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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】冷却器、そのベース板および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018189740
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020061399
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-222870(JP,A)
【文献】特開2010-027735(JP,A)
【文献】国際公開第2014/045766(WO,A1)
【文献】特開2002-158322(JP,A)
【文献】特開2010-212577(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0232112(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0008574(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口を有する箱形の容器本体と、内周部の下面側に多数の放熱フィンが形成され、かつ前記内周部の上面側に発熱体が配置可能なベース板とを備え、前記放熱フィンが前記容器本体内にその上面開口を介して収容された状態で、前記ベース板の外周部が前記容器本体の上面開口周縁部にシール部材を介して固定されることによって、前記ベース板が前記容器本体にその上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器であって、
前記ベース板が、その内周部と、外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって形成され
前記ベース板における前記外周部が、前記内周部に対し強度が高い材質によって形成されていることを特徴とする冷却器。
【請求項2】
上面に開口を有する箱形の容器本体と、内周部の下面側に多数の放熱フィンが形成され、かつ前記内周部の上面側に発熱体が配置可能なベース板とを備え、前記放熱フィンが前記容器本体内にその上面開口を介して収容された状態で、前記ベース板の外周部が前記容器本体の上面開口周縁部にシール部材を介して固定されることによって、前記ベース板が前記容器本体にその上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器であって、
前記ベース板が、その内周部と、外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって形成され
前記ベース板における前記内周部が、前記外周部に対し熱伝導率が高い材質によって形成されていることを特徴とする冷却器。
【請求項3】
前記ベース板における外周部の板厚が、前記内周部の板厚よりも厚く形成されている請求項1または2に記載の冷却器。
【請求項4】
前記ベース板における前記外周部の下面と、前記内周部の下面とがほぼ同一平面内に配置されている請求項1~のいずれか1項に記載の冷却器。
【請求項5】
前記ベース板における前記外周部の内周端縁下側に凹段部が設けられ、
前記凹段部内に前記内周部の外周端縁が収容された状態に配置されている請求項1~のいずれか1項に記載の冷却器。
【請求項6】
前記ベース板における前記外周部の内周端縁下側に内方に突出する内方突出部が設けられるとともに、
前記内周部の外周端縁が前記内突出部に載置された状態に配置されている請求項1~のいずれか1項に記載の冷却器。
【請求項7】
前記ベース板における前記外周部および前記内周部がアルミニウムよって構成されている請求項1~のいずれか1項に記載の冷却器。
【請求項8】
上面に開口を有する箱形の容器本体に、その上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器のベース板であって、
下面側に、容器本体内にその上面開口を介して収容可能な多数のフィンが形成され、かつ上面側に発熱体が配置可能な内周部と、
前記内周部の外側に設けられ、かつ容器本体の上面開口縁部にシール部材を介して固定可能な外周部とを備え、
前記内周部と、前記外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって構成され
前記ベース板における前記外周部が、前記内周部に対し強度が高い材質によって形成されていることを特徴とする冷却器のベース板。
【請求項9】
