(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-18
(45)【発行日】2022-08-26
(54)【発明の名称】物理的プロセスのシミュレーションのための空き空間ドメイン・デコンポジション
(51)【国際特許分類】
G06F 30/23 20200101AFI20220819BHJP
【FI】
G06F30/23
(21)【出願番号】P 2021517741
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 US2020045889
(87)【国際公開番号】W WO2021034563
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521126494
【氏名又は名称】ベーハー - ジョーンズ、トーマス、ウェッテランド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベーハー - ジョーンズ、トーマス、ウェッテランド
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第9063882(US,B1)
【文献】米国特許第8924186(US,B1)
【文献】米国特許第8510091(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースから生成された場を決定するためのコンピュータ実装方法であって、前記場が1つ又は複数の構造と相互作用し、前記方法は、
前記ソースと前記1つ又は複数の構造とを含んでいるドメインを備えるシミュレーション空間を与えるステップと、
コンピュータによって、前記場に作用する演算子に少なくとも部分的に基づいて前記ドメイン内の前記場をシミュレートするステップとを含み、シミュレートするステップが、
前記ドメインを複数のサブドメインに分割するステップと、
前記場の第1の反復を指定するステップと、
前記ドメイン全体にわたって前記場の前記第1の反復に作用する前記演算子に基づいてグローバル残差ソースを決定するステップと、
各反復において前記サブドメインのサブセット中の残差場挙動について解くことによって、前記場について反復的に解くステップと
をさらに含み、
前記サブセットのサブドメイン中の残差場挙動について解くことは、
前記演算子が、前記サブドメインの周りの拡張されたサブドメイン内のローカル残差場に作用することと、
前記サブドメインが構造を備える場合、前記拡張されたサブドメインの境界に位置する前記構造の境界を、前記拡張されたサブドメインの前記境界を越えて第2の拡張されたサブドメインまで拡張することと
を含む、
コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記演算子が、損失を含むように変更され、
シミュレートするステップは、前記変更された演算子が変更された残差場に作用する1つ又は複数の収束サイクルをさらに含む、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
シミュレートするステップが、
前記サブドメインが一様な空間で埋められるとき、前記ローカル残差場について解くためにグリーン関数法を使用するステップと、
前記サブドメインが1次元非対称性を有するとき、前記ローカル残差場について解くためにスラブ反復法を使用するステップと、
前記サブドメインが、一様な空間で埋められず、前記1次元非対称性をも有しないとき、前記ローカル残差場について解くために、吸収境界条件をもつ定常状態法又は時間停止法のいずれかを使用するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
シミュレートするステップは、前記サブドメインがボーダー・サブドメインであるとき、前記時間停止法を適用するステップと、前記サブドメインが内部サブドメインであるとき、吸収境界条件をもつ前記定常状態法を適用するステップとをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記場が、電磁場、流体流れ場、熱伝導場、拡散場又は静電場である、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記場が、変更されたマクスウェルの方程式
【数1】
を満たす電磁場であり、
前記1つ又は複数の構造が、少なくとも1つの導波路又は少なくとも1つの伝送線路を含む、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
シミュレートするステップが、
a)前記場の現在の反復に対する前記演算子の動作に基づいて新しいソースを決定するステップと、
b)前記新しいソースと前記ソースとの間の差に基づいて前記グローバル残差ソースを決定するステップと、
c)前記グローバル残差ソースの大きさが第1の事前設定されたしきい値よりも小さい場合、シミュレーションを終了し、前記場を前記場の前記現在の反復に等しく設定するステップと、
d)前記グローバル残差ソースの前記大きさが前記第1の事前設定されたしきい値よりも大きい場合、サブドメインの前記サブセットを決定するために前記複数のサブドメインを走査するステップであって、前記サブセット内の各サブドメインが、第2の事前設定されたしきい値よりも大きいローカル残差ソース大きさを有する、走査するステップと、
e)前記サブドメインの周りの前記拡張されたサブドメインを構築するステップと、
f)前記拡張されたサブドメイン内のローカル残差場について解くステップと、
g)前記場の新しい推定値を与えるために、前記サブセットからの前記ローカル残差場のすべてを加算するステップと、
h)前記場の前記現在の反復を前記場の前記新しい推定値に等しく設定するステップと、
i)前記残差ソースの前記大きさが、前記第1の事前設定されたしきい値よりも小さくなるまで、ステップ(a)~(h)を繰り返すステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ソースから生成された場を決定するためのコンピュータ・プログラム命令で符号化された、非一時的コンピュータ記憶媒体であって、前記場が1つ又は複数の構造と相互作用し、前記コンピュータ・プログラム命令は、1つ又は複数のコンピュータによって実行されたとき、前記1つ又は複数のコンピュータに、
前記ソースと前記1つ又は複数の構造とを含んでいるドメインを備えるシミュレーション空間を与えることと、
前記場に作用する演算子に少なくとも部分的に基づいて前記ドメイン内の前記場をシミュレートすることと、
前記ドメインを複数のサブドメインに分割することと、
前記場の第1の反復を指定することと、
前記ドメイン全体にわたって前記場の前記第1の反復に作用する前記演算子に基づいて残差ソースを決定することと、
前記サブドメインのサブセット中の残差場挙動について解くことによって、前記場について反復的に解くことと
を行わせ、
前記サブセットのサブドメイン中の残差場挙動について解くことは、
前記演算子が、前記サブドメインの周りの拡張されたサブドメイン内の前記残差場に作用することと、
前記サブドメインが構造を備える場合、前記拡張されたサブドメインの境界に位置する前記構造の境界を、前記拡張されたサブドメインの前記境界を越えて第2の拡張されたサブドメインまで拡張することと
を含む、
非一時的コンピュータ記憶媒体。
【請求項9】
前記残差場に作用する前記演算子が、損失を含むように変更され、
前記コンピュータに前記ドメイン内の前記場をシミュレートさせることが、前記コンピュータに、前記変更された演算子が変更された残差場に作用する1つ又は複数の収束サイクルをシミュレートさせることを含む、
請求項8に記載の非一時的コンピュータ記憶媒体。
【請求項10】
前記コンピュータに前記ドメイン内の前記場をシミュレートさせることは、前記コンピュータに、
前記サブドメインが一様な空間で埋められるとき、前記残差場について解くためにグリーン関数法を使用することと、
前記サブドメインが1次元非対称性を有するとき、前記残差場について解くためにスラブ反復法を使用することと、
前記サブドメインが、一様な空間で埋められず、1次元非対称性をも有しないとき、前記残差場について解くために、吸収境界条件をもつ定常状態法又は時間停止法のいずれかを使用することと
を行わせることを含む、請求項8に記載の非一時的コンピュータ記憶媒体。
【請求項11】
前記コンピュータに前記ドメイン内の前記場をシミュレートさせることは、前記コンピュータに、
前記サブドメインがボーダー・サブドメインであるとき、前記時間停止法を適用することと、前記サブドメインが内部サブドメインであるとき、吸収境界条件をもつ前記定常状態法を適用することと
を行わせることを含む、請求項10に記載の非一時的コンピュータ記憶媒体。
【請求項12】
前記場が、電磁場、流体流れ場、熱伝導場、拡散場又は静電場である、請求項8に記載の非一時的コンピュータ記憶媒体。
【請求項13】
前記場が、変更されたマクスウェルの方程式
【数2】
を満たす電磁場であり、
前記1つ又は複数の構造が、少なくとも1つの導波路又は少なくとも1つの伝送線路を含む、
請求項8に記載の非一時的コンピュータ記憶媒体。
【請求項14】
前記コンピュータに前記ドメイン内の前記場をシミュレートさせることは、前記コンピュータに、
a)前記場の現在の反復上の前記演算子の動作に基づいて新しいソースを決定することと、
b)前記新しいソースと前記ソースとの間の差に基づいてグローバル残差ソースを決定することと、
c)前記グローバル残差ソースの大きさが第1の事前設定されたしきい値よりも小さい場合、シミュレーションを終了し、前記場を前記場の前記現在の反復に等しく設定することと、
d)前記グローバル残差ソースの前記大きさが前記第1の事前設定されたしきい値よりも大きい場合、サブドメインの前記サブセットを決定するために前記複数のサブドメインを走査することであって、前記サブセット内の各サブドメインが、第2の事前設定されたしきい値よりも大きいローカル残差ソース大きさを有する、走査することと、
e)前記サブドメインの周りの前記拡張されたサブドメインを構築することと、
f)前記拡張されたサブドメイン内のローカル残差場について解くことと、
g)前記場の新しい推定値を与えるために、前記サブセットからの前記ローカル残差場のすべてを加算することと、
h)前記場の前記現在の反復を前記場の前記新しい推定値に等しく設定することと、
i)前記残差ソースの前記大きさが、前記第1の事前設定されたしきい値よりも小さくなるまで、ステップ(a)~(h)を繰り返すことと
を行わせることを含む、請求項8に記載の非一時的コンピュータ記憶媒体。
【請求項15】
ソースから生成された場をシミュレートするためのコンピュータ・システムであって、前記場が1つ又は複数の構造と相互作用し、前記システムは、
前記ソースと前記1つ又は複数の構造とを含んでいるドメインを備えるシミュレーション空間を与えることと、
前記場に作用する演算子に少なくとも部分的に基づいて前記ドメイン内の前記場をシミュレートすることと、
前記ドメインを複数のサブドメインに分割することと、
前記場の第1の反復を指定することと、
前記ドメイン全体にわたって前記場の前記第1の反復に作用する前記演算子に基づいて残差ソースを決定することと、
前記サブドメインのサブセット中の残差場挙動について解くことによって、前記場について反復的に解くことと
を行うように構成され、
前記サブセットのサブドメイン中の残差場挙動について解くことは、
前記演算子が、前記サブドメインの周りの拡張されたサブドメイン内の前記残差場に作用することと、
前記サブドメインが構造を備える場合、前記拡張されたサブドメインの境界に位置する前記構造の境界を、前記拡張されたサブドメインの前記境界を越えて第2の拡張されたサブドメインまで拡張することと
を含む、
コンピュータ・システム。
【請求項16】
前記場をシミュレートするときに、前記システムは、
損失を含むように前記演算子を変更することと、
前記変更された演算子が変更された残差場に作用する1つ又は複数の収束サイクルを実施することと
を行うようにさらに構成された、請求項15に記載のコンピュータ・システム。
【請求項17】
前記場をシミュレートするときに、前記システムは、
前記サブドメインが一様な空間で埋められるとき、ローカル残差場について解くためにグリーン関数法を使用することと、
前記サブドメインが1次元非対称性を有するとき、前記ローカル残差場について解くためにスラブ反復法を使用することと、
前記サブドメインが、一様な空間で埋められず、前記1次元非対称性をも有しないとき、前記ローカル残差場について解くために、吸収境界条件をもつ定常状態法又は時間停止法のいずれかを使用することと
を行うようにさらに構成された、請求項15に記載のコンピュータ・システム。
【請求項18】
前記場をシミュレートするときに、前記システムは、
前記サブドメインがボーダー・サブドメインであるとき、前記時間停止法を適用することと、
前記サブドメインが内部サブドメインであるとき、吸収境界条件をもつ前記定常状態法を適用することと
