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特許7126529位相スイッチト素子を使用したチューニング可能整合ネットワーク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】位相スイッチト素子を使用したチューニング可能整合ネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H03H 19/00 20060101AFI20220819BHJP
   H03F 1/02 20060101ALI20220819BHJP
   H03H 21/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
H03H19/00
H03F1/02
H03H21/00
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020060147
(22)【出願日】2020-03-30
(62)【分割の表示】P 2017532742の分割
【原出願日】2015-12-18
(65)【公開番号】P2020114011
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】62/094,144
(32)【優先日】2014-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】ペロー,デーヴィッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ユルコフ,アレクサンダー・セルゲーエフ
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-514176(JP,A)
【文献】特表2007-501600(JP,A)
【文献】特開2014-187678(JP,A)
【文献】特開平11-220338(JP,A)
【文献】特表2003-504906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/02
H03H15/00-H03H15/02
H03H19/00-H03H21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポートおよび出力ポートを有する高周波(RF)増幅システムであって、
前記RF増幅システムの入力ポートに結合された入力ポートを有し、更に出力ポートを有するRF増幅器と、
前記RF増幅器の前記出力ポートと前記RF増幅システムの出力ポートとの間に結合された位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークであって、前記RF増幅器の出力ポートに呈するインピーダンスを変化させるために、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスを変化させるように構成され、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークの前記インピーダンスが、前記RF増幅器の前記出力ポートにおけるRF信号の周波数および位相に関係した周波数および位相で少なくとも1つのリアクタンス素子を前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークに電気的に接続または切断することによって変化させられて、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークの出力において所望のリアクタンス値を有する前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークを提供する、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークと、
を含む、高周波増幅システム。
【請求項2】
請求項1記載のRF増幅システムにおいて、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークが、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子を含み、前記1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々が、それぞれの制御信号を受けるように構成され、供給された前記それぞれの制御信号に応答して、対応する所望のリアクタンス値を有する各位相スイッチト・リアクタンス素子が提供され、前記RF増幅システムが、更に、前記1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々にそれぞれの制御信号を供給するように構成されたコントローラを含む、RF増幅システム。
【請求項3】
請求項2記載のRF増幅システムにおいて、前記1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々が、
1つ以上のリアクタンス素子であって、前記1つ以上のリアクタンス素子のうちの少なくとも1つのリアクタンス素子がそれに結合された少なくとも1つのスイッチを有する、1つ以上のリアクタンス素子
を含み、
前記1つ以上のリアクタンス素子の内少なくとも1つが、それに結合された少なくとも1つのスイッチによって、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークに電気的に接続され、および、該位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークから電気的に切断されるように構成され、
前記少なくとも1つのスイッチが、前記RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号の周波数に関係するスイッチング周波数と、前記それぞれの制御信号に基づくスイッチング位相とで切り替え可能である、RF増幅システム。
【請求項4】
請求項3記載のRF増幅システムにおいて、前記少なくとも1つのスイッチが、前記RF増幅器の出力ポートにおける前記RF信号のサイクル毎に1回オンおよびオフに切り替わるために、半波スイッチング構成で動作可能である、RF増幅システム。
【請求項5】
請求項3記載のRF増幅システムにおいて、前記少なくとも1つのスイッチが、前記RF増幅器の出力ポートにおける前記RF信号のサイクル毎に2回オンおよび2回オフに切り替わるために、全波スイッチング構成で動作可能である、RF増幅システム。
【請求項6】
請求項3記載のRF増幅システムにおいて、前記1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々が、スイッチと並列なキャパシタを含む、RF増幅システム。
【請求項7】
請求項6記載のRF増幅システムにおいて、前記1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々が、更に、前記スイッチと並列な前記キャパシタの組み合わせと直列なインダクタを含む、RF増幅システム。
【請求項8】
請求項3記載のRF増幅システムにおいて、前記少なくとも1つのスイッチが、前記少なくとも1つのスイッチのゼロ電圧スイッチングおよびゼロ電流スイッチングの内少なくとも1つを提供するように動作可能である、RF増幅システム。
【請求項9】
請求項3記載のRF増幅システムにおいて、前記スイッチング周波数およびスイッチング位相が、所望のリアクタンス値を有する前記位相スイッチト・リアクタンス素子を提供するように選択される、RF増幅システム。
【請求項10】
請求項9記載のRF増幅システムにおいて、前記1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の内少なくとも1つが、
実効容量値を有するキャパシタであって、前記キャパシタの実効容量値が、前記キャパシタの物理DC容量値と前記スイッチング位相とに関係する、キャパシタ、および
実効インダクタンス値を有するインダクタであって、所望の周波数における前記インダクタの実効インダクタンス値が、前記インダクタの物理DCインダクタンス値と前記スイッチング位相とに関係する、インダクタ、
の一方である、RF増幅システム。
【請求項11】
請求項1記載のRF増幅システムにおいて、前記RF増幅システムの出力ポートに結合された可変負荷インピーダンスを前記RF増幅器のインピーダンスに整合させるために、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによって前記RF増幅器の出力ポートに呈するインピーダンスを動的に適応させ、前記RF増幅システムが、更に、前記RF増幅システムの出力ポートに結合されたRF負荷を含み、前記RF負荷が、アンテナ、伝送線、およびプラズマ負荷の内少なくとも1つである、RF増幅システム。
【請求項12】
請求項3記載のRF増幅システムにおいて、前記RF増幅器が、RF電力を生成するように構成された少なくとも1つのスイッチング素子を含むスイッチング・インバータを含む、RF増幅システム。
【請求項13】
請求項12記載のRF増幅システムにおいて、前記RF増幅器が前記スイッチング・インバータの前記少なくとも1つのスイッチング素子のゼロ電圧スイッチング(ZVS)を維持するように、前記コントローラが前記RF増幅器の出力ポートに呈する前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスを変化させる、RF増幅システム。
【請求項14】
請求項3記載のRF増幅システムにおいて、前記1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々の少なくとも1つのスイッチを切り替えることによって、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによって提供されるインピーダンス変換を行う、RF増幅システム。
【請求項15】
請求項1記載のRF増幅システムであって、更に、
前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークに結合されたフィルタを含み、
前記フィルタが、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによって生成され、前記RF増幅器の出力ポートおよび前記RF増幅システムの出力ポートの内少なくとも1つに呈する、高調波成分を低減するフィルタ特性を有し、
前記フィルタが、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークと、前記RF増幅器および前記RF増幅システムの出力ポートの内少なくとも1つとの間においてDC信号を電気的に分離するように構成された1つ以上のフィルタ部品を含む、RF増幅システム。
【請求項16】
請求項1記載のRF増幅システムにおいて、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークが、
直列経路リアクタンス素子の第1ノードに結合された第1分路位相スイッチト可変リアクタンス素子を含む、RF増幅システム。
【請求項17】
請求項16記載のRF増幅システムにおいて、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークが、更に、
前記直列経路リアクタンス素子の第2ノードに結合された第2分路位相スイッチト可変リアクタンス素子を含む、RF増幅システム。
【請求項18】
高周波(RF)増幅システムの動作方法であって、
RF信号をRF増幅器の入力ポートに供給するステップと、
前記RF増幅器によって前記RF信号を増幅し、前記RF増幅器の出力ポートにおいて増幅RF信号を供給するステップと、
前記RF増幅器の出力ポートに呈するインピーダンスを変化させるために、前記RF増幅器の出力ポートと前記RF増幅システムの出力ポートとの間に結合された位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスを変化させるステップであって、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスが、前記RF増幅器の前記出力ポートにおけるRF信号の周波数に関係した周波数で変化させられる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダン
ス・ネットワークのインピーダンスを変化させるステップが、
前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによる制御信号を受けるステップと、
前記制御信号に応答して、所望のリアクタンス値を有する前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークを提供するために、前記RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号の周波数に関係する周波数および位相で、少なくとも1つのリアクタンス素子を前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークへ電気的に接続しまたは該位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークから電気的に切断するステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークが、1つ以上のリアクタンス素子と、少なくとも1つのスイッチとを含み、少なくとも1つのリアクタンス素子を前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークへ電気的に接続しまたは該位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークから電気的に切断するステップが、
前記制御信号に基づくスイッチング周波数およびスイッチング位相で、前記1つ以上のリアクタンス素子の内少なくとも1つを、それに関連する少なくとも1つのスイッチによって、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークへ電気的に接続しまたは該位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークから電気的に切断するようにするステップを含む、方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、更に、
所望のリアクタンス値を有する位相スイッチト・リアクタンス素子を提供するために、前記RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号の周波数に基づいて、前記スイッチング周波数およびスイッチング位相を選択するステップを含む、方法。
【請求項22】
請求項18記載の方法であって、更に、
前記RF増幅システムの出力ポートに結合された可変負荷インピーダンスを前記RF増幅器のインピーダンスに整合させるために、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによって、前記RF増幅器に呈するインピーダンスを動的に適応させるステップを含む、方法。
【請求項23】
請求項18記載の方法において、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによって前記RF増幅器に呈する負荷インピーダンスを変化させることにより、前記RF増幅システムの出力ポートに供給される前記増幅信号の電力レベルを制御する、方法。
【請求項24】
請求項20記載の方法において、前記RF増幅器が、RF電力を生成するように構成された少なくとも1つのスイッチング素子を含むスイッチング・インバータを含み、前記方法が、更に、
前記RF増幅器に呈する前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスを変化させることによって、前記スイッチング・インバータの少なくとも1つのスイッチング素子のゼロ電圧スイッチング(ZVS)を維持するステップを含む、方法。
【請求項25】
請求項20記載の方法であって、更に、
前記少なくとも1つのスイッチのゼロ電圧スイッチングおよびゼロ電流スイッチングの内少なくとも1つを提供するために、前記位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークの前記少なくとも1つのスイッチを切り替えるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 関連出願に対する相互引用
