(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】ブリスター包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 75/36 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
B65D75/36
(21)【出願番号】P 2018199142
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】定家 恵実
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-177774(JP,A)
【文献】特開2017-165438(JP,A)
【文献】特開2009-107649(JP,A)
【文献】特開2014-172629(JP,A)
【文献】特開2017-132528(JP,A)
【文献】特開平08-268465(JP,A)
【文献】実公昭42-021926(JP,Y1)
【文献】実開平05-049664(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状に膨出し、複数の毛束が設けられたヘッド部、ネック部及びハンドル部が先端側から後端側に順次設けられた歯ブラシを収容するドーム部を備えた透明樹脂製の容器本体と、
前記ドーム部の開口側を閉鎖する板体とを備え、
前記ドーム部は、前記板体との間に前記歯ブラシを収容した前記容器本体が、前記ヘッド部が上側となる向きで吊り下げられたときに、前記ハンドル部の前記後端側端部に当接する当接部を有し、
前記当接部は、前記後端側に向かうのに従って前記板体に接近する向きに傾く当接面を有し、
前記当接面は、前記ハンドル部の長さ方向と直交する面に対する交差角度が30°以上、90°未満であ
り、
前記ヘッド部は、前記板体に沿い前記長さ方向と直交する幅方向で前記ネック部よりも突出する突部を有し、
前記ドーム部は、前記板体との間に前記歯ブラシを収容した前記容器本体が、前記ヘッド部が上側となる向きで吊り下げられたときに、前記突部に前記後端側から当接する第2当接部を有することを特徴とするブリスター包装容器。
【請求項2】
前記交差角度は、30°以上、70°以下である、請求項1記載のブリスター包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリスター包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯ブラシを収容する包装容器として、歯ブラシが収容されるブリスター部分(容器本体)がドーム形状に突出しているドーム部と、ドーム部(収容部)の開口部分を閉鎖する板体とを有するブリスター包装容器が知られている。
【0003】
このようなブリスター包装容器では、輸送中の落下や、店頭で金具などに吊り下げられた状態から取り外す際に誤って落としてしまう等の事態により、落下衝撃を受けることがある。その際、歯ブラシにおけるハンドル部の下端部を介して落下衝撃を受けるブリスタードーム底部に亀裂を生じさせることが懸念されている。
【0004】
特許文献1には、ブリスターパック下端部の台紙中央部に位置する箇所に切り欠き部を設けることや、歯ブラシハンドルに設けられた吊り下げ用穴に挿入されて歯ブラシハンドルを支持する凹みをブリスタードームに設けること、さらに、ブリスタードームにおける歯ブラシハンドル下端受け部を台形形状とすることによって、歯ブラシ柄が外装体の歯ブラシ柄下端受け部に与える衝撃を、歯ブラシ柄下端を支える2箇所に分散することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようなブリスター包装容器では、落下衝撃が切り欠き部の両側の台紙に集中して台紙が変形するため、外観性が低下するという問題が生じる。また、上述したブリスター包装容器において、歯ブラシハンドルを支持する凹みを設けることは、歯ブラシハンドルに吊り下げ用穴が設けられた歯ブラシにしか適用できないという制約がある。
【0007】
