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特許7126605タンパク質またはペプチド濃度を判定する方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】タンパク質またはペプチド濃度を判定する方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/08 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
G01N24/08 510Q
G01N24/08 510L
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021508301
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019046437
(87)【国際公開番号】W WO2020041053
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】62/720,607
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/727,708
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー,スコット アラン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,ウェスリー クリントン,ジュニア.
(72)【発明者】
【氏名】ワイズ,ウィリアム エフ.アイブイ
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/179535(WO,A1)
【文献】特表2002-531065(JP,A)
【文献】特表2004-502451(JP,A)
【文献】特表2005-510460(JP,A)
【文献】特表2010-525328(JP,A)
【文献】Profiling Formulated Monoclonal Antibodies by 1H NMR Spectroscopy,Analytical Chemistry,米国,American Chemical Society,2013年09月05日,Vol. 85,pp. 9623-9629,doi: 10.1021/ac401867f
【文献】Reduction of Guanosyl Radicals in Reactions with Proteins Studied by TR-CIDNP,Applied Magnetic Resonance,Springer,2012年10月12日,Vol. 44,pp. 233-245,doi: 10.1007/s00723-012-0403-0
【文献】Quantitative 1H NMR spectroscopy,Trends in Analytical Chemistry,Elsevier Ltd.,2012年05月01日,Vol. 35,pp. 5-26,doi: 10.1016/j.trac.2012.02.007
【文献】Simple NMR methods for evaluating higher order structures of monoclonal antibody therapeutics with quinary structure,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,Elsevier B. V.,2016年06月07日,Vol. 128,pp. 398-407,doi: 10.1016/j.jpba.2016.06.007
【文献】Optimizationod Diffusion-Filtered NMR Experiments for Selective Suppression of Residual Nondeuterated Solvent and Water Signals from 1H NMR Spectra of Organic Compounds,Journal of Organic Chemistry,Vol. 71,米国,Americal Chemical Society,2006年04月21日,pp. 4103-4110,doi: 10.1021/jo060229i
【文献】Characterizing monoclonal antibody formulations in arginine glutamate solutions using 1H NMR spectroscopy,MABS,Taylor & Francis,2016年09月02日,Vol. 8, No. 7,pp. 1245-1258,doi: 10.1080/19420862.2016.1214786
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00-G01N 24/14
G01R 33/28-G01R 33/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
ACS PUBLICATIONS
Science Direct
Oxford Journals
Springer Link
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中のタンパク質の絶対タンパク質濃度を判定する方法であって、
a.前記タンパク質を変性させるステップと、
b.前記変性されたタンパク質に対してqNMR分光法を実行するステップであって、qNMR分光法を実施する前記ステップが、拡散フィルタの使用を含む、実行するステップと、
c.参照標準および参照技術を使用して、前記タンパク質の前記絶対タンパク質濃度を計算するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
さらに、
.前記タンパク質の前記計算された濃度から前記タンパク質の前記分子パラメータを判定するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質の前記分子パラメータが、吸光係数、屈折率、または部分比容積を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸光係数がランベルトベールの法則によって判定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が、カオトロピック剤を用いて変性される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カオトロピック剤が、塩化グアニジニウム-d6または尿素-dである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記参照標準が、外部参照標準である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記外部参照標準が、小分子一次標準である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記外部参照標準が、マレイン酸である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が、DOを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記参照技術が、PULCONである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記d.において判定されたタンパク質のパラメータを使用して、後続の試験バッチにおけるタンパク質またはペプチドの濃度を決定するステップをさらに含む、請求項2、7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ロットリリース時試験が、UV試験を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質が、抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、または四重特異性抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質が、融合タンパク質である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質が、ペプチドである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質またはペプチドの濃度および/または吸光係数などの分子特異的パラメータを判定する方法、およびそれらの使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中のペプチドまたはタンパク質、例えば抗体の濃度は、生物学的治療薬の開発および商業化、ならびに他の多くの研究分野において重要な特性である。例えば、薬剤の有効性を判定し、規制当局への申請のためにデータをまとまったパッケージに統合するためには、正確かつ精密な濃度が必要である。
