(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】睡眠深度測定装置、睡眠深度測定方法、コンピュータプログラム及び学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20220822BHJP
【FI】
A61B5/16 130
(21)【出願番号】P 2018075563
(22)【出願日】2018-04-10
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】513302477
【氏名又は名称】エコナビスタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】安田 輝訓
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-254827(JP,A)
【文献】特開2011-067241(JP,A)
【文献】特開2001-276019(JP,A)
【文献】特開2016-096886(JP,A)
【文献】特開2017-221413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16 - 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠者の睡眠深度を測定する睡眠深度測定装置において、
睡眠者に係る複数種の生体データを取得する取得部と、
学習モデルを用い、取得した複数種の生体データに基づいて
睡眠の程度を示す特徴値を算出する算出部と、
前記特徴値が、閾値以上である旨の以上判定、又は閾値未満である旨の未満判定を行う判定部と、
所定期間内の
時系列における
複数の前記判定部の判定結果に基づいて、
前記所定期間毎に睡眠深度を決定する決定部と
を備えることを特徴とする睡眠深度測定装置。
【請求項2】
前記複数種の生体データは、睡眠者の睡眠中における体動に係るデータを含むことを特徴とする請求項1に記載の睡眠深度測定装置。
【請求項3】
前記複数種の生体データは、睡眠者の睡眠中における心拍及び呼吸に係るデータを更に含むことを特徴とする請求項2に記載の睡眠深度測定装置。
【請求項4】
前記所定期間内における前記以上判定又は前記未満判定の割合に基づいて、前記決定部は睡眠深度を決定することを特徴とする請求項1から3の何れか一つに記載の睡眠深度測定装置。
【請求項5】
前記学習モデルは、パラメータを用いて所定範囲内の前記特徴値を出力することを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の睡眠深度測定装置。
【請求項6】
前記特徴値の算出結果に基づいて、前記パラメータを調整する調整部を備えることを特徴とする請求項5に記載の睡眠深度測定装置。
【請求項7】
前記パラメータは重みを含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の睡眠深度測定装置。
【請求項8】
前記決定部によって決定された睡眠深度を表すデータを出力する出力部を備えることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の睡眠深度測定装置。
【請求項9】
睡眠深度測定装置
が睡眠深度を測定する睡眠深度測定方法において、
睡眠者に係る複数種の生体データを取得し、
学習モデルを用い、取得した複数種の生体データに基づいて睡眠
の程度を示す特徴値を算出し、
前記特徴値が
、閾値以上である旨の以上判定、又は閾値未満である旨の未満判定を行い、
所定期間内の
時系列における
複数の前記判定の結果に基づいて、
前記所定期間毎に睡眠深度を決定することを含む睡眠深度測定方法。
【請求項10】
コンピュータにて、
学習モデルを用い、取得された睡眠者に係る複数種の生体データに基づいて
睡眠の程度を示す特徴値を算出し、
前記特徴値が
、閾値以上である旨の以上判定、又は閾値未満である旨の未満判定を行い、
所定期間内の
時系列における
複数の前記判定の結果に基づいて、
前記所定期間毎に睡眠深度を決定する処理を実行するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠深度測定装置、睡眠深度測定方法、コンピュータプログラム及び学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、睡眠中のユーザの生体情報を用いて、睡眠深度を決定する睡眠深度決定部と、前記睡眠深度に基づいて筋電気刺激の強度を決定する筋電気刺激強度決定部と、前記筋電気刺激強度決定部において決定された強度で、前記ユーザの皮膚に配置された電極を用いて、筋電気刺激を出力する筋電気刺激出力部とを備え、ユーザの睡眠を阻害しないようにしつつ、筋電気刺激によるトレーニング効果を生じさせる電気刺激システムが開示されている。
