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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】光ベースの皮膚処置装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/20 20060101AFI20220819BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
A61B18/20
H01S3/00 A
H01S3/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019534801
(86)(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017084648
(87)【国際公開番号】W WO2018122266
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】16207164.1
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】バルゲーセ バブ
(72)【発明者】
【氏名】フェルハーフェン リエコ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506503(JP,A)
【文献】特表2009-532079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0040379(US,A1)
【文献】特表2012-533388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/20 - A61B 18/28
A61N 5/06 - A61N 5/067
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ誘起光学破壊によって対象の組織を処置するための装置であって、前記装置は、
パルス光ビームを供給するための光源と、
前記パルス光ビームを受け取り、組織内に位置決めすることができる焦点スポットを有する集束パルス光ビームを出力するための集束システムと、
前記装置の使用中に前記組織に接触し、前記パルス光ビームが前記焦点スポットに達する前に接触面を通じて前記装置から出射することを可能にするための前記接触面を有する光出射窓と
を備え、
前記装置は、前記接触面と前記組織との間の接触の状態に応じたフィードバック信号を検出するためのフィードバックシステムを備え、
前記フィードバック信号は、前記集束パルス光ビームによって生成される音声を含み、前記フィードバックシステムは、前記音声を検出するための装置を備え、前記フィードバックシステムは、さらに、前記音声の1つ又は複数の特性から接触の状態を判定するためのものである、装置。
【請求項2】
前記フィードバックシステムが、前記フィードバック信号の表現及び/又は判定されている接触の状態の指示をユーザに与えるためのユーザインターフェースを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィードバックシステムは、さらに、前記フィードバック信号及び/又は前記判定されている接触の状態に応じて、前記集束パルス光ビームのパワー密度を変化させる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記パワー密度を変化させることは、
前記フィードバック信号と閾値信号とを比較すること、すなわち、前記判定されている接触の状態と所望の接触の状態とを比較することであって、前記閾値信号は、前記所望の接触の状態と関連付けられ、前記所望の接触の状態とは、前記装置又は前記組織の表面に対する大幅な損傷を防止するのに十分に良好である接触の状態である、比較することと、
前記フィードバック信号と前記閾値信号との比較が前記所望の接触の状態よりも良好でない接触の状態を指示する場合、前記パワー密度を低減することと
を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記パワー密度を変化させることは、前記集束パルス光ビームのパワー及び/又は前記集束パルス光ビームの集束若しくはビーム形状を変化させることを有する、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記フィードバック信号は、前記接触の状態に依存する光を含むことができ、前記フィードバックシステムは、光を検出するための、画像センサ及び画像プロセッサを備え、前記フィードバックシステムは、さらに、前記画像センサによってキャプチャされる画像の1つ又は複数の特性から接触の状態を判定するためのものである、請求項1からの何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
検出される前記光は、パルス光ビーム又は集束パルス光ビームによって生成される、請求項に記載の装置。
【請求項8】
検出される前記光は、前記接触面からの光である、請求項又はに記載の装置。
【請求項9】
レーザ誘起光学破壊によって対象の組織を処置するための装置の作動方法であって、前記装置は、光源と、集束システムと、光出射窓と、フィードバックシステムとを備え、前記光出射窓は、前記組織と接触する接触面を有し、パルス光ビームが焦点スポットに達する前に、前記パルス光ビームが前記接触面を通じて前記装置から出射することを可能し、前記装置の使用中に前記組織に接触するための前記接触面を有し、前記フィードバックシステムは、音声を検出するための装置を備え、前記方法は、
前記光源が、前記パルス光ビームを供給するステップと、
前記集束システムが、前記パルス光ビームを集束して、前記組織内に位置決めされる前記焦点スポットを有する集束パルス光ビームにするステップと、
前記フィードバックシステムが、前記接触面と前記組織との間の接触の状態に応じたフィードバック信号を検出するステップと
を有し、前記フィードバック信号は、前記集束パルス光ビームによって生成される音声を含み、
前記フィードバックシステムが、前記音声の1つ又は複数の特性から前記接触の状態を判定するステップをさらに有する、方法。
【請求項10】
前記フィードバックシステムが、前記フィードバック信号及び/又は判定されている前記接触の状態に応じて、前記集束パルス光ビームのパワー密度を変化させるステップを有する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ誘起光学破壊(LIOB)によって対象の組織を処置するための装置及び方法に関する。本装置及び方法は、装置が使用されているときに組織に接触するための光出射窓を通じた光ビームの集束を利用する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、光ベースの皮膚処置装置と称されることがあり、例えば、肌の若返り術、しわ治療及び散髪に使用することができる。光ベースのしわ治療では、装置は、処置されるべき皮膚の真皮層内に焦点スポットを生成する。レーザのパワー及びパルス持続時間並びに焦点スポットの寸法は、皮膚組織の再成長を刺激し、それによって、しわを低減するために、レーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が皮膚に影響を与えるように、選択される。光ベースの散髪では、入射光ビームが毛髪の内部に集束され、LIOB現象によって毛髪が断ち切られる。
