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特許71265472-オキソ-1-ピロリジニルイミダゾチアジアゾール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】2-オキソ-1-ピロリジニルイミダゾチアジアゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/04 20060101AFI20220819BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20220819BHJP
   A61K 31/433 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C07D513/04 325
C07D513/04 CSP
A61P25/08
A61K31/433
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020531948
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018083498
(87)【国際公開番号】W WO2019115292
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】17206684.7
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プロバン、ローラン
(72)【発明者】
【氏名】シャントー、ユーグ
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-542322(JP,A)
【文献】特表2008-542323(JP,A)
【文献】特表2013-508321(JP,A)
【文献】特表2014-511883(JP,A)
【文献】国際公開第2012/143116(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の2-オキソ-1-ピロリジニルイミダゾチアジアゾール誘導体、それらの幾何異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、同位体及びそれらの混合物、又は医薬的に許容されるそれらの塩、
【化1】

式中、
はC1-4アルキルであり、1つ又は2つ以上のハロゲン置換基により任意に置換されている;
はC1-4アルキルであり、少なくとも1つのヒドロキシ又はアルコキシの置換基を含有している;及び
はメチル(-CDを包含する)である。
【請求項2】
がi-ブチル、n-プロピル、2,2-ジフルオロプロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、又は2-フルオロエチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がn-プロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロプロピル又は2,2,2-トリフルオロエチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がヒドロキシメチル、メトキシメチル、CDO-CH-、CHO-CD-又はCDO-CD-である請求項1~3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
がメトキシメチル、CDO-CH-、CHO-CD-又はCDO-CD-である請求項1~4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
下記の請求項1に記載の化合物、
がn-プロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロプロピル又は2,2,2-トリフルオロエチル部位であり;
がヒドロキシメチル、メトキシメチル、CDO-CH-、CHO-CD-又はCDO-CD-であり;及び
が-CH又は-CDである、化合物。
【請求項7】
下記の請求項6に記載の化合物
がn-プロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロプロピル又は2,2,2-トリフルオロエチルであり;
がメトキシメチル、CDO-CH-、CHO-CD-又は
CDO-CD-であり;及び
がCH又はCDである、化合物。
【請求項8】
下記の化合物を含む群から選択される請求項1~7のいずれかに記載の化合物:
・(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン;
・(4S)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン;
・(4S)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン;
・(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン;
・(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オン;
・(4S)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オン;
・(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-(トリデユーテリオメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン;
・(4R)-(2,2-ジフルオロプロピル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]-チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン;及び
・(4S)-(2,2-ジフルオロプロピル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]-チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン。
【請求項9】
医薬として用いられる請求項1~8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
有効量の請求項1~8のいずれかに記載の化合物とともに医薬的に許容される希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
てんかん、てんかん発作、発作性疾患、けいれん、とくに難治性てんかんの処置に用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緒言
本発明は、2-オキソ-1-ピロリジニルイミダゾチアジアゾール誘導体、それらを調製する方法、それらを含有する医薬組成物及びそれらの医薬品(pharmaceuticals)としての使用に関する。
【0002】
WO2011/047860に開示されている2-オキソ-1-ピロリジニルイミダゾチアジアゾール誘導体の化合物は下記式Aのものである:
【化1】

式中、
はC1-4アルキルであり、少なくとも1つのハロゲン置換基を有している;
はハロゲン、又はC1-4アルキルであり少なくとも1つのハロゲン置換基を有しているもののいずれかである;及び
はC1-4アルキルであり、少なくとも1つのヒドロキシ又はアルコキシの置換基を含有している。
【0003】
発作性疾患(seizure)についての問題が、現在用いえる処置に対する反応が全くないか又は不十分でしかない患者において生じ続けている。かかる患者は処置に対して難治性であり、医学界における大きな課題の対象となっている。推定によれば、約30%のてんかんの患者が難治性の分類群に属している。新たな薬物治療に対する必要性が、このような患者群を特定の対象として存在する。
前記発明の化合物は医薬(medicament)として用いられ、処置の対象はてんかん、てんかん発作、発作性疾患、けいれんであり、とくに難治性てんかん(refractory seizures)である。
【0004】
発明の要約
本発明が提供するのは、新たな2-オキソ-1-ピロリジニルイミダゾチアジアゾール誘導体として下記式(I)を有するもの、それらの幾何異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、アイソトープ及びそれらの混合物、又は医薬的に許容されるそれらの塩である。
【化2】

本発明のさらなる形態について、下記の詳細なる説明により明らかにする。
【0005】
発明の詳細なる説明
本発明は式(I)の2-オキソ-1-ピロリジニルイミダゾチアジアゾール誘導体に関する、
【化3】

