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特許7126522(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンまたはその薬学的に許容される塩、それを調製するための方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンまたはその薬学的に許容される塩、それを調製するための方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/12 20060101AFI20220819BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20220819BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220819BHJP
   C07C 57/15 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C07D207/12 CSP
A61K31/40
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/14
A61P25/28
A61P25/22
A61P25/00
A61P25/20
A61P25/30
A61P25/16
A61P25/04
A61P25/06
A61P21/02
A61P3/04
A61P1/14
A61P15/00
C07C57/15
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019563863
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2018063123
(87)【国際公開番号】W WO2018211080
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】17171938.8
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17195451.4
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17207406.4
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18151428.2
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513263020
【氏名又は名称】インテグレイティブ・リサーチ・ラボラトリーズ・スウェーデン・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クラス・ソーネソン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤ・ブクサ
(72)【発明者】
【氏名】イネセ・レイネ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509861(JP,A)
【文献】Journal of Pharmaceutical Sciences,1977年,Vol.66, No.1,p.1-19
【文献】BYRN S,PHARMACEUTICAL SOLIDS: A STRATEGIC APPROACH TO REGULATORY CONSIDERATIONS,PHARMACEUTICAL RESEARCH,米国,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,1995年07月01日,V12 N7,P945-954
【文献】PHARM TECH JAPAN,2002年,Vol.18, No.10,pp.1629-1644
【文献】Journal of High Technology Law,2009年,p.22-74
【文献】J. Pharm. Sci.,1975年,64,367-391
【文献】Nature,2009年05月19日,458,269
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 207/12
A61P 25/18
A61P 25/24
A61P 25/14
A61P 25/28
A61P 25/22
A61P 25/00
A61P 25/20
A61P 25/30
A61P 25/16
A61P 25/04
A61P 25/06
A61P 21/02
A61P 3/04
A61P 1/14
A61P 15/00
A61K 31/40
C07C 57/15
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIbの塩:
【化1】
【請求項2】
結晶質であることによって特徴づけられる、請求項1に記載の式IIbの塩。
【請求項3】
.7、13.4、23.2、27.8および29.4 2θにピークを含むXRPDディフラクトグラムによって特徴づけられる、請求項1または2に記載の式IIbの塩。
【請求項4】
その重量を、任意の相対湿度で±0.2重量%以下変化させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の式IIbの塩。
【請求項5】
任意の相対湿度で、その結晶相を変化させない、請求項1~4のいずれか1項に記載の式IIbの塩。
【請求項6】
相対湿度が0~100%、または0~97%の範囲内であり、および
相対湿度が、20℃~50℃の範囲内の温度で測定される、請求項4または5に記載の式IIbの塩。
【請求項7】
相対湿度が、30℃の温度で測定される、請求項6に記載の式IIbの塩。
【請求項8】
63℃~165℃の融点を有し、および
0mg/mL~80mg/mLの室温での水溶性を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の式IIbの塩。
【請求項9】
164.1℃の融点、および34mg/mLまたは74.1mg/mLの室温での水溶性を有する、請求項8に記載の式IIbの塩。
【請求項10】
(i)フマル酸および(ii)式IIの化合物:
【化2】
の組み合わせであり、
(i)および(ii)は1:1の比に規定されており、
式IIの化合物は、同位体で標識されている、請求項1~のいずれか1項に記載の式IIbの塩。
【請求項11】
同位体がジュウテリウムである、請求項10に記載の式IIbの塩。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の式IIbの塩を製造するための方法であって、- 式Iの化合物:
【化3】
を、少なくとも1種の溶媒の存在下で前記式Iの化合物を(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸と組み合わせることによって分割し、それによって、式IIaの塩:
【化4】
を得る工程と、
- 場合により、式IIaの塩を単離および乾燥する工程と、
- (-)-ジベンゾイル-L-酒石酸を式IIaの塩から除去し、それによって、式IIの化合物:
【化5】
を得る工程と、
- 式IIの化合物をフマル酸と組み合わせ、それによって、式IIbの塩を得る工程とを含む前記方法。
【請求項13】
少なくとも1種の溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式IIaの塩:
【化6】
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の式IIbの塩を、
薬学的に許容される賦形剤、担体および/または希釈剤との混合物で含む医薬組成物。
【請求項16】
治療において薬剤として使用するための、
請求項1~11のいずれか1項に記載の式IIbの塩。
【請求項17】
認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ハンチントン病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、うつ病、双極性障害、統合失調症、統合失調症様障害、全般性不安障害(GAD)、特定の恐怖症、パニック障害、睡眠障害、双極性障害、薬物誘導性精神病性障害、医原性精神病、医原性幻覚症、非医原性精神病、非医原性幻覚症、気分障害、不安障害、うつ病、強迫性疾患、加齢に関連する情緒障害、アルツハイマー病、パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状、脳損傷、物質乱用、食物の誤用によって特徴づけられる障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張の増大によって特徴づけられる状態における疼痛、運動障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、運動障害、L-DOPA誘導性運動障害、ジストニア、神経発達障害、神経変性障害、チック、振戦、レストレスレッグ、ナルコレプシー、行動障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防のための薬剤を製造するための、
請求項1~11のいずれか1項に記載の式IIbの塩の使用。
【請求項18】
前記疾患、障害および/または状態はパーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
式IIbの塩が治療有効量で存在する、請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化合物(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン、またはその薬学的に許容される塩を高い化学および/または鏡像体純度で調製するための方法に関する。本開示はまた、(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンを合成する際の中間体としての(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸および3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの組み合わせに関する。特に、本開示は、化合物(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのフマル酸塩、それを調製するための方法、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
