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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】非線形結晶
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20220819BHJP
   G02F 1/39 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
G02F1/37
G02F1/39
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019544854
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 GB2018050454
(87)【国際公開番号】W WO2018154297
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】1702840.8
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514010047
【氏名又は名称】エム スクエアード レーザーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】M SQUARED LASERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マーカー,ガレス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルコム,グレーム ペーター アレクサンダー
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-175181(JP,A)
【文献】特開2000-347232(JP,A)
【文献】特開2009-145791(JP,A)
【文献】特開2002-099007(JP,A)
【文献】実開平03-005137(JP,U)
【文献】特開2003-114454(JP,A)
【文献】特開平04-242229(JP,A)
【文献】米国特許第05095491(US,A)
【文献】特開平03-148888(JP,A)
【文献】米国特許第07027209(US,B2)
【文献】米国特許第06882465(US,B1)
【文献】特開昭58-123524(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0296153(US,A1)
【文献】PACAUD, O. et al.,Cylindrical KTiOPO4 crystal for enhanced angular tunability of phase-matched optical parametric oscillators,Optics Letters,OSA,2000年05月15日,Vol. 25, No. 10,pp. 737 - 739
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
JSTplus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形結晶において:
第1の曲面および反対の第2の曲面と;
前記第1の曲面に入射して前記非線形結晶中を伝搬する基本光学場の光軸であって、前記第1の曲面に入射する方向が、前記非線形結晶中を伝搬する方向と角度Ψを形成する基本光学場の光軸と;
回転の軸であって、当該回転の軸の周りの前記非線形結晶の回転が、前記基本光学場の波長が調整されるときに、前記非線形結晶内における位相整合条件を維持することを可能とする回転の軸と;を具え、
前記第1および第2の曲面の曲率半径が、等しくかつ前記回転の軸上に中心があることにより、前記非線形結晶の少なくとも1つの軸の周りで前記非線形結晶が回転対称であることを提供し;
前記第1の曲面が、直円柱の曲面の第1のセクションを含み、前記第2の曲面が、直円柱の曲面の第2のセクションを含み;
前記第1の曲面への法線が、前記第1の曲面に入射してから前記非線形結晶中を伝搬する基本光学場の光軸に対して-θの角度で配置されて、θ+Ψが前記非線形結晶のブリュースター角βと等しいように選択され、前記第2の曲面への法線が、前記第1の曲面に入射してから前記非線形結晶中を伝搬する基本光学場の光軸に対して角度θで配置されている、ことを特徴とする非線形結晶。
