(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】スライム処理システム
(51)【国際特許分類】
E02D 15/06 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
E02D15/06 101
(21)【出願番号】P 2018146772
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2017151574
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592087599
【氏名又は名称】敬産興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬次
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 栄治
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-024477(JP,A)
【文献】特開平01-178695(JP,A)
【文献】特開平11-351178(JP,A)
【文献】特開2011-038344(JP,A)
【文献】特開2005-213866(JP,A)
【文献】特開平02-024476(JP,A)
【文献】特開2010-163848(JP,A)
【文献】特開2001-098550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 15/06
E21B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライム処理用サンドポンプとスライム分離槽を用いて掘削孔内のスライム混合水を処理するスライム処理システムであって、
スライム分離槽は、第1分離槽、第2分離槽及び貯留槽からなり、
前記第1分離槽の上部には、前記スライム処理用サンドポンプにより回収したスライム混合水の砂礫及びゴミを取り除くための振動篩と、
前記第1分離槽の底部からポンプにより引き上げ、スライムと第1処理水を分離する第1スライム分離装置と、
前記第1分離槽の底部に沈殿したスライムを排出するための第1排出口を備え、
前記第2分離槽は、前記第1処理水を導入し、底部からポンプにより引き上げて、スライムと第2処理水を分離する第2スライム分離装置と、
前記第2分離槽の底部に沈殿したスライムを排出するための第2排出口を備え、
前記貯留槽は、前記第2処理水を導入して貯留する処理水槽と、前記第2処理水を外部に供給するためのポンプを備えて
おり、
前記スライム処理用サンドポンプにより掘削孔内のスライム混合水を回収するとともに、前記第2処理水を良液として供給しながら置換する良液置換工程を有し、
該良液置換工程において、掘削孔の底部中心付近に沈降させる着底部材と、該着底部材の上部に掘削孔に平行に取り付けられたパイプと、
該パイプの上部に設けられたフロート部材と、
該フロート部材から側壁に向けて延びる中間アームと、
前記着底部材に設けられ、掘削孔の底部側壁に向けて延びる底部アームと、
前記パイプに挿通され、先端に掘削孔の底部に沈降させるための中心錘を接続した中心軸ワイヤーと、
前記中間アーム及び前記底部アームの先端に設けられた挿通孔に挿通され、先端に掘削孔の底部側壁に沈降させるための側壁錘を接続した側壁ワイヤーとを備えたスライム除去確認装置を用い、
該スライム除去確認装置の前記中心錘及び前記側壁錘を掘削孔の底部に沈降させた状態で、前記側壁錘を掘削孔の底部側壁に沿って移動させることにより、前記中心軸ワイヤーと前記側壁ワイヤーの長さの差により掘削孔の底部側壁のスライムの除去状態を確認することを特徴とするスライム処理システム。
【請求項2】
前記スライム処理用サンドポンプは、サンドポンプと、円筒形状の上部水流方向制限板と、前記上部水流方向制限板の中央に配設され、かつ、前記サンドポンプの駆動回転軸の下端に固定されたスクリューと、前記上部水流方向制限板の上部に設けられた上部取付用円板と、前記スクリューの下部に配設された錐体形状の下部水流方向ガイド板と、前記上部取付用円板と前記下部水流方向ガイド板とを連結する連結部材とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライム処理システム。