上面に開口を有する箱形の容器本体に、その上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器のベース板であって、
下面側に、容器本体内にその上面開口を介して収容可能な多数のフィンが形成され、かつ上面側に発熱体が配置可能な内周部と、
前記内周部の外側に設けられ、かつ容器本体の上面開口縁部にシール部材を介して固定可能な外周部とを備え、
前記内周部と、前記外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって構成され
前記ベース板における前記内周部が、前記外周部に対し熱伝導率が高い材質によって形成されていることを特徴とする冷却器のベース板。
【請求項10】
上面に開口を有する箱形の容器本体と、内周部の下面側に多数の放熱フィンが形成されたベース板と、前記ベース板の内周部上面側に配置される半導体素子とを備え、前記放熱フィンが前記容器本体内にその上面開口を介して収容された状態で、前記ベース板の外周部が前記容器本体の上面開口周縁部にシール部材を介して固定されることによって、前記ベース板が前記容器本体にその上面開口を閉塞するように組み付けられる半導体装置であって、
前記ベース板が、その内周部と、外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって形成され
前記ベース板における前記外周部が、前記内周部に対し強度が高い材質によって形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
上面に開口を有する箱形の容器本体と、内周部の下面側に多数の放熱フィンが形成されたベース板と、前記ベース板の内周部上面側に配置される半導体素子とを備え、前記放熱フィンが前記容器本体内にその上面開口を介して収容された状態で、前記ベース板の外周部が前記容器本体の上面開口周縁部にシール部材を介して固定されることによって、前記ベース板が前記容器本体にその上面開口を閉塞するように組み付けられる半導体装置であって、
前記ベース板が、その内周部と、外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって形成され
前記ベース板における前記内周部が、前記外周部に対し熱伝導率が高い材質によって形成されていることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力用半導体素子等の発熱体の冷却用に用いられる冷却器およびそのベース板に関し、さらに当該冷却器を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の電動機、産業機械、家電、情報端末等の電力駆動機器の主電力を制御するのに用いられる電力用半導体素子は、大電力を取り扱うために大きな発熱が伴う。このため高熱による悪影響を回避して高性能を維持するために、電力用半導体素子が実装された基板(素子実装基板)には、冷却器を接合または接着して、その冷却器によって発生した熱を放出するようにしている。
【0003】
定置設備等のように、素子実装基板の周辺に放熱用に大きなスペースを確保できるような場合には、空冷式冷却器を採用することが可能であるが、自動車等の限られたスペース内に多数の機器が密集して配置されるような場合には、液冷式(水冷式)の冷却器を採用するのが通例である。
【0004】
下記特許文献1,2には、素子実装基板を冷却するための液冷式冷却器が開示されている。この冷却器は、上面に開口を有する水冷ジャケット等の箱形の容器本体と、その容器本体の上面開口を閉塞するように取り付けられるベース板とを備えている。ベース板は、その内周部の下面側に多数の放熱フィンが一体に形成されるとともに、内周部の上面側に素子実装基板が搭載されている。このベース板の多数の放熱フィンを容器本体内に上面開口を介して収容した状態で、ベース板の外周部が容器本体の上面開口周縁部にOリング等のシール部材を介してボルト等によって固定される。これにより容器本体およびベース板によって冷媒が流通する冷媒流路が形成され、冷却器の外部から冷媒流路の一端に供給される冷媒が、冷媒流路を通って他端から外部に流出されるように構成されている。こうして冷却器の冷媒流路内に循環される冷媒と、半導体素子とがベース板および放熱フィン等を介して熱交換して、半導体素子から発生する熱が冷媒を介して外部に放出され、それによって半導体素子が冷却されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-92209号公報