【0003】
例えば、国際公開第2005/011510号パンフレットとして公開されている国際特許出願は、所定のパルス時間中にレーザビームを生成するためのレーザ源と、レーザビームを焦点スポットに集束するための光学システムと、焦点スポットを標的位置に位置決めするためのレーザビームマニピュレータとを備える、毛髪を短くするための装置を記載している。焦点スポットの寸法及び生成されるレーザビームのパワーは、焦点スポットにおいて、レーザビームが毛髪組織の特性閾値を上回るパワー密度を有するようなものであり、この特性閾値を上回れば、所定のパルス時間について、レーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が毛髪組織内で発生する。
【0004】
一般に、レーザ誘起光学破壊(LIOB)は、焦点スポット内のレーザビームのパワー密度(W/cm)が、特定の媒質の特性である閾値を超えるときに、レーザビームの波長について透明又は半透明である媒質において発生する。閾値未満では、この特定の媒質は、レーザビームの特定の波長について相対的に低い線形的な吸収特性を有する。閾値を上回るとき、媒質は、レーザビームの特定の波長について非常に非線形的な吸収特性を有し、これは、媒質のイオン化及びプラズマの形成の結果である。このLIOB現象は、キャビテーション及び衝撃波の生成のような、複数の機械的効果をもたらし、これによって、LIOB現象の位置の周囲の位置において媒質が損傷する。
【0005】
LIOB現象を使用して、皮膚から成長する毛髪を破壊し、短くすることができることが分かっている。毛髪組織は、約500nmと2000nmとの間の波長に対して透明又は半透明である。この範囲内の波長の各値について、LIOB現象は、焦点スポット内のレーザビームのパワー密度(W/cm)が、毛髪組織の特性である閾値を超えるときに、焦点スポットの位置において毛髪組織内で発生する。上記閾値は、水性媒質及び組織の特性である閾値にかなり近く、レーザビームのパルス時間に依存する。特に、必要なパワー密度の閾値は、パルス時間が増大すると低減する。
【0006】
大きな損傷を引き起こすのに十分に効果的であるLIOB現象の結果としての機械的効果、すなわち、少なくとも毛髪の初期破壊を達成するためには、例えば、10ns程度のパルス時間で十分である。このパルス時間値について、焦点スポット内のレーザビームのパワー密度の閾値は2*1010W/cm程度である。説明したパルス時間について、且つ、例えば、十分に大きい開口数を有するレンズを用いることによって得られる焦点スポットの十分に小さい寸法によって、この閾値は、わずか10分の数ミリジュールの合計パルスエネルギーによって達成することができる。
【0007】
肌の若返り術に対する光学破壊の有効性は、皮膚の光学的及び構造的特性、焦点内のレーザ強度、光結合などのようないくつかの要因に依存する。多くの場合、処置深さは、角質層及び表皮の厚さに応じて異なり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生じ得る問題は、例えば、衝撃波、プラズマ、高パワー密度のような、LIOBの産物によって出射窓が損傷する可能性があることである。特に、LIOBが一般的に光出射窓の近くで発生するように、装置が構成されているためである。損傷した出射窓には、装置が所望の位置において十分に密な焦点を与える能力に対する有害な効果があり、これによって、処置プロセスの効率が低減する可能性がある。加えて又は代替的に、そのような損傷は、皮膚炎のような、処置の有害な副作用の発生を増大する可能性がある。特に、損傷に起因する焦点深さの変化によって真皮の上方に表層病変が生成される場合、毛細血管の微細断裂に起因して点状出血(微小出血)が発生する可能性があり、結果として、ここでも効率が低減し、処置される人の回復に必要な望ましくない長い社会的休止時間をもたらす副作用が増大する可能性がある。
【0009】
それゆえ、前述した問題に対処する、すなわち、出射窓損傷及び/又は装置若しくは方法の使用中のそのような皮膚炎を低減又は防止することが可能な装置及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0011】
第1の態様によれば、レーザ誘起光学破壊によって対象の組織を処置するための装置が提供され、装置は、
パルス光ビームを供給するための光源と、
パルス光ビームを受け取り、組織内に位置決めすることができる焦点スポットを有する集束パルス光ビームを出力するための集束システムと、
装置の使用中の組織に接触し、パルス光ビームが焦点スポットに達する前に接触面を通じて装置から出射することを可能にするための接触面を有する光出射窓と
を備え、
装置は、接触面と組織との間の接触の状態に応じたフィードバック信号を検出するためのフィードバックシステムを備える。
【0012】
組織は好ましくは、例えば、動物又は人類の毛髪、皮膚若しくは臓器表面又は境界組織のような、哺乳類の組織である。組織は典型的には、人間又は動物である対象の組織である。組織は皮膚であってもよい。
【0013】
光源及び集束システムは、焦点スポットが組織内に位置決めされているときに焦点スポット内で組織のレーザ誘起光学破壊を引き起こすのに適している。これは、光源及び集束システムがともに、レーザ誘起光学破壊を引き起こすのに十分に高いパワー密度の光が存在する焦点スポットをもたらすことを意味する。
【0014】
光源はレーザとすることができる。光出射窓は、レーザ光に対して少なくとも部分的に透明である。
【0015】
出射窓は、パルス光が組織に入るようにするために、装置からパルス光が出射することを可能にする限り、任意の形状をとることができる。光出射窓は、集束システムから別個のものとすることができるが、集束システムの一部とすることもできる。光出射面の接触面は、通過する光ビームの収束を変化させないようなものとすることができる。代替的に、接触面はまた、ビーム収束を変化させるように設計されてもよい(例えば、例として集束を補助するためにビーム収束を増大させるための凸面)。出射窓は、レンズ面又は他の光学面からなることができる。
【0016】
光出射面は、装置が使用されているときに組織の表面と接触するように意図された接触面を有する。接触は、間に屈折率整合流体を用いて又は用いずに組織の表面に対向する接触面によって直接的に達成することができるが、ここでも接触する複数の表面の間に1つ又は複数の屈折率整合流体を用いて、これらの表面の間に1つ又は複数の透明シートが位置決めされることを伴うこともできる。
【0017】
装置の通常使用中の接触の状態は、この使用が装置、出射窓又は組織表面にほとんど損傷を引き起こさないようなものとすべきである。
【0018】
接触とは、光学的接触、並びに/又は、装置から出射するとき及び/若しくは組織に入射するときにビームの反射及び/若しくは散乱が望ましくない損傷を引き起こすほどに大きい接触を意味し得る。
【0019】
