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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】作業車両の運転室
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20220819BHJP
   B60J 5/00 20060101ALN20220819BHJP
【FI】
E02F9/16 F
B60J5/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018147031
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020020239
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 智之
(72)【発明者】
【氏名】林部 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】大津 隆
(72)【発明者】
【氏名】村上 大河
(72)【発明者】
【氏名】田川 智香子
(72)【発明者】
【氏名】力丸 隆平
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-142667(JP,A)
【文献】特開2012-144928(JP,A)
【文献】実開昭57-76128(JP,U)
【文献】特開2001-294175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0259928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口及び換気口を形成した運転室本体と、
前記出入口を開閉するドアと、
前記換気口を開閉する蓋部と、
前記ドアを開く際に前記蓋部が開くように、かつ、前記ドアを閉じる際に前記蓋部が閉じるように、前記ドアと前記蓋部とを連結するリンク機構と、
前記ドアを閉じる動作の第一段階において前記蓋部の閉動作を停止し、前記第一段階よりも後に前記ドアを閉じる動作の第二段階において前記蓋部の閉動作が実施される閉塞タイミング調整部と、
を備える作業車両の運転室。
【請求項2】
前記リンク機構が、
第一端部を中心に前記ドアに対して揺動可能に連結されたドア側リンクと、
第一端部を中心に前記蓋部に対して揺動可能に連結され、かつ、第二端部がドア側リンクの第二端部に対して揺動可能に連結された蓋側リンクと、を備え、
前記閉塞タイミング調整部が、
前記ドア側リンクの第二端部において前記ドア側リンクの長手方向に延びて形成されるスロット孔と、
前記蓋側リンクの第二端部に形成され、前記スロット孔に挿入されるスロット用突起であって、前記第一段階において前記スロット孔の長手方向に移動可能とされ、かつ、前記第二段階において前記スロット孔の長手方向の終端に到達するスロット用突起と、を備える
請求項1に記載の作業車両の運転室。
【請求項3】
前記閉塞タイミング調整部は、
前記運転室本体に固定された第一突起部と、
前記蓋側リンクに設けられ、前記第一突起部に対して前記蓋部側に向けて押し付けられることで前記蓋側リンクの移動を規制する第二突起部と、をさらに備え、
前記スロット用突起が前記スロット孔の長手方向の終端に到達した際に、前記第一突起部に対する前記第二突起部の押し付けが解除される
請求項2に記載の作業車両の運転室。
【請求項4】
前記ドアと前記ドア側リンクと前記蓋側リンクと前記蓋部とは、前記換気口が開口する前記運転室本体の内面に沿う第一方向に順番に配列され、
前記ドア側リンクの長手方向は、前記ドア側リンクの第二端部が第一端部よりも前記内面から離れて位置するように前記内面に対して傾斜し、
前記ドア側リンクの第一端部は、前記運転室本体に対して前記第一方向のみに移動可能とされると共に、前記ドアを閉じる動作に応じて前記蓋部側に向けて移動し、
前記第一突起部は、前記運転室本体の前記内面に固定されるとともに、前記蓋側リンクと前記内面との間に位置し、
前記第二突起部は、前記蓋側リンクの第二端部から前記内面に向けて突出する
請求項3に記載の作業車両の運転室。
【請求項5】
