(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】ガス遮断装置
(51)【国際特許分類】
G01F 3/22 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
G01F3/22 B
(21)【出願番号】P 2019067684
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 龍志
(72)【発明者】
【氏名】栗本 由子
(72)【発明者】
【氏名】木場 康雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 廣純
(72)【発明者】
【氏名】越智 毅
(72)【発明者】
【氏名】川口 圭史
(72)【発明者】
【氏名】談議 康晴
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025411(JP,A)
【文献】特開2001-318019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01F 15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測流路を流通するガス流量を計測する流量計測部と、
前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、
前記計測流路の開閉を行う遮断部と、
入力部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記遮断部により前記計測流路が閉状態となっている状態において、前記入力部により、前記ガスの遮断解除を指示する遮断解除指示が入力されたとき、前記湿度センサにより検知された値が所定値未満か否か判定するとともに、所定値未満であると判定した場合、前記計測流路を閉状態から開状態に切り換えるように前記遮断部を制御するガス遮断装置。
【請求項2】
前記所定値は、湿度50%である、請求項1に記載のガス遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流量を計測する流量計測部を備え、冠水したときであっても、流量計測部により暫定的にガス流量を計測可能とするガス遮断装置(ガスメータ)に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス遮断装置は、通常、何らかの異常をセンサによって検知したとき、遮断部によってガスを遮断するように構成されている。これによって、ガスの供給を停止させることができる。このため、地震または洪水等の有事が発生すると、この有事の発生事象をセンサが検知して、この検知結果に基づき遮断部によってガスが遮断される。
【0003】
ところで、地震または洪水等の有事が発生するとガス遮断装置が冠水する場合がある。ガス遮断装置が冠水した場合、ガス遮断装置を取り替える必要がある。しかしながら、有事において短時間でガス供給網に設置された冠水したガス遮断装置を全て取り替えることは困難である。このため、有事発生後は、ガスが遮断され、長期に渡りガスが使用できない状態が継続する可能性がある。
【0004】
この場合、応急的にガスの使用を可能とすることで人々の生活の助けとなる場合がある。そこで、特許文献1では、計測流路内が浸水した状態であっても、ガス流量の計測を再開させて暫定的な使用を可能とするガス遮断装置が提案されている。
【0005】
特許文献1に開示されたガス遮断装置は、遮断部によるガスの遮断を強制的に解除することができるとともに、強制的に解除した後は、遮断部によるガスの再遮断を一定期間禁止するように構成されている。この構成により、有事においてガス遮断装置の暫定使用を可能とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示のガス遮断装置は、遮断部によるガスの遮断後において操作者が操作入力部によって特別操作等を行うことによりガスの遮断を強制解除することができる構成である。このため、ガスの遮断を強制解除するタイミングは操作者の判断に委ねられている。
【0008】
しかしながら、冠水によりガス遮断装置の計測流路内に看過できない量の水が残存する場合がある。このような場合にガスの遮断を強制解除してしまうと、流量計測が異常になったり、ガス遮断装置が故障したり、ガス遮断装置と室内管を介して接続されている、需要家に設置されているガス機器が故障したりして暫定的な使用を行うことができない場合がある。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、冠水時において適切なタイミングでガスの遮断を強制解除することができるガス遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るガス遮断装置の一態様(aspect)は、計測流路を流通するガス流量を計測する流量計測部と、前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、前記計測流路の開閉を行う遮断部と、入力部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記遮断部により前記計測流路が閉状態となっている状態において、前記入力部により、前記ガスの遮断解除を指示する遮断解除指示が入力されたとき、前記湿度センサにより検知された値が所定値未満か否か判定するとともに、所定値未満であると判定した場合、前記計測流路を閉状態から開状態に切り換えるように前記遮断部を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、以上の構成により、冠水時において適切なタイミングでガスの遮断を強制解除することができるガス遮断装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係るガス遮断装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すガス遮断装置の遮断解除判定処理に関する構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すガス遮断装置による遮断解除判定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の一形態を得るに至った経緯)