【0003】
現在、溶液中のタンパク質の濃度を判定するためのいくつかのアプローチが存在している。1つのかかるアプローチは、UV吸光係数(ε)または微分屈折率増分(dn/dc)などの分子固有のパラメータを判定することを含む。他のアプローチとして、(i)重量分析(Nozaki Y.,Arch.Biochem.Biophys.249(2),437-446(1986))、(ii)発色法(Bradford M.M.,Anal.Biochem.72(1-2),248-254(1976))、(iii)ケルダール窒素判定(Jaenicke L.,Anal.Biochem.61(2),623-627(1974))、および(iv)アミノ酸分析(「AAA」)(Spackman D.H.,et al.,Anal.Chem.30(7):1190-1206(1958))が挙げられる。しかしながら、これらの方法は、タンパク質の固有の特性とは対照的に、リガンド結合、分解、誘導体化などの実験的に得られたタンパク質の特性に依存しており、不正確で不精密な結果につながる可能性がある。
【0004】
例えば、UV吸光係数(ε)法では、εは実験計算から予測されるが、結果は推定値であり、実際の値ではない(例えば、Edelhoch H.,Biochemistry 6(7),1948-1954(1967)を参照)。さらに、例えば、凍結乾燥タンパク質の重量分析は、かなりの量の結合水、塩、および/または他の製剤成分を含み得、これは、不正確な濃度計算につながり得る。発色法は、タンパク質の組成に依存し、絶対濃度を提供するために検量線が必要である。AAAによって実行される濃度判定での過酷な条件の使用からも、課題および制限が生じる。例えば、加水分解および誘導体化ステップ中に、一部の重要なアミノ酸の分解、長い実行時間、および高い変動性を引き起こす可能性がある。(Sittampalam G.S.,et al,J.Assoc.of Official Anal.Chemists 71(4), 833-838 (1988)).上記の課題は全て、タンパク質またはペプチドの濃度および分子固有のパラメータを計算する際の正確度と精度の低下につながり、これは、分子の有効性、開発可能性、および商品化に影響を与え得る。
【0005】
このように、タンパク質の構造および製剤成分に関係なく、分子相互作用または検量線に依存せずに絶対濃度を提供し、より正確かつ精密であり、過酷なサンプル調製を回避する、新たな正確な絶対タンパク質濃度法が所望されている。かかる方法は、例えば、治療的使用を目的とするタンパク質またはペプチドの調製におけるタンパク質またはペプチドの濃度を判定するのに有用である。
【0006】
核磁気共鳴(NMR)分光法は、化合物の濃度を測定するために使用されている定量的手法である。しかしながら、治療用抗体製剤のような複雑なマトリックス中の大きなタンパク質の絶対濃度を測定するためにNMR分光法を使用することは困難であり、上記と同様の課題を抱えている。例えば、課題の1つに、NMRスペクトルが、様々な塩、緩衝液、界面活性剤、張性剤、さらには治療用製剤に存在する水からの強いピークによって左右されることがある。別のかかる課題は、多くのタンパク質と抗体の高次構造が水素原子の周りに固有の磁気環境を作り出し、それが特定のアミノ酸に対してより大きなH化学シフトウィンドウを引き起こすことである。これらの問題は、NMRの使用によってもたらされる他の固有の課題(例えば、タンパク質共鳴の本質的に広い線幅)とともに、濃度および分子固有のパラメータまたはタンパク質を計算する際の正確度と精度の低下につながる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、絶対タンパク質またはペプチド濃度を測定するための新規の定量的核磁気共鳴分光法を提供するものである。本発明のqNMR分光法は、複雑な溶液であっても高分解能の共鳴を伴うタンパク質またはペプチドのクリーンなスペクトルを生成する。第1のステップは、タンパク質を変性させて(小さなペプチドの場合、このステップは任意であるが、推奨される)、2次、3次、および4次構造によって引き起こされるタンパク質共鳴の線幅を減らし、積分を可能にする。第2のステップは、拡散フィルタを用いてqNMRスペクトルを取得し、水およびその他の製剤成分の共鳴を排除する。最後に、データは正確な濃度判定のために参照標準と比較される。この方法は、本明細書では方法Aと称される。方法Aから判定された濃度を使用して、次に、タンパク質またはペプチドの吸光係数などの分子パラメータを判定することができる。
【0008】
このように、本発明は、溶液中のタンパク質の濃度を取得する方法を提供し、本方法は、タンパク質を変性させることと、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してタンパク質の濃度を計算することと、を含む。本発明はまた、溶液中のペプチドの濃度を取得する方法を提供し、本方法は、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してペプチドの濃度の計算することと、を含む。一部の実施形態では、本方法は、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実施する前にペプチドを変性させることをさらに含む。
【0009】
本発明は、溶液中のタンパク質の吸光係数を取得する方法を提供し、ここで、吸光係数は、ランベルトベールの法則によって判定され、ランベルトベールの法則で使用されるタンパク質濃度は、タンパク質を変性させることと、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してタンパク質の濃度を計算することと、を含む、方法において判定される。
【0010】
本発明はまた、溶液中のペプチドの吸光係数を取得する方法を提供し、ここで、吸光係数は、ランベルトベールの法則によって判定され、ランベルトベールの法則で使用されるペプチド濃度は、ペプチドを変性させる任意のステップと、続いて拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行するステップと、参照標準を使用してタンパク質の濃度を計算するステップと、を含む、方法において判定される。一部の実施形態では、本方法は、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実施する前にペプチドを変性させることを含む。
【0011】
本発明は、薬剤物質または薬剤製品の調製においてタンパク質の濃度を判定する方法を提供し、ここで、物質は、溶液中のタンパク質を含み、本方法は、タンパク質の分子パラメータを取得することを含む。一部の実施形態では、分子パラメータは、吸光係数であり、吸光係数は、ランベルトベールの法則によって判定され、ランベルトベールの法則で使用されるタンパク質濃度は、タンパク質を変性させることと、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してタンパク質の濃度を計算することと、を含む、方法において判定される。
【0012】
本発明は、薬剤物質または薬剤製品の調製においてペプチドの濃度を判定する方法を提供し、ここで、物質は、溶液中のペプチドを含み、本方法は、ペプチドの分子パラメータを取得することを含む。一部の実施形態では、分子パラメータは吸光係数であり、吸光係数はランベルトベールの法則によって判定され、ランベルトベールの法則で使用されるペプチド濃度は、ペプチドを変性させてもよいことと、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してペプチドの濃度を計算することと、を含む、方法において判定される。一部の実施形態では、本方法は、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実施する前にペプチドを変性させることを含む。
【0013】
