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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】剥離シート付絶縁放熱シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20220819BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018191005
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020061435
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】北川 嘉栄
(72)【発明者】
【氏名】友安 雄大
(72)【発明者】
【氏名】牧田 博之
【審査官】平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-176953(JP,A)
【文献】特開2002-294192(JP,A)
【文献】特開2015-103581(JP,A)
【文献】特開2018-22767(JP,A)
【文献】特開平11-181368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L 23/29
H01L 23/34-23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機フィラー及び熱硬化性樹脂を含有する絶縁放熱シートと、前記絶縁放熱シートに積層されている剥離シートとを備える、剥離シート付絶縁放熱シートであって、
前記絶縁放熱シートは、第1の被着体に接着される一の接着面と、第2の被着体に接着される他の接着面とを有し、
前記剥離シートは、表面が前記一の接着面に当接している転写シートと、前記転写シートの背面側から前記転写シートに接着されている位置決めシートと、前記転写シートと前記位置決めシートとの前記接着に用いられている接着剤とを有し、
前記絶縁放熱シートと前記転写シートとは、外縁が対応した形状となっており、
前記絶縁放熱シートには、前記転写シートの表面粗度が転写されており、
前記位置決めシートは、前記絶縁放熱シート及び前記転写シートよりも面積が大きく、且つ、前記絶縁放熱シートを前記第2の被着体に貼りつける際に、前記第2の被着体に対する前記絶縁放熱シートの位置決めに用いられている、剥離シート付絶縁放熱シート。
【請求項2】
前記接着剤が感圧接着剤である、請求項1に記載の剥離シート付絶縁放熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シート付絶縁放熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂に無機フィラーを分散させることにより、熱硬化性樹脂単体に比べて熱伝導性を向上させた絶縁放熱シートが広く用いられている。
【0003】
例えば、絶縁放熱シートは、半導体素子を樹脂モールドしたモジュール本体と、前記半導体素子が発する熱を放熱すべく外部露出した金属製の放熱用部材との間に介装されて、半導体モジュールを作製するのに用いられている。
また、半導体モジュールを作製する際には、剥離シート付絶縁放熱シートが用いられており、該剥離シート付絶縁放熱シートは、以下のようにして用いられている。
まず、剥離シート付絶縁放熱シートを絶縁放熱シート側で、放熱用部材に積層させ、剥離シートを剥離させる。
そして、剥離シートの剥離により露出した表面で絶縁放熱シートを、モジュール本体に積層させる。
次に、絶縁放熱シートを熱硬化させ、モジュール本体、絶縁放熱シート、及び、放熱用部材を一体化させることにより、半導体モジュールを作製する。
【0004】
また、剥離シート付絶縁放熱シートは、半導体モジュールの作製に限らず、一の被着体と他の被着体との間に絶縁放熱シートを介装させる際に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-176953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、放熱性がより一層優れた絶縁放熱シートが求められ、それに伴い、絶縁放熱シートにおける無機フィラーの含有割合を高めることが求められている。
しかし、絶縁放熱シートにおける無機フィラーの含有割合が高まると、絶縁放熱シートと被着体の接着性が低下してしまう。
よって、絶縁放熱シートと被着体との接着性を高めることが求められ得る。
しかしながら、絶縁放熱シートと被着体との接着性に優れる剥離シート付絶縁放熱シートについては、これまで十分には検討がなされていない。
【0007】
そこで、本発明は、絶縁放熱シートと被着体との接着性に優れる剥離シート付絶縁放熱シートを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、無機フィラー及び熱硬化性樹脂を含有する絶縁放熱シートと、前記絶縁放熱シートに積層されている剥離シートとを備える、剥離シート付絶縁放熱シートであって、
前記絶縁放熱シートは、第1の被着体に接着される一の接着面と、第2の被着体に接着される他の接着面とを有し、
前記剥離シートは、表面が前記一の接着面に当接している転写シートと、前記転写シートの背面側から前記転写シートに接着されている位置決めシートと、前記転写シートと前記位置決めシートとの前記接着に用いられている接着剤とを有し、
前記絶縁放熱シートと前記転写シートとは、外縁が対応した形状となっており、
前記絶縁放熱シートには、前記転写シートの表面粗度が転写されており、
前記位置決めシートは、前記絶縁放熱シート及び前記転写シートよりも面積が大きく、且つ、前記絶縁放熱シートを前記第2の被着体に貼りつける際に、前記第2の被着体に対する前記絶縁放熱シートの位置決めに用いられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁放熱シートと被着体との接着性に優れる剥離シート付絶縁放熱シートを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の剥離シート付絶縁放熱シートの断面構造を示した概略断面図。
