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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】セパレータ一体ガスケット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0276 20160101AFI20220819BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20220819BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20220819BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20220819BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20220819BHJP
   H01M 8/0286 20160101ALI20220819BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
H01M8/0276
H01M8/0206
H01M8/0247
H01M8/0258
H01M8/0284
H01M8/0286
F16J15/06 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021513546
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012908
(87)【国際公開番号】W WO2020209047
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2019074231
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松田 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】渡部 茂
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272474(JP,A)
【文献】特開2010-129459(JP,A)
【文献】国際公開第2013/077488(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0030709(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用のセパレータ一体ガスケットであって、
リップ状ガスケットと、
プレス加工可能な金属板よりなり、第1立体形状部を有する第1セパレータ部品であって、前記リップ状ガスケットを保持するガスケット装着溝を前記第1立体形状部の突出方向と反対側の面に有する第1セパレータ部品と、
プレス加工可能な金属板よりなり、第2立体形状部を有する第2セパレータ部品であって、前記第1立体形状部を収める立体形状嵌め合い溝を前記第2立体形状部の突出方向と反対側の面に有する第2セパレータ部品と、
前記第2立体形状部の外面側に保持されるフラット状ガスケットと、
を有し、
前記第1立体形状部と前記第2立体形状部は、平面上の位置を合わせて、同じ向きに突出し、
前記第1セパレータ部品と前記第2セパレータ部品は、厚み方向に重ねられて接合される、
セパレータ一体ガスケット。
【請求項2】
前記第1立体形状部は、前記第2立体形状部よりも小さい幅を有し、
前記第1立体形状部は、第1側面部を有し、
前記第2立体形状部は、第2側面部を有し、
前記第1側面部と前記第2側面部は、互いに対向し、
前記第1側面部と前記第2側面部の間には、隙間が設けられる、
請求項1に記載のセパレータ一体ガスケット。
【請求項3】
前記第1立体形状部は、第1底面部を有し、
前記第2立体形状部は、第2底面部を有し、
前記第1底面部と前記第2底面部との間の周上の一部に、前記リップ状ガスケットおよび前記フラット状ガスケットを幅方向に横断する流体流路を有する、
請求項1又は2に記載のセパレータ一体ガスケット。
【請求項4】
前記リップ状ガスケットは、
前記ガスケット装着溝内に保持されたガスケット基部と、
前記ガスケット基部の平面上に設けられたシールリップと、
前記ガスケット基部の平面上であって、かつ、前記シールリップの幅方向両側にそれぞれ設けられた一対の突起状の受け部と、を有し、
