(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】磁気流量計のセンサ信号におけるノイズレベルを用いた流体汚染物質の検出
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20220819BHJP
G01N 27/74 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
G01V3/08 A
G01N27/74
(21)【出願番号】P 2021512873
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 US2019037680
(87)【国際公開番号】W WO2020050892
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォス、スコット ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】クライン、アンドリュー トーマス
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-521659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0120203(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0076926(US,A1)
【文献】特許第2856521(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第108828057(CN,A)
【文献】特開2003-097986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0261357(US,A1)
【文献】特開平07-027581(JP,A)
【文献】米国特許第06505517(US,B1)
【文献】米国特許第03847020(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/72 -27/9093、
G01V 1/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導管を通る導電性液体の流量を示すセンサ信号を生成する複数の電極センサと、
前記センサ信号のノイズレベルを識別するノイズ識別モジュールと、
前記ノイズレベルを使用して、前記導管内の前記導電性液体内に汚染物質が存在するか否かを判断する汚染物質識別モジュールと、
を備え、
前記汚染物質識別モジュールが、
ノイズレベルと前記導電性液体中の汚染物質の量との相関関係に基づいて、前記ノイズ識別モジュールで識別された前記ノイズレベルから前記導電性液体中の汚染物質の量を推定する、
磁気流量計。
【請求項2】
前記センサ信号が、周期的な矩形波を含み、
前記磁気流量計が、選択されるサンプルを、前記矩形波の各半周期の終端で生じるサンプルに制限することによって、前記センサ信号のサンプルを選択するデータ収集モジュールを更に含む、
請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項3】
前記センサ信号が、第2の周波数の矩形波に重ね合わされた第1の周波数の矩形波を有する多段階パルスDC波を含み、
前記磁気流量計が、選択されるサンプルを、前記第1の周波数の矩形波の各半周期の終端で生じるサンプルに制限することによって、前記センサ信号のサンプルを選択するデータ収集モジュールを更に含む、
請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項4】
前記センサ信号が、正弦波を含み、
前記磁気流量計が、前記センサ信号のサンプルをハイパスフィルタに適用するデータ収集モジュールを更に含む、
請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項5】
前記ノイズ識別モジュールは、複数のノイズレベルを識別する、
請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項6】
前記汚染物質識別モジュールは、前記複数のノイズレベルをフィルタ処理して、フィルタ処理されたノイズレベルを生成するフィルタを更に備え、
前記汚染物質識別モジュールは、前記フィルタ処理されたノイズレベルを使用して、汚染物質が前記導電性液体内に存在するか否かを判断する、
請求項5に記載の磁気流量計。
【請求項7】
前記ノイズ識別モジュールは、前記センサ信号の周波数領域表現において前記ノイズレベルを識別する、
請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項8】
前記センサ信号の前記周波数領域表現は、フィルタ処理された表現であり、駆動信号の高調波の周波数とラインノイズの周波数とは、前記フィルタ処理された表現から除去されている、
請求項7に記載の磁気流量計。
【請求項9】
前記ノイズレベルの一部が、ガス汚染物質によるものである、
請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項10】
前記導電性液体が水である、
請求項9に記載の磁気流量計。
【請求項11】
前記導電性液体が水であり、
前記ノイズレベルの一部が、オイル汚染物質によるものである、
請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項12】
前記ノイズレベルの一部が、固体汚染物質によるものである、