【請求項2】
請求項1に記載の非線形結晶を具えることを特徴とする外部キャビティ周波数二倍器。
【請求項3】
請求項1に記載の非線形結晶を具えることを特徴とする外部キャビティ周波数混合器。
【請求項4】
請求項1に記載の非線形結晶を製造する方法において、当該方法が、バルク結晶に対する1以上の加工工程を実行するステップを含み、前記1以上の加工工程が、前記バルク結晶のカット、成形および研磨を含む加工工程の一群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
非線形結晶において:
第1の曲面および反対の第2の曲面と;
前記第1の曲面に入射して前記非線形結晶中を伝搬する基本光学場の光軸であって、前記第1の曲面に入射する方向が、前記非線形結晶中を伝搬する方向と角度Ψを形成する基本光学場の光軸と;
回転の軸であって、当該回転の軸の周りの前記非線形結晶の回転が、前記基本光学場の波長が調整されるときに、前記非線形結晶内における位相整合条件を維持することを可能とする回転の軸と;を具え、
前記第1および第2の曲面の曲率半径が、等しくかつ前記回転の軸上に中心があることにより、前記非線形結晶の少なくとも1つの軸の周りで前記非線形結晶が回転対称であることを提供し;
前記第1の曲面が球面の第1のセクションを含み、前記第2の曲面が前記球面の第2のセクションを含み;
前記第1の曲面への法線が、前記第1の曲面に入射してから前記非線形結晶中を伝搬する基本光学場の光軸に対して-θの角度で配置されて、θ+Ψが前記非線形結晶のブリュースター角βと等しいように選択され、前記第2の曲面への法線が、前記第1の曲面に入射してから前記非線形結晶中を伝搬する基本光学場の光軸に対して角度θで配置されている、ことを特徴とする非線形結晶。
【請求項6】
請求項5に記載の非線形結晶を具えることを特徴とする外部キャビティ周波数二倍器。
【請求項7】
請求項5に記載の非線形結晶を具えることを特徴とする外部キャビティ周波数混合器。
【請求項8】
請求項5に記載の非線形結晶を製造する方法において、当該方法が、バルク結晶に対する1以上の加工工程を実行するステップを含み、前記1以上の加工工程が、前記バルク結晶のカット、成形および研磨を含む加工工程の一群から選択されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形光学の分野、特に、周波数混合キャビティ中における特定の用途が見出される、新しい非線形結晶のデザインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
結晶の非線形光学的特性は、長年にわたって、所望の既知の周波数または波長の出力光学場を生成するため、1または複数の光学場の光子を混合するのに用いられている。
【0003】
そのような過程の例は、和周波混合(SFM)である。この手法は、角周波数ωおよびωの2つの入力光子を消滅させて周波数ωの1つの光子を生成することに基づく。和周波発生は、以下の式(1)に定義されるように、光子がエネルギー保存則を満たし、物が変化しないことを意味するパラメトリック過程である。
(ここで、

であり、hはプランク定数を表す。)
【0004】
和周波混合が効率的に起こるためには、位相整合と呼ばれる、式(2)で定義される条件を満たさなければならない。
(ここで、k、k、kは、媒質を伝わる3つの波の角波数である。)この条件がより正確に満たされるにつれ、和周波発生はより効率的になる。さらに、和周波発生がより長い長さにわたって生じるにつれ、位相整合はより正確になる。
【0005】
SFMの特別な事例は、第2高調波発生(SHG)であり、ここで、ω=ωである。これは、恐らく、最も一般的な型のSFMである。これは、ωとωとが等しくなく、したがって、配置がより困難でありうる2つの同時の入力場を必要とする場合のSFMと比較して、SHGでは1つの入力場のみが必要であるからである。
【0006】
従来技術で知られるSFMの代替的過程は、差周波発生(DFM)である。これは、異なるエネルギーの2つの光子を混合し、以下の式(3)で定義されるように、エネルギーが入射光子のエネルギー間の差に等しい、第3の光子を生成することをともなう非線形過程である。
(ここで、
であり、hはプランク定数を表す。)
【0007】
DFMが効率的に起きるためには、式(4)で定義される、以下の位相整合条件を満たさなければならない。