前記一対の受け部の間隔は、前記第2立体形状部の幅よりも小さい、
請求項1~3のいずれかに記載のセパレータ一体ガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ一体ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用のセパレータ一体ガスケットは、燃料電池セルの構成要素であるセパレータに対し、反応物質(O,H)や冷却水等をシールするためのガスケットを一体的に組み付けたものである。
セパレータとして、ガスケット成形部や流路部の溝加工コストを低減させるため、プレス加工可能な金属バイポーラセパレータを用いることがある(例えば、特表2017-532731)。
一方、ガスケットとして、スタック組立て時に互いに積層されるセパレータ同士の平面上の位置ズレを許容するため、リップ状ガスケットおよびフラット状ガスケットよりなる両面ガスケットを用いることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プレス加工可能な金属バイポーラセパレータとリップ状ガスケットおよびフラット状ガスケットよりなる両面ガスケットとを組み合わせて用いる場合には、以下の点に留意する必要がある。
リップ状ガスケットは、ガスケット基部の平面上にシールリップを一体に設けたものである。フラット状ガスケットは、シールリップを有さない平坦状のものである。したがって、リップ状ガスケットの高さ(厚み)は、フラット状ガスケットの高さ(厚み)よりも大きい。
【0004】
リップ状ガスケットとフラット状ガスケットの高さ(厚み)の相違により、スタック組立て時に両ガスケット間に挟み込まれる電解質膜が、リップ状ガスケットによって厚み方向一方へ持ち上げられて、変形する。この変形が、電解質膜の耐久性に影響を及ぼすことがある。
【0005】
本発明は、スタック組立て時に電解質膜が変形しにくいセパレータ一体ガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料電池用のセパレータ一体ガスケットは、
リップ状ガスケットと、
プレス加工可能な金属板よりなり、第1立体形状部を有する第1セパレータ部品であって、前記リップ状ガスケットを保持するガスケット装着溝を前記第1立体形状部の突出方向と反対側の面に有する第1セパレータ部品と、
プレス加工可能な金属板よりなり、第2立体形状部を有する第2セパレータ部品であって、前記第1立体形状部を収める立体形状嵌め合い溝を前記第2立体形状部の突出方向と反対側の面に有する第2セパレータ部品と、
前記第2立体形状部の外面側に保持されるフラット状ガスケットと、
を有し、
前記第1立体形状部と前記第2立体形状部は、平面上の位置を合わせて、同じ向きに突出し、
前記第1セパレータ部品と前記第2セパレータ部品は、厚み方向に重ねられて接合される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセパレータ一体ガスケットによれば、スタック組立て時の電解質膜の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のセパレータ一体ガスケットの平面図
図2図1のC-C線拡大断面図
図3】セパレータ一体ガスケットのスタック組立て状態を示す要部拡大断面図
図4】(A)は、図1におけるD-D線拡大断面図、(B)は、図4(A)におけるE-E線断面図
図5】セパレータ一体ガスケットのスタック組立て状態を示す要部拡大断面図
図6】(A)は、図1におけるF-F線拡大断面図、(B)は、図6(A)におけるG-G線断面図
図7】セパレータ一体ガスケットのスタック組立て状態を示す要部拡大断面図
図8】(A)は、図1におけるH-H線拡大断面図、(B)は、図8(A)におけるI-I線断面図
図9】セパレータ一体ガスケットのスタック組立て状態を示す要部拡大断面図
図10】セパレータ一体ガスケットの流路構造の他の例を示す要部拡大断面図
図11】セパレータ一体ガスケットのスタック組立て状態を示す要部拡大断面図
図12】他の実施形態のセパレータ一体ガスケットの要部断面図
図13】比較例のセパレータ一体ガスケットのスタック組立て状態を示す要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、実施の形態に係るセパレータ一体ガスケット1は、セパレータ11と、ガスケット71とを有する。セパレータ11は、平面長方形状である。ガスケット71は、セパレータ11に対し一体的に組み付けられる。