[0002] 本願は、35U.S.C.§119(e)に基づいて、2014年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/094,144号の出願日の権利を主張する。この仮特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
[0003] インピーダンス整合ネットワークは、多くの高周波(RF)およびマイクロ波システム内における電力伝送を最大化するために一般に使用されている。例えば、RF送信機では、インピーダンス整合ネットワークは、RF電力増幅器(PA)の出力インピーダンスから、RF負荷(例えば、アンテナ)のインピーダンスまでのインピーダンス整合を得るために使用することができる。このようなインピーダンス整合は、送信電力を増大し、電力損失を低減し、余分な回路エレメント(例えば、アイソレータ等)の必要性を低減または排除する。
【0003】
[0004] インピーダンス整合ネットワークのクラスの1つに、チューニング可能インピーダンス整合ネットワーク(TMN:tunable impedance matching network)と呼ばれるものがあり、これは場合によっては自動アンテナ・チューニング・ユニットとも呼ばれる。従来のTMNは、単一エレメントまたは集中エレメント・リアクタンス・ネットワークとして実現されることがあり、リアクタンス素子の少なくとも1つが可変(例えば、チューニング可能)部品となっており、特定の周波数においてまたはある範囲の周波数にわたって、可変部品のインピーダンスを変更できるようになっている。TMN内におけるリアクタンス素子は、梯子ネットワーク、L-ネットワーク、T-ネットワーク、またはπ-ネットワークというような回路トポロジで配置されることが可能である。
【0004】
[0005] 従来のTMNは、アナログ(連続調節可能)またはディジタル(1組の離散値間で調節可能)のいずれかに分類することができる。アナログTMNは、バイアス状態を調節することによって連続的にチューニングすることができるリアクタンス値(ある周波数において、またはある範囲の周波数にわたって)を有する可変リアクタンス素子を利用する。ディジタルTMNは、可変リアクタンス素子を、ディジタル的に切り替えられる静止リアクタンス素子のアレイとして実装する。この手法は、リアクタンス値のインピーダンスを、有限で離散的な刻みで調節することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0006] アナログTMNは、バラクタ・ダイオード(またはバラクタ・ダイオード回路)または微小電気機械システム(MEMS)バラクタを使用して実現される場合が多い。
アナログTMNは高速で高精度のインピーダンス整合を広い範囲のインピーダンスにわたって可能にするが、高電圧レベルで動作するためには比較的高いバイアス電圧を必要とする。
【0006】
[0007] ディジタルTMNは、CMOSスイッチ、MEMSスイッチ、PINダイオード、またはディスクリート・パワー・トランジスタを使用して実現されることが多い。MEMSスイッチは、低いオン状態抵抗を有し、低電力消費で数十GHzまで動作することができるが、MEMSスイッチは大きな制御電圧を必要とする。PINダイオードおよびCMOSスイッチ・ベースのディジタルTMNは、低位ないし中位のオン状態抵抗を呈し
、したがってある程度の抵抗性電力損失を犠牲にすれば、高い電力レベルを扱うことができる。PINダイオードおよびCMOSスイッチ・ベースのディジタルTMNは、ダイ上における集積、例えば、ソフトウェア無線(SDR:Software Defined Radio)集積回路(IC)および他のオンチップTMNに好ましい。しかしながら、ディジタルTMNは、チューニング分解能に限界があり、したがって、インピーダンス整合を達成できる精度に限界がある。RFプラズマ・ドライバのように、非常に広いインピーダンス範囲にわたって高精度のインピーダンス整合が要求される高電力用途の中には、要求される細かいチューニング分解能を達成するために多数のディジタル・スイッチが必要とされるために、ディジタルTMNの使用が非実用的になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0008] この摘要は、詳細な説明において以下で更に説明する概念から選択したものを、簡略化した形態で紹介するために設けられている。この摘要は、特許請求する主題の主要な特徴や必須の特徴を特定することを意図するのではなく、特許請求する主題の範囲を限定するために使用されることを意図するのでもない。
【0008】
[0009] 既存のTMNと比較して、高い精度および/または速いインピーダンス整合を有するTMNが求められていることが認められている。また、より広いインピーダンス範囲にわたってチューニング帯域幅を広げ、高い精度および/または速いインピーダンス整合を有しつつ、同時に低挿入損失でもっと高い電力レベルにおける動作を可能にするTMNが求められていることも認められている。
【0009】
[0010] この概念の一形態では、本明細書において説明するシステムおよび技法は、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワーク(phase-switched tunable impedance network)を対象とする。これは、ソースに結合されるように構成された入力と、負荷に結合されるように構成された出力と、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子とを有する。コントローラが位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークに結合され、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンスの各々にそれぞれの制御信号を供給する。供給されたそれぞれの制御信号に応答して、各位相スイッチト・リアクタンス素子は所望のリアクタンス値を与える。
【0010】
[0011] この特定の構成では、従来技術のTMNと比較して、高い精度および/または速いインピーダンス整合を有する位相スイッチトTMNが提供される。また、位相スイッチトTMNは、精度向上および/またはインピーダンス整合の高速化を、先行技術の手法と比較して、それらよりも広いインピーダンス範囲にわたるチューニング帯域幅の拡大とともに可能にしつつ、同時に少ない挿入損失で高い電力レベルにおける動作を可能にする。ある実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の内1つ以上のリアクタンス値が同じであってもよく、そして他の実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々が異なるリアクタンス値を有してもよい。
【0011】
[0012] 実施形態では、コントローラは位相スイッチトTMNの内部にある。一実施形態では、コントローラは位相スイッチトTMNの外部にある。実施形態では、コントローラの一部は位相スイッチトTMNの内部にあり、コントローラの一部は位相スイッチトTMNの外部にある。
【0012】
[0013] 実施形態では、各位相スイッチト・リアクタンスを対応する所望のリアクタンス値に設定することによって、ソースと負荷との間でインピーダンス整合を達成する。実施形態では、各位相スイッチト・リアクタンスを対応する所望のリアクタンス値に設定することによって、ソースと負荷との間に所望のインピーダンス変換を達成する。他の実施形態では、各位相スイッチト・リアクタンスを対応する所望のリアクタンス値に設定する
ことによって、ソースに対する所望の第1インピーダンス、および負荷に対する所望の第2インピーダンスを達成する。
【0013】
[0014] 実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々が、1つ以上のリアクタンス素子と少なくとも1つのスイッチとを含む。1つ以上のリアクタンス素子のこの少なくとも1つは、少なくとも1つの関連するスイッチによって、リアクタンス・ネットワーク内および該ネットワーク外となるよう切り替えが行われるように構成される。
【0014】
[0015] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、ソースによって供給されるRF信号の特性(例えば、周波数)に関係するスイッチング周波数、およびそれぞれの制御信号に基づくスイッチング位相で動作可能である。
【0015】
[0016] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、ソースによって供給されるRF信号の周波数に関係するスイッチング周波数、およびそれぞれの制御信号に基づくスイッチング位相で動作可能である。実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、スイッチング周波数、およびRFソースからの処理されたRF信号の位相に関係するスイッチング位相で動作可能である。少なくともある場合には、スイッチは、所望のリアクタンス値を提供するように制御されたタイミングで、RFサイクル毎に1回切り替えられる。実施形態では、システムが全波か半波かに依存して、切り替えはRFサイクル毎に1回、またはRFサイクル毎に2回行うことができる。
【0016】
[0017] 実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号のサイクル毎に1回オンおよびオフに切り替わるように、半波スイッチング構成で動作可能である。実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号のサイクル毎に2回オンおよびオフに切り替わるように、全波スイッチング構成で動作可能である。実施形態では、スイッチング周波数およびスイッチング位相は、所望のリアクタンス値を有する位相スイッチト・リアクタンスが提供されるように選択される。他の実施形態では、RF周波数に対する他の関係も使用することができる。
【0017】
[0018] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、RFソースからの処理されたRF信号の周波数で、そして所望のリアクタンス値を有する位相スイッチト・リアクタンスを提供するタイミングで、オンおよびオフに切り替えられる。
【0018】
[0019] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、RFソースのRFサイクル毎に1回、所望のリアクタンス値を有する位相スイッチト・リアクタンスを提供するタイミングで、オンおよびオフに切り換わる。
【0019】
[0020] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、RFソースのRFサイクル毎に1回、所望のリアクタンス値を有しスイッチのゼロ電圧スイッチングおよびゼロ電流スイッチングの内少なくとも1つが提供される位相スイッチト・リアクタンスを得るためのタイミングで、オンおよびオフに切り替わる。
【0020】
[0021] 実施形態では、スイッチング周波数およびスイッチング位相は、所望のリアクタンス値を有する位相スイッチト・リアクタンスを提供するように選択される。
[0022] 実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、スイッチのゼロ電圧スイッチング(ZVS)およびゼロ電流スイッチング(ZCS)の内少なくとも1つが行われるように動作可能である。
【0021】
[0023] 実施形態では、コントローラは、フィードバック回路、フィードフォワード回路、および適応プレディストーション・システムの内少なくとも1つに基づいて、スイッチング周波数を決定し、スイッチング位相を選択するように構成される。実施形態では、適応プレディストーション・システムは参照表を含む。
【0022】
[0024] 一実施形態では、制御信号は、ソースから供給される信号に基づいて、半波スイッチング構成で動作する。他の実施形態では、制御信号は、ソースから供給される信号に基づいて全波スイッチング構成で動作する。
【0023】
[0025] 実施形態では、適応プレディストーション・システムは参照表を含む。
[0026] 一実施形態では、位相スイッチト・リアクタンスは容量性素子であり、所望の周波数におけるこの位相スイッチト容量性素子の容量値は、位相スイッチト容量性素子の物理DC容量値、およびスイッチング位相に関係する。他の実施形態では、位相スイッチト・リアクタンスは誘導性素子であり、所望の周波数における位相スイッチト誘導性素子のインダクタンス値は、位相スイッチト誘導性素子の物理DCインダクタンス値、およびスイッチング位相に関係する。
【0024】
[0027] 実施形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、N個の選択可能なリアクタンス素子を有するディジタル・リアクタンス・マトリクスを含み、ディジタル・リアクタンス・マトリクスの実効リアクタンス値を調節する。Nは正の整数である。
【0025】
[0028] 実施形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークは1つ以上のアナログ可変リアクタンス素子を含む。
[0029] 実施形態では、ソースは、高周波(RF)ソース、RF電力増幅器(PA)、およびスイッチング・モード・インバータの内少なくとも1つであり、負荷は、アンテナ、伝送線、およびプラズマ負荷の内少なくとも1つである。
【0026】
[0030] 実施形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークの入力は高周波(RF)増幅システムに結合される。チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、RF増幅システムの電力レベルを制御するために、RF増幅システムの負荷インピーダンスを調整する。
【0027】
[0031] 実施形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、入力および出力の内少なくとも1つに結合された高調波成分を低減するために、1つ以上のフィルタ部品を含む。
【0028】
[0032] 他の形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークの動作方法を提供する。チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、ソースに結合するように構成された入力と、負荷に結合されるように構成された出力と、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンスとを含む。このチューニング可能インピーダンス・ネットワークに結合されたコントローラが、チューニング可能インピーダンス・ネットワークの所望のインピーダンス値を決定する。コントローラは、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンスの各々にそれぞれの制御信号を供給する。供給されたそれぞれの制御信号に応答して、各位相スイッチト・リアクタンスの対応する所望のリアクタンス値が設定される。
【0029】
[0033] 一実施形態では、各位相スイッチト・リアクタンスを対応する所望のリアクタンス値に設定することによって、ソースおよび負荷間でインピーダンス整合を達成する。他の実施形態では、各位相スイッチト・リアクタンスを対応する所望のリアクタンス値に設定することによって、ソースと負荷との間に所望のインピーダンス変換を達成する。他
の実施形態では、各位相スイッチト・リアクタンスを対応する所望のリアクタンス値に設定することによって、ソースに対する所望の第1インピーダンス、および負荷に対する所望の第2インピーダンスを達成する。
【0030】
[0034] 実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンスの各々が、1つ以上のリアクタンス素子と少なくとも1つのスイッチとの組み合わせから得られる。1つ以上のリアクタンス素子の少なくとも1つは、それに関連する少なくとも1つのスイッチによって、リアクタンス・ネットワーク内および該ネットワーク外となるよう切り替えが行われるように構成される。
【0031】
[0035] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、それぞれの制御信号に基づくスイッチング周波数およびスイッチング位相で動作可能である。
[0036] 実施形態では、スイッチング周波数およびスイッチング位相は、所望のリアク
タンス値を有する位相スイッチト・リアクタンスを提供するように選択される。