を行うようにさらに構成された、請求項17に記載のコンピュータ・システム。
【請求項19】
前記場が、変更されたマクスウェルの方程式
【数3】
を満たす電磁場であり、
前記1つ又は複数の構造が、少なくとも1つの導波路又は少なくとも1つの伝送線路を含む、
請求項15に記載のコンピュータ・システム。
【請求項20】
前記場をシミュレートするときに、前記システムは、
a)前記場の現在の反復上の前記演算子の動作に基づいて新しいソースを決定することと、
b)前記新しいソースと前記ソースとの間の差に基づいてグローバル残差ソースを決定することと、
c)前記グローバル残差ソースの大きさが第1の事前設定されたしきい値よりも小さい場合、シミュレーションを終了し、前記場を前記場の前記現在の反復に等しく設定することと、
d)前記グローバル残差ソースの前記大きさが前記第1の事前設定されたしきい値よりも大きい場合、サブドメインの前記サブセットを決定するために前記複数のサブドメインを走査することであって、前記サブセット内の各サブドメインが、第2の事前設定されたしきい値よりも大きいローカル残差ソース大きさを有する、走査することと、
e)前記サブドメインの周りの前記拡張されたサブドメインを構築することと、
f)前記拡張されたサブドメイン内のローカル残差場について解くことと、
g)前記場の新しい推定値を与えるために、前記サブセットからの前記ローカル残差場のすべてを加算することと、
h)前記場の前記現在の反復を前記場の前記新しい推定値に等しく設定することと、
i)前記残差ソースの前記大きさが、前記第1の事前設定されたしきい値よりも小さくなるまで、ステップ(a)~(h)を繰り返すことと
を行うようにさらに構成された、請求項15に記載のコンピュータ・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、コンピュータ・シミュレーションの分野に関する。詳細には、本開示は、ドメイン・デコンポジション(domain decomposition)に関する。
【背景技術】
【0002】
物理的物体又は物理的場の数学的モデリング又はシミュレーションの分野では、科学及びエンジニアリングにおいて重要な偏微分方程式を解くために使用される数個の基本的方法がある。マクスウェルの方程式、応力ひずみ方程式、熱伝達方程式及び流体流れ微分方程式はすべて、その厳密な解におけるある類似度を時間ドメイン、周波数ドメイン、又は静的事例のいずれかにおいて有し、関心(interest)の多くの状況については、見つけられないことがある。一般に行うことは、関心の連続する場又は他の物理量を、比較的一様な離間したポイントのセットに変換し(有限差分法)、或いはより一般的な三角形又は4面体形状に変換し(有限要素法)、それにより、関心の偏微分方程式を離散(通常、線形)方程式のセットに変換することである。これらの線形方程式は、次いで、コンピュータを使用して解かれるか又は反復され、それにより、関心のドメイン及び構造のセットについて、元の偏微分方程式についての近似解が与えられ得る。
【0003】
有限差分手法と有限要素手法の両方が、通常、極めて大きい数の変数をもつ行列方程式の生成を伴う。変数の数は、数千万を超過するか又はさらにはそれ以上になることがある。各変数は、一般に、モデル又はシミュレーション中のポイントにおける力、電磁場、電圧、又は他の物理的属性に対応する。さらに、一般に、境界条件が、物理的モデル又はシミュレーション・ドメインのエッジに現れるポイントに、場合によっては、他の制約の場合に他の場所にも、課される。これらの行列方程式は、次いで、いくつかの方法のいずれか1つによって解かれ、いくつかの場合には、行列方程式は直接解かれ、又はいくつかの場合には、反復手法が使用され得る。プリコンディショナーも使用され得、プリコンディショナーは、反復行列ソルバーについての変換の速度を上げるために使用される数学的技法である。すべての場合において、より大きい行列方程式を解くことは、より多数の変数の場合、ますます困難になり、基本的に、使用され得るドメイン・サイズと、算出が進み得る速度とを制限する。さらに、通常、解ベクトルの複数のコピーが記憶される必要があり、それも、より多数の変数、したがって、有限差分値又は有限要素値を使用することをより難しくする。
【0004】
物理的物体又は物理的場の数学的モデリング又はシミュレーションの分野では、線形行列方程式の解を必要としない数個の方法がある。1つの実例は、有限差分時間ドメイン(FDTD:finite-difference time domain)法である。この方法は、行列解が小さい時間増分だけ解ベクトルを進めることを必要としないという特性を有する、ほんの少数の方法のうちの1つである。実際は、解ベクトルの単一のコピーのみがなお、メモリに記憶される必要がある。しかしながら、FDTD法は、通常、時間ドメイン解よりも有用である、定常状態解(steady-state solution)を直接与えない。通常、FDTD解の時間ドメイン・フーリエ・フィルタ処理を実施することによって、許容できる精度の近似定常状態解を復元することができる。この手法、フーリエ・フィルタ処理と組み合わせられたFDTDは、光学レジームの大部分において使用される設計手法についての現況技術である。定常状態解の欠如にもかかわらず、FDTDは、FDTDが行列方程式の解を必要とせず、それにより、シミュレーションにおいて使用され得るポイントの数を非常に増加させるので、有限要素よりも選好される。光学レジームにおいて、関心の多くのシミュレーションが、所与の領域中の放射の分散関係の正確なモデリングを必要とする。必要とされる精度は、十分な数のポイントを使用することによってのみ得られ得、したがって、光学レジームにおけるFDTDの選好がある。いくつかの無線周波数(RF:radiofrequency)レジーム問題の場合、同様の考慮事項により、FDTDが選好されることになるが、関与する波長が通常、構造サイズと比較してはるかに長いので、より高い頻度で有限要素が使用される。
【0005】
定常状態解を有する場合、システムにおける非線形性が、時々、定常状態解の連続を使用することによって扱われることがあることは注目に値し、ここでは、基礎をなす偏微分方程式の非線形部分が、線形「刺激(stimulus)」項として使用され得る。自己矛盾がなくなるまで解を繰り返すことは、次いで、解くことが困難なことで有名な非線形偏微分方程式にさえ任意の精度の解を与えることができる。FDTDの特有の弱点は、多くの場合、それが実際には非線形問題にまったく対処することができないことである。FDTDの非線形フォーミュレーションは存在するが、一般に、数値誤差及び不十分なダイナミック・レンジが、しばしば、FDTDが非線形問題にうまく適用されることを妨げる。
【0006】
光学レジームにおける定常状態問題を解くことの基本的限界、詳細には、解ベクトルのサイズを必要とされるサイズにスケーリングすることができないことに対処するために、様々なドメイン・デコンポジション手法が長年にわたって提案された。これらの方法について説明するためにいくつかの用語が使用される。1つの広く使用されている用語は、反復多領域(IMR:Iterative Multiregion)技法又は反復多領域法である。
【0007】
IMR技法について説明する出版物は、Al Sharkawyら(Plane Wave Scattering From Three Dimensional Multiple Objects Using the Iterative Multiregion Technique Based on the FDFD Method、IEEE Transactions on Antennas and Propagation、Vol.54、No.2、2006年2月、666~672頁)を含む。Al Sharkawyらは、大きい3次元電磁散乱体からの散乱(scattering)の問題を解くために、提示される有限差分周波数ドメイン法を使用する反復手法を開示している。反復多領域技法は、1つの算出ドメインをより小さいサブ領域に分割し、各サブ領域を別々に解くために導入される。次いで、サブ領域解は、完全なドメインについての解を得るために反復的に組み合わせられる。その結果、算出時間及びメモリにおけるかなりの低減が達成されている。
【0008】
IMR技法について説明する別の出版物は、Fatih Kaburcukら(IMR technique for antenna and scattering problems using hybrid solutions based on the MoM and FDTD method、2014 International Conference on Electromagnetics in Advanced Applications(ICEAA)、IEEE Xploreにおいてオンラインで出版:2014年9月22日、DOI:10.1109/ICEAA.2014.6903866)によるものである。Kaburcukらは、モーメント法(MoM:method of moments)及び有限差分時間ドメイン法(FDTD)の統合を反復多領域(IMR)技法に組み合わせている。この手法は、大規模アンテナ及び散乱問題を解くために、MoM及びFDTDの有利な特徴を活用する。元の問題ドメインは、接続されていないサブ領域に分割され、適切な方法が各サブ領域中で使用される。
【0009】
概して、IMR技法は、問題ドメインをいくつかのサブドメインに分割する。各サブドメインは、外向き波吸収境界条件(ABC:absorbing boundary condition)を用いて解かれ、ABCは、いくつかの場合には完全一致層(PML:perfectly matched layer)である。得られた場は、次いで、ソース電流に変換され、ソース電流は、場を近隣のサブドメインに再出射するために使用され得る。このプロセスは、次いで、各サブドメインに対して順に繰り返され得る。最終的に、真のグローバル解が収束することになる。時間ドメイン変形態も、Kaburcukらによって示されている。
【0010】
これらのドメイン・デコンポジション法にもかかわらず、IMRなどのドメイン・デコンポジション技法に依拠する、光学レジームにおけるマクスウェルの方程式を解く汎用シミュレーション・ツールがない。通常、技術者は、光学レジームにおいてFDTDのみを使用し、しばしば、RFレジームにおいてFDTD又は有限要素を使用する。少なくともドメイン・デコンポジション法が一般的に実装されるとき、これらのドメイン・デコンポジション法に関して基本的弱点がある。
【0011】
周波数ドメインのドメイン・デコンポジション法の場合、各反復が、境界条件領域からの不可避的誤差の累積を伴う。最終的な定常状態解が得られる場合でも、補正され得ない又は補正されるものとして識別さえされ得ない境界条件領域からの累積誤差は、得られた解を、しばしば使用可能でないポイントまでしばしば損なう。IMR法などの技法は、これらの技法が、境界条件を用いて適切に扱うことができないことにより、普及していない。実装方法に応じて、線形システム全体を一度に解くことから得られるであろう理想的な解と比較して、最終的な解に投入されるさらなるタイプの誤差があり得る。さらに、IMRなどの方法は、誤差のこの内因性ソースを処理するための機構を欠く。別の考慮事項は、ドメイン・デコンポジションが、単独で、問題に対する解の速度を自動的に上げないことである。たとえば、Al Sharkawyらは、非ドメイン・デコンポジション法と比較して、解く時間におけるわずか2倍の速度向上を報告しており、これは、IMRを実装することの困難と、次いでシミュレーションに導入される追加される内因性の、補正不可能な(及びしばしば検出不可能な)誤差とを考慮すると、あまり魅力的でない。
【0012】
時間ドメインのドメイン・デコンポジション手法も、この限界を有し、ドメイン・スティッチングにおける追加の誤差という欠点がさらにある。主要な問題は、周波数ドメイン法とは対照的に、少なくとも境界条件を含まず、解が正しいことを検証するために適用され得る単一の自己矛盾のない行列方程式がないことである。
【0013】
低減された精度のドメイン・デコンポジション法として説明され得る、いくつかのシミュレーション手法がある。たとえば、高速多重極法(FMM:fast multipole method)は、いくつかの場合には、複雑な電磁問題を、サブドメインのセットについて解くことに低減するために使用され、サブドメインの各々は、他のドメインの観点からより単純な機能的形式(たとえば、モノポール又はダイポール)に近づくことができる。ドメイン間の「リンケージ」のこの低減は、問題を簡略化することができる。この方法の変形態が、たとえば、アンテナ設計においてしばしば使用される。しかしながら、これらの方法は、最終的に、FDTD又は有限要素法が与えるであろう厳密な離散解をマクスウェルの方程式に与えず、したがって、多くの場合、有用性が低減される。
【0014】
