するための側面図である。
図5A図5Aは実施形態の樹脂融着製熱交換器の製造手順を説明するための図であって、図(a)は正面断面図、図(b)は平面図である。
図5B図5Bは実施形態の樹脂融着製熱交換器の製造手順を説明するための図であって、図(a)は正面断面図、図(b)は平面図である。
図5C図5Cは実施形態の樹脂融着製熱交換器の製造手順を説明するための図であって、図(a)は正面断面図、図(b)は平面図である。
図5D図5Dは実施形態の樹脂融着製熱交換器の製造手順を説明するための図であって、図(a)は正面断面図、図(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1はこの発明の実施形態である樹脂融着製熱交換器を示す図、図2図1(c)の一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す断面図である。なお本実施形態の樹脂融着製熱交換器においては発明の理解を容易にするため、図1(a)の上下方向を「前後方向」とし、左右方向を「左右方向」として説明し、さらに図1(c)の上下方向を「上下方向(厚さ方向)」として説明する。なお本実施形態の樹脂融着製熱交換器は、前後方向、左右方向および上下方向のいずれの方向においても対称形状に形成されているため、前後方向、左右方向および上下方向のいずれの方向を入れ替えても同じ構成となる。
【0029】
図1および図2に示すように本実施形態の樹脂融着製熱交換器は、袋状の外包材1と、その外包材1の内部に配置される内心材2とを備え、外包材1の前端および後端に、冷媒流入口(熱媒体流入口)3および冷媒流出口(熱媒体流出口)4が設けられている。
【0030】
外包材1は、ラミネートシート等のラミネート材としての外包ラミネート材11によって構成されている。図2に示すように外包ラミネート材11は、金属製の伝熱層12と、その伝熱層12の一面(内面)に積層された樹脂製の熱融着層13と、伝熱層12の他面(外面)に積層された樹脂製の被覆層14とを備えている。そして本実施形態の外包材1は、後述するように矩形状に形成された2枚の外包ラミネート材11が上下に重ね合わされて、外周縁部の熱融着層13同士が熱融着(ヒートシール)によって接合一体化されることにより、袋状に形成されている。
【0031】
また外包材1における冷媒流入口3および冷媒流出口4にはジョイントパイプ31,41が設けられる。本実施形態においてジョイントパイプ31,41は例えば、合成樹脂の一体成形品によって構成されており、その少なくとも表面の樹脂が熱融着層として構成されるものである。
【0032】
このジョイントパイプ31,41は、外包材1を構成する2枚の外包ラミネート材11の前端部間および後端部間に挟み込まれるように配置されて、各ジョイントパイプ31,41の外周面(熱融着層)が、それに対応する外包ラミネート材11の熱融着層13に熱融着によって接合一体化されている。これによりジョイントパイプ31,41が外包材1の冷媒流入口3および冷媒流出口4の位置において外包材1の前端部および後端部を貫通した状態で外包材1に固定されている。この状態では、ジョイントパイプ31,41の外周面全域と外包ラミネート材11の熱融着層12との間は熱融着によって封止されている。さらに各ジョイントパイプ31,41の一端側は外包材1の外部に配置されるとともに、他端側は外包材1の内部に配置されており、冷媒を冷媒流入口3側のジョイントパイプ31を介して外包材1の内部に導入できるとともに、外包材1の内部の冷媒を冷媒流出口4側のジョイントパイプ41を介して外部に導出できるようになっている。
【0033】
ここで本実施形態において、外包ラミネート材11における伝熱層12は、金属フィルム(金属箔)によって構成されている。伝熱層12の金属フィルムとして具体的には、アルミニウム箔、ステンレス箔、ニッケル箔またはメッキ加工した銅箔、ニッケル箔および銅箔のクラッドメタルを好適に用いることができる。特に熱伝導性、コスト等を考慮するとアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。
【0034】
また伝熱層12としては、厚みが8μm~300μmのもの、より好ましくは8μm~100μmのものを好適に用いることができる。
【0035】
熱融着層13としては、樹脂フィルムを好適に用いることができる。熱融着層13の樹脂フィルムとして具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン(例えば無延伸ポリプロピレン)等のポリオレフィン系樹脂またはそれらの変性樹脂、フッ素系樹脂、PET樹脂等のポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱融着性を有する樹脂フィルムを好適に用いることができる。
【0036】
