(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】防爆型燃料電池システム及び燃料電池システムの不活性化方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220819BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20220819BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20220819BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20220819BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20220819BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220819BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20220819BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20220819BHJP
B60L 50/72 20190101ALI20220819BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20220819BHJP
【FI】
H01M8/04 H
H01M8/04 J
H01M8/04664
H01M8/043
H01M8/04228
H01M8/04225
H01M8/00 Z
H01M8/04 N
H01M8/04694
B60L3/00 H
B60L50/72
B60L58/30
(21)【出願番号】P 2019503752
(86)(22)【出願日】2017-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2017069000
(87)【国際公開番号】W WO2018019936
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】102016114103.8
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507332893
【氏名又は名称】プロトン モータ フューエル セル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PROTON MOTOR FUEL CELL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】ランツィンガー,アヒム
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-332648(JP,A)
【文献】特開2012-156019(JP,A)
【文献】特開2010-15849(JP,A)
【文献】特表2010-541150(JP,A)
【文献】特開2005-174745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 3/00- 3/12
B60L 50/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム(1)であって、
燃料電池アセンブリ(30)、
前記燃料電池アセンブリ(30)へ水素をフィードするための水素フィードライン(31、32)、
前記水素フィードライン(31、32)の中にある第1の減圧弁(34)、
高圧水素貯蔵器(20)、
前記高圧水素貯蔵器(20)から前記燃料電池アセンブリ(30)のための、水素ライン(21、22)及び前記水素フィードライン(31、32)をお互いに連結する水素供給ライン(4)の中へとフィードするための前記水素ライン(21、22)、
水素圧力を減らすための前記水素ライン(21、22)の中の第2の減圧弁(24)、
前記第2の減圧弁(24)の下流の前記水素ライン(21、22)若しくは前記水素供給ライン(4)の中にある3/2方向バルブ(25)、並びに
前記3/2方向バルブ(25)に連結される水素圧力調整ライン(26)を具備し、
