IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人豊橋技術科学大学の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-19
(45)【発行日】2022-08-29
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20220822BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220822BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220822BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20220822BHJP
【FI】
H02J50/05
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018175311
(22)【出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2020048339
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】相京 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩二朗
(72)【発明者】
【氏名】矢田 祐之
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 耕輔
(72)【発明者】
【氏名】中原 海司
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-78238(JP,A)
【文献】特表2014-524726(JP,A)
【文献】水谷陽太 他4名,受電器アレイとシート型送電器を用いた電界結合無線電力伝送における極板形状に関する一検討,信学技報,日本,電子情報通信学会,2016年,7-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
B60L 1/00-13/00
B60L 15/00-58/40
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を走行する電動モビリティに対して非接触で給電する非接触給電システムであって、
所定の周波数で振幅する高周波電力を出力する高周波電源と、
前記高周波電源が有する一対の端子のうちの一方の端子に接続される第1電極及び前記一対の端子のうちの他方の端子に接続される第2電極を有し、前記第1電極及び前記第2電極の夫々が幹部と前記幹部から突出する複数の枝部とを有する櫛歯体で形成され、前記第1電極の枝部及び前記第2電極の枝部が交互に並置されるように前記路面に設けられる送電電極と、
前記電動モビリティに設けられた複数の電極を有する受電電極と、を備え、
前記受電電極は、前記電動モビリティの走行中に前記複数の電極のうち予め設定された数の電極が前記路面と対向するように設けられ、
前記第1電極の枝部及び前記第2電極の枝部の夫々の幅に対して、前記第1電極の枝部と前記第2電極の枝部との夫々の間隔、前記複数の電極の夫々の内径、及び前記複数の電極の互いの間隔に基づき、前記高周波電源から前記送電電極に入力される電力の平均反射率を算出し、
前記電力の平均反射率に基づき、前記第1電極の枝部と前記第2電極の枝部との夫々の間隔、前記複数の電極の夫々の内径、前記複数の電極の互いの間隔、及び前記第1電極の枝部及び前記第2電極の枝部の夫々の幅が設定されている非接触給電システム。
【請求項2】
前記第1電極の幹部の外縁部と前記第2電極の幹部の外縁部との間隔は、前記高周波電力の周波数に基づく定在波の節が前記第1電極の幹部及び前記第2電極の幹部の少なくともいずれか一方に位置するように設定されている請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記電動モビリティの走行中に前記路面と対向する前記複数の電極は、平面視で対称に配置されている請求項1又は2に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記受電電極を有する受電ユニットの一対の出力端子間に設けられ、カソード端子が前記一対の出力端子の一方に接続されると共にアノード端子が前記複数の電極のうちの一つに接続されるハイサイド側のダイオードと、カソード端子が前記ハイサイド側のダイオードの前記アノード端子に接続されると共にアノード端子が前記一対の出力端子の他方に接続されるローサイド側のダイオードとからなるアーム部を、前記路面と対向する前記電極の数だけ有する整流ユニットを備える請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記電動モビリティの走行中に前記路面と対向する前記電極の数が3つであって、
前記第1電極の枝部及び前記第2電極の枝部の夫々の幅をW、前記第1電極の枝部と前記第2電極の枝部との夫々の間隔をd、前記複数の電極の夫々の内径をr、前記複数の電極の互いの間隔をαとすると、
1/30×W≦d≦1/2×W
7/30×W≦r≦1/2×W
23/30×W≦α≦22/15×W
を具備する請求項1から4のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面を走行する電動モビリティに対して非接触で給電する非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
今後、電動車両(電動モビリティの総称)の増加が見込まれるが、例えば搭載されるバッテリのコスト、重量、給電時間の長さ、リサイクルの難度が課題となっている。このような課題を解決する方法の一つとして、走行中に非接触で給電する技術が検討されている。このような非接触による給電方式として、例えば磁気共鳴型方式や電界結合方式がある。しかしながら、これらの給電方式は、現在のところ、受電電極と送電電極との位置ずれや向きずれにより給電効率が低下することが知られている。バッテリレスで走行する電動車両に対して給電するには、位置ずれや向きずれに対しても給電効率が低下しないことが重要となる。