式中、
はC1-4アルキルであり、1つ又は2つ以上のハロゲン置換基により任意に置換されている;
はC1-4アルキルであり、少なくとも1つのヒドロキシ又はアルコキシの置換基を含有している;及び
はメチル(-CDを包含する)である。
【0006】
用語「C1-4アルキル」として本明細書において用いられるものは、アルキル基として1個~4個の炭素原子を有するものを示す。本用語により具体的に示される基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチルのような基である。「C1-4アルキル」基はハロゲン、ヒドロキシ又はアルコキシから選択される置換基により置換されていてよい。
用語「ヒドロキシ」として本明細書において用いられるものは、式-OHの基を示す。
用語「アルコキシ」として本明細書において用いられるものは、基-O-Rを示し、Rは本明細書の上記において定義された「C1-4アルキル」を包含する。
用語「ハロゲン」として本明細書において用いられるものは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を示し、好ましくはフッ素原子及び塩素原子示す。
【0007】
本発明はその範囲に、互変異性体、幾何異性体、エナンチオマー、ジアステレオマー、同位体、及び混合物、ならびに医薬的に許容される式(I)の化合物の塩を包含する。例えば、式(I)において「H」と示されている部位は水素、又はその同位体、デューテリウム又はトリチウムであってよい。
【0008】
全体において、RはC1-4アルキルであり、1つ又は2つ以上のハロゲン置換基により任意に置換されている。
一つの態様において、Rは無置換のC1-4アルキルである。この態様の第一の形態において、Rはn-プロピルである。この態様の第二の形態においては、Rはi-ブチルである。
他の態様において、Rは1つ又は2つ以上のハロゲンにより置換されているC1-4アルキルである。この態様の第一の形態において、Rは2-クロロ-2,2-ジフルオロエチルである。この態様の第二の形態においては、Rは2-クロロ-2,2-ジフルオロエチルである。この態様の第三の形態においては、Rは2,2-ジフルオロエチルである。この態様の第四の形態においては、Rは2,2,2-トリフルオロエチルである。この態様の第五の形態においては、Rは2-フルオロエチルである。
【0009】
ある特定の態様において、Rはi-ブチル、n-プロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルである。
他の特定の態様において、Rはi-ブチル、n-プロピル、2,2-ジフルオロプロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、又は2-フルオロエチルである。
好ましい態様においては、Rはn-プロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、又は2,2,2-トリフルオロエチルである。
【0010】
全体において、RはC1-4アルキルであり、少なくとも1つのヒドロキシ又はアルコキシの置換基を含有している。
一つの態様において、Rは少なくとも1つのヒドロキシ置換基を含有しているC1-4アルキルである。この態様の第一の形態において、Rはヒドロキシメチルである。
他の態様において、Rは少なくとも1つのメトキシ置換基を含有しているC1-4アルキルである。この態様の第一の形態において、Rはメトキシメチルである。この態様の第二の形態において、RはCDO-CH-である。この態様の第三の形態において、RはCHO-CD-である。この態様の第四の形態において、RはCDO-CD-である。
さらなる特定の態様において、Rはヒドロキシメチル、メトキシメチル、CDO-CH-、CHO-CD-又はCDO-CD-である。
好ましい態様においては、Rはメトキシメチル、CDO-CH-、CHO-CD-又はCDO-CD-である。
ある特定の態様において、Rはメトキシメチルである。
【0011】
全体において、Rはメチルを表す。一つの形態において、Rは-CHを表す。他の形態においては、Rは-CDを表す。
【0012】
さらなる特定の態様において、式(I)の化合物は、以下を充足するものである:
がn-プロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロプロピル又は2,2,2-トリフルオロエチル部位であり;
がヒドロキシメチル、メトキシメチル、CDO-CH-、CHO-CD-又はCDO-CD-であり;及び
が-CH又は-CDである。
【0013】
さらなる好ましい特定の態様において、式(I)の化合物は、以下充足するものである:
がn-プロピル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジフルオロプロピル又は2,2,2-トリフルオロエチルであり;
がメトキシメチル、CDO-CH-、CHO-CD-又はCDO-CD-であり;及び
が-CH又は-CDである。
【0014】
本発明の特定の化合物は、下記からなる群から選択されるものである:
・(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン;
・(4S)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン;
・(4S)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン;
・(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン;
・(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オン;
・(4S)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オン;
・(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-(トリデユーテリオメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン;
・(4R)-(2,2-ジフルオロプロピル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]-チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン;及び
・(4S)-(2,2-ジフルオロプロピル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]-チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン。
【0015】
本発明の化合物は、てんかん、てんかん発作、発作性疾患、けいれんの処置に有益であり、とくに難治性てんかんの処置に有益である。
【0016】
以下のパラグラフにおいて、種々の化学的部位(chemical moiety)についての定義を与える。該化学的部位により本発明の化合物が構成される。該定義が企図されるのは、本明細書及び特許請求の範囲の全体をとおして一定の適用がなされることである。他に明示の定義により、より広範な定義が与えられる場合はその限りではない。
【0017】
本発明による「薬学的に許容可能な塩」は、式(I)の化合物が形成可能である、治療的に活性のある無毒性の酸又は塩基塩形態を含む。
【0018】
遊離形態で塩基として生じる式(I)の化合物の酸付加塩形態は、無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸又は臭化水素酸など、硫酸、硝酸、リン酸など;又は有機酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロパン酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモ酸などの適切な酸で遊離塩基を処理することによって得られ得る。
【0019】
酸性陽イオンを含有する式(I)の化合物は、適切な有機及び無機塩基での処理によって、それらの治療的に活性がある無毒性の塩基付加塩形態、例えば金属塩又はアミン塩に変換され得る。適切な塩基性塩の形態としては、例えばアンモニウム塩、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基、例えばN-メチル-D-グルカミンとの塩、ヒドラバミン塩、及びアミノ酸、例えばアルギニン、リジンなどとの塩が挙げられる。
【0020】
逆に、この塩形態は、適切な塩基又は酸での処理により遊離形態に変換され得る。
【0021】
式(I)の化合物及びそれらの塩は、本発明の範囲内に含まれる溶媒和物の形態であり得る。このような溶媒和物としては、例えば水和物、アルコラートなどが挙げられる。
【0022】
式(I)の化合物及び/又はそれらの中間体は、それらの構造中に少なくとも1個の不斉中心を有し得る。この不斉中心は、R又はS立体配置で存在し得、このR及びS表示法は、Pure Appl.Chem,45(1976)11-30に記載の規則に対応して使用される。従って、本発明はまた、式(I)の化合物のエナンチオマー及びジアステレオ異性体の形態などの全ての立体異性体又はそれらの混合物(立体異性体の全ての可能な混合物を含む)にも関する。本発明に関して、化合物(単数又は複数)への言及は、特定の異性体形態が具体的に言及されない限り、その可能な異性体形態それぞれであるその化合物及びそれらの混合物を包含することが意図される。「エナンチオマー的に純粋な」という表現は、本明細書中で使用される場合、95%を超えるエナンチオマー過剰率(ee)を有する化合物を指す。
【0023】
本発明による化合物は、異なる多型形態で存在し得る。上記の式では明確に示されないが、このような形態は本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0024】
本発明による式(I)の化合物は、合成有機化学の技術分野の熟練者によって理解されるように、従来の方法と同様に調製され得る。
【0025】
一態様によれば、一般式(I)を有する化合物は、以下のスキームに従って、式(II)の化合物を式(III)のピロリドンと反応させることにより調製され得る。
【化4】

(式中、R、R及びRは、式(I)の化合物について上で定義されたものと同じ定義を有する)。
【0026】
この反応は、高温でスルホランなどの非プロトン性溶媒中で、p-トルエンスルホン酸などの酸を使用して実施され得る。
【0027】
式(II)の化合物は、以下のスキームに従って、式(IV)の化合物をヒドロキシメチル化することにより調製され得る。
【化5】

(式中、R及びRは、式(I)の化合物について上で定義されたものと同じ定義を有する)。
【0028】
この反応は、100℃のジオキサンなどの極性溶媒中、酸性条件下でパラホルムアルデヒドなどのホルミル化剤を使用して、又は当業者にとって公知の何らかの他の方法に従って実施され得る。
【0029】
式(IV)の化合物は、以下のスキームに従って、式(V)の化合物を式(VI)のブロモ誘導体と反応させることによって合成され得る。
【化6】

(式中、R及びRは、式(I)の化合物について上に記載のものと同じ定義を有する)。
【0030】
この反応は、文献に記載されているか又は当業者にとって公知の手順を使用して実施され得る。
【0031】
別の態様によれば、式(I)の化合物は、以下のスキームに従って、式(IV)の化合物と式(VII)のピロリドンとのフリーデル・クラフツ反応により合成され得る。
【化7】