(ここでも、k、k、kは、媒質を伝わる3つの波の角波数である。)
【0008】
従来技術で知られている他の周波数混合過程は、第3高調波混合(THM)、高次高調波発生(HHG)、光学パラメトリック増幅(OPA)および下方変換を含む。
【0009】
システムのために非線形結晶を選択する場合、どのような結晶カットを用いるか、すなわち、非線形結晶の末端面をどのようにしてカットするかを選択しなければならない。一般的には、非線形結晶について、従来技術では2つの異なったカットが用いられている:図1(a)で模式的に示すような直角カット1、および、図1(b)で模式的に示すようなブリュースター角カット2である。明確な理解を助けるため、図1には軸が示されている。
【0010】
図1(a)の非線形結晶1の直角カットが、非線形結晶1の光学軸5に対して垂直のその研磨された面3および面4を有している一方で、図1(b)のブリュースター角カット非線形結晶2は、研磨面6および研磨面7の法線ベクトル8と光学軸5との間のブリュースター角(β)で位置する、その面6および面7を有する。ブリュースター角(β)では、x軸およびy軸で定義される面内での偏光を有する光について、面6および面7の表面反射率はゼロである(p偏光としても定義される)。
【0011】
直角カット非線形結晶1は、ブリュースター角カット非線形結晶2よりも一般的に製造が容易であるものの、その使用は大きな伝送損失へと至る。これらの損失は、しばしば実際にそうであるように、直角カット非線形結晶1が光学共振器とともに用いられる場合に増加する。この理由のため、抗反射性、高反射性、部分反射性のコーティングがしばしば研磨面3および研磨面4に適用される。しかしながら、直角カット非線形結晶1は、結晶1に適用されるコーティングがブリュースター角カット結晶2の非コート面6および非コート7よりも通常は低い損傷閾値を有するために、高出力、特に短パルスでの適用におけるその使用はより限定されたものとなる。
【0012】
非線形光学における任意の二次X(2)またはそれより高次の現象と同様に、非線形過程は、特定の前もって定義付けられた条件、例えば、光が非中心対称である物質と相互作用し、入力場が非常に高い強度を有する(典型的にはレーザ源によって生成される)という条件の下でしか生じない。式(2)および式(4)の位相整合要件は、生成された出力場の周波数または波長が、入力場の波長および非線形媒質の位置の両方の連携したチューニングによって変化させることができることを意味する。非線形媒質の位置を変化させることは、典型的には、入力場内における非線形結晶の回転または並進により達成できる。
【0013】
例として、図2は、ブリュースター角カット結晶2を組み込む、一般的に参照番号9として描かれる、外部キャビティ周波数2倍器の模式図を示す。出願人が専有するSolsTis(登録商標)ECD-Xは、そのような外部キャビティ周波数2倍器9の適切な例である。図2に見られるように、BBO(βホウ酸バリウム(BaB))またはLBO(三ホウ酸リチウム(LiB))から形成されてよいブリュースター角カット結晶2は、第1ミラー10、出力カプラ11、入力カプラ12および第2ミラー13で定義されるリングキャビティ内に位置する。外部キャビティ周波数2倍器9は、共鳴増強を用いて、連続波Ti:サファイアレーザのような、連続波で狭い線幅のレーザ源14の出力周波数を変換して、周波数が2倍の出力場15を生成する。
【0014】
外部キャビティ周波数2倍器9で生成された出力場15の周波数チューニングは、入力場14の波長をチューニングし、ブリュースター角カット結晶2を軸16の周りで回転させ、式(2)の位相整合条件を維持させることで達成される。ここに記載の例では、ブリュースター角カット結晶2は、x軸およびy軸で定義される平面内に実質的に位置し、一方で、回転の軸16も、この平面内に位置し、y軸と鋭角を形成する。
【0015】
従来技術で知られているように、非線形結晶1または2の回転が周波数チューニング過程で用いられる場合、非線形結晶1または2を励起する光学場の伝搬方向の対応する偏差が経験される。この偏差は、非線形結晶1または2内における屈折の効果による。出力場15のこの偏差は、これらのシステムの設計に自動化再配置を組み込む必要があるため、市販の共振器ベースのデバイスの開発では問題となる。
【0016】