大脳皮質は、思考、感情、記憶および計画のような高次機能に関与するいくつかの主要な領域を包含する。生体アミン、すなわち、ドーパミン、ノルエピネフリンおよびセロトニンが、哺乳類の皮質機能に重要である。上行性ドーパミンおよびノルエピネフリン経路は、その皮質を神経支配する。CNSのセロトニン作動性ニューロンは、大脳皮質を含む脳の実質的にすべての領域に投射している。これらの経路の活性における一次的または二次的機能不全は、これらの脳領域中のドーパミンおよびノルエピネフリンおよびセロトニン受容体における活性の調節不全を、続いて、精神および神経症状の症状発現をもたらす。皮質の生体アミンは、情動、不安、動機づけ、認知、注意、覚醒および覚醒状態を制御する皮質機能のいくつかの態様をモジュレートする。したがって、カテコールアミンのドーパミンおよびノルエピネフリンは、前頭前皮質領に対して強い影響を与え、その完全性は、例えば、注意、行動の計画および衝動制御に関係するいわゆる実行認知機能にとって極めて重要である。ノルエピネフリンは、不安および恐怖を調節する回路網における主要部分であり、したがって、パニック障害、全般性不安障害(GAD)および特定の恐怖症のような不安障害において調節不全になっていると考えられている。気分および情動機能に関して、うつ病および不安の処置における特にノルエピネフリンおよびセロトニンの神経伝達を促進する化合物の有用性は、これらの神経伝達物質が両方とも、情動機能の調節に関与しているという広く受け入れられている概念に強力に貢献してきた。
【0003】
一般に、生体アミン、より正確には、モノアミン、ノルエピネフリン、ドーパミンおよびセロトニンの伝達に特に影響を及ぼす化合物は、例えば、うつ病、不安および注意欠陥多動性障害(ADHD)に罹患している患者において情動性、認知性、または注意性症状を軽減するために成功裏に使用されている。
【0004】
さらに、皮質中のモノアミン系は、統合失調症の中核症状に直接的または間接的に関与していることが公知である。統合失調症における特定の皮質領域の機能不全を示す神経心理学的観察を加えた生化学的および遺伝学的所見の統合に基づき、この障害は、様々な病理学的要因が皮質機能に集中し皮質微小回路網の調節不全が引き起こされたときに現れ、それが統合失調症の症状として臨床的に明確になるということが提唱されている。この皮質微小回路網はグルタメート、GABAおよびドーパミンを含むいくつかの神経伝達物質によって調節されている。
【0005】
特許文献1は、哺乳類の脳の大脳皮質領域におけるカテコールアミン、ドーパミンおよびノルエピネフリンの細胞外レベルをモジュレートするために、より具体的には、中枢神経系障害を処置するために有用な3-フェニル-3-メトキシ-ピロリジン誘導体を開示している。化合物3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンは、ラセミ体として、およびそれぞれ対応する(+)-および(-)鏡像体としての形態で開示されている。ラセミ体は、その非塩形態(調製例19)で、および塩酸塩の形態(実施例12)で開示されている。2種の鏡像体は、非塩形態で、さらにシュウ酸塩の形態(それぞれ実施例5および7)で開示されている。
【0006】
さらに、3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのラセミ体を(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンに分割する方法は、特許文献1に開示されており、前記分割方法は、ピロリジン窒素のベンジル化、続く、キラルHPLCを使用しての分離およびピロリジン窒素の脱ベンジル化を含む。
【0007】
キラル薬物の鏡像体が往々にして、それぞれ異なる形でヒト体内の受容体および/または酵素のようなキラル高分子と相互作用し、したがって、薬理学、毒性学、および薬物動態のような生物学的活性において差異を示すことがあることはよく知られている。したがって、薬物の薬力学的および薬物動態特性を完全に利用し、および/またはラセミ混合物に随伴する起こり得る欠点を回避するために、新たな薬物をラセミ混合物としてではなく単一の鏡像体として開発し、かつ世に出すことが望ましい。さらに、酵素、受容体などとのその相互作用の理解を増加させるために、治験薬の鏡像体のようなキラル分子の三次元配置の知識を得ることが望ましい。
【0008】
さらに、大規模合成のような薬物の合成は、困難であることが公知である。主な困難のうちの1つは、少量の不純物であっても、除去が困難であり得る、および/または費用がかかり得ることである。鏡像体のようなキラル薬物の場合には、薬物を化学および立体化学の両方において純粋に生成することを可能にする方法を見出すことが必要である。さらに、薬物は、例えば、貯蔵および輸送中の取り扱いに適した形態で提供されるべきである。
【0009】
特許文献1に開示の化合物(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンは現在、パーキンソン病型認知症(PD-D)および認知症精神行動症状(BPSD)を処置するための皮質エンハンサー薬として臨床開発中である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2010/058018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンを合成するための以前の方法は、小規模から中規模の量を製造することを意図していた。しかしながら、化合物およびその開発のさらなる調査により、同等または改善された化学および/または立体化学純度で(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン、またはその薬学的に許容される塩を大規模合成するような合成を可能にするさらなる方法が必要となっている。さらに、シュウ酸は、シュウ酸カルシウムの形成に起因する腎不全のような腎障害と関連していることが公知であるので、(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのシュウ酸塩の代替物が必要とされている。
【0012】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン、またはその薬学的に許容される塩の多用性および/または利用可能性を増大させるために、および/またはその工業的生産を可能にするために、代替方法が依然として必要とされている。さらに、特に工業的規模で十分な薬学的特性、ならびに十分な取り扱いおよび薬物特性を示す(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの形態が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の目的は、前記必要性を満たし、および/または十分な薬学的特性ならびに取り扱いおよび薬物特性を示す(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン、またはその薬学的に許容される塩を得る方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】式IIbの塩のXRPDスペクトルが示されている図である。
図2】ハロペリドールの化学構造式が示されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、式IIbの塩を提供する:
【化1】
【0016】
本開示はまた、式IIbの塩を製造するための方法であって、
- 式Iの化合物:
【化2】
を、少なくとも1種の溶媒の存在下で前記式Iの化合物を(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸と組み合わせることによって分割し、それによって、式IIaの塩:
【化3】
を得る工程と、
- 場合により、式IIaの塩を単離および乾燥する工程と、
- (-)-ジベンゾイル-L-酒石酸を式IIaの塩から除去し、それによって、式IIの化合物:
【化4】
を得る工程と、
- 式IIの化合物をフマル酸と組み合わせ、それによって、式IIbの塩を得る工程と
を含む方法を提供する。
【0017】
さらに、本開示はまた、式IIaの塩:
【化5】
を提供する。
【0018】
本開示はまた、式IIの化合物:
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を製造するための方法であって、
- 式Iの化合物:
【化7】
を、少なくとも1種の溶媒の存在下で前記式Iの化合物を(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸と組み合わせることによって分割し、それによって、式IIaの塩:
【化8】
を得る工程と、
- 場合により、式IIaの塩を単離および乾燥する工程と、
- (-)-ジベンゾイル-L-酒石酸を式IIaの塩から除去し、それによって、式IIの化合物を得る工程と、
- 場合により、式IIの化合物を薬学的に許容される酸と組み合わせ、それによって、式IIの化合物の薬学的に許容される塩を得る工程と
を含む方法を提供する。
【0019】
本開示はまた、本明細書に記載の式Iの化合物を製造するための方法であって、
- ブロモ-2,3-ジフルオロベンゼンから調製されるグリニャール試薬のような式IVの化合物を式Vの化合物と反応させて、式VIの化合物を得る工程と:
【化9】
[式中、
「M」は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物を表し、
PGは、tert-ブトキシカルボニルのような保護基を表す]、
- 式VIの化合物を、シクロヘキサンからなるか、またはそれを含む少なくとも1種の溶媒からの再結晶化に供する工程と、
- 式VIの化合物を式VIIの化合物に変換する工程と:
【化10】
- 保護基を式VIIの化合物から除去し、それによって、式Iの化合物を得る工程と:
【化11】
を含む方法を提供する。
【0020】
本開示はまた、
本明細書に記載の式IIa、式IIa’、式IIbもしくは式IIb’の塩;または
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩を、
薬学的に許容される賦形剤、担体および/または希釈剤との混合物で含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本開示はまた、治療において薬剤として使用するための、
本明細書に記載の式IIa、式IIa’、式IIbもしくは式IIb’の塩;または
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0022】