本発明はさらに、溶液中のタンパク質の分子パラメータを取得する方法を提供し、本方法は、タンパク質を変性させることと、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してタンパク質の濃度を計算することと、計算された濃度からタンパク質の分子パラメータを判定することと、を含む。一実施形態では、タンパク質の計算された濃度および判定された系特性は、タンパク質の分子パラメータを判定するための対応する数式で使用される。一部の実施形態では、分子パラメータは吸光係数であり、対応する数式はランベルトベールの法則である。
【0014】
本発明はまた、溶液中のペプチドの分子パラメータを取得する方法を提供し、本方法は、ペプチドを変性させてもよいことと、次いで拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してペプチドの濃度を計算することと、計算された濃度からタンパク質の分子パラメータを判定することと、を含む。一実施形態では、ペプチドの計算された濃度および判定された系特性は、ペプチドの分子パラメータを判定するための対応する数式で使用される。一部の実施形態では、分子パラメータは吸光係数であり、対応する数式はランベルトベールの法則である。
【0015】
本発明は、薬剤物質または薬剤製品の調製において用量を判定する方法を提供し、ここで、物質は、溶液中のタンパク質を含み、本方法は、参照バッチからタンパク質の分子パラメータを取得することを含み、分子パラメータは、タンパク質を変性させることと、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してタンパク質の濃度を計算することと、計算された濃度からタンパク質の分子パラメータの判定することと、を含む、方法において判定される。さらなる実施形態では、本方法は、薬剤物質または薬剤製品の試験バッチを調製することを含み、試験バッチ中のタンパク質の当該濃度は、分子パラメータから判定される。一部のかかる実施形態において、タンパク質濃度は、対応する数式において、分子パラメータおよび対応する系特性を使用して判定される。
【0016】
本発明は、薬剤物質または薬剤製品の調製において用量を判定する方法を提供し、ここで、物質は、溶液中のペプチドを含み、本方法は、参照バッチからペプチドの分子パラメータを取得することを含み、分子パラメータは、ペプチドを変性させてもよいことと、拡散フィルタを用いてNMR分光法を実行することと、参照標準を使用してペプチドの濃度を計算することと、計算された濃度からペプチドの分子パラメータの判定することと、を含む、方法において判定される。さらなる実施形態では、本方法は、薬剤物質または薬剤製品の試験バッチを調製することを含み、試験バッチ中のペプチドの当該濃度は、分子パラメータから判定される。一部のかかる実施形態において、ペプチド濃度は、対応する数式において、分子パラメータおよび対応する系特性を使用して判定される。
【0017】
本発明はまた、参照バッチの調製におけるタンパク質またはペプチドの濃度を判定する方法を提供し、ここで、参照バッチは、溶液中のタンパク質またはペプチドを含み、本方法は、タンパク質を変性させるか、またはペプチドを変性させてもよいことと、拡散フィルタを用いてqNMR分光法を実行することと、参照標準および参照技術を使用してタンパク質またはペプチドの濃度を計算することと、計算された濃度からタンパク質またはペプチドの分子パラメータを判定することと、を含む。さらなる実施形態では、本方法は、試験バッチの調製物中のタンパク質またはペプチドの濃度を判定することをさらに含み、試験バッチ中のペプチドまたはタンパク質の当該濃度は、分子パラメータから判定される。
【0018】
本発明は、本明細書に記載の方法に適用可能な実施形態を提供する。かかる一実施形態は、タンパク質またはペプチドがカオトロピック剤を用いて変性される方法を含む。一部のかかる実施形態において、カオトロピック剤は尿素-d4である。他のかかる実施形態において、カオトロピック剤は塩化グアニジン-d6である。一部の実施形態では、参照標準は内部参照標準である。好ましい実施形態では、参照標準は外部参照標準である。一部のかかる実施形態では、外部参照標準は、小分子一次標準である。特定の実施形態では、外部参照標準はマレイン酸である。一部のかかる実施形態では、外部参照技術はPULCONである。一部の実施形態では、タンパク質は抗体である。一部のかかる実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。他のかかる実施形態では、抗体は二重特異性抗体である。一部の実施形態では、測定されるタンパク質またはペプチドを含む溶液は、DOを含む。
【0019】
本発明はまた、様々な用途において、方法A、または方法Aで得られた濃度から判定される分子パラメータの使用を企図する。かかる用途には、毒物学、臨床的、および/または市販の薬剤製品の用量を判定する方法、企業または一次参照標準を判定する方法、製造中のタンパク質またはペプチドの濃度を判定する方法、タンパク質またはペプチドを分注する方法、分注されたタンパク質またはペプチドの濃度が所望の濃度に類似しているタンパク質またはペプチドを分注する方法、ロットリリース時試験を含む方法、または薬剤物質または薬剤製品を処方する方法が含まれる。
【0020】
本発明は、方法Aが、治療薬または油の分野におけるタンパク質またはペプチドなどの任意のタンパク質またはペプチドに関する本明細書に記載の目的のために使用され得ることを企図する。例として(限定することを意図しない)、方法Aは、そのかかる任意のバイオ類似体を含む、以下のいずれかまたは全てに関連する用途で実施され得、ここで、タンパク質またはペプチドは、以下のまたは任意のかかるバイオ類似体の活性成分である:デュラグルチド(Trulicity(登録商標)の名前で一部の国で販売)、イキセキズマブ(Taltz(登録商標)の名前で一部の国で販売)、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標)の名前で一部の国で販売)、セツキシマブ(Erbitux(登録商標)の名前で一部の国で販売)、オララツマブ(Lartruvo(登録商標)の名前で一部の国で販売)、ネシツムマブ(Portrazza(登録商標)の名前で一部の国で販売)、ガルカネズマブ(LY2951742としても既知)などの抗CGRP抗体、ミリキズマブ(LY3074828としても既知)などの抗IL-23抗体、ソラネズマブ(LY2062430としても既知)、タネズマブ、抗N3pG-Aβ抗体、抗タウ抗体、抗Aβ42抗体、抗BAFF/IL-17二重特異性抗体、抗CSF-1R抗体、抗CXCR1/2抗体、抗IL-21抗体、抗IL-23/CGRP二重特異性抗体、抗IL-33抗体、抗PD-L1抗体、および抗TIM-3抗体。
【0021】
本発明はまた、(i)方法Aがタンパク質またはペプチドの他の固有のパラメータを測定するための基礎として役立つか、または現在の相対濃度法のいずれかを絶対法に変換するための基礎として役立つように適していることと、(ii)方法Aを使用して、発色性アミノ酸を欠き、UVによるモニタリングが困難なペプチドを定量化することができることと、(iii)方法Aにより、現在のAAA法よりも簡単、迅速、かつ安全なサンプル調製およびデータ取得が可能となることと、(iv)方法Aにより、様々なタンパク質および製剤に好適である結果の濃度の直線性、精度、および正確度が提供されることと、(v)方法Aを使用して、小分子汚染物質の存在下で、他のタイプの高分子(ポリマー、界面活性剤など)を定量化することができることと、を企図している。
【0022】
本発明は、本明細書に記載の方法が、本明細書にも記載の数式を利用することができることを企図している。例えば、1リットルあたりのグラム数の単位でのタンパク質濃度cは、次の式を使用してqNMRスペクトルから計算することができる。
【数1】
【0023】
この数式の詳細な説明は、例えば、本明細書に記載されている。
【0024】
当業者は、特定のソフトウェアプログラムが本明細書に例示されているが、他のプログラムを使用して同等の結果を得ることができることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】Agilent社の分光計のbppsteパルスシーケンス(別名、Dbppste)と様々な遅延の定義。
図2】NIST mAbのH NMRスペクトル。(A)標準的なワンパルスシーケンスでネイティブの形態の、(B)垂直スケール5000倍でAと同じ、(C)拡散フィルタを用いたネイティブの、および(D)拡散フィルタを用いて変性させた、NISTのmAbのH NMRスペクトル。アスタリスクでマークされたピークは、ヒスチジンバッファ由来のピークである。スキャン数は、A~Cで1024回、Dで64回であった。