さらに、ブリスタードームの歯ブラシハンドル下端受け部を台形形状とした場合でも、落下衝撃が全てブリスタードームに加わるため、ブリスタードームの亀裂防止対策としては十分とは言えない。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、落下衝撃を受けた場合でも外観性を低下させることなく、ドーム部における亀裂の発生を抑制できるブリスター包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、ドーム状に膨出し、複数の毛束が設けられたヘッド部、ネック部及びハンドル部が先端側から後端側に順次設けられた歯ブラシを収容するドーム部を備えた透明樹脂製の容器本体と、前記ドーム部の開口側を閉鎖する板体とを備え、前記ドーム部は、前記板体との間に前記歯ブラシを収容した前記容器本体が、前記ヘッド部が上側となる向きで吊り下げられたときに、前記ハンドル部の前記後端側端部に当接する当接部を有し、前記当接部は、前記後端側に向かうのに従って前記板体に接近する向きに傾く当接面を有し、前記当接面は、前記ハンドル部の長さ方向と直交する面に対する交差角度が30°以上、90°未満であることを特徴とするブリスター包装容器が提供される。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係るブリスター包装容器において、前記交差角度は、30°以上、70°以下であることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係るブリスター包装容器において、前記ヘッド部は、前記板体に沿い前記長さ方向と直交する幅方向で前記ネック部よりも突出する突部を有し、前記ドーム部は、前記板体との間に前記歯ブラシを収容した前記容器本体が、前記ヘッド部が上側となる向きで吊り下げられたときに、前記突部に前記後端側から当接する第2当接部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、落下衝撃を受けた場合でも外観性を低下させることなく、ドーム部の亀裂の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、ブリスター包装容器1の分解斜視図である。
【
図2】歯ブラシ50が収容されたブリスター包装容器1を、ヘッド部53が上側となる向きで吊り下げたときの側面断面図である。
【
図3】
図2におけるヘッド部53近傍を+Z側から視た部分正面図である。
【
図4】
図2における端部収容部46を拡大した部分拡大図である。
【
図5】
図2における端部収容部46近傍を+Z側から視た部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のブリスター包装容器の実施の形態を、
図1ないし
図5を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0015】
図1は、ブリスター包装容器1の分解斜視図である。
図2は、歯ブラシ50が収容されたブリスター包装容器1を、ヘッド部53が上側となる向きで吊り下げたときの側面断面図である。
ブリスター包装容器1は、容器本体10及び板体20を有している。容器本体10及び板体20は、平面視略矩形の板状に形成されている。容器本体10は、歯ブラシ50を収容するドーム部11を有している。
【0016】
歯ブラシ50は、先端側に設けられたヘッド部53、ヘッド部53の後端側に設けられたネック部54、ネック部54の後端側に設けられたハンドル部55を有している。すなわち、歯ブラシ50は、先端側から後端側に順次設けられたヘッド部53、ネック部54及びハンドル部55を有する。
【0017】
なお、以下で説明する歯ブラシ50の構成は一例である。本実施形態に係るブリスター包装容器1が収容する歯ブラシ50を限定するものではない。
【0018】
ヘッド部53は、植毛面51に毛束52が植設されている。ヘッド部53の形状、長さ、幅、厚さ等については特に限定されない。本実施形態におけるヘッド部53は、厚さが、一例として2.0mm~4.0mmの範囲に設定された薄型ヘッドである。
【0019】
以下の説明においては、容器本体10、板体20及び歯ブラシ50の長手方向をY方向とし、植毛面51と平行でY方向と直交するヘッド部53の幅方向をX方向とし、Y方向及びX方向と直交するとともに植毛面51と直交する方向をZ方向として適宜説明する。
【0020】
図3は、
図2におけるヘッド部53近傍を+Z側から視た部分正面図である。
ヘッド部53は、