【文献】特開2018-67691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に示す従来の冷却器のように、容器本体とベース板とが別体で後付けされる冷却器においては、放熱フィンが形成されたベース板の内周部は、冷却性能を向上させるために高い熱伝導率が要求されるのに対し、ベース板の外周部は、容器本体に固定する際に密封性を確保するためにシール部材を十分に圧縮する必要があり、シール部材の弾性反発力によっても変形しないような高い強度が要求される。
【0007】
しかしながら、従来の冷却器は、ベース板全体が一体に形成されており、ベース板内周部と、ベース板外周部とが同じ材質によって構成されている。このため冷却性能を優先してベース板を熱伝導率の高い材質により構成すると、ベース板に十分な強度を得ることができず、ベース板外周部がシール部材の反発力によって変形してしまい、ベース板を容器本体に精度良く取り付けることが困難になるという課題が発生する。逆にベース板の取付精度を優先してベース板を高い強度の材質によって構成すると、ベース板内周部の熱伝達率が低下し、十分な冷却性能を得ることが困難になるという課題が発生する。
【0008】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、十分な冷却性能を得ることができる上さらに、ベース板を容器本体に精度良く安定した状態に取り付けることができる冷却器、そのベース板および半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0010】
[1]上面に開口を有する箱形の容器本体と、内周部の下面側に多数の放熱フィンが形成され、かつ前記内周部の上面側に発熱体が配置可能なベース板とを備え、前記放熱フィンが前記容器本体内にその上面開口を介して収容された状態で、前記ベース板の外周部が前記容器本体の上面開口周縁部にシール部材を介して固定されることによって、前記ベース板が前記容器本体にその上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器であって、
前記ベース板が、その内周部と、外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって形成されていることを特徴とする冷却器。
【0011】
[2]前記ベース板における前記外周部が、前記内周部に対し強度が高い材質によって形成されている前項1に記載の冷却器。
【0012】
[3]前記ベース板における前記内周部が、前記外周部に対し熱伝導率が高い材質によって形成されている前項1または2に記載の冷却器。
【0013】
[4]前記ベース板における外周部の板厚が、前記内周部の板厚よりも厚く形成されている前項1~3のいずれか1項に記載の冷却器。
【0014】
[5]前記ベース板における前記外周部の下面と、前記内周部の下面とがほぼ同一平面内に配置されている前項1~4のいずれか1項に記載の冷却器。
【0015】
[6]前記ベース板における前記外周部の内周端縁下側に凹段部が設けられ、
前記凹段部内に前記内周部の外周端縁が収容された状態に配置されている前項1~5のいずれか1項に記載の冷却器。
【0016】
[7]前記ベース板における前記外周部の内周端縁下側に内方に突出する内方突出部が設けられるとともに、
前記内周部の外周端縁が前記内容突出部に載置された状態に配置されている前項1~5のいずれか1項に記載の冷却器。
【0017】
[8]前記ベース板における前記外周部および前記内周部がアルミニウムよって構成されている前項1~7のいずれか1項に記載の冷却器。
【0018】
[9]上面に開口を有する箱形の容器本体に、その上面開口を閉塞するように組み付けられる冷却器のベース板であって、
下面側に、容器本体内にその上面開口を介して収容可能な多数のフィンが形成され、かつ上面側に発熱体が配置可能な内周部と、
前記内周部の外側に設けられ、かつ容器本体の上面開口縁部にシール部材を介して固定可能な外周部とを備え、
前記内周部と、前記外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって構成されていることを特徴とする冷却器のベース板。
【0019】
[10]上面に開口を有する箱形の容器本体と、内周部の下面側に多数の放熱フィンが形成されたベース板と、前記ベース板の内周部上面側に配置される半導体素子とを備え、前記放熱フィンが前記容器本体内にその上面開口を介して収容された状態で、前記ベース板の外周部が前記容器本体器の上面開口周縁部にシール部材を介して固定されることによって、前記ベース板が前記容器本体にその上面開口を閉塞するように組み付けられる半導体装置であって、