装置及び方法は、接触の状態に依存するフィードバック信号を検出することができるフィードバックシステム及び方法を利用する。したがって、接触の状態を判定(測定)することができ、接触の状態が上記に照らして不十分であることが分かった場合、光パルスのパワー密度を低減することができる。逆に、(再び)接触が十分であると判定された場合、パワー密度を増大することもできる。したがって、フィードバックは、組織との接触の改善及び光結合の均一化、並びに、接触窓/出射レンズの損傷及び組織損傷の防止を可能にするために使用することができる。これによって、処置の安全性及び効率が向上する。
【0020】
フィードバック信号はまた、焦点スポットが組織内にあるか否かを判定するために使用することもできる。このフィードバックシステムは、光学破壊によって、病変が組織内でのみ生成されることを保証することによって、その効果(例えば、肌の若返り術など)を有するのに十分な病変が形成されることを保証することが可能である。これによって、副作用、及び、皮膚組織の場合には、可能な社会的休止時間を最小にして、処置の効率が増強される。
【0021】
フィードバックシステムは、検出されているフィードバック信号に基づいて、又は当該信号から接触の状態を判定するようにさらに適合される。
【0022】
装置のコントロールユニットが、フィードバック信号及び/又は判定されている接触の状態の指示のユーザが知覚可能な表現をユーザに与えるためのユーザインターフェースを備える。したがって、ユーザは、ユーザインターフェースから接触が不十分であると気付いた場合に、パワー密度を低減することを決断することができる。
【0023】
フィードバックシステムは、好ましくは、フィードバック信号及び/又は判定されている接触の状態に応じて、集束パルス光ビームのパワー密度を変化させるためのものである。したがって、フィードバックを受けて、パワー密度の低減に起因してさらなる損傷を防止又は低減することができる。逆に、所望の接触が確立されている場合、LIOBが生成されるレベルを使用するためにパワー密度を増大させることができる。
【0024】
パワー密度を変化させることは、
フィードバック信号と閾値信号とを比較すること、又は、判定されている接触の状態と所望の接触の状態とを比較することであって、閾値信号は、所望の接触の状態と関連付けられ、所望の接触の状態とは、装置又は組織の表面に対する大幅な損傷を防止するのに十分に良好である接触の状態である、比較することと、
フィードバック信号と閾値信号との比較が所望の接触の状態よりも良好でない接触の状態を指示する場合、パワー密度を低減することと
を有することができる。加えて又は代替的に、パワー密度を変化させることは、フィードバック信号と閾値信号との比較が、接触の状態が所望の接触の状態以上であることを指示する場合、パワー密度を増大させることを有することができる。
【0025】
パワー密度を低減することは、パワー密度をゼロ、又は、好ましくは空気であるが組織とすることもできる関連する媒質若しくは接触面との接触を形成するために使用される別の媒質内でLIOBを生成するための閾値未満の値に低減することを有することができる。
【0026】
パワー密度を変化させることは、集束パルス光ビームのパワー及び/又は集束パルス光ビームの集束若しくはビーム形状を変化させることを有することができる。LIOBに必要とされるパワー密度は、集束ビーム、特に、焦点スポットに適用される。その変化は、単独又は組み合わせのいずれかでの種々の装置のフィードバック信号に応じた制御を伴い得る。光源のパワー出力を低減又は増大させるためのコントローラを使用することができる。焦点スポットに達する光ビームを減衰させるためのビーム減衰手段を使用することができる。例えば、ビーム内に配置することができる開口、フィルタ、又はビーム偏向手段が存在する。焦点スポット内の焦点の質を低減又は増大させるための装置を使用することができる。例えば、集束システムは、焦点スポットと光出射窓の接触面との間の距離を増大させるように制御することができる。また、ビーム内にあるとき、又は、散乱様式を増大させたときに焦点の質を低減させる光散乱装置を使用することもできる。
【0027】
接触の質が閾値接触を下回って降下するとき、すなわち、圧力又は力が閾値を下回って降下するとき、光源を低減若しくは機能停止し、又は、入射光が皮膚に達するのを防止するためのコントローラが存在する。コントローラは、後者の目的のために、例えば、シャッタ又は光ビーム偏向装置を動作させる。
【0028】
フィードバック信号は、集束パルス光ビームによって生成される音声を含み、フィードバックシステムは、音声を検出するための装置を備え、フィードバックシステムは、さらに、音声の1つ又は複数の特性から接触の状態を判定するためのものである。マイクロフォンを検出器として使用することができるが、好ましくは、検出器は、音響信号を測定するためのハイドロフォンである。焦点内で組織上に蓄積されている高いエネルギーが、熱的現象(熱弾性膨張)、光学的現象(プラズマスパーク)、及び音響現象を生成する。音響信号は、生成される衝撃波の超音速膨張及びそれと関連付けられるプラズマ波の膨張からもたらされる特性広帯域可聴音響波を含み、又は、当該音響波から構成される。レーザ生成プラズマからの音響放出は、例えば、プラズマから数cmの近接した距離に配置されたダイナミックマイクロフォンを使用して検出される。好ましい特性音響周波数は、3~16kHzの範囲内である。これは皮膚組織に対して良好に作用する。
【0029】
したがって、フィードバックシステムは、好ましくは、音声のスペクトル特性を識別するためのものである。例えば、ハイドロフォン出力における周波数又はピークが、LIOBが行われた物質の指示を提供する。これが組織内にない場合、接触に不備がある。
【0030】
音声信号の代わりに又は音声信号に加えて、フィードバック信号は、接触の状態に依存する光を含むことができ、フィードバックシステムは、光を検出するための装置を備え、フィードバックシステムは、さらに、光の1つ又は複数の特性から接触の状態を判定するためのものである。装置は光学装置であり、接触は、接触面又は組織表面から反射される光から評価することができる。装置は、接触面によって少なくとも部分的に反射されるためのものであり、その反射が接触の状態に依存する第2の光を接触面に供給するための第2の光源を有することができる。このとき、装置はまた、そのような反射光を検出するための検出器をも有する。TIRを使用することができる。波長及び/又は強度はパルス光ビームのものとは異なってもよく、又は、好ましくは、異なる(強度はパルス光ビームのものよりも低い)。また、組織中で発生しているか否かにかかわらず、LIOB事象は、一般に、接触の状態を指示することができる光を生成する。空気又は組織以外の媒質中のLIOBは、不十分な接触を指示する。
【0031】
好ましくは、光は、パルス光ビーム又は集束パルス光ビームによって生成される。また、この光は、屈折率整合が完璧でない接触面によっても、ある程度反射される。したがって、接触の質もまた、反射パルス光の変化を引き起こす。この実施形態は、第2の光源及び検出器の必要性をなくす。したがって、この装置は、より単純で、よりロバストであり得る。
【0032】
フィードバックのための光は、好ましくは、接触面に由来する。このように、最も信頼できるフィードバックは、LIOBが行われるか否かに光が依存しないときに提供される。
【0033】
光を検出するための装置は、画像センサを備えることができ、フィードバックシステムはさらに、画像センサによってキャプチャされる画像の1つ又は複数の特性から接触の状態を判定するためのものである。