Gibson,W.C.(The Method of Moments in Electromagnetics,2nd Edition、CRC Press、2014(2015)年7月10日出版、ISBN9781482235791)は、FMMについて説明し、モーメント法(MOM)を介する電磁積分方程式の解を開示する。本開示は、導電性及び誘電体領域に関する問題を扱うために使用され得る表面積分方程式の一般化されたセットを導出する。本開示は、さらに、細いワイヤ、回転体、並びに2次元及び3次元体に関与する、漸進的により困難な問題についてのこれらの積分方程式を解く。
【0015】
米国特許第10,089,424号(Tarmanら)は、そのバランスで貯留層モデル(reservoir model)におけるアクティブ・セルのバランスがとれている、並列貯留層シミュレーション中の2Dドメイン・デコンポジションのためのシステム及び方法を開示している。この方法は、貯留層モデルにおける所定の数のデコンポジション・ドメインのための各組合せを計算するステップと、組合せのうちの1つについて、X方向のデコンポジション・ドメインの数とY方向のデコンポジション・ドメインの数とを識別するステップと、上記数のX方向のデコンポジション・ドメインと上記数のY方向のデコンポジション・ドメインとについて、所定の順序で1つ又は複数のデコンポジション境界を計算するステップと、所定の数のデコンポジション・ドメインの各々についてのアクティブ・セルの理想的な数とアクティブ・セルの実際の数とに基づいてオフセット・サイズを計算するステップと、上記数のX方向のデコンポジション・ドメインと上記数のY方向のデコンポジション・ドメインとについて、別の所定の順序で1つ又は複数のデコンポジション境界を計算するステップと、所定の数のデコンポジション・ドメインの各々についてのアクティブ・セルの理想的な数とアクティブ・セルの別の実際の数とに基づいて、別のオフセット・サイズを計算するステップと、第1のステップにおいて計算された各組合せについて、ステップ2~6を繰り返すステップと、オフセット・サイズ及び別のオフセット・サイズのうちの最も小さいサイズを伴う、組合せのうちの1つを選択するステップとを含む。
【0016】
WO201762531A2(Bratvedt Kら)は、貯留層シミュレーションを実施するためのシステム、コンピュータ可読媒体、及び方法を開示している。貯留層データ及びシミュレーション・パラメータが得られ、その後にシミュレーション・パラメータに基づく偏微分方程式の決定が続く。適応された偏微分方程式を与えるために、偏微分方程式から高いコントラストをもつ長いコヒーレント構造(たとえば、裂け、断層、高透水性及び低透水性チャネル、又は頁岩層)の影響を除去することによって、貯留層データ及び偏微分方程式に基づいて、貯留層シミュレーションの時間ステップが実施される。その後、適応された偏微分方程式に対して、代数マルチスケール法が、近似された解を生成するために実施される。
【0017】
米国公開第2010/0082724A1号(Diyankovら)は、反復的に一次連立方程式を解くために並列算出を使用して処理される、プリコンディショナーを使用する並列算出反復ソルバーを開示している。そのような方程式の実例は、石油又はガス貯留層の3Dモデリングを含む。元の行列は、区分され、縁付きブロック対角形式(block bordered diagonal form)に変換される。さらに、一次連立方程式の並列反復解において使用するためのプリコンディショナーを導出するための手法が、与えられる。特に、並列算出反復ソルバーが、並列処理を介して一次連立方程式を解く際に使用するためにそのようなプリコンディショナーを導出及び/又は適用する。
【0018】
ドメイン・デコンポジションを使用する現在の手法は、境界誤差問題を適切に扱わない。さらに、そのような手法は、実質的な速度向上を与えない。したがって、ドメイン・デコンポジション法は、電気力学の分野(マクスウェルの方程式)、熱伝達方程式、流体流れ、及び応力ひずみ方程式を含む、科学及びエンジニアリングの基本的偏微分方程式に対する実際の厳密な離散解を得るために、めったに使用されない。そのような解は、莫大な実際的価値がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第10,089,424号
【文献】WO201762531A2
【文献】米国公開第2010/0082724A1号
【非特許文献】
【0020】
【文献】Al Sharkawyら(Plane Wave Scattering From Three Dimensional Multiple Objects Using the Iterative Multiregion Technique Based on the FDFD Method、IEEE Transactions on Antennas and Propagation、Vol.54、No.2、2006年2月、666~672頁)
【文献】Fatih Kaburcukら(IMR technique for antenna and scattering problems using hybrid solutions based on the MoM and FDTD method、2014 International Conference on Electromagnetics in Advanced Applications(ICEAA)、IEEE Xploreにおいてオンラインで出版:2014年9月22日、DOI:10.1109/ICEAA.2014.6903866)
【文献】Gibson,W.C.(The Method of Moments in Electromagnetics,2nd Edition、CRC Press、2014(2015)年7月10日出版、ISBN9781482235791)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
一態様では、ソースから生成された場を決定するためのコンピュータ実装方法が開示され、場は1つ又は複数の構造と相互作用し、本方法は、ソースと1つ又は複数の構造とを含んでいるドメインを備えるシミュレーション空間を与えるステップと、コンピュータによって、場に作用する演算子に少なくとも部分的に基づいてドメイン内の場をシミュレートするステップとを含み、シミュレートするステップが、ドメインを複数のサブドメインに分割するステップと、場の第1の反復を指定するステップと、ドメイン全体にわたって場の第1の反復に作用する演算子に基づいてグローバル残差ソースを決定するステップと、各反復においてサブドメインのサブセット中の残差場挙動について解くことによって、場について反復的に解くステップとをさらに含み、サブセットのサブドメイン中の残差場挙動について解くことは、演算子が、サブドメインの周りの拡張されたサブドメイン内のローカル残差場に作用することと、サブドメインが構造を備える場合、拡張されたサブドメインの境界に位置する構造の境界を、拡張されたサブドメインの境界を越えて第2の拡張されたサブドメインまで拡張することとを含む。
【0022】
別の態様では、ソースから生成された場を決定するためのコンピュータ・プログラム命令で符号化された非一時的コンピュータ記憶媒体が提供され、場は1つ又は複数の構造と相互作用し、コンピュータ・プログラム命令は、1つ又は複数のコンピュータによって実行されたとき、1つ又は複数のコンピュータに、ソースと1つ又は複数の構造とを含んでいるドメインを備えるシミュレーション空間を与えることと、場に作用する演算子に少なくとも部分的に基づいてドメイン内の場をシミュレートすることと、ドメインを複数のサブドメインに分割することと、場の第1の反復を指定することと、ドメイン全体にわたって場の第1の反復に作用する演算子に基づいて残差ソースを決定することと、サブドメインのサブセット中の残差場挙動について解くことによって、場について反復的に解くこととを行わせ、サブセットのサブドメイン中の残差場挙動について解くことは、演算子が、サブドメインの周りの拡張されたサブドメイン内の残差場に作用することと、サブドメインが構造を備える場合、拡張されたサブドメインの境界に位置する構造の境界を、拡張されたサブドメインの境界を越えて第2の拡張されたサブドメインまで拡張することとを含む。
【0023】
また別の態様では、ソースから生成された場をシミュレートするためのコンピュータ・システムが提供され、場は1つ又は複数の構造と相互作用し、本システムは、ソースと1つ又は複数の構造とを含んでいるドメインを備えるシミュレーション空間を与えることと、場に作用する演算子に少なくとも部分的に基づいてドメイン内の場をシミュレートすることと、ドメインを複数のサブドメインに分割することと、場の第1の反復を指定することと、ドメイン全体にわたって場の第1の反復に作用する演算子に基づいて残差ソースを決定することと、サブドメインのサブセット中の残差場挙動について解くことによって、場について反復的に解くこととを行うように構成され、サブセットのサブドメイン中の残差場挙動について解くことは、演算子が、サブドメインの周りの拡張されたサブドメイン内の残差場に作用することと、サブドメインが構造を備える場合、拡張されたサブドメインの境界に位置する構造の境界を、拡張されたサブドメインの境界を越えて第2の拡張されたサブドメインまで拡張することとを含む。
【0024】
いくつかの実施例では、演算子は、損失を含むように変更され得、シミュレーションは、変更された演算子が変更された残差場に作用する1つ又は複数の収束サイクルをさらに含み得る。
【0025】
さらに、シミュレーションは、サブドメインが一様な空間で埋められるとき、ローカル残差場について解くためにグリーン関数法を使用することと、サブドメインが1次元非対称性(asymmetry)を有するとき、ローカル残差場について解くためにスラブ反復法を使用することと、サブドメインが、一様な空間で埋められず、1次元非対称性をも有しないとき、ローカル残差場について解くために、吸収境界条件をもつ定常状態法又は時間停止法のいずれかを使用することとをさらに含み得る。いくつかの実施例では、シミュレーションは、サブドメインがボーダー・サブドメインであるとき、時間停止法を適用することと、サブドメインが内部サブドメインであるとき、吸収境界条件をもつ定常状態法を適用することとをさらに含み得る。
【0026】
いくつかの実施例では、場は、電磁場、流体流れ場、熱伝導場、拡散場又は静電場であり得る。いくつかの実施例では、場は、変更された形式のマクスウェルの方程式
【数1】
を満たす電磁場であり、1つ又は複数の構造は、少なくとも1つの導波路又は少なくとも1つの伝送線路を含むことができる。ここで、
【数2】
及び
【数3】
は、シミュレーションのための場のソースを与えるように働くソース電流を示す。これらは、たとえば、1つの界面上の入射導波路モードを生成するために使用され得る。
【0027】
いくつかの実施例では、シミュレーションは、a)場の現在の反復に対する演算子の動作に基づいて新しいソースを決定するステップと、b)新しいソースとソースとの間の差に基づいてグローバル残差ソースを決定するステップと、c)グローバル残差ソースの大きさが第1の事前設定されたしきい値よりも小さい場合、シミュレーションを終了し、場を場の現在の反復に等しく設定するステップと、d)グローバル残差ソースの大きさが第1の事前設定されたしきい値よりも大きい場合、サブドメインのサブセットを決定するために複数のサブドメインを走査するステップであって、サブセット内の各サブドメインが、第2の事前設定されたしきい値よりも大きいローカル残差ソース大きさを有する、走査するステップと、e)サブドメインの周りの拡張されたサブドメインを構築するステップと、f)拡張されたサブドメイン内のローカル残差場について解くステップと、g)場の新しい推定値を与えるために、サブセットからのローカル残差場のすべてを加算するステップと、h)場の現在の反復を場の新しい推定値に等しく設定するステップと、i)残差ソースの大きさが、第1の事前設定されたしきい値よりも小さくなるまで、ステップ(a)~(h)を繰り返すステップとをさらに含むことができる。
【0028】
本方法の追加の態様、利点、及び実施例は、実施例の以下の説明、図面及び特許請求の範囲から当業者に明らかになろう。
【0029】
実施例は、添付の図面を参照しながら以下で説明され、図面において、同様の要素が同様の参照番号で参照される。
【0030】
任意の特定の要素又は行為の説明を容易に識別するために、参照番号における最上位の1つ又は複数の桁は、その要素が最初に導入された図の番号を指す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】一実施例による、解かれる関心の問題を示す図である。
【
図4】一実施例における空き空間ドメイン・デコンポジション(VSDD:void-space domain decomposition)法の第1のフェーズを示す図である。
【
図5】一実施例による、同等VSDD問題を示す図である。
【
図6】一実施例による、サブドメイン残差場について解くためのフローチャートである。
【
図7】一実施例による、時間停止法を示す図である。
【
図8】一実施例による、グリーン関数法を示す図である。
【
図9】一実施例による、スラブ反復法を示す図である。
【
図10】別の実施例による、スラブ反復法を示す図である。
