(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】プロピレン系樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20220819BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20220819BHJP
C08F 210/06 20060101ALI20220819BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20220819BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/04
C08F210/06
B29C49/06
B29C45/00
(21)【出願番号】P 2021501887
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005312
(87)【国際公開番号】W WO2020175138
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019032547
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】上北 弘幸
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/074001(WO,A1)
【文献】特開平9-227735(JP,A)
【文献】特開2009-84393(JP,A)
【文献】特開2006-161033(JP,A)
【文献】特表2017-508035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00- 23/36
C08F 210/00-210/18
B29C 49/00- 49/80
B29C 45/00- 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(A1)~(A5)を満たすプロピレン系重合体(A)を75~92質量部、
下記要件(B1)~(B2)を満たすエチレン系重合体(B)を8~25質量部(ただし、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の合計量を100質量部とする。)、および
造核剤(C)を0.02~1.0質量部
含むプロピレン系樹脂組成物。
(A1):ASTM D-1238に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが45~195g/10分である。
(A2):室温n-デカンに不溶な部分を80~92質量%、および室温n-デカンに可溶な部分を8~20質量%含む。
(A3):前記室温n-デカンに不溶な部分に占めるエチレン由来の構成単位の割合が0~1.0質量%である。
(A4):前記室温n-デカンに可溶な部分に占めるエチレン由来の構成単位の割合が25~35質量%である。
(A5):前記室温n-デカンに可溶な部分の135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.0~3.0dl/gである。
(B1):ASTM D-1238に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが、3.0~50g/10分である。
(B2):密度が940kg/m
3以上である。
【請求項2】
請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
【請求項3】
請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物の射出成形体または射出ブロー成形体である請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
容器である請求項2または3に記載の成形体。
【請求項5】
前記容器が食品包装容器である請求項4に記載の成形体。
【請求項6】
前記容器の最も薄い部分の厚さが0.3~2.0mmである請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物を射出成形または射出延伸ブロー成形する工程を含む成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物、および該組成物から形成される、容器に代表される成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー、プリン、コーヒー等の食品の包装容器(以下、食品包装容器とも記載する。)の原料としては、耐熱性、剛性および透明性に優れるプロピレン系樹脂組成物が用いられることが多い。また、食品はその保管・流通において、低温の環境で扱われることが多いため、食品包装容器には、常温における耐衝撃性だけではなく、低温時の耐衝撃性、すなわち低温耐衝撃性が求められる。
【0003】
耐衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物として、プロピレン-エチレンブロック共重合体、造核剤、および低密度ポリエチレン樹脂若しくは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含む組成物が知られており(例えば、特許文献1)、低温耐衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物としては、プロピレンブロック共重合体とエチレン系樹脂とからなり、特定の物性を有する組成物が知られている(例えば、特許文献2、3)。
【0004】
特許文献4には、特定の樹脂構造を有する結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体、結晶性ポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、および任意にエラストマーを含有するポリプロピレン系樹脂組成物が開示され、この組成物から難白化性、剛性、低温で耐衝撃性などのバランスに優れたシートやフィルムが得られること、およびこの組成物が食品容器等の用途に有用であることが記載されている。
【0005】
さらに特許文献5には、特定のプロピレン系ランダムブロック共重合体を含むプロピレン系樹脂組成物が開示され、この組成物から耐衝撃性等に優れた射出成形体を得ることができ、これを食品容器等に使用できることが記載され、さらに耐衝撃性等の機能の付与のためにこの組成物にポリエチレン樹脂を添加してもよいことが記載されている。
【0006】
また近年は、環境負荷、コスト等の低減の観点から、これらの容器には、薄肉化、軽量化が求められている。
これらの要求に応えるために、特許文献6では、特定のプロピレン系ブロック共重合体、シングルサイト触媒を用いて製造された特定のエチレン・α-オレフィン共重合体、および造核剤を含み、食品包装容器等の容器をはじめとする成形体を製造した際に、従来よりも薄肉化かつ軽量化した場合であっても、剛性、低温耐衝撃性および透明性に優れるプロピレン系樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-26686号公報
【文献】特開2002-187996号公報
【文献】特開2002-187997号公報
【文献】特開2005-26981号公報
【文献】国際公開第2007/116709号
【文献】国際公開第2010/074001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のプロピレン系樹脂組成物から形成された食品包装容器には、薄肉成形品の高速成形性、剛性および低温耐衝撃性の観点からさらなる改善の余地があった。
そこで本発明は、薄肉の成形品の製造時であっても高速成形性に優れ、かつ剛性および低温耐衝撃性にバランスよく優れる成形品を製造することのできるプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
下記要件(A1)~(A5)を満たすプロピレン系重合体(A)を75~92質量部、
下記要件(B1)~(B2)を満たすエチレン系重合体(B)を8~25質量部(ただし、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の合計量を100質量部とする。)、および
造核剤(C)を0.02~1.0質量部
含むプロピレン系樹脂組成物。
(A1):ASTM D-1238に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが45~195g/10分である。
