(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】機器監視装置、機器監視方法、および機器監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2020563070
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048768
(87)【国際公開番号】W WO2020137593
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2018240636
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤本 好宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正滋
(72)【発明者】
【氏名】武内 利樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康之
(72)【発明者】
【氏名】末吉 康則
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特許第6440810(JP,B1)
【文献】特開平06-095718(JP,A)
【文献】特開2010-170342(JP,A)
【文献】特開2013-081292(JP,A)
【文献】特開2017-045436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器の状態に係る機器状態データを収集する収集端末と、前記機器状態データを記憶するサーバと、を備え、
前記収集端末は、当該収集端末が収集対象とする前記PLCで監視している機器の状態を特定するビット列である機器状態ビット列を記憶する端末記憶部と、前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器状態データを前記サーバに送信する送信部と、を有し、
前記サーバは、前記収集端末から前記機器状態データを受信する受信部と、受信した前記機器状態データを記憶するサーバ記憶部と、を有し、
前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含
み、
前記機器状態ビット列を構成する複数のビットは、オン状態またはオフ状態を取り、
前記機器状態データは、前記変化データとして、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オフ状態から前記オン状態に変化したビットを特定するオン変化データ、および、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オン状態から前記オフ状態に変化したビットを特定するオフ変化データ、の少なくとも一方を含む機器監視装置。
【請求項2】
機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器の状態に係る機器状態データを収集する収集端末と、前記機器状態データを記憶するサーバと、を備え、
前記収集端末は、当該収集端末が収集対象とする前記PLCで監視している機器の状態を特定するビット列である機器状態ビット列を記憶する端末記憶部と、前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器状態データを前記サーバに送信する送信部と、を有し、
前記サーバは、前記収集端末から前記機器状態データを受信する受信部と、受信した前記機器状態データを記憶するサーバ記憶部と、を有し、
前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、
前記サーバは、前記サーバ記憶部に記憶した前記機器状態データに基づいて未受信の前記機器状態データを補完可能に構成される機器監視装置。
【請求項3】
前記機器状態データは、前記変化データとして、前記オン変化データおよび前記オフ変化データを含む請求項
1に記載の機器監視装置。
【請求項4】
前記機器状態データは、さらに、当該機器状態データが送信される時点における最新の前記機器状態ビット列を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の機器監視装置。
【請求項5】
前記機器状態データは、前記機器状態ビット列が変化した時刻を特定する変化時刻データをさらに含む請求項1~4のいずれか1項に記載の機器監視装置。
【請求項6】
前記送信部は、前記機器状態データに含まれる各データを、ワード単位にまとめて前記サーバに送信する請求項1~5のいずれか1項に記載の機器監視装置。
【請求項7】
前記収集端末は、前記機器状態ビット列が変化したか否かの判定を所定の時間間隔ごとに行い、前記送信部は、前記判定において前記機器状態ビット列が変化したと判定したときに所定の送信間隔にまとめて前記機器状態データを前記サーバに送信する請求項1~6のいずれか1項に記載の機器監視装置。
【請求項8】
前記サーバは、前記サーバ記憶部に記憶した前記機器状態データに基づいて、
未受信の前記機器状態デー
タを補完可能に構成される請求項
1に記載の機器監視装置。
【請求項9】
機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器状態データを収集端末によって収集し、前記機器状態データをサーバに記憶する機器監視方法であって、
監視対象とする前記機器の状態データを前記PLCから取得する信号に基づいて、当該機