図3A】NIST mAbのD測定。図3a:bppsteパルスシーケンスで取得した変性mAb標準のNMRスペクトル。挿入図:I/L/V共鳴のピークの拡大。挿入図:表示されている領域の拡大画像。
図3B図3b:左:DECRAアルゴリズムによって判定された様々な拡散種の純粋なNMRスペクトル。右:DECRAアルゴリズムからのStejkal-Tannerプロットと拡散係数。
図4A】NIST mAb上でのTおよびT測定。図4a:bppsteパルスシーケンスを使用したTとTの測定からの代表的なデータ。左:Tを測定するためのbppsteパルスシーケンスセットアップのためのNMRスペクトルとパラメータ。右:Tを測定するためのbppsteパルスシーケンスセットアップのためのNMRスペクトルとパラメータ。
図4B図4b:TおよびTの計算のためのプロット。
図5】変性NIST BSAの14サンプルのDF-qNMRスペクトル。挿入図:表示されている領域の拡大画像。
図6】NIST BSAサンプル濃度:方法Aと重量測定。
図7】NIST BSA部分比容積:サンプル密度対BSA濃度。
図8】変性二重特異性抗体の14サンプルのDF-qNMRスペクトル。変性二重特異性抗体の14サンプルのDF-qNMRスペクトル。残留水のピークにはアスタリスクが付されている。挿入図:表示されている領域の拡大画像。
図9】二重特異性抗体サンプル濃度:方法Aと重量測定。
【0026】
定義
本明細書で使用される場合、「核磁気共鳴分光法」(「NMR分光法」とも称される)は、当業者に既知の分光技術を指し、核磁気共鳴(NMR)スペクトルを使用して、有機分子の構造を研究することができる。本明細書で使用される場合、「定量的核磁気共鳴分光法」(「qNMR分光法」とも称される)は、1つ以上のNMRスペクトルからサンプルの純度または濃度に関する定量的情報を取得することを指す。かかるスペクトルは、本明細書では、定量的核磁気共鳴(qNMR)スペクトルと称される。NMR分光法は、「拡散フィルタ」の使用を組み込むことができ、これは、サイズに基づいて混合物中のより小さな分子の信号を選択的に減衰させるために使用することができる(例えば、Stilbs P.,Prog.Nucl.Magn.Reson.Spectrosc.19(1):1-45(1987)を参照)。マトリックスピークとタンパク質ピークの減衰のバランスをとるために、拡散フィルタの強度は、各実験環境に基づいて当業者が判定することができる。例えば、バランスが弱すぎる場合、拡散フィルタの値は制限される。バランスが強すぎると、拡散フィルタがタンパク質信号の抑制を開始し、測定の信号対雑音比が低下する。この低下により、実験時間が長くなる可能性がある。別の例として、マトリックス成分の1つが完全に除去されておらず、干渉ピークを示している場合、タンパク質のピーク面積に寄与しているため、最も正確な結果を得るには、それを差し引く必要がある。これは、タンパク質を含まないマトリックスを含むブランクサンプルを調製し、ブランクサンプルを拡散フィルタを用いて実行し、残りのマトリックスピークの面積を判定し、タンパク質サンプルで得られた面積からこの数値を差し引くことによって実行することができる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「参照標準」とは、そのH-NMRスペクトルが既知の数のプロトンを表す少なくとも1つの特徴的なピークを提供する化合物であって、その純度および濃度が高い確実性で既知である化合物を指す。参照標準は、内部参照標準であってもよく、この場合、参照標準は対象のタンパク質またはペプチドを含む溶液中に存在する。または、参照標準は、外部参照標準であってもよく、この場合、参照標準は対象のタンパク質またはペプチドを含む溶液から分離されている。参照標準は、小分子一次参照標準であってもよい。小分子一次参照標準は、別の標準に対して較正されておらず、代わりにその質量などの品質によって定義される材料である。H qNMR内部標準として一般的に使用される小分子認定参照材料は、容易に入手可能であり、外部標準としても使用することができる[例えば、Rigger et al.,M.J.AOAC International,2017,100,1365-1375を参照]。
【0028】
参照技術は、参照標準のデータを使用する数学的アルゴリズムである。例えば、外部参照技術は、外部参照標準のデータを使用する数学的アルゴリズムである。かかる一例として、パルス長-塩基濃度判定(PULCON)技術がある((Wider G.and Dreier L.J.,Am.Chem.Soc.128(8),2571-2576(2006))。
【0029】
本明細書で使用される場合、「DF-qNMR」スペクトルは、拡散フィルタが適用され、参照標準と比較した場合に目的のタンパク質またはペプチドの純度または濃度に関する定量的情報を得ることができるNMRスペクトルを指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「分子パラメータ」は、他の系特性(例えば、温度、圧力、または組成)の変化に応答して、ある系特性(例えば、吸光度、密度、屈折率)が変化する方法に関連するスカラー値を意味する。分子パラメータを判定するために使用される数式(「対応する数式」)は、既知の系特性によって異なる場合がある。分子パラメータとは、タンパク質またはペプチドの固有の特性を指す。
【0031】
【数2】
【0032】
当業者は、濃度(方法Aから判定される濃度)の関数としての吸光度/密度/屈折率の複数の測定値の線形回帰によって、対象の分子パラメータを判定することができる。吸光係数などの分子パラメータを使用して、UV吸光度などの対応する系特性を測定し、それらを相関させる対応する数式(例:ランベルトベールの法則)を解くことにより、薬剤の濃度を判定することができる。
【0033】
「モノクローナル抗体」の一般的な構造は、既知である。IgG抗体は、鎖内および鎖間ジスルフィド結合を介して架橋された4つのポリペプチド鎖(2つの同一の「重」鎖および2つの同一の「軽」鎖)からなるヘテロ四量体である。各重鎖-軽鎖対の可変領域は、結合して結合部位を形成する。(VH)および軽鎖可変領域(VL)は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域と、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存性の高い領域に細分化することができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成されており、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含有する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体」は、IgG-scFv形式(PCT/US2015/058719で報告される)および二価IgG形式(US2018/0009908で開示される)を含むがこれらに限定されない二価抗体構築物を指す。本発明はまた、三次または四次構造に関係なく、任意のヒト操作タンパク質または抗体が、本明細書に記載の方法で使用され得ることも企図する。かかるヒト操作タンパク質または抗体の例には、三重特異性または四重特異性抗体および融合タンパク質が含まれる。
【0035】
本明細書で使用される場合、ペプチドはアミノ酸のポリマー鎖を含む。これらのアミノ酸は、修飾アミノ酸を含む天然または合成アミノ酸であり得る。ペプチドは二次および三次構造が少ない場合があるが、溶液中で凝集する傾向がある。したがって、ペプチドはカオトロピック剤を用いて変性させることもできる。ペプチドの変性は、NMR分光法における信号対雑音比の増加をもたらす可能性があり、それによって積分が容易になる。ペプチドを変性させると、より濃縮されたサンプルの検査が可能になり、実験時間が短縮される可能性がある。本明細書に記載の方法の目的のために、ペプチドが変性させると、ペプチド濃度の判定はより正確となり得る。カオトロピック剤を用いて変性する場合、好ましいカオトロピック剤は、各ペプチドの特定の要件に依存し、当業者によって実験的に判定することができる。
【0036】
