(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】操向自在な腔内医療機器
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20220819BHJP
A61M 25/092 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
A61M25/00 502
A61M25/00 540
A61M25/092
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020167841
(22)【出願日】2020-10-02
(62)【分割の表示】P 2018541109の分割
【原出願日】2017-02-03
【審査請求日】2020-10-28
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, ダニエル エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】シン, ドン スク
(72)【発明者】
【氏名】パーマー, ヴィリャル
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-010336(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0103706(US,A1)
【文献】特表2005-530558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0266642(US,A1)
【文献】特開2005-216743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器のイオン導電性高分子アクチュエータを管状に調製する方法であって、
管状の高分子電解質層であって外壁を有する高分子電解質層を提供すること、
揮発性溶剤にカーボンベース導電性粉末を加えた混合物を提供すること、
各々が近位端と遠位端を有する複数の導電性導管を提供すること、
カーボン電極層を形成するため、前記高分子電解質層の前記外壁の上に前記混合物を塗布すること、
各導電性導管の前記遠位端を前記カーボン電極層に接触させること、
熱収縮管を提供すること、
前記高分子電解質層とその上の前記カーボン電極層を前記熱収縮管で覆うこと、
前記イオン導電性高分子アクチュエータを形成するため、前記高分子電解質層のリフローを引き起こして、前記カーボン電極層と前記高分子電解質層とが熱的に結合するように前記熱収縮管を加熱すること
であって、前記カーボン電極層は前記リフローによって均一化されて均一なカーボン電極層となること、
前記熱収縮管を除去すること、及び
前記均一なカーボン電極層及び前記高分子電解質層を等しく分割すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記高分子電解質層は更に電解質に含浸される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高分子電解質層の電解質には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(EMI-BF4)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMI-TFSI)、或いはこれらの組み合わせのうちの少なくとも一つを含むイオン液体が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カーボン電極層の一部は更に、一又は複数の金属層で覆われている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記熱収縮管の加熱後、前記カーボン電極層は、機械的除去を伴う微細加工プロセスによって、複数の電極に分割される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カーボンベース導電性粉末は、炭化物由来カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンエアロゲル、グラフェン、或いはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カーボンベース導電性粉末は更に、遷移金属酸化物粉末、金属粉末、或いはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物は、ブラシ塗装又はスプレー塗装を用いて、前記高分子電解質層の前記外壁の上に塗布される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2016年2月7日に出願された米国仮特許出願第62/292,064号に従属し、かつ優先権を主張するもので、その全内容は参照により本願に組み込まれる。
連邦政府資金による研究又は開発の記載
[0002] 該当なし
【背景技術】
【0002】
発明の分野
[0003] 本発明は操縦可能な腔内医療機器に関し、より具体的には、身体の内腔に導入され、制御可能に動かされる可撓性のある細い医療機器(マイクロカテーテル又はガイドワイヤなど)に関する。この医療機器は、遠位の電気駆動式の屈曲可能な部分と、体内の標的とする解剖学的部位まで医療機器を操縦するための選択的に操作可能な先端部分とを含みうる。
【0003】
関連技術の説明
[0004] 腔内医療機器は、体内の部位と機器を用いた治療方法に応じて、様々な構造を有する。腔内機器は一般的に、動脈又は静脈などの管腔、或いは咽頭、尿道などの体内経路(bodily passageway)、身体開口部、或いはその他の解剖学的経路に挿入され、誘導されることが可能な極めて細く可撓性のある管を含む。このような医療機器の例には、注射器、内視鏡、カテーテル及びマイクロカテーテル、ガイドワイヤ、並びにその他の手術器具が含まれる。
【0004】
[0005] 一部の医療機器は、一般的に外力を加えることによって容易に曲がる可撓性材料を含み、体内に導入される部分を有する。幾つかの医療機器では、(通常最初に挿入される)遠位の先端は、ユーザーによる操縦機構の操作によって、所望の方向に選択的に曲げられうる。医療機器は標的とする内腔又は体内経路に挿入することができ、医療機器の遠位端を体内の所望の部位に配置するように動かすことができる。
【0005】
[0006] 低侵襲外科手術手技への要求が高まるにつれて、内腔又は体内経路へ、及び/又は、これらを経由して、医療機器を挿入及び/又は誘導するための外科手術手技が提案されている。外科手術手技の多くは、方向制御の精度が低く、操作が煩雑なコンポーネントを用いている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一形態において、医療機器のイオン導電性高分子アクチュエータを管状に調製する方法であって、 管状の高分子電解質層であって外壁を有する高分子電解質層を提供すること、揮発性溶剤にカーボンベース導電性粉末を加えた混合物を提供すること、各々が近位端と遠位端を有する複数の導電性導管を提供すること、カーボン電極層を形成するため、前記高分子電解質層の前記外壁の上に前記混合物を塗布すること、各導電性導管の前記遠位端を前記カーボン電極層に接触させること、熱収縮管を提供すること、前記高分子電解質層とその上の前記カーボン電極層を前記熱収縮管で覆うこと、前記イオン導電性高分子アクチュエータを形成するため、前記高分子電解質層のリフローを引き起こして、前記カーボン電極層と前記高分子電解質層とが熱的に結合するように前記熱収縮管を加熱することであって、前記カーボン電極層は前記リフローによって均一化されて均一なカーボン電極層となること、前記熱収縮管を除去すること、及び 前記均一なカーボン電極層及び前記高分子電解質層を等しく分割すること、を含む方法が提供される。
[0007] 操縦可能な腔内医療機器の実施形態は、医療機器の作動部(actuation part)(例えば、マイクロカテーテル又はガイドワイヤ)の操向制御及び体内での位置決めを改善する。作動部は、体の内腔又は体内経路に導入され、内腔及び/又は体内経路の中を通って移動するように延伸される間に、体内の所望の解剖学的部位に医療機器の作動部の遠位端を配置するように適合されている。本医療機器の実施形態は、体内の所望の部位で外科手術手技又はその他の医療操作を実施するため、遠位に配置された一又は複数の操作可能な顕微鏡下手術コンポーネント、医療機器の作動部の先端の移動及び位置決めをより正確に制御することができる。
【0007】
[0008] 内腔又は体内経路へ、及び/又は、これらを経由して動かされる作動部(例えば、マイクロカテーテル又はガイドワイヤ)を有する医療機器の一実施形態は、遠位端と近位端を有する細長い可撓性部分、細長い可撓性部分の遠位端に隣接して配置された高分子電解質層を含むイオン導電性高分子アクチュエータを備える。イオン導電性高分子アクチュエータは、以下で詳細に説明されるように、陽イオンが印加された電場に応答して自由に移動する高分子電解質層を含むアクチュエータである。電場は、高分子電解質層の上に角度を分散して配置された複数の電極への通電によってもたらされる。角度を分散して配置された複数の電極は、高分子電解質層の外壁の少なくとも一部に対して埋め込まれた、堆積された、及び固定された電極のうちの1つである。複数の電極はそれぞれ、例えば、外側部材で囲まれ、電流源に連結された近位端と電極に連結された遠位端を有する金属ワイヤなど、一又は複数の導電性導管を経由して、電流源に接続されうる。複数の電極のうちの一又は複数への選択的な通電は、高分子電解質層の側面又は一部に沿った収縮、及び/又は高分子電解質層の側面又は一部に沿った膨張の結果として、高分子電解質層を変形させることができる。高分子電解質層内の陽イオンは、高分子電解質層のマトリクス内にとどまりつつ、通電されたアノード電極に向かって、また、通電されたカソード電極から離れるように移動することが理解されるであろう。これによって、通電されたアノード電極に隣接する部分及び通電されたカソード電極に隣接する部分は収縮し、その結果、高分子電解質層は曲がることとなる。導電性導管を介して電極に供給される電気信号を協調制御することによって、意図した方向への屈曲を作り出せることが理解されるであろう。幾つかの実施形態では、複数の電極は更に、複数の電極の各々での電気信号の変化を検知するため、検知部材に電気的に接続されうる。そのため、検知部材は、イオン導電性高分子アクチュエータが変形しているか否かを検出しうる。
【0008】
[0009] 本医療機器の一実施形態では、イオン導電性高分子アクチュエータは、高分子電解質層の外壁の周囲に等しい角度で分散して配置された複数の電極を含みうる。本医療機器の一実施形態では、イオン導電性高分子アクチュエータは、医療機器の作動部の遠位端の屈曲可能部分に含まれうる。例えば、限定するものではないが、一実施形態では、本医療機器の屈曲可能部分は、各中心線の位置で互いに約120度(2.094ラジアン)ずつ、3つに角度分離して配置された電極を含みうる。別の例として、限定するものではないが、本医療機器の屈曲可能部分は、各中心線の位置で互いに約45度(0.785ラジアン)ずつ、8つに角度分離して配置された電極を含みうる。複数の電極の各々は、高分子電解質層の外壁の周囲で円周上のある範囲を占有すること、したがって、「角度分離」とは、電極の隣り合うエッジではなく、電極の中心線について述べたものであり、そのため、隣り合う電極の隣り合うエッジはかなり近くなることが理解されるであろう。本医療機器の幾つかの実施形態では、電極は隣り合う電極の中間に実質的な間隙をもたらすように離間される。
【0009】
[0010] 本医療機器の別の実施形態における作動部の遠位端の屈曲可能部分では、イオン導電性高分子アクチュエータは、高分子電解質層の外壁の周囲で円周上に分散配置された複数の電極が、細長い可撓性部分の隣リ合う内部部材の少なくとも一部に沿っており、複数の電極の少なくとも一部と電極によって囲まれた高分子電解質層の少なくとも一部とが一緒に配置されるボアを有する、外部部材、被覆、シース又はその他のバリアによって囲まれるように提供される。外部部材又は外部部材の外壁は、医療機器の細長い可撓性部分と、医療機器の作動部が導入され、医療機器の作動部の遠位端を体内の標的とする部位に配置するように、医療機器の細長い可撓性部分が延伸される内腔又は体内経路の内壁との間の滑らかな摺動係合を促進する、低摩擦で親水性及び/又は潤滑性のある材料を含みうる。外部部材は、限定するものではないが、ナイロン、ポリウレタン、及び/又はフランスのコロンブのArkema France社から市販されているポリエーテルブロックアミド材料PEBAX(登録商標)などの熱可塑性エラストマーを含む、一又は複数の材料を含みうる。
【0010】
[0011] 本医療機器の一実施形態では、高分子電解質層の屈曲に影響を及ぼすように、電源からの電気信号を複数の電極の一又は複数に伝える複数の導電性導管は、化学安定性と耐腐食性に優れた貴金属を含む。例えば、限定するものではないが、高分子電解質層を駆動するため、選択された電極に電流を供給する導電性導管は、導電率の高いプラチナ、プラチナ合金、銀又は銀合金を含んでもよく、或いはこれらの導管は、化学的に安定で耐腐食性があることに加えて、展性があり、屈曲に対する抵抗が極めて低く、非常に細い導電性導管の形成に有利になりうる金又は金合金を含んでもよい。
【0011】
[0012] 弛緩した、或いは通電していない状態では、イオン導電性高分子アクチュエータの高分子電解質層は元の形状にとどまる。
【0012】
[0013] 本医療機器の細長い可撓性部分の一実施形態は、遠位端、近位端、軸を備えた放射状の内部ボア、及び放射状の外壁を有する細長い可撓性内部部材と、ボアを有する高分子電解質層であって、内部部材のボアに揃えられた高分子電解質層のボアを備える内部部材の遠位端に隣接して固定された高分子電解質層を含む少なくとも1つのイオン導電性高分子アクチュエータと、少なくとも1つの高分子電解質層の周囲で円周上に分散配置された複数の電極と、各々が複数の電極の少なくとも1つに連結された近位端と遠位端を有する複数の導電性導管と、近位端、遠位端、及び両者の間の直径で、中心ワイヤの遠位端を内部部材のボアに導入し、内部部材のボアを通って内部部材の遠位端に隣接して中心ワイヤの遠位端を配置することができるように、内部部材のボアの直径よりも小さい直径を有する細長い可撓性のある中心ワイヤと、中心ワイヤの遠位端に連結され、放射状に圧縮された弾性ばね部材と、伸張された構成では内部部材のボアの直径を超えるように、また、圧縮された構成では中心ワイヤによって内部部材のボア内に適合して配置されるように、非圧縮又は伸張された構成でサイズが決められた圧縮ばね部材とを含む。イオン導電性高分子アクチュエータの高分子電解質層は、(各導電性導管の近位端に更に連結されうる)電流源から複数の導電性導管のうちの少なくとも1つを通って、複数の導電性電極の少なくとも1つの遠位端に連結された複数の電極のうちの少なくとも1つまで伝えられる一又は複数の電気信号の印加に応答して、非対称に変形し、また、中心ワイヤは、内部部材が導入される内腔内の障害物内に、或いは障害物に直接隣接して配置された内部部材によって、内部部材の遠位端に直接隣接するようにばね部材を位置決めするために使用され、更に、ばね部材は、内部部材を後退させることによって内腔内の障害物に係合し、障害物を把持するように圧縮された構成から伸張された構成まで伸張可能であり、一方、圧縮されたばね部材が、内部部材のボアから取り出され、伸張されたばね部材によって把持される障害物内で放射状に圧縮された構成から伸張された構成まで解放されるように、中心ワイヤを内部部材に対して動かないように維持し、これにより、中心ワイヤと内部部材を一緒に内腔から回収することによって、障害物を内腔から回収することができる。一実施形態では、ばね部材は一列に揃えられた複数のコイルを有するコイルばねである。別の実施形態では、ばね部材は、複数の波形又は正弦波形状のワイヤを含み、全体的に管状又は円筒形のばねアセンブリを形成するため、各ワイヤは、波の頂点又はピークの位置で、隣接するワイヤの波の頂点又はピークに連結される。このタイプの伸張可能なばねエレメントは、放射状に圧縮された構成から放射状に伸長した構成まで、一般的に伸張することが理解されるであろう。
