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特許7126456電子ユニットを有するボーリング・ヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】電子ユニットを有するボーリング・ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/034 20060101AFI20220819BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20220819BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20220819BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B23B29/034 B
B23Q3/12 A
B23Q17/22 D
B23Q17/00 D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018565299
(86)(22)【出願日】2017-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2017070351
(87)【国際公開番号】W WO2018029308
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】16183907.1
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518438472
【氏名又は名称】ビッグ カイザー プレツィヅィオンスヴェルクツォイク アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホセ マリア フェノジョッサ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ スタデルマン
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-500638(JP,A)
【文献】米国特許第05251511(US,A)
【文献】特表2013-509310(JP,A)
【文献】特開平10-309607(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0162543(US,A1)
【文献】実開昭61-068805(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0122588(KR,A)
【文献】特開平11-122650(JP,A)
【文献】実開平02-009946(JP,U)
【文献】特開平03-184220(JP,A)
【文献】特開平11-185526(JP,A)
【文献】特開2015-158864(JP,A)
【文献】特開2010-046471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 - 29/34
B23Q 3/00 - 3/18
B23Q 17/00 - 23/00
H01L 27/20
H01L 41/00 - 41/47
H01H 13/00 - 13/76
H03K 17/74 - 17/98
G06F 1/26 - 1/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ユニット(20)が組み込まれたボーリング・ヘッド(1)であって、
前記電子ユニット(20)が、
制御ユニット(60)と、
前記ボーリング・ヘッド(1)の状態に関する情報をユーザに表示するための、前記制御ユニット(60)に接続されたディスプレイ(30)と、
前記制御ユニット(60)及び前記ディスプレイ(30)に電力を供給する電源(41)用の隔室(26)と、
前記制御ユニット(60)に前記ユーザが作用することを可能にするために、前記制御ユニット(60)に作動可能に接続された少なくとも1つのボタン(49)と、
を備え、
前記電子ユニット(20)が、全体として、前記ボーリング・ヘッド(1)のコンパクトなサブアセンブリとして設計され、
カバー(28)が、前記電源(41)用の前記隔室(26)を覆うために設けられ、
前記ボタン(49)が、前記カバー(28)によって形成されたことを特徴とする、ボーリング・ヘッド(1)。
【請求項2】
前記電源(41)用の前記隔室(26)が、前記制御ユニット(60)と前記ボタン(49)との間に配置される、請求項1に記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項3】
前記電子ユニット(20)が、前記ユーザによる前記ボタン(49)の操作を検出するために、ピエゾ要素(50)をさらに備える、請求項1又は2に記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項4】
前記ピエゾ要素が、ピエゾ・ダイヤフラム(50)として形成され、前記ピエゾ・ダイヤフラム(50)が、異方導電性接着剤(58)を用いて前記制御ユニット(60)に接続される、請求項3に記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項5】
前記電子ユニット(20)が、前記異方導電性接着剤(58)を用いて前記ピエゾ・ダイヤフラム(50)が接続されたピエゾ・ボード(53)をさらに備え、前記ピエゾ・ボード(53)が、前記電源(41)用の前記隔室(26)と前記ピエゾ要素(50)との間に配置される、請求項4に記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項6】
半径方向変位が可能なインサート・ホルダ(11)と、前記インサート・ホルダ(11)の前記半径方向変位を測定するセンサ(16)とをさらに備え、前記センサ(16)が、前記制御ユニット(60)へ接続され、前記制御ユニット(60)が、前記半径方向変位が前記ディスプレイ(30)によって表示されるように前記ディスプレイ(30)を制御するように適合される、請求項1~5のいずれかに記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項7】
