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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220819BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220819BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220819BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220819BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220819BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K47/26
A61K47/18
A61K9/08
A61K9/19
A61P21/04
A61P17/00
A61P25/00 101
A61P25/02
A61P37/02
A61P7/00
C07K16/28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018559221
(86)(22)【出願日】2017-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2017061261
(87)【国際公開番号】W WO2017194646
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-10
(31)【優先権主張番号】1608323.0
(32)【優先日】2016-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェーツ、アンドリュー ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】マッサン、ヤン イーヴォ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-514090(JP,A)
【文献】国際公開第2014/019727(WO,A1)
【文献】特表2012-530721(JP,A)
【文献】特表2014-516953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 47/26
A61K 47/18
A61K 9/08
A61K 9/19
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.80から200mg/mLの抗体又はその抗原結合フラグメントであって、特異的にヒトFcRnに結合し、配列番号7に定義された軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された重鎖可変領域を含む、抗体又はその抗原結合フラグメント、
b.7%から13%w/vのスクロース、
c.10mMから50mMのヒスチジン、および180から250mMのプロリンの混合物ならびに
d.0.01から1.0%w/vの界面活性剤
を含み、
4.0から7.5のpHを有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、80から150mg/mLの濃度である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
7%から10%w/vのスクロースを含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
0.01から0.5%w/vの界面活性剤を含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤はポリソルベート80である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
80mg/mLから140mg/mLの抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMのヒスチジン、180mMのプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80を、pH5.6で含む、請求項1からまでのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
マンニトール及び/又はアルギニン及び/又はグリシンをさらに含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
抗体又はその抗原結合フラグメント、スクロース、ヒスチジン及びプロリンの混合物を含む、フリーズドライ製剤であって、
20%から40%w/wのスクロースを含み、
前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、特異的にヒトFcRnに結合し、配列番号7に定義された軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された重鎖可変領域を含み、
フリーズドライ前、前記抗体又はその抗原結合フラグメントは、80から200mg/mLの濃度で含まれ、前記ヒスチジンは10mMから50mM含まれ、前記プロリンは180から250mM含まれる、フリーズドライ製剤。
【請求項9】
請求項に記載のフリーズドライ製剤及び溶媒を含む液体医薬製剤。
【請求項10】
前記溶媒は水である、請求項に記載の液体医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤の分野に属する。より具体的には、抗体、スクロース、アミノ酸又はアミノ酸混合物及び界面活性剤を含む、液体又はフリーズドライの医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
治療用抗体の工業的製造は複雑な作業である。ミリグラム量から数キログラム量の抗体を産生するために、実験室で開発されたプロセスのスケールアップが必要である。抗体はかなり安定した分子であるにもかかわらず、ある期間にわたって高濃度で保存した場合、化学的及び物理的不安定性に悩まされる場合がある。代表的な化学的不安定性は、脱アミド化、加水分解、酸化、β-脱離、ジスルフィド交換又は還元をもたらす場合がある。物理的不安定性は、変性、凝集又は沈殿をもたらす可能性がある。
【0003】
液体製剤は最小限の調製で投与することができるが、時間の経過にわたって安定性が低くなるという欠点がある。液体の水ベースの製剤は、特に複雑であり、水は反応物として作用するか、又は化学的分解及びタンパク質の不安定性の原因となる反応物の移動を促進する。凝集、沈殿又は分解を回避又は最小限にするための液体製剤中のタンパク質の安定化は、依然として特有の課題である。不溶解物又は沈殿の形成による凝集は、特に問題である。これは、投与時に免疫反応を引き起こす可能性のある凝集物の形成、及び/又は例えば送達装置の閉塞を引き起こすことによる医薬製剤の適切な投与を行うことの困難さのような、さまざまな問題を引き起こす場合がある。
【0004】
抗体は、投与直前に溶媒中で再構成するために、フリーズドライ、すなわち凍結乾燥の形態で製剤化される場合がある。抗体のフリーズドライ製剤は、液体の水ベースの製剤よりも安定性が高い傾向がある。フリーズドライは、最終製剤中で抗体が高濃度に達することを容易にし、したがって注入体積及び注入時間を減少させる。
【0005】
さらに、フリーズドライ(凍結乾燥)は、液状で不安定なモノクローナル抗体の長期間の保存安定化のために選択される方法である。より低い温度で抗体をフリーズドライさせることにより、生成物の損傷が軽減され、分子の完全性の保持が助けられる。それは貯蔵寿命を延ばし、輸送のための温度要求を減らし、抗体の化学的及び生物学的特性を保存する。
【0006】
抗体は、他のタンパク質と同様に、安定剤の非存在下でフリーズドライすると変性する。フリーズドライ及び保存中の分解から抗体を保護するために、通常、糖又はポリオールのような異なる安定剤が製剤に添加される。糖又はポリオールによって与えられる安定化のレベルは、一般に、それらの濃度に依存する。あるレベルまで糖/ポリオール濃度を増加させると最終的にフリーズドライの間にタンパク質の安定化又はさらに不安定化の限界に達することがあるので、フリーズドライ抗体の保存安定性のためにタンパク質に対して特定の濃度の安定剤が必要となる(Chang Lら、J Pharm Sci.2005;94:1445~55)。フリーズドライ中の保護に使用される安定剤のレベルは、製剤組成、安定剤の濃度及び物性、並びに抗体とその適合性によって決まる。乾燥中の安定化の機構は、安定剤が水代替物として作用することである。水とタンパク質との相互作用は、タンパク質のコンホメーション安定性にとって重要である。乾燥中に水が除去されると、安定剤は、水分子のようにタンパク質と水素結合を形成し、それによって凍結乾燥プロセスで天然のタンパク質構造を保存することができる(Chang Lら、J Pharm Sci.2005;94:1445~55)。
【0007】
凍結乾燥は、抗体の所望の長期保存を達成するための良い選択であるにもかかわらず、抗体を製剤化する際の単純で普遍的なプロトコルはない。抗体は、凍結乾燥プロセス及び/又は長期保存中に不安定になることがあり、再構成時に凝集物が形成されるか、又は凍結乾燥された固形物が再構成するのに時間がかかりすぎる場合がある。高濃度の安定剤は、最終製剤の物理化学的特性(すなわち、粘性)に影響を及ぼす場合がある。
【0008】
上記を考えると、フリーズドライに適した抗体のさらに改善された医薬組成物を提供することが、当技術分野において依然として必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、フリーズドライ(すなわち凍結乾燥)に適した抗体又はそのフラグメントを含む医薬組成物を提供することによって、上記の必要性に対処する。得られた医薬組成物は、使用時に溶媒に再構成可能なフリーズドライ(すなわち凍結乾燥)組成物として、又はすぐに投与できる再構成された液体製剤として提供することができる。低減された体積での再構成は、低レベルの凝集及び送達時間で、高濃度の抗体又はそのフラグメントを含む製剤を達成することを可能にする。
【0010】
以下の特定の実施形態は、以下に番号を付けて記載する。
1.a.抗体又はその抗原結合フラグメント、
b.1%から20%w/vのスクロース、
c.アミノ酸又はアミノ酸混合物、及び
d.界面活性剤、
を含む医薬組成物。
2.4.0から7.5のpHを有する、実施形態1に記載の医薬組成物。
3.抗体又はその抗原結合フラグメントは、1から200mg/mL、好ましくは50から150mg/mL、より好ましくは80から140mg/mLの濃度である、実施形態1又は実施形態2に記載の医薬組成物。
4.組成物は5%から13%w/vのスクロース、好ましくは7%から10%w/vのスクロース、より好ましくは7%w/vのスクロースを含む、実施形態1から3までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
5.a.アミノ酸は、ヒスチジン又はプロリンである、又は
