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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】品質管理トレーサー付きアレイ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220819BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220819BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20220819BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20220819BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220819BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
C12N15/09 200
C12Q1/34
C12Q1/6874 Z
C12Q1/6876 Z
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2019530037
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017067575
(87)【国際公開番号】W WO2018119063
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】62/438,284
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ペイトン シェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エム バイアール
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エス グレイグ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー フーアマン
(72)【発明者】
【氏名】ランドール スミス
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ナイチェン ジャン
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513958(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075204(WO,A1)
【文献】特表2016-525466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0045872(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
C12Q
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別のウェルを含む支持体と、
前記複数の個別のウェルのそれぞれに配置されたゲル材料と、
前記複数の個別のウェルのそれぞれにおける前記ゲル材料にグラフトされた品質管理トレーサーとを備えるアレイであって、
前記品質管理トレーサーは、(a)切断部位を含む切断可能なヌクレオチド配列、および(b)検出可能な標識を含み、
前記検出可能な標識が、前記切断部位で、または、該切断部位に対して遠位の切断可能領域内の位置で、切断可能なヌクレオチド配列に結合しており、
前記品質管理トレーサーは、前記ゲル材料にグラフトされた第1の末端と、検出可能な標識に結合され、かつ、切断部位を有する切断可能領域に結合される第2の末端と、を有するグラフト化領域を有し、
前記グラフト化領域は、プライマーヌクレオチド配列を含み、
さらに、前記検出可能な標識は、蛍光標識であり、前記品質管理トレーサーは、前記切断可能なヌクレオチド配列に結合された前記蛍光標識を有する非反応性ヌクレオチド配列を含む、アレイ。
【請求項2】
前記切断可能なヌクレオチド配列は、非反応性ヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
前記グラフト化領域は、非反応性ヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のアレイ。
【請求項4】
前記切断部位が酵素的に切断可能な核酸塩基を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項5】
前記酵素的に切断可能な核酸塩基は、切除部位を含む、請求項に記載のアレイ。
【請求項6】
前記酵素的に切断可能な核酸塩基が、グリコシラーゼおよびエンドヌクレアーゼとの、またはエキソヌクレアーゼとの反応によって切断可能である、請求項に記載のアレイ。
【請求項7】
前記切断可能なヌクレオチド配列が、その5’末端でゲル材料にグラフトされている、請求項記載のアレイ。
【請求項8】
前記検出可能な標識が、前記切断可能なヌクレオチド配列の3’末端またはその近くに結合している、請求項に記載のアレイ。
【請求項9】
前記検出可能な標識が、前記品質管理トレーサーと前記エキソヌクレアーゼとの反応によって切断可能である、請求項に記載のアレイ。
【請求項10】
前記検出可能な標識が、前記品質管理トレーサーと前記グリコシラーゼおよび前記エンドヌクレアーゼとの反応によって切断可能である、請求項に記載のアレイ。
【請求項11】
前記切断部位が化学的に切断可能なリンカーを含む、請求項1~のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項12】
前記化学的に切断可能なリンカーが、ビシナルジオール、ジスルフィド、シラン、アゾベンゼン、光開裂性基、またはアジドを含む、請求項11に記載のアレイ。
【請求項13】
前記複数の個別のウェルのそれぞれにおいて前記ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列を含む非標識プライマーをさらに含み、前記品質管理トレーサーおよび前記非標識プライマーが所定の比率で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載のアレイ。
【請求項14】
前記ゲル材料が式(I):
【化1】
のポリマーを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のアレイ。
ここで、
は、Hまたは任意に置換されたアルキルであり、
は、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、およびチオールからなる群から選択され、
は、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群から選択され、
-(CH-のそれぞれは、任意に置換されていてもよく、
pは、1~50の範囲の整数であり、
nは、1~50,000の範囲の整数であり、
mは、1~100,000の範囲の整数である。
【請求項15】
前記ゲル材料がPAZAMを含む、請求項14に記載のアレイ。
【請求項16】
前記蛍光標識は、塩化スルホニル染料、シアニン染料、赤色波長染料、蛍光染料、フルオレセインの誘導体、キサンテンフルオロフォア、およびインドカルボシアニン染料からなる群から選択される、請求項に記載のアレイ。
【請求項17】
支持体にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度、分布、または密度および分布を決定する方法であって、
複数の個別のウェルと、複数の個別のウェルのそれぞれに配置されたゲル材料と、品質管理トレーサーと、前記複数の個別のウェルのそれぞれにおける前記ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列とを含む支持体を提供し、前記品質管理トレーサーは、(a)切断部位を含む切断可能なヌクレオチド配列、および(b)検出可能な標識を含み、前記検出可能な標識が、前記切断部位または該切断部位に対して遠位にある切断可能領域内の位置で切断可能ヌクレオチド配列に結合されており、
前記検出可能な標識からのシグナルを検出し、
前記検出可能な標識からのシグナルに少なくとも部分的に基づいて前記品質管理トレーサーの密度および/または分布を決定し、
前記品質管理トレーサーの決定された密度および/または分布に少なくとも部分的に基づいてグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度および/または分布を決定し、
前記品質管理トレーサーを前記ゲル材料にグラフトすることをさらに含み、
前記品質管理トレーサーは、前記ゲル材料にグラフトされた第1の末端と、検出可能な標識に結合され、かつ、切断部位を有する切断可能領域に結合される第2の末端と、を有し、
前記プライマーヌクレオチド配列が、前記品質管理トレーサーのグラフトの前またはそれと同時に、かつ前記検出工程の前に、前記ゲル材料にグラフトされ、
前記品質管理トレーサーおよび前記プライマーヌクレオチド配列は所定の比率でゲル材料にグラフトされ、そしてプライマーヌクレオチド配列の密度および/または分布の決定は検出されたシグナルおよび前記所定の比率に基づく、方法。
【請求項18】
前記品質管理トレーサーが非反応性ヌクレオチド配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記品質管理トレーサーがプライマーヌクレオチド配列を含み、前記品質管理トレーサーのグラフトがプライマーヌクレオチド配列をゲル材料にグラフトするのにも役立つ、請求項17または18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記切断可能なヌクレオチド配列が、第1の末端および第2の末端を有するグラフト化領域を含み、
前記第1の末端はゲル材料にグラフトされており、前記第2の末端は切断部位を含む切断可能領域に連結されており、
前記グラフト化領域の前記第2の末端は、前記切断可能領域の前記切断部位に結合している、請求項1719のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記グラフト化領域が非反応性ヌクレオチド配列を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記切断部位での切断反応によって品質管理トレーサーから検出可能な標識を除去することをさらに含む、請求項1721のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記除去が酵素的切断または化学的切断によって達成される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記検出可能な標識が蛍光標識であり、前記検出されたシグナルが蛍光である、請求項1723のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
支持体上のウェル中のゲル材料に品質管理トレーサーをグラフトし、
前記品質管理トレーサーは、前記ゲル材料にグラフトされた第1の末端と、検出可能な標識に結合され、かつ、切断部位を有する切断可能領域に結合される第2の末端と、を有し、前記検出可能な標識が、前記切断部位または該切断部位に対して遠位にある切断可能領域内の位置で切断可能ヌクレオチド配列に結合され、
前記品質管理トレーサーは、
その3’末端に蛍光標識でタグ付けされた切断可能なヌクレオチド配列であり
蛍光を用いて品質管理トレーサーを検出し、
少なくとも部分的に蛍光に基づいて、前記ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度、または分布、または密度および分布を決定することを含み、
品質管理トレーサーが切断可能なヌクレオチド配列であり、該切断可能なヌクレオチド配列がプライマーヌクレオチド配列であり、
前記プライマーヌクレオチド配列の密度、または分布、または密度および分布が決定された後に、該プライマーヌクレオチド配列から前記蛍光標識を切断することをさらに含み
検出する前に、前記プライマーヌクレオチド配列を前記ゲル材料にグラフトすることをさらに含み、前記切断可能なヌクレオチド配列および前記プライマーヌクレオチド配列は所定の比率で存在し、
前記プライマーヌクレオチド配列の密度、または分布、または密度および分布の決定は、前記蛍光および所定の比率に基づく、方法。
【請求項26】
記切断が酵素的切断または化学的切断によって達成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記切断可能なヌクレオチド配列から前記蛍光標識を切断することが、エキソヌクレアーゼを用いて達成される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
品質管理トレーサーおよびプライマーヌクレオチド配列をアレイに共グラフトする方法であって、
前記品質管理トレーサーと前記プライマーヌクレオチド配列を所定の比率で組み合わせてグラフト混合物を形成し、
前記品質管理トレーサーは、(a)切断部位を含む切断可能なヌクレオチド配列、および(b)検出可能な標識を含み、前記検出可能な標識が、前記切断部位または該切断部位に対して遠位にある切断可能領域内の位置で切断可能ヌクレオチド配列に結合され、
前記グラフト混合物を支持体上のウェル内のゲル材料にさらし、
前記グラフト混合物および前記ゲル材料をインキュベートし、これにより、前記品質管理トレーサーおよび前記プライマーヌクレオチド配列を前記ゲル材料に共グラフトすることを含む、方法。
【請求項29】
前記品質管理トレーサーは、その3’末端に蛍光標識でタグ付けされた切断可能なヌクレオチド配列、または切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識を有する非反応性ヌクレオチド配列である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記検出可能な標識からのシグナルを検出することによりグラフトされた品質管理トレーサーを検出し、
検出された前記シグナルおよび所定の比率に少なくとも部分的に基づいて、前記ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度、または分布、または密度および分布を決定することをさらに含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記切断部位での酵素的切断または化学的切断によって前記切断可能なヌクレオチド配列から前記検出可能な標識を除去することをさらに含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記切断可能なヌクレオチド配列が、前記検出可能な標識を結合するリンカー分子を含む、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記リンカー分子が、ジオール、ジスルフィド、シラン、アゾベンゼン、光開裂性基、またはアジドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記切断部位が切断可能な核酸塩基を含む、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記切断可能な核酸塩基とグリコシラーゼおよびエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼとの反応によって検出可能な標識を除去することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記検出可能な標識が蛍光標識である、請求項28または3035のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
品質管理トレーサーをアレイにグラフトする方法であって、
品質管理トレーサーを支持体上のウェル中のゲル材料にグラフトし、
前記品質管理トレーサーは、(a)切断部位を含む切断可能なヌクレオチド配列、および(b)検出可能な標識を含み、
前記検出可能な標識が、前記切断部位または該切断部位に対して遠位にある切断可能領域内の位置で切断可能ヌクレオチド配列に結合され、
前記切断可能なヌクレオチド配列は、第1の末端および第2の末端を有するグラフト化領域を含み、第1の末端はゲル材料にグラフトされており、第2の末端は前記検出可能な標識に結合しており、前記切断部位を含む切断可能領域に結合していることを含み、
前記グラフト化領域がプライマーヌクレオチド配列を含む、方法。
【請求項38】
前記切断部位で前記品質管理トレーサーを切断し、これにより前記検出可能な標識を除去し、前記ゲル材料にグラフトされた未標識プライマーヌクレオチド配列を提供することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記グラフト化領域が非反応性ヌクレオチド配列を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
プライマーヌクレオチド配列を含むプライマーを、前記品質管理トレーサーを用いて所定の割合で前記ゲル材料にグラフトすることをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記切断部位での切断反応によって前記品質管理トレーサーから検出可能な標識を除去することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、2016年12月22日に出願された米国特許仮出願第62/438,284号の利益を主張する。
【0002】
配列表の参照
EFS-Webを介して本明細書と共に提出された配列表は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。ファイルの名前はILI104BPCT_IP-1477-PCT_Sequence_Listing_ST25.txt、ファイルのサイズは7,477バイト、ファイルの作成日は2017年12月20日である。
【背景技術】
【0003】