前記ベース板が、その内周部と、外周部とが別体に形成されるとともに、その別体の内周部および外周部が連結一体化されることによって形成されていることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0020】
発明[1]の冷却器によれば、ベース板において放熱フィンが形成される内周部と、容器本体に固定される外周部とを別体に形成しているため、内周部と外周部とを異なる材質によって構成することができる。すなわち内周部を熱伝導率が高い素材によって構成するとともに、外周部を強度が高い素材によって構成することができる。これにより、発熱体から発生する熱は内周部を介して容器本体内の冷媒にスムーズに吸収され、効率良く熱交換することができ、十分な冷却性能を得ることができる。さらに外周部はシール部材の弾性反発力に対しても変形することがなく、外周部をシール部材を圧縮した状態で容器本体に確実に取り付けることができ、ベース板としての外周部を容器本体に位置精度良く安定した状態に取り付けることができる。
【0021】
発明[2]~[4]の冷却器によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0022】
発明[5][6]の冷却器によれば、ベース板の下面側における内周部および外周部間に段差が形成されるのを防止できるため、ベース板の下面に沿って冷媒が内周部および外周部間をスムーズに流通するようになり、冷却性能をより一層向上させることができる。
【0023】
発明[7]の冷却器によれば、外周部の内周端縁に内方突出部を形成し、その内方突出部上に内周部の外周端縁を配置するようにしているため、シール部材を内方突出部の下面の位置に配置することにより、シール部材を容器本体の上面開口の近接位置に配置することができる。このため、シール部材を外周部における内側寄りの位置に配置でき、その分、外周部の外径寸法を小さくすることができ、ひいては冷却器全体の小型軽量化を図ることができる。
【0024】
発明[8]の冷却器によれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0025】
発明[9]の冷却器のベース板によれば、上記と同様の主要部を備えているため、上記と同様の効果を得ることができる。
【0026】
発明[10]の半導体装置によれば、上記と同様の主要部を備えているため、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1はこの発明の第1実施形態である冷却器が適用された電力用半導体装置を示す断面図である。
図2図2は第1実施形態の半導体装置のベース板における内周部および外周部間の接合部周辺を拡大して示す断面図である。
図3図3はこの発明の第2実施形態である冷却器が適用された電力用半導体装置を示す断面図である。
図4図4は第2実施形態の半導体装置のベース板における内周部および外周部間の接合部周辺を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である冷却器が適用された電力用半導体装置を示す断面図である。図2はその半導体装置の要部を拡大して示す断面図であって、図1の一点鎖線で囲まれる部分を拡大して示す断面図に相当する。
【0029】
図1に示すようにこの半導体装置は、冷却ジャケット等の容器本体1と、ベース板5と、実装基板2とを基本的な構成要素として備えている。
【0030】
なお本明細書および特許請求の範囲において、アルミニウムという用語は、特に明示した場合を除き、純アルミニウムはもちろん、アルミニウム合金も含む意味で用いられる。さらに本明細書および特許請求の範囲において、方向を示す「上方(上側)」や「下方(下側)」等の用語は、重力方向を基準とするものではなく、便宜的に図1に示す状態を基準にしたものである。つまり、本発明の冷却器や半導体装置は実使用状態において、図1に示す状態の他に、例えば図1の状態に対し、上下を反転させた状態、上下を左右方向に向けて配置した状態、上下を斜め方向に向けて配置した状態で使用するようにしても良い。
【0031】
容器本体1は、平面視が矩形状に形成されており、全体として箱形(ボックス型)の形状に形成されている。この容器本体1には、上面に開口11を有し、その上面開口11によって容器本体1の内部が上方に開放されている。
【0032】
ベース板5は、平面視において外周形状が、容器本体1の外周形状に対応する矩形状に形成されている。このベース板5は、ベース板5の内側の領域を構成する内周部6と、ベース板5の外側の領域を構成し、かつ内周部6の外側に配置される外周部7とを備えている。本実施形態においてベース板5は、内周部6と外周部7とは別体に形成されており、後述するように異なる材質によって構成されている。