請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項13】
駆動信号を印加して、導電性液体を運ぶ導管内に磁場を生成すること、
前記導管に沿って配置された電極からセンサ信号を受信すること、
前記センサ信号のノイズレベルを決定すること、
前記ノイズレベルを使用して、前記導電性液体が汚染物質を含むか否かを判断すること、
及び、
ノイズレベルと前記導電性液体中の汚染物質の量との相関関係に基づいて、前記ノイズレベルから前記導電性液体中の汚染物質の量を推定すること、
を含む方法。
【請求項14】
前記センサ信号のノイズレベルを決定することは、前記センサ信号を周波数領域表現に変換することと、前記周波数領域表現から前記ノイズレベルを決定することとを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記周波数領域表現から前記ノイズレベルを決定することは、前記周波数領域表現をフィルタに適用して、前記駆動信号の高調波の周波数に対する値とラインノイズの周波数に対する値とを除去することを更に含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記センサ信号のノイズレベルを決定することは、前記センサ信号の半周期の終端において前記センサ信号のサンプルを選択することと、前記選択されたサンプルを使用して前記ノイズレベルを決定することとを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ノイズレベルを決定することは、前記選択されたサンプルの最大値と最小値との間の差を決定することをさらに含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ノイズレベルを決定することは、複数のノイズレベルを形成するために前記センサ信号の複数のセクションのそれぞれについて別個のノイズレベルを決定することと、前記複数のノイズレベルをフィルタ処理することとを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記導電性液体が汚染物質を含むか否かを判断することは、前記導電性液体がガスを含むか否かを判断することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記導電性液体が汚染物質を含むか否かを判断することは、前記導電性液体がオイルを含むか否かを判断することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記導電性液体が汚染物質を含むか否かを判断することは、前記導電性液体が固体微粒子を含有するか否かを判断することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項22】
磁気コイルと、
センサ信号を生成するように構成された電極センサと、
前記センサ信号のノイズレベルを決定するように構成されたノイズ識別モジュールと、 決定された前記ノイズレベルに基づいて、導電性液体が汚染物質を含有することを識別するように構成された汚染物質識別モジュールと、
を
備え、
前記汚染物質識別モジュールが、ノイズレベルと前記導電性液体中の汚染物質の量との相関関係に基づいて、前記ノイズ識別モジュールで識別された前記ノイズレベルから前記導電性液体中の汚染物質の量を推定する、
プロセストランスミッタ。
【請求項23】
前記ノイズ識別モジュールが、前記センサ信号のセクションを周波数領域表現に変換し、前記周波数領域表現における前記ノイズレベルを識別するようにさらに構成される、
請求項22に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項24】
前記ノイズ識別モジュールが、前記ノイズレベルを決定する前に、ラインノイズの周波数に関連する値と、前記磁気コイルに適用される駆動信号周波数の高調波周波数に関連する値とを除去するように更に構成される、
請求項23に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項25】
前記ノイズ識別モジュールが、前記センサ信号のサンプルを選択して、前記センサ信号の前記ノイズレベルを決定するために使用するようにさらに構成され、前記選択されたサンプルは、前記センサ信号の周期信号の半周期の始めのサンプルを除外する、
請求項22に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項26】
前記汚染物質がガスを含む、請求項22に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項27】
前記汚染物質がオイルを含む、請求項22に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項28】
前記汚染物質が砂を含む、請求項22に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項29】
プロセスシステム内の導管を通る導電性液体の流量を示すセンサ信号を生成する複数の電極センサと、
前記センサ信号のノイズレベルを識別するノイズ識別モジュールと、
前記ノイズレベルを使用して、前記プロセスシステム内のバルブのチャタリングを示す警報を発行するか否かを決定するバルブのチャタリング識別モジュールと、
ノイズレベルと前記導電性液体中の汚染物質の量との相関関係に基づいて、前記ノイズ識別モジュールで識別された前記ノイズレベルから前記導電性液体中の汚染物質の量を推定する汚染物質識別モジュールと、
を備える磁気流量計。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