従来技術で知られている解決法の1つは、サーボ制御エレクトロニクスで制御される光学板を共振器に組み込み、非線形結晶1または2の回転によって導入される偏差を補償するよう、自動的に回転させることである。そのような解決法には、しかしながら、共振器キャビティにおける内的光学損失の増加および非線形過程で生成される光が経験する損失の増加という短所がある。これらの解決法は、システムの全体的な設置面積を増加させることにもなる。
【0017】
代替的な解決法は、図2の外部キャビティ周波数2倍器9で用いられているように、サーボ制御エレクトロニクス(図示なし)を用いて、ブリュースター角カット結晶2の回転に従って、キャビティミラー10、11、12および13の各々を自動的に再配置させることである。このようなサーボ制御エレクトロニクスの使用は、ビーム偏差に関する問題に対する良い解決法ではあるが、上記の共振器キャビティ内に追加の光学板を組み込むことに基づく解決法よりも、はるかにより複雑であり、したがって、より高価であり、非線形の生成されたビームの顕著な空間的偏差にもつながる。
【発明の概要】
【0018】
したがって、本発明の実施形態の目的は、非線形結晶によって生成された光学場の周波数をチューニングするための従来技術で知られた方法および装置の上述の不利な点を取り除くこと、または、少なくとも軽減することである。
【0019】
本発明の第1の側面によれば、第1の曲面および反対の第2の曲面を備える非線形結晶が提供され、ここで、第1の曲面および第2の曲面は、非線形結晶の少なくとも1つの軸について回転対称である非線形結晶を提供するように配置される。
【0020】
上記の配置は、入力光学場の波長および非線形結晶の回転の軸の周りの回転の両方の連携したチューニングにより、生成光学場にいかなる実質的なまたは最小限の偏差をも導入することなく、基本光学場を非線形結晶中で伝搬させて生成された生成光学場の周波数チューニングを可能とする。
【0021】
非線形結晶の回転の軸は、非線形結晶の軸と一致してよい。
【0022】
第1の曲面および第2の曲面は、非線形結晶の少なくとも2つの軸について回転対称を有する非線形結晶を提供するよう配置されてよい。
【0023】
第1の曲面および第2の曲面は、直円柱の正反対の第1のセクションおよび第2のセクションを備えてよい。この実施形態では、非線形結晶は、非線形結晶の少なくとも1つの軸について無限の回転対称を呈する。
【0024】
第1の曲面および第2の曲面は、切断された直円柱の正反対の第1のセクションおよび第2のセクションを備えてよい。この実施形態では、非線形結晶は、非線形結晶の少なくとも1つの軸について2回回転対称を呈する。
【0025】
第1の曲面は、直円柱の曲面のセクションを備えてよく、ここで、第1の曲面への法線は、非線形結晶の光学軸に対して-θの角度で位置する。第2の曲面は、直円柱の曲面のセクションを備えてよく、ここで、第2の曲面への法線は、非線形結晶の光学軸に対してθの角度で位置する。この実施形態では、非線形結晶は、非線形結晶の少なくとも1つの軸について2回回転対称を呈する。
【0026】
第1の曲面は、第1の曲率半径を有する球の第1のセクションを備えてよく、第2の曲面は、第2の曲率半径を有する球の第2のセクションを備えてよく、ここで、第1の曲率半径の長さと第2の曲率半径の長さは等しい。この実施形態では、非線形結晶は、非線形結晶の少なくとも1つの軸について2回回転対称を呈する。
【0027】
球の第1のセクションと球の第2のセクションは、共通の中心を共有してよい。
【0028】
代替的に、第1の面への法線は、非線形結晶の光学軸に対して-θの角度で位置し、第2の曲面への法線は、非線形結晶の光学軸に対してθの角度で位置する。好ましくは、|θ|は、0°よりも大きいが、ブリュースター角(β)よりも小さい。
【0029】
本発明の第2の側面によれば、本発明の第1の側面に従った非線形結晶を備える外部キャビティ周波数2倍器が提供される。
【0030】
外部キャビティ周波数2倍器によって生成される出力場の周波数チューニングは、入力場の波長をチューニングし、非線形結晶を回転の軸の周りで回転させることにより達成される。非線形結晶の回転の軸の周りの回転対称の結果、外部キャビティ周波数によって生成された出力場の周波数チューニングは、出力場にいかなる顕著なまたは最小限のレベルの偏差をも経験させることなく、達成される。この結果、記述された外部キャビティ周波数2倍器は、キャビティミラーの各々を自動的に再配置させるための、光学的補償光学またはサーボ制御エレクトロニクスの使用を必要としない。
【0031】
本発明の第2の側面の実施形態は、本発明の第1の側面の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を備えてよく、または、その逆でもよい。