(式中、R、R及びRは、式(I)の化合物について上で定義されたものと同じ定義を有する)。
【0032】
この反応は、100~120℃の範囲の温度で、スルホラン又はジオキサンなどの極性溶媒中、塩化亜鉛又は塩化第二鉄などのルイス酸の存在下で、又は文献に記載されるか若しくは当業者にとって公知の何らかの手順に従い、塩素原子又はp-トルエンスルホニル基などの脱離基(Y)を有する式(VII)のピロリドンを用いて実施され得る。
【0033】
式(VII)の化合物は、国際公開第2006/128693号に記載の方法に従って、又は当業者にとって公知の何らかの他の方法に従って、式(VIII)の対応するピロリドンから調製され得る。
【化8】
【0034】
式(VIII)の化合物の合成は、文献に記載されているか又は当業者にとって公知の手順を使用して実施され得る。
【0035】
式(V)及び式(VI)の化合物は、市販されているか又は当業者にとって公知の何らかの方法に従って合成され得るかのいずれかである。
【0036】
本発明の化合物は、てんかん、てんかん発作、発作性疾患、けいれん、特に難治性てんかんの処置に有益である。
【0037】
従って、別の態様において、本発明は、医薬としての使用のための、上で定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩を提供する。
【0038】
その態様の一形態において、本発明はまた、てんかん、てんかん発作、発作性疾患、けいれん、特に難治性てんかんの処置及び/又は予防での使用のための、上で定義されるような式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩も提供する。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、てんかん、てんかん発作、発作性疾患、けいれんの処置及び/又は予防用の、特に難治性てんかんの処置用の、医薬の製造のための、上で定義されるような式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能なその塩の使用を提供する。
【0040】
最大許容投与量で2つ以上の抗てんかん薬を使用した最先端の処置を12か月以上実施しても患者が発作フリーを達成できない場合、発作性疾患(seizure)は難治性として分類され得る。The International League Against Epilepsy(ILAE)は、薬剤抵抗性てんかんを「持続性の発作フリーを達成するために、2種類の、忍容性があり、適切に選択され、使用されるAEDスケジュール(単独療法として又は併用でのいずれか)の妥当な試行の失敗」と定義してきた。
【0041】
本発明の方法は、上記の状態又は障害に罹患している哺乳動物(好ましくはヒト)への、障害又は状態を緩和又は予防するのに十分な量の本発明による化合物の投与を含む。
【0042】
従って、本発明は、その範囲内で、てんかん、てんかん発作、発作性疾患、けいれんの、特に難治性てんかんの処置及び/又は予防のための方法も含み、これは、上で定義されるような式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を、このような処置の必要がある患者に投与することを含む。
【0043】
本化合物は、何らかの適切な単位剤型で都合よく投与され、これには、単位剤型あたり1~2000mg、好ましくは1~1000mg、より好ましくは1~500mgの活性成分を含有するものが含まれるが限定されない。
【0044】
用語「処置」として本明細書において用いられるものは、治癒的処置及び予防的処置を含む。
【0045】
「治癒的」とは、障害又は状態の現在の症候エピソードの処置における有効性を意味する。
【0046】
「予防的」とは、障害又は状態の発生又は再発の防止を意味する。
【0047】
用語「てんかん」として本明細書において用いられるものは、非誘発性の再発性てんかん発作を特徴とする慢性神経学的状態を指す。てんかん発作は、一連の脳ニューロンの異常及び過剰な同期放電の顕在化であり;その臨床症状は突発性であり、一過性である。用語「てんかん」として本明細書において用いられるものは、発作性疾患(seizure)の周期的な発生を特徴とする脳機能の障害も指し得る。発作性疾患(seizure)は、高熱又は毒素への曝露などの状態によって正常な脳において誘発される場合は「非てんかん性」であり得、又は明らかな誘発なしに惹起される場合は「てんかん」であり得る。
【0048】
用語「発作性疾患(seizure)」として本明細書において用いられるものは、脳ニューロンの集団の異常な、同期的で律動的である発火による行動の一過性変化を指す。
【0049】
本発明のさらなる形態は、薬学的に許容可能な希釈剤又は担体と組み合わせた、式(I)の化合物の有効量を含む医薬組成物を指す。
【0050】
上記の適応症のいずれかにおける活性は、言うまでもなく、特定の適応症に対する関連技術分野の熟練者にとって公知の方法で、及び/又は一般的に臨床試験の設計で、適切な臨床試験を実施することによって決定され得る。
【0051】
疾患を処置するために、式(I)の化合物又はそれらの薬学的に許容可能な塩が有効な1日投与量で使用され、医薬組成物の形態で投与され得る。
【0052】
従って、本発明の別の態様は、医薬的に許容可能な希釈剤又は担体と組み合わせた式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を含む医薬組成物に関する。
【0053】
本発明による医薬組成物を調製するために、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩の1つ以上は、熟練者にとって公知の従来の医薬配合技術に従って医薬希釈剤又は担体と十分に混合される。
【0054】
適切な希釈剤及び担体は、所望の投与経路、例えば経口、直腸、非経口又は鼻腔内経路、に応じて、様々な形態を取り得る。
【0055】
本発明による化合物を含む医薬組成物は、例えば、経口、非経口、即ち静脈内、筋肉内又は皮下に、くも膜下腔内に、経皮(パッチ)で、吸入により、又は鼻腔内に投与され得る。
【0056】
経口投与に適した医薬組成物は、固体又は液体であり得、例えば、錠剤、丸剤、糖衣錠、ゼラチンカプセル、溶液、シロップ、チューインガムなどの形態であり得る。
【0057】
この目的のために、活性成分は、不活性希釈剤又はデンプン若しくはラクトースなどの無毒性の薬学的に許容可能な担体と混合され得る。場合によっては、これらの医薬組成物は、微結晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチンなどの結合剤、アルギン酸などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロース又はサッカリンなどの甘味料又は着色剤又はペパーミント若しくはサリチル酸メチルなどの香味剤も含有し得る。
【0058】
本発明は、制御された方式で活性物質を放出し得る組成物も企図する。
【0059】
非経口投与に使用され得る医薬組成物は、アンプル、使い捨てシリンジ、ガラス又はプラスチックバイアル又は注入容器に一般に含有される水性若しくは油性溶液又は懸濁液などの従来の形態である。
【0060】