前記電子ユニット(20)が、前記制御ユニット(60)と、前記ディスプレイ(30)と、前記電源(41)用の前記隔室(26)とがその中又は上に配置されたケーシング(21)を備える、請求項1~6のいずれかに記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項8】
前記電子ユニット(20)が、前記制御ユニット(60)と、前記ディスプレイ(30)と、前記電源(41)用の前記隔室(26)と、さらに、前記制御ユニット(60)へ作動可能に接続されたボタン(49)とがその中又は上に配置されたケーシング(21)を備える、請求項1~7のいずれかに記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項9】
プリント回路基板(PCB)(60)が、前記制御ユニットとして用いられる、請求項1~8のいずれかに記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項10】
前記プリント回路基板(PCB)(60)が、前記電子ユニット(20)の背面を形成する、請求項9に記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項11】
前記プリント回路基板(PCB)(60)とケーシング(21)とが一体になって前記電子ユニット(20)の内部空間を形成し、前記内部空間内に、前記ディスプレイ(30)、及び前記電源(41)用の前記隔室(26)が配置される、請求項9又は10に記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項12】
前記プリント回路基板(PCB)(60)とケーシング(21)とが一体になって前記電子ユニット(20)の内部空間を形成し、前記内部空間内に、前記ディスプレイ(30)、及び前記電源(41)用の前記隔室(26)が、完全に前記内部空間内に配置される、請求項10又は11に記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項13】
前記電子ユニット(20)が、データを前記制御ユニット(60)から外部装置へ無線で送信するためのアンテナ(21、66、67)をさらに備える、請求項1~12のいずれかに記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項14】
前記ボーリング・ヘッド(1)が、窪み部(5)を有する本体(2)を備え、前記電子ユニット(20)が、前記窪み部(5)内に配置される、請求項1~13のいずれかに記載のボーリング・ヘッド(1)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載のボーリング・ヘッド(1)用の電子ユニット(20)であって、
制御ユニット(60)と、
前記ボーリング・ヘッド(1)の状態に関する情報をユーザに表示するための、前記制御ユニット(60)に接続されたディスプレイ(30)と、
前記制御ユニット(60)及び前記ディスプレイ(30)に電力を供給する電源(41)用の隔室(26)と、
前記制御ユニット(60)に前記ユーザが作用することを可能にするために、前記制御ユニット(60)に作動可能に接続された少なくとも1つのボタン(49)と、
前記電源(41)用の前記隔室(26)を覆うためのカバー(28)と
を備え、
全体として、コンパクトなサブアセンブリとして設計され、
前記ボタン(49)が、前記カバー(28)によって形成されたことを特徴とする、電子ユニット(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ユニットを有するボーリング・ヘッド、及びそのようなボーリング・ヘッドの電子ユニットに関する。特に、本発明は、切削インサートを保持するボーリング・ヘッドに関し、そのボーリング・ヘッドは、工作機械の駆動源から切削インサートへ回転運動を伝達するように適合され、その切削インサートは、特に、切屑生成式の金属切削用に設計されている。
【背景技術】
【0002】
たとえば切屑生成式の金属切削に使用されるボーリング・ヘッドは、しばしば、切削インサートの切れ刃の半径方向調節を可能にするために、半径方向に変位可能なインサート・ホルダを備える。切削インサートの半径方向変位量は、ボーリング・ヘッドの極めて重要なパラメータになり、通常、インサート・ホルダを半径方向に変位させることができる調節ねじに設けられた目盛を用いてユーザに示される。
【0003】
高精度な機械操作においても、ユーザにより良い快適さを提供するためにも、切削インサートの半径方向変位を、ボーリング・ヘッドの他の可能な状態データと共に、ディスプレイを用いて、ディジタル式に表示することが望ましいことが多い。このために、目盛付きの調節ねじに加えて又はその代わりに、液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイを用いることができる。
【0004】
特許文献1では、切れ刃の位置を手動で調節する調節器具に、ディスプレイが配置されている。すなわち、ディスプレイは、ボーリング・ヘッドに直接配置されずに、別の装置に配置されている。
【0005】
切削インサートの実際の半径方向変位を表示する一体型ディスプレイを備えるボーリング・ヘッドが、特許文献2によって開示されている。
【0006】
ボーリング・ヘッドにディスプレイを設けることは、インサート・ホルダの変位を測定するセンサを追加して設ける必要があるばかりでなく、制御ユニットならびに何らかの電力源を設けて、ディスプレイを制御し、ディスプレイ及び制御ユニットへ電力を供給する必要があるので、通常、ボーリング・ヘッドが複雑で高価な構造になる。一体となって電子ユニットを形成するこれら電気構成要素の全てを、ボーリング・ヘッドの限られた空間内になんとかして配置する必要があり、内部で相互に接続する必要がある。
【0007】