油井は、化石燃料を地下から地表に運ぶ。多くの油井では、油井産出物には、オイル、天然ガス、水、及び砂や沈泥(silt)などの固形物の混合物が含まれる。セパレータは、陸上の油井パッドと沖合のプラットフォーム上に存在し、オイル及び天然ガスを互いから分離すると共に、オイル及び天然ガスを水や固形破片から分離するために使用される。
【0002】
比重(density)セパレータには多くの種類があるが、それらはすべて、重力と乳化剤層を使用して油井産出物の成分を分離することによって、同様に機能する。特に、セパレータは、流体の流れを遅くして、オイルより重い砂と水とをオイルから分離できるようにする。水及び固形物は乳化剤層を通過するが、オイルは乳化剤層の上に残る。天然ガスをオイルから分離できるように、オイルの上には空間が設けられている。天然ガス中に浮遊し得る油滴を収集するために、1つ又は複数のミストコンバータが提供され得る。
【0003】
セパレータは、油井産出物をセパレータに供給する流入管、天然ガス出力管、オイル出力管、及び水出力管を含む。オイル液位又は水位が低下しすぎると、天然ガスが、オイル出力管又は水出力管に流入する可能性がある。また、オイルや砂が排水管に入る可能性がある。これを防止するために、一部のセパレータでは、オイル液位又は水位が低すぎる場合に閉じるように設計されたバルブを、オイル出力管と水出力管とに配置する。しかしながら、これらのバルブは、セパレータへの流入物に存在する砂やその他の破片による固着の影響を受けやすい。ガス、オイル又は砂が水フロー中に存在するかどうかを判断すると共に、ガスがオイルフロー中に存在するかどうかを判断することが有用であろう。
【発明の概要】
【0004】
磁気流量計は、導管を通る液体の流量を示すセンサ信号を生成する電極センサを含む。ノイズ識別モジュールは、センサ信号のノイズレベルを識別し、汚染物質識別モジュールは、ノイズレベルを使用して、導管内の液体内に汚染物質が存在するか否かを判断する。
【0005】
別の実施形態によれば、駆動信号が印加されて、液体を運ぶ導管内に磁場が生成される。導管に沿って配置された電極からセンサ信号が受信され、センサ信号のノイズレベルが決定される。ノイズレベルを使用して、液体が汚染物質を含むか否かを判断する。
【0006】
さらに別の実施形態によれば、プロセストランスミッタは、磁気コイルと、センサ信号を生成するように構成された電極センサとを含む。ノイズ識別モジュールは、センサ信号のノイズレベルを決定するように構成され、汚染物質識別モジュールは、決定されたノイズレベルに基づいて、液体が汚染物質を含むことを識別するように構成される。
【0007】
この概要及び要約は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の選択を簡略化された形成で紹介するために提供される。概要及び要約は、特許請求される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求された主題の範囲を決定する際の補助として使用されることを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、一実施形態による流量計のブロック図である。
【
図3】
図3は、磁気流量計の駆動信号のグラフである。
【
図4】
図4は、汚染物質を含まない液体についての、
図3の駆動信号に応答する磁気流量計のセンサ信号のグラフである。
【
図5】
図5は、汚染物質を含む液体についての、
図3の駆動信号に応答する磁気流量計のセンサ信号のグラフである。
【
図6】
図6は、液体中のガスボイド率の関数としての磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルのグラフである。
【
図7】
図7は、一実施形態によるデータを収集する方法のフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図7の方法で使用される要素のブロック図である。
【
図9】
図9は、一実施形態による磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルを識別する方法のフローチャートである。
【
図11】
図11は、一実施形態による、ノイズレベルを使用して汚染物質を識別する方法のフローチャートである。
【
図13】
図13は、ガスボイド率の異なるパーセンテージに対する磁気流量計のセンサ信号の高速フーリエ変換のグラフを提供する。
【
図14】
図14は、磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルを決定するために使用されるサンプルを示す、
図13のグラフのうちの1つの拡大図である。
【
図15】
図15は、ガスボイド率の増加中に異なる周波数範囲について決定された磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルのグラフである。
【
図16】
図16は、送水管(water line)内のオイル含有率(oil percentage)の増加中に、異なる周波数範囲について決定された磁気流量計のセンサ信号におけるノイズレベルのグラフである。
【
図17】
図17は、2つの別々の流量に対するガスボイド率の関数として、磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルのグラフを示す。
【
図18】
図18は、送水管内のオイルレベルの関数として、磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルのグラフを示す。
【
図19】