【0003】
一方、電界結合方式は磁気共鳴方式に比べて高価なコイルの敷設が不要であるため、低コストで実現可能であって、広範囲に亘って送電設備が必要な走行時非接触給電に適していると考えられている。そこで、電界結合方式による走行時非接触給電技術が検討されてきた(例えば非特許文献1及び2)。
【0004】
非特許文献1では、広範囲に亘る給電を実現する送電電極と給電電極との形状が記載されている。非特許文献1では、送電電極の一対の電極を櫛歯状に形成し、受電電極として3個の電極を用いている。これにより、受電電極が送電電極の櫛歯の延出方向に沿って位置ずれした場合であっても、給電状態を維持することが可能となっている。また、当該延出方向に直交する直交方向に対して位置ずれした場合であっても、受電電極の3個の電極のうちの2個の電極が送電電極の一対の電極と平面視で重複していれば給電状態を維持することが可能となっている。
【0005】
非特許文献2では、櫛歯状の送電電極と、受電電極をアレイ状に並べた受電器アレイとが記載されている。これにより、送電電極に対して受電電極が上下方向及び左右方向に移動した場合であっても給電状態を維持することが可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】宮本康平、他1名,「電界結合型無線電力伝送における電極形状と回路考察」,2014年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会 通信講演論文集1,p.448
【文献】水谷陽太、他4名,「受電器アレイとシート型送電器を用いた電界結合無線電力伝送における極板形状に関する一検討」,電子情報通信学会 信学技法 WPT2016-38,p.7-11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電動モビリティによる路面の走行を考えた場合、送電電極と受電電極との位置ずれは上下方向や左右方向に限らず、受電電極が送電電極に対して回転することも想定される。しかしながら、非特許文献1及び2に記載の技術は、受電電極が送電電極に対して回転した場合の給電についてまで検討されていない。
【0008】
そこで、受電電極が送電電極に対して回転した場合であっても給電状態を維持することが可能な非接触給電システムが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る非接触給電システムの特徴構成は、路面を走行する電動モビリティに対して非接触で給電する非接触給電システムであって、所定の周波数で振幅する高周波電力を出力する高周波電源と、前記高周波電源が有する一対の端子のうちの一方の端子に接続される第1電極及び前記一対の端子のうちの他方の端子に接続される第2電極を有し、前記第1電極及び前記第2電極の夫々が幹部と前記幹部から突出する複数の枝部とを有する櫛歯体で形成され、前記第1電極の枝部及び前記第2電極の枝部が交互に並置されるように前記路面に設けられる送電電極と、前記電動モビリティに設けられた複数の電極を有する受電電極と、を備え、前記受電電極は、前記電動モビリティの走行中に前記複数の電極のうち予め設定された数の電極が前記路面と対向するように設けられ、前記第1電極の枝部及び前記第2電極の枝部の夫々の幅に対して、前記第1電極の枝部と前記第2電極の枝部との夫々の間隔、前記複数の電極の夫々の内径、及び前記複数の電極の互いの間隔に基づき、前記高周波電源から前記送電電極に入力される電力の平均反射率を算出し、前記電力の平均反射率に基づき、前記第1電極の枝部と前記第2電極の枝部との夫々の間隔、前記複数の電極の夫々の内径、前記複数の電極の互いの間隔、及び前記第1電極の枝部及び前記第2電極の枝部の夫々の幅が設定されている点にある。
【0010】
このような特徴構成とすれば、電動モビリティについて許容される物理的な制限の下、平均反射率(平均的な送電反射率であって、後述する「MRP」)を減じることができる。したがって、送電電極に対して受電電極が回転している場合であっても、二次元平面の路面において高効率な給電を実現することができる。また、配置上の自由度を高めることも可能となる。更には、費用対効果に応じて受電電極を構成することも可能となる。このように本構成であれば、受電電極が送電電極に対して回転した場合であっても給電状態を維持することが可能な非接触給電システムを実現できる。
【0011】
また、前記第1電極の幹部の外縁部と前記第2電極の幹部の外縁部との間隔は、前記高周波電力の周波数に基づく定在波の節が前記第1電極の幹部及び前記第2電極の幹部の少なくともいずれか一方に位置するように設定されていると好適である。
【0012】
高周波にあっては、伝搬経路の長さ(本構成では「第1電極の幹部の外縁部と第2電極の幹部の外縁部との間隔」に相当)の増大により、遠端からの反射に伴い定在波が発生し、定在波の節で電力伝送効率の低下を招くことが知られている。そこで、上記構成とすれば、高周波電力の伝搬距離と波長との関係から、第1電極の幹部及び第2電極の幹部の間の物理的な長さを調整し、電動モビリティが走行しない場所や、給電に対して影響が小さい場所に節を持ってくることが可能となる。したがって、電動モビリティの走行中において、給電ができない領域を、電動モビリティが走行しない領域に局在させたり、給電できない範囲をなくしたりすることが可能となる。
【0013】
また、前記電動モビリティの走行中に前記路面と対向する前記複数の電極は、平面視で対称に配置されていると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、受電電極が送電電極に対して回転した場合であっても、平均的な送電反射率を最小にすることができる。したがって、給電効率を高めることが可能となる。
【0015】
また、前記受電電極を有する受電ユニットの一対の出力端子間に設けられ、カソード端子が前記一対の出力端子の一方に接続されると共にアノード端子が前記複数の電極のうちの一つに接続されるハイサイド側のダイオードと、カソード端子が前記ハイサイド側のダイオードの前記アノード端子に接続されると共にアノード端子が前記一対の出力端子の他方に接続されるローサイド側のダイオードとからなるアーム部を、前記路面と対向する前記電極の数だけ有する整流ユニットを備えると好適である。