図2に示すように、ハンドル部55の長さ方向であるY方向が長手とされ、正面視において頂部が曲線で隅切りされた平板状とされている。ヘッド部53は、正面視において、ヘッド部53の先端からネック部54に向かうに従い幅方向外側に広がり、次いで同等の幅で延在し、次いで幅方向内側に狭まり、ネック部54との境界に至る形状を有している。
【0021】
すなわち、ヘッド部53は、ネック部54との境界近傍に、幅方向でネック部54よりも突出する突部53aを幅方向の両側にそれぞれ有している。
【0022】
ネック部54は、ヘッド部53とハンドル部55とを一体的に接続する。
本実施形態において、ネック部54は、正面視でハンドル部55に向かって拡幅して延びている。
【0023】
ハンドル部55は、ネック部54との境界から正面視で一定幅で後端側に延びた後、後端側に向かって縮幅している。ハンドル部55におけるネック部54との境界から一定幅で後端側に延びる領域は、正面視で最も広い幅の主把持部である。主把持部よりも後端側で縮幅したハンドル部55は、後端側に向かって正面視で先端側の幅よりも狭い一定幅で延びている。ハンドル部55の断面形状は、略矩形である。
【0024】
図2に示すように、歯ブラシ50は、X方向視である側面視におけるZ方向の長さを示す厚さがヘッド部53において最も薄い。歯ブラシ50の厚さは、ヘッド部53からネック部54とハンドル部55との境界に亘って、後端側に向かうに従って徐々に厚くなる。歯ブラシ50の厚さは、上記主把持部で最大厚さとなり、後端側に向かって漸次厚さが薄くなった後に後端側端部まで一定の厚さで延びている。
【0025】
容器本体10は、平面視略矩形状の基板部12と、基板部12外周端縁から-Z側に全周に亘って延びる側壁部13と、側壁部の-Z側端部から外側に張り出すフランジ部14とを有している。フランジ部14は、XY平面と平行である。
【0026】
容器本体10として、例えばポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられ、とくに透明性に優れるポリエステル系樹脂のポリエチレンテレフタレート樹脂が好適に用いることができる。
【0027】
基板部12は、+Z側にドーム状に膨出するドーム部11を有している。
ドーム部11は、板体20と対向する-Z側が開口している。ドーム部11は、開口する-Z側から歯ブラシ50を収容する。ドーム部11は、植毛面51及び毛束52が+Z側に向く姿勢で歯ブラシ50を収容する。
【0028】
ドーム部11は、ヘッド部53を収容するヘッド収容部43と、ネック部54を収容するネック収容部44と、ハンドル部55の後端側端部55aを除いた領域を収容するハンドル収容部45と、ハンドル部55の後端側端部55aを収容する端部収容部46とを有している。
【0029】
ヘッド収容部43は、
図2に示すように、ドーム部11と板体20との間に歯ブラシ50が収容されたときに、側面視において毛束52の先端よりも+Z側に離間する高さで設けられている。ヘッド収容部43は、
図3に示すように、正面視におけるヘッド部53の外形輪郭よりも大きな外形輪郭で形成されている。ヘッド収容部43は、正面視において、ヘッド部53の突部53aに-Y側から当接する当接部(第2当接部)43aを有している。当接部43aは、板体20との間に歯ブラシ50を収容した容器本体10が、ヘッド部53が上側となる向き(ずなわち、Y軸方向が鉛直方向で+Y側が上側となる向き)で吊り下げられたときにヘッド部53の突部53aに当接する。
【0030】
ドーム部11と板体20との間に歯ブラシ50が収容されたときに、側面視におけるネック部54とネック収容部44とのZ方向の距離は、
図2に示すように、毛束52の先端とヘッド収容部43とのZ方向の距離よりも小さく設定されている。また、
図3に示すように、ドーム部11と板体20との間に歯ブラシ50が収容されたときに、正面視におけるネック部54とネック収容部44とのX方向の距離は、正面視におけるヘッド部53とヘッド収容部43とのX方向の距離よりも小さく設定されている。
【0031】
従って、本実施形態のブリスター包装容器1では、ネック部54とネック収容部44との隙間がヘッド部53とヘッド収容部43との隙間よりも小さくなる。そのため、本実施形態のブリスター包装容器1では、ネック収容部44に対するネック部54のZ方向への移動及びX方向への移動が規制されることにより、ヘッド部53がZ方向またはX方向に移動して毛束52がヘッド収容部43に当接して変形する等の不具合を抑制することができる。