【0013】
[0014] 本医療機器の一実施形態は、本医療機器の屈曲可能部分内に配置された電気絶縁層を含む。この絶縁層は、医療機器が内腔又は体内経路内に配置される際に誘導が有利に行えるように、周囲の電極に伝えられる電気信号によって印加される電場に応答して変形するため、高分子電解質層を含み、これに従う可撓性のある絶縁境界層をもたらす。
【0014】
[0015] 高分子電解質層は、電解質(例えば、イオン液体(ionic liquid)であるが、これに限定されるわけではない)及び、フッ素高分子と本質的導電性高分子(intrinsically conducting polymers)からなる群から選択された高分子を含む。医療機器の屈曲可能部分にイオン導電性高分子アクチュエータを提供するために用いられる管状の高分子電解質層を調製する方法の一実施形態は、フッ素高分子と本質的導電性高分子からなる群から選択されたベース材料の分散液を提供すること、基板上に分散液を塗布すること、基板上に高分子膜を形成するため、選択されたベース材料の分散液を硬化すること、マンドレルを提供すること、マンドレルに高分子膜を巻き付けること、熱収縮管を提供すること、熱収縮管を提供すること、高分子膜が巻き付けられたマンドレルの一部を熱収縮管で被覆することを含む。
【0015】
[0016] 高分子電解質層は、例えば、限定するものではないが、電解質(例えば、水又はイオン液体などの溶媒)を含む高分子膜を含みうる。代替的に、高分子電解質は、多孔性のポリビニリデンフルオライド又はポリビニリデンジフルオライド、ビニリデンジフルオライドの重合によって生成された非反応性の高い熱可塑性フッ素高分子を含み、イオン液体又は塩水を含有しうる。代替的に、高分子電解質は、ポリビニリデンフルオライド又はポリビニリデンジフルオライド、プロピレンカーボネート、及びイオン液体によって形成されたゲルを含みうる。
【0016】
[0017] 医療機器の屈曲可能部分にイオン導電性高分子アクチュエータを提供するために用いられる管状の高分子電解質層を調製する方法の一実施形態では、ベース材料の形成に使用するため選択される材料には、フッ素高分子及び/又は本質的導電性高分子が含まれる。例えば、材料は、パーフルオロ化イオノマーであるNafion(登録商標)及びFlemion(登録商標)のうちの1つであってよい。本方法の別の実施形態では、ベース材料の形成に使用するため選択される材料には、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)のうちの1つ、及び/又はそのコポリマーのうちの1つ、例えば、ポリビニリデンジフルオライド-コ-クロロトリフルオロエチレン(P(VDF-CTFE))及びポリビニリデンフルオライド-コ-ヘキサフルオロプロピレン(P(VDF-HFP))のうちの1つが含まれるが、これらはフッ素高分子である。本方法の更に別の実施形態では、ベース材料の形成に使用するため選択される材料には、本質的導電性高分子(ICP)、例えば、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(Ppy)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)及びポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)のうちの1つが含まれる。管状の高分子電解質層を調製する方法の更に別の実施形態では、ベース材料の形成に使用するため選択される材料には、上記に列挙し説明したベース材料のうちの2つ以上の組み合わせが含まれる。
【0017】
[0018] 管状の高分子電解質層を調製する方法の一実施形態には、分散液を形成するため、揮発性溶剤にベース材料を溶かすステップが含まれる。このステップに使用される揮発性溶剤には、限定するものではないが、アセテート、アルコール、クロロフォルム、エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素及びケトンが含まれる。
【0018】
[0019] 管状の高分子電解質層を調製する方法の一実施形態には、選択されたベース材料の分散液を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はガラスのうちの1つからなる固体基板の上に塗布するステップが含まれる。しかしながら、非粘着性の表面を有する他の固体基板で代替してもよい。
【0019】
[0020] 管状の高分子電解質層を調製する方法の一実施形態の第1の例には、10~20wt%のアルコールでNafion(登録商標)の分散液を調製すること、ドクターブレード法を用いて平坦なPTFE基板上に分散液を塗布して、15~25μmの厚みを形成すること、68°F(20°C)で基板上の分散液を硬化すること、176~248°F(80~120°C)で熱処理することにより揮発性溶剤を取り除くこと、Nafion(登録商標)膜をある内径と壁厚を有する管状に巻き上げるため、マンドレルを手動で回転しつつ、基板全体にわたってマンドレルを平行移動することにより、0.025インチ(0.635mm)の外径を有するステンレス鋼マンドレルロッドに得られたNafion(登録商標)膜を巻き取ることが含まれる。
【0020】
[0021] 結果として得られる高分子管の内径と壁厚は、マンドレルのサイズ、Nafion(登録商標)膜の厚み、及び巻き取りステップ中にNafion(登録商標)膜がマンドレルに巻かれる回数に依存する。Nafion(登録商標)膜が巻かれたマンドレルはフッ化エチレンプロピレン(FEP)熱収縮スリーブに適合され、次いで、熱収縮材料の回復温度392~446°F(200~230°C)で加熱される。加熱中、巻かれたNafion(登録商標)膜は、1つの均質な高分子層にリフローされる。冷却後、熱収縮管とマンドレルを取り除くと、Nafion(登録商標)管は巻かれた層の痕跡がない均質な形態を有する。調製されたNafion管の壁厚の許容誤差は、市販の押出Nafion管と同様(±10%)であるが、大きな空間と機器が不可欠となる市販の押出機器を必要とせずに調製される。
【0021】
[0022] 本方法の一実施形態の第2の例は、PVDF管を調製することであり、複数のポリビニリデンジフルオライド-コ-クロロトリフルオロエチレン(P(VDF-CTFE))ペレットを加熱したアセトンに入れ、アセトン内のペレットを約122°F(50°C)で4時間撹拌することを含む。調製された分散液は、ドクターブレード法を用いて平坦なPTFE基板上に塗布される。基板と基板の上に塗布された分散液は68°F(20°C)で30分間硬化され、次いで、PTFE基板から剥がされる。調製されたP(VDF-CTFE)膜は、残留溶剤を除去するため、172°F(80°C)で真空乾燥される。厚み15~25μmで形成されたPVDF膜は、マンドレルを手動で回転し、膜全体にわたってマンドレルを平行移動することによって、0.025インチ(0.635mm)の外径を有するステンレス鋼マンドレルロッドの周囲に巻かれる。PVDF膜が巻かれたマンドレルは、熱収縮高分子管(例えば、フッ化エチレンプロピレン(FEP))に適合され、熱収縮材料の回復温度392~446°F(200~230°C)で加熱される。加熱によって巻かれたPVDF膜の層は、1つの均質な高分子管にリフローされる。PVDF管を除去するため、熱収縮管は冷却後、マンドレルから取り除かれる。
【0022】
[0023] イオン導電性高分子アクチュエータを更に調製するため、調製されたNafion管又はPVDF管は、管の上に金属電極(例えば、プラチナ電極又は金電極)を堆積するように、電気化学プロセスなどの従来の方法を用いて更に処理されうる。次に、導電性ペースト又は導電性導管として機能するレーザー溶接を用いて、ワイヤ(例えば、金ワイヤ)は調製された金属電極に一体化され埋め込まれる。代替的に、一実施形態では、管状のイオン導電性高分子アクチュエータの提供に利用するため、調製されたNafion管又はPVDF管は更に、以下で提示され、更に詳細に説明される新しいリフロー方法を用いて、カーボンベース電極を堆積するように処理されうる。次に、ワイヤ(金ワイヤなど)は更に、導電性導管として機能するように、リフロー中に調製されたカーボンベース電極に一体化され埋め込まれうる。
【0023】
[0024] 一実施形態では、リフロープロセスを用いて、熱収縮管を有する高分子電解質層にカーボンベースの電極を配置することによって、医療機器の管状のイオン導電性高分子アクチュエータを調製する方法が提示される。本方法は、放射状の外壁を有する高分子電解質層を提供すること、揮発性溶剤にカーボンベース導電性粉末を加えた混合物を提供すること、各々が近位端と遠位端を有する複数の導電性導管を提供すること、カーボン電極層を形成するため、高分子電解質層の外壁の上に混合物を塗布すること、各導電性導管の遠位端をカーボン電極層に接触させること、熱収縮管を提供すること、高分子電解質層とその上のカーボン電極層を熱収縮管で覆うこと、及び、イオン導電性高分子アクチュエータを形成するため、高分子電解質層のリフローを引き起こすように熱収縮管を加熱することを含みうる。医療機器の管状のイオン導電性高分子アクチュエータを調製する方法の別の実施形態では、高分子電解質層は更に、電解質に含浸されうる。例えば、電解質は、限定するものではないが、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(EMI-BF4)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMI-TFSI)、或いはこれらの組み合わせを含むイオン液体になりうる。医療機器の管状のイオン導電性高分子アクチュエータを調製する方法の別の実施形態では、カーボン電極層の一部は、得られたカーボンベース電極の電気伝導率を高めるため、一又は複数の金属層で更に覆われる。本書に記載の金属層は、例えば、限定するものではないが、金層、プラチナ層、或いはこれらの組み合わせであってもよい。
【0024】
[0025] 医療機器の管状のイオン導電性高分子アクチュエータを調製する方法の他の実施形態では、カーボンベース導電性粉末は、炭化物由来カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンエアロゲル、グラフェン、或いはこれらの組み合わせであってよい。幾つかの実施形態では、カーボンベース導電性粉末はオプションにより、遷移金属酸化物粉末、金属粉末、或いはこれらの組み合わせなどの充填剤を含みうる。幾つかの実施形態では、カーボンベース導電性粉末は、ブラシ塗装又はスプレー塗装を用いて、高分子電解質層の外表面の上に塗布される。他の実施形態では、カーボン電極層は、熱収縮管の加熱後、複数の電極を形成するため、更に微細加工される。
【0025】
[0026] 医療機器の一実施形態では、屈曲可能部分のイオン導電性高分子アクチュエータに電気信号を印加することによって、屈曲可能部分の屈曲を制御するための電気コントローラが提供される。医療機器の少なくとも1つのイオン導電性高分子アクチュエータを操作するため、導電性導管によって運ばれ、複数の電極に付与される電荷を選択的に制御するように、電気コントローラは、細長い可撓性部分の近位端に設けられ、導電性導管に電気的に接続されうる。別の実施形態では、電気コントローラは、マスターコントローラによって更に指示が与えられる。マスターコントローラは、電気コントローラを介して屈曲の2つの自由度を提供するため、少なくとも1つのイオン導電性高分子アクチュエータに屈曲制御信号を入力するための操作可能な制御部材を含みうる。
【0026】
[0027] 医療機器を操向自在に制御するため、幾つかの実施形態では、医療機器は更に、医療機器(例えば、可撓性のある細長い部材部分)を長さ方向に動かすための駆動アセンブリを備える。駆動アセンブリは、グリップ面を有する第1の回転式駆動部材と、第1の回転式駆動部材のグリップ面に近接して配置されたグリップ面を有する隣接の第2の回転式駆動部材と、第1の回転式駆動部材と第2の回転式駆動部材のうちの少なくとも1つを、制御可能に回転するように連結された少なくとも1つの電動モーターとを含み、第1の回転式駆動部材と第2の回転式駆動部のうちの1つが医療機器を軸方向に動かすように、医療機器は中間に配置され、第1の回転式駆動部材のグリップ面と隣接する第2の回転式駆動部材のグリップ面によって係合される。医療機器の操向自在な制御の一実施形態では、第1の回転式駆動部材の時計回りの回転と隣接する第2の回転式駆動部材の反時計回りの回転は、医療機器を第1の方向に動かし、また、第1の回転式駆動部材の反時計回りの回転と隣接する第2の回転式駆動部材の時計回りの回転は、医療機器を第1の方向とは反対の第2の方向に動かす。別の実施形態では、並進の1つの自由度を提供するため、前進後退制御信号を駆動アセンブリに入力するように、駆動アセンブリはまた、操作可能な制御部材を備えるマスターコントローラによって更に指示が与えられる。幾つかの実施形態では、マスターコントローラは、屈曲制御信号に加えて、前進後退信号を提供しうる。
【0027】
[0028] 医療機器の操向自在な制御の一実施形態では、医療機器は、第1の回転式駆動部材、第2の回転式駆動部材、医療機器が通過する近位ポート、医療機器が通過する遠位ポート、及び医療機器の巻線を保存するための内部空洞を含む密閉された内部部分を有する第1の部分を含むケースを更に備え、ケースは更にモーターを支持する第2の部分を含む。別の実施形態では、ケースの第2の部分とケースの第1の部分は、モーターと第1の回転式部材及び第2の回転式部材のうちの少なくとも1つとが動作可能に係合するように、一方が他方に連結されるように適合されている。他の実施形態では、第1の部分は、例えば、使用後、また、医療機器によって接触した体液によって汚染された後は、使い捨てであってもよい。
【0028】
[0029] 一実施形態では、医療機器を遠隔で制御/位置決めするため、人体の内腔に導入され、動かされるときには、医療機器は更に、マスターコントローラの操作に対応する信号を送信するため、マスターコントローラに連結された送信器、並びに、コントローラの操作に対応するため、送信器によって駆動アセンブリ及び/又は電気コントローラに送信された信号を受信するための駆動アセンブリと電気コントローラに電気的に接続された受信器を備える。
【0029】
[0030] 添付の例示的な図面は、実施形態の更なる理解をもたらし、本願に組み込まれ、本願の一部を構成し、明細書と共に本発明を説明する役割を果たす。添付図面について、以下のように簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】医療機器の延伸可能な作動部を、制御可能に前進後退させるために使用される収納コンポーネント用のケースの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の医療機器の実施形態の作動部の遠位端に配置された細長い可撓性部分と屈曲可能な部分の斜視図である。
【
図3】
図2の作動部の遠位端で、屈曲可能な遠位部分が屈曲モードにあることを示す斜視図である。
【
図4A】
図2及び
図3の屈曲可能な部分の遠位端の断面図で、高分子電解質層の周囲に4つの角度で分散配置された電極に印加された4つの電気信号の第1の選択された組を示している。矢印は、4つの個々の電極に図示した電気信号の組を印加することによって生成される屈曲の方向を示している。
【
図4B】