熱融着層13としては、厚みが20μm~5000μmのもの、より好ましくは20μm~1000μmのものを好適に用いることができる。
【0037】
また被覆層14は無くても良いが、被覆層14を積層することによって熱交換器の金属製の伝熱層12の耐食防止、外圧・内圧による漏れ(破損)防止等の保護層としての効果だけでなく、絶縁性樹脂を被覆層14に用いることで熱交換の対象となる装置に対し短絡・漏電防止等の絶縁効果を付与できる一方、逆に導電性の樹脂を被覆層14に用いることで熱交換の対象となる装置に対し帯電防止の効果を付与することができる。この被覆層14としては、上記熱融着層13と同様の樹脂フィルムを好適に用いることができる。本実施形態において被覆層14は、上記熱融着層13と同種のものを用いても良いし、異種のものを用いても良い。なお、外包材1と内心材2を熱融着させることを考慮すると被覆層14は熱融着層13より融点が高いものを用いるのが好ましく、特に融点が10℃以上高い樹脂を使用することがより好ましい。
【0038】
さらに被覆層14の厚みは、特に限定されるものではないが、上記熱融着層13と同程度もしくは薄く設定するのが良い。
【0039】
本実施形態においては、伝熱層12用の金属フィルムの一面(内面)に熱融着層13用の樹脂フィルムが接着剤によって接着されるとともに、他面(外面)に被覆層14用の樹脂フィルムが接着剤によって接着されることにより、外包ラミネート材11が製作されるものである。なお外包ラミネート材11は、周知のラミネート工法を用いて製作することができる。
【0040】
また本実施形態において、ジョイントパイプ31,41は、硬質合成樹脂の一体成形品によって構成されており、外包ラミネート材11との熱融着性を考慮すると、外包ラミネート材11の熱融着層13と同種の樹脂を用いて製作するのが好ましい。
【0041】
一方、内心材2は、外包材1と同様、ラミネートシート等のラミネート材としての内心ラミネート材21によって構成されている。この内心ラミネート材21は、金属製の伝熱層22と、その伝熱層22の両面に積層された樹脂製の熱融着層23とを備えている。
【0042】
ここで本実施形態において、内心ラミネート材21の伝熱層22は、上記外包ラミネート材11の伝熱層12と同様なものを好適に用いることができる。本実施形態において内心ラミネート材21の伝熱層22は、外包ラミネート材11の伝熱層12と同種のものを用いても良いし、異種のものを用いても良い。
【0043】
内心ラミネート材21の熱融着層23は、外包ラミネート材1の熱融着層13と同様のものを好適に用いることができる。本実施形態においては、熱融着性を考慮すると、内心ラミネート材21の熱融着層13と、外包ラミネート材1の熱融着層13とは同種のものを使用するのが好ましい。
【0044】
本実施形態においては、伝熱層22用の金属フィルムの両面に熱融着層23用の樹脂フィルムが接着剤によって接着されることにより、内心ラミネート材21が製造されるものである。なお内心ラミネート材21は、周知のラミネート工法を用いて製作することができる。
【0045】
本実施形態においては図3に示すように内心ラミネート材21がコルゲート加工されて波板形状に形成されて、内心材2として構成される。この波板状の内心材2における一面側(下側)に突出(陥没)した部分が凹部25として構成されるとともに、他面側(上側)に突出した部分が凸部26として構成されている。
【0046】
本実施形態において、コルゲート加工は図4に示すように一対のコルゲートロール5を用いて行われる。各コルゲートロール5は、その外周面に回転方向に凹部55および凸部56が交互に並ぶように形成されている。一方のコルゲートロール5の各凹部55が他方のコルゲートロール5の各凸部56に対応し、一方のコルゲートロール5の各凸部56が他方のコルゲートロール5の各凹部55に対応しており、一対のコルゲートロール5が互いの凹凸部55,56がかみ合うように構成されている。そして内心ラミネート材21を一対のコルゲートロール5で挟み込みつつ回転させることにより、内心ラミネート材21を一対のコルゲートロール5間に通過させて波板形状に成形する。さらに波板状に成形された内心ラミネート材21を、コルゲートロール5の下流側に配置されたシャーナイフ(シャー切断刃)51によって所定長さに切断することによって、内心材2が製造されるものである。
【0047】
この構成の内心材2が既述した通り、外包材1の内部に収容されている。そして内心材2の凹部55の底面における熱融着層23が外包材1の下側の外包ラミネート材11の熱融着層13に熱融着により接合一体化されるとともに、内心材2の凸部26の頂面における熱融着層23が外包材1の上側の外包ラミネート材11の熱融着層13に熱融着により接合一体化されている。
【0048】
本実施形態において、波板状の内心ラミネート材21の波寄方向は、熱交換器の左右方向(図1(a)の左右方向)に対応して配置されている。
【0049】