さらに、通常、高回転速度のために、多数の電気構成要素及びそれら構成要素を接続するために使用される電気配線が、ボーリング・ヘッドの作動中、高い遠心力に曝される。それら電気構成要素及び配線にアクセスすることを可能にする複数のカバーのどれかから埃粒子及び冷却液がボーリング・ヘッドに入る高い危険性がある。その結果、電子ユニットを設けることは、従来技術のボーリング・ヘッド内の構成要素のどれかに不具合を起こす危険性を増す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2006/000746号
【文献】独国特許出願公開第102013217911号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、構造が簡単であり不具合の危険性が低減する、電子ユニットを有するボーリング・ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載のボーリング・ヘッドによって解決される。ボーリング・ヘッドのさらなる実施形態が、従属請求項に示されている。そのようなボーリング・ヘッドの電子ユニットが、請求項15に記載されている。
【0011】
以下において、上方、下方、内方、外方などの位置及び方向に関する全ての表示は、正常な使用、すなわち被工作物を機械加工するときにおけるボーリング・ヘッドの通常の回転方向によって定義される回転軸に垂直に向いたボーリング・ヘッドの半径方向に対するものである。ボーリング・ヘッドの要素の前側とは、半径方向外方に向き、したがってユーザに可視要素を表示することができる、要素の面を通常意味する。背面は、通常、半径方向内方へ向いている、要素の面である。
【0012】
本発明は、電子ユニットが組み込まれたボーリング・ヘッドであって、
電子ユニットが、
制御ユニットと、
ボーリング・ヘッドの状態に関する情報をユーザに表示するための、制御ユニットに接続されたディスプレイと、
制御ユニット及びディスプレイに電力を供給する電源用の隔室と
を備える、ボーリング・ヘッドを提供する。
電子ユニットは、全体として、ボーリング・ヘッドのコンパクトなサブアセンブリとして設計されている。
【0013】
ボーリング・ヘッドは、回転運動を駆動源、たとえば工作機械のスピンドルから、たとえば被工作物を機械加工する切削インサートへ伝達するように適合されている。切削インサートは、特に、切屑生成式の金属切削に適合させることができる。ボーリング・ヘッドは、電子ユニットが取り付けられ、好ましくはステム部及びヘッド部を備える本体を通常備える。ステム部は、好ましくは、本質的に円筒形であるが、円錐形でもよく、多角形の断面を有してもよい。ヘッド部は、好ましくは、本質的に円筒形である。ステム部は、通常、ボーリング・ヘッドを駆動源、たとえば工作機械のスピンドルへ接続する働きをする。ヘッド部には、通常、被工作物を機械加工するための切削インサート、及び好ましくはさらに電子ユニットが取り付けられている。電子ユニットは、ボーリング・ヘッドの組込部品を形成し、通常、切削インサートの完全に内方、少なくとも切削インサートの半径方向最外端の完全に内方に配置される。
【0014】
電子ユニットに関して、コンパクトなサブアセンブリとして設計されるということは、電子ユニットが、ボーリング・ヘッドの他の部分とは明確に境界を画したモジュール状の構成要素であることを意味する。したがって、電子ユニットは、全体として、ボーリング・ヘッドの他の構成要素に対して独立し明確に境界を画した構造構成要素を形成する。電子ユニットの様々な構成要素、すなわち、少なくとも制御ユニット、ディスプレイ、及び電源用の隔室は、通常、共に近接して配置され、これら様々な構成要素を相互接続する全ての電気配線は、好ましくは、電子ユニット内で張り廻らされ、ボーリング・ヘッドの他の部品を通らない。任意選択的に、電子ユニットは、いくつかのねじを緩めることによるなど、少しの単純な操作のみによって、ボーリング・ヘッドから破壊せずに全体として取外し可能にすることができ、それによって、電子ユニットは、ボーリング・ヘッドから取り外した後、単一のコンパクトな部品を形成するようになる。
【0015】
サブアセンブリの形態でのコンパクトな構成によって、電子ユニットは、ボーリング・ヘッドの他の部分とは完全に独立して製造することができる。電子ユニットの構成要素を相互接続する全ての電気配線が、好ましくは、完全に電子ユニット内で張り廻らされているので、ボーリング・ヘッド内に存在する電線の数を著しく減らすことができる。有利には、不具合の危険性をさらに低減するために、電子ユニットは、電線を全く備えず、接点、プリント回路などの形態での電気接続のみを備える。電子ユニットのコンパクトな構成によって、ボーリング・ヘッドは、任意選択で、たとえば洗浄目的や交換のために、本体から電子ユニットを容易に取り外すことができるように構成することができる。さらに、コンパクトな構成を有する電子ユニットは、任意選択で、埃粒子及び液体に対してシールすることができる。それによって、ボーリング・ヘッドは、さらに、不具合の危険性が低減される。
【0016】
通常、制御ユニットは、ボーリング・ヘッドのパラメータを測定する働きをする、あるタイプのセンサへ接続されている。センサは、必須ではないが、電子ユニットの一部にすることができる。パラメータは、好ましくは、ボーリング・ヘッドに取り付けられている切削インサートの半径方向位置である。制御ユニットは、好ましくは、センサから受け取った入力信号を、個々の値を表示するディスプレイに対する入力信号として機能する出力信号へ処理するように適合されている。このために、制御ユニットは、通常、少なくともアナログ・ディジタル変換器、又は汎用非同期送受信回路(UART)、シリアル周辺機器インターフェース(SPI)、アイ・スクエアド・シー(IC)などのシリアル通信ポートを備える。ディスプレイは、好ましくは、液晶ディスプレイ(LCD)、ドット・マトリックス、TFT、又は電子ペーパを備える。
【0017】
電源には、好ましくは、普通の電池が充てられる。特に好ましい実施形態では、隔室は、ボタン電池を収容するように適合され、ボタン電池は、特に省スペースである。隔室内には、電源を制御ユニット及びディスプレイに電気接続するために、それぞれの接点要素が、通常、設けられる。
【0018】