【0032】
[0037] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、RF増幅システムの周波数に関係するスイッチング周波数、およびそれぞれの制御信号に基づくスイッチング位相で動作可能である。
【0033】
[0038] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、RF増幅システムのRFサイクル毎に1回オンおよびオフに切り替えられ、切り替えタイミングは、所望のリアクタンス値を有し、前記スイッチのゼロ電圧スイッチングおよびゼロ電流スイッチングの内少なくとも1つを提供する位相スイッチト・リアクタンスを得るように選択される。実施形態では、コントローラは、フィードバック回路、フィードフォワード回路、および適応プレディストーション・システムの内少なくとも1つに基づいて、スイッチング周波数を決定し、スイッチング位相を選択する。
【0034】
[0039] 実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、ソースによって供給されるRF信号の周波数に関係するスイッチング周波数、およびそれぞれの制御信号に基づくスイッチング位相で動作する。実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、 RF増幅器の出
力ポートにおけるRF信号のサイクル毎に1回オンおよびオフに切り替わるように、半波スイッチング構成で動作する。実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号のサイクル毎に2回オンおよびオフに切り替わるように、全波スイッチング構成で動作する。
【0035】
[0040] 実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、前記スイッチのゼロ電圧スイッチング(ZVS)およびゼロ電流スイッチング(ZCS)の内少なくとも1つを提供するように動作する。
【0036】
[0041] 実施形態では、位相スイッチト・リアクタンスは容量性素子を含み、所望の周波数におけるこの位相スイッチト容量性素子の容量値は、位相スイッチト容量性素子の物理DC容量値、およびスイッチング位相に関係する。
【0037】
[0042] 一実施形態では、位相スイッチト・リアクタンスは容量性素子であり、所望の周波数におけるこの位相スイッチト容量性素子の容量値は、位相スイッチト容量性素子の物理DC容量値、およびスイッチング位相に関係する。他の実施形態では、位相スイッチト・リアクタンスは誘導性素子であり、所望の周波数におけるこの位相スイッチト誘導性素子のインダクタンス値は、位相スイッチト誘導性素子の物理DCインダクタンス値、およびスイッチング位相に関係する。
【0038】
[0043] 実施形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、N個の選択可能なリアクタンス素子を有するディジタル・リアクタンス・マトリクスを含み、ディジタル・リアクタンス・マトリクスの実効リアクタンス値を調節する。Nは正の整数である。
【0039】
[0044] 実施形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークは1つ以上のアナログ可変リアクタンス素子を含む。
[0045] 実施形態では、ソースは、高周波(RF)ソース、RF電力増幅器(PA)、およびスイッチング・モード・インバータの内少なくとも1つであり、負荷は、アンテナ、伝送線、およびプラズマ負荷の内少なくとも1つである。
【0040】
[0046] 実施形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークの入力は高周波(RF)増幅システムに結合される。チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、RF増幅システムの電力レベルを制御するために、RF増幅システムの負荷インピーダンスを調整する。
【0041】
[0047] 実施形態では、チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、入力および出力の内少なくとも1つに結合された高調波成分を低減するために、1つ以上のフィルタ部品を含む。
【0042】
[0048] 本概念の他の形態では、本明細書において説明するシステムおよび技法は、入力ポートと出力ポートとを有する高周波(RF)増幅システムであり、RF増幅システムの入力ポートに結合された入力ポートを有し、更に出力ポートを有するRF増幅器を含む。位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークが、RF増幅器の出力ポートとRF増幅システムの出力ポートとの間に結合される。この位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、RF増幅器の出力ポートに呈するインピーダンスを調整するために、そのインピーダンスを変化させる。
【0043】
[0049] 実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子を含む。位相スイッチト・リアクタンス素子の各々は、それぞれの制御信号を受ける。供給されたそれぞれの制御信号に応答して、対応する所望のリアクタンス値を有する各位相スイッチト・リアクタンス素子が形成される。
【0044】
[0050] 実施形態では、コントローラが1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々にそれぞれの制御信号を供給する。
[0051] 実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々は、1つ以上のリアクタンス素子と少なくとも1つのスイッチとを含む。1つ以上のリアクタンス素子の内少なくとも1つは、それに関連する少なくとも1つのスイッチによって、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワーク内および該ネットワーク外となるよう切り替えが行われるように構成される。
【0045】
[0052] 実施形態では、少なくとも1つの関連するスイッチは、RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号の周波数に関係するスイッチング周波数、およびそれぞれの制御信号に基づくスイッチング位相で動作可能である。
【0046】
[0053] 実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号のサイクル毎に1回オンおよびオフに切り替わるように、半波スイッチング構成で動作可能である。
【0047】
[0054] 実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号のサイクル毎に2回オンおよびオフに切り替わるように、全波スイッチング構成で動作可能である。
【0048】
[0055] 実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々が、スイッチと並列にキャパシタを含む。実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々が、スイッチと並列なキャパシタの組み合わせと直列にインダクタを含む。
【0049】
[0056] 実施形態では、少なくとも1つのスイッチは、前記少なくとも1つのスイッチのゼロ電圧スイッチングおよびゼロ電流スイッチングの内少なくとも1つを提供するように動作可能である。
【0050】
[0057] 実施形態では、スイッチング周波数およびスイッチング位相は、所望のリアクタンス値を有する位相スイッチト・リアクタンス素子を提供するように選択される。
[0058] 実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の内少なくとも1つは、容量値を有する容量性素子である。所望の周波数におけるこの位相スイッチト容量性素子の容量値は、位相スイッチト容量性素子の物理DC容量値、およびスイッチング位相に関係する。実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の内少なくとも1つは、インダクタンス値を有する誘導性素子である。所望の周波数におけるこの位相スイッチト誘導性素子のインダクタンス値は、位相スイッチト誘導性素子の物理DCインダクタンス値、およびスイッチング位相に関係する。
【0051】
[0059] 実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能整合ネットワークによってRF増幅器の出力ポートに呈するインピーダンスは、RF増幅システムの出力ポートに結合された可変負荷インピーダンスをRF増幅器のインピーダンスに整合させるために、動的に適応させられる。
【0052】
[0060] 実施形態では、RF負荷がRF増幅システムの出力ポートに結合に結合される。このRF負荷は、アンテナ、伝送線、およびプラズマ負荷の内の少なくとも1つである。
【0053】
[0061] 実施形態では、RF増幅器は、RF電力を生成するように構成された少なくとも1つのスイッチング素子を含む、スイッチング・インバータを含む。
[0062] 実施形態では、コントローラは、RF増幅器がスイッチング・インバータの少なくとも1つのスイッチング素子のゼロ電圧スイッチング(ZVS)を維持するように、RF増幅器の出力ポートに呈する、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスを調整する。
【0054】
[0063] 実施形態では、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子の各々の少なくとも1つのスイッチを切り替えることにより、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによって提供されるインピーダンス変換を調整する。
【0055】
[0064] 実施形態では、RF増幅器は、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークに結合されたフィルタを含む。このフィルタは、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによって生成される高調波成分を低減するフィルタ特性を有する。高調波成分は、RF増幅器の出力ポートおよびRF増幅システムの出力ポートの内少なくとも1つに伝えられる。実施形態では、このフィルタは、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークと、RF増幅器およびRF増幅システムの出力ポートの内少なくとも1つとの間で、DC信号を電気的に分離するために、1つ以上のフィルタ部品を含む。
【0056】
[0065] 実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、直列経路リアクタンス素子の第1ノードに結合された第1分路(shunt path)位相スイッチト可変リアクタンス素子を含む。実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークは、直列経路リアクタンス素子の第2ノードに結合された第2分路(shunt path)位相スイッチト可変リアクタンス素子も含む。
【0057】
[0066] 他の形態では、高周波(RF)増幅システムの動作方法は、RF増幅器の入力ポートにRF信号を供給するステップと、RF増幅器によってRF信号を増幅し、増幅器の出力ポートに増幅RF信号を供給するステップとを含む。RF増幅器の出力ポートとRF増幅システムの出力ポートとの間に結合された位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスを変化させることによって、RF増幅器に呈するインピーダンスを調整する。
【0058】
[0067] 実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスを変化させるステップは、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによって制御信号を受けるステップを含む。この制御信号に応答して、少なくとも1つのリアクタンス素子が、RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号の周波数に関係する周波数および位相で、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークに電気的に接続または切断され、所望のリアクタンス値を有する位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークが形成される。
【0059】
[0068] 実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークは1つ以上のリアクタンス素子と、少なくとも1つのスイッチとを含む。少なくとも1つのリアクタンス素子を位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークに電気的に接続または切断するステップは、1つ以上のリアクタンス素子の内少なくとも1つを、それに関連する少なくとも1つのスイッチによって、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワーク内および該ネットワーク外となるよう切り替えを行うステップと、それぞれの制御信号に基づくスイッチング周波数およびスイッチング位相で、少なくとも1つの関連するスイッチを動作させるステップとを含む。
【0060】
[0069] 実施形態では、RF増幅器の出力ポートにおけるRF信号の周波数に基づくスイッチング周波数およびスイッチング位相は、所望のリアクタンス値を有する位相スイッチト・リアクタンス素子を提供するように選択される。
【0061】
[0070] 実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能整合ネットワークによってRF増幅器に呈するインピーダンスは、RF増幅システムの出力ポートに結合された可変負荷インピーダンスをRF増幅器のインピーダンスに整合させるように、動的に適応させられる。
【0062】
[0071] 実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークによってRF増幅器に呈する負荷インピーダンスを調整することによって、RF増幅システムの出力ポートに供給される増幅信号の電力レベルを制御する。
【0063】
[0072] 実施形態では、増幅器は、RF電力を生成するように構成された少なくとも1つのスイッチング素子を含むスイッチング・インバータを含む。RF増幅器に呈する位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークのインピーダンスを調整することによって、このスイッチング・インバータの少なくとも1つのスイッチング素子のゼロ電圧スイッチング(ZVS)が維持される。
【0064】
[0073] 実施形態では、位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス・ネットワークの少なくとも1つのスイッチが、少なくとも1つのスイッチのゼロ電圧スイッチングおよびゼロ電流スイッチングの内少なくとも1つを提供するように切り替えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
[0074] 特許請求する発明の他の形態、特徴、および利点は、以下の詳細な説明、添付する特許請求の範囲、および添付図面から一層完全に明らかになるであろう。図面において、同様の参照番号は同様のまたは同一のエレメントを識別する。図面と関連付けて明細書において導入される参照番号は、他の特徴の下地となるように、明細書において追加の説明をすることなく、1つ以上の後続の図面において繰り返されることもある。
図1図1は、説明する実施形態による例示的なチューニング可能インピーダンス整合ネットワーク(TMN)のブロック図である。
図2図2は、図1のTMNの例示的な位相スイッチト可変容量エレメントの模式図である。
図3図3は、図2の位相スイッチト可変容量エレメントの制御信号に関する電流および電圧対位相のプロットである。
図4図4は、図1のTMNの例示的な位相スイッチト可変インダクタンス素子の模式図である。
図5図5は、図4の位相スイッチト可変インダクタンス素子の制御信号に関する電流および電圧対位相のプロットである。