【0032】
本発明の第3の側面によれば、本発明の第1の側面に従った非線形結晶を備える外部キャビティ周波数混合器が提供される。
【0033】
本発明の第3の側面の実施形態は、本発明の第1の側面の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を備えてよく、または、その逆でもよい。
【0034】
本発明の第4の側面によれば、第1の曲面および反対の第2の曲面を有する非線形結晶を提供するためにバルクな結晶を加工するステップを備える、非線形結晶を製造するための方法であって、第1の曲面および第2の曲面は、非線形結晶の少なくとも1つの軸について回転対称を有する非線形結晶を提供するために配置される方法が提供される。
【0035】
好ましくは、バルクな結晶を加工するステップは、カット、成形および研磨を含む加工工程の群から選択される1つまたは複数の加工工程を備える。
【0036】
本発明の第4の側面の実施形態は、本発明の第1の側面の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を備えてよく、または、その逆でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明のさまざまな実施形態が、以下に示す図面に言及しながら、例示の形式によってのみ記述される:
図1図1は、(a)従来技術で知られている直角カット非線形結晶の模式図および(b)従来技術で知られているブリュースター角カット非線形結晶の模式図を示す;
図2図2は、従来技術で知られている外部キャビティ周波数2倍器の模式図を示す;
図3図3は、本発明の実施形態に従った、非線形結晶の(a)透視図および(b)側面図を示す;
図4図4は、本発明の代替的な実施形態に従った、非線形結晶の(a)透視図、(b)透視端面図、(c)上面図、および(d)図4(c)の線b-bに沿った側面図を示す;
図5図5は、本発明のさらなる代替的な実施形態に従った、非線形結晶の(a)透視図、(b)透視端面図、(c)上面図、および(d)側面図を示す;
図6図6は、本発明のさらなる代替的な実施形態に従った、非線形結晶の(a)透視図、(b)透視端面図、(c)上面図、(d)図6(c)の線b-bに沿った側面図を示す;
図7図7は、図3の非線形結晶を組み込んだ外部キャビティ周波数2倍器の模式図を示す。 以降の記載では、同様な部分は、発明の詳細な説明および図面を通じて、同一の参照番号が付される。図面は、必ずしも一定の比率に縮小されておらず、特定の部分の比率は、本発明の実施形態の詳細および特徴をよりよく説明するために誇張されている。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで、本発明の側面に従った非線形結晶のさまざまな実施形態が、図3乃至6に言及しつつ、記載される。記載の非線形結晶は、BBO(βホウ酸バリウム(BaB))またはLBO(三ホウ酸リチウム(LiB))または他の既知の非線形材料から形成されてよい。これらの図では、参照を容易にするために再び軸が記載され、x軸は記載の非線形結晶の光学軸5に沿って配置される。
【0039】
図3は、本発明の実施形態に従った非線形結晶17の(a)透視図および(b)側面図を示す。非線形結晶17は、第1の曲面18および非線形結晶17の反対側に位置する第2の曲面19を備えると見ることができる。図3(b)から、第1の曲面18および第2の曲面19は、直円柱20の曲面の2つの正反対のセクションを備える、すなわち、第1の曲面18の曲率半径および第2の曲面19の曲率半径は、等しく、直円柱20の(y軸に平行である)軸21を中心とすると見ることができる。当業者の読者であれば理解できるように、上記の配置は、軸21について2回回転対称を有する非線形結晶17を提供する。非線形結晶17は、光学軸またはx軸についても2回対称を有し、z軸についても2回対称を有することに注意する。
【0040】
非線形結晶17の非線形的作動を向上させるため、第1の曲面18および/または第2の曲面19に抗反射コーティングを適用してよいことが理解できるであろう。
【0041】
図3(a)では、円形断面円柱20の軸21(従って、y軸)に平行な線形偏光を有する、800nmの基本光学場22は、非線形結晶17の光学軸5(x軸)に沿って伝播するように、非線形結晶17の第1の曲面18上に入射するように図示されている。結晶17の非線形特性は、第2の曲面19を介して非線形結晶17から出る、400nmの第2高調波光学場23の生成へと至る。第2高調波光学場23は、z軸に平行な線形偏光を有する。