本開示はまた、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ハンチントン病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、うつ病、双極性障害、統合失調症、統合失調症様障害、全般性不安障害(GAD)、特定の恐怖症、パニック障害、睡眠障害、双極性障害、薬物誘導性精神病性障害、医原性精神病、医原性幻覚症、非医原性精神病、非医原性幻覚症、気分障害、不安障害、うつ病、強迫性疾患、加齢に関連する情緒障害、アルツハイマー病、パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状、物質乱用、食物の誤用によって特徴づけられる障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張の増大によって特徴づけられる状態における疼痛、運動障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、運動障害、L-DOPA誘導性運動障害、ジストニア、神経発達障害、神経変性障害、チック、振戦、レストレスレッグ、ナルコレプシー、行動障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防で使用するための、
本明細書に記載の式IIa、式IIa’、式IIbもしくは式IIb’の塩;または
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0023】
本開示はまた、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ハンチントン病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、うつ病、双極性障害、統合失調症、統合失調症様障害、全般性不安障害(GAD)、特定の恐怖症、パニック障害、睡眠障害、双極性障害、薬物誘導性精神病性障害、医原性精神病、医原性幻覚症、非医原性精神病、非医原性幻覚症、気分障害、不安障害、うつ病、強迫性疾患、加齢に関連する情緒障害、アルツハイマー病、パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状、脳損傷、物質乱用、食物の誤用によって特徴づけられる障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張の増大によって特徴づけられる状態における疼痛、運動障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、運動障害、L-DOPA誘導性運動障害、ジストニア、神経発達障害、神経変性障害、チック、振戦、レストレスレッグ、ナルコレプシー、行動障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防で使用するための薬剤を製造するための、
本明細書に記載の式IIa、式IIa’、式IIbもしくは式IIb’の塩;または
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0024】
本開示はまた、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ハンチントン病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、うつ病、双極性障害、統合失調症、統合失調症様障害、全般性不安障害(GAD)、特定の恐怖症、パニック障害、睡眠障害、双極性障害、薬物誘導性精神病性障害、医原性精神病、医原性幻覚症、非医原性精神病、非医原性幻覚症、気分障害、不安障害、うつ病、強迫性疾患、加齢に関連する情緒障害、アルツハイマー病、パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状、脳損傷、物質乱用、食物の誤用によって特徴づけられる障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張の増大によって特徴づけられる状態における疼痛、運動障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、運動障害、L-DOPA誘導性運動障害、ジストニア、神経発達障害、神経変性障害、チック、振戦、レストレスレッグ、ナルコレプシー、行動障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態を処置および/または予防するための方法であって、それを必要とするヒトまたは動物のような哺乳動物に、有効量の、本明細書に記載の方法によって得ることができる本明細書に記載の式IIa、式IIa’、式IIbもしくは式IIb’の塩;または
式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法を提供する。
【0025】
説明
本開示は、式IIbの塩:
【化12】
を提供する。
【0026】
したがって、式IIbの塩は、1:1の比での式IIの化合物およびフマル酸の組み合わせである。言い換えると、式IIbの塩は、フマル酸および式IIの化合物の比が1:1である式IIの化合物のフマル酸塩である。
【化13】
【0027】
式IIbの塩は、薬学的に許容され、かつ予想外にも、高い結晶化度(すなわち、実質的に結晶質である)、吸湿性ではないこと、いずれの試験相対湿度でもその結晶相が変化しないこと、高い融点および/または許容される水性溶解度プロファイルという特性を示すことが見出された。さらに、式IIbの塩を、良好な化学的収率で、高い純度で単離することができる。
【0028】
したがって、結晶質であることによって特徴づけられる、本明細書に記載の式IIbの塩を提供する。結晶化度は、XRPDまたは任意の他の適切な方法によって決定することができる。例えば、融点およびXRPDに関して式IIbの塩を十分に定義する式IIbの塩の高い結晶化度は、錠剤を作製する際の利点であり、貯蔵安定性を増強すると考えられる。本明細書では、高い結晶化度は、XRPDまたは任意の他の適切な測定の方法によって測定した場合に、約80%以上、例えば、約85%、約90%、約95%、約99%または約100%の結晶化度を意図している。
【0029】
式IIbの塩が吸湿性ではないという事実は、周囲湿度によって変化することなく貯蔵することが可能であるので、有利である。式IIbの塩は、本明細書に記載の任意の相対湿度のような任意の湿度で、その重量を±0.2重量%以下変化させる、すなわち、吸湿性ではない、または実質的に吸湿性ではないことが見出された。一例では、式IIbの塩は、任意の試験相対湿度のような任意の湿度で、その重量を変化させない。
【0030】
さらに、式IIbの塩が本明細書に記載の任意の相対湿度のような任意の湿度で、その結晶相を変化させず、貯蔵安定なものとなっていることは有利である。
【0031】
約164.1℃の式IIbの塩の高い融点は、例えば、錠剤を作製する際の利点である。さらに、式IIbの塩の水溶性は、本明細書の実施例セクションに記載の標準の水溶性試験およびフラスコ法水溶性試験で測定した場合に、それぞれ室温で34mg/mLおよび/または74.1mg/mLであり、これを、経口投与のようなヒトへの任意の投与に適したものにしていることが見出された。
【0032】
任意の相対湿度のような湿度が約0~約100%の範囲内であり得ることは分かるであろう。例えば、相対湿度のような湿度は、約0~約97%の範囲内であり得る。一例では、相対湿度のような湿度は、約0%、約6%、約11%、約22%、約32%、約43%、約56%、約73%、約84%、約97%のうちの少なくとも1つに等しいか、またはそれを上回ってよい。相対湿度のような湿度は、約20℃~約50℃の範囲内の温度で測定してよい。例えば、相対湿度のような湿度は、約30℃であってよい。式IIbの塩の重量を、本明細書に記載の相対湿度のような湿度および/または本明細書に記載の温度での約1週間の貯蔵後に決定してもよい。
【0033】
約163℃~約165℃、例えば、約164.1℃の融点を有する、本明細書に記載の式IIbの塩も提供する。融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。さらに、本明細書に記載の式IIbの塩は、本明細書の実施例セクションに記載の標準の水溶性試験法および/またはフラスコ法水溶性試験によって決定した場合に、約30mg/mL~約80mg/mLの水溶性を有し得る。例えば、式IIbの塩の水溶性は、本明細書に記載の標準の水溶性法によって決定した場合に34mg/mLおよび/または本明細書に記載のフラスコ法水溶性試験によって決定した場合に74.1mg/mLであり得る。水溶性は、室温、すなわち、約22℃~約25℃の範囲内の温度で測定してよい。
【0034】
本明細書では、相対湿度は、所与の温度および大気圧での水の平衡圧に対する水蒸気分圧の比を意図している。
【0035】
式IIbの塩は、約23.16 2θのピーク、および場合により、約6.7のような約6.66、約13.4のような約13.41、約27.8のような約27.79、約29.4のような約29.38 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPDディフラクトグラムによって特徴づけられ得る。式IIbの塩はまた、約6.66、約13.41、約23.16、約27.79、約29.38 2θのピーク、および場合により、約16.27、約34.02 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPDディフラクトグラムによって特徴づけられ得る。例えば、XRPDディフラクトグラムは、約6.7、約13.4、約23.2、約27.8および約29.4 2θにピークを含み得る。式IIbの塩はまた、約6.66、約13.41、約16.27、約23.16、約27.79、約29.38、約34.02 2θのピーク、および場合により、約16.42、約21.69 2θから選択される少なくとも1つのさらなるピークを含むXRPDディフラクトグラムによって特徴づけられ得る。式IIbの塩は、実質的に図1に示されているXRPDディフラクトグラムによって特徴づけられ得る。
【0036】
加えて、または代替的には、式IIの化合物をフマル酸と2:1の比で組み合わせ、それによって、式IIb’の塩を形成してもよい:
【化14】
【0037】
式IIb’の塩は、本明細書に記載の方法を使用して製造することができる。
【0038】
本開示は、式IIbの塩:
【化15】
を製造するための方法であって、
- 式Iの化合物:
【化16】
を、少なくとも1種の溶媒の存在下で前記式Iの化合物を(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸と組み合わせることによって分割し、それによって、式IIaの塩:
【化17】
を得る工程と、
- 場合により、式IIaの塩を乾燥および/または単離する工程と、
- (-)-ジベンゾイル-L-酒石酸を、例えば、式IIaの塩を塩基で処理することによって式IIaの塩から除去し、それによって、式IIの化合物:
【化18】
を得る工程と、
- 式IIの化合物をフマル酸と組み合わせて、式IIbの塩を得る工程と
を含む方法を提供する。
【0039】