器の状態を特定するビット列を、機器状態ビット列として前記収集端末に記憶させる端末記憶工程と、
前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器状態データを、前記収集端末に送信させ前記サーバに受信させる通信工程と、
前記サーバに受信させた前記機器状態データを前記サーバに記憶させるサーバ記憶工程と、を有し、
前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含
み、
前記機器状態ビット列を構成する複数のビットは、オン状態またはオフ状態を取り、
前記機器状態データは、前記変化データとして、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オフ状態から前記オン状態に変化したビットを特定するオン変化データ、および、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オン状態から前記オフ状態に変化したビットを特定するオフ変化データ、の少なくとも一方を含む機器監視方法。
【請求項10】
機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器状態データを収集端末によって収集し、前記機器状態データをサーバに記憶する機器監視方法であって、
監視対象とする前記機器の状態データを前記PLCから取得する信号に基づいて、当該機器の状態を特定するビット列を、機器状態ビット列として前記収集端末に記憶させる端末記憶工程と、
前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器状態データを、前記収集端末に送信させ前記サーバに受信させる通信工程と、
前記サーバに受信させた前記機器状態データを前記サーバに記憶させるサーバ記憶工程と、を有し、
前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、
前記サーバにおいて、前記サーバに記憶させた前記機器状態データに基づいて未受信の前記機器状態データを補完する補完工程をさらに有する機器監視方法。
【請求項11】
機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器状態データを収集端末によって収集し、前記機器状態データをサーバに記憶する機能をコンピュータに実行させる機器監視プログラムであって、
監視対象とする前記機器の状態データを前記PLCから取得する信号に基づいて、当該機
器の状態を特定するビット列を、機器状態ビット列として前記収集端末に記憶させる端末記憶機能と、
前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器の機器状態データを、前記収集端末に送信させ前記サーバに受信させる通信機能と、
前記サーバに受信させた前記機器状態データを前記サーバに記憶させるサーバ記憶機能と、をコンピュータに実行させ、
前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含
み、
前記機器状態ビット列を構成する複数のビットは、オン状態またはオフ状態を取り、
前記機器状態データは、前記変化データとして、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オフ状態から前記オン状態に変化したビットを特定するオン変化データ、および、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オン状態から前記オフ状態に変化したビットを特定するオフ変化データ、の少なくとも一方を含む機器監視プログラム。
【請求項12】
機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器状態データを収集端末によって収集し、前記機器状態データをサーバに記憶する機能をコンピュータに実行させる機器監視プログラムであって、
監視対象とする前記機器の状態データを前記PLCから取得する信号に基づいて、当該機器の状態を特定するビット列を、機器状態ビット列として前記収集端末に記憶させる端末記憶機能と、
前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器の機器状態データを、前記収集端末に送信させ前記サーバに受信させる通信機能と、
前記サーバに受信させた前記機器状態データを前記サーバに記憶させるサーバ記憶機能と、をコンピュータに実行させ、
前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、
前記サーバに記憶させた前記機器状態データに基づいて未受信の前記機器状態データを補完する補完機能を、さらにコンピュータに実行させる機器監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設や水道施設などのプラント施設に設置された複数の機器の機器状態を監視するための機器監視装置、機器監視方法、および機器監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の機器の機器状態を監視する目的で、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)と、当該PLCから機器の状態に係る機器状態データを収集する収集端末とを組合せて用いるシステムが汎用されている。収集端末が収集した機器状態データは、収集端末からサーバ装置等に送信され、施設の全体または所定の区域に設置された機器の監視や入出力制御を行うために活用される。