地震または洪水等の有事が発生し、ガス遮断装置(ガスメータ)が冠水した場合、ガス遮断装置は、圧力センサまたは感震センサなどのセンサの検出値に基づき、遮断部によって計測流路を閉じてガスの供給を遮断するように構成されている。
【0014】
ところで本発明者らはこのような有事において、ガス遮断装置の計測流路内から水がある程度排水されていれば、短期間なら応急的に遮断部を開いて、ガスの供給を再開できるように構成されている方が好適であることを見出した。
【0015】
そこで、本発明者らは、有事の発生後において暫定使用を可能とする特許文献1に開示されたガス遮断装置について鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
【0016】
すなわち、特許文献1に開示されたガス遮断装置は、遮断部によるガスの遮断を強制的に解除することができるとともに、強制的に解除した後は、遮断部によるガスの再遮断を一定期間禁止するように構成されている。
【0017】
しかしながら、ガスの遮断の強制的な解除は、操作者の入力に応じて行われており、ガス遮断装置の計測流路内の排水状況によっては、操作者の入力に応じて、ガスの遮断の強制的な解除を行うと、流量計測が異常になったり、ガス遮断装置が故障したり、ガス遮断装置と室内管を介して接続された、需要家内に設置されたガス機器が故障したりする可能性があることを見出した。
【0018】
また、近年では計測流路内の湿度を検知する湿度センサが設けられたガス遮断装置が利用されている。そこで、本発明者らは、湿度センサによって検知された値に基づき、ガス遮断装置の計測流路内の排水状況を推定することができることを発見した。そして、湿度センサによって検知された値に基づき、ガスの遮断の解除を許可するか否か判定することができる構成とすることで、不適切なタイミングで計測流路を強制的に閉状態から開状態としてしまうことを防ぐことができることを見出した。
【0019】
具体的には、湿度センサによって検知された湿度の値が所定値未満であると判定した場合、操作者によるガスの遮断の強制的な解除指示に応じて、ガスの遮断を強制的に解除することを許可する構成とする。
【0020】
一方、湿度センサによって検知された湿度の値が所定値以上であると判定している間は、ガス遮断装置の計測流路内に看過できない量の水が残存すると判断する。そして、操作者によるガスの遮断の強制的な解除指示を受け付けたとしても、ガスの遮断を強制的に解除することを許可せず、遮断部により計測流路を閉状態のまま維持する。
【0021】
このように構成することで、冠水後のガス遮断装置の計測流路内の排水状況を確認し、適切なタイミングでガスの遮断を強制解除することができることを見出した。
【0022】
上記した本発明者等の知見は、これまで明らかにされていなかったものであり、顕著な作用効果を奏する新規な技術的特徴を有するものである。そこで、本発明は具体的には以下に示す態様を提供する。
【0023】
本発明の第1の態様に係るガス遮断装置は、計測流路を流通するガス流量を計測する流量計測部と、前記計測流路内の湿度を検知する湿度センサと、前記計測流路の開閉を行う遮断部と、入力部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記遮断部により前記計測流路が閉状態となっている状態において、前記入力部により、前記ガスの遮断解除を指示する遮断解除指示が入力されたとき、前記湿度センサにより検知された値が所定値未満か否か判定するとともに、所定値未満であると判定した場合、前記計測流路を閉状態から開状態に切り換えるように前記遮断部を制御する。
【0024】
上記構成によると、制御部は、湿度センサにより検知された値に基づき計測流路を閉状態から開状態に切り換えるか否か判定するように構成されている。このため、計測流路内の排水状態を考慮して、ガスの遮断を強制解除するか否か判定することができる。
【0025】
よって、本発明の第1の態様に係るガス遮断装置は、冠水時において適切なタイミングでガスの遮断を強制解除することができるという効果を奏する。
【0026】
本発明の第2の態様に係るガス遮断装置は、上記した第1の態様において、前記所定値は、例えば湿度50%であってもよい。
【0027】
また、現場に合わせて前記所定値を外部より設定変更できる構成としてもよい。
【0028】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0029】
[ガス遮断装置の構成]
本実施の形態に係るガス遮断装置100は、
図1に示すように、流量計測部20と、制御部21と、入力部22と、遮断部23と、湿度センサ24とを備えた、ガスメータである。
図1は、本発明の実施の形態に係るガス遮断装置100の構成例を示すブロック図である。
【0030】
ガス遮断装置100では、計測流路11は、ガスの流れ方向において上流側の端部で公道下に敷設された本管(不図示)あるいはプロパンガス等のガス管等と接続されている供給管10と第1接続部25を介して接続されている。一方、計測流路11は、下流側の端部で、需要家に引き込まれる室内管12と第2接続部26を介して接続されている。
【0031】
計測流路11には、上流側から順に遮断部23、湿度センサ24、および流量計測部20が設けられている。
【0032】
遮断部23は、計測流路11の開閉を行う装置であり、制御部21からの制御指示に応じて計測流路11を閉状態としたり、開状態としたりする。遮断部23は、例えば、電磁遮断弁または開閉双方向に駆動できるモータ式遮断弁等を挙げることができる。遮断部23は、地震など有事の発生時には、制御部21から送信された電気信号に応じて計測流路11を遮断する構成としてもよいし、感震器(不図示)の動作に応じて、計測流路11を遮断する構成としてもよい。
【0033】
湿度センサ24は、計測流路11内の湿度を検知する装置であり、検知された値は制御部21に送信される。
【0034】