【0003】
特許文献2には、被験者の睡眠深度の変移を示す時系列データを含む睡眠情報と、アラームが鳴る時刻を示す目覚まし時刻情報とに基づいて、当該目覚まし時刻情報により示される時刻に、目覚め良く起床可能と推定される推奨寝入り時刻を算出し、算出された推奨寝入り時刻を前記被験者に通知することによって、覚醒時の目覚め感を向上させる睡眠管理装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、利用者の心拍信号に対して利得制御を行うことによってピーク値を一定に制御し、そのときの利得の値を用いて算出した心拍信号の強度に対して正規化処理を施して得られた正規化心拍強度と、得られた正規化心拍強度のデータについて算出された所定時間のデータのばらつきを示す分散値とに基づいて睡眠段階を判定することによって、睡眠段階を高精度に判定することができる睡眠段階判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-64390号公報
【文献】特開2017-46960号公報
【文献】特開2016-202463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、特許文献1の電気刺激システム、及び特許文献3の睡眠段階判定装置においては、一種類の生体情報のみに基づいて睡眠深度を判定しており、斯かる判定結果の信頼性に乏しい。
【0007】
また、特許文献2の睡眠管理装置においては、自律神経活動指標と脈波偏差とに基づいて睡眠深度を判定する旨記載されているものの、睡眠深度の判定方法については明記されておらず、依然として判定結果の信頼性を担保出来ない。
【0008】
ところが、睡眠深度の信頼性を高めるためには、複数種の生体データに基づいて判定することが適切である。また、不特定多数の使用者に備え、斯かる装置の汎用性を高くすることも要求とされる。しかしながら、このようなことについて、特許文献1~3においては全く工夫されていない。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、より信頼性の高い睡眠深度を測定でき、かつ汎用性に優れた睡眠深度測定装置、睡眠深度測定方法、コンピュータプログラム及び学習済みモデルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置は、睡眠者の睡眠深度を測定する睡眠深度測定装置において、睡眠者に係る複数種の生体データを取得する取得部と、学習モデルを用い、取得した複数種の生体データに基づいて特徴値を算出する算出部と、前記特徴値が、閾値以上である旨の以上判定、又は閾値未満である旨の未満判定を行う判定部と、時系列における前記判定部の判定結果に基づいて、睡眠深度を決定する決定部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置は、前記複数種の生体データは、睡眠者の睡眠中における体動に係るデータを含むことを特徴とする。
【0012】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置は、前記複数種の生体データは、睡眠者の睡眠中における心拍及び呼吸に係るデータを更に含むことを特徴とする。
【0013】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置は、所定期間内における前記以上判定又は前記未満判定の割合に基づいて、前記決定部は睡眠深度を決定することを特徴とする。
【0014】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置は、前記学習モデルは、パラメータを用いて所定範囲内の前記特徴値を出力することを特徴とする。
【0015】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置は、前記特徴値の算出結果に基づいて、前記パラメータを調整する調整部を備えることを特徴とする。
【0016】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置は、前記パラメータは重みを含むことを特徴とする。
【0017】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置は、前記決定部によって決定された睡眠深度を表すデータを出力する出力部を備えることを特徴とする。
【0018】
本実施の形態に係る睡眠深度測定方法は、睡眠深度測定装置にて睡眠深度を測定する睡眠深度測定方法において、睡眠者に係る複数種の生体データを取得し、学習モデルを用い、取得した複数種の生体データに基づいて睡眠深度に係る特徴値を算出し、前記特徴値が閾値以上であるか否かの判定を行い、時系列における前記判定の結果に基づいて、睡眠深度を決定することを含む。