【0016】
例えば上述した非特許文献1や2に記載の技術では、給電された交流電力を直流電力に変換すべく、12個のダイオードが使用されているが、本構成によれば整流ユニットを構成するダイオードの数を低減することが可能となる。したがって、低コスト化することが可能となる。また、ダイオードの数を低減することで、エネルギーロスを減じ、エネルギー効率を高めることが可能となる。また、回路構成を簡素にすることで、信頼性を高めることが可能となる。
【0017】
また、前記電動モビリティの走行中に前記路面と対向する前記電極の数が3つであって、前記第1電極の枝部及び前記第2電極の枝部の夫々の幅をW、前記第1電極の枝部と前記第2電極の枝部との夫々の間隔をd、前記複数の電極の夫々の内径をr、前記複数の電極の互いの間隔をαとすると、
1/30×W≦d≦1/2×W
7/30×W≦r≦1/2×W
23/30×W≦α≦22/15×W
を具備すると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、電動モビリティの走行中に路面と対向する電極の数を3つとした場合において、給電効率の優れた送電電極及び給電電極を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】非接触給電システムの模式図である。
図2】送電電極及び受電電極の拡大図である。
図3】送受電電極構造の変化によるMRPの解析結果である。
図4】構造変化によるMRP解析結果のヒストグラムである。
図5】MRPの受電電極構造マップである。
図6】節の位置についての説明図である。
図7】長さLの調整前の送電電極の電磁界分布を示す解析結果の図である。
図8】長さLの調整後の送電電極の電磁界分布を示す解析結果の図である。
図9】整流ユニットを示す図である。
図10図9の等価回路である。
図11】3つの電極の配置及びその際のMRPについて示した図である。
図12】電極が3つの場合の電力送電効率の角度依存性を示す図である。
図13】回転対称性を持つ電極の配置例を示す図である。
図14】その他の実施形態に係る整流ユニットを示す図である。
図15】その他の実施形態に係る整流ユニットを示す図である。
図16】4つの電極の配置について示した図である。
図17】その他の実施形態に係る非接触給電システムの模式図である。
図18】その他の実施形態に係る送電電極及び受電電極の拡大図である。
図19】その他の実施形態に係る電極の配置例である。
図20】その他の実施形態に係る電極の配置例である。
図21】その他の実施形態に係る電極の配置例である。
図22】その他の実施形態に係る電動モビリティを示す図である。
図23】その他の実施形態に係る電極の配置例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る非接触給電システムは、路面を走行する電動モビリティに対して非接触で給電できるように構成される。以下、本実施形態の非接触給電システム1について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る非接触給電システム1を模式的に示した図である。本実施形態の非接触給電システム1は、路面2を走行する電動モビリティ3に対して電界結合方式による非接触給電を行う。電動モビリティ3は給電された電力を利用して走行する。電動モビリティ3の走行形態は無人走行であっても有人走行であっても良い。また、路面2は、例えば工場等の私有地内のものであっても良いし、公有地のものであっても良い。
【0022】
非接触給電システム1は、高周波電源10、送電電極20、受電電極50を備えて構成される。高周波電源10は、所定の周波数で振幅する高周波電力を出力する。本実施形態に係る高周波とは無線通信に利用可能な周波数(所謂、radio frequency)であり、例えば数十kHzから数GHzの周波数帯をいう。特に限定されるものではないが、本実施形態の高周波電源10は、工業用として割り当てられた13.56MHzで振幅する高周波電力を出力する。このような高周波電源10は、例えば基地局や非接触給電システム1の管理を行う管理局に設けておくと良い。
【0023】
送電電極20は第1電極30及び第2電極40を有する。第1電極30は、高周波電源10が有する一対の端子のうちの一方の端子に接続される。第2電極40は、高周波電源10が有する一対の端子のうちの他方の端子に接続される。
【0024】
図2には、送電電極20を部分的に拡大した図が示される。第1電極30は幹部31と枝部32とを有し、第2電極40は幹部41と枝部42とを有する。第1電極30及び第2電極40の夫々の幹部31、41は、互いに平行に直線状に構成される。第1電極30及び第2電極40の夫々の枝部32、42は、夫々の幹部31、41から突出するように複数設けられる。本実施形態では、第1電極30の枝部32は、第1電極30の幹部31から第2電極40の幹部41に向かって、第1電極30の幹部31に対して直交する方向に沿って構成される。また、第2電極40の枝部42は、第2電極40の幹部41から第1電極30の幹部31に向かって、第2電極40の幹部41に対して直交する方向に沿って構成される。したがって、第1電極30及び第2電極40は夫々、櫛形状の櫛歯体で形成される。
【0025】
第1電極30の枝部32及び第2電極40の枝部42は、第1電極30の幹部31及び第2電極40の幹部41が延出する方向に沿って見た場合に、互いに離間した状態で交互に配置される(並置される)。第1電極30及び第2電極40は、このような形状で構成され、路面2に設けられる。なお、第1電極30及び第2電極40は路面2の表面に設けても良いし、埋設されてあっても良い。送電電極20は図1に示されるように路面2の所定の範囲において複数配置しても良い。
【0026】
また、この送電電極20は、第1電極30と第2電極40の隙間で電力を伝搬させる機能をもつ。そのため、高周波電源10に対する第1電極30及び第2電極40のそれぞれの接続位置は、近接した位置であることが好ましい。本実施形態では、図1に示されるように、高周波電源10は、第1電極30の枝部32先端側と第2電極40の幹部41に接続されている。