b.アミノ酸混合物は、ヒスチジン及びプロリンを含む、
実施形態1から4までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
6.組成物は、0.01から1.0% w/v、好ましくは0.01%から0.5% w/vの界面活性剤を含む、実施形態1から5までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
7.界面活性剤はポリソルベート80である、実施形態6に記載の医薬組成物。
8.抗体又はその抗原結合フラグメントは特異的にヒトFcRnに結合する、実施形態1から7までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
9.抗体はヒト又はヒト化抗体である、実施形態1から8までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
10.抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号7に定義された軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された重鎖可変領域を含む、実施形態1から9までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
11.組成物は、1mg/mLから200mg/mLの抗体又はその抗原結合フラグメント、10mMから50mMヒスチジン、10から300mMプロリン、1%から20%w/vのスクロース、0.01%から1.0%w/vのポリソルベート80、pH5.6を含む、好ましくは、組成物は50mg/mLから150mg/mLの抗体又はその抗原結合フラグメント、20mMから40mMヒスチジン、50から280mMプロリン、5%から13%w/vのスクロース、0.01%から0.5%w/vのポリソルベート80、pH5.6を含む、より好ましくは、組成物は、80mg/mLから140mg/mLの抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6を含む、及びさらにいっそう好ましくは、組成物は、100mg/mLの抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6を含む、実施形態1から10までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
12.組成物は、マンニトール及び/又はアルギニン及び/又はグリシンをさらに含む、実施形態1から11までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
13.抗体又はその抗原結合フラグメント、スクロース、アミノ酸又はアミノ酸混合物、及び任意選択的に界面活性剤を含むフリーズドライ医薬組成物。
14.製剤は、10%から40% w/wスクロース、好ましくは20%から40% w/wスクロースを含む、実施形態13に記載のフリーズドライ製剤。
15.配列番号7に定義された軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された重鎖可変領域を含む抗体並びに10%から40%w/wスクロースを含むフリーズドライ製剤。
16.実施形態13から15までのいずれか一項に記載の医薬組成物及び溶媒を含む液体医薬製剤。
17.溶媒は水である、実施形態16に記載の液体医薬製剤。
18.実施形態13から15までのいずれか一項に記載のフリーズドライ製剤、又は実施形態16若しくは17のいずれか一項に記載の液体医薬製剤を含む容器。
19.治療用の、実施形態1から12までのいずれか一項に記載の医薬組成物、実施形態13から15までのいずれか一項に記載のフリーズドライ製剤、又は実施形態16又は17のいずれか一項に記載の液体医薬製剤。
20.重症筋無力症、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、ループス、及び血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びそれらの組合せから選択される炎症性又は自己免疫疾患の治療に使用するための、実施形態1から12までのいずれか一項に記載の医薬組成物、実施形態13から15までのいずれか一項に記載のフリーズドライ製剤、又は実施形態16又は17のいずれか一項に記載の液体医薬製剤。
21.哺乳動物被験体における炎症性又は自己免疫疾患の治療方法であって、実施形態1から12までのいずれか一項に記載の医薬組成物、実施形態13から15までのいずれか一項に記載のフリーズドライ製剤又は実施形態16又は17のいずれか一項に記載の液体医薬製剤を投与するステップを含み、炎症性又は自己免疫疾患は、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、ループス、及び血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びそれらの組合せから選択される治療方法。
22.抗FcRn抗体を含む医薬組成物を産生する方法であって、
(i)抗FcRn抗体を含む組成物を調製するステップ、及び
(ii)1%から20%w/vのスクロースを添加するステップ
を含む方法。
23.ステップ(ii)から得られた医薬組成物は、実施形態1から12までのいずれか一項に記載の医薬組成物である、実施形態22に記載の方法。
24.方法は、ステップ(ii)から得られた医薬組成物のフリーズドライのステップをさらに含む、実施形態22又は実施形態23に記載の方法。
25.実施形態24に記載の方法によって得られた医薬組成物。
26.溶媒を添加することによって実施形態13、14、15、24又は25までのいずれか一項に記載の医薬組成物を再構成する方法であって、溶媒は好ましくは水である方法。
27.実施形態26に記載の方法によって得られた液体医薬製剤。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】凍結乾燥時の再構成時間を示す図である。表2の各製剤(x軸)について、再構成時間(recon time)をy軸に分単位で示す。
図2】SECによる凝集物形成を示す図である。表2の各製剤(x軸)について、面積%としての総凝集物をy軸に示す。
図3】DLSによるHMW凝集物形成を示す図である。表2の各製剤(x軸)について、強度(%として)をy軸にプロットした。
図4】チャージバリアントを示す図である。表2の各製剤(x軸)について、酸性(A)及び塩基性(B)バリアントの形成を面積%の関数(y軸)としてプロットした。
図5】粘性を示す図である。表2の各製剤(x軸)について、粘性(cP)をy軸に示す。
図6】浸透圧を示す図である。表2の各製剤(x軸)について、浸透圧(mOsm/kg)をy軸に示す。
図7】凍結乾燥時の再構成時間を示す図である。表5の各製剤(x軸)について、再構成時間(recon time)をy軸に分単位で示す。
図8】SECによる凝集物形成を示す図である。表5の各製剤(x軸)について、面積%としての総凝集物をy軸に示す。
図9】DLSによるHMW凝集物形成を示す図である。表5の各製剤(x軸)について、質量(%として)をy軸にプロットした。
図10】チャージバリアントを示す図である。100mg/mLの抗FcRn抗体を含む表5の各製剤(x軸)について、酸性(A)及び塩基性(B)バリアントの形成を面積%の関数(y軸)としてプロットした。
図11】チャージバリアントを示す図である。140mg/mLの抗FcRn抗体を含む表5の各製剤(x軸)について、酸性(A)及び塩基性(B)バリアントの形成を面積%の関数(y軸)としてプロットした。
図12】粘性を示す図である。表5の各製剤(x軸)について、粘性(cP)をy軸に示す。
図13】浸透圧を示す図である。表5の各製剤(x軸)について、浸透圧(mOsm/kg)をy軸に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による医薬組成物は、抗体又はその抗原結合フラグメント、1%から20%w/vのスクロース、アミノ酸又はアミノ酸混合物、及び界面活性剤を含む。
【0013】
医薬組成物中の抗体又はその抗原結合フラグメントの濃度は、1から200mg/mL、好ましくは50から200mg/mL、より好ましくは80から140mg/mLであってよい。
【0014】
好ましくは、本発明による医薬組成物に含まれる抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒトFcRnに特異的に結合する。
【0015】
「ヒトFcRnに特異的に結合する」、「ヒトFcRnへの特異的な結合」という用語及び本明細書で使用される等価物は、抗体が生物学的に意味のある効果を達成するのに十分な親和性及び特異性でヒトFcRnに結合することを意味する。選択される抗体は、通常、ヒトFcRnに対する結合親和性を有し、例えば、抗体は、100nMから1pMの間のKd値でヒトFcRnに結合する場合がある。抗体の親和性は、例えば、BIAcoreアッセイのような表面プラズモン共鳴塩基アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び競合アッセイ(例えば、RIA)によって決定される場合がある。本発明の意味の範囲内で、ヒトFcRnに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、他の分子、例えばcyno FcRnに結合する、又は例えば、二重特異性抗体の場合の非限定的な例として結合する場合もある。
【0016】
FcRnは膜タンパク質FcRn α鎖とβ2ミクログロブリン(β2M)の非共有結合複合体である。成体哺乳動物において、FcRnは、IgGアイソタイプの抗体に結合して救済する受容体として作用することによって、血清抗体レベルを維持する上で重要な役割を果たす。IgG分子は、内皮細胞によって取り込まれ、それらがFcRnに結合する場合、例えば血液循環にトランスサイトーシスされ、リサイクルされる。一方、FcRnに結合しないIgG分子は細胞に入り、それらが分解されるリソソーム経路に標的化される。His435がアラニンに突然変異した変異型IgG1は、FcRn結合の選択的損失をもたらし、血清半減期を有意に低下させる(Firanら、2001、International Immunology 13:993)。
【0017】
ヒトFcRnに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、好ましくはヒトFcRnも中和する。
【0018】
「中和する」という用語は、本明細書で使用される場合、それが特異的に結合する分子の生物学的効果を阻害するか、又は実質的に低下させる抗体を指す。したがって、「抗体がヒトFcRnを中和する」という表現は、ヒトFcRnに特異的に結合し、例えばIgGへのFcRn結合をブロックすることによって、その生物学的効果を阻害又は実質的に低下させる抗体を指す。
【0019】
「抗体(単数)」又は「抗体(複数)」という用語は、本明細書で使用される場合、モノクローナル又はポリクローナル抗体を指し、当技術分野で既知の組換え技術によって生成される組換え抗体に限定されない。
【0020】