(A2):室温n-デカンに不溶な部分を80~92質量%、および室温n-デカンに可溶な部分を8~20質量%含む。
(A3):前記室温n-デカンに不溶な部分に占めるエチレン由来の構成単位の割合が0~1.0質量%である。
(A4):前記室温n-デカンに可溶な部分に占めるエチレン由来の構成単位の割合が25~35質量%である。
(A5):前記室温n-デカンに可溶な部分の135℃デカリン中における極限粘度[η]が1.0~3.0dl/gである。
(B1):ASTM D-1238に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが、3.0~50g/10分である。
(B2):密度が940kg/m3以上である。
【0010】
[2]
前記[1]のプロピレン系樹脂組成物を含む成形体。
[3]
前記[1]のプロピレン系樹脂組成物の射出成形体または射出ブロー成形体である前記[2]の成形体。
【0011】
[4]
容器である前記[2]または[3]に記載の成形体。
[5]
前記容器が食品包装容器である前記[4]の成形体。
【0012】
[6]
前記容器の最も薄い部分の厚さが0.3~2.0mmである前記[4]または[5]の成形体。
【0013】
[7]
前記[1]のプロピレン系樹脂組成物を射出成形または射出延伸ブロー成形する工程を含む成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプロピレン系樹脂組成物によれば、薄肉の成形品の製造時であっても優れた高速成形性で、剛性および低温耐衝撃性にバランスよく優れる成形品を得ることができる。
また、本発明の成形品は、剛性および低温耐衝撃性にバランスよく優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[プロピレン系樹脂組成物]
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、後述する要件(A1)~(A5)を満たすプロピレン系重合体(A)を75~92質量部、後述する要件(B1)~(B2)を満たすエチレン系重合体(B)を8~25質量部(ただし、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の合計を100質量部とする)、および造核剤(C)を0.02~1.0質量部を含むことを特徴としている。
【0016】
〔プロピレン系重合体(A)〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、以下に説明する要件(A1)~(A5)を満たすプロピレン系重合体を含む。以下、「要件(A1)~(A5)を満たすプロピレン系重合体(A)」を単に「プロピレン系重合体(A)」とも記載する。
【0017】
プロピレン系重合体(A)は、好ましくは、主にプロピレン由来の構成単位からなる成分と、主にプロピレンおよびエチレン由来の構成単位からなる成分とを含むプロピレン系共重合体(いわゆるブロック共重合体)である。
【0018】
(要件(A1))
要件(A1)は、プロピレン系重合体(A)の、ASTM D-1238に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下「MFRA」とも記載する。)が45~195g/10分である、というものである。前記MFRAは、好ましくは60~170g/10分であり、より好ましくは80~120g/10分である。
【0019】
MFRAが上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物を射出成形した際にショートショットが生じることがある。またMFRAが上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物を射出成形した際にバリが生じることがある。
【0020】
(要件(A2))
要件(A2)は、プロピレン系重合体(A)が、室温n-デカンに不溶な部分(以下「Dinsol」とも記載する。)を80~92質量%、および室温n-デカンに可溶な部分(以下「Dsol」とも記載する。)を8~20質量%含む、というものである。ただし、Dinsolの割合とDsolの割合との合計を100質量%とする。好ましくは、Dinsolが82~88質量%であり、Dsolが12~18質量%である。また、室温とは、具体的には25℃である。
【0021】
プロピレン系重合体(A)において、n-デカンに不溶な部分(Dinsol)とは、通常、主にプロピレン由来の構成単位からなる成分であり、結晶性を有し、高い剛性を示すと考えられる。n-デカンに可溶な部分(Dsol)とは、通常、主にプロピレンおよびエチレン由来の構成単位からなる成分である。Dsol成分は結晶性を示さないか、もしくは結晶性が低い成分であり、ガラス転移温度が低く、耐衝撃性、およびエチレン系重合体(B)との相溶性を発現すると考えられる。これはゴム成分と言われることもある。プロピレン系重合体(A)は、通常、n-デカンに不溶な部分(Dinsol)およびn-デカンに可溶な部分(Dsol)を有するプロピレン系共重合体(いわゆるブロック共重合体)である。
【0022】
Dsolの割合が上記範囲を下回り、Dinsolの割合が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が低下する傾向にある。Dsolの割合が減ることにより衝撃に対しての吸収エネルギーが低下するためと考えられる。
【0023】
一方、Dinsolの割合が上記範囲を下回り、Dsolの割合が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物の高速での成形性が劣る場合があり、またプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の剛性(座屈強度)が劣る場合がある。
前記Dinsolの割合および前記Dsolの割合は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
【0024】
(要件(A3))
要件(A3)は、前記Dinsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合が0~1.0質量%である、というものである。この割合は、好ましくは0~0.8質量%である。なお、Dinsolの量を100質量%とする。また、前記構成単位の割合が0質量%であるとは、前記Dinsolがエチレン由来の構成単位を含まないこと、または前記構成単位の割合が検出限界以下であることを意味する。
【0025】
前記構成単位の割合が上記範囲を超えると、プロピレン系樹脂組成物の高速での成形性が劣る場合があり、またプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の剛性(座屈強度)が劣る場合がある。
前記構成単位の割合は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
【0026】
(要件(A4))
要件(A4)は、前記Dsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合が25~35質量%である、というものである。なお、Dsolの量を100質量%とする。この割合は、好ましくは27~35質量%、より好ましくは28~34質量%である。
【0027】
前記構成単位の割合が上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が劣る傾向がある。Dsolのエチレンの割合が減ることによりガラス転移温度が低下し、結晶化度が高くなり、衝撃に対しての吸収エネルギーが低下するためと考えられる。
【0028】
一方、前記構成単位の割合が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物の高速での成形性が劣る場合がある。
前記構成単位の割合は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
【0029】
(要件(A5))
要件(A5)は、前記Dsolの、135℃デカリン中における極限粘度(以下「極限粘度[ηsol]」とも記載する。)が1.0~3.0dl/gである、というものである。前記極限粘度[ηsol]は、好ましくは1.4~2.8dl/gである。
【0030】
極限粘度[ηsol]が上記範囲を上回るかもしくは下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が低下する場合がある。
前記極限粘度[ηsol]の値は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