【0032】
ハンドル収容部45は、ネック部54の後端側の一部と、後端側端部55aを除いた領域のハンドル部55とを収容する。ハンドル収容部45のX方向の幅は、基板部12のX方向の幅とほぼ同一である。
【0033】
図4は、
図2における端部収容部46を拡大した部分拡大図である。
図5は、
図2における端部収容部46近傍を+Z側から視た部分正面図である。
図4及び
図5においては、+Y側が鉛直方向の上側となる状態が示されている。
図1、
図4及び
図5に示すように、端部収容部46は、後端側端部55aの+Z側に配置された保持部47及び当接部48と、後端側端部55aのX方向両側に配置された保持部49とを有している。
【0034】
保持部49は、YZ平面と略平行に配置されている。各保持部49と後端側端部55aとのX方向の距離は、ハンドル収容部45とハンドル部55とのX方向の距離よりも小さい。各保持部49と後端側端部55aとのX方向の距離は、ネック部54とネック収容部44とのX方向の距離と同等である。従って、歯ブラシ50は、先端側においてネック部54がネック収容部44に小さな隙間でX方向に保持され、後端側において後端側端部55aが保持部49に小さな隙間でX方向に保持される。そのため、歯ブラシ50は、X方向に位置決めされY方向に延びた状態でドーム部11に保持されて収容されている。
【0035】
図4に示すように、保持部47は、XY平面と略平行である。保持部47と後端側端部55aとのZ方向の距離は、ハンドル収容部45とハンドル部55とのZ方向の距離よりも小さい。保持部47と後端側端部55aとのZ方向の距離は、ネック部54とネック収容部44とのZ方向の距離と同等である。従って、歯ブラシ50は、先端側においてネック部54がネック収容部44に小さな隙間でZ方向に保持され、後端側において後端側端部55aが保持部47に小さな隙間でZ方向に保持される。そのため、歯ブラシ50は、Z方向に位置決めされY方向に延びた状態でドーム部11に保持されて収容されている。
【0036】
当接部48は、板体20との間に歯ブラシ50を収容した容器本体10が、ヘッド部53が上側となる向き(ずなわち、Y軸方向が鉛直方向で+Y側が上側となる向き)で吊り下げられたときに、後端側端部55aと当接する当接面48aを有している。すなわち、本実施形態のブリスター包装容器1は、ヘッド部53が上側となる向きで吊り下げられたときに、ヘッド収容部43の当接部43aがヘッド部53の突部53aに後端側(すなわち下側)から当接するとともに、当接部48の当接面48aが後端側端部55aに後端側(すなわち下側)から当接する。
【0037】
当接面48aは、保持部47の-Y側端部から後端側(-Y側)に向かうのに従って板体20に接近する向きに傾いている。当接面48aは、ハンドル部55の長さ方向と直交するXZ平面と平行な面に対して交差角度θでX軸周りに傾いている。
【0038】
板体20は、容器本体10と同一の外形輪郭を有している。板体20は、容器本体10のフランジ部14と溶着、接着等によって固定されている。板体20を構成する材料は特には限定されないが、例えば各種の樹脂製シートや紙材をシート基材とするシートを用いることができる。シート基材が紙材である場合、例えば、紙のみからなる厚紙や、紙製シートに各種樹脂をコーティング又は樹脂製シートや蒸着シートを張り合わせた合成紙等が一例として挙げられる。
【0039】
ブリスター包装容器1は、
図1に示すように、容器本体10及び板体20が切り欠かれZ方向に貫通する切欠部60を有している。切欠部60は、ヘッド収容部43よりも+Y側に設けられている。切欠部60は、第1切欠部61と第2切欠部62とを有している。
【0040】
第1切欠部61は、一端が容器本体10及び板体20の-X側の端縁に開口している。第1切欠部61は、+X側に向かうのに従って、漸次+Y側に向かう方向に延びている。第2切欠部62は、第1切欠部61の他端から+Y側に延びている。第2切欠部62の+Y側の端部は、中心が-Y側に位置する円弧部である。当該円弧部の中心位置は、歯ブラシ50を収容したブリスター包装容器1の重心位置を通るY方向に延びる直線上に配置されている。
【0041】