【0027】
図1に示されるように、受電電極50は、電動モビリティ3(車両)の路面2と対向する裏面3A側に設けられている。受電電極50は複数の電極51を有し、夫々の電極51は島状に互いに分離した状態で設けられる。
【0028】
受電電極50は、電動モビリティ3の走行中に複数の電極51のうち予め設定された数の電極が路面2と対向するように設けられる。図2では、路面2と対向する複数の電極51として3つの電極51を例示しており、以下では複数の電極51が3つの電極51であるとして説明する。なお、「路面2と対向する」とは、路面2から予め設定された距離内において対向することを意味する。したがって、路面2と対向する3つの電極51は、路面2と平行な状態でなくても良い。
【0029】
次に、送電電極20及び受電電極50の配置パターンについて説明する。まず、送電電極20及び受電電極50を所定の配置パターンで形成した場合に、当該配置パターンにより効率的な給電を行うことが可能か否かを判断する手法について説明する。なお、ここでの配置パターンとは、送電電極20及び受電電極50のサイズ、幅、形状をいう。
【0030】
一般的に、送電電極20と受電電極50との間で相対回転があった場合であっても、給電が中断されないようにするためには、高周波電源10から送電電極20への入力電力の反射率が低くすると良いことが知られている。すなわち、高周波電源10の内部インピーダンスと送電電極20の入力インピーダンスとの間で、位置や回転角度に拘らずインピーダンス整合が取れていることが重要である。電動モビリティ3が二次元の路面2を動き回る際に受電電極50の位置や方向により送電電極20と受電電極50との重なり(重複度)が変化する。これにより、送電電極20及び受電電極50により形成される電界結合の静電容量が変化し、その結果、送電電極20の入力インピーダンスが様々な値をとることになる。したがって、受電電極50の位置や角度の変化に対する平均の反射率(MRP:Mean Reflection Power ratio)(以下「MRP」とする)を小さくすることが重要である。なお、MRPは以下の(1)式で表せる。
【0031】
【数1】
nは対象とする位置・角度状態のサンプルサイズ(サンプル数)、iはサンプル番号である。また、Zoptは、以下の(2)式で示される値が最小となる高周波電源10の内部インピーダンスZ(送電電極20側に実装される回路のインピーダンス)であり、(3)式で表される。このZoptにより、送電電極20と受電電極50との重なりで生じるZiに対して、反射をできるだけ平均的に低減することが可能となる。
【数2】
【数3】
【0032】
このMRPが最小になるような配置パターンを検討する。これにより、どのような配置においても、反射をできるだけ低減することが可能な配置パターンを合理的に決定することが可能となる。
【0033】
ここで、電動モビリティ3が路面2上を自由に走行することができるように、送電電極20及び受電電極50の配置パターンを検討する。なお、受電電極50が有する複数の電極51の形状は、理解を容易にするために円形とし、路面2と対向する3つの電極51が正三角形の頂点になるように並んでいるとする。
【0034】
また、受電電極50が送電電極20の第1電極30及び第2電極40の双方に同時に乗るように第1電極30の枝部32の幅及び第2電極40の枝部42の幅(以下「幅W」とする)を300mmとした。この場合、配置パターンとして決定すべきパラメータは、第1電極30の枝部32と第2電極40の枝部42との夫々の間隔(以下「間隔d」とする)、複数の電極51の夫々の内径(以下「内径r」とする)、及び複数の電極51の互いの間隔(以下「間隔α」とする)の3つとなる(図2参照)。
【0035】
電動モビリティ3に搭載することを想定すると、間隔dについては第1電極30の枝部32の幅及び第2電極40の枝部42の絶縁を担保するために最小値を10mmとし、最大値を300mmとした。また、間隔dは、その直径が幅Wを超えないようにするために150mmを上限とし、下限値は70mmとした。更に、間隔αについては、内径rが最小値をとった場合でも受電電極50の複数の電極51同士が互いに重ならないようにすべく、内径rの2倍より大きい値とし、150mmを下限値とした。上限値は電動モビリティ3の乗員の肩幅と同様にすべく、440mmとした。
【0036】
図3には、間隔d、内径r、間隔αを最小値から10mm刻みで最大値まで変更して演算したMRPを小さい順に並べた結果が示される。図3に示されるように、MRPが最小となるのは、dが10mm、内径rが130mm、距離αが390mmの場合であり、MRPは0.1296であった。
【0037】
図4は、上述したように間隔d、内径r、間隔αを最小値から10mm刻みで最大値まで変更して得られたシミュレーション結果のMRPのヒストグラムである(標本数は6179個)。MRP分布からシグマを計算するとMRPは0.45であった。そこで、MRPは0.45以下とした。
【0038】
以上のことから、第1電極30の枝部32及び第2電極40の枝部42の夫々の幅Wに対して、第1電極30の枝部32と第2電極40の枝部42との夫々の間隔d、複数の電極51の夫々の内径r、及び複数の電極51の互いの間隔αに基づき、高周波電源10から送電電極20に入力される電力の平均反射率を算出し、これらの電力の平均反射率に基づき、第1電極30の枝部32と第2電極40の枝部42との夫々の間隔d、複数の電極51の夫々の内径r、複数の電極51の互いの間隔α、及び第1電極30の枝部32及び第2電極40の枝部42の夫々の幅Wを設定することができる。
【0039】
このように幅W、間隔d、内径r、間隔αを設定することで、送電電極20及び受電電極50の回転状態や位置に拘らず給電効率が高い配置パターンを決定することができる。図5は、例として、間隔d=50mmとした場合におけるMRP<0.30となる内径rと間隔αとの関係を示したマップである。図5に基づき、間隔d、内径r、間隔αを設定することが可能である。
【0040】