式IIbの塩はまた、フマル酸を、本明細書に記載の方法とは異なるキラル分割方法を使用して調製されている式IIの化合物と組み合わせることによって調製することもできることは分かるであろう。例えば、式IIの化合物は、例えば(-)-ジ-p-トルイル-L-酒石酸のような他の酒石酸誘導体との塩など、(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸との塩とは異なる式Iの化合物のジアステレオマー塩の分別結晶化によって調製することもできる。式IIの化合物を調製するための他の分割手順は、例えば、式Iの化合物のN-ベンジル誘導体を利用するような、式Iの化合物自体ではなく式Iの化合物の誘導体を利用する分割手順であってもよい。そのような手順は、例えば、(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸との塩のようなジアステレオマー塩を利用する分別結晶化工程を含んでもよく、および/またはその手順は、スキーム1に図示されているクロマトグラフィーによる分離工程を含んでもよい。さらに、クロマトグラフィーによる分離工程を含む分割手順は、式Iの化合物の2種の鏡像体をクロマトグラフィー用のキラルカラムで直接的に分離する方法であってもよい。さらに、式IIの化合物を、不斉合成を使用して、または当技術分野で公知の任意の他の方法によって調製してもよい。
【0040】
【化19】
【0041】
本開示はまた、式IIの化合物:
【化20】
またはその薬学的に許容される塩を製造するための方法であって、
- 式Iの化合物:
【化21】
を、少なくとも1種の溶媒の存在下で前記式Iの化合物を(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸と組み合わせることによって分割し、それによって、式IIaの塩:
【化22】
を得る工程と、
- 場合により、式IIaの塩を乾燥および/または単離する工程と、
- (-)-ジベンゾイル-L-酒石酸を式IIaの塩から除去し、それによって、式IIの化合物を得る工程と、
- 場合により、式IIの化合物を薬学的に許容される酸と組み合わせ、それによって、式IIの化合物の薬学的に許容される塩を得る工程と
を含む方法を提供する。
【0042】
(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸は、式IIaの塩を塩基またはイオン交換体で処理することによって、式IIaの塩から除去することができる。
【0043】
したがって、式IIの化合物:
【化23】
またはその薬学的に許容される塩を製造するための方法であって、
- 式Iの化合物:
【化24】
を、少なくとも1種の溶媒の存在下で前記式Iの化合物を(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸と組み合わせることによって分割し、それによって、式IIaの塩:
【化25】
を得る工程と、
- 場合により、式IIaの塩を乾燥および/または単離する工程と、
- 式IIaの化合物を塩基で処理するか、または式IIaの化合物をイオン交換樹脂で処理し、続いて、塩基で処理し、それによって、式IIの化合物を得る工程と、
- 場合により、式IIの化合物を薬学的に許容される酸と組み合わせ、それによって、式IIの化合物の薬学的に許容される塩を得る工程と
を含む方法がある。
【0044】
本明細書に記載の式Iの化合物が鏡像体混合物であることは分かるであろう。鏡像体混合物は、ラセミ体、すなわち、鏡像体の50:50混合物であり得る。本明細書では、式Iの化合物は、3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンとも称される。
【0045】
さらに、本明細書に記載の式IIの化合物が、式Iの化合物の(+)-鏡像体であり、実質的に鏡像的に純粋である、すなわち、式Iの化合物の(-)-鏡像体を実質的に含有せず、約95%以上、例えば、96%、97%、98%または99%の鏡像体余剰率を有し得ることは分かるであろう。本明細書では、式IIの化合物は、(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンとも称される。さらに、本明細書に記載の絶対配置の決定は、S-配置を式IIの化合物について示した。したがって、式IIの化合物は、(S)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンとも称され得る。
【0046】
式IIの化合物の薬学的に許容される塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコン酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン-p-スルホン酸塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される酸付加塩であってよい。一例として、薬学的に許容される塩は、フマル酸および式IIの化合物から形成されるフマル酸塩であってよい。
【0047】
式IIbの塩、または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩を製造するための本明細書に記載の方法は、キラル分割を含み、その際、前記キラル分割は、
a)(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸を、場合により加熱することによって、少なくとも1種の溶媒に溶解させて、第1の溶液を得る工程と、
b)式Iの化合物および少なくとも1種のさらなる溶媒を含む溶液を、前記第1の溶液に添加し、それによって、第2の溶液を得る工程と、
c)式IIaの塩を、場合により冷却することによって、前記第2の溶液から沈澱させる工程と
を含み得る。
【0048】
例えば、工程a)は、(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸を少なくとも1種の溶媒に溶解させるために加熱中に行ってもよい。次いで、工程b)は、第1の溶液が温かいうちに行ってもよい。第2の溶液を冷却すると、式IIaの塩が前記第2の溶液から沈澱するはずである。加えて、または代替的には、種結晶の添加のような当技術分野で公知の他の公知の結晶化技法を用いて、式IIaの塩を前記第2の溶液から沈澱させてもよい。続いて、式IIaの塩を少なくとも1種のさらなる溶媒で洗浄し、および/または乾燥してもよい。
【0049】
本明細書に記載の少なくとも1種の溶媒および/または少なくとも1種のさらなる溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、少なくとも1種の溶媒および/または少なくとも1種のさらなる溶媒は、エタノールからなってよいか、またはそれを含んでよい。
【0050】
本明細書に記載の方法の塩基での処理は、
- 式IIaの化合物を、第1の水不溶性溶媒、および塩基を含む水溶液の混合物と混合し、それによって、
(i)第1の水不溶性溶媒を含む溶媒相、および
(ii)塩基を含む水溶液を含む水相
を形成する工程と、
- (ii)を第2の水不溶性溶媒で抽出して、
(iii)第2の水不溶性溶媒を含む少なくとも1つの相
を得る工程と、
- 相(i)および(iii)を合わせる工程と、
- 第1および第2の水不溶性溶媒を、合わせた相(i)および(iii)から蒸発させ、それによって、式IIの化合物を得る工程と、
- 場合により、式IIの化合物をその薬学的に許容される塩に変換する工程と
を含んでよい。
【0051】
本明細書では、水不溶性溶媒は、水と実質的に不混和性である有機溶媒または有機溶媒の混合物を意図している。水不溶性溶媒の例には、ジクロロメタンおよびメチルtert-ブチルエーテルが含まれる。
【0052】
例えば、本明細書に記載の塩基は、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムのような炭酸塩からなってよいか、またはそれを含んでよく、および/または
第1の水不溶性溶媒および/または第2の水不溶性溶媒は、ジクロロメタンからなるか、またはそれを含む。
【0053】
本明細書に記載の方法では、式Iの化合物と(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸との間のモル比は、約1.9:1~約2.1の範囲内、例えば、2:1であってよい。
【0054】
本明細書に記載の方法では、式IIb’の塩は、式IIの化合物および(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸を含むエタノール溶液から沈澱させてもよい。
【0055】
有利なことに、本明細書に記載の方法によって、式IIbの塩、および/または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩を高い鏡像体純度で得ることができる。例えば、鏡像体余剰率は、95%以上、例えば、96、97、98または99%であってよい。本明細書では、鏡像体余剰率(ee)は、式Iの(-)-鏡像体またはその塩のパーセンテージを引いた式Iの(+)-鏡像体またはその塩のパーセンテージを意図している。例えば、混合物が98モル%の(+)-鏡像体および2モル%の(-)-鏡像体を含有する場合、鏡像体余剰率は96%である。
【0056】
さらに、本開示は、式IIbの塩および/または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩、例えば、HPLCまたは任意の他の適切な方法によって測定した場合に95%以上のような高化学純度の塩の製造であって、本明細書に記載の方法に、式Iの化合物を調製するための次の方法工程:
- ブロモ-2,3-ジフルオロベンゼンから調製されるグリニャール試薬のような式IVの化合物を式Vの化合物と反応させて、式VIの化合物を得る工程と:
【化26】
[式中、
「M」は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物を表し、
PGは、tert-ブトキシカルボニルのような保護基を表す]、
- 式VIの化合物を、シクロヘキサンからなるか、またはそれを含む少なくとも1種の溶媒からの再結晶化に供する工程と、
- 式VIの化合物を式VIIの化合物に変換する工程と:
【化27】
- 保護基を式VIIの化合物から除去し、それによって、式Iの化合物を得る工程と:
【化28】
を組み入れることによる製造を提供する。
【0057】
有利なことに、上記の方法工程は式VIIIの化合物のような不純物の形成を実質的に防止し、それによって、追加の精製工程の必要性を退ける、または最小限にすることが見出された。以前に、tert-ブチル3-オキソピロリジン-1-カルボキシラートをn-ヘキシルリチウムのような厳しい塩基性条件に供した場合、式VIIIの化合物が形成され、除去することが困難であることが見出された。本明細書に記載の方法は、式Iの化合物を、例えば、HPLCまたはNMRによって測定した場合に約98%以上の化学純度で得ることを可能にする。
【化29】
【0058】
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIbの塩も提供する。
【0059】
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩も提供する。