前記蓋部と前記運転室本体との間に設けられ、弾性力によって前記蓋部を閉じる方向に付勢する弾性部材を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の作業車両の運転室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の運転室に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山現場や土木現場で稼働するダンプトラック等の作業車両の運転室には、外部からの砂塵の進入防止やエアコンなどによって調整された室内温度の維持のために高い気密性が要求される。特許文献1には、ドアの開動作が検出された際に運転室に形成された換気口を開作動させるとともに、ドアの閉動作が検出された際に換気口を閉作動させる構成が開示されている。この構成では、運転室のドアを閉じる際に、運転室内の空気が換気口を通じて流れ出ることで、運転室内の気圧が瞬間的に上昇することを抑制する。これにより、運転室のドアを小さな力で閉じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-142667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、ドアの開閉動作を検出したり、換気口を開閉したりするために、センサやソレノイドなどの電気的な手段を用いる必要がある。しかしながら、作業車両は砂塵が多い現場で稼働し、また、稼働中の車両振動も多い。このため、電気的な手段は過酷な環境下で確実に作動することが求められる。したがって、電気的な手段の耐久性に関する対策が必要となり、運転室の製造コストが高くなる、という問題がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、低コストで運転室のドアを容易に閉じることが可能であると共に、運転室の密閉性を維持可能な作業車両の運転室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様に係る作業車両の運転室は、出入口及び換気口を形成した運転室本体と、前記出入口を開閉するドアと、前記換気口を開閉する蓋部と、前記ドアを開く際に前記蓋部が開くように、かつ、前記ドアを閉じる際に前記蓋部が閉じるように、前記ドアと前記蓋部とを連結するリンク機構と、前記ドアを閉じる動作の第一段階において前記蓋部の閉動作を停止し、前記第一段階よりも後に前記ドアを閉じる動作の第二段階において前記蓋部の閉動作が実施される閉塞タイミング調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コストで運転室のドアを容易に閉じることができると共に、運転室の密閉性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る運転室を備えるダンプトラックを示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る運転室の要部を示す平断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5】運転室に備える閉塞タイミング機構を示す斜視図である。
図6図2~5に示す構成において、ドアを閉じる動作の過程を示す模式図である。
図7図2~5に示す構成において、ドアを閉じる動作の過程を示す模式図である。
図8図2~5に示す構成において、ドアを閉じる動作の過程を示す模式図である。
図9図2~5に示す構成において、ドアを開く動作の過程を示す模式図である。
図10図2~5に示す構成において、ドアを開く動作の過程を示す模式図である。
図11図2~5に示す構成において、ドアを開く動作の過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図1図11を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る運転室は、図1に例示するダンプトラック1に備える。はじめに、ダンプトラック1について説明する。
【0010】
<ダンプトラック>
図1に示すように、ダンプトラック1は、作業車両であり、軸線Oを中心として、フロントフレーム2及びリアフレーム3を揺動自在に連結したアーティキュレート型のダンプトラックである。
リアフレーム3には、後輪4及びベッセル5が設けられている。ベッセル5はリアフレーム3に対して起伏自在に設けられる。ベッセル5は油圧アクチュエータであるホイストシリンダ6によって駆動される。