当業者は、タンパク質がアミノ酸の1つ以上のポリマーペプチド鎖を含むことを認識するであろう。これらのアミノ酸は、修飾アミノ酸を含む天然または合成アミノ酸であり得る。タンパク質は組換えタンパク質であり得る。タンパク質の一次構造は、単量体のアミノ酸サブユニットの線形配列で構成されている。タンパク質の二次構造には、α-ヘリックスおよびβ-シートなど、アミノ酸鎖の局所セグメントの3次元構造的特徴を生み出す水素結合のパターンが含まれている。タンパク質の三次構造は、3次元の原子座標によって定義されるタンパク質の全体的な形状を表している。四次構造とは、複合体における2つ以上のタンパク質サブユニットの配置を指す。タンパク質は「変性」させることができ、外部応力またはカオトロピック剤がタンパク質を含む溶液に加えられ、タンパク質が折りたたまれる。したがって、変性タンパク質は、その二次、三次、および四次構造の特徴の大部分を失っている。カオトロピック剤の例としては、尿素-dおよび塩化グアニジニウム-dが挙げられる。
【0037】
本明細書でも使用される「溶液」は、水に加えて成分を含む、ヒト操作水性混合物中のペプチドまたはタンパク質を指す。「バッチ」とは、タンパク質またはペプチドであり、指定された範囲内で均一な特性および品質を有することが意図されており、同一の製造サイクル中に単一の製造指示に従って製造される、特定の量の薬剤または他の材料を指す。「ロット」とは、指定された制限内で均一な特性と品質を持つバッチ、またはバッチの特定の識別された部分を指す。または、連続プロセスによって製造された薬剤製品の場合、指定された制限内で均一な特性と品質を保証する方法で、時間または量の単位で製造された特定の識別された量である。「参照バッチ」は、確立され、適切に特徴付けられた内製の一次参照材料を指す。ここで、材料はタンパク質またはペプチドを含み、材料は、製造および臨床材料を代表するロットから調製される。方法Aは、参照バッチの溶液中のタンパク質またはペプチドの濃度と分子パラメータ(吸光係数など)を判定するために使用される。次に、参照バッチから得られた吸光係数などの分子パラメータを使用して、後続のロット(本明細書では「試験バッチ」と称される)のタンパク質またはペプチドの濃度を判定する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬剤製品」は、一般に、しかし必ずしもそうではないが、1つ以上の他の成分と関連して薬剤物質を含む、完成した剤形、例えば、錠剤、カプセル、または溶液である。「薬剤物質」とは、疾患の診断、治癒、緩和、治療、予防において薬理活性またはその他の直接的な効果をもたらすこと、あるいは人体の構造または機能に影響を与えることを目的とした有効成分であるが、かかる成分の合成に使用される中間体は含まれない。本明細書で使用される場合、薬剤物質はタンパク質またはペプチドを含む。方法Aは、薬剤製品または薬剤物質の製造全体など、タンパク質またはペプチドを含む薬剤製品または薬剤物質に関連する様々な目的に使用することができる。
【0039】
「用量」は、所望の生物学的または医学的応答を誘発するマトリックス中のタンパク質またはペプチドの量を指す。この物質は、凍結乾燥されていても、水溶液であってもよい。治療的使用を目的とした物質を調製するために、当業者は、タンパク質またはペプチドの正確かつ精密な濃度が必要であることを理解するであろう。本明細書に記載の方法は、参照バッチ中のタンパク質またはペプチドの吸光係数または他の分子パラメータを判定し、次にこの吸光係数または他の分子パラメータを使用して、後続の試験バッチ中のタンパク質またはペプチドの濃度を判定することによって、タンパク質またはペプチドの濃度を得る新規な手段を提供する。
【0040】
分注とは、1つの容器でより大きな容積の一部を取り除き、別の容器に加えることを意味する。容器は、凍結乾燥されているか、もしくは溶液中のタンパク質またはペプチドを保持するために好適である、容器、バイアル、フラスコ、またはデバイスなどの任意のアイテムであってもよい。
【0041】
ロットリリース時試験とは、リリース(製造者による市場へのリリース)に先立ち、各有効成分の強度(濃度)を含め、薬剤製品(タンパク質またはペプチドからなる)の最終仕様に十分に適合しているかどうかを、試験室で適切に判定することを指す。ロットリリース時試験は、例えば、ロットリリース時のUV試験であり得る。タンパク質またはペプチドの濃度は、タンパク質またはペプチドの吸光係数から判定することができ、ここで、吸光係数は、参照バッチにおいて方法Aから判定される。
【0042】
次の実施例は、本発明をさらに例解し、本発明の種々の具体的な実施形態を実施するための典型的な方法および手順を提供する。しかしながら、実施例は例解として記載されていること、および種々の修正が当業者によってなされてもよいことが理解される。
【実施例
【0043】
サンプルの調製
参照標準:既知の数のプロトン、既知の純度と濃度を高い確実性で表す少なくとも1つの特徴的なピーク、および溶液中での化学的および物理的安定性を提供するH-NMRスペクトルを持つ任意の化合物を使用して、DF-qNMRスペクトルからの絶対濃度の計算を容易にすることができる。例えば、マレイン酸を外部定量参照標準として使用することができる。外部参照標準としてのマレイン酸を調製するために、認証マレイン酸(11.183mg、0.096347mmol)を5mLのメスフラスコに入れ、DOに溶解する。サンプルの高さが40mmになるように、アリコートをWilmad435精密4mm NMRチューブなどのチューブに移す。
【0044】
タンパク質サンプル:塩化グアニジン-d(0.6g、6mmol)を1mLメスフラスコに入れる。フラスコを天びんに置き、400μLのタンパク質溶液を加える。次に、溶液を穏やかに超音波処理し、全ての固体が溶解するまでボルテックスする。DOを加えて、最終容積を実現する。チューブ内のサンプルの高さが40mmになるように、アリコートをWilmad435精密4mm NMRチューブなどのチューブに移す。
【0045】
ペプチドサンプル:尿素-d(0.13g、2mmol)を1mLメスフラスコに入れる。フラスコを天びんに置き、約1mLのタンパク質溶液を加える。次に、溶液を穏やかに超音波処理し、全ての固体が溶解するまでボルテックスする。DOを加えて、最終容積を実現する。チューブ内のサンプルの高さが40mmになるように、アリコートをWilmad435精密4mm NMRチューブなどのチューブに移す。
【0046】
計算
1リットル当たりのグラム単位でのタンパク質濃度、cPは、次の式を使用してDF-QNMRスペクトルから計算される。
【数3】
式中、cは参照標準の濃度、AはDF-qNMRスペクトルで選択されたタンパク質ピークの面積である(通常、バリン、イソロイシンおよびロイシンのメチル基の1.0~1.4ppmのピークであるが、任意の分解能のピークである可能性がある)Hは参照標準ピークに寄与するプロトンの数、Aは参照標準ピークの面積、Hはタンパク質ピークに寄与するプロトンの数、様々なfは特定の実験条件に依存する関数である。fDFは、拡散フィルタによるタンパク質のピーク面積の減衰を説明し、Stejskal-Tannerの式から導き出される(Johnson,C.S.et al.,Concepts in Magnetic Resonance Part A 2012,40A,39-65)。本明細書で使用されるbppsteパルスシーケンスの場合(Pelta,M.D et al.,Magn.Reson.Chem.1998,36,706-714)、以下によって与えられる。
【数4】
式中、γは、Hの磁気回転比であり、gは、パルス磁場勾配強度であり、δは、パルス磁場勾配長であり、Δは、拡散遅延であり、Tは、対象のタンパク質のプロトンのスピン-格子核緩和時間であり、Tは、対象のタンパク質のプロトンのスピン-スピン核の緩和時間であり、Dは、タンパク質の並進拡散係数であり、τは、bppsteパルスシーケンスの第2の90°パルスと第3の90°パルスとの間の時間(図1参照)であり、τは、第1の90°パルスと第2の90°パルスとの間(および第3の90°パルスと取得との間)の合計時間であり、τは、バイポーラパルス対のパルス磁場勾配パルス間の合計時間である。Agilent社の機器で提供されるパルスシーケンスの場合、これらの項は次の機器パラメータによって定義される。
【数5】
式中、tgsは勾配安定化遅延、trgはパルスに先行するレシーバーのゲート時間、Θは90°のパルス幅である。他の拡散パルスシーケンスでは、FDFの式は異なるであろう。fERには、外部参照に必要な機器パラメータが含まれている。最も基本的な形では、
【数6】
であり、式中、SとGは、それぞれ、タンパク質と参照標準の個々のNMRスペクトルを取得するために使用されるスキャン数とレシーバーゲインである。PULCON方法論を使用すると、次のようになる。
【数7】