前記3/2方向バルブ(25)は、第1切換位置にて、前記高圧水素貯蔵器(20)から前記水素供給ライン(4)の中へのガスの流れを許容し、並びに第2切換位置にて、前記水素供給ライン(4)から前記水素圧力調整ライン(26)の中へのガスの流れを許容することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池システムは、前記第1の減圧弁(34)の上流の前記水素フィードライン(31、32)の中に閉止弁(33)を具備し、並びに/又は前記高圧水素貯蔵器(20)が主閉止弁(23)を具備する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記水素圧力調整ライン(26)で、10kPa(100mbar)以下の開口圧力を有するチェックバルブ(27)を更に具備する請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池システムは、前記燃料電池システム(1)からの電気負荷の切断若しくは緊急な状況の検出により、前記第1切換位置から前記第2切換位置への前記3/2方向バルブ(25)の切換が、誘引され、並びに/又は前記燃料電池アセンブリ(30)の活性化により、前記第2切換位置から前記第1切換位置への前記3/2方向バルブ(25)の切換が、誘引されるように設計される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
水素と共に燃料電池アセンブリ(30)に供給するためのタンクモジュール(2)であって、
高圧水素貯蔵器(20)、
前記燃料電池アセンブリ(30)のための、前記高圧水素貯蔵器(20)から水素供給ライン(4)の中へと水素をフィードするための水素ライン(21、22)、
水素圧力を減らすために、前記水素ライン(21、22)の中にある減圧弁(24)、
前記減圧弁(24)の下流の前記水素ライン(21、22)の中にある3/2方向バルブ(25)、並びに
前記3/2方向バルブ(25)に連結される水素圧力調整ライン(26)を具備し、
前記3/2方向バルブ(25)は、第1切換位置にて、前記高圧水素貯蔵器(20)から前記水素供給ライン(4)の中へのガスの流れを許容し、並びに第2切換位置にて、前記水素供給ライン(4)から前記水素圧力調整ライン(26)の中へのガスの流れを許容することを特徴とするタンクモジュール。
【請求項6】
前記高圧水素貯蔵器(20)が主閉止弁(23)を具備する請求項5に記載のタンクモジュール。
【請求項7】
前記タンクモジュールは、燃料電池アセンブリ(30)の不活性化若しくは緊急状況の検出で、前記3/2方向バルブ(25)は、それの前記第2切換位置に自動的に切り替えられる、並びに/又は前記燃料電池アセンブリ(30)が操作実施されたときに、それの前記第1切換位置に自動的に切り替えられる請求項
5又は6に記載のタンクモジュール。
【請求項8】
前記水素圧力調整ライン(26)で、10kPa(100mbar)以下の開口圧力を有するチェックバルブ(27)を更に具備する請求項5乃至7のいずれか1項に記載のタンクモジュール。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム(1)の不活性化方法であって、
水素ライン(21、22)から水素供給ライン(4)の中への水素のフィードが、終結され、並びにその後すぐに、3/2方向バルブ(25)が、第1切換位置から第2切換位置へと切り替えられる燃料電池システムの不活性化方法。
【請求項10】
前記水素供給ライン(4)の中への水素のフィードの終結及び前記第1切換位置から前記第2切換位置への前記3/2方向バルブ(25)の切換は、前記燃料電池システム(1)からの電気負荷の非連結若しくは緊急状況の検出により、誘引される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム(1)の活性化方法であって、
該燃料電池システムは、請求項
9又は
10に記載の方法により不活性化され、
水素は、水素ライン(21、22)から水素供給ライン(4)の中へとフィードされるよう規定され、並びにそのあとに、3/2方向バルブ(25)が、第2切換位置から第1切換位置へと切り替えられる燃料電池システムの活性化方法。
【請求項12】
水素供給ライン(4)及び付随的に、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム(1)の水素フィードライン(31、32)の部分(31)を圧力調整するための3/2方向バルブ(25)の使用であって、