生物学的アレイは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む、分子を検出、分析、および/または配列決定するために使用される広範囲のツールのうちの1つである。これらの用途では、アレイは、配列決定または増幅プライマーとして、あるいはヒトおよび他の生物の遺伝子に存在するヌクレオチド配列用のプローブとして有用な核酸配列を含むように設計されている。これらの用途を超えて、生物学的アレイは、広範囲の分子、分子のファミリー、遺伝子発現レベル、一塩基多型、および遺伝子型決定の検出および評価に使用され得る。
【0004】
一般に、遺伝子配列決定は、DNAまたはRNAの断片などの、ある長さの遺伝物質におけるヌクレオチドまたは核酸の順序を決定することを含む。ますます長い塩基対の配列が分析されており、得られた配列情報は、断片が由来する広範な長さの遺伝物質の配列を確実に決定するために断片を互いに論理的に合わせるために様々なバイオインフォマティクス方法において使用され得る。特徴的な断片の自動化されたコンピュータベースの検査が開発されており、そしてゲノムマッピング、遺伝子およびそれらの機能の同定、特定の状態および病状の危険性の評価などにおいて使用されてきた。特定の用途において、例えば、修飾標的核酸は、アレイの表面上の配列決定または増幅プライマーにハイブリダイズされ、増幅され、そしてそれらの遺伝子配列が決定される。
【0005】
他の例では、個々のDNAおよびRNAプローブは、アレイ支持体上の幾何学的グリッド内の小さい位置に(またはランダムに)付着されてもよい。 例えば既知の人または生物からの試験試料は、相補的フラグメントがアレイ中の個々の部位でプローブとハイブリダイズするようにグリッドに曝露されてもよい。次に、断片がハイブリダイズした部位の蛍光によって、どの断片が試料中に存在するかを同定するために、その部位にわたって特定の周波数の光を走査することによってアレイを調べることができる。
【0006】
核酸官能化アレイの適切な機能性および再現性は、それに結合した核酸配列の一貫した表示に依存する。本出願は、品質管理組成物、アレイ、およびアレイ表面への核酸配列の一貫した付着、ならびにその後のアレイの製造および保管後の配列の保持を確実にするための方法に関する。
【発明の概要】
【0007】
特定の局面において、本開示は、複数の個別のウェルを含む支持体と、前記複数の個別のウェルのそれぞれに配置されたゲル材料と、前記複数の個別のウェルのそれぞれにおける前記ゲル材料にグラフトされた品質管理トレーサーとを備えるアレイに関する。いくつかの実施形態では、前記ゲル材料にグラフトされた品質管理トレーサーは、(a)切断部位を含む切断可能なヌクレオチド配列、および(b)検出可能な標識を含む。いくつかの実施形態では、品質管理トレーサーは、トレーサーの第1の末端でゲル材料にグラフトされている。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチド配列は、第1の末端および第2の末端を有するグラフト領域を含み、第1の末端はゲル材料にグラフトされ、第2の末端は検出可能標識に連結される切断可能領域に連結され、切断部位を含む。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチド配列は非反応性ヌクレオチド配列を含み、いくつかの例では、グラフト化領域は非反応性ヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、切断可能なヌクレオチド配列はプライマーヌクレオチド配列を含み、場合によっては、グラフト化領域はプライマーヌクレオチド配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、切断部位で品質管理トレーサーまたは切断可能なヌクレオチド配列に連結されている。他の実施形態では、検出可能な標識は、切断部位およびグラフトされた第1の末端(例えば、支持体-トレーサーのグラフトされた第1の末端-トレーサーの切断部位-トレーサー上の検出可能な標識)から遠位の位置で品質管理トレーサーまたは切断可能ヌクレオチド配列に連結され、さらに別の実施形態では、その位置は切断可能なヌクレオチド配列の3’末端にある。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は切断可能なヌクレオチド配列の3’末端またはその近くに結合している。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチド配列は、その5’末端でゲル材料にグラフトされている。いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、品質管理トレーサーとエキソヌクレアーゼとの反応によって切断可能である。他の実施形態では、検出可能な標識は、品質管理トレーサーとグリコシラーゼおよびエンドヌクレアーゼとの反応によって切断可能である。
【0009】
いくつかの実施形態では、切断部位は、切断可能な核酸塩基である。いくつかの実施形態では、切断可能な核酸塩基は、酵素的に切断可能な核酸塩基である。いくつかの実施形態では、酵素的に切断可能な核酸塩基は、切除部位を含む。いくつかの実施形態では、切断可能な核酸塩基は、グリコシラーゼおよびエンドヌクレアーゼとの、またはエキソヌクレアーゼとの反応によって切断されやすい。いくつかの実施形態では、切断部位は化学的に切断可能なリンカーを含む。いくつかの実施形態では、化学的に切断可能なリンカーは、ビシナルジオール、ジスルフィド、シラン、アゾベンゼン、光開裂性基、またはアジドを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は蛍光標識である。
【0011】
いくつかの実施形態では、品質管理トレーサーは、(a)その3’末端に蛍光標識でタグ付けされた切断可能なヌクレオチド配列、または(b)切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識を含む非反応性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、切断可能なヌクレオチド配列はプライマーヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、品質管理トレーサーを有するアレイは、複数の別々のウェルのそれぞれにおいてゲル材料にグラフトされた非標識プライマーをさらに含み、ここでプライマーはプライマーヌクレオチド配列を含む。そのようなアレイは、本明細書に記載される方法のうちのいずれかにおける使用のために企図される。
【0012】
いくつかの実施形態では、品質管理トレーサーはプライマーヌクレオチド配列を含まず、アレイはさらに、複数の個別のウェルのそれぞれにおいてゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列を含む別々の非標識プライマーを含む。いくつかの実施形態では、品質管理トレーサーおよび非標識プライマー(したがって、プライマーヌクレオチド配列)は、所定の比率でゲル材料上に存在する。
【0013】
本願は、グラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度および/または分布を決定する方法に関するものであって、複数の個別のウェルと、複数の個別のウェルのそれぞれに配置されたゲル材料と、品質管理トレーサーと、前記複数の個別のウェルのそれぞれの前記ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列とを含む支持体を提供し、前記品質管理トレーサーは、(a)切断部位を含む切断可能なヌクレオチド配列、および(b)検出可能な標識を含み、前記検出可能な標識からのシグナルを検出し、前記検出可能な標識からのシグナルに少なくとも部分的に基づいて前記品質管理トレーサーの密度および/または分布を決定し、前記品質管理トレーサーの決定された密度および/または分布に少なくとも部分的に基づいてグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度および/または分布を決定する、方法である。いくつかの実施形態では、方法は、品質管理トレーサーをゲル材料にグラフトすることをさらに含む。いくつかの態様では、品質管理トレーサーはプライマーヌクレオチド配列を含む。他の態様では、品質管理トレーサーは、非反応性ヌクレオチド配列を含み(すなわちプライマーヌクレオチド配列を含まない)、品質管理トレーサーのグラフトの前またはそれと同時に、かつ検出工程の前に、プライマーヌクレオチド配列をゲル材料にグラフトする。他の実施形態では、品質管理トレーサーは、品質管理トレーサーのグラフトがゲル材料にトレーサーとプライマーヌクレオチド配列の両方をグラフトするのに役立つように、プライマーヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、品質管理トレーサーおよびプライマーヌクレオチド配列は、所定の比率でゲル材料にグラフトされ、そしてプライマーヌクレオチド配列の密度および/または分布の決定は、検出されたシグナルおよび所定の比率に基づく。いくつかの実施形態では、方法は、切断部位での切断反応によって品質管理トレーサーから検出可能な標識を除去することをさらに含む。いくつかの例において、除去は酵素的切断または化学的切断によって達成される。いくつかの例において、除去は、切断部位でのグリコシラーゼおよびエンドヌクレアーゼとの、またはエキソヌクレアーゼとの反応によって行われる。他の例において、除去は、切断可能なヌクレオチド配列を検出可能な標識に付着させるリンカー分子の化学反応によって達成される。
【0014】
本明細書に開示される方法の一例において、品質管理トレーサーは支持体上のウェル中のゲル材料にグラフトされる。品質管理トレーサーは、例えば、検出可能な標識が蛍光標識である場合は蛍光を用いて検出され、検出されたシグナルもしくは蛍光に少なくとも部分的に基づいて、ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度もしくは分布、または密度および分布が決定される。いくつかの態様において、この方法は、支持体上のウェル中のゲル材料に品質管理トレーサーをグラフトすること、蛍光を用いて品質管理トレーサーを検出すること、および少なくとも部分的に蛍光に基づいて、ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度、または分布、または密度および分布を決定することを含む。いくつかの態様では、方法は、切断部位で品質管理トレーサーから検出可能な標識を切断することをさらに含む。
【0015】
別の態様では、本開示は、品質管理トレーサーおよびプライマーヌクレオチド配列をアレイに共グラフトする方法に関し、前記品質管理トレーサーと前記プライマーヌクレオチド配列を所定の比率で組み合わせてグラフト混合物を形成し、前記グラフト混合物を支持体上のウェル内のゲル材料にさらし、前記グラフト混合物および前記ゲル材料をインキュベートし、これにより、前記品質管理トレーサーおよび前記プライマーヌクレオチド配列を前記ゲル材料に共グラフトすることを含む、方法である。いくつかの態様では、品質管理トレーサーは、その3’末端に蛍光標識でタグ付けされた切断可能なヌクレオチド配列、または切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識を有する非反応性ヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、この方法はさらに、検出可能な標識からのシグナルを検出することによってグラフトされた品質管理トレーサーを検出することを含み、検出されたシグナルおよび所定の比率に少なくとも部分的に基づいて、ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度、または分布、または密度および分布を決定する。いくつかの態様では、グラフトされた品質管理トレーサーは蛍光を用いて検出され、少なくとも部分的に蛍光および所定の比率に基づいて、ゲル材料にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度または分布、あるいは密度および分布が決定される。さらなる態様では、共グラフトされたゲル材料を含む支持体は、次に、本明細書に記載のグラフトされたプライマーヌクレオチド配列の密度および/または分布を決定する方法において使用される。他の態様では、本方法はさらに、本明細書に記載されるように、切断部位での酵素的切断または化学的切断によって切断可能なヌクレオチド配列から検出可能な標識を除去することを含む。
【0016】
別の態様では、本開示は、品質管理トレーサーをアレイにグラフトする方法に関し、品質管理トレーサーを支持体上のウェル中のゲル材料にグラフトし、前記品質管理トレーサーは、切断部位を含む切断可能なヌクレオチド配列、および検出可能な標識を含み、前記切断可能なヌクレオチド配列は、第1の末端および第2の末端を有するグラフト化領域を含み、第1の末端はゲル材料にグラフトされており、第2の末端は前記検出可能な標識に結合しており、前記切断部位を含む切断可能領域に結合していることを含む、方法である。いくつかの態様では、品質管理トレーサーは、グラフト化領域、すなわち品質管理トレーサーのグラフト化領域のグラフトされた第1末端と切断部位との間にプライマーヌクレオチド配列を含む。この配置では、切断部位での切断はゲル材料にグラフトされた未標識プライマー配列を残す。いくつかの態様では、本方法は、切断部位で品質管理トレーサーを切断し、それによって本明細書に記載の切断方法に従ってゲル材料にグラフトされた検出可能な標識を欠くプライマー配列を提供することをさらに含む。
【0017】
別の態様では、本発明は、プライマーヌクレオチド配列を含むプライマーおよび品質管理トレーサーを含むグラフト混合物に関し、ここでプライマーおよび品質管理トレーサーは所定の比率で混合物中に存在する。
【0018】
本開示の実施例の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかになるであろう。図中、類似の参照番号は、おそらく同一ではないが類似の構成要素に対応する。簡潔にするために、前述の機能を有する参照番号または特徴は、それらが現れる他の図面に関連して説明されてもされなくてもよいこととする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示による例示的なアレイの概略図であり、アレイの全体的なレイアウトを示し、個々のサイトの配置を詳細に示している。
図2図2Aから図2Dは、アレイを形成する方法の一例を示す断面図である。
図3図3Aから図3Dは、本明細書に開示される品質管理トレーサーの異なる例の概略図である。
図4図4は、リンカー分子を含む品質管理トレーサーのいくつかの例、およびリンカー分子を切断するために使用され得る化学物質の例を示す図である。
図5図5は、品質管理方法の一例を示すフロー図である。
図6図6Aおよび図6Bは、それぞれ、プライマーでグラフトされ、相補的染料含有オリゴヌクレオチド(TET QC)とハイブリダイズされた対照フローセルの蛍光画像、および本明細書に開示される品質管理トレーサーの例でグラフトされたフローセルの蛍光画像である。図6Cは、図5Aおよび5Bのグラフト化表面についての品質管理トレーサー蛍光対TET蛍光を示すグラフである。
図7図7Aおよび図7Bは、本明細書に開示する品質管理トレーサーの一例でグラフトされたフローセルの初期蛍光画像(クラスタ生成前)およびクラスタ化後蛍光画像(クラスタ生成後)をそれぞれ示す図である。
図8図8Aおよび図8Bは、図7Aおよび図7Bのグラフトされたフローセルについて、品質管理トレーサー蛍光グラフト化後のプロットおよび品質管理トレーサー蛍光クラスタリング後のプロットをそれぞれ示す図である。
図9図9Aおよび図9Bは、図7Aおよび図7Bのグラフトされたフローセルを用いた、1つの配列決定サイクル(C1)後の赤チャネルについて、それぞれ、リード(読み取り)1(R1)蛍光強度のプロットおよびリード2(R2)蛍光強度のプロットを示す。
図10図10Aおよび図10Bは、図7Aおよび図7Bのグラフトされたフローセルを用いた、1つの配列決定サイクル(C1)後の緑チャネルについての、リード1(R1)蛍光強度のプロットおよびリード2(R2)蛍光強度のプロットをそれぞれ示す。
図11図11Aおよび図11Bは、図7Aおよび図7Bのグラフトされたフローセルについての参照ゲノムに対する、リード1(R1)配列アラインメントのプロットおよびリード2(R2)配列アラインメントのプロットをそれぞれ示す。
図12図12Aおよび図12Bは、それぞれ、図7Aおよび図7Bのグラフトされたフローセルについて、リード1(R1)の配列決定エラー率のプロットおよびリード2(R2)の配列決定エラー率のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される用語は、他に特定されない限り、関連技術におけるそれらの通常の意味をとることが理解されるべきである。本明細書中で使用されるいくつかの用語およびそれらの意味を以下に記載する。
【0021】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないと指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「アルキル」は、完全に飽和している(すなわち、二重結合または三重結合を含まない)直鎖または分岐の炭化水素鎖を指す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有していてもよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシルなどが含まれる。例として、「C1-4アルキル」という表示は、アルキル鎖中に1~4個の炭素原子があることを示し、すなわち、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる群から選択される。
【0023】