【0031】
前記プロピレン系重合体(A)は、その製造方法に特に限定はないが、通常は、メタロセン化合物含有触媒存在下、またはチーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0032】
なお、プロピレン系重合体(A)は、チーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られることが好ましい。分子量分布が広く成形性が良好な樹脂が得られ易い為である。
【0033】
(メタロセン化合物含有触媒)
前記メタロセン化合物含有触媒としては、メタロセン化合物、並びに、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒を挙げることができ、好ましくはアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒を挙げることができる。前記メタロセン化合物の中では、国際公開第01/27124号に例示されている架橋性メタロセン化合物、国際公開第2010/74001号の[0068]~[0076]に記載のメタロセン化合物などが好ましい。また、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体としては、国際公開第01/27124号、特開平11-315109号公報等に開示された化合物を制限無く使用することができる。
【0034】
(チーグラーナッタ触媒)
プロピレン系重合体(A)は、高立体規則性チーグラーナッタ触媒を用いることにより製造することができる。前記高立体規則性チーグラーナッタ触媒としては、公知の種々の触媒が使用できる。たとえば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(b)有機金属化合物触媒成分と、(c)シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する有機ケイ素化合物触媒成分とからなる触媒を用いることができ、この触媒成分は公知の方法、たとえば国際公開第2010/74001号の[0078]~[0094]に記載の方法で製造することができる。
【0035】
上記のような固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および有機ケイ素化合物触媒成分(c)からなる触媒を用いてプロピレンの重合を行うに際して、予め予備重合を行うこともできる。予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および必要に応じて有機ケイ素化合物触媒成分(c)の存在下に、オレフィンを重合させる。
【0036】
予備重合するオレフィンとしては、炭素数2~8のα-オレフィンを用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテンなどの直鎖状のオレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの分岐構造を有するオレフィン等を用いることができる。これらは共重合させてもよい。
【0037】
予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)1g当り0.1~1000g程度、好ましくは0.3~500g程度の重合体が生成するように行うことが望ましい。予備重合量が多すぎると、本重合における(共)重合体の生成効率が低下することがある。予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりもかなり高い濃度で触媒を用いることができる。
【0038】
本重合の際には、固体状チタン触媒成分(a)(または予備重合触媒)を重合容積1L当りチタン原子に換算して約0.0001~50ミリモル、好ましくは約0.001~10ミリモルの量で用いることが望ましい。有機金属化合物触媒成分(b)は、金属原子の量に換算して、重合系中のチタン原子1モルに対して約1~2000モル、好ましくは約2~500モル程度の量で用いることが望ましい。有機ケイ素化合物触媒成分(c)は、有機金属化合物触媒成分(b)の金属原子1モル当り約0.001~50モル、好ましくは約0.01~20モル程度の量で用いることが望ましい。
【0039】
(プロピレン系重合体(A)の製法)
前記プロピレン系重合体(A)は、前述のメタロセン化合物含有触媒存在下、またはチーグラーナッタ触媒存在下でプロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0040】
連続多段重合により前記プロピレン系重合体(A)を製造する場合、各段においてはプロピレンを単独重合させるか、またはプロピレンとエチレンとを共重合させる。
重合は、気相重合法あるいは溶液重合法、懸濁重合法などの液相重合法いずれで行ってもよく、各段を別々の方法で行ってもよい。また連続式、半連続式のいずれの方式で行ってもよく、各段を複数の重合器たとえば2~10器の重合器に分けて行ってもよい。工業的には連続式の方法で重合することが最も好ましく、この場合2段目以降の重合を2器以上の重合器に分けて行うことが好ましく、これによりゲルの発生を抑制することができる。
【0041】
重合媒体として、不活性炭化水素類を用いてもよく、また液状のプロピレンを重合媒体としてもよい。また各段の重合条件は、重合温度が約-50~+200℃、好ましくは約20~100℃の範囲で、また重合圧力が常圧~10MPa(ゲージ圧)、好ましくは約0.2~5MPa(ゲージ圧)の範囲内で適宜選択される。
【0042】
プロピレン系重合体(A)は、たとえば、2つ以上の重合器を直列につなげた反応装置で、次の二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによって得られる。プロピレン系重合体(A)の製造の際には、二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程1]を行ってもよく、また二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程2]を行ってもよい。また、[工程1]と[工程2]とを別々に行い、それぞれで得られた重合体を単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練し、プロピレン系重合体(A)を製造してもよい。
【0043】
以下、[工程1]と[工程2]とを連続して実施することによりプロピレン系重合体(A)を製造する方法について記載する。
[工程1]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンと任意にエチレンとを重合させる工程であって、エチレンを供給しないか、またはプロピレンのフィード量に比べて少量のエチレンを供給することによって、Dinsolの主成分となるプロピレン系重合体を製造する工程である。また、必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程1]で生成される重合体の極限粘度[η]を調整してもよい。
【0044】
[工程2]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる工程であって、プロピレンのフィード量に対するエチレンのフィード量の割合を[工程1]のときよりも大きくすることによって、Dsolの主成分となるプロピレン-エチレン共重合ゴムを製造する工程である。必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程2]で生成される重合体の極限粘度[η]を調整してもよい。
【0045】
プロピレン系重合体(A)は、上記[工程1]および[工程2]を連続的に実施することによって得られ、要件(A1)~(A5)は以下のようにして調整することができる。
要件(A1)におけるMFRAは、[工程1]または[工程2]を行う際のモノマー(すなわち、プロピレンの単独重合の場合にはプロピレン、共重合の場合にはプロピレンおよびエチレン)のフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRAを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRAを低くすることができる。
【0046】