【0034】
装置は、画像センサと、画像プロセッサとを備える。焦点は、LIOBと関連付けられる特性光学フラッシュ(プラズマスパーク)に基づいて検出することができる。典型的には、特性フラッシュの広域スペクトル範囲は、400~1100nmの波長範囲内である。プラズマからの発光スペクトルは、分光計と、増強電荷結合素子(ICCD)との組み合わせを使用して測定することができる。焦点位置に応じて、フラッシュスペクトルは、焦点内の物質(ガラス界面、液浸媒質、例えば皮膚のような組織など)の特性であるスペクトルピークを呈し、焦点の特徴として、また、LIOBが行われたか否かの指標として使用することができる。
【0035】
したがって、画像プロセッサは、好ましくは、LIOBが行われた物質の指示を提供する、組織から受け取られる光のスペクトルピークを識別するためのものである。
【0036】
画像プロセッサは、加えて、集束システムと組織との間の接触の質を判定するために、画像センサによってキャプチャされる画像を分析するように適合される。
【0037】
このように、焦点の深さと、システムと組織との光学的接触の質の両方を判定するために、光学分析を使用することもできる。
【0038】
接触の質は、単純なモノクロ又はRGBカメラを使用してキャプチャされる画像の鏡面反射の均一性に基づいて測定することができる。結合が最適で均一である場合、強度分布は均質なガウス分布に従う。画像特徴及び不均一性は、光学的接触の質が低減していることを表す。
【0039】
したがって、画像プロセッサは、接触の質を表す、キャプチャされている画像の不均一性を識別するためのものである。
【0040】
画像プロセッサは、例えば、皮膚の赤みのような組織の色変化のレベルを判定するために、画像センサによってキャプチャされる画像を分析するように適合される。このように、許容閾値を超えるレベルの炎症が検出される場合、処置を停止することができる。したがって、フィードバックシステムは、過剰な炎症を防止するために両方の予防対策を実施するが、処置が許容不可能なレベルの炎症をもたらした場合を検出する安全策をも有する。
【0041】
フィードバックシステムは、画像センサと画像プロセッサとを備え、皮膚から受け取られる光を検出し、画像プロセッサは、組織の彩色のレベルを判定するために画像センサによってキャプチャされる画像を分析するように適合される。
【0042】
好ましくは、彩色のレベルは、皮膚の赤みのレベルである。これは、例えば、上記で説明したような、皮膚の赤みを分析する態様に関係する。
【0043】
この場合、光源を機能停止し、又は、皮膚の赤みのレベルが閾値を超えたときに入射光が皮膚に達するのを防止するためのコントローラが提供される。ここでも、コントローラは、防止を実施するために、例えば、シャッタ又は光ビーム偏向装置を動作させる。
【0044】
前述したフィードバック信号に加えて、又は、前述したフィードバック信号に代えて、フィードバック信号は、力、又は、力に依存する圧力、若しくは、装置の使用中に光出射窓が組織に対して圧迫される圧力を含むことができ、フィードバックシステムは、力又は圧力を検出するための検出器を備え、フィードバックシステムは、力若しくは圧力に基づいて、又は、力若しくは圧力から接触の状態を判定するためのものである。接触力又は圧力が不十分である場合、光学的接触も不十分である可能性がある。例えば、接触圧力がない場合、これは、接触が不十分であることを指示する可能性がある。
【0045】
好ましくは、圧力又は力が加えられているという指示をユーザに与えるための出力システムも提供される。加えられている圧力又は力が適切な圧力又は力であるか否かを指示するために、監視される圧力又は力と基準圧力又は力との比較が実施される。加えられている圧力又は力が基準値を下回ると、パルス提供は自動的に中断される。
【0046】
このように、ユーザは、組織との必要な接触を維持するのに適した圧力又は力を加えるように案内される。
【0047】
すべての例において、焦点が組織内にないと判定されるため、組織の過剰な色変化(例えば、皮膚の赤み)があるため、又は、検出される接触が不十分であるために、処置を停止すべきであると決定された場合に光源を機能停止することなどによって、パワー密度を低減するためのコントローラが提供される。これによって、安全カットオフが可能になる。
【0048】
本明細書において前述した実施形態はいずれも、光源、集束システム、及び/又は、フィードバックシステムを制御するためのコントローラを含むこともできる。そのようなコントローラは、IC又はコンピュータのような電気回路の形態とすることができる。
【0049】
本発明の別の態様によれば、レーザ誘起光学破壊によって対象の組織を処置する方法を提供し、方法は、
パルス光ビームを供給するステップと、
パルス光ビームを集束して、組織内に位置決めされる焦点スポットを有する集束パルス光ビームにするステップと、
組織と接触する接触面を有し、パルス光ビームが焦点スポットに達する前に、パルス光ビームが接触面を通じて装置から出射することを可能にする光出射窓を提供するステップであって、光出射窓は、装置の使用中に組織に接触するための接触面を有する、光出射窓を提供するステップと、
接触面と組織との間の接触の状態に応じたフィードバック信号を検出するステップと
を有する。
【0050】
本明細書において装置について上述した特徴が、方法の対応する特徴に変換され、それらが同じ利点を有し、同じ問題を解決することは明らかであろう。
【0051】
方法は、検出されているフィードバック信号に基づいて、又は当該信号から接触の状態を判定するステップをさらに有することができる。
【0052】
方法は、フィードバック信号及び/又は判定されている接触の状態に応じて、集束パルス光ビームのパワー密度を変化させるステップを有することができる。
【0053】
集束システムと組織との間の接触の質を判定するために画像センサによってキャプチャされている画像を分析し、その後、接触の質が閾値レベルを下回ると判定される場合に光源を機能停止することなど、上記で概説した方策を利用することもできる。
【0054】
光源パルスによって生成される音声を検出し、それによって、焦点スポットが組織内にあるか否かを判定するためにフィードバックシステムを使用することもできる。この場合、焦点スポットが組織内にないと判定される場合、光源が機能停止される。
【0055】
組織に対する、装置に加えられる圧力を監視するための上述したフィードバックを利用することもでき、ここでは、適切な圧力が加えられているか否かに関する指示をユーザに提供するために出力システムが使用される。この場合、圧力が適切でないと判定される場合、光源が機能停止される。
【0056】
本発明はまた、光ベースの皮膚処置方法をも提供し、方法は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するステップと、
入射光ビームを組織内の焦点スポットに集束させるステップと、組織から受け取られる光を検出し、光源パルスによって生成される音声を検出し、それによって、焦点スポットが組織内にあるか否かを判定するステップと
を有する。
【0057】
本発明はまた、光ベースの組織処置方法をも提供し、方法は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するステップと、