【0010】
セパレータ11は、反応物質(O,H)の反応面12と、マニホールド孔13とを有する。反応面12は、セパレータ11の平面中央に位置する。マニホールド孔13は、酸素(O)の供給用マニホールド孔13Aと、酸素(O)の排出用マニホールド孔13Bと、水素(H)の供給用マニホールド孔13Cと、水素(H)の排出用マニホールド孔13Dと、冷却水の供給用マニホールド孔13Eと、冷却水の排出用マニホールド孔13Fと、を有する。供給用マニホールド孔13A、13C、13Eと排出用マニホールド孔13B、13D、13Fは、反応面12を挟んで両側に配置される。
【0011】
ガスケット71は、外周シール部72と、マニホールドシール部73とを有する。外周シール部72は、セパレータ11の外周に全周に亙って設けられる。マニホールドシール部73は、各マニホールド孔13の周りに、それぞれ全周に亙って設けられる。マニホールドシール部73は、酸素(O)の供給用マニホールドシール部73Aと、酸素(O)の排出用マニホールドシール部73Bと、水素(H)の供給用マニホールドシール部73Cと、水素(H)の排出用マニホールドシール部73Dと、冷却水の供給用マニホールドシール部73Eと、冷却水の排出用マニホールドシール部73Fとを有する。
【0012】
図2に示すように、セパレータ11は、第1セパレータ部品21と、第2セパレータ部品31と、を有する。第1セパレータ部品21は、プレス加工可能な金属板である。第2セパレータ部品31は、プレス加工可能な金属板である。第1セパレータ部品21と第2セパレータ部品31が互いに厚み方向に重ね合わされ接合され、プレス加工可能な金属バイポーラセパレータとなる。第1セパレータ部品21と第2セパレータ部品31は、接合部35において接合される。
【0013】
以下、外周シール部72およびマニホールドシール部73の構成を説明する。尚、外周シール部72およびマニホールドシール部73は、同じ断面形状を有するため、以下、外周シール部72について説明する。
【0014】
図2に示すように、上側の第1セパレータ部品21は、第1立体形状部23を有する。第1立体形状部23は、下側の第2セパレータ部品31へ向けて突出する。第1立体形状部23は、プレス加工により形成される。第1立体形状部23は、左右一対のテーパー面状の側面部23a(第1側面部)と、平面状の底面部23b(第1底面部)を有する。第1立体形状部23は、台形状の断面を有する。第1立体形状部23の突出方向と反対向きの裏面側(図2では上面側)は、ガスケット装着溝24となる。ガスケット装着溝24は、リップ状ガスケット81を保持する。リップ状ガスケット81については後述する。
【0015】
第2セパレータ部品31は、第2立体形状部33を有する。立体形状部33は、第1立体形状部23と平面上の位置を合わせて、第1立体形状部23と同じ向きへ突出する。第2立体形状部33は、プレス加工により形成される。第2立体形状部33は、左右一対のテーパー面状の側面部33a(第2側面部)と、平面状の底面部33b(第2底面部)を有する。第2立体形状部33は、台形状の断面を有する。第2立体形状部33の突出方向と反対向きの裏面側(図2では上面側)は、立体形状嵌め合い溝34となる。立体形状嵌め合い溝34に、第1立体形状部23が嵌め込まれ収められる。
【0016】
ガスケット71は、リップ状ガスケット81とフラット状ガスケット91の組み合わせよりなる両面ガスケットである。
第1セパレータ部品21のガスケット装着溝24に、リップ状ガスケット81が保持される。
【0017】
リップ状ガスケット81は、ガスケット基部82と、シールリップ83と、一対の突起状の受け部84が、一体に設けられる。ガスケット基部82は、平坦状であり、装着溝24内に保持される。シールリップ83は、山形形状の断面を有し、ガスケット基部82の平面上であって幅方向中央に設けられる。一対の受け部84は、ガスケット基部82の平面上であって、シールリップ83の幅方向両側に間隔をおいて設けられる。シールリップ83の先端は、ピーク面圧を発生させやすいよう、円弧形状の断面を有する。これに対し、受け部84の先端は、受けの作用を奏しやすいように平面状に形成される。受け部84の高さは、シールリップ83の高さよりも小さい。一対の受け部84は、同等の高さを有する。一対の受け部84の間隔は、第2立体形状部33の幅よりも小さい。具体的には、一対の受け部84の先端部における間隔wは、第2立体形状部33の底面部33bの幅wよりも小さい。リップ状ガスケット81は、射出成形法により成形される。リップ状ガスケット81は、シリコーン系、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、フッ素系、PIB(ポリイソブチレン)等のゴム材料により成形される。