図2】一実施形態の積層シートの断面構造を示した概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シート1は、無機フィラー及び熱硬化性樹脂を含有する絶縁放熱シート2と、該絶縁放熱シート2に積層されている剥離シート3とを備える。
前記絶縁放熱シート2は、第1の被着体に接着される一の接着面21と、第2の被着体に接着される他の接着面22とを有する。前記一の接着面21は、前記他の接着面22とは反対側の面である。
前記剥離シート3は、表面が前記一の接着面21に当接している転写シート31と、前記転写シート31の背面側から前記転写シート31に接着されている位置決めシート32とを有する。
また、前記剥離シート3は、前記転写シート31と前記位置決めシート32との前記接着に用いられている接着剤とを有する。具体的には、前記剥離シート3は、基材シートを有し、該基材シートの両面に前記接着剤が塗布された両面粘着シート33を有する。
前記絶縁放熱シート2と前記転写シート31とは、外縁が対応した形状となっている。
前記絶縁放熱シート2には、前記転写シート31の表面粗度が転写されている。
前記位置決めシート32は、前記絶縁放熱シート2及び前記転写シート31よりも面積が大きく、且つ、前記絶縁放熱シート2を第2の被着体に貼りつける際に、前記第2の被着体に対する前記絶縁放熱シート2の位置決めに用いられている。
【0013】
本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シート1は、半導体素子を樹脂モールドしたモジュール本体と、前記半導体素子が発する熱を放熱すべく外部露出した金属製の放熱用部材との間に前記絶縁放熱シートを介装させて、半導体モジュールを作製するのに用いられる。
【0014】
前記絶縁放熱シート2は、熱硬化性樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物によって形成されている。
前記樹脂組成物のベース樹脂となる前記熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0015】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の各種のエポキシ樹脂を単独または2種以上併用して採用することができる。
【0016】
フェノール樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂等が用いられる。
なかでも、トリフェニルメタン型フェノール樹脂は、耐熱性において有利であり、フェノールアラルキル樹脂は、金属製の放熱用部材との間に良好なる接着性を示す点において好ましく用いられる。
【0017】
なお、前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を採用する場合には、熱硬化性樹脂に当該エポキシ樹脂の硬化剤や硬化促進剤をさらに加えて熱硬化性を調整してもよい。
硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、トリエチレンテトラミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
また、前記ノボラック型フェノール樹脂などもエポキシ樹脂を硬化させるための硬化剤として前記熱硬化性樹脂に含有させることができる。
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類や、トリフェニルフォスフェイト(TPP)、三フッ化ホウ素モノエチルアミンなどのアミン系硬化促進剤などが挙げられる。
【0018】
一方で、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を採用する場合には、ヘキサメチレンテトラミン、各種の2官能以上のエポキシ化合物、イソシアネート類、トリオキサン及び環状ホルマール等を前記フェノール樹脂の硬化剤として含有させても良い。
【0019】
前記無機フィラーは、熱硬化性樹脂よりも熱伝導率が高ければ特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、二酸化珪素、酸化マグネシウム、ダイヤモンドなどの粒子が挙げられる。
【0020】
前記絶縁放熱シート2の厚みは、好ましくは80~300μm、より好ましくは100~200μmである。
【0021】
前記絶縁放熱シート2は、熱硬化性樹脂を十分に硬化(Cステージ化)させた際の熱伝導率が、好ましくは2W/m・K以上、より好ましくは4W/m・K以上となるように前記無機フィラーの種類や配合量の調整がなされている。
また、前記絶縁放熱シート2は、熱硬化性樹脂を十分に硬化(Cステージ化)させた際の熱伝導率が、好ましくは16W/m・K以下、より好ましくは14W/m・K以下となるように前記無機フィラーの種類や配合量の調整がなされている。
なお、熱伝導率は、通常、キセノンフラッシュアナライザー(例えば、NETZSCH社製、「LFA-447型」)によって測定することができる。
この熱伝導率については、キセノンフラッシュアナライザーによらず、他のレーザーフラッシュ法やTWA法により測定することができ、例えば、レーザーフラッシュ法では、アルバック理工社製の「TC-9000」を用いて測定することができる。
そして、TWA法では、アイフェイズ社製の「ai-Phase mobile」を用いて測定することができる。
【0022】
前記絶縁放熱シート2は、優れた電気絶縁性を発揮するという観点から、熱硬化性樹脂を十分に硬化(Cステージ化)させた際の体積抵抗率が、好ましくは1×1013Ω・cm以上、より好ましくは1×1014Ω・cm以上である。
体積抵抗率は、JIS C2139-3-1:2018に従って測定することができる。