図19は、送水管内の砂のポンド数の関数として、磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルのグラフを示す。
【
図20】
図20は、別の実施形態によるノイズデータを収集する方法のフローチャートである。
【
図22】
図22は、別の実施形態による磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルを識別する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に記載される実施形態は、導管によって運ばれる導電性液体が、汚染物質(例えば、ガス、別の液体、又は砂などの粒子)を含む場合を検出するプロセストランスミッタ(process transmitter)を提供する。プロセストランスミッタは、磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルを監視することによって、これらの判定を行う。本発明者らは、液体中の汚染物質の量が増加するにつれて、磁気流量計のセンサ信号のノイズレベルが増加することを発見した。
【0010】
図1は、様々な実施形態の流量計104を利用することができる例示的な環境100を提供する。環境100は、流入物108を、水110、オイル112、及びガス114を含む種々の成分に分離することができるセパレータタンク106を含む。いくつかの実施形態では、流入物108は、油井口(well head)からのものであってもよい。
【0011】
セパレータタンク106は、流入物108の速度を低下させて、流入物108の成分が互いに分離してガス層122、オイル層124、及び水層126を形成することを可能にするために使用される入口バッフル(inlet baffle)116及び静止バッフル(quieting baffle)118を含む。ミストパッド120は、ガス層122内に存在する水滴及び油滴を収集し、収集されたオイル及び水をオイル層124及び水層126内に落下させる。オイル層124及び水層126は、オイル層124を水層126から分離する堰128に向かって流れる。特に、オイル層124は、堰128の頂部を越えてオイルチャンバ130に流れ込む。水層126は、オイルチャンバ130の下を流れ、水チャンバ132に流れ込む。
【0012】
オイルチャンバ130内のオイルの液位は、液面(liquid level)コントローラ134及びバルブ136によって制御される。液面コントローラ134が降下すると、流体がバルブ136を通って流れるのを防ぐために、バルブ136が閉じられる。液面コントローラ134の例には、機械的コントローラ、空気圧コントローラ、及び電子コントローラが含まれる。正常に動作している場合、液面コントローラ134は、オイル液位が下降管138の取入れ口より下に低下したときにバルブ136を完全に閉じ、それによってガス114が出力オイル導管140を通って流れるのを防ぐべきである。ガスが導管140を通って流れるのを防止することは重要である。なぜなら、そのようなガスは貴重であるし、適切に取り扱われなければ危険である可能性があるからである。
【0013】
水チャンバ132内の水位は、液面コントローラ142及びバルブ144によって制御される。水チャンバ132内の水位が低下すると、液面コントローラ142は、流体が出力水導管146を通って流れるのを防ぐために、バルブ144を閉じる。液面コントローラ142は、機械的コントローラ、空気圧コントローラ、又は電子コントローラであってもよい。バルブ144を閉じることにより、液面コントローラ142は、チャンバ132内の水110が下降管148の取入れ口より下に低下したときに、ガス114が導管146を通って流れるのを防止する。これにより、貯水タンクへのガスの侵入を防ぎ、貴重なガスの損失を防ぎ、貯水タンク内で爆発性ガスが発生するのを防ぐ。
【0014】
さまざまな理由から、随伴ガス及び/又は砂がオイル導管140又は水導管146を通って時折流れることが可能であり、オイルが水導管146を通って流れることが可能である。以下に説明する実施形態では、流量計104は、ガス、オイル、又は砂などの汚染物質が水導管146内を流れている場合を検出する。汚染物質が導管内に存在することを検出すると、流量計104は、警報メッセージ及び/又は導管内にある汚染物質の量の表示を提供することができる。
【0015】
図2は、種々の実施形態による、流量計104の一例である磁気流量計200の形態のプロセストランスミッタの概略図を提供する。磁気流量計200は、導管208の両側に配置された2つのコイル204及び206を通して電流を駆動するコイルドライバ202を含む。コイル204及び206内の電流は、導管208を通過する磁場230を生成する。大部分の実施形態によれば、コイル204及び206内の電流は周期的に反転され、磁場230の方向が、コイル204からコイル206に延在する方向と、コイル206からコイル204に延在する方向との間で交互に切り替わる。
【0016】
導管208は、導管208を通って流れ方向210に移動する導電性液体を運ぶ。液体内の極性分子、又は荷電分子及び荷電原子は、流れ方向210において磁場230を通って移動するため、磁場230に直交する力を受ける。特に、正に帯電した分子及び原子は一方向に移動し、負に帯電した分子及び原子は反対方向に移動する。極性分子は、分子の正の端部がすべて一方向を指し、分子の負の端部が反対方向を指すように整列する。磁場の方向が変化すると、荷電分子及び荷電原子が移動する方向と、極性分子の配向とが切り替わる。これは、導管内の磁場の方向に直交する線に沿って配置された2つの電極又は電極センサ212及び214の間に交流電圧をもたらす。電圧の大きさは液体の流量の影響を受け、流速が速くなると電圧が大きくなる。