図6図6は、図2および図4の位相スイッチト素子の正規化実効容量(またはインダクタンス)対位相スイッチト素子の制御角度のプロットである。
図7図7は、図2および図4の位相スイッチト素子の総合高調波歪み対位相スイッチト素子の制御角度のプロットである。
図8図8は、全波スイッチト可変容量エレメントの制御信号に関する電流および電圧対位相のプロットである。
図9図9は、全波スイッチト可変インダクタンス素子の制御信号に関する電流および電圧対位相のプロットである。
図10A図10Aは、説明する実施形態による例示的なスイッチト・リアクタンス素子の模式図である。
図10B図10Bは、説明する実施形態による例示的なスイッチト・リアクタンス素子の模式図である。
図10C図10Cは、説明する実施形態による例示的なスイッチト・リアクタンス素子の模式図である。
図10D図10Dは、説明する実施形態による例示的なスイッチト・リアクタンス素子の模式図である。
図11図11は、ディジタル・スイッチト容量マトリクスを採用した例示的な位相スイッチトTMNの模式図である。
図12図12は、ディジタル・スイッチト・インダクタンス・マトリクスを採用する例示的な位相スイッチトTMNの模式図である。
図13図13は、説明する実施形態による例示的な位相スイッチトTMNの模式図である。
図14図14は、例示的な動作範囲に対して、図13のチューニング・ネットワークによって整合することができる負荷インピーダンスの範囲のスミス・チャートである。
図15図15は、図13のチューニング・ネットワークの追加の詳細の模式図である。
図16図16は、説明する実施形態による位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の例示的なトポロジのブロック図である。
図17図17は、説明する実施形態による位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の他の例示的なトポロジのブロック図である。
図18A図18Aは、説明する実施形態による例示的な三スイッチ位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の模式図である。
図18B図18Bは、説明する実施形態による例示的な三スイッチ位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の模式図である。
図18C図18Cは、説明する実施形態による例示的な三スイッチ位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の模式図である。
図18D図18Dは、説明する実施形態による例示的な三スイッチ位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の模式図である。
図18E図18Eは、説明する実施形態による例示的な三スイッチ位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の模式図である。
図19図19は、説明する実施形態による例示的な二スイッチ位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の模式図である。
図20図20は、説明する実施形態による例示的な二スイッチ位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の模式図である。
図21図21は、例示的な動作範囲にわたる例示的な位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器の模式図である。
図22図22は、例示的な動作範囲に対して、図21の位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器によって整合することができる負荷インピーダンスの範囲を示すスミス・チャートである。
図23図23は、例示的な動作範囲に対して、図21の位相スイッチト・インピーダンス変調増幅器によって整合することができる負荷インピーダンスの範囲を示すスミス・チャートである。
図24図24は、図1のTMNを動作させる例示的なプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
[0097] 表1は、説明する実施形態を理解する補助として、本明細書にわたって採用される頭文字語のリストを纏めたものである。
【0067】
【表1】
【0068】
[0098] 説明する実施形態は、位相スイッチト可変ネットワーク・リアクタンス素子に
基づくチューニング可能整合ネットワークを対象とし、本明細書では位相スイッチト・チューニング可能整合ネットワーク(PS-TMN:phase-switched tunable matching network)と呼ぶ。このようなPS-TMNは、高いバイアス電圧や電流を必要とせずに、
高い電力レベルで効率的に動作しつつ、広いインピーダンス範囲にわたって、迅速で、高帯域幅にわたる、連続インピーダンス整合を可能にする。このようなPS-TMNは、単独で採用されてもよく、またはディスクリート・スイッチト・リアクタンス・バンクのような他の整合技法と組み合わせて採用されてもよい。
【0069】
[0099] このようなPS-TMNは、種々の再構成可能で適応型のRFシステム、例えば、ソフトウェア無線(SDR)およびコグニティブ無線(CR)に適用するためのRFフロント・エンドに採用することができる。これらは、異なる帯域幅で、そして種々の通信規格にしたがって、広い範囲の周波数帯域にわたって動作する。また、PS-TMNは、素早い負荷変動を補償するためのRFプラズマ負荷用ドライバのような他のRF用途に採用することができ、あるいは伝送電力および/または効率を最大化するために送信機と受信機との間におけるインピーダンス不整合を補償するためにワイヤレス電力伝送(WPT)システムにおいて採用することもできる。
【0070】
[00100] また、説明する実施形態は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)高周波(RF
)増幅器も提供する。本明細書では、これを位相スイッチト・インピーダンス変調(PSIM:phase-switched impedance modulation)増幅器と呼ぶ。このようなPSIM増幅
器は、PS-TMNを採用し、広い周波数範囲にわたって出力電力を効率的に調整することにより、および/または大きく変動し得る負荷(例えば、広いインピーダンス範囲にわたって可変である負荷)に整合することによって、広い周波数範囲にわたって動作することができる。
【0071】
[00101] 図1を参照すると、高周波(RF)システム100は、インピーダンスZ
を有するソース102と、インピーダンスZを有する負荷114との間に結合された位相スイッチト・チューニング可能インピーダンス整合ネットワーク(PS-TMN)112を含む。ある用途では、ソース102、制御回路106、およびPS-TMN112(およびRFシステム100の他のエレメント)が電源電圧(例えば、VDC)および接地に結合される。制御回路106は、PS-TMN112に結合され、PS-TMN112の動作を制御するために制御信号をPS-TMN112に供給する。このような制御信号に応答して、PS-TMN112は所望のインピーダンス変換特性を与える。尚、制御回路106はPS-TMN112の内部部品であってもよく、あるいはPS-TMN112または制御回路106の何らかの部分に結合された外部部品であってもよいことは認められてしかるべきである(または、制御回路106によって与えられる機能がPS-TMN112の内部にあり、制御回路106の他の部分がPS-TMN112の外部にあってもよい)。
【0072】
[00102] ある実施形態では、制御回路106は、少なくとも部分的に、ソース102
に結合される随意のフィードフォワード回路104、および/または負荷114に結合される随意のフィードバック回路110から受ける情報に基づいて、PS-TMN112の動作を制御する。ある実施形態では、随意のフィードフォワード回路104は適応プリディストーション回路107を含み、制御回路106は参照表(LUT)108を含む。例えば、以下で更に詳しく説明するが、ある実施形態は、固定または適応型(adaptable)の参照表(例えば、LUT108)を採用して所定の制御信号情報を格納する、フィードバック(例えば、フィードバック回路110による)、および/またはフィードフォワード補償(例えば、フィードフォワード回路104による)を採用して適応的に制御信号情報を調節する、あるいは制御信号のディジタル・プレディストーションを実行する(例えば、プレディストーション回路107によって)、あるいは他の同様の技法を採用するというように、1つ以上の非線形制御技法を採用し(例えば、制御回路106によって)PS-TMN112に適した制御信号を決定することができる。
【0073】
[00103] PS-TMN112は、1つ以上の位相スイッチト・リアクタンス素子11
6(1)~116(N)を含む。以下で更に詳しく説明するが、位相スイッチト・リアクタンス素子116(1)~116(N)は、1つ以上の容量性素子(例えば、キャパシタ)、1つ以上の誘導性素子(例えば、インダクタ)、または両方の組み合わせを使用して実現することができる。所望の周波数でPS-TMN112の端子に呈する実効インピーダンス(ZS,INおよびZL,IN)を調節するために、位相スイッチト・リアクタンス素子116(1)~116(N)を制御することができる。位相スイッチト・リアクタンス素子116(1)~116(N)は、例えば、分路または直列スイッチのいずれかによって切り替えられ、位相スイッチト・リアクタンス素子の実効インピーダンスは、分路または直列スイッチの位相および/またはデューティ・サイクルを調節することによって制御される。ある実施形態では、所望の周波数がRFソース102の動作のRF周波数であってもよい(例えば、RFソース102からPS-TMN112に供給される信号の周波数)。
【0074】
[00104] RFシステム100の動作の所望周波数において実効インピーダンスを調整
することにより(例えば、位相スイッチト・リアクタンス素子116(1)~116(N)のインピーダンスを調節することによって)、PS-TMN112によってソース102および/または負荷114に呈するインピーダンスを調節する、チューニングする、変更する、またはこれら以外で操作することが可能になる。例えば、位相スイッチト・リアクタンス素子116(1)~116(N)は、PS-TMN112が、所望のインピーダンス(ZS,IN)をPS-TMN112にソース102から、そして負荷114からPS-TMN112内に所望のインピーダンス(ZL,IN)を伝えることを可能にする。
【0075】
[00105] PS-TMN112に供給される制御信号は、ソース102から供給される
RF信号に関して位相スイッチト・リアクタンス素子116(1)~116(N)のスイッチをオンおよび/またはオフにするタイミングを制御するように動作する。このスイッチングにより、PS-TMN112の所望のインピーダンス変換に影響を及ぼす位相スイッチト・リアクタンス素子116(1)~116(N)の実効リアクタンス値が得られる。フィードフォワード情報は、PS-TMN112の実効入力インピーダンス、RF波形のタイミング、指定された信号レベル、および/またはインピーダンス・レベル等についての情報を含むことができる。フィードバック情報は、実効負荷インピーダンス、および/または負荷から反射された電力についての測定情報、RF波形のタイミング等を含むことができる。
【0076】
[00106] つまり、ある実施形態では、ソース102と負荷104との間における所望
のインピーダンス変換を提供するために、PS-TMN112を採用することもできる。例えば、PS-TMN112は、ソース102と負荷114との間におけるインピーダンス整合を提供することもできる。あるいは、ソース102が、PS-TMN112によって与えられる一層安定なインピーダンス(例えば、ZS,IN)に結合されるように、PS-TMN112のインピーダンスを調節して負荷114のインピーダンス(Z)の変動を補償することもできる。
【0077】
[00107] 図2を参照すると、電流Iを有する正弦波電流源202が、例示的な位相ス
イッチト可変リアクタンス200を駆動する。ここでは、位相スイッチト可変リアクタンスは、キャパシタ204およびスイッチ206の並列結合(parallel combination)を含み、位相スイッチト可変リアクタンスを位相スイッチト可変容量200として与えるように示されている。キャパシタ204は、物理容量Cおよび電圧Vを有する。スイッチ206の状態は信号Qの特性によって制御される。例えば、スイッチ206は、信号Qが論理高値を有するとき、その端子間に低インピーダンス信号経路を設け(例えば、スイッチ206が「オン」または「閉じている」)、スイッチ206は、信号Qが論理低値を有するとき、その端子間に高インピーダンス信号経路を設ける(例えば、スイッチ206が「オフ」または「開いている」)。つまり、スイッチ206が開いているとき(電流Iがキャパシタ204に流れ込む)、スイッチ206は切り替わってキャパシタ204を回路内に入れ、スイッチが閉じているとき(電流Iは閉じたスイッチを通過し、キャパシタ204を迂回する)、キャパシタ204を回路から締め出すと考えることができる。
【0078】
[00108] スイッチ206が常にオフである(開いている)場合、ソース202に呈す
る位相スイッチト可変容量200の実効容量CEFFは、キャパシタ204の物理容量Cと等価となる。逆に、スイッチ206が常にオンである(閉じている)場合、スイッチ206の端子間の低インピーダンス経路は事実上キャパシタ204を「短絡させ」、キャパシタ204の両端間の電圧が電流Iに関係なくゼロのままであるという意味で、位相スイッチト可変容量200は無限容量として振る舞う。0から2πまでの正弦波電流源202のACサイクルにわたってスイッチ206の導通角(conduction angle)を制御することによって、キャパシタ204の実効容量CEFFを論理的にCと無限大との間で制御することができる。本明細書において使用する場合、導通角とは、スイッチ206がオンにされるときの正弦波信号の角度である。スイッチがオンにされるときの導通角は、全面的にスイッチング信号Q(例えば、スイッチング角度)によって決定することができ、または部分的にスイッチング信号Qによって、そして部分的に電圧Vおよび電流Iのような回路波形によって決定することもできる。
【0079】
[00109] 図3を参照すると、電流Iおよびキャパシタ電圧V(例えば、キャパシタ
204の電圧)が、スイッチング制御信号Qに関して、サイクル角度θの関数として示されている。具体的には、曲線302はI(θ)を示し、曲線306はV(θ)を示し、曲線304は半波スイッチト・キャパシタのQ(θ)を示す。図3に示すように、I(θ)のサイクル毎に、スイッチ206は、I(θ)の負から正への遷移からαラジアン後にオフにされる(開く)(例えば、αラジアンだけI(θ)の正の半サイクルに入るまで、スイッチ206はオンになっている/閉じている)。スイッチ206は、キャパシタ電圧がゼロに戻る後までオフ(開いた)のままになる。キャパシタ電圧がゼロに戻った後にスイッチをその導通状態にバイアスする(例えば、スイッチをオンにするまたはスイッチを閉じる)ことにより、スイッチ206のゼロ電圧スイッチング(ZVS)によるオン移行(turn on)を確保する。
【0080】
[00110] スイッチがダイオードを含み、電圧が負になるのを自然に防止する場合、能
動的にスイッチQをオンにするタイミングを緩和することができる。これは、スイッチ電圧がゼロに達したときに自然に「ON」に転換し、ダイオードが導通している間に能動的なオン移行信号を発行できるからである。スイッチの両端間に結合されたキャパシタCは、オフ移行遷移(turn off transition)のスナッビング(snubbing)を行い、スイッチ2
06のゼロ電圧スイッチング(ZVS)によるオフ移行(turn off)を提供する。
【0081】
[00111] 図3に示すように、I(θ)が純粋に正弦波の電流源である場合、スイッチ
206は、スイッチの導通角(例えば、2α)に達するまでオフ(開いた)のままになる。つまり、半波スイッチト・キャパシタでは、スイッチ206は、ソース102からのRF信号のサイクル毎に1回オンおよびオフにされる(例えば、曲線302によって示されるようなI(θ))。
【0082】
[00112] αを調節することにより、サイクルにおけるどこでスイッチ206をオンお
よびオフにするか(例えば、スイッチ206の導通角を制御する)設定し、したがって、