好ましくは、本発明による医薬組成物に含まれる抗体は、ヒトFcRnに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0021】
「抗体(単数)」又は「抗体(複数)」は、任意の種の抗体、特に、2つの基本的に完全な重鎖及び2つの基本的に完全な軽鎖を有する哺乳動物種の抗体、IgA、IgA、IgD、IgG、IgG2a、IgG2b、IgG、IgG、IgE及びIgM並びにその修飾された変異型を含むヒト抗体の任意のアイソタイプ、例えばチンパンジー、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザル由来の非ヒト霊長類抗体、例えばマウス、ラット又はウサギ由来の齧歯類抗体、ヤギ又はウマ抗体、及びそれらの誘導体、又はニワトリ抗体のような鳥類種の抗体又はサメ抗体のような魚類種の抗体を含む。「抗体(単数)」又は「抗体(複数)」という用語は、また、少なくとも1つの重鎖及び/又は軽鎖抗体配列の第1の部分が第1の種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖抗体配列の第2の部分が第2の種に由来する「キメラ」抗体を指す。本明細書で目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルのような旧世界サル)及びヒト定常領域配列に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む「霊長類化(primatized)」抗体が含まれる。「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体由来の配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び活性を有する、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ又は非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域又は相補性決定領域(CDR)由来の残基によって置換されたヒト抗体(レシピエント抗体)である。ほとんどの場合、CDRの外側のヒト(レシピエント)抗体の残基、すなわちフレームワーク領域(FR)において、対応する非ヒト残基によってさらに置換される。さらに、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体に見られない残基を含む場合がある。これらの修飾は、抗体の能力をさらに洗練するために行われる。ヒト化は、ヒトにおける非ヒト抗体の免疫原性を低下させ、したがって、ヒト疾患の治療に対する抗体の適用を容易にする。ヒト化抗体及びそれらを生成するためのいくつかの異なる技術は、当技術分野において周知である。「抗体(単数)」又は「抗体(複数)」という用語は、また、ヒト化の代替物として生成することができるヒト抗体を指す。例えば、内因性マウス抗体の産生がない場合、免疫付与の際にヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合体欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニック動物を前記抗原で免疫付与すると、特定の抗原に対する特異性を有するヒト抗体の産生をもたらす。そのようなトランスジェニック動物を産生する技術、並びにそのようなトランスジェニック動物からヒト抗体を単離及び産生する技術は、当技術分野において既知である。或いは、トランスジェニック動物、例えばマウスにおいて、マウス抗体の可変領域をコードする免疫グロブリン遺伝子のみが、対応するヒト可変免疫グロブリン遺伝子配列で置換される。抗体定常領域をコードするマウス生殖系列免疫グロブリン遺伝子は、不変のままである。このように、抗体エフェクターは、トランスジェニックマウスの免疫システムにおいて機能し、その結果、B細胞の発達は基本的に不変であり、インビボでの抗原チャレンジ時に改善された抗体応答をもたらす場合がある。目的の特定の抗体をコードする遺伝子がそのようなトランスジェニック動物から単離されると、定常領域をコードする遺伝子は、完全ヒト抗体を得るためにヒト定常領域遺伝子と置換することができる。「抗体(単数)」又は「抗体(複数)」という用語は、本明細書で使用される場合、非グリコシル化抗体も指す。
【0022】
「その抗原結合フラグメント」という用語又はその文法的な変化は、本明細書で使用される場合、抗体フラグメントを指す。抗体のフラグメントは、当技術分野において既知の少なくとも1つの重鎖又は軽鎖免疫グロブリンドメインを含み、一又は複数の抗原(単数又は複数)と結合する。本発明による抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)、並びにFv及びscFvフラグメント、並びにジアボディー、トリアボディー、テトラボディー、ミニボディー、sdAbsのようなドメイン抗体(dAbs)、VHH又はラクダ科抗体(例えばNanobodies(商標)のようなラクダ又はラマ由来)及びVNARフラグメント、抗体フラグメント又は抗体から形成された単鎖抗体、二重特異性、三重特異性、四重特異性又は多重特異性抗体を含み、Fab-Fv又はFab-Fv-Fv構築物を含むがこれに限定されるものではない。上記に定義された抗体フラグメントは、当技術分野において既知である。
【0023】
本発明による医薬組成物に含まれる抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト又はヒト化抗体、好ましくはヒトFcRnに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体であってよい。
【0024】
より好ましくは、本発明による医薬組成物は、(表1):
1)a.配列番号1に定義された配列を有するCDR-H1、配列番号2に定義された配列を有するCDR-H2、配列番号3に定義された配列を有するCDR-H3、配列番号4に定義された配列を有するCDR-L1、配列番号5に定義された配列を有するCDR-L2、及び配列番号6に定義された配列を有するCDR-L3を含む、又は
b.配列番号7に定義された配列を有する軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された配列を有する重鎖可変領域を含む、又は
c.配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖可変領域を含む、
d.配列番号7に定義された配列を有する軽鎖可変領域及び配列番号11に定義された配列を有する重鎖を含む、又は
e.配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号11に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖を含む、
抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は
2)配列番号9に定義された配列を有する軽鎖及び配列番号10に定義された配列を有する重鎖を含む抗体、又は
3)配列番号9に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖及び配列番号10に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖を含む抗体
を含む。
【0025】
本明細書を通して、相補性決定領域(「CDR」)はKabatの定義にしたがって定義される。Kabatの定義は、抗体中の残基の番号付けのための標準であり、一般的にCDR領域を同定するために使用される(Kabatら、(1991)、第5版、NIH出版番号91-3242)。
【表1-1】

【表1-2】
【0026】
例示された抗体又はその抗原結合フラグメントは、さらにWO2014019727に詳細に記載される(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0027】
抗体分子は、一般的に、本発明の抗体分子をコードするDNAからタンパク質を発現させるのに適した条件下で、抗体配列をコードするベクターを含有する宿主細胞を培養し、抗体分子を単離することによって産生される場合がある。
【0028】
抗体分子は、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含む場合があり、その場合、重鎖又は軽鎖ポリペプチドコード配列のみが、宿主細胞をトランスフェクトするために使用される必要がある。重鎖及び軽鎖の両方を含む生成物を産生するために、細胞系は、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクター及び重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターの2つのベクターでトランスフェクトしてもよい。或いは、軽鎖及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む単一のベクターを使用してもよい。
【0029】
組換え抗体フラグメントをコードする一又は複数の発現ベクターでトランスフェクトされた真核宿主細胞を培養することにより、工業規模で製造することができる抗体又はその抗原結合フラグメントを産生することができる。真核宿主細胞は、好ましくは哺乳動物細胞であり、より好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0030】
哺乳動物細胞は、それらの増殖及び組換えタンパク質の発現を助ける任意の培地で培養してよく、好ましくは、培地は化学的合成培地であり、すなわち動物血清及びペプトンのような動物由来の製品を有さない。細胞増殖及びタンパク質産生を可能にする、適した濃度で存在するビタミン、アミノ酸、ホルモン、増殖因子、イオン、緩衝液、ヌクレオシド、グルコース又は同等のエネルギー供給源の異なる組合せを含む、当業者に入手可能な異なる細胞培養培地が存在する。追加の細胞培養培地成分は、当業者に既知の細胞培養サイクル中の、異なる時間に、適した濃度で、細胞培養培地に含まれてもよい。
【0031】
哺乳動物細胞培養は、必要な生産規模に応じてフェッドバッチモードで操作してもしなくてもよく、振盪フラスコ又はバイオリアクターのような任意の適した容器中で行うことができる。これらのバイオリアクターは、撹拌タンク又はエアリフト反応容器のいずれかであってよい。1,000L以上50,000L以下、好ましくは5,000Lから20,000Lの間、又は10,000L以下の収容能力(capacity)を有するさまざまな大規模バイオリアクターが利用可能である。或いは、2Lから100Lの間のようなより小規模のバイオリアクターもまた、抗体又は抗体フラグメントを製造するために使用されてもよい。
【0032】
抗体又はその抗原結合フラグメントは、一般的に、哺乳動物宿主細胞培養物の上清、一般的にはCHO細胞培養物中に見出される。抗体又はその抗原結合フラグメントのような目的のタンパク質が上清中に分泌されるCHO培養プロセスでは、前記上清を、当技術分野で既知の方法、一般的には遠心分離によって収集する。
【0033】