【0017】
電極212及び214は、ハウジング228内のアナログ/デジタル変換器(ADC:analog-to-digital convertor)216に接続されている。アナログ/デジタル変換器216は、電極212と電極214との間のアナログ電圧をサンプリングして、データ収集モジュール218のための一連のデジタルサンプルを生成する。データ収集モジュール218は、流量計算機220による使用に供するために、デジタルサンプルの一部又は全部を選択的に保存する。流量計算機220は、デジタルサンプルの大きさを利用して液体の流量を推定する。この流量は、入出力回路224に定期的に供給され、入力/出力回路224は、2線式プロセスループ226のような通信チャネルに沿ってコントロールルームに流量を伝える。
【0018】
図3は、一実施形態による、磁場を生成するためにコイル204及び206に印加される矩形波駆動信号のグラフ300を提供する。
図3では、電流の大きさが縦軸302に沿って示され、時間が横軸304に沿って示されている。
図3に示すように、電流は、同じ大きさの正の電流と負の電流との間で交互に切り替わる。他の実施形態によれば、駆動信号は、例えば、正弦波、又は5Hzの矩形波に重畳された75Hzの矩形波のような多段階パルスDC(直流)波である。
【0019】
図4は、汚染物質を含まない流体が導管208を通って流れ、駆動信号300がコイル204及び206に印加されたときに、電極212と電極214との間に生成されるセンサ信号のグラフ400を示す。
図4では、電極212と電極214との間の電圧が、アナログ/デジタル変換器216によって生成されたカウントを単位として縦軸402上に示されている。時間は、横軸404に沿って示されている。
図4に示すように、電圧は、同様の大きさの正の値と負の値との間で交互に切り替わり、正の値と負の値の各々では比較的安定している。
【0020】
図5は、汚染物質が流体中に存在し、駆動信号300がコイル204及び206に印加されたときに、電極212と電極214との間に生成されるセンサ信号のグラフ500を提供する。
図5では、電極212と電極214との間の電圧が、アナログ/デジタル変換器216によって生成されたカウントを単位として縦軸502上に示され、時間が横軸504に沿って示されている。加えて、汚染物質は、駆動信号300の定常状態部分の間に検知された電圧に、変動を引き起こす。本発明者らは、この電圧の変動を、センサ信号のノイズと呼ぶ。
【0021】
以下にさらに議論するように、本発明者らは、磁気流量計のセンサ信号におけるこのようなノイズを定量化するための幾つかの技術を開発した。そのような技術の1つを使用して、本発明者らは、ノイズの大きさが、液体中の汚染物質の量と相関していることを発見した。例えば、
図6は、液体中のガスボイド率とセンサ信号のノイズレベルとの間の相関を示すグラフ600及び602を提供する。具体的には、グラフ600は、実験中のガスボイド率の経時的な変化を示し、軸604は、導管内の体積パーセンテージとしてガスボイド率を示す。グラフ602は、グラフ600に示されるガスボイド率の変化中に形成されるセンサ信号のノイズの大きさを示し、ノイズの大きさは、縦軸606に示されている。
図6では、ガスボイド率が増加し始めた直後に、センサ信号のノイズの大きさも増加することが分かる。
【0022】
センサ信号のノイズの大きさを識別するために、アナログ/デジタル変換器216によって出力されたデジタル値がデータ収集モジュール240に提供される。このデータ収集モジュール240は、デジタル値を選択的にサンプリングし、フィルタ処理して、ノイズ識別モジュール242のために一連のデジタル値を生成する。ノイズ識別モジュール242は、デジタル値を使用して、センサ信号の一連の期間又はセクションの各々でノイズの大きさを表す一連のノイズ値を識別する。一連のノイズ値は、汚染物質/バルブチャタリング(valve chatter)識別モジュール244に提供される。汚染物質/バルブチャタリング識別モジュール244は、一連のノイズ値をフィルタ処理してノイズ中のスパイクを除去し、フィルタ処理されたノイズ値を使用して、液体に汚染物質が含まれているか否か、又はプロセスシステム内のバルブでバルブチャタリングが発生しているか否かを判断する。フィルタ処理されたノイズ値が、液体に汚染物質が含まれていることを示す場合、汚染物質/バルブチャタリング識別モジュール244は、任意選択で、液体中の汚染物質の量の推定値を提供する。液体に汚染物質が含まれているか、又はバルブのチャタリングが存在する場合、汚染物質/バルブチャタリング識別モジュール244は、入出力回路224及び通信チャネル226を介して、汚染物質及び任意選択で汚染物質の推定量を示す警報を送信する。
【0023】
図7は、一実施形態による、データ収集モジュール240によって実施される方法のフローチャートを提供する。
図8は
図7の方法で使用される要素のブロック図である。
図7のステップ700において、アナログ/デジタル変換器216は、アナログ/デジタル変換器216がセンサ信号の新しいデジタルサンプルを有することを示す割り込み信号を発行する。割り込みに応答して、アナログ/デジタル変換器216によって出力されたデジタルサンプルは、ステップ702で、ローリングバッファ又は循環バッファ800に格納される。ステップ704において、サイクルモニタ802は、駆動信号の半周期の終端に到達したかどうかを判断する。ここで、半周期の終端は、駆動信号が極性を変える点である。例えば、