【0042】
上記の通り、第2高調波光学場23の周波数チューニングは、基本光学場22の波長をチューニングし、非線形結晶17を軸21の周りで回転させることにより、所望の位相整合条件の維持を可能とさせることで達成される。顕著なことに、非線形結晶17は軸21について回転対称を呈することから、第2高調波光学場23の周波数チューニングは、顕著なまたは最小限のレベルの偏差を導入することなく達成できる。
【0043】
当業者の読者は、非線形結晶17の第1の曲面18および第2の曲面19がブリュースター角で配向していないことから、基本光学場22、したがって、生成される第2高調波光学場23は、図3に言及しつつ記載されているものとは反対方向に配置されうることを理解できるであろう。
【0044】
図3に図示される非線形結晶17は、軸21について2回回転対称を有するものの、代替的な実施形態では回転対称の次数は増加させることができることが理解できるであろう。例えば、非線形結晶が完全な直円柱を備える場合(すなわち、非線形結晶17の第1の曲面および第2の曲面が360°にわたって展開し、例えば円盤を形成する場合)、非線形結晶は軸21について無限の回転対称性となる。
【0045】
図4は、本発明の代替的な実施形態に従った非線形結晶24の(a)透視図;(b)(a)において円で示したセクションの透視端面図;(c)上面図;および(d)図4(c)の線b-bに沿った側面図をそれぞれ示す。図3の非線形結晶17と同様に、非線形結晶24は、第1の曲面25および非線形結晶24の反対側に位置する第2の曲面26を備えると見ることができる。第1の曲面25および第2の曲面26は、ともに、直円柱の曲面のセクションを備える。
【0046】
図4(c)から、第1の曲面25は、この面への法線27が非線形結晶24内の光学軸5(すなわち、x軸)に対して-θの角度をなすように配置されていると見ることができる。同じように、第2の曲面26は、この面への法線28が非線形結晶24の非線形結晶24内の光学軸5(x軸)に対してθの角度をなすように配置されている。第1の曲面25の曲率半径および第2の曲面26の曲率半径もまた等しく、共通の軸29に沿っており、この軸29も光学軸5(すなわち、x軸)に対してθの角度で位置している。当業者の読者は、図4(d)から、上記の配置がz軸について2回の回転対称を有する非線形結晶24を提供すると理解できるであろう。
【0047】
図4(a)および4(c)において、800nmであってx-y面に線形偏光を有する基本光学場22は、非線形結晶24の第1の曲面25上に光学軸5(x軸)に対してΨの角度で入射するように示されている。角度-θおよびΨは、
(ここで、βは再びブリュースター角を表す)
となるように選択される。
【0048】
この配置により、基本光学場22が非線形結晶24の光学軸5(x軸)に沿って伝搬する場合、結晶24の非線形特性は、第2の曲面26を介して非線形結晶24から出る、400nmの第2高調波光学場23の生成へと至る。第2高調波光学場23は、z軸に平行な線形偏光を有する。
【0049】
第2高調波光学場23の周波数チューニングは、基本光学場22の波長をチューニングし、非線形結晶24を回転の軸29の周りで回転させ、所望の位相整合条件を維持することで達成できる。顕著なことに、第2高調波光学場23の周波数チューニングは、顕著なまたは最小限の偏差を導入することなく達成できる。
【0050】
図5は、本発明のさらなる代替的な実施形態に従った、非線形結晶30の(a)透視図;(b)(a)において円で囲んだセクションの透視端面図;(c)上面図;および(d)側面図をそれぞれ示す。上記の非線形結晶17および24と同様に、非線形結晶30は、第1の曲面31と非線形結晶30の反対側に位置する第2の曲面32とを備えると見ることができる。この実施形態では、第1の曲面31および第2の曲面32は、ともに、等しい曲率半径を有し、共通の中心を共有する球のセクションを備える。上記の配置は、軸33について2回回転対称を有する非線形結晶30を提供する。非線形結晶30は、光学軸またはx軸について4回対称を備えるのに加えてz軸について2回対称を備えることに注意する。非線形結晶30は、完全な球を備える場合、光学軸またはx軸およびz軸について無限の回転対称性であるように作製できる。
【0051】