第1切換位置から第2切換位置への前記3/2方向バルブ(25)の切換は、水素を前記水素供給ライン(4)及び付随的に前記水素フィードライン(31、32)から大気中へと解放させることを特徴とする3/2方向バルブの使用。
【請求項13】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池システム(1)及び請求項5乃至8のいずれか1項に記載のタンクモジュール(2)を具備する自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爆発性ガス混合物の生成が、燃料電池システムの活動休止の間中に回避される燃料電池に関し、並びに燃料電池システムの安全な活性化が可能になるように、不活性後に爆発性ガス混合物の生成を回避するための、燃料電池を不活性化若しくは遮断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素及び酸素から電気的エネルギーを発生する。酸素は、通常空気の形で供給され、そして、水素は、貯蔵、又は例えばメタノールから局所的に発生させてから供給される。可動的若しくは備え付けの燃料電池両方における変形に最も多く共通するものとしては、水素が高圧タンクから供給されることである。高圧タンクでは、水素は、80MPa(800bar)までの圧力下で貯蔵される。1つ以上の高圧タンクが、タンクモジュールを形成する。タンクモジュールの出口にて、圧力は、吸気圧力レベルにまで、減圧弁により減圧される。この中間圧力領域において、圧力が概して約0.5-1.2MPa(5-12bar)になる。更に減圧弁により、圧力は、燃料電池の操作圧力にまで減圧される。操作圧力は、それぞれの雰囲気圧力よりも通常高く、並びに概して雰囲気圧力より上、100kPa(1bar)までになる。
【0003】
燃料電池は、1つ以上の燃料電池スタックの中で寄せ集められ、並びに新鮮な操作ガス及び冷却水を供給する又は使用済み操作ガス及び冷却水を放出及び/若しくは再循環させるためのライン、これらの作動に実用的な処理手段、センサ、バルブ、調節器、スイッチ、ヒータ等の燃料電池モジュールを形成し、燃料電池の作動には不可欠な多数の周辺エレメントと共に寄せ集められる。これらの構成要素は、保護カバー、ハウジング若しくは覆いが備え付けられ、並びにすべての構成要素若しくは構成要素の少なくとも多くは、可能な限りコンパクトに組み立てられ、及びハウジングの中に燃料電池と共に収容される。ハウジングは、気密を必要とはしないが、ハウジング内部及び周囲との間のガスの交換は、少なくとも厳しく制限される。
【0004】
供給ラインは、タンクモジュールを燃料電池モジュールに連結、即ちハウジングの中に取り付けられた燃料電池及び必要な周辺エレメントに連結する。タンクモジュール及び燃料電池モジュールの間の供給ラインは、通常0.5-1.2MPa(5-12bar)の圧力の水素を供給する役割である。それぞれに関連したタンクモジュール及び燃料電池モジュールの特定配置によれば、供給ラインは、かなりの長さになるであろう。
【0005】
気体の水素ガスは、高い拡散傾向を有する。より長い時間の間、気密な物質として一般に見なされる通過物質をも拡散する。燃料電池システムにおける水素ラインは、水素が、溶接パイプラインの中で専ら流れるだけではなく、タンクモジュール及び供給ラインの間並びに供給ライン及び燃料電池モジュールの間の境界面並びに例えばバルブ若しくは調節器のようなセンサやアクチュエータが、水素ラインの中で一体化されるすべての位置にて、水素流路もまた、例えばネジ連結のような開放可能な連結を有するといった付加的な問題を伴う。これらの位置にて、水素の漏れ量は、水素が大気圧よりも高い圧力の時、とりわけ高い(多い)。
【0006】
それゆえ、気体水素のある量が、燃料電池システムのラインから大気中、即ち新鮮な空気中へと漏れる若しくは拡散するといったことが、常に予期されなくてはならない。空気、より正確には空気中の酸素と、水素とは、発火しやすい混合物(酸水素ガス)を生成するため、このことは、つまらなくない潜在危険を意味する。
【0007】
室温にて、分子水素が、それの高い分離エネルギーに起因して比較的不活性になるゆえに、水素及び酸素の反応は、測定できないほどの遅い速度で起こる。しかしながら、高い温度がある点にまで届いた場合、該反応は、この点にて開始され得る。それによって開放された熱は、反応のための熱された位置の周辺の分子を引き起こし、それにより更なる熱を発生させる。熱された位置から始まることで、その時の温度における強い増加を伴って、連鎖反応が水素並びに酸素若しくは空気の全混合物を爆発的に貫いて成立される。しかしながら、爆発は、上限及び下限の爆発限界により表される水素及び酸素の特有の混合比率を有するときに起こる。