【0019】
本実施の形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータにて、学習モデルを用い、取得された睡眠者に係る複数種の生体データに基づいて特徴値を算出し、前記特徴値が閾値以上であるか否かの判定を行い、時系列における前記判定の結果に基づいて、睡眠深度を決定する処理を実行する。
【0020】
本実施の形態に係る学習済みモデルは、単位時間当たりの体動データ、心拍データ及び呼吸データが入力される入力層と、該入力層から入力された体動データ、心拍データ及び呼吸データとパラメータに基づき演算を行う中間層と、該中間層からの出力に基づき睡眠の程度を示す特徴値を出力する出力層とを備える学習済みモデルであり、ベッドセンサから取得した単位時間当たりの体動データ、心拍データ及び呼吸データが前記入力層に入力され、前記中間層による演算を経て前記出力層から得られる特徴値を特定する処理に用いられることを特徴とする。
【0021】
本実施の形態に係る学習済みモデルは、前記特定した特徴値が、閾値以上である旨の以上判定、又は、閾値未満である旨の未満判定を行うのに用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数種の生体データに基づいて睡眠者の睡眠深度を測定することによって、より信頼性の高い睡眠深度の測定ができ、かつ斯かる装置の汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態1に係る睡眠深度測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態に係る睡眠深度測定装置の制御部の要部構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係る睡眠深度測定装置における睡眠深度測定の処理を示すフローチャートである。
【
図4】本実施の形態に係る睡眠深度測定装置における睡眠深度測定の処理を概念的に示す概念図である。
【
図5】実施の形態2に係る睡眠深度測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態に係る睡眠深度測定装置、睡眠深度測定方法、コンピュータプログラム及び学習済みモデルを、図面に基づいて詳述する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る睡眠深度測定装置の要部構成を示すブロック図である。図中、符号20は本実施の形態に係る睡眠深度測定装置を示す。睡眠深度測定装置20には、睡眠センサ10が接続されている。
【0026】
睡眠センサ10は、たとえばシート状のセンサであり、ベッドマットレスとシーツとの間に設置される。睡眠センサ10は、人がベッドに入ってからベッドから離れるまでの間、ベッドに横たわった人物の脈拍、呼吸、体動、体温等の生体データを検出する。睡眠センサ10は、検出した生体データを睡眠深度測定装置20に出力する。
【0027】
なお、睡眠センサ10と睡眠深度測定装置20とは、一体になっていても良い。また、睡眠センサ10は、ベッドの枕もとまたは部屋の壁に設置され、マイクロ波又は赤外線を用いてベッドに横たわった人物の脈拍、呼吸、体動、体温等を検出する構成であっても良い。
【0028】
睡眠深度測定装置20は、ベッドに横たわって睡眠中の人(以下、睡眠者と言う。)の生体データを睡眠センサ10から取得し、取得した生体データに基づいて斯かる睡眠者の睡眠深度を測定する。
【0029】
睡眠深度測定装置20は、制御部21と、主記憶部22と、補助記憶部23と、センサI/F(InterFace)24と、計時部25と、表示部26と、指示受付部27とを備えている。これらの構成部分はバスにて互いに接続されている。また、睡眠深度測定装置20に、汎用のパソコン、タブレット、スマートフォン等の情報機器を使用しても良い。
【0030】
主記憶部22は、SRAM(Static RAM)、DRAM(Dynamic RAM)、フラッシュメモリ又は半導体メモリディスク等である。主記憶部22には、制御部21が行う処理の途中で必要な情報および制御部21で実行中のプログラムが一時的に保存される。また、主記憶部22には、後述する閾値が記憶されている。
【0031】
補助記憶部23は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ、半導体メモリディスク又はハードディスク等である。補助記憶部23には、制御部21に実行させるプログラムおよびプログラムの実行に必要な各種情報が保存されている。
【0032】
例えば、補助記憶部23には、後述する、算出部212、判定部213、決定部214、調整部215における処理に係るコンピュータプログラムが格納されている。