流量計測部20は、計測流路11を流通する単位時間当たりのガスの流量を計測する装置である。流量計測部20は膜式ガスメータであってもよいし超音波式ガスメータであってもよい。あるいは、例えば、電子的な検出原理を利用したフローセンサ、あるいはフルイディック方式等の瞬時流量計によってガス流量を求めるように構成されていてもよい。流量計測部20によって計測されたガス流量値は制御部21に送信される。
【0035】
制御部21は、ガス遮断装置100が備える各部の各種制御を行うものであり、CPU等の演算部(不図示)、及びROM、RAM等の記憶部(不図示)を備えている。記憶部には、例えば、ガス遮断装置100の基本プログラム及び各種固定データ等の情報が記憶されており、演算部はこの基本プログラム等を読み出して実行することにより、制御部21は各部の動作を制御する。なお、制御部21は、集中制御する単独の制御部によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御部によって構成されていてもよい。
【0036】
入力部22は、操作者がガス遮断装置100を操作するためのユーザインターフェイスである。本実施の形態に係るガス遮断装置100では、操作者が入力部22を操作して、操作指示信号を入力できる構成となっている。入力部22は、例えば、操作ボタン、操作レバー、タッチパネル等が例示できる。
【0037】
また、入力部22を介して入力される操作指示信号としては、例えば、閉状態となった遮断部23を開状態に切り換えるように指示する遮断解除指示が例示できる。例えば、遮断部23によって計測流路11が閉状態にあるとき、操作者は入力部22を介して遮断解除指示を入力することで、遮断部23によって計測流路11を閉状態から開状態へと切り換えることができる。
【0038】
このように、本実施の形態に係るガス遮断装置100は、操作者によって入力部22を介して計測流路11を閉状態から開状態に切り換え、ガスの遮断を解除することができる構成である。ただし、計測流路11内において看過できない量の水が残存している状態で、操作者によって遮断解除指示が入力され、ガスの遮断が解除されると、ガス遮断装置100または需要家に設置されているガス機器において故障等の問題が生じる可能性がある。
【0039】
そこで、本実施の形態に係るガス遮断装置100では、操作者から入力部22を介して遮断解除指示を入力した場合であっても、ガスの遮断解除を許可するか否か判定するように構成されている(遮断解除判定処理)。
【0040】
[遮断解除判定処理]
次に、本実施の形態に係るガス遮断装置100における、遮断解除判定処理に関する構成および遮断解除判定処理について
図2、3を参照して説明する。
図2は、
図1に示すガス遮断装置100の遮断解除判定処理に関する構成の一例を示すブロック図である。
図3は、
図1に示すガス遮断装置100による遮断解除判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0041】
図2に示すように、制御部21は、遮断解除判定処理に関する機能ブロックとして遮断解除制御部31および遮断解除許可判定部32を備える。
【0042】
遮断解除制御部31は、計測流路11を閉状態から開状態に切り換えてガスの遮断を解除するように遮断部23を制御する。
【0043】
遮断解除許可判定部32は、入力部22から遮断解除指示が入力されると湿度センサ24によって検知された値に基づきガスの遮断解除を許可するか否か判定する。
【0044】
すなわち、
図3に示すように、有事の発生後、遮断部23により計測流路11が閉状態にあるときに、ガス遮断装置100を暫定使用するために、操作者が入力部22を操作してガスの遮断解除指示を入力する(ステップS11)。
【0045】
遮断解除許可判定部32は、計測流路11が閉状態にあるときに入力部22からガスの遮断解除指示を受け付けると、湿度センサ24により検知された値が所定値未満か否か比較して、ガスの遮断解除を許可するか否か判定する(ステップS12)。
【0046】
遮断解除許可判定部32は、湿度センサ24によって検知された値が所定値未満である場合(ステップS12において「Yes」)は、ガスの遮断解除を許可すると判定する(ステップS13)。そして、ガスの遮断解除を許可すると判定した場合、遮断解除許可判定部32は、ガスの遮断解除を許可する許可信号を遮断解除制御部31に送信する。
【0047】
遮断解除制御部31は、遮断解除許可判定部32から許可信号を受信すると、計測流路11を閉状態から開状態に強制的に切り換えるように遮断部23を制御する(ステップS14)。
【0048】
一方、遮断解除許可判定部32は、湿度センサ24によって検知された値が所定値以上である場合(ステップS12において「No」)は、ガスの遮断解除を許可しないと判定する(ステップS15)。
【0049】
ところで、ガスの遮断解除を許可するか否か判定する基準となる所定値は以下のように決定することができる。
【0050】
所定値は、例えば湿度50%とすることができる。ガス遮断装置100が設けられる現場に合わせてこの所定値を外部より設定変更できる構成となっていることが好適である。
【0051】
なお、遮断部23によって強制的に計測流路11が閉状態から開状態に切り換えられ、ガスの遮断が解除されると、一定期間はガスが再遮断されないように構成されていてもよい。
【0052】
また、遮断解除許可判定部32による遮断解除を許可する判定では、湿度センサ24によって検知された値に基づき判定する構成について記載した。しかしながら、例えば超音波センサによって計測される伝搬時間やゲイン値の値により流路内が空気の状態であると判定することを単独の条件として遮断解除を許可するように構成してもよい。あるいは超音波センサによって計測される伝搬時間やゲイン値の値に基づく判定と湿度センサ24によって検知された値に基づく判定との組み合わせによって、遮断解除を許可するように構成してもよい。
【0053】
本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、冠水等によりガス供給が遮断された状態であっても、ガス供給の遮断を強制解除する必要があるガス遮断装置等の分野に広く好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
11 計測流路
20 流量計測部
21 制御部
22 入力部
23 遮断部
24 湿度センサ
31 遮断解除制御部
32 遮断解除許可判定部
100 ガス遮断装置