【0060】
さらに、式IIaの塩:
【化30】
を提供する。
【0061】
式IIaの塩は、2:1の比での本明細書に記載の式IIの化合物と(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸との組み合わせを含む。加えて、または代替的には、本明細書に記載の式IIの化合物を、(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸と1:1の比で組み合わせ、それによって、式IIa’の化合物:
【化31】
を得ることができる。
【0062】
式IIa’の塩は、本明細書に記載の方法を使用して製造することができる。
【0063】
式IIaの塩は、式IIの化合物を製造する際に中間体として使用することができる。加えて、または代替的には、式IIaの塩はまた、式IIの化合物の薬学的に許容される塩を製造する際に、例えば、式IIbの塩を製造する際に中間体として使用することができる。例えば、式IIaの塩はまた、式IIbの塩を製造する際に中間体として使用することができる。式IIaの塩は、優れた特性を本明細書に記載の分割方法について有し、これは、既に1回の結晶化の後に、式IIaの塩の高い化学的収率を予想外に高い立体化学純度でもたらす。さらに、式IIa’の塩の結晶は、式IIの化合物の2種の鏡像体の絶対配置を決定するために使用することができる。加えて、または代替的には、式IIaまたは式IIa’の塩を、本明細書に記載の疾患および/または障害を処置するための薬剤のような薬剤として使用することができる。
【0064】
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIa、式IIa’、式IIbおよび/または式IIb’の塩;および/または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される賦形剤、担体および/または希釈剤との混合物で含む医薬組成物も提供する。
【0065】
さらに、
治療において薬剤として使用するための、本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIa、式IIa’、式IIbおよび/または式IIb’の塩;および/または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0066】
さらに、認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ハンチントン病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、うつ病、双極性障害、統合失調症、統合失調症様障害、全般性不安障害(GAD)、特定の恐怖症、パニック障害、睡眠障害、双極性障害、薬物誘導性精神病性障害、医原性精神病、医原性幻覚症、非医原性精神病、非医原性幻覚症、気分障害、不安障害、うつ病、強迫性疾患、加齢に関連する情緒障害、アルツハイマー病、パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状、物質乱用、食物の誤用によって特徴づけられる障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張の増大によって特徴づけられる状態における疼痛、運動障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、運動障害、L-DOPA誘導性運動障害、ジストニア、神経発達障害、神経変性障害、チック、振戦、レストレスレッグ、ナルコレプシー、行動障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防で使用するための、
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIa、式IIa’、式IIbおよび/または式IIb’の塩;および/または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0067】
さらに、パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状である疾患、障害および/または状態の処置および/または予防で使用するための、
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIa、式IIa’、式IIbおよび/または式IIb’の塩;および/または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0068】
認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ハンチントン病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、うつ病、双極性障害、統合失調症、統合失調症様障害、全般性不安障害(GAD)、特定の恐怖症、パニック障害、睡眠障害、双極性障害、薬物誘導性精神病性障害、医原性精神病、医原性幻覚症、非医原性精神病、非医原性幻覚症、気分障害、不安障害、うつ病、強迫性疾患、加齢に関連する情緒障害、アルツハイマー病、パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状、脳損傷、物質乱用、食物の誤用によって特徴づけられる障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張の増大によって特徴づけられる状態における疼痛、運動障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、運動障害、L-DOPA誘導性運動障害、ジストニア、神経発達障害、神経変性障害、チック、振戦、レストレスレッグ、ナルコレプシー、行動障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態の処置および/または予防で使用するための薬剤を製造するための、
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIa、式IIa’、式IIbおよび/または式IIb’の塩;および/または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0069】
パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状である疾患、障害および/または状態の処置および/または予防で使用するための薬剤を製造するための、
本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIa、式IIa’、式IIbおよび/または式IIb’の塩;および/または式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用も提供する。
【0070】
認知症、加齢性認知障害、自閉症スペクトラム障害、ADHD、脳性麻痺、ハンチントン病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、うつ病、双極性障害、統合失調症、統合失調症様障害、全般性不安障害(GAD)、特定の恐怖症、パニック障害、睡眠障害、双極性障害、薬物誘導性精神病性障害、医原性精神病、医原性幻覚症、非医原性精神病、非医原性幻覚症、気分障害、不安障害、うつ病、強迫性疾患、加齢に関連する情緒障害、アルツハイマー病、パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状、脳損傷、物質乱用、食物の誤用によって特徴づけられる障害、性障害、摂食障害、肥満、頭痛、筋緊張の増大によって特徴づけられる状態における疼痛、運動障害、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、運動障害、L-DOPA誘導性運動障害、ジストニア、神経発達障害、神経変性障害、チック、振戦、レストレスレッグ、ナルコレプシー、行動障害のうちの少なくとも1つである疾患、障害および/または状態を処置および/または予防するための方法であって、それを必要とするヒトまたは動物のような哺乳動物に、有効量の、本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIa、式IIa’、式IIbおよび/もしくは式IIb’の塩;ならびに/または
式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法も提供する。
【0071】
パーキンソン病型認知症、認知症精神行動症状である疾患、障害および/または状態を処置および/または予防するための方法であって、それを必要とするヒトまたは動物のような哺乳動物に、有効量の、本明細書に記載の方法によって得ることができる式IIa、式IIa’、式IIbおよび/もしくは式IIb’の塩;ならびに/または
式IIの化合物、もしくはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法も提供する。
【0072】
本明細書に記載の疾患、障害および/または状態は、少なくとも部分的に、シグマ-1-受容体(すなわち、σ-1-受容体)と関連し、前記受容体は、多くの組織種で発現され、中枢神経系のある特定の領域で特に濃縮される。したがって、シグマ-1-受容体との相互作用を示す本明細書に記載の化合物またはその塩は、本明細書に記載の疾患、障害および/または状態の処置および/または予防において有用であると考えられる。例えば、本明細書に記載の化合物およびその塩は、本明細書に記載の放射性リガンド結合アッセイにおいて、シグマ-1-受容体と相互作用して、ハロペリドールの少なくとも約50%、少なくとも約60%または少なくとも約70%に置き代わる場合に、本明細書に記載の疾患、障害および/または状態の処置および/または予防において有用であると判断される。
【0073】
本開示は、式Iの化合物を調製するための方法であって、
- ブロモ-2,3-ジフルオロベンゼンから調製されるグリニャール試薬のような式IVの化合物を式Vの化合物と反応させて、式VIの化合物を得る工程と:
【化32】
[式中、
「M」は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ハロゲン化物を表し、
PGは、tert-ブトキシカルボニルのような保護基を表す]、
- 式VIの化合物を、シクロヘキサンからなるか、またはそれを含む少なくとも1種の溶媒からの再結晶化に供する工程と、
- 式VIの化合物を式VIIの化合物に変換する工程と:
【化33】
- 保護基を式VIIの化合物から除去し、それによって、式Iの化合物を得る工程と:
【化34】
を含む方法も提供する。
【0074】