好ましくは、電子ユニットは、制御ユニットにユーザが作用することを可能にするために、制御ユニットに作動可能に接続された少なくとも1つのボタンをさらに備える。有利には、プッシュ・ボタンとして設計されたボタンは、好ましくは、電子ユニット及び特にディスプレイのスイッチをオン/オフする働きをする。ボタンは、たとえばその操作の順序又は持続時間に応じて、たとえばリセット機能などのさらに別の機能性を発揮することができる。
【0019】
電源用の隔室を、制御ユニットとボタンとの間に配置すると、著しく省スペースな構成を達成することができる。
【0020】
通常、カバーが、電源用の隔室を覆うために設けられる。カバーは、好ましくは、ボーリング・ヘッドに、たとえばねじを用いて、取外し可能に取り付けられ、それによって、電源を、必要時に容易に交換することができる。電子ユニットがボタンも備える場合には、ボタンは、好ましくは、隔室のカバーによって形成される。電子ユニットのそのような設計は、著しく省スペースである。
【0021】
ボタンの機能の原理は、好ましくは、ピエゾ要素に基づく。ピエゾ要素は、ユーザによるボタンの操作を検出するように適合されている。ピエゾ要素を用いることによって、マイクロメートルの範囲にすらなり得るボタンの最小限の動きを、通常、検出することができる。そのようなボタンによって、ボーリング・ヘッドの著しく厳密なシールを達成することができる。ピエゾ要素は、有利には、電源用隔室と、ボタンを形成するカバーとの間に配置される。
【0022】
好ましくは、ピエゾ要素は、ピエゾ・ダイヤフラムとして形成される。特に好ましい実施形態では、ピエゾ・ダイヤフラムは、異方導電性接着剤を用いて制御ユニットへ接続される。電子ユニットは、ピエゾ・ダイヤフラムが、取り付けられ、異方導電性接着剤によって接続されるピエゾ・ボードをさらに備え得る。異方導電性接着剤とは、好ましくは、それ自体は非導電性であるが、その中に導電性粒子が埋め込まれている、膠などの接着剤である。2つの構成要素、すなわちピエゾ・ダイヤフラムとピエゾ・ボードとを合わせて、任意選択で温度の影響下(熱圧着)で、押圧して互いに接着させると、間に配置された異方導電性接着剤が圧縮され、その結果、導電性粒子の少なくとも一部が、両方の構成要素に接触するようになるか、又は、2つの構成要素間の導電性ブリッジが、導電性粒子によって形成される。ピエゾ・ダイヤフラムを制御ユニットへ、特に、ピエゾ・ボードへ接続するために異方導電性接着剤を使用することによって、著しく強固かつ省スペースなピエゾ・ダイヤフラムの接続を達成することができる。
【0023】
異方導電性接着剤を用いて、ピエゾ・ダイヤフラムを制御ユニット又は接続要素へ、特に、PCBへ接続するという原理は、基本的に、他のボーリング・ヘッドに適用することもできることに留意されたい。この原理を適用するのに適しているそれぞれのボーリング・ヘッドは、通常、ピエゾ・ボタンを有するが、構成がコンパクトなディスプレイ又は電子ユニットを備えることを必ずしも必要としない。したがって、異方導電性接着剤を用いて、ピエゾ・ダイヤフラムを制御ユニット又は接続要素へ接続するという原理は、別の独立した発明に相当する。
【0024】
ピエゾ・ボードは、プリント回路基板の形態を有し得る。好ましくは、ピエゾ・ボードは、電源用の隔室とピエゾ要素との間に配置される。
【0025】
特に好ましい実施形態では、ボーリング・ヘッドが、半径方向に変位可能なインサート・ホルダと、インサート・ホルダの半径方向変位を測定するセンサとを備える。センサは、好ましくは、制御ユニットへ接続され、制御ユニットは、インサート・ホルダの半径方向変位がディスプレイによって表示されるようにディスプレイを制御するように適合されている。
【0026】
電子ユニットは、有利には、制御ユニット、ディスプレイ、電源用の隔室、及び、好ましくはさらに、ボタンがその中又は上に配置されたケーシングを備える。そのようなケーシングを設けることによって、ボーリング・ヘッドの他の部分から独立して製造することができる著しくコンパクトな電子ユニットを達成することができる。すなわち、そのような実施形態では、制御ユニット、ディスプレイ、電源用の隔室、及び、好ましくはさらに、ボタンを一体として有するケーシングが、たとえば少数の固定ねじのみによって本体に取り付けることができる、ボーリング・ヘッドの独立したサブアセンブリを形成する。
【0027】
制御ユニットは、好ましくは、プリント回路基板(PCB)として形成される。PCBは、有利には、信号処理ユニット及び/又はメモリ・チップを備える。
【0028】
PCBは、有利には、電子ユニットの側壁を形成する。PCBは、特に、電子ユニットの背面、すなわち背面壁を形成することができる。
【0029】
好ましい実施形態では、PCBとケーシングとが一体になって電子ユニットの内部空間を形成し、その内部空間内に、ディスプレイ、及び電源用の隔室が配置され、特に、完全に前記内部空間内に配置される。ボタンの電子要素、たとえばピエゾ要素は、好ましくは、この内部空間内にやはり配置される。
【0030】
電子ユニットは、好ましくは、コンピュータ又は携帯電話など、外部装置と無線通信するように適合されている。電子ユニットは、特に、「BLE(Bluetooth Low Energy)」規格に則った無線通信に適合させることができる。データを制御ユニットから外部装置へ無線で送信するために、電子ユニットは、好ましくは、アンテナを備える。有利には、電子ユニットのケーシングの窓が、アンテナ放射を外部へ伝播するために使用される。すなわち、アンテナは、ケーシングの窓を通して電磁波を放射するように適合されている。窓は、好ましくは、ユーザがディスプレイを見ることを可能にするディスプレイ窓である。有利には、アンテナは、PCBに組み込まれた高周波(RF)グランド・プレーンと、電子ユニットのケーシングによって形成される導電性要素とを備える。グランド・プレーン及び導電要素が、アンテナの2つの分枝を形成する。グランド・プレーンは、有利には、ディスプレイ窓の背面に直接配置される。別法として、やはり好ましい実施形態だが、アンテナ全体を、PCBに組み込むことができる。そのような場合、アンテナは、有利には、ディスプレイ窓の背面に直接配置され、それによって、電磁波を、アンテナからディスプレイ窓を通して外部へ放射することができる。
【0031】