式中、TはNMRスペクトルの取得中のサンプル温度である。fDILは、最初のタンパク質サンプルの最終NMRサンプルの希釈を説明する。最終容積が容積測定で取得され、最初のサンプルの分注が重量分析で行われる場合、この係数は次の式で与えられる。
【数8】
式中、volは、最終溶液(すなわち、NMRサンプル溶液)の容積であり、wtおよびdは、最初のタンパク質溶液のアリコートの重量および密度である。あるいは、最初のタンパク質溶液とDOの両方を重量分析で希釈する場合は、
【数9】
式中、wtD2OとdD2Oは、DOの重量および密度である。最後に、fは、濃度単位を定量参照標準の濃度単位(通常はmmol)を、グラム/リットル(または同等にミリグラム/ミリリットル)の一般的な単位に変換する。この場合、
【数10】
であり、式中、Mは、タンパク質の分子量である。
【0047】
式2の第1の指数項は、T核緩和による信号減衰、第2はT核緩和による、第3は分子拡散による信号減衰を表す。数式の全ての項のうち、これらの3つの量(T、T、およびD)が唯一の未知数である。他の全ては、パルスシーケンス/機器パラメータまたは物理定数(γ)である。T、T、およびDは、分子と溶液の条件によって異なり、固有のサンプルごとに測定する必要がある。これは、拡散フィルタと同じパルスシーケンスを使用した3つの別々の実験で行うことができる。Dの測定は、公知の実験であり、勾配強度を増加させながら複数のスペクトルを取得する(Stejskal,E.O.and Tanner,J.E.,J.Chem.Phys.,1965,42,288-292)。これにより、式2のT項およびT項が一定に保たれ、信号の減衰がDのみによって制御されるようになる。次に、DECRA(Windig,W.;Antalek,B.Chemom.Intell.Lab.Syst.,1997,37,241-254)などの好適なアルゴリズムを適用してDを計算する。Agilent社のbppsteパルスシーケンスを用いてTを測定するために、複数のスペクトルは、以下のような拡散遅延および勾配強度(gzlvl1)の組み合わせを使用して取得される。
【数11】
式中、Δ’は次の式で与えられる正しい拡散遅延である。
【数12】
これにより、式2のTおよびDの項が一定に保たれ、信号の減衰がT緩和によってのみ制御されるようになる。選択されたタンパク質ピークのプロトンの有効なTは、その後、Aとτの単指数関数適合から計算される。
【0048】
Agilent社のbppsteパルスシーケンスを用いてTを測定するために、複数のスペクトルは、以下のような勾配安定化遅延、拡散遅延および勾配強度の組み合わせを使用して取得される。
【数13】
gzlvl1は、上記に示すように判定される。これにより、式のTとDの部分が一定に保たれ、信号の減衰はT緩和のみに制御されるようになる。選択されたタンパク質ピークのプロトンの有効なTは、その後、Aとτの単指数関数適合から計算することができる。
【0049】
方法Aのデータ取得
Agilent社DD2 600MHz NMR分光計には、Agilent社H-19F/15N-31P PFGワンプローブが装備されている。プローブ温度およびパルス磁場勾配は、それぞれ、エチレングリコールのサンプルおよびDO中1%HOを用いて較正される。NMRスペクトルは、バイポーラパルス対刺激エコー(bppste)パルスシーケンスを使用して30.0℃で取得される。スキャン回数は64回である。取得パラメータには、20ppmのスペクトル幅、1.363秒の取得時間、30秒の緩和遅延、150ミリ秒の拡散遅延、0.569T/mの強度(最大の92%)の1.4ミリ秒の勾配パルス、および1ミリ秒の勾配安定化遅延が含まれる。
【0050】
並進拡散係数(D)を測定するために、取得パラメータには、1秒の緩和遅延、200ミリ秒の拡散遅延、2.0ミリ秒の拡散勾配長、0.5ミリ秒の勾配安定化遅延、および対数間隔で0.228~0.569T/m(最大の約37~92%)の範囲の勾配強度の7つの値が含まれる。スピン-格子核緩和時間(T)は、20ppmのスペクトル幅、1.363秒の取得時間、3.637秒の緩和遅延、2.0ミリ秒の拡散勾配長、および0.5ミリ秒の勾配安定化遅延を使用してbppsteパルスシーケンスで測定される。拡散遅延と勾配強度の5つのペアとして、(100ミリ秒、0.569T/m)、(203ミリ秒、0.400T/m)、(408ミリ秒、0.281T/m)、(804ミリ秒、0.200 T/m)、および(1202ミリ秒、0.164T/m)が使用される。
【0051】
スピン-スピン核緩和時間(T)も、20ppmのスペクトル幅、1.363秒の取得時間、1秒の緩和遅延、1.4ミリ秒の拡散勾配長を使用してbppsteパルスシーケンスで測定される。勾配安定化遅延、拡散遅延、および勾配強度の6つのセットとして、(1ミリ秒、150.001ミリ秒、0.570)、(2ミリ秒、150.002ミリ秒、0.571T/m)、(4ミリ秒、150.004ミリ秒、0.573T/m)、(8ミリ秒、150.008ミリ秒、0.577T/m)、(12ミリ秒、150.012ミリ秒、0.581T/m)、および(16ミリ秒、150.016ミリ秒、0.575T/m)が使用される。
【0052】
データ分析
DF-QNMR、T1、およびTのデータがMNova V 11.0(Mestrelab Research,S.L.,Santiago de Compostela,Spain)で処理され、拡散データはDOSYToolbox v2.5(Nilsson,M.J.Magn.Reson.2009,200,296-302)で処理、解析されている。FIDは一度ゼロで埋められ、フーリエ変換の前に2.93Hzの指数ウィンドウ関数で乗算される。拡散係数は、DOSYToolboxで利用可能なDECRAアルゴリズムを使用して取得される。TおよびTの値は、MATLAB(登録商標)2016b(MathWorks,Inc.,Natick,Ma)を用いて回帰分析によってbppsteパルスシーケンスから計算される。ロイシン、イソロイシン、および/またはバリンメチルのピーク面積は、MNovaまたはCRAFTのラインフィッティングルーチンを使用したデコンボリューションによって取得される。
【0053】
NIST抗体RM8761での方法Aの使用
NMRによって大規模な製剤化タンパク質を定量化する際の課題を例解するために、NIST RM 8761(10g/L抗体、12.5mM L-ヒスチジンHCl、pH6.0、米国国立標準技術研究所(the National Institute of Standards and Technology、NIST)から市販。例えば、Schiel et al.,Anal. and Bioanal.Chem.,410(8):2127-2139(2018)を参照)のサンプルを10%DOで処理し、H 1D NMRスペクトルを取得する(図2)。水の信号は非常に強くて広範囲にわたるので、抗体の信号を覆い隠す。ヒスチジン添加剤のピークもスペクトルで観察される。タンパク質の実行可能なスペクトルを取得するには、これらの主要なピークを排除する必要がある。このアプリケーションに理想的なNMR技術の1つは、「拡散フィルタ」である。このフィルタでは、対応する分子の拡散係数、つまりサイズに基づいて、スペクトルからピークが除去される。バイポーラパルスペア刺激エコー(bppste)拡散パルスシーケンスを拡散フィルタとして用いて、同じNIST mAbサンプルで取得したH-NMRスペクトルも図2に示す。拡散フィルタは、ベースラインアーチファクトまたは位相歪みを導入することなく、製剤の不要な信号を除去するのに効果的である。
【0054】
しかしながら、多くの場合、タンパク質共鳴の特徴的な広い線幅のために、正確なピークの同定と積分には分解能が不十分である。これは主に、タンパク質の高次構造(HOS)によるものである。単一のタイプのアミノ酸は、他の場合には非常に類似した化学シフトを持ち、タンパク質の二次、三次、および四次構造に起因する固有の磁気環境のために、広い化学シフト分布を示す。したがって、HOSはタンパク質を変性させることによって除去される。タンパク質溶液に変性剤を加えると、サンプルの容積が膨張する。真に定量的であるために、より多くの溶媒が追加され、例えばメスフラスコを使用して精密な容積を達成する。これは、式1のfDILの基礎である。
【0055】
6 Mグアニジン塩化-dで調製拡散濾過したH-NMR NIST RMの8761サンプルを、図2に示されている。線幅の減少とそれに続く信号対雑音比の増加が観察される。イソロイシン、ロイシン、および/またはバリンのメチル基に対応する1.0~1.4ppmのピークのグループは、ベースラインに近い分解能を有しており、定量分析のために積分されることを可能にする。
【0056】