【請求項3】
前記スクリューの撹拌羽根の角度が、前記上部取付用円板の水平面に対して10~18°の範囲であることを特徴とする請求項2に記載のスライム処理システム。
【請求項4】
前記第1スライム分離装置及び第2スライム分離装置が複数設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスライム処理システム。
【請求項5】
前記良液置換工程において、前記スライム処理用サンドポンプを掘削孔の底部側壁に沿って旋回移動させながら前記スライム混合水を回収することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスライム処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライム処理システムに関し、詳しくは、現場築造杭や連続地下壁等を構築するために掘削した掘削孔内のスライム混合水を処理するためのスライム処理システムである。
【背景技術】
【0002】
通常、現場築造杭や連続地下壁等を構築する工事を実施するためには縦孔を掘削するが、掘削後の掘削孔内のスライム混合水を排出して良液の水と置換するスライム処理が必要である。スライム混合水は、掘削孔内の崩落土や泥水中の土砂等のスライムが掘削時に用いた水や安定液と混合したものであり、このスライムが残留する掘削孔にコンクリートを打ち込んだ場合、施工後に荷重ががかかったときに杭が沈下したり、コンクリートの強度低下や、杭の支持力低下の原因となる。
【0003】
このスライム処理には、掘削完了直後に行う一次スライム処理と、コンクリート打込み前に行う二次スライム処理があるが、一次スライム処理で殆どのスライムを除去することが望ましい。
【0004】
この一次スライム処理には、通常、時間を置いて掘削孔底部に沈降したスライムを底ざらいバケットにより除去したり、掘削直後にスライムバケットを掘削孔底部に下して、沈降するスライムを受け止める方法が用いられている。しかしながら、これらのバケットを用いる方法では、スライムの除去に時間がかかるうえ、スライムの除去率が悪いという問題があった。
【0005】
このような問題を解決する方法として、スライム処理用サンドポンプを用いて除去する方法が提案されている(特許文献1を参照)。この方法は、特殊な除去機構を備えたサンドポンプを用いることにより効率よくスライム混合水を排出できる点で優れたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のスライム処理用サンドポンプを用いて排出したスライム混合水は、その効率的な回収性能から、時間当たりのスライムの除去割合が多く分離が困難であるため、そのまま廃棄物として処理する必要があり、非常にコストがかかるという問題があった。また、大径の掘削孔を処理する場合、掘削孔の底部側壁部分のスライムが除去しずらいという問題もあった。
【0008】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、掘削孔内のスライム混合水を確実かつ効率よく回収するとともに、回収したスライム混合水を効率よく短時間に分離し、さらに、再使用可能な良液に分離再生することが可能なスライム処理システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明のスライム処理システムは以下のことを特徴としている。
【0010】
第1に、スライム処理用サンドポンプとスライム分離槽を用いて掘削孔内のスライム混合水を処理するスライム処理システムであって、スライム分離槽は、第1分離槽、第2分離槽及び貯留槽からなり、前記第1分離槽の上部には、前記スライム処理用サンドポンプにより回収したスライム混合水の砂礫及びゴミを取り除くための振動篩と、前記第1分離槽の底部からポンプにより引き上げ、スライムと第1処理水を分離する第1スライム分離装置と、前記第1分離槽の底部に沈殿したスライムを排出するための第1排出口を備え、前記第2分離槽は、前記第1処理水を導入し、底部からポンプにより引き上げて、スライムと第2処理水を分離する第2スライム分離装置と、前記第2分離槽の底部に沈殿したスライムを排出するための第2排出口を備え、前記貯留槽は、前記第2処理水を導入して貯留する処理水槽と、前記第2処理水を外部に供給するためのポンプを備えていることを特徴とするスライム処理システムである。