非線形結晶30の非線形的作動を向上させるため、抗反射コーティングが第1の曲面31および/または第2の曲面32に適用されてよいことが理解できるであろう。
【0052】
図5(a)および図5(c)において、回転の軸33(したがって、y軸)に平行な線形偏光を有する800nmの基本光学場22は、非線形結晶30の光学軸5(x軸)に沿って伝搬するように、非線形結晶30の第1の曲面31上に入射するよう示されている。結晶30の非線形特性もまた、第2の曲面32を介して非線形結晶30から出る、400nmの第2高調波光学場23の生成に至る。第2高調波光学場23は、z軸に平行な線形偏光を有する。
【0053】
基本光学場22の波長をチューニングしつつ非線形結晶30を回転の軸33の周りで回転させることは、第2高調波光学場23の周波数チューニングを第2高調波光学場23に顕著なまたは最小限の偏差を導入することなく行うための手段を提供する。
【0054】
当業者の読者は、非線形結晶30の第1の曲面31および第2の曲面32がブリュースター角で配向していないことから、基本光学場22、したがって、生成される第2高調波光学場23は、図5に言及しつつ記載されているものとは反対方向に配置されうることを理解できるであろう。
【0055】
図6は、本発明のさらなる代替的な実施形態に従った非線形結晶34の(a)透視図;(b)(a)において円で囲まれたセクションの透視端面図;(c)上面図;および(d)図6(c)の線b-bに沿った側面図のそれぞれを示す。非線形結晶34は、第1の曲面35および非線形結晶34の反対側に位置する第2の曲面36を備えると見ることができる。この実施例では、第1の曲面35および第2の曲面36は、ともに、球のセクションを備える。
【0056】
図6(c)からは、第1の曲面35が、この表面への法線37が非線形結晶34内の光学軸5(すなわち、x軸)に対して-θの角度になるように配置されていると見ることができる。同様に、第2の曲面36は、この表面への法線38が非線形結晶24内の光学軸5(すなわち、x軸)に対してθの角度になるように配置されている。第1の曲面35の曲率半径と第2の曲面36の曲率半径は、等しく、共通の軸39に沿っており、この軸39は光学軸5(x軸)に対してθの角度で位置している。当業者の読者は、図6(d)から上記の配置がz軸について2回回転対称を有する非線形結晶34を提供することを理解できるであろう。
【0057】
図6(a)および図6(c)において、x-y面内に線形偏光を有する、800nmの基本光学場は、非線形結晶24内の光学軸5(すなわち、x軸)とΨの角度で非線形結晶34の第1の曲面25上に入射するよう示されている。上述のものと同様に、角度-θおよび角度Ψは、好ましくは式1を満たすように選択される。
【0058】
この配置により、基本光学場22が非線形結晶34の光学軸5(x軸)に沿って伝搬する場合、結晶34の非線形特性は、第2の曲面36を介して非線形結晶34から出る、400nmの第2高調波光学場23の生成に至る。第2高調波光学場23は、z軸に平行な線形偏光を有する。
【0059】
基本光学場22の波長をチューニングしつつ非線形結晶34を回転の軸39の周りで回転させることは、第2高調波光学場23に顕著なまたは最小限の偏差を導入することなく、第2高調波光学場23を周波数チューニングするための手段を提供する。
【0060】
図7は、図3の非線形結晶17を組み込んだ、一般的に参照番号40で示される、外部キャビティ周波数2倍器の模式図を表す。図2に言及して上記の通り記載された外部キャビティ周波数2倍器9と同様に、非線形結晶17は、第1のミラー10、出力カプラ11、入力カプラ12および第2のミラー13で定義されるリングキャビティ内に位置する。ここでも、外部キャビティ周波数2倍器40は、共鳴増強を用いて、連続波Ti:サファイヤレーザのような連続波、狭い線幅レーザ源14の出力周波数を変換して2倍の周波数の出力場15を発生させる。
【0061】
外部キャビティ周波数2倍器40で生成された出力場15の周波数チューニングは、上記の通り、入力場14の波長をチューニングし、非線形結晶17を軸21の周りで回転させることで達成することができる。ここに記載の例では、非線形結晶17は実質的にx軸およびy軸で定義される面内にある一方で、回転の軸21は実質的にy軸に平行である。
【0062】