なお、上記の数値範囲は、電動モビリティ3のサイズに応じて定数倍しても良い。また、Zoptは反射係数の最大値ができるだけ小さくなるように求めても良いし、平均値を最小化するのではなく、反射係数の最大値を最小化するという配置パターンを決定することも可能である。
【0041】
ここで、高周波に係る技術では、伝搬経路が長くなると、定在波が生じ節(伝搬経路において振幅がゼロとなる位置)が生じることが知られている。そこで、節を非接触給電に対して影響が小さいところに生じさせると好適である。
【0042】
図6に示されるように、第1電極30の枝部32と第2電極40の枝部42との間隔をd、第1電極30の枝部32と第2電極40の枝部42との幅をW、第1電極30の幹部31の外縁部と第2電極40の幹部41の外縁部との間隔をL、第1電極30の枝部32と第2電極40の枝部42との折り返し長さをLとする。また、W=300mm、d=50mmとした。ここで、高周波電力の周波数は、13.56MHzであるので、λ/2は11.06mである。
【0043】
上記条件下において、図6のBの位置(非接触給電に対して影響が小さいところ)に節が生じる条件は(4)式となる。
【数4】
ここで、λは第1電極30及び第2電極40中の伝搬波長である。
【0044】
一方、図6より、以下の(5)式の関係が定まっている。
【数5】
【0045】
(4)式及び(5)式より、(6)式が導出される。
【数6】
【0046】
次に、λ=λとして、各値を代入すると、L=11.36mとなる。この値について電磁界シミュレーションを行う。給電は、図6に示されるように、第1電極30と第2電極40に高周波電源10を接続することにより行われる。受電電極50が電力を受け取るためには、第1電極30と第2電極40との電位差が重要である。そのため、第1電極30と第2電極40の電極間に生じる電界(Ey方向もしくはEx方向)を解析し、大きさがゼロ(電界の節)となる位置を求める。その結果を図7に示すが、破線で囲まれた箇所に節(電界の方向が入れ替わる点)が存在している。係る位置では、給電に対する影響が大きい。そこで、図8に示されるように、L=10.45mにすると、節となる部分を給電に対する影響が小さい位置に移動する(節となる部分が電動モビリティ3の移動エリアに生じないようにする)ことが可能となった。
【0047】
以上のように、節と高周波電力の周波数とで長さを調整することで、節を給電に対して影響が小さい位置に移動させることができる。間隔Lを固定し、他のパラメータを決定する場合も同様である。なお、幅W、間隔d、間隔Lは使用する高周波電力の波長に比例して定数倍して用いると好適である。
【0048】
このように本非接触給電システム1では、第1電極30の幹部31の外縁部と第2電極40の幹部41の外縁部との間隔Lは、高周波電力の周波数に基づく節が第1電極30の幹部31及び第2電極40の幹部41の少なくともいずれか一方に位置するように設定されている。
【0049】
次に、受電電極50で受電した交流電力を整流する整流ユニット90について説明する。送電電極20は、上述したように櫛歯体で構成され、図9の(a)に示されるように第1電極30及び第2電極40が交互に配置される。図9の(a)では、理解を容易にするために、第1電極30に”+”を付し、第2電極40に”-”を付している。以下では、夫々正極及び負極として説明する。
【0050】
上述したように、本実施形態では受電電極50は3つの電極51が路面2と対向するように配置される。この場合、3つの電極51のうち、2つの電極51が給電に用いられる。効率的な給電を実現すべく、3つの電極51から、送電電極20と受電電極50とにより過渡的に形成される静電容量が大きく、且つ、正極と負極との両方を網羅するものが選択される。
【0051】
例えば図9の(a)の場合には、各電極51における正の送電電極20と負の送電電極20との重複する領域の差異が大きいものが選択される。正の送電電極20と負の送電電極20との重複する領域の差異が小さい場合には、互いに相殺され見かけ上の静電容量が小さくなるからである。図9(a)においては、電極51aでは、C1+と正の送電電極20との重複する領域の面積と、C1-と負の送電電極20との重複する領域の面積とがほぼ同じで差異が小さい。電極51bでは、C2+と正の送電電極20との重複する領域の面積と、C2-と負の送電電極20との重複する領域の面積とでは、C2-と負の送電電極20との重複する領域の面積の方が大きい。電極51cでは、C3+と正の送電電極20との重複する領域の面積と、C3ーと負の送電電極20との重複する領域の面積とでは、C3+と正の送電電極20との重複する領域の面積の方が大きい。よって、この場合は、電極51bと電極51cとが選択され、給電に用いられる。
【0052】
図9の(b)には、図9の(a)に示される3つの電極51に接続された整流ユニット90が示される。図10は、図9の(b)の等価回路である。整流ユニット90は、受電電極50を有する受電ユニット7の一対の出力端子8間に設けられ、カソード端子が一対の出力端子8の一方に接続されると共にアノード端子が複数の電極51のうちの一つに接続されるハイサイド側のダイオードと、カソード端子がハイサイド側のダイオードのアノード端子に接続されると共にアノード端子が一対の出力端子8の他方に接続されるローサイド側のダイオードとからなるアーム部Aを、路面2と対向する電極51の数だけ有する。すなわち、本実施形態では図10に示されるように、整流ユニット90は、3つのアーム部Aを有する。
【0053】
ここで、V>V>Vの場合を考える。この時、負荷の正側の電圧VR+は(7)式で与えられる。
【数7】
ここで、Vはダイオードの順方向電圧(typ値で0.7V)である。
【0054】
一方、負荷の負側の電圧VR-は(8)式で与えられる。
【数8】
【0055】
これにより、負荷に出力される電圧は、(9)式で表される。
【数9】
【0056】
他の動作条件についても同様に考えることができ、V、V、Vの最小の電圧値と最大の電圧値との差異が負荷に出力される電圧Voutの走行による変動分を与えることになる。よって、得られる電圧は(10)式で表される。
【0057】
【数10】
ここで、V12、V13、V23は以下の(11)-(13)式で与えられる。
【数11】
【数12】
【数13】
【0058】