【0003】
このようなシステムでは一般的に、施設内に機器が分散配置されていることに対応して、PLCおよび収集端末も分散配置されている。ここで、分散配置された収集端末のそれぞれをサーバ装置等と通信可能にする必要があるが、かかる通信の手段を有線配線とすると配線が煩雑になるため、無線通信可能に構成するのが好ましい。ただし、無線通信に係る信頼性の向上および通信コストの低減のため、送受信されるデータ量の低減が求められる。
【0004】
かかるデータ量の低減について、たとえば、日本国特開平6-95718号(特許文献1)には、検出されたデータと、前回送受信されたデータとの間に変化が生じているか否かを判断し、変化が生じている場合にのみ最新のデータが送受信されるリモートI/Oシステムが開示されている。この技術では、データに変化が生じていないときに送受信されるデータ量を小さくできるため、当該システムの運用に係る通信量を低減できる。
【0005】
また、たとえば日本国特開2003-280732号公報(特許文献2)には、監視対象の複数のデバイスのうち、状態が変化したデバイスの状態のみを送信するように構成されたデータ伝送装置が開示されている。この技術では、変化が生じていないデバイスの状態は送信されないので、送信されるデータ量を小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開平6-95718号
【文献】日本国特開2003-280732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1および特許文献2の技術では、データを受信したサーバ装置側において、前回データと最新データとを比較し、具体的な変化内容を特定する必要があった。そのため、複数の収集端末から同時に送信があったときに、サーバ装置の演算負荷が大きくなり、円滑なデータ処理ができないおそれがあった。なお、装置の故障、ユーティリティの状態変化、処理対象物の状態変化、などを原因として、複数の機器において機器状態の変化が連鎖的に生じる場合が少なくないため、上述のように複数の収集端末から同時に送信があることは少なくない。
【0008】
そこで、サーバ装置側の演算負荷を低減しながら、機器状態の具体的な変化内容を特定できる機器監視装置の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第一の機器監視装置は、機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器の状態に係る機器状態データを収集する収集端末と、前記機器状態データを記憶するサーバと、を備え、前記収集端末は、当該収集端末が収集対象とする前記PLCで監視している機器の状態を特定するビット列である機器状態ビット列を記憶する端末記憶部と、前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器状態データを前記サーバに送信する送信部と、を有し、前記サーバは、前記収集端末から前記機器状態データを受信する受信部と、受信した前記機器状態データを記憶するサーバ記憶部と、を有し、前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、前記機器状態ビット列を構成する複数のビットは、オン状態またはオフ状態を取り、前記機器状態データは、前記変化データとして、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オフ状態から前記オン状態に変化したビットを特定するオン変化データ、および、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オン状態から前記オフ状態に変化したビットを特定するオフ変化データ、の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明に係る第二の機器監視装置は、機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器の状態に係る機器状態データを収集する収集端末と、前記機器状態データを記憶するサーバと、を備え、前記収集端末は、当該収集端末が収集対象とする前記PLCで監視している機器の状態を特定するビット列である機器状態ビット列を記憶する端末記憶部と、前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器状態データを前記サーバに送信する送信部と、を有し、前記サーバは、前記収集端末から前記機器状態データを受信する受信部と、受信した前記機器状態データを記憶するサーバ記憶部と、を有し、前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、前記サーバは、前記サーバ記憶部に記憶した前記機器状態データに基づいて未受信の前記機器状態データを補完可能に構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る第一の機器監視方法は、機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器状態データを収集端末によって収集し、前記機器状態データをサーバに記憶する機器監視方法であって、監視対象とする前記機器の状態データを前記PLCから取得する信号に基づいて、当該機器の状態を特定するビット列を、機器状態ビット列として前記収集端末に記憶させる端末記憶工程と、前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