入射光ビームを組織内の焦点スポットに集束させるステップと、
組織に対する、装置に加えられる圧力を検知し、適切な圧力が加えられているか否かに関する指示をユーザに提供するステップと
を有する。
【0058】
本発明はまた、光ベースの組織処置方法をも提供し、方法は、
組織のレーザ誘起光学破壊によって組織を処置するためのパルス光ビームを供給するステップと、
入射光ビームを組織内の焦点スポットに集束させるステップと、
組織から受け取られる光の画像を検出し、画像を分析して、例えば、皮膚の赤みのような組織彩色のレベルを判定するステップと
を有する。
【0059】
これらの方法は非治療的方法であり、特に、例えば、肌の若返り術、しわ低減、又は毛髪除去のための美容方法である。
【0060】
ここで、添付の図面を参照して本発明の例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1A】知られているLIOB皮膚処置装置の概略図である。
図1B】知られているLIOB皮膚処置装置の概略図である。
図2】焦点深さ制御を実施するための知られている方式を示す図である。
図3】フィードバックシステムの第1の実施例を有する装置を示す図である。
図4】フィードバックシステムの第2の実施例を有する装置を示す図である。
図5】フィードバックシステムの第3の実施例を有する装置を示す図である。
図6】光学フィードバックシステムを説明するために使用される図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
特に皮膚組織のような哺乳類の組織のレーザ誘起光学破壊のためのパルスレーザ皮膚処置装置が開示される。本開示はまた、集束システム23の出射窓に対する損傷を防止し、及び/又は、皮膚炎を阻止若しくは防止するようにシステムを制御するためのフィードバックシステムにも関する。
【0063】
最初に、フィードバックシステムを使用することができるタイプの装置の例を与える。
【0064】
図1A及び図1Bは、表面5を有する組織3を処置するための装置1を示す。この場合、組織は、皮膚3によって例示されるが、他の組織が処置されてもよい。
【0065】
システム1は、少なくとも所定のパルス時間の間にレーザビーム11を生成するための光源9を備え、レーザビーム11を操作し、ビームを集束して集束ビーム11’にし、及び焦点スポット15にし、皮膚3内の標的位置に焦点スポット15を位置決めするための光学システム13を備える。皮膚は、光源9からの光に対して少なくとも部分的に透明である。装置は、パルス光ビームがそれを通じて装置を出射する、光出射窓18を含む。この場合、光出射窓は平坦であり、集束ビーム15のビーム収束を変化させない。これは、例えば、光出射窓が凸状であるときは異なる場合がある。また、この場合、光出射窓は集束システム23の一部でもある。すべてに対して、フィードバックシステムを使用することができる。
【0066】
光源9は、所定の波長にあり、所定のパルス持続時間及び繰り返し率を有する所定数のレーザパルスを放出するように構成される。システム1は、焦点スポット15の標的位置が皮膚の表面の下にあるように構成可能である。焦点スポット15の寸法及び生成されるレーザビームのパワーは、焦点スポット15において、レーザビーム11が皮膚組織の特性閾値を上回るパワー密度を有するようなものであり、この特性閾値を上回れば、所定のパルス時間について、レーザ誘起光学破壊事象が発生する可能性があり、又は、発生する。
【0067】
適切な光源は、約5~10nsのパルス持続時間で約1064nmの波長にあるレーザパルスを放出するQスイッチNd:YAGレーザを含むが、例えば、Nd:Cr:Yag3レベルレーザ及び/又はダイオードレーザなどの他のレーザも同様に使用されてもよい。皮膚内での吸収及び散乱が相対的に低く、それによって、貫通深さを大きくすることが可能であるため、1064nmレーザが処置に使用されることが好ましい。特に近赤外線範囲内の、他の波長が使用されてもよい。
【0068】
光源9は、ユーザインターフェースを提供する任意選択のコントローラ25によって制御可能である。
【0069】
図1に概略的に指示されている光学システム13の例は、ビーム偏向・ダイクロイックビーム分割システム17と、収差補正システム19と、ビーム走査システム21と、集束システム23とを備え、これらのシステムは、1つ又は複数のミラー、プリズム、ビームスプリッタ、偏光子、光学フィルタ、レンズ、開口、シャッタなどを含む。例えば、走査システムは、走査プリズムを含む。
【0070】
光学システム13は、この場合、集束深さ選択(ただし、それ自体必要ではない)、ビーム成形及び集束、並びに、皮膚表面に接触するためのものである接触/出力窓を有する。この場合、装置の使用中に接触/出力窓と皮膚表面との接触を維持するための輪郭追従サスペンション(図1には示されていない)も存在する。
【0071】
光学システム13の1つ又は複数の部分は、任意選択のコントローラ(図示せず)によって制御可能であり、コントローラは、標的位置及び/又は焦点スポットの1つ又は複数の特性を制御するために、光源コントローラ25と一体化される。
【0072】
レーザビーム集束パラメータは、例えば、集束システムの開口数の調整など、ビーム成形及び/又は集束システムの適切な設定によって決定することができる。集束システムの開口数NAの適切な値は、範囲0.05<NA<nmから選択され、nmは、動作中の、レーザ波長に対する媒質の屈折率である。
【0073】
レーザ光源9とビーム偏向・ダイクロイックビーム分割システム17との間には関節アームがある。ビーム偏向システム17及び後続の構成要素は、ハンドピースの一部を形成する。関節アームのミラーにおける位置整合誤差のために、ビームは、関節アームに入射する前に拡大し、その後、ビームステアリング及び収差補正の前に縮小される場合がある。しかしながら、レーザビーム誘導の他の伝播手段が使用されてもよい。
【0074】
光学システム13及び/又はレーザビーム11のビーム経路の少なくとも一部は、例えば、目の安全のために封止され、例えば、不透明チューブ及び/又は1つ若しくは複数の光ファイバを含む。
【0075】
集束システム23によって与えられる集束深さは、調整可能であることが好ましい。図2は、そのような調整を実施するための知られている方式を示す。集束システム23は、各々が異なる焦点深さを有する出力窓26のセットを備え、走査システム21を回転させる走査モータ27によって、出力窓の1つに光路が与えられる。出力窓26は、輪郭追従サスペンション28によって保持される。したがって、出力窓は、円形経路の周りに配置され、ノッチシステムが、走査システム21に対する位置決めを可能にする。4つの出力窓が存在し、したがって、輪郭追従を可能にするように各々別個にばね荷重されている4つのレンズセットが存在する。
【0076】
走査システム21は、皮膚のある領域にわたって焦点を走査するために使用される。
【0077】
図1のシステムに使用されるレーザの一例は、1000Hzの最大繰り返し周波数を有し、典型的な処置計画は、200μmの病変ピッチを使用し、結果として、200mm/sの典型的な最大走査速度がもたらされる。この走査速度は、これらの走査速度を手作業で適用するときは制御ができないため、いかなる手動走査のみの選択肢も排除する。
【0078】