図3の時点306及び308は、それぞれ、駆動信号300の半周期の終端を示す。一実施形態によれば、サイクルモニタ802は、駆動信号の極性を以前の時点で決定された極性と比較して、極性が変化したかどうかを確認することによって、半周期の終端に到達したかどうかを判断する。他の実施形態によれば、アナログ/デジタル変換器216からの最新の出力値とアナログ/デジタル変換器216の以前の出力値とを、アナログ/デジタル変換器216からの出力値の平均値と比較することによって、半周期の終端が決定される。出力値の一方が平均よりも大きく、他方が平均よりも小さい場合、最新の出力値は、次の半周期の一部であると見なされ、以前の出力値は、前の半周期の最後の値と見なされる。例えば、
図5において、線506は、アナログ/デジタル変換器216からの出力値の平均値を表す。サンプル502は、半周期512の終端にあり、平均506よりも大きいことが示されている。一方、サンプル504、すなわちサンプル502の直後のサンプルは、次の半周期514の始めにあり、平均値506よりも小さいことが示されている。同様に、サンプル508は、半周期514の終端にあり、平均値506よりも小さいことが示されているが、サンプル508の直後のサンプル510は、次の半周期516の始めにあり、平均値506よりも大きいことが示されている。
【0024】
ステップ704で半周期の終端に達していない場合、プロセスはステップ700に戻り、アナログ/デジタル変換器216からの別の割り込みを待つ。半周期の終端に到達すると、サンプル選択モジュール806がトリガされて、ステップ706において、最後の半周期の間に生成されたサンプルのパーセンテージを選択する。一実施形態によれば、半周期におけるサンプルの最後の20パーセントが選択される。例えば、
図5において、半周期512の終端におけるサンプル520のセットが、ステップ706を通る最初のパスの間に選択され、半周期514の終端におけるサンプル522のセットが、ステップ706を通る次のパスの間に選択される。これにより、サンプルを使用してセンサ信号のノイズを検出する前に、コイルの駆動信号及びセンサ信号が、駆動信号の極性の前回の切り替え後に安定することが保証される。一実施形態ではサンプルの20パーセントが使用されているが、他の実施形態では他のパーセンテージが使用される。ステップ706におけるサンプルの選択は、ノイズレベルを決定するためのセンサ信号の一部の選択であり、ステップ706の実行毎に選択されたセンサ信号の各部分について、別個のノイズレベルが決定される。
【0025】
図7の実施形態では、矩形波が駆動信号として使用される。多段階パルスDC波が駆動信号として使用される実施形態では、高周波数の矩形波の各半周期の最後の20%のサンプルが、サンプル選択モジュール806によって選択される。(例えば、75Hzの矩形波が5Hzの矩形波に重畳されてパルスDC波を形成する場合の、75Hzの矩形波)。駆動信号が正弦波である実施形態では、ノイズを測定するためのサンプルのサブセットを選択するために、サンプル選択モジュール806によってハイパスフィルタが使用される。
【0026】
次に、選択されたサンプルは、ノイズ識別モジュール242において、
図9の方法及び
図10のブロック図の要素を使用して処理され、選択されたサンプルのノイズレベルが識別される。ステップ900において、データ収集240によって選択されたサンプルが、処理されるために準備される。ステップ902で、サンプルは、サンプルからDC値を減算するDCフィルタ1000に適用される。一実施形態によれば、DC値は、選択されたサンプルの平均値である。ステップ904で、DCフィルタで処理されたサンプルは、ハイパスフィルタ1002に適用され、ハイパスフィルタ1002は、汚染物質を含まない純粋な液体から生成されたセンサ信号に共通の低周波信号を除去する。
【0027】
フィルタ処理後、フィルタ処理された信号のノイズレベルは、ステップ906における標準偏差計算機1004、ステップ908における範囲計算機1006、ステップ910におけるステップ当たりの平均移動量計算機1008、及び/又はステップ912におけるステップ当たりの最大移動量計算機1010のうちの1つ又は複数を使用して決定され得る。標準偏差計算機1004は、フィルタ処理されたサンプルの標準偏差を決定し、ノイズレベルを標準偏差に設定する。範囲計算器1006は、半周期について選択されたサンプルのセット内のフィルタ処理された最大のサンプルとフィルタ処理された最小のサンプルとの間の差を決定し、ノイズレベルをその差に設定する。
ステップ当たりの平均移動量計算機1008は、半周期について選択されたサンプルのセット内の連続するフィルタ処理されたサンプル間の平均差を決定し、ノイズレベルをこの平均差に設定する。ステップ当たりの最大移動量計算機1010は、半周期について選択されたサンプルのセット内の連続するフィルタ処理されたサンプル間の最大差を決定し、ノイズレベルをこの最大差に設定する。いくつかの実施形態では、これらのノイズレベルのうちの2つ以上が、例えば、2つ以上のノイズレベルを一緒に平均化することによって組み合わされる。
【0028】
各半周期のノイズレベルは、汚染物質識別モジュール244に供給される。
図11は、一実施形態による、ノイズレベルについて汚染物質を識別する方法のフローチャートを提供する。
図12は、
図11の方法で使用される要素のブロック図を提供する。
【0029】
図11のステップ1100では、ノイズレベルは、4つの連続するノイズレベルなど、連続するノイズレベルのウィンドウを形成し、それらのノイズレベルの中央値をウィンドウのノイズレベルとして選択するメディアンフィルタ1200に適用される。ステップ1102では、メディアンフィルタ1200によって出力されたるノイズレベルは、高周波ノイズを除去するために、ローパスフィルタ1202に適用される。ステップ1104で、フィルタ処理されたノイズレベルがコンパレータ1204に適用され、コンパレータ1204は、フィルタ処理されたノイズレベルを閾値1206と比較する。フィルタ処理されたノイズレベルが閾値を超えない場合、
