(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】車両用ドアミラー
(51)【国際特許分類】
B60R 1/06 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
B60R1/06 D
(21)【出願番号】P 2019105095
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永友 正樹
(72)【発明者】
【氏名】江藤 康之
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213983(JP,A)
【文献】特開2016-117371(JP,A)
【文献】特開2009-248693(JP,A)
【文献】特開2014-104831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06 - 1/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー(11)が収容されるミラー収容凹部(13)を有するハウジング本体(14)と、前記ミラー収容凹部(13)の開放方向とは反対側から前記ハウジング本体(14)を覆う複数のカバー部材(16,17)とでミラーハウジング(12)が構成され、相互に係合される前記カバー部材(16,17)が前記ハウジング本体(14)に係合される車両用ドアミラー(11)において、
前記ハウジング本体(14)に近接する側に前記カバー部材(16,17)が撓むことを規制するようにして前記ハウジング本体(14)側に向かって突出する規制突部(58,59)が、複数の前記カバー部材(16,17)にそれぞれ突設され、前記複数のカバー部材(16,17)のうち相互に係合されるカバー部材(16,17)の一方に突設される第1の前記規制突部(58)が、他方のカバー部材(17)に突設されるとともに前記ハウジング本体(14)に当接する第2の前記規制突部(59)よりも短く形成されつつ前記第2の規制突部(59)に上下方向で重なって配置され、前記第2の規制突部(59)に、前記第1の規制突部(58)の先端部(58a)を近接、もしくは当接させる当接面(60)が形成され
、
前記ハウジング本体(14)に先端部(59a)を当接させる前記第2の規制突部(59)の基端部(59b)に、前記ハウジング本体(14)側の一端部を前記当接面(60)として閉じるとともに前記ハウジング本体(14)と反対側の他端部を開放した溝(61)が形成され、前記第1の規制突部(58)が前記溝(61)に嵌合されることを特徴とする車両用ドアミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーが収容されるミラー収容凹部を有するハウジング本体と、前記ミラー収容凹部の開放方向とは反対側から前記ハウジング本体を覆う複数のカバー部材とでミラーハウジングが構成され、相互に係合される前記カバー部材が前記ハウジング本体に係合される車両用ドアミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
相互に弾発係合される下側カバーおよび上側カバーが、ハウジング本体に弾発係合されるようにした車両用ドアミラーが、特許文献1で知られており、このものでは前記下側カバーおよび前記上側カバーの弾発係合状態が外力や振動によって外れてしまうことを防止するための構成が開示されるものの、相互に弾発係合した状態にある前記下側カバーおよび前記上側カバーの前記ハウジング本体への弾発係合が外力の作用によって外れてしまうことを防止するための構成は開示されていない。一方、ハウジング本体と、そのハウジング本体に係合される1つのカバー部材とでミラーハウジングが構成されるようにした車両用ドアミラーが、特許文献2で開示されており、このものでは、ハウジング本体へのカバー部材の係合状態が外力で解除されてしまうことを防止するために、カバー部材に突設された突起片をハウジング本体に係合、当接させることでカバー部材が外力の作用によっても撓まないようにし、それによってカバー部材のハウジング本体からの脱落を防止するようにしており、このような技術を適用することで、複数のカバー部材のハウジング本体からの脱落を防止することが可能になると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-117371号公報