【0033】
内周部6にはその下面側に多数の放熱フィン61が下方に突出するようにして一体に形成されている。本実施形態において、放熱フィン61の構成は特に限定されるものではなく、プレートフィンであっても、ピンフィンであっても良い。さらにピンフィンを採用する場合には、その断面形状が限定されるものではなく、円形状、楕円形状、長円形状、多角形状、異形状等、どのような断面形状に形成されていても良い。
【0034】
また外周部7は、内周部6に比べて板厚が厚く形成されている。さらに図1および図2に示すように外周部7における内周端縁の下側には、内方に向けて突出するように内方突出部75が一体に形成されている。
【0035】
この外周部7の内方突出部75上に、内周部6の外周端縁が載置されるように配置され、かつ内周部6の放熱フィン61が外周部7の中央孔を通って下方に突出するように配置された状態で、内周部6の外周端縁と外周部7の内周端縁との接触領域周辺がろう付け処理、溶接処理、接着剤塗布処理等によってされて結合される。これによって、内周部6および外周部7が接合一体化(連結一体化)されて、ベース板5が形成されている。
【0036】
ここで本実施形態においてベース板5の内周部6は、外周部7に比べて熱伝導率が高い材質によって構成されている。さらに外周部7は、内周部6に比べて強度が高い材質によって構成されている。
【0037】
具体的に内周部6の素材としては、合金番号がA1050(熱伝導率230W/mK、耐力30MPa)、A1100(熱伝導率220W/mK、耐力35MPa)等の純アルミニウムを好適に用いることができる。また外周部7の素材としては、合金番号がA6063(熱伝導率210W/mK、耐力145MPa)等のAl-Mg-Si系合金、A3003(熱伝導率170W/mK、耐力125MPa)等のAl-Mn系合金を好適に用いることができる。
【0038】
以上の構成のベース板5が容器本体1に組み付けられて冷却器が形成される。すなわちベース板5の放熱フィン61が容器本体1の上面開口11を介して容器本体1内に収容され、さらにベース板5の外周部7の下面が容器本体1の上面開口周縁部に、Oリングやメタルガスケット等のシール部材3を介して載置される。その状態で、外周部7にその上方側から貫通されたボルト4が容器本体1の上面開口周縁部に締結されて固定される。これによりベース板5が容器本体1に組み付けられる。この組付状態においては、容器本体1とベース板5とによって密閉された冷媒流路が形成されるとともに、その冷媒流路内に放熱フィン6が配置されている。
【0039】
なおこの組付状態において、放熱フィン61の下端は、容器本体1の内部底面に接触させておくのが好ましい。
【0040】
また、ベース板5の上側に設けられる実装基板2は、絶縁板21を備え、その絶縁板21の上下両面にアルミニウム製の配線層22,22が積層されるとともに、上側の配線層22の上面にはんだ層23を介して電力用半導体素子24が固定されている。
【0041】
この実装基板2の下側の配線層22が、ベース板5の内周部6の上面にろう付け処理、溶接処理、接着剤塗布処理等によって結合される。これにより本実施形態の半導体装置が形成される。
【0042】
以上の構成の本実施形態の半導体装置においては、容器本体1に図示しない冷媒入口および冷媒出口が設けられており、冷媒入口を介して容器本体1(冷媒流路)内に冷媒が流入されて、冷媒流路における多数の放熱フィン61の各間を流通した後、冷媒出口から外部に流出される。こうして容器本体1(冷媒流路)内を流通する冷媒と、半導体素子24との間で熱交換されることにより、半導体素子24から発生する熱が、冷媒を介して外部に放出されて、半導体素子24が冷却されるようになっている。
【0043】
以上の構成の本実施形態の半導体装置によれば、ベース板5において放熱フィン61が形成される内周部6と、容器本体1に固定される外周部7とを別体に形成し、内周部6を熱伝導率が高い素材によって構成するとともに、外周部7を強度が高い素材によって構成している。このため、半導体素子24から発生する熱は内周部6を介して容器本体1内の冷媒にスムーズに吸収され、効率良く熱交換することができ、十分な冷却性能を得ることができる。さらに外周部7はシール部材3の弾性反発力に対しても変形することがなく、外周部7をシール部材3を圧縮した状態で容器本体1に確実に取り付けることができる。従って密封性を十分に確保しつつ、ベース板5としての外周部7を容器本体1に位置精度良く安定した状態に取り付けることができ、製品価値を格段に向上させることができる。
【0044】