【0011】
第2に、前記第1の発明のスライム処理システムにおいて、前記スライム処理用サンドポンプは、サンドポンプと、円筒形状の上部水流方向制限板と、前記上部水流方向制限板の中央に配設され、かつ、前記サンドポンプの駆動回転軸の下端に固定されたスクリューと、前記上部水流方向制限板の上部に設けられた上部取付用円板と、前記スクリューの下部に配設された錐体形状の下部水流方向ガイド板と、前記上部取付用円板と前記下部水流方向ガイド板とを連結する連結部材とから構成されていることが好ましい。
【0012】
第3に、前記第2の発明のスライム処理システムにおいて、前記スクリューの撹拌羽根の角度が、前記上部取付用円板の水平面に対して10~18°の範囲であることが好ましい。
【0013】
第4に、前記第1から第3の発明のスライム処理システムにおいて、前記第1スライム分離装置及び第2スライム分離装置が複数設けられていることが好ましい。
【0014】
第5に、前記第1から第4の発明のスライム処理システムにおいて、前記スライム処理用サンドポンプにより掘削孔内のスライム混合水を回収しながら良液と置換する良液置換工程において、前記第2処理水を良液として供給しながら置換することが好ましい。
【0015】
第6に、前記第5の発明のスライム処理システムにおいて、前記スライム処理用サンドポンプにより掘削孔内のスライム混合水を回収しながら良液と置換する良液置換工程において、前記スライム処理用サンドポンプを掘削孔の底部側壁に沿って旋回移動させながら前記スライム混合水を回収することが好ましい。
【0016】
第7に、前記第5又は第6の発明のスライム処理システムの前記良液置換工程において、前記掘削孔の底部中心付近に沈降させる着底部材と、該着底部材の上部に前記掘削孔に平行に取り付けられたパイプと、該パイプの上部に設けられたフロート部材と、該フロート部材から側壁に向けて延びる中間アームと、前記着底部材に設けられ、底部側壁に向けて延びる底部アームと、前記パイプに挿通され、先端に掘削孔底部に沈降させるための中心錘を接続した中心軸ワイヤーと、前記中間アーム及び前記底部アームの先端に設けられた挿通孔に挿通され、先端に底部側壁に沈降させるための側壁錘を接続した側壁ワイヤーを備え、前記中心錘及び前記側壁錘を掘削孔底部に沈降させた状態で、前記側壁錘を底部側壁に沿って移動させることにより、前記中心軸ワイヤーと前記側壁ワイヤーの長さの差によりスライムの残留状態を確認することができるスライム除去確認装置を用いて、掘削穴底部側壁部のスライムの除去状態を確認することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスライム処理システムによれば、掘削孔内のスライム混合水を確実かつ効率よく回収するとともに、回収したスライム混合水を効率よく短時間に分離し、さらに、再使用可能な良液に分離再生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のスライム処理システムの一実施形態を示す概略説明図である。
【
図2】スライム処理用サンドポンプの一実施形態を示す概略図である。
【
図3】スクリューの撹拌羽根の角度を示す概略図である。
【
図4】本発明のスライム処理システムに用いるスライム除去確認装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図5】実施例における処理後の残留スライムの状態を示す写真であり、(A)は実施例4の処理後の状態を示し、(B)は比較例2の処理後の状態を示している。
【
図6】実施例5の時間毎に測定した砂分率を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のスライム処理システムについて図面に基づいて以下に詳述する。
図1は、本発明のスライム処理システムの一実施形態を示す概略説明図であり、
図2は、スライム処理用サンドポンプの一実施形態を示す概略図である。
【0020】
本実施形態のスライム処理システムは、スライム処理用サンドポンプ1とスライム分離槽2を用いて掘削孔4内のスライム混合水を処理するスライム処理システムである。
【0021】
なお、本発明において用いるスライムの意味は、掘削において導入する水や安定液に混入している安定液材料、掘削の際に水や安定液に混入する砂、泥、砂礫、木くず、その他のゴミ等の夾雑物を含めたものを意味する。