【文献】特開2009-248693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献2で開示された技術を、複数のカバー部材がハウジング本体に係合されるようにした車両ドアミラーに単純に適用すると、前記ハウジング本体側に向かって突出するようにして複数のカバー部材に突設される規制突部を、ハウジング本体にそれぞれ当接させることになり、カバー部材の大型化、ひいてはミラーハウジングの大型化および重量増大を招いてしまう。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ミラーハウジングの大型化および重量増大を回避しつつ複数のカバー部材のハウジング本体への係合状態を維持し得るようにした車両用ドアミラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ミラーが収容されるミラー収容凹部を有するハウジング本体と、前記ミラー収容凹部の開放方向とは反対側から前記ハウジング本体を覆う複数のカバー部材とでミラーハウジングが構成され、相互に係合される前記カバー部材が前記ハウジング本体に係合される車両用ドアミラーにおいて、前記ハウジング本体に近接する側に前記カバー部材が撓むことを規制するようにして前記ハウジング本体側に向かって突出する規制突部が、複数の前記カバー部材にそれぞれ突設され、前記複数のカバー部材のうち相互に係合されるカバー部材の一方に突設される第1の前記規制突部が、他方のカバー部材に突設されるとともに前記ハウジング本体に当接する第2の前記規制突部よりも短く形成されつつ前記第2の規制突部に上下方向で重なって配置され、前記第2の規制突部に、前記第1の規制突部の先端部を近接、もしくは当接させる当接面が形成され、前記ハウジング本体に先端部を当接させる前記第2の規制突部の基端部に、前記ハウジング本体側の一端部を前記当接面として閉じるとともに前記ハウジング本体と反対側の他端部を開放した溝が形成され、前記第1の規制突部が前記溝に嵌合されることを第1の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、一方のカバー部材側の第1の規制突部が、他方のカバー部材側の第2の規制突部よりも短く、かつ第2の規制突部に上下方向で重なって配置されており、第1の規制突部の先端部が第2の規制突部に形成される当接面に近接もしくは当接するので、一方のカバー部材側に外力が作用したときには前記当接面に当接した第1の規制突部および第2の規制突部を介してハウジング本体で外力を受けることができ、他方のカバー部材側に外力が作用したときには第2の規制突部を介してハウジング本体で外力を受けることができ、外力の作用によってカバー部材が撓むことを防止し、ひいてはカバー部材同士の係合ならびにカバー部材のハウジング本体への係合を維持することができる。しかも第1の規制突部は第2の規制突部よりも短く形成されており、第1の規制突部を有するカバー部材の大型化および重量増大を抑制し、ひいてはミラーハウジングの大型化および重量増大を抑制することができる。
【0009】
また、第2の規制突部に形成された溝に第1の規制突部が嵌合されるので、第2の規制突部が設けられる側のカバー部材の軽量化が可能となり、ミラーハウジングの重量増大をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】車両用ドアミラーを斜め後方から見た斜視図である。
【
図2】車両用ドアミラーを斜め前方から見た斜視図である。
【
図4】スカルキャップのハウジング本体側から見た正面図である。
【
図5】ロアハウジングのハウジング本体側から見た正面図である。
【
図6】ハウジング本体をミラー収容凹部とは反対側から見た図である。
【
図7】スカルキャップを省略した状態でのミラーハウジングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付の
図1~
図8を参照しながら説明すると、先ず
図1および
図2において、乗用車両における左右の前部サイドドアには、車両の後方側を視認するためのミラー11が装着されたミラーハウジング12が、前記前部サイドドアから側方に突出した起立位置と、前記前部サイドドア側に格納される格納位置との間で回動することを可能として配設される。
【0012】
図3を併せて参照して、前記ミラーハウジング12は、ミラー11が収容されるミラー収容凹部13を有する樹脂製のハウジング本体14と、相互に係合されるとともに前記ミラー収容凹部13の開放方向とは反対側から前記ハウジング本体14を覆いつつ当該ハウジング本体14に係合される複数のカバー部材とで構成されるものであり、この実施の形態では、樹脂製である一対のカバー部材であるスカルキャップ16およびロアハウジング17が前記ハウジング本体14に弾発係合される。
【0013】
前記ミラー11は、図示しないミラーホルダで保持されており、前記ハウジング本体14の開口部すなわち前記ミラー収容凹部13の開口端部には、前記ミラーホルダで保持された状態の前記ミラー11が配置される。