【0008】
爆発限界は、温度及び圧力に依存する。空気中の水素の混合物の中に、爆発混合物は、約4-75容量パーセントの水素(室温且つ大気圧で)の水素濃度にて存在する。燃料電池システムのコンパクトなデザインやそれのハウジング内における取り付け並びに例えば自動車のような閉鎖空間ではそれによる水素からの素早い退避を妨げることに起因して、ラインからの水素の漏れが容易により低い爆発限界を生じる。既に、燃料電池システムの電気系システムそれ自体が、発火するためのガス混合物を生成し、それゆえ爆発の引き金と成り得る。
【0009】
この危険を最小限にするために、いくつかの安全な用心が、先行技術に係る燃料電池システム、第1及び第2防爆の主に尺度において、取られる。第1防爆とは、爆発雰囲気の構成を妨げる或いはそれらの構成に係るリスクを少なくとも減らすような尺度を意味することと理解される。第2防爆とは、爆発雰囲気が発火させられる、即ち発火に係る効果的な発火源を避けることを防止するという尺度を意味することと理解される。
【0010】
タンクモジュールにおいて、よい換気をするための屋外エリアにおいて、同じ程度調整することを通常可能にする。水素が、燃料電池システムのために必要でなくなるのと同時に、水素貯蔵器の出口に直接的に、閉止弁により、水素の流出を防止することが可能になる。
【0011】
燃料電池モジュール及びその水素供給ラインは、第1及び第2防爆の組み合わせを簡便に使用する。燃料電池の操作の間中、例えば自動車を運転中、燃料電池モジュールがインストールされる空間及び/又は完全な自動車のインテリアが、水素センサにより検出される。水素の存在が、いずれかの場所で検出された場合、強制換気が、水素を除去するために、直ちに開始される。
【0012】
システムがシャットダウン若しくは不活性な時は、この第1防爆ができない。多くの燃料電池システムは、比較的短い時間にのみ作動されると共に、長時間非稼働である。例えば、燃料電池付きの自動車は、作動よりも、通常ずっと長い時間非稼働(非作動)である。非稼働時間の間中、水素供給は、ガス貯蔵タンクの下流に直ちに閉止弁により、正常に閉止されるが、タンクモジュール及び燃料電池の間のラインに残存する水素は、ラインから拡散させることが可能であり、とりわけ完璧ではないラインの間の気密な連結を通過して退避させることができ、且つ燃料電池モジュール及び水素供給ラインの密閉領域に貯めることが可能である。ラインの長さ及びラインにおける広く行きわたった圧力に依存して、水素のそれぞれの量は、かなりのものであり、並びに大気と共に、爆発混合物の構成を導き得る。燃料電池が、活性化され若しくは再稼働されるとき、爆発が、電気的組成物の活性化の結果として発生するようなスパークに起因して引き起こされ得る。それゆえに、第2防爆の尺度は、同様に取られなくてはならない。簡便な燃料電池システムのためには、このことは、燃料電池モジュールの電気回路が、可能ならば本質的に安全に設計されるべきであることを含んでいる。その本質的に安全な設計は、回路並びにセンサ及びアクチュエータへの電気的連結を測定及び制御することが可能である。代わりに或いは付加的に、潜在的な引火源(センサ、電気的な操作バルブ)は、カプセルに包まれる、即ち爆発保護要素が使用される。
【0013】
これらの尺度は、コストがかかり、より多くの錯体構造及びシステムの増量を引き起こし、並びにまた、100%の防爆を備えない。システム外部の引火源により引き金となる爆発は、このように防止できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、燃料電池システム並びに燃料電池システムを不活性化及び再稼働するための方法を包含し、先行技術に係る該システムの欠点が除かれる若しくは少なくとも低減される。該システムは、特に長い休止時間後に再稼働させたときだけでなく、休止時間中にも、構造的に簡素且つ水素爆発のリスクを最小限化するであろう。好ましくは、高価な防爆要素の使用をしてでも完璧若しくは部分的に省くであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、独立請求項1に掲げる特徴を有する燃料電池システム、独立請求項6に掲げる特徴を有するタンクモジュール、独立請求項11に掲げる特徴を有する燃料電池システムの不活性化方法、独立請求項13に掲げる特徴を有する独創的な燃料電池システムの再活性化方法、独立請求項14に掲げる特徴を有する独創的な燃料電池システムの水素ラインの水素圧力放出のための3/2方向放出バルブの使用、並びに独立請求項16に掲げる特徴を有する、例えば自動車のような、電気消費若しくは電気負荷により満足する。本発明の実施態様は、それぞれの従属請求項に掲げている。