【0022】
本実施形態のスライム処理システムで用いるスライム処理用サンドポンプ1は、サンドポンプ10と、円筒形状の上部水流方向制限板13と、上部水流方向制限板13の中央に配設され、かつ、サンドポンプ10の駆動回転軸120の下端に固定されたスクリュー12と、上部水流方向制限板13の上部に設けられた上部取付用円板14と、スクリュー12の下部に配設された錐体形状の下部水流方向ガイド板15と、上部取付用円板14と下部水流方向ガイド板15とを連結する連結部材16とから構成されている。
【0023】
具体的には、例えば、
図2に示すように、サンドポンプ10とスライム処理機11とがボルトによって連結されている。サンドポンプ10の駆動回転軸120は、下方に延長され、その下端にスライム処理機11のスクリュー12が固定されている。また、サンドポンプ10の上部には、排出管18が接続されており、さらに、サンドポンプ10を駆動させる電気を供給するための電線19が接続されている。
【0024】
サンドポンプ10の下部に連結されたスライム処理機11は、円筒形状の上部水流方向制限板13と、上部水流方向制限板13の中央に配設されたスクリュー12と、中央にサンドポンプ10の駆動回転軸120が挿通される貫通孔14Aを有する上部取付用円板14と、スクリュー12の下部に配設された、凹曲面15Aを有する中空円錐体形状の下部水流方向ガイド板15とを備えている。
【0025】
そして、スクリュー12は、サンドポンプ10の駆動回転軸120の下端に固定され、上部水流方向制限板13の上端部には、サンドポンプ10の下端とスライム混合水を吸い込むことができる程度の間隔を置いて上部取付用円板14が固定されている。
【0026】
また、上部取付用円板14と下部水流方向ガイド板15とは複数本の連結部材としての吊ボルト16により一体に接続され、各吊ボルト16の下部には水流方向ガイド垂直板17が形成されている。さらに、下部水流方向ガイド板15の頂部と凹曲面15Aには、複数箇所に水流吐出孔15Bが設けられ、上部水流方向制限板13の周囲には、複数箇所に水流吸込孔13Aが設けられている。
【0027】
上記の構成のスライム処理用サンドポンプ11は、排出管18の上部にワイヤが接続され、ワイヤを介してクレーンから吊り下げられ、掘削孔4の底部付近まで下されて用いられる。
【0028】
通常、一次スライム処理を行う堀削孔21は、掘削に伴ってケーシングが建て込まれており、その中にスライム混合水が貯留された状態となっている。また、特にこの状態の掘削孔4の底部にはスライムが沈殿した状態となっている。
【0029】
このような状態の堀削孔21の底部付近にスライム処理用サンドポンプ1をワイヤを送りながら堀削孔21の底部付近まで下して動作させると、サンドポンプ10が起動してスライム処理機11のスクリュー12が回転し、スクリュー12周囲のスライム混合水を下部水流方向ガイド板15の凹曲面15Aに沿って水平な放射方向と、下部水流方向ガイド板15の数個の水流吐出孔15Bを貫通して垂直下方向とに圧送する。これにより、堀削孔21の底部付近に堆積しているスライム22が撹拌されるとともに浮上する。そして、サンドポンプ10の下端部と上部取付用円板14の間からサンドポンプ10内にスライム混合水が吸い込まれ、排出管18を介して上昇し、掘削孔4の外に排出される。上記の機構を有する本実施形態のスライム処理用サンドポンプ1によれば、短時間に効率よくスライム混合水を掘削孔4の外に排出することができる。
【0030】
ここで、本実施形態のスライム処理用サンドポンプ1に用いられるスクリュー12の撹拌羽根の角度θは、
図3に示すように、上部取付用円板14の水平面に対して10~18°の範囲とするのが好ましい。スクリュー12の撹拌羽根の角度θを上記範囲とすることにより、効率のよい水流を発生させることが可能となり、スクリュー12周囲のスライム混合水を水平な放射方向と垂直下方向とに効率よく圧送することが可能となる。かかる観点から、スクリュー12の撹拌羽根の角度θは12~15°の範囲がより好ましく、13°がさらに好ましい。
【0031】