12、V13、V23の夫々の大小関係は、各電極51の静電容量の大小関係に依存している。すなわち、その状況毎の送電電極20と受電電極50の電極51との重なりの大きさに依存している。図9(a)の状態では、V23>V13>V12となる。この関係から、本構成によれば、適切な2つの電極51を負荷電極として選択することが可能となる。
【0059】
次に、3つの電極51の配置について説明する。図11は、3つの電極51(51d、51e、51f)が正三角形に並んだ状態から、3つの電極51のうちの1つ(51f)だけがスライド移動した場合のMRPの変動について示した図である。
【0060】
ここでは、図11の(a)に示されるように、3つの電極51(51d、51e、51f)のうちの1つ(電極51f)だけが第1電極30の枝部32及び第2電極40の枝部42が延出する方向に沿ってスライド移動した場合の例を挙げて説明する。なお、d=10mm、r=130mm、α=390mmとし、位置ずれ量をβとしている。
【0061】
また、-100mmから+100mmをβのスイープ範囲としている。図11の(b)に示されるように、βが0のときが最もMRPが小さいことがわかった。すなわち、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数が3つである場合には、3つの電極51は、平面視で正三角形を構成するように、すなわち複数の電極51は平面視で対称に配置されていると良いことがわかった。
【0062】
図12に、3つの電極51が正三角形状に配置された場合の送電電極20に対する受電電極50の角度依存性についての実験結果を示す。図12の(b)は、図12の(a)に示されるように、正三角形状に配置された3つの電極51の重心から3つの電極51のうちの一つを見た方向と、第1電極30の枝部32及び第2電極40の枝部42が延出する方向との角度差θを、0度から90度までスイープして入力電力に対する出力電力の実効率(給電効率)を算定したものである。
【0063】
図12の(b)に示されるように、θを変位させても給電効率は0.4程度で推移している。これは、上述したような「正電極・負電極に重なりをもつものが少なくとも2極存在していること」及び「回路的に適切な2つの電極51を選択し得る整流ユニット90を有していること」に起因している。このように、本非接触給電システム1によれば、回転自由度が高く、給電効率が優れた給電機構を実現することが可能となる。
【0064】
また、以上をまとめると、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数が3つの場合には、第1電極30の枝部32及び第2電極40の枝部42の夫々の幅をW、第1電極30の枝部32と第2電極40の枝部42との夫々の間隔をd、複数の電極51の夫々の内径をr、複数の電極51の互いの間隔をαとすると、
1/30×W≦d≦1/2×W
7/30×W≦r≦1/2×W
23/30×W≦α≦22/15×W
を具備するように構成すると良い。これにより、上述したように回転自由度が高く、給電効率が優れた本非接触給電システム1を実現することが可能となる。なお、上記の関係を満たせば、幅Wを適宜変更することも可能である。なお、本実施形態において、幅W、間隔d、及び間隔αの単位は、高周波電源10の交流波長(λ)を単位として設定した。
【0065】
また、本非接触給電システム1は、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数を3つ以上とする場合に、夫々の電極51を対称に配置すると良く、且つ、受電電極50が送電電極20に対して回転した際であっても、送電電極20の第1電極30及び第2電極40の夫々と少なくとも1つずつ電極51が平面視で重なるように配置すると良い。このように構成することで、受電電極50が送電電極20に対して回転した場合であっても給電状態を維持することが可能な非接触給電システム1を実現可能である。
【0066】
上記のように、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する複数の電極51は、平面視で対称に配置されていると良い。換言すると、回転対称性を持つように配置された複数の電極51を有する受電電極50が効率的な給電に好ましく、その理由は以下の通りである。例えば、図13に示されるように、複数の電極51が回転対称性を持つように配置された受電電極50を、複数の電極51により構成されるパターン(形状)の中心で回転させた場合、複数の電極51により構成されるパターンが回転前後で一致する場合と一致しない場合とがある。
【0067】
具体的には、例えば図13の(a)や(b)に示される正三角形の場合、回転前後でパターンが一致する回転角度は120度、240度であり、図13の(c)や(e)に示される正四角形の場合、回転前後でパターンが一致する回転角度は90度、180度、270度である。また、図13の(d)や(f)に示される正五角形の場合、回転前後でパターンが一致する回転角度は72度、144度、216度、288度である。
【0068】
更に、送電電極20は180度の回転対称性を持つとみなすことができる。このため、送電(送電電極20)側との重なりかたが異なるとみなせるケースは、正三角形の場合の回転角度は0度より大きく60度未満のみであり、正四角形の場合の回転角度が0度より大きく45度未満のみであり、正五角形の場合の回転角度は0度より大きく36度未満のみを考慮すればよい。
【0069】
このように複数の電極51により構成されるパターン(形状)を正多角形とした場合、受電電極50と、送電電極20の重なりのバリエーションを大きく減じることができる。中心に電極51を配置した場合であっても、同様に回転対称性を持つ配置に属し、上記と同様に重なりのバリエーションを減じることができる。送電電極20と受電電極50の重なりのバリエーションが少ないということは、各配置におけるインピーダンスのバリエーションが少ないということであり、つまり1つの整合器を用いて受電側と送電側のインピーダンス整合をより完全に近づけることができることを意味する。結果として、MRPを減じることができ、効率的な給電が可能となる。
【0070】