フロントフレーム2には、前輪7、運転室8(キャブ)及びエンジンルーム9が設けられている。エンジンルーム9は、運転室8の前方に配され、外装カバー10によって覆われる。
【0011】
<運転室>
図1~4に示すように、運転室8は、運転室本体11と、ドア12と、蓋部13と、リンク機構14と、閉塞タイミング調整部15と、を備える。
【0012】
<運転室本体>
図2,4に示すように、運転室本体11は、内部に空間を有する箱状に形成されている。運転室本体11には、作業車両の運転者などが運転室8に出入りするための出入口21、及び、運転室8の内外に空気を出し入れするための換気口22が形成されている。
出入口21や換気口22は、運転室本体11の任意の部位に形成されてよい。本実施形態において、出入口21は運転室本体11の側壁部23に形成されている。換気口22は運転室本体11の底壁部24に形成されている。すなわち、換気口22は底壁部24の内面24aに開口する。換気口22は、運転室本体11の内部の空間と運転室本体11の外部の空間とを連通する。
換気口22は、底壁部24の任意の位置に形成されてよい。本実施形態の換気口22は、運転室8に対して出入りする運転者などによって踏まれない位置に形成される。具体的に、換気口22は、出入口21に対して、底壁部24の内面24aに沿って出入口21が開口する方向(Y軸方向;以下、第二方向とも呼ぶ。)に直交する方向(X軸方向;以下、第一方向とも呼ぶ。)に間隔をあけて位置する。なお、Y軸方向及びX軸方向の両方に直交する方向は、底壁部24の内面24aに直交する運転室本体11の高さ方向(Z軸方向;以下、第三方向とも呼ぶ。)である。
【0013】
<ドア>
図2に示すように、ドア12は、運転室本体11の出入口21を開閉する。本実施形態のドア12は、運転室本体11の側壁部23に対して回転可能に取り付けられる。側壁部23に対してドア12を回転させる軸25(ドア回転軸25)は、運転室本体11の高さ方向(Z軸方向)に延びている。ドア回転軸25は、第一方向に配列された出入口21と換気口22との間に位置する。ドア12は、出入口21から運転室本体11の外側に離れるように回転することで、運転室本体11の出入口21を開放する。
【0014】
<蓋部>
図2,4に示すように、蓋部13は、運転室本体11の換気口22を開閉する。本実施形態の蓋部13は、運転室本体11の底壁部24に対して回転可能に取り付けられる。蓋部13と底壁部24とを連結して底壁部24に対して蓋部13を回転させる軸26(蓋部回転軸26)は、底壁部24の内面24aに沿って出入口21が開口する方向(Y軸方向)に延びている。蓋部回転軸26は、第一方向に配列された出入口21と換気口22との間に位置する。蓋部13は、底壁部24の内面24aに重ねて配されることで、運転室本体11の換気口22を閉塞する。つまり、蓋部13がその閉動作によって換気口22を塞ぐことで、運転室本体11の内部の空間と運転室本体11の外部の空間とが遮断される。
蓋部13は、任意の形状に形成されてよい。本実施形態の蓋部13は、平面視矩形の平板状に形成されている。平面視した蓋部13の一辺は蓋部回転軸26と平行している。以下の説明では、蓋部13の板厚方向に直交し、かつ、蓋部回転軸26から離れる方向を、蓋部13の長手方向と呼ぶことがある。
【0015】
<リンク機構>
図2~4に示すように、リンク機構14は、ドア12を開く際に蓋部13が開くように、かつ、ドア12を閉じる際に蓋部13が閉じるようにドア12と蓋部13とを連結する。本実施形態のリンク機構14は、ドア側リンク31及び蓋側リンク32を備える。ドア側リンク31及び蓋側リンク32は、それぞれ直線状に延びて形成されている。
【0016】
ドア側リンク31は、ドア側リンク31の長手方向の第一端部31aを中心に、ドア12に対して揺動可能に連結される。ドア側リンク31は、例えばドア12に直接連結されてよい。本実施形態のドア側リンク31は、ドア側リンク31と共にリンク機構14を構成する第一リンク部材33、第二リンク部材34を介してドア12に連結される。
【0017】
第一リンク部材33は、L字状に形成されている。第一リンク部材33は、第一リンク部材33の長手方向の第一端部33aを中心に、ドア12に対して揺動可能に連結される。第一リンク部材33は、ドア回転軸25に平行する第一回転軸35を中心として、ドア12に対して揺動可能とされている。