【0016】
本発明に係る燃料電池システムは、本質的に2つの構造ユニットから成り、該構造ユニットは、以下タンクモジュール及び燃料電池モジュールと言う。タンクモジュールは、水素が80MPaにまでの圧力下で貯蔵される1つ以上の高圧コンテナ(タンク)を具備する。各々のタンクは、好ましくは主閉止弁を有し、且つ水素が燃料電池モジュールに供給される水素ラインに連結される。水素ラインにおいては、減圧弁が配置され、並びにいくつかのタンクにおいて、それぞれのタンクは、それ独自の分離型減圧弁が備え付けられ、若しくはいくつかのタンクが、共通の減圧弁を有することができる。水素がタンクモジュールから出る前に、減圧弁は、水素の圧力を、概して0.3-3.0MPa、好ましくは0.5-1.2MPaの種々の圧力レベルまで減圧する。
【0017】
タンクモジュールから、水素は、燃料電池モジュールをタンクモジュールに連結する水素ラインに入る。燃料電池モジュールは、燃料電池アセンブリ、即ち1つ以上の燃料電池スタックを有する。例えば新鮮若しくは使用済み燃料電池媒体を供給及び放出するためのライン若しくはパイプシステム、センサ、バルブ(弁)、レギュレータ、水分離器、ポンプ、冷却水貯蔵器、カソードガス供給手段等のような、燃料電池アセンブリを操作するのに必要な手段は、燃料電池モジュールの一部分を構成するためと思われる。
【0018】
また、燃料電池モジュールは、燃料電池モジュールラインの水素フィードラインの中へと供給する水素から、燃料電池アセンブリの操作圧力へと入る水素の圧力を減らす減圧弁を具備する。操作圧力は、概してわずかに、大気圧よりも高く、並びに好ましくは100-200kPaである。
【0019】
このように、燃料電池システムは、3つの圧力領域、タンクモジュールの減圧弁の上流に係る高圧領域、タンクモジュールの減圧弁及び燃料電池モジュールの減圧弁の間の中間圧力領域(0.3-3.0MPa)、及び燃料電池モジュールの減圧弁の下流に係る操作圧力領域(100-200kPa)を有する。高圧領域における圧力は、中間圧力領域よりも高く、概して30MPaよりも高く、並びに80MPaまでである。
【0020】
好ましくは、燃料電池モジュール及びタンクモジュールは、お互いから、空間的に分離された格好で収容されることができる自己充足のユニットである。例えば、燃料電池付き自動車において、それは、とりわけ容易に利用しやすく且つ同時に事故からのダメージに対して十分に保護される場所にて調整するのに理解できると共に、原則として燃料電池モジュールは、有効空間に依存したいずれの位置にて調整される。2つのモジュールを連結している水素供給ラインの長さは、該モジュールの設置間隔により決められる。大抵、それぞれのモジュール並びに該モジュール間の水素供給ラインはまた、保護カバーが備え付けられている又はハウジング内に設置されている。しかしながら、上述したモジュラーデザインは、決して適切ではない。むしろ、タンクモジュールの構成及び燃料電池モジュールの構成は、単一ユニットの中へ結合される。この結合ユニットはまた、上述に示したようなそれぞれの圧力に対応した、高圧領域、中間圧力領域及び操作圧力領域を有する。
【0021】
ラインの中を流れている水素は、高い拡散傾向を有し、それはより高い水素圧力である。とりわけ、ラインが、例えば螺合により、お互いが連結されているような全ての位置及びセンサ若しくはアクチュエータがラインの中で結合されるような全ての位置にて、水素の漏れが、とりわけ容易に生じる。水素拡散が深刻でない限り、燃料電池システムが、水素センサにより監視され及び例えば該システムの強制換気のような適当な処置が、燃料電池システムのエリアにおける水素濃度よりも低い増加した水素濃度にて、直ちに始まることができるときに、このことは、作動している燃料電池システムにおいて、無事に構成される。
【0022】