アルキルはハロゲン化物またはハロゲンで置換されていてもよく、それは元素周期表の第7欄のいずれか1つの放射線安定原子、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。この基は「アルキルハライド」と呼ばれる。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「アルケニル」または「アルケン」とは、1つ以上の二重結合を含有する直鎖または分岐の炭化水素鎖をいう。アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有していてもよい。アルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどが含まれる。アルケニル基は、例えば、「C2-4アルケニル」と命名することができ、これはアルケニル鎖中に2~4個の炭素原子があることを示す。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「アルキニル」または「アルキン」は、1つまたは複数の三重結合を含有する直鎖または分岐の炭化水素鎖を指す。アルキン基は、2~20個の炭素原子を有していてもよい。アルキン基は、例えば、「C2-4アルキニル」と命名することができ、これは、アルキン鎖中に2~4個の炭素原子があることを示す。
【0026】
「アミド」官能基は、
【化1】
を指し、ここで、Rは蛍光ラベルに結合することができる任意の基であり、R’はHであり、R’’はヌクレオチド配列に結合することができる任意の基である。
【0027】
本明細書で定義されているように、「アミノ」官能基は、-NR基を指し、式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および5-10員ヘテロシクリルから選択される。)
【0028】
本明細書中で使用される場合、「アリール」とは、環骨格中に炭素のみを含有する芳香環または環系(すなわち、2つの隣接する炭素原子を共有する2つ以上の縮合環)をいう。アリールが環系であるとき、その系中の全ての環は芳香族である。アリール基は、6~18個の炭素原子を有していてもよく、これはC6~18と表されてもよい。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、アズレニル、およびアントラセニルが含まれる。
【0029】
「アジド」または「アジド」官能基は、-Nを指す。
【0030】
本明細書で使用されるとき、用語「結合した」は、2つのものが互いに連結、固定、接着、接続または結合されている状態を指す。例えば、核酸は、共有結合または非共有結合によってゲル材料などの材料に結合することができる。共有結合は、原子間の電子対の共有によって特徴付けられる。非共有結合は、電子対の共有を含まない化学結合であり、例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、親水性相互作用および疎水性相互作用を含み得る。
【0031】
本明細書で使用されるとき、「カルボシクリル」は環骨格に炭素原子を含む環または環系を意味する。カルボシクリルが環系であるとき、2つ以上の環が縮合、架橋またはスピロ結合様式で一緒に連結されてもよい。カルボシクリルは、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないという条件で、任意の程度の飽和を有していてもよい。従って、カルボシクリルはシクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルを含む。カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子(すなわち、C3~20)を有していてもよい。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルケニル」または「シクロアルン」は、少なくとも1つの二重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は芳香族ではない。例としては、シクロヘキセニルまたはシクロヘキセンおよびノルボルネンまたはノルボルニル
【化2】
が挙げられる。また本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルケニル」または「ヘテロシクロアルケン」は、少なくとも1つの二重結合を有し、環系中の環は芳香族ではない、環骨格中に少なくとも1個のヘテロ原子を有するカルボシクリル環または環系を意味する。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「シクロアルキニル」または「シクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有するカルボシクリル環または環系を意味し、環系中の環は芳香族ではない。一例はシクロオクチン
【化3】
である。他の例は、ビシクロノニン(すなわち、
【化4】
のような二環式環系)である。
【0034】
また本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクロアルキニル」または「ヘテロシクロアルキン」は、少なくとも1つの三重結合を有する、環骨格中に少なくとも1つのヘテロ原子を有するカルボシクリル環または環系であって、環系中の環は芳香族ではないものを意味する。
【0035】
本明細書で使用される「化学的切断」という用語は、品質管理トレーサーまたはその一部を支持体から除去する化学反応を指す。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「切断可能なヌクレオチド配列」とは、切除部位またはリンカー分子において切断され得る一本鎖核酸配列をいう。
【0037】
アイテムの集まりに関して使用されるとき、用語「それぞれ」は、コレクション内の個々のアイテムを識別することを意図しているが、必ずしもコレクション内のすべてのアイテムを指すとは限らない。明示的な開示または文脈が明らかにそうではないことを示す場合、例外が発生する可能性がある。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「酵素的切断」は、品質管理トレーサーまたはその一部を支持体から除去するためにエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼを利用するプロセスを指す。
【0039】
本明細書で使用される「切除部位」という用語は、酵素によって標的とされるヌクレオチドまたはヌクレオチドの塩基(すなわち核酸塩基)を指す。品質管理トレーサーまたはその一部を切除部位で切断することができる。そのような切断は、単一の酵素的工程または複数の酵素的工程(例えば、塩基修飾または切除とそれに続く切断)を含み得る。
【0040】
本明細書で使用される「蛍光標識」という用語は、ヌクレオチド配列に化学的に結合しているフルオロフォアを指す。蛍光標識は、ヌクレオチド配列の3’末端、非反応性ヌクレオチド配列の切断可能な核酸塩基、またはヌクレオチド配列に結合しているリンカー分子に結合していてもよい。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「ゲル材料」は、液体および気体に対して透過性である半硬質材料を意味することを意図している。典型的には、ゲル材料は、液体が吸収されたときに膨潤し得、そして液体が乾燥によって除去されたときに収縮し得るヒドロゲルである。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「グラフトされた」は、共有結合的に結合され、そしてハイブリダイゼーションのような非共有相互作用を介して単独で結合されないことを意味することを意図する。場合によっては、品質管理トレーサー、切断可能なヌクレオチド配列、非反応性ヌクレオチド配列、および/またはプライマーもしくはプライマーヌクレオチド配列は、トレーサー上の官能基またはゲル材料中の官能基を有する配列間の共有結合の形成によってゲル材料にグラフトされる。本明細書で使用されるとき、用語「共グラフト」は、2つ以上の実体のグラフトを指す。
【0043】
本明細書では、「ヘテロアリール」とは、環骨格中における、1個以上のヘテロ原子、すなわち、これらに限定されないが、窒素、酸素および硫黄を含む、炭素以外の元素を含有する芳香族環または環系(すなわち、2つの隣接する原子を共有する2つ以上の縮合環)を指す。ヘテロアリールが環系であるとき、その系中のすべての環は芳香族である。ヘテロアリール基は、5~18個の環員を有し得る。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロシクリル」は、環骨格中に少なくとも1個のヘテロ原子を含有する非芳香族環式環または環系を意味する。ヘテロシクリルは、融合、架橋またはスピロ結合様式で一緒に結合することができる。ヘテロシクリルは、環系中の少なくとも1つの環が芳香族ではないという条件で、任意の程度の飽和を有していてもよい。環系において、ヘテロ原子は非芳香族環または芳香族環のいずれかに存在し得る。ヘテロシクリル基は、3~20個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含む環主鎖を構成する原子の数)を有していてもよい。ヘテロシクリル基は、「3~6員ヘテロシクリル」または同様の指定として指定され得る。いくつかの例では、ヘテロ原子はO、N、またはSである。
【0045】
本明細書で使用される「ヒドラジン」または「ヒドラジニル」という用語は、-NHNH基を指す。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「ヒドラゾン」または「ヒドラゾニル」という用語は、基R(R)C=N-NHを指し、式中、RおよびRは本明細書で先に定義されている。
【0047】
本明細書で使用されるように、「ヒドロキシル」は-OH基である。
【0048】
本明細書で使用されているように、「間質領域」という用語は、基板/支持体または表面上の、基板または表面の他の領域を分離する領域を指す。例えば、間質領域は、アレイの1つの特徴をアレイの別の特徴から分離することができる。互いに分離されている2つの特徴は離散的、すなわち互いに接触していないことがある。別の例では、間質領域は、特徴の第1の部分を特徴の第2の部分から分離することができる。多くの例では、間隙領域は連続的であるが、例えば、他の点では連続的な表面に画定された複数のウェルの場合のように、特徴は離散的である。間質領域によって提供される分離は、部分的または完全な分離であり得る。間質領域は、表面に画定された特徴の表面材料とは異なる表面材料を有することができる。例えば、アレイの特徴は、間質領域に存在する量または濃度を超える量または濃度のゲル材料および品質管理トレーサーを有することができる。いくつかの例では、ゲル材料および品質管理トレーサーは間質領域に存在しなくてもよい。
【0049】
本明細書で使用される「リンカー分子」という用語は、「一方の末端に、検出可能なまたは蛍光標識に結合することができる官能基、および他方の末端に、ヌクレオチド配列に結合することができる官能基を含む分子を指す。結合点は共有結合である。同様に、本明細書で使用される「連結された」という用語は、直接またはリンカー分子を介してのいずれかで、1つまたは複数の共有結合を介して連結されている2つの実体を指す。
【0050】
本明細書で使用される「ニトリルオキシド」は、「RC≡N」基を意味し、式中、Rは、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および5-10員ヘテロシクリルから選択される。ニトリルオキシドを調製する例としては、クロラミド-Tでの処理による、またはイミドイルクロリドに対する塩基の作用による[RC(Cl)=NOH]、アルドキシムからのinsitu生成が挙げられる。
【0051】
本明細書で使用される「ニトロン」は、「RC=NR 」基を意味し、ここでRおよびRは本明細書で先に定義されており、Rは、本明細書に定義のC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5-10員ヘテロアリール、および5-10員ヘテロシクリルから選択される。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「ヌクレオチド」は、窒素含有複素環式塩基、糖、および1つ以上のリン酸基を含む。ヌクレオチドは核酸配列の単量体単位である。RNAでは、糖はリボースであり、DNAではデオキシリボース、すなわちリボースの2’位に存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素含有複素環式塩基(すなわち核酸塩基)はプリン塩基またはピリミジン塩基であり得る。プリン塩基としては、アデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体が挙げられる。ピリミジン塩基は、シトシン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)、ならびにそれらの修飾誘導体または類似体を含む。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合している。
【0053】
本明細書で言及される「非反応性ヌクレオチド配列」は、行われている特定のDNAまたはRNA合成に積極的に関与しない任意の核酸配列であり得る。いくつかの例では、非反応性ヌクレオチド配列は品質管理トレーサーの一部を構成してもよい。例えば、非反応性ヌクレオチド配列は、切除部位も含む切断可能なヌクレオチド配列の一部であるポリT配列またはポリA配列であり得る。別の例では、非反応性ヌクレオチド配列は、使用されているプライマーヌクレオチド配列と直交してもよく、したがって、非反応性ヌクレオチド配列は、プライマーヌクレオチド配列を利用するDNAまたはRNA合成には関与しないであろう。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「所定の比率」は、混合物中の2つの化合物間の比率を指す。混合物を調製する前に比率を決定する。比率は、混合物中の成分の濃度またはモル濃度の比率であるか、または混合物を作るために混合される2つの成分の溶液の体積の比率である。いくつかの態様では、「所定の比率」は、ゲル材料上のトレーサーとプライマーの比率を指し、そのような場合、その比率は、ゲル材料と反応した成分の比率に基づき、そして場合により2つの成分の任意の異なる反応性を考慮に入れる。いくつかの態様では、トレーサーとプライマーとの混合物についての所定の比率は、プライマー(または複数のプライマー配列が使用される場合はプライマー混合物)のパーセント容量に設定される。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「プライマーヌクレオチド配列」は、DNAまたはRNA合成のための出発点として働く一本鎖核酸配列(例えば、一本鎖DNAまたは一本鎖RNA)として定義される。配列決定用プライマーの5’末端は、ゲル材料とのカップリング反応を可能にするように修飾されてもよい。配列決定プライマー長は、任意の長さの塩基であり得、そして種々の非天然ヌクレオチドを含み得る。一例では、シークエンシングプライマーは、20塩基から50塩基を含む短鎖である。
【0056】
本明細書で使用される「タグなし」という用語は、ヌクレオチド配列に蛍光標識が付着していないことを意味する。
【0057】
「品質管理トレーサー」は、ヌクレオチド配列およびヌクレオチド配列に結合した蛍光標識を含む。品質管理トレーサーの蛍光標識は、品質管理方法において検出することができる。品質管理トレーサーの蛍光標識も除去することができ、そしてトレーサーの残りの部分は、配列決定法に参加することができるか、または配列決定法の間非反応性であるかのいずれかである。
【0058】
本明細書で使用される場合、「部位」とは、ゲル材料および品質管理トレーサーを付着させることができる支持体上または支持体内に規定された位置を指す。
【0059】
「基材」および「支持体」という用語は本明細書では互換的に使用され、その部位がその中または上に位置する表面を指す。支持体は一般に硬質でありそして水性液体に不溶性である。支持体は、ゲル材料を修飾するために使用される化学物質に対して不活性であり得る。例えば、支持体は、本明細書に記載の方法において品質管理トレーサーをゲル材料に付着させるのに使用される化学物質に対して不活性であり得る。適切な支持体の例には、ガラスおよび修飾または官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、Chemours製のTEFLON(登録商標)、環状オレフィン/シクロオレフィンポリマー(COP)(例えば、ZeonからのZEONOR(登録商標))、ポリイミドなど)、ナイロン、セラミック、シリカまたはシリカベースの材料、シロキサン、シリコンおよび変性シリコン、カーボン、金属、無機ガラス、および光ファイババンドルが含まれる。
【0060】
「チオール」官能基は、-SH(例えば、
【化5】
を指す。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「テトラジン」および「テトラジニル」は、4個の窒素原子を含む6員ヘテロアリール基を指す。テトラジンは任意に置換され得る。
【0062】
本明細書で使用される「テトラゾール」は、4個の窒素原子を含む5員複素環式基を指す。テトラゾールは任意に置換され得る。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「ウェル」は、支持体表面の隙間領域によって完全に囲まれている表面開口部を有する支持体中の個別の凹状特徴を指す。ウェルは、例えば、円形、楕円形、正方形、多角形、星形(任意の数の頂点を有する)などを含む、表面の開口部に様々な形状のいずれかを有することができる。表面と直角にとられたウェルの断面は、曲線、正方形、多角形、双曲線、円錐、角形などであり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチド配列は、酵素的切断または化学的切断によって切断可能である。
【0065】
いくつかの例において、切断可能なヌクレオチド配列は蛍光標識を結合するリンカー分子を含み、ここでリンカー分子は酵素的切断または化学的切断により切断可能な部分を含む。いくつかの実施形態では、リンカー分子はビシナルジオールを含み、化学的切断は、例えば過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)などの酸化条件によって達成される。他の実施形態では、リンカー分子はジスルフィドを含み、化学的切断はチオールもしくは第三級ホスフィンを用いて達成され、またはリンカー分子がシランであり、化学的切断が酸もしくはフッ化物イオンで達成され、またはリンカー分子がアゾベンゼンであり、化学的切断がナトリウムジチオネート(Na)で達成され、またはリンカー分子が光開裂性基であり、化学的切断が光で達成され、またはリンカー分子がアジドであり、化学的切断が第三級ホスフィンを用いて達成される。第2の態様の別の例では、方法は、エキソヌクレアーゼを使用して、非反応性ヌクレオチド配列の切断可能な核酸塩基から蛍光標識を切断することをさらに含む。