器状態データを、前記収集端末に送信させ前記サーバに受信させる通信工程と、前記サーバに受信させた前記機器状態データを前記サーバに記憶させるサーバ記憶工程と、を有し、前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、前記機器状態ビット列を構成する複数のビットは、オン状態またはオフ状態を取り、前記機器状態データは、前記変化データとして、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オフ状態から前記オン状態に変化したビットを特定するオン変化データ、および、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オン状態から前記オフ状態に変化したビットを特定するオフ変化データ、の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明に係る第二の機器監視方法は、機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器状態データを収集端末によって収集し、前記機器状態データをサーバに記憶する機器監視方法であって、監視対象とする前記機器の状態データを前記PLCから取得する信号に基づいて、当該機器の状態を特定するビット列を、機器状態ビット列として前記収集端末に記憶させる端末記憶工程と、前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器状態データを、前記収集端末に送信させ前記サーバに受信させる通信工程と、前記サーバに受信させた前記機器状態データを前記サーバに記憶させるサーバ記憶工程と、を有し、前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、前記サーバにおいて、前記サーバに記憶させた前記機器状態データに基づいて未受信の前記機器状態データを補完する補完工程をさらに有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る第一の機器監視プログラムは、機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器状態データを収集端末によって収集し、前記機器状態データをサーバに記憶する機能をコンピュータに実行させる機器監視プログラムであって、監視対象とする前記機器の状態データを前記PLCから取得する信号に基づいて、当該機器の状態を特定するビット列を、機器状態ビット列として前記収集端末に記憶させる端末記憶機能と、前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器の機器状態データを、前記収集端末に送信させ前記サーバに受信させる通信機能と、前記サーバに受信させた前記機器状態データを前記サーバに記憶させるサーバ記憶機能と、をコンピュータに実行させ、前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、前記機器状態ビット列を構成する複数のビットは、オン状態またはオフ状態を取り、前記機器状態データは、前記変化データとして、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オフ状態から前記オン状態に変化したビットを特定するオン変化データ、および、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オン状態から前記オフ状態に変化したビットを特定するオフ変化データ、の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
本発明に係る第二の機器監視プログラムは、機器の監視および入出力制御を実行可能なPLCから機器状態データを収集端末によって収集し、前記機器状態データをサーバに記憶する機能をコンピュータに実行させる機器監視プログラムであって、監視対象とする前記機器の状態データを前記PLCから取得する信号に基づいて、当該機器の状態を特定するビット列を、機器状態ビット列として前記収集端末に記憶させる端末記憶機能と、前記機器状態ビット列が変化したときに前記機器の機器状態データを、前記収集端末に送信させ前記サーバに受信させる通信機能と、前記サーバに受信させた前記機器状態データを前記サーバに記憶させるサーバ記憶機能と、をコンピュータに実行させ、前記機器状態データは、当該機器状態データが送信される時点の直前の所定の期間内における前記機器状態ビット列の変化を特定する変化データを含み、前記サーバに記憶させた前記機器状態データに基づいて未受信の前記機器状態データを補完する補完機能を、さらにコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0012】
これらの構成によれば、前回の機器状態データと最新の機器状態データとの比較演算処理を収集装置側で担当するので、サーバ装置側の演算負荷を低減しながら、機器状態の具体的な変化内容を特定できる。
【0013】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0014】