第二リンク部材34は、直線状に延びて形成されている。第二リンク部材34は、第二リンク部材34の長手方向の第一端部34aを中心に、第一リンク部材33の第二端部33bに対して揺動可能に連結される。第一リンク部材33及び第二リンク部材34は、ドア回転軸25に平行する第二回転軸36を中心として、相互に揺動可能とされている。
【0018】
本実施形態のドア側リンク31は、ドア側リンク31の長手方向の第一端部31aを中心に、上記した第二リンク部材34の第二端部34bに対して揺動可能に連結される。ドア側リンク31及び第二リンク部材34は、運転室本体11の内面24aに沿って第一方向に直交する第二方向(Y軸方向)に延びる第三回転軸37を中心として、相互に揺動可能とされている。
【0019】
ドア側リンク31の第一端部31aは、運転室本体11に対して第一方向のみに移動可能とされている。この点について具体的に説明する。図2,3に示すように、ドア側リンク31の第一端部31aと第二リンク部材34の第二端部34bとの間には、レール部38が設けられている。レール部38は、ドア側リンク31の第一端部31a及び第二リンク部材34の移動を第一方向のみに案内する。具体的に、レール部38には、第一方向に延びる長孔38aが形成されている。長孔38aには、ドア側リンク31及び第二リンク部材34を連結する第三回転軸37が挿通される。これにより、ドア側リンク31の第一端部31a及び第二リンク部材34は、運転室本体11に対して第一方向のみに移動可能となる。例えば、ドア側リンク31の第一端部31a及び第二リンク部材34は、ドア12を閉じる動作に応じて第一方向の蓋部13側に向けて移動する。
上記したレール部38は、運転室本体11に固定される。具体的に、レール部38は、後述するスリット付板材61を介して底壁部24の内面24aに固定される。
【0020】
図2,4に示すように、蓋側リンク32は、蓋側リンク32の長手方向の第一端部32aを中心に、蓋部13に対して揺動可能に連結される。蓋側リンク32は、第二方向に延びる第四回転軸39を中心として、蓋部13に対して揺動可能とされている。本実施形態の蓋側リンク32は、蓋部13に直接連結される。蓋側リンク32の第一端部32aは、蓋部13の長手方向の中途部に連結される。
図2~4に示すように、蓋側リンク32の第二端部32bは、ドア側リンク31の第二端部31bに対して揺動可能に連結される。ドア側リンク31及び蓋側リンク32は、第二方向に延びる第五回転軸40を中心として、相互に揺動可能とされている。
【0021】
上記したドア側リンク31と蓋側リンク32とは、ドア12側(出入口21側)から蓋部13側(換気口22側)に向けて第一方向に順番に配列される。また、ドア側リンク31の長手方向は、ドア側リンク31の第二端部31bが第一端部31aよりも底壁部24の内面24aから第三方向に離れて位置するように、底壁部24の内面24aに対して傾斜する。
【0022】
<閉塞タイミング調整部>
閉塞タイミング調整部15は、ドア12を閉じる動作の第一段階において蓋部13の閉動作を停止し、第一段階よりも後にドア12を閉じる動作の第二段階において蓋部13の閉動作を実施する。
図3,5に示すように、本実施形態の閉塞タイミング調整部15は、ドア側リンク31の第二端部31bに形成されたスロット孔51と、蓋側リンク32の第二端部32bに形成されてスロット孔51に挿入されるスロット用突起52と、を備える。
【0023】
スロット孔51は、ドア側リンク31の長手方向に延びて形成される。スロット孔51は、ドア側リンク31の板厚方向である第二方向から見て、長孔形状に形成されている。スロット孔51は、少なくともスロット用突起52を挿入するように形成されればよい。本実施形態のスロット孔51は、ドア側リンク31を第二方向に貫通して形成されている。
スロット用突起52は、スロット孔51に挿入された状態でスロット孔51の長手方向に移動可能とされている。スロット用突起52は、前述した第五回転軸40を兼用する。すなわち、スロット用突起52は、ドア側リンク31と蓋側リンク32とを相互に揺動可能に連結する。
【0024】
スロット用突起52は、ドア12を閉じる動作の第一段階においてスロット孔51に対してその長手方向に移動可能とされる。また、スロット用突起52は、ドア12を閉じる動作の第二段階においてスロット孔51の長手方向の終端53に到達する。スロット孔51の終端53は、ドア側リンク31の長手方向の第一端部31a側に位置する。以下の説明では、スロット孔51の長手方向においてスロット孔51の終端53と反対側に位置するスロット孔51の端を、スロット孔51の始端54と呼ぶ。