【0066】
この態様の一例において、品質管理トレーサーは切断可能なヌクレオチド配列を含み、そして切断可能なヌクレオチド配列は切除部位を含む。一例では、切断可能なヌクレオチド配列はプライマーヌクレオチド配列である。
【0067】
この態様の別の例において、品質管理トレーサーは切断可能なヌクレオチド配列であり、そして切断可能なヌクレオチド配列は蛍光標識を結合するリンカー分子を含む。いくつかの実施形態では、リンカー分子は、ジオール、ジスルフィド、シラン、アゾベンゼン、光開裂性基、およびアジドからなる群から選択される官能基を含む。この態様のこの他の例において、切断可能なヌクレオチド配列はさらにリンカー分子に結合したプライマーヌクレオチド配列を含む。
【0068】
この態様のさらに別の例において、品質管理トレーサーは非反応性ヌクレオチド配列であり、そして非反応性ヌクレオチド配列はさらに切除部位を含む。
【0069】
アレイのこの態様は、複数の個別のウェルのそれぞれにおいてゲル材料にグラフトされたタグなしプライマーヌクレオチド配列をさらに含むことができ、ここで品質管理トレーサーおよびタグなしプライマーヌクレオチド配列は所定の比率で存在する。
【0070】
アレイのこの態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法および/または構成で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。
【0071】
本方法の第1の態様の一例では、品質管理トレーサーは切断可能なヌクレオチド配列であり、そして切断可能なヌクレオチド配列はプライマーヌクレオチド配列である。この例では、方法は、プライマーヌクレオチド配列の密度、分布、または密度および分布が決定された後に、プライマーヌクレオチド配列から蛍光標識を切断することをさらに含み得る。
【0072】
方法の第1の態様の別の例では、品質管理トレーサーは切断可能なヌクレオチド配列であり、プライマーヌクレオチド配列は検出前にタグ付けされておらず、この方法は、プライマーヌクレオチド配列をゲル材料にグラフトすることをさらに含み、切断可能なヌクレオチド配列およびプライマーヌクレオチド配列は所定の比率で存在し、プライマーヌクレオチド配列の密度、または分布、または密度および分布の決定は、蛍光および所定の比率に基づく。方法の第1の態様のこの他の例は、切断可能なヌクレオチド配列から蛍光標識を切断することをさらに含み得る。切断は酵素的切断および/または化学的切断によって達成される。
【0073】
方法の第1の態様のさらに別の例では、品質管理トレーサーは非反応性ヌクレオチド配列であり、プライマーヌクレオチド配列はタグなしであり、検出する前に、この方法はさらに、プライマーヌクレオチド配列をゲル材料にグラフトすることを含み、非反応性ヌクレオチド配列とプライマーヌクレオチド配列は所定の割合で存在し、プライマーヌクレオチド配列の密度、または分布、または密度および分布の決定は、蛍光および所定の比率に基づく。本方法の第1の態様のこのさらに他の例は、エキソヌクレアーゼを用いて非反応性ヌクレオチド配列の切断可能な核酸塩基から蛍光標識を切断することをさらに含むことができる。
【0074】
方法の第1の態様の任意の特徴は任意の望ましい方法で互いに組み合わせることができることを理解されたい。さらに、方法および/もしくはアレイの第1の態様の特徴の任意の組み合わせを一緒に使用することができ、並びに/または、これらの態様のいずれかまたは両方からの任意の特徴は、本明細書に開示されている任意の実施例と組み合わせることができることを理解されたい。
【0075】
第2の態様の一例では、方法はさらに、酵素的切断または化学的切断によって切断可能なヌクレオチド配列から蛍光標識を切断することを含む。第2の態様のこの一例のいくつかの例では、品質管理トレーサーは切断可能なヌクレオチド配列であり、切断可能なヌクレオチド配列は蛍光標識を結合するリンカー分子、および以下のうち1つを含む:リンカー分子はジオールを含み、化学的切断は過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)で達成される;またはリンカー分子がジスルフィドを含み、化学的切断がチオールまたは第三級ホスフィンを用いて達成される;またはリンカー分子がシランであり、化学的切断が酸またはフッ化物イオンで達成される、またはリンカー分子がアゾベンゼンであり、化学的切断がナトリウムジチオネート(Na)で達成される;またはリンカー分子が光開裂性基であり、化学的切断が光で達成される;またはリンカー分子がアジドであり、化学的切断が第三級ホスフィンを用いて達成される。
【0076】
第2の態様の別の例では、方法は、エキソヌクレアーゼを使用して、非反応性ヌクレオチド配列の切断可能な核酸塩基から蛍光標識を切断することをさらに含む。
【0077】
方法のこの第2の態様の任意の特徴は、任意の望ましい方法で一緒に組み合わせることができることを理解されたい。さらに、第1の態様および/もしくは第2の態様の特徴の任意の組み合わせを一緒に使用することができること、並びに/またはこれらの態様のいずれかまたは両方からの任意の特徴は、アレイの任意の特徴および/もしくは本明細書に開示される任意の例と組み合わせることができることを理解されたい。
【0078】
本明細書に開示されるアレイの例はいくつかの部位を含み、それらの部位の各々はゲル材料に付着した品質管理トレーサーの例を有する。品質管理トレーサーは、プライマーヌクレオチド配列を含むか、またはプライマーヌクレオチド配列と所定の比率で存在するので、プライマーヌクレオチド配列の密度および/または分布を決定するための品質管理方法において使用することができる。品質管理トレーサーは、品質管理方法において使用され得、そしてそれが配列決定を妨害しないようにトレーサーから切断され得る蛍光標識を含む。場合によっては、品質管理トレーサーを含めることにより、品質管理目的のためにハイブリダイゼーションおよびデハイブリダイゼーションを行う必要性が軽減される。本明細書に開示される実施例は、支持体上のプライマーヌクレオチド配列の密度および/または分布を、シークエンシング試薬およびサンプルをロードする必要なしに、そしてシークエンシングワークフローにおける初期工程を実施する必要なしに評価することを可能にする。
【0079】
本明細書に記載され特許請求の範囲に記載された態様および実施例は、上記の定義に鑑みて理解することができる。
【0080】
図1を参照すると、アレイ10の一例が示されている。一般に、アレイ10は、基板または支持体12と、支持体12を横切る線または流路14とを含む。流路14のそれぞれは、間隙領域18によって互いに隔てられている複数の部位16を含む。各部位16において、少なくとも品質管理トレーサー22がゲル材料に結合している(例えば、図2Dの24、24’)。いくつかの例では、品質管理トレーサー22に加えて、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’もゲル材料24に結合している。
【0081】
図1に示されかつ本開示において論じられるアレイ10は、フローセルの一部として配置され得るか、またはその一部として形成され得、それを横切って様々なキャリア流体、試薬などを流すことができる固体表面を含むチャンバである。一例では、フローセルは、シーリング材料(例えば、黒色ポリイミドまたは他の適切な接合材料)を介して上部基板に接合されたアレイ10を含み得る。接合は、支持体12、封止材料、および上部基板の接合領域で行われる。シール材料が1つの流路14を隣接する流路14から物理的に分離するように(交差汚染を防止するために)結合領域を流路間に配置してもよく、(フローセルを外部汚染から密封するために)フローセルの周囲に配置してもよい。しかしながら、実装領域に応じて、接着領域および封止材料を任意の所望の領域に配置することができることを理解されたい。接合は、レーザ接合、拡散接合、陽極接合、共晶接合、プラズマ活性化接合、ガラスフリット接合、または当技術分野で知られている他の方法を介して達成することができる。
【0082】
アレイ10と一体化することができ、および/または本開示の方法において容易に使用することができるフローセルおよび関連する流体システムおよび検出プラットフォームの他の例は、例えば、これらの各々が、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Bentley et al., Nature 456:53-59 (2008)、国際公開第04/018497号、米国特許第7,057,026号、国際公開第91/06678号、国際公開第07/123744号、米国特許第7,329,492号、米国特許第7,211,414号、米国特許第7,315,019号、および米国特許第7,405,281号、米国特許出願公開第2008/0108082号に記載される。
【0083】
いくつかの用途において、フローセルは、ヌクレオチドシーケンサーのような反応自動化装置において制御された化学的または生化学的反応を行うために使用される。ポート26は、支持体12を貫通して穿孔されてもよい。ポート26に接続することによって、反応自動化装置は、密封流路14内の試薬および生成物の流れを制御してもよい。反応自動化装置は、いくつかの用途では、フローセルの圧力、温度、ガス組成および他の環境条件を調整することができる。さらに、いくつかの用途では、ポート26は上部基板または支持体12と上部基板の両方に穿孔されてもよい。いくつかの用途では、封止された流路14内で起こる反応は、熱、発光および/または蛍光の画像化または測定によって上部基板および/または支持体12を通して監視されてもよい。
【0084】
流路14、部位16などの特定の向きは、図1に示すものとは異なり得ることを理解されたい。いくつかの例では、部位16は連続しており、したがって間質領域18によって分離される必要はない。
【0085】
図1のアレイ10、およびアレイ10をどのように製造することができるかの例を、図2Aから図2Dを参照してより詳細に説明する。
【0086】
図2Aは、その中に画定されそして間質領域18によって分離された部位16を有する支持体12を示す。この支持体12はパターン化された表面を有する。「パターン化された表面」とは、固体支持体12の露出層内または上の異なる領域(すなわち部位16)の配置を指す。例えば、1つ以上の部位16は、1つ以上の品質管理トレーサー22、そして場合によっては別々のプライマーヌクレオチド配列22が存在する特徴であり得る。特徴は、品質管理トレーサー22および別々のプライマーヌクレオチド配列20が存在しない間質領域18によって分離することができる。規則的なパターン、繰り返しのパターン、および規則的でないパターンを含む、サイト16の多くの異なるレイアウトが考えられ得る。一例では、サイト16は、最密充填および改善された密度のために六角形格子に配置される。他のレイアウトは、例えば、直線(すなわち、長方形)レイアウト、三角形レイアウトなどを含み得る。例として、レイアウトまたはパターンは、行および列にあるサイト16のx-yフォーマットであり得る。いくつかの他の例では、レイアウトまたはパターンは、部位16および/または間質領域18の繰り返し配列であり得る。さらに他の例では、レイアウトまたはパターンは、部位16および/または間質領域18のランダムな配置であり得る。パターンは、スポット、パッド、ウェル、ポスト、ストライプ、スワール、ライン、トライアングル、レクタングル、サークル、アーク、チェック、格子縞、対角線、矢印、正方形、および/またはクロスハッチを含み得る。本明細書に記載の実施例で使用することができるパターン化表面のさらに他の例は、これらのそれぞれが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,778,849号、米国特許第9,079,148号、および米国特許第8,778,848、並びに米国特許出願公開第2014/0243224号に記載されている。
【0087】
レイアウトまたはパターンは、定義された領域内のサイト16の密度(すなわち、サイト16の数)に関して特徴付けることができる。例えば、部位16は、1mmあたり約200万個の密度で存在し得る。密度は、例えば1mmあたり少なくとも約100(約100/mm)、約1000/mm、約10万/mm、約100万/mm、約200万/mm、約500万/mm、約1000万/mm、約5000万/mm、またはそれ以上の密度を含む異なる密度に調整することができる。代替的または追加的に、密度は、1mmあたり約5000万個(約5000万/mm)、約1000万/mm、約500万/mm、約200万/mm、約100万/mm、約10万/mm、約1000/mm、約100/mm以下に調整することができる。支持体12上の部位16の密度は、上記の範囲から選択される下限値のうちの1つと上限値のうちの1つとの間であり得ることがさらに理解されるべきである。例として、高密度アレイは、約100nm未満で隔てられたサイト16を有することを特徴とし得、中密度アレイは、約400nmから約1μm離れた部位16を有することを特徴とし得、低密度アレイは、約1μm以上離れているサイト16を有することを特徴とし得る。
【0088】
レイアウトまたはパターンは、平均ピッチ、すなわち部位16の中心から隣接する間質領域18の中心までの間隔(中心間間隔)に関してもまたは代替的に特徴付けられる。パターンは、平均ピッチの周りの変動係数が小さくなるように規則的とすることができ、またはパターンは非規則的とすることができ、その場合変動係数は比較的大きくなり得る。いずれの場合も、平均ピッチは、例えば、少なくとも約10nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約5μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、平均ピッチは、例えば、最大で約100μm、約10μm、約5μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μm以下であり得る。特定のパターンの部位16の平均ピッチは、上記の範囲から選択された下限値の1つと上限値の1つとの間であり得る。一例では、部位16は約1.5μmのピッチ(中心間距離)を有する。
【0089】
いくつかの例では、部位16はウェル16'であり、したがって支持体12はその表面にウェル16'のアレイを含む。ウェル16'(または形状、断面などの異なる構成を有する他の部位16)は、例えばフォトリソグラフィ、ナノインプリントリソグラフィ、スタンピング技術、エンボス加工技術、成形技術、マイクロエッチング技術、印刷技術などを含む様々な技術を使用して製造することができる。当業者には理解されるように、使用される技術は支持体12の組成および形状に依存するであろう。
【0090】
ウェル16'は、マイクロウェル(ミクロンスケールで少なくとも1つの寸法、例えば、約1μm~約1000μmを有する)またはナノウェル(ナノスケールで少なくとも1つの寸法、例えば約1nm~約1000nmを有する)であり得る。各ウェル16’は、その容積、ウェル開口面積、深さ、および/または直径によって特徴付けることができる。
【0091】
各ウェル16’は、液体を閉じ込めることができる任意の容積を有することができる。最小容量または最大容量は、例えば、アレイ10の下流での使用について予想されるスループット(例えば、多重度)、分解能、検体組成、または検体反応性に適応するように選択することができる。例えば、体積は、少なくとも約1×10-3μm、約1×10-2μm、約0.1μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。あるいはまたはさらに、体積は、最大で約1×10μm、約1×10μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.1μm以下であり得る。ゲル材料24はウェル16’の容積の全部または一部を満たすことができることを理解されたい。個々のウェル16’内のゲル材料24の体積は、上で特定された値よりも大きい、小さい、またはその間であり得る。
【0092】
表面上の各ウェル開口部によって占有される面積は、ウェル容積について上述したものと同様の基準に基づいて選択することができる。例えば、表面上の各ウェル開口部の面積は、少なくとも約1×10-3μm、約1×10-2μm、約0.1μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的に又は追加的に、面積は最大で約1×10μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.1μm、約1×10-2μm以下であり得る。
【0093】
各ウェル16’の深さは、少なくとも約0.1μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、深さは最大で約1×10μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.1μm以下であり得る。
【0094】
場合によっては、各ウェル16’の直径は、少なくとも約50nm、約0.1μm、約0.5μm、約1μm、約10μm、約100μm、またはそれ以上であり得る。代替的または追加的に、直径は最大で約1×10μm、約100μm、約10μm、約1μm、約0.5μm、約0.1μm、約50nm以下であり得る。
【0095】
形成されたアレイ10において、ゲル材料24は個々のウェル16’の各々に配置されている。各ウェル16’内にゲル材料24を位置決めすることは、図2に示すように、支持体12のパターン化表面をゲル材料24で最初にコーティングすることによって達成することができる。次に、例えば化学的または機械的研磨によって、ウェル16’間の構造化支持体12の表面上の少なくとも隙間領域18からゲル材料24を除去する。これらのプロセスは、ウェル16’内にゲル材料24の少なくとも一部を保持するが、ウェル16’間の構造化支持体12の表面上の隙間領域18からゲル材料24の少なくとも実質的に全部を除去または不活性化する。そのように、これらのプロセスは、多数のサイクルを伴う配列決定の実行にわたって安定であり得る配列決定に使用されるゲルパッド24’(図2D)を作り出す。