図4Aの屈曲可能部分の遠位端の断面図で、高分子電解質層の周囲に4つの角度で分散配置された電極に印加された4つの電気信号の第2の選択された組を示している。矢印は4つの個々の電極に図示した電気信号を印加することによって生成される屈曲の方向を示している。
【
図5】長手方向と円周方向の両方で分離された複数の個別の電極を有する一実施形態における、医療機器の作動部の屈曲可能部分と細長い可撓性部分の代替的な実施形態の斜視図である。個々の電極はそれぞれ、電極に電気信号を供給する導電性導管に接続される。
【
図6】
図1~
図4Bの実施形態を利用及び制御するために使用されるシステムとコンポーネントを概略的に示すブロック図である。
【
図7】遠位の屈曲可能部分と細長い可撓性部分を含む、医療機器の一実施形態の延伸可能かつ操向可能な作動部の遠位端での長さ方向の断面図である。
【
図8A】
図1の医療機器の実施形態による、ケース上方部分の斜視図で、内部に配置されているコンポーネントをよりわかりやすく見せるため、ケース上方部分は点線で示されている。
【
図8B】
図1の医療機器の実施形態による、ケース下方部分の斜視図で、内部に配置されているコンポーネントをよりわかりやすく見せるため、ケース下方部分は点線で示されている。
【
図9】
図8Aのケース上方部分と
図8Bのケース下方部分を組み合わせることによって提供される、医療機器の断面立面図である。医療機器はマスターコントローラと無線通信を行っている。
【
図10】
図7A、
図7B、及び
図8に示された医療機器の実施形態を用いて、外科手術を実施する方法のステップを示すフロー図である。
【
図11】医療機器の一実施形態により、作動部の遠位端で屈曲可能部分に曲げを付与する方法を示すフロー図である。
【
図12】作動部とケースを含む医療機器の代替的な実施形態での制御システム構造を示す、
図6のブロック図の修正である。
【
図13】配置された1つの電極に印加された電気信号の時間に対する変動を示すグラフで、他の電極は、医療機器の一実施形態で、作動部の屈曲可能部分の高分子電解質層を取り囲んでいる。
【
図14】医療機器の一実施形態で、作動部の屈曲可能部分の高分子電解質層の中に形成された凹部での、個々の電極の代替的な分散配置を示す断面図である。
【
図15】医療機器の作動部の屈曲可能部分に対する、代替的な構成の断面図である。
【
図16】医療機器の一実施形態の性能を監視する検知部材の使用方法、並びに、医療機器の当該実施形態の性能に対する外力の影響を決定する方法を示すフロー図である。
【
図17】医療機器の作動部を制御可能に前進後退するための、医療機器のケース部分の代替的な実施形態を示す。
【
図18】本書に記載のコンポーネントの位置を見せるために、ガイドバレルを取り除いた代替的なケースの斜視図である。
【
図19】医療機器の本実施形態の作動部のコンポーネントの詳細を見せるために、外部部材の断片を取り除いた医療機器の作動部の細長い可撓性部分の斜視図である。
【
図20】医療機器の作動部の細長い可撓性部分の実施形態の断面図である。細長い可撓性部分は、導電性導管及び金属の強化メッシュ又はブレイドを含みうる。
【
図21】医療機器の作動部の細長い可撓性部分の代替的な実施形態の断面図で、導電性導管の各々は、内腔構造内に埋め込まれ、各導電性導管及びその内腔構造は共に外部部材の材料内に包み込まれている。
【
図22】医療機器の作動部の細長い可撓性部分の代替的な実施形態の断面図で、導電性導管の各々は、外部部材によって囲まれている1つの管状絶縁部材内に電気絶縁されて包み込まれている。
【
図23】作動部とケースを含む医療機器の代替的な実施形態に対する制御システムを示す、
図6及び
図12のブロック図の修正である。
【
図24】医療機器の細長い可撓性部分の内部部材の外表面に接着された、4つの導電性導管の配置を示す
図5の一部の拡大図である。
【
図25】医療機器の代替的な実施形態で、作動部の屈曲可能部分に含まれるイオン導電性高分子アクチュエータの拡大斜視図である。
【
図26】医療機器の一実施形態での作動部の遠位端の図解で、ばねエレメントを内腔内の障害物に隣接して配置するため、放射状に圧縮された構成にあるばね部材は、作動部のボアを通って前進した中心ワイヤに連結されている。
【
図27】作動部及び中心ワイヤと共に障害物を除去するように伸張し、障害物をつかむため、中心ワイヤが動かないように保持しつつ、作動部のボアを引き戻すことによって得られた、伸張した構成のばね部材の図である。
【
図28】
図26及び
図27に示された方法を実装するために使用できる、ばね部材の代替的な実施形態である。
【
図29】
図1の医療機器の別の実施形態で、作動部の遠位端に配置された細長い可撓性部分の斜視図である。
【
図30】
図29の作動部の遠位端で、屈曲可能な遠位部分が屈曲モードにあることを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0063] カテーテル又はガイドワイヤなどの医療機器は、動脈、静脈、咽頭、外耳道、鼻道、尿道、或いはその他多数の内腔又は体内経路のいずれかなどの内腔に、効率よく挿入されるように細長くなりうる。このような細長いカテーテル(マイクロカテーテルとも称される)及びガイドワイヤにより、内科医は、外科的手技や医療手術を実施する際の局所的アクセスを確保するために欠かせない被検者又は患者の切開を回避することによって、回復期間を大幅に短縮ために必要な非侵襲外科手術を実施することができる。本書で使用されているように、「被検者」又は「患者」という用語は、医療機器による医学的介入を受容するものを意味する。ある態様では、患者は人間の患者である。他の態様では、患者はペット動物、競技用動物、飼育動物又は家畜動物である。
【0032】
[0064] 以下の段落は、医療機器を用いて外科手術を行うため、或いは行うことを可能にするために使用することができる医療機器のある種の実施形態、並びに、このような医療機器の準備を可能にするために用いることができる方法について記述している。医療機器の他の実施形態は、本書に添付の特許請求の範囲内にあり、このような実施形態の説明は本発明を限定するものではないことが理解されるであろう。
【0033】
[0065]
図1は、ケース200及び作動部100を有する医療機器10の一実施形態を示す斜視図である。
図1の医療機器10は、ケース200のケース上方部分210とケース下方部分220を含み、医療機器10は更に、ケース200のケース上方部分210から延伸可能な細長い可撓性部分101と、遠位端102に配置される屈曲可能部分110(
図2)とを含む。細長い可撓性部分101は、体(図示せず)の内腔(図示せず)に挿入することができるように十分に細長い内部部材120(
図2)を備える。また、内部部材120は十分に可撓性があり、かつ、作動部100の遠位端102が体(図示せず)の内腔に導入された後、作動部100の細長い可撓性部分101を前方に押す又は駆動することによって、曲がりくねった経路を有する内腔を通って前進することができるように、軸方向には十分に非圧縮性である。作動部100は更に近位端109を含む。医療機器10は、細長い構造体(図示せず)の運動を促進するため、内部ボア140(
図2)を備える屈曲可能部分110を有するマイクロカテーテルであってもよい。一実施形態では、細長い構造体は、近位端109から内部ボア140(
図2)を通って、医療機器10の作動部100の遠位端102まで供給されうる。代替的に、医療機器10は、内部ボア140(例えば、
図29)のない屈曲可能部分110を有するガイドワイヤであってもよい。
【0034】
[0066] オプションにより、作動部100の近位端109は、例えば、結合ソケット又は他の構造体を作動部100の近位端109に固定する際に使用するため、スレッド113などの締結具を含みうる。オプションにより、医療機器10のケース200のケース上方部分210は、ケース200を超えて延びる作動部100の遠位部102に前方方向の向きを付与するためのガイドバレル211を含みうる。
【0035】
[0067]
図2は、
図1の医療機器10(例えば、マイクロカテーテル)の実施形態で、作動部100の遠位端102に配置された細長い可撓性部分101と屈曲可能部分110の斜視図である。作動部100の屈曲可能部分110は、細長い可撓性部分101の内部部材120に隣接し、かつ、角度を分散して配置された複数の通電可能な電極112の中央に配置された高分子電解質層139を備える、イオン導電性高分子アクチュエータを含む。高分子電解質層139の外壁137を取り囲む複数の電極112の各々は、電気信号又は電流が接続された電極112に供給されうる導電性導管130の遠位端131に接続されている。高分子電解質層139は、細長い構造体の遠位端に配置されたエフェクタ又は手術用ツール又は機器を位置決めし、制御及び/又は駆動するために、他の細長い構造体が挿入されるボア140を含む。高分子電解質層139のボア140は、弛緩した、又は通電されていない状態で、軸141に対して中心に位置する。
図2の屈曲可能部分110は、直線モードで示されている。屈曲可能部分110は、以下で更に詳細に説明されるように、複数の電極112の一又は複数に選択的に通電することによって、選択的かつ制御可能に屈曲モードに変形させることができる。
【0036】
[0068] 医療機器10の一実施形態では、
図2の屈曲可能部分110のイオン導電性高分子アクチュエータは、イオン高分子金属複合体(IPMC)アクチュエータである。医療機器10の一実施形態では、イオン導電性高分子アクチュエータは、優れたイオン輸送特性を有するNafion(Nafion(登録商標)はE. I. DuPont de Nemours and Companyから入手可能)のパーフルオロ化イオノマーから作られる高分子電解質層139を備える。代替的に、医療機器10のイオン導電性高分子アクチュエータの他の実施形態は、Aciplex(商標)(東京の旭化成ケミカルズから入手可能)、Flemion(登録商標)(米国ペンシルバニア州エクストンのAGC Chemical Americas, Inc.から入手可能)、又はfumapem(登録商標)Fシリーズ(ドイツ連邦共和国ビーティッヒハイム=ビッシンゲンのFumatech BWT GmbHから入手可能)などのパーフルオロ化イオノマーを含む高分子電解質層139を含みうる。好ましい実施形態では、パーフルオロ化イオノマーはNafion(登録商標)である。
【0037】
[0069] 医療機器10の一実施形態では、導電性導管130は、プラチナ、金、カーボン、これらの合金、或いはこれらの組み合わせのうちの1つを含みうる。他の実施形態では、電極112の材料は、炭化物由来カーボン、カーボンナノチューブ、炭化物由来カーボン又はイオノマーの複合材料、及びカーボンナノチューブとイオノマーの複合材料など、カーボンを含みうる。カーボンベース電極112を高分子電解質層139の上に堆積する一実施形態による方法が、本書の以下で説明される。
【0038】
[0070] 複数の電極112の各々は導電性導管130の遠位端131に接続され、電気信号はこの導管を介して、導管130が接続される電極112に印加されうる。これにより、高分子電解質層139内の金属陽イオンは、印加された電気信号によって決定される方向に移動する。印加された電気信号によって生み出されたこの陽イオンの移動によって、高分子電解質層139はアノードに近接して配置された高分子電解質層139の一部で膨張し、膨張せずに残っている部分の方向に屈曲するか歪む。その結果、イオン導電性高分子アクチュエータの屈曲変形の大きさと方向は、通電する電極を戦略的に選択すること、及び、導電性導管130を通って電極112に印加される電気信号を調整することによって、制御可能である。
【0039】
[0071]
図2に示したように、高分子電解質層139は円形ボア140を含み、複数の電極112は高分子電解質層139の外周に角度を分散して配置される。
【0040】
[0072]
図3は、
図2の作動部100の遠位端102で、屈曲可能部分110が変形している、或いは屈曲モードにあることを示す斜視図である。医療機器10の作動部100の屈曲可能部分110は、高分子電解質層139を変形するため、選択された電極112に電気信号を選択的に印加することによって、
図2に示した直線モードから、
図3の変形又は屈曲モードに駆動されたように描かれている。選択された電極112の通電は、矢印118によって示された外力を加えることによって、屈曲可能部分110の直線モードから屈曲モードへの変形を引き起こす。
【0041】
[0073] 代替的に、複数の電極112の一又は複数に、一又は複数の電気信号を印加することがないのに、作動部100が変形モードにあることが観測される場合には、観察された偏位の大きさは、作動部100に加えられた外力の大きさと方向を決定するのに使用することができる。或いは、代替的に、電極112への既知の電流の印加が、作動部100の屈曲可能部分110の期待された変形の生成に失敗する場合には、期待された変形と(もしあれば)実際の変形との間の差分は、医療機器10の作動部100の遠位端102で、屈曲可能部分110に加えられる外力の大きさの指標として使用することができる。
【0042】
[0074]
図4Aは、
図2及び
図3の作動部100の屈曲可能部分110の遠位端102の断面図で、高分子電解質層139の外壁137の周囲で、円周上に分散配置された4つの電極112に印加された4つの電気信号の第1の組を示している。
図4Aは、矢印118の方向に、作動部100の屈曲可能部分110の屈曲を与えるため、角度を分散して配置された複数の電極112に印加されうる電気信号を示している。
図4Aの屈曲可能部分110の右側と左側の電極112に正電荷を印加し、加えて、
図4Aの最上部の電極112に正電荷を印加し、更に、
図4Aの最下部の電極112に負電荷を印加すると、
図4Aの最上部の電極112に正電荷を印加し、残りの電極112に負電荷を付与したときに起こりうる場合とは、異なる量の変形を引き起こしうることが理解されるであろう。ユーザーは、ユーザーが望む変形を引き起こす複数の電気信号を選択しうることが理解されるであろう。
【0043】
[0075]
図4Bは、
図4Aの延伸可能な作動部100の屈曲可能部分110の遠位端102の断面図で、高分子電解質層139の周囲で、円周上に分散配置された電極112に印加された4つの電気信号の第2の組を示している。
図4Bは、
図4Bの屈曲可能部分110の最上部の電極112と
図4Bの屈曲可能部分110の右側の電極112への正電荷の印加を示しており、また、
図4Bは更に、
図4Bの最下部の電極112と
図4Bの左側の電極112への負電荷の印加を示している。これらの電荷の印加から生ずる高分子電解質層139の変形は、矢印118の方向になる。
【0044】
[0076] 医療機器10(例えば、マイクロカテーテル)の作動部100の屈曲可能部分110の遠位端102は、個別の電極112の各々に付与される電荷を戦略的に制御することにより、複数の方向に、様々な大きさの変形又は偏位で屈曲しうることが、
図4A及び
図4Bから理解されるであろう。
図4A及び
図4Bに示した実施形態は、4つの電極112を含む屈曲可能部分110を図解しているが、医療機器10の作動部100の屈曲可能部分110は、4つよりも少ない又は4つよりも多い数の電極112を含んでもよく、このような他の実施形態は、異なる偏位及び変形方向の能力を有することが理解されるであろう。
【0045】
[0077]
図5は、医療機器10(例えば、マイクロカテーテル)の作動部100の屈曲可能部分110の代替的な実施形態の斜視図である。
図5は、高分子電解質層139の偏位と変形の大きさと方向が、作動部100の屈曲可能部分110の長さに沿った様々な位置に複数の電極112a、112b、112c及び112dを配置することによって、どのように調整されるかを示している。限定するものではないが、例として、