なお本実施形態においては、内心材2を波板状に形成して凹凸部25,26を形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては図3Bに示すように、エンボス加工によって内心材2に前後方向および左右方向にそれぞれ凹部25および凸部26が交互に並んで配置されるように、複数の凹部25および凸部26を千鳥格子状等に分散して形成するようにしても良い。
【0050】
このエンボス加工は、一対のエンボスロールを用いて行うことができる。例えばエンボスロールとして、外周面に回転方向および軸心方向に沿って凹部および凸部が交互に並んで配置されるように形成されたものが用いられる。さらに一対のエンボスロールのうち、一方のエンボスロールの各凹部を他方のエンボスロールの各凸部に対応し、一方のエンボスロールの各凸部を他方のエンボスロールの各凹部に対応させて、一対のエンボスロールを互いの凹凸部がかみ合うように配置する。そして内心ラミネート材21を一対のエンボスロールで挟み込みつつ回転させることにより、内心ラミネート材を一対のエンボスロール間に通過させて凹凸加工する。これにより千鳥格子状等に凹部25および凸部26が分散した状態に形成された図3Bに示すような内心材2を製作することができる。
【0051】
また本発明において、凹部25および凸部26の形状は、特に限定されるものではなく、円形状、楕円形状、長円形状の他、三角形、四角形、五角形等の多角形状、さらに異形状に形成しても良く、さらにこれらの形状を組み合わせたものでも良く、例えばダイヤ柄状、絹目状、布目状、梨地状、水玉状、すだれ状、筋柄状等に形成するようにしても良い。
【0052】
さらに複数の凹凸部の配列パターンも特に限定されるものではなく、どのように配列しても良く、また必ずしも規則性を持たせて配列する必要はなく、複数の凹凸部をランダムに配置するようにしても良い。
【0053】
また本実施形態においては、コルゲート加工によって内心材2を波板形状に形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、プリーツ加工によって内心材2を波板形状に形成するようにしても良い。
【0054】
ここで本実施形態において、内心材2の凹部25の深さまたは凸部26の高さを、0.1mm~50mmに設定するのが好ましい。すなわち凹凸部25,26の深さまたは高さをこの範囲内に調整することによって、外包材1の内部に形成される冷媒流通用の流路を確実に形成することができ、良好な流動特性を得ることができる。
【0055】
なお本実施形態において、内心材2の凹部25の深さとは、内心材2の厚さ方向(上下方向)中間位置から最深部までの深さであり、凸部26の高さとは、内心材2の厚さ方向(上下方向)中間位置から最頂部までの高さであり、凹部25の深さと凸部26の高さとを加算した寸法が、内心材2の厚み寸法に相当するものである。
【0056】
次に本実施形態の樹脂融着製熱交換器の製造手順について説明する。
【0057】
図5Aに示すように1枚の外包ラミネート材(下側の外包ラミネート材)11の外周縁部を除く中間領域に、コルゲート加工やエンボス加工等によって凹凸部25,26が形成された内心ラミネート材21である内心材2を設置する。さらに外包ラミネート材11の外周縁部における前端縁部および後端縁部にジョイントパイプ31,41を設置する。
【0058】
続いて図5Bに示すように上側の外包ラミネート材11を、上記内心材2の上面およびジョイントパイプ31,41の上側外周を覆うようにして、下側の外包ラミネート材11上に配置する。こうして上下の外包ラミネート材11の外周縁部における互いの熱融着層13同士を重ね合わせて配置する。
【0059】
次に図5Cに示すように重ね合わせた2枚の外包ラミネート材11の外周縁部を、上下一対の加熱シール型6によって挟み込みながら加熱する。これにより上下の外包ラミネート材11の外周縁部における熱融着層13同士を熱融着(ヒートシール)して接合一体化すると同時に、ジョイントパイプ31,41の上側部外周および下側部外周を上下の外包ラミネート材11の外周縁部における熱融着層13に熱融着(ヒートシール)して接合一体化する。こうして上下の外包ラミネート材11の互いの外周縁部をジョイントパイプ31,41の一部を外部に引き出した状態で液密ないし気密状態に封止する。なお図5C(b)においては発明の理解を容易にするため、熱融着領域に斜線によるハッチングを付与している(図5D(b)においても同じ)。
【0060】
続いて図5Dに示すように、外周縁部を熱融着した外包材1の中間領域を上下一対の加熱板7によって挟み込みながら加熱する。これにより内心材2の凹部25の底面における熱融着層23と、下側の外包材1の熱融着層13とを熱融着(ヒートシール)して接合一体化すると同時に、内心材2の凸部26の頂面における熱融着層23と、上側の外包材1の熱融着層13とを熱融着(ヒートシール)して接合一体化する。