【0018】
第2立体形状部33の底面部33bの外面側に、フラット状ガスケット91が保持される。
フラット状ガスケット91は、平坦状であって薄膜状に形成される。フラット状ガスケット91の幅wは、シールリップ83の幅wよりも大きく、一対の受け部84の先端部における間隔wおよび第2立体形状部33の底面部33bの幅wよりも小さい。フラット状ガスケット91は、ゴム溶液または液状ゴムをスクリーン印刷にて塗布する方法により成形される。フラット状ガスケット91は、インクジェット法またはスタンプ法などによって成形されても良い。フラット状ガスケット91は、シリコーン系、EPDM、フッ素系、PIB等のゴム材料により成形される。
【0019】
第1立体形状部23、第2立体形状部33は、共にプレス加工により形成される。そのため、プレス加工時の寸法誤差やセパレータ部品接合時の平面上の位置ズレに備えて、以下の構成が設けられている。
第1立体形状部23の幅は、第2立体形状部33の幅よりも小さい。第1立体形状部23の底面部23bの幅は、第2立体形状部33の底面部33bの幅よりも小さい。互いに対向する第1立体形状部23の側面部23aと第2立体形状部33の側面部33aとの間に、幅方向の隙間cが設けられる。したがって、寸法誤差や位置ズレが隙間cの範囲内であれば、寸法誤差や位置ズレを吸収できるため、第1立体形状部23を第2立体形状部33に嵌め込むことが可能となる。第1立体形状部23が立体形状嵌め合い溝34に嵌め込まれ、第1セパレータ部品21と第2セパレータ部品31が接合された状態で、第1立体形状部23の底面部23bと第2立体形状部33の底面部33bは互いに接触した状態となるが、第1立体形状部23の側面部23aと第2立体形状部33の側面部33aは、互いに接触せず離間した状態となる。
【0020】
酸素の供給用マニホールドシール部73Aは、燃料電池の稼働時、酸素を供給用マニホールド孔13Aから反応面12へ供給する。酸素の排出用マニホールドシール部73Bは、燃料電池の稼働時、酸素を反応面12から排出用マニホールド孔13Bへ排出する。
【0021】
図4(A)に示すように、第1立体形状部23と第2立体形状部33との間のシール周上の一部に間隙空間41が設けられる。間隙空間41の両端部であって、第1セパレータ部品21には、それぞれ、第1開口42と第2開口43が設けられる。これにより、リップ状ガスケット81およびフラット状ガスケット91を幅方向に横断する流体流路44が設けられる。流体流路44を酸素が流れる。
【0022】
第1立体形状部23は、立体部45を有する。立体部45は、プレス加工により形成される。立体部45は、第1立体形状部23の幅方向を横断するように、第1立体形状部23の底面部23b、一対の側面部23a、第1立体形状部23の幅方向両側の平面部22に亙って、図4(B)に示す断面形状を有する。立体部45を有する第1立体形状部23を第2立体形状部33に嵌め込み、底面部23bと底面部33bを接触させることにより、間隙空間41は、トンネル状の空間となる。これにより、図5に示すように、供給用マニホールド孔13Aから第1開口42、間隙空間41および第2開口43を経由して反応面12へ至る、矢印の向きの酸素供給用の流体流路44が形成される。また、反応面12から第2開口43、間隙空間41および第1開口42を経由して排出用マニホールド孔13Bへ至る、矢印と反対の向きの酸素排出用の流体流路44が形成される。
【0023】
水素の供給用マニホールドシール部73Cは、燃料電池の稼働時、水素を供給用マニホールド孔13Cから反応面12へ供給する。水素の排出用マニホールドシール部73Dは、燃料電池の稼働時、水素を反応面12から排出用マニホールド孔13Dへ排出する。
【0024】
図6(A)に示すように、第1立体形状部23と第2立体形状部33との間のシール周上の一部に間隙空間51が設けられる。間隙空間51の両端部であって、第2セパレータ部品31には、それぞれ、第1開口52と第2開口53が設けられる。これにより、リップ状ガスケット81およびフラット状ガスケット91を幅方向に横断する流体流路54が設けられる。流体流路54を水素が流れる。
【0025】