キャパシタがピークになる電圧を制御する。つまり、スイッチング角度(α)とスイッチング周波数のV(θ)の基本成分の大きさとの間にはある関係がある。その結果、キャパシタ204の実効容量CEFFは、αの関数として表すことができる。
【0083】
【数1】
【0084】
[00113] 図4を参照すると、位相スイッチト可変リアクタンスは、スイッチング周波
数におけるその実効インダクタンスの連続制御を可能にするスイッチト・インダクタ・ネットワークとして実現することも可能である。このようなスイッチト・インダクタ・ネットワークは、図4では位相スイッチト可変インダクタンス400として示されおり、図2に示すスイッチト・キャパシタ・ネットワーク200のトポロジ双対(topological dual)に対応する。図4に示すように、例示的な位相スイッチト可変インダクタンス400は、インダクタ404とスイッチ406の直列結合を含み、スイッチ406は正弦波電圧源402によって電圧Vで駆動される。インダクタ404は、物理インダクタンスLおよびインダクタ電流Iを有する。スイッチ406の状態は、信号Qによって制御され、例えば、信号Qが論理高値を有するときにスイッチ406をオンにする(例えば、閉じる)ことができ、信号Qが論理低値を有するときにオフにする(例えば、開く)ことができる。つまり、スイッチ406は、このスイッチが閉じているとき(電圧Vをインダクタ404に印加する)インダクタ404を回路内に入れ、このスイッチが開いているとき(電圧がインダクタ404に印加されない)インダクタ404回路から除外するように切り替えると考えることができる。
【0085】
[00114] 図2に関して説明した位相スイッチト可変リアクタンスのスイッチト・キャ
パシタの実現例と同様、スイッチング周波数における位相スイッチト可変インダクタンス400の実効インダクタンスLEFFを基本値Lから無限大まで調整することができる。例えば、スイッチ406が常にオンである(閉じている)場合、位相スイッチト可変インダクタンス400の実効インダクタンスLEFFは、ソース402から見ると、インダクタ404の物理インダクタンスLと等価になる。逆に、スイッチ406が常にオフである(開いている)場合、インダクタ404は、インダクタ404を通った電流が電圧Vに関係なくゼロのままであるという意味で、無限インダクタとして振る舞う。理想的には、インダクタ404の実効インダクタンスLEFFは、スイッチ406の導通角を正弦波電圧源402のACサイクルにわたって0から2πまで制御することによって、Lと無限大との間で制御することができる。
【0086】
[00115] 図5を参照すると、キャパシタ204の電流Iおよび電圧Vの例示的な波
形が、スイッチ制御信号Qに関して、サイクル角度(cycle angle)θの関数として示され
ている。トポロジ双対性のプロパティの結果として、図3に示すスイッチト・キャパシタ・ネットワークの電圧波形は、図5に示すスイッチト・インダクタ・ネットワークの電流波形に類似し、その逆も成り立つ。
【0087】
[00116] 具体的には、曲線502はI(θ)を示し、曲線506はV(θ)を示し
、曲線504は半波スイッチト・インダクタのQ(θ)を示す。図5に示すように、V(θ)のサイクル毎に、V(θ)の負から正への遷移のからαラジアン後にスイッチ406はオンにされる(閉じられる)(例えば、V(θ)の正の半サイクル内にαラジアンだけ入るまで、スイッチ406はオフになっている/開いている)。スイッチ406は、インダクタ電流がゼロに戻る後までオンのままになる(閉じている)。スイッチはそれと直列にインダクタを有するので、スイッチのゼロ電流スイッチング(ZCS)によるオン移行を提供することができる。インダクタ電流がゼロに戻る時点でスイッチをオフにすることによって、スイッチ406のゼロ電流スイッチング(ZCS)によるオフ移行を確保する。容量性回路との双対性において、スイッチQの一部としてダイオード(1つまたは複数)を利用することにより、スイッチの自然な転換(オフ移行)を可能にし、スイッチング制御波形のオフ移行時(turn-off moment)の詳細なアクティブ・タイミング(detailed active timing)を緩和することができる。図5に示すように、V(θ)が純粋に正弦波電圧源であるとき、スイッチ406の導通角に達するまで(例えば、2α)、スイッチはオンのまま(閉じたまま)になる。
【0088】
[00117] αを調節することにより、サイクルにおけるどこでスイッチ406をオンお
よびオフにするか(例えば、スイッチ406の導通角を制御する)設定し、したがって、インダクタがピークになる電流を制御する。つまり、図2に関して説明した位相スイッチト可変リアクタンスのスイッチト・キャパシタの実現例と同様、スイッチング角度(α)とスイッチング周波数におけるI(θ)の基本成分の大きさとの間にはある関係がある。その結果、インダクタ404の実効インダクタンスLEFFは、αの関数として表すことができる。
【0089】
【数2】
【0090】
[00118] トポロジ双対性(topological duality)の結果として、実効インダクタンスの式(1b)は、実効容量の式(1a)のそれと同じになる。式(1a)は、スイッチが常にオン状態にある(α=π)ときの無限実効容量に対する直観的な予想と一致し、スイッチが永続的にオフであるとき(α=0)にCEFFおよびC間の等価を予測する。同様に、式(1b)も、スイッチが常にオフ状態にある(α=0)ときの無限実効インダクタンスに対する直観的な予測と一致し、スイッチが永続的にオンであるとき(α=π)にLEFFおよびL間の等価を予測する。つまり、式(1a)および(1b)にしたがって、キャパシタまたはインダクタに関連するスイッチの導通角を制御することによって、スイッチング周波数における実効容量CEFFまたは実効インダクタンスLEFFを調整することができる。
【0091】
[00119] 図6を参照すると、スイッチング周波数における曲線602によって、正規
化実効容量CEFF/Cまたは正規化実効インダクタンスLEFF/Lが示されている。容量回路では、これは正規化アドミタンスYEFF/Yと同じことであり、一方誘導回路では、これは、正規化リアクタンスXEFF/Xと同じである。トポロジ双対性の結果として、図2の位相スイッチト・キャパシタ回路の正規化実効アドミタンスYEFF/Yは、図4に示した位相スイッチト・インダクタ・ネットワークの正規化リアクタンスXEFF/Xと同じである。
【0092】
[00120] 図6に示すように、正規化実効容量CEFF(またはインダクタンスLEF
)は、αと共に急激に増大し、αがπ(例えば、180度)に近づくにつれて、無限大に近づく。
【0093】
[00121] 図7を参照すると、曲線702は、純粋に正弦波の電流(電圧)励起源に対
する、キャパシタ電圧(インダクタ電流)の総合高調波歪み対αの関係を示す。CEFFまたはLEFFを調整することができる実用上の範囲は、ネットワークに現れる可能性が
ある高調波歪みの量に依存する。αがπに向かって増大する(例えば、スイッチの導通角が大きくなる)につれて、キャパシタ電圧V(例えば、曲線306)またはインダクタ電流I(例えば、曲線502)のリンギング(ringing)は、一層短い時間期間に制限さ
れる。図7に示すように、この結果、大きなYEFF/YまたはXEFF/X(例えば、CEFF/CまたはLEFF/L)比に対して、キャパシタ電圧の高調波成分が著しく増える(例えば、αが増大するにつれて、総合高調波歪みも増大する)。所与のシステムにおいて許容される高調波歪みの量は、ソースおよび/または負荷に許容される高調波成分の指定限度、ならびに必要なまたは望まれるフィルタリングの量に依存する。
【0094】
[00122] 尚、図7は、位相スイッチト可変リアクタンスの高調波歪み(例えば、位相
スイッチト可変容量200のキャパシタ電圧の高調波歪み、または位相スイッチト可変インダクタンス400のインダクタ電流の高調波歪み)を示すのであり、RFシステムのソースおよび/または負荷(例えば、ソース102および負荷114)に実際に注入される高調波成分を示すのではないことを注記しておく。ある実施形態では、位相スイッチト可変リアクタンス(例えば、位相スイッチト可変容量200または位相スイッチト可変インダクタンス400)は、ソースおよび/または負荷(例えば、ソース102および負荷114)に注入される高調波成分を低減するために、追加のフィルタリング部品(図2および図4には示されていない)を含む。
【0095】
[00123] 図3および図5に関して説明したように、位相スイッチト可変リアクタンス
(例えば、位相スイッチト可変容量200または位相スイッチト可変インダクタンス400)は半波スイッチング型(half-wave switched)であり、キャパシタ電圧(図3の曲線306)およびインダクタ電流(図5の曲線502)が単極となるように、スイッチが動作させられる。しかしながら、他のスイッチング方式も可能である。例えば、図8および図9は、それぞれ、図3に示したスイッチト・キャパシタ・ネットワークおよび図5に示したスイッチト・インダクタ・ネットワークについて、スイッチ制御信号Qに関して、サイクル角度θの関数として電流Iおよび電圧Vの例示的な波形を示す。
【0096】
[00124] 具体的には、図8に示すように、曲線802は全波スイッチト・キャパシタ
のI(θ)を示し、曲線806はV(θ)を示し、曲線804はQ(θ)を示す。図9に示すように、曲線902は、全波スイッチト・インダクタのI(θ)を示し、曲線906はV(θ)を示し、曲線904はQ(θ)を示す。位相スイッチト可変容量200が全波スイッチング型(full-wave switched)であるとき、スイッチ(例えば、スイッチ206)はI(θ)のサイクル毎に2回オフにされ(例えば、Q(θ)はゼロである)、オフの期間は、電流I(θ)がゼロになるときを中心に広がる(centered around)。純粋に正弦波の励起電流I(θ)では、この結果、双極キャパシタ電圧波形V(θ)が得られる。キャパシタ電圧V(θ)はゼロのDC平均値を有する。同様に、位相スイッチト可変インダクタンス400が全波スイッチング型であるとき、スイッチ(例えば、スイッチ406)は、V(θ)のサイクル毎に2回オンにされ(例えば、Q(θ)が論理高値を有する)、オンの期間は、電圧V(θ)がゼロになるときを中心に広がる。純粋に正弦波の励起電圧V(θ)では、この結果、双極インダクタ電流波形I(θ)が得られ、これもゼロのDC平均値を有する。このように、全波スイッチト・キャパシタ(またはインダクタ)では、スイッチ206は、ソース102からのRF信号のサイクル毎に2回オンおよびオフにされる(例えば、曲線802によって示されるようなI(θ))。
【0097】
[00125] 半波スイッチングと同様(例えば、図3および図5に示すように)、スイッ
チのスイッチング角度αを制御することによって、スイッチング周波数における実効容量CEFFおよび実効インダクタンスLEFFを調整することができる。キャパシタ204の実効容量CEFFは、全波スイッチト・キャパシタについては、αの関数として表すことができる。
【0098】
【数3】
【0099】
同様に、インダクタ404の実効インダクタンスLEFFもαの関数として表すことができる。
【0100】
【数4】
【0101】
[00126] このように、全波スイッチト・ネットワーク(例えば、関係(2a)および
(2b))で所与のスイッチング角度αに対して得ることができる実効容量/インダクタンスは、半波スイッチト・ネットワーク(例えば、関係(1a)および(1b))で得ることができる実効容量/インダクタンスの半分となる。しかしながら、全波スイッチト・ネットワークにすると、本質的に、同じスイッチング角度α(即ち、総合スイッチ導通角を制御するスイッチング角度)に対して、半波スイッチト・ネットワークと比較して、キャパシタ電圧およびインダクタ電流の高調波成分が低減する。一方、全波スイッチングを実現するには、スイッチは動作周波数の2倍で動作しなければならない(例えば、サイクル当たり2回切り替える)。更に、容量変調では、双方向ブロッキング・スイッチが必要となり、典型的な半導体スイッチによるスイッチの実現を複雑化する可能性がある。
【0102】
[00127] 以上の関係(1)および(2)は、図2および図4に示したスイッチト・ネ
ットワークの実効容量およびインダクタンスが、純粋に正弦波の励起信号のスイッチング角度αに基づくことができることを示す。純粋に正弦波でない励起信号では、スイッチがオフ(またはオン)になるタイミングまたはスイッチング角度αをしかるべく選択することによって、 実効リアクタンスを制御することができるが、関係(1)および(2)は
αの正確な値を計算することができない。ゼロ電圧(またはゼロ電流)ポイントを決定する(スイッチがオン(またはオフ)になるため)回路波形と共に、スイッチング角度αは、サイクルの間におけるスイッチの総合導通角を決定する。純粋に正弦波でない励起信号では、所与の所望の実効リアクタンスに対してαの要求値を決定するために、適応可能な参照表(例えば、LUT108)、フィードバック回路110、またはフィードフォワード回路104(随意のディジタル・プレディストーション回路107を含む)を採用することもできる。
【0103】
[00128] 位相スイッチト可変容量200および位相スイッチト可変インダクタンス4
00は、位相スイッチト可変リアクタンスおよびTMNのような他の調節可能な回路を実現するための構築ブロックとして採用することができる。特に、用途の中には、容量性および誘導性リアクタンス双方に及ぶ範囲にわたって、および/または実効リアクタンスをもっと限定した範囲で調整することによって値を制御することができる可変リアクタンスの多大な恩恵を得ることができるものもある。追加のリアクタンス部品によって位相スイッチト可変容量200および/または位相スイッチト可変インダクタンス400を補強すると、もっと広い範囲の可変リアクタンスを得ることができる。
【0104】
[00129] 図10A図10Dは、容量性および誘導性双方の素子を含むことによって
図2および図4に示した単一エレメント回路と比較して、位相スイッチト・リアクタンス回路のインピーダンスをチューニングすることができる範囲を広げる位相スイッチト・リアクタンス回路の例示的な実施形態を示す。
【0105】
[00130] 例えば、図10Aは、位相スイッチト・キャパシタ1013と直列にインダ
クタ1012を含む位相スイッチト・リアクタンス回路1002を示す。位相スイッチト・キャパシタ1013は、図2関して説明したのと同様に、キャパシタ1014と並列にスイッチ1016を含む。図10Bは、キャパシタ1022と直列にインダクタ1024を含む位相スイッチト・リアクタンス回路1004を示し、インダクタ1024およびキャパシタ1022の直列結合が、位相スイッチト・キャパシタ1025と並列に配置されている。キャパシタ1022は位相スイッチト型ではなく、したがって、CDCとして示されている。位相スイッチト・キャパシタ1025は、図2に関して説明したのと同様に、キャパシタ1026と並列にスイッチ1028を含む。図10Cは、位相スイッチト・インダクタ1033と並列にキャパシタ1032を含む位相スイッチト・リアクタンス回路1006を示す。位相スイッチト・インダクタ1033は、図4に関して説明したのと同様に、インダクタ1034と直列にスイッチ1036を含む。図10Dは、キャパシタ1044と並列にインダクタ1042を含む位相スイッチト・リアクタンス回路1008を示し、インダクタ1042およびキャパシタ1044の並列結合が位相スイッチト・キャパシタ1045と直列に配置されている。インダクタ1042は位相スイッチト型ではなく、したがってLDCとして示されている。位相スイッチト・インダクタ1045は、図4に関して説明したのと同様に、インダクタ1046と直列にスイッチ1048を含む。
【0106】
[00131] 当業者には理解されようが、図10A図10Dに示したもの以外の回路の
異形も可能である。例えば、位相スイッチト・キャパシタと直列にキャパシタを配することにより、キャパシタと位相スイッチト・キャパシタの物理容量との直列結合に等しい最大容量と、キャパシタと位相スイッチト容量値との直列結合に等しい最小容量とを有する、正味の実効インピーダンスが得られる。
【0107】
[00132] 図6および図7に関して説明したように、位相スイッチト可変キャパシタン
ス200および位相スイッチト可変インダクタンス400には、それらの可変リアクタンス範囲と、システムの残りに注入される高調波成分の量との間にトレードオフが存在する。言い換えると、実効リアクタンスを制御することができる範囲は、システム内部で耐えることができる(例えば、ソース102および/または負荷114によって)高調波成分の量によって限定される。ある実施形態は、ソース102および/または負荷114に注入される高調波成分を低減するために、追加のまたは外部フィルタリング部品を採用することもできる。しかしながら、ある実施形態では、追加のフィルタリング部品を採用することができない場合もある。