【0061】
こうして内心材2の凹凸部25,26を外包材1に熱融着した後、図5Dの括弧付きの符号に示すように、外包材1を上下一対の冷却板8によって挟み込みながら冷却することによって、本実施形態の樹脂融着製熱交換器を製作するものである。
【0062】
次に本実施形態によって製作した樹脂融着製熱交換器の具体例について説明する。
【0063】
まず外包ラミネート材11として、厚さ100μmのアルミ箔(伝熱層12)の上面に厚さ12μmのPET樹脂製の樹脂フィルム(被覆層14)が接着剤によって接着されるとともに、伝熱層12の下面に厚さ40μmのLLDPE(直鎖状短鎖分岐ポリエチレン)製の樹脂フィルム(熱融着層13)が接着剤によって接着されたものを準備した。
【0064】
さらに内心ラミネート材21として、厚さ100μmのアルミ箔(伝熱層22)の上下両面に、厚さ40μmのLLDPE(直鎖状短鎖分岐ポリエチレン)製の樹脂フィルム(熱融着層23)が接着剤によって接着されたものを準備した。
【0065】
さらにポリエチレン樹脂の一体成形品によって構成される冷媒流入口3および冷媒出口4用のジョイントパイプ31,41を準備した。
【0066】
次に内心ラミネート材21に、エンボスロールを用いて多数の凹凸部25,26を形成した。
【0067】
さらに外包ラミネート材11および内心ラミネート材21を所定のサイズに裁断した後、上記図5A図5Dで説明したように、2枚の外包ラミネート材11によって、内心ラミネート材21および2本のジョイントパイプ31,41を挟み込んで所要箇所を熱融着することによって、本実施形態に準拠した樹脂融着製熱交換器を製作した。
【0068】
また内心ラミネート材21に、コルゲートロールを用いて波状の凹凸部25,26を形成した以外は、上記と同様にして、本実施形態に準拠した樹脂融着製熱交換器を製作した。
【0069】
こうして既述したように、内心材2がエンボス加工されたものと、コルゲート加工されたものとの2種類の樹脂融着製熱交換器を製作した。
【0070】
以上のように構成された本実施形態の樹脂融着製熱交換器は、スマートフォンやパーソナルコンピュータ等の電子機器に組み込まれて電子機器のCPU等の電子部品から発生する熱を吸収する冷却器として用いられるものである。すなわち冷媒流入口3側のジョイントパイプ31から、水や不凍液等の冷媒が外包材1内に流入されるとともに、その冷媒が外包材1内を通って冷媒流出口4側のジョイントパイプ41側から流出される。こうして外包材1内を流通する冷媒と、外包材1の外面周辺に配置された電子部品との間で熱交換されて、電子部品から発生する熱が吸収されて、電子部品が冷却されるものである。
【0071】
以上のように構成された本実施形態の樹脂融着製熱交換器によれば、金属製の伝熱層12,22に樹脂製の熱融着層13,23が積層されたラミネート材11,21を適宜熱融着するだけで簡単に製作することができるため、ろう付け接合等の難易度が高くて面倒な接合加工によって製作する従来の金属製の熱交換器に比べて、コストの削減および生産性の向上を図ることができる。
【0072】
さらに本実施形態の熱交換器における構成部品としてのラミネート材11,21は、伝熱層12,22としての金属フィルムに、熱融着層13、23および被覆層14としての樹脂フィルムを積層接着して製作するものであるため、周知のラミネート工法を用いて連続的に効率良く製作することができ、塑性加工や切削加工等の面倒かつ制約のある金属加工を用いる場合と異なり、より一層生産効率の向上およびコストの削減を図ることができる。
【0073】
しかも本実施形態においては、コルゲートロール5やエンボスロールを用いて内心材2に凹凸部25,26を形成するものであるため、内心材用の内心ラミネート材21自体を製作する工程から、凹凸部25,26を形成する工程にかけての一連の工程を、ロールトゥロールによって連続的に行うことができ、生産効率の向上およびコストの削減をより一層確実に図ることができる。
【0074】
また本実施形態の樹脂融着製熱交換器は、薄型のラミネートシート(ラミネート材)11,21を貼り合わせて形成するものであるため、十分な薄肉化および軽量化を確実に図ることができる。
【0075】
また本実施形態の樹脂融着製熱交換器によれば、外包材1の内部に内心材2を配置して、外包材1の内部に冷媒流通用空間(流路)を確保するものであるため、内圧および外圧のいずれの圧力に対しても高い強度を確保でき、動作信頼性を向上させることができる。
【0076】
特に本実施形態においては、内心材2の凹凸部25,26の形状や大きさを簡単に変更することができるため、その変更により、耐圧強度を自在に調整できるとともに、冷媒の流路断面の大きさ(流通量)を自在に調整することができる。このため例えば冷媒の流通量を多く設定すれば、熱交換性能を簡単に向上させることができる。
【0077】