また、電極51の数を増加させることが給電効率の上昇に好ましい理由は以下のとおりである。上記のように、例えば正N角形(Nは3以上の整数)において、考慮すべき角度範囲は、360度/2Nと成る。それ以上(360度/2N)より大きい角度を考慮した場合であっても、同様のパターンが360度/2N内に存在するからである。つまりNを増加させるとそれだけ、重なりのバリエーションを減じることが出来る。その結果、効率的な給電が可能となる。
【0071】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、第1電極30の幹部31の外縁部と第2電極40の幹部41の外縁部との間隔Lは、高周波電力の周波数に基づく節が第1電極30の幹部31及び第2電極40の幹部41の少なくともいずれか一方に位置するように設定されているとして説明したが、設置上(面積の都合上)、第1電極30の幹部31の外縁部と第2電極40の幹部41の外縁部との間隔Lを所期の値に設定できないことも想定される。この場合、高周波電力(電波)の伝搬距離が屈折率(誘電率の平方根)と物理長との積で表されることを利用して、実質的な伝搬距離を全体として調整することが可能である。具体的には、第1電極30及び第2電極40と、第1電極30及び第2電極40の下側(地中側)において全面に亘って設けられるグランド板との間に誘電体を設けることにより節の位置を変更することが可能である。
【0072】
第1電極30及び第2電極40上を伝搬する高周波電力(電磁波)に対する実効比誘電率をεreffとすると、波長短縮率ν(<1)は、(14)式となることが知られている。
【数14】
【0073】
このとき、λ=ν×λとなる。したがって、L=ν×λ/2となるような比誘電率の誘電体を用いることで、(6)式と同様に間隔Lに対して以下の条件が定まる。
【数15】
【0074】
このようにすることで必要な間隔Lを短縮することが可能となる。短縮した間隔Lに基づき上記実施形態と同様に、シミュレーションで節の位置を確認し、比誘電率を調整すると良い。
【0075】
更に、別の方法として、複素インピーダンスを利用して位相を意図的にずらして全体として伝搬距離を調整することも可能である。具体的には、例えば、L<λ/2となる場合には、伝送線路に、伝搬する電圧波形の位相を進めることが可能な右手系位相回路を挿入することで、送電電極20中の定在波節から節までの実効的な電磁波の伝搬長を増大させ、λ/2と等しくなるように調整することが可能である。一方、L>λ/2となる場合には、伝送線路に、伝搬する電圧波形の位相を遅らせることが可能な左手系位相回路を挿入することで調整することが可能である。右手系位相回路及び左手系位相回路は、回路中に複数用いることも可能であるし、1つのみ用いることも可能である。また、特に右手系位相回路は同等の位相変化をもたらす伝送線路に置換しても良い。
【0076】
上記実施形態では、6個のダイオードを有するような整流ユニット90を例に挙げて説明した。整流ユニット90は、例えば図10に示した各アーム部Aのローサイドのダイオードをチョークコイルに置換した図14に示すような、所謂三相倍電流整流回路を用いて構成することも可能である。このような整流ユニット90であっても、上記実施形態と同様に、適宜、電極51を選択して出力することが可能となる。もちろん、電極51を4つ以上とする場合であっても適用可能である。
【0077】
更には、図15に示すような、所謂三相倍電圧整流回路を用いて整流ユニット90を構成することも可能である。また、一対に出力端子8の夫々に直列にコモンモードフィルタを接続して設けることも可能である。もちろん、この構成も、電極51を4つ以上の場合にも適用可能である。
【0078】
上記実施形態では、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数が3つであるとして説明したが、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数は2つであっても良いし、4つ以上であっても良い。
【0079】
図16は、4つの電極51(51h、51i、51j、51k)のうちの3つ(51h、51i、51j)が正三角形を構成するように配置し、残りの1つ(51k)を、正三角形の重心を中心として第1電極30の枝部32及び第2電極40の枝部42が延出する方向に沿ってスライド移動した場合のMRPの変動について示した図である。なお、図16の例では、d=20mm、r=100mm、α=430mmとし、位置ずれ量をβとしている。
【0080】
図16の(b)に示されるように、βが0のとき(すなわち、電極51kが正三角形の重心に位置する時)が最もMRPが小さいことがわかった。そこで、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数が4つの場合には、4つの電極51のうちの3つを正三角形状に並べ、その重心の位置に残りの1つを設けるように構成すると好適である。このような構成とすれば、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数が4つの場合に、MRPを最も小さくすることが可能となる。もちろん、4つの電極51が正方形状に並ぶように構成することが可能であるし、4つの電極51が菱形状に並ぶように構成することも可能である。
【0081】
なお、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数が5つの場合には、図13の(e)に示されるように、5つの電極51のうちの4つを正方形状に並べ、その重心の位置に残りの1つを設けるように構成したり、或いは、図13の(d)に示されるように、5つの電極51が正五角形状に並ぶように構成することが可能である。すなわち、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51を対称に配置すると良い。
【0082】
上記実施形態では、電動モビリティ3の走行中に路面2と対向する電極51の数が3つである場合に、第1電極30の枝部32及び第2電極40の枝部42の夫々の幅をW、第1電極30の枝部32と第2電極40の枝部42との夫々の間隔をd、複数の電極51の夫々の内径をr、複数の電極51の互いの間隔をαとすると、