【0108】
[00133] 図11および図12を参照すると、追加のフィルタリング部品が採用されな
い場合、位相スイッチト可変容量200および位相スイッチト可変インダクタンス400を、位相スイッチト型でない1つ以上のディジタル制御キャパシタまたはインダクタ・マトリクスと組み合わせることによって、高調波成分を低減することができる。このような混成スイッチト・ネットワークは、RF動作周波数において、そしてRF波形に関して制御された位相およびデューティ・サイクルで動作するRFスイッチを含む。また、混成スイッチト・ネットワークは、スイッチト・マトリクス(switched matrix)における1つ以
上のキャパシタまたはインダクタに関連するディジタル・スイッチも含む。これらのディジタル・スイッチは、通例、RF周波数よりも遙かに低い周波数で動作するが、実効リアクタンスCEFFまたはLEFFの制御帯域幅によって決定されるRF周波数まで動作させることができる(例えば、サイクル毎)。
【0109】
[00134] 図11を参照すると、混成スイッチト・ネットワーク1100は、位相スイ
ッチト・リアクタンス(例えば、キャパシタC1116および並列スイッチ1118)と、ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102とを含む。ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102および負荷114と並列に結合された位相スイッチト可変容量(例えば、キャパシタC1116および並列スイッチ1118)として示すが、他の実施形態では、位相スイッチト・リアクタンスが、ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102および負荷114と直列に結合された位相スイッチト可変インダクタンス(例えば、図4に示すような)として、または図10A図10Dに示した位相スイッチト・リアクタンス回路の内の1つとして、または他の等価回路として実現されることも可能である。
【0110】
[00135] ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102は、複数のキャパシタお
よび関連するスイッチを含む。これらは、キャパシタ1104、1108、および1112、ならびにスイッチ1106、1110、および1114として示されている。ある実施形態では、キャパシタ1104、1108、および1112の各々が一意の容量値を有し、ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102の容量値を、大きな容量範囲にわたって変化させることを可能にする。例えば、図11に示すように、キャパシタ1104、1108、および1112は、最大容量値(例えば、(2・2-1)・C)に達するまで、Cの刻みで、位相スイッチト・キャパシタ基準値(例えば、C)から増大することができる。ここで、Nはディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102におけるキャパシタの数である。
【0111】
[00136] スイッチ1106、1110、および1114は、キャパシタ1104、1
1108、および1112の内対応するものと直列に結合され、それぞれのキャパシタを接続する(または切断する)ことによって、ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102の容量を調節するように動作可能である。スイッチ1106、1110、および1114は、制御回路106からの1つ以上の制御信号に基づいて動作することができる。前述のように、スイッチ1106、1110、および1114は、一般に、ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102の容量値を調節するために、RF周波数未満の周波数で動作する。
【0112】
[00137] 図12を参照すると、混成スイッチト・ネットワーク1200は、位相スイ
ッチト・リアクタンス(例えば、インダクタL1216および直列スイッチ1218)と、ディジタル制御インダクタ・ネットワーク1202とを含む。ディジタル制御インダクタ・ネットワーク1202と直列に、そして負荷114と並列に結合された位相スイッチト可変インダクタンス(例えば、インダクタL1216および直列スイッチ1218)として示されているが、他の実施形態では、位相スイッチト・リアクタンスは、位相スイッチト可変容量(例えば、図2に示したような)として、または図10A図10Dに示した位相スイッチト・リアクタンス回路の内の1つとして、または他の等価回路として実現されてもよい。
【0113】
[00138] ディジタル制御インダクタ・ネットワーク1202は、複数のインダクタお
よび関連するスイッチを含み、これらはインダクタ1206、1210、および1214、ならびに1204、1208、および1212として示されている。ある実施形態では、インダクタ1206、1210、および1214の各々は、一意のインダクタンス値を有し、ディジタル制御インダクタ・ネットワーク1202の容量値を、大きなインダクタンス範囲にわたって変化させることを可能にする。例えば、図12に示すように、インダクタ1206、1210、および1214、ならびに1218は、最大インダクタンス値に達するまで、Lの刻みで、位相スイッチト・インダクタ基準値(例えば、L)から増大することができる。
【0114】
[00139] スイッチ1204、1208、および1212は、インダクタ1206、1
210、および1214の対応するものと並列に結合され、それぞれのインダクタを接続することによって(または、短絡させる、例えば、インダクタを迂回するために低インピーダンス経路を設ける)、ディジタル制御インダクタ・ネットワーク1202のインダクタンスを調節するように動作可能である。スイッチ1204、1208、および1212は、制御回路106からの1つ以上の制御信号に基づいて動作することができる。前述のように、スイッチ1204、1208、および1212は、一般に、ディジタル制御インダクタ・ネットワーク1202の容量値を調節するために、RF周波数未満の周波数で動作する。
【0115】
[00140] ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102およびディジタル制御イ
ンダクタ・ネットワーク1202は、過度の高調波成分をソース102および/または負荷114に混入させることなく、位相スイッチト・リアクタンス(例えば、キャパシタC1116および並列スイッチ1118、またはインダクタL1216および直列スイッチ1218)のリアクタンスを連続的に変化させることができる範囲を広げる。例えば、図11および図12に示す実施形態は、スイッチト・ネットワーク1100(または1200)の基準値C(またはL)を制御するために、ディジタル制御キャパシタ・ネットワーク1102(またはディジタル制御インダクタ・ネットワーク1202)を採用する。位相スイッチト・リアクタンスのスイッチ(例えば、スイッチ1118またはスイッチ1218)は、先に説明した関係(1)および(2)によって決定される係数によって基準容量C(またはインダクタンスL)を設定するために動作させることができる。
【0116】
[00141] 例えば、混成スイッチト・キャパシタ・ネットワーク1100のスイッチン
グ周波数における実効容量CEFFは、図3に示したように、0から約π/2まで変化するスイッチング角度αによって、RFスイッチを半波切り替えることによって、低い方の容量値Cと高い方の容量値との間で制御することができる。図7に示すように、π/2(90度)未満のスイッチング角度αによるRFスイッチの動作は、約35%未満のピーク高調波歪みに対応する。つまり、混成スイッチト・ネットワーク(例えば、1100および1200)は、最小限の高調波歪みで、そして調節可能なバイアス電圧または電流を必要とせずに、広い容量(または誘導)範囲にわたってスイッチング周波数における実効リアクタンスの連続制御を可能にする。
【0117】
[00142] 種々の実施形態において、TMN112のRFスイッチ(例えば、スイッチ
206または406)は、種々のタイプのスイッチング素子の1つまたは組み合わせとして、例えば、RFシステム100のRF周波数または他の動作パラメータに基づいて実現することができる。例えば、横または縦型FET、HEMT、サイリスタ、ダイオード、または他の同様の回路エレメントを採用することもできる。
【0118】
[00143] 位相スイッチト可変容量200および位相スイッチト可変インダクタンス4
00は、更に複雑な位相スイッチト・チューニング可能整合ネットワーク(PS-TMN)、例えば、π-ネットワーク・トポロジPS-TMN(Pi-TMN)内における回路エレメントとして採用することもできるが、L-ネットワーク、T-ネットワーク、または他の同様のネットワークというような、他のネットワーク・トポロジも可能である。図13は、π-TMN1302に結合されたRFソース1301を含む例示的なRFシステム1300の模式図を示す。π-TMN1302はRF負荷1303に結合されている。π-PMN1302は2つの可変分路容量サセプタンスB1310およびB1314を含む。例示的な実施形態では、RFソース1301は一般に電力増幅器または他のRFシステムの出力である。図13に示すように、RFソース1301は、そのノートン等価回路によって、 ソース抵抗R1306およびソース・サセプタンスB1308と並列な電流源1304を含むように表すことができる。同様に、RF負荷1303は、負荷サセプタンスB1316と並列な負荷抵抗R1318を含むように表すことができる。ソースおよび負荷インピーダンスZおよびZは、それぞれ、次のように表すことができる。
【0119】
【数5】
【0120】
【数6】
【0121】
したがって、負荷インピーダンスZをソース・インピーダンスZに整合するために必要とされるサセプタンスBおよびBは、以下の式によって与えられることを示すことができる。
【0122】
【数7】
【0123】
【数8】
【0124】
このように、π-TMN1302は、可変分路容量サセプタンスB1310およびB1314の値を調節することによって、負荷インピーダンスZをソース・インピーダンスZに整合させるために採用することができる。
【0125】
[00144] 図13に示すように、π-TMN1302の実施形態は、2つの可変分路容
量サセプタンスB1310およびB1314と、固定誘導性リアクタンスX1312とを含むが、可変分路誘導性サセプタンスおよび固定容量性リアクタンスを採用する、3つのリアクティブ分岐を全て可変部品として実装する等というような、 数多くの他の実
現例もπ-TMNには可能である。勿論、1つの可変分路エレメントおよび1つの可変直列路エレメントを有するL-セクションTMNを実現することも可能であることは認められてしかるべきである。他のタイプのネットワークを採用することもできる。以下で更に詳しく説明するが、接地基準(ground-referenced)可変キャパシタは、RF周波数におけ
る位相スイッチト可変リアクタンス・ネットワークによる実現に非常に適している。
【0126】
[00145] 図14を参照すると、π-TMN1302によって整合させることができる
負荷インピーダンスの例示的な範囲が、(Rに正規化された)スミス・チャート・プロット1400において陰影領域1402として示されている。例えば、陰影領域1402
によって表されるインピーダンス値は、X=Rを有する例示的なπ-TMNと、1/Rから4/Rの範囲にわたって可変なサセプタンスBとによって、そして1/Rから2/Rの範囲にわたって可変なサセプタンスBによって得ることができる。図14に示すように、π-TMN1302は、RFソース1301のインピーダンスを、約10:1抵抗範囲および5:1リアクタンス範囲(容量的および誘導的の双方)にわたって変化する負荷インピーダンスに整合させることができる。このようにするために、π-TMN1302は、1:4の範囲にわたってBを調整し、1:2の範囲にわたってBを調整する。これは、図2および図4に示したような位相スイッチト可変リアクタンス・ネットワークを採用すれば遂行することができる。
【0127】
[00146] 図15は、50Ωのソース・インピーダンス(例えば、R1506)に対
して、図14に示した整合範囲を得るための位相スイッチトπ-TMN回路1502の例示的な実施形態を示す。誘導性リアクタンスXは、ノートン等価ソース抵抗R(例えば、50Ω)と値が等価となるように選択される。図15に示すように、可変容量サセプタンスBおよびBは、半波位相スイッチト・キャパシタ(例えば、図2の位相スイッチト・キャパシタ200)として実現される。可変容量サセプタンスBは、位相スイッチト・キャパシタCP21514とFETスイッチ1512とを含み、FETスイッチ1512は、スイッチング角度αを有する制御信号q2を切り替えることによって制御される。可変容量サセプタンスBは、位相スイッチト・キャパシタCP11520とFETスイッチ1522とを含み、FETスイッチ1522は、スイッチング角度αを有する制御信号q1を切り替えることによって制御される。
【0128】
[00147] 例示的な実施形態では、位相スイッチトπ-TMN回路1502は、27.
12MHzで動作し、50Ωのソース・インピーダンスを、スイッチのスイッチング角度(αおよびα)およびこれらの間の位相シフトを適正に調節することにより(例えば、スイッチング制御信号q1およびq2を調節することにより)、約10:1抵抗範囲および5:1リアクタンス範囲(容量性および誘導性双方)にわたって変化する負荷インピーダンスに整合させることができる。
【0129】
[00148] 可変容量サセプタンスBおよびBを半波FET-スイッチト・キャパシ
タ・ネットワークとして実現することにより、スイッチのゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作が得られ、各可変リアクタンスを、1つの接地-基準スイッチ(例えば、可変容量サセプタンスBにFET1512、そして可変容量サセプタンスBにFET1522)によって実現することを可能にする。ZVS動作は、スイッチング電力損失を低減し、全体的なシステム効率を向上させるので、スイッチト・システム(switched system)において望まれる。更に、FET1512および1522の出力(ドレイン-ソース間)容量は、位相スイッチト・キャパシタCP1およびCP2と並列であり、したがって分路容量に追加し、TMNの一部として利用することができる。
【0130】
[00149] 例示的なπ-TMN回路1502では、図13に示した誘導性リアクタンス
X1312は、直列共振回路として実装される。この直列共振回路は、分路エレメント(例えば、接地に結合される)として配置された可変サセプタンスBおよびBの間に直列に配置されたインダクタLS21516およびキャパシタCS21518を含む。インダクタLS21516およびキャパシタCS21518は、所望の周波数においてソース・インピーダンス(例えば、50Ω)にほぼ等しい誘導性インピーダンスを有するように選択される。
【0131】
[00150] 図15に示す実施形態では、2つの追加の直列共振回路が含まれており、1
つはπ-TMN回路1502の入力フィルタとして、そして1つはπ-TMN回路の出力フィルタとして、スイッチングの結果としてソースおよび負荷に注入される高調波成分の
量を制限するために含まれる。例えば、キャパシタCS11508およびインダクタLS11510は、ソース1504とπ-TMN回路1502との間における直列共振入力フィルタとして作用する。同様に、インダクタLS31524およびキャパシタCS31526は、負荷1528とπ-TMN回路1502との間における直列共振出力フィルタとして作用する。
【0132】
[00151] LS21516およびCS21518の直列共振回路の品質係数Qは、位相
スイッチト・キャパシタCP11520と位相スイッチト・キャパシタCP21514との間の相互作用を制御する。例えば、品質係数Qを増大させると(例えば、LS21516およびCS21518の値を増大させることによって)、位相スイッチト・キャパシタCP11520と位相スイッチト・キャパシタCP21514との間における相互作用が減少するが、品質係数Qを増大させると、ネットワークの有効帯域幅も減少する。
【0133】
[00152] 例えば、約27MHzの範囲において例示的な所望の周波数で50Ωのソー