図5の作動部100の屈曲可能部分110は、円周方向及び軸方向に分散配置された16個の電極112a、112b、112c及び112dを含んでもよく、4つの電極112aの第1の組は作動部100の屈曲可能部分110の遠位端102に近接して配置され、4つの電極112bの第2の組は電極112aの第1の組に隣接して配置され、4つの電極112cの第3の組は電極112bの第2の組に隣接して配置され、また、4つの電極112dの第4の組は電極112cの第3の組に隣接して配置される。医療機器10の作動部100の屈曲可能部分110に配置された16個の電極112a、112b、112c及び112d(4つの組)の各々は、各電極に給電電流を供給する16本の導電性導管130a、130b、130c及び130dの1つに接続されている。
図5に示した作動部100の屈曲可能部分110の実施形態は、軸方向に離間された電極112の組の中間での屈曲に対する抵抗が減少するため、屈曲可能部分110の変形を大きくする結果となる。
【0046】
[0078]
図6は、
図1~
図4Bの医療機器10の実施形態での制御システムの構造を概略的に図解するブロック図である。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。医療機器10は、内腔又は体内経路への挿入に適合された作動部100と、作動部100の細長い可撓性部分101と屈曲可能部分110を内腔又は体内経路の中を通って前進させ、作動部100の遠位端102で屈曲可能部分110を選択的に屈曲するための駆動アセンブリ300(
図8A~
図9を参照)を備えるケース200とを含む。
図6は、内腔又は体内経路の中を通って作動部100を前進させる際に使用される駆動アセンブリ300と、導電性導管130によって運ばれ、医療機器10の作動部100の屈曲可能部分110を操作するため複数の電極112に付与される電荷を選択的に制御するための電気コントローラ400とを収容する、ケース200内での制御の相互作用を示している。電気コントローラ400は、ユーザーによるマスターコントローラ500からの入力信号に応答して、電極112に印加される電気信号の値を計算するプロセッサ(図示せず)を含みうる。患者のいる場所以外の場所に置かれうるマスターコントローラ500は、無線で、電話回線で、及び/又はインターネットを介して、
図6の医療機器10のケース200と通信することが示されている。
図6に示された一実施形態では、医療機器10のマスターコントローラ500は、患者(人体)及び医療機器10から遠く離れた外科医(術者又はユーザー)のいる場所に置かれうることが理解されるであろう。当該の実施形態では、医療機器10はマスターコントローラ500を含むが、別の態様では、医療機器10の実施形態はマスターコントローラ500を含まないことがあり、患者と共に、またケース200と共に手術室にいる外科医によって使用されないことがある。マスターコントローラ500は、例えば、電気コントローラ400によって屈曲の2つの自由度を提供するように、屈曲可能部分110の電極112に屈曲制御信号をユーザーが入力できるようにするジョイスティックと、例えば、並進の1つの自由度を提供するように、駆動アセンブリ300に前進後退制御信号をユーザーが入力できるようにするトラックボール又はトラックホイールとを含みうる。
【0047】
[0079]
図7は、医療機器10の延伸可能かつ操向可能な腔内作動部100(例えば、マイクロカテーテル)の長さ方向の断面図で、遠位の屈曲可能部分110と細長い可撓性部分101を含んでいる。
【0048】
[0080]
図7は、高分子電解質層139と周囲を取り巻く複数の電極112を示す。各電極112は、導電性導管130に電気的に連結されている。屈曲可能部分110は、作動部100の内部部材120に隣接し、これに揃えて配置されている。細長い可撓性部分101は、内部部材120、導電性導管130、電極112及び高分子電解質層139を取り囲む保護用の外部部材150を更に備える。保護用の外部部材150は、医療機器10の作動部100が導入されうる内腔又は他の体内経路の内壁に、低摩擦で摺動係合するように適合されている。医療機器10のマイクロカテーテルの一実施形態では、ボア140は、例えば、エフェクタ、切削器具、画像撮影装置(カメラ)、光源、スティント(stint)、スティントレトリーバーなどの手術器具、又は他の幾つかの操作可能な手術器具が、手術中にユーザーによって通される、及び/又は制御される経路を提供する。代替的に、ボア140は、薬剤、放射源又はその他の材料を、内腔又は体内経路を有する人体に正確な配置で注入できるようにする流体路を形成しうる。
図7は、作動部100の細長い可撓性部分101に空のボア140を示しているが、このボア140は複数の用途が意図されている。作動部100のボア140を通って位置決めされ、制御又は導入される手術器具は、屈曲可能部分100に隣接して配置されるエフェクタ、機器、ツール又は他の器具に接続されうることが、更に理解されるであろう。
図6に関連して説明されているような、ボア140に挿入されるワイヤ又は他の伸長した細長いデバイスを位置決めするためのその他のデバイスは、内腔内に作動部100の位置決めに使用されるデバイスの機能を損なうことなく、ボア140内にワイヤ又は他のデバイスを位置決めするために使用されうることが、更に理解されるであろう。
【0049】
[0081]
図8A及び
図8Bは共に、医療機器10の一実施形態の分解斜視図を示している。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。
【0050】
[0082]
図8Aは、
図1の医療機器10の実施形態のケース200(
図1参照)のケース上方部分210の斜視図で、内部に配置されている医療機器10のコンポーネントをよりわかりやすく見せるため、ケース上方部分は点線で示されている。医療機器10の一実施形態では、ケース上方部分210は、患者の内腔又は体内経路に挿入されて汚染され、その後患者の内腔又は体内経路から引き戻される作動部100を含むため、使い捨てであってもよい。
図8Aに示されたケース上方部分210は、作動部100の遠位端102が通るガイドバレル211を含む。ガイドバレル211は、作動部100が前進後退して通過するケース上方部分210の開口部(図示せず)を覆い隠している。同様に、作動部100の近位端109は、開口部115を通過してもよく、或いは開口部115に固定的に配置されてもよい。作動部100の近位端109は更に、手術機器又はツールに関連する結合ソケット又は接続と対になるスレッド113(
図1)を含む。ケース上方部分210内の空洞215は、作動部100の長さで形成された巻線116を保存するために使用されうる。作動部100の巻線116は屈曲可能部分110を含まないが、導電性導管130及び内部部材120(例えば、
図7)を含む。これらは共に、屈曲可能部分110の一部である、或いは隣接しているコンポーネントを供給し、位置決め及び制御を行うために使用される作動部100のコンポーネントである。
図8Aのケース上方部分210は更に、第1の回転式駆動部材330aと隣接する第2の回転式駆動部材330bを含む駆動アセンブリ300を含む。作動部100は、第1の回転式駆動部材330aと隣接する第2の回転式駆動部材330bとの間を通過するように示されている。第1の回転式駆動部材330aの時計回りの回転と隣接する第2の回転式駆動部材330bの反時計回りの回転は、作動部100を患者の内腔又は体内経路からケース200に引き戻し、また、第1の回転式駆動部材330aの反時計回りの回転と隣接する第2の回転式駆動部材330bの時計回りの回転は、作動部100をケース200から患者の内腔又は体内経路に前進させ、作動部100の遠位端102が導入されることが理解されるであろう。
【0051】
[0083]
図8Bは、
図1の医療機器10実施形態でのケース200(
図1参照)のケース下方部分220の斜視図で、内部に配置されている医療機器10のコンポーネントをよりわかりやすく見せるため、ケース上方部分200は点線で示されている。ケース上方部分210が使い捨てである医療機器10の一実施形態では、ケース下方部分220は反復使用されるように適合されてもよく、毎回の使用には、汚染されていないケース下方部分220と、新規の又は修復したケース上方部分210とをペアにすることが必要になる。ケース下方部分220とケース上方部分210をペアにして、組み立てられたケース200の提供を容易にするため、ケース下方部分220の形状は
図8Aのケース上方部分210の形状に対応している。
図8Bのケース下方部分220は、汚染のリスクが低いコンポーネントと、かなりコストが高いため、毎回使用後に修復し、リサイクル及び/又は除染することが有用なコンポーネントとを含む。
【0052】
[0084]
図8Aのケース上方部分210と
図8Bのケース下方部分220を組み立てたときに、関連するコンポーネントが結合できるように、ケース下方部分220の内部又は表面に配置される医療機器10のコンポーネントは、ケース上方部分210の内部又は表面に配置される医療機器10の関連コンポーネントと係合するように配置される。例えば、限定するものではないが、可撓性のある作動部100に係合して動く、
図8Aのケース上方部分210の駆動アセンブリ300はまた、中間ウォームギア320を介してモーター310に係合しうる。モーター310は、
図8Aに示したケース上方部分210の第1の回転式駆動部材330aの中に形成された対応する駆動ソケット(図示せず)に受容されるように配置された駆動金具321を制御可能に回転するため、ウォームギア320を駆動する。
図8A及び
図8Bに示した実施形態では、インターフェースデバイス420は、外科医又は術者(例えば、限定するものではないが、開業医、内科医、手術技師、看護師又は助手、獣医など、他の術者又はユーザーを含む)によって使用されるマスターコントローラ500(
図9)の屈曲可能部分110を用いて、例えば、駆動アセンブリ300を用いて作動部100を前進後退させるための信号、又は作動部100の遠位端102に屈曲をもたらすための信号などの制御信号を医療機器10のケース200が受信できるようにする。
【0053】
[0085]
図9は、
図8Aのケース上方部分210と
図8Bのケース下方部分220の組み立てによって提供される医療機器10の実施形態の断面立面図である。医療機器10の作動部100の巻線116は、ケース200のケース上方部分210の空洞215内に保存される。医療機器10の作動部100は、近位端109から巻線116を経由して、ケース上方部分210のガイドバレル211を超えて延伸する作動部100の遠位端102まで伸びる。
図9は、医療機器10のケース200に対して作動部100を制御可能に前進後退させるため、駆動金具321(
図8B参照)が、第2の回転式駆動部材330bと協働する第1の回転式駆動部材330aのソケット(図示せず)に係合する方法を示している。オプションにより、ケース上方部分210は、作動部100の巻線116を収容する空洞215を、駆動アセンブリ300の第1の回転式駆動部材330aと第2の回転式駆動部材330b(
図8A)を収容する隣接空洞213から分離する空洞壁214を含む。
図9の医療機器10は、ケース下方部分220内に配置され、マスターコントローラ500からコマンド信号を受信するように使用され、作動部110の屈曲可能部分110(例えば、
図2)を曲げるように、複数の電極112(例えば、
図2)に通電するため、作動部100の中の複数の導電性導管130(
図2)に制御電気信号を生成する、電気コントローラ400を更に含む。電気コントローラ400は、ケース下方部分220に配置されたインターフェース402を経由して、ケース上方部分210に配置された電流分配器410に電流をリレーする。電流分配器410は、電気コントローラ400と医療機器10の作動部100との間のインターフェースである。医療機器10の作動部100の近位端109は、電流分配器410と作動部100の固定された近位端109との間に延在する、複数の電気フィーダワイヤ411を保持するケース上方部分210に対して固定されている。フィーダワイヤ411と関連端子を隣接巻線116内に存在しうる汚染源から保護するため、ケース上方部分210の分配器空洞216は密閉されうることが理解されるであろう。
【0054】
[0086]
図9の医療機器の実施形態では、電流を電気コントローラ400から導電性導管130(例えば、
図2)まで供給する複数のフィーダワイヤ411の数は、複数の導電性導管130の数に一致する。インターフェースソケット415は、ケース下方部分220のインターフェース420とケース上方部分210の電流分配器410との中間に配置されうる。一実施形態では、電気コントローラ400は、電気コントローラ400と駆動アセンブリ300に電気的に接続され、電気コントローラ400と駆動アセンブリ300がマスターコントローラ500と無線通信できるようにする無線インターフェースデバイス405を含んでもよい。
【0055】
[0087]
図10は、
図8A及び
図8Bに示された医療機器10の実施形態を用いて、患者の体で手術を行う方法600のステップを示すフロー図である。方法600は、ケース上方部分210とケース下方部分220を組み立ててケース200を形成するステップ610、作動部100の遠位端102を体の内腔に導入するステップ620、駆動アセンブリ300を用いて作動部100を延伸して患者の内腔へ前進させるステップ630、画像撮影装置を用いて作動部100が配置されている内腔又は体内経路の分岐又は屈曲した経路を検出するステップ640、画像撮影装置を用いて観察された分岐又は屈曲した経路を通って、作動部100を所望の方向へ導くため、医療機器10の作動部100の遠位端102で屈曲可能部分110を屈曲するステップ650、及び、作動部100の遠位端102で手術部位に到達するステップ660を含む。
【0056】
[0088] 従来の技法及び医療科学で既知の方法は、医療機器10及び医療機器10の方法と併用してもよい。例えば、限定するものではないが、
図10のステップ640は、外科医に対して、作動部10が導入される体の内腔の「分岐した経路と屈曲した経路を検出する」ことを要求する。より具体的には、医療機器10を用いて
図10の方法を実施する外科医又は術者は、放射線画像、MRI画像、超音波画像、エラストグラフィ、触覚イメージング、光音響イメージング、断層撮影、及びその他の画像撮影技術及び装置を用いて、医療機器10の作動部100の遠位端102が前方に押される際の体の内腔又は体内経路(経路)の画像を見ることができる。画像撮影装置は患者と共に室内に置かれてもよいこと、また、画像撮影装置の出力は、近くにいる外科医又は術者には配線接続を用いて、また、遠隔地の外科医又は術者には、例えば、限定するものではないが、インターネット又は無線通信など遠隔通信を用いて、電気的に送信可能であることが理解されるであろう。
【0057】
[0089]
図11は、医療機器10の一実施形態の制御する方法を、より具体的には、医療機器10(例えば、マイクロカテーテル又はガイドワイヤ)の一実施形態の作動部100の遠位端102で、屈曲可能部分110に屈曲を付与する方法601を説明するフロー図である。また、
図2及び
図9を参照すると、方法601は、無線インターフェースデバイス405を介して、電気コントローラ400によって受信されるマスターコントローラ500を用いた操作信号生成のステップ641と、医療機器10の作動部100の遠位端102での屈曲可能部分110の屈曲の所望の方向と大きさを得るため、複数の電極112の一又は複数に印加すべき電気信号を決定するように電気コントローラ400を使用するステップ642と、医療機器10の作動部100の遠位端102で所望の動きを得るため、導電性導管130を介して、複数の電極112の一又は複数に決定された電気信号が伝導されるように印加するステップ643とを含む。
【0058】
[0090]
図12は、作動部100とケース200(例えば、
図1)を含む医療機器10の代替的な実施形態の制御システム構造を示す