図11のプロセスはステップ1112で終了する。ステップ1104において、フィルタ処理されたノイズレベルが閾値1206を超える場合、ステップ1106において、警報生成1212により、警報が入出力回路224及び通信チャネル226を介してホストシステムに送信される。
代替的に又は追加的に、フィルタ処理されたノイズレベルは、汚染物質推定器1210に適用され、汚染物質推定器1210は、ステップ1108で、ノイズと汚染物質との相関関係(noise-to-contaminant function)1208を用いて液体中の汚染物質の量を推定する。ノイズと汚染物質との相関関係1208は、フィルタ処理されたノイズレベルと液体中の汚染物質の量との間の関係を記述し、実験データから決定することができる。例えば、汚染物質推定器1210は、液体中のガスの量、液体中のオイルの量、及び/又は液体中の固体粒子の量を推定することができる。ステップ1110において、汚染物質推定器248は、液体中の汚染物質の量を警報生成1212に送信し、警報生成1212は、汚染物質の量を入出力回路224及び通信チャネル226を介してホストに転送する。一実施形態によれば、液体が汚染物質を含むことと、液体中の汚染物質の量とを伝えるために、警報生成1212によって単一の警報が送信される。
【0030】
第2の実施形態によれば、データ収集240及びノイズ識別242は、センサ信号の周波数領域分析を使用して、センサ信号のノイズレベルを識別する。
図13は、毎秒3フィートで流れ、それぞれ20%、10%、5%、1%及び0%のガスボイド率を含む液体から生成された、磁気流量計からのセンサ信号の高速フーリエ変換のグラフ1300、1302、1304、1306、及び1308を示す。
図13では、信号の大きさが縦軸1310に沿って示され、周波数が横軸1312に沿って示されている。
図13に示すように、ガスボイド率が増加するにつれて、センサ信号の大きさはすべての周波数にわたって増加する。
【0031】
センサ信号に対する汚染物質の寄与の識別を簡単にするために、駆動周波数の高調波周波数における信号の大きさは無視される。なぜなら、それらの周波数には、磁場に対する液体の応答による大きな信号(large magnitudes)を含むからである。例えば、
図14は、ノイズ決定に使用される各周波数に配置されたドットを有するグラフ1300の拡大図を示す。グラフ1300では、駆動周波数は5Hzであり、この周波数の偶数倍及び奇数倍の値はノイズレベルを決定するために使用されない。したがって、10Hz、20Hz、30Hz、及び40Hzでは、ドットはグラフ1300上に存在しない。(
図14では、奇数倍の周波数領域信号の大きさが図のスケールを超えているが、大きさが確認される場合であっても、5Hz、15Hz、25Hz、35Hz、及び45Hzで得られるドット及び値はないことに留意されたい。
【0032】
一般に、ノイズは、
図15のグラフに示されているように、多くの周波数にわたって分布している。ここでは、ガスボイド率のゼロから30パーセントまでの増加について、2Hz~50Hz、2Hz~100Hz、及び2Hz~200Hzの3つのそれぞれの周波数帯を使用して、時間に対するノイズの3つの別個のグラフ1500、1502、及び1504が示されている。
図15では、ノイズの大きさは、縦軸1506に沿って示され、時間は、横軸1508に沿って示されている。各周波数帯域について、液体中のガスの量が増加するにつれてノイズレベルが増加する。加えて、ノイズレベルは、周波数の狭い帯域1500よりも、周波数の広い帯域1504の方が増加することが見られ、これはノイズが周波数の広いスペクトルにわたって分布していることを示している。2Hz~200Hzの周波数帯域では、ガスボイド率の30%の増加に対して、ノイズレベルが175倍に増加することが示されている。
【0033】
同様に、
図16では、時間に対するノイズの3つのグラフ1600、1602及び1604は、2Hz~50Hz、2Hz~100Hz、及び2Hz~200Hzのそれぞれの周波数帯域について、送水管内のオイルのパーセンテージが、ゼロから10パーセント、次いで20パーセントに増加するにつれてノイズが増加することを示す。
図16では、ノイズの大きさは、縦軸1608に沿って示され、時間は、横軸1610に沿って示されている。
図16に示されるように、ノイズは、各周波数帯域について送水管内のオイルのパーセンテージが増加するたびに増加する。
【0034】
周波数領域で決定されたノイズレベルと液体中のガスボイド率との間の関係は、発明者らによって、液体の流量とは無関係であることも見出されている。例えば、
図17では、2つのグラフ1700及び1702が、3フィート/秒及び10フィート/秒の2つのそれぞれの流量について示されている。グラフ1700及び1702は、縦軸1704上のノイズと、横軸1706上のガスボイド率との関係を示す。
図17に示されるように、グラフ1700及び1702は、同様の勾配及び切片を有し、これは、ノイズとガスボイド率との間の関係が、流量とは無関係であることを示す。
【0035】
図18は、周波数領域で決定されたノイズと、水流に加えられるオイルのパーセンテージとの間の関係を示すグラフ1800を提供する。
図18において、ノイズの大きさが、縦軸1802に沿って示され、オイルのパーセンテージが、横軸1804に沿って示されている。グラフ1800は、水流中のオイルのパーセンテージが増加するにつれて、ノイズレベルが一般に増加することを示す。
【0036】
図19は、周波数領域で決定された、ノイズと水流における砂のポンド数との間の関係を示すグラフ1900を提供する。