活性成分に加えて、これらの溶液又は懸濁液は、場合によっては、滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒など、抗菌剤、例えばベンジルアルコールなど、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなど、キレート剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸など、緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩など、及び浸透圧を調整するための薬剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロースなども含有し得る。
【0061】
これらの剤型は、薬剤師により日常的に使用される方法を使用して調製される。
【0062】
医薬組成物中の活性成分の量は、広範囲の濃度内に入り得、患者の性別、年齢、体重及び医学的状態並びに投与方法などの様々な要因に依存する。従って、経口投与用の組成物中の式(I)の化合物の量は、少なくとも0.5重量%であり、本組成物の総重量に対して最大80重量%であり得る。
【0063】
本発明によれば、式(I)の化合物又は薬学的に許容可能なその塩は、単独で、又は他の薬学的に活性である成分と組み合わせて投与し得ることも分かった。本発明による化合物と組み合わせて使用するために列挙され得るこのようなさらなる化合物の非限定例は、抗ウイルス薬、鎮痙薬(例えばバクロフェン)、制吐薬、抗躁気分安定剤、鎮痛薬(例えばアスピリン、イブプロフェン、パラセタモール)、麻薬性鎮痛薬、局所麻酔薬、オピオイド鎮痛薬、リチウム塩、抗うつ薬(例えばミアンセリン、フルオキセチン、トラゾドン)、三環系抗うつ薬(例えばイミプラミン、デシプラミン)、抗けいれん薬(例えばバルプロ酸、カルバマゼピン、フェニトイン)、統合失調症治療薬(例えばリスペリドン、ハロペリドール)、神経遮断薬、ベンゾジアゼピン(例えばジアゼパム、クロナゼパム)、フェノチアジン(例えばクロルプロマジン)、カルシウムチャネル遮断薬、アンフェタミン、クロニジン、リドカイン、メキシレチン、カプサイシン、カフェイン、クエチアピン、セロトニンアンタゴニスト、β遮断薬、抗不整脈薬、トリプタン、麦角誘導体及びアマンタジンである。
【0064】
経口組成物の場合、1日投与量は、式(I)の化合物1mg~2000mgの範囲である。好ましくは、式(I)の化合物1mg~1000mgの範囲、最も好ましくは1mg~500mgである。
【0065】
非経口投与用の組成物において、存在する式(I)の化合物の量は、少なくとも0.5重量%であり、本組成物の総重量に対して最大33重量%であり得る。好ましい非経口組成物の場合、投与量単位は、式(I)の化合物1mg~2000mgの範囲である。
【0066】
1日用量は、式(I)の化合物の幅広い投与量単位の範囲内に入り得、一般的には1~2000mg、好ましくは1~1000mgの範囲である。ただし、医師の裁量により、個々の要件に応じて、具体的な用量を特定のケースに適合させ得ることが理解されるべきである。
【0067】
本発明によって提供されるSV2タンパク質結合化合物及びその標識付き誘導体は、SV2タンパク質に結合する試験化合物(例えば医薬品の候補)の能力を決定する際に標準物質及び試薬として有用であり得る。
【0068】
本発明によって提供されるSV2タンパク質のリガンドの標識付き誘導体はまた、陽電子放出断層撮影(PET)イメージングのため、又は単一光子放射コンピュータ断層撮影(SPECT)のための放射性トレーサーとしても有用であり得る。
【0069】
従って、本発明は、さらに、医薬品候補の探索のために、特に、本明細書中で示される状態の処置及び予防のために、SV2タンパク質へのより強力な結合に基づき、組織においてSV2タンパク質の位置を特定するために、及び精製SV2タンパク質の特徴を調べるために、化学物質ライブラリをスクリーニングするためのツールとして標識付きリガンドを提供する。SV2タンパク質には、SV2A、SV2B及びSV2Cが含まれ、SV2Aは、抗けいれん薬のレベチラセタム及びその類似体に対する結合部位である。SV2アイソフォームSV2A、SV2B又はSV2Cは、ヒト、ラット又はマウスを含むいずれかの哺乳動物種からの組織、特に脳に由来し得る。或いは、アイソフォームは、ヒト、ラット及びマウスを含むいずれかの哺乳動物種のクローニングバージョンであり、異種発現され、アッセイに使用され得る。スクリーニング方法は、哺乳動物若しくはヒト脳膜などの脳膜、又はSV2タンパク質若しくはその断片、特にSV2A及びSV2Cを発現するがSV2Bを含む細胞株を推定薬剤に曝露し、膜又はタンパク質又は断片及び薬剤を式(I)の標識付き化合物と温置することを含む。この方法はさらに、タンパク質への式(I)の化合物の結合が推定薬剤により阻害されるか否かを決定し、それによりタンパク質に対する結合パートナーを同定することを含む。従って、スクリーニングアッセイにより、SV2タンパク質と相互作用する新しい薬物又は化合物の同定が可能になる。本発明はまた、SV2タンパク質の光活性化可能なリガンドも提供する。
【0070】
標識付きリガンドは、可溶化、精製及びクロマトグラフィー後のSV2タンパク質の立体構造状態を評価するためのツールとしても使用され得る。標識リガンドは、直接的又は間接的に標識され得る。適切な標識の例としては、Hなどの放射性標識、蛍光標識、酵素、ユーロピウム、ビオチン及びこのタイプのアッセイのための他の従来の標識が含まれる。
【0071】
式(I)の標識化合物は、SV2タンパク質(SV2A、SV2B及びSV2C)に結合する新しい化合物又は薬剤をスクリーニングするためのアッセイにおけるプローブとしてこの方法において有用である。このようなアッセイの態様において、リガンドは、修飾なしで使用され得るか、又は、例えば検出可能なシグナルを直接若しくは間接的に提供する部分を共有結合若しくは非共有結合により連結することなど、標識することにより、様々な方法で修飾され得る。これらのアッセイのいずれにおいても、材料を直接的又は間接的のいずれかで標識し得る。直接標識のための候補としては、[H]、[14C]、[32P]、[35S]又は[125I]を含むが限定されない放射性標識、ペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼなどの酵素、及び、フルオレセイン又はローダミンを含むが限定されない、蛍光強度、波長シフト又は蛍光偏光の変化を監視可能な蛍光標識などの標識基が挙げられる。間接標識のための候補としては、1つの構成要素のビオチン化と、それに続く上記の標識基の1つにカップリングされるアビジンへの結合又は抗リガンド抗体の使用が挙げられる。本化合物が固体支持体に結合されるべきである場合、本化合物は、スペーサー又はリンカーも含み得る。SV2タンパク質(特にSV2A及びSV2C)への結合について本発明による標識付きリガンドと競合又は相互作用する薬剤又は化合物を同定するために、SV2A又はSV2Cを含有するインタクトな細胞、細胞片若しくは膜断片又はSV2タンパク質全体若しくはその断片を使用し得る。標識付きレベチラセタム又はその類似体若しくは誘導体との温置前に、それと同時に、又はその後に、薬剤又は化合物を細胞、膜、SV2タンパク質又は断片と温置し得る。