本体は、好ましくは、半径方向に好ましくは開口する窪み部を備える。電子ユニットは、有利には、その窪み部内に配置される。窪み部は、好ましくは、ヘッド部に設けられ、特に、ヘッド部の本質的に円筒形の側壁内に設けられる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照して以下に説明され、それら図面は、本発明の好ましい現実施形態を例示するためのものであり、本発明の実施形態を限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態によるボーリング・ヘッドの透視図である。
図2図1のボーリング・ヘッドの上面図である。
図3図1のボーリング・ヘッドの、一部が中心で切り欠かれた、側面図である。
図4図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの正面の、電池カバーを除いた、平面図である。
図5図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの正面の、電池カバーを除いた、透視図である。
図6図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの背面の、電池カバーを除いた、透視図である。
図7図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの背面の、電池カバーを除いた、図4に示された線VII-VIIに沿った断面透視図である。
図8図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの、電池カバーを除いた、分解組立透視図である。
図9図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの電池カバーの正面の平面図である。
図10図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの電池カバーの正面の透視図である。
図11図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの電池カバーの背面の透視図である。
図12図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの電池カバーの断面図である。
図13】電池カバーの製造中、押圧前の、図12で破線によって示した領域の拡大図である。
図14】電池カバーの製造中、押圧後の、図12で破線によって示した領域の拡大図である。
図15図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの電池カバーの正面の組立分解透視図である。
図16図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットの電池カバーの背面の分解組立透視図である。
図17】一体組込式アンテナを用いてデータを無線で発信するときの、図1のボーリング・ヘッドの透視図である。
図18図1のボーリング・ヘッドの電子ユニットのPCBの正面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から18に、本発明のボーリング・ヘッド1の好ましい実施形態、あるいはその実施形態の1つ又は複数の部品が示されている。
【0035】
図1に示されるように、ボーリング・ヘッド1は、全体を単体として製作された本体2を備える。本体2は、一般的に円筒形のステム部3と、本質的に円筒形のヘッド部4とを備える。ヘッド部4より小さい直径を有するステム部3は、工作機械のスピンドルなどの駆動源にボーリング・ヘッド1を接続する働きをする。ボーリング・ヘッド1の作動に際し、図示されていない駆動源は、ボーリング・ヘッド1に回転運動を行わせる。このために、ステム部3は、トルクに耐えられるように駆動源に取り付けられ、それによって、ボーリング・ヘッド1は、駆動源の回転運動を切削インサート14へ伝達することができ、その切削インサートは、切屑生成式の金属切削に、すなわち機械加工される被工作物に直接作用するように適合されている。
【0036】
ボーリング又はミリング・マシンの駆動源に、トルクに耐えられるようにボーリング・ヘッド1を固定するために、ボルト7が、ステム部3に取外し可能に配置されている。ボルト7は、ステム部3を貫通して横向きに、すなわち半径方向に延在する。
【0037】
ステム部3及びヘッド部4の本質的に円筒形の形状によって、ボーリング・ヘッド1の中心長手方向軸及び半径方向が定まる。中心長手方向軸は、正規使用におけるボーリング・ヘッド1の回転軸と一致する。
【0038】
ボーリング・ヘッド1のヘッド部4は、ヘッド部4を貫通して直径方向に延在する横向き、すなわち半径方向のチャネルを備える。このチャネル内に、プランジャの形態の工具キャリヤ10が配置されている(図3参照)。インサート・ホルダ11が、チャネルの外側で、工具キャリヤ10の第1の端面に取り付けられている。インサート・ホルダ11は、締付ねじ12を用いて工具キャリヤ10に取り付けられている。インサート・ホルダ11は、切屑生成式の金属切削のために被工作物に直接作用するように適合された切れ刃を有する切削インサート14を保持する。切削インサート14の切れ刃が、半径方向に沿って、ボーリング・ヘッド1の最も外側の部分になる。
【0039】
調節ねじ13が、工具キャリヤ10の第2の端面に取り付けられ、その調節ねじによって、工具キャリヤ10を半径方向に変位させることができる。調節ねじ13は、対応する6角キーを用いて調節ねじ13を回転させるための6角形のソケットを有する。調節ねじ13を回転させると、工具キャリヤ10が、半径方向に変位する。工具キャリヤ10の大まかな変位をユーザに示すために、目盛を任意選択で調節ねじ13上に印すことができる。
【0040】
ヘッド部4に、たとえば、このボーリング・ヘッド1と組み合わせて使用することができる様々な切削インサート14及び/又はインサート・ホルダ11に関する情報など、ある程度の情報をユーザに与えるために、刻印6を設けることができる。
【0041】
工具キャリヤ10の長手延在方向に対して垂直方向に向いたヘッド部4の側面に、窪み部5が設けられている。窪み部5は、ヘッド部4の、外向きに開放された直方体の内部空間を形成する。窪み部5の内部空間は電子ユニット20を収納する役割を果たす。