【0096】
特に有用なゲル材料24は、それが存在する部位16の形状に適合するであろう。いくつかの有用なゲル材料24は、(a)それが存在する部位16の形状(例えば、ウェル16’または他の凹状の特徴)に適合することができ、(b)それが存在する部位16の体積を少なくとも実質的に超えない体積を有する。
【0097】
適切なゲル材料24の一例は、式(I):
【化6】
によって表されるポリマーを含み、
ここで、
は、Hまたは任意に置換されたアルキルであり、
は、アジド、任意に置換されたアミノ、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたヒドラゾン、任意に置換されたヒドラジン、カルボキシル、ヒドロキシ、任意に置換されたテトラゾール、任意に置換されたテトラジン、ニトリルオキシド、ニトロン、およびチオールからなる群から選択され、
は、Hおよび任意に置換されたアルキルからなる群から選択され、
-(CH-のそれぞれは、任意に置換されていてもよく、
pは、1~50の範囲の整数であり、
nは、1~50,000の範囲の整数であり、
mは、1~100,000の範囲の整数である。
式(I)の構造において、当業者は、「n」および「m」サブユニットがポリマー全体にランダムな順序で存在する繰り返しサブユニットであることを理解するであろう。当業者はまた、他のモノマー成分がポリマー中に存在し得ることを認識するであろう。
【0098】
ゲル材料24の特定の例は、ポリ(N-(5-アジドアセトアミジルペンチル)アクリルアミド-コ-アクリルアミド(「PAZAM」)であり(例えば、US2014/0079923A1およびUS2015/0005447A1に記載されており、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、これは以下に示す構造:
【化7】
を含み、
ここで、nは1~20,000の範囲の整数であり、そしてmは1~100,000の範囲の整数である。式(I)と同様に、当業者は、「n」および「m」サブユニットがポリマー構造全体にわたってランダムな順序で存在する繰り返し単位であることを認識するであろう。
【0099】
PAZAMの分子量は、約10kDaから約1500kDaの範囲であり得るか、または特定の例では、約312kDaであり得る。
【0100】
いくつかの例では、PAZAMは線状ポリマーである。いくつかの他の実施形態では、PAZAMはわずかに架橋されたポリマーである。他の例では、PAZAMは分岐を含む。
【0101】
適切なゲル材料24の他の例には、アガロースなどのコロイド構造、またはゼラチンのようなポリマーメッシュ構造、またはポリアクリルアミドポリマーおよびコポリマーなどの架橋ポリマー構造、シランフリーアクリルアミド(SFA、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2011/0059865号を参照)。またはアジ化分解版のSFA、を有するものが含まれる。適切なポリアクリルアミドポリマーの例は、例えば、(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)国際公開第2000/031148号に記載されているようにアクリルアミドおよびアクリル酸またはビニル基を含有するアクリル酸から、あるいは、例えば、(それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)国際公開第2001/001143号または国際公開第2003/0014392号に記載されているように、[2+2]光付加環化反応を形成するモノマーから形成することができる。
【0102】
ゲル材料24は予備成形ゲル材料とすることができる。予め形成されたゲル材料は、スピンコーティング、ディッピング、または陽圧もしくは陰圧下でのゲルの流れ、または参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,012,022号に記載の技術を用いてコーティングされ得る。ディッピングまたはディップコーティングは、使用される支持体12およびゲル材料24に応じて、選択的堆積技術であり得る。一例として、パターン化された支持体12を予め形成されたゲル材料24に浸し、そしてゲル材料24が部位16を選択的に充填することができ(すなわち、ゲル材料24は間質領域18上に堆積しない)、そして研磨(または他の除去プロセス)は必要ないかもしれない。
【0103】
予め形成されたPAZAMは、スピンコーティング、ディッピング、または陽圧もしくは陰圧下でのゲルの流動、または米国特許第9,012,022号に記載の技術を使用してパターン化された支持体12上にコーティングすることができる。PAZAMの付着はまた、共有結合を形成するための化学反応によって、またはシラン化表面への表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)を介して起こり得る。
【0104】
いくつかの例において、支持体表面はアルケン誘導体化シランで処理され、ここでアルケン部分は直鎖状、分岐状、または環状であり得る。いくつかの例では、シラン試薬は(RO)Si-リンカー-アルケンであり、他の例では、シラン試薬は(RO)Si-C2-6アルキレン-シクロアルケンであり、他の例では、シラン試薬は(RO)Si-CHCH-ノルボルネンであり、ここで各RはC1-4アルキルであるか、またはメチルもしくはエチルである。PAZAMなどのゲル材料24は、熱または紫外線条件下でアルケン誘導体化シランに共有結合する。
【0105】
他の例では、支持体12の表面を、アミノプロピルトリアルコキシシラン(APTS)などのアミノ誘導体化シラン、例えば、3-アミノプロピル-トリメトキシシラン(APTMS)または3-アミノプロピル-トリエトキシシラン(APTES)で前処理して、表面上の1つまたは複数の酸素原子にケイ素を共有結合させることができる(機構に拘束されることを意図せずに、各ケイ素は1、2または3個の酸素原子に結合し得る)。この化学的に処理された表面を焼き付けてアミン基単層を形成する。次いでアミン基をスルホ-HSABと反応させてアジド誘導体を形成する。1J/cm~30J/cmのエネルギーで21℃でのUV活性化は活性ニトレン種を生成し、これはPAZAMとの様々な挿入反応を容易に受けることができる。
【0106】
支持体12上にPAZAMをコーティングするための他の例は、その全体において参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2014/0200158号に記載されており、これには、アミン官能化表面へのPAZAMモノマーの紫外線(UV)媒介結合、または活性基(塩化アクリロイルまたは他のアルケンまたはアルキン含有分子)を含む熱結合反応と、それに続くPAZAMの堆積および熱の適用が含まれる。
【0107】
ゲル材料24は、後でゲル材料24を形成する液体を塗布することによって形成することができる。続いてゲル材料24を形成する液体を塗布する例は、液体形態のシラン不含アクリルアミドおよびN-[5-(2-ブロモアセチル)アミノペンチル]アクリルアミド(BRAPA)で一連の部位16をコーティングすることであり、試薬が表面で重合することによってゲルを形成することを可能にする。このようにアレイをコーティングすることは、米国特許公開第2011/0059865号に記載されているような化学試薬および手順を使用することができる。
【0108】
ゲル材料24は、(部位16において)支持体12に共有結合していてもよく、または支持体12に共有結合していなくてもよい。部位16へのポリマーの共有結合は、様々な使用中にアレイ10の寿命を通して構造化部位16内にゲルを維持するのに役立つ。しかしながら、上記のようにそして多くの例において、ゲル材料24は部位16に共有結合させる必要はない。例えば、シラン不含アクリルアミド、SFAは支持体12のいかなる部分にも共有結合させない。
【0109】
上述のように、図2Cは、間質領域18からのゲル材料24の除去を示す。除去は研磨によって達成することができる。研磨は、機械的および/または化学的処理工程であり得る。
【0110】
機械的研磨は、(その上にゲル材料24を有する)固体支持体12の表面に研磨力を加えることによって実施することができる。例示的な方法としては、ビーズのスラリーによる研磨、シートまたは布による拭き取り、掻き取りなどが挙げられる。研磨に使用されるビーズは球状であってもなくてもよく、不規則形状、多角形形状、卵形形状、細長形状、円筒形状などを有することができることが理解されよう。ビーズの表面は滑らかでも粗いものでもよい。様々な粒子のいずれも研磨用ビーズとして有用であり得る。研磨の一例は、間隙領域18からゲル材料24を除去するために3μmのシリカビーズスラリー(水中10%w/v)で被覆された糸くずの出ない(クリーンルームグレードの)拭き取り用品を使用することを含む。このスラリーと共に砥石車/砥石機を使用することもできる。機械的研磨は、間隙領域18からゲルを除去するために流体ジェットまたはガス(例えば、アルゴンまたは窒素などの不活性ガスまたは空気)ジェットを使用して達成することもできる。
【0111】
アクリルアミドの加水分解またはラジカルベースの分解(例えば、過酸化ベンゾイルまたは希過酸化水素への曝露による)などの化学研磨技術を使用することができる。この形態の研磨中、化学薬品は固体、液体、気体またはプラズマ状態で供給することができる。したがって、プラズマ研磨はいくつかの例において有用であり得る。
【0112】
研磨は、化学的研磨方法と機械的研磨方法との組み合わせを含むこともでき、粒子のコロイド状懸濁液を含有する化学スラリーを使用して、間隙領域18からゲル材料24の変位部分を機械的に剥離し、次いで化学的に溶解する。
【0113】
間質領域18を研磨または洗浄するための他の方法としては、接着剤ベースの技術、例えば、ゲル材料24に対して親和性を有する硬質の平面接着フィルムを適用し、それによって間質領域18においてゲル材料24と(例えば化学結合により)密接に接触させる技術が挙げられる。この接着フィルムの機械的除去/剥離は、部位16内にゲル材料24を残しながら、間質領域18からゲル材料24を機械的に除去することになる。
【0114】
一例では、チオリン酸グラフトSFAは、以下のように支持体12表面上の間質領域18から除去することができる:水で湿らせたWhatmanワイプを酸化アルミニウム(約100mg、0.3μm)またはスチールビーズに浸すことができ、次いで、形成されたスラリーを、均一な圧力を用いて、小さな同心円状に、(チオホスフェートグラフトSFAをその上に有する)支持体の表面上で擦ることができ、次いできれいな水で濡れたワットマンワイプを使用して、表面からスラリーとチオホスフェートグラフトSFAを除去することができる。
【0115】
間隙領域18からゲル材料24を除去するために本明細書に例示される機械的および化学的研磨方法はまた、ゲル材料24が除去されるかどうかにかかわらず、間質領域18でゲル材料を不活性化するために使用され得る。例えば、ゲル材料24は、品質管理トレーサー22と別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’とを結合する能力に関して不活性化することができる。
【0116】
ゲル材料24が各ウェル16’内に配置された後、品質管理トレーサー22、および場合によっては別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’がゲル材料24にグラフトされる。使用される付着技術、および別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’が含まれるかどうかは、部分的には、利用される品質管理トレーサー22に依存するであろう。品質管理トレーサー22の様々な例が図3Aから図3Dおよび図4に示されている。次に各例について説明する。
【0117】
図3Aは、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’を有するゲル材料24/ゲルパッド24’に含まれる品質管理トレーサー22Aの例を示す。この例では、品質管理トレーサー22Aは、その3’末端が蛍光標識28でタグ付けされた切断可能なヌクレオチド配列27であり、そしてプライマーヌクレオチド配列20、20はタグなしのプライマーヌクレオチド配列である。
【0118】
図3Aの切断可能なヌクレオチド配列27は、その5’末端にゲル材料24に結合することができる官能基を含み得る。この官能基の例には、アルキン、ノルボルニル(または他のシクロアルケニル)、銅フリークリック部分(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、他のシクロアルキンなど)、およびチオールが含まれる。この官能基は、使用されるゲル材料24に基づいて選択され得る。例えば、アルキン、ノルボルニル、および銅フリークリック部分は、クリック反応を介してPAZAMのアジドと反応し得、そしてチオールはSFAと反応し得る。いくつかの実施形態では、官能基はアルキンである。
【0119】
図3Aの切断可能なヌクレオチド配列27はまた、その3’末端に、蛍光標識28に結合することができる官能基を含み得る。オリゴヌクレオチド合成中に使用できるこの官能基の例は、5’-ジメトキシトリチル-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2’-デオキシウリジン、3’-[(2-シアノエチル)-(N、N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(すなわち、アミノ改質剤C6dT)である。他の例には、5’-ジメトキシトリチル-N-ジメチルホルムアミジン-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2’-デオキシシチジン、3’-[(2-シアノエチル)-(N、N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(アミノ修飾剤C6dC)および例えば(2-ジメトキシトリチルオキシメチル-6-フルオレニルメトキシカルボニルアミノ-ヘキサン-1-スクシノイル)-長鎖アルキルアミノ-CPGのような固体支持体の使用が含まれる。3’末端の官能基は、使用される蛍光標識28に基づいて選択され得る。
【0120】
検出可能または蛍光標識28は、例えば3’末端(または3’末端またはその近く)で切断可能なヌクレオチド配列27に結合することができる任意の適切なフルオロフォアであり得る。適切な蛍光標識28の例には、Texas Red(登録商標)(塩化スルホニル染料、Thermo Fisher Scientific)、Cy7(登録商標)、Cy7.5(登録商標)またはスルホ-シアニン7NHSエステル(Lumiprobeからのシアニン染料)、TEX(商標)615(Exiqon)などの赤色波長染料、Alexa Fluor(登録商標)シリーズ(Thermo Fisher Scientific)のような蛍光染料、Atto染料(例えば、その構造が
【化8】
である、Atto-488シリーズ、Atto-TecからのAtto-Tecシリーズ)、FAM(商標)染料(フルオレセインの誘導体、Integrated DNA Technologies)、CAL Fluor(登録商標)染料などのキサンテンフルオロフォア(例えば、LGC Biosearch TechnologiesからのCAL Fluor(登録商標)ゴールド540、CALFluor(登録商標)オレンジ460、CALFluor(登録商標)レッド590、CAL Fluor(登録商標)レッド610、およびCAL Fluor(登録商標)レッド635)、Quasar(登録商標)染料(例えば、LGC Biosearch TechnologiesからのQuasar(登録商標)570、Quasar(登録商標)670、およびQuasar(登録商標)705)などのインドカルボシアニン染料、または当業者に公知の任意の他の適切なフルオロフォアが含まれる。他の例としては、Dylight(商標)488(アミン反応性染料)、または最大発光波長が約518nmのフルオロフォアが挙げられる。いくつかの態様では、蛍光標識はキサンテンフルオロフォアである。いくつかの態様では、キサンテンフルオロフォアは、540から640nm、または540から570nm、または580から640nmの範囲の最大発光を有する。他の態様では、キサンテンフルオロフォアは585から640nmの範囲の最大発光を有する。他の態様では、キサンテンフルオロフォアはスペクトルの赤色領域で発光する。他の態様では、キサンテンフルオロフォアは、最大約591nm、または610nm、または637nmの最大発光を有する。他の適切な検出可能な標識としては、プラズモニックナノ粒子(例えば、SPR検知によって検出される)または量子ドットなどの非蛍光標識が挙げられる。いくつかの態様では、検出可能な標識は、オリゴヌクレオチド配列への結合を可能にするためにNHSなどのアミノ反応性基で誘導体化されている。
【0121】
蛍光標識28は、鋳型指向性ライゲーション、ポリメラーゼ媒介オリゴヌクレオチド伸長、化学合成などの任意の適切な方法を使用して切断可能ヌクレオチド配列27に付着させることができる。蛍光標識28の付着は、ヌクレオチド合成中(例えば、固相オリゴヌクレオチド合成中の蛍光標識修飾モノマーの使用または相補的なフルオロフォア標識DNAの合成を可能にする変異型DNAポリメラーゼの使用)またはヌクレオチド合成後(例えば、カップリング化学反応を介して、ラベル28を3’位に位置する以前に設置された官能基上に共役させる)に起こり得る。
【0122】
切断可能ヌクレオチド配列27のこの例は、切断可能部分31および残りの部分29を含む。切断可能部分31は、蛍光標識28(および蛍光標識28を結合するために使用される任意の官能基)、任意のヌクレオチド配列、および切除部位30を含む。そのため、切断可能なヌクレオチド配列27の切断可能部分31は、配列27が切除部位30に位置するヌクレオチドを標的とする酵素に曝露されたときに除去され得る。酵素的切断後にゲル材料24に結合したままである切断可能なヌクレオチド配列27の部分29は、非反応性ヌクレオチド配列であり、したがって行われるべきまたは行われている配列決定操作に関与しないかまたは干渉しない。残りの部分は、短いポリTまたはポリA配列であり得るか、またはゲル材料24にも結合しているプライマーヌクレオチド配列20、20’に直交する配列であり得る。