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、前記コンピュータプログラムが、I/F部(図示せず)を介してCD-ROM等の可搬型記録媒体で提供されるように構成しても良い。更に、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、前記コンピュータプログラムを、外部装置から通信部(図示せず)を介してダウンロードできるように構成しても良い。
【0033】
センサI/F24(取得部)は、睡眠センサ10から生体データを取得するインターフェイスである。センサI/F24は取得した生体データを、バスを介して制御部21に送る。
表示部26(出力部)は、例えば、LCD又はEL(Electroluminescence)パネル等からなり、後述するように、制御部21によって決定された睡眠深度が表示される。
【0034】
指示受付部27は、いわゆる操作部等である。指示受付部27は、所定睡眠者の睡眠深度を表示する指示、斯かる睡眠深度を外部装置(例えば、ユーザのスマートフォン)に送信する指示等をユーザから受け付ける。
【0035】
制御部21は、睡眠深度測定装置20を制御する。制御部21には、一又は複数のCPU、GPU(Graphics Processing Unit)又はマルチコアCPU等が使用される。制御部21はセンサI/F24を介して睡眠センサ10から取得した生体データに基づいて睡眠者の睡眠深度を測定する。
【0036】
ここで、睡眠深度とは、例えば、覚醒、レム睡眠、段階1、段階2、段階3および段階4の6段階で示す。覚醒は、目が覚めている状態である。レム睡眠は、身体は眠っているが脳は活動している、浅い眠りの状態である。段階1から段階4までは、いわゆるノンレム睡眠と呼ばれる状態であり、このうち、睡眠段階3及び睡眠段階4は熟睡している状態を示す。各段階において数字が大きいほど順次眠りが深い状態を示す。
【0037】
図2は、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20の制御部21の要部構成を示す機能ブロック図である。制御部21は、CPU211と、算出部212と、判定部213と、決定部214と、調整部215とを備える。
【0038】
算出部212は、センサI/F24を介して睡眠センサ10から取得した生体データに基づいて睡眠者の睡眠深度に係るスコア(特徴値)を算出する。例えば、前記生体データには、複数種の生体データが含まれる。前記複数種の生体データは、例えば、睡眠中における睡眠者の体の動きを表す体動データ(体動に係るデータ)を少なくとも含む。また、前記複数種の生体データは、睡眠中における睡眠者の心拍数を表す心拍データ(心拍に係るデータ)、睡眠中における睡眠者の呼吸(呼気又は吸気)の数を表す呼吸データ(呼吸に係るデータ)を更に含む。以下、前記生体データが前記体動データ、前記心拍データ及び前記呼吸データからなる場合を例に挙げて説明する。しかし、本実施の形態はこれに限るものでない。前記体動データが睡眠者の動きと動きの間の間隔であっても良く、前記心拍データが脈と脈との間の間隔であっても良く、前記呼吸データが呼吸と呼吸との間の間隔であっても良い。
【0039】
算出部212は学習モデルを用いる。学習モデルは、汎用性に優れており、所定のパラメータを用い、前記スコアが所定範囲内となるように出力する。算出部212は、前記生体データを前記学習モデルに入力することによって、前記スコアを算出する。以下、詳しく説明する。
【0040】
前記学習モデルは、単位時間当たりの体動データ、心拍データ及び呼吸データが入力される入力層と、該入力層から入力された体動データ、心拍データ及び呼吸データとパラメータに基づき演算を行う中間層と、該中間層からの出力に基づき睡眠の程度を示す特徴値を出力する出力層とを備える学習済みモデルであり、睡眠センサ10(ベッドセンサ)から取得した単位時間当たりの体動データ、心拍データ及び呼吸データが前記入力層に入力され、前記中間層による演算を経て前記出力層から得られる特徴値を特定する処理に用いられる。
【0041】
前記学習モデルは、例えば、いわゆるニューラルネットワークを用いる。説明の便宜上、前記学習モデルは、入力層、中間層、及び出力層を有するとする(
図4参照)。また、入力層、中間層、出力層は夫々複数のノードを有する。
例えば、前記生体データは入力層に入力され、入力層の各ノードから中間層のノードに出力されるが、この際パラメータが掛けられる。次いで、前記パラメータが掛けられた生体データは、前記中間層の各ノードから出力層のノードに出力されるが、更にパラメータが掛けられる。前記パラメータは、例えば、重み(変換行列)又はバイアスが含まれる。前記学習モデルは、前記生体データが入力されると、上述の処理を行い、睡眠の程度を示す特徴値である0~1の間の数字(スコア)を算出するように構成されている。
【0042】