【0014】
前記前部サイドドアには樹脂製のベース部材21が取付けられ、前記前部サイドドアから外側方に間隔をあけた位置で前記ベース部材21に、前記ミラーハウジング12の基端部12aが回動可能に支持される。また前記ベース部材21には、当該ベース部材21を下方から覆う樹脂製のベースカバー23が着脱可能に取付けられる。
【0015】
前記ミラーハウジング12内には、電動格納ユニット(図示せず)が収容されており、この電動格納ユニットは、前記ミラーハウジング12の先端部12bを前記前部サイドドアから側方に突出させる起立位置と、前記ミラーハウジング12を前記前部サイドドア側に格納する格納位置との間で前記ミラーハウジング12を回動することが可能である。また前記ハウジング本体14には、前記ミラー11を保持する前記ミラーホルダを左右、上下に回動することを可能としたミラー角度調整ユニット(図示せず)を収容、固定するための取付け凹部25が形成される。
【0016】
図4を併せて参照して、前記スカルキャップ16は、前記ハウジング本体14の上部を前記ミラー収容凹部13の開放方向とは反対側から覆うように形成される。
【0017】
このスカルキャップ16の下部には、前記ミラーハウジング12が前記起立位置にある状態での車幅方向外側から内側にかけて順に並ぶ第1、第2および第3の係合爪27,28,29が相互に間隔をあけて前記ハウジング本体14側に向けて突出するようにして一体に突設され、前記第3の係合爪29から上方に間隔をあけた位置で前記スカルキャップ16には、第4の係合爪30が前記ハウジング本体14側に向けて突出するようにして一体に突設される。
【0018】
図5を併せて参照して、前記ロアハウジング17は、前記スカルキャップ16の下方に配置されて前記ハウジング本体14の下部を前記ミラー収容凹部13の開放方向とは反対側から覆うロアハウジング主部17aと、そのロアハウジング主部17aの前記ベース部材21側の端部から上方に延びる延出部17bとを一体に有し、前記延出部17bは略L字状に屈曲して形成される。
【0019】
前記ロアハウジング17における前記ロアハウジング主部17aの上部には、前記スカルキャップ16に突設された前記第1~第3の係合爪27,28,29に対応した第1、第2および第3の係止部31,32,33が設けられ、また前記ロアハウジング17における前記延出部17bには、前記スカルキャップ16に突設された前記第4の係合爪30に対応した第4の係止部34が設けられる。
【0020】
前記第1~第4の係止部31~34には、前記第1~第4の係合爪27~30をそれぞれ挿通させる矩形状の第1、第2、第3および第4の挿通孔35,36,37,38が形成されており、第1~第4の挿通孔35~38に挿通される前記第1~第4の係合爪27~30を前記第1~第4の係止部31~34に弾発係合させることで、前記スカルキャップ16およびロアハウジング17が相互に係合される。
【0021】
相互に係合された状態にある前記スカルキャップ16および前記ロアハウジング17は、前記ハウジング本体14に係合されるものであり、このハウジング本体14への係合のために、前記スカルキャップ16の上部には、前記ミラーハウジング12が前記起立位置にある状態での車幅方向で内側から外側にかけて相互に間隔をあけつつ順に並ぶ第5、第6および第7の係合爪40,41,42が前記ハウジング本体14側に向けて突出するようにして一体に突設され、前記第7の係合爪42から下方に間隔をあけた位置で前記スカルキャップ16には、第8の係合爪43が前記ハウジング本体14側に向けて突出するようにして一体に突設される。また前記ロアハウジング17における前記ロアハウジング主部17aの下部には、前記ミラーハウジング12が前記起立位置にある状態での車幅方向で内側から外側にかけて順に間隔をあけて並ぶ第9および第10の係合爪44,45が前記ハウジング本体14側に向けて突出するようにして一体に突設される。
【0022】
図6において、前記第5~第10の係合爪40~45に対応した位置で前記ハウジング本体14には、第5、第6、第7、第8、第9および第10の係止部46,47,48,49,50,51が設けられる。前記第5~第10の係止部46~51には、前記第5~第10の係合爪40~45をそれぞれ挿通させる矩形状の第5、第6、第7、第8、第9および第10の挿通孔52,53,54,55,56,57が形成されており、第5~第10の挿通孔52~57に挿通される前記第5~第10の係合爪40~45を前記第5~第10の係止部46~51に弾発係合させることで、前記スカルキャップ16およびロアハウジング17が前記ハウジング本体14に係合される。
【0023】
図7および