また、上記方法以外でも、重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物の存在下で溶融混練処理することによりMFRAを調整することができる。重合で得られたプロピレン系重合体を、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行うことによりMFRAは高くなり、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行う際の有機過酸化物の添加量を増やすことでMFRAはより高くなる。重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物存在下で溶融混練処理する場合、有機過酸化物は、プロピレン系重合体100質量部に対して0.005~0.05質量部使用することが望ましい。また、上記有機過酸化物存在下での溶融混練処理は、下記後処理工程後に行ってもよい。有機過酸化物としては、特に限定はなく、従来公知の有機過酸化物、たとえば2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、および1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン)が挙げられる。
【0047】
要件(A2)における前記Dinsolの割合および前記Dsolの割合は、上記[工程1]および[工程2]の重合時間を調整することにより、調整することが出来る。つまり、全重合時間に占める[工程1]の重合時間の割合を高めることで、Dinsolの割合を大きく、Dsolの割合を小さくすることが出来る。また、全重合時間に占める[工程2]の重合時間の割合を高めることで、Dinsolの割合を小さく、Dsolの割合を大きくすることが出来る。
【0048】
要件(A3)における前記Dinsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合は、[工程1]を行う際のプロピレンフィード量に対するエチレンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、このフィード量の割合を大きくすることにより、前記構成単位の割合を大きくすることができ、このフィード量の割合を小さくすることにより、前記構成単位の割合を小さくすることができる。
【0049】
要件(A4)における前記Dsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合は、[工程2]を行う際のプロピレンフィード量に対するエチレンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、このフィード量の割合を大きくすることにより、前記構成単位の割合を大きくすることができ、このフィード量の割合を小さくすることにより、前記構成単位の割合を小さくすることができる。
【0050】
要件(A5)における極限粘度[ηsol]は、[工程2]を行う際の連鎖移動剤として用いる水素ガスのフィード量により調整できる。つまり、モノマー(すなわち、プロピレンおよびエチレン)のフィード量に対する水素ガスのフィード量の割合を大きくすることにより極限粘度[ηsol]を小さくすることができ、モノマーのフィード量に対する水素ガスのフィード量の割合を小さくすることにより極限粘度[ηsol]を大きくすることができる。
【0051】
重合終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことにより、プロピレン系重合体(A)がパウダーとして得られる。
また、プロピレン系重合体(A)として市販品を使用してもよい。
【0052】
〔エチレン系重合体(B)〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、以下に説明する要件(B1)~(B2)を満たすエチレン系重合体(B)を含む。以下、「要件(B1)~(B2)を満たすエチレン系重合体(B)」を単に「エチレン系重合体(B)」とも記載する。
【0053】
エチレン系重合体(B)としては、エチレン単独重合体、およびエチレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。
前記α-オレフィンとしては炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられ、その例としてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0054】
(要件(B1))
要件(B1)は、エチレン系重合体(B)の、ASTM D-1238に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下、単に「MFRB」とも記載する。)が3.0~50g/10分である、というものである。前記MFRBは、好ましくは3.0~30g/10分であり、より好ましくは3.0~20g/10分である。
【0055】
MFRBが上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が劣る場合がある。またMFRBが上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物内で分散形状が小さくなりすぎるため、衝撃に対しての吸収エネルギーが低くなり、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が劣る場合がある。
【0056】
(要件(B2))
要件(B2)は、エチレン系重合体(B)の密度が940kg/m3以上である、というものである。前記密度は、好ましくは942kg/m3以上であり、より好ましくは945kg/m3以上であり、さらに好ましくは955~980kg/m3である。
【0057】
エチレン系重合体(B)の密度が上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物の高速での成形性が劣る場合があり、またプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の剛性(座屈強度)が劣る場合がある。
【0058】
なお、エチレン系重合体(B)の密度の値は、エチレン系重合体(B)のMFR測定時に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したものをサンプルとして用い、密度勾配管法によって測定した場合のものである。
【0059】
エチレン系重合体(B)は、従来公知の方法で製造することができる。
要件(B1)におけるMFRBは、エチレンを重合(またはエチレンおよびα-オレフィンを共重合)してエチレン系重合体(B)を製造する際に、モノマー(すなわち、エチレンの単独重合の場合にはエチレン、共重合の場合にはエチレンおよびα-オレフィン)のフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRBを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRBを低くすることができる。
【0060】
要件(B2)における密度は、エチレンを重合(またはエチレンおよびα-オレフィンを共重合)してエチレン系重合体(B)を製造する際の、エチレンフィード量に対するα-オレフィンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、この割合を大きくすることにより、密度を低くすることができ、この割合を小さくすることにより、密度を高くすることができる。
【0061】
また、エチレン系重合体(B)として市販品を使用してもよい。市販品の例としては、ネオゼックス(登録商標)45200(MFR=20g/10分、密度=943kg/m3)、ネオゼックス2805JV(MFR=3.0g/10分、密度=965kg/m3)、ハイゼックス(登録商標)2200J(MFR=5.2g/10分、密度=964kg/m3)、ハイゼックス1700J(MFR=16g/10分、密度=967kg/m3)、(以上、(株)プライムポリマー製)などが挙げられる。
【0062】
〔造核剤(C)〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は造核剤(C)を含む。
本発明のプロピレン系樹脂組成物に含まれる造核剤としては、特に限定はないが、ソルビトール系造核剤、リン系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤、ポリマー造核剤、無機化合物等が挙げられる。造核剤としては、ソルビトール系造核剤、リン系造核剤、ポリマー造核剤が好ましい。
【0063】