したがって、抗体又はその抗原結合フラグメントの産生方法は、細胞培養後及びタンパク質精製前の遠心分離及び上清回収のステップを含む。さらに特定の実施形態において、前記遠心分離は、連続遠心分離である。疑義を回避するために、上清は、細胞培養物の遠心分離から得られた、沈殿した細胞の上に横たわる液体を示す。
【0034】
或いは、宿主細胞は、原核細胞であり、好ましくはグラム陰性細菌である。より好ましくは、宿主細胞は大腸菌(E.coli)細胞である。タンパク質発現のための原核宿主細胞は、当技術分野において周知である(Terpe,K.、Appl Microbiol Biotechnol、72、211~222(2006))。宿主細胞は、抗体の抗原結合フラグメントのような目的のタンパク質を産生するように遺伝子操作された組換え細胞である。組換え大腸菌宿主細胞は、MC4100、TG1、TG2、DHB4、DH5α、DH1、BL21、K12、XL1Blue及びJM109を含む任意の適した大腸菌株由来であってよい。1つの例は、組換えタンパク質発酵のために一般に使用される宿主株である大腸菌株W3110(ATCC 27,325)である。抗体フラグメントはまた、改変大腸菌株、例えば代謝突然変異体又はプロテアーゼ欠損大腸菌株を培養することによって産生することができる。
【0035】
抗体フラグメントは、一般的には、タンパク質の特質、生産規模及び使用される大腸菌株に応じて、大腸菌宿主細胞のペリプラズム中又は宿主細胞培養上清中のいずれかに見出される。タンパク質をこれらのコンパートメントに標的化するための方法は、当技術分野で周知である(Makrides,S.C.、Microbiol Rev 60、512~538(1996))。タンパク質を大腸菌のペリプラズムに向けるための適したシグナル配列の例には、大腸菌PhoA、OmpA、OmpT、LamB及びOmpFシグナル配列が含まれる。タンパク質は、天然の分泌経路に依存するか、又はタンパク質分泌を引き起こすための外膜の限定的な漏出の誘導によって上清に標的化されてよく、その例は、pelBリーダー、プロテインAリーダー、バクテリオシン放出タンパク質の共発現、培養培地へのグリシンの添加と併せたマイトマイシン誘導バクテリオシン放出タンパク質、及び膜透過のためのkil遺伝子の共発現の使用である。最も好ましくは、組換えタンパク質は、宿主大腸菌のペリプラズムに発現される。
【0036】
大腸菌宿主細胞における組換えタンパク質の発現はまた、誘導性システムの調節下にあってよく、それによって大腸菌における組換え抗体の発現は誘導性プロモーターの調節下にある。大腸菌での使用に適した多くの誘導性プロモーターは当技術分野で周知であり、プロモーターに応じて、増殖培地の温度又は特定の物質の濃度のような因子を変化させることによって、組換えタンパク質の発現を誘導することができる。誘導性プロモーターの例には、ラクトース又は非加水分解ラクトースアナログ、イソプロピル-bD-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導性の大腸菌lac、tac及びtrcプロモーター、並びにリン酸、トリプトファン及びL-アラビノースによってそれぞれ誘導されるphoA、trp及びaraBADプロモーターが含まれる。発現は、例えば、誘導物質の添加又は誘導が温度依存性の場合、温度変化によって誘導されてもよい。培養物への誘導物質の添加により組換えタンパク質発現の誘導が達成される場合、誘導物質は、発酵系及び誘導物質に応じて、任意の適した方法によって、例えば1回又は複数回のショット添加によって、又は供給を介した誘導物質の逐次添加によって添加してもよい。誘導物質の添加と実際のタンパク質発現の誘導との間に遅延が存在する場合があることが理解され、例えば、誘導物質がラクトースである場合、任意の既存の炭素源がラクトースより前に利用される間、タンパク質発現の誘導前に遅延が生じる場合がある。
【0037】
大腸菌宿主細胞培養(発酵)は、大腸菌の増殖及び組換えタンパク質の発現を助ける任意の培地中で培養することができる。培地は、例えばDurany Oら、(2004)、大腸菌における組換えフクロース-1-リン酸塩アルドラーゼの発現に関する研究(Studies on the expression of recombinant fuculose-1-phosphate aldolase in Escherichia coli.)、Process Biochem 39、1677~1684に記載されたような任意の化学的合成培地であってよい。
【0038】
大腸菌宿主細胞の培養は、必要な生産規模に応じて、振盪フラスコ又は発酵槽のような任意の適した容器中で行うことができる。さまざまな大規模発酵槽は、1,000リットル以上から約100,000リットルまでの容量で入手可能である。好ましくは、1,000から50,000リットルの発酵槽が使用され、より好ましくは1,000から25,000、20,000、15,000、12,000又は10,000リットルである。小規模発酵槽も0.5から1,000リットルまでの容量で使用してもよい。
【0039】
大腸菌の発酵は、タンパク質及び必要な収率に応じて、任意の適したシステム、例えば連続、バッチ又はフェッドバッチモードで行ってもよい。バッチモードは、必要な場合、栄養又は誘導物質のショット添加を使用してもよい。或いは、フェッドバッチを使用してよく、培養は、発酵槽中に最初に存在する栄養、及び発酵が完了するまで増殖速度を制御するために使用される一又は複数の栄養供給法を使用して持続することができる最大比増殖速度のバッチモード予備誘導で行ってもよい。フェッドバッチモードはまた、大腸菌宿主細胞の代謝を制御し、より高い細胞密度に達することを可能にするために、予備誘導を使用してもよい。
【0040】
所望であれば、宿主細胞は、発酵培地から収集してよく、例えば、宿主細胞は、遠心分離、濾過又は濃縮によって試料から収集してもよい。この場合、そのプロセスは、一般的には、タンパク質を抽出する前に遠心分離及び細胞回収のステップを含む。
【0041】
抗体又は抗体の抗原結合フラグメントのような目的のタンパク質が宿主細胞のペリプラズムスペースに見出される大腸菌発酵プロセスでは、宿主細胞からタンパク質を放出することが必要である。放出は、機械的又は圧力処理による細胞溶解、凍結融解処理、浸透圧ショック、抽出剤又は熱処理のような任意の適した方法によって達成される場合がある。そのようなタンパク質放出のための抽出方法は、当技術分野において周知である。したがって特定の実施形態において、生産プロセスは、タンパク質精製より前に、追加のタンパク質抽出ステップを含む。
【0042】
インビトロでのヒト抗体の抗原結合フラグメントを得るための他の方法は、ファージディスプレイ又はリボソームディスプレイ技術のようなディスプレイ技術に基づき、少なくとも部分的に人工的に生成される又はドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリー由来のいずれかの組換えDNAライブラリーが使用される。ヒト抗体を生成するためのファージ及びリボソームディスプレイ技術は、当技術分野において周知である。目的の抗原でエクスビボ免疫付与され、続いて融合されてハイブリドーマを生成し、次いでこれを最適なヒト抗体についてスクリーニングすることができる単離されたヒトB細胞からヒト抗体を生成する場合もある。
【0043】
本発明による医薬組成物は、4.0から7.5、好ましくは4.0から6.0、より好ましくは4.5から6.0、さらにいっそう好ましくは5.5から5.8又は最も好ましくは約5.6のpHを有してよい。
【0044】
医薬組成物は、pHを一定に維持するための緩衝剤を含む。シトラート、ホスファート、ラクタート、ヒスチジン、グルタマート、マレアート、タルトラート、又はスクシナートのような液体医薬製剤の分野で使用される多くの緩衝剤があるがこれに限定されない。好ましい緩衝液種は、高い緩衝能を維持するために、最適なタンパク質安定性のための好ましいpHに近い(+/-1 pH単位)pKaを有するものの中から一般的に選択され、一連のさまざまな緩衝液種に置かれた場合に、特定のタンパク質について観察された最大の実証された安定性と関連している。製剤の適切なpH範囲は、一連のさまざまなpH製剤中に置かれた場合に特定のタンパク質について観察された最大の実証された安定性に関連するものから一般に選択される。
【0045】
本発明による医薬組成物は、緩衝剤として、好ましくは10mMから100mM、10mMから80mM、10mMから60mM、25mMから60mM、好ましくは30mMから50mM又は30mMの濃度で、アミノ酸又はアミノ酸混合物を含む。
【0046】
適したアミノ酸は、アルギニン、リシン、ヒスチジン、メチオニン、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、アラニン、グリシン、グルタミン酸又はアスパラギン酸である。塩基性アミノ酸、すなわちアルギニン、リシン及び/又はヒスチジンを含有することが好ましい。アミノ酸はそのD型及び/又はL型で存在してもよいが、L型が代表的である。アミノ酸は、任意の適した塩、例えばアルギニン-HClのような塩酸塩として存在してもよい。
【0047】
好ましくは、アミノ酸はヒスチジンであり、より好ましくは30mMの濃度である。
【0048】
本発明による医薬組成物はまた、アミノ酸混合物、例えばヒスチジン及びプロリン、ヒスチジン、プロリン及びグリシン、ヒスチジン、プロリン及びアルギニン、ヒスチジン、プロリン、アルギニン及びグリシンの混合物を含んでもよい。好ましくは、本発明による医薬組成物は、ヒスチジン及び別のアミノ酸、好ましくは10mMから300mM、50mMから280mM、100mMから280mM又は180mMから250mMの濃度のプロリンを含む。好ましくは、本発明による医薬組成物は、30mMヒスチジン及び180mMから250mMプロリンを含む。
【0049】