さらに本実施形態の樹脂融着製熱交換器は、ラミネート材11,21である外包材1および内心材2によって形成するものであるため、熱交換器自体の形状や大きさを簡単に変更できるとともに、既述した通り、厚みや強度、熱交換性能等も簡単に変更できるので、熱交換器取付位置等に合わせて適切な構成に簡単に仕上げることができ、設計の自由度が増し、汎用性も向上させることができる。
【0078】
また本実施形態においては、外包材1の熱融着層13と、それに熱融着される内心材2の熱融着層23とを同種の樹脂によって構成する場合には、外包材1と内心材2とをより確実に接合一体化でき、より一層内圧に対する強度を向上できて、動作信頼性をより一層向上させることができる。
【0079】
また本実施形態においては、外包材1の熱融着層13と、外包材1に貫通状態に装着する冷媒流入口3および冷媒流出口4のジョイントパイプ31,41とを同種の樹脂によって構成する場合には、ジョイントパイプ31,41の外周面を外包材1の内周面に、より確実に接合一体化でき、ジョイントパイプ31,41を外包材1により確実に気密ないし液密に封止した状態に装着することができ、液漏れ等を確実に防止できて、より一層高い動作信頼性を得ることができる。
【0080】
なお上記実施形態においては、樹脂融着製熱交換器をその内部に冷却用の熱媒体(冷媒)を流通させて冷却器(冷却装置)として用いる場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、樹脂融着製熱交換器をその内部に加熱用の熱媒体(熱媒)を流通させて加熱器(加熱装置)や発熱器(発熱装置)として用いることも可能である。
【0081】
また上記実施形態においては、外包材1を2枚の外包ラミネート材11を重ね合わせて外周縁部を熱融着することによって形成する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、外包材1を1枚の外包ラミネート材11によって形成することも可能である。例えば1枚の外包ラミネート材11を2つ折りにして、折り曲げ辺の部分を除く他の3辺を熱融着することによって、袋状の外包材を形成するようにしても良い。
【0082】
さらに本発明においては、外包材1に対しあらかじめ深絞り成型等によって内心材2を収納するための加工を行っておいても良い。
【0083】
また上記実施形態においては、外包材として伝熱層の外面側(他面側)に被覆層が設けられたものを用いる場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、外包材として、伝熱層の外面側に被覆層が設けられないものを用いるようにしても良い。
【0084】
さらに上記実施形態の外包材および内心材においては、伝熱層に熱融着層を積層する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、伝熱層と熱融着層との間に他の層(中間層)を積層するようにしても良い。
【0085】
さらに上記実施形態においては、外包材1および内心材2として3層構造のラミネート材によって構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、外包材1を2層または4層以上のラミネート材によって構成しても良いし、内心材2を4層以上のラミネート材によって構成するようにしても良い。
【0086】
また上記実施形態においては、前端部および後端部に冷媒流入口3および冷媒流出口4を形成する場合を例に挙げて説明したが、熱媒体流入口(冷媒流入口)および熱媒体流出口(冷媒流出口)の形成位置は限定されるものではなく、どの位置に形成するようにしても良い。
【0087】
また本発明は、内心材2に凹部のみまたは凸部のみが形成される場合も含まれる。例えば凹部のみが形成される内心材においては、平坦部が凸部を兼用することになり、凸部のみが形成される内心材においては、平坦部が凹部を兼用することになる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
この発明の樹脂融着製熱交換器は、スマートフォンやパーソナルコンピュータのCPU回り、電池回りの発熱対策、液晶テレビ、有機ELテレビ、プラズマテレビのディスプレイ回りの発熱対策、自動車のパワーモジュール回り、電池回りの発熱対策に用いられる冷却器(冷却装置)の他、床暖房、除雪に用いられる加熱器(加熱装置)として利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1:外包材
11:外包ラミネート材
12:伝熱層
13:熱融着層
2:内心材
21:内心ラミネート材
22:伝熱層
23:熱融着層
25:凹部
26:凸部
3:冷媒流入口
31:ジョイントパイプ
4:冷媒流出口
41:ジョイントパイプ
5:コルゲートロール
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D