なお、堀削孔21において、特に、掘削孔4の地上部分の開口径より、底部の径が一段大きい拡底部が形成されている場合、拡底部側壁付近に堆積したスライムを除去するのが困難な場合がある。そのため、拡底部が形成されている掘削孔4においては、スライム処理用サンドポンプ1を底部側壁に沿って旋回移動させながら除去するのが好ましい。これにより、拡底部側壁付近に堆積したスライムを確実に除去することが可能となる。
【0032】
また、本実施形態のスライム処理システムでは、底部側壁のスライムの除去工程において、掘削孔4の底部側壁部のスライムの残留状態をスライム除去確認装置3を用いて確認することが好ましい。
【0033】
スライムの残留状態を確認するためのスライム除去確認装置3としては、例えば、
図4に示すような、掘削孔4の底部中心付近に沈降させる着底部材31と、該着底部材31の上部に掘削孔4に平行に取り付けられたパイプ32と、該パイプ32の上部に設けられたフロート部材33と、該フロート部材33から側壁に向けて延びる中間アーム35と、着底部材31に設けられ、底部側壁に向けて延びる底部アーム34と、パイプ32に挿通され、先端に掘削孔4底部に沈降させるための中心錘36を接続した中心軸ワイヤー37と、中間アーム35及び底部アーム34の先端に設けられた挿通孔に挿通され、先端に底部側壁に沈降させるための側壁錘38を接続した側壁ワイヤー39を備えたスライム除去確認装置3を例示することができる。
【0034】
スライム除去確認装置3の使用方法は、まず、掘削孔4の底部中央付近に着底部材31を沈降させ、中心錘36が着底するようにパイプ32を通して中心軸ワイヤー37を設置する。この段階で、フロート部材33によりパイプ32は掘削孔4の中央部に起立した状態となる。また、これと同時に中間アーム35及び底部アーム34部の挿通孔を介して底部側壁に側壁錘38が位置するように側壁ワイヤー39を設置する。即ち、中間アーム35部の長さは、掘削孔4上部の半径の長さに設定されており、底部アーム34の長さは、掘削孔4底部の半径の長さに設定されている。なお、底部アーム34は、導入時に先端が側壁に当接しないように、
図4の点線で示すようにパイプ32と平行に畳めるように着底部材31に屈曲可能に取り付けられている。
【0035】
ここで、スライム除去確認装置3の導入前に、予め中心錘36と側壁錘38の位置が水平に一致するときの中心軸ワイヤー37と側壁ワイヤー39の長さを印等により記録しておく。
【0036】
そして、中心錘36及び側壁錘38を掘削孔4底部に沈降させた状態で、地上で側壁ワイヤー39を側壁に沿って移動し、中間アーム35及び底部アーム34を側壁に沿って回転させ、側壁錘38を側壁の底部に沿って移動させることにより、側壁錘38がスライムの上部をなぞって移動し、スライムの残留部分で側壁ワイヤー39が撓む。そして、この撓みにより発生する中心軸ワイヤー37と側壁ワイヤー39の長さの差により底部に残留するスライム及びその堆積量を確認することができる。
【0037】
このような構成のスライム除去確認装置3によれば、スライム除去確認装置3を掘削孔4の底部に設置した状態で、地上で側壁ワイヤー39を側壁に沿って移動し、中心軸ワイヤー37と側壁ワイヤー39の長さの差を確認することによりスライムの残留状態を容易かつ確実に確認することができる。また、確認の結果、スライムが除去しきれていない箇所が確認された場合には、その箇所のみをスライム処理用サンドポンプ1を用いて処理することにより確実にスライムを除去することができる。
【0038】
本実施形態のスライム処理システムでは、次のステップとして、上記のスライム処理用サンドポンプ1を用いて効率よく排出したスライム混合水をスライム分離槽2に導入して処理を行う。
【0039】
スライム分離槽2は、
図1に示すように、第1分離槽21、第2分離槽22及び貯留槽23からなり、第1分離槽21の上部には、スライム処理用サンドポンプ1により回収したスライム混合水の砂礫やゴミ等を取り除くための振動篩211と、第1分離槽21の底部からポンプ212により引き上げ、スライムと第1処理水を分離する第1スライム分離装置213と、第1分離槽21の底部に沈殿したスライムを排出するための第1排出口214を備えている。
【0040】
また、第2分離槽22は、第1処理水を導入し、底部からポンプ222により引き上げて、スライムと第2処理水を分離する第2スライム分離装置223と、第2分離槽22の底部に沈殿したスライムを排出するための第2排出口224を備えている。
【0041】