図6のブロック図を修正したものである。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。作動部100は、屈曲可能部分110と細長い可撓性部分101を含む。ケース200は駆動アセンブリ300と電気コントローラ400を含み、更に検知部材117を含む。検知部材117は、複数の電極112の各々で電気信号の変化を検知するため、屈曲可能部分110の複数の電極112に電気的に接続される屈曲可能部分のセンサである。より具体的には、検知部材117は、複数の電極112の各々で電位の変化を監視するため、複数の電極112の各々に個別に電気的に接続されている。したがって、検知部材117は、複数の電極112の各々での電位の経時的な変化に基づいて、屈曲可能部分110の変形を、或いは変形がないことを検出する。
【0059】
[0091] 例えば、限定するものではないが、作動部100の屈曲可能部分110と細長い可撓性部分120は、ケース200の駆動アセンブリ300を用いて前進されるため、検知部材117は、作動部100の屈曲可能部分100が通過する内腔又は体内経路が閉塞しているかどうか、或いは、内腔又は体内経路に作動部100の前進を阻む又は害する屈曲や障害物があるかどうかを検知する。また、電気信号は、電気コントローラ400によって複数の電極112の各々に印加されるため、検知部材117は、複数の電極112の各々で電気信号に関するフィードバックを受信することによって、また、そのフィードバックを複数の電極112の各々に割り当てられた電気信号と比較することによって、電気コントローラ400によって生成された複数の電気信号に対応する意図された屈曲変形が発生したかどうかを判断しうる。
【0060】
[0092] 検知部材117は、各電極112に電気信号を供給する各導電性導管130に、電気的に接続されている。通電された電極112に供給された電気信号の特徴と性質によって、通電された電極112に隣接して配置された高分子電解質層139に付与された変形が損なわれていないと判断するのと全く同じように、高分子電解質層139に作用する外力の方向と大きさを決定するには、高分子電解質層139の実際の変形が隣接する電極に供給される電気信号と比較されうることが理解されるであろう。
【0061】
[0093]
図13は、医療機器10の一実施形態で、作動部100の屈曲可能部分110の高分子電解質層139に印加された電流の経時的な変化を示すグラフである。
図13は、検知部材117を用いて監視された電極112に発生する電気信号の変化を示すグラフである。
図13の実線は、複数の電極112の任意の1つで検知された電気信号の値を示している。
図13の点線は、電気コントローラ400とマスターコントローラ500の入力信号を用いて決定される、所望の方向と所望の大きさで屈曲を生成するため、電極112に印加される電気信号の値を示している。
【0062】
[0094] 検知部材117によって検知された電極電位の変化は、複数の電極112に印加される電気信号と屈曲を制御する電気コントローラ400の両方によって、また、外力によって引き起こされる。したがって、電気コントローラ400がどの程度屈曲制御を行っているかを考慮することによって、検知部材117は屈曲可能部分110に加えられる外力の存在、方向及び大きさを決定するために使用されうる。
図13に示したように、電気信号はt1で示された時刻に電極112に印加される。その結果、検知部材117によって検知された電気信号の値は時刻t1で突然増大する。そのため、検知部材117は、検知された値と電気コントローラ400によって印加された値ΔVthとの間の電気信号の差分、すなわちΔVに基づいて、屈曲可能部分110に加えられうる外力の方向と大きさを決定しうる。
【0063】
[0095] 検知部材117は、検知された値とマスターコントローラ500によって印加された値との差分が現在の閾値ΔVthを超えるかどうかに応じて、加えられた外力の方向及び/又は大きさを決定するように構成されうる。例えば、作動部100は、遠位端102が内腔壁に接触させられるため、或いは、遠位端102が内腔又は体内経路に沿って押圧されて前進する間に摺動摩擦を受けるため、小さな外力にさらされうる。したがって、作動部100の腔内移動中に予測される小さな外力を許容すること、また、外力が加えられているか、閾値に基づいていないかどうかを判断することによって、より大きな外力が加わっていることを検出することは可能である。
【0064】
[0096]
図13は、屈曲時に電極に印加される値と変形により電極で検知された値を同一スケールで示しているが、これは説明を簡略化するためのもので、これらの値は、実際の状況では、実装の位置とワイヤ特性に応じて変化しうる。この場合、ワイヤ特性に適した計算方法を用いることで、外力の適用は屈曲時に加えられる値に基づいて決定することができる。
【0065】
[0097] この例示的な実施形態では屈曲可能部分110に外力検知電極を追加することなく、屈曲制御に用いられる4つの電極112を使用することで外力は検知される。しかしながら、これは一例にすぎず、外力は様々な構造を用いて検知されうる。
【0066】
[0098]
図14は、医療機器10の実施形態で、作動部100の屈曲可能部分110での複数の電極112の代替的な分散配置を示す断面図である。
図14に示された屈曲可能部分110の8つの電極の配置は、電気コントローラ400(図示せず)によって生成される電気信号に応答する4つの(駆動)電極112と、8つの電極が共に配置される屈曲可能部分110の変形を検知するために追加される4つの検知電極112eとを含む。
図14の屈曲可能部分110の実施形態は、電極112と112eを配置するための外壁137を有する高分子電解質層139を含む。
【0067】
[0099]
図15は、医療機器10の一実施形態での、作動部100の屈曲可能部分110に対する代替的な構成の断面図である。
図15は、電極112を配置するための外壁137を有する高分子電解質層139を示す。円周上で隣接した電極112の各ペアの間には、一又は複数の通電された電極112に隣接して配置された高分子電解質層139の変形によって加えられた内力の結果として、作動部100の屈曲可能部分110に加えられた歪みと、医療機器10の作動部100が前進して通過する内腔又は体内経路との物理的な相互作用の結果として、屈曲可能部分110に加えられる外力とを測定する歪みゲージ114がある。
【0068】
[00100]
図16は、医療機器10の一実施形態での性能を監視するために検知部材117を使用する方法と、医療機器10の当該実施形態での性能に及ぼす外力の影響を決定する方法を示すフロー図である。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。検知部材117は、屈曲可能部分110の複数の電極112で検知した電気信号の変化を連続的に監視するために使用されうる。例えば、検知された電気信号の値は、複数の電極112の各々の電位であってよい。
【0069】
[00101] 検知部材117は、ユーザーによる屈曲によって誘導される電気信号の変化を監視しうる。すなわち、検知部材117は、電気コントローラ400又はマスターコントローラ500からユーザーによる屈曲の情報を受信し、検知部材117は次に、屈曲可能部分110の屈曲によって誘導される電気信号の変化を監視する。次いで、検知部材117は、外力と内力による実際の屈曲によって誘導される電気信号の変化を監視し、電気信号の変化と、意図した屈曲を示す切り離された電気信号とを比較する。
【0070】
[00102] 監視中に(屈曲によって誘導される変化に対して予測される)信号の変化が検知されると、検知部材117は、変化が現在の閾値を超えるかどうかを判定し、超える場合には外力が加えられていると判断する。更にこのステップでは、電極112での変化に関する情報を組み合わせることによって、外力の方向又は外力の大きさが計算されうる。
【0071】
[00103] 外力が加えられていることが検出されると、これをユーザーに伝えるステップが実行される。この例示的な実施形態では、検知部材117は外力発生信号をマスターコントローラ500送信してもよく、また、マスターコントローラ500を介して、警告メッセージ、警告音、触覚フィードバックを発してもよい。この場合、検知部材117はマスターコントローラ500を介して、屈曲可能部分110に加えられている外力の方向と大きさの両方についてユーザーに通知し、これによってユーザーは、外力の発生に加えて、作動部100に係合する障害物を越えて前進するためには、屈曲可能部分110をどのように操作するかを判断することができる。作動部100を過剰な力で内腔又は体内経路の中へ進める場合には、接触している体組織に損傷が起こりうることが理解されるであろう。医療機器10の作動部100の屈曲可能部分110に外力が加わっていることを検出する能力により、ユーザーはマスターコントローラ500を介して駆動アセンブリ300を停止或いは減速することができる。
【0072】
[00104]
図1、
図8A、
図8B及び
図9に示した医療機器10の実施形態は、モーター310を含む駆動アセンブリ300、中間ウォームギア320、及び
図8Aに示したケース上方部分210の第1の回転式駆動部材330aに形成された、対応する駆動ソケット(
図8Aには図示せず)に受容されるように位置決めされた駆動金具321を含む。
図8Bに示した第1の回転式駆動部材330aと第2の回転式駆動部材330bは、これらの駆動コンポーネントとそれによって係合する作動部100との間の表面接触の大きさが限定されることが理解されるであろう。
図8Bに示した第1の回転式駆動部材330aと第2の回転式駆動部材330bとの間の表面接触の大きさが限られている結果として、一方では、作動部100が制限され、もう一方では、その結果である作動部100と第1の回転式駆動部材330a及び第2の回転式駆動部材330bとの間での摩擦力も制限される。作動部100が内腔又は体内経路を通る際の移動及び前進の抵抗が十分に大きい場合には、体内で予定した手術を実施するため、作動部100を所望の部位まで円滑かつ制御可能に移動することが困難になりうる。
【0073】
[00105]
図17は、医療機器10の作動部100を制御可能に前進後退させるための、医療機器10のケース201部分の代替的な実施形態を示している。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。
図17に示した医療機器10の実施形態のケース201は、駆動部材431a及び432aと作動部100との間の接触面積を増やし、その結果として、移動抵抗に抗して作動部100を動かすための高い摩擦力をもたらす駆動アセンブリ300を含む。
図17のケース201の駆動アセンブリ300は、ガイドバレル411、モーター310a、一又は複数の中間ウォームギア320aを含み、また、駆動アセンブリ300は、一又は複数のウォームギア320aを介して動作するモーター310aによって操作される。
図8A及び
図8Bに示したケース200と同様に、
図17のケース201は、ケース上方部分211及び、ケース上方部分211に係合して結合するように適合されたケース下方部分221を含む。モーター310a及び一又は複数のウォームギア320aはケース上方部分211内に配置され、1つのウォームギア320aは、ウォームギア320aの底部に配置された駆動金具(
図17には図示せず)が、駆動アセンブリ300の一部である駆動シャフト432上の逆向き形状のソケット(
図17には図示せず)に係合するように配置するため位置決めされている。駆動アセンブリ300は、作動部100がケース下方部分221を通過する際にケース下方部分221を経由する経路の反対側に互いに向かい合うように位置決めされる駆動スプール431a及び432aのペアを含む。駆動スプール431aは第1のベルト433を介して補助スプール431bに連結され、また、駆動スプール432aは第2のベルト434(
図17には図示せず。
図18参照)を介して補助スプール432b(
図17には図示せず。
図18参照)に連結されている。作動部100は、ベルト433と434の間を通過し、ベルト433と434の両方に係合される。作動部100は、駆動スプール431a及び432aを駆動するモーター310aの操作によって、矢印439の方向に制御可能に押し出されるか、(矢印439の反対の方向に)引き戻される。ベルト433及び434と作動部100との間の接触面積は、
図8Aの医療機器10のケース200の駆動アセンブリ300の第1の回転式駆動部材330aと第2の回転式駆動部材330bとの間の接触面積と比較して、
図17に示した医療機器10のケース201の駆動アセンブリ300ではかなり大きいことが理解されるであろう。オプションにより、一方のベルト433及び434と、他方の係合する駆動スプール431a及び432aはそれぞれ、作動部100との滑らない係合を促進するため、一連の溝(又はその他の凹部)及び/又は稜線(又はその他の突起)含みうる。オプションにより、ウォームギア320aのペアは、モーター310aから駆動スプール431a及び431bまでトルクを均等に分散するため、モーターシャフト409の反対側に配置されてもよい。オプションにより、ベルト433及び434の適切な張力の調整及び維持を可能にするテンショナー431cが提供されてもよい。オプションにより、ベルト433及び434と作動部100との間の滑らない摩擦係合を確保して、操縦性を改善し、滑りを防止するため、駆動スプール431a及び431bは共に付勢されて作動部100に係合しうる。オプションにより、
図18に示されるように、駆動スプール431a及び431bのうちの1つは、同じ目的で付勢されて作動部100に係合しうる。
【0074】
[00106]
図18は、
図17の代替的なケース201の斜視図で、内部のコンポーネントの位置を見せるため、ガイドバレル411は取り除かれている。駆動スプール431a及び431bは、
図17の実施形態でもそうであったように、医療機器10の作動部100にまたがっていることがわかる。加えて、
図18の医療機器10のケース201の実施形態は、スロット435によって許容されるように動くため、ケース201の上に配置されたテンショナー437bを含む。
図18に示したテンショナー437bは、ベルト434が滑らずに駆動スプール431bと係合した状態を保つように、ベルト434に係合したテンショナー437bを維持する一又は複数のばね438を用いて、ベルト434と係合するように付勢されていることがわかる。
【0075】
[00107]
図19は、医療機器10の実施形態での作動部100の細長い可撓性部分101の斜視図で、医療機器10のこの実施形態での作動部100の内部の詳細を見せるため、外部部材150は取り除かれている。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。外部部材150は、
図19の右側に示されているが、内部部材120、及び高分子電解質層139の周囲で円周上に分散配置された電極112を含む作動部100の屈曲可能部分110を見せるため、
図19の左側からは取り除かれている。高分子電解質層139が作動して曲がるように、各電極112は、一又は複数の選択された電極112に通電電気信号を供給する導電性導管130に接続されている。
図19は更に、制御と操向自在性を改善するように、作動部100の構造上の剛性と軸方向圧縮抵抗を強化し、ねじり変形に対する抵抗を高めるため、内部部材120と外部部材150と間で放射状に編まれた又は巻かれたワイヤ又はフィラメントを含む強化メッシュ121を示している。強化メッシュ121の構造は変化しうることが理解されるであろう。医療機器10の作動部100の他の実施形態は、ブレイドやメッシュとは対照的に、強化ワイヤを巻いたコイル(図示せず)を含みうる。強化メッシュ121の材料には、限定するものではないが、ステンレス鋼、タングステン又はナイロンが含まれうる。医療機器10の作動部100の一実施形態では、作動部100の屈曲可能部分110に供給される電気信号が通る導電性導管130は、特に、韓国キョンギドにあるMK Electron Co., Ltd.から入手可能な複数の極細ワイヤを含む。これらのワイヤは、25μm又は15μm以下の直径を有し、金、金銀合金又は高い化学安定性を示す他の高導電性金属を含みうる。これらのワイヤは絶縁媒体に埋め込まれてもよく、多層編上構造であってもよい。