なお、前記出力層は0、0.1、0.2、0.3、…、0.9、1.0のよういに0.1刻みずつの11の出力層を有し、Softmax関数により夫々の確率を出力するようにしても良い。
【0043】
例えば、前記学習モデルは、前記パラメータを調整しながら前記入力層から前記出力層までの処理を繰り返す(学習)ことによって生成される。すなわち、前記学習モデルは、予め、基準となる学習用の生体データ(教師付きデータ)を用いて、いわゆる教師ありの学習を行う。前記基準となる学習用の生体データを学習モデルに入力し、出力されるスコアと正解(例えば、「0.5」)との誤差をとり、該誤差を各層に伝播させて正解に近づくように各層(ノード)のパラメータを調整する。このような一連の処理を繰り返して行い正解との誤差を小さくする。このような学習を経て、最終的に、本実施の形態に係る学習モデルが完成される。
【0044】
前記学習モデルが特定したスコア(特徴値)は、後述するように、閾値以上である旨の以上判定、又は、閾値未満である旨の未満判定を行うのに用いられる。
【0045】
算出部212は、睡眠センサ10から取得した単位時間(1秒)当たりの生体データ(体動データ、心拍データ及び呼吸データ)から、前記学習モデルを用いて、前記スコアを算出する。算出部212は算出したスコアを毎秒判定部213に送る。
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、以上の記載に限るものでない。例えば、算出部212が10秒毎にスコアの算出を行って算出したスコアを判定部213に送るようにしても良く、10秒より長い時間間隔で算出部212がスコアを算出しても良い。また、所定時間内における生体データの平均値を用いて、算出部212がスコアを算出しても良い。
【0046】
その他、時系列の複数の生体データに対し、畳み込み処理を行ったうえで、ニューラルネットワークに入力しても良い。また、時系列の生体データに対し再帰型ニューラルネットワーク(RNN)を用いても良い。
【0047】
判定部213は、算出部212によって算出されたスコアが、主記憶部22に記憶されている閾値以上であるか否かの判定を行う。例えば、前記閾値は「0.75」であり、判定部213はスコアが前記閾値以上である旨の以上判定、又は、スコアが前記閾値未満である旨の未満判定を行う。判定部213は前記以上判定を行った場合は「1」を出力し、前記未満判定を行った場合は「0」を出力する。以下では、前記以上判定に伴って出力される「0」、前記未満判定に伴って出力される「1」をまとめて出力結果とも言う。判定部213による判定は、例えば、毎秒行われ、斯かる判定に伴う出力結果は、主記憶部22に記憶される。
【0048】
決定部214は、判定部213の判定結果に基づいて、所定時間(例えば、10分)毎に睡眠者の睡眠深度を決定する。決定部214は、所定時間の間に主記憶部22に記憶された、判定部213による出力結果に基づいて睡眠深度の決定を行う。決定部214は、前記所定時間内における「0」又は「1」の割合に基づいて睡眠深度を決定する。例えば、決定部214は、前記所定時間内における「0」又は「1」の数を、予め主記憶部22に記憶されている複数の閾値と対比することによって、上述した6段階のうち何れかの睡眠深度を決定する。具体的に、決定部214は、「0」又は「1」の数が多ければ多いほど深い眠りであるとして、覚醒、レム睡眠、段階1、段階2、段階3および段階4の順に睡眠深度を決定する。決定部214による決定の結果は、主記憶部22に記憶される。
【0049】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、以上の記載に限るものでない。例えば、
決定部214は、前記所定時間内において、連続する「0」又は「1」の数を、予め主記憶部22に記憶されている複数の閾値と対比することによって、睡眠深度を決定するように構成しても良い。
【0050】
調整部215は、前記学習モデルに用いられるパラメータを調整することによって、睡眠者夫々の個人差を緩和する。すなわち、人によって寝癖が異なり、睡眠中に寝返りが異常に多い人もいる。このような人(以下、特異者と言う。)の睡眠深度測定において、いわゆる標準集団に属する人と同様の学習モデルを用いたのでは、正確な睡眠深度測定とは言えない。従って、このような特異者に対しては、その人に応じた学習モデルに変更する必要がある。このような場合、調整部215は、前記パラメータを調整して学習モデルを変更する。
【0051】
調整部215は、所定期間(例えば、一か月)内における、決定部214の決定の結果を主記憶部22から読み出し、決定部214の決定の結果に基づいて、パラメータを変更する必要があるか否かを判定する。
【0052】
例えば、前記所定期間内の決定部214の決定結果において、覚醒状態又はレム睡眠状態の割合又は数が所定の閾値以上である場合、又は標準集団に属する人の平均値以上である等の場合、調整部215はパラメータを調整する必要があると判定する。