この結果、外部キャビティ周波数2倍器40で入力光学場14の波長および非線形結晶17の軸21の周りの回転位置の連携したチューニングを行うことによって生成された出力場15の周波数チューニングは、出力場15が顕著なまたは最小限の偏差を経験することなく、達成できる。顕著なことに、外部キャビティ周波数2倍器40は、共振キャビティ内に、サーボ制御エレクトロニクスによって制御される光学板を組み込む必要はなく、非線形結晶17と同様に、キャビティミラー10、11、12および13の各々を自動的に再配置させるためにサーボ制御エレクトロニクスを使用する必要はない。この結果、外部キャビティ周波数2倍器40は、従来技術において知られているシステムと比較してより安定で安価で製造できる、より簡潔なデザインを呈する。
【0063】
この実施形態では、回転の軸21が非線形結晶17の回転対称の軸、つまり、y軸と一致することを見ることができる。図5の非線形結晶30が外部キャビティ周波数2倍器40内で用いられる場合も同様である。
【0064】
しかしながら、図4の非線形結晶24または図6の非線形結晶34の何れかが外部キャビティ周波数2倍器40内で用いられる場合、関連する回転の軸24および29は、非線形結晶24および34の回転対称の軸(つまり、z軸)とは一致しない。その代わり、回転の軸24および29は、非線形結晶24および34の関連するy軸に対して角度-θだけオフセットされる。
【0065】
関連する非線形結晶24、30または34がその関連する軸29、33または39のそれぞれの周りで回転される限り、外部キャビティ周波数2倍器40によって生成される出力場15の周波数チューニングは、出力場15が顕著なまたは最小限の偏差を経験することなく、達成することができる。
【0066】
上記の外部キャビティ周波数2倍器は、第2高調波発生非線形混合プロセスに基づいているものの、当業者の読者には、記載された非線形結晶が、より一般的な和周波混合(SFM);差周波混合(DFM);第3高調波混合(THM);高次高調波発生(HHG);および光学パラメトリック増幅(OPA)および下方変換を含む従来技術において知られている他の非線形プロセスを用いる他の周波数混合システムと共に用いられてよいことは、明らかであろう。さらに、記載の結晶は、共振器またはキャビティに基づくシステム内で用いる必要はなく、その代わり、基本または入力場の単一経路に基づく代替的なシステムにおいて用いることができる。
【0067】
上記の非線形結晶は1つまたは複数の既知の結晶加工技術を用いてバルク結晶から製造してよいことが理解できるであろう。例えば、非線形結晶の製造は、カット、成形または研磨加工技術の1つまたは複数を使用してよい。
【0068】
第1の曲面および反対の第2の曲面を備える非線形結晶が記載された。第1の曲面および第2の曲面は、非線形結晶の少なくとも1つの軸の周りの回転対称を有する非線形結晶を提供するよう配置される。非線形結晶は、生成された光学場にいかなる顕著なまたは最小限の偏差を導入することなく、非線形結晶の回転の軸の周りの回転によって、基本光学場を非線形結晶を通して伝搬させることで生成された生成光学場の周波数チューニングを可能にする。これらの非線形結晶は、したがって、キャビティミラーを自動的に再配置させるための光学的補償光学系またはサーボ制御エレクトロニクスの使用を必要とすることなく、外部キャビティ周波数2倍器または混合器に組み込むことができる。
【0069】
本明細書を通じて、文脈上の断りがない限り、用語「備える」、「含む」または「備えている」、「含んでいる」のような派生形は、述べられた特徴(integer)または特徴(integer)の群の包含を意味するものとして理解されるが、他の特徴(integer)または特徴(integer)の群の除外を意味するものとして理解されてはならない。
【0070】
さらに、本開示におけるいかなる先行技術への言及も、その先行技術が技術常識の一部を形成するという表示として捉えられてはならない。
【0071】
上述の本発明は、説明および記載の目的のために示されたものであり、網羅的なものまたは本発明を開示の形式通りに限定することを意図したものではない。記載された実施形態は、本発明の原理およびその実用的な応用を最善な形で説明し、これによって、他の当業者が本発明を考えられる特定の用途に適したさまざまな改変とともにさまざまな実施形態において最善の形で利用できるように、選択され記載されたのである。したがって、添付の特許請求の範囲において定義される発明の範囲から外れることなく、さらなる改変または改良が組み込まれてよい。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図6
図7