加えて、任意のスタートストップ走査システムにとって、短い加速距離でこの走査速度に達するのは非常に困難であり、機械的振動がもたらされ、レーザの容量の使用が非効率になる。より容易に制御されるより遅い走査速度は、表面積が大きい場合に処置時間を大幅に増大させる。
【0079】
この課題を克服するために、回転運動に基づく連続運動走査が使用され、この走査は、これらの走査速度を容易に達成することができ、強い振動及びレーザ容量の非効率な使用の問題がない。
【0080】
この目的のために、回転プリズムが使用される。
【0081】
第1の可能なプリズム設計は、菱形を含む。2つの対向する平行な端面が、内部全反射面として機能する。それらの面は、入射光方向に対して45度の角度にある。プリズム内での2回の内部反射が、入射ビームの横方向シフトをもたらし、それによって、出射ビームが平行になるが、入力ビームに対して横方向にシフトされている。横方向シフトの方向に垂直であり、それゆえ、入射ビーム方向に平行な軸を中心としてプリズムを回転させることによって、円形経路が出力ビームによって掃引される。回転は、入力ビームの軸を中心とする。掃引される円の半径は、菱形の長さである。
【0082】
菱形プリズムは、必要に応じて反射防止コーティングを面に施して製造することができる。
【0083】
第2の可能なプリズム設計は、ダブプリズムである。2つの端面が反射界面として機能し、底面が内部全反射面として機能する。端面は、入射光に対して45度の角度にある。プリズム内での2回の反射及び単回の内部全反射が、ここでも入射ビームの横方向シフトをもたらし、それによって、出射ビームが平行になるが、入力ビームに対して横方向にシフトされている。横方向シフトの方向に垂直であり、それゆえ、入射ビーム方向に平行な軸を中心としてプリズムを回転させることによって、円形経路が出力ビームによって掃引される。回転は、入力ビームの軸を中心とする。ビーム並進の量は、ダブプリズムの入射面に対する入射ビームの位置、及び、プリズムのサイズに依存する。プリズムは、主入射光線を中心として回転される。ここでも、反射による損失を低減するために、反射防止コーティングが斜面に加えられる。
【0084】
回転プリズムは、振動を回避するために機械的に平衡される。集束光の有効開口数に対する収差補正設定の影響を最小限に抑えるように、プリズム台が、ボールベアリングの上に浮かされられ、モータロータに直に接続する。
【0085】
皮膚3は、光学特性が異なる複数の層を含む。表皮は、最外層から構成され、防水防護壁を形成する。表皮の下には、真皮がある。真皮は、皮膚処置が目標とするコラーゲン繊維を含む。皮膚処置並びに図1及び図2のもののような装置の目的は、新たなコラーゲン生成をもたらす微視的病変を生成するために、真皮のコラーゲン内にパルスレーザビーム11の焦点15を生成することである。表皮を可能な限り無傷のままにすることが、さらなる目的である。
【0086】
しかしながら、表皮の最外層、すなわち、角質層は、その粗さが微視的に変動していることに起因して、装置1と皮膚3との間の光の結合を妨げる。光結合が不十分である場合に集束要素、出力窓及び皮膚表面におけるレーザビームパワー密度がこれらのシステム及び皮膚に損傷を引き起こすのに十分に高いように、LIOBの生成は、皮膚内の高いパワー密度を必要とするため、この結合は重要である。
【0087】
出力窓と皮膚との光学的接触を改善するために、組織及び/又は集束システムの出射レンズ/窓の屈折率に一致することを目標とする屈折率を有する結合流体が、集束システムと組織との間に与えられることが好ましい。それにもかかわらず、たとえそのような結合流体が存在する場合であっても、ユーザによる装置の使用中に、集束システムが皮膚領域の上で動かされている場合があり、これは、光学的接触の劣化を引き起こす可能性があるエラーを招く傾向がある。それゆえ、上記で指示した損傷を低減又は防止するのに所望されるレベルを上回るように、そのような接触を維持し、又は、そのような接触を回復することを可能にするために、装置の使用中に接触の質に関するフィードバックを有することが重要である。
【0088】
第1の実施例の装置は、LIOBが発生している焦点深さを検出するために、光学的分析と音響的分析とを組み合わせるフィードバックシステムを有する。このとき、フィードバックシステムは、焦点が皮膚内にない場合にレーザがオフにされることを可能にする。
【0089】
これは、LIOB中に生成される可視フラッシュ(プラズマスパーク)の波長スペクトル及び信号の音響周波数の差に基づき、この差は、空気、レンズ、結合媒質及び皮膚のような、LIOBが発生する媒質に応じて大幅な差異を示す。
【0090】
発光スペクトルは、分光計と、増強電荷結合素子(ICCD)との組み合わせを使用して測定することができる。焦点位置に応じて、フラッシュスペクトルは、焦点内の物質(ガラス界面、液浸媒質、皮膚など)の特性であるスペクトルピークを呈し、焦点の特徴として、また、LIOBが行われたか否かの指標として使用することができる。
【0091】
例えば、LIOBが発生していない場合、検出器は、スペクトル的特徴が一切ない平坦な背景スペクトルを記録する。一例として、212.4nm(Si)及び589nm(Na)あたりで発生する特性ピークは、それぞれガラス界面及び皮膚内でLIOBが発生していることを確認するために使用することができる。他のスペクトルピークを、その物質の指標として使用することもできる。光学的破壊を下回る放射照度閾値について、LIOBのないフラッシュを測定することもでき、光学的破壊のある場合とない場合の光学フラッシュのスペクトル特性の差を特徴として使用することもできる。
【0092】
図3は、焦点深さを検出するための共焦点システムに基づく第1の実施例を示す。
【0093】
同じ構成要素には、図1と同じ参照番号が与えられる。収差補正システム19は、非球面レンズ19を含み、集束システム23は、顕微鏡対物レンズとして機能するレンズを含む。ダイクロイックビームスプリッタ17を通じて送信される可視光光学フィードバック信号25は、平凸レンズ30によって、例えば、CCDチップなどの画像センサ32に集束される。
【0094】
この構成は、皮膚の外部でのLIOBを防止し、皮膚の内部での集束深さを判定するために、集束深さの共焦点検出を可能にする。
【0095】
レンズ30及び23(照明及び検出)によって形成される共焦点顕微鏡の光路と、LIOB処置ビームの光路とが、ダイクロイックビームスプリッタ17によってともに結合される。共焦点顕微鏡は、焦点位置の深さ分解画像を作成し、したがって、処置深さの検証を可能にする。この検証は、画像センサによってキャプチャされる画像の画像処理を使用して実行され、検証は、レーザ9を起動又は機能停止するために、コントローラ25によって使用される。
【0096】
図4は、光と音声の両方に基づくフィードバックシステムを提供することに基づく第2の実施例を示す。
【0097】
同じ構成要素には、図3と同じ参照番号が与えられる。画像センサはもはや必要とされず、代わりに、フォトダイオード又はフォトダイオードアレイ40、及び、任意選択的に、形成される画像ではなく可視光25のスペクトルを分析するための関連付けられる回折格子が存在する。ニードルハイドロフォン42が、音波のスペクトルの分析を可能にする。
【0098】