第1立体形状部23は、立体部55を有する。立体部55は、プレス加工により形成される。立体部55は、第1立体形状部23の幅方向を横断するように、第1立体形状部23の底面部23b、一対の側面部23a、第1立体形状部23の幅方向両側の平面部22に亙って、図6(B)に示す断面形状を有する。立体部55を有する第1立体形状部23を第2立体形状部33に嵌め込み、底面部23bと底面部33bを接触させることにより、間隙空間51は、トンネル状の空間となる。これにより、図7に示すように、供給用マニホールド孔13Cから第1開口52、間隙空間51および第2開口53を経由して反応面12へ至る、矢印の向きの水素供給用の流体流路54が形成される。また、反応面12から第2開口53、間隙空間51および第1開口52を経由して排出用マニホールド孔13Dへ至る、矢印と反対の向きの水素排出用の流体流路54が形成される。
【0026】
冷却水の供給用マニホールドシール部73Eは、燃料電池の稼働時、冷却水を供給用マニホールド孔13Eから反応面12へ供給する。冷却水の排出用マニホールドシール部73Fは、燃料電池の稼働時、冷却水を反応面12から排出用マニホールド孔13Fへ排出する。
【0027】
図8(A)に示すように、第1立体形状部23と第2立体形状部33との間のシール周上の一部に間隙空間61が設けられる。これにより、リップ状ガスケット81およびフラット状ガスケット91を幅方向に横断する流体流路64が設けられる。流体流路64を冷却水が流れる。
【0028】
第1立体形状部は、立体部65を有する。立体部65は、プレス加工により形成される。立体部65は、第1立体形状部23の幅方向を横断するように、第1立体形状部23の底面部23b、一対の側面部23a、第1立体形状部23の幅方向両側の平面部22に亙って、図8(B)に示す断面形状を有する。立体部65を有する第1立体形状部23を第2立体形状部33に嵌め込み、底面部23bと底面部33bを接触させることにより、間隙空間61は、トンネル状の空間となる。
【0029】
冷却水は、酸素や水素と異なり、反応物質ではない。そのため、冷却水は、反応面12の領域においてもバイポーラセパレータの内部(第1セパレータ部品21と第2セパレータ部品31の間の内部空間)を通過することにより、排出用マニホールド孔13Fへと流動する。このため、第1立体形状部23及び第2立体形状部33の反応面12側の領域においても、第1セパレータ部品21と第2セパレータ部品31の間に、間隙空間61と同様の断面形状を有する内部空間66が、間隙空間61と連続する。
【0030】
供給用マニホールド孔13Eの領域および排出用マニホールド孔13Fの領域においても、第1セパレータ部品21と第2セパレータ部品31の間に、間隙空間61と同様の断面形状を有する内部空間67が、間隙空間61と連続する。
【0031】
これにより、図9に示すように、供給用マニホールド孔13Eから内部空間67および間隙空間61を経由して内部空間66へ至る、矢印の向きの冷却水供給用の流体流路64が形成される。また、内部空間66から間隙空間61および内部空間67を経由して排出用マニホールド孔13Fへ至る、矢印と反対の向きの冷却水排出用の流体流路64が形成される。
【0032】
尚、冷却水供給用マニホールド孔13Eの領域および冷却水排出用マニホールド孔13Fの領域には、図10に示すように、内部空間67に代えて開口62を設けても良い。
【0033】
本実施形態のセパレータ一体ガスケット1は、図3に示すように、燃料電池セルの構成要素である電解質膜101やガス拡散層102,103とともに、燃料電池スタックとして組み立てられる。一対のガス拡散層102,103間に挟まれた電解質膜101は、ガス拡散層102,103よりも大きな平面積を有する。そのため、電解質膜101は、ガス拡散層102,103から食み出す周縁部101aを有する。周縁部101aは、リップ状ガスケット81とフラット状ガスケット91の間に挟み込まれる。これにより、リップ状ガスケット81およびフラット状ガスケット91は、酸素、水素または冷却水が漏洩しないようにシール作用を発揮する。
【0034】
本実施形態のセパレータ一体ガスケット1のリップ状ガスケット81は、ガスケット基部82の平面上にシールリップ83を一体に設けたものである。また、フラット状ガスケット91は、シールリップを有さない平坦状である。そのため、リップ状ガスケット81は、フラット状ガスケット91よりも大きな高さ(厚み)を有する。
【0035】