【
図11】一実施例による、アダプティブ・メッシングを示す図である。
【
図12】一実施例による、サブドメイン合併(amalgamation)を示す図である。
【
図13】一実施例による、複数の解法の使用を示す図である。
【
図14】コンピュータ上にVSDD法を実装するためのシステムの実施例のブロック図である。
【
図15】2つの導波路の存在下の電磁場のシミュレーションを示す図である。
【
図16】ランタイムの20分後の
図15に示されている構成のシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
主題が説明され、ただし、説明自体は、方法の範囲を限定するものではない。したがって、主題は、他の技術とともに、本明細書で説明されるものとは異なるステップ、又は本明細書で説明されるものと同様のステップの組合せを含めるために、他のやり方でも具現され得る。その上、「ステップ」という用語は、採用される方法の異なる要素を説明するために本明細書で使用され得るが、この用語は、説明によって特定の順序に明示的に限定される場合を除いて、本明細書で開示される様々なステップ間の特定の順序を暗示するものとして解釈されるべきでない。
【0033】
空き空間ドメイン・デコンポジション(以下「VSDD」と呼ばれる)法は、科学又はエンジニアリングにおけるモデル問題又はシミュレーションについての解を見つける目的で、(2次元又は3次元における)関心のドメインを分割する。
【0034】
VSDD法は、物理的プロセスを説明するいくつかの異なる方程式に、関与する変数及び方程式が異なる形式を有するとしても、適用され得る。たとえば、光レジーム又はRFレジームのいずれかの、(電気力学における)マクスウェルの方程式の解は、2つのカール演算(curl operation)を含む演算子とともに、6つの変数、すなわち、電場の3つの成分(Ex,Ey,Ez)及び磁場の3つの成分(Hx,Hy,Hz)の方程式の解を必要とする。しかしながら、静電学の方程式の解は、ラプラシアンの適用とともに、単一のスカラー・ポテンシャルの解を必要とする。異方性システムなど、いくつかの材料システムでは、これらの方程式は、わずかに異なる形式をとり得る。しかしながら、VSDD法は、関心の物理的プロセスを説明する方程式の特定の形式に依存せず、VSDD法は、全体としてのシステムについての解が、本明細書で説明される様式で各サブドメインについての「空き空間同等問題」の解を通して反復することによって得られ得るという原理に依拠する。
【0035】
定常状態解又は静的解は、VSDD法を一連のサブドメインに反復的に適用することによって得られ得る。従来技術とは対照的に、モデル又はシミュレーションにおいて得られる解に対するはるかに少ない回復不能な誤差に寄与することができる様式で、グローバル・ドメインのボーダーに位置するサブドメインにおける解を得るためのいくつかの技法が、本明細書で説明される。したがって、VSDD法において使用される反復プロシージャの収束のとき、最終解は、従来のドメイン・デコンポジション手法よりもはるかに正確である。また、VSDD法によって得られた解は、多くの状況におけるより大きい適用可能性を有する。その上、本明細書で説明されるいくつかの技法は、シミュレーション・プロセスの速度を著しく上げる。
【0036】
全体として、VSDD法は、物理的プロセスを説明するために科学及びエンジニアリングにおいて使用される多くの厳密な離散解を得るための実際的方法を与える。さらに、VSDD法は、分散算出にとって好都合な様式でスケーリングされ得る。VSDD法は、同等大規模線形システムを解くこと、又はFDTDなどの明示的反復法までも実施することと比較して、優れた様式でスケーリングする。したがって、VSDD法は、科学及びエンジニアリング・モデルの方程式に対する厳密な離散解を得るための有利な手法を与える。
【0037】
VSDD法は、有限要素手法又は有限差分手法のいずれかとともに使用され得る。VSDD法は、構造化されたメッシュがある場合、有限差分、又は有限要素のいずれにとっても最も有用である。本明細書でVSDD法について説明されるいくつかの解技法が、一様な間隔で生じるメッシュ・ポイントとともに動作することに留意されたい。すなわち、一般化された有限要素メッシュは、それが一様なポイント離間(spacing)を有するように構築されなければ、そのような特定の場合に使用され得ない。
【0038】
有限要素が使用されている場合でも、ポイントが、各次元において一様な離間をもつ格子(lattice)を形成する限り、常にグリーン関数法又はスラブ反復法などの手法を使用することができ、グリーン関数法とスラブ反復法の両方が以下で説明される。格子は、離散並進対称性を有する。
【0039】
要約すれば、ボーダー・サブドメインへのVSDD法の適用は、回復不能な誤差を最小限に抑える。内部サブドメインは、VSDD法が、回復不能な誤差を回避することを必要としないが、内部サブドメインは依然として、VSDD法が、全体としての反復について収束することを必要とし得る。したがって、VSDD同等問題を解くことは、少なくとも2つの利点、すなわち、グローバル・ドメインの境界上の誤差を最小限に抑えることと、全体としての問題についての収束を可能にし、又は収束の速度を上げることとを与える。
【0040】
様々な物理的現象を説明する偏微分方程式が、以下の一般的な形式を有する。
【数4】
ここで、
【数5】
は、偏微分演算子であり、χは場であり、βはソースである。一実例として、電気力学の場では、電(E)場及び磁(H)場を説明するマクスウェルの方程式の変更された形式は、以下のように書かれる。
【数6】
【0041】
この実例では、以下の通りである。
【数7】
ここで、
【数8】
は、電場ベクトルの3つの成分を含み、
【数9】
は、磁場ベクトルの3つの成分を含み、
【数10】
は、ソース電流の3つの成分を含み、
【数11】
は、ソース磁気電流の3つの成分を含む。エンティティ
【数12】
(磁気「電流」)及びσ
h(磁気「伝導率」)は、変更されたマクスウェルの方程式の一部として当技術分野で頻繁に使用されるが、いずれも物理的エンティティでないと理解されることに留意されたい。ソース電流は、単位において実際の物理電流(たとえば、
【数13】
の場合のσ
【数14】
)に類似する項を指すが、それは、上述のように、関心の問題についての場のセットを生成するために選択された。たとえば、導波路界面において特定の入力モードを出射するであろう、β値を選択することができる。
【0042】
場χ及びソースβは各々、式2においてベクトルであるが、各々が他の物理方程式においてスカラーであり得る。たとえば、定常状態熱伝導では、場χは温度(スカラー)であり、ソースβは熱ソース(同じくスカラー)である。
【0043】
シミュレーションが、式1について解くために実施されるとき、演算子
【数15】
、場χ、及びソースβは離散化され、したがって、式1は以下の形式をとる。
【数16】
ここで、
【数17】
【0044】
図1では、100は、解が求められる関心の問題を表す。ソース102は刺激を与える。たとえば、電気力学では、ソース102はソース電流である。ソース場104は、たとえば、外乱の結果としての場、弾性変位、又は他の現象の伝搬を示す。
図1では、3つの構造、すなわち、構造106と、構造108と、構造110とが示されている。
【0045】
一般的な式1は、式3に示されているように離散化された形式に変換される。求められるものは、式3に対する解であり、様々な構造が境界条件を表す。
【0046】
図2は、一実施例による、
図1に示されている問題に対する解を得るために使用されるフローチャート200を示す。
【0047】
ステップ202において、演算子A及びソースBが、シミュレーション・プログラムにロードされる。問題ドメインが、一連のサブドメインに分割される。
【0048】
ステップ204において、
【数18】
についての初期推測が入力され、それが新しいソースB
1になる。
【数19】
【0049】
一実例として、初期推測は、
【数20】
であり得る。この段階において、シミュレーション・ドメイン全体のまさに境界におけるグリッド・ポイントの最外層が、
【数21】
についてゼロ化され得る。さらに、演算子
【数22】
の離散化された線形バージョンが、定義される。
【0050】
残差ソース、
【数23】
は、新しいソース
【数24】
と元のソース
【数25】
との間の差として定義され得る。
【数26】
【0051】
ステップ206において、残差ソースのノルム(又は大きさ)、N
1が、算出され、グローバルしきい値と比較される。
【数27】
【0052】
答えがはいである場合、
【数28】
の現在の推測(又は反復)が収束し、十分に正確な解が見つけられ、ステップ208において算出は停止する。解は、記録され、表示され、又は後で使用するために別のプロセスに与えられ得、反復プロセスは終了する。
【0053】
ステップ206において答えが「いいえ」である場合、ステップ210において、サブドメインのうちのいずれが、サブドメインしきい値よりも大きいローカル残差ソースの大きさ、N1を有するかを識別するために、各サブドメインが走査される。次いで、これらの識別されたサブドメインについて解かれる。
【0054】
ステップ210において識別された各サブドメインについて、ステップ212において、残差場
【数29】
について解くためにVSDD法が使用され、それは、ローカル残差ソース
【数30】
を生じる。
【数31】
【0055】
ステップ214において、
【数32】
の次の反復が、(ステップ212において得られた)残差場のすべてを
【数33】
の現在の反復に加算することによって得られる。以下で詳細に説明されるように、残差場
【数34】
は、問題ドメイン全体にわたって拡張するが、わずかにサブドメインを越えて拡張する
【数35】
の部分のみが、
【数36】
の反復を更新するために使用される。
【0056】
たとえば、ステップ210において、合計「m」個のサブドメインが識別された場合、解の次の反復
【数37】
は、以下の通りである。
【数38】
【0057】
【数39】
上の上付き文字(i)は、ドメイン「i」における残差場を示し、
【数40】
の下付き文字「1」は、反復回数を示す。次いで、ステップ204において、新しい反復、
【数41】
が再び入力され、新しい残差ソースが算出される。
【数42】
【0058】
ステップ206において、残差ソースのノルムが算出され、グローバルしきい値と比較される。
【数43】
【0059】
この条件が満たされた場合、ステップ208において、算出は終了し、反復解
【数44】
がしきい値内にあり、この条件が満たされない場合、ステップ210において、サブドメインしきい値を超えるローカル残差ソースを有するサブドメインを識別するために、サブドメインのすべてがもう一度走査され、ステップ212~ステップ214が繰り返され、
【数45】
についての新しい反復が得られ、ステップ204において入力される。このループは、残差ソースの反復のノルムがグローバルしきい値よりも小さくなるまで繰り返され、ステップ208において、算出が終了する。
【0060】
グローバル収束に達する前に実施されるサブドメインごとの反復の回数は、任意の数であり得る。いくつかの実施例では、反復の回数は、2から200まで、又は5から150まで、又は10から101までであり得る。いくつかの実施例では、解くプロセス全体にわたってそのようなサブドメイン中に最小の非ゼロ残差ソースがある場合、いくつかのサブドメインについてはるかに少ない反復が必要とされるか、さらには反復が必要とされないことがある。ただし、サブドメインごとの反復の回数は、いくつかの高Q共振の場合、増加し得、いくつかの実施例では、反復の回数は減少し得る。他の手法では、FDTDなどの方法は、非常に増加された算出時間を必要とし、問題全体を解くことを試みる反復行列法は、サブドメイン・デコンポジションなしの場合、同様に、増加された算出時間を必要とすることに留意されたい。
【0061】
フローチャート200の多くの変形形態が可能である。たとえば、異なる実施例では、サブドメインしきい値は、シミュレーションが進行するにつれて変化し得る。各サブドメインに対するサブドメイン解(subdomain solve)プロセスを、独立して進むようにすることも可能であり、それにより、ベクトル
【数46】
は継続的に走査され、新しい残差ソース
【数47】
が計算され、その値が事前設定されたしきい値を上回るときはいつでも、(1つ又は複数の)対応する1サブドメインが解かれる。事前設定されたしきい値は、許容可能に小さい誤差値であると見なされる誤差の値として理解され得る。算出が所定のしきい値よりも小さい誤差を与えると、反復解ベクトル
【数48】
は許容可能と見なされ、算出は終結される。
【0062】