【0042】
電子ユニット20は、工具キャリヤ10の実際の半径方向変位を計算し、対応する変位値をディスプレイ30上でユーザに示す働きをする。このために、電子ユニット20は、普通の電池41用の電池隔室26、ディスプレイ30、プッシュ・ボタン49、及びプリント回路基板(PCB)60を備える。電子ユニット20のそれら電気構成要素の全てが、内部で相互に接続され、それによって、電池41が、電力をPCB60及びディスプレイ30に供給することができ、ユーザが、プッシュ・ボタン49を押すことによってPCB60の信号処理、したがってディスプレイ30の表示に影響を及ぼすことができる。電子ユニット20全体が、ボーリング・ヘッド1のヘッド部4内に組み込まれている。
【0043】
工具キャリヤ10の実際の半径方向変位を測定するために、測定領域15が、図3に見ることができるように、工具キャリヤ10に設けられている。測定領域15は、静止センサ16に直接隣接して配置され、その静止センサ16は、そのセンサ16に対する測定領域15の半径方向変位を測定するように適合されている。たとえば、センサ16はホールセンサ又は異方性磁気抵抗であり、測定領域15は永久磁石であり得る。
【0044】
センサ16は、電子ユニット20のPCB60に電気的に接続され、それによって、工具キャリヤ10の実際の変位を反映する信号をPCB60に伝達することができる。PCB60は、その背面に接点要素又は接点面を備え、それらが、センサ16に接続されたそれぞれの接点要素に接触する。
【0045】
図4~7に見られるように、電子ユニット20は、全体として、ヘッド部4の窪み部5に嵌まり込む本質的に直方体の外形を有する。電子ユニット20の外形は、全体として金属から単体として製作された電子ケーシング21によって、主として形成される。電子ケーシング21は、ディスプレイ30及び電池隔室26がその中に完全に配置される内部空間を有する。この内部空間は、電子ケーシング21、ならびに電子ユニット20の背面を形成するPCB60が、境界を画する。このように、全体として、電子ユニット20は、コンパクトな構造を有する。
【0046】
電子ケーシング21は、本質的に矩形の外周側方フレームを形成し、そのフレームが、窪み部5の側壁に対して、電子ユニット20及びその電子構成要素の側方を画定する。電子ケーシング21の内部空間は、2つの隔室、すなわちディスプレイ30を収容する第1の隔室及び電池41を収容する第2の隔室に分割される。内部空間の両隔室は、側面を全ての方向において電子ケーシング21によって画定され、背側をPCB60によって画定される。前方では、内部空間の第1の隔室は、電子ケーシング21によって形成された矩形のディスプレイ窓25に挿入された透明なディスプレイ・カバー・ガラス31によって画定される(図4及び7参照)。内部空間の第2の隔室は、取外し可能な電池カバー28(図3)によって前方を画定され、それによって、電池隔室26が、電池カバー28とPCB60との間に配置される。
【0047】
電子ユニット20をボーリング・ヘッド1のヘッド部4に取り付けるために、図4~6に見られるように、ねじ穴22が、電子ケーシング21の各角部に設けられている。PCB60は、対応する切除部を各角部に備える(図6)。電子ユニット20をボーリング・ヘッド1の本体2に固定するために、固定ねじ24(図1)が、ねじ穴22に通され、対応して本体2にこのために設けられたそれぞれのねじ穴にねじ込まれる。このように、電子ユニット20は、ボーリング・ヘッド1のその他の部分から完全に独立して製造することができる、ボーリング・ヘッド1のコンパクトなサブアセンブリを形成する。その製造後に、電子ユニット20全体を、固定ねじ24を用いて本体2に簡単にねじ止めすることができる。
【0048】
完全に組み立てられた電子ユニット20について全体が本質的に平坦な前面を達成するために、電子ケーシング21は、電池隔室26の領域の前面に、電池カバー28を収容するための窪み部を備える。窪み部は、電池カバー28によって側方が完全に埋め尽くされるように、かつ、電池カバー28の前面が、隣接する電子ケーシング21の前面と同一平面になるように寸法設定される。ねじ穴23が、固定ねじ48を用いて電池カバー28を電子ケーシング21に固定するために、電子ケーシング21に設けられている。
【0049】
図8にその構成が見られるディスプレイ30は、ディスプレイ・カバー・ガラス31と、分離フォイル32と、液晶ディスプレイ(LCD)33と、2つのゼブラ・ストリップ・コネクタ34とを備える。
【0050】
ディスプレイ・カバー・ガラス31は、電子ケーシング21のディスプレイ窓25に配置され、外部の機械的影響、埃粒子、及び湿気からLCD33を保護する働きをする。分離フォイルは、ディスプレイ・カバー・ガラス31とLCD33との間に配置される。
【0051】
LCD33は、工具キャリヤ10、したがって切削インサート14の半径方向変位をユーザに示す働きをする。このために、LCD33は、ゼブラ・ストリップ・コネクタ34によって、PCB60に設けられた一連のコネクタ面に電気的に接続される。ゼブラ・ストリップ・コネクタ34は、同時に、LCD33をディスプレイ・カバー・ガラス31及びディスプレイ窓25の近くに配置するためのスペーサとして働く。
【0052】
電子ユニット20の制御ユニットを形成するPCB60には、様々な電子構成要素64が配置され、それら構成要素は、対応する導体トラックによって相互に接続されている。PCB60の電子構成要素64には、通常、センサ16から受け取った入力信号をディジタル・データに変換するアナログ・ディジタル・コンバータと、そのディジタル・データを処理し、対応する入力信号をLCD33に送る信号処理ユニットとが含まれる。PCB60は、測定された変位データを記憶するメモリ・チップをさらに備え得る。電子構成要素64は、好ましくは、PCB60の背面に配置される。
【0053】
PCB60の前側に、電池41に接触する接点要素62及び63が設けられ、すなわち、電池41の第1の極に接触する底面電池接点62及び電池41の第2の極に接触する側面電池接点63であり、電池は、この場合、ボタン電池、特にCR1025リチウム電池の形態を有する。
【0054】