【0025】
図4,5に示すように、本実施形態の閉塞タイミング調整部15は、運転室本体11に固定された第一突起部55と、蓋側リンク32に設けられた第二突起部56と、をさらに備える。すなわち、本実施形態の閉塞タイミング調整部15は、スロット孔51と、スロット用突起52と、第一突起部55と、第二突起部56と、を備える 。
【0026】
本実施形態の第一突起部55は、後述するスリット付板材61を介して底壁部24の内面24aに固定される。
第一突起部55は、底壁部24の内面24aに直交する方向(Z軸方向)において、底壁部24の内面24aと蓋側リンク32との間に位置する。また、第一突起部55は、蓋部13の開閉に伴って第一方向に移動する蓋側リンク32の第二端部32bの移動範囲の途中に位置する。
【0027】
第一突起部55は、第一方向においてドア12側に向いて第二突起部56が押し付けられる被押付面57を有する。被押付面57は、例えば底壁部24の内面24aに直交してよい。本実施形態において、被押付面57は、Z軸方向において底壁部24の内面24aから離れるにしたがって、第一方向においてドア12側から蓋部13側に向かうように傾斜している。つまり、被押付面57は、第三方向に対して所定の角度で傾斜した面である。
また、第一突起部55は、第一方向において被押付面57と反対側に向く傾斜面58を有する。傾斜面58は、Z軸方向において底壁部24の内面24aに近づくにしたがって、第一方向においてドア12側から蓋部13側に向かうように傾斜している。
【0028】
本実施形態の第二突起部56は、蓋側リンク32の第二端部32bから底壁部24の内面24aに向けて突出する。
第二突起部56は、第一突起部55に対して蓋部13側に向けて押し付けられることで、蓋部13を閉じる方向への蓋側リンク32の移動を規制する。第二突起部56は、例えばドア12及び蓋部13が完全に開いた状態において第一突起部55に押し付けられてよい。本実施形態では、図2,4に例示するようにドア12及び蓋部13が完全に開いた状態において、第二突起部56が第一突起部55に対してドア12側(第一方向側)に間隔をあけて位置する。このため、第二突起部56は、蓋部13を閉じる途中段階において第一突起部55に押し付けられる。第一突起部55に対する第二突起部56の押し付けは、前述したスロット用突起52が、ドア側リンク31の移動によってスロット孔51の長手方向の終端53に到達した際に解除される。
【0029】
<弾性部材>
図4に示すように、本実施形態の運転室8は、弾性部材16をさらに備える。弾性部材16は、蓋部13と運転室本体11との間に設けられる。弾性部材16は、弾性力によって蓋部13を閉じる方向に付勢する。弾性部材16は、トーションばねやゴムなどであってよい。本実施形態の弾性部材16は、コイルばねである。弾性部材16の第一端は、換気口22に対向する蓋部13の対向面13aに取り付けられる。弾性部材16の第二端は、換気口22の外側に配された運転室本体11の取付部27に取り付けられる。取付部27は、図4に例示するように底壁部24と別個に形成された上で底壁部24に固定されてもよいし、例えば底壁部24に一体に形成されてもよい。このように弾性部材16が取り付けられることで、弾性部材16が蓋部13による換気口22の閉塞を阻害することを防止できる。つまり、弾性部材16は伸縮する特性(弾性力)を有しているため、蓋部13の閉動作の途中においては弾性部材16が縮むような力が発生することで、蓋部13は蓋部回転軸26を回転軸として閉じようとする。また、蓋部13の閉動作が完了した状態(蓋部13が換気口22を塞いだ状態)においても弾性部材16が縮むような力が発生することで、蓋部13は喚起口22の閉塞を維持する。
なお、弾性部材16がトーションばねやコイルばねである場合、弾性部材16は、例えば蓋部13と運転室本体11との間に設けられる蓋部回転軸26に取り付けられてもよい。
【0030】
図2~5に示すように、本実施形態の運転室8は、運転室本体11に固定され、第二方向においてドア側リンク31と蓋側リンク32との間に介在するスリット付板材61をさらに備える。スリット付板材61には、第二方向に貫通してスロット用突起52(第五回転軸40)を挿通させるスリット62が形成されている。スリット62は、ドア12の開閉動作に伴うスロット用突起52の移動範囲が適正となるように形成されている。