本発明による医薬組成物は界面活性剤をさらに含む。本発明による医薬組成物において使用する入手可能な界面活性剤は、これらに限定されないが、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤及び両性イオン性界面活性剤が挙げられる。本発明で使用する代表的な界面活性剤は、これらに限定されないが、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノカプリル酸エステル、ソルビタンモノラウリル酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル)、ソルビタントリオレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、グリセリンモノカプリル酸エステル、グリセリンモノミリスチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、デカグリセリルモノステアリン酸エステル、デカグリセリルジステアリン酸エステル、デカグリセリルモノリノール酸エステル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウリル酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールテトラステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレイン酸エステル)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレングリセリルモノステアリン酸エステル)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールジステアリン酸エステル)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油(例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油)、ポリオキシエチレン蜜ろう誘導体(例えば、ポリオキシエチレンソルビトール蜜ろう)、ポリオキシエチレンラノリン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンラノリン)、及びポリオキシエチレン脂肪酸アミド(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド);C10~C18アルキル硫酸塩(例えば、セチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム)、平均2から4モルのエチレンオキシド単位が添加されているポリオキシエチレンC10~C18アルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム)、及びC~C18アルキルスルホコハク酸エステル塩(例えば、ラウリルスルホコハク酸ナトリウムエステル);並びにレシチン、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン)、及びC12~C18脂肪酸のスクロースエステルのような天然の界面活性剤、が挙げられる。組成物は、一又は複数のこれらの界面活性剤を含んでもよい。好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート20、40、60又は80である。好ましくは、本発明による医薬組成物は、ポリソルベート80を含む。
【0050】
本発明の医薬組成物は、ポリソルベートのような0.01%から10% w/vの界面活性剤、0.01%から1.0% w/vの界面活性剤、0.01%から0.5% w/vの界面活性剤又は0.03% w/vの界面活性剤を含んでもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物は、0.03% w/vのポリソルベート80を含む。
【0051】
本発明による医薬組成物は、安定剤(すなわち凍結保護剤)として、1から20% w/v、又は5%から13% w/v又は7%から10% w/v又は7%のスクロースを含む。
【0052】
本発明はまた、抗FcRn抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の産生方法であって、抗FcRn抗体を含む組成物、例えば、80mg/mLから140mg/mLの配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖を含む抗FcRn抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、250mMプロリン、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6を含む組成物を調製し、1%から25% w/vのスクロースを添加するステップを含む方法、を提供する。
【0053】
好ましくは、方法は、80mg/mLから140mg/mLの配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖を含む抗FcRn抗体、30mMヒスチジン、250mMプロリン、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6を含む組成物を調製するステップ、及び30mMヒスチジン、0.03%w/vのポリソルベート80、17.5%から24.5% w/vのスクロース、pH5.6を含む組成物を添加するステップを含む。
【0054】
本明細書に記載され実施された医薬組成物は、フリーズドライ(すなわち凍結乾燥)医薬組成物の形態であってよい。
【0055】
したがって、本発明による医薬組成物の産生方法は、フリーズドライ(すなわち、凍結乾燥)のステップをさらに含んでもよい。
【0056】
抗体の凍結乾燥の技術は、当技術分野において周知であり(John F.Carpenter及びMichael J.Pikal、1997、Pharm.Res.14、969~975)、同様に凍結乾燥物として供給される、SYNAGIS(商標)、REMICADE(商標)、RAPTIVA(商標)、SIMULECT(商標)、XOLAIR(商標)及びHERCEPTIN(商標)のような現在のモノクローナル抗体製品が入手可能である。これらの抗体は、さまざまな最終濃度に再構成され、例えばSIMULECT(商標)は4mg/ml抗体の濃度に再構成され、REMICADE(商標)は10mg/mlの濃度に、HERCEPTIN(商標)は21mg/mlに、SYNAGIS(商標)及びRAPTIVA(商標)は100mg/mlに、及びXOLAIR(商標)は125mg/mlに再構成される。
【0057】
フリーズドライ技術は、さらに本明細書の実施例の節で論じられる。
【0058】
したがって、本発明は、抗体又はその抗原結合フラグメント、スクロース、アミノ酸又はアミノ酸混合物及び任意選択的に界面活性剤を含むフリーズドライ製剤を提供する。好ましくは、フリーズドライ製剤は、10%から40% w/wスクロース、より好ましくは20%から40% w/wスクロースを含む。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、10%から40% w/wのスクロースを含むフリーズドライ製剤はまた、抗FcRn抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、抗体又はそのフラグメントは、配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖を含む。
【0060】
他の好ましい実施形態では、フリーズドライ製剤は、約50.8% w/wの抗体又はその抗原結合フラグメント、約35.5% w/wスクロース、約3.0% w/wヒスチジン、約10.5% w/wプロリン及び0.2% w/wポリソルベート80を含み、抗体又はそのフラグメントは、配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖を含む。
【0061】
本発明による医薬組成物内で使用する追加の賦形剤は、これらに限定されないが、単糖、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖、例えば、ラクトース、トレハロース、セロビオースなど;多糖、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)などのようなポリオール;ポリエチレングリコール(例えば、PEG100、PEG300、PEG600、PEG1500、PEG2000、PEG3000、PEG3350、PEG4000、PEG6000、PEG8000又はPEG20000)、ポリビニルピロリドン、トリメチルアミンN-オキシド、トリメチルグリシン又はそれらの組合せのような増粘剤、増量剤、可溶化剤が挙げられる。
【0062】
フリーズドライ(すなわち凍結乾燥)医薬組成物を患者に投与する可能性がある前に、それを溶媒で再構成する必要がある。本発明において、好ましい溶媒は水性溶媒であり、より好ましくは、水性溶媒は水である。
【0063】
再構成のために使用する溶媒の体積は、得られる液体医薬製剤中の抗体又はその抗原結合フラグメントの濃度に影響する。予備凍結乾燥体積よりも少ない体積の溶媒による再構成は、凍結乾燥前よりも濃縮された製剤を提供し、逆もまた同様である。
【0064】
したがって、本発明は、溶媒を添加するステップによって本発明によるフリーズドライ医薬組成物を再構成する方法を提供し、溶媒は好ましくは水である。
【0065】
再構成比(フリーズドライ医薬組成物を再構成するために使用される溶媒に対する予備凍結乾燥医薬組成物の体積)は、0.5:1から1:10まで変化させてもよい。好ましい実施形態では、再構成された液体医薬製剤の得られた体積が約4.4mLになるように、約1:1の比が適用される。
【0066】
好ましい医薬組成物の予備凍結乾燥及び/又は本発明による再構成された液体医薬製剤は、
A.1mg/mLから200mg/mLの配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖を含む抗体又はその抗原結合フラグメント、10mMから50mMヒスチジン、10から300mMプロリン、1%から20%w/vのスクロース、0.01%から1.0%w/vのポリソルベート80、pH5.6、
B.50mg/mLから150mg/mLの配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖を含む抗体又はその抗原結合フラグメント、20mMから40mMヒスチジン、50から280mMプロリン、5%から13%w/vのスクロース、0.01%から0.5%w/vのポリソルベート80、pH5.6、
C.80mg/mLから140mg/mLの配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖を含む抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、250mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、
D.50mg/mLから150mg/mLの配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖又は配列番号11を含む重鎖を含む抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、
E.可変重鎖は配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2及び配列番号3のCDR-H3を含み、可変軽鎖は配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2及び配列番号6のCDR-L3を含む、80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの可変重鎖及び可変軽鎖を含む抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、
F.80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの配列番号10を含む重鎖及び配列番号9を含む軽鎖を含む抗体、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、及び少なくともi)、又はi)及びii)、又はi)、ii)及びiii)
i)100mMから250mMのマンニトール、
ii)80mMから200mMのL-アルギニンHCl、
iii)100mMから280mMのグリシン、