さらに別の接点要素61が、PCB60の前側に設けられ、その接点要素はプッシュ・ボタン49に接触する働きをする。プッシュ・ボタン49を取外し可能な電池カバー28に一体化することにより、接点要素61は、ばね接点として構成され、電池カバーについては以下に詳細に説明される。
【0055】
3本の固定ねじ65及びアンテナ接続ねじ66(これのさらに別の機能は後に説明する)を用いてPCB60を電子ケーシング21に固定するために、PCBは、電子ケーシング21の背面に設けられたねじ穴27に対応するねじ穴69を備える。主シーリング68が、電子ユニット20及びボーリング・ヘッド1の内部に埃粒子及び湿気が入るのを防止するために、電子ケーシング21とPCB60との間に設けられる。
【0056】
電子ユニット20の内部空間の第2の隔室が、ボタン電池41を収容する電池隔室26を備える。図7及び8に見られるように、電池ケーシング42が、第2の隔室内に配置される。電池ケーシング42は、プラスチックなどの非導電性材料から製作され、電池隔室26の側方、及び少なくとも部分的に背面側を画定する。下側電池シーリング46が、電池ケーシング42をPCB60及び電子ケーシング21に対してシールするために設けられ、上側電池シーリング45が、電池ケーシング42を電池カバー28及び電池ケーシング42に対してシールするために設けられている。
【0057】
電池ケーシング42は、背面に開口を備え、それによって、底面電池接点62及び側面電池接点63が、電池隔室26内に突出して、電池41に接触することができる。
【0058】
プッシュ・ボタン49も形成する電池カバー28の構造が、図9~16に示される。電池カバー28は、全体を単体として金属から製作されたカバー・プレート40を備える。このカバー・プレート40は、プッシュ・ボタン49を形成する中央隆起部を前側にもつ、実質的に平坦な形状を有する。
【0059】
3つのねじ穴47が、電池カバー28のカバー・プレート40に設けられている。ねじ穴47は、固定ねじ48を用いて電池カバー28を電子ケーシング21に取外し可能に固定するのに使われる。
【0060】
カバー・プレート40は、その背面に窪み部43を備え、その窪み部43内にさらに別の窪み部44がある(図16参照)。窪み部43及び44は、ピエゾ・ダイヤフラム50、ピエゾ・ボード53、及び電池スペーサ57を収容する働きをする。窪み部43は、形状及び寸法においてピエゾ・ボード53に対応し、ピエゾ・ボード53を収容するように適合されている。窪み部44は、その円形及び寸法においてピエゾ・ダイヤフラム50に対応し、ピエゾ・ダイヤフラム50を収容する働きをする。ピエゾ・ダイヤフラム50及びピエゾ・ボード53は、プッシュ・ボタンの電子構成要素になり、電池隔室26とカバー・プレート40との間に配置される。
【0061】
ピエゾ・ダイヤフラム50は、当業者には周知の通り、金属ディスク51及び金属ディスク51の背面に付着されたセラミック基板52をもつ構造を有する。金属ディスク51は、窪み部44の深さとほぼ同じ厚さを有する円形のフォイルである。セラミック基板52は、円形の表面コーティングとして金属ディスク51に同心に付着されている。特に、プッシュ・ボタン49に作用する押力負荷によって生じる、ピエゾ・ダイヤフラム50の僅かな撓み又は変形が、金属ディスク51とセラミック基板52との間で測定される電圧の変化を生じる。PCB60は、ピエゾ・ダイヤフラム50のそのような電圧の変化を検出するように適合されている。
【0062】
PCB60の接点要素61への金属ディスク51及びセラミック基板52の電気接続は、ピエゾ・ボード53を介して達成される。このために、プリント回路基板として設計されているピエゾ・ボード53は、前側に、金属ディスク51の外周に接触する環状接点面54と、セラミック基板52に接触する中央接点面55とを備える。環状接点面54及び中央接点面55は、それぞれ、ピエゾ・ボード53の背面に配置されたそれぞれの接点面56へピエゾ・ボード53内で接続されている。電池カバー28が電子ケーシング21へ適切に取り付けられると、接点面56は、それぞれ、PCB60の接点要素61の1つと接触状態になり、それによって、ピエゾ・ダイヤフラム50からの電気信号をPCB60へ伝送する。
【0063】
電池スペーサ57が、たとえば接着剤を用いて、ピエゾ・ボード53の背面に取り付けられる。電池スペーサ57は、非導電性プラスチック材から製作され、電池41がピエゾ・ボード53に接触するのを防止する。
【0064】
電池カバー28の製造プロセスにおいて極めて重要なステップが、図13及び14に示されている。ピエゾ・ボード53を、異方導電性接着剤58によって、ピエゾ・ダイヤフラム50及びカバー・プレート40に取り付ける様子が図示される。すなわち、異方導電性接着剤58を、ピエゾ・ダイヤフラム50及びカバー・プレート40の背面、又はピエゾ・ボード53の前面のどちらかに塗布する。それぞれの構成要素を、次いで、意図通りに一体に組み、それによって、異方導電性接着剤58を、ピエゾ・ボード53、ピエゾ・ダイヤフラム50、及びカバー・プレート40のそれぞれと接触させる。異方導電性接着剤58に埋め込まれた導電性粒子59が、相互に離れて配置され、どの導電性粒子59もピエゾ・ボード53及びピエゾ・ダイヤフラム50の両方には接触していない。その結果、異方導電性接着剤58は、全ての方向に非導電性である。
【0065】
次いで、電池カバー28を、カバー・プレート40とピエゾ・ボード53とを互いに近付けるような方向に押圧する(図14)。押圧は、任意選択で、通常180~200℃の温度の影響下で実施することができる(熱圧着)。それによって、導電性粒子59も共に移動させられ、その結果、ピエゾ・ダイヤフラム50の金属ディスク51及びセラミック基板52から、ピエゾ・ボード53のそれぞれの接点面54及び55に届く導電性ブリッジが、導電性粒子59によって形成される。ピエゾ・ダイヤフラム50とピエゾ・ボード53とは、図14に示すように、1つの導電性粒子59だけでピエゾ・ダイヤフラム50とピエゾ・ボード53との両方に接触するようになるほどの近さにまで相互に移動させることができる。このように、電池カバー28のこの押圧された最終位置において、一方で、ピエゾ・ダイヤフラム50の金属ディスク51とピエゾ・ボード53の環状接点面54との間、他方で、ピエゾ・ダイヤフラム50のセラミック基板52とピエゾ・ボード53の中央接点面55との間に、異方導電性接着剤58によって電気接触が確立される。しかしながら、異方導電性接着剤58は、上記に対して垂直な方向には非導電性のままである。