本発明に係る機器監視装置は、一態様として、前記機器状態ビット列を構成する複数のビットは、オン状態またはオフ状態を取り、前記機器状態データは、前記変化データとして、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オフ状態から前記オン状態に変化したビットを特定するオン変化データ、および、前記複数のビットのうち前記所定の期間内に前記オン状態から前記オフ状態に変化したビットを特定するオフ変化データ、の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、機器状態ビット列の変化をビット単位で特定できるので、サーバ装置側の負荷をより低減しやすい。
【0016】
本発明に係る機器監視装置は、一態様として、前記機器状態データは、前記変化データとして、前記オン変化データおよび前記オフ変化データを含むことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、機器状態ビット列のオン変化およびオフ変化をビット単位で特定しやすいので、サーバ装置側の負荷を一層低減しやすい。
【0018】
本発明に係る機器監視装置は、一態様として、前記機器状態データは、さらに、当該機器状態データが送信される時点における最新の前記機器状態ビット列を含むことが好ましい。
【0019】
この構成によれば、過去の通信不具合等を原因として、サーバ記憶部に記憶された機器状態データのうちで最新のものと、送信された最新の機器状態データとが一致しない場合であっても、サーバ装置側で最新のデータとその直前のデータとを復元できるので、機器状態ビット列の履歴を把握しやすい。
【0020】
本発明に係る機器監視装置は、一態様として、前記機器状態データは、前記機器状態ビット列が変化した時刻を特定する変化時刻データをさらに含むことが好ましい。
【0021】
この構成によれば、機器状態ビット列の履歴を一層把握しやすい。
【0022】
本発明に係る機器監視装置は、一態様として、前記送信部は、前記機器状態データとして機器状態ビット列データをワード単位にまとめて前記サーバに送信することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、複数の機器状態ビットが同時に変化した場合であっても、送信される機器状態データのサイズを低減しやすい。
【0024】
本発明に係る機器監視装置は、一態様として、前記収集端末は、前記機器状態ビット列が変化したか否かの判定を所定の時間間隔ごとに行い、前記送信部は、前記判定において前記機器状態ビット列が変化したと判定したときに所定の送信間隔にまとめて前記機器状態データを前記サーバに送信することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、送信回数を低減しやすく、その結果として、送信される機器状態データのサイズの総量を低減しやすい。
【0026】
本発明に係る機器監視装置は、一態様として、前記サーバは、前記サーバ記憶部に記憶した前記機器状態データに基づいて、未受信の前記機器状態データを補完可能に構成されることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、機器状態ビット列の履歴を一層把握しやすい。
【0028】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る機器監視装置および監視対象とするプラント施設の構成図
【
図2】本発明の実施形態に係る機器状態ビット列の例
【
図3】本発明の実施形態に係る機器状態ビット列の変化の例
【
図5】本発明の実施形態に係るサーバ側ビット列の例
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る機器監視装置、機器監視方法および機器監視プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る機器監視装置を、プラント施設Pに設置された複数の機器Eの機器状態を監視するための機器監視装置1に適用し、機器監視装置1を用いた機器監視方法に適用した例について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る機器監視装置1は、複数の機器Eに接続されたPLC15(プログラマブルロジックコントローラ)から情報を収集する収集端末10と、サーバ20とを備える。収集端末10およびサーバ20には、本発明に係る機器監視プログラムがインストールされている。なお、当実施形態において監視対象とする機器Eとしては、ポンプ、ブロア、撹拌機、脱水機などが例示される。
【0031】
〔収集端末10の構成〕
収集端末10は、入力部11と、データレジスタ12(端末記憶部の例)と、収集端末制御部13と、送信部14と、を有する。収集端末10は、収集対象のPLC15から情報を収集し、当該PLC15に接続された機器Eを監視対象とする。また、1台のサーバ20と、複数台の収集端末10とが通信できるように構成されている。以下の説明では、ある1台の収集端末10が収集対象とするPLC15に接続された複数の機器Eの集合体を機器群Esという。
【0032】
入力部11は、PLC15と接続されており、それぞれの機器Eに発生したイベントに関する信号の入力を受ける。ここでイベントとは、それぞれの機器Eにおいて、運転状態から停止状態に切り替わる、停止状態から運転状態に切り替わる、所定の物理量(電流値、回転数、トルク、温度、運転時間など)が所定の標準値範囲を脱する、故障の発生を検出する、などの現象が発生することをいう。
【0033】
データレジスタ12は、複数の機器Eの機器状態を特定する機器状態ビット列31を記憶する。機器状態ビット列31の各ビット32は、それぞれの機器Eに関する種々のイベントに割り当てられている。