拡散フィルタは、マトリックスからタンパク質信号を分離するのに効果的である。しかしながら、拡散フィルタでは、測定されたNMRピーク面積の固有の定量が行われない。ルーチンのqNMR実験では、核緩和遅延、1つの無線周波数パルス、およびデータ取得期間という3つの基本要素で構成される単純なNMRパルスシーケンスを使用する。十分に長い核緩和遅延を使用すると、結果として得られるNMRピーク面積は、観測された核の数に正確かつ再現性よく比例する。したがって、実験は定量的である。ここで採用されている拡散シーケンスを含む他の全てのNMRパルスシーケンスでは、様々な遅延で分離された複数の高周波パルスが必要である。その結果、平衡値からピークを減衰させる要因により、結果として得られるスペクトルは本質的に定量的ではなくなる。しかしながら、これらの要因が既知であり、減衰の程度を計算することができる場合は、拡散フィルタを定量的にすることができる。これは、式1のfDFの基礎である。
【0057】
内部参照標準よりも外部参照標準の方が好ましい。なぜなら、前者は、内部標準を使用することができるが、2つの分子間の潜在的な相互作用および/またはNMRスペクトル中のピークの重複を回避することができるからである。PULCON技術(パルス長-塩基濃度判定など)を含む、一部の外部標準法が報告されている。この手法は、溶液条件と実験パラメータが異なっていても、1つは参照標準、もう1つは分析対象物の2つの個別スペクトルからの絶対面積を相関させる。したがって、外部参照標準は、対象化合物と同様の特性を有する必要はなく、タンパク質である必要もない。さらに、この方法は、AAAの場合のように全てのアミノ酸に標準を必要とするのではなく、単一の標準のみを必要とする。
【0058】
方法Aの正確度と精度を実証するために、NIST RM8761サンプルの3つの独立した複製を評価する。この10g/Lタンパク質製剤では、わずか64回のスキャンと37分の合計取得時間を使用して、十分な信号対雑音比が得られる。1,476個のプロトンに対応するタンパク質のI/L/Vのメチル基(1.0~1.4ppm)の信号のグループは、ほぼベースラインの分解能を有している。これらの結果により、定量化のための正確な積分が可能になる。濃度計算を容易にするために、T、T、およびDも、上記のbppsteパルスシーケンスを使用してこのピークグループに対して測定される。実行されたデータ取得と分析を図3図4に示す。
【0059】
1個の複製での4つのNMR実験全ての合計実験時間は、110分である。次に、各複製の濃度は、無傷の非グリコシル化分子量(148,041Da)と、分注の重量および測定されたサンプル密度に基づく希釈係数と、を使用して、式9から計算される。平均濃度は、10.02g/L、RSDは0.55%と判定される。これは、ラベルの値である10g/Lと一致している。
【0060】
これらのデータは、方法Aを使用して抗体の濃度を正確かつ精密に判定することができることを示している。
【0061】
NISTウシ血清アルブミン(BSA)での方法Aの使用
NIST(BSA)標準参照材料927e(67.38g/L、20mM塩化ナトリウム、1.0mol/L水酸化ナトリウムでpHを6.5~6.8に調整、米国国立標準技術研究所(the National Institute of Standards and Technology)から市販)を重量測定でさらに4つのタンパク質濃度(表1、サンプルB1~B4)に希釈する。中間濃度(B3)での6個の複製、最高(B5)および最低(B1)濃度のそれぞれでの3個の複製、および中間濃度(B2およびB4)での1個の複製を含む、合計14のサンプルが分析される。各複製のNMRサンプルは、上記のように調製される。方法Aのデータ取得および分析は、上記のように実行される。得られた14個のDF-qNMRスペクトルを、図5に重ねて示す。
【0062】
これらのデータは、水からのピークがほぼ除去され、ベースラインが乱されておらず、タンパク質のI/L/Vのメチル基の信号グループの分解能がベースラインに近いことを示している。各サンプルの濃度は、66,398Daの分子量を使用して式1から計算され、表1に報告されている。5つの濃度全てについて、方法Aで測定された値は、重量分析で計算された値と同様である。以下の表1に示すように、RSDは3セットの複製全てに対して1%未満である。
【表1】
【0063】
図6に示すように、方法Aの濃度と重量分析の濃度をプロットすると、R=0.9997の回帰直線が得られ、調べた濃度範囲全体で直線性が示された。
【0064】
これらのデータは、方法Aを使用して、広い濃度範囲で中型タンパク質の濃度を正確かつ精密に判定することができることを示している。
【0065】
図7は、方法Aで判定されたタンパク質濃度の関数としてのサンプル密度のプロットを示している。2つの量を関連付ける式は、上記で定義されているように、
【数14】
【0066】
二重特異性抗体での方法Aの使用
5つの異なる濃度および14の合計サンプルを有する二重特異性抗体のサンプル(米国特許第9,718,884号の表1の配列によって与えられる)は、上記のように調製される。方法データの取得と分析は、上記のように実行される。本質的に先に説明した手順に従って、次のデータを取得した。
【0067】
図8は、結果として得られたDF-qNMRスペクトルを示している。これは、全体的な外観および品質がBSA(上記)と類似している。濃度は、インタクトな非グリコシル化タンパク質の理論分子量(~200,000Da)を使用して、式1で計算され、以下の表2に要約されている。
【表2】
【0068】
図9に示すように、方法Aの濃度と重量分析の濃度をプロットすると、R=0.996の回帰直線が得られた。
【0069】
これらのデータは、方法Aを使用して、非常に広い濃度範囲にわたる二重特異性抗体の濃度を判定することができることを示している。
【0070】
~5000Daペプチドでの方法Aの使用
希釈された小さなペプチドのサンプル(約5,000Da;PCT/US2017/041922の実施例4の配列によって与えられる)は、上記のようにカオトロピック剤の有無にかかわらず調製される。ペプチドはランダムコイルとしてネイティブに存在し、濃度が低いため、より低い濃度の変性剤(2M)が許容される。サンプルの安定性には基本的な条件が必要であるため、urea-d4が使用される。方法Aのデータ取得と分析は、64回のスキャンではなく、各取得に対して624回のスキャンがあったことを除いて、上記のように実行される。本質的に先に説明したとおりの手順に従って、次のデータを取得した。残留水信号にわずかな位相歪みが観察されたが、データ分析には支障はなかった。カオトロピック剤の添加により、より優れた水分抑制、より鋭いピーク、そしてその後のより高い分解能と感度が得られた。式1から各複製の濃度を計算した。平均総タンパク質濃度は0.65g/L、RSDは3.6%と判定された。これは、物質収支で得られた値(0.63g/L)と同様であった。これらのデータは、方法Aが小さなペプチドの希釈サンプルに使用することができることを示している。
【0071】
例解的な実施形態
次のものは、本開示の種々の実施形態を表す本開示による例解的な実施形態のリストを含む。
【0072】
これらの例解的な実施形態は、網羅的であること、または本開示を、開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、これらの例解的な実施形態は、当業者がこれらの教示を利用することができるように、本開示をさらに説明するのを助けるために提供される。
【0073】
1.溶液中のタンパク質またはペプチドの濃度を判定する方法であって、前記方法が、
(i)前記タンパク質を変性させるか、または前記ペプチドを変性させてもよいことと、
(ii)拡散フィルタを用いてqNMR分光法を実行することと、
(iii)参照標準および参照技術を使用して前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を計算することと、を含む、方法。
【0074】
2.前記ペプチドが、変性される、実施形態1に記載の方法。
【0075】
3.前記タンパク質またはペプチドが、カオトロピック剤を用いて変性される、実施形態1または実施形態2の方法。
【0076】
4.前記カオトロピック剤が、塩化グアニジニウム-dまたは尿素-dである、実施形態3に記載の方法。
【0077】
5.前記参照標準が、外部参照標準である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
6.前記外部参照標準が、小分子一次標準である、実施形態5に記載の方法。
【0079】