【0076】
[00108]
図20は、医療機器10の一実施形態での作動部100の細長い可撓性部分101の一実施形態の断面図である。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。細長い可撓性部分101は内部部材120と強化メッシュ121を含むことが理解されるであろう。絶縁層133は、電気的な短絡を避けるため、強化メッシュ121を導電性導管130から分離するように、強化メッシュの周囲に配置される。
図20に示したように、導電性導管130は断面が円形で、外部部材150と強化メッシュ121との間の絶縁層133内に画定される空間内に形成される。
図20に示した細長い可撓性部分101は更に、導電性導管130を外部部材150から、また、強化メッシュ121からも更に絶縁するため、絶縁被覆134を含む。
【0077】
[00109]
図21は、内部部材120、強化メッシュ121及び導電性導管130を有する医療機器10の一実施形態での、作動部100の細長い可撓性部分101の代替的な実施形態の断面図である。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。
図21の細長い可撓性部分101は、導電性導管130と各導電性導管130の周囲の一又は複数の内腔が共にカプセル化されている、すなわち、外部部材150の材料内に包み込まれていることを示している。本書に記載の内腔135は、外部部材150内に長手方向に配置されうる。各内腔135は、外部部材150と内壁135bを貫通する内部空間を画定する電気的短絡を避けるため、各導電性導管130が各内腔135の外壁135bによって絶縁されうるように、各導電性導管130は、各内腔135の各内部空間を通って、相応に配置されうる。
【0078】
[00110]
図22は、内部部材120、強化メッシュ121及び外部部材150を有する医療機器10の一実施形態での、作動部100の細長い可撓性部分101の代替的な実施形態の断面図である。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。
図22の細長い可撓性部分101の実施形態は更に、導電性導管130を強化メッシュ121から更に絶縁するため、強化メッシュ121を取り囲む管状の絶縁部材127を含む。
【0079】
[00111]
図23は、作動部100とケース200を含む医療機器10の代替的な実施形態での制御システム502を示す
図6及び
図12のブロック図を修正したものである。
図23は、患者の内腔又は体内経路内に導入された作動部100を有する医療機器10を、遠隔制御するためのシステムを示す。本書に記載の医療機器10は、内部ボア140を有するマイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4B)、又は内部ボア140を有さないガイドワイヤ(例えば、
図29)になりうる。システム502は、遠隔のマスターコントローラ500と遠隔通信するローカル通信部材501を備える。外科医、術者又はユーザーは、医療機器のケース200内の駆動アセンブリ300、及び電気信号を屈曲可能部分110まで運ぶ導電性導管130を含む医療機器10を遠隔操作するためのマスターコントローラ500を使用する。
図23は、外科医、術者又はユーザーが、マスターコントローラ500とローカル通信部材501を用いて、離れた場所から医療機器10を遠隔制御しうること、
また、マスターコントローラ500とローカル通信部材501は電話システム、ブルートゥース、802.11無線通信、及び/又はインターネットを介して通信しうることを示している。
【0080】
[00112] 医療機器10の代替的な実施形態では、
図24に関連して説明されるように、導電性導管130は内部部材120の外表面122に放射状に埋め込まれる。
【0081】
[00113]
図24は
図5の一部の拡大図で、内部部材120の外表面の中に形成された、4つの平行に離間されたチャネル123、124、125及び126の中に配置された4つの導電性導管130a、130b、130c及び130dを示している。4つの導電性導管130a、130b、130c及び130dはそれぞれ、隣接するチャネル123、124、125及び126のペアの間に配置された外表面122の障壁部分によって、互いに分離されていることが理解されるであろう。
【0082】
[00114]
図2~
図5及び
図7は、医療機器10の作動部100の屈曲可能部分110の実施形態を示しているが、他の実施形態は、組み立てがより容易であること、或いは、体内の標的とした部位まで腔内医療機器10を操作及び操向するように生成された電気信号に対する応答を改善しうることが理解されるであろう。以下に続く説明は、付加価値をもたらす医療機器10の作動部100の屈曲可能部分110の実施形態に関連している。
【0083】
[00115]
図25は、医療機器10(例えば、マイクロカテーテル)の代替的な実施形態の作動部100の屈曲可能部分100に含まれる、代替的な管状の高分子電解質層139Aの拡大斜視図である。
図25は、高分子電解質層139の外壁137の周囲で円周上に分散配置された複数の電極112を有する屈曲可能部分110を示している。
図25の電極112はそれぞれ、電源(
図25には図示せず)から電極112まで一又は複数の電気信号を送信するための導電性導管130に連結されている。
図25の屈曲可能部分110は、隣接する電極112ペアの中間にある管状の高分子電解質層139Aの外壁137よりも、(弛緩した状態にある)屈曲可能部分110の軸141から放射状に更に離れて延在しうる電極112を含む。
図25に示した屈曲可能部分110の構成は、以下で詳細に説明される屈曲可能部分110を作る方法の結果である。
【0084】
[00116]
図25に示した屈曲可能部分110の実施形態は、米国デラウェア州ウィルミントンのChemours社から入手可能なNafion(登録商標)などの高分子から管状の高分子電解質層139Aを形成することによって実現される。管状の高分子電解質層139Aの外壁137は、例えば、サンドペーパーなどの研磨材を用いて外壁137を粗面化することによって、或いは、例えば、サンドブラストなどの研磨処理によって前処理され、これに続いて、過酸化水素(H
2O
2)溶液及び/又は硫酸(H
2SO
4)溶液などの還元剤、及び脱イオン水を用いて、管状の高分子電解質層139Aの粗面化された外壁137が洗浄される。粗面化され洗浄された管状の高分子電解質層139Aの外壁137は、例えば、プラチナなどの導電性金属によって堆積めっきされる。基板上に固体の被覆又は層を堆積する一般的な方法が使用されうること理解されるであろう。方法の一実施形態では、管状の高分子電解質層139Aの粗面化され洗浄された外壁137の上にプラチナを堆積するため、無電解化学堆積プロセスが用いられる。粗面化され洗浄された管状のイオン導電性高分子139Aは、例えば、[Pt(NH
3)
4]Cl
2を含む溶液などの複合プラチナ塩溶液に、約68oF(20oC)で数時間含浸される。当該含浸ステップは、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)などの還元剤を含む水溶液を用いた還元処理に続いて行われ、還元処理中には、高分子中のプラチナイオンは、管状の高分子電解質層139Aの外壁137で、金属の形態に化学還元される。
【0085】
[00117] 例えば、硫酸などの還元剤と脱イオン水による追加的な洗浄後、最終的に管状の高分子電解質層139Aの外壁137上に形成されるが、現時点では分割されていない金属電極112の厚みを増し、電気伝導率を高めるため、プラチナ被覆された管状の高分子電解質層139Aの外壁137は、従来の電気化学堆積プロセスを用いて、金(Au)の薄層が更にめっきされる。金堆積プロセスに続いて、管状の高分子電解質層139Aの円周方向に連続したスリーブ形状のプラチナ及び金被覆の外壁137は、微細加工プロセスを用いて、円周上に分散配置され分離された4つの金属電極112に分割されうる。より具体的には、マイクロエンドミルを備えたコンピュータ制御のフライス盤は、プラチナ-金材料の薄層、また、オプションにより、管状の高分子電解質層139Aの下層外壁137の小さな部分を、例えば、20~40ミクロンの深さで機械的に取り除くために使用されうる。
図25では、複数の圧延された溝136は、円周上に連続したプラチナ-金電極が複数の金属電極112にあらかじめ分割された場所を示し、各々は導電性導管130に連結されている。
図25は、管状の高分子電解質層139Aの外壁137上にあって、中心で90°ずつ離れ、円周上に分散配置された4つの等しいサイズの金属電極112を示す。
図25に示した屈曲可能部分110は、作動をもたらす導管130を経由して、金属電極112に通電電気信号を選択的に導入することによって操作可能である。最終ステップでは、分割されたプラチナ-金電極112を備えた管状の高分子電解質層139Aは洗浄され、例えば、塩化リチウムなどの金属塩溶液に沈浸することによって、所望の陽イオンの形態(典型的にはリチウムイオンを用いて)にイオン交換される。この最終の沈浸プロセス中に、管状の高分子電解質層139A内の水素イオン(H
+)はリチウムイオン(Li
+)と交換される。
【0086】
[00118] 管状の高分子電解質層139Aの上にカーボンベース電極112を堆積する方法の一実施形態が提示される。一実施形態では、例えば、
図25に示した屈曲可能部分110は、リフロープロセスを用いて、Nafion(登録商標)などの高分子から、管状の高分子電解質層139A上にカーボンベース電極112を形成することによって作られる。リフロープロセスによる電極の一体化は高温処理を含むため、本書で以下に提示される例示的な実施例は、イオン液体などの熱的に安定した不揮発性の電解質に適用できる。
【0087】
[00119] この例示的な実施例では、管状の高分子電解質層139Aは、研磨材(例えば、サンドペーパー)を用いた、或いは研磨処理(例えば、サンドブラスト)による外壁137の粗面化によって前処理され、これに続いて、例えば、限定するものではないが、過酸化水素(H2O2)溶液及び/又は硫酸(H2SO4)溶液などの還元剤、及び脱イオン水を用いて洗浄される。粗面化され洗浄された管状の高分子電解質層139Aは更に、炭化物由来カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンエアロゲル、グラフェン、或いはこれらの組み合わせなどのカーボンベース導電性粉末によって堆積めっきされる。
【0088】
[00120] この例示的な実施例では、一又は複数の電極は次いで、最初に水分を取り除くため、約100°C~約140°Cの真空(30inHg)下で数時間乾燥される洗浄した管状の高分子電解質層139Aに一体化される。その後、乾燥された管状の高分子電解質層139Aは、高温の各イオン液体(限定するものではないが、EMI-BF4又はEMI-TFSIなど)に数時間沈浸することによって、イオン液体に含浸される。
【0089】
[00121] この例示的な実施例では、イオン液体に含浸された後、カーボンベース電極112の層は以下のように、管状の高分子電解質層139Aの上に直接製造される。炭化物由来カーボン(或いは、限定するものではないが、他のカーボン同素体(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンエアロゲル、グラフェン)又はこれらの混合物)の導電性粉末材料は、イソプロパノール(又は同等物)の揮発性溶剤に分散される。代替的な実施形態では、導電性粉末は更に、遷移金属酸化物粉末(MnO2又はRuO2など)又は金属粉末(Pt又はAuなど)などの充填剤を含みうる。アルコール(又はPVDF)中のイオン高分子(Nafion)分散は更に、上述の導電性粉末分散に結合剤として添加される。混合物は超音波浴中の処理によって均質化される。調製された導電性粉末分散は次に、カーボンベース電極112の層を形成するため、従来のブラシ塗装又はスプレー塗装を用いて、管状の高分子電解質層139Aの上に塗布される。揮発性溶剤は、所望の厚みのカーボンベース電極112層が実現された後、穏やかな加熱処理によって蒸発する。
【0090】
[00122] 得られたカーボンベース電極112層の電気伝導率は多くの場合、イオン導電性高分子アクチュエータの正常な電気化学的機能を確保するのに十分である。この例示的な実施例では得られたカーボンベース電極112層の電気伝導率は、得られた層の表面に金マイクロワイヤを更に貼り付けること、或いは得られた層に金ワイヤを埋め込むことによって、高めることができる。更に、高伝導電流コレクタとして機能させるため、管状の高分子電解質層139Aの周囲に厚さ50~150nmの金箔が巻かれることもある。
【0091】
[00123] 次に、この例示的な実施例では、カーボンベース電極112層は、リフロープロセスによって、管状の高分子電解質層139Aと一体化される。この処理では、フッ化エチレンプロピレン(FEP)などの熱収縮高分子管は、管状の高分子電解質層139Aの上に適合され、熱収縮材料の回復温度まで加熱される。熱収縮管によって供給される熱と適用される圧縮負荷は、カーボンベース電極112層と金箔が管状の高分子電解質層139Aと熱的に結合するように、管状の高分子電解質層139Aのイオン高分子のリフローを引き起こしうる。このリフロープロセス後、熱収縮管は除去され、微細加工プロセスを用いて、カーボンベース電極112層は4つの分離されたカーボンベース電極セクタ112に分割される。ここでは、カーボン金混合物の薄層と管状の高分子電解質層139Aを30~50ミクロンの深さで機械的に除去するため、マイクロエンドミルを備えたコンピュータ制御のフライス盤が使用される。この処理は、2つの自由度の作動を実現するため、電力によって独立に制御されうる管状の高分子電解質層139A上で90°ごとに4つの等しい大きさのカーボンベース電極セクタ112を作り出す。
【0092】
[00124] 別の実施例では、例えば、
図25に示した屈曲可能部分110は、リフロープロセスを用いて、Nafion(登録商標)などの高分子から管状の高分子電解質層139A上にカーボンベース電極112を形成することによって作られる。この実施例は、揮発性(水性など)の電解質と不揮発性(イオン液体)電解質の両方によって適用可能なドライアセンブリを対象とする。管状の高分子電解質層139A(DuPont社のNafion(登録商標))は、上述のように提供され前処理される。準備された管状の高分子電解質層139Aの上でカーボンベース電極112層を調製するため、炭化物由来カーボン(又は、他のカーボン同素体(例えば、カーボンナノチューブ、カーボンエアロゲル、グラフェン、或いはこれらの混合物)の導電性粉末材料は、イソプロパノール(又は同等物)の揮発性溶剤に分散される。幾つかの実施形態では、導電性粉末は更に、遷移金属酸化物粉末(限定するものではないが、MnO
2又はRuO
2など)又は金属粉末(限定するものではないが、Pt又はAuなど)を含みうる。
【0093】
[00125] この例示的な実施例では、アルコール(又はPVDF)中のイオン高分子(Nafion)分散は更に、導電性粉末分散に結合剤として添加される。混合物は超音波浴中の処理によって均質化される。次に、調製された導電性粉末分散は、イオン液体含浸後、ブラシ塗装又はスプレー塗装を用いて、管状の高分子電解質層139Aの上に塗布される。揮発性溶剤は、所望の厚みのカーボンベース電極112層が実現されるまで、穏やかに加熱処理されて蒸発する。
【0094】