また、貯留槽23は、第2処理水を導入して貯留する処理水槽231と、第2処理水を外部に供給するためのポンプ323を備えている。
【0042】
上記の構成のスライム分離槽2によるスライム混合水の処理の機序について以下に詳述する。
【0043】
スライム処理用サンドポンプ1に接続された排出管18の地上側端部は、第1分離槽21の振動篩211に接続されており、まず、回収したスライム混合水中の砂礫やゴミ等の比較的大きい夾雑物が振動篩211により除去される。振動篩211は搬出機構を備えており、篩上に回収された夾雑物は第1分離槽21の外に排出されて廃棄物として処理される。
【0044】
夾雑物が取り除かれた比較的高い濃度のスライム混合水は、一度第1分離槽21の底部に貯留された後、ポンプ212により引き上げられて第1スライム分離装置213に導入される。第1スライム分離装置213としては、例えば、サイクロン装置等を用いることができ、これによりスライムと第1処理水に分離される。
【0045】
分離されたスライムは、第1分離槽21の底部に設けられた第1排出口214から排出されて砂受槽24に蓄積される。また、分離された第1処理水は第2分離槽22に導入される。
【0046】
第1分離槽21で比較的低いスライム濃度となった第1処理水は、第2分離槽22の底部に貯留された後、ポンプ222により引き上げられて第2スライム分離装置223に導入される。第2スライム分離装置223としては、第1分離槽21で用いた第1スライム分離装置213と同様のサイクロン装置等を用いることができる。これによりスライムと第2処理水に分離される。
【0047】
分離されたスライムは、第2分離槽22の底部に設けられた第2排出口224から排出されて砂受槽24に蓄積される。なお、第2スライム分離装置223により分離したスライムは、第2分離槽22内に設けられたスロープ部225を通過させて、スロープ部225の下端部に設けられた第2排出口224から排出することもできる。
【0048】
次に、分離された第2処理水は貯留槽23に導入される。この第2処理水は、スライムが殆ど除去された、砂分率が概ね1%以下の良液である。本実施形態のスライム処理システムでは、貯留槽23の処理水槽231に貯留した第2処理水を良液として、処理水槽231に設けたポンプ232により送出して排水として処理することはもちろん、掘削孔4に導入して、一次スライム処理の置換液として用いたり、掘削に際の安定液として用いることもできる。また、掘削の際に安定液として用いる場合には、予め貯留槽23にベントナイト等の安定剤を投入して第2処理水と混合して調整し、安定液として送出することもできる。
【0049】
なお、上記の通り、第1スライム分離装置213及び第2スライム分離装置223で分離されたスライムは、各々第1排出口214及び第2排出口224から排出されて砂受槽24に蓄積されるが、砂受槽24の上澄み液をポンプ241により第1分離槽21の振動篩211に戻して再度処理することもできる。これにより、回収したスライム混合水の水分を極力回収、再利用することが可能となる。
【0050】
以上、実施形態に基づき本発明のスライム処理システムを説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、第1スライム処理工程のスライム混合水の回収、再生について説明したが、第2スライム処理工程のスライム混合水の回収、再生や、コンクリート打設工程における良液の回収、再利用にも適用することもできる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明のスライム処理システムについて、実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
直径2450mmの円筒状鋼製ケーシングを準備し、その中に疑似スライム材料として珪砂6号及び8号を各々投入し、水を導入させながら混合して、疑似スライム混合水を作製した。この疑似スライムの性状は、粘性27秒、PH9.9、比重1.025であった。
【0053】
次に、以下の性能のスライム処理用サンドポンプを、以下の性能のスライム分離槽に接続して、上記ケーシング内の中心底部に固定した状態で40分間作動させて、スライム分離槽の貯留槽内の第2処理水(良液)を供給しつつスライム混合水を回収した。そして、初期のスライム容量を100%として、試験後の残留スライムを回収してスライム容量の比率を計算した。その結果を表1に示す。