使用され得る別の技法は、離散化された演算子Aに小さい損失項を人工的に追加し、変更された演算子AMを生じることである。一実例として、電気力学の場合、この損失は、シミュレーションにおいて材料にわずかな人工的な伝導率を追加することになり、電磁放射の吸収を生じることになり得る。変更された演算子AMを使用することによって、解は、より迅速に収束することができるが、わずかな不正確さが導入され得る(とはいえ、それはしばしば関心の最終解値における小さい割合の変化である)。次いで、この反復を繰り返し、損失項に対する補正を周期的に追加することによって、この追加された損失項により固有の誤差のない厳密な解への収束が、達成され得る。
【0063】
図3中の表300は、解に達するために、いくつかの収束サイクル(括弧[N]は、「第Nの」収束サイクルを表す)にわたって、変更された演算子A
Mを使用する実例を与える。これは、元の離散化された演算子Aを使用することとは対照的であり、ここでは、1つの収束サイクルのみが実施される。(「演算子Aを使用する」と標示された)列に示されているように、離散化された演算子Aは、1つのサイクルの過程にわたって使用され、その間に、「n」回の反復の後に収束が起こり、解X
nが得られる。
【0064】
たとえば、収束サイクルにかかわらず、元の離散化された演算子Aは、残差ソースδB1[N]を見つけるために第1の反復中に使用されるにすぎない。
δB1[N]=B-A*X1[N] 式11
【0065】
第1の反復中に、残差場Yi[N]は、変更された演算子AMの適用に対する解である。たとえば、第1の収束サイクル中に、以下の通りである。
AM
*Y1[1]=δB1[1] 式12
【0066】
第2の反復では、次の推測X2[1]は、残差場の和であり、初期推測X1[1]を含まない。
X2[1]=Y1
(1)[1]+Y1
(2)[1]+... 式13
【0067】
しかしながら、第3の反復において、前の解が使用される。
X3[1]=X2[1]+Y2
(1)[1]+Y2
(2)[1]+... 式14
【0068】
反復は、残差ソース・ノルムが事前設定されたしきい値「T」よりも小さくなるまで継続される。しかしながら、プロセスはここで終了しない。第2の収束サイクルが始動され、ここで、初期推測は、第1の収束サイクルにおける初期推測(X1[1])と第1の収束サイクルの終了時の解(Xn[1])とを含む。
X1[2]=X1[1]+Xn[1] 式14
【0069】
この段階において、δB1[2]のノルムが評価され、それがしきい値「T」よりも小さい場合、第2の収束サイクル中にさらなる反復は行われず、解は式14によって与えられる。ノルムがしきい値「T」よりも大きい場合、反復は、第2の収束サイクル内の収束が得られるまで進む。プロセスは、残差ソースの第1の反復のノルムがしきい値「T」よりも小さくなるまで、繰り返される。実際には、収束サイクルの回数は、およそ2又は3であり、いくつかの場合には、1つの収束サイクルのみが必要とされることがある。すなわち、いくつかの実施例では、(表300に示されているように)K≦3である。
【0070】
VSDD法は、クラウド算出のための複数のコンピュータにわたるスケーリングに関して、大いに有利である。各サブドメイン解プロセスの開始時及び終了時に1度、算出ノード間で広範なデータが交換される必要があるにすぎないことがある。これは、FDTD、及び単一の大きい行列方程式を解くことに関与する他の方法と対照的であり、ここで、多くのデータが、あらゆる時間ステップ(FDTD)について、又は、通常、完全なシステムについての行列方程式の解に関与する、あらゆる反復についてノード間で伝搬しなければならない。通常、FDTD、又は大きい行列方程式を解くことに関与する他の方法に関連付けられた、少なくとも数千、場合によっては数万、又はより多くの反復がある。さらに、サブドメイン解ステップ212は、並列に複数の算出ノード上を進むことができる。それゆえに、VSDD法は、多数の並列コンピュータ上で動作することができる実施例のためのスケーリングに一意に適している。すなわち、VSDD法とともに使用される並列処理が、シミュレーション・ランタイムの速度を上げる。
【0071】
次のセクションは、サブドメインへのドメイン・デコンポジションと、VSDD法の実施例とについて説明する。
【0072】
図4は、一実施例における空き空間ドメイン・デコンポジション(VSDD)法の第1のフェーズを示す。この段階において、残差ソースは、
図2のステップ206におけるグローバルしきい値を超える大きさを有する。一実例として、VSDDは、
図1に示されているシナリオに適用される。
【0073】
VSDD法における第1のステップは、2次元又は3次元であり得る問題ドメインを選択し、問題ドメインを一連のサブドメインに分割することである。
【0074】
図4において、402は、
図1に示されているシナリオを示し、404は、VSDD法において使用されるサブドメインへの、
図1に示されている問題ドメインのデコンポジションを示す。これは、2次元(2D)シミュレーション、又は3次元(3D)シミュレーションの2D断面図であり得る。これらのサブドメインは、VSDDドメイン・デコンポジション・プロセスの一部として作成される。VSDD法は、1次元問題にも適用され得る。
【0075】
ほとんどすべてのシナリオが、問題内に何らか形式の非一様性を有する。たとえば、電気力学に関与する一実施例では、非一様性は、オプティカル・フローを妨害する誘電体領域であり得る。構造力学に関与する一実施例では、非一様性は、変動する弾性定数をもつ領域であり得る。様々な構造の厳密な特徴(又は非一様性)にかかわらず、問題は、各サブドメインがサブドメイン内のローカル残差刺激について解かれ得るという点で、反復的に解かれ得る。得られた残差場は、VSDD法を介して得られ、近隣のサブドメインに拡張され、この残差場は、近隣のサブドメインに対する新しい刺激(又はソース)に変換され、プロセスは、
図2で概説される計算の新しいサイクルを通して反復的に継続する。
【0076】
明快のために、ほんのいくつかのサブドメイン、すなわち、サブドメイン410、サブドメイン406、サブドメイン408、サブドメイン416、サブドメイン418及びサブドメイン420が、
図4中で標示されている。サブドメイン410は構造106の一部分を囲み、サブドメイン416は構造106の一部分と構造110の一部分を囲み、サブドメイン418は構造108の一部分を囲むことに留意されたい。一方、サブドメイン406及びサブドメイン408は、空であり、いずれも構造を囲まない。さらに、サブドメイン406、サブドメイン416、サブドメイン418、及びサブドメイン420は各々、ボーダー・サブドメインとして指定され、サブドメイン408及びサブドメイン410は各々、内部サブドメインとして指定される。
【0077】
この段階において、VSDD法は、残差ソースが事前設定されたサブドメインしきい値よりも大きい大きさを有するサブドメインのみに適用される。
図4において、414は、この方法の実施例において使用するためのサブドメインのさらなる操作を示す。一実例として、サブドメイン410が、サブドメインしきい値よりも大きいローカル残差ソースの大きさを有するものとして識別されたと仮定する。サブドメイン410は、VSDD法の一部としての反復法において使用される(破線ボックスによって示された)拡張されたサブドメイン412によって取り囲まれる。
【0078】
サブドメインへの(完全なドメインの)分割は、収束が得られると、最終解ベクトルに対して最小の影響を有するか又はまったく影響を有せず、これは、VSDD法が十分な数の反復のために適用されるときに起こる。言い換えれば、最終収束が得られるとき、サブドメインのロケーションの証拠を示さない平滑に変動する解を予想することができる。
【0079】
サブドメインの使用は、従来の単一ドメイン手法に勝る固有の算出利点を与え得る。たとえば、3000×3000×3000個のグリッド・ポイントの3D一様ドメインが使用され、浮動小数点精度が使用される場合、約0.6テラバイトが、解ベクトルの単一のコピーを単独で記憶するために必要とされる。このサイズの行列方程式に関与する定常状態方程式を解くことは、実際的でない。また、そのようなドメインは、たいていの場合、FDTD、有限要素法又は他の従来の方法の能力を越えている。
【0080】
代わりに、このドメインが50×50×50個のサブドメインに分割され(約125,000個のサブドメインを生じる)場合、解プロセスは、およそ100個のコンピュータ・ノードに分散され得、収束のためにサブドメインごとに10回の反復が必要とされ、サブドメイン解ごとに5秒が必要とされる場合、この大きいドメインのためのシミュレーション時間は約1日のみである。いくつかの実施例では、100個以上のコンピュータが効率的に使用され、それにより、問題を解くために必要とされる時間をさらに低下させ得る。
【0081】
VSDD法の一実施例では、サブドメインは、「空き空間同等」問題と呼ばれるものを使用して解かれ得る。すなわち、個々のサブドメイン306内の厳密な問題を解く代わりに、同等問題が解かれ、それの解が、新しい反復を編成するために使用される。これは、従来技術の方法とは異なり、解収束を与え、ボーダー・サブドメインに対して適用されたとき、VSDD法は、回復不能な誤差を非常に低減する。
【0082】
空き空間同等問題は、サブドメインとこのサブドメイン内の残差刺激とをとることと、サブドメインの限界をわずかに越えて解を拡張することと伴う。サブドメインが構造(又は構造の一部)を含む場合、残差場について解くために構造が(人工的に)拡張される追加の条件がある。この手法が
図5に示されている。
【0083】
図5は、
図4に示されたサブドメイン410についての同等VSDD問題502のセットアップ500を示す。
図5は、2dにおける図又は3dドメイン・セットの断面図のいずれかとして解釈され得る。拡張されたサブドメイン412は、構造106の一部を形成するがサブドメイン410内にない、構造部分510を含む。電気力学に関与する一実施例では、構造106は、誘電体領域又はバックグラウンド材料と比較して向上された伝導率をもつ領域を備えるか、或いはそれによって表され得る。
【0084】
同等VSDD問題502において、サブドメイン504は元の問題におけるサブドメイン410と同等であり、拡張されたサブドメイン506は元の問題における拡張されたサブドメイン412と同等である。たとえば、拡張されたサブドメイン506は、構造106の構造部分510をも含む。拡張されたサブドメイン506(したがって、拡張されたサブドメイン412)は、少なくとも1つのピクセル層(又は3次元におけるボクセル層)によってサブドメイン504を囲み得る。ボクセルは、1ピクセル×1ピクセル×1ピクセルの寸法をもつ単位立方体である。ピクセル層は、有限差分ポイント又は有限要素ポイントの単一行として定義され、ボクセル層は、有限差分ポイント又は有限要素ポイントの3次元の矩形として定義される。
【0085】
サブドメイン504内の残差ソースは、拡張されたサブドメイン506内の場パターンを生成するために解かれる。VSDD反復の一部として、追加の拡張されたサブドメイン508が作成される。拡張されたサブドメイン508内で、構造106が、矢印512及び514を用いて示されるように一様に外に拡張される。空き空間同等問題を厳密に解くためには、拡張されたサブドメイン508は、無限に外に拡張されることになる。限定された算出リソースにより、これは可能でない。代わりに、(「ABC」と呼ばれる)吸収境界条件が、拡張されたサブドメイン508に関して追加され得る。そのような条件の実例は、電気力学の場合、完全一致層(PML)又はMur境界条件を含む。又は、(以下で説明される)時間停止法が使用され得、これにより、拡張されたサブドメイン508の境界が無限大に拡張された場合に得られる解に極めて一致する解を生じる。しばしば、時間停止法は、より良い近似を空き空間同等問題に与え得る。しかしながら、ABCを(拡張されたサブドメイン506から離れた)拡張されたサブドメイン508の十分に長い拡張とともに使用することにより、厳密なVSDD解に近似することができる。
【0086】
同等VSDD問題502において、拡張されたサブドメイン506の外側境界にある構造106のエッジは、(矢印512及び514によって示されるように)通常、外側に無限に拡張される。とはいえ、実際には、拡張されたサブドメイン508の境界が、「カットオフ」境界として設定され得る。
【0087】
同等VSDD問題502についての方程式は、したがって、以下の通りである。
【数49】
【0088】
解
【数50】
は、拡張されたサブドメイン506のすべての内部で保持され、拡張されたサブドメイン506の外側境界において切り捨てられ得る。解
【数51】
がどのように得られるかに関する詳細が、以下で説明される。
【0089】
図4に戻ると、ドメイン・デコンポジション
図414において、解
【数52】
は、拡張されたサブドメイン412のすべての上に重ねられる(
【数53】
は、拡張されたサブドメイン412内のみに存在し、拡張されたサブドメイン412の外部ではゼロに等しいことに留意されたい)。この解
【数54】
は、現在の反復(又は、推測)
【数55】
に追加される。元のサブドメイン410内では以下であることに留意されたい。
【数56】
【0090】
すなわち、
【数57】
は、(近隣のサブドメインが解かれていないという条件で)サブドメイン410内の式1に対する解である。
【0091】