その状態は、不活性化された燃料電池システムとは異なる。燃料電池システムが非稼働である限り、安全なデバイスは、いずれも活性しない、即ち水素の漏れが、気づかれないままになり、且つそれを素早く除去するために採られる尺度がない。燃料電池システムが、長時間非稼働である場合、より低い爆発限界が超えられるように、水素の十分量は、カバーの下並びにハウジング内若しくは乏しい通風設置空間上で容易に貯めることができる。とりわけ危険な状態で、ここが、大気圧、特に燃料電池システムの中間圧力領域よりも高い圧力を仮定した全てのエリアである。高圧領域、即ちタンクモジュールがまた、危険な状態にて、相対的に短いパイプシステムを有し、例えばバスのような自動車の屋根の上に、自動的に十分に換気されるように、配置され得る。
【0023】
燃料電池システムが、長い休止の後に再活性化された場合、例えば定期的に発生したとして、自動車が長い駐車時間の後で再スタートした時、センサや電気的スイッチ弁のような燃料電池システムの電気的構成要素からのスパークが、爆発するための水素/空気混合物を発生させる。本発明によれば、このような爆発混合物の構成は、燃料電池システムが不活性化される又はそのあと直ぐのとき、高い水素圧力の下のライン、即ち中間圧力領域のライン又はこれらのラインの少なくとも大部分が、圧力を軽減するということが避けられる。水素の拡散傾向は、ライン中の水素圧力が、大気圧より上若しくは十分に等しい時に一番低くなる。この圧力軽減を完成するために、3/2方向バルブが、中間圧力領域で、本発明に係る燃料電池システムに備え付けられ、該バルブは、中間圧力領域、好ましくは完全な中間圧力領域の少なくとも一部分を大気圧若しくはわずかに高圧に持ってくることを認める。3/2方向バルブは、水素タンクから燃料電池アセンブリへと、大気圧の中へ外に向かって開いているラインに連結された第3ポートを伴い、導いているラインに位置づけられる。3/2方向バルブの第1切換位置において、流路が、水素タンク及び燃料電池アセンブリの間で開口しているが、3/2方向バルブの第2切換位置において、流路が、燃料電池アセンブリ及び周囲雰囲気の間で開口している。3/2方向バルブは、好ましくはソレノイドバルブである。第2切換位置は、非通電状態、即ち該システムが、安全状態になるための切換位置である。
【0024】
燃料電池システムの操作の間中、3/2方向バルブは、第1切換位置の中にある。燃料電池システムの不活性化において、もし備え付けられていれば主閉止弁、並びに好ましくはまた、燃料電池モジュールの中にある閉止弁が閉じられた及びそのすぐ後に、中間圧力領域に存在する水素が、周囲空気の中に逃げるように、調整弁(3/2方向バルブ)が第2切換位置につけられている。バルブの閉止及び3/2方向バルブの切り替えは、例えば燃料電池システムにより供給された電気負荷のスイッチ開放又は緊急時の検出、燃料電池システムの最大限許容圧力を超えるといったような、予定された工程により引き金と成り得る。
【0025】
3/2方向バルブのライン下流の部分のみ、圧力調整がなされるため、3/2方向バルブは、タンクモジュールの減圧弁に可能な限り近接して配置されるべきである。従って、3/2方向バルブは、好ましくはタンクモジュールの中に一体化され、且つ減圧弁のすぐ下流に配置される。代わりに、しかしながら、3/2方向バルブはまた、タンクモジュールの下流に設置され、好ましくは水素供給ラインの上流末端にも設置される。
【0026】
3/2方向バルブは、水素をゆっくりとのみ逃がすように、設計されるだろう。急速な逃しは、圧力調整ラインの出口にて、爆発性水素/空気混合物の構造を導くことになる。従って、小さな開口断面部を伴うバルブが、むしろ好ましい。圧力調整が行われる最大速度は、圧力調整が実行される環境において、上述した全てに依存する。燃料電池システムが、急速な空気交換が確実に提供される位置にて使用される場合、圧力調整が、数秒内で効果が表れる一方、例えば自動車のようなアプリケーションにおいては、圧力調整が、例えば数分を越えてしまうなどゆっくりと効果が表れる。自動車は、例えばガレージのような低い空気交換の環境下で駐車されることがよくある。3/2方向バルブが、とりわけ燃料電池システム若しくはアプリケーションに最適なのかは、あとわずかで実験により付加的に決定される。
【0027】
代わりに、絞り弁の場所は、開口断面がいつも少量の水素のみが、空気中のより低い爆発限界が、圧力調整ラインの出口に届かないように逃がすことができるように、指定される。その場合には、水素供給ラインを介して、所要流量を保証する、水素に適したいずれのバルブが、3/2方向バルブとして使用され得る。その取り付けは、第2切換位置が無電流若しくは無電源状態となるように、実行される。