図2に示した例では、データレジスタ12のアドレス「D1000.0」~「D1000.8」の各ビット32には、機器E1について、運転/停止状態(アドレス「D1000.0」)、故障A~Dの検出の有無(アドレス「D1000.1」~「D1000.4」)、および状態A~Dの検出の有無(アドレス「D1000.5」~「D1000.8」)が、それぞれ割り当てられている。たとえば、
図2では、アドレス「D1000.0」のビット32aは「0(オフ状態)」であり、機器E1が停止状態であることが記憶されている。同様に、たとえば、アドレス「D1000.D」のビット32cは「1(オン状態)」であり、機器E2について状態Aが検出されていることが記憶されている。なお、ここで「状態」とは、たとえば、機器の自動/手動運転などの運転モードや、電流値が標準範囲内にあるなどの状態をいう。
【0034】
データレジスタ12に記憶されている機器状態ビット列31は、PLC15から送信され入力部11に入力する信号に基づいて変更される。たとえば、
図2に示した例の状態において、機器E1の故障Aが解消して機器E1が運転を開始したことを表す信号が入力されたときは、アドレス「D1000.0」のビット32aが「1」に変わり、アドレス「D1000.1」のビット32bが「0」に変わる。すなわち、収集端末10に接続された機器Eのイベントの発生を表す信号の入力に応答して、各ビット32が当該信号に対応するオン状態またはオフ状態を取り、かかるビット32の配列である機器状態ビット列31として、複数の機器Eの機器状態が記憶される。
【0035】
収集端末制御部13は、機器状態ビット列31を1秒ごと(所定の時間間隔の例)に監視し、ある時刻における機器状態ビット列31と、その1秒前の機器状態ビット列31とを比較する。
図3に、機器状態ビット列31aが、その1秒後に機器状態ビット列31bに変化した例を示した。具体的には、アドレス「D1000」の、Cビット目31dがオン状態からオフ状態に、7ビット目31eがオフ状態からオン状態に、3ビット目がオン状態からオフ状態に、それぞれ変化したことが現されている。収集端末制御部13は、ある時刻における機器状態ビット列31(31b)が、その1秒前の機器状態ビット列31(31a)と一致しないときは、当該1秒の間(所定の期間内の例)に機器状態ビット列31が変化したと判定する。
【0036】
収集端末制御部13は、機器状態ビット列31が変化したと判定すると、サーバ20に送信する機器状態データ30を生成する。送信部14は、当該機器状態データ30をサーバ20に送信する。
【0037】
図4に示すように、機器状態データ30は、機器状態ビット列31が変化したと判定した時刻を表す変化時刻データ33、変化後の機器状態ビット列31(31b)、オフ状態からオン状態に変化(オン変化)したビットを特定するオン変化データ34(変化データの例)、および、オン状態からオフ状態に変化(オフ変化)したビットを特定するオフ変化データ35(変化データの例)、を含む。なお、機器状態ビット列31、オン変化データ34、およびオフ変化データ35は、各データを表すビット列を16進数で表したワード単位、すなわち、ワード長16ビットのワード単位で表される。たとえば
図4に示した例では、機器状態ビット列31「0110000010110110」は16進数「60B6」で表される。同様に、オン変化データ34は16進数「0080」で表され、オフ変化データ35は16進数「1008」で表される。
【0038】
〔サーバ20の構成〕
サーバ20は、受信部21と、サーバ記憶部22と、サーバ制御部23とを有する。前述のように、1台のサーバ20と、複数台の収集端末10とが通信できるように構成されている。したがってサーバ20は、複数台の収集端末10のそれぞれが収集対象とするPLC15に接続された複数の機器Eについて、機器状態データ30を受信しこれを記憶する。
【0039】
受信部21は、収集端末10の送信部14から送信された機器状態データ30を受信する。送信部14と受信部21との間の通信は、携帯電話回線網を経由して、インターネット、イントラネットなどのネットワークを通じて行われる。
【0040】
サーバ記憶部22は、受信部21が受信した機器状態データ30を記憶する。ここで、機器状態データ30に含まれる機器状態ビット列31、オン変化データ34およびオフ変化データ35は、ワード単位からビット単位に置換される。サーバ記憶部22は、ビット単位に置換された機器状態データ30に基づいて、サーバ側ビット列41を記憶する。
図5に示した例では、サーバ側ビット列41の信号ID1~16が、機器状態ビット列31のアドレス「D1000.0」~「D1000.E」に対応している。すなわちサーバ側ビット列41の構成は、機器状態ビット列31と同様の構成になっている。このようにサーバ記憶部22は、収集端末10のデータレジスタ12と同じように、複数の機器Eの、収集対象とするそれぞれのイベントに割り当てられたビット単位で、複数の機器Eの機器状態およびその変化を記憶する。
【0041】
また、サーバ記憶部22は、最新のサーバ側ビット列41(41a)のみではなく、過去のサーバ側ビット列41(41b)も記憶する。このように、過去のサーバ側ビット列41を記憶することで、複数の機器Eの機器状態の履歴を管理することができる。
【0042】
サーバ制御部23は、収集端末10とサーバ20との通信を制御するとともに、収集端末10から受信した機器状態データ30およびサーバ記憶部22に記憶された機器状態データ30に基づいて、複数の機器Eの機器状態の履歴情報を生成することができる。具体的には、最新のサーバ側ビット列41と、前回記憶したサーバ側ビット列41とを比較し、オン変化およびオフ変化したビットを特定することで、履歴情報が明らかになる。
【0043】