サブドメイン410が、VSDD同等問題が解かれる唯一のサブドメインである(すなわち、処理すべき他のいかなるサブドメインもない)場合、次の反復は単に以下の通りである。
【数58】
【0092】
新しい反復は、
図2におけるステップ204において入力され、ステップ208が得られるまで、残りのステップが繰り返される。
【0093】
実数スケール・ファクタ「α」によって追加をスケーリングすることを選び得、「α」は、1のオーダー又はそれよりもいくぶん小さくなり得る(たとえば、α=0.2~1.5、又はα=0.4~1、又はα=0.7である)。
【数59】
【0094】
また、いくつかの実施例では、解ベクトルのエッジは、ガウスなどの空間関数によって「平滑化」され得る。これらの技法(すなわち、スケーリングと平滑化)の両方が、いくつかの場合には、特に任意の種類の共鳴又は内反射がある場合には、収束を助けることができる。
【0095】
一方、サブドメイン410が、処理されるべき唯一のサブドメインでない場合、各識別されたサブドメイン内部で、同等VSDD問題について解かれ、「k番目の」サブドメインの解
【数60】
が解かれ、新しい反復は、第1の反復におけるすべての「m」個の識別されたサブドメインについて、式8において定義されたものである。
【数61】
【0096】
識別されたサブドメインのすべてを処理することは、互いに独立しており、たとえば、別個のコンピュータ上で、並列に進むことができることに注意されたい。これは、ドメイン・デコンポジションを使用しない手法と比較して、VSDD法の重要な利点を与える。
【0097】
同等VSDD問題502は、以下で説明されるように、サブドメイン504内の構造の特色に応じて解かれ得る。
【0098】
図6は、一実施例による、サブドメイン残差場について解くためのフローチャートを示す。
【0099】
ステップ604において、サブドメイン内の構造の特色が決定される。一連の評価が行われる。ステップ606において、サブドメインが一様な構造で完全に埋められている場合、(ステップ608において)同等VSDD問題においてサブドメイン残差場について解くために、グリーン関数法が使用される。これは、サブドメインが構造を内部に有しない場合も、サブドメイン内の空間が一様であるので、適用される。
【0100】
一方、サブドメイン内の構造が1次元非対称性を有する場合(ステップ610)、(ステップ612において)同等VSDD問題においてサブドメイン残差場について解くために、スラブ反復法が使用され得る。
【0101】
最後に、サブドメインが、1D非対称性なしの一様でない構造を有する場合、同等VSDD問題においてサブドメイン残差場について解くために、時間停止法又はABCをもつ定常状態が使用され得る(ステップ614)。
【0102】
以下のプロシージャの各々、すなわち、ABCをもつ定常状態、時間停止、スラブ反復及びグリーン関数が、以下で手短に説明される。
【0103】
図6の変形形態では、サブドメインが全体にわたって一様であるか又は1次元非対称性を有する場合、定常状態法又は時間停止法を使用することが依然として可能である。しかしながら、グリーン関数及びスラブ反復法の使用は、より低い算出コストを有する。
【0104】
図5に示されている問題を近似的に解くために、吸収境界条件(ABC)をもつ定常状態解を使用し得る。サブドメイン410が構造106の一部分を含んでおり、したがって、サブドメイン410が
図6中の条件614を満たすので、この方法が使用され得る。多くの実施例では、ABCロケーションは、残差場がそこで捕捉されるべきである拡張されたサブドメイン506の外部の、拡張されたサブドメイン508の外側境界において選定され得る。拡張されたサブドメイン508が拡張されたサブドメイン506をはるかに越える場合、ABCの使用は、VSDD問題のはるかに良い近似につながり得、しかしながら、それにより、計算量的により費用がかかり得る。
【0105】
「ボーダー」サブドメイン(たとえば
図4中のサブドメイン406又はサブドメイン416)について解くためにABCベースの方法を使用すると、回復不能な誤差がシミュレーションに導入され得る。「ボーダー」サブドメインの場合、同等VSDD問題は、このセクションに続いて説明される、時間停止技法を使用して解かれ得る。以下で説明されるように、時間停止技法はいくらかの誤差を与えるが、それにもかかわらず、その誤差は(ABCによって導入される誤差と比較して)大幅に低減される。
【0106】
サブドメイン410が「内部」サブドメインであるので、同等VSDD問題502はABC法に適している。一実施例では、無限の空間をシミュレートするABCの単純なセットが適用され、空き空間同等問題をただ近似的に解き得る。ABCをもつ小さいサブ領域に対して解を実施することは、扱いやすい問題である。たとえば、反復行列ソルバーがうまく使用され得る。VSDD法は、所与の時間における解を、基礎をなす線形演算子と継続的に比較し、経時的にこの残差を最小限に抑える。したがって、内部サブドメインについての中間解が、回復不能な誤差を生成することなしに、直近の解全体に追加され得る。グローバル反復が収束する限り、完全空き空間同等問題を内部的に解く必要がない。
【0107】
ボーダー・サブドメインの場合、通常、空き空間同等問題を解くためにより良い近似が使用される。1つのそのような方法が時間停止法であり、それは以下で説明される。ボーダー・サブドメイン内で解くためにいくつかの方法が使用され、選定する方法がサブドメイン内の構造に依存し得ることに留意されたい。選定された方法にかかわらず、サブドメインの最外エッジにある最終的な残差ソース・ピクセル層(又は3次元におけるボクセル層)は、計算の過程中に廃棄される。これは、最小量の誤差を導入し得るが、導入される誤差は、従来の手法における誤差ほど大きくない。
【0108】
時間停止法
【0109】
「時間停止」サブドメイン解法は、VSDD反復法の構成要素である。ボーダー・サブドメインが非一様構造構成を有する状況において、グリーン関数法又はスラブ反復法は使用され得ない。その上、(IMR法において行われるものである)ABCを適用することは、空き空間同等問題をあまり十分には近似しないが、拡張されたサブドメイン506から拡張されたサブドメイン508までの距離を大幅に拡大することによって、精度を改善することが可能であり得る。時間停止サブドメイン解法は、空き空間同等問題の挙動を模倣するためのフィルタとして、時間を使用する。
【0110】
図7は、非一様構造を有するボーダー・サブドメインについての空き空間同等問題を解くために「時間停止」法が使用され得る実施例を示す概略
図700である。したがって、グリーン関数法もスラブ反復法も、そのようなサブドメインに関して使用され得ない。一連の「時間停止」が、連続
図716及び714に示されている。
【0111】
図716において、初期時間T=T1において、ソース702が、(ソースによる)励起704を元のサブドメイン706に出射する。時間停止法において適用されるべき刺激は、サブドメイン706内に完全に含まれている。励起704は、様々な実施例において、電磁波、音響波、熱パルス、又は関心の他の摂動又は励起であり得る。実例として、ソース702は、電気力学シミュレーションにおけるポイント放射ソースであり得る。元のサブドメイン706を囲んでいるのは、拡張されたサブドメイン708であり、拡張されたサブドメイン708は、解ベクトルがそこから得られるべきである領域を囲む。
【0112】
最後に、かなり離れたところにある、ボーダー710は、ABCをも含んでいることになる時間ドメイン・シミュレーションの最外限度を示す。構造要素712が存在し、それは、前に説明された空き空間同等様式で最外ボーダー710まで拡張される。
【0113】
短い時間の後、T=T2において、
図714は、716に対する「時間停止」法の発展を示す。
図714において、励起704は、ソース702から離れて動いた。様々な時点において、距離と、場合によってはサブドメイン中の領域のコンテンツの関連する物理的特性とに基づいて、励起704は、サブドメイン706を通って「流れ」、様々な構造に当たるか又はサブドメインの境界に達する。
図714において、流れる励起は718によって示されている。T=T2において、元の励起704が構造要素712に達し、反射724を生成したことに留意されたい。
【0114】
パネル716及びパネル714は、時間停止法の原理を示す。まず、解かれている定常状態又は静的偏微分方程式に関連付けられた同等時間ドメイン問題をとる。マクスウェルの方程式の場合、これは単に、時間ドメインのマクスウェルの方程式であろう。静電学などの静的問題の場合、手法は、時間依存拡散問題と同様の様式で、(電磁波によって表される)電圧の伝搬をモデル化する分散方程式の導入を伴う。次いで、サブドメインとして、空き空間同等問題への元のサブドメインの拡張を使用し、この場合、明示的に解ドメインを拡張することが考慮される。ABCが追加され得るが、これらの有用性は限定され、なぜならそれらは、元のサブドメインから遠く離れて離間した場合でも、外向き放射を完全に吸収することが予想されないからである。いずれの場合にも、解の進行は、元のサブドメイン706中にのみ位置するソース702から外に伝搬する、ある種の波面に関与することになる。波面は、ABCがある場合でも、最終的にボーダー710に達し、反射し始めることになる。その間、定常状態タイプの解の場合、フーリエ・フィルタ処理を実施して、元のサブドメイン内の、場合によっては、それの周りに拡張する小さい領域内の、時間ドメイン解から、周波数ドメインにおける解パターンを抽出し得る。静的タイプの解の場合、単に、シミュレーション・ランタイムの終了時に解ベクトルを観測することができる。次いで、時間ドメイン・シミュレーションは、拡張されたサブドメイン境界からの外乱が、解ベクトルが導出されている領域に達する前に、この拡張されたサブドメインついて終結され得る。その場合、この方法から捕捉された解ベクトルは、それが所与の刺激について厳密には解かない場合でも、厳密な空き空間解と同等である。
【0115】
この洞察は、単独では、空き空間同等問題を解くために十分でない。問題点は、そのように捕捉された解ベクトルは、ほぼ確実に、所与の刺激についての解でないことになることである。時間停止法を完了するために、次いで、新しい残差電流をとり、再び時間ドメイン・シミュレーションを再実施し、もう一度、拡張されたサブ領域ボーダーからの反射が解ベクトル捕捉の領域を乱す前に反復を終結しなければならない。このプロセスは繰り返されなければならず、各ポイントにおいて、算出されたすべてのサブドメイン解ベクトルのベクトル空間をとり、所与の時間における刺激をもつ残差を最小限に抑える最良適合サブドメイン解を見つけることができる。また、空き空間同等問題境界条件を個々に満たす解ベクトルの線形結合が、合計されたとき、同じ条件を満たすことになる。このプロセスを繰り返すことは、最終的に、厳密な空き空間同等問題解につながる。実際には、数回の反復が必要とされ、たとえば、15よりも小さいか、又は2~15の間、又は通常およそ3~4である。
【0116】
720は、時間ドメイン・シミュレーションの結果として捕捉され得る、得られた定常状態解ベクトル・パターンを示す。捕捉された定常状態パターン722が示されている。電気力学の場合など、一実施例では、FDTDを使用することがあり、定常状態場パターンは、フーリエ・フィルタ処理を使用して捕捉される。FDTDの場合、時間発展が休止されたとき、波面のうちの数個がサブドメインの内側に残り得るので、また、フーリエ・フィルタ処理における内因性誤差により、このようにしてFDTDによって捕捉された解は、このサブドメイン内の線形化された微分方程式の基礎をなす不変式を厳密には満たさないことになる。しかしながら、前に説明されたように、解は、ボーダー710においてABCからの反射が起こり得る前の、適切な時間において時間発展が休止されるという条件で、空き空間境界条件を満たすことになる。したがって、この反復は、複数回実施され、最終的に結果を組み合わせ、最良適合方法を使用して、このサブドメインについての真の空き空間同等問題への優れた近似を得ることができる。
【0117】
グリーン関数法
【0118】
グリーン関数は、場の量子論、空気力学、航空音響学、電気力学、地震学及び統計的場の理論に関与する実施例では、物理学において使用され、しばしば、様々なタイプの相関関数、数学的定義に適合しないものさえも指す。たとえば、場の量子論では、グリーン関数は伝搬関数として働く。
【0119】
図8は、グリーン関数法を使用して空の空間同等問題の解が得られる方法の実施例を示す。そのような方法は、内部が完全に一様であるサブドメインに適用され得る。たとえば、(
図4中の)サブドメイン408は、内部に構造を有せず、したがって内部が一様である。同様に、(