【0123】
図3Aの品質管理トレーサー22Aは、(例えば、本明細書に開示されている品質管理方法の例において)別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’と組み合わせて使用される。適切なプライマーヌクレオチド配列20、20’の例には、相補配列へのハイブリダイゼーションおよび配列の増幅のためのフォワード増幅プライマーまたはリバース増幅プライマーが含まれる。適切なプライマーヌクレオチド配列20、20’のいくつかの具体例には、P5および/またはP7プライマーが含まれる。P5およびP7プライマーは、イルミナ社によって販売されている市販のフローセルの表面上で、HiSeq(登録商標)、HiSeqX(登録商標)、MiSeq(登録商標)、NextSeq(登録商標)、Genome Analyzer(登録商標)、および他の機器プラットフォームでの配列決定に使用される。P5およびP7プライマー、ならびに他の配列決定プライマー20、20’は、5’末端でゲル材料24の官能基と反応することができる基で修飾することができる。適切な官能基の一例は、ビシクロ[6.1.0]ノナ(non)-4-イン(BCN)であり、これはゲル材料24のアジドと反応することができる。末端プライマーの他の例には、テトラジン末端プライマー、ノルボルネン末端プライマー、アルキン末端プライマー、アミノ末端プライマー、エポキシまたはグリシジル末端プライマー、チオホスフェート末端プライマー、およびトリアゾリンジオン末端プライマーが含まれる。アルキン末端であり得るP5およびP7プライマーの例には、以下
P5:5’-アルキン-AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC-3’(配列番号1)
P7:5’-アルキン-CAAGCAGAAGACGGCATACGAG*AT-3’(配列番号2)
およびその誘導体が含まれる。いくつかの例では、P7配列はG位に修飾グアニン、例えば8-オキソ-グアニンを含む。他の例では、はGと隣接する3Aの間の結合がホスホロチオエート結合であることを示す。いくつかの例では、P5および/またはP7プライマーは非天然リンカーを含む。
【0124】
場合によっては、P5およびP7プライマーの一方または両方はポリTテールを含むことができる。ポリTテールは一般に、配列の5’末端(例えば、5’末端塩基とアルキン単位との間)に位置するが、場合によっては3’末端に位置し得る。ポリT配列は、例えば2~20個の任意の数のTヌクレオチドを含み得る。
【0125】
P5およびP7プライマーが例として挙げられているが、本明細書に提示されている例では任意の適切な増幅プライマーを使用できることを理解されたい。当業者は、本明細書に提示されるような核酸の捕捉および増幅に適しているプライマーヌクレオチド配列20、20’を設計および使用する方法を理解するであろう。
【0126】
品質管理トレーサー22Aの例は、P5およびP7プライマーヌクレオチド配列20、20’に直交している。いくつかの態様において、品質管理トレーサーはウラシル切除部位を含む。
【0127】
いくつかの態様では、品質管理トレーサーは以下:
5’CATCTAGGCATCTAAGCATCAAUCTTACA3’(配列番号3)
5’ACATACATACATACATACAUACATACA3’(配列番号4)
5’ATTGATTGATTGATTGATUGATTGAT3’(配列番号5)
のシーケンスのうちの1つを含む。
ここで、Uは切断部位である。いくつかの局面において、Uはウラシル切除部位である。
【0128】
いくつかの態様では、品質管理トレーサーは配列の5’末端にポリT配列を含む。いくつかの態様では、ポリT領域は、2~20個、または3、4、5、6、または7個のTヌクレオチドを含む。いくつかのの態様では、ポリT領域は4、5、または6個のT塩基を含む。他の態様では、ポリT領域は6個のTヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、配列は、
(1)5’ポリT-CATCTAGGCATCTAAGCATCAAUCTTACA3’(配列番号6)または
(2)5’ポリT-ACATACATACATACATACAUACATACA3’(配列番号7)または
(3)5’ポリT-ATTGATTGATTGATTGATUGATTGAT3’(配列番号8)
である。
【0129】
いくつかの態様では、品質管理トレーサーは蛍光標識としてテキサスレッド(登録商標)を含む。いくつかの態様では、品質管理トレーサーは
5’-アルキン-CATCTAGGCATCTAAGCATCAAUCTTACA[アミノC6dT-テキサスレッド]-3’(配列番号9)または
5’-アルキン-ACATACATACATACATACAUACATACA[アミノC6dT-テキサスレッド]-3’(配列番号10)または
5’-アルキン-ATTGATTGATTGATTGATUGATTGAT[アミノC6dT-テキサスレッド]-3’(配列番号11)
である。
いくつかの態様では、これらのトレーサーはまた、本明細書中に記載されるように、アルキンと残りの配列との間にポリT領域を含む。
【0130】
いくつかの態様では、品質管理トレーサーは、
5’-アルキン-CATCTAGGCATCTAAGCATCAAUCTTACA[アミノC6 dT-キサンテンフルオロフォア]-3’(配列番号12)または
5’-アルキン-ACATACATACATACATACAUACATACA[アミノC6 dT-キサンテンフルオロフォア]-3’(配列番号13)または
5’-アルキンATTGATTGATTGATTGATUGATTGAT[アミノC6 dT-キサンテンフルオロフォア]-3’(配列番号14)
である。
いくつかの態様では、これらのトレーサーはまた、本明細書中に記載されるように、アルキンと配列の残りの部分との間の5’末端にポリT領域を含む。
【0131】
いくつかの態様では、品質管理トレーサーはアルキン末端を含み、いくつかの態様では、それは5’-ヘキシン末端である。適切な末端を用いてトレーサーをゲル材料に付着させる。
【0132】
いくつかの態様では、品質管理トレーサーは
5’-アルキン-TTTTTTACATACATACATACATACAUACATACA[アミノC6 dT-キサンテンフルオロフォア]-3’(配列番号15)
である。
いくつかの態様では、アルキンはヘキシンである。いくつかの態様では、U切断部位はウラシル切除部位である。いくつかの態様では、キサンテンフルオロフォアは585から640nmの範囲の最大発光を有する。他の態様では、キサンテンフルオロフォアはスペクトルの赤色領域で発光する。他の態様では、キサンテンフルオロフォアは、最大約591nm、または610nm、または637nmの最大発光を有する。いくつかの態様では、フルオロフォアはテキサスレッド(登録商標)である。
【0133】
いくつかの態様では、品質管理トレーサーがプライマー配列と検出可能な標識の両方を含む場合、品質管理トレーサーは、以下のシーケンス:
5’-AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACA-3’(配列番号16)
5’-AATGATACGGCGACCACCGAGAUCACAC-3’(配列番号17)
5’-AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC-3’(配列番号1)
のうちの1つを含む。
いくつかの態様では、品質管理トレーサーは上述のようにポリT領域を含む。いくつかの例では、品質管理トレーサーは、以下のシーケンス:
5’-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACA-3’(配列番号18)
5’-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUCACAC-3’(配列番号19)
5’-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC-3’(配列番号20)
のうちの1つを含む。
いくつかの態様では、品質管理トレーサーはゲル材料へのグラフト化を可能にする末端を含む。いくつかの例では、末端はアルキンまたはヘキシン部分である。したがって、いくつかの態様では、品質管理トレーサーは以下のシーケンス:
5’-(アルキン)-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACA-3’(配列番号18)
5’-(アルキン)-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUCACAC-3’(配列番号19)
5’-(アルキン)-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC-3’(配列番号20)
のうちの1つを含む。
いくつかの態様では、品質管理トレーサーは、本明細書に記載のキサンテンフルオロフォア、またはテキサスレッドを含む。いくつかの態様では、品質管理トレーサーは以下のシーケンス:
5’-(アルキン)-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACA(アミノC6 dT-キサンテンフルオロフォア)-3’(配列番号21)
5’-(アルキン)-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUC(アミノC6 dT-キサンテンフルオロフォア)ACAC-3’(配列番号22)
5’-(アルキン)-(ポリTまたはTTTTTT)AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACAC(アミノC6 dTキサンテンフルオロフォア)-3’(配列番号23)
のうちの1つを含む。
【0134】
図3Aの品質管理トレーサー22Aが使用されるとき、それは別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’に関して所定の比率で存在することが理解されるべきである。本明細書に開示される品質管理方法の一例において、所定の比率を使用して、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’の密度および/または分布を間接的に決定することができる。
【0135】
図3Aに示す例を形成するために、逐次グラフト化または共グラフト化を使用することができる。
【0136】
順次グラフト化は、支持体12(部位16にゲル材料24を有する)を、品質管理トレーサー22Aを含有する溶液または混合物に曝露し、そしてインキュベートし、次に、プライマーヌクレオチド配列20、20’を含む溶液または混合物に曝露し、インキュベートすることによって達成され得る。あるいは、順次グラフト化は、支持体12(部位16にゲル材料24を有する)を、プライマーヌクレオチド配列20、20’を含む溶液または混合物に曝露し、そしてインキュベートし、次に、品質管理トレーサー22Aを含む溶液または混合物に曝露してインキュベートすることによって達成され得る。
【0137】
共グラフト化は、支持体12(部位16にゲル材料24を有する)を品質管理トレーサー22Aおよびプライマーヌクレオチド配列20、20’を含む溶液または混合物に曝露し、次いでインキュベートすることによって達成され得る。この溶液または混合物への支持体12の曝露は、品質管理トレーサー22Aとプライマーヌクレオチド配列20、20’との混合物を支持体12上に堆積させることによって達成され得る。一例では、溶液または混合物は、ゲル材料24でコーティングされた支持体12(図2Cに示される)にわたって引き込まれてもよい。
【0138】
図3Aに示される例を形成するために使用されるグラフト例のいずれにおいても、インキュベーションは、品質管理トレーサー22Aおよび使用されるプライマーヌクレオチド配列20、20’に部分的に依存する所定の温度で行われる。例として、インキュベーションは、約50℃から約70℃の範囲の温度で達成することができる。
【0139】
また、図3Aに示される例を形成するために使用されるグラフト例のいずれにおいても、溶液は、品質管理トレーサー22Aおよび/またはプライマーヌクレオチド配列20、20’、水、緩衝液、および触媒を含み得る。品質管理トレーサー22Aおよび/またはプライマーヌクレオチド配列20、20’は、同じ溶液/混合物中に存在するかまたは別々の溶液/混合物中に存在するかにかかわらず、任意の所望の所定の比率で存在し得る。
【0140】
図3Bは、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’を有するゲル材料24/ゲルパッド24’に含まれる品質管理トレーサー22Bの別の例を示す。この例では、品質管理トレーサー22Bは、切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識28を有する非反応性ヌクレオチド配列32であり、そしてプライマーヌクレオチド配列20、20はタグなしプライマーヌクレオチド配列である。
【0141】
品質管理トレーサー22Bのこの例の非反応性ヌクレオチド配列32は、品質管理方法が実行された後およびシーケンスが実行されている間、少なくとも実質的に無傷のままであり、したがって、配列32は、ゲル材料24にも結合しているプライマーヌクレオチド配列20、20’と直交している。
【0142】
図3Bの非反応性ヌクレオチド配列32は、その5’末端にゲル材料24に結合することができる官能基を含み得る。この官能基の例には、アルキン、ノルボルニル(または他のシクロアルケニル)、銅フリークリック部分(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、他のシクロアルキンなど)、およびチオールが含まれる。この官能基は、使用されるゲル材料24に基づいて選択され得る。例えば、アルキン、ノルボルニル、および銅フリークリック部分は、クリック反応を介してPAZAMのアジドと反応し得、そしてチオールはSFAと反応し得る。
【0143】
品質管理トレーサー22Bのこの例では、蛍光標識28は、配列32の切断可能な核酸塩基に結合している。蛍光標識28が結合している核酸塩基は、ホスホジエステル骨格を無傷のまま残しながら、特定の塩基の切除を触媒するエキソヌクレアーゼによって切断することができるものである。
【0144】
この例では、蛍光標識28は、配列32の3’末端付近(例えば10塩基以内)に付着させることができるが、直接付着させることはできない。選択された標識が非反応性ヌクレオチド配列32の望ましい核酸塩基に共有結合することができる限り、前述の蛍光標識28のいずれを使用してもよい。
【0145】
図3Bの品質管理トレーサー22Bは、(例えば、本明細書に開示されている品質管理方法の例において)別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’と組み合わせて使用される。適切なプライマーヌクレオチド配列20、20’の例には、相補配列へのハイブリダイゼーションおよび配列の増幅のためのフォワード増幅プライマーまたはリバース増幅プライマーが含まれる。適切なプライマーヌクレオチド配列20、20’のいくつかの具体例には、前述のP5またはP7プライマーが含まれる。
【0146】
図3Bの品質管理トレーサー22Bが使用されるとき、それはプライマーヌクレオチド配列20、20’に対して所定の比率で存在することが理解されるべきである。本明細書に開示される品質管理方法の一例において、所定の比率を使用して、プライマーヌクレオチド配列20、20’の密度および/または分布を間接的に決定することができる。
【0147】
図3Bに示される例を形成するために、品質管理トレーサー22Aの代わりに品質管理トレーサー22Bが使用されることを除いて、逐次グラフト化または共グラフト化が前述のように使用されてもよい。図3Bに示される例を形成するために使用されるグラフト例のいずれにおいても、インキュベーションは、ある程度、品質管理トレーサー22Bおよび使用されるプライマーヌクレオチド配列20、20’に依存する所定の温度で行われる。また、図3Bに示される例を形成するために使用されるグラフト例のいずれにおいても、溶液は、品質管理トレーサー22Bおよび/またはプライマーヌクレオチド配列20、20’、水、緩衝液、および触媒を含み得る。品質管理トレーサー22Bおよび/またはプライマーヌクレオチド配列20、20’は、同じ溶液/混合物中に存在するかまたは別々の溶液/混合物中に存在するかにかかわらず、任意の所望の所定の比率で存在し得る。
【0148】
図3Cは、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’を有するゲル材料24/ゲルパッド24’に含まれる品質管理トレーサー22Cのさらに別の例を示す。この例では、品質管理トレーサー22Cは、切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識28(3’末端付近)および切除部位30を有する非反応性ヌクレオチド配列32’であり、プライマーヌクレオチド配列20、20はタグなしプライマーヌクレオチド配列である。
【0149】
品質管理トレーサー22Cのこの例は、切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識28を含むので、品質管理方法が実行された後にエキソヌクレアーゼを用いて蛍光標識28を除去することができる。この例では、品質管理方法が実行された後、非反応性ヌクレオチド配列32’は少なくとも実質的に無傷のままであり、したがって、非反応性ヌクレオチド配列32’は、ゲル材料24にも付着しているプライマーヌクレオチド配列20、20’と直交していてもよい。
【0150】
さらに、この例の品質管理トレーサー22Cも切除部位30を含むので、品質管理方法が実行された後に酵素的切断を用いて非反応性配列32’の切断可能部分31’を除去することができる。この例では、切断可能部分31’は、任意のオリゴヌクレオチドの配列、その配列に沿って核酸塩基に結合した蛍光標識28、および切除部位30を含む。酵素的切断後にゲル材料24に付着したままである非反応性ヌクレオチド配列32’の部分29’もまた非反応性ヌクレオチド配列であり、したがって、実行されることになっている、または実行されているシーケンス操作に参加したり、それを妨害したりすることはない。残りの部分29’は、短いポリTまたはポリA配列であり得るか、またはゲル材料24にも結合したプライマーヌクレオチド配列20、20’に対して直交する配列であり得る。