【0031】
図4,5に示すように、本実施形態の運転室8は、運転室本体11に固定された支持部63をさらに備える。支持部63は、第二突起部56を底壁部24の内面24a側から支持している。支持部63は、第一方向において第一突起部55に対してドア12側に隣り合う位置に配されている。支持部63は、底壁部24の内面24aに平行するように第一方向に延びて、第二突起部56を支持する支持面64を有する。支持面64は、第一突起部55(特に被押付面57)よりも底壁部24の内面24a側に位置する。被押付面57と支持面64とは連続してつながっている。図4,5において、支持部63は第一突起部55と一体に形成されているが、これに限ることはない。
【0032】
<作用効果>
次に、本実施形態の運転室8の動作について図6~11を参照して説明する。図6~11においては、運転室8の動作を説明するために、図2~4において示した運転室8の構造を簡略又は変更して示している。はじめに、ドア12を閉じる際の動作について図6~8を参照して説明する。
図6に示すように、ドア12及び蓋部13が完全に開いた状態では、第二突起部56が第一突起部55に対してドア12側に間隔をあけて位置する。また、弾性部材16の弾性力によって、スロット用突起52がスロット孔51の始端54に到達している。このため、ドア12及び蓋部13が完全に開いた状態から、矢印ND1で示すようにドア12を閉じる際には、図6,7に示すように、第二突起部56が第一突起部55に押し付けられるまで、ドア12の閉動作に連動して、矢印NC1で示すように蓋部13の閉動作が実施される。この際、第二突起部56は、支持部63の支持面64から離れて位置してもよいし、支持部63の支持面64上に配されてもよい。
【0033】
図7に示すように、第二突起部56が第一突起部55に押し付けられた状態では、蓋部13を閉じる方向への蓋側リンク32の移動が規制される。すなわち、蓋部13の閉動作が停止する。この状態において、矢印ND1で示すようにドア12の閉動作を継続した際には、ドア側リンク31の第一端部31aが蓋部13側に向けて矢印Nで示すように第一方向に移動する。このため、スロット用突起52がスロット孔51の始端54から終端53に向けて移動するように、ドア側リンク31が蓋側リンク32に対して移動する。これにより、蓋部13の閉動作を停止しながら、ドア12の閉動作を実施することができる。この段階における動作は、前述したドア12を閉じる動作の第一段階に相当する。
【0034】
その後、図8に示すように、矢印ND1で示すドア12の閉動作をさらに継続することで、スロット用突起52がスロット孔51の終端53に到達した際には、第一突起部55に対する第二突起部56の押し付けが解除される。以下、この点について具体的に説明する。
ドア側リンク31の長手方向は、ドア側リンク31の第二端部31bが第一端部31aよりも底壁部24の内面24aから離れて位置するように、底壁部24の内面24aに対して傾斜している。このため、スロット用突起52がスロット孔51の終端53に到達した後に、ドア12の閉動作に伴ってドア側リンク31の第一端部31aが蓋部13側に向けて第一方向にさらに移動すると、ドア側リンク31の第二端部31b及び第二突起部56を含む蓋側リンク32の第二端部32bが底壁部24の内面24aから離れる方向に移動するように、ドア側リンク31がその第一端部31aを中心に回転する。これにより、第一突起部55に対する第二突起部56の押し付けが解除される。
なお、第一突起部55の被押付面57が図4に例示したように傾斜している場合には、蓋側リンク32の揺動中心(すなわち第四回転軸39)が第一突起部55よりも底壁部24の内面24aの近くに位置していても、第一突起部55に対する第二突起部56の押し付けをスムーズに解除することができる。
【0035】
ドア12の閉動作に伴って第一突起部55に対する第二突起部56の押し付けが解除されると、蓋部13を閉じる方向(矢印NC1が示す方向)への蓋側リンク32の移動が許容される。この状態では、スロット用突起52がスロット孔51の終端53に到達しているため、矢印ND1で示すドア12の閉動作に伴うドア側リンク31の移動によって蓋側リンク32を蓋部13側に押すことができる。これにより、蓋部13の閉動作を実施し、蓋部13によって換気口22を閉塞することができる。また、本実施形態では、蓋部13が弾性部材16の弾性力によって蓋部13を閉じる方向に付勢されるため、蓋部13によって換気口22を迅速かつ確実に換気口22を閉塞できる。この段階における動作は、前述したドア12を閉じる動作の第二段階に相当する。