式IVの化合物がグリニャール試薬である場合、これは、当技術分野で公知のとおりに調製することができることは分かるであろう。特に、これは、参照によって本明細書に組み入れる欧州特許第1582524A1号に記載されているように、グリニャール試薬を使用して調製することができる。したがって、式IVの化合物の「M」は、(MgX)LiYであってよい[式中、XおよびYは、Cl、BrまたはIであってよい]。
【0075】
有利なことに、上記の方法工程が本明細書に記載の式VIIIの化合物の形成のような不純物の形成を実質的に防止し、それによって、追加の精製工程の必要性を退ける、または最小限にすることが見出された。この方法は、式Iの化合物を、例えば、HPLCまたはNMRによって測定した場合に約98%以上の化学純度で得ることを可能にする。
【0076】
式VIの化合物から式VIIの化合物への変換は、カリウムtert-ブトキシドのような塩基の存在下でヨウ化メチルを使用するような標準的な手順を使用して行うことができる。保護基の除去は、強酸条件の存在下のように、酸性条件を使用するような標準的な手順を使用して行うことができる。
【0077】

本明細書では、式IIの化合物および酸の組み合わせを含む塩の化学構造は、酸の酸プロトンが酸に結合している複合体として図示されている。しかしながら、当業者は、酸の酸プロトンが式IIの化合物の窒素原子に結合していてもよく、および/または式IIの化合物の窒素原子と酸との間で共有されていてもよく、かつこれが、本明細書に記載の複合体に包含されることが意図されていることを理解する。例えば、式IIbの塩は、下記:
【化35】
のとおりに表すこともできる。
【0078】
さらなる一例では、式IIaの塩は、下記:
【化36】
のとおりに表すことができる。
【0079】
本明細書に記載の式IIの塩を、当技術分野で公知の標準的な手順を使用して、式IIの別の塩に変換することもできることは分かるであろう。
【0080】
同位体
本開示の化合物または塩は、そのような化合物または塩を構成する原子のうちの1個またはそれ以上に、不自然な割合の原子同位体を含有してもよい。本明細書に記載の化合物と本明細書に記載の酸との組み合わせである塩の場合には、前記組み合わせの化合物は、1個またはそれ以上の原子同位体を含有してもよい、すなわち、その化合物は、同位体で標識されている。例えば、化合物は、例えば、トリチウム(H)、ジュウテリウム(H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)のような1個またはそれ以上の同位体で標識されている。一例では、化合物は、1個またはそれ以上のジュウテリウム原子で標識されている。本開示の化合物の同位体変形形態のすべてが、放射性であるかないかに関わらず、本開示の範囲内に包含されることが意図されている。
【0081】
したがって、本開示は、ジュウテリウムのような1個またはそれ以上の同位体で標識されている式Iの化合物、式IIの化合物、式IVの化合物、式Vの化合物、式VIの化合物および/または式VIIの化合物のような本明細書に記載の化合物を提供する。本明細書に記載の同位体で標識された化合物を、本明細書に記載の酸と組み合わせ、それによって、本明細書に記載の塩を得ることができる。
【0082】
一例では、式IIの化合物は、ジュウテリウムのような同位体で標識される。そのとき、式IIの化合物のフェニル環、ピロリジン環および/またはメトキシ基の1個またはそれ以上の水素原子をジュウテリウムのような同位体で置き換えることができる。
【0083】
本開示をさらに、次の非限定的な実施例によって例示する。
【0084】
実施例
本明細書では、別段に述べられていない限り、化学化合物の命名および図示は、ソフトウェアパッケージJ Chem for Excel、ver. 14.8.2600.753を使用して作成されている。名称と図面とが一致しない場合、化学構造が正確であると判断されることとする。
【0085】
一般
試薬および溶媒は、精製せずに購入したまま使用した。HPLC分析は、Dionex UVD 170U検出器およびThermo Finnigan MSを備えたDionex HPLC Moduleで行った。カラム:Waters XBridge(商標)C18、4.6×50mm、移動相A:0.1%ギ酸(水性)、移動相B:アセトニトリル、流速:1mL/分、注入体積:3~20μL、検出:220~320nm、勾配:5分で0%~100%B、緩衝液AまたはCを使用した。
NMR分析は、400MHzで操作されるVarian Mercury 400装置で行った。残留溶媒ピークを内部標準として使用した。
化合物のアッセイおよび純度決定は、勾配液体クロマトグラフィーによって、220nmで検出される不純物の式VIIIの化合物を除いて260nmでのUV検出で行った。式VIIIの化合物は、本明細書に記載の構造を有する。不純物の量は、内部正規化によって推定した。合成中間体の溶液を、中間体を単離せずに合成で使用する場合では、化学的収率を決定するために、アリコート蒸発法を用いた。これは、溶液の一定体積を蒸発させ、残留物をクロマトグラフィーによって分析し、かつ既知量の前記中間体のクロマトグラムのものと比較したことを意味する。
カラム:Hypersil Gold C18、4.6×150mm、3μm(Thermo)、カラム温度:40℃、カラム炉:Dionex TCC-3000 SD、ポンプ:Dionex LPG-3400 SD、流速:1mL/分、注入器:Dionex WPS-3000 SL、注入体積:10μL、検出器:Dionex DAD-3000、波長:260nm、データ収集システム:Chromeleon。
【0086】
式IIの化合物およびその塩の鏡像体純度決定は、定組成液体クロマトグラフィーによって220nmでのUV検出で行った。鏡像体純度は、内部正規化によって推定した。カラム:Chiralpak AD-H、250×4.6mm、5μm(Daicel)、カラム温度:25℃、カラム炉:Dionex TCC-3000 SD、ポンプ:Dionex LPG-3400 SD、流速:0.8mL/分、注入器:Dionex WPS-3000 SL、注入体積:10μL、検出器:Dionex DAD-3000、波長:220nm、データ収集システム:Chromeleon(Dionex)。
【0087】
XRPDデータをBruker D8 Advance(2005)装置で収集した。放射性銅Ka、λ=1.54180Å、Kbフィルター0.020mm Niホイル、陽極電圧:40kV、陽極電流40mA、検出器:LynxEye(1D-位置検出型)、スリット0.6mmおよび8mm、ステップサイズ0.02°、走査速度0.2s/ステップ、2θスケールで間隔(2Θ)(3~35)°。
X線結晶学は、光子100CMOS検出器を備えたBruker D8 Venture回折計を使用して行った。結晶を、シリコーングリースを用いてKaptonループ内に載せた。温度:123K(開放流窒素冷却デバイス)。データを、Mo K-アルファ放射を使用して収集した。データ整理には、BrukerによるプログラムのApex suiteを使用した。
【0088】
吸湿性試験
塩の吸湿性試験を、種々の塩の正確な重量サンプルを様々な湿度で30℃で維持することによって行った。1週間後に、サンプルを再び秤量し、元の重量に基づき、重量差のパーセンテージを計算した。
【0089】
標準の水溶性試験
別段に述べられていない限り、本明細書に記載の塩のための水溶性試験は、次のとおり行った。各塩0.05gをフラスコ内で秤量し、フラスコ+塩の質量(m-vs)を記録した。肉眼で観察して完全に溶解するまで、水を、塩を含むフラスコにゆっくりと滴下添加した。フラスコ+塩+溶媒(m-svs)の質量を記録した。「溶質のグラム/溶媒のkg」、すなわち、「塩のグラム/溶媒のkg」として表される溶解性を、下式にしたがって計算した:
【数1】
式1中:
(s)は、測定された塩の重量をkgで表し、
(m-svs)は、測定されたフラスコ+塩+溶媒の質量をkgで表し、
(m-vs)は、測定されたフラスコ+塩の質量をkgで表す。
(s)の値は0.05/1000kgであった。
溶解性を水中で測定し、水は1g/mLの密度を有するので、溶解性の単位は、g/Lまたはmg/mLであってよい。
【0090】
フラスコ法水溶性試験
場合によっては、さらなる水溶性試験(フラスコ法水溶性試験)を次のとおりに行った。過剰の塩を水に添加した。混合物を少なくとも24時間平衡化させ(振とう)、それによって、飽和塩溶液を得た。次いで、飽和溶液を澄明濾過し、事前秤量したきれいなフラスコ(mv)に移した。フラスコ+飽和溶液(mvs)の質量を記録した。溶媒を一定質量まで減圧下で蒸発させた。乾燥残留物を含有するフラスコを秤量した(mvdr)。「溶質のグラム/溶媒のkg」、すなわち、「塩のグラム/溶媒のkg」として表される溶解性を下式によって計算した:
【数2】
式2中:
(mvdr-mv)は、(i)溶媒の蒸発後の乾燥残留物を含有するフラスコの質量と(ii)フラスコの質量との間の重量差(kg)であり、
(mvs-mvdr)は、(i)飽和塩溶液を含むフラスコの質量と(ii)乾燥残留物を含有するフラスコの質量との間の重量差(kg)である。溶解性を水中で測定し、水は1g/mLの密度を有するので、溶解性の単位は、g/Lまたはmg/mLであってよい。
【0091】
略語:
APCI 大気圧化学イオン化
Bn ベンジル
DCM ジクロロメタン
ee 鏡像体余剰率
Eq. 式
g グラム
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
kg キログラム
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
min. 分
mg ミリグラム
mL ミリリットル
mm ミリメートル
MS 質量分析法
nm ナノメートル
M モル
mol モル
mmol(e) ミリモル
NMR 核磁気共鳴
i-PrOAc 酢酸イソプロピル
THF テトラヒドロフラン
XRPD X線粉末回折
UV 紫外線
Å オングストローム
μm マイクロメートル
【実施例1】
【0092】
粗製のtert-ブチル3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキシラート、すなわち式(VIa)の化合物の合成:
【化37】