G.80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖又は配列番号11を含む重鎖を含む抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、及び少なくともi)、又はi)及びii)、又はi)、ii)及びiii)
i)100mMから250mMのマンニトール、
ii)80mMから200mMのL-アルギニンHCl、
iii)100mMから280mMのグリシン、
H.可変重鎖は配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2及び配列番号3のCDR-H3を含み、可変軽鎖は配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2及び配列番号6のCDR-L3を含む、80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの可変重鎖及び可変軽鎖を含む抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、及び少なくともi)、又はi)及びii)、又はi)、ii)及びiii)
i)100mMから250mMのマンニトール、
ii)80mMから200mMのL-アルギニンHCl、
iii)100mMから280mMのグリシン、
I.80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの配列番号10を含む重鎖及び配列番号9を含む軽鎖を含む抗体、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、及び少なくともi)、又はi)及びii)、又はi)、ii)及びiii)
i)100mMから250mMのマンニトール、
ii)80mMから200mMのL-アルギニンHCl、
iii)100mMから280mMのグリシン、
を含む。
【0067】
本発明は、また、本発明によるフリーズドライ医薬組成物又は再構成された液体医薬製剤を含む容器を提供する。特に、容器は、再構成されるべきフリーズドライ医薬組成物を含むバイアルであってよい。
【0068】
容器は、本発明によるフリーズドライ医薬組成物を含む一又は複数の容器、フリーズドライ医薬組成物を再構成するための適した溶媒、シリンジのような送達装置及び取扱説明書を含むキットオブパーツの一部であってよい。
【0069】
本発明による医薬組成物又は液体医薬製剤は治療用である。
【0070】
好ましい実施形態では、再構成された治療用液体医薬製剤は、80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、任意選択的に、i)、又はi)及びii)、又はi)、ii)及びiii)
i)100mMから250mMのマンニトール、
ii)80mMから200mMのL-アルギニンHCl、
iii)100mMから280mMのグリシン、
を含み、
抗体又はその抗原結合フラグメントは(それが適用される場合があるので)、
1)配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖又は配列番号11を含む重鎖、又は
2)配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖可変領域、
3)配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号11に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖、
4)配列番号9を含む軽鎖及び配列番号10を含む重鎖、又は
5)配列番号9に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖及び配列番号10に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖、
6)可変重鎖は配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2及び配列番号3のCDR-H3を含み、可変軽鎖は配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2及び配列番号6のCDR-L3を含む、可変重鎖及び可変軽鎖
を含む。
【0071】
本発明による医薬組成物又は液体医薬製剤は、また、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、ループス、及び血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びそれらの組合せ、から選択される炎症性又は自己免疫疾患の治療に使用する。
【0072】
他の好ましい実施形態では、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、ループス、及び血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びそれらの組合せから選択される炎症性又は自己免疫疾患の治療に使用する再構成された液体医薬製剤は、80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、任意選択的に、i)、又はi)及びii)、又はi)、ii)及びiii)
i)100mMから250mMのマンニトール、
ii)80mMから200mMのL-アルギニンHCl、
iii)100mMから280mMのグリシン、
を含み、
抗体又はその抗原結合フラグメント(それが適用される場合があるので)は、
1)配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖又は配列番号11を含む重鎖、又は、
2)配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖可変領域、
3)配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号11に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖、
4)配列番号9を含む軽鎖及び配列番号10を含む重鎖、又は、
5)配列番号9に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖及び配列番号10に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖、
6)可変重鎖は配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2及び配列番号3のCDR-H3を含み、可変軽鎖は配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2及び配列番号6のCDR-L3を含む、可変重鎖及び可変軽鎖
を含む。
【0073】
本発明は、また、哺乳動物被験体における炎症性又は自己免疫疾患の治療方法であって、本発明による医薬組成物又は液体医薬製剤を投与することを含み、炎症性又は自己免疫疾患は、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、ループス、及び血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びそれらの組合せから選択される治療方法を提供する。
【0074】
哺乳動物被験体は、齧歯類、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、非ヒト霊長類及びヒト対象であってよい。好ましくは、哺乳動物被験体はヒト対象である。
【0075】
さらに別の好ましい実施形態では、哺乳動物被験体における炎症性又は自己免疫疾患を治療する方法は、80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、任意選択的に、i)、又はi)及びii)、又はi)、ii)及びiii)
iv)100mMから250mMのマンニトール、
i)80mMから200mMのL-アルギニンHCl、
ii)100mMから280mMのグリシン、
を含む再構成された液体医薬製剤を投与することを含み、
抗体又はその抗原結合フラグメント(それが適用される場合があるので)は、
1)配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖又は配列番号11を含む重鎖、又は
2)配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖可変領域、
3)配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号11に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖、
4)配列番号9を含む軽鎖及び配列番号10を含む重鎖、又は
5)配列番号9に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖及び配列番号10に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖、
6)可変重鎖は配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2及び配列番号3のCDR-H3を含み、可変軽鎖は配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2及び配列番号6のCDR-L3を含む、可変重鎖及び可変軽鎖、
を含み、
及び炎症性又は自己免疫疾患は、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、ループス、及び血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びそれらの組合せから選択される。
【0076】
さらに、本発明による医薬組成物又は液体医薬製剤は、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、ループス、及び血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びそれらの組合せから選択される、炎症性又は自己免疫疾患の治療のための薬剤の製造に使用してもよい。
【0077】
他の好ましい実施形態では、再構成された液体医薬製剤は、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギランバレー症候群、ループス、及び血栓性血小板減少性紫斑病、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)及びそれらの組合せから選択される、炎症性又は自己免疫疾患の治療のための薬剤の製造に使用してよく、80mg/mLから140mg/mL、好ましくは100mg/mlの抗体又はその抗原結合フラグメント、30mMヒスチジン、180mMプロリン、7%w/vのスクロース、0.03%w/vのポリソルベート80、pH5.6、任意選択的に、i)、又はi)及びii)、又はi)、ii)及びiii)、
v)100mMから250mMのマンニトール、