【0066】
ピエゾ・ダイヤフラム50をピエゾ・ボード53に取り付けるために異方導電性接着剤58を使用することによって、著しく安全かつ省スペースな、これら2つの構成要素間の機械的及び電気的接続を達成することができる。
【0067】
本実施形態のプッシュ・ボタン49の機能は、プッシュ・ボタン49を最初に押すと、電子ユニット20及び特にディスプレイ30にスイッチが入り、2度目に1秒より長く続けてプッシュ・ボタン49を押すと、ディスプレイ30上の半径方向変位の表示がゼロ値にリセットされるように、PCB60において、プログラムされている。
【0068】
本実施形態によるボーリング・ヘッド1は、データ信号を電子ユニット20から、コンピュータ、携帯電話、又は調節ねじ13を調節する調節器具などの外部装置へ無線で送信するように適合されている。このように、切削インサート14の半径方向変位のデータは、ディスプレイ30上に表示するだけではなく、外部装置上にも表示することができる。
【0069】
図17及び18は、データ信号を外部装置へ無線で送信することに対するボーリング・ヘッド1の適応形態を示す。このために、ボーリング・ヘッド1は、電磁波を送出するように適合されたアンテナを有する送信装置を備える。本実施形態では、送信ユニットは、「BLE」規格に則って外部装置と無線で通信するように適合されている。当然、他の無線通信規格を適用することもでき、その場合、ボーリング・ヘッド1及び特に送信ユニットはそれに従って適合されることになる。
【0070】
送信ユニットは、また、PCB60に配置された、2.4GHzのブルートゥース信号を発生させるためのブルートゥース・マイクロコントローラと、一連のインダクタ及びキャパシタを有する整合回路とを備え、その整合回路は、エネルギー損失を最小限に抑えるために、アンテナからのインピーダンスをブルートゥース・マイクロコントローラのインピーダンスに整合させ、双方向共に同じ50Ωのインピーダンスに整合させる。
【0071】
図17に示されるように、ディスプレイ窓25が、電子ユニット20から外部装置へ電磁アンテナ放射70を送出するために使用される。このように、アンテナ放射70は、ディスプレイ窓25を通してボーリング・ヘッド1の外部へ送信される。
【0072】
本実施形態では、無線データ送信用のアンテナは、ディスプレイ窓25の後方領域でPCB60に組み込まれた内部の高周波(RF)グランド・プレーン67(図18参照)と、アンテナ接続ねじ66と、電子ケーシング21とによって形成されている。金属製、すなわち導電性の電子ケーシング21は、空間に露出したアンテナの導電性要素になる。グランド・プレーン67と、導電性要素、すなわち電子ケーシング21とが、アンテナの2つの分枝を形成する。アンテナ接続ねじ66は、PCB60と、導電性要素、すなわち電子ケーシング21との接続要素として働く。したがって、アンテナ接続ねじ66は、導電性材料、すなわちアルミニウムなどの金属から製作され、他方、固定ねじ65はいかなる材料から製作してもよく、プラスチック材又はチタンなどの低導電性材料又は非導電性材料から製作してもよい。アンテナ接続ねじ66をPCB60のアンテナ給電部へ接続するために、PCB60は、対応するねじ穴69を取り巻く接点面を備える。本実施形態では、グランド・プレーン67は、ディスプレイ窓25の背面側の大部分を覆う矩形領域として設計されている。
【0073】
本発明は、当然、上述の実施形態に限定されず、多数の変更形態が可能である。たとえば、データを外部装置へ無線送信するアンテナは、ディスプレイ窓25の背後のセラミック・アンテナ、ディスプレイ窓25の背後のマイクロストリップ・アンテナ、特にPCB60上では、ディスプレイ窓25の背後のパッチ・アンテナ、又はディスプレイ窓25内に配置されたスロット・アンテナとして設計することができる。プッシュ・ボタン49は、必ずしも電池カバー28と一体ではなく、電池カバーとは独立に設けてもよい。ピエゾ要素を使用する代わりに、ボタンは、現況技術による他のいかなるボタンとして実現してもよい。代替実施形態では、ステム部3は、円錐形でもよく、断面が多角形でもよい。さらに、工具キャリヤ10の半径方向変位を測定するセンサ16及び測定領域15の機能は、代替として、光学式、静電容量式、又は電磁誘導式の測定に基づいてもよい。「ブルートゥース」規格によって無線通信する代わりに、発信ユニットは、ANT、ZigBee、又は他のいかなる規格によって通信することにも適合することができる。多数のさらに別の変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 ボーリング・ヘッド
2 本体
3 ステム部
4 ヘッド部
5 窪み部
6 刻印
7 ボルト
10 工具キャリヤ
11 インサート・ホルダ
12 締付ねじ
13 調節ねじ
14 切削インサート
15 測定領域
16 センサ
20 電子ユニット
21 電子ケーシング
22 ねじ穴
23 ねじ穴
24 固定ねじ
25 ディスプレイ窓
26 電池隔室
27 ねじ穴
28 電池カバー
30 ディスプレイ
31 ディスプレイ・カバー・ガラス
32 分離フォイル
33 LCD
34 ゼブラ・ストリップ・コネクタ
40 カバー・プレート
41 電池
42 電池ケーシング
43 窪み部
44 窪み部
45 上側電池シーリング
46 下側電池シーリング
47 ねじ穴
48 固定ねじ
49 プッシュ・ボタン
50 ピエゾ・ダイヤフラム
51 金属ディスク
52 セラミック基板
53 ピエゾ・ボード
54 環状接点面
55 中央接点面
56 接点面
57 電池スペーサ
58 接着剤
59 導電性粒子
60 PCB
61 接点要素
62 底面電池接点
63 側面電池接点
64 電子構成要素
65 固定ねじ
66 アンテナ接続ねじ
67 グランド・プレーン
68 主シーリング
69 ねじ穴
70 アンテナ放射

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18