【0151】
図3Cの非反応性ヌクレオチド配列32’は、その5’末端にゲル材料24に結合することができる官能基を含み得る。この官能基の例には、アルキン、ノルボルニル(または他のシクロアルケニル)、銅フリークリック部分(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、他のシクロアルキンなど)、およびチオールが含まれる。この官能基は、使用されるゲル材料24に基づいて選択され得る。例えば、アルキン、ノルボルニル、および銅フリークリック部分は、クリック反応を介してPAZAMのアジドと反応し得、そしてチオールはSFAと反応し得る。
【0152】
この例では、蛍光標識28は、配列32’の3’末端の近く(例えば、10塩基以内)に付着させることができるが、直接付着させることはできない。選択された標識が非反応性ヌクレオチド配列32’の望ましい核酸塩基に共有結合することができる限り、前述の蛍光標識28のいずれを使用してもよい。
【0153】
図3Cの品質管理トレーサー22Cは、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’と組み合わせて(例えば、本明細書に開示される品質管理方法の例において)使用される。適切なプライマーヌクレオチド配列20、20’の例には、相補配列へのハイブリダイゼーションおよび配列の増幅のためのフォワード増幅プライマーまたはリバース増幅プライマーが含まれる。適切なプライマーヌクレオチド配列20、20’のいくつかの具体例には、前述のP5またはP7プライマーが含まれる。
【0154】
図3Cの品質管理トレーサー22Cが使用されるとき、それはプライマーヌクレオチド配列20、20’に関して所定の比率で存在することが理解されるべきである。本明細書に開示される品質管理方法の一例において、所定の比率を使用して、プライマーヌクレオチド配列20、20’の密度および/または分布を間接的に決定することができる。
【0155】
図3Cに示す例を形成するために、品質管理トレーサー22Aの代わりに品質管理トレーサー22Cを使用することを除いて、逐次グラフト化または共グラフト化を前述のように使用することができる。図3Cに示される例を形成するために使用されるグラフト例のいずれにおいても、インキュベーションは、品質管理トレーサー22Cおよび使用されるプライマーヌクレオチド配列20、20’に部分的に依存する所定の温度で行われる。また、図3Cに示される例を形成するために使用されるグラフト例のいずれにおいても、溶液は品質管理トレーサー22Cおよび/またはプライマーヌクレオチド配列20、20’、水、緩衝液、および触媒を含み得る。品質管理トレーサー22Cおよび/またはプライマーヌクレオチド配列20、20’は、同じ溶液/混合物中に存在するかまたは別々の溶液/混合物中に存在するかにかかわらず、任意の所望の所定の比率で存在し得る。
【0156】
図3Dは、別個のプライマーヌクレオチド配列20、20’を含まずにゲル材料24/ゲルパッド24’に含まれる品質管理トレーサー22Dの例を示す。この例では、品質管理トレーサー22Dは、その3’末端が蛍光標識28でタグ付けされた切断可能なヌクレオチド配列27’である。蛍光標識28は、前述のフルオロフォアのいずれでもよい。
【0157】
切断可能ヌクレオチド配列27’のこの例は、切断可能部分31’’および残りの部分29’’を含む。切断可能部分31’’は、蛍光標識28、任意のヌクレオチド配列、および3’末端付近の切除部位30を含む。切断可能部分31’はまた、蛍光標識28をヌクレオチドの配列に結合させる官能基を含み得る。この官能基の例は、5’-ジメトキシトリチル-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2’-デオキシウリジン、3’-[(2-シアノエチル)-(N、N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(すなわち、アミノ改質剤C6dT)である。他の例には、5’-ジメトキシトリチル-N-ジメチルホルムアミジン-5-[N-(トリフルオロアセチルアミノヘキシル)-3-アクリルイミド]-2’-デオキシシチジン、3’-[(2-シアノエチル)-(N、N-ジイソプロピル)]-ホスホルアミダイト(アミノ修飾剤C6dC)、(2-ジメトキシトリチルオキシメチル-6-フルオレニルメトキシカルボニルアミノ-ヘキサン-1-スクシノイル)-長鎖アルキルアミノ-CPGのような固体支持体の使用が含まれる。この官能基は、使用される蛍光標識28に基づいて選択され得る。切断可能ヌクレオチド配列27’の切断可能部分31’’は、配列27’が切除部位30に位置するヌクレオチドを標的とする酵素に曝露されたときに除去され得る。
【0158】
酵素的切断後にゲル材料24に結合したままである切断可能なヌクレオチド配列27’の部分29’’は、プライマーヌクレオチド配列20、20’である。切断可能部分31’’が除去された後に残るプライマーヌクレオチド配列20、20’は、行われるべきまたは行われている配列決定操作に関与するであろう。本明細書中に開示されるプライマーヌクレオチド配列20、20’の任意の例は、品質管理トレーサー22Dにおいて使用され得る。図3Dの切断可能なヌクレオチド配列27’は、その5’末端にゲル材料24に結合することができる官能基を含み得る。この官能基の例には、アルキン、ノルボルニル(または他のシクロアルケニル)、銅フリークリック部分(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、他のシクロアルキンなど)、およびチオールが含まれる。この官能基は、使用されるゲル材料24に基づいて選択され得る。例えば、アルキン、ノルボルニル、および銅フリークリック部分は、クリック反応を介してPAZAMのアジドと反応し得、そしてチオールはSFAと反応し得る。
【0159】
3’末端に蛍光ラベルテキサスレッド(登録商標)がタグ付けされたP5プライマーの例は、
5’-アルキン-AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACA[アミノC6dT-テキサスレッド]-3’(配列番号24)
である。
【0160】
本明細書に開示される品質管理方法の一例では、図3Dの品質管理トレーサー22Dを使用して、トレーサー22Dの一部であるプライマーヌクレオチド配列20、20’の密度および/または分布を直接決定することができる。
【0161】
図3Dに示される例を形成するために、1つのタイプの品質管理トレーサー22D(それぞれが同じプライマーヌクレオチド配列20または20’を含む)のグラフト化を使用することができ、あるいは、異なるタイプの品質管理トレーサー22D(例えば、そのうちのいくつかはプライマーヌクレオチド配列20を含み、他のものは異なるプライマーヌクレオチド配列20’を含む)の共グラフト化を使用することができる。品質管理トレーサー22Aの代わりに品質管理トレーサー22Dが使用されることを除いて、グラフト化または共グラフト化は前述のように実行されてもよい。
【0162】
品質管理トレーサー22Eのさらに他の例を図4に示す。これらの例では、品質管理トレーサー22Eは、その3’末端に蛍光標識28でタグ付けされた切断可能なヌクレオチド配列である。切断可能なヌクレオチド配列のこれらの例のそれぞれは、ヌクレオチド配列X、リンカー分子34、および蛍光標識28を含む。
【0163】
ヌクレオチド配列Xは、非反応性ヌクレオチド配列(配列32など)またはプライマーヌクレオチド配列(配列20または20’など)であり得る。ヌクレオチド配列Xが非反応性ヌクレオチド配列である場合、品質管理トレーサー22Eは、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’と組み合わせて使用され得る(図3A~3Cに示される例と同様)。ヌクレオチド配列Xがプライマーヌクレオチド配列である場合、品質管理トレーサー22Eは単独で(すなわち、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’なしで)使用され得る(図3Dに示される例と同様)。
【0164】
図4のヌクレオチド配列Xは、その5’末端にゲル材料24に結合することができる官能基を含み得る。この官能基の例には、アルキン、ノルボルニル(または他のシクロアルケニル)、銅フリークリック部分(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DIBO)、他のシクロアルキンなど)、およびチオールが含まれる。この官能基は、使用されるゲル材料24に基づいて選択され得る。例えば、アルキン、ノルボルニル、および銅フリークリック部分は、クリック反応を介してPAZAMのアジドと反応し得、そしてチオールはSFAと反応し得る。
【0165】
リンカー分子34は、一端に、蛍光標識28に(直接的または間接的に)結合することができる官能基を含み、もう一方の端には、ヌクレオチド配列Xに(直接または間接的に)(たとえば、配列Xの3’末端または特定の核酸塩基に)結合することができる官能基を含む。品質管理トレーサー22Eのリンカー分子34は、品質管理方法の一例が実行された後に品質管理トレーサー22Eから少なくとも蛍光標識28を除去する切断反応を受けることができる化学結合を提供する。行われる切断反応は、使用されるリンカー分子34に依存する。例示的なリンカー分子34は、ジオール、ジスルフィド、シラン、アゾベンゼン、光開裂性基、およびアジドを含む。
【0166】
ジオールは、2つのヒドロキシル基を含む化合物である。線状または環状ジオールを使用することができる。適切なジオールの例は、ビシナルジオールであり、ここでヒドロキシル基は隣接する炭素原子に結合している。ビシナルジオールは、過ヨウ素酸塩(過ヨウ素酸ナトリウムなど)への曝露などの酸化的条件下または酵素的条件下で切断可能である。適切なジオールの例は、図1において34Aとして示される酒石酸由来ジオールである。この例では、ジオールの各末端のアミン基はそれぞれの部分に結合し、その一方はヌクレオチド配列Xの3’末端に結合し、他方は任意の適切な結合部位を介して蛍光標識28に結合している(例えば、アルコール、アミン、カルボン酸)。ジオールは、品質管理トレーサー22Eを過酸化ナトリウム(NaIO)にさらすことによって切断することができ、過ヨウ素酸ナトリウムはジオールを2つのアルデヒドに酸化切断することができる。
【0167】
ジスルフィドは一般構造R-S-S-Rを有し、ここでRおよびRはアルキルまたはアリール基のいずれでもよい。ジスルフィド結合は還元条件下で切断される。適切なジスルフィドの例は、図4において34Bとして示される。この例では、ジスルフィドの一端のアミン基は、アルキル鎖のようなリンカーを介して3’末端のヌクレオチド配列Xに結合し、ジスルフィドの他端のアミン基はアミド結合
【化9】
を形成し、
ここで、Rは-(CH-O-蛍光標識28であり、R’はHであり、そしてR’’は-(CH-S-S-(CH-(C=O)-NH-(CH-Xである。蛍光標識28は、任意の適切な結合部位(例えば、アルコール、アミン、カルボン酸)を介して結合される。一例では、品質管理トレーサー22Eを還元条件にさらすことによってジスルフィドを切断することができ、例えば、チオール(RSH、ここでRは任意の適切なアルキル基であり得る)または第三級ホスフィン(R P、ここでRは任意の適切なアルキル基)である。チオールとジスルフィドとの反応は、ジスルフィド結合を破壊し、そして元のジスルフィドから誘導された新しいジスルフィドおよびチオールを生成する。第三級ホスフィンとジスルフィドとの反応は、ジスルフィド結合を破壊し、そして2つの硫黄含有生成物を生成するであろう二分子求核置換(S2)反応である。
【0168】
本明細書で使用され、図4の34Cに示すように、シランは、2つの酸素原子に結合したケイ素原子と2つのR基(例えば、それぞれアルキル基またはアリール基であり得る)を含む。本実施例では、シランの酸素原子はそれぞれリンカー、例えば、3’末端でヌクレオチド配列Xに、そして任意の適切な結合部位(例えば、アルコール、アミン、カルボン酸)を介して蛍光標識28に結合しているアルキル鎖などに結合している。品質管理トレーサー22Eを酸(図4にHとして示す)にさらすことによって、またはフッ化物イオン(図4には示さず)で処理することによって、シランをSi-O結合の1つで切断させることができる。
【0169】
アゾベンゼンは、N=N二重結合で結合した2つのフェニル環からなる化合物である。異なる官能基が、N=N二重結合に対してパラ位でフェニル環から伸びてもよい。これらの官能基は同一でも異なっていてもよく、例としては、アミド基、アルキルアミン、またはヒドロキシル基が挙げられる。適切なアゾベンゼンの例は、図4において34Dとして示される。この例において、官能基はアミド基およびエチルアミンを含む。アミド基は、3’末端のヌクレオチド配列Xに結合しているアルキル鎖などのリンカーに結合しており、エチルアミンのアミン基はアミド結合
【化10】
を形成し、
ここで、Rは-(CH-O-蛍光標識28であり、R’はHであり、R’’は-(CH-アゾベンゼン-(C=O)-NH-(CH-Xである。蛍光標識28は、任意の適切な付着部位(例えばアルコール、アミン、カルボン酸)を介して結合される。一例では、品質管理トレーサー22Eをジチオン酸ナトリウム(Na)にさらすことによってアゾベンゼンを切断させることができる。ジチオン酸ナトリウムとアゾベンゼンとの反応は、アゾベンゼンを2つのアニリン基に還元する。
【0170】
光開裂性基は、光切断部位を含む非ヌクレオチド部分であり、所定の波長の光を所定の時間照射することによって切断が起こる。光開裂性基は、ヌクレオチド配列Xの3’末端で利用可能な任意のホスホルアミダイト修飾を、蛍光標識28に結合した官能基に結合するための中間体として使用することができる。適切な光開裂性基、オルト-ニトロベンジル基の例は、図4において34Eとして示される。本実施例では、光開裂性基はどちらかの末端にアミン基を含む。実施例では、光開裂性基の一端のアミン基は、ヌクレオチド配列Xに結合しているアルキル鎖のようなリンカーに結合し、光開裂性基の他端のアミン基は、-(CH-O-を介して蛍光標識28に結合したアミド結合を形成する。蛍光標識28は、任意の適切な付着部位(例えばアルコール、アミン、カルボン酸)を介して結合される。一例では、品質管理トレーサー22Eを所定の波長の光に所定の時間暴露することによって、少なくとも蛍光標識28が光開裂部位で品質管理トレーサー22Eから切断される。
【0171】
本明細書で述べたように、アジドは基Nを含む任意の分子である。適切なアジドの例は、図4のO-アジドアルキル基34Fとして示される。本実施例では、アジドの一方の末端にあるアミン基は、3’末端のヌクレオチド配列Xに結合しているアルキル鎖などのリンカーに結合し、アジドの反対側のアミン基はアミド結合
【化11】
を形成し、
ここで(この例では)Rは-(CH-O-蛍光標識28であり、R’はHであり、R’’は-(CH-O-(CN)-(CH)-(O(CH-(CH)-(C=O)-NH-(CH-Xである。蛍光標識28は、任意の適切な付着部位(例えばアルコール、アミン、カルボン酸)を介して結合される。一例では、アジドは、品質管理トレーサー22Eを第三級ホスフィン(R P、ここでRは適切に置換されたアルキルまたはアリール基である)にさらすことによって切断されてもよい。三級ホスフィンおよびアジドはシュタウディンガー還元反応を受ける。
【0172】
本明細書に開示される各リンカー分子34は、品質管理方法の一例が実行された後に品質管理トレーサー22Eから少なくとも蛍光標識28を除去する化学的切断反応を受けることができる。残りの部分は、(配列決定に関与しない)非反応性ヌクレオチド配列または(配列決定に関与するであろう)プライマーヌクレオチド配列であり得る。
【0173】
品質管理トレーサー22Eのヌクレオチド配列Xが非反応性である場合、品質管理トレーサー22Eは、本明細書で前述したように、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’と順次グラフトまたは共グラフトされてもよい。品質管理トレーサー22Eのヌクレオチド配列Xがプライマーヌクレオチド配列20、20’である場合、1種類の品質管理トレーサー22E(それぞれ同じプライマーヌクレオチド配列20または20’を含む)をグラフトしてもよく、あるいは、異なる種類の品質管理トレーサー22E(例えば、そのうちのいくつかはプライマーヌクレオチド配列20を含み、他のものは異なるプライマーヌクレオチド配列20’を含む)を共グラフトしてもよい。品質管理トレーサー22Aの代わりに品質管理トレーサー22Eの例が使用されることを除いて、グラフト化または共グラフト化は前述のように実行されてもよい。
【0174】
図2Dに戻って参照すると、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’を有する品質管理トレーサー22の例が示される。プライマーヌクレオチド配列20、20’を含むトレーサー22の例では(例えば、トレーサー22Dおよびトレーサー22Eのいくつかの例)、別個のプライマーヌクレオチド配列20、20’はトレーサー22と共に存在しないであろう。
【0175】
本明細書に開示されるアレイ10は、品質管理方法において使用され得る。品質管理方法の一例を図5に示す。方法50は、概して、品質管理トレーサー22を支持体12上のウェル16’内のゲル材料24にグラフトすることを含み、品質管理トレーサーは、その3’末端が蛍光標識28で標識された切断可能なヌクレオチド配列27、27’、および(参照番号52で示すように)切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識28を有する非反応性ヌクレオチド配列32、32’からなる群から選択され、(参照番号54に示すように)蛍光を用いて品質管理トレーサー22を検出し、(参照番号56で示すように)少なくとも部分的に蛍光に基づいて、ゲル材料24にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列20、20’の密度、または分布、または密度および分布を決定する。