図4中の)サブドメイン420は、一様な構造106の一部分で完全に埋められている。これらのサブドメインの各々に適用されるVSDD法は、各サブドメイン内の残差ソースについて解くためにグリーン関数法を使用し得る。これらは、解の対応する刺激として単一のグリッド・ポイント刺激を有する解である。したがって、その場合、単一の畳み込みによって、サブドメイン全体について解くことができ、単一の畳み込みは、2D又は3Dにおいて高速フーリエ変換(FFT:fast-Fourier transform)を使用して迅速に行われ得る。また、計算されるグリーン関数は、すべての可能な刺激について同一であり、定常状態方程式の場合に関与する周波数、及び関与する構造のみに依存する。
【0120】
一様なサブドメイン808についての同等VSDD問題は、以下のようにセット・アップされ、すなわち、同等VSDD問題のサブドメイン804が、元のサブドメイン408と同等であり、同等VSDD問題の拡張されたサブドメイン806が、元の拡張されたサブドメイン802と同等である。
図5の場合のように、残差ソースは、サブドメイン804からとられる。拡張されたサブドメイン806は、サブドメイン804を囲む。拡張されたサブドメイン806のすべての内部で、残差場成分について解かれることになる。さらに、拡張されたサブドメイン806は、少なくとも1つのピクセル層(又は3次元におけるボクセル層)によってサブドメイン804を囲む。この場合、無限境界条件グリーン関数が最小誤差で解かれたという条件で、グリーン関数畳み込みが、無限境界を暗黙的に与えるので、吸収境界条件は必要とされない。
【0121】
上述のように、グリーン関数法は、一様な空間からなるサブドメインに適用され、ここで、有限差分を使用しているか又は構造化されたメッシュをもつ有限要素を使用しているかのいずれかのために、一様なグリッドが使用される。一様なグリッド要件は、解かれているローカル・サブドメインについてのみ成り立ち、グリッドが問題ドメイン全体中の他の場所で一様でないかどうかは、まったく重要でない。また、グリッドは、グリッドがすべての次元において一様な離散化を有する限り、特定の次元についての離散化値が異なる場合でも、依然として一様と見なされる。
【0122】
VSDD反復が進むとき、同じグリーン関数が、再計算なしに所与のサブドメインのために再使用され得、したがって、単一の解反復は、2つのみの2D又は3D FFT演算、及び他のあまり費用がかからない演算をとる。グリーン関数解も、空き空間同等問題に対する解である。したがって、ボーダー・サブドメイン(たとえば
図4中のサブドメイン420)が一様な空間を有する事例では、VSDD反復について空き空間同等解を達成するためにグリーン関数手法を使用し得る。
【0123】
グリーン関数は、いくつかの実施例では以下のように解かれ得る。3D(2D)において、何らかの大きい周期の場合、k空間のすべてを包含するように2D(1D)平面(行)の変数を拡大し、いくつかの実施例では、その周期は、しばしば、各次元において1000回以上の周期的繰返しである。たとえば、たとえば関係式-50*dx≦x≦50*dx、-50*dy≦y≦50*dy、-50*dz≦50*dz(ここでdx、dy、dzは、各次元における離散化である)によって定義される領域について有効な3Dグリーン関数を解くことは、Nx=1000、kx=nx*2π/(Nx*dx)、-Nx/2<nx≦Nx/2、及びky=ny*2π/(Ny*dy)、-Ny<ny≦Nyドメイン(ここで、Nx、Nyは、算出において使用されるべきk空間グリッド・ポイントの数である)に関してk空間について解くことを伴うことができる。いくつかの実施例では、実空間グリッド・ポイントと比較して、はるかに多くのk空間グリッド・ポイントが使用される。いくつかの実施例では、厳密な解のために無限に細かい範囲にわたって変動させるようにkx、kyを拡張する(すなわち、Nx→無限大を可能にする)ことができるが、これは必要ではない。いくつかの実施例では、ほぼ1000に拡張すすることは、十分であり得、現代のコンピュータ上で数十秒のオーダー又はそれ以下の解時間を生じ得る。次いで、このドメイン中の各ポイントについて、各場合においてすべてのモード及びkzベクトルを生成する、固有の問題(eigenproblem)を解くことができる。モードは、順方向伝搬又は逆方向伝搬として分類され得る。各モードについての係数を得るために、原点において単一変数のフーリエ変換を使用することができる。次いで、モードは掃引され、グリーン関数を生成することができる。
【0124】
離散バージョンに極めて近くなり得るが、解の残りと自己矛盾があり得る分析式を使用することとは対照的に、この手法を使用し、厳密な離散グリーン関数について解くことは、有利である。いくつかの実施例では、グリーンの関数を解くときに背景構造に極めて小さい散逸項を追加することが、有用であり得、これは、共振状態によって解が不安定になることを妨げる減衰項として考えられ得る。使用される値が極めて小さいという条件で、最終解ベクトルはひずんでいないが、関与する式はより安定する。グリーン関数法を用いて所与のサブドメインについて計算された最終解ベクトルは、ドメイン全体についての解ベクトルに加算される。いくつかの実施例では、計算及び加算された最終解は、初期刺激が与えられたレジームをわずかに越えて拡張することになる。
【0125】
スラブ反復法
【0126】
図9は、スラブ反復法を使用した空き空間同等問題の解を示す。この場合、サブドメイン内の背景構造は、
図9中の矢印によって示されるように、1次元非対称性のみを有する。そのようなサブドメインの一実例は、
図4中のサブドメイン416である。
【0127】
図9では、問題サブドメイン416は、異なるタイプの少なくとも2つ構造、すなわち、構造106と構造110とを有する。たとえば、電気力学に関与する実施例では、異なるタイプは、2つの異なる誘電体値であり得る。いくつかの実施例では、異なるタイプの特性は、光学的特性、音響特性、機械的特性又は関心の他の物理的特性など、他の物理的特性であり得る。サブドメイン416内に2つの「スラブ」(すなわち構造106及び構造110)が示されているが、より少ない又はより多いスラブがあり得ることを理解されたい。さらに、スラブは、同一の材料特性を有するか、又はそれらのそれぞれの材料特性が異なり得る。
【0128】
図900は、2Dサブドメイン又は3Dサブドメインの断面図として解釈され得る。
【0129】
スラブ反復法についての条件は、1次元においてのみ非対称性が存在することである。さらに、たいていの実施例では、サブドメイン内部で(ただし、必ずしも他の場所に限らない)、メッシュは、一様であり、すなわち、非対称次元以外のすべての次元において離散並進対称性を有する。これらは、使用されるべきスラブ反復ソルバーのために必要とされる条件である。
【0130】
同等VSDD問題904は、前述のようにセット・アップされる。サブドメイン906は元のサブドメイン416と同等であり、拡張されたサブドメイン908は元の拡張されたサブドメイン902と同等である。残差ソースは806内にあり、拡張されたサブドメイン908のすべての内部で、残差場について解かれることになる。スラブ反復法では、スラブ反復法の適用により、拡張されたサブドメイン908の境界が無限であったかのように問題が解かれることになるので、吸収境界条件が必要ない。
【0131】
グリーン関数法と同様に、スラブ反復法は、3D問題又は2D問題について、それぞれ、2D k空間におけるモード係数又は1D k空間におけるモード係数を計算することによって開始する。グリーン関数法と同様に、k空間中の大きい領域が使用され得る。サブドメイン906の別個の構造領域の各々中で、係数のセットについて解かれる。しかしながら、畳み込みはもはや使用されない。3D(2D)問題のためのピクセルの各平面(行)に対する刺激についてのフーリエ変換が、使用され得る。これらのモード係数は、高度であり、各構造界面から反復的に反射され得る。ほとんどすべての状況では、収束が得られる。また、一様な構造以外に何もない場合でも、スラブ反復法を使用することが可能であるが、グリーン関数法がより有利である。
【0132】
1つの課題は、電気力学に関与する実施例など、いくつかの問題の場合、非対称性(non-symmetry)の方向に直角な刺激成分のみが、モード係数を生成することである。非対称性の方向に対して平行な刺激を扱うために、グリーン関数を使用して、各一様な領域内にこれらの成分を投影し、次いで演算子Aを再適用し、解かれるべき垂直成分のみを生じることができる。
【0133】
スラブ反復解は、サブドメインについての厳密な離散解であるが、それは空の空間同等問題をも解く。すでに、スラブ反復とグリーン関数反復との間に、空き空間同等問題要件を満たす2つの反復があり、補正不可能な誤差を解反復に投入することなしに、ボーダー・サブドメインに関して使用され得る。グリーン関数法と同様に、(スラブ反復法を使用して)サブドメインについて計算された残差場は、グローバル解ベクトルに加算され、しばしば、元のサブドメインのために使用される残差ソースの領域をわずかに越えて拡張する。
【0134】
図10は、一連のパネルにおいてスラブ反復法の実施例を示し、ここでは、非対称性の方向はX軸に平行である。他の2つの次元は継続的に対称である。サブドメイン1022が残差ソース1018を含んでおり、、拡張されたサブドメイン1024内部で、場について解かれることになる。サブドメイン1022と拡張されたサブドメイン1024の両方が、一様な構造1020を含んでおり、構造1020は、VSDD法において非対称性の方向以外のすべての方向に無限に拡張することが暗黙的に仮定される。したがって、スラブ反復法は、厳密な空き空間同等に対する非常に良好な近似を与える。
図10は、あるポイントに位置する残差ソース1018を示すが、それは、サブドメイン1022全体にわたって拡張し得る。
【0135】
全体的シミュレーション次元が、2次元又は3次元におけるものである場合、横方向k空間は、それぞれ、1次元の次元性又は2次元の次元性を有する。基本的手法は、スナップショット・パネル1002~パネル1016に示されているように、各横方向kベクトルについて、xにおける順方向及び逆方向伝搬モードについて解くことである。モード表面1026が、矢印によって示されている方向に、シミュレーション・ドメインにわたって掃引する。+x方向での、第1の掃引において、順方向モードのみが掃引されるべきである。各ピクセル層(又は3次元におけるボクセル層)において、場が生成され、k空間から後退する場を投射するために逆FFがとられる。このようにして導出された場は、拡張されたサブドメイン1024内に累積される。
【0136】
パネル1004において、モード表面1026は、残差ソース1018に遭遇する。一実例として、マクスウェルの方程式の場合、x方向の側方にある4つの電流成分の可能な現在の構成が、順方向及び逆方向モードに投影され得る。(J及びJh)。前記されたように、2つの通常の電流成分は畳み込みによって横方向成分に変換され得、それらの成分は、各一様な領域においてグリーン関数を用いて畳み込まれ、得られた場は、A演算子が適用され、ボーダー上に横方向電流のみを残す。残りは、任意の一般的物理的方程式に適用される。パネル1004において、残差ソース1018によって生成された順方向モードは、モード表面に加算される。モード表面1026は継続的に伝搬され、モード表面1026がパネル1006において一様な構造1020に達するとき、構造1020の界面にわたる伝達及び反射が計算される。パネル1008において、順方向伝搬モデル表面1026が今度は一様な構造1020を過ぎたとき、反射された表面1030及び表面1032が、構造1020の右ボーダー及び左ボーダー上に作成される。パネル1010において、モード表面1026は、今度は、拡張されたサブドメイン1024の終端に達した。新しい表面1030及び表面1032は、この界面に対する反射による最終解に加算されるべきk空間中の逆方向伝搬モード振幅のセットを含んでいる。
【0137】
次に、逆方向伝搬モード係数の新しいセットが、-X方向で掃引されなければならず、これは、パネル1010~パネル1016に示されている。パネル1014において、逆方向伝搬モード表面1028は、構造1020によって占有された領域中に掃引され、そのプロセスにおいて、表面1028が通過したとき、前に反射された逆方向表面1030が表面1028に加算される。今度は順方向伝搬モードを含んでいる反射された表面1034も、作成される。最後に、パネル1016において、逆方向伝搬モード表面1028は、拡張されたサブドメイン1024にわたってずっと掃引される。表面1032が、モード表面1028が通過したときにモード表面1028に加算され、したがって、また、消去される間に、構造1020の内部に対する反射モードをもつ新しいモード表面1036が、作成される。しかし、元の残差ソース1018について、完全に解かれる。そのプロセスは、継続することができ、モード係数表面のノルムがあらかじめ選択されたしきい値を下回るまで、第1の順方向及び逆方向モード表面がスラブ反復ドメインにわたって伝搬する。
【0138】
拡張されたサブドメイン1024内に1つの構造界面があるか又は構造界面がないかのいずれかである一実例では、単一の順方向及び逆方向掃引が、常に、厳密な解を生じることになる。
【0139】
VSDD法の変形形態がある。
【0140】
たとえば、