以上により、ドア12及び蓋部13を閉じる動作が完了する。
【0036】
ドア12を閉じる動作の第二段階において、第一突起部55に対する第二突起部56の押し付けの解除は、図8に例示するようにドア12によって運転室本体11の出入口21を閉塞する直前に行われてもよいし、例えばドア12による運転室本体11の出入口21の閉塞と同時に行われてもよい。第二突起部56の押し付けの解除が運転室本体11の出入口21の閉塞の直前である場合には、出入口21及び換気口22を同時に閉塞することができる。また、第二突起部56の押し付けの解除と運転室本体11の出入口21の閉塞とが同時である場合には、出入口21を閉塞した直後に換気口22を閉塞することができる。つまり、換気口22が出入口21よりも先に閉塞されることはない。
【0037】
ドア12及び蓋部13を完全に閉じた状態において、第二突起部56は、第一方向において第一突起部55の被押付面57よりも蓋部13側に位置する。第二突起部56は、第一突起部55の傾斜面58の上方に間隔をあけて配されてよい。本実施形態において、第二突起部56は、図9に例示するように第一突起部55の傾斜面58上に配される。
【0038】
次に、ドア12を開く際の動作について図9~11を参照して説明する。
ドア12及び蓋部13が完全に閉じた状態から、図9に示すように、矢印ND2で示す方向にドア12を開く際には、ドア側リンク31の第一端部31aがドア12側に向けて引っ張られて第一方向に移動する。これにより、スロット用突起52がスロット孔51の始端54に位置し、蓋側リンク32がドア側リンク31とともにドア12側に向けて第一方向に移動する。この際、蓋側リンク32の第二突起部56は第一突起部55の傾斜面58上に配されるため、上記した蓋側リンク32の移動が第一突起部55によって阻害されることはない。この蓋側リンク32の移動に伴って、蓋部13を開ける力が弾性部材16の弾性力に勝るように蓋部13に作用し、蓋部13が矢印NC2で示す方向に開く。
【0039】
その後、図10に示すように、矢印ND2で示す方向にドア12をさらに開いて、蓋側リンク32の第二突起部56が第一方向において第一突起部55よりもドア12側に移動すると、第二突起部56は、支持部63の支持面64上に配され、第一突起部55の被押付面57に対してドア12側に位置する。この状態では、弾性部材16の弾性力などによって蓋部13が閉じる方向に移動しようとしても、第二突起部56は第一突起部55の被押付面57に押し付けられる。このため、蓋部13及びドア12が弾性部材16の弾性力などによって閉じてしまうことを防止できる。
そして、図11に示すように、矢印ND2で示す方向にドア12をさらに開くことで、ドア12及び蓋部13を完全に開くことができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る運転室8によれば、蓋部13の開閉をドア12の開閉に連動させる手段が、機械的な手段であるリンク機構14であるため、電気的な手段である場合と比較して、砂塵やダンプトラックの振動に対する耐久性が高い。これにより、運転室8の製造コストを低く抑えることができる。また、実施形態に係る運転室8では、電気的な手段で必要となる電源も不要であるため、例えば、電気的な手段に電力を供給させるためにエンジンを始動させてなくてもドア12及び蓋部13を容易に閉じることができる。
【0041】
また、本実施形態の運転室8によれば、ドア12を閉じる動作の第一段階では、閉塞タイミング調整部15によって蓋部13の閉動作が停止される。すなわち、ドア12の閉動作を継続しても、蓋部13を大きく開いた状態に保持することができる。このため、第一段階において運転室8内の空気を効率よく換気口22から運転室8の外部に排出できる。これにより、ドア12を閉じる際に運転室8内の気圧が上昇することを効果的に抑制できる。したがって、運転室8のドア12を小さな力で容易に閉じることができる。
【0042】
また、本実施形態の運転室8によれば、運転室8のドア12を閉じる動作の第二段階では、閉塞タイミング調整部15や弾性部材16によって蓋部13の閉動作が実施される。このため、ドア12が出入口21を閉塞すると同時に、あるいはドア12が出入口21を閉塞した直後に、蓋部13によって換気口22を迅速に閉塞することができる。これにより、運転室8の外部に存在する砂塵などの異物が換気口22を通して運転室8内に侵入することを効果的に抑制できる。