パラメータを調整する必要があると判定した場合、調整部215は、算出部212から出力されるスコアが標準集団に属する人の平均値(例えば、0.5)に近づくように前記学習モデルのパラメータを調整する。すなわち、算出部212の出力するスコアが0.5に近づくように、前記パラメータを調整しながら、前記学習モデルの入力層から出力層までの処理を繰り返す学習を行う。
【0053】
このように、調整部215が前記スコアを出力する学習モデルのパラメータを調整することによって、睡眠者の個人差が学習モデルに反映されるので、正確な睡眠深度の測定(判定)が可能である。
【0054】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、以上の記載に限るものでない。例えば、重み又はバイアスが異なる複数の学習モデルを補助記憶部23に記憶して置き、所定期間内における、決定部214の決定の結果に応じて、前記複数の学習モデルの何れかに学習モデルを変更するようにしても良い。すなわち、前記所定期間内において、覚醒状態又はレム睡眠状態の数が所定の閾値より多い場合、標準集団に属する人の平均値より多い等の場合は、前記複数の学習モデルの何れかに、算出部212が用いる学習モデルを変えるように構成する。算出部212は学習モデルの交換を繰り返す(学習)ことによって、斯かる睡眠者に最適な学習モデルを選択できる。
【0055】
CPU211は、補助記憶部23に格納されている制御プログラムを実行することによって、上述した各構成部分の制御を行ない、装置全体を本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20として動作させる。
【0056】
図3は、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20における睡眠深度測定の処理を示すフローチャートであり、
図4は、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20における睡眠深度測定の処理を概念的に示す概念図である。以下、
図3及び
図4に基づいて、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20における睡眠深度測定の処理を説明する。
【0057】
人(睡眠者)が睡眠のためにベッドに入って横たわってから睡眠中に含まれ、睡眠センサ10は、睡眠中の睡眠者の生体データを検出し、検出した生体データを睡眠深度測定装置20に出力する。睡眠センサ10による生体データの検出は、睡眠者が起床してベッドから離れるまで行われる。
【0058】
この際、睡眠深度測定装置20はセンサI/F24を介して睡眠センサ10から生体データを取得する(ステップS101)。センサI/F24は取得した生体データを制御部21に送る。
【0059】
生体データは算出部212に入力され、
図4に示すように、体動データ、心拍データ及び呼吸データが算出部212の入力層に入力される。算出部212は、体動データ、心拍データ及び呼吸データに対して、学習モデルMを用いる上述した処理を行い、所定のスコアを算出する(ステップS102)。
【0060】
例えば、
図4に例示したように、斯かる学習モデルMでは、体動データ、心拍データ及び呼吸データに係る値に、入力層の夫々のノードにて、夫々重みW11~W19(又はバイアス)が掛けられて中間層の各対応ノードに出力される。また、中間層の夫々のノードにて、夫々重みW21~W29(又はバイアス)が更に掛けられて出力層の各対応ノードに出力される。これによって、学習モデルMは最終的には0~1の範囲内のスコアを出力する。このようにして、算出部212によって算出されたスコアは判定部213に入力される。
【0061】
判定部213は、算出部212から入力されたスコアが、閾値以上であるか否かの判定を行う(ステップS103)。判定部213は斯かるスコアが前記閾値以上である場合、すなわち前記以上判定の場合は「1」を出力し、斯かるスコアが前記閾値未満である場合、すなわち前記未満判定の場合は「0」を出力する。判定部213の判定に伴う出力結果は、主記憶部22に記憶される(ステップS104)。すなわち、主記憶部22には時系列に「0」又は「1」が記憶される。
【0062】
この際、CPU211は計時部25に計時の開始を指示し、CPU211の指示に応じて計時部25は計時を開始する。CPU211は計時部25の計時結果に基づいて、所定時間(例えば、10分)が経過したか否かを判定する(ステップS105)。
【0063】
CPU211は、所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS105:NO)、処理をステップS108に進める。