vi)80mMから200mMのL-アルギニンHCl、
vii)100mMから280mMのグリシン、
を含み、
抗体又はその抗原結合フラグメント(それが適用される場合があるので)は、
1)配列番号7を含む可変軽鎖及び配列番号8を含む可変重鎖又は配列番号11を含む重鎖、又は
2)配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号8に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖可変領域、
3)配列番号7に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖可変領域及び配列番号11に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖、
4)配列番号9を含む軽鎖及び配列番号10を含む重鎖、又は
5)配列番号9に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する軽鎖及び配列番号10に定義された配列に少なくとも80%同一性又は類似性、好ましくは90%同一性又は類似性を有する重鎖、
6)可変重鎖は配列番号1のCDR-H1、配列番号2のCDR-H2及び配列番号3のCDR-H3を含み、可変軽鎖は配列番号4のCDR-L1、配列番号5のCDR-L2及び配列番号6のCDR-L3を含む、可変重鎖及び可変軽鎖、
を含む。
【0078】
本発明による再構成された液体医薬製剤は、治療有効量で投与される。本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、標的とする疾患、障害若しくは状態を治療、改善若しくは予防するため、又は検出可能な治療的、薬理学的又は予防効果を示すために必要な治療薬(すなわち抗体)の量を指す。任意の抗体又はその抗原結合フラグメントについて、治療有効量は、細胞培養アッセイ又は動物モデル、通常は齧歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類のいずれかで最初に推定することができる。動物モデルを、適した濃度範囲及び投与経路を決定するために使用してもよい。そのような情報を、次いで、ヒトにおける投与のための有用な用量及び経路を決定するために使用することができる。
【0079】
ヒト対象の正確な治療有効量は、病状の重症度、対象の一般的な健康状態、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組合せ(単数又は複数)、反応感度及び治療に対する耐性/応答に依存する。この量は日常的検査により決定することができ、それは臨床医の判断の範囲内である。一般に、抗体の治療有効量は、0.01mg/kgから500mg/kg、例えば100mg/kgのような0.1mg/kgから200mg/kgである。
【0080】
上記疾患及び/又は障害の治療のために、適した用量は、例えば、使用される特定の抗体、治療される対象、投与様式、及び治療される状態の特質及び重症度に応じて変化する。特定の実施形態において、本発明の再構成された液体医薬製剤は、静脈内又は皮下の経路によって投与される。静脈内注射によって投与される場合、急速静注注射又は連続点滴として投与してもよい。本発明の実施形態のいずれかによる再構成された液体医薬製剤はまた、筋肉内注射によって投与してもよい。再構成された液体医薬製剤は、シリンジ、自動注入装置のような注入装置、無針装置、移植片及びパッチを用いて注入することができる。
【0081】
本発明の1つの特定の実施形態では、100mg/mLの抗FcRn抗体又はその抗原結合フラグメントを含む1:1の再構成された液体医薬製剤4mLを投与することにより、400mgの用量が達成される。
【0082】
本発明の液体医薬製剤は、一度に又は一連の治療にわたって患者に適切に投与され、診断以後任意の時点で患者に投与してもよく、単独の治療として、又は以前に本明細書に記載されている状態を治療するのに有用な他の薬物又は治療と組み合わせて投与してもよい。
【0083】
抗体又はその抗原結合フラグメントは、液体医薬製剤における唯一の活性成分であってよい。或いは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、一又は複数の他の治療的に活性な成分と他の治療的に活性な成分と組み合わせて、例えば同時に、連続的に又は別々に投与することができる。本明細書で使用される活性成分は、関連する用量で治療効果のような薬理学的効果を有する成分を指す。一部の実施形態では、液体医薬製剤中の抗体又はその抗原結合フラグメントは、他の抗体又は非抗体成分を含む他の活性成分を伴う場合がある。本発明による液体医薬製剤中の抗体が抗FcRn抗体である場合、炎症性又は自己免疫疾患を治療するために、対象に追加の活性成分を投与してもよい。一実施形態では、対象は、他の抗体成分又はステロイド若しくは他の薬物分子、特に半減期がFcRn結合とは無関係の薬物分子のような非抗体成分を同時に、又は順番に(前及び/又は後)に投与される。
【0084】
本発明は、ここで、添付の図面に示される実施形態を参照して、例としてさらに記載される。
【実施例
【0085】
略語
DLS(動的光散乱)、Arg(L-アルギニン)、iCE(撮像キャピラリー電気泳動)、Mal(マルチトール)、Pro(L-プロリン)、PS80(ポリソルベート80)、Raf(ラフィノース)、SE-UPLC(サイズ排除高性能液体クロマトグラフィ)、Sor(ソルビトール)、Suc(スクロース)、Gly(グリシン)、Man(マンニトール)、Met(L-メチオニン)、Tre(トレハロース)。
【0086】
材料
D-(-)-ソルビトール(VWR GPR Rectopur(商標));ポリソルベート80(Tween 80(商標)、Merck(商標));30mMヒスチジン、250mMプロリン、0.03%PS80、pH5.6(UCB Celltechltd)中に140mg/mLのWO2014019727(配列番号9及び10)に記載の抗FcRn抗体;マンニトール(Roquette(商標));D-(+)-ラフィノース五水和物、L-アルギニン塩酸塩、L-ヒスチジン、L-プロリン、マルチトール、グリシン、スクロース、L-メチオニン及び脱水トレハロースのすべては(Sigma(商標))。
【0087】
(例1)
フリーズドライ製剤調製
WO2014019727(配列番号9及び10)に記載の100mg/mL及び80mg/mLの抗FcRn抗体を含むフリーズドライ製剤は、30mMヒスチジン、pH5.6、250mMプロリン、0.03%PS80(標準製剤)中に140mg/mLの前記抗体を含む組成物を以下の表2に示す溶液A~Iでスパイクすることによって調製した。
【表2-1】

【表2-2】
【0088】
約3mLバイアル(Schott Topline Fiolax(商標)、透明)にフリーズドライ製剤1mLを充填した。フリーズドライは、Martin-Christ Epsilon2-6D(商標)フリーズドライヤーで行った。凍結乾燥サイクルは、-40℃での凍結、-10℃でのアニーリング、-20℃での昇華、及び25℃での二次乾燥から構成された(表3)。凍結乾燥サイクルの最後に、バイアルを約400mbarのN2で満たし、単一孔ストッパー(Westar(商標)、West Pharmaceuticals(商標))で閉じた。凍結乾燥物は、分析又は安定性試験の開始まで2~8℃で保存した。
【表3】
【0089】
これらの実験で実施された安定性試験は、30℃で3カ月間及び6カ月間の加速安定性試験、及び40℃で4週間及び3カ月間のストレス安定性試験で構成された。
【0090】
1.再構成
凍結乾燥物を0.9mLのMilli-Q水でそれぞれ80又は100mg/mLの濃度に再構成した。固形物が完全に溶解して透明な溶液(おそらく上部に泡の縁がある)になるまでの時間が記録された。凍結乾燥物及び再構成された溶液の外観を視覚的に評価した。
【0091】
再構成時間を図1に示す。再構成時間は、表2のように各製剤につき、y軸上に分単位で示される。測定は、凍結乾燥の直後に再構成された製剤(保存しない;t0)、凍結乾燥した医薬組成物を30℃で3カ月間(t3m、30℃)、30℃で6カ月間(t6m、30℃)、40℃で4週間(t4w、40℃)及び40℃で3カ月間(t3m、40℃)保存後に再構成された後の製剤で行った。
【0092】
再構成時間は、スクロースを含む製剤及び180mM L-アルギニンを含む製剤については10分以内であった(図1)。80mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤は、100mg/mLを含む製剤よりも有意により速く再構成した。7%スクロース又は180mM L-アルギニン中に100mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤は、安定性試験の全時点で10分未満の許容可能な再構成時間を示した。
【0093】
凝集
抗FcRn抗体濃度は、Cary50(商標)UV-可視分光光度計(Varian(商標))に接続されたSoloVPE(商標)(CE Technologies(商標))拡張を使用して、希釈しない280nmでのUV吸光度によって、又は水で1mg/mLに希釈した後、Spectramax(商標)M5プレートリーダー(Molecular Devices(商標))、ε=1.34mL.mg-1.cm-1で測定した。
【0094】
2つの直列のAcquity(商標)BEH200 SEC(Waters)1.7μm、4.6×150mmカラム及び0.1M Na-ホスファート、0.3M NaCl、pH7.0のランニング緩衝液(0.3mL/分)を用いたサイズ排除UPLC(SE-UPLC)によってタンパク質凝集の量を決定した。検出及び定量は、蛍光(ex280nm、em345nm)によって行った。
【0095】
タンパク質凝集は、また、DynaPro Plate Reader(商標)(Wyatt(商標))を用いた動的光散乱(DLS)によって評価した。30mMヒスチジン、pH5.6中で10mg/mLに希釈した試料アリコートを測定した(5秒に10回の取得)。データを多峰形粒度分布(Wyatt(商標))のためのDynamics(商標)7.1.4正則化フィットで分析した。
【0096】
データは、各製剤につきSE UPLCによって決定された凝集物の総計の割合として図2に示されている。標準製剤(30mMヒスチジン、pH5.6、250mMプロリン、0.03%PS80中の140mg/mLの抗FcRn抗体、凍結乾燥していないもの)もまた調査した(図2を参照)。測定は、凍結乾燥の直後に再構成された製剤(保存しない、t0)、凍結乾燥した医薬組成物を30℃で3カ月間(t3m、30℃)、30℃で6カ月間(t6m、30℃)、40℃で4週間(t4w、40℃)及び40℃で3カ月間(t3m、40℃)保存後に再構成された後の製剤で行った。
【0097】
プロリン製剤(100-Pro250)を除いて、すべての製剤は、標準製剤と比較して、凝集に対する安定性の増加を示した(図2)。特に、7%以上のスクロースを含む製剤は、各安定性試験の無水凝集物形成(absolute aggregate formation)、並びに30℃及び40℃で実施された試験の間の凝集体形成速度の両方として、凝集に対する良好な安定性を示した。30mMヒスチジン、pH5.6、180mMプロリン、7%スクロース、0.03%PS80中に100mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤は、わずか30℃で0.2%/月、及び40℃で0.4%/月の凝集物の増加を示した40℃(表4)。