レベチラセタムの結合又はSV2タンパク質又はその断片へのその誘導体又は類似体の結合を監視するハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイを含め、何らかの利用可能な形式でアッセイを改変又は準備し得る。化合物のライブラリを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所定の期間に調査される化合物の数を最大化するために、ハイスループットアッセイが望ましい。このようなスクリーニングアッセイは、インタクトな細胞、SV2を含有する細胞片若しくは膜断片並びに無細胞又は膜不含系、例えば精製若しくは半精製タンパク質により得られ得るものなど、を使用し得る。SV2又は精製SV2タンパク質及びペプチドを含有する膜断片を用いたアッセイの長所は、試験化合物の細胞毒性及び/又はバイオアベイラビリティの影響が一般的に無視され得ることであり、このアッセイは代わりに、例えば2個の分子間の結合の阻害において顕在化し得るので、分子標的に対する薬物の効果に主に焦点を当てている。本アッセイは、SV2又はSV2断片への本発明による標識付きリガンドの結合、又はSV2若しくはSV2タンパク質断片への標識付きレベチラセタム又はその誘導体若しくは類似体の結合を阻害するための試験薬剤又は化合物の能力を検出するために組み立てられ得る。複合体形成の阻害は、ろ過アッセイ、Flashplates(Perkin Elmer)、シンチレーション近接アッセイ(SPA、GE)などの様々な技術により検出され得る。ハイスループットスクリーニング(HTS)に対して、生体膜で被覆されたミクロスフェア又は生体膜で被覆されたフラッシュプレートを使用するシンチレーション近接アッセイは、分離又は洗浄段階を必要としない強力な方法である。
【0072】
治療での使用のために化合物を開発する際に直面し得る問題は、本発明の化合物(ビクティム薬物(victim drug)と一緒に同時投与され得る、特定の化合物(パーペトレーター薬物(perpetrator drug))の、CYP450酵素、特にCYP3A4/5を誘発する能力である。パーペトレーター薬物(perpetrator drug)によるこのような酵素の誘導は、主にCYP450酵素及び特にCYP3A4/5によって代謝される場合、ビクティム薬物(victim drug)の曝露に影響を与え得、それによりそれらの有効性プロファイルが変化する可能性がある。従って、CYP3A4/5酵素による代謝に対する可能性が限定的である化合物を開発することが望ましい。
【0073】
本発明による化合物の総代謝に対するCYP3A4/5の寄与は、アザムリンなどの選択的CYP3A4/5阻害剤の非存在下と存在下とでのヒト肝細胞クリアランス間の比率を計算することにより評価されてきた。
【0074】
本特許出願に記載のプロトコールに従ってこのアッセイで試験する場合、本発明による化合物は、CYP3A4/5(Fm,CYP3A4/5)によって代謝される分画が通常40%よりも低く、従ってCYP450誘導因子と同時投与される場合、薬物と薬物との相互作用に対するリスクが最小限に抑えられる。
【0075】
さらに、本発明による化合物が低い固有クリアランスを示すことは有益であり得る。
【0076】
実験セクション
略語/繰り返し使用される試薬
Ac:アセチル
ACN:アセトニトリル
ブライン:塩化ナトリウム飽和水溶液
nBu:n-ブチル
tBu:tert-ブチル
Bz:ベンゾイル
CV:カラム体積
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
Et:エチル
EtOH:エタノール
EtO:ジエチルエーテル
EtOAc:酢酸エチル
h:時間
HPLC:高圧液体クロマトグラフィー
LC:液体クロマトグラフィー
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
MeOH:メタノール
min.:分
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
NMR:核磁気共鳴
iPrOH:イソプロパノール
PTSA:p-トルエンスルホン酸
RT:室温
SFC:超臨界流体クロマトグラフィー
THF:テトラヒドロフラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
【0077】
分析方法
空気又は湿気に感受性がある試薬を含む反応は全て、乾燥溶媒及びガラス器具を使用して、窒素又はアルゴン雰囲気下で実施した。マイクロ波照射を必要とする実験は、オペレーティングソフトウェアのバージョン2.0にアップグレードされたBiotage Initiator Sixtyマイクロ波オーブンにおいて実施する。できる限り早く必要な温度に到達するように実験を行う(最大照射力:400W、外部冷却なし)。市販の溶媒及び試薬は一般的に、適宜、無水溶媒(一般的にはAldrich Chemical CompanyのSure-Seal(商標)製品又はACROS OrganicsのAcroSeal(商標))を含め、さらに精製せずに使用した。一般に、反応後に、薄層クロマトグラフィー、HPLC又は質量分析を行った。
【0078】
HPLC分析は、Waters XBridge MS C18、5pm、150X4.6mmカラムを搭載したAgilent 1100シリーズHPLCシステムを使用して実施する。勾配は、6分間で100%溶媒A(水/ACN/ギ酸アンモニウム溶液85/5/10(v/v/v))から100%溶媒B(水/ACN/ギ酸アンモニウム溶液5/85/10(v/v/v)で行い、100%Bで5分間保持する。流速は、8mL/分で6分間に設定し、次に、3mL/分で2分間上昇させ、3mL/分で3分間保持する。APIソースの直前に、1/25のスプリットを使用する。クロマトグラフィーを45℃で行う。ギ酸アンモニウム溶液(pH約8.5)は、水(1L)中でギ酸アンモニウム(630mg)を溶解させ、30%水酸化アンモニウム(500μL)を添加することにより調製する。
【0079】
異なる分析条件が使用される場合、LCデータについて異なる保持時間が得られ得ることは、当業者にとって明らかであろう。
【0080】
LCMSモードでの質量分析測定は次のように実行する:
-塩基性溶出の場合、分析は以下を使用して実施する:
【0081】
LCMS分析に対して、QDA Watersの単純な(simple)四重極質量分析計を使用する。この分光計には、ESI光源及びダイオードアレイ検出器(200~400nm)付きのUPLC Acquity Hclassが備えられる。塩基性溶出によりポジティブモードでm/z70~800のフルMSスキャンでデータを取得する。塩基性溶出のためにWaters Acquity UPLC BEHC18 1.7μm(2.1x50mm)カラムにおいて45℃で逆相分離を実施する。勾配溶出は、水/ACN/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)(溶媒A)及びACN/水/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)(溶媒B)で行う。注入体積:1μL。MSでフルフロー。
【表1】