LIOB中に生成される可視光フラッシュ及び音響信号は、空気中、結合媒質中、及び、皮膚中では異なるスペクトル特性及び音響特性を呈する。LIOBの発生中、可視フラッシュはフォトダイオード40によって(又は格子によって)記録することができ、音響信号は、ハイドロフォンを用いることによって記録される。フラッシュと音響信号とを組み合わせて検出することによって、集束深さを判定することが可能になる。
【0099】
皮膚から受け取られる可視光は、レーザ誘起光学破壊において発生するフォトメカニカルモードの相互作用の結果である。これは、自由電子の大量生成を伴う。このプロセスは、「電子雪崩成長」又は「逆制動放射効果」と称される。プラズマの形成は、波長の関数としての強度変動がほとんどない連続白色光をもたらす。この光は、自由電子及びイオンが冷却プラズマ内で再結合されるときに、プラズマからの制動放射及び再結合放射によって引き起こされる。
【0100】
焦点深さを決定する代わりに、又は、決定するとともに、図3のシステムは、皮膚と集束システム23の出力レンズとの間の光結合の質を分析するために使用されてもよい。光結合が有効でない場合、空気及びレンズの出射面内で光学的破壊が発生し、レンズ及び皮膚の損傷をもたらす可能性がある。
【0101】
光学フィードバックを実施するために、ビーム偏向・ダイクロイックビーム分割システム17は、レーザ光を反射し、ただし、可視波長光を通過させるダイクロイックビームスプリッタを含む。したがって、皮膚3から受け取られる可視波長光は、光学システムによってキャプチャされ、手動又は自動のいずれかでシステムを制御するために使用することができるフィードバック信号11Aとして提供される。
【0102】
この第1の実施例において、LIOB事象によって生成される光がフィードバックとして使用される。しかしながら、別個の光源が使用される。この目的のために、この光源の光ビームは、接触面に達するように、光路に結合される。この光の反射はその後、検出器32によって収集される。
【0103】
光結合の分析は、画像センサ32によってキャプチャされる画像の画像処理に基づいて達成される。
【0104】
接触の質は、単純なモノクロ又はRGBカメラを使用してキャプチャされる画像の鏡面反射の均一性に基づいて測定することができる。結合が最適で均一である場合、強度分布は均質なガウス分布に従う。強度スポットのサイズ、スポットの数、最大スポットのサイズなどのようなより多量の画像特徴を、閾値化後にこれらの画像から導出することができ、これらの特徴は、非最適な結合の指標として使用することができる。
【0105】
図3のシステムはまた、画像センサ32及びレンズ30を取り除き、代わりに、システムのユーザによる視覚的検査を可能にするための出力窓を設けることによって修正されてもよい。このとき、ユーザは、各レーザフラッシュにおける皮膚の接触の見た目を視覚的に検査することができる。ここでも、これは、画像スポットのような欠陥として可視化される。
【0106】
皮膚接触の質を検出するためのさらなる選択肢は、測定される荷重のフィードバックによって、輪郭追従を可能にするためにばね荷重集束レンズシステムを使用することである。光学システム全体がばね荷重され、それによって、光学構成要素間の光路が保持される。
【0107】
図5は、装置が皮膚3の輪郭に追従することを可能にするために、少なくとも最後の対物レンズがばね52によってばね荷重される光学システム50を示す。これによって、湾曲した皮膚面を、走査しながらシームレスに追跡することが可能になる。
【0108】
システム内の荷重に基づくフィードバックが、レーザ起動を制御するために使用される。最適な接触を保証し、それによって、ばねシステムの基準として作用するために、基準荷重値のセットが使用される。
【0109】
その後、ユーザが荷重を所望の荷重レベル範囲内に維持することを可能にするために、フィードバックが与えられる。この荷重レベル範囲は、完全なばね伸張(ゼロ荷重)と最大ばね圧縮(最大荷重)との間である(それゆえ、これら2つを除外する)ことが好ましい。これは、これらの両方が、良好な接触を維持するには不適切であるためである。
【0110】
小さい局所的な皮膚特徴と、より大きい大域的な皮膚輪郭及び特徴の両方の適切な輪郭追従を保証するために、少なくとも2つの接触点が近接近して規定される。
【0111】
本開示及び実施例のすべてのフィードバック選択肢において、ユーザの出力は、システムの画面上に与えられてもよく、又は、ワイヤレス接続によって、スマートフォン、スマートウォッチ、又は他の近傍の装置に、ワイヤレス信号として送信されてもよい。加えられている圧力が低すぎる若しくは高すぎるときに、例えば、警告音によって、ユーザに対する命令が可聴とされてもよく、且つ/又は、視覚的出力が与えられてもよい。そのような出力は、フィードバックが、装置又は処置されている対象への損傷の危険性が高すぎるような、接触の質の不良を指示する点まで与えられる。閾値レベルが、ユーザによって設定されてもよく、又は、装置によって事前に決定されてもよい。そのような閾値に達すると、装置はその後、レーザビームが、光学システム、出力窓及び/又は皮膚表面に達するのを防止することができる。これは、レーザ源を遮断すること、又は、ビームがこれらの部分に達するのを防止することを包含する。このために、フィードバック信号に基づいてコントローラによって操作されるシャッタが使用される。
【0112】
表皮内など、真皮の上側部分又はその上方に表層病変が生成される場合、皮膚の赤み(紅斑)が発生する可能性がある。さらに、そのような病変が真皮の上側部分又は直上に生成される場合、点状出血(微小出血)が発生する可能性がある。そのような両方の効果は、集束システム(又は出射窓)と皮膚との間の光学的接触の不良の結果として生じる可能性があり、又は、集束システムに対する損傷からもたらされる可能性がある。
【0113】
上記のフィードバック手法は、光学的接触の不良がある場合に、そのような損傷を低減若しくは防止し、又は、レーザ動作を妨げることを目標とする。しかしながら、この目的のために、代替的な(又は追加の)手法は、皮膚において発生している紅斑(皮膚の赤み)の存在及び/若しくは範囲、並びに/又は、点状出血(微小出血)の存在及び/又は範囲を検出し、それによって、ユーザに接触の質の指標を提供することである。皮膚損傷の初期兆候は、ユーザに対する合図によって応答し、又は、さらには装置を停止することによって処置を自動的に終了するためのフィードバックとして使用される。
【0114】
フィードバックシステムはこのとき、少なくとも処置中に、ただし好ましくはまた処置前に発生している、紅斑(皮膚の赤み)の存在及び/若しくは範囲、並びに/又は、点状出血の存在及び/又は範囲の測定に基づく。このフィードバックはその後、ユーザによって予め設定された若しくは装置内で予めプログラムされた、又は、より好ましくは、処置の開始前若しくはちょうど開始時に測定されたそれぞれのベースライン値に対する紅斑又は点状出血の増大を記録した後に、例えば、ユーザに通知すること及び/又は装置を機能停止することによって、肌の若返り術のためのLIOBベースの処置の効率を最適化することができる。このフィードバックは、副作用及び社会的休止時間を低減することができる。
【0115】
紅斑の増大に対する閾値は、プログラム可能とすることができ、それによって、LIOB処置に関係する必要なカバレッジ、並びに、副作用の重症度及び対象の疼痛知覚に応じて微調整することができる。適切な閾値は、種々の対象の間で、さらには、同じ対象であっても異なる時間において変化する。