7.前記外部参照標準が、マレイン酸である、実施形態5に記載の方法。
【0080】
8.前記溶液が、DOを含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
9.前記参照技術が、PULCONである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
10.前記タンパク質が、抗体である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
11.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態10に記載の方法。
【0084】
12.前記抗体が、二重特異性抗体である、実施形態10に記載の化合物。
【0085】
13.溶液中のタンパク質またはペプチドの分子パラメータを判定する方法であって、前記方法が、
(i)前記タンパク質を変性させるか、または前記ペプチドを変性させてもよいことと、
(ii)拡散フィルタを用いてqNMR分光法を実行することと、
(iii)参照標準および参照技術を使用して前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を計算することと、
(iv)前記計算された濃度から前記タンパク質またはペプチドの前記分子パラメータを判定することと、を含む、方法。
【0086】
14.前記ペプチドが、変性される、実施形態13に記載の方法。
【0087】
15.前記分子パラメータが、吸光係数である、実施形態13または実施形態14に記載の方法。
【0088】
16.前記吸光係数が、ランベルトベールの法則によって判定される、実施形態15に記載の方法。
【0089】
17.前記タンパク質またはペプチドが、カオトロピック剤を用いて変性される、実施形態13~16のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
18.前記カオトロピック剤が、塩化グアニジニウム-dまたは尿素-dである、実施形態17に記載の方法。
【0091】
19.前記参照標準が、外部参照標準である、実施形態13~18のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
20.前記外部参照標準が、小分子一次標準またはマレイン酸である、実施形態19に記載の方法。
【0093】
21.前記外部参照標準が、小分子一次標準である、実施形態20に記載の方法。
【0094】
22.前記外部参照標準が、マレイン酸である、実施形態20に記載の方法。
【0095】
23.前記溶液が、DOを含む、実施形態13~22のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
24.前記参照技術が、PULCONである、実施形態13~23のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
25.前記タンパク質が、抗体である、実施形態13、15~24のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
26.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態25に記載の方法。
【0099】
27.前記抗体が、二重特異性抗体である、実施形態25に記載の化合物。
【0100】
28.参照バッチ中のタンパク質またはペプチドの分子パラメータを判定する方法であって、前記方法が、
a.前記タンパク質を変性させるか、または前記ペプチドを変性させてもよいことと、
b.拡散フィルタを用いてqNMR分光法を実行することと、
c.参照標準および参照技術を使用して前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を計算することと、
d.前記計算された濃度から前記タンパク質またはペプチドの前記分子パラメータを判定することと、を含む、方法。
【0101】
29.試験バッチ中の前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を判定することをさらに含み、前記試験バッチ中のペプチドまたはタンパク質の前記濃度が、前記分子パラメータから判定される、請求項28に記載の方法。
【0102】
30.前記分子パラメータが、吸光係数である、実施形態28または実施形態29に記載の方法。
【0103】
31.前記吸光係数が、ランベルトベールの法則によって判定される、実施形態30に記載の方法。
【0104】
32.前記ペプチドが、変性される、実施形態28~31のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
33.前記タンパク質またはペプチドが、カオトロピック剤を用いて変性される、実施形態28~32のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
34.前記カオトロピック剤が、塩化グアニジニウム-dまたは尿素-dである、実施形態33に記載の方法。
【0107】
35.前記参照標準が、外部参照標準である、実施形態28~34のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
36.前記外部参照標準が、小分子一次標準である、実施形態35に記載の方法。
【0109】
37.前記外部参照標準が、マレイン酸である、実施形態35に記載の方法。
【0110】
38.前記溶液が、DOを含む、実施形態28~37のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
39.前記参照技術が、PULCONである、実施形態28~38のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
40.前記タンパク質が、抗体である、実施形態28~31、33~39のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
41.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態40に記載の方法。
【0114】
42.前記抗体が、二重特異性抗体である、実施形態40に記載の化合物。
【0115】
43.前記方法が、前記分子パラメータを使用して、前記タンパク質またはペプチドを処方する際の前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を判定することをさらに含む、実施形態13~42のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
44.前記方法が、前記分子パラメータを使用して、ロットリリース時試験における前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を判定することをさらに含む、実施形態13~42のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
45.前記ロットリリース時試験が、ロットリリース時のUV試験である、実施形態44に記載の方法。
【0118】
46.前記方法が、前記分子パラメータを使用して、ロットの調製における前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を判定することをさらに含む、実施形態13~42のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
47.前記方法が、前記分子パラメータを使用して、前記タンパク質またはペプチドの用量を判定する際の前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を判定することをさらに含む、実施形態13~42のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
48.前記方法が、前記分子パラメータを使用して、製造中の前記タンパク質またはペプチドの前記濃度を判定することをさらに含む、実施形態13~42のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
49.前記タンパク質またはペプチドが、デュラグルチド、イキセキズマブ、ラムシルマブ、セツキシマブ、オララツマブ、ネシツムマブ、ガルカネズマブ、またはミリキズマブの有効成分である、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9