ソルビトール系造核剤の具体例としては、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール(該化合物を含む市販品として商品名「ミラッドNX8000」シリーズ、ミリケン社製(「NX8000」は、上記化学物質+蛍光増白剤+ブルーミング剤、「NX8000K」は「NX8000」の蛍光増白剤抜き、「NX8000J」は蛍光増白剤とブルーミング剤両方抜き)が挙げられる)、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ-(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトールが挙げられる。
【0064】
リン系造核剤の具体例としては、ナトリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)ナトリウム塩(商品名「アデカスタブ(登録商標)NA-11」、(株)ADEKA製)、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)水酸化アルミニウム塩を主成分とする複合物(商品名「アデカスタブNA-21」、(株)ADEKA製)、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートと12-ヒドロキシステアリン酸とを含み、かつリチウムを必須性分として含む複合物(商品名「アデカスタブNA-71」、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0065】
カルボン酸金属塩造核剤の具体例としては、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、ヒドロキシ-ジ(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウム(商品名「AL-PTBBA」、ジャパンケムテック製)、アジピン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムが挙げられる。
【0066】
ポリマー造核剤としては分岐状α-オレフィン重合体が好適に用いられる。分岐状α-オレフィン重合体の例として、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンの単独重合体、あるいはそれら相互の共重合体、さらにはそれらと他のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。低温耐衝撃性、剛性の特性が良好であること、および経済性の観点から、特に、3-メチル-1-ブテンの重合体が好ましい。
【0067】
無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウムが挙げられる。
これらの造核剤の中でも、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)ナトリウム塩、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピフェニル)メチレン]-ノニトール、およびヒドロキシ-ジ(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウムが好ましい。
【0068】
これらの造核剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、造核剤(C)を含有することにより、本発明の組成物から形成される容器等の成形体の剛性に優れる。これは結晶化度の向上による高剛性化によると推定される。
また、造核剤の含量が、下記範囲より少ないと、剛性の改良効果が不十分であり、造核剤の含量が下記範囲より多いと、それ以上の改良効果は少なく、経済的でない。
【0069】
〔プロピレン系樹脂組成物〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、前述のプロピレン系重合体(A)75~92質量部、エチレン系重合体(B)8~25質量部(ただし、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の合計を100質量部とする)、および造核剤(C)0.02~1.0質量部を含み、好ましくはプロピレン系重合体(A)86~90質量部、エチレン系重合体(B)10~14質量部、および造核剤(C)0.04~0.40質量部を含む。
【0070】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、これら3成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で適宜中和剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、気泡防止剤、分散剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、架橋剤、架橋助剤等の添加剤;染料、顔料等の着色剤で例示される成分(以下「他の成分」と記載する。)を含んでいてもよい。
【0071】
本発明のプロピレン系樹脂組成物が、他の成分を含む場合には、他の成分の量は、プロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の合計100質量部に対して、通常0.01~5質量部である。
【0072】
本発明のプロピレン系樹脂組成物の、ASTM D-1238に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下、単に「MFR」とも記載する。)は、プロピレン系樹脂組成物を射出成形する際の流動性に優れることから、好ましくは50~140g/10分であり、より好ましくは60~120g/10分である。
【0073】
本発明のプロピレン系樹脂組成物のMFRは、プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート、もしくはエチレン系重合体(B)のメルトフローレートを適宜選択することにより、あるいはプロピレン系重合体(A)およびエチレン系重合体(B)の配合割合を調製することにより調整できる。
【0074】
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物のMFRは、各成分を混練機で溶融混練する際に、各成分に有機過酸化物を共存させることによっても、調整が可能である。すなわち、溶融混練を行う際に有機過酸化物を添加すること、あるいは溶融混練を行う際に、有機過酸化物の添加量を増やすことにより、プロピレン系樹脂組成物のMFRを高くすることができる。
【0075】
前記有機過酸化物としては、特に限定はされないが、従来公知の有機過酸化物、たとえば2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが挙げられる。有機過酸化物を使用する場合、有機過酸化物は、プロピレン系重合体(A)とエチレン・α-オレフィン共重合体(B)との合計100質量部に対して0.005~0.05質量部使用することが望ましい。
【0076】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、主としてDinsolを連続相、すなわち海部とし、かつDsolおよびエチレン系重合体(B)を主に島部とした、いわゆる海島構造をとる。このため、本発明のプロピレン系樹脂組成物は高い剛性と高い低温耐衝撃性とを両立できる。
【0077】
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、該製造方法としては、例えば各成分を混練機で溶融混練して、プロピレン系樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。混練機として、例えば単軸混練押出機、多軸混練押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。溶融混練条件は、混練時の剪断、加熱温度、剪断による発熱などによって溶融樹脂の劣化が起こらない限り、特に制限されない。溶融樹脂の劣化を防止する観点から、加熱温度を適正に設定したり、酸化防止剤や熱安定剤を添加したりすることは、効果的である。
【0078】
[成形体]
本発明の成形体は、上述した本発明のプロピレン系樹脂組成物を含むことを特徴としている。その具体例としては、本発明のプロピレン系樹脂組成物を射出成形または射出ブロー成形したものが挙げられる。
【0079】
本発明の成形体としては、容器、家電部品、日用品等が挙げられる。中でも耐衝撃性および剛性の観点から容器が好ましい。
前記容器としては、洗髪剤、調髪剤、化粧品、洗剤、殺菌剤などの液体日用品用の包装容器;清涼飲料水、水、調味料などの液体用の食品包装容器;ゼリー、プリン、ヨーグルトなどの固体用の食品包装容器(デザートカップ);その他の薬品用の包装容器;工業用の液体用の包装容器などが挙げられる。