【0043】
また、本実施形態の運転室8によれば、閉塞タイミング調整部15が、ドア側リンク31に形成されたスロット孔51と、蓋側リンク32に形成されたスロット用突起52と、を備える。
このため、ドア12を閉じる動作の第一段階では、ドア側リンク31がドア12を閉じる動作に伴って移動しても、蓋側リンク32のスロット用突起52がドア側リンク31のスロット孔51の長手方向に移動することで、ドア側リンク31を蓋側リンク32に対して移動させることができる。これにより、ドア12を閉じる動作に連動して蓋側リンク32が移動することを防止できる。すなわち、ドア12を閉じる動作の第一段階において蓋部13の閉動作を停止させることができる。
一方、ドア12を閉じる動作の第二段階では、蓋側リンク32のスロット用突起52がスロット孔51の長手方向の終端53に到達することで、ドア側リンク31の移動に連動して蓋側リンク32を移動させることができる。すなわち、ドア12を閉じる動作に連動して蓋部13の閉動作を実施できる。
【0044】
また、本実施形態の運転室8によれば、閉塞タイミング調整部15が、スロット孔51及びスロット用突起52に加え、運転室本体11に固定された第一突起部55と、蓋側リンク32に設けられた第二突起部56と、をさらに備える。このため、スロット用突起52がスロット孔51の長手方向の終端53に到達していない状態で、蓋側リンク32の第二突起部56が第一突起部55に押し付けられることで、蓋側リンク32がドア側リンク31と共に移動することを確実に防止できる。すなわち、ドア12を閉じる動作の第一段階において蓋部13の閉動作が実施されることを確実に防止できる。
【0045】
また、本実施形態の運転室8によれば、蓋部13と運転室本体11との間に、弾性力によって蓋部13を閉じる方向に付勢する弾性部材16が設けられている。このため、蓋部13を弾性部材16の弾性力によって迅速かつ確実に閉じることができる。蓋部13を迅速に閉じることで、砂塵などの異物が換気口22を通して運転室8内に侵入することをさらに抑制できる。さらに、蓋部13が閉じられている状態においても、弾性部材16の弾性力によって換気口22を閉塞した状態が維持されるため、運転室8の内部空間の気密性が維持される。
【0046】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0047】
本発明の運転室8は、例えば弾性部材16を備えなくてもよい。蓋部13は、例えば蓋部13を閉じる方向に重力が作用するように設けられてよい。この場合には、弾性力の代わりに重力を利用して蓋部13を閉じることができる。
また、本発明の運転室8において、蓋部13には、蓋部13を閉じる方向に弾性力や重力が作用しなくてもよい。このような場合でも、第一突起部55に対する第二突起部56の押し付けが解除された際には、スロット用突起52がスロット孔51の終端53に到達していることで、ドア12の閉動作に伴うドア側リンク31の移動によって蓋側リンク32を蓋部13側に押すことができる。これにより、蓋部13の閉動作を実施することができる。
【0048】
本発明の運転室8において、換気口22は、例えば出入口21と同様に運転室本体11の側壁部23に形成されてよい。この場合、リンク機構14や閉塞タイミング機構15は、底壁部24の内面24aではなく、側壁部23の内面に対応するように設けられればよい。
【0049】
本発明の運転室は、アーティキュレート型のダンプトラックに適用されることに限らず、例えばリジット型のダンプトラック、油圧ショベル、ブルドーザー、モータグレーダ、クレーンなど任意の作業車両に適用されてよい。
【符号の説明】
【0050】
1…ダンプトラック、8…運転室、11…運転室本体、12…ドア、13…蓋部、14…リンク機構、15…閉塞タイミング調整部、16…弾性部材、21…出入口、22…換気口、23…側壁部、24…底壁部、24a…内面、31…ドア側リンク、32…蓋側リンク、33…第一リンク部材、34…第二リンク部材、38…レール部、51…スロット孔、52…スロット用突起、53…終端、54…始端、55…第一突起部、56…第二突起部、57…被押付面、58…傾斜面
図1
図2
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図11