上記構成のブリスター包装容器1は、例えば、店頭においてZ方向に延びる金具等の軸部材を、第2切欠部62に-Z側から挿通させて円弧部に係合させることで、板体20との間に歯ブラシ50を収容した容器本体10が、ヘッド部53が上側となる向きで吊り下げられた状態で陳列される。
【0042】
また、ブリスター包装容器1を+X側から-X側に相対移動させて、Z方向に延びる金具等の軸部材に対して軸と直交する方向に軸部材を第1切欠部61から第2切欠部62に導入し、円弧部に係合させることが可能である。円弧部の中心位置が歯ブラシ50を収容したブリスター包装容器1の重心位置を通るY方向に延びる直線上に配置されているため、歯ブラシ50が鉛直方向に沿った姿勢で吊り下げられた状態でブリスター包装容器1を陳列することができる。
【0043】
ブリスター包装容器1が吊り下げられた状態においては、ヘッド収容部43の当接部43aがヘッド部53の突部53aに後端側(すなわち下側)から当接し、当接部48の当接面48aが後端側端部55aに後端側(すなわち下側)から当接している。
【0044】
例えば、吊り下げられて陳列されたブリスター包装容器1は、ヘッド部53が上側となる向きで吊り下げられた状態から落下した場合、落下衝撃は、ヘッド部53の突部53aからヘッド収容部43の当接部43aに伝達されるとともに、ハンドル部55の後端側端部55aから当接部48の当接面48aに伝達される。
【0045】
当接面48aは、後端側に向けて板体20に接近する向きに傾斜しているため、落下時に後端側端部55aは、当接面48aに沿って滑る。後端側端部55aが滑ることにより、ブリスター包装容器1の落下時(以下、単に落下時と称する)に後端側端部55aと接触する当接面48aの面積が増加する。そのため、当接面48aに加わる単位面積あたりの落下衝撃を小さくすることができる。
【0046】
また、落下時に当接する後端側端部55aから伝達される力により生じる当接面48aの垂直抗力のうち、-Z側に向く水平方向成分の力が、交差角度θに応じた大きさで後端側端部55aに加わる。
【0047】
例えば、落下時に当接面48aに力Fが加わる場合の垂直抗力Aは、下式(1)で表される。
A=F×cosθ …(1)
また、垂直抗力Aの水平方向成分Hは、下式(2)で表される。
H=A×sinθ …(2)
【0048】
従って、落下時に後端側端部55aに加わる-Z側に向く水平方向成分の力H55は、下式(3)で表される。
H55=F×cosθ×sinθ …(3)
【0049】
落下時に式(3)で表される力H55が加わることにより、後端側端部55aは-Z側に移動して板体20に当接する。落下時に後端側端部55aが板体20に当接することにより、板体20は落下衝撃の一部を負担することになる。すなわち、板体20が落下衝撃の一部を負担することにより、当接面48aに加わる落下衝撃を低減することができる。
【0050】
上述のように、落下時に当接面48aに加わる単位面積あたりの落下衝撃を小さくする点、及び-Z側に向く水平方向成分の力H55を大きくする点から、交差角度θとしては、30°以上、90°未満であることが好ましく、30°以上、70°以下であることがより好ましい。
【0051】
交差角度θが30°未満の場合には、落下時に後端側端部55aが当接面48aに沿って滑る距離が短くなるとともに、水平方向成分の力H55が小さくなり、当接面48aに加わる落下衝撃の低減量が十分ではなくなる可能性がある。交差角度θが90°以上の場合には、当接面48aが後端側端部55aに当接することができなくなる。
【0052】
また、交差角度θが70°を超えた場合には、歯ブラシ50の全長に対して当接面48aがY方向に長くなってしまい、歯ブラシ50の全長に対してドーム部11の長さが不必要に長くなってしまう。一方、ブリスター包装容器1のY方向の長さを規定値に収めるためには、容器本体10におけるドーム部11の位置を+Y側にずらすことが考えられるが、この場合、ヘッド収容部43と切欠部60とが干渉してしまい、ブリスター包装容器1を店頭で陳列する際に必要な切欠部60を設けるスペースを確保できなくなる。
【0053】
以上のように、本実施形態のブリスター包装容器1では、ドーム部11においてハンドル部55の後端側端部55aが当接し後端側に向かうのに従って板体20に接近する向きに傾く当接面48aが設けられているため、板体20の変形等で外観性を低下させることなく、落下時にドーム部11において亀裂が発生することを抑制できる。