図19では、ノイズの大きさが、縦軸1902に沿って示され、砂の量は、横軸1904に沿って示されている。グラフ1900は、砂の量が増えるにつれてノイズレベルが増加することを示している。
【0037】
図20は、周波数領域ノイズレベルの識別を実行するためのデータを収集するためにデータ収集モジュール240によって使用される方法のフロー図を提供する。
図21は、
図20の方法で使用される要素のブロック図を提供する。
【0038】
ステップ2000で、アナログ/デジタル変換器216は、新しいデジタルサンプルが磁気流量計のセンサ信号から生成されたことを示す割り込みを発行する。それに応答して、ステップ2002において、デシメータ2100は、サンプルにデシメーションアルゴリズムを適用して、サンプルがローリングバッファ2102に格納されるべきかどうかを決定する。デシメーティングアルゴリズムは、ローリングバッファ2102に格納するためにサンプルのサブセットを選択し、それによってローパスデジタルフィルタとして機能する。ステップ2004で、モニタ2104は、高速フーリエ変換をサポートするのに十分なサンプルがローリングバッファ2102に追加されているかどうかを判断する。より多くのサンプルが必要な場合、
図20のプロセスはステップ2000に戻り、アナログ/デジタル変換器216からの別の割り込みを待つ。ローリングバッファ2102が高速フーリエ変換のための十分なサンプルを含む場合、ローリングバッファ2102内に配置された最後のサンプルの位置が記録され、ノイズ識別モジュール242は、ステップ2006でノイズ識別タスクを開始するように通知される。ステップ2006の後で、プロセスはステップ2000に戻り、アナログ/デジタル変換器216からの次の割り込みを待つ。
【0039】
図22は、周波数領域技術を使用してセンサ信号のノイズを識別するためにノイズ識別モジュール242によって実行される方法のフロー図を提供する。
図23は、
図22の方法で使用される要素のブロック図を提供する。
【0040】
ステップ2200では、処理されるローリングバッファ2102内の次のデータセットの開始位置及び終了位置を使用して、データを、ローリングバッファ2102から選択バッファ2300にコピーする。これらの値をコピーすることによって、ステップ2200は、周波数領域に変換するためのセンサ信号のセクション又は部分を選択している。ステップ2202で、選択バッファ2300内のデータがDCフィルタ2302に適用され、DCフィルタ2302は、データの各値からDC成分を除去する。一実施形態によれば、DC成分は、単に、選択バッファ2300内のすべてのデータの平均値である。DC成分がデータから除去された後、データは、ハニング窓2304に適用され、ハニング窓2304は、高速フーリエ変換が適用されるときの周波数漏れを減少させるために、センサ信号の現在のセクションの始め及び終端におけるデータの大きさを減少させる。ステップ2204において、得られたデータ値は、時間領域のデータ値を周波数領域のデータ値のセットに変換する高速フーリエ変換2306に適用され、各周波数領域のデータ値は、それぞれの周波数に対するセンサ信号の振幅及び位相(magnitude and phase)を表す複素数である。ステップ2206では、各周波数の振幅を決定するために、各複素数が振幅計算機2308に適用される。ステップ2208で、振幅が高調波フィルタ2310に適用され、高調波フィルタ2310は、コイル駆動周波数の偶数又は奇数の高調波である周波数の振幅を除去する。このような高調波周波数には、駆動信号に対する液体の応答と、液体中の汚染物質による信号のノイズとが含まれる。高調波周波数の振幅を除去することによって、汚染物質によるノイズを、センサ信号の残りの部分から分離することができる。ステップ2210では、フィルタ処理された振幅は、平均計算機2312によって平均化され、その平均は、ステップ2200で選択されたセンサ信号のセクションについて、ノイズバッファ2314に格納される。
【0041】
次に、ノイズバッファ2314内のノイズ値は、時間領域のノイズ値について上述したのと同じ方法で汚染物質識別モジュール244に適用される。特に、
図11の方法及び
図12のブロック図は、それらが時間領域ベースのノイズ値に対して使用されたのと同じ方法で、周波数領域ベースのノイズ値に対して使用され得る。
【0042】
上述の様々なモジュール及び機能ブロックは、専用回路、プロセストランスミッタ200内の1つ又は複数のRAM又はROM装置に書き込まれた命令を実行するマイクロコントローラ、又は、プロセストランスミッタ200内の1つ又は複数のRAM又はROM装置に格納された命令を実行する1つ又は複数のマイクロプロセッサとして実装することができる。
【0043】
さらなる実施形態によれば、磁気流量計のセンサ信号のノイズは、更に、バルブのチャタリングを検出するために使用され得る。バルブのチャタリング中に、セパレータ100内のリリーフバルブが急速に開閉し、セパレータ100内の圧力に急激な変動を生じさせる。この圧力変動は、導管140及び導管146を通る流れの速度に対応する変動を生じさせる。このような流れの速度の変動は、磁気流量計のセンサ信号にノイズとして現れる。したがって、上述の実施形態のいずれかを使用して、センサ信号のノイズを分離及び測定することにより、バルブのチャタリングを検出することが可能になる。なぜなら、センサ信号のノイズレベルは、バルブのチャタリング中に劇的に増加するためである。
【0044】
本発明は好ましい実施形態に関して説明されているが、当業者であれば、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更がなされてもよいことを認識するであろう。