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  • 特許-電気分解ユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】電気分解ユニット
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/30 20060101AFI20220822BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20220822BHJP
   C25B 11/081 20210101ALI20220822BHJP
   C25B 11/085 20210101ALI20220822BHJP
【FI】
C25B1/30
C25B9/00 A
C25B11/081
C25B11/085
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018165673
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020037723
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 一郎
(72)【発明者】
【氏名】大神田 貴治
(72)【発明者】
【氏名】平方 聡樹
(72)【発明者】
【氏名】市原 史基
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-213885(JP,A)
【文献】特開2008-280549(JP,A)
【文献】特開2009-108395(JP,A)
【文献】特開2010-215938(JP,A)
【文献】特開2016-160527(JP,A)
【文献】特開2016-180166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0007476(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0114532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 15/01-15/017
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン導電性電解質よりなる膜の両面に、電極触媒からなる電極が設けられて構成された電気化学素子と、
前記電気化学素子の一方の電極をアノードとし他方の電極をカソードとする態様で、両電極間に直流電圧を印加する直流電源と
を備えた電気分解ユニットであって、
前記アノードを構成する電極触媒は、水の電気分解活性を示す触媒として、Pt、IrO 、IrRu、PtIrの少なくとも1つにより形成され、
前記カソードを構成する電極触媒は、酸素の2電子還元活性を示す触媒として、導電性炭素材料及び金属ポルフィリン触媒の少なくとも1つを含有して形成されており、
前記電気化学素子は、前記アノードを構成する面が前記カソードを構成する面よりも相対湿度の高い雰囲気を臨むよう配置され、かつ前記カソードを構成する面にて過酸化水素を生成することを特徴とする電気分解ユニット。
【請求項2】
前記電気化学素子は、前記アノードが設けられた面よりも前記カソードが設けられた面の方が絶対湿度が高いことを特徴とする請求項1に記載の電気分解ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、過酸化水素を生成する反応装置が特許文献1に提案されている。かかる反応装置は、アノード膜、カソード膜及び電解質膜を一体化させたユニット膜により、反応室をアノード室とカソード室とに区画するように構成されている。アノード室には、アノード膜の一部が気相に露出した状態で水が導入され、カソード室には、カソード膜の一部が気相に露出した状態でイオン交換水が導入されている。
【0003】
そのような反応装置においては、アノード膜及びカソード膜が電子伝導体で外部短絡され、かつアノード室に還元性物質である水素ガスや水素供与体が供給されるとともに、カソード室に酸化性物質である酸素ガスが供給されることにより、アノード膜で下記式(1)の反応が行われ、カソード膜で下記式(2)の反応が行われることで、燃料電池反応を利用して過酸化水素を生成していた。
【0004】
式(1) H→2H+2e
式(2) O+2H+2e→H
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-68080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に提案されている反応装置では、過酸化水素の生成源として可燃性である水素ガスや水素供与体を用いるとともに、支燃性である酸素ガスを用いていたので、取扱いに注意を払う必要があった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、安全性の向上を図りながら、過酸化水素を良好に生成することができる電気分解ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気分解ユニットは、イオン導電性電解質よりなる膜の両面に、電極触媒からなる電極が設けられて構成された電気化学素子と、前記電気化学素子の一方の電極をアノードとし他方の電極をカソードとする態様で、両電極間に直流電圧を印加する直流電源とを備えた電気分解ユニットであって、前記アノードを構成する電極触媒は、水の電気分解活性を示す触媒として、Pt、IrO 、IrRu、PtIrの少なくとも1つにより形成され、前記カソードを構成する電極触媒は、酸素の2電子還元活性を示す触媒として、導電性炭素材料及び金属ポルフィリン触媒の少なくとも1つを含有して形成されており、前記電気化学素子は、前記アノードを構成する面が前記カソードを構成する面よりも相対湿度の高い雰囲気を臨むよう配置され、かつ前記カソードを構成する面にて過酸化水素を生成することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記電気分解ユニットにおいて、前記電気化学素子は、前記アノードが設けられた面よりも前記カソードが設けられた面の方が絶対湿度が高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アノードを構成する電極触媒が、水の電気分解活性を示す触媒により形成され、カソードを構成する電極触媒が、酸素の2電子還元活性を示す触媒により形成されており、電気化学素子が、アノードを構成する面がカソードを構成する面よりも相対湿度の高い雰囲気を臨むよう配置されたので、アノードで下記式(3)に示すような水の電気分解が行われるとともに、カソードで下記式(4)に示すような過酸化水素の生成が行われる。これにより、アノードが臨む雰囲気の水と、カソードが臨む雰囲気中の酸素とで、過酸化水素を生成することができる。つまり、従来のように可燃性の水素ガスや支燃性の酸素ガス等を用いることなく、水と空気中の酸素とを用いることができ、安全性の向上を図りながら、過酸化水素を良好に生成することができるという効果を奏する。