図13に示す比較例では、第1セパレータ部品21、第2セパレータ部品31に立体形状部が設けられず、第1セパレータ部品21、第2セパレータ部品31が平面状である。この場合、リップ状ガスケット81と、フラット状ガスケット91の高さ(厚み)の相違により、スタック組立て時に、リップ状ガスケット81とフラット状ガスケット91の間に挟み込まれる電解質膜101の周縁部101aが、リップ状ガスケット81によって厚み方向一方(図13では上方)へ持ち上げられ、この分変形する。
【0036】
これに対し、本実施形態のセパレータ一体ガスケット1では、第1及び第2セパレータ部品21,31が、それぞれ立体形状部23,33を有する。そのため、図3に示すように、スタック組立て時に、リップ状ガスケット81とフラット状ガスケット91の間に挟み込まれる電解質膜101の周縁部101aが、リップ状ガスケット81によって厚み方向一方(図3では上方)へ持ち上げられることがなく、電解質膜101はほぼ平面状のままとなり、大きく変形することがない。
したがって、電解質膜101がリップ状ガスケット81により持ち上げられて変形し、耐久性が低下するのを防止できる。
【0037】
第2セパレータ部品31の立体形状部33の高さを、第2セパレータ部品31と電解質膜101の間に配置されるガス拡散層102の厚みと同等またはほぼ同等にすることが好ましい。
【0038】
本実施形態のセパレータ一体ガスケット1では、第1立体形状部23の幅が第2立体形状部33の幅よりも小さく、互いに対向する第1立体形状部23の側面部23aと第2立体形状部33の側面部33aとの間に幅方向の隙間cが設けられる。そのため、第1セパレータ部品21、第2セパレータ部品31のプレス加工時に寸法誤差が発生したり、第1セパレータ部品21と第2セパレータ部品31の接合時に平面上の位置ズレが発生したりしても、第1立体形状部23を第2立体形状部33に嵌め込むことが可能となる。
【0039】
本実施形態のセパレータ一体ガスケット1は、第1立体形状部23の底面部23bと第2立体形状部33の底面部33bとの間の周上の一部に、間隙空間41,51,61が設けられる。これにより、リップ状ガスケット81およびフラット状ガスケット91を幅方向に横断する流体流路44,54,64が形成される。流体流路44,54,64を介して、供給用マニホールド孔13A,13C,13Eから反応面12へ、反応面12から排出用マニホールド孔13B,13D,13Fへ、反応物質(O,H)や冷却水が流れる。
【0040】
本実施形態のセパレータ一体ガスケット1では、リップ状ガスケット81に一対の突起状の受け部84が設けられる。一対の受け部84の間隔は、第2立体形状部33の幅よりも小さい。そのため、図3に示すように、一対の受け部84が双方同時にその上方に位置する第2立体形状部33を支持する。したがって、図11に示すように、スタック組立て時に部分的過圧縮やセパレータ11同士の位置ズレなどが生じても、セパレータ11に変形や傾きが発生するのを防止することができ、積層された複数のセパレータ11を平行な状態に維持できる。
【0041】
尚、受け部84は、他の実施形態として図12に示すように、製品仕様の都合等により、省略されても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 セパレータ一体ガスケット
11 セパレータ
12 反応面
13 マニホールド孔
13A 酸素供給用マニホールド孔
13B 酸素排出用マニホールド孔
13C 水素供給用マニホールド孔
13D 水素排出用マニホールド孔
13E 冷却水供給用マニホールド孔
13F 冷却水排出用マニホールド孔
21 第1セパレータ部品
22,32 平面部
23 第1立体形状部
23a,33a 側面部
23b,33b 底面部
24 ガスケット装着溝
31 第2セパレータ部品
33 第2立体形状部
34 立体形状嵌め合い溝
35 接合部
41,51,61 間隙空間
42,43,52,53,62 開口
44,54,64 流体流路
45,55,65 立体部
66,67 内部空間
71 ガスケット
72 外周シール部
73 マニホールドシール部
73A 酸素供給用マニホールドシール部
73B 酸素排出用マニホールドシール部
73C 水素供給用マニホールドシール部
73D 水素排出用マニホールドシール部
73E 冷却水供給用マニホールドシール部
73F 冷却水排出用マニホールドシール部
81 リップ状ガスケット
82 ガスケット基部
83 シールリップ
84 受け部
91 フラット状ガスケット
101 電解質膜
101a 周縁部
102,103 ガス拡散層
c 隙間
図1
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