【0080】
本発明の成形体は剛性および低温耐衝撃性にバランスよく優れることから、これらの容器の中でも、好ましくは食品包装容器(デザートカップ)として用いることができる。
デザートカップとしては、容器胴体部(最も肉厚の薄い部分)の肉厚が0.3~2.0mmの範囲であることが好ましい。本発明の成形体は、このように薄肉であっても低温耐衝撃性に優れ、その成形性にも優れている。
【0081】
また、本発明の成形体の製造方法は、上述した本発明のプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を含むことを特徴としている。成形方法としては、好ましくは射出成形および射出延伸ブロー成形が挙げられる。
【0082】
射出成形の方法としては例えば射出成形機を用いて下記のような方法で成形を行うことができる。まず、射出機構のホッパー内にプロピレン系樹脂組成物を導入し、およそ200℃~250℃に加熱してあるシリンダーにプロピレン系樹脂組成物を送り込み、混練可塑化して溶融状態にする。これをノズルから高圧高速(最大圧力50~200MPa)で、冷却水あるいは温水等により5~50℃好ましくは10~40℃に温調された、型締め機構にて閉じられている金型内に射出する。金型からの冷却により射出されたプロピレン系樹脂組成物を冷却固化させ型締め機構にて金型を開き、成形品を得ることにより行うことができる。
【0083】
また、射出延伸ブロー成形としては例えば、射出成形機のホッパー内にプロピレン系樹脂組成物を導入し、およそ200℃~250℃に加熱してあるシリンダーに樹脂を送り込み、混練可塑化して溶融状態にする。これをノズルから高圧高速(最大圧力50~200MPa)で、冷却水あるいは温水等により5~80℃好ましくは10~60℃に温調された、型締め機構にて閉じられている金型内に射出成形し、そこで1.0~3.0秒間冷却してプリフォームを形成し、その後直ちに型を開き延伸ロッドを用いて縦方向へと延伸配向し、さらにブロー成形によって横方向へと延伸配向させ成形品を得ることにより行うことができる。
【実施例】
【0084】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[原料およびその物性の測定方法]
以下の方法により、原料の物性を測定した。
【0085】
<プロピレン系重合体の物性>
MFR
ASTM D-1238(測定温度230℃、荷重2.16kg)に従って、プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0086】
また、次のDinsolの割合を求めた際に得られた析出物(α)を測定試料として用い、ASTM D-1238(測定温度230℃、荷重2.16kg)に従って、Dinsolのメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0087】
D
insol
の割合およびD
sol
の割合
プロピレン系重合体のサンプル5gにn-デカン200mlを加え、145℃、30分間加熱溶解を行い、溶液(1)を得た。
【0088】
次に約2時間かけて、溶液(1)を室温(25℃)まで冷却し、25℃で30分間放置し、析出物(α)を含む溶液(2)を得た。その後、溶液(2)から析出物(α)を目開き約15μmの濾布でろ別し、析出物(α)を乾燥させた後、析出物(α)の質量を測定した。析出物(α)の質量をサンプル質量(5g)で除したものを、n-デカン不溶部(Dinsol)の割合とした。
【0089】
また、析出物(α)をろ別した溶液(2)を、溶液(2)の約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させ、析出物(β)を得た。その後、析出物(β)をガラスフィルター(G2、目開き約100~160μm)でろ別し、乾燥させた後、析出物(β)の質量を測定した。析出物(β)の質量をサンプル質量(5g)で除したものをn-デカン可溶部(Dsol)の割合とした。
【0090】
D
insol
に占めるエチレン由来の構成単位の割合、およびD
sol
に占めるエチレン由来の構成単位の割合
前記Dinsolの割合を測定した際に得られた析出物(α)をサンプルとして用い、下記条件にて13C-NMRの測定を行った。
(13C-NMR測定条件)
測定装置:日本電子製LA400型核磁気共鳴装置
測定モード:BCM(Bilevel Complete decoupling)
観測周波数:100.4MHz
観測範囲:17006.8Hz
パルス幅:C核45°(7.8μ秒)
パルス繰り返し時間:5秒
試料管:5mmφ
試料管回転数:12Hz
積算回数:20000回
測定温度:125℃
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン:0.35ml/重ベンゼン:0.2ml
試料量:約40mg
【0091】
測定で得られたスペクトルより、下記文献(1)に準じて、モノマー連鎖分布(トリアッド(3連子)分布)の比率を決定し、前記Dinsolに占めるエチレン由来の構成単位のモル分率(mol%)(以下E(mol%)と記す)およびプロピレン由来の構成単位のモル分率(mol%)(以下P(mol%)と記す)を算出した。求められたE(mol%)およびP(mol%)から下記(式1)に従い前記Dinsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合(質量%)(以下E(質量%)と記す。)を算出した。
【0092】
文献(1):Kakugo,M.; Naito,Y.; Mizunuma,K.; Miyatake,T., Carbon-13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene-propylene copolymers preparedwith delta-titanium trichloride-diethylaluminum chloride. Macromolecules 1982, 15, (4), 1150-1152
E(質量%)=E(mol%)×28×100/[P(mol%)×42+E(mol%)×28](式1)
【0093】
さらに、サンプルを前記Dsolの割合を測定した際に得られた析出物(β)に変更したこと以外は上述のDinsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合の測定方法と同様の方法により、Dsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合を算出した。
【0094】
D
sol
の極限粘度[η
sol
]
サンプルとして、前記Dsolの割合を求めた際に得られた析出物(β)を用いた。
このサンプル約25mgをデカリン25mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。
【0095】
このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。
この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求め、この値をDsolの、デカリン中135℃で測定した極限粘度[ηsol]とした。
【0096】
<エチレン系重合体の物性>
MFR
ASTM D-1238(測定温度190℃、荷重2.16kg)に従ってメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0097】
密度
メルトフローレート測定時(ASTM D-1238)に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したものをサンプルとして用い、密度勾配管法にて密度の測定を行い、エチレン系重合体の密度を決定した。
【0098】
[組成物の原料]
〔プロピレン系重合体〕
プロピレン系重合体として、以下のプロピレン系重合体(A-1)~(A-17)を製造した。
【0099】
[製造例1](プロピレン系重合体(A-1)の製造)
(1)固体触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0100】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
【0101】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0102】