また本実施形態においては、ベース板5における内周部6の板厚を外周部7の板厚に比べて薄く形成しているため、内周部6の熱伝達率をさらに向上できて、冷却性能をより一層向上させることができるとともに、外周部7の強度をさらに向上できて、ベース板5を容器本体1により一層安定した状態に取り付けることができる。
【0045】
また本実施形態においては、外周部7の内周端縁に内方突出部75を形成し、その内方突出部75上に内周部6の外周端縁を配置するようにしているため、シール部材3を内方突出部75の下面の位置に配置することができる。このため本第1実施形態においては、図3および図4に示す後述の第2実施形態の半導体装置に比べて、シール部材3を容器本体1の上面開口11の近接位置に配置することができる。つまり本第1実施形態においてはシール部材3を内側寄りの位置に配置でき、その分、ベース板5としての外周部7の外径寸法を小さくすることができ、ひいては半導体装置全体の小型軽量化を図ることができる。
【0046】
<第2実施形態>
図3はこの発明の第2実施形態である冷却器が適用された電力用半導体装置を示す断面図、図4はその半導体装置の要部を拡大して示す断面図であって、図3の一点鎖線で囲まれる部分を拡大して示す断面図に相当する。
【0047】
両図に示すようにこの半導体装置においては、ベース板5における外周部7の内周端縁下側に、内方および下方に向けて開放する凹段部76が形成されている。そしてこの外周部7の凹段部76内に内周部6の外周端縁が嵌め込まれるように配置された状態で、内周部6および外周部7との接触領域周辺がろう付け処理、溶接処理、接着剤塗布処理等によって結合されて、ベース板5が形成される。さらにこのベース板5が、上記第1実施形態と同様にして容器本体1に取り付けられるとともに、ベース板5上に実装基板2が実装されて、本第2実施形態の半導体装置が形成される。
【0048】
この第2実施形態の半導体装置において他の構成は、上記第1実施形態と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して、重複説明は省略する。
【0049】
この第2実施形態の半導体装置においても上記と同様、十分な冷却性能を得ることができるとともに、ベース板5としての外周部7を容器本体1に位置精度良く安定した状態に取り付けることができる。
【0050】
その上さらに本第2実施形態の半導体装置においては、ベース板5における外周部7の内周端縁下側に凹段部76を形成して、その凹段部76内に内周部6の外周端縁を収容するように配置しているため、内周部6の下面と外周部7の下面とを同一平面内(面一)に配置することが容易となる。このため内周部6の下面と外周部7の下面との間に段差がなくなり、図4の矢符号に示すように、ベース板5の下面に沿う冷媒Rが外周部7から内周部6に、および内周部6から外周部7にスムーズに流動するようになる。このように冷媒流路内での冷媒Rの流れがよりスムーズになり、より一層冷却性能を向上させることができる。
【0051】
<変形例>
上記実施形態においては、ベース板5における外周部7の内周端縁に内方突出部75や凹段部76を形成し、外周部7の内周端縁に内周部6の外周端縁を軸心方向に係合し得るように配置しているが、それだけに限られず、本発明においては、外周部および内周部の接合部の形状はどのような形状でも良い。例えば内周部6の外周端縁(外周端面)および外周部7の内周端縁(内周端面)をそれぞれ垂直面に形成するようにしても良いし、内周部6の外周端縁に、外方突出部や凹段部を形成するようにしても良い。
【0052】
また上記実施形態においては、半導体素子24を冷却する冷却器を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、半導体素子以外の発熱体を冷却する冷却器にも適用することができる。
【0053】
また上記実施形態においては、ベース板を容器本体にボルトによって固定する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ベース板の容器本体に対する固定手段は限定されるものではない。例えばボルト以外に、ねじやクランプ等の固定手段を用いて固定するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明の冷却器は、電力用半導体素子等の発熱体を冷却するための冷却装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
1:容器本体
11:上面開口
24:半導体素子
3:シール部材
5:ベース板
6:内周部
61:放熱フィン
7:外周部
75:内方突出部
76:凹段部
図1
図2
図3
図4