【0176】
品質管理方法は、品質管理トレーサー22を単独でまたは別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’と組み合わせてゲル材料24にグラフトした後でかつフローセル製造の完了前(例えば、アレイ10を上部基板フローセルに結合する前に)に実施することができる。品質管理方法は、追加的にまたは代替的に、完全に製造されたフローセルのエンドユーザーによって実行されてもよい。品質管理方法がフローセルのエンドユーザーによって実施されるとき、その方法は、任意のシークエンシングワークフロー試薬およびDNAサンプルをフローセル上にロードする前に実施され得ることが理解されるべきである。各品質管理トレーサー22A、22B、22C、22D、22Eは検出可能な蛍光標識28を含むので、蛍光標識された相補的ヌクレオチドのハイブリダイゼーションは、本明細書に開示される品質管理方法の一部として行われる必要はない。
【0177】
方法50では、品質管理トレーサー22A、22B、22C、22D、22Eの様々な例のグラフトは、前述のように達成することができる。
【0178】
例示的な品質管理トレーサー22A、22B、22C、22D、22Eのそれぞれは、より短い波長の入射放射線に露光されると、より長い波長の光を放射する蛍光ラベル28を含む。したがって、品質管理トレーサー22を検出することは、アレイ10(またはアレイ10を含むフローセル)をレーザによって放出された放射にさらすことによって達成することができる。レーザ励起の後、各品質管理トレーサー22A、22B、22C、22D、22Eの蛍光標識28から放出された蛍光(強度に関して)は、適切な蛍光検出器を介して捕捉される。
【0179】
品質管理トレーサー22A、22B、22C、またはトレーサー22Eのいくつかの例が、別々のプライマーヌクレオチド配列20、20’と共に所定の比率で利用される場合、これらの品質管理トレーサー22A、22B、22C、22Eからの蛍光強度および所定の比率は、プライマーヌクレオチド配列20、20’の密度および/または分布を評価または間接的に決定するために使用され得る。蛍光強度は、品質管理トレーサー22A、22B、22C、22E、および22Cの密度および/または分布を示し、所定の比率により、品質管理トレーサー22A、22B、22C、22Eのデータをプライマーヌクレオチド配列20、20’と相関させることが可能になる。
【0180】
品質管理トレーサー22Dまたはトレーサー22Eの他の例(プライマーヌクレオチド配列20、20’を含む)を利用する場合、蛍光結果のみを使用して、プライマーヌクレオチド配列20、20’の密度および/または分布を評価または直接決定することができる。品質管理トレーサー22D、22Eのこれらの例は、トレーサー22D、22Eの一部として配列20、20’を含み、したがって蛍光強度のみがプライマーヌクレオチド配列20、20’の密度および/または分布を示す。
【0181】
品質管理方法の完了後(例えば、ワークフローのエンドユーザー部分で)、蛍光標識28は、本明細書に記載の方法を使用して品質管理トレーサー22A、22B、22C、22D、22Eから切断されてもよい。
【0182】
図3Aを参照して上述したように、品質管理トレーサー22Aは切除部位30を含む。したがって、この例のトレーサー22Aにおける蛍光標識28の切断は酵素的切断を介して達成され得る。品質管理トレーサー22Aは、切除部位30に位置するヌクレオチドを標的とする酵素にさらされる。酵素は、配列決定を開始する前に導入されてもよく、または配列決定ワークフローのクラスタ生成プロセスの一部として導入されてもよい。適切な酵素の例には、エキソヌクレアーゼ(配列の末端から連続ヌクレオチドを除去する)、エンドヌクレアーゼ(配列内のホスホジエステル結合を切断する)、塩基除去修復酵素(特定の塩基を除去してアプリン/アピリミジン(AP)部位を形成し、その後APエンドヌクレアーゼによって切断され得る)、制限酵素(一本鎖配列を切断する4~6ヌクレオチドの特定の配列について品質管理トレーサー22Aをスキャンする)などが含まれる。いくつかの具体例を以下の表1に示す。
【0183】
【表1】
【0184】
表1において、は蛍光標識28を表し、Nはヌクレオチドを表し、そして切除部位は太字である。
【0185】
表1の一例では、切除部位30は、USER酵素によって標的とされるウラシル(dU)である。USER酵素は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)とDNAグリコシラーゼ-リアーゼエンドヌクレアーゼVIIIとの混合物である。UDGは、ウラシル塩基の切除を触媒し、ホスホジエステル骨格を無傷のまま残しながら、脱塩基(アピリミジン)部位を形成する。エンドヌクレアーゼVIIIのリアーゼ活性は、塩基を含まないデオキシリボースが放出されるように、脱塩基部位の3’側と5’側でホスホジエステル主鎖を切断する。そのため、切除部位30でのトレーサー22Aの切断は、支持体12から配列27の部分31および蛍光標識28を除去する。表1の他の例では、切除部位30は、FPGによって標的とされる酸化プリン(例えば、oxoG)である。FPGは酸化グアニンを認識し除去する。FPGは、N-グリコシラーゼおよびAP-リアーゼの両方として作用する。
【0186】
酵素的切断後にゲル材料24に付着したままである品質管理トレーサー22Aの部分29は、非反応性ヌクレオチド配列であり、したがって、行われるべきまたは行われている配列決定操作に関与しないかまたは干渉しない。
【0187】
図3Bを参照して上述したように、品質管理トレーサー22Bは、配列32の切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識28を含む。品質管理トレーサー22Bは、ホスホジエステル切断による特定の塩基の切除を触媒するエキソヌクレアーゼにさらされる。エキソヌクレアーゼは、配列決定を開始する前に導入され得るか、または配列決定ワークフローのクラスタ生成プロセスの一部として導入され得る。一例として、エキソヌクレアーゼIは、それに結合した蛍光標識28を有するウラシル塩基の切除を触媒する。
【0188】
核酸塩基切断後にゲル材料24に付着したままである品質管理トレーサー22Bの配列32は、非反応性であり、したがって、行われるべきまたは行われている配列決定操作に関与しないかまたは干渉しない。
【0189】
図3Cを参照して上述したように、品質管理トレーサー22Cは、切断部位30と同様に、配列32’の切断可能な核酸塩基に結合した蛍光標識28を含む。このように、この例のトレーサー22Cにおける蛍光標識28の切断は、酵素的切断の前述の例のいずれかを介して達成され得る。一例では、エキソヌクレアーゼを使用して、蛍光標識28が結合している塩基の切除を触媒することができる。別の例では、切除部位30に位置するヌクレオチドを標的とする酵素を使用して、配列32’の部分31’の切除を触媒することができる。これらの例では、酵素は、配列決定を開始する前に導入されてもよく、または配列決定ワークフローのクラスタ生成プロセスの一部として導入されてもよい。
【0190】
核酸塩基または部分31’切断後にゲル材料24に付着したままである品質管理トレーサー22Cの配列32’の部分29’は非反応性であり、したがって、実行されることになっている、または実行されているシーケンス操作に参加したり、それを妨害したりすることはない。
【0191】
図3Dを参照して上述したように、品質管理トレーサー22Dは切断部位30を含む。このように、この例のトレーサー22Dにおける蛍光標識28の切断は、酵素的切断の前述の例のいずれかを介して達成され得る。本実施例では、部分31’の切断後にゲル材料24に結合したままである配列27’の部分29’’は、プライマーヌクレオチド配列20、20’であり、したがって、実行される予定の、または実行中の順序付け操作に参加する。
【0192】
図4を参照して上述したように、品質管理トレーサー22Eの様々な例はリンカー分子34を含む。これらの例のトレーサー22Eにおける蛍光標識28の切断は、トレーサー22Eをトレーサー22E中に存在するリンカー分子34を切断するのに適した化学物質にさらすことによる化学的切断によって達成することができる。リンカー分子34A、34B、34C、34D、34E、34Fおよび関連する切断化学物質の様々な例を、図4を参照して説明する。これらの例では、切断化学物質は配列決定を開始する前に導入することができる。
【0193】
化学的切断後にゲル材料24に結合したままである品質管理トレーサー22Eの部分は、ヌクレオチド配列Xおよび化学的切断が起こる場所に依存するであろう。残りの部分は、非反応性ヌクレオチド配列(これは配列決定に関与しないかまたは干渉しない)またはプライマーヌクレオチド配列(配列決定に関与するであろう)を含み得る。
【0194】
図には示されていないが、方法の別の例は、品質管理トレーサーの例(例えば、22A、22B、22C、および22Eのいくつかの例)を、所定の比率でプライマーヌクレオチド配列20、20’を有するグラフト混合物に組み込み、グラフト混合物を支持体23上のウェル16’内のゲル材料24にさらし、グラフト混合物をインキュベートし、それによって品質管理トレーサー22A、22B、22C、ならびに22Eのいくつかの例およびプライマーヌクレオチド配列20、20’をゲル材料24に共グラフトし、蛍光を用いて品質管理トレーサーを検出し、少なくとも部分的に蛍光および所定の比率に基づいて、ゲル材料24にグラフトされたプライマーヌクレオチド配列20、20’の密度、または分布、または密度および分布を決定することを含む。
【0195】
蛍光標識28が切断された後に、しばしば合成による配列決定(SBS)、連結による配列決定、パイロシーケンシングなどと呼ばれる技術を含む、様々な配列決定アプローチまたは技術を実施することができる。これらの技術のいずれにおいても、ゲル材料24および付着したプライマーヌクレオチド配列20、20’は、間質領域18上ではなく部位16内に存在するので、増幅は様々な部位16に限定されるであろう。
【0196】
簡単に説明すると、合成による配列決定(SBS)反応は、イルミナ(San Diego, CA)製のHiSeq(登録商標)、HiSeqX(登録商標)、MiSeq(登録商標)またはNexSeq(登録商標)シーケンサーシステムのようなシステムで行われ得る。配列決定されるべき一組の標的DNA分子は、結合したプライマーヌクレオチド配列20、20’(そしていかなる非反応性ヌクレオチド配列にもない)にハイブリダイズされ、次いでブリッジ増幅または動的排除増幅によって増幅される。変性により、一本鎖鋳型がゲル材料24に固定されたままになり、数百万の二本鎖DNAの密集クラスタが生成される(すなわちクラスタ生成)。次いで配列決定反応を実施する。データを整列させ、そして参照と比較し、そして配列決定の差異を同定する。
【0197】
本開示をさらに説明するために、一例を本明細書に示す。この実施例は説明目的のために提供され、そして本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0198】
実施例
以下の品質管理トレーサー
5’-ヘキシン-ポリTテール-CATCTAGGCATCTAAGCATCAAUCTTACA[アミノC6 dT-テキサスレッド]-3’
(配列番号25)を使用した。
【0199】
基材表面へのP5/P7プライマーグラフト化の品質管理のためのQCトレーサーの例を評価するために、10%のスパイクのQCトレーサーを用い、QCトレーサースパイクなしで(対照)、P5/P7プライマーグラフト混合物を調製した。10%のスパイクのQCトレーサーを含むP5/P7プライマー混合物をグラフトした基質表面を、トレーサー蛍光を測定することによって評価した。対照表面(QCトレーサースパイクなし)をハイブリダイゼーションベースのTET QCによって評価した。TETは、P5/P7プライマーに対して相補的な配列を有する色素標識オリゴヌクレオチドである。TETを表面上のP5/P7プライマーとハイブリダイズさせ、過剰のTETを洗い流し、そして付着した色素濃度を蛍光検出により測定する。
【0200】
図6Aおよび6Bはそれぞれ、相補的染料含有オリゴヌクレオチド(TET QC)とハイブリダイズしたグラフト化対照基板表面の蛍光画像およびQCトレーサーを含むグラフト化基板表面の蛍光画像を示す。図6Cは、図6Aおよび6Bのグラフト表面についてのQCトレーサー蛍光対TET蛍光のプロットを示す。図6A~6Cのデータは、QCトレーサーからの蛍光強度が基板表面上のP5/P7密度と相関することを示す。
【0201】
標準的なクラスタ生成プロセス中のフローセルの表面からのグラフト化QCトレーサーの切断を評価するために、異なるQCトレーサーをグラフト化したフローセルを使用した。図7Aは、初期蛍光画像を示し、これは、クラスタ生成前のQCトレーサーをグラフトしたフローセルを示す。図7Bは、クラスタ形成後のQCトレーサーをグラフトしたフローセルを示すクラスタ形成後の蛍光画像を示す。QCトレーサー(200nM)は、
5’-ヘキシン-ポリTテール-CATCTAGGCATCTAAGCATCAAUCTTACA[アミノC6dT-テキサスレッド]-3’(配列番号25)(200nMトレーサー)
5’-ヘキシン-ポリTテール-AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACA[アミノC6dT-テキサスレッド]-3’(配列番号26)(200nMP5)
および
1:1の補正最終P5/P7比を有する5’-ヘキシン-ポリTテール-AATGATACGGCGACCACCGAGAUCTACA[アミノC6dT-テキサスレッド]-3’(配列番号26)(200nMPg(1:1))
であった。
【0202】
図7Aの初期蛍光画像を参照すると、フローセル内の暗い領域はQCトレーサーからのシグナルであり、より明るい領域はコントロールレーンである(すなわち、QCトレーサーは存在しなかった)。図7Bのポストクラスタ化蛍光画像を参照すると、QCトレーサーからのシグナルは実質的に減少しており、クラスタ形成中のQCトレーサーの切断を示している。
【0203】
図8Aおよび図8Bは、図7Aおよび図7Bのグラフトされたフローセルについて、それぞれ、QCトレーサー蛍光ポストグラフトのプロットおよびQCトレーサー蛍光ポストクラスタリングのプロットを示す。データは、クラスタ形成後の残留蛍光が最小であることを示している。切断効率は約97%~約99%の範囲である。
【0204】
下流の配列決定指標に対するQCトレーサー移植およびその後の切断の効果を評価するために、図7Aおよび7Bのフローセルを配列決定に使用した。
【0205】
図9Aおよび9Bは、1つのシークエンシングサイクル(C1)後の赤色チャネルについて、それぞれリード1(R1)蛍光強度のプロットおよびリード2(R2)蛍光強度のプロットを示す。データは、赤チャンネルのC1強度がQCトレーサーの使用による影響を最小限に抑えていることを示す。
【0206】
図10Aおよび10Bは、1つのシークエンシングサイクル(C1)後の緑色チャネルについて、それぞれ読み取り1(R1)蛍光強度のプロットおよび読み取り2(R2)蛍光強度のプロットを示す。データは、緑色チャンネルのC1強度がQCトレーサーの使用による影響を最小限に抑えていることを示す。
【0207】
図11Aおよび11Bは、参照ゲノムに対する、リード1(R1)配列アラインメントのプロットおよびリード2(R2)配列アラインメントのプロットをそれぞれ示す。データは、QCトレーサーの使用による配列アラインメントの測定基準への影響がほとんどまたはまったくないことを示す。
【0208】
図12Aおよび12Bは、それぞれリード1(R1)の配列決定エラー率のプロットおよびリード2(R2)の配列決定エラーレートのプロットを示す。データは、シーケンシングエラー率メトリクスにQCトレーサーを使用してもほとんどまたはまったく影響がないことを示す。
補足
【0209】
(そのような概念が互いに矛盾しない限り)前述の概念のすべての組み合わせが、本明細書に開示されている発明の主題の一部であると考えられることを理解されたい。特に、本開示の終わりに現れる特許請求された主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示された発明の主題の一部であると考えられる。また、参照により本明細書に組み込まれる任意の開示にも現れる可能性がある本明細書で明示的に使用される用語は、本明細書で開示される特定の概念と最も矛盾しない意味に一致するはずである。
【0210】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0211】
本明細書を通して、「一の例」、「他の例」、「一例」などへの言及は、それを意味する。例に関連して説明された特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)は、本明細書に説明された少なくとも1つの例に含まれ、他の例には存在してもしなくてもよい。さらに、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、任意の例について記載された要素は、さまざまな例において任意の適切な方法で組み合わされ得ることを理解されたい。
【0212】
本明細書に提供される範囲は、記載された範囲、および記載された範囲内の任意の値または部分的な範囲を含むことが理解されるべきである。例えば、約10kDa~約1500kDaの範囲は、約10kDa~約1500kDaの明示的に列挙された限界だけでなく、約18kDa、約325kDa、約425kDa、約1075kDaなどの個々の値、および約425kDa~約990kDa、約235kDa~約780kDaまでなどのサブレンジなども含むと解釈されるべきである。さらに、「約」および/または「実質的に」が値を記載するために利用されるとき、それらは記載された値からのわずかな変動(最大±10%まで)を包含することを意味する。
【0213】
いくつかの例が詳細に説明されているが、開示された例が修正されてもよいことが理解されるべきである。したがって、前述の説明は非限定的であると見なされるべきである。
図1
図2A-2D】
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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