[00126] 得られた層の電気伝導率は多くの場合、イオン導電性高分子アクチュエータの正常な電気化学的機能を確保するのに十分である。この観点から、この例示的な実施例では、得られたカーボンベース電極112層の電気伝導率は、カーボンベース電極112層の表面に金マイクロワイヤを更に貼り付けること、或いはカーボンベース電極112層に金ワイヤを埋め込むことによって、高めることができる。次に、カーボンベース電極112層は、リフロープロセスによって、管状の高分子電解質層139Aと一体化される。この処理では、フッ化エチレンプロピレン(FEP)などの熱収縮高分子管は、管状の高分子電解質層139Aの上に適合され、熱収縮材料の回復温度まで加熱される。熱収縮管によって供給される熱と適用される圧縮負荷は、カーボンベース電極112層と金箔が管状の高分子電解質層139Aと熱的に結合するように、イオン高分子のリフローを引き起こす。リフロープロセス後、熱収縮管は除去される。加えて、カーボンベース電極112層の電気伝導率は、無電解化学堆積を用いてその上にプラチナ薄層を適用し、その後の金の電気化学的な堆積によって、更に高められうる。
【0095】
[00127] 次に、この例示的な実施例では、得られたカーボンベース電極112層は、微細加工プロセスを用いて、4つの分離された電極セクタ112に分割され、カーボンベース電極112の薄層と管状の高分子電解質層139Aを30~50ミクロンの深さで機械的に除去するため、マイクロエンドミルを備えたコンピュータ制御のフライス盤が使用される。この処理はしたがって、2つの自由度の作動を実現するため、電力によって独立に制御されうる管状の高分子電解質層139Aの表面上で90°ごとに4つの等しい大きさの電極セクタ112を作り出す。
【0096】
[00128] 最終的に、これ例示的な実施例では、電解質は洗浄された管状の高分子電解質膜層139Aに組み込まれる。最初に、水分を取り除くため、管状の高分子電解質層139Aは、100°C~140°Cの真空(30inHg)下で数時間乾燥される。その後、乾燥された管状の高分子電解質層139Aは、高温の各イオン液体(EMI-BF4又はEMI-TFSIなど)に数時間沈浸することによって、イオン液体に含浸される。
【0097】
[00129] 別の実施形態では、上述のように屈曲可能部分110を動かすために使用される医療機器10の細長い可撓性部分(
図1、
図7、
図8A、
図8B、
図17、
図19及び
図25を参照)は、当該技術分野で既知の従来のプロセスを用いて形成可能である。代替的に、内部部材120は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、編み上げワイヤ又はコイル状ワイヤになりうる強化メッシュ121(
図19参照)を含んでもよく、外部部材150は、マンドレルとして使用される細いロッド又はピンの上に配置される。例えば、25μmの小さな直径を有する金ワイヤを含みうる4つの導電性導管130は、絶縁管の長さ方向に沿って整列され、例えば、エポキシ系接着剤、又は、より具体的に、感光性(例えば、紫外線感光性などの)接着剤などの接着剤を用いて硬化される。例えば、フランスのコロンブのArkema社から市販されているPEBAX(登録商標)などの弾性材料を含むシース又はジャケットとして機能する外部部材150は、内部部材120及びそこに接着される導電性導管130の上に覆われている。内部部材120、強化メッシュ121(例えば、編み上げワイヤ又はコイル状ワイヤになりうる)、管状の絶縁部材127及び外部部材150は、リフロープロセスを用いて組み立てられうる。その後、高分子電解質層139と連結するため、内部部材120はその長さが外部部材150よりも左側で長く、結果として、外側部材150の遠位端を越えて更に延在する内部部材120の延長部分となる。高分子電解質層139は内部部材120の延長部分の上に配置され、外部部材150の近位端から遠位端へ移動され、導電性導管112はエポキシを用いて、高分子電解質層139の外側に形成された4つの電極112に接続される。
【0098】
[00130] 高分子電解質層139は、例えば、1ミリメートル(1mm)の外径と、例えば、20ミリメートル(20mm)の長さを有しうる。このサイズは、意図した応用によって変化しうることが理解されるであろう。高分子電解質層139は、高分子電解質層139上に形成された各電極112に付着する4つのばね荷重された尖った接点を有するカスタムメイドのコネクタクランプを用いて、垂直カンチレバー構成で固定されうる(
図25参照)。高分子電解質層139の長さは任意で、最大18mm以上になりうる。クランプからの電気ワイヤはカスタムメイドのコントローラデバイスに接続されうる。例えば、Plugable(登録商標)USB 2.0などのデジタルマイクロスコープカメラは、高分子電解質層139が作動する画像を記録するように使用されうる。
【0099】
[00131] 医療機器10(例えば、マイクロカテーテル)の一実施形態では、内部部材120のボア140は、エフェクタが取り付けられた状態で挿入された中心ワイヤを、体の内腔内の所定の位置までガイドするために使用することができる。例えば、限定するものではないが、
図26は、放射状の内部ボア140、少なくとも1つの高分子電解質層139、内部部材120に揃えて作動部100の遠位端102に隣接して固定された高分子電解質層139を含む作動部100の遠位端102を示している。複数の電極112は、少なくとも1つの高分子電解質層139の周囲で円周上に分散配置され、また、複数の導電性導管130を通って電流源に接続され、その各々は電流源(図示せず)に連結された近位端と、複数の電極112のうちの少なくとも1つに連結された遠位端を有する。近位端(図示せず)、遠位端272、及び両者の間に、作動部100の内部部材120のボア140の直径よりも小さい直径279を有する細長い可撓性の中心ワイヤ270は、中心ワイヤ270の遠位端272に接続されたばね部材271と共に、作動部100のボア140に導入される。ばね部材271は、中心ワイヤ270の遠位端272に接続されたまま、作動部100のボア140への導入が可能になるように、
図26に示された状態で放射状に圧縮されている。中心ワイヤ270の遠位端272を作動部110の遠位端102に隣接して配置するため、ばね部材271が作動部100の遠位端102で屈曲可能部分110のボア140に入るまで、ばね部材271と中心ワイヤ270は作動部100のボア140を通って押圧される。ばね部材271は、中心ワイヤ270の遠位端272に連結された、放射状に圧縮可能な弾性ばね部材271である。ばね部材271は、伸長した構成で作動部100のボア140の直径279を超え、
図26に示したように放射状に圧縮された構成で中心ワイヤ270によって作動部100のボア140内に適合して配置される大きさになっている。中心ワイヤ270は、ばね部材271を矢印291の方向に前進させ、作動部100が内部に配置された状態で、作動部100の遠位端102に直接隣接させるように、或いは、作動部100が導入される血管(内腔)290内の障害物直接隣接させるように利用されうる。
【0100】
[00132] ばね部材271は、作動部100を矢印292の方向に引き戻すことによって、血管290内の障害物293に係合し、これを把持するように伸長可能で、一方、作動部10はばね部材271を取り囲む位置から引き戻され、これによって、ばね部材271が放射状に圧縮された構成から
図27に示した伸長した構成まで解放されるように、中心ワイヤ270は固定された状態で維持される。
図27は、障害物293が伸長したばね部材271によって、どのように把持されるかを示したもので、これにより、中心ワイヤ270と作動部100を一緒に血管290から回収することによって、障害物293を血管290から矢印292の方向に取り出すことができる。
【0101】
[00133] 一実施形態では、ばね部材271は、
図26に示した一連の複数のコイル296を有するコイルばねである。別の実施形態では、ばね部材271は、
図28に示したように複数の波形又は正弦波形状のワイヤ294を含み、
図28に示したように全体的に管状又は円筒形のばねアセンブリ271Aを形成するため、各ワイヤは、波の頂点又はピーク295の位置で、隣接するワイヤ294の波の頂点又はピーク295に連結される。このタイプの伸張可能なばねエレメントは、放射状に圧縮された構成から放射状に伸長した構成まで、一般的に伸張することが理解されるであろう。
【0102】
[00134]
図29は、
図1の医療機器10の別の実施形態で、作動部100の遠位端102に配置された細長い可撓性部分101と屈曲可能部分110の斜視図である。マイクロカテーテル(例えば、
図2~
図4Bに示した医療機器)とは異なり、
図29は、内部ボアのない医療機器10を示しており、例えば、ガイドワイヤになりうる。作動部100の屈曲可能部分110は、細長い可撓性部分101の内部部材120に隣接し、かつ、角度を分散して配置された複数の通電可能な電極112の中央に配置された高分子電解質本体139Bを備える、イオン導電性高分子アクチュエータを含む。高分子電解質本体139Bの外壁138を取り囲む複数の電極112の各々は、電気信号又は電流が接続された電極112に供給されうる導電性導管130の遠位端131に接続されている。ガイドワイヤの機能(例えば、支持、操向、追尾、視認性、触覚フィードバック、潤滑性、及び/又は追随性)を高めるため、細長い可撓性部分101は、オプションにより、内部部材120を取り囲むための保護用外部部材(図示しないが、カバー及び/又は被覆など)を更に備え、一方、らせんコイルはオプションにより保護用外部部材で覆われうることが理解されるであろう。
図29の屈曲可能部分110は直線モードで描かれており、これは、上記で説明したように、複数の電極112の一又は複数に選択的に通電することによって、選択的かつ制御可能に屈曲モードへ変形させることができる。
【0103】
[00135]
図30は、
図29の作動部100の遠位端102で、屈曲可能部分110が変形している、或いは屈曲モードにあることを示す斜視図である。医療機器10の作動部100の屈曲可能部分110は、高分子電解質本体139Bを変形するため、選択された電極112に電気信号を選択的に印加することによって、
図29に示した直線モードから、
図30の変形又は屈曲モードに駆動されたように描かれている。選択された電極112の通電は、矢印118によって示された外力を加えることによって、屈曲可能部分110の直線モードから屈曲モードへの変形を引き起こす。
図29及び
図30の医療機器10は、病変又は血管セグメントに到達するように、血管内をナビゲートするガイドワイヤとして使用されうることが理解されるであろう。医療機器10の屈曲可能部分110が目的の部位に到達すると、ガイドワイヤを通すためのボアを有する更に大きなカテーテルが速やかにあとに続くことができるように、治療部位までの送達を容易にするガイドとして機能する。
【0104】
[00136] 幾つかの実施形態では、医療機器10は、外側の管状層を含む細長い可撓性部分101と、内側の管状層であって、外側の管状層と内側の管状層との間に空間が形成される内側の管状層と、その空間内に配置される支持層であって、内側の管状層の外表面を覆う編み上げワイヤ、コイル又はこれらの組み合わせを含む支持層と、印加された電気信号に応答して所望の方向に屈曲可能なイオン導電性高分子層であって、電解質を含むイオノマー管状層とそのイオノマー管状層に接して配置される複数の電極を含むイオン導電性高分子層を備える、細長い可撓性部分101の遠位端102に設けられた屈曲可能部分110と、細長い可撓性部材の空間に沿ってそれぞれ配置され、電極に電気的に接続される複数のワイヤを含む送信部材とを備える。幾つかの実施態様では、ワイヤは絶縁層を更に含む。
【0105】
[00137] 幾つかの実施態様では、医療機器は、細長い可撓性部材と、細長い可撓性部材の遠位端に設けられ、導電性高分子から作られ、また、印加される電気信号に応答して所望の方向に屈曲可能な屈曲部材であって、イオン導電性高分子から作られる本体とその本体に接して配置される複数の電極を含む屈曲部材とを備える。幾つかの実施形態では、細長い可撓性の部材の外表面と屈曲部材は親水性材料で被覆されている。
【0106】
[00138] 幾つかの実施形態では、屈曲可能部分110は更に、屈曲可能部分110を覆うカプセル化層を含む。幾つかの実施形態では、可撓性の内部部材120と屈曲可能部分110は親水性材料で被覆され、及び/又は、屈曲可能部分110は更に、強化メッシュと導電性導管130との間の管状の絶縁部材127を含む。幾つかの実施形態では、外側の管状部材は更に、複数の絶縁層を含む。幾つかの実施形態では、各ワイヤはそれぞれ各絶縁層を通過する。幾つかの実施形態では、電極は、Pt電極、Au電極、カーボン電極、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、カーボン電極は、炭化物由来カーボン、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭化物由来カーボンとイオノマーの複合材料、及びカーボンナノチューブとイオノマーの複合材料からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、電極はイオン導電性高分子層の円周に沿って配置され、幾つかの実施形態では、4つの電極がある。
【0107】
[00139] 幾つかの実施形態では、機器は更に、導電性導管130を通って電極まで電気信号を送信し、屈曲可能部分110の屈曲を誘導する電気コントローラを備える。幾つかの実施形態では、電気コントローラは、屈曲可能部分110がユーザーの操作に応答するように、ユーザーの操作に応答して電気信号を生成するように構成されている。幾つかの実施形態では、医療機器はカテーテル又はガイドワイヤである。
【0108】
[00140] 幾つかの実施形態では、機器は更に、可撓性のある内部部材120を長さ方向に動かすように構成された駆動アセンブリを備える。幾つかの実施形態では、駆動アセンブリは、駆動アセンブリと表面との間で動作する摩擦ベースの機構を用いて、可撓性のある内部部材120の表面と部分的に接触するように構成されている。
【0109】
[00141] 幾つかの実施形態では、駆動アセンブリは、少なくとも回転式駆動部材330a、330bのペアと、回転式駆動部材330a、330bを動作するモーター310を備える。可撓性のある内部部材120は、回転式駆動部材330a、330bのペアの間を通り、回転式駆動部材330a、330bの動作により長さ方向に沿って移動されるように配置されている。
【0110】
[00142] 幾つかの実施形態では、回転式駆動部材330a、330bのペアは、回転可能に配置されたスプールを含み、また、可撓性のある内部部材120は、スプールの回転によってスプールのペアの間で移動可能なように配置されている。幾つかの実施形態では、駆動システムは、可撓性のある内部部材120のいずれかの側に配置されるベルトのペアを備え、また、可撓性のある内部部材120は、ベルトの操作によってベルトのペアの間で移動可能となるように配置されている。
【0111】