ス・インピーダンス(例えば、R1506)のために、図14に示した整合範囲を達成するための位相スイッチトπ-TMN回路1502では、位相スイッチト・キャパシタCP11520は、130pFの物理値Cを有すればよく、位相スイッチト・キャパシタCP21514は100pFの物理値Cを有すればよい。位相スイッチト・キャパシタCP11520と位相スイッチト・キャパシタCP21514との間における直列共振回路によって所望の品質係数Qを達成するためには、キャパシタCS21518は0.01μPの値を有すればよく、インダクタLS21516は297nHの値を有すればよい。直列共振回路によって所望の入力および出力フィルタリングを達成するためには、キャパシタCS11508およびCS31526は23.4pFの値を有すればよく、インダクタLS11510およびLS31524は1.47μHの値を有すればよい。更に、FET1512および1522は、10mΩのオン状態抵抗を有してもよく、各FETのボディ・ダイオードは0.4Vの順方向電圧および10mΩのオン状態抵抗を有してもよい。
【0134】
[00153] FET1512および1522のスイッチングは、スイッチング角度αに基
づいてそれらのドレイン電流に同期される。スイッチング角度αは、キャパシタCP1およびCP2の所望の実効容量に基づく。半波位相スイッチト・キャパシタについて先に説明したように、FET1512および1522は、それらのドレイン電流が負から正に交差した後にオフにされ、次いで一旦それらのそれぞれのドレイン電圧がゼロに戻ったなら再度オンにされる。FET1512および1522の各々に対するαのしかるべき値は、関係(5)および(6)によって与えられるように、所望の負荷インピーダンスZに対して必要とされるBおよびBサセプタンスを決定することによって、計算することができる。一旦各容量サセプタンスBおよびBがわかったなら、所望のサセプタンス値に対応するαの値を決定するために、関係(1a)(半波位相スイッチト・キャパシタの場合)または関係(2a)(全波位相スイッチト・キャパシタの場合)において、その値をCEFFとして入力することができる(Cはキャパシタの物理容量として知られている値である)。
【0135】
[00154] 説明したように、純粋に正弦波でない電流励起を有する位相スイッチト・ネ
ットワークでは、関係(1)および(2)から、所望のサセプタンスを達成するための正確な値のαが得られないおそれがある。更に、ドレイン-ソース・スイッチ容量の非線形性、および2つのスイッチト・ネットワークの相互作用(mutual interaction)(例えば、容量性サセプタンスBおよびB)のために、精度が低いαの計算となるおそれもある。このため、ある実施形態は、αのしかるべき値を決定するために、固定または適応可能な参照表(例えば、LUT108)、フィードバック(例えば、フィードバック回路110による)、フィードフォワード補償(例えば、フィードフォワード回路104による)、スイッチング角度のディジタル・プレディストーション(例えば、プレディストーション回路107による)、あるいは他の同様の技法というような、非線形制御技法を採用する(例えば、制御回路106によって)。
【0136】
[00155] π-TMN回路1502が所与のインピーダンスを達成するためにFET1
512および1522の各々にスイッチング制御パラメータαの正しい値を設定するために、LUT108は種々の負荷インピーダンスに対応する所定のスイッチング角度(例えば、αおよびα)を格納することができる。例えば、表2は、π-TMN回路1502が50Ωソースに整合させることができる可能な負荷インピーダンス、およびスイッチング制御信号q1およびq2に対するスイッチング角度αおよびαの対応する値の例示的なリストを示す。
【0137】
【表2】
【0138】
[00156] 表2は、π-TMN回路1502が50Ωソース/インピーダンスを、少なくとも10:1の倍率にわたって抵抗が変動する負荷インピーダンスに整合させることが可能であることを示す。表2に列挙したスイッチング角度(αおよびα)、および図6に示した実効リアクタンス(例えば、CEFF/CまたはLEFF/L)対αのプロットに基づいて、実効容量の2:1変調が、10:1の範囲にわたって抵抗が変動する負荷インピーダンスに対するインピーダンス整合を達成できることを示すことができる。
【0139】
[00157] 他のタイプのシステムも、本明細書において説明する位相スイッチト・ネッ
トワークを採用することができる。例えば、特定の周波数においてまたは特定の周波数帯域にわたって配電するRF電力増幅器(PA)の恩恵を、広範囲のシステムが受けることができる。このようなPAは、広範囲にわたって出力電力を制御し、その動作範囲にわたって高い効率を維持することができるという利点がある。従来の線形増幅器(例えば、A、B、AB級等)は、広範囲にわたる動的出力電力制御および忠実性が高い増幅という利点が得られるが、ピーク効率に限界があり、電力のバックオフによって急速にピーク効率が低下する。一方、スイッチングPA(例えば、D、E、F、Φ級等のようなインバータ)は、高いピーク効率を提供するが、スイッチング・モード(switched mode)に留まる間
は一定のエンベロープ信号(一定の供給電圧で)しか生成しない。
【0140】
[00158] スイッチングPAにおける出力電力制御のための一技法は、負荷変調による
ものであり、PAの負荷を外部ネットワークによって調整する。説明する実施形態では、PAの負荷は、位相スイッチト・チューニング可能整合ネットワーク(TMN)(例えば、π-TMN回路1502のような、1つ以上の位相スイッチト可変容量200または位相スイッチト可変インダクタンス400を含むネットワーク)によって調整される。例えば、位相スイッチトTMNのインピーダンス変換がPAの出力電力を制御することもできる。
【0141】
[00159] 図16を参照すると、このような位相スイッチト・インピーダンス変調(P
SIM)増幅器がPSIM増幅器1600として示されている。PSIM増幅器1600は、特定の周波数、または特定の周波数範囲にわたってRF電力を生成するRF電力増幅器(またはインバータ)1602を含む。RF PA1602は、電源(例えば、電圧
DC および接地)および位相スイッチトTMN1604に結合されている。位相スイ
ッチトTMN1604は、負荷インピーダンスZを有するRF負荷1606に結合されている。位相スイッチトTMN1604はコントローラ1608に結合されている。コントローラ1608は、例えば、所望のインピーダンスを達成するためのスイッチング角度(例えば、α)に基づいて制御信号をTMNのスイッチに供給することによって、TMNの動作を制御する。図16には示されないが、ある実施形態では、コントローラ1608はRF PA1602に結合され、PAの動作も制御する。位相スイッチトTMN1604は、負荷インピーダンスZからPA1602に呈するインピーダンスへの変換を適応的に制御する。例えば、位相スイッチトTMN1604は、PA1602に呈する負荷(例えば、ZTMN)を調整することによってPA1602の出力電力を制御し、および/または周波数および/または負荷インピーダンスの変動を補償して高い効率および所望の電力を負荷に供給することができる。
【0142】
[00160] 種々の実施形態において、PA1602は(1)スイッチング・インバータ
、(2)振幅変調線形PA、または(3)これらの組み合わせである(例えば、所望の出力に依存する)。例えば、図17は、例示的なPSIM増幅器1700のブロック図を示す。PSIM増幅器1700は、1つのスイッチ(例えば、FET1706)を含むスイッチングPA1702(例えば、E、F、Φ、PA級等)を含む。他の実施形態では、線形PA(例えば、A、B、AB、またはC級)またはDC電力をRF電力に変換するために1つよりも多いスイッチを使用する他のスイッチングPA(例えば、D級、逆D級等)のような、他のタイプのPAを採用することもできる。
【0143】
[00161] 説明したように、位相スイッチトTNM(例えば、TMN1604または1
710)を覗き込む(look into)PAによって見られる実効負荷インピーダンスZTMN
を調整することによって、PSIM増幅器(例えば、増幅器1602および1702)の動作電力範囲にわたって出力電力を制御する。加えて、PSIM増幅器の動作電力範囲は、更に、大きな出力電力バックオフのためにPA駆動信号の振幅変調も採用することによって広げることができる。
【0144】
[00162] また、ある実施形態では、電力増幅器の離散または連続ドレイン変調のよう
な、他の電力変調技法を採用することもできる。PAのドレイン変調は、PAのバイアス端子に印加されるバイアス電圧を調整する(例えば、切り替える)。例えば、1つのドレイン変調技法をあげると、複数の離散電圧レベルの間でバイアス電圧を切り替える、またはある電圧範囲にわたってバイアス電圧を連続的に調節することでもよい。
【0145】
[00163] RF PAのインピーダンス変調および出力電力制御を実行することに加え
て、位相スイッチトTMN(例えば、TMN1604または1710)は負荷インピーダンスZの変動も補償することができる。例えば、位相スイッチトTMNを採用して、動作周波数が変化するにつれて増幅器の負荷ネットワーク・インピーダンスの変動を補償することによって、つまりZVS動作を維持することによって、所与の出力電力レベルに対して可変負荷インピーダンスを所望のRFインバータ負荷インピーダンスZTMNに整合させるために、位相スイッチトTMNを連続的にチューニングすることができる。このように、PSIM増幅器(例えば、PSIM増幅器1600および1700)は、広い周波
数範囲にわたって、RFプラズマ負荷のような、広く変動する負荷インピーダンスにそれが配電する出力電力を動的に制御する。
【0146】
[00164] したがって、PSIM増幅器(例えば、PSIM増幅器1600および17
00)は、(1)広い電力範囲にわたる出力電力の効率的な動的制御、(2)インピーダンスを整合し広い範囲に及ぶ負荷に電力を配電する能力、および(3)周波数アジャイル動作のための周波数範囲にわたる完全なゼロ電圧スイッチング(ZVS)動作を可能にする。
【0147】
[00165] 図16および図17に示すPSIM増幅器1600および1700のブロッ
ク図は、PSIM増幅器を、位相スイッチトTMN(例えば、位相スイッチトTMN1604および1710)とRF PA(例えば、RF PA1602および1702)とのカスケード結合として示すが、他の実施形態では、PS-TMNをRF PAの設計に統合する。その結果、このような統合PSIM増幅器を、2つ以上のスイッチを含むRF増幅器と見なすことができ、第1スイッチ(またはスイッチのグループ)は主にDC入力電力からRF電力を生成する役割を担い、第2スイッチ(またはスイッチのグループ)は主に負荷ネットワークによってRF増幅器に呈する実効インピーダンスを調整する役割を担う。殆どの実施形態では、第2スイッチ(またはスイッチのグループ)はDC電力をRF電力に変換しない(例えば、第2スイッチはDCからRFへのゼロ電力変換を提供する)が、ある実施形態では、第2スイッチがDCからRFにまたはRFからDCに電力を変換してもよい。
【0148】
[00166] 殆どの実施形態では、PSIM増幅器は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)
増幅器とすることができ、スイッチング・トランジスタは実質的にスイッチング・モードで動作し、ゼロ電圧スイッチングの下でオンおよびオフになり、高い効率を達成することを可能にする。他の実現例では、PSIM増幅器はその動作範囲の一部において(例えば、高出力電力を配電している間)スイッチング・モード動作(例えば、飽和動作)を行い、その範囲の他の部分では線形モード動作を利用するのでもよい。
【0149】
[00167] 例えば、図18Aは、PSIM増幅器1800Aの例示的なトポロジの模式
図を示す。図示のように、PSIM増幅器1800Aは、インダクタLと直列に結合されたDCソース1802に結合されており、一方インダクタLはトランジスタ1804およびキャパシタCの並列結合に結合されている。インダクタL、キャパシタC、およびFET1804は、一般に、DCソースから、ネットワークの残りへのRF出力電力を生成するように動作する。分岐抵抗XがキャパシタCとノードNとの間に結合されており、ノードNはπ-TMNに結合されている。π-TMNは、第1位相スイッチト・リアクタンス(例えば、FET1806、分岐リアクタンスXS2、および位相スイッチト可変リアクタンスXP2)と第2位相スイッチト・リアクタンス(例えば、FET1808、分岐リアクタンスXS3、および位相スイッチト可変リアクタンスXP3)との間に結合されたリアクタンスXを含む。分岐リアクタンスXは、ノードNにおけるπ-TMNと負荷インピーダンスZとの間に結合されている。分岐リアクタンスX、X、X、XS2、XS3、ならびに位相スイッチト可変リアクタンスXP2およびXP3は、要求される設計の機能に依存して、種々の異なるリアクタンス・ネットワークとして実現することができる。
【0150】
[00168] 図18Bは、図18Aに示したPSIM増幅器トポロジの例示的な設計18
00Bを示す。図18Bに示すように、位相スイッチト可変リアクタンス(FETスイッチ1806および1808と、位相スイッチト・キャパシタCP2およびCP3とを含む)は、図2および図3に関して説明したような、半波位相スイッチト・キャパシタ・ネットワークと共に実装されている。図18Bに示すように、3つのスイッチ1814、18
16、および1818はDCにおいて相互に分離される(例えば、それぞれ、キャパシタCS1、CS2、およびCS3によって)。FETスイッチ1814は、全てのRF電力を生成する役割を担い、一方FETスイッチ1816および1818は、負荷Zによって回路のDC-RF部分に呈するインピーダンスを変換および調整する役割を担う(例えば、ノードNにおけるスイッチ1814の出力ポートにおいて)。
【0151】
[00169] 図18Cは、図18Aに示したPSIM増幅器トポロジの例示的な設計18
00Cを示す。ネットワーク1800Cはネットワーク1800Bと同様であるが、ネットワーク1800Cでは、位相スイッチト・キャパシタ・ネットワーク(例えば、FET1826およびキャパシタCP2ならびにFET1828およびキャパシタCP3)は、それぞれ、キャパシタCP4およびCP5と直列に接続されている。これによって、スイッチト・キャパシタ・ネットワークの実効リアクタンスの変動に対するPSIM増幅器の感度を低下させる。
【0152】
[00170] 図18Dは、図18Aに示したPSIM増幅器トポロジの例示的な設計18
00Dを示す。ここでは、FETスイッチ1834および1836がDC結合され(例えば、インダクタLS1を介して)、したがって、潜在的に、FETスイッチ1834および1836の一方または双方を、DC電力をRF電力に、またはその逆に変換するために使用することができる。一方、FETスイッチ1838はDC分離され(例えば、容量CS2およびCS3によって)、したがって負荷インピーダンスZに対するインピーダンス整合のためにのみ使用される。
【0153】
[00171] 図18Eは、図18Aに示したPSIM増幅器トポロジの例示的な設計18
00Eを示す。ここでは、3つのFETスイッチ1844、1846、および1848の全てがDC結合され(例えば、インダクタLS2を介して)、一方負荷だけがDC分離されている(例えば、キャパシタCS3によって)。つまり、このような実施形態では、3つのFETスイッチ1844、1846、および1846の全てを、潜在的に、DC電力とRF電力との間で変換するために使用することができ、および/またはネットワークの負荷に対するインピーダンス整合の役割を担うことができるが、3つの全てが各機能を行うことは必要でない。
【0154】
[00172] 図18Eに示すように、キャパシタCおよびFETスイッチ1844のス
イッチト・キャパシタ・ネットワークは、キャパシタCP2、インダクタL、およびFETスイッチ1846の位相スイッチト・ネットワークと並列である。その結果、ある実施形態は、これら2つのネットワークを組み合わせて、FET1844および1846に関連する2つのスイッチト・リアクタンス・ネットワークの入力電流の合計と一致する入力電流を有する1つのスイッチト・リアクタンス・ネットワークにすることができる。つまり、ある実施形態では、図18Eに示す3-スイッチPSIMを、図19および図20に示すような、2-スイッチPSIMとして実装することができる。
【0155】
[00173] 図19を参照すると、2-スイッチPSIM1900の例示的なトポロジの