【0014】
式(3) HO→2H+2e+1/2O
式(4) 2H+O+2e→H
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態である電気分解ユニットの構成を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る電気分解ユニットの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態である電気分解ユニットの構成を模式的に示す模式図である。ここで例示する電気分解ユニット1は、電気化学素子10を備えている。
【0018】
電気化学素子10は、基部11と、第1電極部12と、第2電極部13とを備えて構成されている。基部11は、例えばフッ素樹脂製電解質膜等のイオン導電性電解質よりなる膜11aにより構成された平板状のものであり、水素イオンを通過させる性質を有している。
【0019】
第1電極部12は、基部11の一面、すなわちイオン導電性電解質よりなる膜11aの一方の面に形成されている。この第1電極部12は、水の電気分解活性を示す触媒により形成されている。
【0020】
この水の電気分解活性を示す触媒は、白金族系触媒により構成され、該白金族系触媒として、Pt、IrO、IrRu、PtIrの少なくとも1つであることが好ましい。また第1電極部12においては、図には明示しないが、外側表面において集電層として金属メッシュが設けられている。
【0021】
第2電極部13は、基部11の他面、すなわちイオン導電性電解質よりなる膜11aの他方の面に形成されている。この第2電極部13は、酸素の2電子還元活性を示す触媒により形成されている。
【0022】
この酸素の2電子還元活性を示す触媒は、導電性炭素材料及び金属ポルフィリン触媒の少なくとも1つにより構成されている。
【0023】
導電性炭素材料としては、電気伝導性を有する種々の炭素材料を用いることができ、活性炭、カーボンブラック、カーボンファイバー等の炭素材料が好ましい。尚、これらの炭素材料は、単独若しくは2種以上の混合物として用いてもよい。金属ポルフィリン触媒としては、例えばコバルトポルフィリン触媒を用いることが好ましい。
【0024】
また第2電極部13においては、図には明示しないが、外側表面において集電層として例えばカーボンペーパー等のカーボン繊維が設けられている。
【0025】
そのような電気化学素子10は、第1電極部12と第2電極部13とが、それぞれ導線21を介して直流電源20に電気的に接続されて構成されている。すなわち、第1電極部12が直流電源20の正極に電気的に接続され、第2電極部13が直流電源20の負極に電気的に接続されることで、第1電極部12がアノード、第2電極部13がカソードを構成している。つまり、直流電源20は、電気化学素子10の第1電極部12をアノードとし第2電極部13をカソードとする態様で、両電極間に直流電圧を印加するものである。
【0026】
そして、本実施の形態である電気分解ユニット1において、電気化学素子10は、アノードを構成する第1電極部12が臨む第1の雰囲気2が、カソードを構成する第2電極部13が臨む第2の雰囲気3よりも相対湿度が高くなるよう配置されている。つまり、第1の雰囲気2は、第1電極部12に対して水分を多く含む加湿空気が供給される環境にあり、第2の雰囲気3は、第2電極部13に対して上記加湿空気よりも相対湿度が小さい空気が供給される環境にある。
【0027】
以上のような構成を有する電気分解ユニット1においては、直流電源20から第1電極部12と第2電極部13との間に直流電圧が印加されて電流が供給されると、第1電極部12では、下記式(5)に示すように、第1の雰囲気2中の水蒸気等の水の電気分解反応が起こる。
【0028】
式(5) HO→2H+2e+1/2O
【0029】
一方、第2電極部13では、第1電極部12で生じて基部11を通過した水素イオンと、第2の雰囲気3である空気中に含まれる酸素分子とで、下記式(6)及び下記式(7)の反応が起こる。
【0030】
式(6) 2H+2e+1/2O→H
式(7) 2H+O+2e→H
【0031】
つまり、第2電極部13では、水の生成反応が起こりつつ、酸素の2電子還元反応により、過酸化水素を生成することができる。そのように水の生成反応が起こることにより、電気化学素子10においては、第1電極部12(アノード)が設けられた面よりも第2電極部13(カソード)が設けられた面の方が絶対湿度が高くなる。
【0032】
以上説明したように、本発明の実施の形態である電気分解ユニット1によれば、アノードを構成する第1電極部12が、水の電気分解活性を示す触媒により形成され、カソードを構成する第2電極部13が、酸素の2電子還元活性を示す触媒により形成されており、電気化学素子10が、第1電極部12が第2電極部13よりも相対湿度の高い雰囲気を臨むよう配置されたので、第1電極部12で水の電気分解が行われるとともに、第2電極部13で過酸化水素の生成が行われ、これにより、第1の雰囲気2中の水蒸気等の水と、第2の雰囲気3中の酸素とで、過酸化水素を生成することができる。つまり、従来のように可燃性の水素ガスや支燃性の酸素ガス等を用いることなく、水と空気中の酸素とを用いることができ、安全性の向上を図りながら、過酸化水素を良好に生成することができる。
【実施例
【0033】
以下、本発明の実施例について説明する。尚、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
電気化学素子10として、基部11を「ナフィオン(登録商標)117」(ケマーズ製)により形成し、第1電極部12をIrO触媒により形成し、第2電極部13を活性炭及びカーボンファイバーの導電性炭素材料と、電解質樹脂とにより形成した。第1電極部12と第2電極部13とのそれぞれの大きさが50cmとなるようにした。第1電極部12が臨む第1の雰囲気2は、1L/minで空気を流通させつつ純水150mLを供給した。第2電極部13が臨む第2の雰囲気3は、0.1L/minで空気を流通させた。
【0035】
そのような電気化学素子10に直流電圧を2V印加して、2時間通電させることを2回行ったところ、第2電極部13では、1回目に5質量%の過酸化水素が生成し、2回目に3質量%の過酸化水素が生成した。
【0036】
このように電気分解ユニット1においては、水と空気中の酸素とにより、第2電極部13にて過酸化水素が生成することが明らかとなった。
【0037】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、かかる実施の形態で図示した各構成は概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各構成要素の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 電気分解ユニット
2 第1の雰囲気
3 第2の雰囲気
10 電気化学素子
11 基部
11a 膜
12 第1電極部
13 第2電極部
20 直流電源
21 導線
図1