【0054】
特に、本実施形態のブリスター包装容器1では、当接面48aとXZ平面と平行な面との交差角度θが30°以上、70°以下であるため、落下時に後端側端部55aが当接面48aに沿って滑る距離が短くなるとともに、水平方向成分の力H55が小さくなり、当接面48aに加わる落下衝撃の低減量が十分ではなくなる等の交差角度θが30°未満の場合に生じる不具合や、歯ブラシ50の全長に対してドーム部11の長さが不必要に長くなり外観性が低下するとともに、ブリスター包装容器1を店頭で陳列する際に必要な切欠部60を設けるスペースを確保できなくなる等の交差角度θが70°を超えた場合の不具合を抑制できる。
【0055】
また、本実施形態のブリスター包装容器1では、正面視において、ヘッド部53の突部53aに-Y側から当接する当接部43aが設けられているため、落下衝撃の一部を当接部43aが吸収するため、落下時にドーム部11において亀裂が発生することを一層抑制することが可能になる。
【0056】
[実施例]
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0057】
(実施例1~6、比較例1)
[表1]に示す仕様に従って、当接面48aとXZ平面と平行な面との交差角度θ、ヘッド収容部43の当接部43aの有無が異なるブリスター包装容器を実施例1~6、比較例1のサンプルとした。各サンプルに対しては、強度解析ソフト(LS-DYNA,LSTC社(米国)製)を用いて解析した。解析は、歯ブラシが収容されたブリスター包装容器を50cmの高さから落下させた際の衝撃によってドーム部11の当接部48に発生する最大応力のシミュレーションを行い、最大応力の大きさから当接部48の亀裂の発生し難さを評価した。また、実施例1、実施例3及び比較例1については、ブリスター包装容器を1mの高さから落下させた際にドーム部11の亀裂発生数を測定する落下試験も行った。
【0058】
(評価方法)
各サンプルに対するシミュレーション結果は、最大応力の値が19.0(kgf/mm2)以下のサンプルについてはOKとなる「○」の評価とし、最大応力の値が19.0(kgf/mm2)を超えたサンプルについてはNGとなる「×」の評価とした。
【0059】
【0060】
[表1]に示されるように、上記交差角度θが30°未満である比較例1のブリスター包装容器については、50cmの高さから落下させた際の衝撃によって発生する最大応力の値が基準値を超えたが、上記交差角度θが30°以上、70°以下である実施例1~6のブリスター包装容器については、最大応力の値が基準値以下であることを確認できた。また、[表1]に示されるように、交差角度θが同一である場合、ヘッド部53の突部53aに-Y側から当接する当接部43aを有する実施例1のブリスター包装容器は、当接部43aを有していない実施例3のブリスター包装容器がよりも最大応力の値が小さいことを確認できた。
【0061】
さらに、[表1]に示されるように、比較例1のブリスター包装容器については、1mの高さから落下させた際に全てのブリスター包装容器(12/12)でドーム部11に亀裂が発生したが、実施例1、3のブリスター包装容器については、全てのブリスター包装容器でドーム部11に亀裂が発生しないことを確認できた。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態で説明した歯ブラシ50の構成は一例であり、ブリスター包装容器に収容される歯ブラシとしては、ヘッド部、ネック部及びハンドル部を有していれば特に限定されない。
【0064】
また、上記実施形態では、当接面48aがXZ平面がX軸周りに傾いた面と平行な傾斜面である構成を例示したが、この構成に限定されない。当接面48aとしては、例えば、側面視において、-Z側に中心が配置された円弧状の曲面であってもよい。この場合、交差角度θとしては、当接面48aが後端側端部55aと当接する箇所の接線とXZ平面と平行な面とが交差する角度とすればよい。
【符号の説明】
【0065】
1…ブリスター包装容器、 10…容器本体、 11…ドーム部、 20…板体、 43a…当接部(第2当接部)、 48…当接部、 48a…当接面、 50…歯ブラシ、 52…毛束、 53…ヘッド部、 53a…突部、 54…ネック部、 55…ハンドル部、 55a…後端側端部