1/30×W≦d≦1/2×W
7/30×W≦r≦1/2×W
23/30×W≦α≦22/15×W
を具備するように構成すると好適であるとして説明した。
【0083】
例えば、以下のように設定例1-7の何れかで構成しても良い。
(設定例1)
1/30×W≦d≦13/30×W
7/30×W≦r≦1/2×W
23/30×W≦α≦22/15×W
【0084】
(設定例2)
1/30×W≦d≦1/3×W
7/30×W≦r≦1/2×W
23/30×W≦α≦22/15×W
【0085】
(設定例3)
1/30×W≦d≦4/15×W
7/30×W≦r≦1/2×W
23/30×W≦α≦22/15×W
【0086】
(設定例4)
1/30×W≦d≦4/15×W
7/30×W≦r≦1/2×W
5/6×W≦α≦22/15×W
【0087】
(設定例5)
1/30×W≦d≦4/15×W
4/15×W≦r≦1/2×W
9/10×W≦α≦22/15×W
【0088】
(設定例6)
1/30×W≦d≦7/30×W
4/15×W≦r≦1/2×W
1×W≦α≦22/15×W
【0089】
(設定例7)
1/30×W≦d≦1/5×W
2/5×W≦r≦1/2×W
31/30×W≦α≦22/15×W
【0090】
なお、上記設定例1-7のように構成した場合には、設定例1から設定例7になる程、MRP<0.45を達成する確率が高くなる。一方、設定例7から設定例1になる程、MRP<0.45となる全ての寸法構成の数に対して達成する割合(カバレッジ)が高くなる。すなわち、達成する確率とカバレッジとはトレードオフの関係にある。そこで、達成する確率とカバレッジとの積が最大となる設定例5が達成する確率とカバレッジとの観点から適している。
【0091】
上記実施形態では、受電電極50が電動モビリティ3の路面2と対向する側(裏面3A)に設けられているとして説明したが、受電電極50が電動モビリティ3の複数の車輪4のうちの一つに設けられるようにしても良い。また、受電電極50が電動モビリティ3の複数の車輪4の全てに設けるように構成しても良い。また、複数の車輪4のうちのいくつかに設けるように構成しても良い。
【0092】
例えば、図17に示されるように、受電電極50は、電動モビリティ3の車輪4に周方向に亘って島状に形成された複数の電極51を有する。図17の例では、電極51は車輪4を構成するタイヤ4Aに設けられている。受電電極50は、電動モビリティ3の複数の車輪4(図17にあってはタイヤ4A)のうちの少なくとも一つに設けられる。受電電極50は複数の電極51を有し、上述したように夫々の電極51は島状に互いに分離した状態で設けられる。
【0093】
複数の電極51の夫々は、電動モビリティ3の走行中に複数の電極51のうち予め設定された数の電極が路面2と対向するように設けられる。電動モビリティ3の車輪4には、周方向に亘って島状に複数の電極51が設けられる。一方、電動モビリティ3の移動に伴い車輪4が回転するが、本実施形態では、この回転中に常に3つの電極51が路面2と対向するように設けられる。そこで、図18では、車輪4が路面2と対向する部分を二点鎖線で示し、この対向する部分内に3つの電極51を示している。なお、「路面2と対向する」とは、路面2から予め設定された距離内において対向することを意味する。したがって、路面2と対向する3つの電極51は、路面2と平行な状態でなくても良い。
【0094】
また、図19に示されるように、電極51は、車輪4の表面に露出していなくても良く、タイヤ4Aの内周面に設けられても良い。この場合、電極51は、タイヤ4Aの周方向に沿って設けられる金属板を用いることが可能である。また、電極51は、タイヤ4Aの周方向に連続して繋がっている環状でも良い。あるいは、図20に示されるように、タイヤ4A(例えばゴム)内に埋設して設けても良い。この場合、タイヤ4Aに内蔵されているスチールベルトを電極51として用いても良い。更には、図21に示されるように、電極51は、車輪4を構成するタイヤホイール4Bの外周面に設けても良く、あるいはタイヤホイール4B自身を電極51に用いても良い。この場合、タイヤ4A及びタイヤホイール4Bは走行中に回転するため、電極51と受電ユニット7の電気的な接続は、回転物に対して通電可能な一般的な接続手段(図示せず)であれば良く、接触式でも非接触式でも良い。
【0095】
上記構成のようにタイヤに受電電極50を配置した場合、以下の効果が得られる。まず、送電電極20と受電電極50の電極間距離を短くできるため給電効率を高めることができる。また、サスペンションの動作やタイヤ4Aの変形により車体と道路の間隔が変化しても、タイヤ4Aは常時路面に接触しているため電極間距離をほぼ一定に保つことができ、設計通りの給電効率を達成し易くできる。
【0096】
上記実施形態では、電動モビリティ3は4輪車を例に挙げて説明したが、図22に示されるように、電動モビリティ3は3輪車として構成することも可能である。
【0097】
上記実施形態では、受電電極50は、電動モビリティ3の裏面3A側に設けられた構成で説明したが、図23に示されるように、受電電極50の電極51は、電動モビリティ3の裏面3A側と車輪4側の双方に配置される構成としても良い。
【0098】
上記実施形態では、電動モビリティ3が送電電極20から給電された電力により走行するものとして説明したが、電動モビリティ3は送電電極20から給電された電力をバッテリに蓄電するように構成することも可能である。
【0099】
上記実施形態では、受電電極50が有する複数の電極51の形状を円形として説明したが、電極51の形状は円形でなくても良い。すなわち、多角形(例えば四角形)やその他の形状であっても良い。
【0100】
本発明は、路面を走行する電動モビリティに対して非接触で給電する非接触給電システムに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1:非接触給電システム
2:路面
3:電動モビリティ
7:受電ユニット
8:出力端子
10:高周波電源
20:送電電極
30:第1電極
31:幹部
32:枝部
40:第2電極
41:幹部
42:枝部
50受電電極
51:電極
90:整流ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23