MTBE(60mL)を3つ口丸底フラスコに装入し、続いて、ブロモ-2,3-ジフルオロ-ベンゼン(12mL、107mmol)を装入した。溶液を氷/塩浴中で冷却した。内部温度が-4℃に達したら、THF中のi-PrMgCl・LiCl溶液(1.3M、90.7mL、118mmol)の添加を開始した。添加中のより高い内部温度は2℃であった(浴温度は-8℃~-5℃であった);添加時間17分。添加が完了した後に、反応混合物を-5℃~0℃で1時間撹拌した。MTBE(200mL)中のtert-ブチル3-オキソピロリジン-1-カルボキシラート(21.8g、118mmol)溶液を反応混合物に、-4℃~-2℃で15分かけて激しく撹拌しながら添加した。反応混合物を-2℃~0℃で3時間撹拌し、次いで、20%塩化アンモニウム水溶液(260mL)を添加することによってクエンチした。添加中に、内部温度が0℃から15℃に上昇した。冷却浴を外し、混合物を室温で1時間撹拌した。層を分離し、水相をMTBE(120mL)で再抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(160mL)および水(2×120mL)で洗浄した。有機層を体積約120mLに濃縮した。MTBE(120mL)を添加し、溶媒を蒸発させて、体積120mLを残した。MTBE120mLを再び添加し、体積120mLが残るまで蒸発させた。シクロヘキサン(120mL)を添加し、混合物を、残りの体積が120mLになるまで濃縮した。シクロヘキサンとの同時蒸発をそれぞれシクロヘキサン120mLを使用して2回繰り返した。最終溶液(160mL)を室温で撹拌した。30分後に、溶液は濁り、結晶化が始まった。スラリーを2時間、室温で、次いで、2時間、5~10℃で撹拌した。沈澱物を濾別し、シクロヘキサン(2×30mL)でフィルターで洗浄した。シクロヘキサンの凍結はフィルター上で吸引乾燥をもたらすので、湿った物質を真空下で40℃で乾燥した。式(VIa)の化合物22g(69%)が固体として得られ、その純度は、HPLC(220nmでのUV検出)によって決定すると98面積%であった。本明細書に記載の式(VIII)の不純化合物の含有率は、HPLC(220nmでのUV検出)によって決定すると1.2%であった。
【実施例2】
【0093】
tert-ブチル3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキシラート、すなわち式(VIa)の化合物の再結晶化:
実施例1(21.5g)で得られた式(VIa)の粗製の化合物をシクロヘキサン(130mL)と混合し、混合物を60℃に加熱した(内部温度が55℃に達したときに溶解が始まった)。得られた溶液を60℃で5分間撹拌し、次いで、室温に冷却した。内部温度が41℃に達したときに溶液が濁り、36℃で激しい沈澱が始まった。スラリーを室温で終夜、次いで、10~15℃で2時間撹拌した。沈澱物を濾別し、シクロヘキサン(2×30mL)で洗浄した。湿った物質(真空下での濾過プロセス中にシクロヘキサンを凍結させると、フィルター上で吸引乾燥が生じる)をフラスコに装入し、真空下で40℃で16時間乾燥した。式(VIa)の化合物19.9g(93%)が、HPLC(220nmでのUV検出)によって決定すると99.8面積%の純度で得られた。不純な化合物(VIII)は、0.12%レベルで検出された。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 1.47 (s, 9H), 2.2-2.3 (m, 1H), 2.4-2.5 (m, 1H), 2.57 (m, 1H), 3.5-3.9 (m, 4H), 7.1-7.2 (m, 2H), 7.3-7.4 (m, 1H). MS (APCI) m/z 300 [M+1]
【実施例3】
【0094】
tert-ブチル3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン-1-カルボキシラート、すなわち、式(VIIa)の化合物の合成:
【化38】
THF(120mL)を3つ口丸底フラスコに装入し、続いて、実施例2からの式VIaの化合物(19.8g、66.1mmol)を装入した。溶液に、KOtBu(9.66g、85.9mmol)を添加した。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで、31℃(内部温度)に加熱し、3時間、30~31℃で撹拌した。内部温度を37℃未満に維持しながら、ヨウ化メチル(6.2mL、99mmol)を添加した(添加時間は10分であった)。反応混合物を31℃で18時間撹拌した。追加量のKOtBu(0.6g、5mmol)を反応混合物に一度に添加した。1時間後に、反応混合物を室温に冷却し、水(300mL)で希釈した。i-PrOAc(200mL)を添加し、層を分離した。水層をi-PrOAc(100mL)で再抽出した。有機層を合わせ、ブライン(180mL)で、次いで、水(100mL)で洗浄した。残りの合計の体積が200mLになるまで、有機層を減圧下で濃縮した。i-PrOAc(200mL)を添加し、200mLが残るまで蒸留を継続した。i-PrOAc200mLを再び添加し、残りの体積が約220mLになるまで溶媒を留去した。式(VIIa)の化合物の収率:97%(アリコート蒸発法を使用して決定)、純度は、HPLCによって決定すると98面積%であった。生成物を単離せずに、次の工程で使用した。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 1.49 (s, 9H), 2.1-2.3 (m, 1H), 2.5-2.6 (m, 1H), 3.07, (s, 3H), 3.5-3.7 (m, 3H), 4.0-4.2 (m, 1H), 7.1-7.2 (m, 3H). MS (APCI) m/z 314 [M+1]
【実施例4】
【0095】
ラセミ3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン、すなわち式(I)の化合物の合成:
【化39】
実施例3で得られた化合物(VIIa)(計算値20.0g、63.7mmol)のi-PrOAc溶液(220mL)を15℃に冷却し、次いで、塩酸(37%、26.6mL、318mmol)を添加した。冷却浴を外し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を10℃に冷却し、水(100mL)を添加した。冷却浴を外し、混合物を室温で1時間撹拌した。層を分離し、有機相を水(60mL)で再抽出した。合わせた水相を0℃に冷却し、12.9のpHが得られるまで50%NaOH水溶液(約50mL)を添加した。冷却浴を外し、塩基性水相をMTBE(120mLおよび60mL)で2回抽出した。合わせた有機層を水(60mL)で洗浄し、次いで、約100mLが残留するまで減圧下で濃縮した。エタノール(100mL)を添加し、約100mLが残留するまで蒸留を継続した。エタノールでの添加および蒸発手順を2回、各回、新鮮なエタノール100mLを添加することによって繰り返した。残りの体積がほぼ22mLになるまで、最後の蒸留を継続した。
【0096】
式(I)の化合物の収率:79%(アリコート蒸発法を使用して決定)、純度は、HPLCによって決定すると98面積%であった。生成物を単離せずに、次の工程で使用した。
H NMR (400 MHz, CDCl): δ 2.00 (m, 2H), 2.1-2.2 (m, 1H), 2.4-2.5 (m, 1H), 2.9-3.1, (m, 5H), 3.2-3.3 (m, 1H), 3.5-3.6 (m, 1H), 7.0-7.2 (m, 3H). MS (APCI) m/z 214 [M+1]
【実施例5】
【0097】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸塩、すなわち、式(IIa)の塩の合成:
【化40】
(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸(5.08g、14.2mmol)をエタノール(99%、メチルエチルケトン1%を含有)(46mL)に溶解させ、溶液を55℃に加熱した。化合物(I)のエタノール溶液(実施例4からの22mL(10.8gと計算された)、50.7mmol)を酸溶液に添加した。フラスコをエタノール(2mL)ですすぎ、反応混合物に添加した。反応混合物を55℃で5分間撹拌し、次いで、室温に冷却し、終夜、室温で撹拌しながら放置した。スラリーを0~5℃で3時間撹拌した。沈澱物を濾過し、濾過ケーキをエタノール(2×20mL)で洗浄した。生成物を空気乾燥すると、式(IIa)の塩7.0g(11.1gの理論収量に対して63%)が99.7面積%の純度(HPLC)で得られた。2種の立体異性体の比は、98.8:1.2であった。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 1.9-2.1 (m, 1H), 2.5-2.6 (m, 1H), 2.86 (s, 3H), 3.0-3.2 (m, 3H), 3.6-3.7 (m, 1H), 5.57 (s, 1H), 7.1-7.3 (m, 2H), 7.4-7.5 (m, 3H), 7.6-7.7 (m, 1H), 7.94 (d, 2H)。上記のNMRスペクトルは、式IIの化合物と(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸との間の比が2:1であることを示した。
【0098】
実施例5においてと同様の方式で合成された1:1の比の式IIの化合物および(-)-ジベンゾイル-L-酒石酸の組み合わせ(すなわち式IIa’の塩)について、絶対配置を単一のX線回折から決定した。得られたモデルでの酒石酸のキラリティー(R,R)を比較することによって、結晶モデルの絶対配置が正確であること、および式IIの化合物がS形であることが確認された。
【実施例6】
【0099】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン、すなわち、式(II)の化合物の合成:
【化41】
フラスコ中で、KCO(4.77g、34.5mmol)を水(25mL)中に溶解させた。調製した溶液に、DCM(65mL)および式(IIa)の塩(6.77g、17.3mmol)を添加した。混合物を室温で20分間撹拌した。層を分離し、水相をDCM(30mL)で再抽出した。合わせた有機抽出物を水(3×20mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、エタノール(3×30mL)と共に3回、同時蒸発させて、式(II)の化合物3.25g(収率89%)を得た。
【実施例7】
【0100】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのフマル酸塩、すなわち、式IIbの塩の合成:
【化42】
フマル酸(1.77g、15.2mmol)をエタノール(99%、メチルエチルケトン1%を含有)(54mL)に室温で溶解させた。エタノール(6mL)中の実施例6からの化合物(II)の溶液(3.25g、15.2mmol)を酸溶液に添加した。フラスコをエタノール(2.8mL)ですすぎ、反応混合物に添加した。反応混合物を室温で終夜、次いで、0~5℃で2時間撹拌した。沈澱物を濾過し、濾過ケーキをエタノール(2×15mL)で洗浄した。式IIbのフマル酸塩4.22g(収率84%)が100面積%の純度(HPLC)で得られた。2種の鏡像体の比は、99.5:0.5(すなわち、99%e.e.)であった。H-NMRアッセイによる純度は99.5%であった。
H NMR (400 MHz, DMSO-d): δ 2.1-2.2 (m, 1H), 2.6-2.7 (m, 1H), 2.94 (s, 3H), 3.1-3.4 (m, 3H), 3.7-3.8 (m, 2H), 6.44 (s, 1H), 7.2-7.3 (m, 2H), 7.4-7.5 (m, 1H).