[00143] 幾つかの実施形態では、医療機器は更に、可撓性のある内部部材120を収容するケース上方部分210と、ケース上方部分210から取り外し可能なケース下方部分210とを含み、駆動アセンブリの一部又はすべての部品と電気制御部材はケース下方部分210内に配置される。幾つかの実施形態では、可動部品はケース上方部分210内に配置される。幾つかの実施形態では、駆動アセンブリは更に、ワイヤを電気的に接続し、ケース上方部分210の内部にある電流分配器410と、駆動力をモーター310から可動部品に伝えるための連結部品であって、ケース下方部分210に設けられる連結部品と、電気コントローラに接続されるインターフェースデバイス420であって、ケース下方部分210に設けられるインターフェースデバイス420とを更に備える。幾つかの実施形態では、ケース上方部分210とケース下方部分210は一体に締結されており、ケース下方部分210のウォームギア320は駆動力を伝えるため、ケース上方部分210の可動部品に接続され、また、ケース下方部分210のインターフェースデバイス420は、電気コントローラからワイヤまで電気信号を伝えるため、ケース上方部分210の電流分配器410に接続されている。幾つかの実施形態は更に、屈曲部材に変形が起こったときに、屈曲可能部分110で電気信号を検知する検知部材を備える。幾つかの実施形態では、屈曲可能な検知部材117は、屈曲部材で検知された電気信号の中から、電気制御部材からの屈曲制御によって生成された電気信号を考慮して、屈曲可能部分110に外力が加えられたか否かを判断するように構成されている。幾つかの実施形態は更に、電気コントローラと駆動アセンブリを遠隔的に指示するマスターコントローラを含む。幾つかの実施形態では、医療機器は、可撓性のある内部部材120と屈曲可能部分110が内部に導管を有するカテーテルであり、幾つかの実施形態では、医療機器はガイドワイヤである。幾つかの実施形態では、屈曲可能部分110は更に、屈曲部材を覆うカプセル化層を含む。幾つかの実施形態では、可撓性のある内部部材120と屈曲可能部分110の外表面は親水性材料で被覆されている。幾つかの実施形態では、医療機器のワイヤは更に絶縁層を含む。幾つかの実施形態では、屈曲可能部分110は更に、強化メッシュと導電性導管130との間に管状の絶縁部材127を含む。幾つかの実施形態では、外側の管状部材は更に、複数の絶縁層を含む。幾つかの実施形態では、各ワイヤはそれぞれ各絶縁層を通過する。幾つかの実施形態では、電極は、Pt電極、Au電極、カーボン電極、又はこれらの組み合わせである。幾つかの実施形態では、イオン導電性高分子層は更に、炭化物由来カーボン、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭化物由来カーボンとイオノマーの複合材料、及びカーボンナノチューブとイオノマーの複合材料からなるカーボンベース電極を備える。幾つかの実施形態では、電極は、イオン導電性高分子層の円周に沿って対称に配置されている。幾つかの実施形態では、4つの電極がある。
【0112】
[00144] 幾つかの実施形態では、電気コントローラは電気信号を生成するように構成され、また、駆動アセンブリはユーザーの操作に応答して可撓性のある内部部材120を動かすように構成されている。
【0113】
[00145] 幾つかの実施形態では、患者の体内で医療機器の位置決めを遠隔的に制御するためのシステムは、患者の体内で位置決めされる医療機器を遠隔的に指示するマスターコントローラを備える遠隔制御部材と、遠隔制御部材と医療機器との間で制御信号を通信するように構成されたローカル通信部材とを備える。幾つかの実施形態では、通信部材は、ブルートゥース又はインターネット上の802.11無線通信規格を用いて、情報を無線送信する。幾つかの実施形態では、システム駆動アセンブリは、可撓性のある内部部材120の表面に部分的に接触するように構成されており、駆動アセンブリと表面との間で動作する摩擦ベースの機構に基づいて、可撓性のある内部部材120を動かす。幾つかの実施形態では、システム駆動アセンブリは、少なくとも回転式駆動部材330a、330bのペアと、回転式駆動部材330a、330bを動作するモーター310を備え、可撓性のある内部部材120は、回転式駆動部材330a、330bのペアの間を通過し、回転式駆動部材330a、330bの動作と共に長さ方向に移動するように配置されている。
【0114】
[00146] システムの幾つかの実施形態では、回転式駆動部材330a、330bのペアは、回転可能に配置されるスプールのペアを備え、可撓性のある内部部材120は、スプールの回転によって、スプールのペアの間で回転可能に配置される。システムの幾つかの実施形態では、回転式駆動部材330a、330bのペアは、可撓性のある内部部材120のいずれかの側に配置されるベルトのペアを備え、可撓性のある内部部材120は、ベルトの動作によってベルトのペアの間で移動可能であるように配置される。幾つかの実施形態では、システムは更に、管状の可撓性のある内部部材120を収容するケース上方部分210と、ケース上方部分210から着脱可能であるように配置されるケース下方部分210とを備え、駆動アセンブリの一部又はすべての部品と電気コントローラはケース下方部分210内に配置される。システムの幾つかの実施形態では、回転式駆動部材330a、330bはケース上方部分210内に配置される。システムの幾つかの実施形態では、駆動アセンブリは更に、ワイヤを電気的に接続し、ケース上方部分210の内部にある電流分配器410と、駆動力をモーター310から可動部品に伝えるためのウォームギア320であって、ケース下方部分210に設けられるウォームギア320と、電気コントローラに接続され、第2のモジュール内に設けられるインターフェースデバイス420を備える。システムの幾つかの実施形態では、ケース上方部分210とケース下方部分210は一体に締結されており、ケース下方部分210のウォームギア320は駆動力を伝えるため、ケース上方部分210の回転式駆動部材330a、330bに接続され、また、ケース下方部分210のインターフェースデバイス420は、電気コントローラ/プロセッサからワイヤまで電気信号を伝えるため、ケース上方部分210の電流分配器410に接続されている。
【0115】
[00147] 幾つかの実施形態では、システムは更に、屈曲部材に変形が起こったときに、屈曲可能部分110で電気信号を検知する検知部材117を備える。幾つかの実施形態では、検知部材117は、屈曲部材で検知された電気信号の中から、電気制御部材からの屈曲制御によって生成された電気信号を考慮して、屈曲可能部分110に外力が加えられたか否かを判断するように構成されている。幾つかの実施形態では、システムは更に、電気コントローラと駆動アセンブリを遠隔的に指示するマスターコントローラを含む。幾つかの実施形態では、医療機器は、可撓性のある内部部材120と屈曲可能部分110が内部に導管を有するカテーテルである。幾つかの実施形態では、医療機器はガイドワイヤである。システムの幾つかの実施形態では、屈曲可能部分110は更に、屈曲部材を覆うカプセル化層を含む。システムの幾つかの実施形態では、可撓性のある内部部材120と屈曲可能部分110の外表面は親水性材料で被覆されている。システムの幾つかの実施形態では、ワイヤは更に絶縁層を含む。システムの幾つかの実施形態では、屈曲可能部分110は更に、強化メッシュと導電性導管130との間に管状の絶縁部材127を含む。システムの幾つかの実施形態では、外側の管状部材は更に、複数の絶縁層を含む。システムの幾つかの実施形態では、各ワイヤはそれぞれ各絶縁層を通過する。システムの幾つかの実施形態では、電極は、Pt電極、Au電極、カーボン電極、又はこれらの組み合わせである。システムの幾つかの実施形態では、イオン導電性高分子層は更に、炭化物由来カーボン、カーボンナノチューブ、グラフェン、炭化物由来カーボンとイオノマーの複合材料、及びカーボンナノチューブとイオノマーの複合材料からなるカーボンベース電極を備える。システムの幾つかの実施形態では、電極は、イオン導電性高分子層の円周に沿って対称に配置されている。システムの幾つかの実施形態では、4つの電極がある。システムの幾つかの実施形態では、電気コントローラは電気信号を生成するように構成され、また、駆動アセンブリはユーザーの操作に応答して可撓性のある内部部材120を動かすように構成されている。幾つかの実施形態では、内部部材120は管状である。幾つかの実施形態では、電解質を備えるイオノマー管状層は高分子電解質層139である。幾つかの実施形態では、イオン導電性高分子層は、高分子電解質層139と複数の電極112を備える。
【0116】
[00148] ある実施形態は、イオノマー管の内表面に対して高分子電解質層139とマンドレルを提供するステップと、高分子電解質層139の外表面上にカーボン電極層を形成するステップであって、カーボンベース導電性粉末の混合物は高分子電解質層139の外表面に塗布されるステップと、カーボン電極層の上に導電性導管130を取り付けるステップであって、導電性導管130はそれぞれがカーボン電極層に電気的に接続された複数のワイヤを備えるステップと、カーボン電極層と高分子電解質層139の周囲を覆う熱収縮管の層を提供するステップと、カーボン電極層と高分子電解質層139が熱的に結合されるように、高分子電解質層139からイオン導電性高分子のリフローを引き起こすため熱収縮高分子を加熱するステップと、屈曲部材を形成するため、熱収縮管の層とマンドレルを取り除くステップとを含む、機器の屈曲可能部分110を調製するための方法を含む。
【0117】
[00149] 幾つかの実施形態では、方法は更に、カーボン電極層上にプラチナ層を形成するステップと、プラチナ層の上に金層を形成するステップと、複数のカーボン電極に分割される予定のカーボン電極層を微細加工するステップと、また、屈曲部材の中に電解質を組み込むステップであって、屈曲可能部分110は水分を取り除くため乾燥され、イオン液体に含浸されるステップとを含む。幾つかの実施形態では、プラチナ層は、無電解化学堆積を用いて、カーボン電極層の上に堆積される。幾つかの実施形態では、金層は、電気化学堆積を用いてプラチナ層上に堆積される。幾つかの実施形態では、カーボンベース電極層の薄層と高分子電解質層139を所定の深さで機械的に除去するため、マイクロエンドミルを備えたコンピュータ制御のフライス盤が使用される。幾つかの実施態様では、所定の深さは、約30~約50ミクロンである。
【0118】
[00150] 幾つかの実施形態では、医療機器の屈曲可能部分110を調製するための方法は、少なくともイオン導電性高分子を含む高分子電解質層139の外表面に対してマンドレルを提供するステップと、屈曲部材に電解質を組み込むステップであって、屈曲可能部分110は水分を取り除くため乾燥され、イオン液体に含浸されるステップと、高分子電解質層139の上にカーボン電極を形成するステップであって、少なくともカーボンベースの導電性粉末はカーボン電極の混合物を形成するために、揮発性溶剤に分散され、混合物はカーボン電極層を形成するために、高分子電解質層139に塗布されるステップと、カーボン電極層の上に導電性導管130を取り付けるステップであって、導電性導管130はそれぞれがカーボン電極層に電気的に接続された複数のワイヤを備えるステップと、カーボン電極層と高分子電解質層139の周囲に熱収縮高分子を配置するステップと、高分子電解質層139からイオン導電性高分子のリフローを引き起こすため、熱収縮高分子、カーボン電極層及び高分子電解質層139を加熱するステップであって、カーボン電極と高分子電解質層139とが熱的に結合されるステップと、屈曲部材を形成するため、第1の熱収縮材料とマンドレルを取り除くステップとを含む。幾つかの実施形態は更に、複数のカーボン電極に分割される予定のカーボン電極層を微細加工するステップを含む。他の実施形態では、カーボンベース電極層の薄層と高分子電解質層139を所定の深さで機械的に除去するため、マイクロエンドミルツールを備えたコンピュータ制御のフライス盤が使用されるが、所定の深さとは、例えば、約30~約50ミクロンである。
【0119】
[00151] 幾つかの実施形態では、屈曲可能部分110は水分を取り除くため乾燥され、次にイオン液体に含浸される。幾つかの実施形態では、乾燥は約100°C~約140°Cの真空下で行われる。幾つかの実施形態では、イオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(EMI-BF4)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(EMI-TFSI)、或いはこれらの組み合わせである。幾つかの実施形態では、イオン導電性高分子はイオン高分子金属複合体(IPMC)である。幾つかの実施形態では、イオン高分子金属複合体(IPMC)はNafionである。方法の幾つかの実施形態では、カーボンベース導電性粉末は、炭化物由来カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンエアロゲル、グラフェン、或いはこれらの組み合わせから選択される。幾つかの実施形態では、カーボンベース導電性粉末は更に、遷移金属酸化物粉末、金属粉末、或いはこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、遷移金属酸化物粉末は、MnO2、RuO2、或いはこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、金属粉末は、Pt、Au、或いはこれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、導電性導管130をカーボン電極層の上に取り付けることは更に、高分子電解質層139を覆う金箔層を取り付けるステップを含む。
【0120】
[00152] 方法の幾つかの実施形態では、カーボン電極層を形成するように、高分子電解質層139の外表面上に塗布される混合物を形成するため、少なくとも1つのカーボンベース導電性粉末が揮発性溶剤に分散される。幾つかの実施形態では、混合物は、カーボン電極層を形成するため、ブラシ塗装又はスプレー塗装を用いて、高分子電解質層139の上に塗布される。幾つかの実施態様では、揮発性溶剤はイソプロパノールである。幾つかの実施形態では、高分子電解質層139は、粗面化し、その外表面を洗浄するため前処理される。幾つかの実施形態では、例えば、限定するものではないが、サンドペーパー又はサンドブラストなどの機械的な処理によって、高分子電解質層139の外表面は粗面化される。幾つかの実施形態では、高分子電解質層139の外表面は、過酸化水素(H2O2)溶液、硫酸(H2SO4)溶液、及び脱イオン(DI)水で洗浄される。
【0121】
[00153] 幾つかの実施形態は、機器の屈曲可能部分110に対して管形状の高分子電解質層139を調製するための方法であって、イオン高分子、フッ素高分子、及び本質的導電性高分子からなる群から選択されるベース材料の分散液を提供するステップと、基板に分散液をかけるステップと、分散液を硬化することによって基板上に高分子膜を形成するステップと、基板から取り除かれる高分子膜を更に巻き上げるマンドレルを提供するステップと、マンドレルの周囲に巻かれた高分子膜を覆う熱収縮管を提供するステップと、高分子電解質層139を形成するため、巻き上げられた高分子膜のリフローを引き起こすように熱収縮管を加熱するステップとを含む方法を提供する。幾つかの実施形態では、イオン高分子はNafion又はFlemionを含む。幾つかの実施形態では、フッ素高分子は、ポリビニリデンジフルオライド-コ-クロロトリフルオロエチレン(PVDF)、或いはそのコポリマーを含む。幾つかの実施形態では、コポリマーは、ポリビニリデンジフルオライド-コ-クロロトリフルオロエチレン(P(VDF-CTFE))、又はポリビニリデンフルオライド-コ-ヘキサフルオロプロピレン(P(VDF-HFP))を含む。
【0122】
[00154] 幾つかの実施形態では、本質的導電性高分子は、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(Ppy)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、又はポリ(p-フェニレンスルフィド)(PPS)を含む。幾つかの実施形態では、屈曲可能部分110は導電性高分子アクチュエータである。幾つかの実施態様では、医療機器はカテーテルである。幾つかの実施形態では、基板はPTFEプレート又はガラスプレートである。幾つかの実施形態では、熱収縮管はフッ化エチレンプロピレン(FEP)管である。幾つかの実施形態では、熱収縮管は200~230°Cの温度で加熱される。
【0123】
[00155] 添付した特許請求の範囲に定義される発明の技術的特徴を逸脱せずに、本発明の上述の例示的な実施形態に対して修正例及び変形例が可能であることに留意すべきである。