図8を併せて参照して、前記スカルキャップ16には、当該スカルキャップ16が前記ハウジング本体14に近接する側に撓むことを規制するための第1の規制突部58が前記ハウジング本体14側に向かって突出するようにして一体に突設され、前記ロアハウジング17には、当該ロアハウジング17が前記ハウジング本体14に近接する側に撓むことを規制するための第2の規制突部59が前記ハウジング本体14側に向かって突出するようにして一体に突設される。
【0024】
前記第1の規制突部58は、前記ミラーハウジング12が前記起立位置にある状態での車幅方向で前記スカルキャップ16の下部の略中央部に配置されるようにして当該スカルキャップ16の下部に一体に突設される。また前記第2の規制突部59は、その先端部59aを前記ハウジング本体14に形成される受け面62に当接させるようにして前記ロアハウジング17における前記ロアハウジング主部17aに一体に突設されるものであり、前記ミラーハウジング12が前記起立位置にある状態での車幅方向で前記ロアハウジング主部17aの上部の略中央部に配置されるようにして当該ロアハウジング主部17aの上部に一体に突設される。
【0025】
しかも前記第1の規制突部58は、前記第2の規制突部59よりも短く形成されつつ当該第2の規制突部59に上下方向で重なって配置されるものであり、前記第2の規制突部59には、前記第1の規制突部58の先端部58aを近接、もしくは当接させる当接面60が形成される。
【0026】
前記第2の規制突部59の基端部59bには、前記ハウジング本体14側の一端部を前記当接面60として閉じるとともに前記ハウジング本体14と反対側の他端部を開放した溝61が形成されており、前記第1の規制突部58が前記溝61に嵌合される。
【0027】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、相互に係合されるスカルキャップ16およびロアハウジング17のうち前記スカルキャップ16に突設される第1の規制突部58が、前記ロアハウジング17に突設されるとともにハウジング本体14に当接する第2の規制突部59よりも短く形成されつつ前記第2の規制突部59に上下方向で重なって配置され、前記第2の規制突部59に、前記第1の規制突部58の先端部58aを近接、もしくは当接させる当接面60が形成されるので、前記スカルキャップ16および前記ロアハウジング17のうち前記スカルキャップ16側に外力が作用したときには前記当接面60に当接した前記第1の規制突部58および前記第2の規制突部59を介して前記ハウジング本体14で外力を受けることができ、前記ロアハウジング17側に外力が作用したときには前記第2の規制突部59を介して前記ハウジング本体14で外力を受けることができ、外力の作用によって前記スカルキャップ16および前記ロアハウジング17が撓むことを防止し、ひいては前記スカルキャップ16および前記ロアハウジング17同士の係合ならびに前記スカルキャップ16および前記ロアハウジング17の前記ハウジング本体への係合を維持することができる。しかも前記第1の規制突部58は前記第2の規制突部59よりも短く形成されており、前記第1の規制突部58を有する前記スカルキャップ16の大型化および重量増大を抑制し、ひいてはミラーハウジング12の大型化および重量増大を抑制することができる。
【0028】
また前記ハウジング本体14に先端部を当接させる前記第2の規制突部59の基端部59bに、前記ハウジング本体14側の一端部を前記当接面60として閉じるとともに前記ハウジング本体14と反対側の他端部を開放した溝61が形成され、前記第1の規制突部58が前記溝61に嵌合されるので、前記第2の規制突部59が設けられる側のロアハウジング17の軽量化が可能となり、ミラーハウジング12の重量増大をより効果的に抑制することができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0030】
たとえば上述の実施の形態では、一対のカバー部材であるスカルキャップ16およびロアハウジング17がハウジング本体14に係合されてミラーハウジング12が構成されるようにした車両用ドアミラーについて説明したが、3個以上のカバー部材がハウジング本体に係合されるようにした車両用ドアミラーにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
11・・・ミラー
13・・・ミラー収容凹部
14・・・ハウジング本体
16・・・カバー部材であるスカルキャップ
17・・・カバー部材であるロアハウジング
12・・・ミラーハウジング
58・・・第1の規制突部
58a・・・第1の規制突部の先端部
59・・・第2の規制突部
59a・・・第2の規制突部の先端部
59b・・・第2の規制突部の基端部
60・・・当接面
61・・・溝