模式図が示されている。2-スイッチPSIM1900は、インダクタLと直列に結合されたRFソース1902に結合されており、一方インダクタLはFET1904およびキャパシタCの並列結合に結合されている。分岐リアクタンスXが、キャパシタCと、リアクタンスXS2を含む位相スイッチト・リアクタンス・ネットワークとの間に結合されている。リアクタンスXS2は、位相スイッチト・リアクタンスXP2およびFET1906の並列結合と直列に結合されている。分岐リアクタンスXは、この位相スイッチト・リアクタンス・ネットワークと負荷インピーダンスZとの間に結合されている。分岐リアクタンスX、X、およびXS2、ならびに位相スイッチト可変リアクタンスXP2は、要求される設計の機能に依存して、種々の異なるリアクタンス・ネットワ
ークとして実現することができる。スイッチFET1904および1906の一方、またはスイッチ1904および1906の双方のいずれかを、DC電力およびRF電力間で変換するために使用することができる。
【0156】
[00174] 図20を参照すると、インダクタLS1およびキャパシタCS1として実装
された分岐リアクタンスXを有する、2-スイッチPSIM1900の例示的な実現例が示されている。キャパシタCS1は、FETスイッチ2004および2006間でDC分離を行う。つまり、FETスイッチ2004はRF電力を生成し、FETスイッチ2006はソースに呈するインピーダンスを調整する。
【0157】
[00175] 図21は、3-スイッチPSIM増幅器2100の例示的な実現例を示す。
PSIM増幅器2100は、20.86MHzから27.12MHzまでの周波数範囲にわたって動作する(1.3倍の周波数)。更に、PSIM増幅器2100は、±10%のインピーダンス変動(抵抗性およびリアクティブ)がある50ΩのインピーダンスZを有する負荷に配電される出力電力の10:1動的制御の能力を与える。
【0158】
[00176] PSIM増幅器2100は、RF PA(インバータ)2102、π-TM
104、分岐フィルタ2106、および負荷インピーダンスZを含む。RF PA2102は、FETスイッチ2108、インダクタL、ならびにキャパシタCおよびCS1とインダクタLS1とによって形成された出力ネットワークを含む。図21に示す実施形態では、RF PA2102は、変更E級インバータであり、FETスイッチ2108がDC電力およびRF電力間で変換を行う。π-TMN2104は、第1位相スイッチト・キャパシタ(例えば、CP2およびFET2110)と、第2位相スイッチト・キャパシタ(例えば、CP1およびFET2112)とを含む。分岐フィルタ2106は、インダクタLS3と、π-TMN2104と負荷Zとの間に結合されたキャパシタCS3とを含む。
【0159】
[00177] π-TMN2104がインバータ負荷インピーダンスZTMNをRF PA
2102の動作周波数におけるほぼ抵抗性負荷として維持するとき、RF PA2102は、異なる出力電力レベルにおいてゼロ電圧スイッチング(ZVS)および高効率を維持する。RF PA2102は、ZTMNが50Ωであるとき(例えば、負荷インピーダンスZと一致する)、ピークRF電力を生成する。RF PA2102の電力バックオフの動的制御は、π-TMN2104がZTMNを調整することによって遂行することができる。
【0160】
[00178] 20.86MHzから27.12MHzまでの周波数範囲にわたる動作では
図21に示すPSIM増幅器2100の例示的な実施形態は、113nHの値を有するインダクタL、180pFの値を有するキャパシタC、15.2pFの値を有するキャパシタCS1、3.81μHの値を有するインダクタLS1、152pFの物理値Cを有する位相スイッチト・キャパシタCP2、381nHの値を有するインダクタLS2、0.01μpの値を有するキャパシタCS2、152pFの物理値Cを有する位相スイッチト・キャパシタCP1、3.81μHの値を有するインダクタLS3、および15.2pFの値を有するキャパシタCS3を採用する。ある実施形態では、π-TMN2104は半波スイッチト・キャパシタ・ネットワーク(例えば、キャパシタCP2およびFET2110、ならびにキャパシタCP1およびFET2112)を採用する。
【0161】
[00179] キャパシタCS2およびインダクタLS2によって形成された直列リアクタ
ンス・ネットワーク分岐は、20.86MHzの周波数において50Ωの誘導性インピーダンスを有し、更に2つのスイッチト・ネットワーク(例えば、キャパシタCP2およびFET2110、ならびにキャパシタCP1およびFET2112)をDC分離する。キ
ャパシタCS2およびインダクタLS2のインピーダンスは、π-TMN2104のTZMNを調整することができる抵抗範囲を設定する。キャパシタCS3およびインダクタLS3によって形成された直列共振ネットワークは、負荷電流Iの追加のフィルタリングを行い、DC電流および高周波高調波成分が負荷Zに結合されるのを防止する。π-TMN2104は、FETスイッチ2110および2112をしかるべく駆動することにより、例えば、FETの導通角を調節することにより、RF PA2102に呈するインピーダンスZTMNを調整することができる。RF PA2102に呈するインピーダンスZTMNを調整することにより、π-TMN2014は、RF PA2102から負荷Zに配電される出力電力を制御することができる。
【0162】
[00180] 図22は、π-TMN2104のZTMNを20.86MHzにおいて調節
することができる例示的なインピーダンス範囲(例えば、陰影領域2202)を示す。図23は、π-TMN2104のZTMNを27.12MHzにおいて調節することができる例示的なインピーダンス範囲(例えば、陰影領域2302)を示す。スミス・チャート2200および2300は、50Ωに正規化されている。陰影領域2202および2302は、位相スイッチト・キャパシタCP1を1:6のインピーダンス範囲にわたって変化させ(例えば、FET2112のスイッチング角度αを約0度から125度にわたって変化させる)、更に位相スイッチト・キャパシタCP1を1:10のインピーダンス範囲にわたって変化させる(例えば、FET2110のスイッチング角度αを約0度から135度にわたって変化させる)ことによって、π-TMN2104が10:1の範囲にわたって負荷インピーダンスZを整合させることができることを示す。更に、RF PA2102の動作周波数において負荷インピーダンスZ(抵抗性およびリアクティブの双方)の±10%の変動を考慮するために、ZTMNを調整することができる。
【0163】
[00181] π-TMN2104に対してFET2112のスイッチング角度α、およ
びFET2110のスイッチング角度αの正しい値を設定して所与のインピーダンスを達成するために、LUT108は種々のインピーダンスに対応する所定のスイッチング角度(例えば、αおよびα)を格納することもできる。例えば、表3は、50Ω負荷インピーダンスZに整合することができる、可能なインピーダンスZTMNと、対応するスイッチング角度(例えば、αおよびα)の例示的なリストを示す。表3の値は、PSIM増幅器2100のシミュレーションに基づいて決定することができ、10mΩのオン状態抵抗と、0.4V順方向電圧降下を有するボディ・ダイオードとを有するFET2110および2112をモデル化した。表3に羅列した出力電力は、PSIM増幅器に48VDC電源が供給されたときの、基本周波数以上において配電される電力を含む。
【0164】
【表3】
【0165】
[00182] 説明したように、PSIM増幅器2100は、広い範囲の出力電力、負荷イ
ンピーダンス、および動作周波数にわたって、全てのFETスイッチのゼロ電圧スイッチングを維持する。例えば、58.6Wの出力電力を50Ω負荷Zに20.86MHzで、48VDCの電圧源によって配電する例示的なPSIM増幅器2100では、TMN2102はほぼ1:1のインピーダンス整合(例えば、Z=ZTMN=50Ω)を与えることを要求される。この動作条件の下で、ノードNおよびNにおける要求実効分路容量は、それぞれ、CP1およびCP2容量と等価であり、したがって、FETスイッチ2110および2112は、サイクル全体の間オフとなり、FETスイッチ2110および2112のドレイン電圧波形は正弦波状となる。
【0166】
[00183] 他の例として、3.50Wの出力電力を50Ω負荷Zに27.12MHz
で、48VDCの電圧源によって配電する例示的なPSIM増幅器2100では、TMN2102は、約500ΩのインピーダンスZTMNを与えることを要求される(図3に示す通り)。この動作条件の下では、ノードNおよびNにおける要求実効分路容量は、それぞれ、CP1およびCP2容量よりも高く、したがって、FETスイッチ2110および2112は、ZVSを維持している間、サイクルの一定部分の間オンにされる。FETスイッチ2110および2112のドレイン電圧波形の高周波高調波成分にも拘わらず、負荷Zを流れる負荷電流Iはほぼ正弦波状のままでいるはずである。このように、PSIM増幅器2100は、広いスイッチング周波数にわたって可変負荷に整合しつつ、動的出力電力制御を行うことができる。
【0167】
[00184] したがって、本明細書において説明したように、種々の実施形態は、位相ス
イッチト可変ネットワーク・リアクタンス素子に基づくチューニング可能整合ネットワークを提供する。本明細書では、これを位相スイッチト・チューニング可能整合ネットワーク(PS-TMN)と呼ぶ。このようなPS-TMNは、高いバイアス電圧や電流を必要とせず、高電力レベルで効率的に動作しつつ、広いインピーダンス範囲にわたって素早く、高帯域幅の連続インピーダンス整合を可能にする。このようなPS-TMNは、単独で採用することができ、または離散スイッチト・リアクタンス・バンクのような他の整合技法と組み合わせて採用することもできる。また、説明した実施形態は、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)高周波(RF)増幅器も提供する。ここでは、これを位相スイッチト・インピーダンス変調(PSIM)増幅器と呼ぶ。このようなPSIM増幅器は、広い周波数範囲にわたって出力電力を効率的に調整し、高可変負荷に整合させる(例えば、広いインピーダンス範囲に整合させる)ことによって、広い周波数範囲にわたって動作するためにPS-TMNを採用することができる。
【0168】
[00185] 本明細書において「一実施形態」または「実施形態」と言う場合、その実施
形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性を、特許請求する主題の少なくとも1つの実施形態に含むことができることを意味する。明細書の種々の場所において「一実施形態において」という句が現れるとき、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らず、他の実施形態とは必ずしも互いに排他的な別の実施形態または代わりの実施形態であるとも限らない。これは「実現例」という用語にも当てはまる。
【0169】
[00186] 本願において使用する場合、「例証的な」(exemplary)および「例示的な」(illustrative)という単語は、本明細書では、例(example)、実例(instance)、または例示(illustration)として役割を果たすことを意味するために使用される。「例証的」または「例示的」であるとして本明細書において説明される形態や設計はいずれも、他の形態や設計に対して好ましいとも有利であるとも必ずしも解釈される訳ではない。逆に、「例証的な」および「例示的な」という単語の使用は、概念を具体的に提示することを意図している。
【0170】
[00187] 加えて、「または」という用語は、排他的な「または」ではなく内包的な「
または」を意味することを意図している。即ち、別段指定されない限り、または文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを採用する」は、自然な包含的置換(natural inclusive permutation)のいずれかを意味することを意図している。即ち、XはAを採用する、XはBを採用する、またはXはAおよびBの双方を採用する場合、以上の実例のいずれの下においても、「XはAまたはBを採用する」が満たされる。加えて、冠詞「a」および「an」は、本願および添付する特許請求の範囲において使用される場合、別段していされない限り、または単数形を対象とすることが文脈から明らかでない限り、一般に「1つ以上」を意味すると解釈されてしかるべきである。
【0171】
[00188] 方向に関する用語が明細書および特許請求の範囲において使用される限りに
おいて(例えば、上方、下方、平行、垂直等)、これらの用語は、実施形態を説明するときに補助することを意図するに過ぎず、特許請求の範囲を限定することは全く意図していない。このような用語は、正確さ(例えば、正確に垂直または正確な平行等)を要求するのではなく、通常の許容度および範囲が適用されることを意図している。同様に、別段明示的に述べられていないのであれば、各数値および数値範囲は、「約」、「実質的に」、または「ほぼ」という単語がその値または値の範囲に先立つかのように、大凡であると解釈されてしかるべきである。
【0172】
[00189] ある実施形態は、方法およびこれらの方法を実施するための装置という形態
で実現することもできる。更に、当業者には明白であろうが、回路素子の種々の機能も、ソフトウェア・プログラムにおける処理ブロックとして実現することができる。説明した実施形態は、磁気記録媒体、ハード・ドライブ、フロッピ・ディスケット、磁気テープ媒体、光記録媒体、コンパクト・ディスク(CD)、ディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、ソリッド・ステート・メモリ、混成磁気およびソリッド・ステート・メモリ、または任意の他の機械読み取り可能な記憶媒体というような、有形媒体において具体化されたプログラム・コードという形態で実現することもできる。プログラム・コードがコンピュータのような機械にロードされこれによって実行されると、機械は、特許請求する発明を実施する装置となる。また、説明した実施形態は、プログラム・コードの形態で実現することもでき、例えば、記憶媒体に格納される、機械にロードされおよび/または実行される、あるいは電気配線(wiring or cabling)を介して、光ファイバを通って、または電磁放射線によってというように、何らかの伝送媒体または搬送波(carrier)を介して伝送されるのでもよい。プログラム・コードがコンピュータのような機械にロードされ実行されると、この機械は、特許請求する発明を実施する装置となる。処理デバイスに実装されると、プログラム・コード・セグメントがプロセッサと結合して、特定のロジック回路と同様に動作する一意のデバイスを提供する。このような処理デバイスは、例えば、汎用マイクロプロセッサ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、縮小命令セットコンピュータ(RISC:reduced instruction set computer)、特定用途集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プログラマブル・ロジック・アレイ(PLA)、マイクロコントローラ、埋め込みコントローラ、マルチコア・プロセッサ、および/または以上のものの組み合わせを含むその他を含むことができる。また、説明した実施形態は、特許請求の範囲において記載される方法および/または装置を使用して生成され、媒体を介して電気的または光学的に伝送されるビットストリームあるいは他の信号値のシーケンス、磁気記録媒体等に格納される磁場変動という形態で実現することもできる。
【0173】
[00190] また、この説明に限って、「結合する」、「結合している」、「結合された
」、「接続する」、「接続している」、または「接続された」という用語は、2つ以上の素子間でエネルギが伝送されることを可能にし、1つ以上の追加素子の介在が考えられるが必須ではない、当技術において知られている、または今後開発される任意の方法を指す。逆に、「直接結合された」、「直接接続された」等という用語は、このような追加エレメントの不在を含意する。信号および対応するノードまたはポートが同じ名称で呼ばれることもあり、本明細書では故意に相互交換可能にしている。
【0174】
[00191] 尚、本明細書において説明した方法のステップは、必ずしも説明した順序で
実行されなければならないのではなことは理解されてしかるべきであり、このような方法のステップの順序は、単に例示に過ぎないことは理解されてしかるべきである。同様に、このような方法に追加のステップを含ませることもでき、種々の実施形態による方法において、一定のステップを省略するまたは組み合わせることもできる。
【0175】
[00192] 更に、本明細書において説明し例示した詳細、材料、および部品の構成にお
ける種々の変更も、以下の請求項の範囲から逸脱することなく、当業者によって行うことができることも理解されよう。
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