また、CPU211によって所定時間が経過したと判定された場合(ステップS105:YES)、決定部214は睡眠者の睡眠深度を決定する(ステップS106)。決定部214は、所定時間の間に主記憶部22に記憶された、判定部213による出力結果(「0」又は「1」の割合)に基づいて睡眠深度を決定する。決定部214による睡眠深度の決定方法については既に説明しており、詳しい説明を省略する。判定部213による決定の結果は、主記憶部22に記憶される(ステップS107)。すなわち、主記憶部22には時系列に、睡眠深度の6段階のうち何れかが記憶される。
【0064】
このようにしてステップS107での処理が終わった場合、又はステップS105にて所定時間が経過していないと判定した場合、CPU211は、睡眠センサ10から生体データを取得しているか否かを判定する(ステップS108)。斯かる判定は、CPU211がセンサI/F24を監視することによって行う。
CPU211は、睡眠センサ10から生体データを取得していると判定した場合(ステップS108:YES)、処理をステップS101に戻す。また、CPU211は、睡眠センサ10から生体データを取得していないと判定した場合(ステップS108:NO)、例えば睡眠者が起床した場合、処理を終了する。
【0065】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、以上の記載に限るものでない。例えば、決定部214によって決定された睡眠深度を表すデータが表示部26に出力され、表示部26に睡眠深度が表示されるように構成しても良い。
【0066】
また、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、以上の記載に限るものでない。例えば、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20が通信部(出力部)を備え、決定部214によって決定された睡眠深度を表すデータが外部の携帯情報機器等(例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット等)に送信できるように構成しても良い。
【0067】
更に、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、以上の記載に限るものでない。
図3のステップS105にて所定時間が経過していないと判定され、ステップS108にて生体データを取得していないと判定された場合は、そのまま終了せず、ステップS106~107の処理を行うように構成しても良い。例えば、その時まで主記憶部22に記憶されている「0」又は「1」の割合に基づいて決定部214が睡眠深度を決定するように構成しても良い。
【0068】
また、調整部215は、主記憶部22に記憶されている、所定期間内における決定部214の決定の結果に基づいて、学習モデルMに用いられるパラメータを調整することによって、睡眠者夫々に応じて学習モデルMを変更する。調整部215によるパラメータの調整については既に説明しており、詳しい説明を省略する。
【0069】
以上のように、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20においては、複数種の生体データを用いて睡眠者の睡眠深度を測定するので、より信頼度の高い睡眠深度を得ることが可能である。
【0070】
また、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20においては、算出部212がニューラルネット構成を有する学習モデルMを用いて算出したスコアに基づいて、睡眠深度の測定(決定)が行われる。また、ニューラルネットワークは関数を近似する表現能力が高い。従って、入力される複数種の生体データと、出力されるスコアとに対する関数の近似度を高めることができる。従って、より精度の高い睡眠深度を得ることが可能であると共に、睡眠深度測定装置20の汎用性を向上させることができる。
【0071】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20においては、判定部213による判定処理と、決定部214による睡眠深度の決定処理とが後述するサーバにて行われる。
【0072】
図5は、実施の形態2に係る睡眠深度測定装置20の要部構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、サーバ40を備える。例えば、サーバ40はネットワーク31を介して接続されている。なお、ネットワーク31には複数の睡眠深度測定装置20および携帯情報機器が接続されていても良い。