【0023】
前記剥離シート3における前記転写シート31は、ポリマーフィルム、金属箔、繊維シートなどによって形成させることができる。
【0024】
前記ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレートなどのポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド樹脂;ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドなどの芳香族ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリイミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂などから形成された樹脂フィルムが挙げられる。
【0025】
前記金属箔としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄などの金属やその合金からなる金属箔が挙げられる。
該金属箔としては、異種金属が貼り合わされてなるクラッド箔や異種金属をメッキしたメッキ箔であってもよい。
【0026】
前記繊維シートとしては、例えば、ポリエステル繊維不織布、パルプシート、ガラスマット、カーボン繊維シートなどが挙げられる。
【0027】
前記転写シート31の厚みは、好ましくは25~250μm、より好ましくは50~188μmである。
【0028】
前記転写シート31は、帯電防止ポリエチレンテレフタレートシートであることが好ましい。
【0029】
前記位置決めシート32は、ポリマーフィルム、金属箔、繊維シートなどによって形成させることができる。
【0030】
前記ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレートなどのポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド樹脂;ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドなどの芳香族ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリイミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂などからなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0031】
前記金属箔としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄などの金属やその合金からなる金属箔が挙げられる。
該金属箔としては、異種金属が貼り合わされてなるクラッド箔や異種金属をメッキしたメッキ箔であってもよい。
【0032】
前記繊維シートとしては、例えば、ポリエステル繊維不織布、パルプシート、ガラスマット、カーボン繊維シートなどが挙げられる。
【0033】
前記位置決めシート32は、帯電防止ポリエチレンテレフタレートシートであることが好ましい。
【0034】
前記両面粘着シート33は、基材シートの層(基材シート層)と、基材シート層の一面に当接している接着剤層(第1接着剤層)と、基材シート層の他面に当接している接着剤層(第2接着剤層)とを有する。
前記接着剤としては、感圧接着剤が挙げられる。
前記感圧接着剤としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。
【0035】
該基材シートを構成する材料としては、ポリマーフィルム、繊維シートなどが挙げられる。
前記ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレートなどのポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミド樹脂;ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドなどの芳香族ポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂;ポリイミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂などからなる樹脂フィルムが挙げられる。
前記繊維シートとしては、例えば、ポリエステル繊維不織布、パルプシート、ガラスマット、カーボン繊維シートなどが挙げられる。
【0036】
前記両面粘着シート33の厚みは、好ましくは5~300μm、より好ましくは30~70μmである。
また、前記接着剤層それぞれの厚みは、好ましくは2~100μm、より好ましくは10~30μmである。
本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、前記接着剤層それぞれの厚みが2μm以上であることにより、転写シート31と位置決めシート32との接着性に優れたものとなる。
また、本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、前記接着剤層それぞれの厚みが100μm以下であることにより、加熱により絶縁放熱シートを被着体に接着させる際に、接着剤がはみ出るのを抑制することができる。
さらに、前記接着剤層の厚みの合計(第1接着剤層の厚みと第2接着剤層の厚みとの合計)は、好ましくは4~200μm、より好ましくは20~60μmである。
本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、前記両面粘着シート33における接着剤層の厚みの合計が4μm以上であることにより、転写シート31と位置決めシート32との接着性に優れたものとなる。
また、本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、前記両面粘着シート33における接着剤の厚みの合計が200μm以下であることにより、加熱により絶縁放熱シートを被着体に接着させる際に、接着剤がはみ出るのを抑制することができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シートの製造方法について説明する。