【0028】
3/2方向バルブは、燃料電池システムが不活性化するすべての時間の間中、第2切換位置にて残っている。代わりにまた、遅延回路により予め決められた時間の後に、第1切換位置へと切り替えられることが可能である。特に、バルブがその第2切換位置に残っているとき、圧力調整弁の中にチェックバルブを備えるのが好ましく、該チェックバルブは、燃料電池システムのパイプシステムの中への空気や湿気の浸透を防止する。チェックバルブは、低い開口圧力、好ましくは、周囲空気の圧力よりもわずかに上の開口圧力のみ有するべきである。例えば、適した開口圧力は、燃料電池の開口圧力領域までの圧力であり、好ましくは10kPa(100mbar)である。
【0029】
燃料電池を再起動若しくは再活性化させるとき、タンクモジュール(もし備え付けられていたら)の中の主閉止弁は、始めに開口され、その後、もし後の方で第2切換位置にまだあったら、3/2バルブは、第1切換位置に切り替えられ、並びにその時それが閉鎖されているならば、燃料電池モジュールの中の閉止弁が開口される。その切換工程は、例えば電気負荷の切換により引き金に成り得る。代わりに、3/2バルブ及び他のバルブを手動で操作することはまた、当然原則的に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る燃料電池システムを模式的且つ非常に単純な描画を示す。
【
図2】本発明により使用された3/2方向バルブの切換位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明について、図面を参照しながらより詳細に説明する。図面は、縮尺で描くことではなく、本発明の理解のために必要な特徴を示すということと理解されたい。更なる特徴がある又は適切で安全な調節に応じるために存在しなくてはならない及び燃料電池システムの適切な機能化を保証しなくてはならないということと理解されたい。しかしながら、これらの特徴は、当業者にとっては知られていることである。
【0032】
図1は、本発明に係る燃料電池システム1の態様を模式的に示す。燃料電池システム1は、タンクモジュール2及び燃料電池モジュール3を具備し、水素が、タンクモジュール2から、水素供給ライン4を介して、燃料電池モジュール3の中へと流れることができる。
【0033】
図示されている態様において、タンクモジュール2は、高圧水素貯蔵器(タンク)20、該タンク20のための主閉止弁23、及び減圧弁24を具備する。水素ライン21を介して、水素は、タンク20から減圧弁24へと流れることができる。ここで、水素圧力は、好ましくは0.5MPaから1.2MPaにまで減圧され、並びに水素ライン22を介してそこに送られる。水素が、3/2方向バルブ25を介して流れ、並びに連結点5にて水素ライン22と連結される水素供給ライン4に入る。水素供給ライン4の長さは、タンクモジュール2及び燃料電池モジュール3の間隔に依存し、該間隔は、ドット線で示される。連結点6にて、水素供給ライン4は、燃料電池モジュール3に連結される。ここから、チェックバルブ33が位置付けされる水素フィードライン31を介して、燃料電池アセンブリ30の中の燃料電池の操作圧力にまで圧力を減らす減圧弁34へと水素は流れる。減圧弁34から、水素は最終的に、水素フィードライン32を介して、燃料電池アセンブリ30の中へと流れる。
【0034】
アノード排気ガスは、アノード排気ガスライン35を介して、燃料電池アセンブリ30を除き且つ、アノード排気ガス再循環ライン38を介して、アノード排気ガス再循環ポンプ39で水素フィードライン32の中へと再循環させる。定期的に、アノード排ガスの一部は、アノード排気ガス放出ライン36を介して、周囲空気の中へと放出される。標準的に、該ライン36は、閉止弁37により閉鎖される。
【0035】
カソード操作ガスは、空気供給ライン10を介して燃料電池アセンブリ30に入り、且つカソード排気ガスライン11を介して、同じように出る。冷却水は、冷却水供給管12を介して、燃料電池アセンブリ30に入り、且つ冷却水放出ライン13から出る。
【0036】
図示されている態様において、タンクモジュール2は、ハウジング28の中に配置されており、燃料電池モジュール3は、ハウジング14の中に取り付けられる。カバー7が、水素供給ライン4を保護する。
【0037】