【表2】

-酸性溶出の場合、分析は以下を使用して実施する:
【0082】
LCMS分析に対して、QDA Watersの単純な(simple)四重極質量分析計を使用する。この分光計には、ESI光源及びダイオードアレイ検出器(200~400nm)付きのUPLC Acquity Hclassが備えられる。酸性溶出によりポジティブモードでm/z70~800のフルMSスキャンでデータを取得する。逆相分離は、酸性溶出用のWaters Acquity UPLC HSS T3 1.8μm(2.1x50mm)カラムにおいて45℃で実行する。勾配溶出は、水/ACN/TFA(95/5/0.5mL/L)(溶媒A)及びACN(溶媒B)で行う。注入体積:1μL。MSでフルフロー。
【表3】

【表4】
【0083】
順相クロマトグラフィー、(酸性又は塩基性)逆相クロマトグラフィー、キラル分離又は再結晶によって粗製物質を精製し得る。
【0084】
通常の逆相クロマトグラフィーは、シリカゲルカラム(100:200メッシュシリカゲル又はPuriflash(登録商標)-50SIHC-JPカラム、Interchimより)を使用して実施する。
【0085】
分取逆相クロマトグラフィーは次のように実施する:
-LCMS精製については、SQD又はQM Watersトリプル四重極質量分析計を使用したLCMS精製(基本モード、LCMS prep)を使用する。この分光計には、ESI光源及びダイオードアレイ検出器(210~400nm)付きのPrep LC controller Watersクオータナリポンプが備えられる。
【0086】
MSパラメータ:ESIキャピラリー電圧3kV。コーン及び引き出し電圧10。ソースブロック温度120℃。脱溶媒和温度300℃。コーンガス流量30L/h(窒素)、脱溶媒和気体流量650L/h。酸性又は塩基性溶出によりポジティブモードでm/z100~700のフルMSスキャンでデータを取得する。
【0087】
LCパラメータ:逆相分離は、XBridge prep OBD C18カラム(5μm、30x50mm)でrtにて実施する(塩基性溶出)。勾配溶出は、水(溶媒A)、ACN(溶媒B)、水中重炭酸アンモニウム8g/L+500μL/L NHOH30%(溶媒C)(pH約8.5)で行う。HPLC流量:35mL/分~60mL/分、注入体積:1mL。スプリット比はMSに対して+/-1/6000に設定する。
【表5】
【0088】
分取キラルクロマトグラフィー分離は、液相クロマトグラフィー又は超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)機器を使用して、低級アルコール及びC~Cの直鎖、分岐鎖又は環状アルカンの様々な混合物を360mL/分で使用して行う。溶媒混合液並びにカラムは個々の手順で記載する。
【0089】
製品は通常、最終分析及び生物学的試験への提出前に、真空下で乾燥させた。
【0090】
NMRスペクトルは、Topspin 3.2ソフトウェアを実行するWindows 7 Professionalワークステーション及び5mmの二重共鳴ブロードバンドプローブ(PABBI 1H/19F-BB Z-GRD Z82021/0075)又は1mmトリプル共鳴プローブ(PATXI 1H/D-13C/15N Z-GRD Z868301/004)を備えたBRUKER AVANCEIII 400MHz-Ultrashield NMR分光計で記録する。本化合物は、DMSO-d又はCDCl溶液中、300Kのプローブ温度及び10mg/mLの濃度で試験した。機器は、DMSO-d又はCDClの重水素シグナルでロックされる。化学シフトは、内部標準として取られたTMS(テトラメチルシラン)から低磁場へ、ppmで与える。
【0091】
キュベット(l=1dm)中でPERKIN-ELMER旋光計341において10mg/mLの濃度で、具体的な例で言及する温度にて、589nm(ナトリウムランプ)で旋光度([α])を測定した。
【0092】
以下の例は、式(I)により包含される化合物がどのように合成され得るかを例示する。これらは例示目的でのみ提供され、本発明を限定することを何ら意図しておらず、またそのように解釈されるべきではない。当業者は、本発明の精神又は範囲を超えることなく、以下の例の通例の変更及び改変をなし得ることを理解するであろう。
【0093】
例1.(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン1Aの合成
【化9】

1.1 2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾールIIの合成
100℃でDMF(95mL)中の5-(メトキシメチル)-1,3,4-チアジアゾール-2-アミンI(CAS:15884-86-3、国際公開第2011/047860号、1.0当量、7.0g、48.2mmol)の溶液にDMF(5mL)中のブロモアセトン(1.0当量、4.2mL、46.2mmol、97%純度)の溶液を滴下して添加した。反応混合物を100℃で3時間撹拌した。反応混合物を室温(RT)に冷却し、高真空下で溶媒を蒸発乾固して、褐色油状物質を得た。粗製物をフラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(14CVにわたり、ジクロロメタン中0%~10%メタノールの勾配で、100g KP-SNAPシリカゲルカラム)により精製し、純粋な分画を蒸発乾固し、黄色/橙色の固体として2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾールII(5.0g、25.11mmol)を得た。
収率:52%
【数1】
【0094】
1.2[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メタノールIIIの合成
密閉チューブにおいて、2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾールII(1.0当量、5.0g、25.1mmol)、パラホルムアルデヒド(6.0当量、4.50g、150mmol)及び塩酸の水溶液(4N)(2当量、12.55mL、50.2mmol)を1,4-ジオキサン(12.5mL)中で混合した。混合物を100℃で18時間撹拌し、次に粗製混合物をRTに温め、NaHCOの飽和水溶液をpH=6~7になるまで添加した。水層を酢酸エチルで抽出し(3回)、合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、ろ過し、蒸発乾固した。粗製物をフラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(12CVにわたりジクロロメタン中0%~5%メタノールの勾配で100g KP-SNAPシリカゲルカラム)により精製した。最も純粋な分画を蒸発乾固し、[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メタノールIII(4.0g、18.57mmol)を白色固体として得た。
収率:74%
【数2】
【0095】
1.3(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン1Aの合成
スルホラン(86mL)中の[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メタノールIII(1.0当量、3.65g、17.1mmol)及び(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)ピロリジン-2-オンIV(CAS:1294000-89-7、国際公開第2011/047860号、1.2当量、4.14g、20.5mmol)の混合物にp-トルエンスルホン酸一水和物(1.0当量、3.3g、17.1mmol)を添加し、混合物を110℃で16時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、次に水を添加し、水層をMTBEで抽出した(4回)。合わせた有機層をブラインで洗浄し(4回)、MgSO上で乾燥させ、ろ過し、蒸発乾固した。得られた粗製物をアキラルSFC(Phenomenex SiO Beta 10μm、D=5cm L=34cm、300g/CO/MeOH共溶媒勾配1%~40%/150bar/360mL/分)により精製し、(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン(2.32g、6.12mmol)を褐色油状物質として得た。
収率:36%
【数3】
【0096】
(4S)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン1Bは、[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メタノールIII(1.0当量、700mg、3.3mmol)及びラセミ4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)ピロリジン-2-オンIV-rac(CAS:1294000-88-6、国際公開第2011/047860号、720mg、3.9mmol)から出発して、同じ手順に従い調製した。
【化10】
【0097】
得られた粗製混合物を逆相フラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(SNAP60g/C18カラム、15CVにわたり水中5%~95%アセトニトリルの勾配)により精製した。最も純粋な分画を蒸発乾固して黄色油状物質(650mg)を得て、これをアキラルSFC(DIOL 5μm D=5cm L=25cm 300g、共溶媒メタノール5%)により再精製し、透明な黄色油状物質(220mg)を得た。次に、エナンチオマーの混合物をキラル逆相クロマトグラフィー(AS 50x265、5μm、300g、EtOH/ヘプタン50/50、100mL/分、35℃)により精製し、(4S)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン1B(第2の溶出ピーク、保持時間=18分、83mg、0,217mmol)を透明な油状物質として得た。
収率:6.6%
【数4】

キラルHPLC(AS,EtOH/ヘプタン50/50,30℃,1.5mL/分.):1A:2.01分.;1B:3.02分.
【0098】
例2.(4S)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン2A及び(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン2Bの合成
【化11】

2.1(4S)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール 5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン2A及び(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン2Bの合成 スルホラン(4.7mL)中の[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メタノールIII(1.0当量、200mg、0.94mmol)及び4-プロピルピロリジン-2-オンV(CAS:89895-19-2、1.8当量、214mg、1.68mmol)の混合物にp-トルエンスルホン酸一水和物(1.0当量、178mg、0.94mmol)を添加し、混合物を110℃で16時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、逆相分取HPLC(塩基性条件)により直接精製してベージュ色の固体(130mg)を得て、これに対してアキラルSFC(Princeton 2-エチルピリジン5μm SiO 5cm-200g/CO/MeOH共溶媒、1%~40%/150bar/360mL/分の勾配)により2回目の精製を行い、褐色油状物質(93mg)として予想される化合物を得た。2つのエナンチオマーをキラルSFC(AD50x279mm、CO/MeOH共溶媒10%/360mL/分、30℃)で分離して、(4S)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン2A(31mg、0.096mmol)及び(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-プロピル-ピロリジン-2-オン2B(26mg、0.081mmol)を褐色油状物質として得た。2A及び2Bの絶対立体化学は、(4R)-4-プロピルピロリドン(CAS:930123-37-8;国際公開第2007031263号)から出発して同じ手順に従い合成された2Bの基準試料とのアルファD比較によって明確に評価した。
推定収率:10及び9%
【数5】
【0099】
例3.(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オン3Aの合成
【化12】