【0038】
本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シートの製造方法では、まず、表面粗度を絶縁放熱シートに転写させる転写シートと、熱硬化性樹脂、無機フィラー、及び、有機溶媒を含有するコーティング液とを用意する。
次に、表面粗度を絶縁放熱シートに転写させる転写シートの表面にコーティング液をコーティングすることにより、該転写シート上に被膜を形成する。
そして、該被膜を乾燥させることにより、片面に乾燥被膜が形成された転写シートを得る。
次に、片面に乾燥被膜が形成された転写シートを2枚用意し、これらの転写シートを乾燥被膜が対向するように重ね合わせて熱プレスすることにより、2層の乾燥被膜を積層一体化させて、転写シートが両面に付いた絶縁放熱シートを得る。
そして、基材シートを備え、該基材シートの両面に接着剤が塗布された両面粘着シートを用意する。
次に、転写シートが両面に付いた絶縁放熱シートにおける一方の転写シートに、両面粘着シートを重ね合わせることにより、第1の転写シート4と、絶縁放熱シート2と、第2の転写シート31と、両面粘着シート33とがこの順番で積層された積層シート5(図2)を得る。
そして、積層シート5を、表面の形状が所定の形状となるように切り出す。
次に、切り出した積層シート5よりも面積が大きく、且つ、絶縁放熱シート2を第2の被着体に貼りつける際に、第2の被着体に対する絶縁放熱シート2の位置決めに用いられる位置決めシート32を用意する。
そして、両面粘着シート33側で、切り出した積層シート5と、位置決めシート32とを重ね合わせて加圧することにより、位置決めシート付き積層シートを得る。
次に、位置決めシート付き積層シートから第1の転写シート4を剥離することにより、本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シート1を得る。
【0039】
本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0040】
即ち、本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シート1は、無機フィラー及び熱硬化性樹脂を含有する絶縁放熱シート2と、該絶縁放熱シート2に積層されている剥離シート3とを備える。
前記絶縁放熱シート2は、第1の被着体に接着される一の接着面21と、第2の被着体に接着される他の接着面22とを有する。
前記剥離シート3は、表面が前記一の接着面に当接している転写シート31と、前記転写シート31の背面側から前記転写シート31に接着されている位置決めシート32と、前記転写シート31と前記位置決めシート32との前記接着に用いられている接着剤とを有する。
前記絶縁放熱シート2と前記転写シート31とは、外縁が対応した形状となっている。
前記絶縁放熱シート2には、前記転写シート31の表面粗度が転写されている。
前記位置決めシート32は、前記絶縁放熱シート2及び前記転写シート31よりも面積が大きく、且つ、前記絶縁放熱シート2を前記第2の被着体に貼りつける際に、前記第2の被着体に対する前記絶縁放熱シート2の位置決めに用いられている。
斯かる剥離シート付絶縁放熱シート1によれば、前記絶縁放熱シート2には、前記転写シート31の表面粗度が転写されているので、前記絶縁放熱シート2について第1の被着体への接着性に優れた表面粗度にすることができる。
従って、斯かる剥離シート付絶縁放熱シート1は、絶縁放熱シートと第1の被着体との接着性に優れたものとなる。
【0041】
また、斯かる剥離シート付絶縁放熱シート1によれば、絶縁放熱シート2への加熱をせず或いは加熱を抑制できる接着剤を選択して、前記転写シート31と前記位置決めシート32とを接着させることができる。その結果、絶縁放熱シートの熱硬化性樹脂の硬化を抑制させることができ、絶縁放熱シートは、第1の被着体及び第2の被着体との接着性により一層優れたものとなる。
さらに、斯かる剥離シート付絶縁放熱シート1によれば、絶縁放熱シートの熱硬化性樹脂の硬化を抑制させることができるので、絶縁放熱シートの厚みを所望の厚みにしやすくなるという利点もある。
【0042】
また、本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シート1では、前記接着剤が感圧接着剤である。
斯かる剥離シート付絶縁放熱シート1は、前記接着剤が感圧接着剤であることにより、作製しやすいものとなるという利点を有する。
【0043】
なお、本発明に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、上記した作用効果によって限定されるものでもない。さらに、本発明に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、本実施形態に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、両面粘着シートを備えるが、本発明に係る剥離シート付絶縁放熱シートは、両面粘着シートを備えない態様であってもよい。この場合、接着剤の層の厚みは、好ましくは5~300μm、より好ましくは30~70μmである。
該接着剤としては、絶縁放熱シート2への加熱をせず或いは加熱を抑制できるという観点から、感圧接着剤、常温硬化型接着剤、UV硬化型接着剤などが好ましい。
前記常温硬化型接着剤としては、シアノアクリレート系の常温硬化型接着剤などが挙げられる。
前記UV硬化型接着剤としては、市販のUV硬化型接着剤などが挙げられる。
【符号の説明】
【0045】
1:剥離シート付絶縁放熱シート、2:絶縁放熱シート、3:剥離シート、4:第1の転写シート、5:積層シート、
21:一の接着面、22:他の接着面、
31:転写シート(第2の転写シート)、32:位置決めシート、33:両面粘着シート
図1
図2