【0073】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20においては、実施の形態1と同様に、制御部21がCPU211、算出部212及び調整部215を有するものの、判定部213及び決定部214を有しない(図示せず)。本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20においては、実施の形態1における判定部213及び決定部214の機能をサーバ40が行うように構成されている。
【0074】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20においては、制御部21(算出部212)にて算出されたスコアをサーバ40に送る通信部28(出力部)を備える。通信部28は、ネットワーク31を介してサーバ40に、算出されたスコアを送信する。
【0075】
サーバ40は、例えばデータセンタに設置された大型計算機または汎用のパソコン、タブレット等の情報処理装置である。
サーバ40は、サーバ制御部45と、サーバ通信部46とを備えており、これらはバスを介して互いに接続されている。サーバ通信部46は、ネットワーク31を介して通信部28から前記算出されたスコアを受信する。
【0076】
サーバ制御部45は、サーバCPU41と、サーバ判定部42と、サーバ決定部43と、記憶部44とを備えている。
【0077】
サーバ判定部42は、判定部213と同様、受信されたスコアが記憶部44に記憶されている閾値以上であるか否かの判定を行う。また、サーバ決定部43は、決定部214と同様、サーバ判定部42の判定結果に基づいて、所定時間毎に睡眠者の睡眠深度を決定する。サーバ判定部42及びサーバ決定部43は夫々、実施の形態1における判定部213及び決定部214に相当するので、サーバ判定部42及びサーバ決定部43については詳しい説明を省略する。
【0078】
記憶部44は、SRAM(Static RAM)、DRAM(Dynamic RAM)、フラッシュメモリまたは半導体メモリディスク等である。記憶部44には、サーバCPU41が行う処理の途中で必要な情報およびサーバCPU41で実行中のプログラムが一時的に保存される。また、記憶部44には、サーバ通信部46が通信部28から受信したスコア、サーバ判定部42による判定に伴う出力結果と、サーバ決定部43による決定の結果とが記憶される。
【0079】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、以上の記載に限るものでない。例えば、睡眠深度測定装置20が複数の情報処理装置を含み、夫々の情報処理装置が互いに異なる処理を行うように構成しても良い。例えば、睡眠深度測定装置20が、学習モデル生成用の情報処理装置と、睡眠深度決定用の情報処理装置とを別に有しても良い。
【0080】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
なお、上述した算出部212、判定部213、決定部214及び調整部215は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、CPU211が所定のプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に構築されてもよい。
また、上述したサーバ判定部42及びサーバ決定部43は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、サーバCPU41が所定のプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に構築されてもよい。
【0082】
なお、以上においては、ニューラルネットワークを有する学習モデルMが3層である場合を例に挙げて説明したが、これは一例にすぎず、中間層の数を増やすことによって、一層表現能力を高めることができる。
【0083】
更に、以上においては、生体データが脈拍、呼吸、体動、体温等である場合を例として説明したが、本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20はこれに限定するものでない。生体データには、寝息又はいびきに係る情報が更に含まれ得る。
寝息に対しては、睡眠センサ10が睡眠者の寝息の周期性等を計測し、斯かる計測結果を生体データとして用いることができる。また、いびきに対しては、睡眠センサ10が睡眠者のいびきの有無又は程度等を計測し、斯かる計測結果を生体データとして用いることができる。
【0084】
本実施の形態に係る睡眠深度測定装置20は、脈拍、呼吸、体動、体温、寝息、いびきに係る生体データを全て用いて睡眠深度を測定しても良く、何れかの複数種の生体データを選択的に用いて睡眠深度を測定しても良い。
【符号の説明】
【0085】
20 睡眠深度測定装置
24 センサI/F
42 サーバ判定部
43 サーバ決定部
212 算出部
213 判定部
214 決定部
215 調整部
26 表示部
28 通信部
M 学習モデル
W 重み