3.1(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オン3Aの合成
スルホラン(2.3mL)中の[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メタノールIII(1.0当量、100mg、0.47mmol)及び(4R)-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オンVI(CAS:1294001-34-5、国際公開第2011/47860号、1.8当量、141mg、0.84mmol)の混合物にp-トルエンスルホン酸一水和物(1.0当量、90mg、0.47mmol)を添加し、混合物を110℃で3.5時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、逆相分取HPLC(塩基性条件)により直接精製してベージュ色の固体(125mg)を得て、これに対して逆相分取HPLC(KROMASIL-Eternity XT C18 10μm、ACN/HO/NHOH勾配、30/70/0.1~60/40/0.1)により2回目の精製を行った。最も純粋な分画を蒸発乾固して、(4R)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オン3A(69mg、0.19mmol)を褐色油状物質として得た。
収率:41%
【数6】
【0100】
(4S)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オン3Bは、(4S)-4-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-2-オンVIIから出発して同じ手順に従い調製される。収率:32%
【0101】
例4.(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-(トリデューテリオメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン4
【化13】

4.1 1-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタデューテリオ-プロパン-2-オンVIIIの合成
0℃でメタノール(25mL)中の1,1,1,3,3,3-ヘキサデューテリオプロパン-2-オン(1.0当量、1.5g、23.0mmol)の混合物に臭素(1.0当量、1.2mL、23.0mmol)を滴下して添加し、混合物を0℃で3時間撹拌した。水(10mL)を添加し、反応混合物をRTで一晩撹拌した。水層をジエチルエーテルで抽出し(3回)、合わせた有機層をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、蒸発乾固し(20℃)、1-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタデューテリオ-プロパン-2-オン(2.16g、15.25mmol、65%収率)を淡黄色油状物質として得て、これをさらに分析及び精製せずに次の段階でそのまま使用した。
【0102】
4.2B 2-(メトキシメチル)-6-(トリデューテリオメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾールIXの合成
100℃で、DMF(100mL)中の5-(メトキシメチル)-1,3,4-チアジアゾール-2-アミンI(1.0当量、8.0g、55.1mmol)の溶液にDMF(20mL)中の1-ブロモ-1,1,3,3,3-ペンタデューテリオ-プロパン-2-オンVIII(1.05当量、8.22g、57.9mmol)の溶液を滴下して添加した。反応混合物を110℃で2時間30分撹拌した。次に混合物をRTに冷却し、NaHCOの飽和溶液を添加し、溶媒を蒸発乾固した。次に、得られた粗製物をEtOAc中で希釈し、ろ過し、ろ液を蒸発乾固して、褐色油状物質(9.5g)を得た。粗製物をフラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(14CVにわたり、ジクロロメタン中0%~10%メタノールの勾配で100g KP-SNAPシリカゲルカラム)により精製し、純粋な分画を蒸発乾固し、2-(メトキシメチル)-6-(トリデューテリオメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾールIX(3.05g、15.6mmol)を黄色固体として得た。
収率:28%
【数7】
【0103】
4.3(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-(トリデューテリオメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン4
0℃でジクロロメタン(3mL)中の(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-オンX(CAS:1294000-97-7、国際公開第2011/047860号、1.0当量、150mg、0.70mmol)の混合物に塩化チオニル(3当量、0.317mL、2.16mmol)を滴下して添加し、反応混合物をRTで2時間撹拌した。次に、混合物を蒸発乾固して、橙色の油状物質、主に(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-(クロロメチル)ピロリジン-2-オンXI(CAS:1294001-06-1、国際公開第2011/047860号、160mg、0.69mmol、98.2%収率)を得て、これを精製せずに次の段階で直接使用した。
【0104】
RTで1,4-ジオキサン(3mL)中の得られた化合物(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-(クロロメチル)ピロリジン-2-オンXI(1当量、160mg、0.69mmol)の溶液に、2-(メトキシメチル)-6-(トリデューテリオメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾールIX(1.0当量、130mg、0.69mmol)及び塩化亜鉛(0.1当量、10mg、0.07mmol)を添加した。反応混合物を110℃で18時間撹拌し、次に冷却し、ろ過し、蒸発乾固し、暗色の油状物質を得て、これをフラッシュクロマトグラフィーBiotage Isolera Four(12CVにわたり、ジクロロメタン中0%~10%メタノールの勾配で10gKP-SNAPシリカゲルカラム)により精製した。最も純粋な分画を蒸発乾固し、逆相分取HPLC(KROMASIL-Eternity XT C18 10μm、ACN/HO/NHOH勾配、30/70/0.1~60/40/0.1)により精製し、(4R)-4-(2-クロロ-2,2-ジフルオロ-エチル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-(トリデューテリオメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン4(71mg、0.18mmol)を黄色油状物質として得た。
収率:26%
【数8】
【0105】
例5.4-(2,2-ジフルオロプロピル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]-チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン5A及び5B
【化14】

5.1 4-(2,2-ジフルオロプロピル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]-チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン5A及び5Bの合成
0℃でジクロロメタン(5ml)中の4-(2,2-ジフルオロプロピル)-1-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-オンXII(CAS:1294000-92-2、国際公開第2011/047860号、1.0当量、250mg、1.3mmol)の混合物に、塩化チオニル(3.0当量、260μl、3.6mmol)を添加し、反応物を室温で3時間撹拌した。粗製混合物を濃縮乾固した。得られた黄色油状物質に、1,4-ジオキサン(7ml)中の2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾールII(0.9当量、210mg、1.1mmol)の溶液及び塩化亜鉛(0.1当量、14mg、0.13mmol)を添加した。混合物を100℃で22時間撹拌した。次に、混合物に水を添加し、水層を酢酸エチルで抽出した(3回)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、ろ過し、蒸発乾固して、黄色油状物質を得た。
【0106】
黄色油状物質を基本モードの逆相LC/MSにより精製し、透明な油状物質を得て、これをアキラルSFC(Phenomenex SiO Beta 10μm D=5cm L=34cm 300gr、共溶媒MeOH10%)により再精製して、ラセミ混合物として純粋な5を得た。
【0107】
エナンチオマーの混合物をキラルSFC(Luxcell4MeOH25%、360mL/分.、35℃)により分離して、4-(2,2-ジフルオロプロピル)-1-[[2-(メトキシメチル)-6-メチル-イミダゾ[2,1-b][1,3,4]-チアジアゾール-5-イル]メチル]ピロリジン-2-オン5A(最初に溶出、6.28分、7mg、0.02mmol、1.6%収率)及び5B(2番目に溶出、8.63分、8mg、0.02mmol、収率1.8%)を得た。
収率:3.3%(1.8%+1.6%)
【数9】
【0108】
キラルHPLC(SFC,LuxCell4,3μm,3mL/分.,30℃,20%MeOH):5A:2.24分;5B:3.09分.
【0109】
表(I)は、化合物のIUPAC名(又はAccelerys Draw 4.0から生成される名称)、質量分析で観測されたイオンピーク及びH NMRの説明を示す。
表I:例となる化合物の物性
【表6-1】