ここで、前記遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに上記固体触媒成分の上澄み液10mlを注射器で採取し装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、50容量%硫酸10mlを装入し30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤としてconc.H3PO4 1mlとチタンの発色試薬として3%H2O2水溶液 5mlを加え、さらにイオン交換水で100mlにメスアップした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測し遊離チタンの検出を行った。この吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去および遊離チタンの検出を行った。
【0103】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分(a)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(a)の組成は、チタン2.3質量%、塩素61質量%、マグネシウム19質量%、DIBP 12.5質量%であった。
【0104】
(2)予備重合触媒成分の調製
内容積500mlの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタンを400ml、トリエチルアルミニウム19.2mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.8mmol、上記固体状チタン触媒成分(a)4gを加えた。内温を20℃に保持し、攪拌しながらプロピレンを導入した。1時間後、攪拌を停止し結果的に固体状チタン触媒成分(a)1g当たり2gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分(b)を得た。
【0105】
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を系内の圧力が0.80MPa-Gとなるように装入し、続いて攪拌しながらプロピレンを導入した。
【0106】
内温が80℃、全圧が0.8MPa-Gに系内が安定した後、系内に上記予備重合触媒成分(b)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mlを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
【0107】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
プロピレン単独重合体の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素を系内の圧力が0.60MPa-Gとなるように装入し、続いて組成がプロピレン/エチレン=(4.0L/分)/(2.4L/分)である混合ガスを導入した。内温60℃に調整して60分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
【0108】
所定時間経過したところで50mlのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。得られたプロピレン系重合体(A-1)のMFRは120g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0109】
[製造例2](プロピレン系重合体(A-2)の製造)
「重合-1」において水素を系内の圧力が0.25MPa-Gとなるように装入し、「重合-2」においてプロピレン/エチレン共重合を40分間行った以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-2)のMFRは60g/10分、Dinsolは92質量%、Dsolは8質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0110】
[製造例3](プロピレン系重合体(A-3)の製造)
「重合-1」において水素を系内の圧力が1.30MPa-Gとなるように装入した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-3)のMFRは170g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0111】
[製造例4](プロピレン系重合体(A-4)の製造)
「重合-1」において水素を系内の圧力が1.30MPa-Gとなるように装入し、「重合-2」においてプロピレン/エチレン共重合を80分間行った以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-4)のMFRは140g/10分、Dinsolは80質量%、Dsolは20質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0112】
[製造例5](プロピレン系重合体(A-5)の製造)
「重合-2」において混合ガスの組成をプロピレン/エチレン=(4.0L/分)/(1.60L/分)とした以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-5)のMFRは120g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は25質量%であった。
【0113】
[製造例6](プロピレン系重合体(A-6)の製造)
「重合-2」において混合ガスの組成をプロピレン/エチレン=(4.0L/分)/(2.57L/分)とした以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-6)のMFRは120g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は35質量%であった。
【0114】
[製造例7](プロピレン系重合体(A-7)の製造)
「重合-2」において水素を系内の圧力が1.0MPa-Gとなるように装入した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-7)のMFRは130g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は1.8dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0115】
[製造例8](プロピレン系重合体(A-8)の製造)
「重合-2」において水素を系内の圧力が0.35MPa-Gとなるように装入した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-8)のMFRは110g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は3.0dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0116】
[製造例9](プロピレン系重合体(A-9)の製造)
「重合-1」においてプロピレン導入時に重合槽内の気相部のエチレン濃度が0.8mol%(プロピレンおよびエチレンの合計を100mol%とする。)となるようにエチレンも導入した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-9)のMFRは120g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は1.0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0117】
[製造例10](プロピレン系重合体(A-10)の製造)
「重合-1」において水素を系内の圧力が0.15MPa-Gとなるように装入した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-10)のMFRは40g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0118】
[製造例11](プロピレン系重合体(A-11)の製造)
「重合-1」において水素を系内の圧力が1.80MPa-Gとなるように装入した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-11)のMFRは200g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0119】
[製造例12](プロピレン系重合体(A-12)の製造)