【0101】
X線粉末回折分析を、概説に記載の装置、備品および条件を使用する標準的な方法によって上記で調製された(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのフマル酸塩の結晶のサンプルで行った。分析は、図1に図示のディフラクトグラムを示した。位置および相対強度が特徴的な主なピークを図1のディフラクトグラムから抽出し、下記の表1に示す。
【0102】
ピークの相対強度は試験下のサンプルの向きによって、かつ使用された装置の種類および設定で変化し得るので、ここに含まれるXRDトレースの強度は実例であって、絶対的な比較のために使用されることを意図したものではないことは理解されるであろう。
【0103】
表1:式IIbの塩のXRPディフラクトグラム中の主なピークの位置および強度。
【表1】
【0104】
〔実施例8~16〕
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの様々な酸付加塩を合成するための一般手順
酸(2mmol)をエタノール(3mL)中の(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン(2mmol)に添加し、必要であれば、混合物を完全に溶解するまで加熱還流し、次いで、室温に冷却した。沈澱が生じたら、得られた固体を濾取し、真空中で40℃で終夜乾燥した。沈澱がエタノール中で生じなかった場合、溶液を-18℃に冷却し、および/または沈澱が生じるまで様々な溶媒で処理するか、または蒸発させ、沈澱が生じるまで、得られた残留物を代替の溶媒で処理した。得られた塩の塩基/酸の比をH NMR分光法によって少なくとも10秒の緩和時間で、または元素分析によって決定した。融点をDSC(示差走査熱量測定)によって決定し、固体特性解析をXRPDによって決定し、これを、沈澱した塩が結晶質であるかどうかを決定するために使用した。
【実施例8】
【0105】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの塩酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製したが、これは、MTBEを酸および塩基のエタノール溶液に添加すると沈澱した。塩は結晶質であったが、結晶化は精製の効果を有さないようであった。
収率:59%。
塩基/酸の比:1:1。
融点:196.9℃。
水中溶解性:213mg/mL。
【実施例9】
【0106】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのL-酒石酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製し、エタノール溶液から沈澱させた。塩は結晶質であった。
収率:91%。
塩基/酸の比:1:1。
融点:185.4℃。
水中溶解性:53mg/mL.
【実施例10】
【0107】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのコハク酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製したが、これは、酢酸エチルを酸および塩基のイソプロパノール溶液に添加すると沈澱した。塩は結晶質であった。
収率:83%。
塩基/酸の比:1:1。
融点:105.1℃。
水中溶解性:159mg/mL。
【実施例11】
【0108】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのフマル酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製し、エタノール溶液から沈澱させた。塩は結晶質であった。
収率:79%。
塩基/酸の比:1:1。
融点:164.1℃。
水中溶解性:34mg/mL。フラスコ法水溶性試験によって測定した場合、フマル酸塩の水溶性の値は74.1mg/mLであることが見出された。
【実施例12】
【0109】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのマレイン酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製し、酸および塩基の酢酸エチル溶液から沈澱させた。塩は結晶質であった。
収率:74%。
塩基/酸の比:1:0.8。
融点:93.5℃。
水中溶解性:161mg/mL。
【実施例13】
【0110】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのL-リンゴ酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製し、酸および塩基のイソプロパノール溶液から沈澱させた。塩は結晶質であった。
収率:88%。
塩基/酸の比:1:1。
融点:123.8℃。
水中溶解性:132mg/mL。
【実施例14】
【0111】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのクエン酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製し、酸および塩基の希釈イソプロパノール溶液から沈澱させた。
XRPDおよびDSC分析は、サンプル中の大量の残留溶媒によって記録されなかった。
収率:81%。
塩基/酸の比:1:1。
【実施例15】
【0112】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの硫酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製したが、これは、MTBEを酸および塩基のアセトニトリル溶液に添加すると沈澱した。塩は結晶質であった。
収率:80%。
塩基/酸の比:1:1。
融点:128.7℃。
水中溶解性:167mg/mL。
【実施例16】
【0113】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの臭化水素酸塩
標題の塩を上記一般手順によって調製したが、これは、メタノールを酸および塩基のMTBE溶液に添加すると沈澱した。塩は結晶質であった。
収率:82%。
塩基/酸の比は未決定であった。
融点:154.8℃。
水中溶解性:401mg/mL。
【実施例17】
【0114】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの酸付加塩の吸湿性試験
実施例8~16で得られた各塩を特徴づけた後に、それらのうちの4種(塩酸塩、実施例8;酒石酸塩、実施例9;フマル酸塩、実施例11;およびL-リンゴ酸塩、実施例13)を最後に、本明細書に記載の吸湿性試験で試験した。次の吸湿性試験では、(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンの各酸塩を1週間、30℃および種々の相対湿度(RH)0~97%の条件下に曝露した後に、重量変化を測定した。結果を表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
表2に示されているとおり、実施例11による(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのフマル酸塩は、いずれの湿度でも、水を吸着または脱着しない。したがって、73%、83%または97%のような非常に高い相対湿度に1週間、30℃で曝露された場合にも、この塩は非常に低い吸湿性、すなわち、±0.2%以下の重量変化を有する。これらの特性は、高い水中溶解性、高い結晶化度および高い融点と一緒に、フマル酸酸付加塩が優れた薬学的特性を有することを示している。
【実施例18】
【0117】
インビトロ結合アッセイおよびデータ、ヒトシグマ1受容体
ヒトシグマ1受容体での(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのフマル酸塩の結合親和性を、GANAPATHY,M.E.、PRASAD,P.D.、HUANG,W.、SETH,P.、LEIBACH,F.H.およびGANAPATHY,V.(1999)、Molecular and ligand-binding characterization of the σ-receptor in the Jurkat human T lymphocyte cell line、J.Pharmacol.Exp.Ther.、289:251に記載のものと同様の競合結合アッセイによって決定した。
【0118】
細胞膜ホモジネート(タンパク質150μg)を120分間、37℃で、15nM[H]ペンタゾシンと共に、試験化合物の非存在または存在下で、50mMトリス-HCl(pH8)を含有する緩衝液中でインキュベートした。
【0119】
非特異的結合を10μMハロペリドールの存在下で決定した。
【0120】
インキュベーション後に、96サンプルセルハーベスター(Unifilter、Packard)を用いて、サンプルを真空下で、0.3%PEIで予浸しておいたガラスファイバーフィルター(GF/B、Packard)に通して濾過し、氷冷50mMトリス-HClで複数回すすいだ。フィルターを乾燥し、次いで、シンチレーションカクテル(Microscint 0、Packard)を用いて、シンチレーションカウント(Topcount、Packard)で放射能をカウントした。
【0121】
結果を対照放射性リガンド特異的結合に対する阻害パーセントとして表した。
【0122】
標準基準化合物はハロペリドールであり、これを各実験で複数濃度で試験して、競合曲線を得、そこから、そのIC50値を計算した。
【0123】
試験化合物を1.0E-5Mの単一濃度で二連で試験した。表3の報告値は平均値である。
【0124】
【表3】
【0125】
参照例19(WO2010/058018に開示の参照化合物)
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのシュウ酸塩の合成
シュウ酸(6.9g、54.7mmol)をメタノール(200mL)中の(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジン(12.0g、56.3mmol)の溶液に添加した。混合物を50℃に5分間加熱し、次いで、室温にした。得られた沈澱物に、ジエチルエーテル(100mL)をゆっくりと添加し、混合物を0℃で2時間撹拌した。生成物を濾過によって単離し、固体をジエチルエーテルで洗浄した。フード内で終夜乾燥した後に、生成物をさらに、炉内で70℃で2時間乾燥した。標題の化合物15.6gが結晶質生成物として得られた。
H NMR (800 MHz, DMSO-d): δ 2.23 (m, 1H), 2.76 (m, 1H), 2.95 (s, 3H), 3.27 (m, 1H), 3.42 (m, 2H), 3.87 (m, 1H), 7.30 (m, 2H), 7.52 (m, 1H).
収率:91%。
元素分析による塩基/酸の比:1:1。
融点:185.1℃。
水中溶解性(フラスコ法水溶性試験):28mg/mL。
【0126】
(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのシュウ酸塩を本明細書に記載の吸湿性試験に供した。結果を下記の表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】

本明細書において上記で示したとおり、実施例11による(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのフマル酸塩は、参照例19による対応するシュウ酸塩の水性溶解度(28mg/mL)よりも約2.5倍高い水中溶解性(74.1mg/mL)を有する。薬物の溶解は、胃腸管からの吸収に対する律速工程であるので、式IIbの塩は、参照化合物と比較して、薬学的特性が有意に増強されている。したがって、実施例11による(+)-3-(2,3-ジフルオロフェニル)-3-メトキシピロリジンのフマル酸塩は、十分な水溶性および吸湿性の両方を有する。加えて、164.1℃の融点を有し、錠剤のような医薬組成物の製造に適切なものとなっている。
【0129】
参照文献
1. WO2010/0580182。
2. J. Pharmacol. Exp. Ther.、1999、289:251。
3. 欧州特許第1582524A1号
図1
図2