図11は、一実施例による、アダプティブ・メッシングを示す。たとえば、概略図アダプティブ・メッシング1100は、アダプティブ・メッシングが存在するサブドメインの選択を示す。
図11では、1104は、領域1102よりも高いメッシュ密度をもつ領域を示す。
図11は一定の縮尺でないが、領域1104内のサブドメインは、領域1102中のサブドメインのおよそ1/4サイズである。サブドメインへの完全なドメイン1106の区分は、より高いメッシュ密度をもつ領域のロケーションとは無関係に進むことができる。
【0141】
別の変形形態では、1つ又は複数のサブドメインが、単一の大きいサブドメインに組み合わせられ得る。
図12は、一様な空間の大きいエリア又は単に1D非対称性をもつ領域の場合など、いくつかの実施例では、複数のサブドメインが、合併されたサブドメイン1202にどのように組み合わせられ得るかを示す。一方、サブドメイン1204及びサブドメイン1206は、変更されないままである。
【0142】
いくつかの実施例では、合併されたサブドメイン1202は、著しく増加された速度で、グリーン関数手法又はスラブ反復手法を用いて解かれ得る。いくつかの実施例では、
図12に示されているように、アダプティブ・メッシュ領域の存在を無視する様式で、単に、合併のためのサブドメインを選択することができる。算出プロセスをより一様にするために、サブドメインのうちのいくつかのサイズを調整することが可能である。ただし、メッシュ密度の変化の存在は、各サブドメインについて同等空き空間問題を解くことの要件を変えない。より細かいメッシュをもつ領域とより粗いメッシュをもつ領域との間のボーダーにおいて、基礎をなす有限差分式が、単一のグリッド・ポイント値の代わりに、単に近隣の解ベクトルのボリュメトリック近似を利用するように作り直され得る。
【0143】
いくつかのシミュレーション実施例では、一様な空間又は1次元のみにおける非対称性をもつ一連の構造のいずれかである、広範なエリアがある(そのような領域は、スラブ反復法とともに使用され得る)。これらの領域が、さもなければいくつかの独立したサブドメインであるであろう領域にわたって拡張する実施例では、それらのサブドメインを単一の合併されたサブドメインに組み合わせ、それによりシミュレーション性能を大幅に改善することができ、なぜなら、スラブ反復法及びグリーン関数法のために使用されるサブドメイン解法が、しばしば、サブドメイン・サイズに応じたサブ線形様式でスケーリングするからである。すなわち、グリーン関数又はスラブ反復法の場合、グリッド・ポイントの量の2倍(2×)をもつサブドメインを解くために、時間量の2倍(2×)かからないことになる。さらに、不変式A*X=Bがこの領域内で維持されるので、この領域内でX、B又はδBを記憶する必要がないことさえあり、したがって、解ベクトルXがこの領域における出力として必要とされる実施例を除いて、メモリ要件を著しく減少させ得る。
【0144】
別の変形形態では、
図13は、各々が別個の構造をもつ2つの領域が、2つの領域の間に介在する領域においてスラブ反復法又はグリーン関数法を使用することによって、どのように単一のVSDDシミュレーションに組み合わせられ得るかを示す。ソース1302が励起1304を放出し、励起1304は完全なドメイン1306全体にわたって拡張する。領域1308及び領域1310内に、非対称構造(すなわち構造1312及び構造1314)がある。したがって、領域1308又は領域1310のいずれも、グリーン関数法又はスラブ反復のいずれにも従わない。これらの領域は、大きくなり得、複数のサブドメインに分割され得る。ただし、一般的なサブドメインよりもはるかに大きくなり得る領域1316は、矢印によって示される方向で単に1d非対称性を有する。領域1316は、単一の大きいサブドメイン、及びスラブ反復が使用されるものとして扱われ得る。一方、領域1316中の構造が一様であった場合、グリーン関数法が使用され得る。
【0145】
図14は、コンピュータ上にVSDD法を実装するためのシステム1400の実施例のブロック図を示す。システム1400は、コンピューティング・ユニット1402(又はコンピューティング・システム)を備え得る。コンピューティング・ユニット1402は、メモリ1404と、1つ又は複数のアプリケーション・プログラム又はモジュール1406と、処理ユニット1408と、ユーザ・インターフェース1410とを備えることができる。コンピューティング・ユニット1402は、コンピューティング環境の一実例にすぎず、VSDD法の使用又は機能性の範囲に関するいかなる限定をも示唆するものではない。
【0146】
メモリ1404は、VSDD法を実装するためにコンピューティング・ユニット1402によって実行される、コンピュータ実行可能命令を含んでいる1つ又は複数のアプリケーション・プログラム(又はプログラム・モジュール)1406を記憶することができる。メモリ1404は、
図2及び
図6で概説された方法を可能にするいくつかのモジュール1406を含むことができる。
【0147】
コンピューティング・ユニット1402は汎用メモリ1404を有するものとして示されているが、コンピューティング・ユニット1402は異なるタイプのコンピュータ可読媒体をも含み得る。限定ではなく実例として、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体を備え得る。コンピューティング・システム・メモリ1404は、読取り専用メモリ(ROM:read only memory)及びランダム・アクセス・メモリ(RAM:random access memory)などの揮発性及び/又は不揮発性メモリの形式のコンピュータ記憶媒体を含み得る。スタートアップ中になど、コンピューティング・ユニット内の要素間で情報を転送するのを助ける基本ルーチンを含んでいる、基本入出力システム(BIOS:basic input/output system)が、一般に、ROMに記憶される。RAMは一般に、処理ユニットにとって直ちにアクセス可能であり、及び/又は処理ユニットによってその上で現在動作されている、データ及び/又はプログラム・モジュールを含んでいる。限定ではなく実例として、コンピューティング・ユニットは、オペレーティング・システム、アプリケーション・プログラム、他のプログラム・モジュール、及びプログラム・データを含む。メモリ1404に示されている構成要素は、他のリムーバブル/非リムーバブル、揮発性/不揮発性コンピュータ記憶媒体中にも含まれ得るか、又は、それらの構成要素は、コンピュータ・システム又はネットワークを通して接続された別個のコンピューティング・ユニット上に常駐し得る、アプリケーション・プログラム・インターフェース(「API:application program interface」)を通してコンピューティング・ユニットにおいて実装され得る。単に実例として、ハード・ディスク・ドライブは、非リムーバブル、不揮発性磁気媒体から読み取るか又はそれに書き込み得、磁気ディスク・ドライブは、リムーバブル、不揮発性磁気ディスクから読み取るか又はそれに書き込み得、光ディスク・ドライブは、CD ROM又は他の光媒体などのリムーバブル、不揮発性光ディスクから読み取るか又はそれに書き込み得る。例示的な動作環境において使用され得る他のリムーバブル/非リムーバブル、揮発性/不揮発性コンピュータ記憶媒体は、限定はしないが、磁気テープ・カセット、フラッシュ・メモリ・カード、デジタル多用途ディスク、デジタル・ビデオ・テープ、ソリッド・ステートRAM、ソリッド・ステートROMなどを含み得る。上記で説明されたドライブ及びそれらの関連付けられたコンピュータ記憶媒体は、コンピューティング・ユニットに、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラム・モジュール及び他のデータのストレージを与える。ユーザは、キーボード及びポインティング・デバイス(たとえば、マウス、トラックボール、タッチ・パッドなど)などの入力デバイスを含み得る、ユーザ・インターフェース1410を通してコンピューティング・ユニット1402にコマンド及び情報を入力し得る。入力デバイスは、マイクロフォン、ジョイスティック、サテライト・ディッシュ、スキャナなどを含み得る。これら及び他の入力デバイスは、しばしば、システム・バスを通して処理ユニット1408に接続されるが、パラレル・ポート又はユニバーサル・シリアル・バス(USB:universal serial bus)など、他のインターフェース及びバス構造によって接続され得る。モニタ又は他のタイプのディスプレイ・デバイスが、ビデオ・インターフェースなど、インターフェース1412を介してシステム・バスに接続され得る。また、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(「GUI:graphical user interface」)が、ユーザ・インターフェース1410から命令を受信し、処理ユニット1408に命令を送信するために、インターフェース1412とともに使用され得る。モニタに加えて、コンピュータは、出力周辺インターフェースを通して接続され得る、スピーカ及びプリンタなどの他の周辺出力デバイスをも含み得る。コンピューティング・ユニット1402の多くの他の内部構成要素が示されていないが、そのような構成要素及びそれらの相互接続がよく知られていることを、当業者は諒解されよう。
【0148】
図15は、ソース1514をもつ、2つの導波路(導波路1510及び導波路1512)の存在下の電磁場のシミュレーションを示す。各導波路は、幅500nm及び高さ200nmのSi導波路である。導波路は150nmだけ分離されている。導波路は、シリコンから作られ、二酸化ケイ素(SiO
2)で覆われている。パネル1502に示されている構成は、しばしば、集積光学において使用される。
【0149】
図15では、誘導導波路モード(guided waveguide mode)が、1.55μmの自由空間波長に対応する周波数において、導波路1510中のソース1514によって出射される。すなわち、このソース1514の周波数は、近赤外レジーム中にある、ほぼ192THzである。グリッドは、0.02μm/ピクセルの離散化をもつ300×200×400ピクセルであり、約375個のサブドメインを生じる。シミュレーションは、VSDD法を使用する2つのGPUカードを用いた並列処理を使用して行われた。時間停止法とグリーン関数法とABCをもつ定常状態法との組合せが、この反復においてサブドメインを解くために使用された。
【0150】
ランタイムの約5分後のパネル1504が示されている。誘導モードは、導波路1510に沿って伝搬し始めたが、まだ導波路1512に結合されていない。
【0151】
ランタイムの約10分後のパネル1506が示されている。誘導モードは、今度は導波路1510に沿って著しく遠くに伝搬されたが、依然として、導波路1512にまだ著しくは結合されていない。
【0152】
ランタイムの15分後のパネル1508が示されている。今度は、当初導波路1510中にあった誘導モードのかなりの部分が、導波路1512に結合された。シミュレーションはまだ完全には収束されていないが、すでにシステムの挙動に関する重要な情報が決定され得る。
【0153】
パネル1502~パネル1508の進行に示されているように、VSDDアルゴリズムの収束のプロセスにおいて、初期電流ソース1514が、導波路1510中で誘導モードを出射し、誘導モードは、次いで、方向性結合を介して導波路1512に結合することがわかる。
【0154】
図16は、ランタイムの20分後の
図15に示されている構成のシミュレーションを示す。示されているシミュレーションは、およそ20回の全体的反復において、4000個のサブドメイン解をもち、すなわち、反復ごとに平均約200個のサブドメイン解をもつ。ランタイムは、そのシミュレーションがクラスタに対して実施されるときよりも速い。
図16では、黒い線は、サブドメイン1602のロケーションを示す。
図15では、サブドメイン・ロケーションの明らかな証拠が場発展において存在せず、グローバルに正しい解を与えることにおけるこの方法の成功を強調することに留意されたい。
【0155】
本方法は、現在好ましい実施例に関して説明されたが、それらの実施例に本発明を限定するものでないことが、当業者によって理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲及びそれの等価物によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な代替実施例及び変更が、開示された実施例に対して行われ得ることが企図される。
【要約】
ソースから生成された場を決定するためのコンピュータ・シミュレーションのためのシステム及び方法であって、場が1つ又は複数の構造と相互作用する、システム及び方法。システム及び方法は、ドメインをサブドメインに分割することと、サブドメインのサブセット内の各サブドメインの周りの拡張されたサブドメイン内の残差場について解くことによって、サブセット中の場について反復的に解くこととを含む。サブドメインが構造を備える場合、構造の境界は、拡張されたサブドメインの境界を越えて第2の拡張されたサブドメインまで拡張する。