【表6-2】

【表6-3】
【0110】
例5.SV2A及びSV2Cへの結合アッセイ
ヒトSV2A及びSV2Cタンパク質をヒト胎児腎臓(HEK)細胞で発現させた。HEK SV2A及びHEK SV2C膜調製物は、Gillard et al(Eur.J.Pharmacol.2006,536,102-108)に記載のように調製した。非標識化合物の親和性を測定するために、以下のように競合実験を行った:SV2タンパク質を発現する膜(1回のアッセイあたり5~15μgタンパク質)を2mM MgCl、0.1%ジメチルスルホキシド及び10段階の漸増濃度の非標識試験化合物(0.1nM~10μM)を含有する0.2mlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)中の[H]-2-[4-(3-アジドフェニル)-2-オキソ-1-ピロリジニル]ブタンアミド(5nM)及び/又は[H]-4R-(2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル)-1-{[2-(メトキシメチル)-6-(トリフルオロメチル)イミダゾ[2,1-b][1,3,4]チアジアゾール-5-イル]メチル}ピロリジン-2-オン(25nM)のいずれかとともに37℃で60分間温置した。温置期間の最後に、0.1%ポリエチレンイミン中に予め浸しておいたGF/Cグラスファイバーフィルターを通じた迅速なろ過によって、膜結合放射性リガンドを回収した。膜をアッセイ体積の少なくとも4倍の氷冷50mM Tris HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。フィルターを乾燥させ、放射活性を液体シンチレーションにより測定した。ろ過段階全体は10秒を越えなかった。親和性pIC50測定値は、Cheng and Prusoff(Biochem.Pharmacol.1973,22(23),3099-3108)に従ってpKiに対して補正した。
【0111】
本発明による式(I)の化合物は、典型的には、少なくとも6.5のpKi SV2A値及び少なくとも6.0のpKi SV2C値を示す。
【0112】
例6.発作性疾患(seizure)モデル
全ての実験において、体重22~32gの雄NMRIマウス(Charles River,Germany)を使用する。午前6:00に点灯し、12/12時間の明/暗サイクルでこのマウスを維持し、20~21℃に維持した温度及び約40%の湿度で収容する。マウスはケージ(タイプIII)あたり10匹の群で収容する。動物は全て、それぞれ10匹のマウスからなる実験群に無作為に割り当てる前に、標準的なペレット飼料及び水を自由に摂取させる。動物実験は全て、National Rules on Animal Experimentsに従って実施し、European Community Council指針2010/63/EUのガイドラインに従って遂行する。地元の倫理委員会が実験プロトコールを承認した。
【0113】
6.1 6Hz発作性疾患(seizure)モデル
6Hzモデルは、以前に記載のプロトコール(Kaminski et al.,Epilepsia(2004),45,864-867)に従って行う。簡潔に述べると、定電流装置(ECT Unit 57800;Ugo Basile,Comerio,Italy)によって角膜刺激(44mA、0.2ms持続時間、単極矩形波パルス、6Hzで3秒間)を送る。電気刺激前に0.4%オキシブプロカイン塩酸塩(Unicaine,Thea,France)を眼に1滴点眼する。刺激中、マウスを手作業で拘束し、電流印加の直後に観察ケージ(38x26x14cm)に放す。発作性疾患(seizure)に先行して短時間(~約2~3秒)の激しい自発運動興奮(暴走及び跳躍)が発生することが多い。次に、動物は、立ち上がり、前肢の自動運動及びクローヌス、感覚毛の攣縮及び挙尾が付随する「気絶」姿勢を呈する。発作性疾患(seizure)の終了時に、動物は通常の探索行動を再開する。実験エンドポイントは、発作性疾患(seizure)に対する防御である。刺激から7秒以内に通常の探索行動を再開する場合、動物は防御されていると見なす。
【0114】
試験化合物に対して決定されたインビボ活性は通常、単回IP投与後、0.05mg/kg~10mg/kgの間に含まれる。
【0115】
6.2 ペンチレンテトラゾール(PTZ)発作性疾患(seizure)モデル
ペンチレンテトラゾールを以前に確立された89mg/kgのCD97用量で使用するが;これはマウスの97%で全四肢の間代性けいれんを誘発するけいれん用量である(Klitgaard et al.,Eur J Pharmacol(1998),353,191-206)。ペンチレンテトラゾール注射の直後に、マウスを個別にPerspexケージに入れ、全四肢における間代性けいれん及び強直性後肢伸展の有無について60分間観察する。
【0116】
試験化合物に対して決定されたインビボ活性は通常、単回IP投与後、0.5mg/kg~30mg/kgの間に含まれる。
【0117】
例7.アザムリンアッセイ
凍結保存ヒト肝細胞(20名のドナーのプール、Celsis/IVT/BioreclamationからのBSUバッチ)を提供者の情報に従って解凍した。生存率(トリパンブルー排除)は75%より高かった。穏やかな撹拌下(振動撹拌機、Titramax 100、約300rpm)、インキュベーター(5%CO)中で+37℃にて48ウェルプレートにおいて、2mMグルタミン及び15mM Hepesを含有するウィリアムズ培地を使用して、30分間、予備温置を行った(肝細胞2x10個/mLの250μL肝細胞懸濁液)。予備温置後、アザムリン(6μM-特異的CYP3A4/5阻害剤)あり又はなしでUCB化合物(1μM)又はミダゾラム(陽性対照)を含有する250μLの培養用培地(上記組成を参照)を肝細胞に添加することにより、温置を開始した。温置中のUCB化合物及びアザムリンの最終濃度は、それぞれ0.5μM及び3μMである。2回のピペットでの出し入れ操作により細胞懸濁液を迅速に再均一化した。0、30、60、120、180及び240分の温置後、50μlの温置物を、内部標準としてのケトコナゾール1μM入りの50μLの氷冷アセトニトリルを含有する96ウェルプレートから適切なウェルに移すことによって反応を停止させた。各試料採取の前に、細胞培養物を2回のピペットでの出し入れ操作により再均一化する。
【0118】
温置が終了したら、96ウェルプレートを約3700rpm、+4℃で15分間遠心分離する。50μLの上清を他のディープウェルプレートのウェルに移し、そこに150μLのHO Milliporeを添加した。これらの試料は、親の消失及び代謝産物形成の監視のためにマイクロUPLC/HR-MSにより分析した。
【0119】
CYP3A4/5によって代謝される分画(fm,CYP3A4/5)として知られるCYP3A4/5の寄与は、以下の式を使用することにより、アザムリンの非存在下及び存在下でのCLint(親薬物消失に基づく)間の比率から各化合物について計算した:
【数10】
【0120】
試験化合物のCYP3A4/5によって代謝される分画(fm,CYP3A4/5)は通常0~40%を構成する。