(スライム処理用サンドポンプ性能)
出力:9kW
撹拌羽根数:3枚
撹拌羽根角度:13°
吐出能力:(清水)108~150m
3/h、(泥水)54~75m
3/h
全揚程:15/8m
口径:100mm
有効深度:70m
(スライム分離槽性能)
第1分離槽:12m
3
振動篩:1基(目開き3.2mm)
ポンプ(第1分離槽用):11kW 4基
第1スライム分離装置(サイクロン):2連式 2基
第2分離槽:12m
3
ポンプ(第2分離槽用):9kW 1基
第2スライム分離装置(サイクロン):2連式 2基
貯留槽:12m
3
全幅:6.3m、奥行:2.35m、高さ:1.9m
処理能力:60~120m
3/h
<実施例2>
直径2900mmの円筒状鋼製ケーシングを用いた以外は実施例1と同様の方法でスライム容量の比率を求めた。その結果を表1に示す。
<実施例3>
直径3500mmの円筒状鋼製ケーシングを用いた以外は実施例1と同様の方法でスライム容量の比率を求めた。その結果を表1に示す。
<実施例4>
直径3850mmの円筒状鋼製ケーシングを用い、内壁に沿って旋回移動させながらスライム混合水を回収した以外は実施例1と同様の方法でスライム容量の比率を求めた。その結果を表1に示す。また、
図4に示すスライム除去確認装置を用いて測定した処理後の残留スライムの状態を
図5(A)に示す。なお、図中の数値は残留スライムの高さ(mm)を示している。
<比較例1>
直径3850mmの円筒状鋼製ケーシングを用い、以下の性能の水中サンドポンプを用いた以外は実施例1と同様の方法でスライム容量の比率を求めた。その結果を表1に示す。
(水中サンドポンプ性能)
出力:22kW
吐出能力:清水2.0~4.0m
3/h
全揚程:30/20m
口径:200mm
有効深度:接地面-73m
<比較例2>
直径3850mmの円筒状鋼製ケーシングを用い、内壁に沿って旋回移動させながらスライム混合水を回収した以外は比較例1と同様の方法でスライム容量の比率を求めた。その結果を表1に示す。また、
図4に示すスライム除去確認装置を用いて測定した処理後の残留スライムの状態を
図5(B)に示す。なお、図中、中心側の数値は残留スライムの幅(mm)を示し、矢印上の数値は残留スライムの高さ(mm)を示している。
【0054】
【0055】
表1の結果から、実施例1~4のスライム処理用ポンプとスライム分離槽の組み合わせでは、比較例1、2の水中サンドポンプとスライム分離槽の組み合わせと比較して、残留スライム容量比率が格段に少ないことが確認された。
【0056】
また、比較的径が大きいケーシングでは、実施例1~3の中心底部に固定した状態での回収よりも、実施例4の内壁に沿って旋回移動させながら回収する方が残留スライム容量比率が格段に少なかった。また、比較例2では、通常の水中サンドポンプを用いて旋回移動させながら回収しても、実施例1~4の残留スライム容量比率よりも多いことが確認された。
<実施例5>
実施例4において、開始直後から40分までのスライム処理用サンドポンプを通したスライム混合水を採取して、各時間毎の砂分率を測定した。その結果を表2及び
図6の写真に示す。
【0057】
【0058】
表2の結果から、稼働開始から30~40分の短時間で、スライム混合水を砂分率1%以下の良液に処理、置換することができることが確認された。
【0059】
これらの結果から、本発明のスライム処理システムによれば、掘削孔内のスライム混合水を効率よく回収、分離するとともに、回収後の掘削孔内の残留スライムの量を減少させることが可能となることが確認された。
【符号の説明】
【0060】
1 スライム処理用サンドポンプ
10 サンドポンプ
12 スクリュー
120 駆動回転軸
13 上部水流方向制限板
14 上部取付用円板
15 下部水流方向ガイド板
16 連結部材(吊ボルト)
2 スライム分離槽
21 第1分離槽
211 振動篩
212 ポンプ
213 第1スライム分離装置
214 第1排出口
22 第2分離槽
222 ポンプ
223 第2スライム分離装置
224 第2排出口
23 貯留槽
231 処理水槽
232 ポンプ
3 スライム除去確認装置
31 着底部材
32 パイプ
33 フロート部材
34 底部アーム
35 中間アーム
36 中心錘
37 中心軸ワイヤー
38 側壁錘
39 側壁ワイヤー
4 掘削孔