しかし、当実施形態では、収集端末10とサーバ20との間の通信は携帯電話回線網を経由して行われるため、全ての機器状態データ30の受信に成功していることは保証できない。また、サーバ20が複数の収集端末10から送信された複数の機器状態データ30を同時または短期間に受信したときは、上記の比較処理が一度に複数発生し、かかる処理に遅れが生じたり、過負荷によりサーバ20の運転に不具合が生じたりする場合がある。
【0044】
そこで、サーバ制御部23は、収集端末10から受信した機器状態データ30に含まれるオン変化データ34およびオフ変化データ35に基づいて、変化したビットを特定することも可能に構成されている。この構成により、未受信のデータが存在する場合であっても、オン変化データ34およびオフ変化データ35に基づいて最新の機器状態データ30が生成された時刻の直前の機器状態に対応する変化前データ42を生成し、履歴情報を明らかにすることができる。また、比較処理をサーバ20ではなく各収集端末10が担当するため、サーバ20における比較処理の負荷を減らすことができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
次に、本発明に係る機器監視装置、機器監視方法および機器監視プログラムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0046】
上記の実施形態では、収集端末10からサーバ20に送信される機器状態データ30に含まれる機器状態ビット列31、オン変化データ34、およびオフ変化データ35が、ワード単位で表される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明における機器状態データはビット単位で生成されてもよい。
【0047】
上記の実施形態では、機器状態データ30に含まれる機器状態ビット列31、オン変化データ34、およびオフ変化データ35が、ワード長16ビットのワード単位で表される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る機器状態データに含まれる各データは、必ずしもワード単位で表されなくてもよい。また、ワード単位で表される場合、1ワードは、32ビット、64ビットなど、当該分野で通常用いられる数のビットに対応する長さであってよい。
【0048】
本発明に係る収集端末は、タブレット端末、ノートパソコンなどのコンピュータであってもよい。また、本発明に係るPLCおよび収集端末を、送信機能を有するPLCとして、一体に構成してもよい。
【0049】
上記の実施形態では、収集端末10からサーバ20への機器状態データ30の送信が、携帯電話回線網を経由して行われる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、本発明に係る収集端末とサーバとの通信経路は、無線、有線を問わず、公知の経路であってよい。
【0050】
上記の実施形態では、収集端末10が収集対象のPLC15から情報を収集してこれをサーバ20に送信し、サーバ20が機器状態データ30を受信してこれをサーバ側ビット列41としてサーバ記憶部22に記憶する構成を例として説明した。しかし、本発明に係る収集端末およびサーバは、上記の実施形態で説明した他の機能部を有しうる。たとえば、本発明に係るサーバは、蓄積された機器状態データに基づいて、監視対象の機器の状態を表すビットと当該機器の故障の有無を表すビットとの相関関係を学習する学習部を備えうる。この構成によれば、たとえば、監視対象の機器の状態を表すビットの変化の傾向(データの振れ幅など)に基づいて当該機器独自の管理値を設定し、当該管理値に基づいて当該機器の故障を予測できる。なお、かかる学習部は、収集端末に設けられてもよい。
【0051】
上記の学習部は、たとえば、ワン-クラス・サポート・ベクター・マシン(One-Class Support Vector Machine)、LOF(local outlier factor)法、IF(Isolation Forest)法、RC(Robust Covariance)法などのアルゴリズムを実装しうる。また、機器状態データの履歴に加えて、監視対象の機器に係るメンテナンス履歴に係る情報が蓄積される場合は、上記の学習部を、当該機器の累積稼働時間や累積停止回数などの正規化されたデータで特定される各機器の負荷率と、個別の負荷率(重み係数)で特定される各機器の識別情報とを入力する入力層と、単一または複数の中間層と、稼働実績データが均等になるように配置するための組合せを出力する出力層とを有するニューラルネットワークを構築し、過去の機器状態データを入力したときに得られるメンテナンスデータを出力とする教師信号で学習した学習部として構成しうる。
【0052】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、たとえば下水処理施設や水道施設などのプラント施設における機器の機器状態を監視するために利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 :機器監視装置
10 :収集端末
11 :入力部
12 :データレジスタ
13 :収集端末制御部
14 :送信部
15 :PLC
20 :サーバ
21 :受信部
22 :サーバ記憶部
23 :サーバ制御部
30 :機器状態データ
31 :機器状態ビット列
32 :機器状態ビット列を構成するビット
33 :変化時刻データ
34 :オン変化データ
35 :オフ変化データ
41 :サーバ側ビット列
42 :変化前データ
P :プラント施設
E :機器