燃料電池システム1の操作中、バルブ23及び33は開口され、並びに3/2方向バルブ25は、その第1切換位置の中にあり、該位置は、タンク20から燃料電池アセンブリ30の中への水素の流れを許容する。ハウジング4、14内部における水素センサ(図示せず)は、水素がパイプシステムから放散しているか漏れているかどうかをチェックする。水素の存在が検出された場合、強制換気が、例えば適切なブロワ(図示せず)のような手段で直ちに開始される。
【0038】
燃料電池システム1で、例えば急速な空気交換を供給する水素検出器及びブロワのような、安全システムがオフされる。それでもこの場合における燃料電池システム1の安全を確実にするために、本発明では、3/2方向バルブ25をそれの第2切換位置、即ち非通電状態に切り替えることによりフォローされるバルブ23及び33の閉鎖に備える。第2切換位置において、水素ラインを介した流路は、ブロックされ、並びにその代わりとして、水素供給ライン4から水素圧力調整ライン26への流路が開かれる。いずれかの理由で緊急シャットダウンが実行されなくてはならない、例えばセンサが燃料電池アセンブリ若しくはラインシステムのいずれかのエリアにて過度に高い圧力若しくは過度に高い温度を検出した場合、当該システムはまた、この“安全状態”に切り換えられる。水素調整レイン26は、その中で設置されたチェックバルブ27を有し、該チェックバルブは、燃料電池アセンブリ30の作動圧力以下で、好ましくは10mbar以下で大気圧よりも上の開口圧力で開口する。このように、3/2方向バルブ25及び閉止バルブ(弁)33の間又は3/2方向バルブ25及び減圧弁34(開口閉止バルブ33を伴う)の間の中間圧力領域に存在する水素は、この範囲にある水素圧力がチェックバルブ27の開口圧力より下に落ちるまで、周囲空気の中へと放出される。絞り弁位置9は、水素がゆっくりと漏れるのを保証する。代わりに、このことは、3/2方向バルブ25の対応する小さい開口断面により達成される。
【0039】
図1で見られるように、減圧弁24及び3/2方向バルブ25の間のライン22が、圧力の調整若しくは減圧ではない。従って、3/2方向バルブ25をタンクモジュール2の中へ一体化したり、減圧弁24の下流に直接に入れたりすることは、普通である。しかしながら、代わりに、タンクモジュール2の外側、即ち水素供給ライン4の中に3/2方向バルブ25を備え付けることもまた可能である。この態様は、タンクモジュール2のハウジング29により図示されており、該ハウジングは破線で示されている。
【0040】
燃料電池システム1の新たな活性化で、バルブ23が、開口しており、3/2方向バルブ25が、第1切換位置に戻るよう切り換えられる。その後、もしそれが閉じられたとき、バルブ33が開かれる。バルブの切換は、手動若しくは自動で結果づけられる。好ましくはソレノイドバルブが使用される。
【0041】
図2は、3/2方向バルブ25の切換位置を示す。第1切換位置は、水素ライン22から水素供給ライン4の中への水素の流れを許容し、並びに第2切換位置は、水素供給ライン4から水素圧力調整ライン26の中及びそこから大気中への水素の流れを許容する。第2切換位置は、ソレノイドバルブ25の非稼働若しくは非通電(“安全”)状態である。3/2方向バルブ25の開口断面は、第1切換位置において、十分な水素が、燃料電池アセンブリ30の中に常に逃れることができ、並びに第2切換位置において、周辺空気の中に多量の水素があるため、発火水素/空気混合物の構成は、自然の空気変換により回避されるということのみで、常に逃すことが可能である。より大きな開口断面の場合、対応する小さな開口断面を伴う絞り弁位置9は、水素圧力調整ライン26の中で、3/2方向バルブ25の下流に備え付けられる。
【符号の説明】
【0042】
1 燃料電池システム
2 タンクモジュール
3 燃料電池モジュール
4 水素供給ライン
5、6 連結点
7 カバー
9 絞り弁位置
10 空気供給ライン
11 カソード排気ガスライン
12 冷却水供給管
13 冷却水放出ライン
14、28、29 ハウジング
20 高圧水素貯蔵器(タンク)
21、22 水素ライン
23 主閉止弁(バルブ)
24、34 減圧弁
25 3/2方向バルブ
26 水素圧力調整ライン
27、33 チェックバルブ
30 燃料電池アセンブリ
31、32 水素フィードライン
35 アノード排気ガスライン
36 アノード排気ガス放出ライン
37 閉止弁
38 アノード排気ガス再循環ライン
39 アノード排気ガス再循環ポンプ