「重合-1」において水素を系内の圧力が0.25MPa-Gとなるように装入し、「重合-2」においてプロピレン/エチレン共重合を30分間行った以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-12)のMFRは65g/10分、Dinsolは94質量%、Dsolは6質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0120】
[製造例13](プロピレン系重合体(A-13)の製造)
「重合-1」において水素を系内の圧力が1.30MPa-Gとなるように装入し、「重合-2」においてプロピレン/エチレン共重合を110分間行った以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-13)のMFRは100g/10分、Dinsolは75質量%、Dsolは25質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0121】
[製造例14](プロピレン系重合体(A-14)の製造)
「重合-2」において混合ガスの組成をプロピレン/エチレン=(4.0L/分)/(1.40L/分)とした以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-14)のMFRは120g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は22質量%であった。
【0122】
[製造例15](プロピレン系重合体(A-15)の製造)
「重合-2」において混合ガスの組成をプロピレン/エチレン=(4.0L/分)/(2.65L/分)とした以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-15)のMFRは120g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は38質量%であった。
【0123】
[製造例16](プロピレン系重合体(A-16)の製造)
「重合-2」において水素を系内の圧力が0.32MPa-Gとなるように装入した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-16)のMFRは100g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は3.2dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は0質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0124】
[製造例17](プロピレン系重合体(A-17)の製造)
「重合-1」においてプロピレン導入時に重合槽内の気相部のエチレン濃度が0.9mol%(プロピレンおよびエチレンの合計を100mol%とする。)となるようにエチレンも導入した以外は製造例1と同様にして、重合を行った。得られたプロピレン系重合体(A-17)のMFRは120g/10分、Dinsolは86質量%、Dsolは14質量%、[ηsol]は2.5dl/g、Dinsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は1.6質量%、Dsol中のエチレンに由来する構成単位の割合は31質量%であった。
【0125】
〔エチレン系重合体〕
エチレン系重合体として、以下の市販品を使用した。
・エチレン系重合体(B-1):ハイゼックス2200J(MFR=5.2g/10分、密度=964kg/m3)
・エチレン系重合体(B-2):ハイゼックス1700J(MFR=16g/10分、密度=967kg/m3)
・エチレン系重合体(B-3):ネオゼックス45200(MFR=20g/10分、密度=943kg/m3)
・エチレン系重合体(B-4):ネオゼックス2805JV(MFR=3.0g/10分、密度=965kg/m3)
・エチレン系重合体(B-5):ハイゼックス3300F(MFR=1.1g/10分、密度=950kg/m3)
・エチレン系重合体(B-6):ネオゼックス25200J(MFR=16g/10分、密度=926kg/m3)
(いずれも、(株)プライムポリマー製)
【0126】
〔造核剤〕
造核剤として、以下の市販品を使用した。
・造核剤(C-1):アデカスタブNA-11((株)ADEKA製)
・造核剤(C-2):ミラッドNX8000J(ミリケン社製)
・造核剤(C-3):AL-PTBBA(ジャパンケムテック製)
【0127】
[実施例1]
(1)プロピレン系樹脂組成物の製造および評価
90質量部のプロピレン系重合体(A-1)、10質量部のエチレン系重合体(B-1)、および0.1質量部の造核剤(C-1)をヘンシェルミキサーにより攪拌し混合した。
【0128】
得られた混合物を東芝機械株式会社製の二軸押出機(TEM35BS)を用いて下記条件にて溶融混練してストランドを得た。
・型式:TEM35BS(35mm二軸押出機)
・スクリュー回転数:300rpm
・スクリーンメッシュ:#200
・樹脂温度:220℃
【0129】
得られたストランドを水冷後ペレタイザーにて切断することにより、プロピレン系樹脂組成物のペレット(1)を得た。
このペレット(1)を用いて、下記に示したとおりの方法でプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、測定温度230℃、荷重2.16kg)および融点の測定を実施した。結果を表1に示す。
【0130】
MFR(メルトフローレート)
ASTM D-1238(測定温度230℃、荷重2.16kg)に従ってメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0131】
融点(Tm)
JIS-K7121に従って、示差走査熱量計(DSC、パーキンエルマー社製(Diamond DSC))を用いて測定を行った。ここで測定した第3stepにおける吸熱ピークの頂点を結晶融点(Tm)と定義した。吸熱ピークが複数ある場合は最大吸熱ピーク頂点を結晶融点(Tm)と定義する。(測定条件)
測定環境:窒素ガス雰囲気
サンプル量:5mg
サンプル形状:プレスフィルム(230℃成形、厚み200~400μm)
第1step:30℃より速度10℃/分で240℃まで昇温し、10分間保持する。
第2step:10℃/分で60℃まで降温する。
第3step:10℃/分で240℃まで昇温する。
【0132】
(2)容器の製造および評価
0.5mmt飲料容器成形
型締め力100トンの電動射出成形機(ファナック社製ロボショットS-2000i-100B)を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度20℃、射出1次圧力150MPa、射出速度100mm/秒、保圧圧力80MPa、保圧時間1.3秒の条件で、プロピレン系樹脂組成物のペレット(1)を射出成形し、高さ110mm、フランジ直径70mm、側面肉厚0.5mmの容器(カップ)を射出成形した。
得られた容器を以下のように評価した。結果を表1に示す。
【0133】
高速成形性
上記成形条件における連続成形において、100shot間離型不良、容器変形、エジェクト時の破損等のトラブルが発生することなく成形可能となる最少サイクルタイムを測定した。
【0134】
製品不良
容器の外観を観察した。表1、2中の記号の意味は以下のとおりである。
○:製品不良が発生しなかった
×:流動末端部であるフランジ面へのバリ発生や末端部まで充填されない現象及び充填不足による容器表面の凹み等のヒケ現象が発生した
【0135】
剛性
得られた容器を48~72時間24℃条件下で状態調整を行い、万能試験機(島津製作所製、AG-1000KNX幅広250mm)を用いて、容器を縦の状態(開口部を下に向けた状態)で天面から荷重を加え、容器が変形するまでの最大荷重を測定した。
【0136】
耐衝撃性
得られた容器を48~72時間24℃条件下で状態調整を行い、更に5℃の環境下で24時間以上状態調整を行った。
【0137】
状態調整後の容器を-5℃環境下で容器底面が上になるように平坦な鉄板上に置き、容器上に、質量6.8kgの鉄板を100cmの高さから落下させ、容器の状態を観察した。
【0138】
表1中の記号の意味は以下のとおりである。
○:容器がつぶれるたが亀裂または破損は発生しなかった。
×:容器に亀裂が入ったか、または容器がガラス状に破損した。
【0139】
[実施例2~13および比較例1~13]
プロピレン系重合体、エチレン系重合体および造核剤の種類および量を表1、2に記載のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、プロピレン系樹脂組成物のペレットを製造し、容器を製造し、さらにこれらを評価した。結果を表1および2に示す。
【0140】
【0141】