【0116】
このように、図3のシステムは、皮膚の赤みのレベルを分析するために使用される。
【0117】
図3のシステムは、画像センサ32及びレンズ30を取り除き、代わりに、システムのユーザによる視覚的検査を可能にするための出力窓を設けることによって修正されてもよい。このとき、ユーザは、各レーザフラッシュにおける皮膚の赤みを視覚的に検査することができる。
【0118】
しかしながら、好ましい選択肢は、画像センサ32によってキャプチャされる画像の画像処理を使用して、キャプチャされる画像のスペクトル内容を自動的に分析するために画像センサ32を使用することである。特に、赤色成分の増大によるスペクトル内容の変化が、処置の開始時における初期色と比較されるときに検出される。画像センサは代わりに、分光光度計を含んでもよい。
【0119】
一般的に、LIOB処置は、処置の直後は穏やかな紅斑をもたらし、重症度は約10分にわたって増大する。その後、紅斑は薄くなり、処置の30分後にはもはや見えなくなる。重症度閾値を超えるべきではない。
【0120】
画像検知は、高解像度写真を使用することができるが、低コストのセンサを使用した低解像度写真でも、画像内の赤色内容を十分に検出することができる。分光光度法が実施されてもよく、又は、CCD画像の画像処理が使用されてもよい。
【0121】
図6は、定量的細胞分析のための画像処理アルゴリズムを内蔵した高解像度カメラ60を備える画像分析システムを示す。
【0122】
カメラ60は、着脱可能マウント62から構成される追加のモジュールと一体化される。カメラユニットは、LED照明リング64を含み、後方散乱光の空間分解検出を実施する。
【0123】
紅斑の増大が、処置カバレッジエリアに対応し、対象の許容可能な赤みの限界を指定する値を示す参照ルックアップテーブルと比較される。そのようなデータは、存在する種々の肌質に区分化される。初期ベースライン測定値を、較正基準として使用することができる。装置は、必要に応じて処置のためにそのようなルックアップデータ結果を取り出すために、又は、処置中にそのような結果を記憶するために、リモートデータベースに接触することを可能にするデータリンク及びプロセッサを含む。データリンクは、インターネット技術、又は、例えば当該技術分野において知られているような他のリモートネットワーク技術に基づく。データベースはまた、装置の一部として、又は、装置の位置において有線接続を介して、ローカルにしてもよい。
【0124】
皮膚状態フィードバックはまた、音声、光又は力に基づく上記のフィードバック機構とともに使用されてもよい。
【0125】
システムを処置に使用するために、何らかの機械的な赤みの誘発(テープ剥離など)が加えられる前に、初期ベースライン皮膚色がシステムによって記録される。この皮膚色は、処置されることになる皮膚領域から記録される。
【0126】
処置の前に、炎症を起こした皮膚又は紅斑(赤みの増大)と、ベースラインの皮膚との比較を行うこともでき、それによって、特定の対象が処置にどう反応するかを記録することができる。
【0127】
LIOB処置は、その後実行される。
【0128】
最初の処置の後、皮膚の赤みが記録される。その後、所望の紅斑閾値に対して比較が行われ、紅斑閾値は、必要な処置カバレッジエリア及び許容可能な対象の疼痛知覚に依存する。対象は、処置中に疼痛知覚情報を提供することによって、また、その後の炎症を起こした皮膚の視覚的評価によって、自身の不快感閾値を指示する。
【0129】
処置領域内の皮膚の赤みがベースライン皮膚色よりも大きく、且つ、処置が終了される閾値に達している場合、他の様態でLIOB処置が継続される。
【0130】
上述したように、1064nmにおいて発光するNd:YAGレーザが使用されてもよいが、これに加えて又はこれに代えて、1645nmにおいて発光するEr:YAGレーザが、レーザ誘起光学破壊(LIOB)に使用されてもよい。
【0131】
皮膚処理は、剃毛除去プロセスを含む。使用中、集束システム23が、剃毛される皮膚表面の上で動かされる。集束システムは、入射光ビームが装置を出ることを可能にするための出射窓を形成する。集束システムはこのとき、光学ブレードを形成する。
【0132】
皮膚処置は、普通に年をとる過程の結果として人間の皮膚に見られる場合があるしわを低減するための肌若返り装置を含む。使用中、集束要素が、処置されることになる皮膚に押しつけられ、又は、その近くに保持される。集束システムによって形成される出射窓は、皮膚に平行に保持され、入射光ビームが出射窓を出て、皮膚面にほぼ垂直な方向において皮膚に入射する。
【0133】
両方の例において、集束システムと皮膚表面との間に浸漬液が与えられる。好ましくは、集束システム23の皮膚接触レンズ及びLIOBが発生することになる皮膚又は毛髪の屈折率に近い屈折率を有する浸漬液が使用される。この目的のために、約1.4~約1.5の屈折率を有する流体が適切である。また、水も、1.33と屈折率はいくらか低いが、一部の装置及び用途にとっては適切な浸漬液であり得る。
【0134】
図1のシステムは、レーザと集束システムとの間に光学素子の1つの特定のセットを有する。しかしながら、この構成は、限定であるようには意図されていない。本発明のフィードバックシステムは、より少数又はより多数の構成要素を有する異なるシステム構成において使用されてもよい。
【0135】
要約すると、パルスレーザ皮膚処置装置は、毛髪又は皮膚組織のレーザ誘起光学破壊のためのものである。装置は、使用中に皮膚のような処置されることになる表面に対して配置されるべき光出射窓を有する。フィードバックシステムが、光出射窓と表面との間の接触の状態を判定するために使用される。この目的のために、フィードバックシステムは、接触の状態を表すフィードバック信号を検出することが可能である。フィードバック信号又は接触の状態が、装置動作による皮膚表面又は装置の損傷の危険性が高すぎるようなものである場合、ユーザ又は装置は、この危険性を低減するか又はなくすために、処置を妨害し、又は、光出力を低減する方式を有する。
【0136】
上述した実施形態は、本発明を限定しているのではなく例示しており、当業者は、添付の特許請求項の範囲から逸脱することなく、多くの代替的な実施形態を設計することが可能である。特許請求の範囲において、括弧内に配置されている任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「備える」及びその活用形が使用されている場合、これは、特許請求の範囲内に記述されているもの以外の要素又はステップが存在することを除外するものではない。要素に冠詞が先行している場合、これは、そのような要素が複数存在することを除外するものではない。本発明は、いくつかの個別の要素を備えるハードウェアによって、及び、適切にプログラムされているコンピュータによって実施することができる。いくつかの手段を列挙している装置請求項において、これらの手段のうちのいくつかは、まったく同一のハードウェア物品によって具現化されてもよい。特定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されているというだけのことは、これらの方策の組み合わせを好都合に使用することができないということを示すものではない。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6