【表4】
【0098】
7%以上のスクロースで観察されたものと一致して、マルチトールも許容可能な凝集物形成を示した。アルギニン及びマルチトールはそれぞれ再構成時間及び凝集物形成において妥当な結果を示したが、短い再構成時間、低い凝集物形成及び形成速度を提供する7%以上のスクロースとは異なり、両方の試験において許容できる結果をもたらさなかった。
【0099】
SE UPLCによって検出されなかった凝集物をDLSによって調査した。凍結乾燥の前、及び凍結乾燥の直後に再構成された製剤(保存しない、t0)、凍結乾燥した医薬組成物を30℃で3カ月間(t3m、30℃)、30℃で6カ月間(t6m、30℃)、40℃で4週間(t4w、40℃)及び40℃で3カ月間(t3m、40℃)保存後に再構成された後の製剤、凍結乾燥した組成物ごとに、サイズ分布の強度の割合を用いてDSLによって決定された凝集物の割合を示す。
【0100】
標準製剤(30mMヒスチジン、pH5.6、250mMプロリン、0.03%PS80中の140mg/mLの抗FcRn抗体、凍結乾燥していないもの)もまた調査した。標準(Ref)もフリーズドライ製剤も、有意な量のHMW凝集物を示さなかった。測定された強度の変動は、測定技術に固有のものではなく、有意ではないので、安定性に巨大又はHMW凝集物の有意な変化はDLSによって観察されなかった(図3)。
【0101】
チャージバリアント
チャージバリアントは、撮像キャピラリー電気泳動(iCEwith iCE3(ProteinSimple(商標))によって決定した。測定は、凍結乾燥の直後に再構成された製剤(保存しない;t0)、凍結乾燥した医薬組成物を30℃で3カ月間(t3m、30℃)、30℃で6カ月間(t6m、30℃)、40℃で4週間(t4w、40℃)及び40℃で3カ月間(t3m、40℃)保存後に再構成された後の製剤で行った。
【0102】
酸性種の増加(図4A)は、標準製剤(30mMヒスチジン、pH5.6、250mMプロリン、0.03%PS80中の140mg/mLの抗FcRn抗体、凍結乾燥していないもの)について観察された。250mMプロリンを含む製剤は酸性種の減少を示したが、塩基性種の有意な増加も示した(図4B)。4%ソルビトールを含む製剤も塩基性種の顕著な増加を示した。残りのフリーズドライ製剤は、塩基性種のわずかな増加しか示さず、酸性種の有意な変化も示さなかった(図4A及び4B)。7%以上のスクロースを含む製剤は、有意なチャージバリアントの変化を示さなかった。
【0103】
粘性
ViscoPro2000(商標)粘度計(Cambridge Viscosity)を用いて、再構成生成物の粘性を測定した。測定は、22+/-1℃での凍結乾燥の直後(保存しない)に再構成された製剤について行った。
【0104】
粘性は、糖/糖アルコール濃度の増加又は糖/糖アルコール分子量の増加とともに増加した(図5)。スクロースフリーズドライ製剤中に80及び100mg/mLを含む製剤の粘性はすべて許容可能であった。180mgのL-アルギニンと組み合わせた100mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤は、許容可能な粘性も示した。アルギニンは、医薬組成物に一般に添加されて粘性を低下させる認識された賦形剤である。その効果は、スクロースを含む製剤と同等であった。
【0105】
浸透圧
再構成された製剤の浸透圧は、Vapro(商標)5520蒸気圧浸透圧計(Wescor(商標))を用いて測定した。測定は、凍結乾燥の直後(保存しない)に再構成された製剤について行った。
【0106】
大部分の製剤は、約500mOsm/kgの浸透圧を示した(図6)。180mM L-アルギニン製剤中に100mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤は、最も高い浸透圧(570mOsm/kg)を示し、一方、250mMプロリン製剤中に100mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤は、最も低い浸透圧(330mOsm/kg)を示した。スクロースを含む製剤は許容可能な浸透圧を示した。
【0107】
(例2)
標準製剤を除くフリーズドライ製剤(表5)は、30mMヒスチジン、250mMソルビトール、pH5.6中の60mg/mLの抗FcRn抗体から、pH5.6で表5による最終組成物に対する元の試料の体積の少なくとも7倍の合計透析濾過容量を用いて、少なくとも4サイクルの希釈/濃縮で、15mLまでの体積用のAmicon(商標)Ultra-15 30K(Millipore(商標))遠心分離フィルター/濃縮装置を用いた緩衝液交換によって調製した。濾過した3%PS20原液から最終濃度0.03%に緩衝液交換した後、ポリソルベート20(PS20)を添加した。例1の製剤B(100mg/mlの抗FcRn抗体、7%スクロース、30mMヒスチジン、180mMプロリン及び0.03%PS80、pH5.6)を例2の実験の標準製剤として選択した。
【0108】
バイアル(3mL、Topline Fiolac、透明、Schott(商標))に、100mg/mL又は140mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤1mLを充填した(は100mg/ml及び140mg/mlの両方の濃度で試験した製剤である(表5)。フリーズドライは、例1のように行った。
【表5】
【0109】
再構成
再構成は例1のように行った。測定は、凍結乾燥の直後に再構成された製剤(保存しない、t0)、凍結乾燥した医薬組成物を30℃で3カ月間(t3m、30℃)、30℃で6カ月間(t6m、30℃)、40℃で4週間(t4w、40℃)及び40℃で3カ月間(t3m、40℃)保存後に再構成された後の製剤で行った。100mg/mL及び140mg/mLの抗FcRn抗体の両方で、スクロース、スクロース-グリシン及びスクロース-アルギニン製剤について、比較的迅速な再構成が達成された(図7A図7B)。スクロース-マンニトール製剤は同等に迅速に再構成されなかったが、メチオニン製剤及びトレハロース製剤は再構成に長時間を要した(図7Aの異なるy軸スケールを参照)。10%スクロースと10%トレハロース製剤との間の差異は驚くべきことであり、スクロースと抗FcRn抗体との間の特異的相互作用が再構成を助けることを示唆している。再構成に及ぼすメチオニンの負の影響は、凍結乾燥固形物の構造の変化だけでなく、抗FcRn抗体の分子変化にも起因する可能性がある(以下の凝集分析においてより明白である)。
【0110】
凝集
凝集は、例1の方法にしたがって調査した。測定は、凍結乾燥の前の製剤、凍結乾燥の直後に再構成された製剤(保存しない、t0)、凍結乾燥した医薬組成物を30℃で3カ月間(t3m、30℃)、30℃で6カ月間(t6m、30℃)、40℃で4週間(t4w、40℃)及び40℃で3カ月間(t3m、40℃)保存後に再構成された後の製剤で行った。抗FcRn抗体の両方の濃度(100mg/ml及び140mg/ml)でのメチオニン含有製剤を除くすべての製剤は、凝集に対して良好な安定性を示した(図8A及び8B)。凝集に対して最高の安定性を示す製剤は、10%及び13%スクロース製剤、6%スクロース-3%マンニトール及び7%スクロース-2%マンニトール製剤、すべてのアルギニン含有製剤、並びに標準製剤(7%スクロース及びプロリン含有)を含んでいた。140mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤の凝集レベルは、100mg/mLを含有する製剤と同様であった。メチオニン含有製剤は、抗FcRn抗体の両方の濃度で高度の凝集物形成を示した。
【0111】
高分子量(HMW)凝集物も調査した。凍結乾燥の前、及び凍結乾燥の直後に再構成された製剤(保存しない、t0)、凍結乾燥した医薬組成物を30℃で3カ月間(t3m、30℃)、30℃で6カ月間(t6m、30℃)、40℃で4週間(t4w、40℃)及び40℃で3カ月間(t3m、40℃)保存後に再構成された後の製剤で、凍結乾燥した製剤ごとに、サイズ分布の質量の割合を用いてDSLによって決定された凝集物の割合を示す。結果を図9A及び9Bに示す。メチオニン含有製剤を除いて、DLSで測定した高分子量(HMW)凝集物の有意な増加は観察されなかった。メチオニン製剤のHMW凝集物の増加は、SE-UPLCデータとよく相関する。凝集は、フリーズドライではなく熱ストレスによって誘導されるように思われる。
【0112】
チャージバリアント
チャージバリアント分析は、例1のように行った。測定は、凍結乾燥の前の医薬組成物、凍結乾燥の直後に再構成された製剤(保存しない、t0)、凍結乾燥した医薬組成物を30℃で3カ月間(t3m、30℃)、30℃で6カ月間(t6m、30℃)、40℃で4週間(t4w、40℃)及び40℃で3カ月間(t3m、40℃)保存後に再構成された後の製剤で行った。100mg/mLの抗FcRn抗体を含む製剤では、30℃及び40℃で保存後のメチオニン製剤について、酸性種の減少及び塩基性種の増加が観察された(図10A及び10B)。140mg/mLの抗FcRn抗体及びメチオニンを含む製剤について、同様の挙動が確認された(図11A及び11B)。これは、抗FcRn抗体の凝集挙動の原因でもある場合がある、メチオニンの存在に起因する抗FcRn抗体の熱誘導化学変化を示唆する。他のすべての製剤については、チャージバリアントの有意な変化は観察されなかった。
【0113】
粘性
ViscoPro2000(商標)粘度計(Cambridge Viscosity(商標))を用いて、再構成生成物の粘性を測定した。測定は、凍結乾燥の直後(保存しない)に再構成された製剤について行った。140mg/mLでさえもアルギニン含有製剤の粘性は非常に低かった(<6cP)(図12)。すべての他の製剤について、粘性は8cPより高かった。
【0114】
浸透圧
再構成された製剤の浸透圧は、Vapro(商標)5520蒸気圧浸透圧計(Wescor(商標))を用いて測定した。測定は、凍結乾燥の直後(保存しない)に再構成された製剤について行った。7%以上のスクロースを含む製剤のような、良好な安定性及び再構成特性を有するすべての製剤は、許容可能な浸透圧を示した。注目すべきことに、メチオニン含有製剤は、非常に低い浸透圧を示した。
【配列表フリーテキスト】
【0115】
配列番号1:<223>CDR-H1
配列番号2:<223>CDR-H2
配列番号3:<223>CDR-H3
配列番号4:<223>CDR-L1
配列番号5:<223>CDR-L2
配列番号6:<223>CDR-L3
配列番号7:<223>軽鎖可変領域
配列番号8:<223>重鎖可変領域
配列番号9:<223>軽鎖
配列番号10:<223>重鎖
配列番号11:<223>Fab重鎖
図1
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【配列表】
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